問題76 (東京医歯大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、弦の振動に関する様々な現象(定常波、弦を伝わる波の速さ、うなり)を組み合わせた総合問題です。弦の長さ、張力、線密度、そして音さの振動数といったパラメータが、どのように定常波の形成やうなりの発生に関わるかを理解することが求められます。
- 弦の線密度: \(\rho\)
- おもりの質量: \(m\) (初期状態、および(3)(4)の状態)
- 重力加速度: \(g\)
- 音さAの振動数: \(f\) (これを(1)で求める)
- うなりの回数: 毎秒 \(n\) 回
- 図の状況:
- 弦の左端は音さAに固定。
- 弦は水平で、右端は滑車を介しておもり(質量 \(m\))で張られている。
- (1)の状態では、弦長 \(l\) で腹が3つの定常波。
- 条件(1)における音さAの振動数 \(f\)。
- 条件(2)における追加のおもりの質量 \(M\) と元のおもりの質量 \(m\) の比。
- 条件(3)における音さBの振動数 \(f_B\)。
- 条件(4)において長くされた弦の長さ \(d\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
【注記】本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。
この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 弦を伝わる波の速さ: 張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) で決まる (\(v = \sqrt{S/\rho}\))。
- 定常波の条件: 弦の長さ \(L\) に対して、両端が節となる定常波ができるとき、波長 \(\lambda\) は \(L = k \cdot (\lambda/2)\) (ここで \(k\) は腹の数、または半波長の数) を満たします。
- 共振: 弦は特定の振動数(固有振動数)で振動しやすく、外部からその振動数で力を加えると大きく振動します。この問題では、音さの振動数が弦の固有振動数の一つと一致したときに定常波が生じると考えます。
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)。
- うなり: 振動数がわずかに異なる2つの音波が干渉し合うことで、音の強弱が周期的に変化する現象。うなりの振動数(1秒あたりのうなりの回数)は、2つの音の振動数の差の絶対値に等しい (\(n = |f_1 – f_2|\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各設問に対して、これらの法則を適切に適用し、数式を立てて解いていきます。
問(1)
思考の道筋とポイント
弦の長さ \(l\)、おもりの質量 \(m\)、線密度 \(\rho\) の条件で、腹が3個の定常波が生じたときの音さの振動数 \(f\) を求めます。
まず弦の張力を求め、それを使って弦を伝わる波の速さを計算します。次に、定常波の条件から波長を弦の長さで表し、最後に波の基本式 \(f=v/\lambda\) を使って振動数を求めます。
この設問における重要なポイント
- 弦の張力 \(S\) がおもりの重力 \(mg\) に等しいこと。
- 弦を伝わる波の速さの公式 \(v = \sqrt{S/\rho}\) を正しく適用すること。
- 腹が3個の定常波の場合、弦の長さ \(l\) が半波長 \(\lambda/2\) の3倍に等しい (\(l = 3 \cdot \frac{\lambda}{2}\)) という関係を理解すること。
- 音さの振動数が弦の固有振動数と一致して定常波(共振)が起きていること。
具体的な解説と立式
1. 弦の張力 \(S\):
おもりは質量 \(m\) なので、それにかかる重力は \(mg\) です。この重力と弦の張力 \(S\) がつり合っているため、立式すると次のようになります。
$$S = mg$$
2. 弦を伝わる波の速さ \(v\):
弦を伝わる波の速さ \(v\) は、張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて次のように表されます。
$$v = \sqrt{\frac{S}{\rho}}$$
ここに \(S=mg\) を代入すると、速さの式は以下のようになります。
$$v = \sqrt{\frac{mg}{\rho}}$$
3. 定常波の波長 \(\lambda\):
弦の長さ \(l\) で腹が3個の定常波が生じています。弦の両端は節とみなせるので、弦の長さは半波長の整数倍になります。腹が3個の場合、半波長の数は3です。したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$l = 3 \times \frac{\lambda}{2}$$
この式から波長 \(\lambda\) を求めると、
$$\lambda = \frac{2}{3}l$$
4. 音さの振動数 \(f\):
弦は音さの振動数 \(f\) で振動し、定常波が生じています。波の基本式 \(v = f\lambda\) より \(f = v/\lambda\) です。
先に求めた \(v\) と \(\lambda\) を代入して \(f\) を求める式を立てます。
$$f = \frac{v}{\lambda}$$
使用した物理公式
- 張力: \(S = mg\) (つり合いから)
- 弦を伝わる波の速さ: \(v = \sqrt{S/\rho}\)
- 定常波の条件 (腹が \(k\) 個): \(L = k \cdot (\lambda/2)\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、各物理量を代入して \(f\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{\sqrt{\frac{mg}{\rho}}}{\frac{2}{3}l} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2l}\sqrt{\frac{mg}{\rho}}
\end{aligned}
$$
- まず、弦がどれくらいの力で引っ張られているか(張力)を考えます。これはおもりの重さ \(mg\) です。
- 次に、弦を波が伝わる速さ \(v\) を計算します。速さは、張力が大きいほど速く、弦が重い(線密度 \(\rho\) が大きい)ほど遅くなります。公式は \(v = \sqrt{mg/\rho}\) です。
- 弦には腹が3つある波ができています。これは、弦の長さ \(l\) の中に、波の半分の長さ(半波長 \(\lambda/2\))が3つ入っている状態です。つまり \(l = 3 \times (\lambda/2)\)。ここから波長 \(\lambda\) は \(2l/3\) とわかります。
- 最後に、振動数 \(f\) は「速さ \(\div\) 波長」で求められます。\(f = v/\lambda\) に計算した \(v\) と \(\lambda\) を入れると、\(f = \frac{3}{2l}\sqrt{\frac{mg}{\rho}}\) となります。
音さAの振動数 \(f\) は \(\frac{3}{2l}\sqrt{\frac{mg}{\rho}}\) です。これは弦の固有振動数の一つであり、この振動数で音さが弦を強制的に振動させることで共振が起こり、大きな定常波が観測されたと考えられます。
問(2)
思考の道筋とポイント
おもりの下に質量 \(M\) のおもりを追加した結果、張力が増加し、波の速さが変わります。音さの振動数 \(f\) と弦の長さ \(l\) は変わらないまま、腹が2個の定常波ができました。この条件から \(M\) と \(m\) の関係を導きます。
この設問における重要なポイント
- 音さの振動数 \(f\) は (1) と同じであること(同じ音さを使用しているため)。
- 弦の長さ \(l\) も変わらないこと。
- 張力が \(S’ = (m+M)g\) に変化すること。
- 腹が2個の定常波の場合、弦の長さ \(l\) が半波長 \(\lambda’/2\) の2倍に等しい (\(l = 2 \cdot \frac{\lambda’}{2}\)) という関係を理解すること。
具体的な解説と立式
1. 新しい張力 \(S’\):
おもりの総質量は \(m+M\) となるため、弦の張力 \(S’\) は、
$$S’ = (m+M)g$$
2. 新しい波の速さ \(v’\):
新しい張力 \(S’\) を用いると、弦を伝わる波の速さ \(v’\) は、
$$v’ = \sqrt{\frac{S’}{\rho}} = \sqrt{\frac{(m+M)g}{\rho}}$$
3. 新しい定常波の波長 \(\lambda’\):
弦の長さ \(l\) は変わらず、腹が2個の定常波が生じているので、
$$l = 2 \times \frac{\lambda’}{2} = \lambda’$$
よって、新しい波長は \(\lambda’ = l\) です。
4. 振動数 \(f\) (新しい条件で):
音さの振動数 \(f\) は変わらないので、(1)で求めた \(f\) と同じです。この振動数 \(f\) は \(v’/\lambda’\) とも書けます。したがって、新しい条件での振動数を表す式は、
$$f = \frac{v’}{\lambda’}$$
使用した物理公式
- 張力: \(S’ = (m+M)g\)
- 弦を伝わる波の速さ: \(v’ = \sqrt{S’/\rho}\)
- 定常波の条件 (腹が \(k\) 個): \(L = k \cdot (\lambda/2)\)
- 波の基本式: \(f = v’/\lambda’\)
新しい条件での \(f\) は、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{\sqrt{\frac{(m+M)g}{\rho}}}{l} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{l}\sqrt{\frac{(m+M)g}{\rho}}
\end{aligned}
$$
(1)で求めた \(f = \frac{3}{2l}\sqrt{\frac{mg}{\rho}}\) と上記の式は等しいので、
$$\frac{3}{2l}\sqrt{\frac{mg}{\rho}} = \frac{1}{l}\sqrt{\frac{(m+M)g}{\rho}}$$
両辺の共通因子 \(\frac{1}{l}\sqrt{\frac{g}{\rho}}\) で割ると、
$$\frac{3}{2}\sqrt{m} = \sqrt{m+M}$$
両辺を2乗すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{9}{4}m &= m+M \\[2.0ex]
M &= \frac{9}{4}m – m \\[2.0ex]
&= \frac{5}{4}m
\end{aligned}
$$
したがって、\(M\) は \(m\) の \(\frac{5}{4}\) 倍です。
- おもりが \(m+M\) になったので、弦を引っ張る力(張力)が大きくなります。張力が変わると、弦を伝わる波の速さも変わります。
- 今度は腹が2つの波ができました。弦の長さ \(l\) は同じなので、波長が変わったことになります。腹2つのとき、波長はちょうど弦の長さ \(l\) と同じ (\(\lambda’ = l\)) になります。
- 音さAは同じものを使っているので、振動数 \(f\) は(1)のときと同じです。この振動数 \(f\) は、新しい速さ \(v’\) と新しい波長 \(\lambda’\) を使っても \(f=v’/\lambda’\) と表せます。
- (1)で求めた \(f\) の式と、この新しい条件での \(f\) の式が等しいとして方程式を立てます。
- その方程式を解くと、\(M\) が \(m\) の \(\frac{5}{4}\) 倍であることがわかります。
追加したおもりの質量 \(M\) は、元のおもりの質量 \(m\) の \(\frac{5}{4}\) 倍です。張力が増加し波の速さが増した結果、同じ弦長・同じ振動数でより波長の長い(腹の数が少ない)定常波が形成されたという物理的状況と整合します。
問(3)
思考の道筋とポイント
音さA (\(f\)) と振動数がわずかに異なる音さB (\(f_B\)) を用いると、うなりが毎秒 \(n\) 回聞こえました。この情報から \(f_B\) を \(f\) と \(n\) で表します。また、音さBで腹3個の定常波を作るには弦を長くする必要があったという条件から、\(f_B\) と \(f\) の大小関係を判断し、\(f_B = f+n\) か \(f_B = f-n\) かを決定します。
この設問における重要なポイント
- うなりの振動数 \(n\) は、2つの音の振動数の差の絶対値 (\(n = |f – f_B|\)) であること。
- 弦の張力は元の \(mg\) のままであり、弦を伝わる波の速さ \(v\) は(1)の最初の状態と同じであること。
- 同じ腹の数(3個)の定常波を作るのに弦の長さを長くした場合、波長が長くなるため、振動数は小さくなる (\(f = v/\lambda\)) という関係を理解すること。
具体的な解説と立式
音さAの振動数を \(f\)、音さBの振動数を \(f_B\) とします。
毎秒 \(n\) 回のうなりが聞こえたので、うなりの振動数の定義から、
$$|f – f_B| = n$$
これは、\(f_B\) が次のいずれかの値をとることを意味します。
$$f_B = f + n \quad \text{または} \quad f_B = f – n$$
次に、どちらが正しいかを判断します。
音さBを用いて腹が3個の定常波を作るとき、おもりは質量 \(m\) のみなので、弦を伝わる波の速さ \(v\) は音さAを用いた(1)の最初の状態と同じです。
このとき、弦の長さを元の \(l\) よりも少し長く \(l’ = l+d\) (\(d>0\)) とする必要がありました。
腹が3個の定常波の場合、波長 \(\lambda_B\) と弦の長さ \(l’\) の関係は \(l’ = \frac{3}{2}\lambda_B\)、つまり \(\lambda_B = \frac{2}{3}l’\) です。
したがって、音さBの振動数 \(f_B\) は、
$$f_B = \frac{v}{\lambda_B} = \frac{v}{\frac{2}{3}l’} = \frac{3v}{2l’}$$
音さAの振動数 \(f\) は、同じく腹3個で弦長 \(l\) のとき、
$$f = \frac{3v}{2l}$$
ここで、\(l’ > l\) なので、\(f_B < f\) となります。
よって、\(f_B = f-n\) が適切な解となります。
使用した物理公式
- うなりの振動数: \(n = |f_1 – f_2|\)
- 定常波の基本式: \(f = v/\lambda\), \(L = k \cdot (\lambda/2)\)
(論理的な考察によるため、計算は不要)
- うなりが毎秒 \(n\) 回聞こえるということは、音さAの振動数 \(f\) と音さBの振動数 \(f_B\) の差が \(n\) であるということです。つまり、\(f_B\) は \(f+n\) か \(f-n\) のどちらかです。
- 音さBを使うとき、弦を長くしないと腹3つの定常波ができなかった、という情報がヒントです。弦を引っ張る力(おもりの重さ)は同じなので、波の速さ \(v\) は変わりません。
- 波の振動数は「速さ \(\div\) 波長」です。腹3つの定常波では、波長は「弦の長さ \(\times 2/3\)」です。
- 弦を長くすると波長も長くなります。速さが一定なので、波長が長くなると振動数は小さくなります。
- つまり、音さBの振動数 \(f_B\) は、音さAの振動数 \(f\) よりも小さいはずです。
- したがって、\(f_B = f-n\) が正しいとわかります。
音さBの振動数は \(f-n\) です。弦を長くする必要があったという条件から、振動数が小さくなったと判断するのがポイントです。
問(4)
思考の道筋とポイント
音さB(振動数 \(f-n\))を用いて、弦の長さを \(l+d\) としたときに腹3個の定常波ができた、という条件から、長くした長さ \(d\) を求めます。弦を伝わる波の速さ \(v\) は(1)の最初の状態と同じです。
この設問における重要なポイント
- 音さBの振動数が \(f-n\) であること。
- 弦の長さを \(l+d\) としたときに腹3個の定常波ができる条件式を立てること。
- 音さAの場合の振動数 \(f\) と弦の長さ \(l\) の関係式 \(f = \frac{3v}{2l}\) を利用すること。
具体的な解説と立式
音さBの振動数は \(f_B = f-n\) です。
この音さで、弦の長さが \(l’ = l+d\) のときに腹が3個の定常波が生じました。
弦を伝わる波の速さは \(v\) です。
腹が3個の定常波のとき、弦の長さ \(l’\) と波長 \(\lambda_B\) の関係は \(l’ = \frac{3}{2}\lambda_B\) なので、\(\lambda_B = \frac{2}{3}l’\) です。
したがって、振動数 \(f_B\) は、
$$f_B = \frac{v}{\lambda_B} = \frac{v}{\frac{2}{3}l’} = \frac{3v}{2l’}$$
ここに \(f_B = f-n\) と \(l’ = l+d\) を代入すると、次の関係式が得られます。
$$f-n = \frac{3v}{2(l+d)}$$
この式を \(d\) について解くことが目標です。
使用した物理公式
- 定常波の基本式: \(f’ = v/\lambda’\), \(L’ = k \cdot (\lambda’/2)\)
- (1)で求めた \(f\) と \(v, l\) の関係: \(f = \frac{3v}{2l}\)
関係式 \(f-n = \frac{3v}{2(l+d)}\) を変形していきます。
$$
\begin{aligned}
l+d &= \frac{3v}{2(f-n)} \\[2.0ex]
d &= \frac{3v}{2(f-n)} – l
\end{aligned}
$$
ここで、\(f = \frac{3v}{2l}\) の関係を使います。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{3v}{2(\frac{3v}{2l}-n)} – l \\[2.0ex]
&= \frac{3v}{\frac{3v}{l}-2n} – l \\[2.0ex]
&= \frac{3vl}{3v-2nl} – l \\[2.0ex]
&= \frac{3vl – l(3v-2nl)}{3v-2nl} \\[2.0ex]
&= \frac{3vl – 3vl + 2nl^2}{3v-2nl} \\[2.0ex]
&= \frac{2nl^2}{3v-2nl}
\end{aligned}
$$
- 音さBの振動数は \(f-n\) でした。この音さで腹3つの定常波ができたとき、弦の長さは \(l+d\) になっています。このときの波長は \(\lambda_B = \frac{2(l+d)}{3}\) です。
- 波の速さ \(v\) は変わらないので、\(f-n = v / \lambda_B = v / \frac{2(l+d)}{3} = \frac{3v}{2(l+d)}\) という関係が成り立ちます。
- この式を \(d\) について解けばよいのですが、答えは \(v, l, n\) を使って表すようになっています。(1)で求めた \(f = \frac{3v}{2l}\) の関係も使いながら式を変形していきます。
- 計算すると、\(d = \frac{2nl^2}{3v-2nl}\) となります。
弦の長さは \(\frac{2nl^2}{3v-2nl}\) だけ長くされたことが分かります。\(n>0\) であり、また音さBの振動数がAより小さい(\(f-n < f\))ので弦長を長くする必要があったこと、そのためには \(3v-2nl > 0\) (つまり \(f-n > 0\)) である必要があることなど、物理的な条件とも整合します。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 弦を伝わる波の速さ:
- 核心: 弦を伝わる波の速さ \(v\) は、弦の物理的な性質である「張力 \(S\)」と「線密度 \(\rho\)」だけで決まるという法則(\(v = \sqrt{S/\rho}\))が、この問題全体の基礎となっています。おもりの質量を変える操作が、張力を変え、速さを変えるという因果関係を理解することが重要です。
- 理解のポイント:
- 張力 \(S\): 弦を引っ張る力です。この問題ではおもりの重さ(\(mg\)や\((m+M)g\))に等しくなります。
- 線密度 \(\rho\): 弦の「太さ」や「重さ」を表す量で、1mあたりの質量です。
- 関係: 弦は、強く張るほど(\(S\)大)、また軽いほど(\(\rho\)小)、波は速く伝わります。
- 定常波(共振)の条件:
- 核心: 弦が音さによって振動させられるとき、弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) が特定の関係(両端が節の場合 \(L = k \cdot \lambda/2\), \(k\)は腹の数)を満たすと、「共振」が起こり、はっきりとした定常波が観測されます。音さの振動数 \(f\) は、この共振条件を満たす弦の固有振動数と一致します。
- 理解のポイント:
- 境界条件: 弦の両端は固定されている(またはそれに近い)ため、「節」となります。
- 基本振動: 最も単純な定常波は、腹が1つの形です。このとき \(L=\lambda/2\)。
- 倍振動: 腹が \(k\) 個の定常波は \(k\) 倍振動と呼ばれ、\(L=k \cdot \lambda/2\) の関係が成り立ちます。
- うなりの原理:
- 核心: 振動数がわずかに異なる2つの音を同時に聞くと、音の強さが周期的に「ワーン、ワーン」と変化します。この1秒あたりのうなりの回数 \(n\) は、2つの音の振動数の差の絶対値 \(|f_1 – f_2|\) に等しいという、単純明快な法則です。
- 理解のポイント:
- 振動数の差: うなりの回数は、2つの振動数がどれだけ「近いか」で決まります。差が小さいほど、うなりはゆっくりになります。
- 大小関係: うなりの回数だけでは、どちらの振動数が大きいかは分かりません(例: \(|100-102|=2\), \(|100-98|=2\))。そのため、本問のように別の物理的条件から大小関係を判断する必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 開管や閉管の気柱の共鳴: 弦の振動と同様に、管の長さと音速によって決まる固有振動数と、外部から加える音の振動数が一致すると共鳴が起こります。境界条件(開口端が腹、閉口端が節)の違いを理解すれば、同じ考え方で解けます。
- ドップラー効果とうなり: 救急車が通り過ぎる際に聞こえる音の高さの変化(ドップラー効果)と、2台の救急車が近づいてくるときに聞こえるうなりを組み合わせた問題など、複数の波動現象を統合して考える問題に応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 何が変化し、何が一定かを見抜く: 問題の各段階で、弦の長さ(\(l\))、張力(\(S\))、音さの振動数(\(f\))のうち、どの物理量が変化し、どれが一定に保たれているかを正確に把握することが、立式の第一歩です。
- 定常波の「腹の数」に注目する: 「腹がk個」という情報は、弦の長さと波長を結びつけるための最も重要な鍵です(\(L = k \cdot \lambda/2\))。
- 「うなり」という言葉から振動数の差を連想する: 「うなりが聞こえた」という記述があれば、即座に \(n = |f_1 – f_2|\) の式を立て、\(f_2 = f_1 \pm n\) の2つの可能性を検討する準備をします。
- 大小関係を絞り込むヒントを探す: \(f_1+n\) か \(f_1-n\) かを決定するために、「弦を長くした」「おもりを重くした」といった物理的な操作が、振動数にどのような影響(増加か減少か)を与えるかを、基本法則(\(f=v/\lambda\), \(v=\sqrt{S/\rho}\)など)に立ち返って考察します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 張力と質量の混同:
- 誤解: 波の速さの公式に、張力 \(S\) の代わりに質量 \(m\) をそのまま代入してしまう。
- 対策: 張力は力[N]、質量は[kg]であることを常に意識し、\(S=mg\) の関係を忘れないようにする。
- 定常波の波長と弦の長さの関係の誤り:
- 誤解: 腹が \(k\) 個のとき、\(l = k \lambda\) と間違えてしまう。
- 対策: 定常波の図を必ず描く癖をつける。腹1つ分が半波長(\(\lambda/2\))であることを視覚的に確認し、\(l = k \times (\lambda/2)\) の関係を導き出す。
- うなりの振動数の大小判断ミス:
- 誤解: 「弦を長くした」→「振動数が大きくなる」のように、物理的な因果関係を逆に覚えてしまっている。
- 対策: \(f=v/\lambda\) の関係を思い出す。「弦を長くする」\(\rightarrow\)「波長\(\lambda\)が長くなる」\(\rightarrow\)「速さ\(v\)が一定なら、分母が大きくなるので振動数\(f\)は小さくなる」というように、一つ一つのステップを論理的に追う。
- 複雑な文字式の計算ミス:
- 誤解: 問(4)のような分数や平方根が絡む式の変形で、移項や通分を焦って間違える。
- 対策: 複数の物理法則の式を連立させる場合、どの文字を消去して、どの文字で表すのかというゴールを明確にしてから計算を始める。途中式を省略せず、丁寧に書く。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = \sqrt{S/\rho}\):
- 選定理由: 弦の物理的特性(張力、線密度)と、波の伝播速度を結びつける唯一の法則だから。おもりの質量が変化するこの問題では必須です。
- 適用根拠: 弦の復元力と慣性(質量)から導かれる、弦の振動の基本法則です。
- \(L = k(\lambda/2)\):
- 選定理由: 「定常波」が「弦の上」に形成されるという、空間的な制約条件を数式化するため。
- 適用根拠: 両端が固定されている(あるいは節とみなせる)という境界条件によって、許される波長が制限されるという物理現象を表しています。
- \(f=v/\lambda\):
- 選定理由: 波の運動学的な性質(速さ)と、時空間的な周期性(振動数と波長)を結びつける、最も普遍的な関係式だから。
- 適用根拠: 波が1周期(\(T=1/f\))の間に1波長(\(\lambda\))進むという、波の定義そのものです。
- \(n = |f_A – f_B|\):
- 選定理由: 「うなり」という現象が問題文に登場したため。
- 適用根拠: これは、波の重ね合わせの原理から導かれる、音の強弱の周期性を記述する公式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 平方根の扱い:
- 特に注意すべき点: 問(2)のように、平方根を含む式を等しいとおいて解く場合、両辺を2乗する操作が必要です。このとき、係数も忘れずに2乗すること。(例: \((\frac{3}{2}\sqrt{m})^2 = \frac{9}{4}m\))
- 日頃の練習: 平方根を含む方程式を解く練習を繰り返し、機械的に処理できるようにする。
- 分数の計算:
- 特に注意すべき点: 問(4)のように、分数の中にさらに分数が含まれるような繁分数の計算や、通分が必要な計算ではミスが起こりやすい。
- 日頃の練習: 途中式を省略せず、一つ一つのステップを丁寧に書く。特に、分母を払う操作や通分の過程を明確に記述する。
- 代入のタイミング:
- 特に注意すべき点: 問(4)で、\(f\) をすぐに \(v\) と \(l\) の式で置き換えるなど、どのタイミングでどの式を代入するかが計算の効率と正確さを左右します。
- 日頃の練習: 複数の解法(例えば、先に \(d\) について解いてから代入する方法と、途中で代入する方法)を試してみて、自分にとって最もミスが少なく、見通しが良い方法を見つける。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (2) \(M\) の値: \(M = \frac{5}{4}m\) は正の値であり、おもりを追加したという状況と矛盾しません。おもりを重く(張力を大きく)すると、速さが増し、波長が長くなる(腹の数が減る)という物理的直感とも一致します。
- (3) \(f_B\) の振動数: 弦を長くして同じモード(腹3つ)の定常波を作るには、波長を長くする必要があるため、振動数は低くなるはずです。\(f_B = f-n\) はこの考察と一致します。
- (4) \(d\) の値: \(d = \frac{2nl^2}{3v-2nl}\) という結果について、うなりの回数 \(n\) が \(0\) に近づけば、\(d\) も \(0\) に近づくはずです(音さAと同じなら弦長を変える必要はない)。式はこれを満たしています。また、分母の \(3v-2nl = 2l(f-n)\) は、音さBの振動数が正である限り正の値をとるため、\(d\) も正の値となり、「弦を長くした」という条件と矛盾しません。
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- もし(2)で腹が1個の定常波ができたとしたら、\(\lambda’=2l\) となり、さらに大きな質量 \(M\) が必要になるはずです。実際に計算してみると、\((\frac{3}{2}\sqrt{m})^2 = (\frac{1}{2}\sqrt{m+M})^2\) となり、\(9m = m+M\)、\(M=8m\) となり、予想と一致します。
- もし(3)で音さBの振動数が非常に小さく、\(f-n\) が \(0\) に近づくと、(4)の \(d\) は無限大に発散します。これは、振動数が \(0\) の波(振動しない)で定常波を作るには無限の長さの弦が必要、という直感と一致します。
問題77 (信州大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、気柱の共鳴に関するものです。ピストンの位置を変えることによる閉管の共鳴条件の変化、そしてピストンを取り外した後の開管としての共鳴について理解を深めることができます。特に、与えられた条件から波長や振動数を求め、定常波の様子を正しく把握することが重要です。
- ガラス管ABがあり、内部にピストンPを挿入・移動できる。
- 音源はおんさで、開口部Aの近くで振動させる。
- 音速: \(V = 340 \, \text{m/s}\)
- 開口端補正は無視できる: これは、ガラス管の開いている端(開口部A、またはピストンを取り外した後のB端)が、定常波の「腹」になることを意味します。
- ピストンPの位置は、定常波の「節」になります(空気が振動できないため)。
- 最初の共鳴が起こったときのピストンの位置(Aからの距離 \(20.0 \, \text{cm}\))から、おんさの振動数 \(f\) を求める。
- ピストンをさらに移動させたときに起こる次の共鳴の位置(Aからの距離)を求める。
- ピストンをB端まで移動させても共鳴せず、ピストンを取り外すと共鳴した場合のガラス管全体の長さ \(L\) と、そのときの管内の定常波の様子を求める。
- ピストンを取り外した状態(開管)で、(1)のおんさより振動数の小さい別のおんさで共鳴を起こすときの、その振動数 \(f’\) を求める。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2) 次の共鳴位置の別解: 3倍振動の公式を用いる解法
- 主たる解法が、共鳴点(節)が半波長ごとに現れるという性質を利用するのに対し、別解では閉管の振動モードが基本振動、3倍振動、5倍振動…となることに着目し、次の共鳴が3倍振動であるとして公式から直接計算します。
- 問(4) 新しい振動数の別解: 固有振動数の関係を用いる解法
- 主たる解法が、開管の基本振動の条件から波長を求め、波の基本式を使って振動数を計算するのに対し、別解では問(3)の共鳴が開管の2倍振動、問(4)の共鳴が基本振動であることに着目し、固有振動数の整数比の関係(\(f_{\text{2倍}} = 2 \times f_{\text{基本}}\))から直接計算します。
- 問(2) 次の共鳴位置の別解: 3倍振動の公式を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 「定常波の次数」や「固有振動数の整数比」といった、より抽象化された物理モデルの理解が深まります。
- 計算の効率化: 特に問(4)の別解は、問(3)の状況を物理的に正しく捉えられていれば、波長の再計算を省略でき、より迅速かつスマートに解くことができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、「気柱の共鳴」というテーマに関するものです。気柱の共鳴とは、管の中の空気柱が特定の振動数の音波と共鳴し、管内に「定常波」と呼ばれる特徴的な波ができる現象です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定常波: 同じ速さ、同じ波長(振動数)、同じ振幅を持つ2つの波が互いに逆向きに進んで重なり合うとできる、波形が空間的に移動せずその場で振動しているように見える波のことです。
- 腹(はら): 定常波において、媒質の振動の振幅が最大になる位置。開口端は腹になります。
- 節(ふし): 定常波において、媒質が全く振動しない位置。閉じた端(ピストン面)は節になります。
- 気柱の共鳴条件:
- 閉管(一端が閉じ、他端が開いている管): 開口端が腹、閉端が節となります。管の長さを \(l\)、音波の波長を \(\lambda\) とすると、共鳴条件は \(l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) (ここで \(n=1, 2, 3, \dots\))と表されます。腹と節の間隔は \(\lambda/4\) です。
- 開管(両端が開いている管): 両端とも腹となります。管の長さを \(L\)、音波の波長を \(\lambda\) とすると、共鳴条件は \(L = n\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) (ここで \(n=1, 2, 3, \dots\))と表されます。腹と腹の間隔、節と節の間隔は \(\lambda/2\) です。
- 波の基本式: 音速を \(V\)、振動数を \(f\)、波長を \(\lambda\) とすると、これらの間には \(V = f\lambda\) という関係があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず各設問の状況(管の開閉状態、ピストンの位置)を正確に把握します。
- 次に、共鳴条件から管の長さと波長の関係式を立て、波の基本式 \(V=f\lambda\) を用いて未知の量を求めます。
- 最後に定常波の様子を腹と節の位置関係に注意して図示します。
問(1)
思考の道筋とポイント
ピストンPが挿入されているので、このときのガラス管は一端(A)が開き、他端(P)が閉じている「閉管」と見なせます。「最初の共鳴」とは、最も単純な形の定常波ができるとき、つまり「基本振動」の状態を指します。閉管の基本振動では、開口端Aが腹、ピストンPの位置が節となり、その間の距離(管長)が波長の \(1/4\) に相当します。
この設問における重要なポイント
- 「最初の共鳴」が基本振動であることを理解する。
- ピストンがある状態は「閉管」として扱う。
- 閉管の基本振動では、管の長さが \(\lambda/4\) になることを適用する。
具体的な解説と立式
開口部Aが定常波の腹、ピストンPの位置が節となります。Aからの距離が \(20.0 \, \text{cm}\) のところで最初の共鳴が起こったので、このときの有効な管の長さ \(l_1 = 20.0 \, \text{cm}\) です。
閉管の基本振動では、管の長さと波長 \(\lambda\) の関係は次のように表されます。
$$l_1 = \frac{1}{4}\lambda$$
この式から波長 \(\lambda\) を求め、次に波の基本式 \(V = f\lambda\) を使って振動数 \(f\) を計算します。
使用した物理公式
- 閉管の基本振動: \(l = \displaystyle\frac{1}{4}\lambda\)
- 波の基本式: \(V = f\lambda\)
まず、与えられた長さをメートルに変換します。
\(l_1 = 20.0 \, \text{cm} = 0.200 \, \text{m}\)
- 波長 \(\lambda\) の計算:
\(l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) より、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 4 \times l_1 \\[2.0ex]
&= 4 \times 0.200 \, \text{m} \\[2.0ex]
&= 0.800 \, \text{m}
\end{aligned}
$$ - 振動数 \(f\) の計算:
波の基本式 \(V = f\lambda\) より \(f = \displaystyle\frac{V}{\lambda}\)。
音速 \(V = 340 \, \text{m/s}\)、求めた波長 \(\lambda = 0.800 \, \text{m}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{340 \, \text{m/s}}{0.800 \, \text{m}} \\[2.0ex]
&= 425 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
最初の共鳴が起こるということは、管の中で最もシンプルな定常波ができている状態です。管の開いているA端では空気が激しく振動し(腹)、ピストンのP端では空気は振動できません(節)。この「腹」から「節」までの最も短い距離は、実は音の波の長さ(波長)の \(1/4\) にあたります。
問題ではこの距離が \(20.0 \, \text{cm}\) だと与えられているので、波長全体はその4倍、つまり \(4 \times 20.0 \, \text{cm} = 80.0 \, \text{cm}\) (\(0.800 \, \text{m}\)) だとわかります。
音の速さは \(340 \, \text{m/s}\) と決まっているので、「速さ = 振動数 × 波長」という関係式を使って、振動数 \(f = \text{速さ} / \text{波長} = 340 / 0.800 = 425 \, \text{Hz}\) と計算できます。
おんさの振動数 \(f\) は \(425 \, \text{Hz}\) です。これは一般的な音の高さの範囲であり、物理的に妥当な値です。計算過程での単位も、\([\text{m/s}] / [\text{m}] = [1/\text{s}] = [\text{Hz}]\) となり、振動数の単位として正しいことが確認できます。
問(2)
思考の道筋とポイント
ピストンPを(1)の位置からさらに右(Bの方向)へゆっくり移動させると、管の有効長が長くなります。同じおんさ(振動数 \(f\) は一定、したがって波長 \(\lambda\) も一定)を使っているので、次に共鳴が起こります。共鳴点(ピストンの位置、つまり節の位置)は、半波長 (\(\lambda/2\)) ごとに現れます。
この設問における重要なポイント
- 同じ音源なので、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) は問1と同じ値を使う。
- 節と節の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用して、最初の共鳴位置から \(\lambda/2\) だけ離れた位置を求める。
具体的な解説と立式
おんさの振動数 \(f\) および波長 \(\lambda\) は問1で求めた値のままです (\(\lambda = 80.0 \, \text{cm}\))。
最初の共鳴位置 \(l_1\) (節) から次の共鳴位置 \(l_2\) (節) までの距離は \(\lambda/2\) なので、
$$l_2 = l_1 + \frac{\lambda}{2}$$
として求めることができます。
使用した物理公式
- 節点間の距離: \(\Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
波長 \(\lambda = 80.0 \, \text{cm}\)。最初の共鳴位置 \(l_1 = 20.0 \, \text{cm}\)。
半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2} = \frac{80.0 \, \text{cm}}{2} = 40.0 \, \text{cm}\)。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= 20.0 \, \text{cm} + 40.0 \, \text{cm} \\[2.0ex]
&= 60.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
ピストンを(1)の位置からさらに右に動かしていくと、管が長くなっていきます。同じおんさを使っているので音の波長は \(80.0 \, \text{cm}\) のままです。
共鳴が起こるピストンの位置(節)は、半波長 (\(\lambda/2\)) ごとに現れます。(1)のピストンの位置が最初の節だったので、次の節はそこから半波長 (\(80.0/2 = 40.0 \, \text{cm}\)) だけ離れたところです。なので、\(20.0 \, \text{cm} + 40.0 \, \text{cm} = 60.0 \, \text{cm}\) が次の共鳴点となります。
次の共鳴が起こる位置は、Aから \(60.0 \, \text{cm}\) のところです。この値は \(l_1 = 20.0 \, \text{cm}\) よりも大きく、物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
閉管では、基本振動 (\(\lambda/4\)) の次は3倍振動 (\(3\lambda/4\))、その次は5倍振動 (\(5\lambda/4\)) … というように、管長が \(\lambda/4\) の奇数倍のときに共鳴が起こります。最初の共鳴が基本振動だったので、次の共鳴は3倍振動です。
この設問における重要なポイント
- 閉管の共鳴で、「次の共鳴」は3倍振動にあたることを理解する。管長は \(3\lambda/4\)。
具体的な解説と立式
次に共鳴が起こるのは、閉管の3倍振動のときです。このときのAからの距離を \(l_2\) とすると、
$$l_2 = \frac{3}{4}\lambda$$
使用した物理公式
- 閉管の3倍振動: \(l = \displaystyle\frac{3}{4}\lambda\)
波長 \(\lambda = 80.0 \, \text{cm}\)。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{3}{4} \times 80.0 \, \text{cm} \\[2.0ex]
&= 3 \times 20.0 \, \text{cm} \\[2.0ex]
&= 60.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
閉管が共鳴する管の長さは、\(\lambda/4\), \(3\lambda/4\), \(5\lambda/4\), … となります。最初の共鳴が \(l_1 = \lambda/4 = 20.0 \, \text{cm}\) だったので、次の共鳴は \(l_2 = 3\lambda/4\) のときです。これは \(3 \times (\lambda/4) = 3 \times 20.0 = 60.0 \, \text{cm}\) と計算できます。
主たる解法と同じ結果が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
「Pをさらに右に移動したところBの位置までずっと共鳴は起こらなかった」という記述は、(2)の共鳴位置(\(60.0 \, \text{cm}\))から管の端Bまでの間に、閉管としての次の共鳴点(\(5\lambda/4 = 100.0 \, \text{cm}\))は存在しないことを意味します。
そして、「Pをガラス管から取り外したところちょうど共鳴が起こった」とあります。ピストンを取り外すと、管は両端AとBが開いた「開管」になります。この開管の長さ \(L\) が、同じおんさ(同じ波長 \(\lambda\))で共鳴する条件を満たしたということです。
この設問における重要なポイント
- ピストンを取り外すと「開管」になることを理解する。
- 同じ音源なので、波長 \(\lambda\) は変わらない。
- 開管の共鳴条件 \(L = n\lambda/2\) を適用する。
- 「Bの位置までずっと共鳴は起こらなかった」という条件から、可能な \(n\) の値を絞り込む。
- 定常波の様子(腹と節の位置)を正しく図示する。
具体的な解説と立式
おんさの振動数 \(f=425 \, \text{Hz}\)、波長 \(\lambda=80.0 \, \text{cm}\) は変わりません。
ピストンPを取り外すと、ガラス管ABは全長 \(L\) の開管となります。両端AとBが腹になります。
開管での共鳴条件は \(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)、ここで \(n\) は自然数です。
波長 \(\lambda = 80.0 \, \text{cm}\) なので、\(\lambda/2 = 40.0 \, \text{cm}\)。
よって、開管として共鳴しうる管の長さは \(L = n \times 40.0 \, \text{cm}\) です。
(2)の共鳴長は \(l_2 = 60.0 \, \text{cm}\) でした。これより管長 \(L\) は長いと考えられます。
また、ピストンを用いた場合の次の共鳴長は \(l_3 = 5\lambda/4 = 100.0 \, \text{cm}\) です。
問題文の条件から、管の全長 \(L\) は \(100.0 \, \text{cm}\) 未満です。
つまり、\(60.0 \, \text{cm} < L < 100.0 \, \text{cm}\) の範囲で、\(L = n \times 40.0 \, \text{cm}\) を満たす \(L\) を探します。
使用した物理公式
- 開管の共鳴条件: \(L = n\displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
条件 \(60.0 < L < 100.0\) に \(L = n \times 40.0\) を代入すると、
$$60.0 < n \times 40.0 < 100.0$$
各辺を \(40.0\) で割ると、
$$1.5 < n < 2.5$$
この範囲にある自然数 \(n\) は \(n=2\) のみです。
したがって、ガラス管の長さ \(L\) は、
$$
\begin{aligned}
L &= 2 \times \frac{\lambda}{2} \\[2.0ex]
&= \lambda \\[2.0ex]
&= 80.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
ピストンを取り外すと、管の両端AとBが開いた「開管」になります。この管の長さが \(L\) です。使っているおんさは同じなので、音の波長は \(80.0 \, \text{cm}\) のままです。
開管が共鳴するとき、管の長さ \(L\) は、半波長 (\(80.0/2 = 40.0 \, \text{cm}\)) の整数倍 (\(1倍, 2倍, 3倍, \dots\)) になります。つまり \(L\) は \(40.0 \, \text{cm}, 80.0 \, \text{cm}, 120.0 \, \text{cm}, \dots\) のどれかです。
(2)のとき、ピストンを使った共鳴では管の長さは \(60.0 \, \text{cm}\) でした。ピストンをBまで動かしても共鳴しなかったということは、管の全長 \(L\) は \(60.0 \, \text{cm}\) よりは長く、でもピストンを使った場合の次の共鳴点である \(100.0 \, \text{cm}\) よりは短いはずです。
この \(60.0 \, \text{cm} < L < 100.0 \, \text{cm}\) の範囲で、\(40.0 \, \text{cm}\) の整数倍になるのは \(L = 80.0 \, \text{cm}\) ( \(40.0 \times 2\) ) だけです。
なので、ガラス管の長さは \(80.0 \, \text{cm}\) です。
ガラス管の長さ \(L\) は \(80.0 \, \text{cm}\) です。このとき、\(L=\lambda\) であり、開管の2倍振動が起こっています。定常波は両端が腹、中央に節が1つの形です。
問(4)
思考の道筋とポイント
「Pを取り外したまま」なので、管は(3)で求めた長さ \(L = 80.0 \, \text{cm}\) の開管です。「振動数のより小さなおんさを用い、共鳴を起こしたい」とあります。音速 \(V\) は一定なので、振動数 \(f’\) が小さくなるということは、波の基本式 \(V=f’\lambda’\) から、新しい波長 \(\lambda’\) は長くなることを意味します。
開管で共鳴が起こる中で、振動数が最も小さい(つまり波長が最も長い)のは「基本振動」のときです。
この設問における重要なポイント
- 管は(3)と同じ長さ \(L\) の開管である。
- 「振動数のより小さい」共鳴は、基本振動を指すと解釈する。
- 開管の基本振動では、\(L = \lambda’/2\) となることを適用する。
具体的な解説と立式
管は長さ \(L = 80.0 \, \text{cm} = 0.800 \, \text{m}\) の開管のままです。
新しいおんさの振動数を \(f’\)、そのときの音の波長を \(\lambda’\) とします。
開管で起こる共鳴のうち、振動数が最も小さいのは基本振動です。このとき、管長 \(L\) と新しい波長 \(\lambda’\) の関係は、
$$L = \frac{1}{2}\lambda’$$
この関係から新しい波長 \(\lambda’\) を求め、次に波の基本式 \(V = f’\lambda’\) を使って新しい振動数 \(f’\) を計算します。
使用した物理公式
- 開管の基本振動: \(L = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda’\)
- 波の基本式: \(V = f’\lambda’\)
管長 \(L = 0.800 \, \text{m}\)。音速 \(V = 340 \, \text{m/s}\)。
- 新しい波長 \(\lambda’\) の計算:
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= 2L \\[2.0ex]
&= 2 \times 0.800 \, \text{m} \\[2.0ex]
&= 1.60 \, \text{m}
\end{aligned}
$$ - 新しい振動数 \(f’\) の計算:
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{V}{\lambda’} \\[2.0ex]
&= \frac{340 \, \text{m/s}}{1.60 \, \text{m}} \\[2.0ex]
&= 212.5 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると \(213 \, \text{Hz}\) とするのが適切です。
管の長さは \(80.0 \, \text{cm}\) (\(0.800 \, \text{m}\)) の開管のままです。今度は、できるだけ低い音(振動数が小さい音)で共鳴させたいので、最もシンプルな振動である「基本振動」を考えます。
開管の基本振動では、管の長さは新しい波長のちょうど半分になります。つまり、新しい波長 \(\lambda’\) は管の長さの2倍、\(2 \times 80.0 \, \text{cm} = 160 \, \text{cm} = 1.60 \, \text{m}\) です。
音の速さは変わらず \(340 \, \text{m/s}\) なので、「速さ = 振動数 × 波長」の関係式から、新しい振動数 \(f’ = \text{速さ} / \text{波長} = 340 / 1.60 = 212.5 \, \text{Hz}\) となります。
求める振動数 \(f’\) は \(212.5 \, \text{Hz}\) です。これは(1)で求めた振動数 \(f = 425 \, \text{Hz}\) よりも小さく、問題の条件「振動数のより小さなおんさ」と一致しています。
思考の道筋とポイント
(3)の共鳴は開管 \(L\) での2倍振動 (\(n=2\)) であり、その振動数は \(f\) でした。(4)の共鳴は同じ開管 \(L\) での基本振動 (\(n=1\)) であり、その振動数は \(f’\) です。開管の固有振動数は基本振動数の整数倍になるため、\(f = 2f’\) の関係が成り立ちます。
この設問における重要なポイント
- 開管の固有振動数は基本振動数の整数倍 (\(f_n = n f_1\)) であること。
具体的な解説と立式
(3)の共鳴は \(n=2\) の2倍振動なので、その振動数 \(f\) は基本振動数 \(f_1\) の2倍です。
$$f = 2f_1$$
(4)で求める振動数 \(f’\) は、最も振動数が小さい共鳴なので、基本振動数 \(f_1\) そのものです。
$$f’ = f_1$$
したがって、
$$f = 2f’$$
この式から \(f’\) を求めます。
使用した物理公式
- 開管の固有振動数: \(f_n = n f_1\)
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{f}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{425}{2} \\[2.0ex]
&= 212.5 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
(3)で起こった共鳴は、開管で2番目に低い音(2倍振動)で、その振動数は \(f=425 \, \text{Hz}\) でした。開管が出せる音は、一番低い音(基本振動)の整数倍(1倍, 2倍, 3倍…)の高さになります。
(4)で求めたいのは、一番低い音(基本振動)の振動数 \(f’\) です。
(3)の音は(4)の音のちょうど2倍の高さになっているはずなので、\(f’ = f \div 2 = 425 \div 2 = 212.5 \, \text{Hz}\) と計算できます。
主たる解法と完全に一致しました。固有振動数の関係を理解していれば、非常に簡潔に計算できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 気柱の共鳴と定常波の形成:
- 核心: この問題全体を通して最も重要なのは、管という限られた空間で音波が干渉し合い、特定の条件下で定常波が形成される「共鳴」という現象の理解です。
- 理解のポイント:
- 定常波の「腹」(振幅最大)と「節」(振幅ゼロ)の位置が、管の端の状態(開口端か閉端か)によって決まることを把握することが出発点です。
- 開口端補正を無視する場合、開口端は必ず腹、閉端(ピストン面)は必ず節となります。
- 閉管と開管の共鳴条件の違い:
- 核心: 管の境界条件によって、形成される定常波の波長と管の長さの関係式が異なります。この違いを正確に使い分けることが、各設問を正しく解くための鍵です。
- 理解のポイント:
- 閉管 (問1, 2): 一端が腹、他端が節。管長 \(l\) は \(\lambda/4\) の奇数倍 (\(l = (2n-1)\lambda/4\))。基本振動は \(l=\lambda/4\)。
- 開管 (問3, 4): 両端とも腹。管長 \(L\) は \(\lambda/2\) の整数倍 (\(L = n\lambda/2\))。基本振動は \(L=\lambda/2\)。
- 波の基本式 \(V = f\lambda\):
- 核心: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) という音波の基本的な物理量を関連付ける式であり、共鳴条件と組み合わせて未知数を求めるために不可欠です。
- 理解のポイント:
- 同じ音源(おんさ)を使い続ける場合は \(f\) (したがって \(\lambda\) も) が一定です。
- 音速 \(V\) は媒質(空気)の状態で決まる一定値として扱います。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 開口端補正の導入: より現実的な問題では、開口端の腹の位置が管口からわずかに外側にずれる「開口端補正 \(\Delta x\)」が考慮されます。この場合、有効な管長は閉管なら \(l+\Delta x\)、開管なら \(L+2\Delta x\) のように補正されます。
- 異なる未知数: 例えば、管長と共鳴振動数が与えられて音速を求める問題や、複数の共鳴のデータから波長と開口端補正を同時に求める問題などがあります。
- うなりとの組み合わせ: 2つのおんさを同時に鳴らし、一方の振動数を気柱の共鳴から特定し、うなりの情報と合わせて他方の振動数を求める、といった複合問題も考えられます。
- 初見の問題での着眼点:
- 管の端の状態は?: 「開口」「閉鎖(ピストンなど)」「両端開口」「両端閉鎖(通常は扱わないが)」など、管のどの部分が腹になり、どの部分が節になるのかをまず特定します。
- 何回目の共鳴か?: 「最初の共鳴」「次の共鳴」「\(n\) 番目の共鳴」「最も低い(高い)振動数での共鳴」といったキーワードから、それが基本振動なのか、何倍振動なのかを判断します。
- 変化する条件は何か?: 管長を変えているのか、振動数を変えているのか、それとも両方か。何が一定で何が変化するのかを明確にします。
- 図を描いてみる: 言葉だけでなく、定常波の様子(腹と節の配置)を概略図で描いてみると、波長と管長の関係が見えやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 閉管と開管の公式の混同:
- 誤解: 閉管の共鳴条件を \(\lambda/2\) の整数倍としてしまう、開管で奇数倍振動しか起こらないと思い込むなど。
- 対策: それぞれの基本振動の形(閉管: \(\lambda/4\)、開管: \(\lambda/2\))と、そこからどのように倍振動が派生していくか(閉管: 次は \(3\lambda/4\)、開管: 次は \(\lambda\))を図と共に確実に記憶する。
- 腹と節の間隔の誤認識:
- 誤解: 腹と節の最短距離を \(\lambda/2\) と勘違いする、節と節の最短距離を \(\lambda/4\) と勘違いする。
- 対策: 定常波の基本単位として、腹~節は \(\lambda/4\)、腹~腹(または節~節)は \(\lambda/2\) であることを図で確認し、徹底する。
- 「\(n\) 倍振動」の \(n\) の解釈:
- 誤解: 閉管の場合、固有振動数は基本振動数の奇数倍 (\(f_1, 3f_1, 5f_1, \dots\)) となるため、「3倍振動」は文字通り基本振動数の3倍ですが、これは \(l=(2n-1)\lambda/4\) の式では \(n=2\) に対応します。
- 対策: 「何番目の共鳴か」と「何倍振動か」を、それぞれの管のタイプに応じて正しく結びつける練習をする。
- 単位の不一致:
- 誤解: 計算途中で \(\text{cm}\) と \(\text{m}\) が混在し、誤った結果を導く。
- 対策: 計算を始める前に、全ての単位を基本単位(例: メートル)に統一する習慣をつける。特に音速が \(\text{m/s}\) で与えられている場合は、長さも \(\text{m}\) に換算してから \(V=f\lambda\) に代入するのが安全。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(l = (2n-1)\lambda/4\) (閉管):
- 選定理由: 問1, 問2 のように、管の一端が音響的に閉じていて(ピストン)、他端が開いている状況だから。
- 適用根拠: 「共鳴が起こった」という記述が、定常波が形成され、この共鳴条件が満たされていることを意味するから。
- \(L = n\lambda/2\) (開管):
- 選定理由: 問3, 問4 のように、管の両端が音響的に開いている状況だから。
- 適用根拠: 「共鳴が起こった」という記述が、この共鳴条件が満たされていることを意味するから。
- \(V = f\lambda\):
- 選定理由: 振動数、波長、音速のいずれかを求める際に、他の2つが既知または導出可能な場合に普遍的に適用できる基本関係式だから。
- 適用根拠: 波の定義そのものであり、あらゆる波の伝播現象に適用できるから。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の統一と確認:
- 特に注意すべき点: 計算の初期段階で、長さをメートル (\(\text{m}\)) に統一する(またはセンチメートル (\(\text{cm}\)) のまま計算する場合は、最終的に音速の単位と整合させる)。
- 日頃の練習: 計算結果の単位が物理的に正しいかも常に確認する(例: 振動数なら \(\text{Hz}\))。
- 途中計算の明示:
- 特に注意すべき点: 特に波長 \(\lambda\) や半波長 \(\lambda/2\) などの値を一度計算して明記しておくと、後の設問で利用しやすく、見直しもしやすい。
- 日頃の練習: 後の設問で使う値をメモしておく習慣をつける。
- 有効数字の意識:
- 特に注意すべき点: 問題文で与えられている数値の有効数字を確認し、最終的な答えもそれに合わせる(通常は最も少ない有効数字に合わせるか、指示に従う)。
- 日頃の練習: 今回の問題では、\(20.0 \, \text{cm}\) (3桁)、\(340 \, \text{m/s}\) (2桁または3桁と解釈可能)なので、答えも2桁~3桁で示すのが適切。\(212.5 \, \text{Hz}\) を \(213 \, \text{Hz}\) と丸めるのは妥当な処理です。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) \(\rightarrow\) (2): ピストンを遠ざけて管長を長くすると、同じ振動数ならより複雑な(節や腹の数が多い)定常波で共鳴する。\(l_2 > l_1\) は妥当。
- (3): ガラス管の長さ \(L\) は、(2)の共鳴長 \(l_2\) より長く、かつ閉管としての次の共鳴が起こる前に開管としての共鳴が起こった、という状況に合致しているか。\(L=80.0 \, \text{cm}\) は \(l_2=60.0 \, \text{cm}\) より長く、閉管の \(5\lambda/4=100 \, \text{cm}\) より短い範囲にあり、開管の \(2\lambda/2=\lambda=80.0 \, \text{cm}\) と一致するので妥当。
- (4): 振動数を小さくすると波長は長くなる (\(V=f\lambda\), \(V\) 一定)。同じ開管 \(L\) でより長い波長 \(\lambda’\) で共鳴するのは、より単純な振動モード(基本振動)であり、\(\lambda’ = 2L > \lambda = L\) となっている。\(f’ < f\) も問題条件と一致。
- 別解や関係性の確認:
- 問4で \(f’ = f/2\) の関係が導出できたように、異なる設問間の関係性や、異なるアプローチでの解法を考えることで、理解が深まり、答えの確からしさが増します。
- 図との整合性:
- 自分が描いた定常波の図と、計算で求めた管長、波長、腹・節の数や位置関係が矛盾していないか、必ず見直しましょう。
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問題78 (センター試験)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、気柱の共鳴現象について、特に「開口端補正」を考慮に入れる点が重要です。スピーカーから出る音の振動数は一定で、管の有効長(水面までの距離)を変えることで共鳴点を探します。開口端補正、波長、音速の求め方、そして温度変化や振動数変化が共鳴に与える影響を総合的に理解することが求められます。
- スピーカーの音の振動数: \(f = 423 \, \text{Hz}\)
- 最初の共鳴時の管口から水面までの距離: \(l_1 = 18.9 \, \text{cm}\)
- 2回目の共鳴時の管口から水面までの距離: \(l_2 = 59.1 \, \text{cm}\)
- 開口端補正 \(\Delta l\) は一定。
- 音波の波長 \(\lambda\)、音速 \(V\)、開口端補正 \(\Delta l\)。
- \(l_2\) のときの管内での (ア) 振幅が大きい位置(腹の位置)、(イ) 密度変化が大きい位置(節の位置)。
- 実験時の気温を上げた場合の \(l_1, l_2\) の変化。
- 管長を \(l_2\) に固定し、振動数を \(423 \, \text{Hz}\) から上げていったときの次の共鳴振動数。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(4) 次の共鳴振動数の別解: 固有振動数の関係を用いる解法
- 主たる解法が、共鳴条件の式から新しい波長を求め、波の基本式を使って振動数を計算するのに対し、別解では、閉管の固有振動数が基本振動数の奇数倍になるという性質を利用します。元の共鳴が3倍振動であることから基本振動数を割り出し、次の共鳴である5倍振動の振動数を直接計算します。
- 問(4) 次の共鳴振動数の別解: 固有振動数の関係を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 「固有振動数の整数比(奇数比)」という、より抽象化された物理モデルの理解が深まります。これは、楽器の音色の違いなどを理解する上でも重要な概念です。
- 計算の効率化: この別解は、基本振動数を一度求めれば、あとは簡単な掛け算で次の固有振動数が求まるため、計算が大幅に簡略化されます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、「気柱の共鳴」という現象について、より現実的な「開口端補正」を考慮して解き進めるものです。気柱の共鳴では、管の長さと音波の波長が特定の関係になると定常波が生じ、音が大きく聞こえます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定常波: 管内で進行波と反射波が干渉してできる、特定の場所で大きく振動する「腹」と、全く振動しない「節」を持つ波。
- 開口端補正 (\(\Delta l\)): 管の開いている端(管口)では、実際には管口の少し外側に定常波の腹ができます。この管口から腹までの距離を「開口端補正」といい、\(\Delta l\) で表します。
- 閉管の共鳴条件(開口端補正あり): 一端が閉じた管(この問題では水面が閉端)では、管口の補正された位置(管口から \(\Delta l\) 外側)に腹、水面に節ができます。このとき、(管口から水面までの距離 \(L\)) \(+\Delta l\) が、\(\displaystyle\frac{\lambda}{4}, \displaystyle\frac{3\lambda}{4}, \displaystyle\frac{5\lambda}{4}, \dots\) つまり \((2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) (\(n=1, 2, 3, \dots\)) のときに共鳴します。
- 波の基本式: \(V = f\lambda\) (音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\))
- 音速と温度: 空気の温度が上がると、音速 \(V\) は大きくなります。
- 変位と密度変化: 定常波において、空気の変位の振幅が最大となる「腹」では、密度の変化は最小となります。逆に、変位の振幅がゼロとなる「節」では、密度の変化は最大となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず最初の共鳴点 \(l_1\) と2番目の共鳴点 \(l_2\) の情報から、節と隣の節との間隔が半波長 \(\lambda/2\) であることを利用して波長 \(\lambda\) を求めます。
- 次に、波の基本式から音速 \(V\) を、そして最初の共鳴条件から開口端補正 \(\Delta l\) を求めます。
- その後、各設問の条件に合わせて物理法則を適用していきます。