「名問の森」徹底解説(52〜54問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題52 熱力学 (立教大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 熱力学第一法則の定義(\(\Delta U + W\))を用いた解法
      • 模範解答が定圧モル比熱の公式 \(Q = nC_P \Delta T\) を用いて一発で熱量を求めているのに対し、別解では内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と気体がした仕事 \(W\) を個別に計算し、それらを合計して熱量 \(Q\) を求めます。
    • 設問(5)の別解: 始状態と終状態に着目した保存則的解法(模範解答の別解)
      • 途中の複雑な過程(定圧変化から定積変化への切り替わり)を詳細に追跡せず、最初と最後の状態だけで熱力学第一法則を立式し、計算量を大幅に削減します。
    • 設問(4)(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 熱力学第一法則の微分形 \(dQ = dU + P dV\) を出発点とし、状態変化を積分計算として捉えることで、物理現象を原理から導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 定義からの解法: 公式を忘れても導き出せる基礎力を養い、エネルギーの内訳(内部エネルギーと仕事)を意識させます。
    • 保存則的解法: 入試実戦において、時間短縮と計算ミス防止に直結する強力なテクニックです。
    • 微積分の解法: 「公式の暗記」ではなく、エネルギー保存の原理から全ての現象を説明できる物理的洞察力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「断熱シリンダー内での気体の状態変化とピストンのつりあい」です。
ピストンの質量や向き(上下逆転)による圧力の変化、および加熱による定圧・定積変化を追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: ピストンが静止しているとき、気体の圧力による力、大気圧による力、重力がつりあっています。
  2. ボイル・シャルルの法則(状態方程式): 理想気体の状態量(圧力 \(P\)、体積 \(V\)、温度 \(T\))の関係を記述します。
  3. 熱力学第一法則: 気体に加えた熱量 \(Q\) は、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と気体がした仕事 \(W\) の和になります(\(Q = \Delta U + W\))。
  4. 定圧変化と定積変化: 圧力が一定のまま膨張する場合と、体積が一定(壁に接触)のまま昇温する場合の違いを理解します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(3)では、ピストンの力のつりあいから圧力を決定し、状態方程式を用いて温度や質量を求めます。
  2. (2)(4)では、自由に動くピストンによる定圧変化として扱います。
  3. (5)では、ピストンが底に達することで、定圧変化から定積変化へと過程が切り替わる点に注意して計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
初期状態(図1)における気体の温度 \(T_0\) を求めます。
まずはピストンにはたらく力に着目し、つりあいの式から中の気体の圧力 \(P\) を求めます。
その後、理想気体の状態方程式を用いて温度を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 力の図示: ピストンには、内部の気体が押す力、外の大気が押す力、そしてピストン自身の重力がはたらいています。
  • 圧力と力の関係: 力 \(F\) は圧力 \(P\) と面積 \(S\) の積 \(F=PS\) で表されます。

具体的な解説と立式
シリンダー内の気体の圧力を \(P\) とします。
ピストン(質量 \(M\))にはたらく力のつりあいを考えます。
上向きを正とすると、以下の力がはたらいています。

  • 上向きの力: 内部の気体が押す力 \(PS\)
  • 下向きの力: 大気が押す力 \(P_0 S\)、重力 \(Mg\)

力のつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力の和}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
PS &= P_0 S + Mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に、気体の状態方程式を立てます。
気体の物質量は \(n=1\,\text{mol}\)、気体定数は \(R\)、温度は \(T_0\) です。
体積 \(V\) は、底面積 \(S\) と高さ \(\frac{1}{2}L\) の積なので、\(V = S \cdot \frac{1}{2}L\) です。
$$
\begin{aligned}
P \left( \frac{1}{2} SL \right) &= 1 \cdot R \cdot T_0 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(\vec{F}_{\text{合力}} = 0\)
  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
計算過程

式①より、圧力 \(P\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{P_0 S + Mg}{S} \\[2.0ex]
&= P_0 + \frac{Mg}{S}
\end{aligned}
$$
これを式②に代入して \(T_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\left( P_0 + \frac{Mg}{S} \right) \cdot \frac{1}{2} SL &= R T_0 \\[2.0ex]
\frac{(P_0 S + Mg)L}{2} &= R T_0
\end{aligned}
$$
両辺を \(R\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
T_0 &= \frac{(P_0 S + Mg)L}{2R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、ピストンが動かずに止まっていることから、中の空気がピストンを持ち上げる力と、上から押さえつける大気圧&重力が等しいと考え、中の気圧を計算しました。
次に、「圧力×体積=温度×定数」という気体のルール(状態方程式)に、計算した圧力と問題文にある体積を当てはめて、温度を求めました。

結論と吟味

答えは \(T_0 = \frac{(P_0 S + Mg)L}{2R}\) です。
圧力 \(P_0\) や質量 \(M\) が大きいほど、気体を圧縮する力が強くなり、同じ体積を維持するためには高い温度(激しい熱運動)が必要になるため、分子にこれらが来るのは妥当です。
次元を確認すると、\([PV]/[R] = [\text{J}] / [\text{J}/\text{K}] = [\text{K}]\) となり、温度の次元を持っています。

解答 (1) ア: \(\displaystyle \frac{(P_0 S + Mg)L}{2R}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
ヒーターで加熱すると気体は膨張し、ピストンを押し上げます。
ピストンは自由に動けるため、気体の圧力は(1)で求めた \(P\) のまま一定です(定圧変化)。
ジュール熱 \(Q\) と、気体がした仕事 \(W\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 定圧変化: ピストンが滑らかに動く場合、外圧と重力が変わらなければ、内部の圧力も一定に保たれます。
  • 単原子分子の比熱: 単原子分子理想気体の定圧モル比熱は \(C_P = \frac{5}{2}R\) です。
  • 仕事の定義: 定圧変化における仕事は \(W = P \Delta V\) で計算できます。

具体的な解説と立式
【ジュール熱 \(Q\) の導出】
加熱後のピストンの高さは、初期の \(\frac{1}{2}L\) から \(\frac{1}{4}L\) 上昇したので、\(\frac{1}{2}L + \frac{1}{4}L = \frac{3}{4}L\) となります。
変化後の温度を \(T\) とします。
圧力 \(P\) は一定なので、シャルルの法則(体積と温度は比例)が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\frac{1}{2}SL}{T_0} &= \frac{\frac{3}{4}SL}{T} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
発生したジュール熱 \(Q\) は、気体が吸収した熱量に等しいです。
定圧変化における吸熱量は、定圧モル比熱 \(C_P = \frac{5}{2}R\) を用いて表せます。
$$
\begin{aligned}
Q &= n C_P \Delta T \\[2.0ex]
&= 1 \cdot \frac{5}{2}R (T – T_0) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
【仕事 \(W\) の導出】
気体がした仕事 \(W\) は、圧力 \(P\) と体積変化 \(\Delta V\) の積です。
体積の増加分は \(\Delta V = S \cdot \frac{1}{4}L\) です。
$$
\begin{aligned}
W &= P \Delta V \\[2.0ex]
&= P \left( \frac{1}{4}SL \right) \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\)
  • 定圧変化の熱量: \(Q = n C_P \Delta T\) (単原子分子: \(C_P = \frac{5}{2}R\))
  • 定圧変化の仕事: \(W = P \Delta V\)
計算過程

【\(Q\) の計算】
式③より \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1/2}{T_0} &= \frac{3/4}{T} \\[2.0ex]
\frac{1}{T_0} &= \frac{3}{2T} \\[2.0ex]
T &= \frac{3}{2} T_0
\end{aligned}
$$
これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{2}R \left( \frac{3}{2}T_0 – T_0 \right) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R \cdot \frac{1}{2}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{4} R T_0
\end{aligned}
$$
ここで、(1)の結果 \(R T_0 = \frac{1}{2}(P_0 S + Mg)L\) を代入して、指定された文字のみで表します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{4} \cdot \frac{1}{2}(P_0 S + Mg)L \\[2.0ex]
&= \frac{5}{8} (P_0 S + Mg)L
\end{aligned}
$$
【\(W\) の計算】
式⑤に(1)で求めた \(P = \frac{P_0 S + Mg}{S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W &= \left( \frac{P_0 S + Mg}{S} \right) \cdot \frac{1}{4}SL \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} (P_0 S + Mg)L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ヒーターで温めると、気体は膨張してピストンを押し上げました。
体積が \(1.5\) 倍(\(1/2 \to 3/4\))になったので、温度も \(1.5\) 倍になります。
単原子分子の気体なので、温度を上げるのに必要なエネルギー(熱量)は公式を使って計算できます。
また、気体がピストンをグイッと押し広げた仕事は、「押す力(圧力×面積)× 動いた距離」で計算しました。

結論と吟味

\(Q = \frac{5}{8} (P_0 S + Mg)L\)、\(W = \frac{1}{4} (P_0 S + Mg)L\) です。
定圧変化において、単原子分子理想気体では \(Q : \Delta U : W = 5 : 3 : 2\) の比率が成り立ちます。
今回の結果を見ると、\(Q : W = \frac{5}{8} : \frac{1}{4} = 5 : 2\) となっており、理論通り正しい比率になっています。

解答 (2) イ: \(\displaystyle \frac{5}{8} (P_0 S + Mg)L\), ウ: \(\displaystyle \frac{1}{4} (P_0 S + Mg)L\)
別解: 熱力学第一法則の定義(\(\Delta U + W\))を用いた解法

思考の道筋とポイント
\(Q = nC_P \Delta T\) の公式を使わず、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) に基づいて計算します。
内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と仕事 \(W\) をそれぞれ求め、合計します。

この設問における重要なポイント

  • 内部エネルギーの変化: 単原子分子理想気体では \(\Delta U = \frac{3}{2}nR \Delta T\) です。
  • 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W\)

具体的な解説と立式
温度変化は \(\Delta T = \frac{1}{2}T_0\) でした。
内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= \frac{3}{2} n R \Delta T \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \cdot 1 \cdot R \cdot \frac{1}{2}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}RT_0
\end{aligned}
$$
仕事 \(W\) は先ほど求めた通りです。状態方程式 \(P \Delta V = nR \Delta T\) を使うと、\(W = R \Delta T = \frac{1}{2}RT_0\) とも書けます。
熱力学第一法則より、熱量 \(Q\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \Delta U + W \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 内部エネルギー変化: \(\Delta U = \frac{3}{2}nR \Delta T\)
  • 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W\)
計算過程

式⑥に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{3}{4}RT_0 + \frac{1}{2}RT_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{4}RT_0
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の途中式と一致しており、最終的に同じ結果が得られます。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{8} (P_0 S + Mg)L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「入ってきた熱エネルギー \(Q\)」は、「自分の温度を上げるために使ったエネルギー \(\Delta U\)」と「外に向かって仕事をするために使ったエネルギー \(W\)」の合計になります。
それぞれを計算して足し合わせることで、必要な熱量を求めました。

結論と吟味

公式 \(C_P = \frac{5}{2}R\) は、実はこの \(\Delta U\)(係数 \(3/2\))と \(W\)(係数 \(1\))を足し合わせたもの(\(3/2 + 1 = 5/2\))であることが確認できました。

解答 (2) イ: \(\displaystyle \frac{5}{8} (P_0 S + Mg)L\)

問(3)

思考の道筋とポイント
シリンダーを上下逆転させると、ピストンにはたらく重力の向きが、気体に対して逆になります。
これにより内部の圧力 \(P’\) が変化します。
新しいつりあいの式と状態方程式を連立させて、ピストンの質量 \(M\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 逆転時のつりあい: 図2の状態では、シリンダーの底が上にあり、ピストンは下にあります。ピストンが落ちないように、外の大気圧が下から支え、内部の気圧と重力が下向きに押しています。
  • 温度条件: 温度は \(T_0\) に戻されています。

具体的な解説と立式
逆転後の気体の圧力を \(P’\) とします。
ピストン(質量 \(M\))にはたらく力のつりあいを考えます(上向き正)。

  • 上向きの力: 大気圧 \(P_0 S\)
  • 下向きの力: 内部気圧 \(P’ S\)、重力 \(Mg\)

つりあいの式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力の和}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
P_0 S &= P’ S + Mg \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
次に、状態方程式を立てます。
温度は \(T_0\)、気柱の長さ(上底からピストン上面まで)は \(\frac{2}{3}L\) なので、体積は \(V’ = \frac{2}{3}SL\) です。
$$
\begin{aligned}
P’ \left( \frac{2}{3}SL \right) &= R T_0 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(\vec{F}_{\text{合力}} = 0\)
  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
計算過程

式⑦より \(P’\) を表します。
$$
\begin{aligned}
P’ &= P_0 – \frac{Mg}{S}
\end{aligned}
$$
これを式⑧に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( P_0 – \frac{Mg}{S} \right) \cdot \frac{2}{3}SL &= R T_0
\end{aligned}
$$
ここで、(1)の結果 \(R T_0 = \frac{1}{2}(P_0 S + Mg)L\) を右辺に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( P_0 S – Mg \right) \frac{2}{3}L &= \frac{1}{2}(P_0 S + Mg)L
\end{aligned}
$$
両辺の \(L\) を消去し、分母を払うために \(6\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
4(P_0 S – Mg) &= 3(P_0 S + Mg) \\[2.0ex]
4P_0 S – 4Mg &= 3P_0 S + 3Mg
\end{aligned}
$$
\(Mg\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
7Mg &= P_0 S \\[2.0ex]
M &= \frac{1}{7} \frac{P_0 S}{g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

逆さまにすると、ピストンは重力で下に落ちようとします。それを大気圧が下から支えています。
中の気体は、ピストンが落ちないように「吸い付いている(負圧)」のではなく、上から押していますが、その力は弱くなっています。
この新しい力のバランスと、体積が変わったことによる圧力の変化を組み合わせて計算すると、ピストンの重さが分かりました。

結論と吟味

答えは \(M = \frac{1}{7} \frac{P_0 S}{g}\) です。
\(P_0 S\) は大気が押す力であり、\(Mg\) は重力です。\(Mg = P_0 S / 7\) ということは、大気圧の力が重力の7倍もあり、ピストンを余裕で支えられることを意味します。物理的にあり得る状況です。

解答 (3) エ: \(\displaystyle \frac{1}{7} \frac{P_0 S}{g}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
ヒーターに流す電流の時間が \(t_1\) から \(\frac{1}{3}t_1\) になりました。
ジュール熱は時間に比例するため、発生する熱量は \(\frac{1}{3}Q\) です。
この熱量による定圧膨張を考え、新しいピストンの位置 \(l\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 熱量と時間の関係: \(Q \propto t\) なので、時間は \(1/3\) 倍なら熱量も \(1/3\) 倍です。
  • 定圧変化: ピストンは自由に動けるため、圧力は \(P’\) のまま一定です。

具体的な解説と立式
加えた熱量を \(Q_1\) とします。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= \frac{1}{3}Q \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
変化後の温度を \(T’\) とします。
定圧変化なので、熱量と温度変化の関係は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= n C_P (T’ – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R (T’ – T_0) \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
また、変化後の気柱の長さ \(l\)(上底からピストン上面までの距離)について、シャルルの法則(または状態方程式)が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\frac{2}{3}SL}{T_0} &= \frac{Sl}{T’} \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 定圧変化の熱量: \(Q = n C_P \Delta T\)
  • シャルルの法則: \(\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\)
計算過程

まず、(2)の結果 \(Q = \frac{5}{4}RT_0\) を用いて、\(Q_1\) を \(RT_0\) で表します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= \frac{1}{3} \cdot \frac{5}{4}RT_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{12}RT_0
\end{aligned}
$$
これを式⑩に代入して \(T’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{12}RT_0 &= \frac{5}{2}R (T’ – T_0) \\[2.0ex]
\frac{1}{6}T_0 &= T’ – T_0 \\[2.0ex]
T’ &= \frac{7}{6}T_0
\end{aligned}
$$
次に、式⑪を用いて \(l\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2SL}{3T_0} &= \frac{Sl}{T’} \\[2.0ex]
l &= \frac{2L}{3} \cdot \frac{T’}{T_0}
\end{aligned}
$$
\(T’ = \frac{7}{6}T_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2L}{3} \cdot \frac{7}{6} \\[2.0ex]
&= \frac{7}{9}L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ヒーターをつける時間が3分の1なので、熱エネルギーも3分の1です。
そのエネルギーで温度がどれだけ上がるかを計算し、温度が上がった分だけ体積(長さ)も増えるという比例関係を使って、新しいピストンの位置を求めました。

結論と吟味

答えは \(l = \frac{7}{9}L\) です。
元の位置 \(\frac{2}{3}L = \frac{6}{9}L\) から \(\frac{1}{9}L\) だけ下がりました(膨張しました)。
シリンダーの全長は \(L\) ですが、ピストンの厚さが \(\frac{1}{9}L\) あるため、ピストンがシリンダー内に収まる限界の気柱長さは \(L – \frac{1}{9}L = \frac{8}{9}L\) です。
今回の \(\frac{7}{9}L\) はこれより小さいので、ピストンはまだ底(開口部)には達していません。

解答 (4) オ: \(\displaystyle \frac{7}{9}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
さらに \(\frac{2}{3}t_1\) 間電流を流します。追加の熱量は \(\frac{2}{3}Q\) です。
問題文に「途中でピストンはシリンダーの下底に達し」とあるため、以下の2段階の過程を経ます。
1. 定圧膨張: ピストンが下底(気柱長さ \(l_{\text{最大}} = L – \frac{1}{9}L = \frac{8}{9}L\))に達するまで。
2. 定積昇温: ピストンが底で止まった後、残りの熱量で温度が上昇する。

この設問における重要なポイント

  • 過程の分割: 「自由に動く(定圧)」区間と「壁に当たって動けない(定積)」区間を分けて計算します。
  • 限界体積: ピストンの厚さを考慮すると、最大気柱長さは \(\frac{8}{9}L\) です。
  • 定積モル比熱: 定積変化では \(C_V = \frac{3}{2}R\) を用います。

具体的な解説と立式
【過程1: 定圧変化で底に達するまで】
底に達したときの温度を \(T”\) とします。
体積は \(S \cdot \frac{7}{9}L\) から \(S \cdot \frac{8}{9}L\) に変化します。
シャルルの法則より、
$$
\begin{aligned}
\frac{\frac{7}{9}SL}{T’} &= \frac{\frac{8}{9}SL}{T”} \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
この間に消費された熱量 \(q_1\) は、
$$
\begin{aligned}
q_1 &= n C_P (T” – T’) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R (T” – T’) \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
【過程2: 定積変化で最終温度へ】
追加された総熱量は \(Q_2 = \frac{2}{3}Q\) です。
定積変化に使われる残りの熱量 \(q_2\) は、
$$
\begin{aligned}
q_2 &= Q_2 – q_1 \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
最終温度を \(T_1\) とすると、定積変化の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
q_2 &= n C_V (T_1 – T”) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R (T_1 – T”) \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(V_1/T_1 = V_2/T_2\)
  • 定圧変化の熱量: \(Q = n C_P \Delta T\)
  • 定積変化の熱量: \(Q = n C_V \Delta T\)
計算過程

【過程1の計算】
式⑫より \(T”\) を求めます。\(T’ = \frac{7}{6}T_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T” &= \frac{8/9}{7/9} T’ \\[2.0ex]
&= \frac{8}{7} \cdot \frac{7}{6}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{4}{3}T_0
\end{aligned}
$$
式⑬より \(q_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
q_1 &= \frac{5}{2}R \left( \frac{4}{3}T_0 – \frac{7}{6}T_0 \right) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R \left( \frac{8-7}{6}T_0 \right) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{12}RT_0
\end{aligned}
$$
【過程2の計算】
追加総熱量 \(Q_2\) を \(RT_0\) で表します。\(Q = \frac{5}{4}RT_0\) なので、
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= \frac{2}{3}Q \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \cdot \frac{5}{4}RT_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{6}RT_0
\end{aligned}
$$
残りの熱量 \(q_2\) を求めます(式⑭)。
$$
\begin{aligned}
q_2 &= \frac{5}{6}RT_0 – \frac{5}{12}RT_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{12}RT_0
\end{aligned}
$$
式⑮より \(T_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{12}RT_0 &= \frac{3}{2}R (T_1 – T”) \\[2.0ex]
\frac{5}{18}T_0 &= T_1 – \frac{4}{3}T_0 \\[2.0ex]
T_1 &= \frac{5}{18}T_0 + \frac{24}{18}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{29}{18}T_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

さらに熱を加えると、ピストンは下がっていき、途中でシリンダーの端っこにぶつかって止まりました。
ここまでが「定圧変化」です。
その後も熱を加え続けましたが、ピストンはもう動けないので、体積一定のまま温度だけが急激に上がりました。これが「定積変化」です。
熱エネルギーをこの2つの段階に分けて計算し、最終的な温度を求めました。

結論と吟味

答えは \(T_1 = \frac{29}{18}T_0\) です。
\(29/18 \approx 1.61\)。\(T” = 4/3 \approx 1.33\)。
定積変化によってさらに温度が上昇しており、妥当な結果です。

解答 (5) カ: \(\displaystyle \frac{29}{18}\)
別解: 始状態と終状態に着目した保存則的解法

思考の道筋とポイント
途中の過程(定圧→定積)を細かく追わず、(4)の状態(始状態)から(5)の最終状態(終状態)までの「全区間」に対して熱力学第一法則を適用します。
気体がした仕事は、ピストンが動いた区間(定圧部分)だけで発生することに着目します。

この設問における重要なポイント

  • 全熱量: \(Q_{\text{全}} = Q_2 = \frac{5}{6}RT_0\)
  • 全仕事: \(W_{\text{全}} = P’ \Delta V = P’ (V_{\text{最大}} – V_{\text{始}})\)
  • 全内部エネルギー変化: \(\Delta U_{\text{全}} = \frac{3}{2}nR (T_1 – T’)\)

具体的な解説と立式
熱力学第一法則 \(Q_{\text{全}} = \Delta U_{\text{全}} + W_{\text{全}}\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{6}RT_0 &= \frac{3}{2}R(T_1 – T’) + P’ \left( \frac{8}{9}SL – \frac{7}{9}SL \right) \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$
ここで、\(P’ S = \frac{3}{2} \frac{RT_0}{L}\) (問3の式⑧ \(P’ \cdot \frac{2}{3}SL = RT_0\) より変形)を用います。

使用した物理公式

  • 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W\)
  • 仕事の定義: \(W = P \Delta V\)
計算過程

仕事項 \(W_{\text{全}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{全}} &= P’ S \cdot \frac{1}{9}L \\[2.0ex]
&= \left( \frac{3RT_0}{2L} \right) \cdot \frac{1}{9}L \\[2.0ex]
&= \frac{1}{6}RT_0
\end{aligned}
$$
式⑯に代入して \(T_1\) を解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{6}RT_0 &= \frac{3}{2}R \left( T_1 – \frac{7}{6}T_0 \right) + \frac{1}{6}RT_0 \\[2.0ex]
\frac{4}{6}RT_0 &= \frac{3}{2}R \left( T_1 – \frac{7}{6}T_0 \right) \\[2.0ex]
\frac{2}{3}T_0 &= \frac{3}{2}T_1 – \frac{7}{4}T_0 \\[2.0ex]
\frac{3}{2}T_1 &= \frac{2}{3}T_0 + \frac{7}{4}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{8+21}{12}T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{29}{12}T_0 \\[2.0ex]
T_1 &= \frac{29}{12} \cdot \frac{2}{3} T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{29}{18}T_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

途中の複雑な変化を気にせず、「最初と最後でエネルギーがどう変わったか」だけを見ました。
入ってきたエネルギーの合計は分かっています。仕事をしたのはピストンが動いた分だけです。
残りのエネルギーは全て温度上昇に使われたはずなので、そこから逆算して最後の温度を求めました。

結論と吟味

全く同じ結果が得られました。
過程の切り替わりポイント(\(T”\))を計算する必要がないため、計算量が少なく、ミスも減らせる非常に有効な解法です。

解答 (5) カ: \(\displaystyle \frac{29}{18}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
問(4)から問(5)にかけての加熱プロセスを、熱力学第一法則の微分形 \(dQ = dU + P dV\) を用いて体系的に解析します。
状態変化を「微小な熱の出入り」の積み重ねとして捉え、積分によって全体の変化を導きます。

この設問における重要なポイント

  • 熱力学第一法則の微分形: \(dQ = n C_V dT + P dV\)
  • 状態方程式の微分形: \(P dV + V dP = nR dT\)
  • 定圧条件: \(dP = 0\) \(\Rightarrow\) \(P dV = nR dT\)
  • 定積条件: \(dV = 0\) \(\Rightarrow\) \(dQ = n C_V dT\)

具体的な解説と立式
【定圧過程の解析】
定圧変化(\(dP=0\))では、\(P dV = nR dT\) が成り立ちます。
これを第一法則に代入します。
$$
\begin{aligned}
dQ &= n C_V dT + nR dT \\[2.0ex]
&= n (C_V + R) dT \\[2.0ex]
&= n C_P dT
\end{aligned}
$$
これを積分することで、\(Q = n C_P \Delta T\) という公式が自然に導かれます。
問(4)および問(5)の前半は、この積分を実行していることに他なりません。

【定積過程の解析】
ピストンが底についた後は \(V = \text{一定}\) なので \(dV = 0\) です。
$$
\begin{aligned}
dQ &= n C_V dT
\end{aligned}
$$
これを積分すると \(Q = n C_V \Delta T\) となります。

【一連のプロセスの積分】
問(4)の開始時(温度 \(T_0\))から問(5)の終了時(温度 \(T_1\))まで、総熱量 \(Q_{\text{全}} = Q_1 + Q_2 = Q\) を加えます。
途中で体積が \(V_{\text{始}} = \frac{2}{3}SL\) から \(V_{\text{最大}} = \frac{8}{9}SL\) まで変化し、そこで止まります。
エネルギー保存則(第一法則の積分形)を全区間で記述します。
$$
\begin{aligned}
\int dQ &= \int dU + \int P dV \\[2.0ex]
Q &= [U]_{T_0}^{T_1} + \int_{V_{\text{始}}}^{V_{\text{最大}}} P’ dV
\end{aligned}
$$
ここで、圧力 \(P’\) は定圧区間では一定、定積区間では仕事に寄与しない(\(dV=0\))ため、積分範囲は体積が変化する区間のみとなります。

使用した物理公式

  • 熱力学第一法則(微分形): \(dQ = dU + P dV\)
  • 内部エネルギーの定義: \(dU = n C_V dT\)
計算過程

右辺の各項を計算します。
内部エネルギー変化の積分:
$$
\begin{aligned}
[U]_{T_0}^{T_1} &= \frac{3}{2}nR (T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
仕事の積分(定圧部分のみ):
$$
\begin{aligned}
\int_{V_{\text{始}}}^{V_{\text{最大}}} P’ dV &= P’ (V_{\text{最大}} – V_{\text{始}}) \\[2.0ex]
&= P’ S \left( \frac{8}{9}L – \frac{2}{3}L \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2}{9} P’ S L
\end{aligned}
$$
これらを合計して \(Q\) と等置します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{3}{2}R (T_1 – T_0) + \frac{2}{9} P’ S L
\end{aligned}
$$
\(Q = \frac{5}{4}RT_0\)、\(P’SL = \frac{3}{2}RT_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{4}RT_0 &= \frac{3}{2}R (T_1 – T_0) + \frac{2}{9} \cdot \frac{3}{2}RT_0 \\[2.0ex]
\frac{5}{4}T_0 &= \frac{3}{2}T_1 – \frac{3}{2}T_0 + \frac{1}{3}T_0 \\[2.0ex]
\frac{3}{2}T_1 &= \frac{5}{4}T_0 + \frac{3}{2}T_0 – \frac{1}{3}T_0 \\[2.0ex]
&= \left( \frac{15 + 18 – 4}{12} \right) T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{29}{12}T_0 \\[2.0ex]
T_1 &= \frac{29}{18}T_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「微小な変化 \(d\)」を積み重ねる積分という操作を通じて、物理現象全体を一つの式で表現しました。
途中で変化のルール(定圧→定積)が変わっても、エネルギーの収支(入った熱=内部エネルギー増+仕事)という基本原理は常に貫かれていることが分かります。

結論と吟味

微積分を用いることで、個別の公式(\(Q=nC_P\Delta T\) など)に頼らず、第一法則という根本原理から一貫して解を導くことができました。
結果はもちろん一致します。

解答 (5) カ: \(\displaystyle \frac{29}{18}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力のつりあいによる圧力の決定プロセス
    • 核心: ピストンを含む熱力学の問題では、気体の圧力 \(P\) は状態方程式からではなく、まず「ピストンにはたらく力のつりあい」から決定されるという手順が絶対的な基本です。
    • 理解のポイント:
      • 自由なピストン: ピストンが静止または等速で動く場合、内部の圧力による力 \(PS\) は、外部からの力(大気圧 \(P_0 S\) や重力 \(Mg\))と常につりあっています。
      • 向きの重要性: シリンダーが逆転した場合、重力 \(Mg\) のはたらく向きが気体に対して「圧縮方向」から「膨張方向」へと逆転するため、圧力の式も変化します。
  • 熱力学第一法則とエネルギーの分配
    • 核心: 気体に加えられた熱量 \(Q\) は、必ず「内部エネルギーの変化 \(\Delta U\)(温度上昇)」と「外部への仕事 \(W\)(体積変化)」の2つに分配されます。この内訳は変化の過程(定圧、定積など)によって厳密に決まります。
    • 理解のポイント:
      • 定圧変化の配分: 単原子分子理想気体の場合、\(Q : \Delta U : W = 5 : 3 : 2\) という黄金比が成り立ちます。これを覚えておくと検算に役立ちます。
      • 過程の切り替わり: ピストンがストッパーや底に達すると、その瞬間から \(W=0\) となり、熱はすべて \(\Delta U\)(温度上昇)に使われる「定積変化」へとモードチェンジします。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ばね付きピストンの問題: 重力 \(Mg\) の代わりに、ばねの弾性力 \(kx\) が加わります。変位 \(x\) に応じて圧力が変化するため、積分が必要になるケースや、平均の力を用いるケースがあります。
    • 2室に分かれたシリンダー: ピストンが連動して動く場合、両室の圧力バランスと、全体の力のつりあいを連立させます。
    • 断熱変化を含む問題: 「断熱材でできている」だけでなく「急激に圧縮した」などのキーワードがあれば、ポアソンの式 \(PV^{\gamma} = \text{一定}\) や \(Q=0\) を利用します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 自由か固定かを見極める: ピストンが自由に動けるなら「定圧変化(つりあい維持)」、壁やストッパーで止まっているなら「定積変化」です。
    2. 幾何学的制約を確認する: 「ピストンの厚さ」や「ストッパーの位置」など、体積変化の上限を決める条件を最初に図に書き込みます。
    3. 解法の選択:
      • 「途中の状態」を聞かれたら \(\rightarrow\) 段階的に状態方程式と第一法則を立式。
      • 「最終的な温度」だけを聞かれたら \(\rightarrow\) 始状態と終状態での保存則的解法(別解のアプローチ)。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • ピストンの厚さによる体積計算のミス:
    • 誤解: シリンダーの全長 \(L\) をそのまま気柱の最大長さとして計算してしまう。
    • 対策: 問題文にある「ピストンの厚さは \(L/9\)」といった情報を読み飛ばさないこと。必ず図を描き、気体が実際に占有できる有効な長さ(\(L_{\text{有効}} = L – L_{\text{厚さ}}\))を明記してから計算に入りましょう。
  • シリンダー逆転時の力の向きの取り違え:
    • 誤解: シリンダーを逆さにしても、つりあいの式を \(PS = P_0 S + Mg\) のままにしてしまう、あるいは符号を逆にするだけで済ませてしまう。
    • 対策: 「重力は常に鉛直下向き」です。図を描く際、必ず重力ベクトル \(Mg\) を下向きに描き込み、それがピストンを「気体に押し込む方向」なのか「気体から引き離す方向」なのかを物理的に確認して立式してください。
  • 定圧から定積への切り替わりの見落とし:
    • 誤解: 熱を加え続けている間はずっと定圧変化で膨張し続けると思い込み、ピストンが底を突き抜けた計算をしてしまう。
    • 対策: \(V\) や \(l\) を求めたら、必ず「シリンダーの最大容量」と比較する習慣をつけましょう。計算結果が最大値を超えていたら、そこで過程が切り替わっている証拠です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)での公式選択(\(Q = nC_P \Delta T\) vs \(Q = \Delta U + W\)):
    • 選定理由: 模範解答のアプローチ(\(C_P\) の公式)は、定圧変化であることが確定している状況下で、最も速く熱量を求められる「実戦的なショートカット」です。一方、別解のアプローチ(第一法則)は、エネルギーの内訳を個別に計算するため手間はかかりますが、物理的な意味(何にエネルギーが使われたか)が明確になる「原理的な解法」です。
    • 適用根拠: 単原子分子理想気体の定圧変化という条件が揃っているため、どちらを用いても正解に至ります。検算として両方使えるのが理想です。
  • 問(5)別解での公式選択(全区間での第一法則):
    • 選定理由: 途中の切り替わり温度 \(T”\) を求める必要がない場合、中間状態をスキップして始状態と終状態だけで保存則を立てる方が、計算量が圧倒的に少なく、ミスも防げます。
    • 適用根拠: 熱力学第一法則は状態量(\(U\))の変化と、過程量(\(Q, W\))の総和の関係を示すものであり、途中の経路が複雑であっても、全区間の積分値として成立するためです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 答えが出たら、単位(次元)を確認しましょう。例えば温度 \(T\) の答えが \(\frac{(P_0 S + Mg)L}{R}\) なら、分子は \([\text{N}] \cdot [\text{m}] = [\text{J}]\)(仕事・エネルギー)、分母は \([\text{J}/\text{K}]\)(気体定数)となり、全体として \([\text{K}]\)(温度)の次元を持ちます。もし \(L\) が抜けていたら次元が合わず、間違いに気づけます。
  • 比の計算の活用:
    • 問(4)(5)のように「時間が \(1/3\) 倍」「熱量が \(2/3\) 倍」といった比例関係を使う場合、具体的な数値を代入して計算し直すのではなく、\(Q_1 = \frac{1}{3}Q\) のように比率のまま式変形を進めると、計算量が減り、約分もしやすくなります。
  • 極限的なケースでの検算:
    • もし \(M=0\)(ピストン質量なし)だったら? つりあいの式より \(P=P_0\) となり、内外の圧力が等しくなるはずです。式 \(P = P_0 + Mg/S\) で \(M=0\) とすると \(P=P_0\) となり整合します。
    • もし \(g=0\)(無重力)だったら? シリンダーの向きに関係なく圧力は一定になるはずです。これも式で確認できます。
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問題53 熱力学 (横浜市立大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 熱力学第一法則の定義(\(\Delta U + W\))を用いた解法
      • 模範解答が定積・定圧モル比熱の公式(\(Q = nC\Delta T\))を用いて熱量を求めているのに対し、別解では内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と気体がした仕事 \(W\) を個別に計算し、それらを合計して熱量 \(Q\) を求めます。
    • 設問(4)の別解: 放熱量に着目した熱効率の計算
      • 模範解答が「正味の仕事 \(W\)」を用いて熱効率を計算しているのに対し、別解では「放出した熱量 \(Q_{\text{放}}\)」を計算し、\(e = 1 – \frac{Q_{\text{放}}}{Q_{\text{吸}}}\) の関係式を用いて求めます。
    • 設問(3)(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 熱力学第一法則の微分形 \(dQ = dU + P dV\) を出発点とし、各過程における熱の出入りと仕事を積分計算によって導出します。これにより、公式の暗記に頼らず物理原理から解答を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 定義からの解法: 公式を忘れても導き出せる基礎力を養い、エネルギーの内訳(内部エネルギーと仕事)を意識させます。
    • 放熱量の解法: 仕事の計算(面積計算)が複雑な場合や、放熱量が既知の場合に有効な代替手段となります。
    • 微積分の解法: 状態変化のプロセスを数学的に厳密に記述することで、熱力学の全体像を深く理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「\(V-T\) グラフで表された単原子分子理想気体のサイクル」です。
グラフから各状態の圧力や温度を読み取り、\(P-V\) グラフへの変換、熱量、仕事、熱効率を計算します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
  2. \(V-T\) グラフの特性: 原点を通る直線は「圧力一定(定圧変化)」を表します(\(V = \frac{nR}{P}T\) より、傾きが一定なら \(P\) も一定)。
  3. 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W\)
  4. 単原子分子理想気体の比熱: 定積モル比熱 \(C_V = \frac{3}{2}R\)、定圧モル比熱 \(C_P = \frac{5}{2}R\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、状態方程式とグラフの幾何学的特徴(比例関係)を用いて、各点の状態量(\(P, V, T\))を決定します。
  2. (2)では、求めた状態量をもとに \(P-V\) グラフを描画します。
  3. (3)では、温度変化の向きから吸熱過程を特定し、比熱の公式を用いて熱量を計算します。
  4. (4)では、サイクルが囲む面積から仕事を求め、熱効率を計算します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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