「名問の森」徹底解説(31〜33問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題31

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、抵抗値が電圧や電流によって変化する「非線形抵抗素子」である電球LとMを含む直流回路がテーマです。与えられたV-I特性曲線を読み解き、キルヒホッフの法則などの電気回路の基本法則と組み合わせて、各設問に答えていきます。グラフを用いて回路の動作点を視覚的に解析する手法をマスターすることが、この問題を攻略する鍵となります。

与えられた条件
  • 電球L: 100Vで使用すると80Wを消費する。
  • 電球M: 100Vで使用すると40Wを消費する。
  • V-I特性曲線: 図1に、電球LとMの電圧Vと電流Iの関係が示されている。
  • 図1の点線: 電球Lの特性曲線の原点における接線。
  • 抵抗の温度係数: \(\alpha = 2.5 \times 10^{-3} /^\circ\text{C}\)
  • 室温: \(0^\circ\text{C}\)
  • 図2の回路: 起電力 \(E=120\text{V}\) の電池(内部抵抗は無視)、抵抗 \(R=100\,\Omega\)
問われていること
  • (1) Lに電圧80VをかけたときのLの抵抗値と消費電力。
  • (2) Lを電圧100Vで使用しているときのフィラメントの温度。
  • (3) Lを図2のXY間に接続したときの、Lの電圧と消費電力。
  • (4) 図3の回路(Lと100Ωの抵抗3本を並列)を図2のXY間に接続したときの、Lにかかる電圧。
  • (5) LとMを並列にして図2のXY間に接続したときの、Lの消費電力と回路全体での消費電力。
  • (コラムQ) LとMを直列にして図2のXY間に接続したときの、回路全体での消費電力。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題の最大のポイントは、電球のような非線形抵抗素子の扱いです。通常の抵抗のようにオームの法則 \(V=RI\) の \(R\) が一定だと考えてはいけません。電球にかかる電圧 \(V\) と電流 \(I\) の関係は、与えられたV-I特性曲線に支配されます。

回路に接続した場合、この電球の特性(V-I曲線)と、回路の構造から決まる制約(キルヒホッフの法則から導かれる負荷線)の両方を同時に満たす一点(動作点)で動作します。この動作点をグラフ上の「特性曲線と負荷線の交点」として見つけ出すことが、基本的な戦略となります。

問 (1)

思考の道筋とポイント
この設問は、V-I特性グラフの基本的な読み取り方を確認する問題です。まず、グラフから指定された電圧に対応する電流の値を正確に読み取ります。その後、オームの法則と電力の公式を用いて、抵抗値と消費電力を計算します。
この設問における重要なポイント

  • V-I特性グラフ上で、指定された電圧値(横軸)から対応する電流値(縦軸)を正確に読み取る。
  • 読み取った電圧と電流の値を用いて、基本的な公式(\(R=V/I\), \(P=VI\))に代入して計算する。

具体的な解説と立式
図1のV-I特性グラフで、電球Lの曲線に着目します。横軸(電圧 \(V\))が \(80\text{V}\) の点から真上に線をたどり、Lの曲線と交わる点を探します。その点の縦軸(電流 \(I\))の値を読み取ると、\(I=0.7\text{A}\) であることがわかります。

このときのLの抵抗値を \(R_L\)、消費電力を \(P_L\) とすると、それぞれの定義式は以下のようになります。

使用した物理公式

  • 抵抗値(オームの法則): \(R = \displaystyle\frac{V}{I}\)
  • 消費電力: \(P = VI\)

$$ R_L = \frac{80\text{ [V]}}{0.7\text{ [A]}} \quad \cdots ① $$
$$ P_L = 80\text{ [V]} \times 0.7\text{ [A]} \quad \cdots ② $$

計算過程

式①に値を代入して、抵抗値 \(R_L\) を求めます。
$$ R_L = \frac{80}{0.7} = \frac{800}{7} \approx 114.2… \, [\Omega] $$
問題の指示に従い、有効数字2桁で答えると、\(1.1 \times 10^2 \, \Omega\) となります。

次に、式②に値を代入して、消費電力 \(P_L\) を求めます。
$$ P_L = 80 \times 0.7 = 56 \, [\text{W}] $$

計算方法の平易な説明

まず、グラフを見て、電圧が80Vのとき、電球Lに流れる電流が0.7Aであることを確認します。
抵抗値を求めるには、オームの法則の公式「抵抗 = 電圧 ÷ 電流」を使い、\(80 \div 0.7\) を計算します。
消費電力を求めるには、公式「消費電力 = 電圧 × 電流」を使い、\(80 \times 0.7\) を計算します。

結論と吟味

したがって、Lに電圧80Vをかけたとき、抵抗値は \(1.1 \times 10^2 \, \Omega\)、消費電力は \(56 \, \text{W}\) となります。得られた値の単位もそれぞれΩとWで適切です。

解答 (1) 抵抗値: \(1.1 \times 10^2 \, \Omega\)、消費電力: \(56 \, \text{W}\)

問 (2)

思考の道筋とポイント
この問題は、抵抗値が温度によって変化する性質を利用して、フィラメントの高温時の温度を推定する問題です。

  1. 高温時の抵抗値 \(R_t\) の計算: まず、100Vで使用している現在の状態について、グラフから電圧と電流を読み取り、そのときの抵抗値 \(R_t\) を計算します。
  2. 低温(室温)時の抵抗値 \(R_0\) の計算: 次に、基準となる室温(0℃)での抵抗値 \(R_0\) を求めます。電流がほぼ0のとき(ジュール熱の発生が無視できるとき)が室温に対応すると考え、V-Iグラフの原点付近の傾きから \(R_0\) を求めます。図の点線は「原点における接線」なので、この直線の傾き(の逆数)が \(R_0\) になります。
  3. 温度の算出: 最後に、抵抗と温度の関係式 \(R_t = R_0(1 + \alpha t)\) を用いて、温度 \(t\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 電球の抵抗は温度に依存し、\(R_t = R_0(1 + \alpha t)\) の関係に従う。
  • V-Iグラフの原点における接線は、ジュール熱の影響が無視できる室温(\(0^\circ\text{C}\))での抵抗特性(オームの法則)を表すと解釈する。

具体的な解説と立式
まず、電球Lを電圧 \(V=100\text{V}\) で使用しているときの抵抗値 \(R_t\) を求めます。図1のグラフより、\(V=100\text{V}\) のとき、流れる電流は \(I=0.8\text{A}\) です。 よって、この高温時の抵抗値 \(R_t\) は、
$$ R_t = \frac{V}{I} \quad \cdots ① $$
次に、室温 \(0^\circ\text{C}\) での抵抗値 \(R_0\) を求めます。これは、図1の点線(原点における接線)から計算できます。この直線は、グラフの読みやすい点として、例えば点 (\(V=20\text{V}, I=1.0\text{A}\)) を通っています。 したがって、\(0^\circ\text{C}\) での抵抗値 \(R_0\) は、
$$ R_0 = \frac{20\text{ [V]}}{1.0\text{ [A]}} \quad \cdots ② $$
金属の抵抗値と温度の関係式に、これらの値を代入して温度 \(t\) を求めます。

使用した物理公式

  • 抵抗の温度依存性: \(R_t = R_0(1+\alpha t)\)

$$ 125 = 20 (1 + 2.5 \times 10^{-3} \times t) \quad \cdots ③ $$

計算過程

式①より、高温時の抵抗 \(R_t\) を計算します。
$$ R_t = \frac{100}{0.8} = 125 \, [\Omega] $$
式②より、\(0^\circ\text{C}\) での抵抗 \(R_0\) を計算します。
$$ R_0 = \frac{20}{1.0} = 20 \, [\Omega] $$
これらの値を式③に代入し、温度 \(t\) について解いていきます。
$$ \frac{125}{20} = 1 + 2.5 \times 10^{-3} t $$
$$ 6.25 = 1 + 2.5 \times 10^{-3} t $$
両辺から1を引きます。
$$ 5.25 = 2.5 \times 10^{-3} t $$
\(t\) について解きます。
$$ t = \frac{5.25}{2.5 \times 10^{-3}} = \frac{5.25}{0.0025} = \frac{52500}{25} = 2100 \, [^\circ\text{C}] $$
有効数字2桁で表すと、\(2.1 \times 10^3 \, ^\circ\text{C}\) となります。

計算方法の平易な説明
  1. まず、100Vのときの抵抗値をグラフから計算します(125Ω)。これはフィラメントが高温になっているときの抵抗値です。
  2. 次に、温度が0℃のときの抵抗値を計算します。これはグラフの点線から計算でき、20Ωです。
  3. 抵抗値が20Ωから125Ωに増えたのは、温度が上がったためです。この変化がどれくらいの温度上昇に対応するのかを、抵抗と温度の関係式を使って計算します。
結論と吟味

Lのフィラメントの温度は \(2.1 \times 10^3 \, ^\circ\text{C}\) となります。電球のフィラメントは発光するために非常に高温になるため、この値は物理的に妥当な大きさです。

解答 (2) \(2.1 \times 10^3 \, ^\circ\text{C}\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
ここからは、非線形素子を含む回路のグラフ解析が本番となります。

  1. 回路の関係式(負荷線)を立てる: キルヒホッフの第2法則を適用し、Lにかかる電圧 \(V\) と流れる電流 \(I\) の間に成り立つ関係式を導きます。この式はV-Iグラフ上で直線をなし、「負荷線」と呼ばれます。
  2. 交点(動作点)を見つける: Lは「特性曲線」に従う必要があり、かつ「負荷線」の条件も満たす必要があります。したがって、この2つの線が交わる点が、この回路で実際に実現する \(V\) と \(I\) の値(動作点)になります。
  3. 値を読み取り計算する: グラフから交点の座標を読み取り、問われている物理量を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 回路の動作点は、素子のV-I特性曲線と、回路が課す制約条件(負荷線)の交点として求められる。
  • 負荷線は、キルヒホッフの法則から導出され、V-Iグラフ上にプロットすることで視覚的に解を求めることができる。

具体的な解説と立式
図2の回路について、キルヒホッフの第2法則を適用します。電源の起電力 \(E=120\text{V}\) は、抵抗 \(R=100\,\Omega\) での電圧降下 \(RI\) と、電球Lでの電圧降下 \(V\) の和に等しくなります。
$$ E = RI + V $$
値を代入すると、電球Lの電圧 \(V\) と電流 \(I\) が満たすべき関係式(負荷線)が得られます。
$$ 120 = 100 I + V \quad \cdots ① $$
この直線と、電球LのV-I特性曲線の交点が、求める動作点です。負荷線を描くために、グラフの切片を求めると便利です。

  • V軸との交点 (I=0 の点): 式①で \(I=0\) とすると、\(V = 120\text{V}\)。よって、点 (120V, 0A) を通ります。
  • I軸との交点 (V=0 の点): 式①で \(V=0\) とすると、\(120 = 100I\)、よって \(I = 1.2\text{A}\)。よって、点 (0V, 1.2A) を通ります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \(E = \sum V_{\text{降下}}\)
計算過程

V-Iグラフ(図1)に、上記の2点 (120V, 0A) と (0V, 1.2A) を結ぶ直線(負荷線)を描き入れます。
この直線と、電球Lの特性曲線との交点の座標をグラフから正確に読み取ります。交点は、
$$ V = 60 \text{ [V]}, \quad I = 0.6 \text{ [A]} $$
であることがわかります。
したがって、Lにかかる電圧は \(60\text{V}\) です。
Lの消費電力 \(P_L\) は、このときの電圧と電流を用いて計算します。
$$ P_L = V \times I = 60 \times 0.6 = 36 \text{ [W]} $$

計算方法の平易な説明
  1. 回路図を見て、キルヒホッフの法則から「\(120 = 100 \times I + V\)」という関係式を立てます。
  2. この関係式は、V-Iグラフ上では直線になります。この直線をグラフに描き込みます。(V=120, I=0 の点と V=0, I=1.2 の点を結ぶと簡単です)
  3. 描いた直線とLの曲線が交わった点が、この回路でのLの実際の電圧と電流です。
  4. グラフから交点の値を読み取り(V=60V, I=0.6A)、消費電力を「電圧 × 電流」で計算します。
結論と吟味

Lにかかる電圧は \(60\text{V}\)、そのときの消費電力は \(36\text{W}\) となります。負荷線がグラフの格子点上で特性曲線と交わっているため、正確に値を読み取ることができ、計算結果も明快です。

解答 (3) 電圧: \(60\text{V}\)、消費電力: \(36\text{W}\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
この問題は(3)の応用編です。XY間に接続される部分が複雑になりましたが、基本的な考え方は同じで、Lの電圧\(V\)と電流\(I\)に関する負荷線を導き、グラフで解きます。

  1. 回路の電流を整理する: XY間にかかる電圧を \(V\) とします。Lに流れる電流を \(I\)、3本の100Ω抵抗に流れる電流を \(i\) とし、それぞれの関係を整理します。
  2. 負荷線を導出する: 回路全体を流れる電流 \(I_{\text{全体}}\) を \(V\) と \(I\) で表し、キルヒホッフの第2法則に代入して、新しい負荷線の方程式を導きます。
  3. 交点を探す: 新しい負荷線をグラフに描き、Lの特性曲線との交点を見つけ、その電圧を読み取ります。

この設問における重要なポイント

  • 並列回路の各部分にかかる電圧は等しい。
  • 回路の分岐点では、流入する電流の和と流出する電流の和は等しい(キルヒホッフの第1法則)。

具体的な解説と立式
XY間にかかる電圧を \(V\) とします。この電圧は、Lと3本の100Ω抵抗に共通してかかります。

  • Lを流れる電流を \(I\) とします。
  • 100Ωの抵抗1本に流れる電流は、オームの法則より \(i = \displaystyle\frac{V}{100}\) です。3本合計では \(3i = \displaystyle\frac{3V}{100}\) の電流が流れます。

電源から出て外側の100Ω抵抗を流れる電流 \(I_{\text{全体}}\) は、キルヒホッフの第1法則より、これらの電流の和になります。
$$ I_{\text{全体}} = I + 3i = I + \frac{3V}{100} \quad \cdots ① $$
次に、回路全体のキルヒホッフの第2法則を適用します。
$$ 120 = 100 \cdot I_{\text{全体}} + V \quad \cdots ② $$
式②に式①を代入して、Lの電圧 \(V\) と電流 \(I\) に関する負荷線を求めます。
$$ 120 = 100 \left( I + \frac{3V}{100} \right) + V $$
$$ 120 = 100I + 3V + V $$
$$ 120 = 100I + 4V \quad \cdots ③ $$
この直線を描くために、切片を求めます。

  • V軸との交点 (I=0 の点): \(120 = 4V\) より \(V = 30\text{V}\)。点 (30V, 0A) を通る。
  • I軸との交点 (V=0 の点): \(120 = 100I\) より \(I = 1.2\text{A}\)。点 (0V, 1.2A) を通る。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): \(\sum I_{\text{in}} = \sum I_{\text{out}}\)
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(E = \sum V_{\text{降下}}\)
計算過程

V-Iグラフ上に、2点 (30V, 0A) と (0V, 1.2A) を結ぶ直線(負荷線)を描き入れます。
この直線と、電球Lの特性曲線との交点の座標をグラフから読み取ると、
$$ V = 20 \text{ [V]}, \quad I = 0.4 \text{ [A]} $$
であることがわかります。
問題で問われているのはLにかかる電圧なので、答えは \(20\text{V}\) です。

計算方法の平易な説明
  1. (3)と同様に考えますが、今回はLと並列に抵抗が3本あります。
  2. 外の抵抗を流れる電流は、「Lの電流 \(I\)」+「抵抗3本分の電流(\(3 \times V/100\))」となります。
  3. これをキルヒホッフの法則の式に入れると、「\(120 = 100I + 4V\)」という負荷線の式が得られます。
  4. この直線をグラフに描き、Lの曲線との交点を読み取ります。交点の電圧が答えです。
結論と吟味

Lにかかる電圧は \(20\text{V}\) となります。(3)の回路(60V)と比較してLにかかる電圧が大幅に低下しました。これは、Lと並列に抵抗を接続したことでXY間の合成抵抗が小さくなり、分圧の法則によりXY間にかかる電圧の割合が減少したためと解釈でき、物理的に妥当な結果です。

解答 (4) \(20\text{V}\)

問 (5)

思考の道筋とポイント
この問題は、2つの非線形素子を組み合わせる問題です。最も系統的な解法は、組み合わせた部分を一つの「合成素子」と見なし、その特性を考えることです。

  1. 合成特性曲線の作成: LとMを並列に接続したものを、一つの「合成電球」と考え、そのV-I特性曲線を作成します。「並列接続は電圧共通、電流は和」のルールに従い、同じ電圧でのLとMの電流を足し合わせてプロットします。
  2. 動作点を求める: この「合成特性曲線」と、(3)と同じ負荷線(\(120 = 100I + V\))との交点を探します。この交点が、並列部分にかかる電圧 \(V\) と、そこに流れ込む全電流 \(I_{\text{合成}}\) を与えます。
  3. Lの消費電力を計算: 交点の電圧 \(V\) が決まれば、その電圧におけるLの電流 \(I_L\) を元のLの特性曲線から読み取り、消費電力 \(P_L = V \times I_L\) を計算します。
  4. 全体の消費電力を計算: 回路全体の消費電力は、電池が供給する電力 \(P_{\text{全体}} = E \times I_{\text{合成}}\) で計算するのが最も簡単です。

この設問における重要なポイント

  • 複数の非線形素子を含む回路は、それらをひとまとめにした「合成特性曲線」を考えることで、単純な問題に帰着させることができる。
  • 並列接続の合成特性は、各素子の電流の和で求められる。
  • 回路全体の消費電力は、電池の供給電力に等しい(エネルギー保存則)。

具体的な解説と立式
LとMの並列接続部分を一つの合成素子と見なします。この素子にかかる電圧を \(V\)、流れる電流を \(I_{\text{合成}}\) とします。並列接続なので、任意の電圧 \(V\) に対して、
$$ I_{\text{合成}}(V) = I_L(V) + I_M(V) \quad \cdots ① $$
が成り立ちます。 この関係を用いて、グラフ上に「L+M」の合成特性曲線を描きます。この合成素子をXY間に接続した回路の負荷線は、(3)と同様に、
$$ 120 = 100 I_{\text{合成}} + V \quad \cdots ② $$
となります。求める動作点は、グラフ上で合成特性曲線①と負荷線②の交点となります。

使用した物理公式

  • 並列接続の性質: 電圧共通、電流は和
  • キルヒホッフの第2法則
  • 全体の消費電力 = 電池の供給電力: \(P_{\text{全体}} = EI\)
計算過程

まず、グラフ上で合成特性曲線「L+M」を作成します。例えば、

  • \(V=40\text{V}\) のとき、 \(I_L = 0.5\text{A}\), \(I_M = 0.3\text{A}\) となり、\(I_{\text{合成}} = 0.5+0.3=0.8\text{A}\)。点(40V, 0.8A)をプロットします。

同様に他の点もプロットして曲線を描き、負荷線 \(120 = 100I + V\) との交点を読み取ると、
$$ V = 40 \text{ [V]}, \quad I_{\text{合成}} = 0.8 \text{ [A]} $$
であることがわかります。
この結果、Lにかかる電圧は \(V=40\text{V}\) です。このときのLに流れる電流 \(I_L\) を、元の「L」の特性曲線から読み取ると、\(I_L = 0.5 \text{ [A]}\) です。
よって、Lの消費電力 \(P_L\) は、
$$ P_L = V \times I_L = 40 \times 0.5 = 20 \text{ [W]} $$
回路全体の消費電力 \(P_{\text{全体}}\) は、電池の供給電力に等しく、電池から流れ出る電流は \(I_{\text{合成}} = 0.8\text{A}\) ですから、
$$ P_{\text{全体}} = E \times I_{\text{合成}} = 120 \times 0.8 = 96 \text{ [W]} $$

別解1: エネルギー保存則による全体の消費電力の検算
思考の道筋とポイント
全体の消費電力は、回路の各部品での消費電力の合計に等しいはずです。このことを利用して、主たる解法で求めた全体の消費電力が正しいか検算します。
具体的な解説と立式
全体の消費電力 \(P_{\text{全体}}\)は、外側の抵抗\(R\)での消費電力 \(P_R\)、Lの消費電力 \(P_L\)、Mの消費電力 \(P_M\) の和です。
$$ P_{\text{全体}} = P_R + P_L + P_M $$
各値を求めます。

  • \(P_R\): 外側の抵抗には合成電流 \(I_{\text{合成}}\) が流れるので、\(P_R = R \cdot (I_{\text{合成}})^2\)。
  • \(P_L\): 主たる解法で計算済み。
  • \(P_M\): Mにかかる電圧も\(V=40\text{V}\)なので、グラフからそのときの電流\(I_M\)を読み取り、\(P_M = V \cdot I_M\)を計算します。
計算過程
  • 外の抵抗\(R\)での消費電力: \(P_R = 100 \times (0.8)^2 = 100 \times 0.64 = 64 \text{W}\)
  • Lの消費電力: \(P_L = 20 \text{W}\)(計算済み)
  • Mの消費電力: グラフから\(V=40\text{V}\)のとき\(I_M=0.3\text{A}\)。よって \(P_M = V \cdot I_M = 40 \times 0.3 = 12 \text{W}\)

これらを合計します。
$$ P_{\text{全体}} = 64 + 20 + 12 = 96 \text{ [W]} $$

結論と吟味

電池の供給電力から計算した値と完全に一致しており、計算の正しさが確認できます。

計算方法の平易な説明
  1. LとMを並列につないだものを1つの部品と考え、そのV-Iグラフを作ります。同じ電圧での電流を足し算して新しいグラフ(L+M)を描きます。
  2. この新しいグラフと、(3)で使った直線(負荷線)との交点を探します。交点の座標は (V=40V, I=0.8A) となります。
  3. Lの消費電力は、Lにかかる電圧40Vのときの電流(元のLグラフから読み取り0.5A)を使って「40V × 0.5A」で計算します。
  4. 回路全体の消費電力は、電池が供給する電力と同じです。「電池の電圧120V × 交点の合計電流0.8A」で計算するのが簡単です。
解答 (5) Lの消費電力: \(20\text{W}\)、回路全体の消費電力: \(96\text{W}\)

【コラム】Q. LとMを直列にして、XY間に連結して使用するとき、回路全体での消費電力はいくらか。

思考の道筋とポイント
この問題も(5)と考え方は似ていますが、今度は「直列接続」です。合成特性曲線の作り方が変わります。

  1. 合成特性曲線の作成: LとMを直列に接続したものを一つの「合成素子」と考えます。「直列接続は電流共通、電圧は和」のルールに従い、同じ電流を流したときのLとMの電圧を足し合わせてプロットします。
  2. 動作点を求める: この「直列合成の特性曲線」と、同じ負荷線(\(120 = 100I + V\))との交点を探します。交点が、回路に流れる電流 \(I\) と直列部分にかかる電圧 \(V_{\text{合成}}\) を与えます。
  3. 全体の消費電力を計算: 回路全体の消費電力は、電池の供給電力に等しいので、\(P_{\text{全体}} = E \times I\) で計算します。

具体的な解説と立式
LとMの直列接続部分を一つの合成素子と見なします。この素子を流れる電流を \(I\)、かかる電圧を \(V_{\text{合成}}\) とします。直列接続なので、任意の電流 \(I\) に対して、
$$ V_{\text{合成}}(I) = V_L(I) + V_M(I) \quad \cdots ① $$
が成り立ちます。この関係を用いて、グラフ上に「L+M (直列)」の合成特性曲線を描きます。この回路の負荷線は、これまでと同様に、
$$ 120 = 100 I + V_{\text{合成}} \quad \cdots ② $$
となります。求める動作点は、グラフ上で合成特性曲線①と負荷線②の交点です。

使用した物理公式

  • 直列接続の性質: 電流共通、電圧は和
  • キルヒホッフの第2法則
  • 全体の消費電力 = 電池の供給電力: \(P_{\text{全体}} = EI\)
計算過程

まず、グラフ上で直列の合成特性曲線を作成します。例えば、

  • \(I=0.3\text{A}\) のとき、 \(V_L \approx 28\text{V}\), \(V_M = 40\text{V}\) となり、\(V_{\text{合成}} \approx 68\text{V}\)。点(68V, 0.3A)をプロットします。
  • \(I=0.35\text{A}\) のとき、 \(V_L \approx 33\text{V}\), \(V_M \approx 52\text{V}\) となり、\(V_{\text{合成}} \approx 85\text{V}\)。点(85V, 0.35A)をプロットします。

これらの点を結んで曲線を描き、負荷線 \(120 = 100I + V\) との交点を読み取ると、
$$ I \approx 0.35 \text{ [A]}, \quad V_{\text{合成}} \approx 85 \text{ [V]} $$
であることがわかります。
回路全体の消費電力 \(P_{\text{全体}}\) は、電池の供給電力に等しく、回路に流れる電流は \(I = 0.35\text{A}\) ですから、
$$ P_{\text{全体}} = E \times I = 120 \times 0.35 = 42 \text{ [W]} $$

計算方法の平易な説明
  1. 今度はLとMを「直列」につないだものを一個の部品として考え、そのV-Iグラフを作ります。
  2. 同じ電流(例えば0.3A)のときのLの電圧とMの電圧をグラフから読み取り、それらを足し算して合成電圧を求めます。これを繰り返し、新しい「L+M(直列)」グラフを描きます。
  3. この新しいグラフと、いつもの直線(負荷線)との交点を探します。
  4. 交点の電流を読み取ると約0.35Aです。これが回路全体を流れる電流になります。
  5. 回路全体の消費電力は「電池の電圧120V × 回路を流れる電流0.35A」で計算できます。
結論と吟味

LとMを直列に接続したときの回路全体の消費電力は \(42\text{W}\) となります。(5)の並列接続の場合(96W)よりも消費電力が小さいことがわかります。これは、直列接続にすると合成抵抗が大きくなり、回路全体に流れる電流が制限されるためであり、定性的に妥当な結果です。

Qの解答 \(42\text{W}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 非線形抵抗とV-I特性曲線
    • 核心:抵抗値が電圧や電流によって一定ではない素子(電球など)の振る舞いは、V-I特性曲線によって記述されます。
    • 理解のポイント:電球の場合、電圧・電流が大きくなるほどジュール熱でフィラメントの温度が上がり、抵抗値が増加します。そのため、グラフは原点を通る直線にはなりません。
  • キルヒホッフの法則と負荷線
    • 核心:回路の動作点(実際に実現する電圧・電流)は、素子自体の特性(V-I曲線)と、回路が課す制約(負荷線)の、両方を満たすただ一点に決まります。
    • 理解のポイント:負荷線とは、キルヒホッフの法則から導かれる、非線形素子にかかる電圧\(V\)と電流\(I\)の関係式のことです。これをグラフに描くことで、連立方程式を視覚的に解くことができます。
  • 合成抵抗(特性)の考え方
    • 核心:複数の素子からなる部分回路も、一つの「合成素子」と見なし、そのV-I特性(合成特性曲線)を考えることで、複雑な回路を単純化できます。
    • 理解のポイント:
      • 並列接続:電圧が共通なので、各素子の電流を足し合わせます。(グラフを縦方向に足すイメージ)
      • 直列接続:電流が共通なので、各素子の電圧を足し合わせます。(グラフを横方向に足すイメージ)

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • ダイオードやツェナーダイオードなど、他の非線形素子を含む電気回路の問題。
    • 電池の内部抵抗が無視できない問題。(負荷線の式が変わるだけで、考え方は同じです)
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 非線形素子の存在確認: 問題にV-I特性グラフが与えられていたら、グラフ解析法を使う可能性が高いです。
    2. \(V, I\) の設定: その非線形素子にかかる電圧を\(V\)、流れる電流を\(I\)と置きます。
    3. 負荷線の導出: キルヒホッフの法則を使い、回路の他の部分との関係から、\(V\)と\(I\)だけの関係式(負荷線の方程式)を立てることを目指します。
    4. 交点探索: 導出した負荷線をグラフに描き込み、特性曲線との交点を探します。
    5. 合成特性の検討: 複数の非線形素子が組み合わさっている場合、それらをひとまとめにした「合成特性曲線」を描くことを検討します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電球の抵抗値を一定だと誤解する
    • 現象:「100Vで80W」という情報から抵抗値を計算し、どの電圧でもその値が使えると勘違いしてしまう。
    • 対策:V-I特性が「曲線」で与えられた時点で、抵抗値は電圧や電流によって変わる「変数」であると認識することが重要です。
  • 負荷線のプロットミス
    • 現象:負荷線の方程式をグラフに描く際に、切片や傾きを計算ミスする。
    • 対策:最も確実な方法は、計算が簡単な2点、V軸との交点(\(I=0\)の点)I軸との交点(\(V=0\)の点)を求めて、その2点を直線で結ぶことです。
  • 合成特性曲線の作り方の混同
    • 現象:並列接続なのに電圧を足したり、直列接続なのに電流を足したりしてしまう。
    • 対策:「並列=電圧共通、電流が和」「直列=電流共通、電圧が和」という基本原則を、作図の際に常に意識しましょう。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 負荷線の図示: キルヒホッフの法則から導いた数式を、グラフという視覚情報に変換することで、解への道筋が一目瞭然になります。
    • 合成特性曲線の作図: (5)やQのように複雑な接続の場合でも、元のグラフから和をとってフリーハンドで新しい曲線を描いてみることで、「だいたいこの辺りに交点が来るな」と見通しを立てることができます。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • グラフの目盛りの単位と大きさを最初に確認する。
    • 負荷線を描く際は、計算した切片の点を正確にプロットする。
    • 合成特性曲線を描く際は、いくつかの代表的な点(格子点の近くなど、読みやすい点)で和を計算し、それらの点を滑らかに結ぶように心がける。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
    • 選定理由:閉じた電気回路における電圧の関係を記述する、最も基本的で普遍的な法則だからです。
    • 適用根拠:この問題の回路はすべて、電源と抵抗素子からなる閉回路を構成しているため、無条件で適用できます。
  • 抵抗の温度依存性の式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\)
    • 選定理由:抵抗値の変化と温度を結びつける問題設定だからです。
    • 適用根拠:(2)でフィラメントの「温度」が問われ、かつ「抵抗の温度係数 \(\alpha\)」が具体的に与えられているため、この公式の使用が必須であると判断できます。
  • 合成抵抗(特性)の考え方
    • 選定理由:複数の素子からなる部分を、単一の素子として扱い問題を単純化できる、強力な手法だからです。
    • 適用根拠:(5)ではLとMが「並列接続」、Qでは「直列接続」という明確な接続形態をとっているため、それぞれのルールに従って合成特性を考えることができます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 問題の分類: 非線形素子(電球)を含む回路であると認識する。
  2. 変数の設定: 非線形素子にかかる電圧を \(V\)、流れる電流を \(I\) とおく。
  3. 制約式の立式: キルヒホッフの法則を使い、回路の構造から \(V\) と \(I\) が満たすべき関係式(負荷線)を導出する。
  4. 解法の決定: 「負荷線の方程式」と「素子のV-I特性曲線」の2つの条件を満たす点が答えであると判断し、グラフ上で交点を求める方針を立てる。
  5. グラフ操作: グラフに負荷線や合成特性曲線を描き込み、交点の座標を正確に読み取る。
  6. 最終計算: 読み取った \(V, I\) の値を用いて、問われている物理量を計算する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • グラフの読み取りは慎重に: 急いで読み取ると、0.1Aのずれなどが簡単に生じます。1目盛りがいくつなのかを最初に確認し、指や定規を当てて正確に読み取る習慣をつけましょう。
  • 有効数字の確認: 問題文の冒頭に「有効数字2桁で答えよ」とあるのを見落とさないこと。 計算の途中では少し多めの桁で計算し、最後に指定された桁数に丸めるのが鉄則です。
  • 単位を意識する: 計算結果に正しい単位(V, A, Ω, W, ℃)を付けることを忘れないようにしましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 定性的な変化の確認:
    • (4)では、(3)に比べて並列に抵抗が増えた結果、Lにかかる電圧が \(60\text{V} \to 20\text{V}\) に下がりました。これは「並列部分の合成抵抗が下がり、分圧が小さくなった」という物理的な直感と一致します。
    • (5)とQを比較すると、並列接続(96W)の方が直列接続(42W)より全体の消費電力が大きくなっています。これも「並列にすると合成抵抗が小さくなり、回路に大きな電流が流れる」という直感と一致します。
  • 別解による検算:
    • (5)で見たように、全体の消費電力を「電池の供給電力」と「各素子の消費電力の和」の2通りで計算し、一致することを確認するのは、非常に有効な検算方法です。

問題32 (信州大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、直流回路に関する複合的な問題です。前半(1)~(4)は「電位差計」と呼ばれる装置の原理を用いて未知の電池の起電力を測定するプロセスを、後半(5)は回路の接続を変更した複雑な状況下で「キルヒホッフの法則」を用いて電池の内部抵抗を求めるプロセスを扱います。一つ一つの条件を正確に読み解き、適切な物理法則を丁寧に適用していくことが求められます。

与えられた条件
  • 電池 \(E_0\): 起電力 \(60 \, \text{V}\)、内部抵抗 \(r_0 = 5.0 \, \Omega\)
  • 電流計 A: 内部抵抗 \(r_A = 1.0 \, \Omega\)
  • 抵抗線 PQ: 長さ \(L = 30.0 \, \text{cm}\)、抵抗 \(R_{PQ} = 120.0 \, \Omega\)、太さが一様
  • 電池 E: 起電力 \(E\)、内部抵抗 \(r\) ともに未知
  • 状況1 (問1~4): 接点SをPから \(12.5 \, \text{cm}\) の位置に置くと、電流計Aの指針がゼロになった。
  • 状況2 (問5): 接点SをQ端に接続すると、電流計Aに \(4.0 \, \text{A}\) の電流が流れた。
問われていること
  • (1) 状況1のとき、電池 \(E_0\) を流れる電流はいくらか。
  • (2) 状況1のとき、電池Eの起電力はいくらか。
  • (3) PSの長さの読みに \(0.1 \, \text{cm}\) の誤差があった場合の、Eの起電力の誤差はいくらか(有効数字1桁)。
  • (4) PS間を \(12.5 \, \text{cm}\) より短くすると、Aにはどちら向きの電流が流れるか。
  • (5) 状況2のとき、電池Eの内部抵抗はいくらか。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、高校物理の直流回路分野における重要な2つのテーマ、「電位差計」と「キルヒホッフの法則」を網羅しています。

前半の電位差計は、未知の電池の起電力を、その電池から電流を一切取り出さずに測定する、非常に精密な方法です。電流計がゼロを示す「ゼロ検流法」という特別な状態が鍵となり、このとき測定対象の電池の内部抵抗は測定値に影響を与えません。

後半は、より一般的な複雑な回路の解析です。このような状況ではキルヒホッフの法則が強力なツールとなります。複数の電源と抵抗が入り組んだ回路でも、電流則(第一法則)と電圧則(第二法則)を正しく組み合わせることで、未知の電流や抵抗、電圧を体系的に解き明かすことができます。

全体を通して、まずは回路がどのような状況にあるのか(電流はどこを流れているのか、あるいは流れていないのか)を正確に把握することが、正しい解法を選択する第一歩となります。

問 (1)

思考の道筋とポイント
電流計Aに電流が流れない、という条件が最大のヒントです。これは、下の回路(電池Eや電流計Aがある部分)が電気的に機能しておらず、実質的に切り離されていると見なせることを意味します。したがって、電流が流れているのは上の回路、つまり電池\(E_0\)とその内部抵抗\(r_0\)、そして抵抗線PQだけで構成される単純な閉回路のみです。この直列回路にオームの法則を適用すれば、流れる電流を簡単に求めることができます。

具体的な解説と立式
電流が流れる上の回路だけに着目します。この回路の全体の抵抗 \(R_{\text{上}}\) は、抵抗線PQの抵抗 \(R_{PQ}\) と電池\(E_0\)の内部抵抗 \(r_0\) を直列に接続したものなので、単純な足し算で求まります。
$$R_{\text{上}} = R_{PQ} + r_0 \quad \cdots ①$$
この回路に流れる電流を \(I\) とすると、オームの法則より、電池の起電力 \(E_0\) が回路全体の抵抗 \(R_{\text{上}}\) と電流 \(I\) の積に等しくなります。
$$E_0 = R_{\text{上}} \times I \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • 合成抵抗(直列): \(R = R_1 + R_2\)
  • オームの法則: \(V = IR\)
計算過程

まず、式①に与えられた値を代入して、回路の全抵抗 \(R_{\text{上}}\) を求めます。
$$R_{\text{上}} = 120.0 \, \Omega + 5.0 \, \Omega = 125.0 \, \Omega$$
次に、この結果と \(E_0=60\,\text{V}\) を式②に代入して、電流 \(I\) を求めます。
$$60 = 125.0 \times I$$
\(I\) についてこの方程式を解くと、
$$I = \displaystyle\frac{60}{125.0} = 0.48 \, \text{A}$$

計算方法の平易な説明

下の回路は電流が流れていないので、一旦無視してしまいましょう。すると問題は「60Vの電池に、120.0Ωの抵抗と5.0Ωの(内部)抵抗がまっすぐつながっている。このとき流れる電流は?」という、とてもシンプルなものになります。回路全体の抵抗は、2つの抵抗を足し合わせた \(120.0+5.0=125.0\,\Omega\) です。あとはオームの法則 \(I = V/R\) に当てはめ、\(I = 60\,\text{V} \div 125.0\,\Omega\) を計算するだけです。

結論と吟味

電池 \(E_0\) を流れる電流は \(0.48 \, \text{A}\) となります。単位も物理量も適切です。

解答 (1) \(0.48 \, \text{A}\)

問 (2)

思考の道筋とポイント
引き続き、電流計の電流はゼロです。この状態がなぜ起こるかを物理的に考えると、「抵抗線PS間の電位差」と「電池Eの起電力」が、互いに打ち消し合う形でぴったり等しくなっている、と理解できます。重要なのは、電池Eの回路(下の回路)には電流が流れていないため、Eの内部抵抗\(r\)による電圧降下はゼロであるということです。したがって、電池Eの両端にかかる電圧は、そのまま起電力\(E\)に等しくなります。つまり、抵抗線PS間の電位差 \(V_{PS}\) を計算すれば、それがそのまま答えになります。

具体的な解説と立式
1. 抵抗線PS間の抵抗値 \(R_{PS}\) の計算:
抵抗線PQは太さが一様なので、その抵抗値は長さに比例します。PQ全体の長さ \(L=30.0\,\text{cm}\) で抵抗が \(R_{PQ}=120.0\,\Omega\) なので、PS間の長さ \(l_1=12.5\,\text{cm}\) の部分の抵抗 \(R_{PS}\) は、比例式から求められます。
$$R_{PS} = R_{PQ} \times \frac{\text{PSの長さ}}{\text{PQの長さ}} = 120.0 \times \displaystyle\frac{12.5}{30.0} \quad \cdots ①$$
2. 抵抗線PS間の電位差 \(V_{PS}\) の計算:
問(1)で求めた電流 \(I=0.48\,\text{A}\) がこの抵抗 \(R_{PS}\) を流れるため、オームの法則によりPS間の電位差 \(V_{PS}\) が決まります。
$$V_{PS} = R_{PS} \times I \quad \cdots ②$$
3. 釣り合いの条件:
電流計の電流がゼロになるのは、この電位差が電池Eの起電力と等しくなるときです。
$$E = V_{PS} \quad \cdots ③$$

使用した物理公式

  • 抵抗値と長さの比例関係
  • オームの法則: \(V = IR\)
  • 電位差計の釣り合い条件: \(E_x = V_{PS}\)
計算過程

まず、式①を用いて抵抗 \(R_{PS}\) を計算します。
$$R_{PS} = 120.0 \, \Omega \times \displaystyle\frac{12.5}{30.0} = 120.0 \times \frac{5}{12} = 50.0 \, \Omega$$
次に、この \(R_{PS}\) の値と、問(1)で求めた電流 \(I=0.48\,\text{A}\) を式②に代入して、電位差 \(V_{PS}\) を計算します。
$$V_{PS} = 50.0 \, \Omega \times 0.48 \, \text{A} = 24.0 \, \text{V}$$
したがって、式③の釣り合い条件より、電池Eの起電力は、
$$E = 24.0 \, \text{V}$$

計算方法の平易な説明

まず、抵抗線のうちPから12.5cmの部分だけの抵抗値を求めます。抵抗線全体の長さが30.0cmで120.0Ωなので、長さの割合 (\(12.5 \div 30.0\)) をかければよく、\(120.0 \times 12.5 \div 30.0 = 50.0\,\Omega\) となります。
この \(50.0\,\Omega\) の部分に、先ほど求めた \(0.48\,\text{A}\) の電流が流れるので、ここにかかる電圧はオームの法則から \(50.0\,\Omega \times 0.48\,\text{A} = 24.0\,\text{V}\) です。
電流計の針が動かないのは、この電圧 \(24.0\,\text{V}\) と、下の電池Eの起電力がちょうど釣り合っているからです。

結論と吟味

電池Eの起電力は \(24 \, \text{V}\) です。この測定方法の優れた点は、電池Eから電流を流さずに測定するため、電池自身の内部抵抗\(r\)が測定結果に影響を与えないことです。これにより、純粋な起電力を精密に知ることができます。

解答 (2) \(24 \, \text{V}\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
これは誤差の計算問題です。PSの長さの測定値に \(\pm 0.1 \, \text{cm}\) の誤差が含まれていた場合、それが最終的に計算される起電力Eの値にどれくらいの誤差 \(\Delta E\) として現れるかを評価します。やることは問(2)の計算と全く同じです。ただ、今回は長さの値を \(12.5 \pm 0.1 \, \text{cm}\) という幅を持った値として計算し、中心値である \(24\,\text{V}\) との差を見つけ出します。

具体的な解説と立式
問(2)で用いた起電力を求める式をそのまま使います。
$$E = \left( R_{PQ} \times \frac{\text{PSの長さ}}{L} \right) \times I$$
ここに、PSの長さとして \(12.5 \pm 0.1 \, \text{cm}\) を代入して、誤差を含んだ起電力の範囲 \(E’\) を求めます。
$$E’ = \left( 120.0 \times \displaystyle\frac{12.5 \pm 0.1}{30.0} \right) \times 0.48 \quad \cdots ①$$
この \(E’\) の計算結果から、誤差の大きさ \(\Delta E\) が分かります。

使用した物理公式

  • 問(2)の立式と同じ
計算過程

式①を計算していきます。
$$E’ = \left( \frac{120.0}{30.0} \right) \times (12.5 \pm 0.1) \times 0.48$$
$$E’ = 4.0 \times (12.5 \pm 0.1) \times 0.48$$
分配法則を使ってカッコを展開します。
$$E’ = (4.0 \times 12.5 \pm 4.0 \times 0.1) \times 0.48$$
$$E’ = (50.0 \pm 0.4) \times 0.48$$
もう一度、分配法則を使います。
$$E’ = 50.0 \times 0.48 \pm 0.4 \times 0.48$$
$$E’ = 24.0 \pm 0.192$$
この結果から、起電力Eの誤差 \(\Delta E\) の大きさは \(0.192 \, \text{V}\) であることが分かります。
問題の指示に従い、有効数字1桁で示すと、
$$\Delta E \approx 0.2 \, \text{V}$$

計算方法の平易な説明

長さの測定が \(0.1\,\text{cm}\) ずれると、最終的な電圧の計算結果がどれだけずれるか、という問題です。問(2)と全く同じ計算を、長さ「12.5」の部分を「\(12.5 \pm 0.1\)」に置き換えて実行します。計算を進めると、結果は「\(24 \pm 0.192\)」Vとなります。この「\(\pm 0.192\)」が誤差の大きさを表しています。最後に、これを指示通り有効数字1桁(上から1桁)に四捨五入して \(0.2\,\text{V}\) とします。

結論と吟味

Eの起電力の誤差は \(0.2 \, \text{V}\) です。どんな測定にも誤差はつきものですが、その誤差が最終結果にどれくらい影響するのかを評価する「誤差の伝播」の計算は、科学実験において非常に重要な考え方です。

解答 (3) \(0.2 \, \text{V}\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
釣り合いの位置(PS=12.5cm)からSをずらすと、電位のバランスが崩れて電流計に電流が流れます。電流は必ず**電位の高い方から低い方へ**流れます。したがって、「抵抗線上の接点S’の電位」と「電池E側の端子Sの電位」のどちらが高いかを比較すれば、電流の向きは自ずとわかります。電圧を地形の高さのようにイメージするのがコツです。

具体的な解説と立式
1. 電位の基準の設定: 計算を簡単にするため、点Pの電位を \(V_P = 0 \, \text{V}\) とします。
2. 各点の電位の確認:
* 上の回路ではPからQへ向かって電流 \(I=0.48\,\text{A}\) が流れているので、抵抗線に沿って電位は連続的に下がっていきます。
* 電池E側の端子Sの電位 \(V_S\) は、点Pから電池Eの分だけ電位が下がるので、\(V_S = V_P – E = 0 – 24 = -24 \, \text{V}\) となります。この値はSをどこに動かしても変わりません。
3. 釣り合い点の電位の再確認:
PSが \(12.5 \, \text{cm}\) の点(点aとします)では、問(2)よりPS間の電位差が \(24\,\text{V}\) でした。Pから電位が下がるので、点aの電位は \(V_a = -24 \, \text{V}\) となります。このとき \(V_a = V_S\) となっているため、電流が流れませんでした。
4. PS間を短くした場合の電位:
PS間を \(12.5 \, \text{cm}\) より短くした接点(点bとします)は、点aよりもPに近くなります。P点(\(0\,\text{V}\))に近いということは、電位降下がより小さいことを意味します。したがって、点bの電位 \(V_b\) は、点aの電位 \(-24\,\text{V}\) よりも高くなります(例: \(-20\,\text{V}\) など)。
5. 電位の比較と電流の向きの決定:
接点bの電位 \(V_b\) と端子Sの電位 \(V_S = -24\,\text{V}\) を比較すると、\(V_b > V_S\) となります。
電流は電位の高い点bから電位の低い端子Sへと流れます。
6. 電流計Aでの向きの判断:
この電流の流れは、抵抗線上の点bから出て、電流計Aを通り、電池Eの負極へと向かうルートです。問題の図でこの流れを追うと、電流計Aを上から下へ通過することがわかります。よって、電流の向きは「下向き」です。

使用した物理公式

  • 電位の概念(電流は電位の高い点から低い点へ流れる)
  • オームの法則
計算過程

この設問は、大小関係の比較による定性的な考察が主であり、具体的な数値計算は不要です。

計算方法の平易な説明

電圧を「高さ」に例えてみましょう。P点を高さ0mの地面とします。電流が流れることで、抵抗線PQに沿ってQ点に向かうほど地面はどんどん低くなっていきます。12.5cmの釣り合い点は、ちょうど高さ「-24m」の場所でした。一方、電池E側の端子の高さは、常に「-24m」で固定されています。
ここで、SをP側にずらす、つまり12.5cmより短くすると、接点は-24mよりも高い場所(例えば-20mなど)に移動します。高さ「-20m」の接点と、高さ「-24m」の端子の間に水(電流)を流そうとすると、当然高い方から低い方へ、つまり接点から端子へ流れます。この流れが電流計Aを「下向き」に通過する流れに対応します。

結論と吟味

電流は下向きに流れます。ちなみに、逆にPS間を12.5cmより長くすると、接点の電位が \(-24\,\text{V}\) より低くなるため、電流は逆向き(上向き)に流れることも予想できますね。

解答 (4) 下向き

問 (5)

思考の道筋とポイント
接点SをQまで移動させると、回路の様子は一変します。もはや電位差計ではなく、2つの電源と複数の抵抗が接続された複雑な回路です。しかし、(4)の考察を応用すれば、Q点の電位はE側の端子の電位(-24V)よりずっと低くなるため、電流はE側からQ点へ向かう(Aを上向きに流れる)ことが予想できます。
この回路では、未知数が「電池\(E_0\)を流れる電流 \(i\)」と「電池Eの内部抵抗 \(r\)」の2つあります。未知数が2つある場合、それらを解くためには独立した方程式が2本必要です。このような複雑な回路を解くための万能ツールが、キルヒホッフの法則です。異なる2つの閉回路(ループ)に対して電圧則(第二法則)を適用し、連立方程式を立てて解くのが王道です。

具体的な解説と立式
1. 電流の設定:
* 電池 \(E_0\) から流れ出す電流を \(i\) とします(未知数1)。
* 電流計Aを(上向きに)流れる電流は、問題文から \(I_A = 4.0 \, \text{A}\) です。
* キルヒホッフの第一法則(電流則)を点Qに適用します。点Qには抵抗線PQから電流 \(I_{PQ}\) が、電池E側から電流 \(I_A=4.0\,\text{A}\) が流れ込み、それらが合わさって電流 \(i\) として電池\(E_0\)側へ流れていきます。よって、\(I_{PQ} + 4.0 = i\)、すなわち抵抗線PQをP\(\rightarrow\)Qの向きに流れる電流は \(I_{PQ} = i – 4.0\) と表せます。
2. 方程式の立式(キルヒホッフの第二法則):
* 閉回路1 (外周のループ: \(E_0 \rightarrow P \rightarrow Q \rightarrow E_0\)):
P \(\rightarrow\) Q \(\rightarrow\) (内部抵抗\(r_0\)) \(\rightarrow\) \(E_0\) \(\rightarrow\) P と回路を一周します。「起電力の和 = 電圧降下の和」より、
$$E_0 = R_{PQ} \times (i – 4.0) + r_0 \times i$$
$$60 = 120.0(i – 4.0) + 5.0i \quad \cdots ①$$
* 閉回路2 (P-Q間の電位差に着目):
点Pと点Qの間の電位差 \(V_{PQ} = V_P – V_Q\) は、どの経路で計算しても同じ値になるはずです。
* 経路(a) 上の枝線 (\(E_0\)側) で計算: \(V_P – V_Q = E_0 – r_0 i\)
* 経路(b) 下の枝線 (\(E\)側) で計算: 電池Eは \(4.0\,\text{A}\) の電流を供給(放電)しています。したがって、P-Q間の電位差は、起電力Eと、内部抵抗\(r\)および電流計の抵抗\(r_A\)での電圧降下の和になります。\(V_P – V_Q = E + (r+r_A) \times 4.0\)
経路(a)と(b)の電位差が等しいことから、
$$E_0 – r_0 i = E + (r+r_A) \times 4.0$$
数値を代入すると、
$$60 – 5.0i = 24 + (r + 1.0) \times 4.0 \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第一法則(電流則)
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則)
計算過程

まず、未知数が \(i\) しか含まれていない式①を解いて、電流 \(i\) を求めます。
$$120.0i – 480 + 5.0i = 60$$
$$125i = 540$$
$$i = \displaystyle\frac{540}{125} = \frac{108}{25} = 4.32 \, \text{A}$$
次に、この求まった \(i=4.32\,\text{A}\) の値を、もう一つの方程式②に代入して、残りの未知数 \(r\) を求めます。
$$60 – 5.0 \times 4.32 = 24 + (r + 1.0) \times 4.0$$
$$60 – 21.6 = 24 + 4(r+1)$$
$$38.4 = 24 + 4r + 4$$
$$38.4 = 28 + 4r$$
両辺から28を引くと、
$$10.4 = 4r$$
\(r\) について解くと、
$$r = \displaystyle\frac{10.4}{4} = 2.6 \, \Omega$$

計算方法の平易な説明

この問題は、2つの未知数(電流\(i\)と抵抗\(r\))があるので、パズルを解くように方程式を2つ見つけ出すのが目標です。
1本目は、回路の外側をぐるっと一周する大きなループに着目して式を立てます。この式には未知数が \(i\) しか出てこないので、ここからまず \(i\) の値が \(4.32\,\text{A}\) だと確定させることができます。
2本目は、「P点とQ点の間の電圧」に着目します。この電圧は、上のルート(電池\(E_0\)を通る)で考えても、下のルート(電池\(E\)を通る)で考えても同じはず、という関係から式を立てます。
あとは、1本目の式で求めた \(i=4.32\,\text{A}\) という結果を2本目の式に入れてあげることで、最後の未知数 \(r\) を求めることができます。

結論と吟味

電池Eの内部抵抗は \(2.6 \, \Omega\) です。得られた値は正であり、物理的に妥当な値です。連立方程式を解くことで、複雑に見える回路の未知数を特定することができました。

別解1: (5)のループの取り方を変える
思考の道筋とポイント
キルヒホッフの第二法則で使うループの選び方は無数にあり、どのループを選んでも正しく立式すれば同じ答えにたどり着きます。ここでは、メインの解法とは異なる、下の小さいループ(PQ-E-Aのループ)を使って方程式を立ててみましょう。立式の見た目は変わりますが、同じ結果になることを確認することで、法則への理解が深まります。

具体的な解説と立式
1. 電流の設定: メインの解法と全く同じです。\(E_0\)を流れる電流が\(i\)、Aを上向きに\(4.0\,\text{A}\)、PQを流れる電流が\(i-4.0\)です。
2. 方程式の立式(キルヒホッフの第二法則):
* 閉回路1 (外周のループ): メインの解法と同じ①式を使います。この式が一番シンプルで \(i\) を求めやすいからです。
$$120.0(i – 4.0) + 5.0i = 60 \quad \cdots ①$$
* 閉回路2 (下のループ: \(P \rightarrow Q \rightarrow A \rightarrow E \rightarrow P\)):
Pから抵抗線PQを通ってQへ行き、そこからA、Eを通ってPへ戻るループを考えます。PからスタートしてPに戻ると電位は元に戻る(電位差ゼロ)ので、「電圧上昇の和=電圧降下の和」が成り立ちます。
P \(\rightarrow\) Q の向きに電圧降下 \(120.0(i-4.0)\) が生じます。
Q \(\rightarrow\) P の向きには、電池Eによる起電力 \(E=24\,\text{V}\) と、抵抗 \(r, r_A\) での電圧降下 \(4.0(r+r_A)\) があります。
ループ全体の電圧則は、
$$(\text{P→Qでの電圧降下}) = (\text{Q→Pでの電圧上昇})$$
$$120.0(i-4.0) = 24 + 4.0(r+1.0) \quad \cdots ③$$

計算過程

メインの解法と同様に、まず式①から \(i = 4.32 \, \text{A}\) を求めます。
この結果を、新しく立てた式③に代入します。
$$120.0(4.32 – 4.0) = 24 + 4.0(r+1.0)$$
$$120.0 \times 0.32 = 24 + 4r + 4.0$$
$$38.4 = 28 + 4r$$
両辺から28を引くと、
$$10.4 = 4r$$
$$r = \displaystyle\frac{10.4}{4} = 2.6 \, \Omega$$

結論と吟味

やはり同じく \(2.6 \, \Omega\) という答えが得られました。キルヒホッフの法則では、どのループを選んでも物理的に正しい式を立てれば必ず同じ結論に至る、という法則の強力さと普遍性が確認できましたね。

解答 (5) \(2.6 \, \Omega\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電位差計の原理(ゼロ検流法): この問題の前半の核心です。電流計の振れがゼロという条件は、測定対象である電池Eが接続された2点間の電位が完全に等しくなっていることを意味します。これにより、測定対象から電流を一切引き出すことなく、その純粋な起電力を、基準となる回路(抵抗線PQ)の電位差と比較して精密に測定できます。
  • キルヒホッフの法則: この問題の後半の核心であり、あらゆる直流回路解析の基本法則です。
    • 第一法則(電流則): 回路のどの分岐点においても、流れ込む電流の総和と流れ出す電流の総和は等しい。電荷が保存することを示します。
    • 第二法則(電圧則): 回路内の任意の閉じたループ(閉回路)を一周すると、起電力(電圧を上げる要素)の総和と電圧降下(電圧を下げる要素)の総和は等しい。エネルギーが保存することを示します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • ホイートストンブリッジ回路: 未知の抵抗を測定する回路で、これも検流計の電流がゼロになる点(ブリッジの平衡)を探す「ゼロ検流法」を用います。本質的な考え方はこの問題の(1)~(4)と全く同じです。
    • 複数の電源を含む複雑な直流回路: どんなに複雑に見える回路でも、キルヒホッフの法則は万能の解析ツールです。未知数が \(n\) 個あれば、独立な方程式を \(n\) 本立てる、という手順を思い出せば、必ず解法への道筋が見えます。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 「検流計の電流が0」という記述を探す: このキーワードがあれば、それは「電位差計」や「ホイートストンブリッジ」の原理を使うサインです。その2点間の電位が等しい、という式を立てます。
    2. 回路が複雑で単純化できない場合: 複数の電源があったり、抵抗が並列・直列に整理できなかったりする場合は、迷わずキルヒホッフの法則の適用を考えます。
    3. 未知数の数を数える: 求めたい物理量(電流、抵抗など)がいくつあるかを確認します。その数だけ独立した方程式が必要になるので、ループをいくつ選ぶべきかの指針になります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電位差計での範囲の誤り:
    • 現象: (2)で、釣り合っているのが抵抗線PS間の電位差であるにもかかわらず、PQ全体の電位差と起電力Eが等しいと誤解してしまう。
    • 対策: 「接点S」がどこにあるかを常に意識する。釣り合いは、あくまで「PからSまで」の区間と「電池E」の間で起こっていることを図で確認する。
  • 電位の高低の判断ミス:
    • 現象: (4)で、電流の向きを判断する際に、PとQのどちらの電位が高いかを直感で間違える。
    • 対策: 電源のプラス極につながる側が電位が高く、マイナス極側が低いという基本に立ち返る。この問題では、E₀のプラス側につながるPの方がQよりも電位が高い。電流はPからQへ流れ、電位は下がっていくことを理解する。
  • キルヒホッフの法則での符号ミス:
    • 現象: (5)の電圧則の立式で、電圧降下と電圧上昇(起電力)の符号をごちゃまぜにしてしまう。
    • 対策: ①まず各電流の向きを仮定して図に矢印で書き込む。②ループを一周する向きを決める。③ループの向きと電流の向きが同じなら電圧降下(-RI)、逆なら電圧上昇(+RI)。④ループの向きが電池のマイナスからプラスへなら起電力はプラス(+E)、逆ならマイナス(-E)。このルールを機械的に適用する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 電位を「地形の高さ」でイメージする: これはこの問題全体を通して極めて有効なイメージです。電源のプラス極を「山頂」、マイナス極を「麓」と見なします。抵抗は「坂道」で、電流が流れると高さ(電位)が下ります。
      • (4)の考察: 「釣り合いの点」は、抵抗線の坂道の途中にある「高さ-24mの地点」と、電池E側の「高さ-24mの地点」が一致した場所。SをP側にずらせば、より高い地点(例: -20m)に行くので、-24mのE側へ向かって電流が流れる、と直感的に理解できます。
    • 電流を「水の流れ」でイメージする: キルヒホッフの第一法則は、分岐点で水の流れが分かれたり合流したりするイメージそのものです。入ってくる水の量と出ていく水の量は同じ、と考えると自然に理解できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • オームの法則 \(V=IR\):
    • 選定理由: 1つの抵抗とそこを流れる電流、両端の電圧の関係を知りたい、最も基本的な場面で用いる。問(1)や(2)のように、回路の一部を単純な直列回路と見なせる場合に活躍する。
    • 適用根拠: 抵抗を流れる電流は、その両端の電位差に比例するという、電気抵抗の定義そのもの。
  • 電位差計の釣り合い条件 \(E_x = V_{PS}\):
    • 選定理由: 「検流計の電流がゼロ」という条件がある問題で、未知の起電力 \(E_x\) を求めたい場合に用いる。
    • 適用根拠: 検流計を挟んだ2点の電位が等しいという物理的状況を、数式に翻訳したもの。
  • キルヒホッフの法則:
    • 選定理由: 複数の電源があったり、抵抗の接続が直列・並列に単純化できない、複雑な回路を解析する場合に選択する。これを使えばどんな直流回路も原理的に解ける。
    • 適用根拠: 電荷保存則(第一法則)とエネルギー保存則(第二法則)という、物理学の根本原理に基づいているため、常に成り立つ。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 状況分析: まず、問題の状況が「電位差計(電流ゼロ)」なのか、「複雑な回路(複数電流あり)」なのかを見極める。
  2. 法則選択:
    • 「電位差計」なら、①上の回路の電流をオームの法則で求める → ②抵抗線上の電位差を計算する → ③未知の起電力と電位差を等しいと置く、という3ステップを思い出す。
    • 「複雑な回路」なら、キルヒホッフの法則を使うと決める。
  3. キルヒホッフの適用の手順:
    1. 未知の電流に文字を割り当て、向きを仮定して図に書き込む。
    2. 分岐点を見つけ、第一法則(電流則)で電流間の関係式を立てる。
    3. 未知数の数に合わせて、独立なループをいくつか選び、第二法則(電圧則)で方程式を立てる。
    4. 出来上がった連立方程式を、数学の計算問題として慎重に解く。
  4. 最終確認: 求めた値の単位や符号が物理的に妥当か(例: 抵抗値が負になっていないか)を軽く吟味する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位を一旦省略して数字に集中する: 立式と計算の途中では、ΩやVなどの単位は一旦省略し、数字と文字だけの数式として扱うと、式全体の見通しが良くなり、計算ミスが減ります。(ただし、最終的な答えには必ず適切な単位を付けること!)
  • 連立方程式は丁寧に: (5)のような連立方程式では、一方の式から求めた結果をもう一方の式に代入する際に、符号の間違いや転記ミスが起こりやすい。一行一行、焦らず丁寧に式変形を行う。
  • 分数の計算を制する: 電流を求める際など、\(I = 60/125\) のような分数が出てきたら、すぐに小数に直さず、\(108/25\) のように約分して分数のまま扱った方が、後の計算で約分できて楽になる場合がある。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 極端な条件で考える:
    • 「もし、電池Eの内部抵抗rがゼロだったら?」と考えてみる。(5)の答えは \(r=2.6\,\Omega\) だったが、もし抵抗がなければ、電池Eはより多くの電流を流しやすいはずだ、などの定性的な考察ができる。
  • 物理的な意味の考察:
    • (5)で求めた電流 \(i=4.32\,\text{A}\) は、分岐前の電流である。これは、Aを流れる \(4.0\,\text{A}\) とPQを流れる \(0.32\,\text{A}\) の和に等しく、キルヒホッフの第一法則がきちんと満たされていることを確認できる。
    • 求めた内部抵抗 \(r=2.6\,\Omega\) は正の値であり、物理的に意味のある値となっている。もし負の値が出たら、どこかで計算ミスや立式の符号ミスを犯している証拠になる。

問題33

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、ダイオードという特殊な素子を含む直流回路を解析する問題です。ダイオードは電流を特定の向きにしか流さない「一方通行」の性質を持つため、回路の状態(各点の電位)によってその役割が「導線」になったり「断線」になったりします。この変化を正しく見抜き、回路の状況に応じて適切な物理法則(分圧の公式やキルヒホッフの法則)を適用できるかが問われます。スイッチSの開閉によっても回路構造が大きく変わるため、各設問の条件を丁寧に整理することが重要です。

与えられた条件
  • 電源: 左側に24V、下側に8Vの電池(いずれも内部抵抗は無視できる) 。
  • 抵抗: 固定抵抗が3つ(60Ω、20Ω、20Ω)、可変抵抗が1つ(R) 。
  • ダイオードD: A→Bの向きには抵抗0(導線と同じ)で電流を流すが、逆のB→Aの向きには電流を流さない(断線と同じ) 。
  • スイッチS: (1)~(3)では開いている。(4)とQでは閉じている 。
問われていること
  • (1) Sが開いており、R=0Ωのとき、Dに電流が流れない理由。
  • (2) Sが開いている状態で、Rを大きくしていったときにDに電流が流れ始める瞬間のRの値。
  • (3) Sが開いており、R=60ΩのときのDを流れる電流の値。
  • (4) Sを閉じた状態で、Rを大きくしていったときにDに電流が流れ始める瞬間のRの値。
  • (コラムQ) Sを閉じ、R=180Ωとしたとき、Dに電流が流れるか。また、流れる場合の電流値。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題の主役はダイオードです。ダイオードは、A点の電位がB点の電位より高いとき(\(V_A > V_B\))にだけA→Bの向きに電流を流す「一方通行の扉」のような電子部品です。この扉が開いているか(電流を流すか)、閉じているか(電流を流さないか)を判断することが、すべての設問を解く上での最初のステップになります。

この判断をするための定石は、まず「もしダイオードがなかったとしたら、A点とB点の電位はどうなるか?」を考えることです。

  • もし計算の結果 \(V_A > V_B\) なら、扉は開く条件を満たしているので、ダイオードは抵抗0の導線として扱って回路を再計算します。
  • もし計算の結果 \(V_B \ge V_A\) なら、扉は逆向きには開かないので、ダイオードは断線として扱います。

この基本方針と、複雑な回路の解析に万能なキルヒホッフの法則を組み合わせて、各設問に挑戦しましょう。計算を簡単にするため、回路図の下側の導線G全体の電位を \(0\,\text{V}\) という基準に置くと、各点の電位(高さ)が考えやすくなり非常に便利です。

問 (1)

思考の道筋とポイント
ダイオードDに電流が流れるかどうかは、A点とB点の電位、つまり電圧の「高さ」を比較すれば分かります。DはA→Bの向きにしか電流を通しません。したがって、Dに電流が流れない理由は、「AとBの電位が等しい」か「Bの電位がAより高い」のどちらかです。まずは、与えられた条件(Sは開、R=0Ω)の下で、A点とB点の電位をそれぞれ具体的に求めてみましょう。

具体的な解説と立式
1. 基準電位の設定: 計算の基準として、回路の下側の導線Gの電位を \(V_G=0\,\text{V}\) とします。
2. A点の電位 \(V_A\) の計算:
問題の条件で R=0Ω なので、A点は抵抗ゼロでGに直接接続されていることになります 。したがって、A点の電位はGと同じです。
$$V_A = V_G = 0\,\text{V}$$
3. B点の電位 \(V_B\) の計算:
スイッチSが開いているため、24Vの電源から右側の回路(20Ω-20Ωの枝)へは電流が供給されません 。また、8Vの電源がある枝もB点で回路が途切れているため、ループが形成されず電流は流れません。抵抗に電流が流れなければ、その抵抗による電圧降下はゼロです。したがって、B点の電位は、接続されている8V電源の正極の電位と等しくなります。Gが0Vなので、8V電源の正極は+8Vです。
$$V_B = +8\,\text{V} \quad \cdots (\text{模範解答の解釈より}) $$
4. 電位の比較:
\(V_A = 0\,\text{V}\)、\(V_B = +8\,\text{V}\) なので、明らかに \(V_B > V_A\) です 。

使用した物理公式

  • 電位の概念
  • オームの法則(電流が0なら電圧降下も0)
計算過程

上記の物理的な考察によってA点とB点の電位が特定されるため、この設問では追加の計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

地面(導線G)の電位を0Vと考えます。Rが0Ωなので、A点は地面に直接つながっており、高さ0Vです。一方、B点はどうでしょうか。スイッチが開いているので、右側の回路には電気が流れません。電流が流れない抵抗は電圧を変えないので、B点の高さは、つながっている8Vの電池のプラス側の高さ、つまり+8Vになります。A点が0V、B点が+8Vなので、B点の方がA点より8V高い状態です。

結論と吟味

B点の電位がA点より高いため、電流はB→Aの向きに流れようとします。しかし、ダイオードDはこの向きの電流を通さない「一方通行の壁」としてはたらくため、結果として電流は流れません 。これが理由です。問題の字数制限に合わせて要約すると、「AよりBの電位が高いから。」となります。

解答 (1) AよりBの電位が高いから。

問 (2)

思考の道筋とポイント
可変抵抗Rの値を0から徐々に大きくしていくと、A点の電位は0Vから徐々に上昇していきます。そして、A点の電位がB点の電位に追いつき、それを超えようとする瞬間にDに電流が流れ始めます。つまり、電流が「流れ始めるまさにその瞬間」は、\(V_A = V_B\) となったときと考えることができます 。この瞬間、まだ電流は実質的に流れていない(\(i \approx 0\))と見なせるので、B点の電位は(1)と同じく+8Vのままです。したがって、A点の電位が+8VになるようなRの値を求めればよい、という問題に帰着します。

具体的な解説と立式
1. 流れ始める瞬間の条件:
ダイオードDに電流が流れ始めるのは、A点とB点の電位が等しくなる瞬間です 。
$$V_A = V_B$$
2. B点の電位:
Sが開いており、Dに電流が流れていない状況なので、(1)と同様に右側の回路に電流は流れません。よって、B点の電位は8Vで一定です 。
$$V_B = +8\,\text{V}$$
3. A点の電位:
A点は、24Vの電源によって60Ωの抵抗と可変抵抗Rに電圧が分けられる「分圧点」です。Gを0Vとすると、A点の電位\(V_A\)は、抵抗Rの両端にかかる電圧に等しくなります。これは分圧の公式から求められます。
$$V_A = (\text{全体の電圧}) \times \frac{(\text{自分の抵抗})}{(\text{全体の抵抗})} = 24 \times \frac{R}{60 + R} \quad \cdots ①$$
4. 方程式の立式:
\(V_A = V_B = 8\,\text{V}\) という条件を立てます 。
$$8 = 24 \times \frac{R}{60 + R} \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • 分圧の公式: \(V_{out} = V_{in} \times \displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2}\)
計算過程

式②をRについて解きます。
まず、両辺を24で割ると、
$$\frac{8}{24} = \frac{R}{60 + R}$$
$$\frac{1}{3} = \frac{R}{60 + R}$$
分母を払うために両辺に \(3 \times (60+R)\) を掛けます。
$$1 \times (60 + R) = 3 \times R$$
$$60 + R = 3R$$
Rの項を右辺にまとめます。
$$60 = 3R – R = 2R$$
したがって、Rの値は、
$$R = 30 \, [\Omega]$$

計算方法の平易な説明

Rの値を大きくすると、24Vの電圧のうちRが担当する分け前が増えるため、A点の電圧(高さ)は上がっていきます。目標は、このA点の高さを、B点の高さである+8Vにすることです。24Vの電圧を、60Ωの抵抗とRで分け合うので、「A点の電圧 = 24V × (Rの抵抗値) ÷ (60ΩとRを合わせた抵抗値)」という分圧の式を使います。このA点の電圧が8VになるようなRの値を、方程式を解いて見つけます。

結論と吟味

Rが \(30\,\Omega\) になった瞬間にA点の電位が8Vに達し、ダイオードDに電流が流れ始めます 。Rが \(30\,\Omega\) より小さいときは \(V_A < 8\text{V}\) なので電流は流れず、\(30\,\Omega\) より大きいときは \(V_A > 8\text{V}\) となり、DにはA→Bの向きに電流が流れるようになります。

解答 (2) \(30 \, \Omega\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
R=60Ωとします。(2)の考察から、Rが30Ωを超えるとDに電流が流れることが分かっているので、この状態ではDにはA→Bの向きに電流が流れています。問題の条件より、このときDは**抵抗0の導線**と見なせます。つまり、A点とB点は電気的に同じ点(等電位)になります。この状態で回路に流れる電流を求めるには、もはや単純な分圧計算は使えず、**キルヒホッフの法則**の出番となります。未知の電流を文字で置き、ループに関する連立方程式を立てて解く、という王道パターンで進めます。

具体的な解説と立式
1. 電流の設定:
* 60Ωの抵抗を上から下に流れる電流を \(I\) とします。
* ダイオードDをA→Bに流れる電流を \(i\) とします(これが求める値です)。
* A点で電流 \(I\) が分岐するので、R=60Ωの抵抗をA→Gに流れる電流は、キルヒホッフの第一法則より \(I-i\) となります。
* B点に電流 \(i\) が流れ込みます。Sは開いているので上には行けません。したがって、この電流 \(i\) は下の20Ωの抵抗を通って8Vの電源に向かって流れていきます。
2. キルヒホッフの第二法則(電圧則)の適用:
未知数が \(I\) と \(i\) の2つなので、独立した方程式が2本必要です。
* 閉回路①(左のループ: 24V電源、60Ω、R=60Ω):
このループでは、「起電力 = 電圧降下の和」より、
$$24 = 60 \times I + 60 \times (I-i) \quad \cdots ①$$
* 閉回路②(A-B間の等電位を利用):
Dが導線なのでA点とB点は等電位(\(V_A=V_B\))です。この関係を利用します。
A点の電位 \(V_A\) は、R=60Ωでの電圧降下に等しいので、\(V_A = 60(I-i)\) です。
B点の電位 \(V_B\) は、G(0V)から見て、8V電源を通り、20Ωの抵抗を電流\(i\)が流れた先の電位です。B→Gの向きに電流\(i\)が流れるので、B点の方がG点より電位が高いです。電位差の関係は \(V_B – (\text{20Ωでの降下}) – (\text{8V電池}) = V_G = 0\) となり、\(V_B – 20i – 8 = 0\)、よって \(V_B = 8 + 20i\) となります。
\(V_A=V_B\) の条件から、以下の方程式が成り立ちます。
$$60(I-i) = 8 + 20i \quad \cdots ②$$
(これは模範解答の式 `8 = -20i + 60(I-i)` を移項して整理したものと同じです)

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第一法則(電流則)
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則)
計算過程

式①と②の連立方程式を解いて \(i\) を求めます。
まず、それぞれの式を整理します。

式①: \(24 = 120I – 60i \quad \rightarrow \quad 2 = 10I – 5i\) (両辺を12で割る)

式②: \(60I – 60i = 8 + 20i \quad \rightarrow \quad 60I – 80i = 8 \quad \rightarrow \quad 15I – 20i = 2\) (両辺を4で割る)

整理後の2式は以下の通りです。
$$\begin{cases} 10I – 5i = 2 \quad \cdots ①’ \\ 15I – 20i = 2 \quad \cdots ②’ \end{cases}$$
①’を3倍し、②’を2倍して \(I\) の係数を揃えます。
$$\begin{cases} 30I – 15i = 6 \\ 30I – 40i = 4 \end{cases}$$
上の式から下の式を引くと、
$$(30I – 15i) – (30I – 40i) = 6 – 4$$
$$25i = 2$$
$$i = \frac{2}{25} = 0.08 \, \text{A}$$

計算方法の平易な説明

Rが60Ωのときは、A点の電位がB点より高くなるため、AからBへ電流が流れます。このときダイオードはただの導線になり、A点とB点は同じ高さ(電位)になります。この複雑な回路を解くには、キルヒホッフの法則を使います。流れる電流を2種類の文字(\(I, i\))で置いて、回路の中からループを2つ選び、それぞれで「電池の電圧=抵抗での電圧降下の合計」という式を立てます。すると、文字が2つ、式が2本の連立方程式が完成するので、これを中学校で習った計算方法で解けば、求めたい電流 \(i\) が見つかります。

結論と吟味

ダイオードDを流れる電流は \(0.08 \, \text{A}\) です 。値が正として求まったので、最初に仮定した電流の向き(A→B)が正しかったことも同時に確認できます。

解答 (3) \(0.08 \, \text{A}\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
今度はスイッチSを閉じます。これにより、回路の構造が(1)~(3)とは根本的に変わります。60ΩとRの枝(左の枝)、そして20Ωと20Ωの枝(右の枝)が、2つの電源にまたがる形で並列に接続された状態です。この新しい回路で、Dに電流が流れ始める瞬間のRの値を求めます。(2)と考え方は同じで、「流れ始める瞬間」は \(V_A = V_B\) となるときです。このときDにはまだ電流が流れていないので、左右の枝は独立していると考えることができます。まずは、右の枝に流れる電流とB点の電位を確定させ、次にその電位とA点の電位が等しくなるようなRの値を求めます。

具体的な解説と立式
1. 流れ始めの瞬間の条件:
(2)と同様に、\(V_A = V_B\) であり、このときDを流れる電流は0とみなします 。
2. 右側の枝の解析(\(V_B\)の計算):
Sが閉じているので、右側の20Ωと20Ωの抵抗の枝には電流が流れます。この電流を \(I_2\) とします。
24V電源の正極からSを通り、右の枝を抜け、8V電源を通ってGに戻る大きな閉回路を考え、キルヒホッフの第二法則を適用します 。このループには24Vと8Vの電源が逆向きに接続されているので、回路を駆動する実質的な起電力は \(24 – 8 = 16\,\text{V}\) です。抵抗は2つの20Ωが直列なので合計 \(40\,\Omega\) です。
$$24 – 8 = (20+20) \times I_2 \quad \cdots ①$$
B点の電位 \(V_B\) は、G(0V)から8V電源を通り、下の20Ω抵抗を電流\(I_2\)が流れた先の電位です。電流の向きは24V電源が優勢なので上から下、つまりBからGの向きです。したがって、B点の電位はGより高くなります。
$$V_B = 8 + 20 \times I_2 \quad \cdots ②$$
3. 左側の枝の解析(\(V_A\)の計算):
Dに電流が流れないので、左側の枝も独立しています。24Vの電源が60ΩとRの直列抵抗にかかっています。A点の電位 \(V_A\) は、分圧の公式で求められます。
$$V_A = 24 \times \frac{R}{60 + R} \quad \cdots ③$$
4. 方程式の立式:
条件 \(V_A = V_B\) に、②と③を代入して最終的な方程式を立てます。
$$24 \times \frac{R}{60 + R} = V_B \quad \cdots ④$$
この式を解くために、まず①と②から\(V_B\)の値を確定させます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第二法則(電圧則)
  • 分圧の公式
計算過程

まず、式①から電流 \(I_2\) を求めます。
$$16 = 40 I_2 \quad \rightarrow \quad I_2 = \frac{16}{40} = 0.4 \, \text{A}$$
次に、この \(I_2\) の値を式②に代入して、B点の電位 \(V_B\) を計算します。
$$V_B = 8 + 20 \times 0.4 = 8 + 8 = 16 \, \text{V}$$
流れ始めの条件は \(V_A = V_B\) なので、\(V_A = 16\,\text{V}\) となります。この値を式③(または④)に代入してRを求めます。
$$16 = 24 \times \frac{R}{60 + R}$$
両辺を8で割ります。
$$2 = 3 \times \frac{R}{60 + R}$$
分母を払います。
$$2(60 + R) = 3R$$
$$120 + 2R = 3R$$
$$R = 120 \, [\Omega]$$

計算方法の平易な説明

スイッチを閉じると、右側の回路にも電気が流れるようになります。まず、右側の枝だけで何が起きているかを調べます。24Vと8Vの電池がプロレスのタッグのように逆向きに押し合っているので、差し引き16Vの力で、合計40Ωの抵抗に電流を流します。流れる電流はオームの法則で \(16\text{V} \div 40\Omega = 0.4\text{A}\) です。このときのB点の高さ(電位)を計算すると、+16Vになります。
ダイオードに電流が流れ始めるのは、A点の高さも同じ+16Vになるときです。左側の枝で、A点の高さが+16VになるようなRの値を、分圧の式を使って計算します。

結論と吟味

Rが \(120\,\Omega\) になった瞬間にA点とB点の電位が16Vで等しくなり、Dに電流が流れ始めます 。スイッチが開いているとき(問2)の答え(\(30\,\Omega\))と比べて、流れ始めるRの値が大きく変わることがわかります。これは、Sを閉じたことでB点の電位そのものが8Vから16Vに上昇したためです。

解答 (4) \(120 \, \Omega\)

【コラム】Q. Sを閉じ、R=180Ωとしたとき、Dには電流が流れるかどうか。流れるとすれば電流値はいくらか。

思考の道筋とポイント
この問いのように、ダイオードを含む回路の動作を問われた場合は、「仮定法」を用いるのが非常に有効なアプローチです。

  1. ステップ1 (判定): まず、「Dに電流は流れない(Dは断線している)」と仮定します。この仮定のもとで、A点とB点の電位をそれぞれ計算します。計算結果が、仮定と矛盾しないか(つまり \(V_B \ge V_A\) となっているか)をチェックします。もし矛盾(\(V_A > V_B\))が生じたら、最初の仮定が誤っていたことになり、「Dには電流が流れる」と結論できます 。
  2. ステップ2 (計算): もしステップ1で「流れる」と結論づけられたら、今度は「Dは抵抗0の導線である」として、キルヒホッフの法則を用いて回路に流れる電流を計算します 。

具体的な解説と立式
ステップ1: Dに電流が流れるかどうかの判定
1. 仮定: Dに電流は流れていない(断線状態)と仮定します 。
2. \(V_B\) の計算: この仮定の下では、回路は(4)で考えた「Dに電流が流れ始める直前」と同じ構造です。右の枝を流れる電流 \(I_2\) は(4)で計算した通り \(0.4\,\text{A}\) のままであり、B点の電位も(4)で計算した値と同じです 。
$$V_B = 16\,\text{V}$$
3. \(V_A\) の計算: 左の枝でR=180Ωとして、分圧の公式を適用します 。
$$V_A = 24 \times \frac{R}{60+R} = 24 \times \frac{180}{60+180} \quad \cdots ①$$
4. 仮定の検証: \(V_A\)と\(V_B\)を比較し、仮定が正しかったかを確認します。

ステップ2: Dを流れる電流値の計算
ステップ1で「流れる」と判定された場合、Dを抵抗0の導線として扱います。これは3つの未知数(例えば \(I_1, I_2, i\))を持つ複雑な回路なので、キルヒホッフの法則で3本の方程式を立てて解きます 。
1. **電流の設定:**
* 60Ωを流れる電流: \(I_1\)
* 上の20Ωを流れる電流: \(I_2\)
* D(A→B)を流れる電流: \(i\)
* 180Ωを流れる電流: \(I_1-i\) (A点で分岐)
* 下の20Ωを流れる電流: \(i+I_2\) (B点で合流)
2. **方程式の立式:**
* 式② (左のループ): 24V電源、60Ω、180Ωを含むループ。
$$24 = 60 I_1 + 180 (I_1 – i)$$
* 式③ (右下のループ): 8V電源、下の20Ω、180Ωを含むループ。
$$8 = -20(i+I_2) + 180(I_1-i)$$
* 式④ (並列部分の電位差): スイッチSの上端CとA点の間の電位差と、D点とB点の間の電位差は等しい。
$$60 I_1 = 20 I_2$$

使用した物理公式

  • 分圧の公式
  • キルヒホッフの第一法則・第二法則
計算過程

ステップ1の計算:
式①から\(V_A\)を計算します。
$$V_A = 24 \times \frac{180}{240} = 24 \times \frac{3}{4} = 18\,\text{V}$$
\(V_A=18\text{V}\) と \(V_B=16\text{V}\) を比較すると、\(V_A > V_B\) となります。これは、「電流が流れない(\(V_B \ge V_A\))」という当初の仮定と矛盾します。よって、Dには電流が流れることが確定します 。

ステップ2の計算:
ステップ1の立式セクションで立てた3つの連立方程式②, ③, ④を解きます。
まず、式④から \(I_2 = 3I_1\) の関係が得られます。これを式③に代入します。
$$8 = -20(i+3I_1) + 180(I_1-i) = -20i – 60I_1 + 180I_1 – 180i$$
$$8 = 120I_1 – 200i \quad \cdots ③’$$
次に、式②を整理します。
$$24 = 60I_1 + 180I_1 – 180i = 240I_1 – 180i \quad \cdots ②’$$
これで未知数が \(I_1, i\) の2つの連立方程式になりました。
$$\begin{cases} 240I_1 – 180i = 24 \\ 120I_1 – 200i = 8 \end{cases}$$
下の式を2倍して \(I_1\)の係数を揃えます。
$$240I_1 – 400i = 16$$
上の式からこの新しい式を引きます。
$$(240I_1 – 180i) – (240I_1 – 400i) = 24 – 16$$
$$220i = 8$$
$$i = \frac{8}{220} = \frac{2}{55} \approx 0.036 \, \text{A}$$

結論と吟味

Dには電流が流れます。その値は \(i = \frac{2}{55}\,\text{A}\) (約 \(0.036\,\text{A}\)) です 。仮定法を用いて段階的に考えることで、一見すると複雑な問題も論理的に解き進めることができました。

Qの解答 Dには電流が流れる。電流値は \(\displaystyle\frac{2}{55}\,\text{A}\)。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ダイオードのスイッチング特性と電位の比較: この問題の最大のポイントは、ダイオードが電圧の向きによって「導線(ON)」か「断線(OFF)」かが決まる非線形素子である点です。その状態を判断するために、接続点A, Bの電位を比較する、という考え方が全ての土台となります。
  • 仮定法による解析アプローチ: ダイオードのように状態が変化する素子を含む回路では、「まずOFF(またはON)と仮定して計算し、結果がその仮定と矛盾しないか検証する」という思考法が極めて強力です。これは物理だけでなく、論理的思考の重要な訓練にもなります。
  • キルヒホッフの法則の普遍性: 回路がどれだけ複雑になっても、最終的に頼りになるのがキルヒホッフの法則です。未知数の数だけ独立した方程式を立てれば必ず解ける、という安心感が重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 状態が変化する素子を含む回路: ダイオードだけでなく、ツェナーダイオードやトランジスタなど、ある条件で動作が変わる素子を含む問題全般に「仮定法」のアプローチは応用できます。
    • ブリッジ回路の平衡条件: (2)や(4)のように「電流が流れ始める瞬間」を問うのは、ホイートストンブリッジ回路の「平衡条件」を求める問題と構造が似ています。2点の電位が等しくなる条件を立式するのが鍵です。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. ダイオードやスイッチを探す: 回路図にこれらの素子があれば、「状態変化」を考慮する必要がある、と身構えます。
    2. 電位の基準点を決める: 複雑な回路ほど、まずアース(基準電位0V)をどこに置くか決めると、各点の電位の比較や計算が格段に楽になります。
    3. 「〇〇が起きる瞬間」という言葉に注目する: これは「境界条件」を示唆しており、多くの場合、等式(例: \(V_A=V_B\))を立てるチャンスです。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • ダイオードの性質の誤解:
    • 現象: ダイオードをただの抵抗や導線と勘違いし、双方向に電流が流れるものとして計算してしまう。
    • 対策: 「ダイオード=一方通行」という基本機能を常に思い出す。A→Bにしか流れないなら、\(V_A > V_B\) がONの条件、と機械的に覚える。
  • スイッチの開閉による回路変化の見落とし:
    • 現象: (4)でSを閉じたのに、(1)~(3)の回路構造のまま考えてしまう。
    • 対策: スイッチの状態が変わったら、電流が流れる経路が根本的に変わる可能性があるため、必ず新しい回路図として全体を見直す癖をつける。
  • 仮定法の論理の取り違え:
    • 現象: Qで、\(V_A > V_B\) という結果を見て、「Aの方が高いからB→Aには流れない。よって仮定は正しかった」と誤って結論づけてしまう。
    • 対策: 「仮定は『A→Bに流れない』だった。しかし計算結果は『A→Bに流れるべき』状況を示している。よって仮定は間違いで、実際は流れる」という論理の流れを正確に追う訓練をする。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 電位の「地形図」イメージ: 回路図を電位の高さを示す地図として見るのが最も有効です。Gを海抜0mの地面とし、24V電源を「高さ24mの山」、8V電源を「高さ8mの丘」と見立てます。抵抗は「坂道」で、電流が流れると標高が下ります。
      • このイメージを使えば、「A点の高さとB点の高さを比べて、高い方から低い方へ水(電流)が流れるか判断する」という直感的な理解が可能になります。
    • ダイオードを「一方通行のゲート」として描く: 回路図のダイオード記号の上に、一方通行の標識を重ねて描くようなイメージを持つと、その機能を見落としにくくなります。ゲートが開く条件は「入り口側(A)のほうが出口側(B)より標高が高いこと」です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 分圧の公式:
    • 選定理由: (2)や(4)の「流れ始める前」など、単純な直列回路の途中の点の電位を知りたい場合に、最も速く計算できるため。
    • 適用根拠: オームの法則から導かれるもので、直列回路では電流が一定なため、電圧降下は抵抗値に比例するという関係を利用している。
  • キルヒホッフの法則:
    • 選定理由: (3)やQのように、ダイオードがONになり回路が複雑に接続され、単純な直列・並列に分解できない場合の「最後の切り札」として選択する。
    • 適用根拠: 「電荷保存則」と「エネルギー保存則」という物理学の大原則に基づいているため、どんな直流回路にも適用できる、最も信頼性の高い法則。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 回路の状態把握: スイッチは開いているか、閉じているかを確認する。
  2. ダイオードの状態判定(仮定法):
    1. まず「ダイオードは断線(OFF)」と仮定する。
    2. その仮定の下で、A点とB点の電位 \(V_A, V_B\) を計算する。
    3. もし \(V_A > V_B\) なら仮定は間違い。ダイオードは導線(ON)として扱う。もし \(V_B \ge V_A\) なら仮定は正しい。
  3. 適切な法則で立式:
    • ダイオードがOFFなら、単純化された回路で分圧の公式などが使えないか検討する。
    • ダイオードがONなら、キルヒホッフの法則を用いて連立方程式を立てる。
  4. 計算実行: 立てた方程式を、数学の問題として正確に解く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 係数を揃える前に整理する: 連立方程式を解く際、いきなり係数を揃えようとせず、まず各方程式を最も簡単な整数の比に直す(例:公約数で割る)ことで、扱う数字が小さくなり、計算ミスを大幅に減らせる。
  • 未知数を消去する方針を立てる: (3)やQのような連立方程式では、どの文字から消去するか最初に見通しを立てることが重要。例えば、Qでは \(I_2 = 3I_1\) の関係があるので、まず\(I_2\)を消去するのが最も効率的。
  • 分数での計算: \(i = 8/220\) のように割り切れない場合でも、焦って小数に直さない。\(2/55\) のように既約分数で保持しておくことで、検算や次の計算で扱いやすい場合がある。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 仮定との整合性チェック:
    • (3)で電流\(i\)を計算したら、\(i>0\)であることを確認する。もし負の値が出たら、最初に「流れる」と判断した部分か、計算のどこかに間違いがある。
  • 物理的な大小関係の確認:
    • Qで、\(V_A=18\text{V}, V_B=16\text{V}\)と求まった。Aの方が電位が高いのだから、A→Bに電流が流れるのは自然なことだ、と納得する。
    • (4)で、Rが \(120\,\Omega\) という比較的大きな値になった。これはB点の電位が16Vと高くなったため、A点の電位をそこまで引き上げるのにより大きな抵抗値が必要になった、と物理的な意味を考える。
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