無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「縦波の横波表示:密・疎な点と媒質の振動速度の特定」

今回の問題

wave#02

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「縦波の横波表示」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 縦波の性質: 縦波は媒質の振動方向と波の進行方向が平行な波(疎密波)です。その変位(進行方向と同じ向きを正)を縦軸に、媒質のつり合いの位置を横軸にとると、横波のような形で表示できます。
  • 密と疎の定義:
    • 密な点: 媒質の密度が最大になる点。横波表示では、変位が0で、変位グラフの傾きが負の点に対応します。
    • 疎な点: 媒質の密度が最小になる点。横波表示では、変位が0で、変位グラフの傾きが正の点に対応します。
  • 媒質の単振動: 波が伝わるとき、媒質の各点はそのつり合いの位置を中心に単振動をします。単振動では、変位が最大の点で速さが0、変位が0の点で速さが最大になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、与えられた横波表示のグラフが、縦波の「変位」を表していることを理解します。\(y\)軸の正の向きは、波の進行方向(\(x\)軸正の向き)への変位を意味します。
  2. 各設問で問われている物理的状態(密、疎、速さ0、速さ最大)が、横波表示グラフのどの特徴(変位の値、傾きなど)に対応するかを考え、グラフ上の点を特定します。

問(1) 最も密な点

思考の道筋とポイント
縦波で媒質が最も「密」になるのは、周囲の媒質が集まってくる場所です。これを横波表示の変位グラフで考えます。ある点に媒質が集まるのは、その点のすぐ左側の媒質が右向き(正)に変位し、すぐ右側の媒質が左向き(負)に変位している状況です。これは、変位グラフの傾きが負になることに対応します。密の中心は変位が0の点なので、「変位が0で、グラフの傾きが負」の点を探します。
この設問における重要なポイント

  • 縦波の「密」は、横波表示で変位が0かつグラフの傾きが負の点に対応する。

具体的な解説と立式
グラフ上の各点について、変位と傾きを確認します。

  • 点A, E: 変位0、傾き正
  • 点C, G: 変位0、傾き負
  • 点B, D, F: 変位最大または最小、傾き0

「変位0、傾き負」の条件に合致するのは、点Cと点Gです。

計算過程

上記の考察により、該当する点はCとGであると判断できます。

計算方法の平易な説明

縦波の「密」な場所は、媒質がぎゅっと集まっている点です。横波表示のグラフでは、\(y=0\) の点で、グラフが右下がりの坂になっている場所がこれに当たります。図を見ると、CとGがこの条件を満たしています。

結論と吟味

最も密な点はCとGです。

解答 (1) C, G

問(2) 最も疎な点

思考の道筋とポイント
縦波で媒質が最も「疎」になるのは、周囲の媒質が離れていく場所です。これは、その点のすぐ左側の媒質が左向き(負)に変位し、すぐ右側の媒質が右向き(正)に変位している状況です。変位グラフの傾きが正になることに対応します。疎の中心は変位が0の点なので、「変位が0で、グラフの傾きが正」の点を探します。
この設問における重要なポイント

  • 縦波の「疎」は、横波表示で変位が0かつグラフの傾きが正の点に対応する。

具体的な解説と立式
グラフ上の各点のうち、「変位0、傾き正」の条件に合致するのは、点Aと点Eです。

計算過程

上記の考察により、該当する点はAとEであると判断できます。

計算方法の平易な説明

縦波の「疎」な場所は、媒質が引き伸ばされている点です。横波表示のグラフでは、\(y=0\) の点で、グラフが右上がりの坂になっている場所がこれに当たります。図を見ると、AとEがこの条件を満たしています。

結論と吟味

最も疎な点はAとEです。

解答 (2) A, E

問(3) 媒質の振動の速さが0の点

思考の道筋とポイント
媒質の各点は、波の進行方向と同じ向きに単振動しています。単振動において、速さが0になるのは、振動の折り返し点、すなわち変位が最大になるときです。
この設問における重要なポイント

  • 媒質の振動は単振動である。
  • 単振動では、変位が最大の点で速さが0になる。

具体的な解説と立式
横波表示のグラフで、変位\(y\)の絶対値が最大になる点を探します。

  • 点B, F: 変位が正の最大値(山の頂点)。
  • 点D: 変位が負の最大値(谷の底)。

これらの点で、媒質の振動の速さは0になります。

計算過程

上記の考察により、該当する点はB, D, Fであると判断できます。

計算方法の平易な説明

媒質の振動の速さが0になるのは、振動の端まで行って一瞬止まり、折り返す瞬間です。これは、ブランコが一番高い位置で一瞬止まるのと同じです。グラフで言うと、変位が最大になる、山のてっぺん(B, F)と谷の底(D)がこれに当たります。

結論と吟味

媒質の振動の速さが0の点はB, D, Fです。

解答 (3) B, D, F

問(4) 媒質の振動の速さが最大の点

思考の道筋とポイント
単振動において、速さが最大になるのは、振動の中心、すなわち変位が0の点を通過するときです。
この設問における重要なポイント

  • 単振動では、変位が0の点(振動の中心)で速さが最大になる。

具体的な解説と立式
横波表示のグラフで、変位\(y\)が0になる点を探します。

  • 点A, C, E, G: 変位が0。

これらの点で、媒質の振動の速さは最大になります。

計算過程

上記の考察により、該当する点はA, C, E, Gであると判断できます。

計算方法の平易な説明

媒質の振動の速さが最大になるのは、振動の中心を通過する瞬間です。これは、ブランコが一番低い位置を最も速く通過するのと同じです。グラフで言うと、変位が0になる、\(x\)軸と交わる点(A, C, E, G)がこれに当たります。

結論と吟味

媒質の振動の速さが最大の点はA, C, E, Gです。

解答 (4) A, C, E, G

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 縦波の横波表示の解釈:
    • 核心: この問題は、目に見えにくい縦波の性質(疎密)と媒質の運動(振動速度)を、視覚的に分かりやすい横波表示のグラフと正しく結びつけられるかが核心です。
    • 理解のポイント: グラフの縦軸(\(y\))は「変位」、グラフの傾き(\(dy/dx\))は「変位の変化率(=ひずみ)」を表します。
      • 密・疎は「ひずみ」に関係し、変位が0の点(\(y=0\))で決まる。
      • 媒質の速度は「変位」そのものに関係し、変位が0の点で最大、変位が最大の点で0になる。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 媒質の振動方向を問う問題: 「この瞬間の後、媒質の速度が正の向きに最大になる点はどこか?」といった問題。波が右に進む場合、少し未来の波形を想像して、各点がどちらに動くかを判断します。例えば、点Aは次にyが正になるので上向き(進行方向と同じ向き)に動きます。
    • 圧力変化を問う問題: 音波など、縦波は圧力の変化としても捉えられます。媒質が「密」な点は圧力が最も高く、「疎」な点は圧力が最も低くなります。変位が0の点で圧力変化は最大になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を確認する: まず、縦軸が「変位」なのか「密度(または圧力)」なのかを確認します。この問題は「変位」のグラフです。
    2. 密・疎の判断: 「密は\(y=0\)で傾きが負」「疎は\(y=0\)で傾きが正」というルールを適用します。なぜそうなるか(媒質が集まるか離れるか)をイメージできるとより確実です。
    3. 媒質の速度の判断: 媒質の運動は「単振動」であることを思い出します。「変位が最大なら速度は0」「変位が0なら速度は最大」という単振動の基本ルールを適用します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 密・疎を変位の最大・最小点と誤解する:
    • 誤解: 最も密な点を山の頂点(B, F)、最も疎な点を谷の底(D)と勘違いする。
    • 対策: 変位が最大・最小の点は、媒質が一方向に最もズレた点であり、速度が0になる点です。密・疎は、媒質の「集まり具合」であり、変位が0の点(振動中心)で起こる現象です。この2つを明確に区別しましょう。
  • 「波の速さ」と「媒質の振動の速さ」の混同:
    • 誤解: 波全体の進む速さ(\(v\))と、媒質の一点が振動する速さを同じものと考えてしまう。
    • 対策: これらは全くの別物です。波の速さ\(v\)は一定ですが、媒質の振動の速さは単振動なので、常に変化しています。問題がどちらの「速さ」を問うているのかを正確に読み取りましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 密・疎とグラフの傾きの関係:
    • 選定理由: 媒質の集まり具合(密・疎)は、ある点の近傍の媒質がどのように変位しているかで決まります。これは数学的には「変位の空間的な変化率」、すなわちグラフの傾きに対応するため、この考え方を用いるのが最も論理的です。
    • 適用根拠: 点\(x\)の媒質と、その少し右隣の点\(x+\Delta x\)の媒質の変位を考えます。
      • 傾きが負 (\(dy/dx < 0\)) の場合: 右隣の媒質の変位の方が小さい。つまり、左の媒質は右へ、右の媒質は左へ(あるいは右への移動量が小さい)動くため、媒質は点\(x\)に集まってきて「密」になります。
      • 傾きが正 (\(dy/dx > 0\)) の場合: 右隣の媒質の変位の方が大きい。つまり、左の媒質は左へ、右の媒質は右へ動くため、媒質は点\(x\)から離れていき「疎」になります。
  • 媒質の速度と変位の関係:
    • 選定理由: 媒質の運動は単振動であり、その速度と変位の関係は力学で学んだ単振動の性質そのものだからです。
    • 適用根拠: 単振動のエネルギー保存則 \(\frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}ky^2 = \text{一定}\) を考えると、変位\(y\)が最大(\(\pm A\))のとき、運動エネルギー\(\frac{1}{2}mv^2\)は最小(0)となり、速度\(v=0\)です。逆に、変位\(y\)が0のとき、運動エネルギーは最大となり、速度\(v\)も最大になります。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 知識整理の表を作成する: 縦波の横波表示に関する知識は混同しやすいため、以下のような表を自分で作って整理しておくと、試験本番で迷いません。
    物理的状態変位 \(y\)傾き \(dy/dx\)媒質の速度 \(v_{\text{媒質}}\)該当点
    最も密0最大C, G
    最も疎0最大A, E
    変位最大(正)最大00B, F
    変位最大(負)最小00D
  • 簡単な図で媒質の動きを描く: 密・疎の判断に迷ったら、変位が0の点の前後で、媒質がどちら向きに変位しているかを矢印で描いてみましょう。矢印が集まってくれば「密」、離れていけば「疎」であることが視覚的に確認できます。

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