問題56 (都立大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた熱容量の定義
- 熱容量を温度による内部エネルギーの微分係数として捉え、積分によって熱量と温度変化の関係を導出します。
- 設問(3)の別解: エネルギー保存則(総和=0)を用いた解法
- 模範解答のような「得た熱量=失った熱量」ではなく、系全体の内部エネルギー変化の総和が0であるという、より一般的で符号ミスが起きにくい立式を行います。
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた熱容量の定義
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 公式 \(Q=C\Delta T\) の暗記ではなく、熱容量が「温度変化に対するエネルギーの出入り」の微分係数であることを理解することで、物理量の定義を深く理解できます。
- エネルギー保存則(総和=0)の解法: 「どちらが高温でどちらが低温か」を気にせず、「変化後の温度 – 変化前の温度」で統一的に立式できるため、複雑な熱平衡の問題でも計算ミスを防げます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ジュール熱による加熱と熱容量・比熱の測定」です。
電気エネルギーを熱エネルギーに変換して物体を温める実験を通して、熱容量や比熱を求める手順を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ジュール熱: 抵抗に電流を流すと発生する熱量 \(Q\) は、電力 \(P\) と時間 \(t\) の積 \(Q = Pt\) で表されます。
- 熱容量の定義: 物体全体の温度を \(1\,\text{K}\) 上げるのに必要な熱量 \(C\) は、加えた熱量 \(Q\) と温度上昇 \(\Delta T\) の比 \(C = \displaystyle\frac{Q}{\Delta T}\) です。
- 熱容量の加法性: 複数の物体からなる系の熱容量は、個々の熱容量の和になります。
- 熱量保存則: 外部との熱の出入りがない場合、高温物体が失った熱量は低温物体が得た熱量に等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、グラフから読み取った温度上昇と、加えた電気エネルギー(ジュール熱)を用いて、実験1・2それぞれの熱容量を求めます。
- (2)では、実験1・2の条件の違い(水の質量の違い)を利用して連立方程式を立て、水と銅の比熱をそれぞれ求めます。
- (3)では、実験3の結果(熱平衡状態)と実験2で求めた熱容量を用いて、金属球の比熱を求めます。
- (4)では、断熱容器がない場合の熱の出入り(室温との関係)を定性的に考察し、測定値への影響を判断します。
問(1)
思考の道筋とポイント
実験1と実験2において、抵抗線で発生したジュール熱がすべて水と容器の温度上昇に使われたと考えます。
グラフ(図2)から、ある時間 \(t\) における温度上昇 \(\Delta T\) を読み取り、熱容量 \(C\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- ジュール熱の計算: \(Q = P \times t\) (電力 \(\times\) 時間)
- グラフの読み取り: 読み取りやすく、計算しやすい点を選びます。
- 実験1: \(t=500\,\text{s}\) で \(20^\circ\text{C}\)
- 実験2: \(t=400\,\text{s}\) で \(14^\circ\text{C}\) (または \(500\,\text{s}\) で \(15^\circ\text{C}\))
- 初期温度: どちらも \(10^\circ\text{C}\) からスタートしています。
具体的な解説と立式
実験1について
電力 \(P_1 = 10.0\,\text{W}\) です。
グラフより、時間 \(t_1 = 500\,\text{s}\) のとき、温度は \(20^\circ\text{C}\) になっています。
初期温度は \(10^\circ\text{C}\) なので、温度上昇は \(\Delta T_1 = 20 – 10 = 10\,\text{K}\) です。
熱容量を \(C_1\) とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P_1 t_1 &= C_1 \Delta T_1
\end{aligned}
$$
実験2について
電力 \(P_2 = 9.0\,\text{W}\) です。
グラフより、時間 \(t_2 = 400\,\text{s}\) のとき、温度は \(14^\circ\text{C}\) になっています。
初期温度は \(10^\circ\text{C}\) なので、温度上昇は \(\Delta T_2 = 14 – 10 = 4.0\,\text{K}\) です。
熱容量を \(C_2\) とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P_2 t_2 &= C_2 \Delta T_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ジュール熱: \(Q = Pt\)
- 熱容量の定義式: \(Q = C\Delta T\)
実験1
$$
\begin{aligned}
10.0 \times 500 &= C_1 \times 10 \\[2.0ex]
5000 &= 10 C_1 \\[2.0ex]
C_1 &= 500
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
C_1 &= 5.0 \times 10^2\,\text{J/K}
\end{aligned}
$$
実験2
$$
\begin{aligned}
9.0 \times 400 &= C_2 \times 4.0 \\[2.0ex]
3600 &= 4.0 C_2 \\[2.0ex]
C_2 &= \frac{3600}{4.0} \\[2.0ex]
&= 900
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
C_2 &= 9.0 \times 10^2\,\text{J/K}
\end{aligned}
$$
電気ヒーターで水を温める実験です。
「加えた電気エネルギー」が「水と容器を温めるエネルギー」に変わりました。
グラフから「何秒で何度上がったか」を読み取り、そこから「\(1^\circ\text{C}\) 上げるのに何ジュールのエネルギーが必要か(=熱容量)」を計算しました。
実験1の熱容量は \(5.0 \times 10^2\,\text{J/K}\)、実験2の熱容量は \(9.0 \times 10^2\,\text{J/K}\) です。
実験2の方が水の量が多い(\(100\,\text{g} \to 200\,\text{g}\))ため、熱容量が大きくなっていることは物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
熱容量 \(C\) は、温度 \(T\) に対する内部エネルギー \(U\) の変化率(微分)として定義されます。
\(C = \displaystyle\frac{dU}{dT}\)
これを用いて、加えた熱量 \(Q\) と温度変化 \(\Delta T\) の関係を積分形式で記述します。
この設問における重要なポイント
- 熱容量の定義: \(C = \displaystyle\frac{d’Q}{dT}\)
- 熱量の積分: \(Q = \displaystyle\int C \, dT\)
- ジュール熱の積分: \(Q = \displaystyle\int P \, dt\)
具体的な解説と立式
熱容量 \(C\) は温度によらず一定とみなせます。
時間 \(0\) から \(t\) までの間に加えた熱量(ジュール熱)は、温度 \(T_{\text{始}}\) から \(T_{\text{終}}\) までの内部エネルギー変化に等しいです。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t} P \, dt’ &= \int_{T_{\text{始}}}^{T_{\text{終}}} C \, dT
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱量の定義(積分形): \(Q = \displaystyle\int C \, dT\)
\(P\) と \(C\) は定数なので積分の外に出せます。
$$
\begin{aligned}
P [t’]_{0}^{t} &= C [T]_{T_{\text{始}}}^{T_{\text{終}}} \\[2.0ex]
Pt &= C (T_{\text{終}} – T_{\text{始}}) \\[2.0ex]
Pt &= C \Delta T
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の式と同じ形になります。
実験1について:
$$
\begin{aligned}
10.0 \times 500 &= C_1 \times (20 – 10) \\[2.0ex]
C_1 &= 500 \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^2
\end{aligned}
$$
実験2について:
$$
\begin{aligned}
9.0 \times 400 &= C_2 \times (14 – 10) \\[2.0ex]
C_2 &= 900 \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 10^2
\end{aligned}
$$
「熱を加える」という行為を、微小なエネルギーの積み重ね(積分)として捉えます。
電力が一定ならエネルギーは時間に比例して増え、熱容量が一定なら温度もエネルギーに比例して上がります。
結果として、グラフが直線になることの数学的な裏付けとなります。
メイン解法と同じ結果が得られました。
問(2)
思考の道筋とポイント
実験1と実験2の違いは「水の質量」だけです。容器(銅製容器)の質量は同じです。
それぞれの実験における「全体の熱容量」を、水と銅の比熱を用いて式で表し、連立方程式を解きます。
この設問における重要なポイント
- 熱容量の構成: \(C_{\text{全}} = (\text{水の熱容量}) + (\text{銅容器の熱容量})\)
- 熱容量と比熱の関係: \(C = mc\)
- 質量条件:
- 銅容器: \(m_{\text{銅}} = 250\,\text{g}\) (共通)
- 実験1の水: \(m_{\text{水1}} = 100\,\text{g}\)
- 実験2の水: \(m_{\text{水2}} = 200\,\text{g}\)
具体的な解説と立式
水の比熱を \(c_{\text{水}}\)、銅の比熱を \(c_{\text{銅}}\) とします。
実験1の熱容量 \(C_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
C_1 &= m_{\text{水1}} c_{\text{水}} + m_{\text{銅}} c_{\text{銅}} \\[2.0ex]
500 &= 100 c_{\text{水}} + 250 c_{\text{銅}} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
実験2の熱容量 \(C_2\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
C_2 &= m_{\text{水2}} c_{\text{水}} + m_{\text{銅}} c_{\text{銅}} \\[2.0ex]
900 &= 200 c_{\text{水}} + 250 c_{\text{銅}} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱容量の加法性: \(C_{\text{全}} = m_1 c_1 + m_2 c_2 + \dots\)
式②から式①を引いて \(c_{\text{銅}}\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
(900 – 500) &= (200 c_{\text{水}} – 100 c_{\text{水}}) + (250 c_{\text{銅}} – 250 c_{\text{銅}}) \\[2.0ex]
400 &= 100 c_{\text{水}} \\[2.0ex]
c_{\text{水}} &= 4.0
\end{aligned}
$$
求めた \(c_{\text{水}}\) を式①に代入して \(c_{\text{銅}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
500 &= 100 \times 4.0 + 250 c_{\text{銅}} \\[2.0ex]
500 &= 400 + 250 c_{\text{銅}} \\[2.0ex]
100 &= 250 c_{\text{銅}} \\[2.0ex]
c_{\text{銅}} &= \frac{100}{250} \\[2.0ex]
&= 0.40
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
\(c_{\text{水}} = 4.0\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)、\(c_{\text{銅}} = 0.40\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)
実験1と2で容器は同じものを使い、水だけ \(100\,\text{g}\) 増やしました。
その結果、熱容量が \(500\) から \(900\) に増えました。
増えた \(400\) 分の熱容量は、まさに追加した水 \(100\,\text{g}\) によるものです。
ここから水の比熱がわかり、残りの部分から容器(銅)の比熱もわかります。
水の比熱 \(4.0\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)(理論値 \(4.2\) に近い)、銅の比熱 \(0.40\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)(理論値 \(0.38\) に近い)が得られました。
実験誤差を含んだ値として妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
実験3は、実験2と同じ状態(水 \(200\,\text{g}\) + 銅容器)に、高温の金属球を入れて熱平衡させる実験です。
実験2で求めた熱容量 \(C_2\) をそのまま利用できます。
「金属球が失った熱量 = 水と容器が得た熱量」という熱量保存則の式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 低温側の熱容量: 実験2と同じ構成なので \(C_2 = 900\,\text{J/K}\) です。
- 温度条件:
- 低温側(水+容器): \(10^\circ\text{C} \to 17^\circ\text{C}\)
- 高温側(金属球): \(80^\circ\text{C} \to 17^\circ\text{C}\)
- 金属球の質量: \(m_{\text{球}} = 100\,\text{g}\)
具体的な解説と立式
金属球の比熱を \(c\) とします。
熱量保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{金属球が失った熱量}) &= (\text{水と容器が得た熱量}) \\[2.0ex]
m_{\text{球}} c (80 – 17) &= C_2 (17 – 10)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱量保存則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
- 熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)、\(Q = C\Delta T\)
数値を代入して \(c\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
100 \times c \times 63 &= 900 \times 7.0 \\[2.0ex]
6300 c &= 6300 \\[2.0ex]
c &= 1.0
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
\(c = 1.0\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)
\(80^\circ\text{C}\) の金属球が冷めるエネルギーを使って、水と容器を \(10^\circ\text{C}\) から \(17^\circ\text{C}\) まで温めました。
水と容器を温めるのに必要なエネルギー(熱容量)は実験2でわかっているので、そこから逆算して金属球の比熱を求めました。
答えは \(1.0\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\) です。
計算が非常に綺麗に割り切れるように数値設定されています。
思考の道筋とポイント
熱の移動を内部エネルギーの変化として捉え、系全体の変化量の総和を \(0\) と置きます。
「変化後の温度 – 変化前の温度」で統一して立式します。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー変化 \(\Delta U\): \(\Delta U = C(T_{\text{後}} – T_{\text{前}})\) または \(mc(T_{\text{後}} – T_{\text{前}})\)
- 保存則: \((\Delta U \text{の総和}) = 0\)
具体的な解説と立式
$$
\begin{aligned}
(\text{金属球の変化}) + (\text{水と容器の変化}) &= 0 \\[2.0ex]
m_{\text{球}} c (17 – 80) + C_2 (17 – 10) &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱力学第一法則(断熱過程): \((\Delta U \text{の総和}) = 0\)
数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
100 \times c \times (-63) + 900 \times 7.0 &= 0 \\[2.0ex]
-6300 c + 6300 &= 0 \\[2.0ex]
6300 c &= 6300 \\[2.0ex]
c &= 1.0
\end{aligned}
$$
金属球のエネルギー減少分(マイナス)と、水と容器のエネルギー増加分(プラス)を足し合わせるとゼロになります。
メイン解法と同じ \(1.0\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\) が得られました。
問(4)
思考の道筋とポイント
断熱容器を外すと、外部(室温 \(25^\circ\text{C}\))との熱の出入りが発生します。
水温(\(17^\circ\text{C}\))と室温(\(25^\circ\text{C}\))を比較し、熱がどちらに流れるかを考えます。
その熱の流入が、計算結果(比熱 \(c\))にどう影響するかを式の構造から判断します。
この設問における重要なポイント
- 熱の移動方向: 熱は高温から低温へ移動します。室温 \(25^\circ\text{C} >\) 水温 \(17^\circ\text{C}\) なので、熱は外部から容器へ流入します。
- 最終水温への影響: 熱が入ってくるため、断熱時よりも温度は高くなります。
- 比熱計算への影響: 問(3)の式の左辺(水が得た熱量)が見かけ上増えることになります。
具体的な解説と立式
1. 水温の変化について
室温 \(25^\circ\text{C}\) が水温 \(17^\circ\text{C}\) より高いため、外部から熱が流入します。
したがって、最終的な水温は \(17^\circ\text{C}\) よりも「高い」温度になります。
2. 比熱の計算値について
問(3)の計算式(熱量保存則)を再考します。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{球}} c (80 – T_{\text{終}}) &= C_2 (T_{\text{終}} – 10)
\end{aligned}
$$
ここで、\(T_{\text{終}}\) が \(17\) より大きくなるとどうなるかを考えます。
左辺の \((80 – T_{\text{終}})\) は小さくなり、右辺の \((T_{\text{終}} – 10)\) は大きくなります。
等式を成り立たせるためには、左辺の \(c\) を本来の値よりも「大きく」見積もる必要があります。
つまり、実験データ(高めの \(T_{\text{終}}\))を使って計算すると、得られる \(c\) は真の値よりも大きくなります。
使用した物理公式
- 熱量保存則(定性的な考察)
計算は不要で、定性的な判断のみです。
外から熱が入ってくるので、水は予想以上に温まります(\(17^\circ\text{C}\) より高くなる)。
計算上は「金属球がたくさんの熱を出して水を温めた」と解釈してしまうため、金属球の能力(比熱)を実際よりも過大評価してしまいます。
水温は「高い」。
比熱は「大きい」。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 熱容量の加法性と系の捉え方
- 核心: 複数の物体からなる系全体の熱容量は、個々の物体の熱容量の単純な和になります(\(C_{\text{全}} = C_1 + C_2 + \dots\))。
- 理解のポイント:
- 独立性: 熱平衡状態にある物体群をまとめて加熱するとき、それぞれの物体は独立に熱を吸収し、同じ温度だけ上昇します。
- 巨視的な視点: 個別の熱移動(水 \(\leftrightarrow\) 容器)を無視し、系全体を「一つの大きな物体」とみなすことで、計算を大幅に簡略化できます。
- ジュール熱と熱エネルギーの変換
- 核心: 電気エネルギー \(W = Pt\) は、抵抗線を通じて熱エネルギー \(Q\) に変換されます。断熱容器内では、このエネルギーがすべて水と容器の温度上昇に使われます。
- 理解のポイント:
- エネルギー保存: \((\text{電気エネルギー}) = (\text{熱エネルギー}) = (\text{内部エネルギーの増加})\) という流れを理解しましょう。
- グラフの傾き: 温度-時間グラフの傾きは、単位時間あたりの温度上昇率を表し、これは電力 \(P\) と熱容量 \(C\) の比(\(P/C\))に対応します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 混合後の温度(平衡温度)を求める問題: 質量や比熱が既知で、最終温度 \(T\) が未知数のパターン。\((\text{高温側の熱容量})(T_{\text{高}} – T) = (\text{低温側の熱容量})(T – T_{\text{低}})\) という加重平均の形になります。
- ヒーターによる加熱: \(Q\) の代わりに電力 \(P\) と時間 \(t\) が与えられ、\(Pt = C_{\text{全}}\Delta T\) とするパターン。今回の問題がまさにこれです。
- 冷却曲線からの熱容量推定: 加熱をやめた後の温度降下グラフから、外部への放熱量(ニュートンの冷却法則)を見積もる問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 登場人物(物体)を整理する: 誰と誰が熱をやり取りしているか? 容器は無視できるか?
- プロセスを分ける: 「加熱」と「混合(熱平衡)」は別のフェーズです。加熱中は \(Q=Pt\)、混合時は \(Q_{\text{失}}=Q_{\text{得}}\) を使います。
- グラフの情報を読み取る: グラフの傾きや特定の点の座標から、必要な物理量(\(\Delta T\) や \(t\))を正確に抽出しましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 熱容量の計算ミス:
- 誤解: \(C_{\text{全}}\) を計算するとき、比熱 \(c\) だけを足してしまう(\(c_{\text{水}} + c_{\text{銅}}\) など)。
- 対策: 熱容量は「質量 \(\times\) 比熱」です。必ず質量を掛けてから足し合わせることを忘れないでください。
- 温度変化の定義ミス:
- 誤解: 「温度上昇」と「温度変化」を混同する。特に温度が下がる場合、変化量 \(\Delta T\) は負になりますが、熱量計算では大きさ(正の値)を使うことが多いです。
- 対策: \(Q=mc\Delta T\) の \(\Delta T\) は常に「高い方 – 低い方」で計算するか、あるいはエネルギー保存則(総和=0)で符号付きで扱うかを統一しましょう。
- 外部との熱の出入り:
- 誤解: 断熱容器がない場合でも、熱量保存則が厳密に成り立つと仮定してしまう。
- 対策: 室温との温度差がある場合、必ず熱の移動(放熱または吸熱)が発生します。その方向(高温 \(\to\) 低温)を常に意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(ジュール熱と熱容量):
- 選定理由: 電流による発熱で物体の温度を上げる実験だからです。
- 適用根拠: 発生した熱がすべて温度上昇に使われる(断熱)と仮定できるため、\(Pt = C\Delta T\) が成立します。
- 問(2)での公式選択(連立方程式):
- 選定理由: 未知数が2つ(水の比熱、銅の比熱)あり、条件の異なる2つの実験データがあるからです。
- 適用根拠: 容器は同じものを使用し、水の量だけを変えているため、熱容量の差分が水の増加分に対応するという物理的直感が数式で表現できます。
- 問(3)での公式選択(熱量保存則):
- 選定理由: 異なる温度の物体を接触させ、熱平衡に至る現象だからです。
- 適用根拠: 外部への熱の逃げ(ロス)に関する記述がないため、断熱系として扱えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフの読み取り:
- 目盛りの読みやすい点(グリッドの交点)を選びましょう。中途半端な点を選ぶと読み取り誤差が計算結果に響きます。今回は \(500\,\text{s}\) や \(400\,\text{s}\) が最適です。
- 有効数字の処理:
- 途中計算では桁を多めに残し、最後に四捨五入するのが鉄則ですが、この問題のように数値が綺麗に割り切れる場合は、途中でも有効数字を意識しすぎず正確な値(分数など)で進める方が誤差が出ません。
- 答えを書くときだけ、問題文に合わせて(今回は2桁)丸めます。
問題57 (北見工大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた熱量の定義
- 熱容量を温度による内部エネルギーの微分係数として捉え、積分によって熱量と温度変化の関係を導出します。
- 設問(3)の別解: エネルギー保存則(総和=0)を用いた解法
- 模範解答のような「得た熱量=失った熱量」ではなく、系全体の内部エネルギー変化の総和が0であるという、より一般的で符号ミスが起きにくい立式を行います。
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた熱量の定義
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 公式 \(Q=mc\Delta T\) の暗記ではなく、熱容量が「温度変化に対するエネルギーの出入り」の微分係数であることを理解することで、物理量の定義を深く理解できます。
- エネルギー保存則(総和=0)の解法: 「どちらが高温でどちらが低温か」を気にせず、「変化後の温度 – 変化前の温度」で統一的に立式できるため、複雑な熱平衡の問題でも計算ミスを防げます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「物質の三態変化と熱エネルギー」です。
氷から水への状態変化(融解)を含む加熱プロセスを通して、比熱、融解熱、電力の関係を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 熱量の公式: 温度変化がある場合、\(Q = mc\Delta T\) です。
- 潜熱(融解熱): 状態変化(融解)の間、温度は一定に保たれます。必要な熱量は \(Q = mL\) です。
- ジュール熱: ヒーターの発熱量は \(Q = Pt\) です。
- エネルギー保存則: ヒーターから供給された熱量は、すべて氷や水の温度上昇または状態変化に使われます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、水の状態での温度上昇に着目し、必要な熱量を計算します。
- (2)では、(1)の熱量を供給するのにかかった時間から、ヒーターの電力を求めます。
- (3)では、温度が一定の区間(融解中)に着目し、供給された熱量と融解した氷の質量から融解熱を求めます。
- (4)では、氷の状態での温度上昇に着目し、比熱を求めます。
- (5)では、加熱時間と融解の進行度の関係から、残っている氷の量を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
グラフの右側の傾き部分(\(360\,\text{s}\) 以降)に注目します。
ここでは全ての氷が溶けて \(0^\circ\text{C}\) の水になり、さらに加熱されて \(50^\circ\text{C}\) まで温度が上昇しています。
水の質量、比熱、温度変化がわかっているので、熱量の公式を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 状態の確認: \(360\,\text{s}\) 以降はすべて液体(水)の状態です。
- 温度変化: \(0^\circ\text{C}\) から \(50^\circ\text{C}\) への上昇です。
- 質量: 氷が全て溶けたので、水の質量は氷の質量と同じ \(200\,\text{g}\) です。
具体的な解説と立式
水の質量を \(m = 200\,\text{g}\)、水の比熱を \(c_{\text{水}} = 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\) とします。
温度変化は \(\Delta T = 50 – 0 = 50\,\text{K}\) です。
与えられた熱量 \(Q_1\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= m c_{\text{水}} \Delta T
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)
数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 200 \times 4.2 \times 50 \\[2.0ex]
&= 10000 \times 4.2 \\[2.0ex]
&= 42000
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 4.2 \times 10^4\,\text{J}
\end{aligned}
$$
\(200\,\text{g}\) の水を \(0^\circ\text{C}\) から \(50^\circ\text{C}\) まで温めるのに必要なエネルギーを計算しました。
「水の量」\(\times\)「温度差」\(\times\)「水の温まりにくさ(比熱)」で求められます。
答えは \(4.2 \times 10^4\,\text{J}\) です。
単位は \(\text{g} \times \text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \times \text{K} = \text{J}\) となり正しいです。
思考の道筋とポイント
熱量の公式 \(Q = mc\Delta T\) は、比熱 \(c\) が温度によらず一定である場合の式です。
本来、熱量は微小な温度変化 \(dT\) に伴うエネルギーの出入り \(d’Q\) を積分することで定義されます。
この設問における重要なポイント
- 比熱の定義: \(c = \displaystyle\frac{1}{m}\frac{d’Q}{dT}\)
- 熱量の積分: \(Q = \displaystyle\int m c \, dT\)
具体的な解説と立式
水に与えられた熱量 \(Q_1\) を、温度 \(T\) の積分として表します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= \int_{T_{\text{始}}}^{T_{\text{終}}} m c_{\text{水}} \, dT
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱量の定義(積分形): \(Q = \displaystyle\int mc \, dT\)
\(m\) と \(c_{\text{水}}\) は定数なので積分の外に出せます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= m c_{\text{水}} \int_{0}^{50} dT \\[2.0ex]
&= m c_{\text{水}} [T]_{0}^{50} \\[2.0ex]
&= 200 \times 4.2 \times (50 – 0) \\[2.0ex]
&= 42000 \\[2.0ex]
&= 4.2 \times 10^4
\end{aligned}
$$
温度を微小に上げるために必要なエネルギーを積み重ねていく(積分する)ことで、全体の温度上昇に必要なエネルギーを計算します。
比熱が一定なら、単純な掛け算になります。
メイン解法と同じ結果が得られました。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)で求めた熱量 \(Q_1\) は、ヒーターによって供給されました。
グラフから、この温度上昇(\(0^\circ\text{C} \to 50^\circ\text{C}\))にかかった時間を読み取り、電力 \(P\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 加熱時間: グラフより、\(0^\circ\text{C}\) から \(50^\circ\text{C}\) になるまでの時間は \(560 – 360 = 200\,\text{s}\) です(図中の矢印の範囲)。
- ジュール熱の関係式: \(Q = Pt\)
具体的な解説と立式
ヒーターの電力を \(P\) とします。
時間 \(t_1 = 200\,\text{s}\) の間に発生した熱量が \(Q_1\) に等しいので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P t_1 &= Q_1
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ジュール熱: \(Q = Pt\)
数値を代入して \(P\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P \times 200 &= 4.2 \times 10^4 \\[2.0ex]
P &= \frac{42000}{200} \\[2.0ex]
&= 210
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
P &= 2.1 \times 10^2\,\text{W}
\end{aligned}
$$
(※模範解答のように \(210\,\text{W}\) でも可ですが、有効数字を明示するなら指数表記が安全です。)
\(42000\,\text{J}\) のエネルギーを \(200\,\text{s}\) かけて供給しました。
1秒あたりに供給したエネルギー(=電力)は、割り算で求められます。
答えは \(210\,\text{W}\) です。
家庭用ヒーターとして妥当な大きさの値です。
問(3)
思考の道筋とポイント
グラフの水平部分(\(40\,\text{s}\) から \(360\,\text{s}\))に注目します。
この区間では温度が \(0^\circ\text{C}\) で一定であり、氷が水に変わる「融解」が起きています。
この間にヒーターから供給された熱量が、全て氷の融解に使われたと考えます。
この設問における重要なポイント
- 融解時間: \(360 – 40 = 320\,\text{s}\) です。
- 融解熱の定義: \(1\,\text{g}\) の固体を液体に変えるのに必要な熱量 \(L\) です。
- 熱量保存: (ヒーターの発熱量)=(融解に必要な熱量)
具体的な解説と立式
融解熱を \(L\) とします。
融解にかかった時間を \(t_2 = 320\,\text{s}\) とします。
ヒーターから供給された熱量は \(P t_2\)、融解に使われた熱量は \(m L\) です。
$$
\begin{aligned}
P t_2 &= m L
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 潜熱の熱量: \(Q = mL\)
- ジュール熱: \(Q = Pt\)
数値を代入して \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
210 \times 320 &= 200 \times L \\[2.0ex]
67200 &= 200 L \\[2.0ex]
L &= \frac{67200}{200} \\[2.0ex]
&= 336
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
L &\approx 3.4 \times 10^2\,\text{J/g}
\end{aligned}
$$
氷が溶けている間、温度は上がりませんが、ヒーターはずっと熱を出し続けています。
その熱エネルギーは全て「氷を水に変える」ために使われました。
\(320\,\text{s}\) 分の電気エネルギーを計算し、それを氷の重さで割ることで、\(1\,\text{g}\) あたりの融解熱を求めました。
答えは \(336\,\text{J/g}\) です。
水の融解熱の文献値(約 \(334\,\text{J/g}\))と非常に近く、妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
状態変化を含むプロセスでも、エネルギー保存則(熱力学第一法則)は成立します。
供給されたエネルギーと、物質の内部エネルギー変化(状態変化に伴うポテンシャルエネルギー変化)の収支を考えます。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー変化: 融解に伴う内部エネルギーの増加は \(mL\) です。
- 仕事(電気的仕事): 外部から系になされた仕事は \(W_{\text{電}} = Pt\) です。
具体的な解説と立式
系(氷)の内部エネルギー変化 \(\Delta U\) は、外部から加えられた熱量(ここではヒーターによる加熱)に等しいです。
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= Q_{\text{入}} \\[2.0ex]
m L &= P t_2
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の式と同じになります。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q + W\) (ここでは \(Q\) を加熱量として解釈)
$$
\begin{aligned}
200 L &= 210 \times 320 \\[2.0ex]
L &= 336
\end{aligned}
$$
エネルギーの収支バランスシートを作ります。
入ってきたエネルギー(電気)と、使われたエネルギー(融解)が釣り合っているという式です。
メイン解法と同じ \(336\,\text{J/g}\) が得られました。
問(4)
思考の道筋とポイント
グラフの最初の傾き部分(\(0\,\text{s}\) から \(40\,\text{s}\))に注目します。
ここでは氷の状態で温度が \(-20^\circ\text{C}\) から \(0^\circ\text{C}\) まで上昇しています。
この区間の加熱量と温度上昇から、氷の比熱 \(c_0\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 加熱時間: \(t_0 = 40\,\text{s}\) です。
- 温度変化: \(\Delta T_0 = 0 – (-20) = 20\,\text{K}\) です。
- 物質の状態: 氷(固体)です。
具体的な解説と立式
氷の比熱を \(c_0\) とします。
ヒーターから供給された熱量は \(P t_0\)、氷の温度上昇に使われた熱量は \(m c_0 \Delta T_0\) です。
$$
\begin{aligned}
P t_0 &= m c_0 \Delta T_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)
- ジュール熱: \(Q = Pt\)
数値を代入して \(c_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
210 \times 40 &= 200 \times c_0 \times 20 \\[2.0ex]
8400 &= 4000 c_0 \\[2.0ex]
c_0 &= \frac{8400}{4000} \\[2.0ex]
&= 2.1
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
c_0 &= 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})
\end{aligned}
$$
最初の \(40\,\text{s}\) 間は、氷の温度を上げるためにエネルギーが使われました。
供給されたエネルギーと温度上昇の幅から、氷の温まりにくさ(比熱)を計算しました。
水の比熱(\(4.2\))のちょうど半分であることがわかります。
答えは \(2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\) です。
氷の比熱は水の比熱の約半分であるという一般的な知識とも一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
加熱開始 \(120\,\text{s}\) 後の状態を考えます。
グラフを見ると、\(120\,\text{s}\) は融解の途中(\(40\,\text{s}\) ~ \(360\,\text{s}\) の間)です。
融解が始まってから経過した時間分の熱量が、氷を溶かすのに使われました。
溶けた氷の量を計算し、全体量から引くことで「残っている氷」の量を求めます。
この設問における重要なポイント
- 融解に使われた時間: \(120\,\text{s}\) の時点では、最初の \(40\,\text{s}\) は温度上昇に使われたので、融解に使われた時間は \(120 – 40 = 80\,\text{s}\) です。
- 溶けた量: 供給された熱量を融解熱で割ることで求められます。
具体的な解説と立式
融解に使われた時間を \(t’ = 120 – 40 = 80\,\text{s}\) とします。
この間に溶けた氷の質量を \(\Delta m\) とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P t’ &= \Delta m L
\end{aligned}
$$
残っている氷の質量 \(m_{\text{残}}\) は、全体の質量 \(m\) から溶けた分 \(\Delta m\) を引いたものです。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{残}} &= m – \Delta m
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 潜熱の熱量: \(Q = mL\)
- ジュール熱: \(Q = Pt\)
まず溶けた質量 \(\Delta m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
210 \times 80 &= \Delta m \times 336 \\[2.0ex]
16800 &= 336 \Delta m \\[2.0ex]
\Delta m &= \frac{16800}{336} \\[2.0ex]
&= 50
\end{aligned}
$$
残っている氷の質量を求めます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{残}} &= 200 – 50 \\[2.0ex]
&= 150
\end{aligned}
$$
\(120\,\text{s}\) 経ったとき、最初の \(40\,\text{s}\) は準備運動(温度上昇)で、残りの \(80\,\text{s}\) で本格的に氷を溶かしていました。
\(80\,\text{s}\) 分のエネルギーでどれだけの氷が溶けるかを計算すると \(50\,\text{g}\) でした。
元々 \(200\,\text{g}\) あったので、残りは \(150\,\text{g}\) です。
答えは \(150\,\text{g}\) です。
融解期間全体(\(320\,\text{s}\))のうち \(80\,\text{s}\) が経過したので、全体の \(1/4\) が溶けたことになります。\(200\,\text{g}\) の \(1/4\) は \(50\,\text{g}\) なので、残りは \(150\,\text{g}\) となり、計算の整合性が取れています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 状態変化と潜熱のエネルギー収支
- 核心: 物質が固体から液体、液体から気体へと変化するとき、温度は一定に保たれますが、エネルギー(潜熱)は吸収され続けます。この「見えない熱」の正体を理解することが重要です。
- 理解のポイント:
- 温度変化区間: 加えられた熱は分子の運動エネルギー(温度)を上げるために使われます(\(Q=mc\Delta T\))。
- 状態変化区間: 加えられた熱は分子間の結合を切るためのポテンシャルエネルギーとして蓄えられます(\(Q=mL\))。温度計の数値が変わらなくても、エネルギーは確実に物質の中に溜まっています。
- ジュール熱と熱量の等価性
- 核心: 電気エネルギー \(W=Pt\) は、抵抗線を通じて熱エネルギー \(Q\) に100%変換されます(断熱容器の場合)。
- 理解のポイント:
- エネルギー保存則: 「電気の仕事」=「物質の内部エネルギー増加」という図式を常に頭に描きましょう。グラフの横軸(時間)は、実質的に「加えたエネルギー量」を表しています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 冷却曲線: 加熱をやめて自然冷却する際の温度変化グラフから、凝固点や比熱を求める問題。グラフの形は加熱時の逆になります。
- 混合問題: 氷の中に高温の金属球を入れるなどして、最終的に氷が全部溶けるか、一部残るかを判定する問題。
- 気化熱の測定: 水を沸騰させ続け、減少した水の質量と加熱時間から気化熱を求める問題。原理は融解熱と同じです。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの「傾き」と「平らな部分」を読む:
- 傾きがある部分 \(\rightarrow\) 温度変化(比熱 \(c\) が関係)
- 平らな部分 \(\rightarrow\) 状態変化(潜熱 \(L\) が関係)
- 時間をエネルギーに換算する: 横軸の「時間」に電力 \(P\) を掛ければ、そのまま「投入エネルギー」になります。
- フェーズごとに式を立てる: 「氷の昇温」「融解」「水の昇温」と、現象ごとに区切って立式しましょう。混ぜて考えてはいけません。
- グラフの「傾き」と「平らな部分」を読む:
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 融解時間の読み取りミス:
- 誤解: 融解終了時刻(\(360\,\text{s}\))をそのまま融解時間として使ってしまう。
- 対策: 融解が「始まった時刻(\(40\,\text{s}\))」と「終わった時刻(\(360\,\text{s}\))」の差(\(320\,\text{s}\))を使う必要があります。グラフの区間の幅を見る癖をつけましょう。
- 比熱と熱容量の混同:
- 誤解: \(Q=C\Delta T\) と \(Q=mc\Delta T\) を混同し、質量 \(m\) を掛け忘れたり二重に掛けたりする。
- 対策: 単位を確認しましょう。比熱は \(\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})\)、熱容量は \(\text{J}/\text{K}\) です。質量 \(\text{g}\) があるかないかで判断できます。
- 状態の判定ミス:
- 誤解: 「加熱開始 \(120\,\text{s}\) 後」と言われたとき、まだ氷なのか、もう水なのか、混ざっているのかを直感で決めてしまう。
- 対策: グラフの時間軸を見て、どのフェーズ(昇温中か融解中か)にいるかを必ず確認してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)(4)での公式選択(顕熱の公式):
- 選定理由: 温度が変化している区間だからです。
- 適用根拠: 物質の状態(固体・液体)が変わらず、温度だけが変わる場合、熱量は温度変化に比例します。
- 問(3)(5)での公式選択(潜熱の公式):
- 選定理由: 温度が一定で、状態が変化している区間だからです。
- 適用根拠: 融解中は温度が変わらないため \(\Delta T=0\) となり、比熱の公式は使えません。代わりに質量に比例する潜熱の公式 \(Q=mL\) を使います。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 桁数の管理:
- \(4.2 \times 10^4\) のような指数表記と、\(200\) や \(50\) のような通常表記が混在しています。計算時はすべて指数なし(\(42000\))にするか、すべて指数付きにするか統一するとミスが減ります。今回は指数なしの方が直感的で簡単です。
- 検算のテクニック:
- 比熱の大小: 一般に、氷の比熱(約 \(2.1\))は水の比熱(\(4.2\))の約半分です。計算結果がこの関係から大きく外れていたら(例えば氷の方が大きいなど)、どこかで計算ミスをしています。
- 融解熱の大きさ: 融解熱(\(336\,\text{J/g}\))は、\(1\,\text{g}\) の水を \(1^\circ\text{C}\) 上げる熱量(\(4.2\,\text{J}\))の約80倍です。つまり、氷を溶かすには、水を \(0^\circ\text{C}\) から \(80^\circ\text{C}\) まで温めるのと同じくらいの莫大なエネルギーが必要です。この感覚を持っていると、桁間違いに気づけます。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
問題58 (北海道大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(4)の別解: 微積分を用いた力積と圧力の導出
- 運動量変化を時間積分として捉え、力積の定義から圧力を導出する過程を、微積分を用いてより厳密に記述します。
- 設問(8)の別解: 統計力学的な視点からの内部エネルギー導出
- エネルギー等分配則を用いて、自由度と内部エネルギーの関係を一般的に解説します。
- 設問(1)〜(4)の別解: 微積分を用いた力積と圧力の導出
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 力積が力の時間積分であること(\(I = \int F dt\))を明示し、離散的な衝突現象を連続的な圧力として捉えるための数学的基礎(時間平均)を理解できます。
- 統計力学的な解法: 単原子分子に限らず、二原子分子などへの拡張性を持つ普遍的な理解が得られます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「気体分子運動論」です。
ミクロな分子の衝突現象から、マクロな圧力や温度、内部エネルギーといった熱力学的な量を導出する過程を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力積と運動量変化の関係: 物体が受ける力積は、その物体の運動量の変化に等しいです。
- 作用・反作用の法則: 分子が壁に与える力積は、壁が分子に与える力積と大きさが等しく向きが逆です。
- 圧力の定義: 単位面積あたりに働く力です。
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
- 内部エネルギー: 理想気体の内部エネルギーは、構成する分子の運動エネルギーの総和です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(4)では、1個の分子が壁に与える力積を計算し、それを全分子に拡張して圧力を導出します。
- (5)では、等方性(どの方向も平等)を利用して、速度の二乗平均と成分の二乗平均の関係を用います。
- (6)〜(8)では、マクロな状態方程式とミクロな運動エネルギーの式を比較し、温度と運動エネルギー、内部エネルギーの関係を導きます。
空所(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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