問題13 運動量保存則 (宇都宮大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(4)の一括解説(別解): 微積分と重心系を用いた体系的解法
- 模範解答は、衝突のたびに運動量保存則と反発係数の式を連立させて解いていますが、別解では、運動方程式から導かれる「重心速度保存則」と「相対運動の減衰」という2つの独立したモードに分解して解析します。
- この視点を用いると、連立方程式を解くことなく、全ての設問(速度、時間、エネルギー損失)を統一的な一般式から導出できます。
- 設問(1)〜(4)の一括解説(別解): 微積分と重心系を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 計算量の劇的な削減: 毎回連立方程式を解く手間が省け、計算ミスを大幅に減らせます。
- 物理的本質の理解: 「外力が働かない系では重心は等速直線運動をする」「非弾性衝突では相対速度だけが減衰する」という物理的直感を養えます。
- 応用力: 衝突回数が \(n\) 回の場合や、質量比が極端な場合などの一般化が容易になります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「運動量保存則と反発係数を用いた衝突問題の解析」です。
滑らかな水平面上での質点とリングの衝突を扱います。一見複雑そうに見えますが、外力が働かないため系全体の運動量は保存されること、および衝突のたびに相対速度が反発係数 \(e\) 倍になることの2点が支配的なルールです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量保存則: 水平方向には外力が働かないため、質点とリングの運動量の総和は常に一定です。
- 反発係数(はねかえり係数)の式: 衝突前後の相対速度の比は \(-e\) になります。
- 相対速度と衝突時間: リングの中で質点が往復する場合、衝突から次の衝突までの時間は、(相対距離)\(\div\)(相対速さ)で求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、1回目の衝突について保存則と反発係数の式を連立させます。
- (2)では、衝突前の移動時間と、衝突後の相対速度を用いた移動時間を合計します。
- (3)では、2回目の衝突後の状態を同様に計算します。
- (4)では、無限回衝突した後の極限状態(相対速度 \(0\))を考えます。
問(1)
思考の道筋とポイント
質点が初速 \(v_0\) で右へ動き、静止していたリングの右側内壁(点A)に衝突します。
衝突直後の質点の速度を \(v_1\)、リングの速度を \(V_1\) と置きます。
未知数が2つ(\(v_1, V_1\))あるので、式を2つ立てる必要があります。
1つは「運動量保存則」、もう1つは「反発係数の式」です。
この設問における重要なポイント
- 正の向きの設定: 問題文にある通り、右向きを正とします。
- 力積の定義: 力積 \(I\) は運動量の変化に等しいです。\(I = p_{\text{後}} – p_{\text{前}}\)。
- 作用・反作用: 質点が受ける力積とリングが受ける力積は、大きさ等しく向きが逆です。
具体的な解説と立式
右向きを正の向きとします。
衝突直後の質点の速度を \(v_1\)、リングの速度を \(V_1\) とします。
1. 運動量保存則の立式
系全体(質点+リング)には水平方向の外力が働かないため、衝突前後で全運動量は保存されます。
$$
\begin{aligned}
(\text{衝突後の全運動量}) &= (\text{衝突前の全運動量}) \\[2.0ex]
mv_1 + MV_1 &= mv_0 + M \cdot 0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
2. 反発係数の式の立式
衝突面(点A)における反発係数の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{衝突後の相対速度}) &= -e \times (\text{衝突前の相対速度}) \\[2.0ex]
v_1 – V_1 &= -e (v_0 – 0) \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
3. 力積の立式
質点が受ける力積 \(I\) は、質点の運動量の変化に等しいです。
$$
\begin{aligned}
I &= (\text{質点の衝突後の運動量}) – (\text{質点の衝突前の運動量}) \\[2.0ex]
I &= mv_1 – mv_0 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1′ + m_2 v_2’\)
- 反発係数の式: \(v_1′ – v_2′ = -e(v_1 – v_2)\)
- 運動量と力積の関係: \(I = \Delta p = mv’ – mv\)
式①と式②の連立方程式を解きます。
まず、式②を変形して \(v_1\) を表します。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= V_1 – ev_0 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
これを式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
m(V_1 – ev_0) + MV_1 &= mv_0 \\[2.0ex]
mV_1 – mev_0 + MV_1 &= mv_0 \\[2.0ex]
(m + M)V_1 &= mv_0 + mev_0 \\[2.0ex]
(m + M)V_1 &= m(1 + e)v_0
\end{aligned}
$$
よって、リングの速度 \(V_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{m(1+e)}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
次に、求めた \(V_1\) を式②’に代入して \(v_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= \frac{m(1+e)}{m+M} v_0 – ev_0 \\[2.0ex]
&= \frac{m(1+e)v_0 – e(m+M)v_0}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{(m + me – em – eM)v_0}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{m – eM}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
最後に、式③を用いて力積 \(I\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I &= m \left( \frac{m – eM}{m+M} v_0 \right) – mv_0 \\[2.0ex]
&= mv_0 \left( \frac{m – eM}{m+M} – 1 \right) \\[2.0ex]
&= mv_0 \left( \frac{m – eM – (m+M)}{m+M} \right) \\[2.0ex]
&= mv_0 \left( \frac{-eM – M}{m+M} \right) \\[2.0ex]
&= – \frac{(1+e)mM}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
質点がリングにぶつかると、質点は左向きの力を受けて減速(あるいは跳ね返り)し、リングは右向きの力を受けて動き出します。
「運動量の合計が変わらない」というルールと、「ぶつかった後の速度差は、ぶつかる前の \(e\) 倍になって逆転する」というルールの2つを使って計算しました。
力積の計算結果がマイナスになったのは、質点が衝突によって「左向き」の衝撃を受けたことを意味しています。
- 速度 \(v_1\): 分子 \(m-eM\) の符号により、跳ね返るか(\(m < eM\))、そのまま右へ進むか(\(m > eM\))が決まります。これは質量の大小関係と反発係数に依存し、物理的に妥当です。
- 速度 \(V_1\): 常に正の値となり、リングは必ず右へ動き出します。これも直感と一致します。
- 力積 \(I\): 負の値となり、質点は左向きの力を受けました。作用反作用の法則より、リングは正の力積を受け取ります。
質点の速度: \(\displaystyle \frac{m – eM}{m+M} v_0\)
リングの速度: \(\displaystyle \frac{m(1+e)}{m+M} v_0\)
力積: \(\displaystyle – \frac{(1+e)mM}{m+M} v_0\)
問(2)
思考の道筋とポイント
「中心Oを出発してから」という点に注意が必要です。
全体の時間は以下の2つのステップの和になります。
1. スタート地点Oから最初の衝突地点Aまでの移動時間。
2. Aで衝突してから、反対側のBに到達するまでの移動時間。
特にステップ2では、質点もリングも動いているため、「相対速度」を使って考えるのが鉄則です。
この設問における重要なポイント
- 相対速度の活用: 動いている箱の中での移動時間は、(箱の長さ)\(\div\)(相対速さ)で求められます。
- 距離の確認: OからAまでは半径 \(a\)、AからBまでは直径 \(2a\) です。
具体的な解説と立式
求める時間を \(T_2\) とします。
1. 最初の衝突までの時間 \(t_1\)
質点は静止したリングの中を距離 \(a\) だけ進みます。速さは \(v_0\) です。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{a}{v_0}
\end{aligned}
$$
2. 衝突後、Bに到達するまでの時間 \(t_2\)
衝突後の質点とリングの相対速度の大きさ \(v_{\text{相対}}\) は、反発係数の定義より、衝突前の相対速度 \(v_0\) の \(e\) 倍になります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{相対}} &= |v_1 – V_1| \\[2.0ex]
&= e v_0
\end{aligned}
$$
質点はリングに対して、直径 \(2a\) の距離を進んで反対側の壁Bに衝突します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{2a}{v_{\text{相対}}} \\[2.0ex]
&= \frac{2a}{e v_0}
\end{aligned}
$$
3. 合計時間の計算
$$
\begin{aligned}
T_2 &= t_1 + t_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の時間: \(t = \frac{x}{v}\)
- 相対速度と反発係数: \(|v’ – V’| = e|v – V|\)
$$
\begin{aligned}
T_2 &= \frac{a}{v_0} + \frac{2a}{e v_0} \\[2.0ex]
&= \frac{a}{v_0} \left( 1 + \frac{2}{e} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{a(e+2)}{e v_0}
\end{aligned}
$$
最初は距離 \(a\) を速さ \(v_0\) で進むので、時間は \(a/v_0\) です。
ぶつかった後は、お互いの速度差(相対速度)が \(e\) 倍に減って \(ev_0\) になります。
この「ゆっくりになった速度差」で、今度は直径 \(2a\) 分の距離を縮める必要があるので、時間は \(2a/ev_0\) かかります。
これらを足し合わせれば答えになります。
\(e\) が小さい(反発が弱い)ほど、分母が小さくなり時間は長くなります。これは衝突後の速度差が小さくなり、なかなか反対側に到達しないことを意味するため妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
2回目の衝突(点Bでの衝突)直後のリングの速度 \(V_2\) を求めます。
また、その次に点Aに衝突するまでの時間 \(t_3\) を求めます。
ここでも「運動量保存則」と「反発係数の式」を使いますが、別解で示した「相対速度が衝突ごとに \(-e\) 倍になる」という性質を使うと計算が楽です。
この設問における重要なポイント
- 衝突の連鎖: 1回目の衝突後、相対速度の大きさは \(ev_0\)。2回目の衝突後、相対速度の大きさは \(e(ev_0) = e^2 v_0\) になります。
- 保存則の不変性: 何回衝突しても、全運動量 \(mv + MV\) の値は初期値 \(mv_0\) のまま変わりません。
具体的な解説と立式
1. リングの速度 \(V_2\) の導出
2回目の衝突直後の質点の速度を \(v_2\)、リングの速度を \(V_2\) とします。
運動量保存則より、
$$
\begin{aligned}
mv_2 + MV_2 &= mv_0 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
反発係数の式より、衝突直後の相対速度 \(v_2 – V_2\) は、衝突直前の相対速度 \(v_1 – V_1\) の \(-e\) 倍です。
(1)より \(v_1 – V_1 = -ev_0\) だったので、
$$
\begin{aligned}
v_2 – V_2 &= -e (v_1 – V_1) \\[2.0ex]
&= -e (-ev_0) \\[2.0ex]
&= e^2 v_0 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
この④と⑤を連立して \(V_2\) を求めます。
2. 次の衝突までの時間 \(t_3\) の導出
2回目の衝突後、相対速度の大きさは \(e^2 v_0\) です。
進むべき相対距離は再び直径 \(2a\) です。
$$
\begin{aligned}
t_3 &= \frac{2a}{e^2 v_0}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動量保存則
- 反発係数の連鎖: \(n\) 回衝突後の相対速度 \(= (-e)^n v_0\)
式⑤より \(v_2 = V_2 + e^2 v_0\)。これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
m(V_2 + e^2 v_0) + MV_2 &= mv_0 \\[2.0ex]
(m + M)V_2 + me^2 v_0 &= mv_0 \\[2.0ex]
(m + M)V_2 &= m(1 – e^2) v_0
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{m(1 – e^2)}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
時間は立式の通り、
$$
\begin{aligned}
t_3 &= \frac{2a}{e^2 v_0}
\end{aligned}
$$
2回ぶつかると、相対速度は \(e \times e = e^2\) 倍になります。
「全体の運動量が変わらない」という式と、「速度差が \(e^2\) 倍になった」という式を組み合わせることで、新しいリングの速度が求まります。
また、速度差がさらに小さくなった(\(e^2\) 倍)ので、次に壁に当たるまでの時間はさらに長くなります。
\(V_2\) の式において \(e=1\)(弾性衝突)とすると \(V_2=0\) となります。質量が等しい場合などを考えると、速度交換が起きて元に戻るような振る舞いが示唆され、興味深いです。
時間の式は \(e\) の2乗に反比例しており、衝突を繰り返すたびに時間が急激に延びていくことがわかります。
リングの速度: \(\displaystyle \frac{m(1-e^2)}{m+M} v_0\)
時間: \(\displaystyle \frac{2a}{e^2 v_0}\)
問(4)
思考の道筋とポイント
「十分時間が経過した」とは、衝突を無限回繰り返した後の状態を指します。
\(e < 1\) なので、衝突のたびに相対速度は小さくなり、最終的には \(0\) になります。つまり、質点とリングは一体となって動きます。
このときの速度 \(u\) を求め、エネルギーの減少量を計算します。
この設問における重要なポイント
- 最終状態の特定: 相対速度が \(0\) になるため、\(v_{\text{最後}} = V_{\text{最後}} = u\) となります。これは完全非弾性衝突と同じ状態です。
- エネルギー保存則の不成立: 非弾性衝突なので力学的エネルギーは保存されません。失われたエネルギーは熱などに変わります。
具体的な解説と立式
1. 最終速度 \(u\) の導出
最終的に質点とリングは同じ速度 \(u\) で動きます。
運動量保存則より、
$$
\begin{aligned}
(m + M)u &= mv_0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
2. 失われたエネルギー \(\Delta E\) の導出
失われたエネルギーは、(初期の運動エネルギー)\(-\)(最終状態の運動エネルギー)です。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2}(m+M)u^2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動量保存則: \(P_{\text{前}} = P_{\text{後}}\)
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
式⑥より、
$$
\begin{aligned}
u &= \frac{m}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
これを式⑦に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2}(m+M) \left( \frac{m}{m+M} v_0 \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2} \frac{m^2}{m+M} v_0^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 \left( 1 – \frac{m}{m+M} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 \left( \frac{m+M-m}{m+M} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 \frac{M}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{mM}{2(m+M)} v_0^2
\end{aligned}
$$
何度もぶつかっているうちに、質点とリングの間の速度差はなくなっていき、最後には仲良く一緒に動くようになります。
この「一体化」した速度は、最初の勢い(運動量)を合計質量で割ることで求まります。
衝突のたびにエネルギーの一部が熱や音として逃げていくので、最初のエネルギーから最後のエネルギーを引き算することで、合計でどれだけ損したかを計算しました。
失われたエネルギー \(\Delta E\) は正の値であり、エネルギーが減少していることを示しています。
また、\(M \to \infty\)(リングが重すぎて動かない壁とみなせる場合)の極限をとると、\(\Delta E \to \frac{1}{2}mv_0^2\) となり、質点のエネルギーが全て失われて停止することと整合します。
リングの速度: \(\displaystyle \frac{m}{m+M} v_0\)
失われたエネルギー: \(\displaystyle \frac{mM}{2(m+M)} v_0^2\)
思考の道筋とポイント
個々の物体の速度 \(v, V\) を追う代わりに、系全体の「重心速度 \(v_G\)」と、2物体の「相対速度 \(v_{\text{相対}}\)」に着目します。
運動方程式から出発することで、これらが独立して振る舞う様子が見えてきます。
この設問における重要なポイント
- 重心の等速性: 外力が働かない系では、重心速度は常に一定です。
- 相対運動の分離: 重心運動と相対運動を分けて考えることで、問題の見通しが劇的に良くなります。
- 一般化: \(n\) 回目の衝突後の状態を一般式として導出できます。
具体的な解説と立式
1. 運動方程式の積分と重心速度
質点とリングが互いに及ぼし合う力を \(F(t)\)(右向き正)とします。作用・反作用の法則より、リングが受ける力は \(-F(t)\) です。
運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= -F(t) \quad \cdots (A) \\[2.0ex]
M \frac{dV}{dt} &= +F(t) \quad \cdots (B)
\end{aligned}
$$
(A)と(B)の辺々を加えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} (mv + MV) &= 0
\end{aligned}
$$
これを積分すると、全運動量 \(mv + MV\) が定数であることがわかります。
よって、重心速度 \(v_G\) は常に一定です。
$$
\begin{aligned}
v_G &= \frac{mv + MV}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{mv_0 + M \cdot 0}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{m}{m+M} v_0 \quad \cdots (C)
\end{aligned}
$$
2. 相対運動のダイナミクス
相対速度を \(v_{\text{相対}} = v – V\) と定義します。
(A)を \(m\) で割り、(B)を \(M\) で割って差をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dv}{dt} – \frac{dV}{dt} &= -F(t) \left( \frac{1}{m} + \frac{1}{M} \right) \\[2.0ex]
\frac{dv_{\text{相対}}}{dt} &= – \frac{m+M}{mM} F(t)
\end{aligned}
$$
これは衝突時以外(\(F=0\))では相対速度が一定であることを示しています。
衝突時には、反発係数の定義より、相対速度は瞬時に \(-e\) 倍になります。
\(n\) 回目の衝突直後の相対速度 \(v_{\text{相対},n}\) は、初期相対速度 \(v_{\text{相対},0} = v_0\) を用いて以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{相対},n} &= (-e)^n v_0 \quad \cdots (D)
\end{aligned}
$$
3. 速度の復元公式
\(v_G\) と \(v_{\text{相対}}\) の定義式を連立して、\(v, V\) を逆算する公式を作っておきます。
$$
\begin{aligned}
v &= v_G + \frac{M}{m+M} v_{\text{相対}} \quad \cdots (E) \\[2.0ex]
V &= v_G – \frac{m}{m+M} v_{\text{相対}} \quad \cdots (F)
\end{aligned}
$$
この(C)〜(F)式を使えば、全ての設問が単なる代入問題になります。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 重心速度の定義: \(v_G = \frac{\sum mv}{\sum m}\)
- 相対速度の定義: \(v_{\text{相対}} = v – V\)
【問(1)の別解】
1回目の衝突後なので \(n=1\) です。
式(D)より、相対速度は \(v_{\text{相対},1} = -e v_0\) です。
式(E), (F)に代入します。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= \frac{m}{m+M} v_0 + \frac{M}{m+M} (-e v_0) \\[2.0ex]
&= \frac{m – eM}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{m}{m+M} v_0 – \frac{m}{m+M} (-e v_0) \\[2.0ex]
&= \frac{m(1+e)}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
力積 \(I\) は運動量変化なので、
$$
\begin{aligned}
I &= m(v_1 – v_0) \\[2.0ex]
&= m \left( v_G + \frac{M}{m+M} v_{\text{相対},1} – \left( v_G + \frac{M}{m+M} v_{\text{相対},0} \right) \right) \\[2.0ex]
&= \frac{mM}{m+M} (v_{\text{相対},1} – v_{\text{相対},0}) \\[2.0ex]
&= \frac{mM}{m+M} (-ev_0 – v_0) \\[2.0ex]
&= – \frac{(1+e)mM}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
【問(2)の別解】
衝突前の時間 \(t_1\) は、距離 \(a\) を速さ \(v_0\) で進むので \(t_1 = a/v_0\)。
衝突後の時間 \(t_2\) は、相対距離 \(2a\) を相対速さ \(|v_{\text{相対},1}| = e v_0\) で進む時間です。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{2a}{e v_0}
\end{aligned}
$$
合計時間は、
$$
\begin{aligned}
T &= t_1 + t_2 \\[2.0ex]
&= \frac{a}{v_0} + \frac{2a}{e v_0} \\[2.0ex]
&= \frac{a(e+2)}{e v_0}
\end{aligned}
$$
【問(3)の別解】
2回目の衝突後なので \(n=2\) です。
式(D)より、相対速度は \(v_{\text{相対},2} = (-e)^2 v_0 = e^2 v_0\) です。
式(F)に代入して \(V_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= v_G – \frac{m}{m+M} (e^2 v_0) \\[2.0ex]
&= \frac{m}{m+M} v_0 – \frac{me^2}{m+M} v_0 \\[2.0ex]
&= \frac{m(1-e^2)}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
次の衝突までの時間 \(t_3\) は、相対距離 \(2a\) を相対速さ \(|v_{\text{相対},2}| = e^2 v_0\) で進む時間です。
$$
\begin{aligned}
t_3 &= \frac{2a}{e^2 v_0}
\end{aligned}
$$
【問(4)の別解】
十分時間が経過すると \(n \to \infty\) となり、相対速度 \(v_{\text{相対},n} \to 0\) となります。
式(F)より、リングの速度 \(u\) は重心速度そのものになります。
$$
\begin{aligned}
u &= v_G \\[2.0ex]
&= \frac{m}{m+M} v_0
\end{aligned}
$$
エネルギー損失は、初期運動エネルギーと最終運動エネルギー(重心運動エネルギー)の差です。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2}(m+M)u^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2}(m+M) \left( \frac{m}{m+M} v_0 \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 – \frac{1}{2} \frac{m^2}{m+M} v_0^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv_0^2 \left( 1 – \frac{m}{m+M} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{mM}{2(m+M)} v_0^2
\end{aligned}
$$
この解法では、2つの物体を個別に追うのではなく、「全体の重心の動き」と「2物体の間の伸び縮み(相対運動)」に分けて考えました。
重心は外力がないのでずっと同じ速度で進みます。一方、相対運動は衝突のたびに \(e\) 倍ずつ縮んでいきます。
この2つの情報を組み合わせるだけで、どんなタイミングの速度や時間も、一つの公式から導き出せることを示しました。
この体系的解法により、複雑な連立方程式を解くことなく、全ての物理量が「重心速度」と「相対速度」の組み合わせとしてシンプルに記述できることが確認できました。
結果は全てメイン解法と一致しており、物理的にも数学的にも正しいアプローチです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動量保存則と重心速度の不変性
- 核心: 水平方向には外力が働かないため、系全体の運動量は保存されます。これは、系の重心速度 \(v_G\) が衝突を繰り返しても常に一定であることを意味します。
- 理解のポイント:
- 重心の視点: 複雑な多体問題でも、重心の動きだけを見れば単純な等速直線運動になります。
- 保存則の適用範囲: 衝突の瞬間だけでなく、衝突していない間も常に成立します。
- 反発係数と相対速度の減衰
- 核心: 衝突のたびに、2物体の相対速度の大きさは \(e\) 倍になり、向きが逆転します。
- 理解のポイント:
- 幾何級数的な変化: \(n\) 回衝突後の相対速度は \(e^n\) に比例して小さくなります。これが時間の計算や極限状態の考察において決定的な役割を果たします。
- エネルギー散逸: \(e < 1\) の場合、衝突ごとに運動エネルギーが失われ、最終的には相対速度が \(0\)(一体化)の状態に収束します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 床との繰り返し衝突: 小球が床でバウンドし続ける問題。高さが \(e^2\) 倍、時間が \(e\) 倍になる数列の和として処理できます。
- 2物体の衝突とばね: 衝突の代わりにばねでつながれた2物体の振動問題。重心運動と相対運動(単振動)に分離する手法がそのまま使えます。
- 無限回の操作: 「十分時間が経過した後」や「無限回衝突した後」というフレーズが出たら、数列の極限(\(n \to \infty\))や収束値(相対速度 \(0\))を疑います。
- 初見の問題での着眼点:
- 外力の有無を確認: 水平方向に力が働いていなければ、即座に「運動量保存則」と「重心速度一定」を宣言します。
- 相対運動に注目: 2物体が動いている場合、それぞれの速度 \(v, V\) を追うよりも、相対速度 \(v – V\) を追う方が計算が簡単になることが多いです。
- 解法の選択:
- 「1回の衝突」だけなら \(\rightarrow\) 連立方程式(基本)。
- 「\(n\) 回目の衝突」や「全体像」なら \(\rightarrow\) 重心系と相対速度の分離(応用)。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 相対速度の定義と符号のミス:
- 誤解: 反発係数の式 \(v’ – V’ = -e(v – V)\) において、引く順序を逆にしてしまったり、マイナスを忘れてしまう。
- 対策: 「跳ね返り係数」という名前の通り、衝突後は必ず遠ざかる向き(符号が逆)になることを図で確認します。「後の相対速度 \(=\) \(-e \times\) 前の相対速度」と日本語で覚えるのが安全です。
- 移動時間の計算ミス:
- 誤解: 衝突後の移動時間を計算する際、距離を \(2a\) ではなく \(a\) としてしまったり、速さを相対速度ではなく絶対速度で割ってしまう。
- 対策: 「動いている箱の中での移動」は、必ず「箱の長さ」を「相対速度」で割ると叩き込みます。図に「相対距離 \(2a\)」と書き込む癖をつけましょう。
- エネルギー保存則の誤用:
- 誤解: 非弾性衝突(\(e < 1\))なのに、運動エネルギー保存則を使って速度を求めてしまう。
- 対策: 「弾性衝突(\(e=1\))」と明記されていない限り、エネルギーは保存されません。エネルギー保存則が使えるのは、ばねや重力のみが働く場合か、完全弾性衝突の場合だけです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(連立方程式 vs 重心系):
- 選定理由: 模範解答のアプローチ(連立方程式)は、未知数が2つで式が2つという構造が明確で、最も標準的でミスの少ない方法です。一方、別解のアプローチ(重心系)は、計算量は減りますが、重心速度の概念に慣れていないと立式で躓くリスクがあります。
- 適用根拠: どちらも物理法則(ニュートンの運動法則)から導かれる等価な手法です。試験場では、自分が確実に解ける方を選びましょう。
- 問(4)での公式選択(完全非弾性衝突の扱い):
- 選定理由: 「十分時間が経過」=「相対速度 \(0\)」と見抜くことで、\(e\) の式を使わずに、最初から \(v=V\) として運動量保存則だけで解けます。
- 適用根拠: 無限回の衝突の果てには、エネルギーが最小になる状態(相対静止)に落ち着くという熱力学的な直感に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
- 答えが出たら、単位を確認します。例えば速度の答えなら、係数は無次元(質量 \(\div\) 質量など)で、最後に \(v_0\) が掛かっているはずです。\(m^2\) や \(v_0^2\) になっていたら間違いです。
- 極限的なケースでの検算:
- もし \(e=1\) (完全弾性衝突)だったら? エネルギーは減らないはずです。問(4)の答えで \(e\) が関係ない式になっているか、あるいはエネルギー損失がどうなるかを確認します(今回の問(4)は \(e<1\) 前提の極限なので \(e=1\) は代入できませんが、問(3)の \(V_2\) などで確認できます)。
- もし \(M \gg m\) (リングが巨大な壁)だったら? 質点は単に壁に跳ね返るだけなので、\(v_1 \approx -ev_0\) になるはずです。式で \(M \to \infty\) の極限をとって確認します。
- 対称性の利用:
- 質量 \(m\) と \(M\) を入れ替えたらどうなるか? 物理的な状況が変わるため式は対称にはなりませんが、分母の \(m+M\) など、対称性のある部分は計算ミスのチェックに使えます。
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問題14 運動量保存則 (名古屋市立大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 力学的エネルギー保存則を用いた解法
- 模範解答が等加速度運動の公式を用いるのに対し、別解ではエネルギー保存則を用いて最高点の高さを求めます。
- 設問(4)の別解: ベクトル図形を用いた解法
- 成分計算を行わず、速度ベクトルの幾何学的な関係(直角三角形など)を利用して相対速度の大きさを求めます。
- 設問(5)の別解: 重心運動(重心の軌跡)を利用した解法
- 個々の物体の軌道を計算する代わりに、「外力が働かない系(水平方向)では重心の運動は変化しない」という原理を利用し、重心位置から逆算して落下点を求めます。
- 全体を通した別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの導出)
- 公式を既知とせず、運動方程式を立式し、それを積分することで位置や速度を導出する原理的なアプローチをとります。問(1)から問(5)までを一括して解説します。
- 設問(1)の別解: 力学的エネルギー保存則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- エネルギー保存則: 時間 \(t\) を介さずに高さと速さの関係を直接結びつけるため、計算ミスを減らせます。
- ベクトル図形: 計算量を大幅に削減し、物理量の関係を視覚的に理解する助けとなります。
- 重心運動: 複雑な個々の運動を「重心」という代表点で捉えることで、計算を劇的に簡略化できる強力な視点を提供します。
- 微積分: 物理現象の根本原理からの理解を深め、公式の適用範囲外の応用問題にも対応できる基礎力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「空中での分裂と運動量保存則」です。放物運動の最中に物体が分裂し、それぞれの破片が異なる軌道を描く現象を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の独立性: 水平方向(等速直線運動)と鉛直方向(等加速度運動)を分けて考えます。
- 運動量保存則: 分裂の瞬間、内力のみが働くため、系全体の運動量の総和は保存されます。ベクトル量として成分ごとに保存則を立てることが重要です。
- 相対速度: 観測者から見た相手の速度は、\((\text{相手の速度}) – (\text{自分の速度})\) で求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、通常の斜方投射の公式を用いて最高点と水平到達距離を求めます。
- (2)では、分裂前後の運動量保存則を \(x, y, z\) 成分ごとに立式し、未知の速度成分を決定します。
- (3)〜(5)では、求めた速度成分をもとに、その後の軌道(水平投射)を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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