「物理のエッセンス(熱・電磁気・原子)」徹底解説(電磁気11〜15問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

電磁気範囲 11~15

11 電位

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複数の点電荷が作る電位(スカラー和)」です。電場がベクトル量の重ね合わせで複雑な計算を要したのに対し、電位は向きを持たないスカラー量であるため、単純な足し算(代数和)で求められることを理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 点電荷が作る電位の公式: 点電荷 \(q\) から距離 \(r\) 離れた点の電位は \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) で表されること。電荷 \(q\) の符号をそのまま式に代入します。
  2. 電位の重ね合わせの原理: ある点における合成電位は、それぞれの電荷が単独でその点に作る電位の、単純な代数和(スカラー和)に等しいこと。
  3. 電位と電場の違い: 電場はベクトル量(向きと大きさを持つ)であり、合成にはベクトル和(作図や成分分解)が必要ですが、電位はスカラー量(大きさのみを持つ)であり、合成は単純な足し算・引き算で済みます。
  4. 距離の計算: 三平方の定理などを用いて、電荷から目的の点までの距離を正確に求めること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

各設問について、指定された点(O, B, C)と、2つの電荷(\(+Q\) と \(-Q\))それぞれとの距離を求めます。
次に、各電荷がその点に作る電位を \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) の公式で計算します。
最後に、2つの電位を単純に足し合わせることで、その点の合成電位を求めます。

問(1) 点O\((0, 0)\)の電位

思考の道筋とポイント
原点Oは、\(+Q\)(\((a, 0)\))と \(-Q\)(\((-a, 0)\))から等しい距離にあります。電位はスカラー量なので、それぞれの電荷が作る電位を計算し、単純に足し合わせるだけで合成電位が求まります。向きを考える必要がないため、計算は非常にシンプルです。
この設問における重要なポイント

  • 電位はスカラー量であり、向きを考慮せず、符号を含めて単純に足し算する。
  • 点Oから各電荷までの距離はともに \(a\) である。

具体的な解説と立式
点O\((0, 0)\)における電位 \(V_O\) は、\(+Q\) が作る電位 \(V_+\) と \(-Q\) が作る電位 \(V_-\) の和で与えられます。
$$ V_O = V_+ + V_- $$
点Oから \(+Q\) までの距離は \(a\) なので、\(V_+\) は、
$$
\begin{aligned}
V_+ &= k\frac{+Q}{a} \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{a}
\end{aligned}
$$
点Oから \(-Q\) までの距離も \(a\) なので、\(V_-\) は、
$$
\begin{aligned}
V_- &= k\frac{-Q}{a} \\[2.0ex]
&= -k\frac{Q}{a}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電位: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)
  • 電位の重ね合わせの原理
計算過程

上記で求めた \(V_+\) と \(V_-\) を足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
V_O &= V_+ + V_- \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{a} + \left(-k\frac{Q}{a}\right) \\[2.0ex]
&= 0 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電位を「山の高さ」や「谷の深さ」のようなものだとイメージしてみましょう。正電荷 \(+Q\) は自分の周りに高さ \(kQ/r\) の山を作り、負電荷 \(-Q\) は深さ \(kQ/r\) の谷を作ります。
点Oは、\(+Q\) の山と \(-Q\) の谷からちょうど同じ距離 \(a\) にあります。電荷の大きさが同じなので、山の「高さ」と谷の「深さ」がちょうど同じになります。したがって、点Oの電位(標高)は、プラスとマイナスが打ち消し合って \(0 \, \text{V}\) となります。

結論と吟味

原点Oの電位は \(0 \, \text{V}\) となりました。これは、大きさが同じで符号が逆の2つの電荷から等距離にある点の電位が0になるという、電気双極子の基本的な性質を示す妥当な結果です。

解答 (1) \(0 \, \text{V}\)

問(2) 点B\((0, y)\)の電位

思考の道筋とポイント
点Bはy軸上にあり、点Oと同様に \(+Q\) と \(-Q\) から等距離にあります。この対称性が計算を簡単にする鍵です。まず、三平方の定理を用いて、点Bから各電荷までの距離を求めます。その後は(1)と同様に、それぞれの電荷が作る電位を計算し、足し合わせるだけです。
この設問における重要なポイント

  • 点Bから各電荷までの距離が \(\sqrt{a^2+y^2}\) で等しいこと。
  • 対称性により、正電荷が作る正の電位と負電荷が作る負の電位が完全に打ち消し合うこと。

具体的な解説と立式
点B\((0, y)\)における電位 \(V_B\) は、\(+Q\) が作る電位 \(V_+\) と \(-Q\) が作る電位 \(V_-\) の和で与えられます。
まず、点Bから各電荷までの距離 \(r_B\) を三平方の定理で求めます。
$$
\begin{aligned}
r_B &= \sqrt{(a-0)^2 + (0-y)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{a^2+y^2}
\end{aligned}
$$
この距離は、\(+Q\) からでも \(-Q\) からでも同じです。
したがって、\(+Q\) が作る電位 \(V_+\) は、
$$
\begin{aligned}
V_+ &= k\frac{+Q}{r_B} \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{\sqrt{a^2+y^2}}
\end{aligned}
$$
\(-Q\) が作る電位 \(V_-\) は、
$$
\begin{aligned}
V_- &= k\frac{-Q}{r_B} \\[2.0ex]
&= -k\frac{Q}{\sqrt{a^2+y^2}}
\end{aligned}
$$
合成電位 \(V_B\) はこれらの和です。
$$ V_B = V_+ + V_- $$

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電位: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)
  • 電位の重ね合わせの原理
  • 三平方の定理
計算過程

$$
\begin{aligned}
V_B &= k\frac{Q}{\sqrt{a^2+y^2}} + \left(-k\frac{Q}{\sqrt{a^2+y^2}}\right) \\[2.0ex]
&= 0 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

点Bは、y軸上のどこにあっても、常に \(+Q\) と \(-Q\) から同じ距離にあります。そのため、(1)の原点Oと同じ理由で、\(+Q\) が作る「山の高さ」と \(-Q\) が作る「谷の深さ」が常に打ち消し合います。結果として、y軸上はどこでも電位(標高)が \(0 \, \text{V}\) の平坦な場所になります。電場を計算したときのように、複雑なベクトルの分解や合成が全く不要なのが、電位の計算の楽なところです。

結論と吟味

点Bの電位は \(0 \, \text{V}\) となりました。この結果は \(y\) の値によらないため、y軸上の全ての点で電位が0になることを意味します。このような電位が等しい面(この場合は直線)を「等電位面(線)」と呼びます。

解答 (2) \(0 \, \text{V}\)

問(3) 点C\((2a, 0)\)の電位

思考の道筋とポイント
点Cはx軸上にありますが、\(+Q\) と \(-Q\) からの距離が異なります。そのため、電位は0にはなりません。それぞれの電荷からの距離を正確に計算し、(1), (2)と同様に、各電位を単純に足し合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 点Cから \(+Q\) までの距離と \(-Q\) までの距離を正確に計算すること。
  • 距離が異なるため、電位は打ち消し合わず、有限の値を持つこと。

具体的な解説と立式
点C\((2a, 0)\)における電位 \(V_C\) は、\(+Q\) が作る電位 \(V_+\) と \(-Q\) が作る電位 \(V_-\) の和で与えられます。
点Cから \(+Q\)(\((a, 0)\))までの距離は、
$$
\begin{aligned}
r_+ &= 2a – a \\[2.0ex]
&= a
\end{aligned}
$$
よって、\(+Q\) が作る電位 \(V_+\) は、
$$
\begin{aligned}
V_+ &= k\frac{+Q}{a} \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{a}
\end{aligned}
$$
点Cから \(-Q\)(\((-a, 0)\))までの距離は、
$$
\begin{aligned}
r_- &= 2a – (-a) \\[2.0ex]
&= 3a
\end{aligned}
$$
よって、\(-Q\) が作る電位 \(V_-\) は、
$$
\begin{aligned}
V_- &= k\frac{-Q}{3a} \\[2.0ex]
&= -k\frac{Q}{3a}
\end{aligned}
$$
合成電位 \(V_C\) はこれらの和です。
$$ V_C = V_+ + V_- $$

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電位: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)
  • 電位の重ね合わせの原理
計算過程

$$
\begin{aligned}
V_C &= k\frac{Q}{a} + \left(-k\frac{Q}{3a}\right) \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{a} – k\frac{Q}{3a} \\[2.0ex]
&= \left(1 – \frac{1}{3}\right)k\frac{Q}{a} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3}k\frac{Q}{a}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

点Cは、\(+Q\) の山からは距離 \(a\) の場所に、\(-Q\) の谷からは距離 \(3a\) の場所にあります。山の方が谷よりもずっと近いので、山の高さの影響が谷の深さの影響よりも強くなります。そのため、2つを足し合わせても電位は0にならず、プラスの値(標高)を持つことになります。

結論と吟味

点Cの電位は \(\displaystyle\frac{2kQ}{3a}\) となりました。正電荷 \(+Q\) の方が近いので、合成電位が正の値になるのは物理的に妥当です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{2kQ}{3a}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電位のスカラー性と重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、電位が向きを持たない「スカラー量」であるという性質を深く理解することにあります。電場がベクトル量であり、その合成に複雑なベクトル和(作図や成分分解)が必要だったのに対し、電位の合成は、各電荷が作る電位を単純に足し算・引き算(代数和)するだけで済みます。
    • 理解のポイント:
      • 電場との対比: 電場を求める問題(例えば問題7)とこの問題を比較することが極めて重要です。同じ電荷配置でも、求めるものがベクトル(電場)かスカラー(電位)かで、計算の複雑さが全く異なります。電位の計算では、向きや角度、\(\cos\theta\), \(\sin\theta\) といった要素が一切登場しないシンプルさを実感することが、両者の概念を明確に区別する鍵となります。
      • 符号の扱い: 電位の公式 \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) では、電荷 \(q\) の符号(プラスかマイナスか)をそのまま式に代入します。これにより、正電荷は正の電位(山)を、負電荷は負の電位(谷)を作ることが表現され、それらを足し合わせることで全体の電位(地形)が決定されます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電気双極子の作る電位: この問題の電荷配置は「電気双極子」そのものです。(2)の結果から、電気双極子の垂直二等分線上(y軸上)の電位は常に0になる、という重要な性質が導かれます。
    • 静電気力による位置エネルギー: ある点Pの電位 \(V_P\) がわかれば、その点に別の電荷 \(q_0\) を持ってきたときの静電気力による位置エネルギーを \(U = q_0 V_P\) という簡単な掛け算で求めることができます。
    • 仕事の計算: 電荷 \(q_0\) を点A(電位 \(V_A\))から点B(電位 \(V_B\))へ運ぶのに必要な仕事を \(W = q_0(V_B – V_A)\) として計算する問題。各点の電位をこの問題のように計算することが、仕事の計算の第一歩となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「電位を求めよ」という問いを確認: 問題が「電場」ではなく「電位」を求めていることを確認した瞬間に、「ベクトル計算は不要!単純な足し算だ!」と頭を切り替えます。
    2. 各電荷からの距離をリストアップ: 求める点と、存在する全ての電荷との間の距離を、三平方の定理などを使って一つずつ正確に計算し、リストアップします。
    3. 公式に代入して機械的に足し算: 各電荷について \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) を計算し、それらを全て足し合わせます。この際、電荷 \(q\) の符号を忘れずに代入することが唯一の注意点です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電位の計算でベクトル合成をしてしまう:
    • 誤解: 電場を求める問題の癖で、電位の計算でもベクトルの成分分解や合成をしようとして混乱する。
    • 対策: 「電位はスカラー、電場はベクトル」という基本事項を呪文のように唱えましょう。問題演習の際に、電場と電位を求める問題が隣り合っているものを解き、計算方法の違いを意識的に体に覚え込ませるのが効果的です。
  • 電位の公式で電荷の絶対値をとってしまう:
    • 誤解: 電場の大きさの公式 \(E = k\displaystyle\frac{|q|}{r^2}\) と混同し、電位の計算でも \(V = k\displaystyle\frac{|q|}{r}\) のように電荷の絶対値を使ってしまう。
    • 対策: 電位は「高さ」であり、プラスの高さ(山)もマイナスの高さ(谷)もあり得ます。電荷の符号が電位の符号を決定するため、絶対値をとってはいけない、と覚えましょう。公式を \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) と、絶対値記号をつけない形で正確に記憶することが重要です。
  • 距離の2乗と1乗の混同:
    • 誤解: 電場の公式 \(E \propto 1/r^2\) と混同し、電位の公式を \(V \propto 1/r^2\) と間違える(あるいはその逆)。
    • 対策: 「力や場(ベクトル)は \(r^2\) に反比例」「エネルギーや電位(スカラー)は \(r\) に反比例」というペアで覚えると整理しやすくなります。これは万有引力(\(F \propto 1/r^2\))とそれによる位置エネルギー(\(U \propto 1/r\))の関係とも共通しています。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 電位の重ね合わせの原理:
    • 選定理由: 問題に複数の電荷(\(+Q\) と \(-Q\))が存在し、それらが作る合成電位を求める必要があるため、重ね合わせの原理を適用します。
    • 適用根拠: 電位はスカラー量であるため、ベクトル和ではなく単純な代数和(スカラー和)となります。これは、ある点に電荷を運ぶのに必要な仕事が、他の電荷の存在によって影響を受けず、それぞれの電荷に対して必要な仕事の合計で与えられることに対応しています。
  • 点電荷の電位の公式 \(V = kq/r\):
    • 選定理由: 電位の源が「点電荷」であるため、この公式が計算の基本単位となります。
    • 適用根拠: この公式は、無限遠を基準(\(0 \, \text{V}\))として、点電荷が作る電場を積分することによって導かれます。高校物理ではこの積分計算は行いませんが、電場と電位の基本的な関係 \(E = -dV/dr\) から導かれる、電磁気学の基本公式の一つとして学びます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 計算プロセスを単純化する:
    • 電位の計算は、以下の3ステップに尽きます。
      1. 距離 \(r_1, r_2, \dots\) を計算する。
      2. 各電位 \(V_1 = kq_1/r_1\), \(V_2 = kq_2/r_2, \dots\) を計算する。
      3. 全てを足す: \(V = V_1 + V_2 + \dots\)。
    • この単純な手順を意識することで、余計なことを考えずに済み、計算に集中できます。
  • 共通因数でくくる:
    • (3)の計算では、\(V_C = k\displaystyle\frac{Q}{a} – k\displaystyle\frac{Q}{3a}\) となります。ここで共通因数 \(kQ/a\) でくくり、\(V_C = (1 – \displaystyle\frac{1}{3}) k\displaystyle\frac{Q}{a}\) とすることで、分数の計算が簡単になり、ミスを減らせます。
  • 対称性を最大限に活用する:
    • (1)と(2)では、各電荷からの距離が等しく、電荷の大きさが同じで符号が逆であることに気づけば、計算するまでもなく「\(V_+ = -V_-\) となるから、和は0だ」と瞬時に結論を出すことができます。計算を始める前に、図形の対称性がないかを確認する癖は、電位の問題で特に時間短縮に繋がります。

12 電位

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている定性的な解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 数式を用いてグラフの概形を決定する解法
      • 主たる解法が、2つの電位のグラフを視覚的に足し合わせることで概形を描くのに対し、別解ではx軸上の電位を \(x\) の関数として具体的に立式し、その関数の極限や特定の値などを調べることで、より数学的・定量的にグラフの形を考察します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理現象の数式化能力の向上: グラフという視覚的な表現を、関数という数式表現に落とし込む訓練になります。
    • 定性的理解と定量的理解の橋渡し: なぜグラフがそのような形になるのか、という定性的な理解に対し、数式に基づいた論理的な根拠を与えることができます。
    • グラフ描画の論理的根拠の明確化: 「なんとなくこうなる」という曖昧さを排し、関数の振る舞いを分析することで、より正確なグラフの概形を自信を持って描けるようになります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られるグラフの概形は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「複数の点電荷が作る電位のグラフ描画」です。前問で計算した電気双極子の作る電位が、x軸上でどのように変化するかを視覚的に表現する能力が問われます。電位がスカラー量であるため、グラフの合成が単純な「高さ」の足し算で実行できる点がポイントです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 点電荷が作る電位の公式: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)。電位は電荷からの距離 \(r\) に反比例します。
  2. 電位の重ね合わせの原理: 合成電位は、各電荷が作る電位の単純な代数和(スカラー和)で求められます。
  3. グラフの合成: 2つの関数 \(f(x)\) と \(g(x)\) があるとき、その和のグラフ \(y=f(x)+g(x)\) は、各 \(x\) 座標における \(y\) 座標の値(高さ)を足し合わせることで描けます。
  4. 極限の考え方: 電荷の位置(\(x=\pm a\))では電位が無限大に発散し、無限遠(\(x \to \pm \infty\))では0に収束するという、関数の振る舞いを理解していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、\(+Q\) が単独で作る電位のグラフと、\(-Q\) が単独で作る電位のグラフを、それぞれ点線で描きます。
  2. 次に、描いた2つの点線グラフについて、同じx座標でのy座標の値(電位)を足し合わせます。
  3. 全てのx座標でこの足し算を行うことで、合成後のグラフ(実線)の概形を描きます。特に、\(x=\pm a\), \(x=0\), \(x \to \pm \infty\) といった特徴的な点での振る舞いに注目します。

\(x\)軸上の電位のグラフ

思考の道筋とポイント
電位は向きのないスカラー量なので、グラフの合成はベクトルのように複雑な作図を必要とせず、各x座標での「高さ」を単純に足し算(正負を考慮)すればよい、という点がこの問題の核心です。
まず、グラフの構成要素となる2つの電位の形を正確にイメージすることが重要です。

  • \(+Q\) が作る電位: \(x=a\) の位置にプラスの電荷があるので、ここを漸近線として正の無限大に発散する「山」のようなグラフ(\(y=1/(x-a)\) の形)になります。
  • \(-Q\) が作る電位: \(x=-a\) の位置にマイナスの電荷があるので、ここを漸近線として負の無限大に発散する「谷」のようなグラフ(\(y=-1/(x+a)\) の形)になります。

この「山」と「谷」のグラフを頭の中で(あるいは実際に点線で描いて)重ね合わせ、各点での高さを足し合わせることで、全体のグラフの概形を掴みます。
この設問における重要なポイント

  • \(+Q\) は \(x=a\) を中心とする「山」の電位グラフを作る。
  • \(-Q\) は \(x=-a\) を中心とする「谷」の電位グラフを作る。
  • 合成グラフは、この山と谷のグラフの各点でのy座標を足し合わせたものになる。
  • \(x=0\) では、対称性から山と谷の高さ/深さが打ち消し合い、電位が0になる。

具体的な解説と立式
x軸上の任意の点 \((x, 0)\) の電位 \(V(x)\) を考えます。
この点の電位は、\(+Q\)(位置 \(x=a\))が作る電位 \(V_+(x)\) と、\(-Q\)(位置 \(x=-a\))が作る電位 \(V_-(x)\) の和で与えられます。
$$ V(x) = V_+(x) + V_-(x) $$
それぞれの電位は、各電荷からの距離を用いて次のように表せます。

  • \(+Q\) からの距離は \(|x-a|\) なので、
    $$ V_+(x) = k\frac{Q}{|x-a|} $$
  • \(-Q\) からの距離は \(|x-(-a)| = |x+a|\) なので、
    $$ V_-(x) = k\frac{-Q}{|x+a|} $$

グラフを描くには、まず \(V_+(x)\) と \(V_-(x)\) のグラフ(点線)をそれぞれ描き、次にそれらのy座標を全てのxで足し合わせることで、合成電位 \(V(x)\) のグラフ(実線)を描きます。

特徴的な点での振る舞い:

  • \(x=a\) 付近: \(V_+(x)\) が \(+\infty\) に発散するため、合成電位も \(+\infty\) に発散します。
  • \(x=-a\) 付近: \(V_-(x)\) が \(-\infty\) に発散するため、合成電位も \(-\infty\) に発散します。
  • \(x=0\): \(V_+(0) = kQ/a\), \(V_-(0) = -kQ/a\) となり、和は \(V(0)=0\) となります。(前問(1)の結果)
  • \(x \to \pm\infty\): \(V_+(x)\) と \(V_-(x)\) はどちらも0に近づくため、合成電位も0に漸近します。

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電位: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)
  • 電位の重ね合わせの原理
計算過程

(グラフの描画が主目的のため、具体的な計算は特徴的な点の値の確認に留まります)
上記「具体的な解説と立式」で考察した特徴的な点(\(x=\pm a, x=0, x \to \pm \infty\))での振る舞いを基に、それらを滑らかに結ぶことで、模範解答に示されているグラフの概形が得られます。

この設問の平易な説明

この問題は、2つの地形図を重ね合わせて、新しい地形図を作る作業に似ています。
まず、\(x=a\) の地点に非常に高い、鋭く尖った「山」があるとします。これが \(+Q\) が作る電位のグラフです。
次に、\(x=-a\) の地点に非常に深い、鋭く尖った「谷」があるとします。これが \(-Q\) が作る電位のグラフです。
この2つの地形を重ね合わせるとどうなるでしょうか?

  • 山の頂上(\(x=a\))や谷底(\(x=-a\))のすぐ近くでは、その影響が圧倒的なので、合成後の地形もそれぞれ山と谷になります。
  • ちょうど真ん中の \(x=0\) の地点では、山の高さと谷の深さがちょうど同じになり、打ち消し合って標高0mの平地になります。
  • 山や谷から非常に遠く離れた場所では、どちらの影響もほとんどなくなり、元の平地(電位0V)に近づいていきます。

これらの特徴をつなぎ合わせると、答えのグラフの形が描けます。

結論と吟味

描かれたグラフは、電荷の位置で無限大に発散し、原点で0を通り、無限遠で0に漸近するという、物理的に妥当な形状をしています。また、グラフの傾きは電場を表す(\(E_x = -dV/dx\))ため、例えば \(0<x<a\) の区間でグラフが右上がり(傾きが正)であることは、その区間で電場がx軸負の向き(左向き)の成分を持つことを示唆しており、物理的な状況と一致します。

解答 模範解答に示されているグラフ。
別解: 数式を用いてグラフの概形を決定する解法

思考の道筋とポイント
グラフを視覚的に合成するのではなく、x軸上の電位 \(V(x)\) をxの関数として具体的に立式し、その数式の振る舞いを数学的に調べることで、より厳密にグラフの概形を決定するアプローチです。xの値によって絶対値の外し方が変わるため、3つの区間(\(x>a\), \(-a<x<a\), \(x<-a\))に場合分けして考えます。
この設問における重要なポイント

  • xの範囲に応じて、絶対値 \(|x-a|\) と \(|x+a|\) を正しく外すこと。
  • 各区間での関数形を求め、その関数の特徴(漸近線、値の符号など)を調べること。

具体的な解説と立式
x軸上の任意の点 \((x, 0)\) の電位 \(V(x)\) は、
$$ V(x) = kQ \left( \frac{1}{|x-a|} – \frac{1}{|x+a|} \right) $$
と表せます。これをxの範囲で場合分けします。

1. \(x>a\) の場合:
\(x-a>0\), \(x+a>0\) なので、
$$
\begin{aligned}
V(x) &= kQ\left(\frac{1}{x-a} – \frac{1}{x+a}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{2akQ}{x^2-a^2}
\end{aligned}
$$
この式より、\(x>a\) では常に \(V(x)>0\)。\(x \to a^+\) で \(V(x) \to +\infty\)、\(x \to \infty\) で \(V(x) \to 0\)。

2. \(-a < x < a\) の場合:
\(x-a<0\), \(x+a>0\) なので、\(|x-a|=-(x-a)=a-x\)。
$$
\begin{aligned}
V(x) &= kQ\left(\frac{1}{a-x} – \frac{1}{x+a}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{2xkQ}{a^2-x^2}
\end{aligned}
$$
この式より、\(x=0\) で \(V(0)=0\)。\(0<x<a\) で \(V(x)>0\)、\(-a<x<0\) で \(V(x)<0\)。\(x \to a^-\) で \(V(x) \to +\infty\)、\(x \to -a^+\) で \(V(x) \to -\infty\)。

3. \(x < -a\) の場合:
\(x-a<0\), \(x+a<0\) なので、\(|x-a|=-(x-a)\), \(|x+a|=-(x+a)\)。
$$
\begin{aligned}
V(x) &= kQ\left(\frac{1}{-(x-a)} – \frac{1}{-(x+a)}\right) \\[2.0ex]
&= kQ\left(\frac{1}{x+a} – \frac{1}{x-a}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{-2akQ}{x^2-a^2}
\end{aligned}
$$
この式より、\(x<-a\) では常に \(V(x)<0\)。\(x \to -a^-\) で \(V(x) \to -\infty\)、\(x \to -\infty\) で \(V(x) \to 0\)。

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電位: \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)
  • 電位の重ね合わせの原理
計算過程

(各区間での関数形の導出と、その極限の考察が計算過程となります)
上記で分析した3つの区間での関数の振る舞いを一つのグラフ上につなぎ合わせることで、模範解答のグラフの概形が数学的に裏付けられます。

この設問の平易な説明

この別解は、グラフを描く前に、まず数式で「地形の設計図」を作る方法です。
場所によって地形の式が変わるので、x軸を「\(+Q\) の右側」「2つの電荷の間」「\(-Q\) の左側」の3つのエリアに分けて、それぞれのエリアの設計図(数式)を作ります。
そして、各設計図が、エリアの境界(山の頂上や谷底)や無限の彼方でどうなっているかを調べることで、全体の地形図をより正確に、論理的に描くことができます。

結論と吟味

主たる解法の定性的なグラフと、数式から導かれたグラフの概形が完全に一致することが確認できました。数式を用いることで、なぜ原点で0になるのか、なぜ電荷の間で符号が変わるのか、といったグラフの性質をより厳密に議論することが可能になります。

解答 模範解答に示されているグラフ。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電位のスカラー性と重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、電位が向きを持たない「スカラー量」であるという性質を深く理解することにあります。電場がベクトル量であり、その合成に複雑なベクトル和(作図や成分分解)が必要だったのに対し、電位の合成は、各電荷が作る電位を単純に足し算・引き算(代数和)するだけで済みます。
    • 理解のポイント:
      • 電場との対比: 電場を求める問題とこの問題を比較することが極めて重要です。同じ電荷配置でも、求めるものがベクトル(電場)かスカラー(電位)かで、計算の複雑さが全く異なります。電位の計算では、向きや角度、\(\cos\theta\), \(\sin\theta\) といった要素が一切登場しないシンプルさを実感することが、両者の概念を明確に区別する鍵となります。
      • グラフの足し算: 電位がスカラーであるため、合成電位のグラフは、各電荷が作る電位のグラフの「高さ(y座標)」を、各x座標で単純に足し合わせることで描くことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 同符号の電荷(例: \(+Q\)と\(+Q\))の電位グラフ: この場合、2つの「山」のグラフを足し合わせることになります。電荷の真ん中の点で電位は谷(極小値)になりますが、0にはならず正の値を持ちます。全体としてU字型のグラフになります。
    • 電位のグラフから電場を求める問題: 関係式 \(E_x = -\displaystyle\frac{dV}{dx}\) を利用します。これは、電位のグラフの「傾き」にマイナスをつけたものが、その点での電場のx成分になることを意味します。グラフの傾きが急な場所ほど電場が強く、傾きが0の場所(この問題では \(x \to \pm\infty\))では電場が0に近づく、といった関係性を読み取る問題に応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 構成要素のグラフを点線で描く: まず、各電荷が単独で作る電位のグラフ(\(1/r\) の形、この問題では「山」と「谷」)をそれぞれ点線で描くことから始めます。
    2. 特徴的な点の値をプロットする: 計算が簡単な、あるいは性質が明らかな点での合成電位の値を先にプロットします。
      • 電荷の位置(\(x=\pm a\)): 電位が \(+\infty\) または \(-\infty\) に発散する(漸近線)。
      • 対称的な点(\(x=0\)): 電位が0になる。
      • 無限遠(\(x \to \pm\infty\)): 電位が0に近づく。
    3. 点線グラフの「高さ」を足し合わせる: 各x座標で、点線で描いた2つのグラフのy座標を視覚的に足し算し、プロットした特徴的な点と滑らかにつながるように実線を描きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • グラフの合成をベクトル的に考えてしまう:
    • 誤解: 電場のグラフを描くときのように、ベクトルの向きを考えて複雑な合成をしようとしてしまう。
    • 対策: 「電位は標高、電場は傾斜」というイメージを徹底しましょう。2つの地形図を重ねるとき、各地点の標高を単純に足し合わせるのが電位のグラフ、各地点の斜面の向きと急さをベクトル合成するのが電場のグラフです。電位のグラフでは、矢印の合成は一切不要です。
  • \(1/r\) と \(1/r^2\) のグラフの形の混同:
    • 誤解: 電場の強さのグラフ(\(1/r^2\) に比例)と電位のグラフ(\(1/r\) に比例)の減衰の仕方の違いを意識せず、同じような形で描いてしまう。
    • 対策: \(1/r\) のグラフの方が、\(1/r^2\) のグラフよりも遠方でゆっくりと0に近づく(減衰が緩やかである)ことを覚えておきましょう。
  • 正負の領域の勘違い:
    • 誤解: グラフのどの部分がプラスで、どの部分がマイナスになるかを間違える。
    • 対策: 各点で「どちらの電荷に近いか」を考えます。\(+Q\) に近い領域(この問題では \(x>0\))では、\(+Q\) の影響が勝つので電位はプラスになりがちです。逆に \(-Q\) に近い領域(\(x<0\))では、\(-Q\) の影響が勝つので電位はマイナスになりがちです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • グラフの重ね描き(作図による合成):
    • 選定理由: 問題が「概略でよい」と求めているため、厳密な関数形をプロットする必要はなく、定性的な特徴を捉えることが目的です。2つの基本的なグラフ(山と谷)を視覚的に足し合わせる方法は、この目的に最も合致した、直感的で速い解法です。
    • 適用根拠: 関数 \(y=f(x)+g(x)\) のグラフが、\(y=f(x)\) と \(y=g(x)\) のグラフの各xにおけるy座標の和で与えられるという、数学の基本的な作図原理に基づいています。電位のスカラー性により、この原理がそのまま適用できます。
  • 数式による分析(別解):
    • 選定理由: グラフの形をより論理的に、厳密に決定したい場合に選択します。特に、極値の有無や変曲点などを議論する必要がある場合に有効です。
    • 適用根拠: グラフは関数の視覚的表現であり、関数の代数的な性質(値の正負、極限、増減など)がグラフの形状を決定するという、解析幾何学の基本原則に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 特徴的な点を先に押さえる:
    • グラフ全体を一度に描こうとせず、まず重要な点(アンカーポイント)をプロットします。
      • \(x=\pm a\) → 発散(漸近線)
      • \(x=0\) → \(V=0\) (前問の結果より)
      • \(x \to \pm\infty\) → \(V \to 0\)
    • これらの点を滑らかに結ぶだけでも、概形はかなり正確に描けます。
  • 正負の領域を意識する:
    • 合成電位の式 \(V(x) = kQ \left( \displaystyle\frac{1}{|x-a|} – \displaystyle\frac{1}{|x+a|} \right)\) から、カッコの中の正負で全体の符号が決まることがわかります。
      • \(|x-a| < |x+a|\) のとき(点xが\(+Q\)に近いとき)、カッコ内は正となり \(V(x)>0\)。これは \(x>0\) の領域です。
      • \(|x-a| > |x+a|\) のとき(点xが\(-Q\)に近いとき)、カッコ内は負となり \(V(x)<0\)。これは \(x<0\) の領域です。
    • このように、計算する前にどの領域でグラフがx軸の上に来て、どの領域で下に来るかを予測しておくと、大きな間違いを防げます。
  • 電場との関係で検算する:
    • 描いた電位グラフの「傾き」を見て、x軸上の電場の向きと矛盾がないかを確認します。
    • 例えば、\(0<x<a\) の領域では、電位グラフの傾きは正です。\(E_x = -dV/dx\) の関係から、電場 \(E_x\) は負(左向き)であることがわかります。これは、この領域では \(+Q\) からの斥力(左向き)と \(-Q\) からの引力(左向き)が合成されるため、電場が左向きになるという物理的な状況と一致します。このような検算ができると、理解が深まり、解答の信頼性も高まります。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]

13 電位

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(エネルギー保存則)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 仕事と運動エネルギーの関係を用いる解法
      • 主たる解法が始点と終点でのエネルギーの「状態」を比較するのに対し、この別解では始点から終点への「過程」に着目し、静電気力がした仕事が運動エネルギーの増加に等しい、という関係から速さを求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的アプローチの多様性の理解: 一つの現象を「エネルギー」の観点から見るか、「力」の観点から見るかという、物理学における二大アプローチを比較体験できます。
    • 物理法則の等価性の確認: エネルギー保存則と仕事とエネルギーの関係が、物理的に等価な内容を異なる視点から表現したものであることを確認できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「非一様な電場中でのエネルギー保存則」です。点電荷が作る、距離によって強さが変わる電場の中を運動する荷電粒子の速さを求める問題です。力が一定でないため運動方程式で解くのは困難であり、エネルギー保存則が極めて有効な解法となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー保存則: 働く力が保存力(この問題では静電気力)のみの場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれます。
  2. 点電荷が作る電位: 点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) 離れた点の電位は \(V = k\displaystyle\frac{Q}{r}\) で与えられます。
  3. 静電気力による位置エネルギー: 電荷 \(q\) の粒子が電位 \(V\) の点にいるとき、その静電気力による位置エネルギーは \(U=qV\) と表されます。したがって、点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) の点にいる電荷 \(q\) の位置エネルギーは \(U = q \left(k\displaystyle\frac{Q}{r}\right) = k\displaystyle\frac{Qq}{r}\) となります。
  4. 無限遠の電位: 特に指定がない限り、電位の基準は無限遠にとり、無限遠での電位は \(0 \, \text{V}\) とします。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 始点(距離 \(a\))と終点(距離 \(2a\) または無限遠)の2つの状態を設定します。
  2. 各状態における運動エネルギー(\(\frac{1}{2}mv^2\))と静電気力による位置エネルギー(\(k\frac{Qq}{r}\))をそれぞれ式で表します。
  3. 「始点の全エネルギー = 終点の全エネルギー」というエネルギー保存則の式を立て、未知の速さ(\(v\) または \(u\))について解きます。

速さ\(v\)の計算

この先は、会員限定コンテンツです

記事の続きを読んで、物理の「なぜ?」を解消しませんか?
会員登録をすると、全ての限定記事が読み放題になります。

PVアクセスランキング にほんブログ村