問題10 (静電気)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(5)の別解: 力の源泉ごとに仕事を分割する解法
- 模範解答は、点電荷と一様電場を合わせた「合成電位」を定義して計算していますが、別解では「点電荷による電位差の仕事」と「一様電場による仕事」を別々に計算して合算します。
- 設問(6)の別解: 仕事とエネルギーの関係式(非保存力の仕事)を用いた解法
- 一様電場による力を「保存力」ではなく「一定の外力」として扱い、その仕事が力学的エネルギー(点電荷による位置エネルギー+運動エネルギー)の変化に等しいという式を立てます。
- 設問(Q2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ポテンシャルのテイラー展開)
- 力のつりあいの式を近似するのではなく、系の全ポテンシャルエネルギー \(U(y)\) を立式し、それを \(y=0\) 周りで2次近似(テイラー展開)して等価なバネ定数を導出します。
- 設問(5)の別解: 力の源泉ごとに仕事を分割する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 仕事の分割: 複数の場が重畳している際、それぞれの寄与を明確にすることで物理的意味がつかみやすくなります。
- 外力としての扱い: 保存力場に新たな力が加わった際、エネルギー保存則の形を変えて柔軟に対応する力が身につきます。
- 微積分アプローチ: 単振動の周期を求める際、力の作図が複雑でも、エネルギー(スカラー量)の微分から機械的に導出できる強力な手法です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「点電荷がつくる電場・電位と、荷電粒子の運動」です。
クーロンの法則から始まり、電場の合成、電位の計算、そしてエネルギー保存則を用いた運動の解析まで、静電気分野の重要事項を網羅的に扱います。後半では一様電場との重ね合わせや単振動も登場します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電場の重ね合わせ: 複数の電荷がある場合、ある点での電場はそれぞれの電荷が作る電場のベクトル和になります。
- 電位の重ね合わせ: 電位はスカラー量(数値)なので、単純な足し算で求まります。
- 力学的エネルギー保存則: 静電気力は保存力であり、位置エネルギー \(U=qV\) を定義できます。保存力のみが仕事をする場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は保存されます。
- 単振動: 復元力 \(F = -Ky\) が働くとき、物体は単振動します。周期は \(T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{K}}\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、図形の対称性を利用して電場ベクトルと電位を計算します。
- (3)〜(6)では、エネルギー保存則や仕事とエネルギーの関係式を立式して、速さや距離を求めます。
- (Q2)では、微小変位における力の近似を行い、単振動の運動方程式を導きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
点Oと点Cにおける電場を求めます。電場はベクトル(向きと大きさを持つ量)なので、複数の電荷からの影響を考えるときは「ベクトルの合成」が必要です。
- 点O: \(+Q\) と \(-Q\) の中点です。
- 点C: ABの垂直二等分線上の点です。左右対称性が利用できます。
この設問における重要なポイント
- 電場の定義: \(+1\,\text{C}\) の正電荷を置いたときに受ける力の向きと大きさが電場です。
- 向き: 正電荷からは遠ざかる向き、負電荷へは近づく向きです。
- 対称性: 点Cでは、\(+Q\) からの電場と \(-Q\) からの電場の「垂直成分」が打ち消し合い、「水平成分」のみが残ります。
具体的な解説と立式
1. 点Oにおける電場
点Oに試験電荷 \(+1\,\text{C}\) を置いたと考えます。
- 左側のA点にある \(+Q\) から受ける力は、右向き(反発力)です。
- 右側のB点にある \(-Q\) から受ける力は、右向き(引力)です。
右向きを正とし、クーロンの法則を用いて電場の和を立式します。
$$
\begin{aligned}
E_O &= k\frac{Q}{l^2} + k\frac{Q}{l^2}
\end{aligned}
$$
2. 点Cにおける電場
点Cに試験電荷 \(+1\,\text{C}\) を置いたと考えます。
A点(\(+Q\))とC点の距離、およびB点(\(-Q\))とC点の距離を \(r\) とします。
三平方の定理より \(r = \sqrt{l^2 + L^2}\) です。
- \(+Q\) から受ける電場 \(\vec{E}_A\): AC方向(右上向き)。大きさは \(E’ = k\frac{Q}{r^2}\)。
- \(-Q\) から受ける電場 \(\vec{E}_B\): CB方向(右下向き)。大きさは \(E’ = k\frac{Q}{r^2}\)。
図を描いてベクトル合成します。
\(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) の \(y\) 成分(垂直成分)は、大きさが等しく向きが逆なので打ち消し合います。
\(x\) 成分(水平成分)は共に右向きなので足し合わされます。
線分ACが水平線となす角を \(\theta\) とすると、\(\cos\theta = \frac{l}{r}\) です。
合成電場の大きさ \(E_C\) は、\(E’\) の水平成分 \(E’\cos\theta\) の2倍となります。
$$
\begin{aligned}
E_C &= 2 E’ \cos\theta \\[2.0ex]
&= 2 \left( k\frac{Q}{r^2} \right) \frac{l}{r}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 点電荷の電場: \(E = k\frac{Q}{r^2}\)
点O:
$$
\begin{aligned}
E_O &= \frac{kQ}{l^2} + \frac{kQ}{l^2} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQ}{l^2}
\end{aligned}
$$
向きは、AからBの向き(右向き)です。
点C:
\(r = \sqrt{l^2+L^2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_C &= \frac{2kQl}{r^3} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
向きは、AからBの平行な向き(右向き)です。
O点では、プラスの電気からの「あっち行け」という力と、マイナスの電気からの「こっち来い」という力が、どちらも右向きに働きます。だから単純に2倍の強さになります。
C点では、斜め上からの力と斜め下への力が働きますが、上下方向の力はプラスマイナスゼロで消えてしまいます。結果として、右方向の力だけが残り、協力して合成電場を作ります。
O点の電場は \(L=0\) の極限と考えられます。C点の式で \(L=0\) を代入すると \(\frac{2kQl}{(l^2)^{\frac{3}{2}}} = \frac{2kQl}{l^3} = \frac{2kQ}{l^2}\) となり、O点の結果と一致します。これは物理的に妥当です。
C点: 向き AからBの向き(右向き)、強さ \(\displaystyle \frac{2kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}}\)
問(2)
思考の道筋とポイント
電位を求めます。電位は「スカラー量」なので、向きを気にする必要はありません。それぞれの電荷が作る電位を単純に足し算(代数和)します。
- 無限遠を基準(\(0\,\text{V}\))としたとき、点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) の点の電位は \(V = k\frac{Q}{r}\) です。
- 電荷の符号(プラス・マイナス)をそのまま式に入れます。
この設問における重要なポイント
- 電位の重ね合わせ: \(V_{\text{合}} = V_1 + V_2 + \dots\)
- 距離の確認: M点は線分OBの中点なので、Oから \(l/2\) の位置です。Aからの距離とBからの距離を正確に把握しましょう。
具体的な解説と立式
1. O点の電位 \(V_O\)
- \(+Q\)(A点)からの距離: \(l\)
- \(-Q\)(B点)からの距離: \(l\)
それぞれの電荷による電位の和を立式します。
$$
\begin{aligned}
V_O &= k\frac{Q}{l} + k\frac{-Q}{l}
\end{aligned}
$$
2. M点の電位 \(V_M\)
M点はOBの中点なので、Oからの座標は \(x = l/2\) です。
- \(+Q\)(A点)からの距離: \(l + \frac{l}{2} = \frac{3}{2}l\)
- \(-Q\)(B点)からの距離: \(l – \frac{l}{2} = \frac{l}{2}\)
同様に和を立式します。
$$
\begin{aligned}
V_M &= k\frac{Q}{\frac{3}{2}l} + k\frac{-Q}{\frac{l}{2}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 点電荷の電位: \(V = k\frac{Q}{r}\)
O点:
$$
\begin{aligned}
V_O &= \frac{kQ}{l} – \frac{kQ}{l} \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
M点:
$$
\begin{aligned}
V_M &= \frac{2kQ}{3l} – \frac{2kQ}{l} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQ}{3l} – \frac{6kQ}{3l} \\[2.0ex]
&= -\frac{4kQ}{3l}
\end{aligned}
$$
電位とは「電気的な高さ」のことです。プラスの電荷の周りは山のように高く、マイナスの電荷の周りは谷のように低くなっています。
O点はプラスの山とマイナスの谷のちょうど真ん中にあるので、高さが打ち消し合ってゼロ(海抜0m)になります。
M点はマイナスの谷(B点)に近いので、全体として電位はマイナス(海面より下)になります。
O点の電位が0であることは、左右対称に異符号の電荷があることから直感的に正しいです(等電位線は垂直二等分線になります)。M点は負電荷に近いので負の値になるのも妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
電荷 \(-q\) の小球PをM点から静かに放すと、静電気力を受けて動き出します。O点を通るときの速さを求めます。
静電気力は保存力なので、「力学的エネルギー保存則」が使えます。
- 状態1 (始点): M点。速度 \(0\)。
- 状態2 (終点): O点。速度 \(v\)(求めたい値)。
この設問における重要なポイント
- 位置エネルギー: 電荷 \(q’\) が電位 \(V\) の点にあるとき、静電気力による位置エネルギーは \(U = q’V\) です。
- 符号に注意: 今回動く電荷は \(-q\) なので、\(U = (-q)V\) となります。
具体的な解説と立式
M点での力学的エネルギー \(E_M\) と、O点での力学的エネルギー \(E_O\) を立式し、等号で結びます。
- M点: 運動エネルギー \(K_M = 0\)、位置エネルギー \(U_M = (-q)V_M\)
- O点: 運動エネルギー \(K_O = \frac{1}{2}mv^2\)、位置エネルギー \(U_O = (-q)V_O\)
保存則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
0 + (-q)V_M &= \frac{1}{2}mv^2 + (-q)V_O
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
- 静電気力による位置エネルギー: \(U = qV\)
- 力学的エネルギー保存則: \(K_{\text{前}} + U_{\text{前}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\)
(2)の結果 \(V_O = 0\)、\(V_M = -\frac{4kQ}{3l}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
(-q) \left( -\frac{4kQ}{3l} \right) &= \frac{1}{2}mv^2 + 0 \\[2.0ex]
\frac{4kqQ}{3l} &= \frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
両辺を2倍して \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= \frac{8kqQ}{3ml}
\end{aligned}
$$
\(v > 0\) より平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{\frac{8kqQ}{3ml}} \\[2.0ex]
&= 2\sqrt{\frac{2kqQ}{3ml}}
\end{aligned}
$$
M点は電位がマイナスでした。そこにマイナスの電荷を置くと、位置エネルギー \(U=(-q)\times(\text{マイナス})\) はプラスになります。つまり、M点はマイナスの電荷にとっては「滑り台の上」のような高い場所です。
そこから手を離すと、電位の高いO点(マイナスの電荷にとっては低い場所)に向かって落ちていき、スピードが出ます。そのスピードをエネルギー保存則で計算しました。
ルートの中身は全て正の値(\(k, q, Q, m, l > 0\))なので、実数解が得られます。電荷 \(Q\) や \(q\) が大きいほど、あるいは質量 \(m\) が小さいほど速くなるという結果は、直感と一致します。
問(4)
思考の道筋とポイント
C点に小球P(電荷 \(-q\))を置きます。
最初は点電荷 \(+Q, -Q\) による静電気力のみを受けていますが、ここに「一様電場」を追加したところ、力の向きが逆転し、大きさが半分になりました。
力のつりあいや合成を考えます。
この設問における重要なポイント
- 力の向き:
- 元の状態: C点の電場 \(E_C\) は右向き。(1)より。
- 電荷 \(-q\) が受ける力 \(F_{\text{元}}\) は、電場と逆向きなので「左向き」です。
- 変化後の状態:
- 「向きが逆転し」 \(\rightarrow\) 新しい力 \(F_{\text{新}}\) は「右向き」。
- 「大きさが半分」 \(\rightarrow\) \(|F_{\text{新}}| = \frac{1}{2} |F_{\text{元}}|\)。
- 一様電場の決定:
- 新しい力は、(元の静電気力) + (一様電場による力) です。
具体的な解説と立式
右向きを正とします。
(1)より、C点の電場 \(E_C\) は正(右向き)です。
小球Pの電荷は \(-q\) なので、元の静電気力 \(F_{\text{元}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{元}} &= -q E_C
\end{aligned}
$$
一様電場を \(E\)(右向き正)とします。
一様電場による力は \(-qE\) です。
合成された新しい力 \(F_{\text{新}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{新}} &= -q E_C + (-qE) \\[2.0ex]
&= -q(E_C + E)
\end{aligned}
$$
問題文の条件「向きが逆転し(つまり右向きになり)、大きさが半分になった」を式にします。
元の力の大きさは \(|-qE_C| = qE_C\) です。
新しい力 \(F_{\text{新}}\) が「右向きで大きさが \(qE_C/2\)」ということは、以下の等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{新}} &= +\frac{1}{2} q E_C
\end{aligned}
$$
したがって、以下の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
-q(E_C + E) &= \frac{1}{2} q E_C
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電気力: \(F = qE\)
式を \(E\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
-q E_C – q E &= \frac{1}{2} q E_C
\end{aligned}
$$
両辺を \(-q\) で割ります(\(q \neq 0\))。
$$
\begin{aligned}
E_C + E &= -\frac{1}{2} E_C \\[2.0ex]
E &= -\frac{1}{2} E_C – E_C \\[2.0ex]
&= -\frac{3}{2} E_C
\end{aligned}
$$
\(E\) が負の値になったので、一様電場の向きは左向き(BからAの向き)です。
強さ(大きさ)は \(|E| = \frac{3}{2} E_C\) です。
(1)の結果 \(E_C = \frac{2kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
|E| &= \frac{3}{2} \cdot \frac{2kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}} \\[2.0ex]
&= \frac{3kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
もともと小球は、点電荷たちから「左向き」の力を受けていました。
ここに新しい風(一様電場)を吹かせたら、小球は逆に「右向き」に押されるようになり、その力は元の半分の強さでした。
小球はマイナスの電気を持っているので、右に押されるためには、風(電場)は左向きに吹いている必要があります。
計算してみると、新しい風は、もともとの場所にあった電場の1.5倍の強さで逆向きに吹いていることがわかりました。
一様電場が左向き(負)であれば、負電荷 \(-q\) には右向き(正)の力が働きます。
元の力が左向き \(F\) だったところ、右向き \(1.5F\) の力が加われば、合力は右向き \(0.5F\) となります。これは条件「向きが逆転し大きさが半分」と一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
小球PをC点からM点まで静かに移動させます。このとき「外力がした仕事」を求めます。
「静かに移動」とは、運動エネルギーの変化がゼロ(速度ほぼ0で移動)であることを意味します。
この場合、外力の仕事 \(W_{\text{外}} = \Delta E\) となります。
力学的エネルギーの変化は、位置エネルギーの変化 \(\Delta U\) に等しいです。
この設問における重要なポイント
- 位置エネルギーの総和: 位置エネルギーは、「点電荷 \(+Q, -Q\) による電位 \(V\)」と「一様電場 \(E\) による電位 \(V_{\text{一様}}\)」の両方から生じます。
- 仕事の計算: \(W_{\text{外}} = U_{\text{終}} – U_{\text{始}}\)。
- 一様電場の電位: 電場 \(E\)(左向き)の中に置かれた電荷の位置エネルギーの変化は、力 \(\times\) 距離でも計算できます。
具体的な解説と立式
全位置エネルギーの変化を、点電荷による部分と一様電場による部分に分けて立式します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外}} &= \Delta U_{\text{点電荷}} + \Delta U_{\text{一様}}
\end{aligned}
$$
1. 点電荷による位置エネルギーの変化
始点C、終点Mです。
C点での点電荷による電位 \(V_C\) は、\(+Q\) と \(-Q\) から等距離なので \(0\) です。
M点での点電荷による電位 \(V_M\) は、(2)より \(-\frac{4kQ}{3l}\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{点電荷}} &= (-q)V_M – (-q)V_C
\end{aligned}
$$
2. 一様電場による位置エネルギーの変化
一様電場は左向き(大きさ \(E_{\text{一様}} = \frac{3kQl}{(l^2+L^2)^{3/2}}\))です。
負電荷 \(-q\) が受ける静電気力 \(F_{\text{一様}}\) は、電場と逆の「右向き」で、大きさは \(q E_{\text{一様}}\) です。
移動経路は C \(\to\) M です。
C点のx座標は \(0\)、M点のx座標は \(l/2\) です。
x軸方向(右方向)に \(d = l/2\) だけ移動しました。
静電気力(右向き)と同じ方向に移動したので、静電気力は正の仕事をします。
位置エネルギーの変化は「静電気力がした仕事のマイナス」です。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{一様}} &= – (\text{静電気力} \times \text{移動距離}) \\[2.0ex]
&= – (q E_{\text{一様}}) \cdot \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
合計の仕事
これらを合計して \(W_{\text{外}}\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外}} &= \{ (-q)V_M – 0 \} + \left\{ – q E_{\text{一様}} \frac{l}{2} \right\}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事の原理: \(W_{\text{外}} = \Delta U\)
- 一様電場の仕事: \(W = Fd\)
値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外}} &= (-q)\left( -\frac{4kQ}{3l} \right) – q \left( \frac{3kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}} \right) \frac{l}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{4kqQ}{3l} – \frac{3kqQl^2}{2(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}} \\[2.0ex]
&= kqQ \left\{ \frac{4}{3l} – \frac{3l^2}{2(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}} \right\}
\end{aligned}
$$
小球をCからMへ運ぶ仕事は、「点電荷たちが作る電気の坂道」を登る仕事と、「一様な電気の風」に逆らう仕事の合計です。
点電荷の影響については、電位が0の場所から低い場所(マイナスの電荷にとっては高い場所)へ運ぶので、外力はプラスの仕事をします(持ち上げるイメージ)。
一様電場の影響については、小球は右向きの風を受けているのに、さらに右へ運ぶので、外力はブレーキをかけるようなマイナスの仕事をします。
これらを合計したものが答えです。
答えの式は複雑ですが、第1項は点電荷による寄与、第2項は一様電場による寄与として明確に分かれています。単位を確認すると、どちらも \([kQ^2/L] \sim [\text{J}]\) の次元を持っており正しいです。
問(6)
思考の道筋とポイント
M点で静かに放すと、Pは左へ動き出し、O点で一瞬静止しました。
これは、M点とO点での「全位置エネルギー」が等しいことを意味します(運動エネルギーが共に0なので)。
全位置エネルギー \(U_{\text{全}} = U_{\text{点電荷}} + U_{\text{一様}}\) が保存されるという式を立てます。
この設問における重要なポイント
- エネルギー保存則: \(K_M + U_{\text{全}}(M) = K_O + U_{\text{全}}(O)\)
- 条件: \(K_M = 0\), \(K_O = 0\) なので、\(U_{\text{全}}(M) = U_{\text{全}}(O)\)。
- 位置エネルギーの差: \(U_{\text{全}}(M) – U_{\text{全}}(O) = 0\)。
具体的な解説と立式
M点とO点での位置エネルギーの比較を行います。
基準をO点にとると計算しやすいです。
1. 点電荷による位置エネルギー差
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{点電荷}}(O \to M) &= (-q)V_M – (-q)V_O \\[2.0ex]
&= (-q)\left( -\frac{4kQ}{3l} \right) – 0 \\[2.0ex]
&= \frac{4kqQ}{3l}
\end{aligned}
$$
2. 一様電場による位置エネルギー差
一様電場による力は右向き \(F_{\text{一様}} = q E_{\text{一様}}\) です。
M点はO点より \(x = l/2\) だけ右にあります。
力と同じ方向に進んだ場所なので、位置エネルギーは低くなります。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{一様}}(O \to M) &= – (\text{力} \times \text{距離}) \\[2.0ex]
&= – (q E_{\text{一様}}) \cdot \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
3. 保存則の適用
MとOで全エネルギーが等しいので、変化量の和はゼロです。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{点電荷}} + \Delta U_{\text{一様}} &= 0 \\[2.0ex]
\frac{4kqQ}{3l} – q E_{\text{一様}} \frac{l}{2} &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- エネルギー保存則: \(U_M = U_O\)
式に \(E_{\text{一様}} = \frac{3kQl}{(l^2+L^2)^{3/2}}\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{4kqQ}{3l} &= q \left( \frac{3kQl}{(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}} \right) \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
両辺の \(kqQ\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{4}{3l} &= \frac{3l^2}{2(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
たすき掛けして整理します。
$$
\begin{aligned}
8(l^2+L^2)^{\frac{3}{2}} &= 9l^3
\end{aligned}
$$
両辺を2乗します。
$$
\begin{aligned}
64(l^2+L^2)^3 &= 81l^6
\end{aligned}
$$
3乗根をとります。\(64 = 4^3\)、\(81 = 3^3 \times 3\) なので注意します。
$$
\begin{aligned}
4(l^2+L^2) &= 3\sqrt[3]{3} l^2
\end{aligned}
$$
\(L\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
4L^2 &= 3\sqrt[3]{3} l^2 – 4l^2 \\[2.0ex]
L^2 &= \frac{3\sqrt[3]{3}-4}{4} l^2
\end{aligned}
$$
平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{\sqrt{3\sqrt[3]{3}-4}}{2} l
\end{aligned}
$$
M点で手を離すと、小球はO点まで行って止まりました。これは、M点とO点の「高さ(エネルギー的な高さ)」が全く同じだったということです。
点電荷による効果はM点の方が高く、一様電場による効果はO点の方が高いです。この2つの効果がちょうど釣り合って、トータルの高さが同じになるような距離 \(L\) を計算しました。
式変形が複雑ですが、次元は合っています。\(3\sqrt[3]{3} \approx 3 \times 1.44 = 4.32\) なので、ルートの中身は正になり、解が存在します。
思考の道筋とポイント
一様電場による静電気力を「一定の外力 \(F_{\text{外}}\)」とみなし、点電荷による静電気力のみを「保存力(位置エネルギー)」として扱います。
「外力の仕事 = 力学的エネルギーの変化」の式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 系の定義: 小球P(質量 \(m\)、電荷 \(-q\))。
- 保存力: 点電荷 \(+Q, -Q\) による静電気力。位置エネルギー \(U\)。
- 外力: 一様電場による力 \(F_{\text{外}}\)(右向き)。大きさ \(qE_{\text{一様}}\)。
具体的な解説と立式
M点からO点への移動を考えます。
- 移動距離:\(l/2\)(左向き)。
- 外力の向き:右向き。
- 外力の仕事 \(W_{\text{外}}\):力と移動方向が逆なので負になります。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外}} &= – (q E_{\text{一様}}) \cdot \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$ - 力学的エネルギーの変化 \(\Delta E\):
静止して始まり静止して終わるので \(K_O = K_M = 0\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= (K_O + U_O) – (K_M + U_M) \\[2.0ex]
&= U_O – U_M \\[2.0ex]
&= (-q)V_O – (-q)V_M
\end{aligned}
$$
関係式 \(W_{\text{外}} = \Delta E\) より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
– \frac{q E_{\text{一様}} l}{2} &= (-q)V_O – (-q)V_M
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 非保存力の仕事: \(W_{\text{非保存}} = \Delta E\)
値を代入します。\(V_O=0\)、\(V_M = -\frac{4kQ}{3l}\)。
$$
\begin{aligned}
– \frac{q E_{\text{一様}} l}{2} &= 0 – \frac{4kqQ}{3l} \\[2.0ex]
\frac{q E_{\text{一様}} l}{2} &= \frac{4kqQ}{3l}
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の「エネルギー保存則」の式と全く同じ形になります。以降の計算は同様です。
一様電場を「風」のような外力とみなしました。風に逆らって進むのでエネルギーをロスします。
そのロスした分が、点電荷による位置エネルギーの減少分(坂を下った分)とちょうど釣り合っている、という式を立てました。
視点を変えても同じ式が導かれます。この方法は「何が保存力で何が外力か」を自分で定義できる場合に有効です。
問(Q1)
思考の道筋とポイント
(6)の運動において、Pの速さが最大となる位置を問われています。
物体が力を受けて運動するとき、速さが最大になるのは「加速から減速に転じる瞬間」、つまり「合力が0になる(力がつりあう)位置」です。
この設問における重要なポイント
- 運動の様子: M点(右端)から左へ加速 \(\to\) 最大速度 \(\to\) 左へ減速 \(\to\) O点(左端)で停止。
- 力のつりあい: 加速と減速の境界点は、力がゼロになる点です。
具体的な解説と立式
Pには以下の2つの力が働いています。
1. 点電荷による静電気力: 左向き(M点付近では)。O点に近づくにつれて弱まるか変化する。
2. 一様電場による力: 右向きで一定。
M点では左向きの力が勝っており左へ加速します。O点では電位の対称性から点電荷による力は右向き(Aからの反発とBからの引力の合力)になり、一様電場の力(右向き)と合わせて右向きの力が働きます(減速要因)。
したがって、MとOの間のどこかで、左向きの力と右向きの力がつりあう点があります。そこで速さは最大になります。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)(\(F=0\) のとき \(a=0\)、速度は極値をとる)
(記述問題のため計算なし)
最初は左向きの力が強くてどんどん加速しますが、ある地点を過ぎると右向きの力(ブレーキ)が強くなって減速し始めます。
その「加速から減速に切り替わる瞬間」、つまり「力がちょうどつり合っている場所」で、スピードは一番速くなります。
単振動や往復運動において、平衡点(力のつりあい点)で速度が最大になるのは一般的な性質です。
問(Q2)
思考の道筋とポイント
設定が変わります。A, B共に \(+Q\) です。
O点にある小球P(電荷 \(-q\))をCの方向(y軸方向)にわずかにずらして放します。
Pは \(+Q\) から引力を受け、O点に引き戻されます。これが復元力となり単振動します。
微小変位 \(y\) における復元力 \(F\) を求め、\(F \approx -Ky\) の形にして周期 \(T = 2\pi\sqrt{m/K}\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 近似計算: \(y \ll l\) のとき、\((l^2+y^2)^{-n} \approx l^{-2n}\) などを利用します。
- 復元力の導出: 幾何学的に力の成分を分解する方法と、ポテンシャルを微分する方法があります。
具体的な解説と立式
幾何学的アプローチ(メイン解法)
PがOから \(y\) だけずれた位置にあるとします。
2つの \(+Q\) から受ける引力 \(f\) の大きさは等しく、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f &= k\frac{qQ}{l^2+y^2}
\end{aligned}
$$
この2つの力の合力 \(F\) は、水平成分が打ち消し合い、Oに向かう成分(y軸負方向)だけが残ります。
力のなす角を \(\theta\)(y軸との角ではなく、線分APとABのなす角)とすると、Oに向かう成分は \(f \sin\theta\) の2倍です。
ここで \(\sin\theta = \frac{y}{\sqrt{l^2+y^2}}\) です。
復元力 \(F\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
F &= – 2f \sin\theta \quad (\text{向きは中心O向きなのでマイナス}) \\[2.0ex]
&= – 2 \left( k\frac{qQ}{l^2+y^2} \right) \frac{y}{\sqrt{l^2+y^2}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{K}}\)
式を整理し、近似を行います。
$$
\begin{aligned}
F &= – \frac{2kqQ}{(l^2+y^2)^{\frac{3}{2}}} y
\end{aligned}
$$
ここで \(y \ll l\) なので、分母の \(y^2\) を無視します(\(l^2+y^2 \approx l^2\))。
$$
\begin{aligned}
F &\approx – \frac{2kqQ}{(l^2)^{\frac{3}{2}}} y \\[2.0ex]
&= – \frac{2kqQ}{l^3} y
\end{aligned}
$$
これは単振動の復元力 \(F = -Ky\) の形です。
バネ定数相当 \(K\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{2kqQ}{l^3}
\end{aligned}
$$
周期の公式に \(K\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{m}{\frac{2kqQ}{l^3}}} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{ml^3}{2kqQ}} \\[2.0ex]
&= 2\pi l \sqrt{\frac{ml}{2kqQ}}
\end{aligned}
$$
プラスの電気の間にあるマイナスの電気を、横(垂直方向)にちょっとずらすと、両側のプラスから「戻ってこい」と引っ張られます。
ずらし幅が小さいときは、この引き戻す力が「ずれた距離」に比例するバネのような力になります。
バネ定数にあたる強さを計算して、単振動の公式に当てはめれば周期が求まります。
次元を確認します。\([k] = [\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2]\)。
ルートの中身 \([\frac{\text{kg}\cdot\text{m}^3}{\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2 \cdot \text{C}^2}] = [\frac{\text{kg}\cdot\text{m}}{\text{N}}] = [\frac{\text{kg}\cdot\text{m}}{\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}^2}] = [\text{s}^2]\)。
ルートをとると時間の単位 \([\text{s}]\) になり、正しいです。
思考の道筋とポイント
力の作図を行わず、系の全位置エネルギー(ポテンシャル)\(U(y)\) を求め、それを \(y\) で微分して復元力を求めるか、\(y=0\) 周りで2次近似(テイラー展開)して \(U(y) \approx \frac{1}{2}Ky^2\) の形に持ち込みます。
この設問における重要なポイント
- ポテンシャルの定義: \(U(y) = (-q)V(y)\)。
- テイラー展開: \(f(x) \approx f(0) + f'(0)x + \frac{1}{2}f”(0)x^2\)。
- 等価バネ定数: \(U(y) = \text{const} + \frac{1}{2}Ky^2\) となれば、\(K\) がバネ定数です。
具体的な解説と立式
y軸上の点 \(y\) における電位 \(V(y)\) を求めます。
A(\(-l, 0\))、B(\(l, 0\)) にある \(+Q\) からの距離は共に \(\sqrt{l^2+y^2}\) です。
$$
\begin{aligned}
V(y) &= k\frac{Q}{\sqrt{l^2+y^2}} + k\frac{Q}{\sqrt{l^2+y^2}} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQ}{\sqrt{l^2+y^2}}
\end{aligned}
$$
電荷 \(-q\) の位置エネルギー \(U(y)\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
U(y) &= (-q)V(y) \\[2.0ex]
&= – \frac{2kqQ}{\sqrt{l^2+y^2}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- マクローリン展開: \((1+x)^n \approx 1+nx\)
\(y \ll l\) なので、近似を行います。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{\sqrt{l^2+y^2}} &= \frac{1}{l} \left( 1 + \left(\frac{y}{l}\right)^2 \right)^{-\frac{1}{2}} \\[2.0ex]
&\approx \frac{1}{l} \left( 1 – \frac{1}{2} \left(\frac{y}{l}\right)^2 \right)
\end{aligned}
$$
これを \(U(y)\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
U(y) &\approx – \frac{2kqQ}{l} \left( 1 – \frac{y^2}{2l^2} \right) \\[2.0ex]
&= – \frac{2kqQ}{l} + \frac{kqQ}{l^3} y^2
\end{aligned}
$$
定数項(基準点エネルギー)を除くと、\(y\) に依存する項は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{実効}}(y) &= \frac{kqQ}{l^3} y^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \left( \frac{2kqQ}{l^3} \right) y^2
\end{aligned}
$$
これはバネの弾性エネルギー \(\frac{1}{2}Ky^2\) と同じ形です。
よって、等価バネ定数は \(K = \frac{2kqQ}{l^3}\) となります。
周期 \(T\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{ml^3}{2kqQ}} \\[2.0ex]
&= 2\pi l \sqrt{\frac{ml}{2kqQ}}
\end{aligned}
$$
力のベクトル分解を行わずに、スカラー量であるエネルギーの計算だけで同じ結果が得られました。
エネルギーの底の形が放物線(\(y^2\))であれば、それはバネと同じポテンシャルであり、単振動することを意味します。その放物線の開き具合からバネの強さを読み取りました。
この方法は、力が複雑な方向を向いている場合や、3次元的な配置の場合に特に威力を発揮します。結果はメイン解法と一致しました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電位の重ね合わせの原理(スカラー和)
- 核心: 電場はベクトル和ですが、電位はスカラー和(ただの足し算)である点が最大のポイントです。向きを考慮せず、符号付きの電荷量と距離だけで計算できます。
- 理解のポイント:
- 電場 \(\vec{E}\) は「力の向き」を含むのでベクトル合成が必要。
- 電位 \(V\) は「高さ」なので、単純に数値の足し算でOK。
- 静電気力による位置エネルギーと保存則
- 核心: 静電気力は保存力であり、位置エネルギー \(U=qV\) を定義することで、力学的エネルギー保存則を用いて物体の運動を解析できます。
- 理解のポイント:
- 電荷 \(q\) の符号を含めて \(U=qV\) に代入すること。
- 一様電場も位置エネルギー(\(U=-qEx\))として取り込むか、外力の仕事として扱うかを選択できること。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 多角形配置の点電荷: 正方形や正三角形の頂点に電荷がある場合も、中心や対称軸上の電場・電位は、本問と同様に対称性を利用して成分をキャンセルさせたり、等距離を利用して簡単に計算できます。
- 重力との複合問題: 鉛直面内で荷電粒子が運動する場合、重力による位置エネルギー \(mgh\) と静電気力による位置エネルギー \(qV\) の両方を保存則に組み込むだけで解けます。
- 初見の問題での着眼点:
- 対称性の確認: 電荷配置に対称性があれば、電場の特定の成分が0になることや、等電位面が特定の形状になることを予測します。
- エネルギーか力か: 「速さ」や「到達距離」を問われたらエネルギー保存則、「時間」や「加速度」を問われたら運動方程式を選択します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電位のベクトル合成:
- 誤解: 電場と同様に、電位も矢印を描いて成分分解して合成しようとしてしまう。
- 対策: 「電位はスカラー(数値)」と唱えましょう。向きの概念はなく、プラスとマイナスの数値を足すだけです。
- 仕事の符号と主語の取り違え:
- 誤解: 「外力がした仕事」を求める際に、静電気力がした仕事をそのまま答えてしまう(符号が逆になる)。
- 対策: \(W_{\text{外}} = \Delta U\) (外力がエネルギーを変化させる)と、\(W_{\text{静}} = -\Delta U\) (保存力が仕事をするとエネルギーが減る)の関係を明確に区別します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- エネルギー保存則(問3, 6):
- 選定理由: 経路の途中での複雑な力の変化(距離の2乗に反比例など)を積分計算せずに、始点と終点の状態だけで速さや距離を求められるため。
- 適用根拠: 静電気力が保存力であり、摩擦などの非保存力が仕事をしない(または外力の仕事として処理できる)ため。
- ポテンシャルのテイラー展開(問Q2別解):
- 選定理由: 力のベクトル分解や近似計算が煩雑になりがちな場合でも、スカラー量であるエネルギーの微分操作だけで機械的に復元力を導けるため。
- 適用根拠: 微小振動(\(y \ll l\))であり、ポテンシャルの極小点近傍での運動であるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(ディメンションチェック):
- 意識: 答えの式の単位が正しいか常に疑うこと。
- 実践: 例えば電場 \(E\) なら \([kQ/L^2]\)、電位 \(V\) なら \([kQ/L]\) の形になっているか確認します。問(6)の \(L\) の式なら、右辺全体が長さの次元 \([L]\) になっているかを見ます。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 変数を極端な値にしたとき、物理的に当たり前の結果になるか。
- 実践: 問(1)で \(L=0\) とするとO点の電場と一致するか、問(4)で \(E_C=0\) ならどうなるかなどを確認します。
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問題11 静電気・保存則 (岡山大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 模範解答はエネルギー保存則を既知として使用していますが、別解では運動方程式から出発し、それを空間積分することで仕事とエネルギーの関係(エネルギー保存則)を数学的に導出します。
- 設問(4)の別解: 重心系と換算質量を用いた解法
- 2体問題において、重心運動と相対運動に分離する視点を導入します。換算質量を用いることで、2物体の運動を「1つの仮想粒子の運動」に帰着させ、計算を劇的に簡略化します。
- 設問(5)の別解: 弾性衝突(反発係数)を用いた解法
- 静電気力による相互作用はエネルギー散逸がないため、力学的な「弾性衝突(反発係数 \(e=1\))」とみなせます。これを利用して連立方程式を解きます。
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分アプローチ: 公式の暗記ではなく、ニュートンの運動方程式という原理から物理法則が導かれる過程を理解することで、応用力が身につきます。
- 重心系アプローチ: 複雑な連立方程式を回避し、現象の本質(重心は等速、相対運動はエネルギー保存)を突くことで、計算ミスを減らし速く解くことができます。
- 弾性衝突アプローチ: 保存則の連立方程式を解く手間(2次方程式)を、1次方程式に帰着できるため、計算時間を大幅に短縮できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「荷電粒子の衝突と保存則」です。
前半は固定された電荷への接近(1体問題)、後半は自由に動く電荷同士の衝突(2体問題)を扱います。
クーロン力という保存力が働く場での運動を、エネルギー保存則や運動量保存則を駆使して解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力学的エネルギー保存則: 静電気力は保存力であり、位置エネルギー \(U = k\frac{qQ}{r}\) が定義できます。外力が仕事をしない限り、全エネルギーは保存されます。
- 運動量保存則: 水平方向には外力が働かないため、2粒子系全体の運動量の総和は保存されます。
- 作用・反作用の法則: 2粒子間には互いに逆向きで同じ大きさの力が働きます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、Bが固定されているため、Aのエネルギー保存則と運動方程式のみを考えます。
- (4)〜(5)では、Bも動くため、AとBの系全体について「運動量保存則」と「エネルギー保存則」を連立させて解きます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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