「良問の風」攻略ガイド(116〜120問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題116 (金沢工大+岩手大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解1: ミルマンの定理を用いた解法
      • 回路のノード(接点)間の電位差を一発で求める定理を用い、連立方程式を解く手間を省略します。
    • 設問(2)の別解2: 重ね合わせの理を用いた解法
      • 2つの電池がそれぞれ単独で存在する場合の電流を計算し、それらを足し合わせることで解を導きます。線形回路の性質を利用したアプローチです。
    • 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(マクスウェル方程式からの導出)
      • キルヒホッフの第2法則を自明のものとせず、電磁気学の基礎方程式(マクスウェル方程式)とベクトルの線積分から、「なぜ回路を一周すると電位差がゼロになるのか」を原理的に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • ミルマンの定理: 複雑な連立方程式を回避し、計算ミスを減らすための強力な実戦テクニックです。
    • 重ね合わせの理: 複雑な回路を単純な回路の和として分解して捉える視点を養い、検算手段としても有効です。
    • 微積分の解法: 公式の暗記ではなく、電場と電位の定義に基づいた物理的理解を深め、大学物理への架け橋となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「複雑な直流回路の解析と電力収支」です。複数の電池と抵抗を含む回路において、電流の分布とエネルギーの流れを正確に把握する力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の分岐点において、流れ込む電流の和と流れ出る電流の和は等しい(電荷保存則)。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 任意の閉回路において、起電力の和は電圧降下の和に等しい(エネルギー保存則)。
  • 電力とエネルギー保存: 電池が供給する電力と、抵抗で消費される電力、および充電される電池に蓄えられる電力の関係を理解します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、キルヒホッフの法則を用いて閉回路ごとの方程式を立て、連立方程式を解いて各電流を求めます。
  • (3)(4)では、求めた電流値を用いて、抵抗での消費電力 \(RI^2\) と電池の供給電力 \(EI\) を計算します。
  • (5)では、回路全体のエネルギー収支を考察し、供給電力と消費電力が一致しない物理的理由(電池の充電)を説明します。

問(1)

思考の道筋とポイント
キルヒホッフの第2法則を用いて、指定された閉回路(ループ)についての方程式を立てます。
立式の際は、「ある点から出発し、一周して元の点に戻ったときの電位の変化の総和はゼロである」という原則に基づきます。

この設問における重要なポイント

  • 起電力 \(E\): 電池の負極から正極へ通るとき電位は上がり(\(+E\))、逆なら下がります(\(-E\))。
  • 電圧降下 \(RI\): 抵抗を電流と同じ向きに通るとき電位は下がり(\(-RI\))、逆なら上がります(\(+RI\))。
  • 電流の定義: 図の矢印に従い、\(I_1\) は下辺を左向き、\(I_2\) は上辺を左向きとします。中辺(\(R_2\))の電流は、キルヒホッフの第1法則より、左側の分岐点に \(I_1\) と \(I_2\) が流れ込むため、右向きに \(I_1 + I_2\) となります。

具体的な解説と立式
(ア) 閉回路 \(E_1 \to R_2 \to R_3 \to E_1\)
このループは、下辺の電池 \(E_1\) から出発し、中辺 \(R_2\)、右辺 \(R_3\) を通って戻る経路です。
時計回りに一周して考えます。

1. \(E_1\)(起電力 \(100\,\text{V}\)): 負極(右)から正極(左)へ通過するため、電位は上がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= +100
\end{aligned}
$$
2. \(R_2\)(抵抗 \(20\,\Omega\)): 左から右へ通過します。ここを流れる電流は右向きに \(I_1 + I_2\) です。電流と同じ向きに進むため、電位は下がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= -20(I_1 + I_2)
\end{aligned}
$$
3. \(R_3\)(抵抗 \(8\,\Omega\)): 上から下へ通過します。ここを流れる電流は \(I_1\)(下向き)です。電流と同じ向きに進むため、電位は下がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= -8I_1
\end{aligned}
$$

一周での電位変化の総和は \(0\) なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
+100 – 20(I_1 + I_2) – 8I_1 &= 0
\end{aligned}
$$
これを「起電力の和 \(=\) 電圧降下の和」の形に整理します。
$$
\begin{aligned}
100 &= 20(I_1 + I_2) + 8I_1 \quad \cdots (ア)
\end{aligned}
$$

(イ) 閉回路 \(E_1 \to R_1 \to E_2 \to R_3 \to E_1\)
このループは、回路の外周を時計回りに一周する経路です。

1. \(E_1\)(起電力 \(100\,\text{V}\)): 負極から正極へ通過するため、電位は上がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= +100
\end{aligned}
$$
2. \(R_1\)(抵抗 \(15\,\Omega\)): 左から右へ通過します。電流 \(I_2\) は左向きなので、電流と逆向きに進みます。よって電位は上がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= +15I_2
\end{aligned}
$$
3. \(E_2\)(起電力 \(30\,\text{V}\)): 左が正極、右が負極です。左から右へ通過するため、正極から負極へ下がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= -30
\end{aligned}
$$
4. \(R_3\)(抵抗 \(8\,\Omega\)): 上から下へ通過します。電流 \(I_1\)(下向き)と同じ向きなので、電位は下がります。
$$
\begin{aligned}
\text{変化} &= -8I_1
\end{aligned}
$$

一周での総和は \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
+100 + 15I_2 – 30 – 8I_1 &= 0
\end{aligned}
$$
これを整理します。
$$
\begin{aligned}
100 – 30 &= 8I_1 – 15I_2 \quad \cdots (イ)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \((\text{起電力の和}) = (\text{電圧降下の和})\)
計算過程

式変形のみのため、上記の立式過程に含まれます。

この設問の平易な説明

回路の中を散歩するように一周回ったとき、電池のエレベーターで上がった高さ(電圧)と、抵抗の滑り台で下がった高さ(電圧降下)は、最終的に元の場所に戻れば帳尻が合うはずです。
(ア)のコースでは、\(100\,\text{V}\) 上がって、2つの抵抗で下がって戻ります。
(イ)のコースでは、\(100\,\text{V}\) 上がった後、逆流する抵抗 \(R_1\) でさらに上がり、逆向きの電池 \(E_2\) でガクンと下がり、最後の抵抗 \(R_3\) で下がって戻ります。これを式にしました。

結論と吟味

得られた式は模範解答と一致しており、符号や項の過不足もありません。

解答 (1)
(ア) $$ 100 = 20(I_1 + I_2) + 8I_1 $$
(イ) $$ 100 + (-30) = -15I_2 + 8I_1 $$
(※または \(100 – 30 = 8I_1 – 15I_2\) など同等の式)
別解: 微積分を用いた体系的解法(マクスウェル方程式からの導出)

思考の道筋とポイント
キルヒホッフの第2法則は、電磁気学の基本原理であるマクスウェル方程式から導かれます。
ここでは、「なぜ一周すると電位差がゼロになるのか」を、電場の性質から数学的に示します。

この設問における重要なポイント

  • 定常電流: 電流や電荷分布が時間的に変化しない状態(\(\frac{\partial \vec{B}}{\partial t} = 0\))。
  • 保存場: 渦のないベクトル場では、線積分の値が経路によらず始点と終点だけで決まります。

具体的な解説と立式
電磁誘導に関するファラデーの法則(マクスウェル方程式の一つ)は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\nabla \times \vec{E} &= -\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\vec{E}\) は電場ベクトル、\(\vec{B}\) は磁束密度ベクトルです。
定常電流回路では磁場が時間変化しないため、右辺は \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\nabla \times \vec{E} &= \vec{0}
\end{aligned}
$$
これにストークスの定理を適用します。任意の閉曲線 \(C\) と、それを縁とする曲面 \(S\) について考えます。
$$
\begin{aligned}
\oint_C \vec{E} \cdot d\vec{l} &= \int_S (\nabla \times \vec{E}) \cdot \vec{n} \, dS \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
つまり、回路を一周する閉曲線 \(C\) に沿って電場を線積分すると、その値は必ず \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\oint_C \vec{E} \cdot d\vec{l} &= 0
\end{aligned}
$$
電位 \(V\) は \(V(\vec{r}) = -\int_{\text{基準}}^{\vec{r}} \vec{E} \cdot d\vec{l}\) と定義されるため、電位差 \(dV = -\vec{E} \cdot d\vec{l}\) です。
したがって、一周積分は「電位変化の総和がゼロ」であることを意味します。
$$
\begin{aligned}
\oint_C dV &= 0
\end{aligned}
$$
この積分を、抵抗部分(オームの法則 \(\vec{E} = \rho \vec{j}\) より電位降下)と、電池部分(非静電力による電位上昇)に分割して記述したものが、キルヒホッフの第2法則です。

使用した物理公式

  • ファラデーの法則: \(\nabla \times \vec{E} = -\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}\)
  • ストークスの定理: \(\oint_C \vec{A} \cdot d\vec{l} = \int_S (\nabla \times \vec{A}) \cdot \vec{n} \, dS\)
計算過程

導出過程そのものが計算過程となります。

この設問の平易な説明

「一周したら元の高さに戻る」というキルヒホッフの法則は、実は「磁石の力が変化しない限り、電気の力は渦を巻かない」という電磁気の深いルールから来ています。
渦を巻かないので、どんなルートを通っても、一周して戻ってくればプラスマイナスゼロになるのです。

結論と吟味

この原理的導出により、キルヒホッフの法則が単なる経験則ではなく、エネルギー保存則と電磁場の性質に裏打ちされた法則であることが確認できます。

解答 (1)
(ア) $$ 100 = 20(I_1 + I_2) + 8I_1 $$
(イ) $$ 100 + (-30) = -15I_2 + 8I_1 $$

問(2)

思考の道筋とポイント
問(1)で立てた2つの式を連立方程式として解き、\(I_1, I_2\) を求めます。
\(E_2\) を流れる電流は、図より上辺を流れる電流 \(I_2\) そのものです。
ただし、\(I_2\) の定義された向き(左向き)に対し、計算結果が負であれば、実際の電流は逆向き(右向き)になります。

この設問における重要なポイント

  • 連立方程式の解法: 加減法を用いて変数を消去します。
  • 電流の向きの解釈: 計算結果の符号が、仮定した向きとの整合性を示します。

具体的な解説と立式
問(1)の式を整理して連立させます。
$$
\begin{aligned}
100 &= 28I_1 + 20I_2 \quad \cdots ① \\[2.0ex]
70 &= 8I_1 – 15I_2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
式①の両辺を \(4\) で割って簡単にしておきます。
$$
\begin{aligned}
25 &= 7I_1 + 5I_2 \quad \cdots ①’
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(数学的な連立方程式の解法)
計算過程

式①’ を \(3\) 倍して、式②と足し合わせ、\(I_2\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
75 &= 21I_1 + 15I_2 \quad (\text{①}’ \times 3) \\[2.0ex]
70 &= 8I_1 – 15I_2 \quad (\text{②})
\end{aligned}
$$
これらを辺々足します。
$$
\begin{aligned}
145 &= 29I_1
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{145}{29} \\[2.0ex]
&= 5\,\text{A}
\end{aligned}
$$
この \(I_1 = 5\) を式①’ に代入して \(I_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
25 &= 7 \times 5 + 5I_2 \\[2.0ex]
25 &= 35 + 5I_2 \\[2.0ex]
5I_2 &= 25 – 35 \\[2.0ex]
5I_2 &= -10 \\[2.0ex]
I_2 &= -2\,\text{A}
\end{aligned}
$$
\(I_2\) の値が負になったため、上辺を流れる実際の電流は、定義された矢印(左向き)とは逆の「右向き」です。
その大きさは \(|-2| = 2\,\text{A}\) です。

この設問の平易な説明

連立方程式を解くと、\(I_1\) はプラス、\(I_2\) はマイナスの値が出ました。
プラスは「予想した矢印の向き通りに流れている」こと、マイナスは「予想とは逆向きに流れている」ことを意味します。
\(I_2\) は左向きと仮定していましたが、実際には右向きに流れています。つまり、電池 \(E_2\) の場所では、電流は右向きに流れます。

結論と吟味

\(I_1 = 5\,\text{A}\), \(I_2 = -2\,\text{A}\)。
\(E_2\) を流れる電流は \(I_2\) なので、大きさは \(2\,\text{A}\)。
向きは \(I_2\) の矢印(左)と逆なので「右向き」。
これは模範解答と一致します。

解答 (2)
\(I_1 = 5\,\text{A}\), \(I_2 = -2\,\text{A}\)
\(E_2\) を流れる電流: 右向きに \(2\,\text{A}\)
別解: ミルマンの定理を用いた解法

思考の道筋とポイント
回路の左側の接続点をA、右側の接続点をBとし、この2点間の電位差 \(V_{AB}\) をミルマンの定理で直接求めます。
これにより、連立方程式を解くことなく、各枝の電流を個別に計算できます。

この設問における重要なポイント

  • ミルマンの定理: 並列接続された複数の枝があるとき、全電圧 \(V = \frac{\sum (E_k/R_k)}{\sum (1/R_k)}\)。
  • 極性の注意: A点を基準(\(0\,\text{V}\))とし、B点の電位 \(V_B\) を求めます。各枝の起電力は、B点の電位を上げる向きならプラス、下げる向きならマイナスとします。

具体的な解説と立式
A点の電位を \(0\,\text{V}\) とします。
各枝について、AからBへ向かう経路を見ます。
1. 上枝: \(R_1(15\,\Omega)\) と \(E_2(30\,\text{V})\)。\(E_2\) は左が正極なので、A側が高電位、B側が低電位となる向きです。よって起電力は \(-30\,\text{V}\) として扱います。
2. 中枝: \(R_2(20\,\Omega)\)。起電力はありません(\(0\,\text{V}\))。
3. 下枝: \(E_1(100\,\text{V})\) と \(R_3(8\,\Omega)\)。\(E_1\) は左が正極なので、同様に電位を下げる向きです。起電力は \(-100\,\text{V}\) です。

ミルマンの定理より、B点の電位 \(V_B\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_B &= \frac{\frac{-30}{15} + \frac{0}{20} + \frac{-100}{8}}{\frac{1}{15} + \frac{1}{20} + \frac{1}{8}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ミルマンの定理: \(V = \frac{E_1/R_1 + E_2/R_2 + \dots}{1/R_1 + 1/R_2 + \dots}\)
  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
計算過程

分子と分母を計算します。
$$
\begin{aligned}
\text{分子} &= -2 + 0 – 12.5 \\[2.0ex]
&= -14.5
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\text{分母} &= \frac{8 + 6 + 15}{120} \\[2.0ex]
&= \frac{29}{120}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
V_B &= \frac{-14.5}{\frac{29}{120}} \\[2.0ex]
&= – \frac{29}{2} \times \frac{120}{29} \\[2.0ex]
&= -60\,\text{V}
\end{aligned}
$$
B点はA点より \(60\,\text{V}\) 低いことがわかりました。
これより各電流を求めます。
* \(I_1\)(下枝を左向き): B(\(-60\))からA(\(0\))へ向かう電流です。
下枝には \(E_1(100\,\text{V})\) があり、A側を高くしようとします。
オームの法則より、
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{(V_B – V_A) + E_1}{R_3} \\[2.0ex]
&= \frac{-60 – 0 + 100}{8} \\[2.0ex]
&= \frac{40}{8} \\[2.0ex]
&= 5\,\text{A}
\end{aligned}
$$
* \(I_2\)(上枝を左向き): B(\(-60\))からA(\(0\))へ向かう電流です。
上枝には \(E_2(30\,\text{V})\) があり、A側を高くしようとします。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{(V_B – V_A) + E_2}{R_1} \\[2.0ex]
&= \frac{-60 – 0 + 30}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{-30}{15} \\[2.0ex]
&= -2\,\text{A}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路の左端と右端の電圧の差を一気に計算する「ミルマンの定理」を使いました。
これを使うと、連立方程式を立てなくても、それぞれの道にかかる電圧がすぐにわかるので、あとはオームの法則だけで電流が求まります。

結論と吟味

\(I_1 = 5\,\text{A}\), \(I_2 = -2\,\text{A}\) となり、メインの解法と完全に一致しました。
計算量が少なく、非常に効率的な解法です。

解答 (2)
\(I_1 = 5\,\text{A}\), \(I_2 = -2\,\text{A}\)
\(E_2\) を流れる電流: 右向きに \(2\,\text{A}\)
別解: 重ね合わせの理を用いた解法

思考の道筋とポイント
回路が線形(抵抗と電池のみ)であるため、重ね合わせの理が適用できます。
「\(E_1\) だけがある場合」と「\(E_2\) だけがある場合」の電流を別々に計算し、最後に足し合わせます。

この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの理: 複数の電源がある回路の電流は、各電源が単独で存在するときの電流の和になります。
  • 電源の除去: 電圧源を単独で考える際、他の電圧源は短絡(\(0\,\text{V}\)の導線)として扱います。

具体的な解説と立式
1. \(E_1(100\,\text{V})\) のみの場合(\(E_2\) を短絡):
上辺の \(R_1(15\,\Omega)\) と中辺の \(R_2(20\,\Omega)\) が並列になり、それに \(R_3(8\,\Omega)\) が直列につながります。
合成抵抗 \(R_{\text{並列}}\) は、
$$
\begin{aligned}
R_{\text{並列}} &= \frac{15 \times 20}{15 + 20}
\end{aligned}
$$
全抵抗 \(R_{\text{全}1}\) は、
$$
\begin{aligned}
R_{\text{全}1} &= 8 + R_{\text{並列}}
\end{aligned}
$$
このときの下辺電流 \(I_1’\) は、
$$
\begin{aligned}
I_1′ &= \frac{100}{R_{\text{全}1}}
\end{aligned}
$$
上辺電流 \(I_2’\) は、\(I_1’\) が分流したもので、向きは右向き(\(I_2\)の定義と逆)になります。
$$
\begin{aligned}
I_2′ &= – I_1′ \times \frac{20}{15+20}
\end{aligned}
$$

2. \(E_2(30\,\text{V})\) のみの場合(\(E_1\) を短絡):
中辺 \(R_2(20\,\Omega)\) と下辺 \(R_3(8\,\Omega)\) が並列になり、それに \(R_1(15\,\Omega)\) が直列につながります。
合成抵抗 \(R_{\text{並列}}\) は、
$$
\begin{aligned}
R_{\text{並列}} &= \frac{20 \times 8}{20 + 8}
\end{aligned}
$$
全抵抗 \(R_{\text{全}2}\) は、
$$
\begin{aligned}
R_{\text{全}2} &= 15 + R_{\text{並列}}
\end{aligned}
$$
このときの上辺電流 \(I_2”\)(左向き)は、
$$
\begin{aligned}
I_2” &= \frac{30}{R_{\text{全}2}}
\end{aligned}
$$
下辺電流 \(I_1”\) は、\(I_2”\) が分流したもので、向きは右向き(\(I_1\)の定義と逆)になります。
$$
\begin{aligned}
I_1” &= – I_2” \times \frac{20}{20+8}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 合成抵抗(並列): \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
  • 分流の法則: \(I_1 = I \frac{R_2}{R_1+R_2}\)
計算過程

1. \(E_1\) のみの場合:
$$
\begin{aligned}
R_{\text{並列}} &= \frac{300}{35} \\[2.0ex]
&= \frac{60}{7}\,\Omega
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
R_{\text{全}1} &= 8 + \frac{60}{7} \\[2.0ex]
&= \frac{56+60}{7} \\[2.0ex]
&= \frac{116}{7}\,\Omega
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_1′ &= \frac{100}{116/7} \\[2.0ex]
&= \frac{700}{116} \\[2.0ex]
&= \frac{175}{29}\,\text{A}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_2′ &= – \frac{175}{29} \times \frac{4}{7} \\[2.0ex]
&= – \frac{100}{29}\,\text{A}
\end{aligned}
$$

2. \(E_2\) のみの場合:
$$
\begin{aligned}
R_{\text{並列}} &= \frac{160}{28} \\[2.0ex]
&= \frac{40}{7}\,\Omega
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
R_{\text{全}2} &= 15 + \frac{40}{7} \\[2.0ex]
&= \frac{105+40}{7} \\[2.0ex]
&= \frac{145}{7}\,\Omega
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_2” &= \frac{30}{145/7} \\[2.0ex]
&= \frac{210}{145} \\[2.0ex]
&= \frac{42}{29}\,\text{A}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_1” &= – \frac{42}{29} \times \frac{5}{7} \\[2.0ex]
&= – \frac{30}{29}\,\text{A}
\end{aligned}
$$

3. 合計:
$$
\begin{aligned}
I_1 &= I_1′ + I_1” \\[2.0ex]
&= \frac{175}{29} – \frac{30}{29} \\[2.0ex]
&= \frac{145}{29} \\[2.0ex]
&= 5\,\text{A}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_2 &= I_2′ + I_2” \\[2.0ex]
&= -\frac{100}{29} + \frac{42}{29} \\[2.0ex]
&= -\frac{58}{29} \\[2.0ex]
&= -2\,\text{A}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「電池が1個しかない単純な回路」を2回計算して、その結果を足し合わせる方法です。
\(E_1\) だけがあるときの電流と、\(E_2\) だけがあるときの電流をそれぞれ求め、最後に合体させると、本物の回路の電流になります。

結論と吟味

計算は複雑ですが、結果は完全に一致しました。

解答 (2)
\(I_1 = 5\,\text{A}\), \(I_2 = -2\,\text{A}\)
\(E_2\) を流れる電流: 右向きに \(2\,\text{A}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
各抵抗で消費される電力 \(P\) は、抵抗値 \(R\) と流れる電流 \(I\) を用いて \(P = RI^2\) で求められます。
3つの抵抗それぞれの消費電力を計算し、合計します。

この設問における重要なポイント

  • \(R_1\) の電流: \(I_2 = -2\,\text{A}\) なので、大きさは \(2\,\text{A}\)。
  • \(R_2\) の電流: \(I_1 + I_2 = 5 + (-2) = 3\,\text{A}\)。
  • \(R_3\) の電流: \(I_1 = 5\,\text{A}\)。

具体的な解説と立式
求める電力の和 \(P\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
P &= R_1 |I_2|^2 + R_2 |I_1 + I_2|^2 + R_3 |I_1|^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P = RI^2\)
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= 15 \times 2^2 + 20 \times 3^2 + 8 \times 5^2 \\[2.0ex]
&= 15 \times 4 + 20 \times 9 + 8 \times 25 \\[2.0ex]
&= 60 + 180 + 200 \\[2.0ex]
&= 440\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

抵抗は電気エネルギーを熱(ジュール熱)に変える装置です。
それぞれの抵抗に流れる電流の大きさがわかったので、公式 \(P=RI^2\) を使って、どれだけの勢いで熱が発生しているかを計算し、全部足し合わせました。

結論と吟味

計算ミスはなく、単位も \(\text{W}\)(ワット)で適切です。

解答 (3) $$ 440\,\text{W} $$

問(4)

思考の道筋とポイント
電池の供給電力 \(Q\) は、起電力 \(E\) と、電池を通過する電流 \(I\) の積 \(Q = EI\) で求められます。
ただし、電流が起電力の向き(負極→正極)に流れている場合のみ「供給」となります。

この設問における重要なポイント

  • 供給の定義: 電池内部を負極から正極へ電流が流れるとき、電池は外部に仕事をします。

具体的な解説と立式
\(E_1\)(\(100\,\text{V}\))を流れる電流は \(I_1 = 5\,\text{A}\) です。
\(I_1\) の向きは左向きであり、これは \(E_1\) の負極から正極への向き(起電力の向き)と一致しています。
したがって、\(E_1\) は電力を供給しています。
$$
\begin{aligned}
Q &= E_1 I_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電池の供給電力: \(P = EI\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
Q &= 100 \times 5 \\[2.0ex]
&= 500\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電池 \(E_1\) は、\(100\,\text{V}\) の力で \(5\,\text{A}\) の電流を送り出しています。
この仕事率は \(100 \times 5 = 500\,\text{W}\) です。これが回路全体へのエネルギーの供給源となっています。

結論と吟味

\(500\,\text{W}\) という値が得られました。

解答 (4) $$ 500\,\text{W} $$

問(5)

思考の道筋とポイント
供給電力 \(Q = 500\,\text{W}\) と消費電力 \(P = 440\,\text{W}\) が一致しません。
エネルギー保存則は絶対なので、差額の \(60\,\text{W}\) がどこへ行ったのかを考えます。
鍵は、もう一つの電池 \(E_2\) です。

この設問における重要なポイント

  • 電池の充電: 電池の正極から電流が流れ込む(逆流する)場合、その電池は電力を供給するのではなく、仕事をされてエネルギーを蓄えます(充電)。
  • \(E_2\) の状態: \(I_2 = -2\,\text{A}\) より、実際の電流は右向きです。\(E_2\) は左が正極なので、電流は正極に向かって流れ込んでいます。

具体的な解説と立式
\(E_2\) における電力収支を計算します。
\(E_2\) の起電力は \(30\,\text{V}\)、流れる電流の大きさは \(2\,\text{A}\) です。
電流は正極に流れ込んでいるため、\(E_2\) は電力を消費(吸収)しています。
その大きさ \(P_{E2}\) は、
$$
\begin{aligned}
P_{E2} &= E_2 |I_2|
\end{aligned}
$$
これを含めたエネルギー保存則を確認します。
$$
\begin{aligned}
(\text{供給}) &= (\text{抵抗での消費}) + (\text{電池への充電}) \\[2.0ex]
Q &= P + P_{E2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • エネルギー保存則
計算過程

$$
\begin{aligned}
P_{E2} &= 30 \times 2 \\[2.0ex]
&= 60\,\text{W}
\end{aligned}
$$
実際に \(500 = 440 + 60\) となり、保存則が成立しています。

この設問の平易な説明

\(E_1\) が頑張って \(500\,\text{W}\) のエネルギーを出していますが、抵抗たちが熱として使ったのは \(440\,\text{W}\) だけでした。
残りの \(60\,\text{W}\) は消えたわけではありません。電池 \(E_2\) に無理やり逆向きに電流が流し込まれたことで、\(E_2\) が充電され、化学エネルギーとして蓄えられたのです。

結論と吟味

差額の \(60\,\text{W}\) が \(E_2\) の充電電力と完全に一致するため、物理的に正しい解釈です。

解答 (5)
電池 \(E_2\) の正極側に電流が流れ込み、充電されているため。
(詳細: \(E_1\) の供給電力の一部 \(60\,\text{W}\) が、\(E_2\) の内部で電気エネルギーから化学エネルギーに変換され蓄えられているから。)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • キルヒホッフの法則の物理的意味
    • 核心: 第1法則は「電荷保存則(電流の出入りは等しい)」、第2法則は「エネルギー保存則(一周すると電位は元に戻る)」を回路に適用したものです。単なる計算ルールではなく、物理の根本原理そのものであることを理解しましょう。
    • 理解のポイント:
      • 電位のアップダウン: 電池はポンプ(電位を上げる)、抵抗は水車(電位を下げる)とイメージします。一周して元の高さに戻るという感覚が、立式のミスを防ぎます。
  • 電力収支とエネルギー保存則
    • 核心: 回路全体で見ると、供給されたエネルギーは必ずどこかで消費されるか、蓄えられます。「供給電力 \(=\) 消費電力 \(+\) 充電電力」というバランスシートが常に成立します。
    • 理解のポイント:
      • 電池の二面性: 電池は常にエネルギーを供給するとは限りません。電流が逆流(正極へ流入)すれば、エネルギーを受け取る「負荷(充電)」として振る舞います。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ブリッジ回路: 抵抗が橋渡し状に接続された回路でも、キルヒホッフの法則は万能です。閉回路を適切に選べば必ず解けます。
    • コンデンサーを含む回路: 定常状態ではコンデンサーに電流が流れないため、その枝を「断線」とみなして電流分布を求め、その後で電位差から電荷を計算します。
    • 非線形抵抗(ダイオードなど): キルヒホッフの法則自体は成立しますが、オームの法則が使えないため、グラフを用いた作図解法などが必要になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 未知数の数を減らす: 電流を \(I_1, I_2, I_3…\) と置きすぎず、第1法則を使って \(I_1+I_2\) のように表すことで、変数を減らせます。
    2. 閉回路の選び方: 未知数が少ない、あるいは計算が簡単そうなループ(抵抗が少ないルートなど)を優先して選びます。
    3. 解法の選択:
      • 「電流分布」を知りたい \(\rightarrow\) キルヒホッフの法則(王道)。
      • 「特定の2点間の電圧」を知りたい \(\rightarrow\) ミルマンの定理(最速)。
      • 「回路の対称性」がある \(\rightarrow\) 重ね合わせの理や対称性の利用。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電流の向きと符号の混乱:
    • 誤解: 計算結果がマイナスになったとき、「計算間違いだ」と焦ったり、図の矢印を勝手に書き換えて混乱する。
    • 対策: マイナスは「仮定した向きと逆」というだけの情報です。自信を持って「図の矢印と逆向き」と答えましょう。途中で矢印を書き換えると、式との整合性が取れなくなります。
  • 起電力と電圧降下の符号ミス:
    • 誤解: 電池の向きや、電流の向きに関わらず、常に \(+E\) や \(-RI\) としてしまう。
    • 対策: 「進む向き」に対して、電池は「負\(\to\)正ならプラス」、抵抗は「電流と同じ向きならマイナス」と、毎回指差し確認しながら符号を決定しましょう。
  • 電力計算の公式適用ミス:
    • 誤解: \(P=VI\) の \(V\) に、抵抗にかかる電圧ではなく、近くの電池の電圧を代入してしまう。
    • 対策: 抵抗での消費電力なら \(P=RI^2\) が最も安全です。\(V\) を使うなら、必ずその抵抗の両端の電位差であることを確認してください。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)での公式選択(キルヒホッフ vs ミルマン):
    • 選定理由: 模範解答(キルヒホッフ)は、どんな回路でも通用する汎用性がありますが、連立方程式を解く手間がかかります。別解(ミルマン)は、並列回路の電圧を一発で出せるため、今回のような「2つの接点間に複数の枝がある」構造には最適です。
    • 適用根拠: 回路図を見ると、左側と右側の2つの大きな接点(ノード)があり、その間に3本の枝が並列に並んでいる構造が明確です。これはミルマンの定理が最も輝くパターンです。
  • 問(1)別解での公式選択(マクスウェル方程式):
    • 選定理由: 「なぜ一周するとゼロなのか」という根本的な疑問に答えるためです。高校物理では天下り的に教わりますが、大学物理では電場の保存力としての性質から導かれます。
    • 適用根拠: 定常電流回路では磁場が時間変化しないため、電場の回転 \(\nabla \times \vec{E}\) がゼロになり、電位というスカラーポテンシャルが定義できることが数学的に保証されています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 連立方程式の係数チェック:
    • 式を立てた後、すぐに計算に入らず、係数が約分できないか(例: \(100=20I_1+20I_2 \rightarrow 5=I_1+I_2\))を確認します。数字を小さくすることで計算ミスが激減します。
  • 単位の確認(次元解析):
    • 電力 \(P\) の計算で、\(RI^2\) は \([\Omega] \cdot [\text{A}]^2 = [\text{V}/\text{A}] \cdot [\text{A}]^2 = [\text{V}\cdot\text{A}] = [\text{W}]\) となり正しい次元を持ちます。もし \(RI\) なら電圧の次元になってしまい、間違いに気づけます。
  • 極端な例での検算:
    • もし \(E_2=0\) だったら? 重ね合わせの理の「\(E_1\)のみ」の場合と同じ結果になるはずです。このように、一部の値を0にしたり極端に大きくしたりして、直感と合うか確認する癖をつけましょう。

問題117 (千葉工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)(2)の別解: エネルギー収支とポテンシャルを用いた解法
      • 電池の端子電圧の式 \(V = E – rI\) を公式として暗記するのではなく、非静電力による仕事とジュール熱の発生(エネルギー保存則)から導出します。
    • 設問(4)の別解: キルヒホッフの法則(分流)を用いた解法
      • 合成抵抗の公式を用いず、並列回路の各枝に流れる電流を個別に計算することで、抵抗 \(R\) と消費電力を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • エネルギー収支の解法: 電池内部で何が起きているか(化学エネルギーの変換と内部抵抗による損失)を物理的に深く理解できます。
    • キルヒホッフの解法: 合成抵抗の計算が複雑になる場合や、各抵抗の電流・電圧を個別に知りたい場合に有効な、汎用性の高いアプローチです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「実在する電池の特性(内部抵抗)と直流回路の電力」です。理想的な電池とは異なり、実際の電池には内部抵抗が存在し、流れる電流によって端子電圧が変化する様子(\(V-I\)特性)を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電池の内部抵抗: 電池内部にも抵抗成分 \(r\) があり、電流 \(I\) が流れると \(rI\) の電圧降下が生じます。
  • 端子電圧の式: 起電力を \(E\)、内部抵抗を \(r\)、流れる電流を \(I\) とすると、端子電圧は \(V = E – rI\) と表されます。
  • 電力の公式: 電圧 \(V\)、電流 \(I\) の部分での消費電力(または供給電力)は \(P = VI\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、与えられた \(V-I\) グラフが直線であることを利用し、その切片と傾きから起電力 \(E\) と内部抵抗 \(r\) を決定します。
  • (3)では、求めた \(E, r\) の値を用いて、特定の電流値における端子電圧を計算します。
  • (4)では、並列回路における全消費電力と、各枝の電流分布を解析して未知抵抗 \(R\) を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
グラフ(図1)は、電流 \(I\) と端子電圧 \(V\) の関係を示しています。
電池の端子電圧 \(V\) は、起電力 \(E\) から内部抵抗 \(r\) による電圧降下 \(rI\) を引いたものになります。
この関係式 \(V = -rI + E\) を、数学的な一次関数 \(y = ax + b\) と対応させて考えます。
\(I=0\) のときの電圧(\(V\)切片)が起電力 \(E\) に相当しますが、グラフの目盛りは \(I=0\) から始まっていない(あるいは読み取りにくい)場合があるため、グラフ上の読み取りやすい2点を使って直線の式を決定するのが確実です。

この設問における重要なポイント

  • 端子電圧の式: \(V = E – rI\)
  • グラフの読み取り: 格子点を通る明確な座標を2つ選びます。ここでは \((I, V) = (0.2, 1.5)\) と \((1.2, 1.0)\) が読み取れます。

具体的な解説と立式
求める起電力を \(E\)、内部抵抗を \(r\) とします。
端子電圧 \(V\) と電流 \(I\) の関係式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
図1のグラフより、以下の2点の座標を読み取ります。
点A: \(I_1 = 0.2\,\text{A}\), \(V_1 = 1.5\,\text{V}\)
点B: \(I_2 = 1.2\,\text{A}\), \(V_2 = 1.0\,\text{V}\)

これらを式①に代入して連立方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
1.5 &= E – 0.2r \quad \cdots ② \\[2.0ex]
1.0 &= E – 1.2r \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 端子電圧の式: \(V = E – rI\)
計算過程

式②から式③を引いて \(E\) を消去し、先に \(r\) を求めてから \(E\) を出します(問(2)の答えもここで求まります)。
$$
\begin{aligned}
(1.5 – 1.0) &= (E – 0.2r) – (E – 1.2r) \\[2.0ex]
0.5 &= 1.0r \\[2.0ex]
r &= 0.50\,\Omega
\end{aligned}
$$
求めた \(r = 0.50\) を式②に代入して \(E\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
1.5 &= E – 0.2 \times 0.50 \\[2.0ex]
1.5 &= E – 0.10 \\[2.0ex]
E &= 1.5 + 0.10 \\[2.0ex]
&= 1.6\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電池には「本来のパワー(起電力)」がありますが、電流を流すと電池自身が抵抗(内部抵抗)となって邪魔をするため、外に出てくる電圧(端子電圧)は少し下がってしまいます。
グラフを見ると、電流が増えるほど電圧が下がっていることがわかります。
この直線の「スタート地点(電流ゼロのときの電圧)」が本来のパワーである起電力です。計算の結果、\(1.6\,\text{V}\) とわかりました。

結論と吟味

\(E = 1.6\,\text{V}\)。
グラフの \(I=0\) 付近を外挿(延長)して目視すると、\(1.5\) より少し上にあるため、\(1.6\) という値は妥当です。

解答 (1) $$ 1.6\,\text{V} $$
別解: エネルギー収支とポテンシャルを用いた解法

思考の道筋とポイント
公式 \(V = E – rI\) を前提とせず、エネルギー保存則(仕事率の収支)からこの関係式を導出します。
電池内部では、非静電力(化学反応など)が電荷に仕事をしてエネルギーを与え、同時に抵抗成分がジュール熱としてエネルギーを消費します。

この設問における重要なポイント

  • 非静電力の仕事: 起電力 \(E\) の電池が電流 \(I\) を流すとき、単位時間あたり \(EI\) の仕事をします。
  • ジュール熱: 内部抵抗 \(r\) に電流 \(I\) が流れるとき、単位時間あたり \(rI^2\) の熱が発生し、エネルギーが失われます。
  • 供給電力: 電池が外部回路に供給できる電力 \(P_{\text{供給}}\) は、端子電圧 \(V\) と電流 \(I\) の積 \(VI\) です。

具体的な解説と立式
電池内部のエネルギー収支を考えます。
単位時間あたりのエネルギー保存則より、
「非静電力がした仕事率」\(=\)「外部へ供給した電力」\(+\)「内部で消費された電力(ジュール熱)」
が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{非静電力}} &= P_{\text{供給}} + P_{\text{内部損失}}
\end{aligned}
$$
各項を物理量で表します。
$$
\begin{aligned}
EI &= VI + rI^2
\end{aligned}
$$
この式の両辺を電流 \(I\)(\(I \neq 0\))で割ることで、端子電圧の式を導出します。
$$
\begin{aligned}
E &= V + rI
\end{aligned}
$$
これを \(V\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI
\end{aligned}
$$
この式は、\(V\) が \(I\) の一次関数であることを示しており、グラフの形状と一致します。
ここから先はメイン解法と同様に、グラフの2点を代入して \(E\) と \(r\) を決定します。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則(仕事率): \(P_{\text{入}} = P_{\text{出}} + P_{\text{損}}\)
  • 電力: \(P = VI\), \(P = rI^2\)
計算過程

メイン解法と同様の連立方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
1.5 &= E – 0.2r \\[2.0ex]
1.0 &= E – 1.2r
\end{aligned}
$$
これを解いて、
$$
\begin{aligned}
r &= 0.50\,\Omega \\[2.0ex]
E &= 1.6\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電池の中で何が起きているかをエネルギーの視点で見ました。
化学反応で作られたエネルギーの一部は、電池の中を通るときに熱として無駄遣いされてしまいます。
残ったエネルギーだけが、電気のエネルギーとして外に出てきます。
「作った分 \(-\) 無駄になった分 \(=\) 外に出る分」という式を作ると、教科書の公式と同じ式が自然に導かれます。

結論と吟味

原理的な導出からも同じ式が得られ、結果も一致します。

解答 (1) $$ 1.6\,\text{V} $$

問(2)

思考の道筋とポイント
問(1)の計算過程ですでに内部抵抗 \(r\) を求めていますが、ここではグラフの「傾き」に着目して再確認します。
式 \(V = -rI + E\) において、\(I\) の係数 \(-r\) が直線の傾きを表します。

この設問における重要なポイント

  • グラフの傾き: \(V-I\) グラフの傾きは \(-\frac{\Delta V}{\Delta I} = -r\) となります。つまり、傾きの絶対値が内部抵抗 \(r\) です。

具体的な解説と立式
グラフの傾き \(a\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{V_2 – V_1}{I_2 – I_1}
\end{aligned}
$$
また、理論式 \(V = -rI + E\) より、傾き \(a\) と内部抵抗 \(r\) の関係は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
a &= -r
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
r &= -a
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 直線の傾き: \(a = \frac{\Delta y}{\Delta x}\)
計算過程

読み取った2点 \((0.2, 1.5)\), \((1.2, 1.0)\) を用います。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{1.0 – 1.5}{1.2 – 0.2} \\[2.0ex]
&= \frac{-0.5}{1.0} \\[2.0ex]
&= -0.5
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
r &= -(-0.5) \\[2.0ex]
&= 0.50\,\Omega
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

グラフの坂道の急具合(傾き)が、内部抵抗の大きさを表しています。
電流が \(1\,\text{A}\) 増えるごとに電圧がどれだけ下がるか、という割合を計算すると、それがそのまま内部抵抗の値になります。

結論と吟味

\(r = 0.50\,\Omega\)。
有効数字はグラフの読み取り値(2桁)に合わせて2桁とします。

解答 (2) $$ 0.50\,\Omega $$

問(3)

思考の道筋とポイント
求めた \(E = 1.6\,\text{V}\) と \(r = 0.50\,\Omega\) を用いて、電流 \(I = 1.0\,\text{A}\) のときの端子電圧 \(V\) を計算します。
グラフから読み取ることも可能ですが、計算の方が正確です。

この設問における重要なポイント

  • 数値代入: 決定した特性式 \(V = 1.6 – 0.50I\) に値を代入します。

具体的な解説と立式
端子電圧 \(V\) を求める式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI
\end{aligned}
$$
これに \(E=1.6\), \(r=0.50\), \(I=1.0\) を代入します。

使用した物理公式

  • 端子電圧の式: \(V = E – rI\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
V &= 1.6 – 0.50 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 1.6 – 0.50 \\[2.0ex]
&= 1.1\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この電池の性能(起電力と内部抵抗)がわかったので、どんな電流が流れたときに何ボルトの電圧が出るかを計算で予測できます。
\(1.0\,\text{A}\) 流れたときは、内部抵抗で \(0.5\,\text{V}\) だけ電圧が落ちるので、残りの \(1.1\,\text{V}\) が出力されます。

結論と吟味

\(1.1\,\text{V}\)。
グラフ上で \(I=1.0\) の点を見ると、\(V\) は \(1.0\) と \(1.2\) のちょうど中間あたりにあるため、\(1.1\) は妥当な値です。

解答 (3) $$ 1.1\,\text{V} $$

問(4)

思考の道筋とポイント
図2の回路において、電池から流れる全電流が \(I = 0.20\,\text{A}\) であると与えられています。
まず、このときの端子電圧 \(V\)(点Aと点Bの間の電位差)を求めます。
次に、消費電力の和と抵抗 \(R\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 端子電圧の決定: 電流 \(I=0.20\,\text{A}\) が決まれば、グラフまたは式から端子電圧 \(V\) が一意に決まります。
  • 消費電力の和: 回路全体(AB間)での消費電力の和 \(P\) は、電池がAB間に供給する電力 \(P = VI\) に等しくなります。個別に計算して足す必要はありません。
  • 抵抗 \(R\) の算出: AB間の合成抵抗 \(R_{\text{AB}}\) をオームの法則 \(V = R_{\text{AB}}I\) から求め、並列合成抵抗の式から \(R\) を逆算します。

具体的な解説と立式
1. 消費電力の和 \(P\)
まず、\(I = 0.20\,\text{A}\) のときの端子電圧 \(V\) を求めます。
問(1)のグラフ読み取り、または式より、
$$
\begin{aligned}
V &= 1.6 – 0.50 \times 0.20 \\[2.0ex]
&= 1.5\,\text{V}
\end{aligned}
$$
AB間の3つの抵抗での消費電力の和 \(P\) は、電池が外部回路(AB間)に供給する電力そのものです。
$$
\begin{aligned}
P &= VI
\end{aligned}
$$

2. 抵抗 \(R\)
AB間の合成抵抗を \(R_{\text{AB}}\) とします。オームの法則より、
$$
\begin{aligned}
R_{\text{AB}} &= \frac{V}{I}
\end{aligned}
$$
一方、AB間は「\(10\,\Omega\) と \(R\) の直列」と「\(12\,\Omega\)」が並列に接続されています。
上側の枝の抵抗は \(10 + R\) です。
並列合成抵抗の公式より、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{\text{AB}}} &= \frac{1}{10 + R} + \frac{1}{12}
\end{aligned}
$$
この2式から \(R\) を求めます。

使用した物理公式

  • 電力: \(P = VI\)
  • オームの法則: \(R = \frac{V}{I}\)
  • 合成抵抗(並列): \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
計算過程

消費電力の和 \(P\)
$$
\begin{aligned}
P &= 1.5 \times 0.20 \\[2.0ex]
&= 0.30\,\text{W}
\end{aligned}
$$

抵抗 \(R\)
まず合成抵抗 \(R_{\text{AB}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{AB}} &= \frac{1.5}{0.20} \\[2.0ex]
&= 7.5\,\Omega
\end{aligned}
$$
これを並列の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{7.5} &= \frac{1}{10 + R} + \frac{1}{12}
\end{aligned}
$$
分数を整理します。\(\frac{1}{7.5} = \frac{10}{75} = \frac{2}{15}\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{15} &= \frac{1}{10 + R} + \frac{1}{12} \\[2.0ex]
\frac{1}{10 + R} &= \frac{2}{15} – \frac{1}{12}
\end{aligned}
$$
右辺を通分します(分母は60)。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{10 + R} &= \frac{8}{60} – \frac{5}{60} \\[2.0ex]
\frac{1}{10 + R} &= \frac{3}{60} \\[2.0ex]
\frac{1}{10 + R} &= \frac{1}{20}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
10 + R &= 20 \\[2.0ex]
R &= 10\,\Omega
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、電池から \(0.20\,\text{A}\) 出ているときの電圧が \(1.5\,\text{V}\) であることを確認します。
消費電力は「電圧 \(\times\) 電流」で一発で求まります。電池が出したエネルギーは、すべて抵抗たちに使われるからです。
次に抵抗 \(R\) ですが、回路全体の抵抗(合成抵抗)を先に計算します。「\(1.5\,\text{V}\) かけて \(0.20\,\text{A}\) 流れる抵抗」なので \(7.5\,\Omega\) です。
あとは、「\(12\,\Omega\) と何かを並列につないだら \(7.5\,\Omega\) になった。その何かとは?」というパズルを解けば \(R\) が求まります。

結論と吟味

消費電力の和: \(0.30\,\text{W}\)。
抵抗 \(R\): \(10\,\Omega\)。
\(R=10\) なら上側の枝は \(20\,\Omega\)。\(20\,\Omega\) と \(12\,\Omega\) の並列合成は \(\frac{20 \times 12}{20 + 12} = \frac{240}{32} = 7.5\,\Omega\)。計算は正しいです。

解答 (4)
消費電力の和: $$ 0.30\,\text{W} $$
抵抗 \(R\): $$ 10\,\Omega $$
別解: キルヒホッフの法則(分流)を用いた解法

思考の道筋とポイント
合成抵抗を計算する代わりに、並列回路の「電圧が共通である」という性質を利用して、各枝に流れる電流を個別に求めます。
これにより、抵抗 \(R\) を直接的に導出でき、電力の内訳も確認できます。

この設問における重要なポイント

  • 並列回路の電圧: 点Aと点Bの間の電位差(端子電圧)\(V=1.5\,\text{V}\) は、上側の枝にも下側の枝にも等しくかかります。
  • キルヒホッフの第1法則: 全電流 \(I\) は、上側の電流 \(I_{\text{上}}\) と下側の電流 \(I_{\text{下}}\) の和です。

具体的な解説と立式
端子電圧 \(V = 1.5\,\text{V}\) です。
下側の抵抗(\(12\,\Omega\))に流れる電流 \(I_{\text{下}}\) は、オームの法則より、
$$
\begin{aligned}
I_{\text{下}} &= \frac{V}{12}
\end{aligned}
$$
全電流 \(I = 0.20\,\text{A}\) なので、キルヒホッフの第1法則より、上側の枝(\(10\,\Omega + R\))に流れる電流 \(I_{\text{上}}\) は、
$$
\begin{aligned}
I_{\text{上}} &= I – I_{\text{下}}
\end{aligned}
$$
上側の枝についてオームの法則を適用し、\(R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= (10 + R) I_{\text{上}}
\end{aligned}
$$
また、消費電力の和 \(P\) は各枝の電力の和として計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= V I_{\text{上}} + V I_{\text{下}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
  • キルヒホッフの第1法則: \(I = I_1 + I_2\)
計算過程

まず下側の電流を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{下}} &= \frac{1.5}{12} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{8} \\[2.0ex]
&= 0.125\,\text{A}
\end{aligned}
$$
次に上側の電流を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{上}} &= 0.20 – 0.125 \\[2.0ex]
&= 0.075\,\text{A}
\end{aligned}
$$
上側の抵抗について式を立てて \(R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
1.5 &= (10 + R) \times 0.075 \\[2.0ex]
10 + R &= \frac{1.5}{0.075} \\[2.0ex]
10 + R &= \frac{1500}{75} \\[2.0ex]
10 + R &= 20 \\[2.0ex]
R &= 10\,\Omega
\end{aligned}
$$
消費電力の和を計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= 1.5 \times 0.075 + 1.5 \times 0.125 \\[2.0ex]
&= 1.5 \times (0.075 + 0.125) \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 0.20 \\[2.0ex]
&= 0.30\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電圧が \(1.5\,\text{V}\) とわかっているので、下の \(12\,\Omega\) の抵抗にどれだけ電流が流れるか計算できます。
全体で \(0.20\,\text{A}\) 流れているので、残りの電流が上の \(R\) のあるルートに流れているはずです。
その電流値と電圧から、逆算して \(R\) の値を求めました。

結論と吟味

メイン解法と全く同じ結果が得られました。
電流の内訳(上が \(0.075\,\text{A}\)、下が \(0.125\,\text{A}\))までわかるため、より詳細な解析ができました。

解答 (4)
消費電力の和: $$ 0.30\,\text{W} $$
抵抗 \(R\): $$ 10\,\Omega $$

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 実在する電池の特性(\(V-I\)特性)
    • 核心: 実際の電池には内部抵抗 \(r\) が存在し、流れる電流 \(I\) によって端子電圧 \(V\) が変化します。この関係は \(V = E – rI\) という一次関数で表され、グラフから \(E\)(切片)と \(r\)(傾き)を決定できることが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 理想的な電池(\(r=0\))では \(V=E\) で一定ですが、実在電池では電流が増えると \(V\) が下がります。この「下がり具合」が内部抵抗の大きさを物語っています。
  • 電力の計算とエネルギー保存則
    • 核心: 回路全体で消費される電力の総和は、電池が供給する電力と等しくなります。電池の供給電力は \(EI\) ですが、その一部は内部抵抗 \(rI^2\) で熱として失われ、残りが端子電圧 \(V\) を通して外部に供給されます。
    • 理解のポイント:
      • 「供給電力 \(=\) 外部消費電力 \(+\) 内部損失電力」というエネルギーバランスを常に意識することが、回路解析の基本です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(V-I\)グラフから電池の特性を求める問題: 今回のようにグラフが与えられた場合、必ず2点を選んで直線の式 \(V = E – rI\) を立て、\(E\) と \(r\) を求めます。
    • 電池を複数接続した回路: 各電池の \(E\) と \(r\) がわかれば、それらを合成して一つの等価な電池として扱うことができます(ただし、接続方法に注意が必要です)。
    • 電力に関する問題: 電池の供給電力 \(EI\)、抵抗での消費電力 \(RI^2\)、端子電圧 \(VI\) の関係を理解し、エネルギー保存則を用いて解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの読み取り: \(V-I\) グラフが与えられたら、まず \(I=0\) のときの \(V\)(切片)と、傾きを読み取れる2点を探します。
    2. 電池のモデル化: 実在電池は \(E\) と \(r\) の直列接続とみなします。
    3. 回路の解析: 並列・直列の合成抵抗の公式や、キルヒホッフの法則を用いて、回路全体の電流や電圧を解析します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • グラフの読み取りミス:
    • 誤解: 目盛りの読み方が不正確で、特に \(I=0\) 付近の切片 \(E\) の値や、傾きを計算する際の座標の取り方を間違える。
    • 対策: グラフ上の格子点を正確に読み取り、傾きを計算する際は \(\Delta V / \Delta I\) の符号にも注意します。有効数字も考慮しましょう。
  • 端子電圧の式の符号ミス:
    • 誤解: 電池が放電している(電流が \(E\) の向きに流れている)のに、\(V = E + rI\) と誤って立式してしまう。
    • 対策: 電池は電流を「押し出す」とき \(E\) の正の向きに電流が流れ、内部で \(rI\) だけ電圧が下がると考えます。逆に、充電されているときは \(V = E + rI\) となります。
  • 電力計算の公式適用ミス:
    • 誤解: 消費電力 \(P\) を計算する際に、電池の起電力 \(E\) を使って \(P = EI\) としたり、抵抗 \(R\) の部分で電池の端子電圧 \(V\) を使ったりする。
    • 対策: 消費電力は、その抵抗にかかる電圧と流れる電流の積 \(P = VI\) (または \(RI^2\), \(V^2/R\))で計算します。電池の供給電力は \(EI\) です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)(2)での公式選択(グラフ vs エネルギー収支):
    • 選定理由: グラフから \(E\) と \(r\) を求めるのが最も直接的で速い方法です。一方、エネルギー収支から \(V = E – rI\) を導出する別解は、公式の成り立ちを理解する上で非常に有益です。
    • 適用根拠: \(V-I\) の関係が直線であることから、\(V\) が \(I\) の一次関数 \(V = aI + b\) で表されることが保証されています。この一次関数が電池の物理モデル \(V = -rI + E\) と一致することを利用します。
  • 問(4)での公式選択(合成抵抗 vs キルヒホッフ):
    • 選定理由: 合成抵抗を求める方が計算は簡潔ですが、キルヒホッフの法則を使えば、各抵抗に流れる電流が直接わかり、電力の内訳まで把握できます。
    • 適用根拠: 並列回路では各枝の電圧が等しいという性質と、キルヒホッフの第1法則(電流則)を用いることで、未知数 \(R\) を含む電流の関係式を立てることができます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 有効数字の確認:
    • グラフの読み取り値や問題で与えられた数値の有効数字を確認し、最終的な答えもそれに合わせます。今回の問題では、多くが2桁で与えられているため、答えも2桁で示すのが適切です。
  • 計算過程の丁寧さ:
    • 特に分数計算や小数計算では、途中式を省略せず、丁寧に書き出すことでミスを防ぎます。例えば、\(1.5 / 0.075\) のような割り算は、\(1500 / 75\) のように整数にしてから計算すると間違いにくいです。
  • 検算の習慣:
    • 求めた \(E\) と \(r\) を使って、グラフ上の別の点(例えば \(I=0.6\,\text{A}\) のときの \(V\) など)を計算し、グラフの値と一致するか確認すると、間違いを発見しやすくなります。
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問題118 (岡山大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解1: 分圧の法則を用いた解法
      • 回路を直列接続された抵抗の分圧回路とみなし、比の計算で電圧計の読みを求めます。
    • 設問(1)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義と線積分)
      • 電位差を電場の線積分として定義し、回路一周での電位変化がゼロになること(キルヒホッフの第2法則の原理)から導出します。
    • 設問(2)(3)の別解: ホイートストンブリッジの原理を用いた解法
      • 電位差計の回路を、検流計に電流が流れない平衡状態にあるブリッジ回路とみなして解析します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 分圧の法則: 直列回路における電圧配分の直感的理解を助け、計算を簡略化できます。
    • 微積分の解法: 電位という概念の物理的定義に立ち返ることで、回路方程式の背景にある原理を深く理解できます。
    • ブリッジの原理: 複雑に見える回路を既知のパターン(ブリッジ)に帰着させることで、構造的な理解を促します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電池の起電力の精密測定(電位差計の原理)」です。通常の電圧計では内部抵抗の影響で真の起電力を測れないという課題に対し、電流を流さない(電圧降下をゼロにする)ことで真値を測定する手法を学びます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電池の内部抵抗と端子電圧: 電池に電流 \(I\) が流れると、内部抵抗 \(r\) により電圧降下 \(rI\) が生じ、端子電圧は \(V = E – rI\) となります。
  • 電位差計(ポテンショメーター)の原理: 検流計に電流が流れないとき、測定対象の起電力と、抵抗線上の分圧された電圧が釣り合っています。このとき電池内部での電圧降下はゼロになります。
  • キルヒホッフの法則: 任意の閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、電圧計を接続した単純な回路において、内部抵抗の影響で測定値が起電力 \(E\) より小さくなることを示します。
  • (2)では、既知の標準電池 \(E_{\text{S}}\) を用いて、抵抗線に流れる電流 \(I\) と抵抗値 \(R_{\text{S}}\) の関係を導きます。
  • (3)では、未知の電池 \(E\) に切り替えた際の平衡条件から、比の計算によって \(E\) を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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