「名問の森」徹底解説(31〜33問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題31 直流回路

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(5)の別解1: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答が個々の素子の消費電力を足し合わせるのに対し、別解1では回路全体のエネルギー収支(電池の供給電力=全消費電力)に着目して一気に計算します。
    • 設問(3)〜(Q)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義と非線形回路解析)
      • キルヒホッフの法則を「電場の線積分(電位)」の定義から導出し、非線形素子(電球)を含む回路方程式を数学的な関数 \(V=f(I)\) の連立問題として体系化します。また、グラフの合成操作(縦和・横和)の数学的根拠を明らかにします。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • エネルギー保存則: 個別の計算ミスを防ぎ、検算としても非常に有効な強力なツールです。
    • 微積分の解法: 「なぜグラフの交点を求めるのか」「なぜグラフを足し合わせるのか」という操作の背後にある物理的・数学的原理を理解することで、応用問題への対応力を高めます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「非線形抵抗(電球)を含む直流回路の解析」です。オームの法則に従わない素子(非線形抵抗)を扱うため、数式だけでなくグラフを用いた視覚的な解法が主役となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則と抵抗の定義: 線形抵抗では \(V=RI\) が成り立ちますが、電球のような非線形抵抗では \(R=V/I\) の値が電圧や電流によって変化します。
  2. キルヒホッフの法則: 回路内の任意の閉回路において、起電力の和は電圧降下の和に等しくなります(エネルギー保存則)。
  3. 負荷線解析(グラフ解法): 素子の特性曲線(\(I-V\) グラフ)と、回路方程式から導かれる直線(負荷線)の交点として、動作点(電圧・電流)を求めます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2)では、グラフから値を読み取り、抵抗の定義や温度変化の式を用いて計算します。
  2. (3)〜(Q)では、回路図からキルヒホッフの法則に基づいて回路方程式を立式し、それを \(I-V\) グラフ上に直線(負荷線)として描画して、電球の特性曲線との交点を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
電球Lの特性曲線(図1)から、特定の電圧における電流値を読み取り、抵抗と電力を計算します。
グラフの読み取りは物理実験の基礎であり、正確さが求められます。

この設問における重要なポイント

  • グラフの読解: 横軸が電圧 \(V\)、縦軸が電流 \(I\) であることを確認し、目盛りの値を正確に読み取ります。
  • 抵抗の定義: オームの法則 \(V=RI\) より、抵抗は \(R=V/I\) で求められます。
  • 電力の定義: 消費電力 \(P\) は \(P=VI\) で求められます。

具体的な解説と立式
図1の電球Lのグラフにおいて、電圧 \(V_1 = 80\,\text{V}\) のときの電流 \(I_1\) を読み取ります。
グラフの横軸 \(80\,\text{V}\) の位置から上に辿り、曲線Lとの交点の縦軸の値を読むと、\(I_1 = 0.7\,\text{A}\) であることが分かります。

求める抵抗値を \(R_1\)、消費電力を \(P_1\) とします。
抵抗の定義式より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R_1 &= \frac{V_1}{I_1}
\end{aligned}
$$
電力の定義式より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= V_1 I_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • オームの法則(抵抗の定義): \(R = \frac{V}{I}\)
  • 電力の公式: \(P = VI\)
計算過程

読み取った値 \(V_1 = 80\,\text{V}\)、\(I_1 = 0.7\,\text{A}\) を代入します。
まず、抵抗値 \(R_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R_1 &= \frac{80}{0.7} \\[2.0ex]
&= \frac{800}{7} \\[2.0ex]
&\approx 114.2 \dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、3桁目を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
R_1 &\approx 1.1 \times 10^2\,\Omega
\end{aligned}
$$
次に、消費電力 \(P_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= 80 \times 0.7 \\[2.0ex]
&= 56\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

グラフは「この電球にこれだけの電圧をかけると、これだけの電流が流れる」という性質を表しています。
80Vの電圧をかけたとき、グラフから0.7Aの電流が流れることが読み取れました。
抵抗とは「電流の流れにくさ」を表す値で、電圧を電流で割ることで求まります。
電力とは「1秒間に消費される電気エネルギー」のことで、電圧と電流を掛け合わせることで求まります。

結論と吟味

抵抗値は約 \(110\,\Omega\)、消費電力は \(56\,\text{W}\) です。
問題文に「100Vで80W」とあるので、電圧が下がれば電力も下がるはずであり、\(56\,\text{W}\) という値は妥当です。

解答 (1) 抵抗値: \(1.1 \times 10^2\,\Omega\)、消費電力: \(56\,\text{W}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
電球のフィラメント(金属)は温度が上がると抵抗値が増加します。
100V使用時の抵抗値と、室温(0℃)での抵抗値をそれぞれ求め、抵抗の温度変化の式を用いて温度を逆算します。
室温での抵抗値は、電流による発熱が無視できるほど小さい電圧・電流領域、つまり原点付近でのグラフの接線の傾きから求めます。

この設問における重要なポイント

  • 動作時の抵抗: 100V使用時の電圧と電流から求めます。
  • 室温時の抵抗: 原点における接線は、発熱による抵抗変化がまだ起きていない「0℃の状態」を表しています。この直線の傾き(コンダクタンス \(1/R\))から \(R_0\) を求めます。
  • 抵抗の温度依存性: \(R = R_0(1 + \alpha t)\) の関係式を利用します。

具体的な解説と立式
まず、100Vで使用しているときの抵抗値 \(R\) を求めます。
図1より、電圧 \(V = 100\,\text{V}\) のとき、電流 \(I = 0.8\,\text{A}\) です。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{V}{I}
\end{aligned}
$$
次に、室温(0℃)での抵抗値 \(R_0\) を求めます。
図1の点線(原点における接線)上の任意の点を読み取ります。例えば、電圧 \(V’ = 20\,\text{V}\) のとき、電流 \(I’ = 1.0\,\text{A}\) を通っていると読み取れます。
オームの法則より、この直線の傾きの逆数が \(R_0\) となります。
$$
\begin{aligned}
R_0 &= \frac{V’}{I’}
\end{aligned}
$$
求める温度を \(t\,[{}^\circ\text{C}]\) とすると、抵抗の温度変化の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
R &= R_0 (1 + \alpha t)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(R = \frac{V}{I}\)
  • 抵抗の温度変化: \(R = R_0(1 + \alpha t)\)
計算過程

まず \(R\) と \(R_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{100}{0.8} \\[2.0ex]
&= 125\,\Omega
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
R_0 &= \frac{20}{1.0} \\[2.0ex]
&= 20\,\Omega
\end{aligned}
$$
これらを温度変化の式に代入し、\(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
125 &= 20 (1 + 2.5 \times 10^{-3} t) \\[2.0ex]
\frac{125}{20} &= 1 + 2.5 \times 10^{-3} t \\[2.0ex]
6.25 &= 1 + 0.0025 t \\[2.0ex]
5.25 &= 0.0025 t \\[2.0ex]
t &= \frac{5.25}{0.0025} \\[2.0ex]
&= \frac{52500}{25} \\[2.0ex]
&= 2100
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表します。
$$
\begin{aligned}
t &= 2.1 \times 10^3\,{}^\circ\text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電球が光っているとき、フィラメントは非常に高温になっています。金属は温度が上がると電気が流れにくくなる(抵抗が増える)性質があります。
グラフの点線は「もし温度が上がらず0℃のままだったら、電流はどう流れるか」を示しています。
実際の100Vのときの抵抗(125Ω)は、0℃のときの抵抗(20Ω)に比べて6倍以上になっています。この抵抗の増え方から、温度がどれくらい上昇したかを計算しました。

結論と吟味

計算結果は \(2100\,{}^\circ\text{C}\) です。白熱電球のフィラメント温度は通常2000℃〜3000℃程度になるため、物理的に非常に妥当な値です。

解答 (2) \(2.1 \times 10^3\,{}^\circ\text{C}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
図2の回路について考えます。電球Lはオームの法則に従わないため、数式だけで解くことは困難です。
そこで、回路全体の方程式(キルヒホッフの法則)を立て、それをグラフ上に直線として描き、電球の特性曲線との交点を求める「負荷線解析」を行います。

この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一周したときの電位の変化の総和は0になります。
  • 負荷線の作図: 回路方程式は \(V\) と \(I\) の一次方程式(直線)になります。この直線をグラフに書き込みます。
  • 動作点の決定: 電球Lは「特性曲線上の点」しか取れず、回路全体は「負荷線上の点」しか取れません。両方を満たすのは交点だけです。

具体的な解説と立式
図2の回路において、電流を \(I\)、電球Lにかかる電圧を \(V\) とします。
電源の起電力を \(E = 120\,\text{V}\)、抵抗を \(R = 100\,\Omega\) とします。
キルヒホッフの第2法則(起電力の和=電圧降下の和)より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
E &= RI + V
\end{aligned}
$$
数値を代入すると、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
120 &= 100I + V \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
これが求める関係式であり、グラフ上では直線となります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \(\sum \mathcal{E} = \sum RI\)
計算過程

式①を変形して、グラフに描画しやすい形にします。
$$
\begin{aligned}
V &= -100I + 120
\end{aligned}
$$
この直線(負荷線)を引くために、軸との交点を求めます。

  • \(I = 0\,\text{A}\) のとき: \(V = 120\,\text{V}\)
  • \(V = 0\,\text{V}\) のとき: \(100I = 120\) より \(I = 1.2\,\text{A}\)

この2点 \((0, 120)\) と \((1.2, 0)\) を結ぶ直線を、図1のグラフ(または図a)に書き込みます。
電球Lの曲線と、この直線の交点を読み取ります。
図aを参照すると、交点の座標は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V &= 60\,\text{V} \\[2.0ex]
I &= 0.6\,\text{A}
\end{aligned}
$$
消費電力 \(P_L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_L &= VI \\[2.0ex]
&= 60 \times 0.6 \\[2.0ex]
&= 36\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電球Lには「電圧と電流の関係(曲線)」という自分自身のルールがあります。
一方、電池と抵抗をつないだ回路側にも「電圧と電流の関係(直線)」というルールがあります。
実際に流れる電流と電圧は、この2つのルールを同時に満たす場所、つまりグラフ上の「交点」で決まります。
直線を引いて交点を見つけることで、計算が難しい電球の電圧と電流を特定しました。

結論と吟味

電圧60V、電流0.6A、電力36Wが得られました。
電源電圧120Vのうち、抵抗で \(100 \times 0.6 = 60\,\text{V}\)、電球で \(60\,\text{V}\) を分担しており、和が120Vになるため矛盾しません。

解答 (3) 電圧: \(60\,\text{V}\)、消費電力: \(36\,\text{W}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
図3の回路は少し複雑です。電球Lと並列に3本の抵抗がつながっています。
まず、この並列部分の電流と電圧の関係を整理し、回路全体の方程式を立てます。
未知数は電球Lの電圧 \(V\) と電流 \(I\) ですが、並列抵抗に流れる電流も考慮する必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 並列回路の電圧: 電球Lと並列の3本の抵抗には、すべて同じ電圧 \(V\) がかかります。
  • 電流の合流: 回路全体を流れる電流は、電球に流れる電流 \(I\) と、3本の抵抗に流れる電流の合計になります。
  • 合成負荷線: 回路全体の条件を、電球Lの \(I\) と \(V\) の関係式(直線)に帰着させます。

具体的な解説と立式
電球Lにかかる電圧を \(V\)、電球Lを流れる電流を \(I\) とします。
並列に接続された \(100\,\Omega\) の抵抗1本に流れる電流を \(i\) とすると、オームの法則より以下の関係があります。
$$
\begin{aligned}
i &= \frac{V}{100}
\end{aligned}
$$
並列部分には抵抗が3本あるため、これらに流れる電流の合計は \(3i\) です。
したがって、電池から流れ出る全電流 \(I_{\text{全}}\) は、キルヒホッフの第1法則(電流保存則)より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{全}} &= I + 3i \\[2.0ex]
&= I + 3 \left( \frac{V}{100} \right)
\end{aligned}
$$
次に、回路全体についてキルヒホッフの第2法則を適用します。
電源電圧 \(120\,\text{V}\) は、直列の抵抗 \(R=100\,\Omega\) での電圧降下と、並列部分の電圧 \(V\) の和に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
120 &= 100 I_{\text{全}} + V
\end{aligned}
$$
この式に \(I_{\text{全}}\) を代入して、\(I\) と \(V\) の関係式を導きます。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
  • キルヒホッフの第1法則: \(I_{\text{流入}} = I_{\text{流出}}\)
  • キルヒホッフの第2法則: \(\sum \mathcal{E} = \sum V_k\)
計算過程

先ほどの式に \(I_{\text{全}}\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
120 &= 100 \left( I + \frac{3V}{100} \right) + V \\[2.0ex]
120 &= 100I + 3V + V \\[2.0ex]
120 &= 100I + 4V
\end{aligned}
$$
これがこの回路における負荷線の方程式です。グラフを描くために変形します。
$$
\begin{aligned}
100I &= -4V + 120 \\[2.0ex]
I &= -0.04V + 1.2
\end{aligned}
$$
軸との交点を求めます。

  • \(V = 0\,\text{V}\) のとき: \(I = 1.2\,\text{A}\)
  • \(I = 0\,\text{A}\) のとき: \(4V = 120\) より \(V = 30\,\text{V}\)

この2点 \((0, 1.2)\) と \((30, 0)\) を結ぶ直線をグラフ(図bの点線)に引きます。
電球Lの曲線との交点を読み取ります。
$$
\begin{aligned}
V &= 20\,\text{V} \\[2.0ex]
I &= 0.4\,\text{A}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電球の周りに抵抗がたくさんついて複雑に見えますが、基本は同じです。
「電球以外の部分」が電球に対してどのような電圧と電流の条件を課しているかを計算しました。
並列の抵抗に電流が逃げる分、電球に流れる電流と電圧の関係が変わります。それを一つの式(直線)にまとめ、グラフ上で交点を探しました。

結論と吟味

電圧20Vが得られました。
検算してみます。\(V=20\) なら並列抵抗1本の電流は \(20/100 = 0.2\,\text{A}\)。3本で \(0.6\,\text{A}\)。
電球はグラフより \(0.4\,\text{A}\)。
全電流は \(0.6 + 0.4 = 1.0\,\text{A}\)。
直列抵抗での電圧降下は \(100 \times 1.0 = 100\,\text{V}\)。
全体電圧は \(100 + 20 = 120\,\text{V}\)。
電源電圧と一致し、正しいことが確認できました。

解答 (4) \(20\,\text{V}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
電球Lと電球Mを並列につなぎます。
並列接続では「電圧が共通」で「電流は和」になります。
2つの電球を合わせた「合成電球(L+M)」の特性曲線をグラフ上に作成し、それと回路の負荷線との交点を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 合成特性曲線の作成: 任意の電圧 \(V\) において、Lに流れる電流 \(I_L\) とMに流れる電流 \(I_M\) をグラフから読み取り、その和 \(I_{L+M} = I_L + I_M\) をプロットして新しい曲線を作ります。
  • 回路方程式: 電球部分を「L+M」という一つの素子と見なせば、問(3)と同じ回路(抵抗100Ωと直列)になります。

具体的な解説と立式
LとMは並列なので、両端の電圧 \(V\) は共通です。
回路全体を流れる電流 \(I_{\text{全}}\) は、LとMに流れる電流の和です。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{全}} &= I_L + I_M
\end{aligned}
$$
図bには、すでに \(I_L\) と \(I_M\) を足し合わせた「L+M」の曲線が描かれています(縦方向に足し算)。

回路全体の方程式は、問(3)と同様に、電源電圧が直列抵抗と並列部分の電圧の和になることから立てられます。
$$
\begin{aligned}
120 &= 100 I_{\text{全}} + V
\end{aligned}
$$
この直線(負荷線)は問(3)で引いたもの(\(V=0, I=1.2\) と \(I=0, V=120\) を通る直線)と同じです。

使用した物理公式

  • 並列回路の電流: \(I_{\text{全}} = I_1 + I_2\)
  • キルヒホッフの第2法則: \(E = RI + V\)
計算過程

図bにおいて、「L+M」の曲線と、負荷線(\(120 = 100I + V\))の交点を読み取ります。
交点の座標は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= 40\,\text{V} \\[2.0ex]
I_{\text{全}} &= 0.8\,\text{A}
\end{aligned}
$$
このとき、Lの消費電力 \(P_L\) を求めます。
電圧 \(V=40\,\text{V}\) のとき、図bよりL単体の電流 \(I_L\) を読み取ると \(I_L = 0.5\,\text{A}\) です。
$$
\begin{aligned}
P_L &= V I_L \\[2.0ex]
&= 40 \times 0.5 \\[2.0ex]
&= 20\,\text{W}
\end{aligned}
$$
次に、回路全体の消費電力 \(P_{\text{全}}\) を求めます。
これは電池が供給する電力に等しいので、全電流 \(I_{\text{全}} = 0.8\,\text{A}\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= E I_{\text{全}} \\[2.0ex]
&= 120 \times 0.8 \\[2.0ex]
&= 96\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの電球を並列につなぐと、電気の通り道が2つになるので、1つのときより電流が流れやすくなります。
グラフ上で、同じ電圧のときの電流値を足し合わせることで、「2つ合わせた電球」の性能を表す新しいグラフを作りました。
この新しいグラフと、回路の条件を表す直線の交点を見つけることで、全体の電圧と電流を決定しました。

結論と吟味

Lの電力20W、全体96W。
ちなみにMの電流は \(0.8 – 0.5 = 0.3\,\text{A}\) なので、Mの電力は \(40 \times 0.3 = 12\,\text{W}\)。
直列抵抗の電力は \(100 \times 0.8^2 = 64\,\text{W}\)。
合計 \(20 + 12 + 64 = 96\,\text{W}\)。
計算結果と一致します。

解答 (5) Lの消費電力: \(20\,\text{W}\)、回路全体の消費電力: \(96\,\text{W}\)
別解: エネルギー保存則を用いた解法(設問5)

思考の道筋とポイント
回路全体の消費電力は、個々の抵抗での消費電力を足し合わせても求まりますが、「電池が供給した仕事率(電力)」に等しいというエネルギー保存則を使うと、計算が非常に楽になります。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: (電池の供給電力)=(回路全体の消費電力)
  • 電池の電力: \(P = EI\) で求まります。

具体的な解説と立式
回路全体の消費電力 \(P_{\text{全}}\) は、電池の起電力 \(E\) と、電池から流れ出る全電流 \(I_{\text{全}}\) の積で表されます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= E I_{\text{全}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電力の公式: \(P = IV\)
計算過程

グラフの交点より、全電流は \(I_{\text{全}} = 0.8\,\text{A}\) と求まっています。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= 120 \times 0.8 \\[2.0ex]
&= 96\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路全体で使われるエネルギーは、すべて電池から供給されています。
「どこでどれだけ使われたか」を細かく計算しなくても、「電池がどれだけ出したか」を計算すれば、それがそのまま全体の消費電力になります。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。個別に計算して足し合わせる手間が省け、計算ミスのリスクも減らせます。

解答 (5) \(96\,\text{W}\)

問(Q)

思考の道筋とポイント
今度はLとMを直列につなぎます。
直列接続では「電流が共通」で「電圧は和」になります。
問(5)とは逆に、同じ電流値における電圧を足し合わせて「合成特性曲線」を作成します。

この設問における重要なポイント

  • 直列合成: 任意の電流 \(I\) において、Lにかかる電圧 \(V_L\) とMにかかる電圧 \(V_M\) を読み取り、その和 \(V_{L+M} = V_L + V_M\) をプロットします(横方向に足し算)。
  • 回路方程式: \(120 = 100I + V_{\text{全}}\) となります。

具体的な解説と立式
LとMは直列なので、流れる電流 \(I\) は共通です。
LとM全体にかかる電圧 \(V_{\text{全}}\) は、それぞれの電圧の和です。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{全}} &= V_L + V_M
\end{aligned}
$$
この関係を用いて、図1のグラフから \(V_L\) と \(V_M\) を読み取り、横軸方向に足し合わせた新しい曲線「L+M(直列)」を描きます(模範解答の右上の図)。

回路全体の方程式は、キルヒホッフの第2法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
120 &= 100I + V_{\text{全}}
\end{aligned}
$$
これも問(3)や(5)と同じ負荷線です。

使用した物理公式

  • 直列回路の電圧: \(V_{\text{全}} = V_1 + V_2\)
  • キルヒホッフの第2法則: \(E = RI + V\)
計算過程

作成した合成曲線と、負荷線(\(I = -0.01V + 1.2\))の交点を読み取ります。
模範解答の図を参照すると、交点は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{全}} &= 85\,\text{V} \\[2.0ex]
I &= 0.35\,\text{A}
\end{aligned}
$$
回路全体の消費電力 \(P_{\text{全}}\) を求めます。ここでもエネルギー保存則(電池の供給電力)を使います。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= E I \\[2.0ex]
&= 120 \times 0.35 \\[2.0ex]
&= 42\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

直列につなぐと、電流は一本道になりますが、電圧は2つの電球で分け合います。
「ある電流を流すために必要な電圧」を2つの電球分合計して、新しいグラフを作りました。
このグラフと回路の条件の交点を見つけることで、答えを導きました。

結論と吟味

消費電力42Wが得られました。
直列にすると全体の抵抗が大きくなるため、電流は並列のとき(0.8A)よりも小さく(0.35A)なり、消費電力も小さくなっています。定性的に正しい結果です。

解答 (Q) \(42\,\text{W}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(非線形回路の一般解析)

思考の道筋とポイント
設問(3)〜(Q)で行った「グラフの交点を求める」「グラフを足し合わせる」という操作は、すべてキルヒホッフの法則と素子の特性関数から数学的に導かれます。
ここでは、回路方程式を一般化し、図式解法の原理を体系的に解説します。

この設問における重要なポイント

  • 電位の一意性: キルヒホッフの第2法則は、静電場が保存力場であること(\(\oint \vec{E} \cdot d\vec{r} = 0\))に由来します。
  • 非線形素子の関数化: 電球の特性を関数 \(I = g(V)\) または \(V = f(I)\) として扱います。
  • 連立方程式の図的解法: 回路方程式 \(F(V, I) = 0\) と素子特性 \(I = g(V)\) の連立解が、グラフの交点に対応します。

具体的な解説と立式
1. 基本原理
回路内の任意の点における電位は一意に定まります。
電源電圧を \(E\)、線形抵抗を \(R\)、非線形素子(電球など)にかかる電圧を \(V\)、電流を \(I\) とします。
回路を一巡するキルヒホッフの法則は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E – RI – V &= 0 \quad \cdots (A)
\end{aligned}
$$
一方、非線形素子の特性は、関数 \(g\) を用いて以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
I &= g(V) \quad \cdots (B)
\end{aligned}
$$
式(A)は \(I-V\) 平面上の直線(負荷線)、式(B)は曲線(特性曲線)を表します。
物理現象として実現するのは、この2式を同時に満たす点、つまり交点です。これが設問(3)の解法の数学的根拠です。

2. 並列接続(設問5)の一般化
2つの非線形素子 \(L, M\) が並列の場合、電圧 \(V\) が共通で、電流が和になります。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{全}} &= I_L + I_M \\[2.0ex]
&= g_L(V) + g_M(V)
\end{aligned}
$$
これは、グラフ上で「同じ \(V\) に対する \(I\) を足す(縦和)」操作に対応します。
合成された関数 \(I_{\text{全}} = g_{\text{全}}(V)\) と、回路方程式(A)の交点を求めることで解が得られます。

3. 直列接続(設問Q)の一般化
2つの素子が直列の場合、電流 \(I\) が共通で、電圧が和になります。
特性を \(V = f(I)\) の形で表すと便利です。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{全}} &= V_L + V_M \\[2.0ex]
&= f_L(I) + f_M(I)
\end{aligned}
$$
これは、グラフ上で「同じ \(I\) に対する \(V\) を足す(横和)」操作に対応します。
合成された関数 \(V_{\text{全}} = f_{\text{全}}(I)\) と、回路方程式 \(E – RI – V_{\text{全}} = 0\) の交点を求めることで解が得られます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(電位の定義): \(\oint \vec{E} \cdot d\vec{r} = 0\)
  • 関数の合成: \(f(x) + g(x)\)
計算過程

本解法は一般的な解析手法の提示であるため、具体的な数値計算はメイン解法と同様になります。
例えば設問(Q)の場合、\(V_{\text{全}} = f_L(I) + f_M(I)\) という合成関数(グラフ)と、\(V_{\text{全}} = E – RI\) という一次関数(直線)の交点を求めるプロセスが、まさに計算過程そのものとなります。

この設問の平易な説明

グラフの「交点読み取り」や「足し合わせ」といった操作は、単なるテクニックではなく、「物理法則(キルヒホッフ)と素子特性(関数)の連立方程式を解く」という数学的に厳密なプロセスを可視化したものであることが分かります。
この視点を持つことで、素子の数が増えたり接続が複雑になったりしても、原理原則に立ち返って解法を導き出すことができます。

結論と吟味

このように、グラフの操作は数式処理と等価であり、物理的にも数学的にも正しいアプローチであることが確認できました。

解答 (Q) (3)〜(Q)の体系的理解により、グラフ解法の妥当性が示された。

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 非線形抵抗の負荷線解析
    • 核心: オームの法則(\(V=RI\))に従わない素子を含む回路では、数式計算ではなく、素子の特性曲線と回路方程式(負荷線)のグラフの交点から動作点(\(V, I\))を決定します。
    • 理解のポイント:
      • 電球は電圧によって抵抗値が変わるため、\(R\) を定数として扱えません。
      • 回路方程式(キルヒホッフの法則)は一次関数(直線)になるため、これをグラフに描画して解を視覚的に求めます。
  • キルヒホッフの法則とエネルギー保存則
    • 核心: 任意の閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しくなります。これは電場による位置エネルギーの保存則そのものです。
    • 理解のポイント:
      • 複雑な回路でも、閉回路を見つけて式を立てれば必ず解けます。
      • 電池が供給する電力は、回路全体で消費される電力の総和と等しくなります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ダイオードを含む回路: ダイオードも非線形素子です。順方向・逆方向の特性曲線と負荷線の交点を求める手法は全く同じです。
    • 内部抵抗のある電池: 電池の端子電圧 \(V = E – rI\) という式自体が負荷線の方程式そのものです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 非線形素子の特定: 「電球」「ダイオード」「特性曲線が与えられている素子」を見つけたら、計算ではなくグラフ解法を第一に考えます。
    2. 回路の分離: 非線形素子を「主役」、それ以外の部分(電池や抵抗)を「脇役(電源回路)」と見なし、脇役部分をテブナンの定理的に \(V = E’ – R’I\) の形(直線)に整理します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電球の抵抗を定数として扱うミス:
    • 誤解: 「100Vで80W」という定格情報から \(R = 125\,\Omega\) を求め、電圧が変わってもその抵抗値のまま計算してしまう。
    • 対策: 電球やダイオードは「抵抗値が変化する」のが前提です。必ずグラフからその都度 \(V, I\) を読み取るか、交点を求める習慣をつけましょう。
  • グラフの合成方向の混同:
    • 誤解: 並列接続なのに電圧を足したり(横和)、直列接続なのに電流を足したり(縦和)してしまう。
    • 対策: 「並列は電圧共通だから電流が増える(縦に足す)」「直列は電流共通だから電圧が増える(横に足す)」と、物理的なイメージと言語化をセットで記憶します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 負荷線解析(グラフ解法):
    • 選定理由: 電球の \(I-V\) 特性が数式(関数)ではなくグラフで与えられているため、代数的に連立方程式を解くことが不可能だからです。
    • 適用根拠: キルヒホッフの法則(一次式)と素子特性(曲線)の連立解は、幾何学的には交点として一意に定まるためです。
  • エネルギー保存則(設問5別解):
    • 選定理由: 各素子の電力を個別に計算して足し合わせるよりも、電池の出力 \(P=EI\) 一発で計算する方が圧倒的に速く、計算ミスも減るからです。
    • 適用根拠: 回路が定常状態にあり、エネルギーの散逸(ジュール熱や光)が全て電池からの供給で賄われている閉じた系であるためです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • グラフ読み取りの精度向上:
    • 意識: グラフの目盛りは「1目盛りがいくらか」を最初に確認し、定規を使って正確に値を読み取ります。
    • 実践: 負荷線を引く際は、軸との交点(切片)だけでなく、読み取りやすい格子点を通るかどうかも確認し、直線のズレを防ぎます。
  • 物理的妥当性の検算:
    • 意識: 求めた答えが、直感や定性的な振る舞いと矛盾していないか確認します。
    • 実践: 例えば「直列にしたら抵抗が増えるので電流は減るはず」「並列にしたら電流は増えるはず」といった予測と、計算結果(交点の位置)が一致しているかを必ずチェックします。
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問題32 直流回路 (信州大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(5)の別解1: ノード解析(電位を未知数とする解法)
      • 模範解答が閉回路ごとのキルヒホッフの法則(ループ電流法)を用いるのに対し、別解1ではP点とQ点の「電位差」を主役(未知数)に置くことで、連立方程式の見通しを良くし、計算量を削減します。
    • 設問(1)〜(5)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(電位分布関数と誤差の微分解析)
      • 抵抗線上の電位を位置 \(x\) の関数 \(V(x)\) として定義し、全ての設問を「電位関数の値」として統一的に扱います。特に設問(3)の誤差評価において、微分の概念 \(dE = \frac{dE}{dx}dx\) を用いることで、数値計算に頼らずスマートに解を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • ノード解析: 未知数を減らし、回路の並列構造を直感的に捉えることができるため、複雑な回路問題で特に威力を発揮します。
    • 微積分の解法: 「電位とは電場の積分である」という物理的定義に立ち返ることで、公式の暗記ではなく現象の本質的な理解を促します。また、誤差を微分で捉える手法は大学実験等でも必須のスキルです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電位差計(ポテンショメーター)の原理と回路網解析」です。
精密な電圧測定に使われる電位差計の仕組みを理解し、接点の位置による電位の変化や、複雑な回路における電流分布を解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: 抵抗 \(R\)、電流 \(I\)、電圧 \(V\) の間に \(V=RI\) が成り立ちます。
  2. 一様な抵抗線の性質: 太さが一様な抵抗線の抵抗値は長さに比例し、電圧降下も長さに比例して一様に起こります。
  3. キルヒホッフの法則:
    • 第1法則(電流則): 任意の分岐点において、流入する電流の和と流出する電流の和は等しい。
    • 第2法則(電圧則): 任意の閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しい(電位の一意性)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2)では、電流計が0になる「平衡状態」に着目し、上部回路と下部回路を独立させて考えます。
  2. (3)では、測定値のズレが結果にどう影響するかを計算します。
  3. (4)では、平衡が崩れたときの電位の大小関係から電流の向きを判断します。
  4. (5)では、接点が移動して回路構造が変化した状態に対し、キルヒホッフの法則を適用して連立方程式を解きます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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