基礎CHECK
1 単振動の周期と角振動数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の基本量(周期・振動数・角振動数)の相互変換」です。それぞれの物理量の定義と関係式を正確に理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 周期 \(T\) の定義: 物体が1回振動して元の状態に戻るまでの時間。単位は秒(\(\text{s}\))。
- 振動数 \(f\) の定義: 1秒間に振動する回数。単位はヘルツ(\(\text{Hz}\))。
- 角振動数 \(\omega\) の定義: 単振動を等速円運動の射影として捉えたときの角速度。単位はラジアン毎秒(\(\text{rad/s}\))。
- 上記3つの量の関係式: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\) および \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T} = 2\pi f\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 与えられた物理量(今回は振動数 \(f\))を確認する。
- 周期 \(T\) と振動数 \(f\) の関係式を用いて、周期 \(T\) を計算する。
- 求めた周期 \(T\) と角振動数 \(\omega\) の関係式を用いて、角振動数 \(\omega\) を計算する。
思考の道筋とポイント
この問題は、単振動を特徴づける3つの重要な量、周期 \(T\)、振動数 \(f\)、角振動数 \(\omega\) の関係を問う、基本的な計算問題です。問題文で与えられているのは振動数 \(f\) のみなので、この値を使って残りの2つを順に求めていきます。
まず、最も基本的な関係である「周期 \(T\) と振動数 \(f\) は互いに逆数の関係にある」ことを利用して、周期 \(T\) を算出します。
次に、角振動数 \(\omega\) を計算します。角振動数は「\(2\pi\) ラジアン(円運動の1周分)を、1周にかかる時間(周期 \(T\))で割ったもの」と理解すると、公式 \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を導きやすく、忘れにくくなります。計算には円周率 \(\pi\) の近似値(通常は \(3.14\))を用います。
この設問における重要なポイント
- 周期 \(T\) [\(\text{s}\)]: 1回の振動にかかる時間。
- 振動数 \(f\) [\(\text{Hz}\)]: 1秒あたりの振動回数。\(1 \, \text{Hz} = 1 \, \text{s}^{-1}\) であり、周期とは \(T=1/f\) の関係がある。
- 角振動数 \(\omega\) [\(\text{rad/s}\)]: 振動の速さを表す量。\(2\pi\) 秒で1周する等速円運動の角速度に相当し、周期 \(T\) とは \(\omega = 2\pi/T\) の関係がある。
- 関係式のまとめ: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\), \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\), \(\omega = 2\pi f\)。これらの公式は物理の様々な分野(特に波動)で繰り返し登場するため、必ず暗記し、いつでも使えるようにしておくことが重要です。
具体的な解説と立式
この問題は、公式に数値を代入することで解くことができます。
まず、振動数 \(f\) から周期 \(T\) を求めます。両者の間には以下の関係が成り立ちます。
$$ T = \displaystyle\frac{1}{f} \quad \cdots ① $$
次に、求めた周期 \(T\) を用いて角振動数 \(\omega\) を計算します。角振動数 \(\omega\) は、周期 \(T\) を使って次のように定義されます。
$$ \omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T} \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 周期と振動数の関係: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\)
- 角振動数と周期の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
与えられた振動数 \(f = 5.0 \, \text{Hz}\) を式①に代入し、周期 \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T &= \displaystyle\frac{1}{f} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{1}{5.0} \\[2.0ex]&= 0.20 \, (\text{s})
\end{aligned}
$$
次に、上で求めた周期 \(T = 0.20 \, \text{s}\) を式②に代入し、角振動数 \(\omega\) を求めます。円周率 \(\pi\) は \(3.14\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \displaystyle\frac{2\pi}{T} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{2 \times 3.14}{0.20} \\[2.0ex]&= 10 \times 3.14 \\[2.0ex]&= 31.4
\end{aligned}
$$
問題で与えられている数値の有効数字は2桁(\(5.0 \, \text{Hz}\))なので、計算結果も有効数字2桁に揃えるのが適切です。したがって、\(31.4\) を四捨五入して、\(\omega \approx 31 \, (\text{rad/s})\) となります。
- 周期 \(T\) の求め方:
「振動数 \(5.0 \, \text{Hz}\)」とは、「1秒間に \(5.0\) 回振動する」という意味です。では、「1回の振動には何秒かかるか?」を考えます。これは、\(1\) 秒を \(5.0\) 回で割れば求まります。
\(1 \div 5.0 = 0.20\) なので、周期は \(0.20 \, \text{s}\) です。 - 角振動数 \(\omega\) の求め方:
角振動数は、単振動を円運動に例えたときの「回転の速さ」です。円の1周は \(2\pi\) ラジアンです。この距離を、1周するのにかかる時間(周期 \(T = 0.20 \, \text{s}\))で割ると、速さが計算できます。
\(\omega = 2\pi \div T = 2\pi \div 0.20\)。
ここで、\(2 \div 0.20 = 10\) なので、計算は \(10 \times \pi\) と簡単になります。
\(\pi\) はおよそ \(3.14\) なので、\(10 \times 3.14 = 31.4\)。
最後に、答えの桁数を問題文(\(5.0\)で2桁)に合わせるため、四捨五入して \(31 \, \text{rad/s}\) とします。
2 単振動の振幅, 角振動数, 周期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の変位の式から、その特徴量(振幅、角振動数、周期)を読み取る」ことです。単振動の基本式と各物理量の対応関係を理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動の変位の一般式: \(x = A \sin(\omega t + \phi)\) の形を理解していること。
- 振幅 \(A\): 振動の中心からの最大変位であり、式の \(\sin\) の係数に対応すること。
- 角振動数 \(\omega\): 振動の速さ(位相の変化率)であり、式の時刻 \(t\) の係数に対応すること。
- 周期 \(T\) と角振動数 \(\omega\) の関係式: \(T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) を知っていること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 与えられた変位の式 \(x = 0.20 \sin 0.50\pi t\) を、単振動の一般式 \(x = A \sin \omega t\) と比較する。
- 式の形を見比べて、対応する係数から振幅 \(A\) と角振動数 \(\omega\) の値を直接読み取る。
- 読み取った角振動数 \(\omega\) の値を使って、関係式 \(T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) から周期 \(T\) を計算する。
思考の道筋とポイント
単振動の運動は、時刻 \(t\) における変位 \(x\) が \(x = A \sin \omega t\) や \(x = A \cos \omega t\) といった三角関数で表されます。この問題では、\(x = 0.20 \sin 0.50\pi t\) という具体的な式が与えられています。
この問題の核心は、この与えられた式と、物理で学ぶ単振動の基本式 \(x = A \sin \omega t\) を「見比べる」ことにあります。式の構造が全く同じであるため、対応する位置にある数値や記号が、それぞれ物理的な意味を持つ量(振幅 \(A\)、角振動数 \(\omega\))に対応していると判断できます。
このように、数式の形から物理量を読み取るスキルは、物理学の様々な分野で応用できる非常に重要な考え方です。
この設問における重要なポイント
- 単振動の変位の式 \(x = A \sin \omega t\): これは、時刻 \(t=0\) で振動の中心(\(x=0\))を正の向きに通過する、最も基本的な単振動を表す式です。
- 振幅 \(A\): \(\sin\) 関数の値は \(-1\) から \(+1\) の間で変化します。したがって、変位 \(x\) の最大値は \(A \times 1 = A\) となります。これが振動の幅の半分、すなわち振幅です。
- 角振動数 \(\omega\): \(\sin\) の中身である \(\omega t\) は「位相」と呼ばれ、振動のどの段階にあるかを示します。位相が \(2\pi\) 増加するごとに1回の振動が完了します。時刻 \(t\) が周期 \(T\) だけ経過すると、位相は \(\omega T\) だけ増加し、これが \(2\pi\) に等しくなるため、\(\omega T = 2\pi\) という関係が成り立ちます。
- 係数比較: 物理法則を表す2つの数式が同じ形をしている場合、対応する部分の係数は等しくなります。この問題では、この係数比較によって、直感的に振幅と角振動数を求めることができます。
具体的な解説と立式
単振動の変位を表す一般式は、振幅を \(A\)、角振動数を \(\omega\) とすると、次のように書くことができます(時刻 \(t=0\) で原点出発の場合)。
$$ x = A \sin \omega t \quad \cdots ① $$
一方、問題で与えられた単振動の式は、
$$ x = 0.20 \sin(0.50\pi t) \quad \cdots ② $$
です。
式①と式②の形を比較することで、振幅 \(A\) と角振動数 \(\omega\) を特定します。
周期 \(T\) は、角振動数 \(\omega\) と以下の関係式で結ばれています。
$$ T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \quad \cdots ③ $$
使用した物理公式
- 単振動の変位の式: \(x = A \sin \omega t\)
- 周期と角振動数の関係: \(T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\)
まず、式①と式②を比較して、振幅 \(A\) と角振動数 \(\omega\) を求めます。
\(\sin\) の前の係数を比較すると、振幅 \(A\) がわかります。
$$ A = 0.20 \, (\text{m}) $$
次に、\(\sin\) の中の時刻 \(t\) の係数を比較すると、角振動数 \(\omega\) がわかります。
$$ \omega = 0.50\pi \, (\text{rad/s}) $$
この角振動数の値を、円周率 \(\pi \approx 3.14\) を用いて小数で表すと、
$$
\begin{aligned}
\omega &= 0.50 \times 3.14 \\[2.0ex]&= 1.57
\end{aligned}
$$
問題文の数値の有効数字が2桁(\(0.20\), \(0.50\))であるため、結果も有効数字2桁に揃えます。\(1.57\) を四捨五入して、
$$ \omega \approx 1.6 \, (\text{rad/s}) $$
となります。
最後に、式③を用いて周期 \(T\) を計算します。この計算では、近似値ではなく \(\omega = 0.50\pi\) を使うと、\(\pi\) が約分されて正確に計算できます。
$$
\begin{aligned}
T &= \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{2\pi}{0.50\pi} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{2}{0.50} \\[2.0ex]&= 4.0 \, (\text{s})
\end{aligned}
$$
この問題は、パズルのように「見比べる」だけで解くことができます。
- お手本となる公式: \(x = A \sin \omega t\)
- 問題の式: \(x = 0.20 \sin 0.50\pi t\)
- 振幅 \(A\) を見つける:
公式で \(A\) がある場所に、問題の式では \(0.20\) があります。なので、振幅 \(A\) は \(0.20 \, \text{m}\) です。 - 角振動数 \(\omega\) を見つける:
公式で \(\omega\) がある場所(\(t\) の前)に、問題の式では \(0.50\pi\) があります。なので、角振動数 \(\omega\) は \(0.50\pi \, \text{rad/s}\) です。
これを小数にするには、\(\pi\) を約 \(3.14\) として計算します。\(0.50 \times 3.14 = 1.57\)。問題の数字が2桁なので、四捨五入して \(1.6 \, \text{rad/s}\) とします。 - 周期 \(T\) を計算する:
周期の公式は \(T = 2\pi / \omega\) です。今、\(\omega\) は \(0.50\pi\) だとわかったので、これを代入します。
\(T = 2\pi \div (0.50\pi)\)
分母と分子に同じ \(\pi\) があるので、約分して消せます。残るのは \(2 \div 0.50\) です。
これは \(4\) になるので、周期 \(T\) は \(4.0 \, \text{s}\) です。
3 単振動する物体の速度と加速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動における特定の位置での速度と加速度」です。振動の中心と両端という特徴的な点での物体の運動状態を、公式や物理的なイメージと結びつけて理解することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動と等速円運動の関係(正射影モデル)の理解。
- 振動の中心、振動の端点における運動状態(速度と加速度が最大になるか、ゼロになるか)の把握。
- 単振動の速度と加速度の公式、特に加速度と変位の関係式 \(a = -\omega^2 x\)。
- ベクトル量である速度と加速度の「向き」を正負の符号で正しく表現すること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 振動の中心(O)、左端(P)、右端(Q)が、それぞれ単振動のどの状態(変位、速度、加速度)に対応するかを考える。
- 各点での速度の大きさと向きを、等速円運動のモデルや「端では止まり、中心で最速」という直感的なイメージから判断する。
- 各点での加速度の大きさと向きを、「加速度は常に中心を向き、変位に比例する」という復元力の性質や、公式 \(a = -\omega^2 x\) から判断する。
思考の道筋とポイント
単振動する物体の速度と加速度は、物体の位置によって刻々と変化します。この問題では、その変化の中でも特に重要な3つの点、すなわち振動の中心(O)と両端(P, Q)に注目します。
これらの点での速度と加速度を理解するには、2つの有効な考え方があります。
一つは、ブランコやバネ付きおもりの運動を頭に思い浮かべる直感的なアプローチです。運動の折り返し点である「端」では一瞬停止し(速度0)、最も勢いがつく「中心」で最速になる、というイメージは物理的にも正しいです。また、物体を振動の中心に引き戻そうとする「復元力」が加速度を生むため、加速度の向きは常に中心を向いている、と考えることができます。
もう一つは、単振動を「等速円運動の正射影(真横から光を当てた影の動き)」と見なすモデルです。この考え方を用いると、円運動の速度や加速度のベクトルを射影することで、単振動の速度と加速度を数学的に、かつ視覚的に導出できます。物理の理解を深める上で非常に強力なツールです。
この設問における重要なポイント
- 振動の端点(点P, Q):
- 運動の向きが切り替わる「折り返し点」です。
- 一瞬だけ静止するため、速度 \(v\) は 0 になります。
- 変位の大きさが最大(\(|x| = A\))になります。
- 中心からの距離が最大なので、中心に戻そうとする復元力も最大になります。したがって、加速度の大きさも最大値 \(A\omega^2\) をとります。加速度の向きは常に振動の中心を向きます。
- 振動の中心(点O):
- 物体が最も速く通過する点です。
- 速度の大きさが最大値 \(v_{\text{最大}} = A\omega\) をとります。
- 変位が 0 (\(x=0\)) の点です。
- 復元力が働かない(つりあいの位置)ため、加速度 \(a\) も 0 になります。
- 加速度の最重要公式: \(a = -\omega^2 x\)
- この式は、加速度 \(a\) が変位 \(x\) に比例し、向きが常に \(x\) と逆向き(中心向き)であることを示しています。マイナス符号が「中心向き」を意味します。
具体的な解説と立式
この問題は、単振動を「半径 \(A\)、角速度 \(\omega\) の等速円運動の正射影」として考えると非常に明快に理解できます。右向きを正とします。
- 点O(振動の中心, \(x=0\))について
- 速度 (②): 対応する円運動では、物体は円周の真上または真下を通過します。このとき、円運動の速度ベクトル(大きさ \(A\omega\))は完全に水平方向を向くため、射影された速度は最大値をとります。速さはその大きさなので、\(v = A\omega\)。
- 加速度 (⑤): 円運動の加速度は常に円の中心を向いています。物体が円周の真上や真下にあるとき、加速度ベクトルは鉛直方向を向きます。これを水平なx軸に射影すると0になるため、加速度は \(a=0\)。
- 点Q(右端, \(x=+A\))について
- 速度 (③): 対応する円運動では、物体は円周の右端に位置します。このとき、速度ベクトルは鉛直方向を向くため、水平なx軸に射影すると0になります。したがって、速度は \(v=0\)。
- 加速度 (⑥): 物体が円周の右端にあるとき、円の中心を向く加速度ベクトルは、水平左向き(負の向き)を向きます。大きさは円運動の加速度の大きさ \(A\omega^2\) に等しいため、加速度は \(a = -A\omega^2\)。
- 点P(左端, \(x=-A\))について
- 速度 (①): 点Qと同様に、対応する円運動の物体は円周の左端にあり、速度ベクトルは鉛直方向を向きます。x軸への射影は0なので、速度は \(v=0\)。
- 加速度 (④): 物体が円周の左端にあるとき、円の中心を向く加速度ベクトルは、水平右向き(正の向き)を向きます。大きさは \(A\omega^2\) なので、加速度は \(a = +A\omega^2\)。
また、加速度は公式 \(a = -\omega^2 x\) を使うとより直接的に求められます。
- 点P (\(x=-A\)): \(a = -\omega^2(-A) = A\omega^2\)
- 点O (\(x=0\)): \(a = -\omega^2(0) = 0\)
- 点Q (\(x=+A\)): \(a = -\omega^2(+A) = -A\omega^2\)
使用した物理公式
- 単振動の速度の最大値: \(v_{\text{最大}} = A\omega\) (振動中心にて)
- 単振動の加速度と変位の関係: \(a = -\omega^2 x\)
- 等速円運動の速さ: \(v = r\omega\) (この問題では半径 \(r\) が振幅 \(A\) に対応)
- 等速円運動の加速度の大きさ: \(a = r\omega^2\) (同様に \(r=A\))
この問題は公式や物理概念の適用が中心で、数値計算はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた考察がそのまま解答プロセスとなります。
- ① 点Pの速さ: 振動の端点なので \(0 \, \text{m/s}\)。
- ② 点Oの速さ: 振動の中心で速さは最大となるので \(A\omega \, \text{m/s}\)。
- ③ 点Qの速さ: 振動の端点なので \(0 \, \text{m/s}\)。
- ④ 点Pの加速度: 変位 \(x=-A\)。\(a = -\omega^2 x = -\omega^2(-A) = A\omega^2 \, \text{m/s}^2\)。
- ⑤ 点Oの加速度: 変位 \(x=0\)。\(a = -\omega^2 x = -\omega^2(0) = 0 \, \text{m/s}^2\)。
- ⑥ 点Qの加速度: 変位 \(x=+A\)。\(a = -\omega^2 x = -\omega^2(A) = -A\omega^2 \, \text{m/s}^2\)。
公園のブランコをイメージすると、この問題はとても分かりやすくなります。
- 速度(スピード)について
- ①, ③ 端っこ(点P, Q): ブランコが一番高い位置に来たとき、一瞬止まってから反対方向に動き出しますね。だから、端っこでの速度は \(0\) です。
- ② 真ん中(点O): ブランコが一番低いところを通過するときが、一番スピードが出ています。このときの最大の速さが \(A\omega\) です。
- 加速度(どちら向きに力がかかっているか)について
- 加速度は「常にブランコの真ん中に引き戻そうとする力」の向きと大きさを表します。
- ⑤ 真ん中(点O): 真ん中を通り過ぎる瞬間は、左右への引き戻す力はかかっていません。なので、加速度は \(0\) です。
- ⑥ 右端(点Q): 一番右にいるとき、真ん中(左向き)へ戻ろうとする力が最も強くなります。左向きは負の向きなので、加速度は負で最大、つまり \(-A\omega^2\) となります。
- ④ 左端(点P): 一番左にいるとき、真ん中(右向き)へ戻ろうとする力が最も強くなります。右向きは正の向きなので、加速度は正で最大、つまり \(A\omega^2\) となります。
4 単振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の周期と移動時間の関係」です。周期の定義を正しく理解し、振動の各区間に要する時間を計算することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 周期 \(T\) の定義: 物体が1回振動して元の状態に戻る(1往復する)のにかかる時間。
- 単振動の運動の対称性: 振動の中心に対して、運動は左右対称です。
- 振動の基本区間と所要時間: 振動の「端から中心まで」と「中心から端まで」の移動には、それぞれ周期の \(1/4\) の時間がかかること。
- 等速円運動の正射影モデル: 単振動を円運動の影として捉えると、各区間の移動が円周上のどのくらいの角度の回転に対応するかが視覚的にわかります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 単振動の1往復の動き(例: A→B→A)を、4つの基本的な区間(A→O, O→B, B→O, O→A)に分割して考える。
- 1往復にかかる時間が周期 \(T\) であることから、各基本区間にかかる時間が \(T/4\) であることを確認する。
- 設問で問われている移動区間(A→B, B→O)が、周期 \(T\) の何倍にあたるかを計算し、具体的な時間を求める。
問(1) AからBに達するまでの時間を求めよ。
思考の道筋とポイント
この設問では、振動の一方の端(点A)からもう一方の端(点B)までの移動時間を問われています。これは単振動の「片道」の運動に相当します。
周期 \(T\) は「1往復」にかかる時間です。したがって、片道にかかる時間は、単純に往復の時間の半分になると考えられます。この関係を正しく適用することがポイントです。
運動を分解すると、A→O(中心へ)と O→B(中心から端へ)の2つのステップから成り立っていることも確認しておくと、次の設問への理解が深まります。
この設問における重要なポイント
- 周期 \(T\): 1往復(A→B→A)にかかる時間。
- 片道(A→B): 1往復の半分の運動です。したがって、所要時間も周期のちょうど半分になります。
- 運動の分解: A→Bの運動は、A→OとO→Bという2つの部分から構成されます。単振動の対称性から、この2つの部分にかかる時間は等しくなります。
具体的な解説と立式
単振動の1往復の運動は、例えば点Aから出発した場合、A → O → B → O → A という経路をたどります。この全行程にかかる時間が周期 \(T\) です。
設問で問われている「AからBに達するまで」の運動は、この行程の前半部分(A → O → B)にあたります。これは1往復のちょうど半分の道のりです。
したがって、AからBに達するまでの時間 \(t_{A \rightarrow B}\) は、周期 \(T\) の \(1/2\) となります。
$$ t_{A \rightarrow B} = \displaystyle\frac{T}{2} $$
使用した物理公式
- 周期の定義
- 単振動の片道にかかる時間: \(t_{\text{片道}} = \displaystyle\frac{T}{2}\)
問題文より、周期 \(T = 6.0 \, \text{s}\) なので、これを式に代入します。
$$
\begin{aligned}
t_{A \rightarrow B} &= \displaystyle\frac{6.0}{2} \\[2.0ex]&= 3.0 \, (\text{s})
\end{aligned}
$$
「周期が \(6.0\) 秒」というのは、「行って帰ってくる(1往復する)のに \(6.0\) 秒かかる」という意味です。
設問(1)で聞かれているのは、AからBまで「行くだけ(片道)」の時間です。
往復の半分の動きなので、かかる時間も当然半分になります。
したがって、\(6.0\) 秒の半分である \(3.0\) 秒が答えです。
問(2) BからOに達するまでの時間を求めよ。
思考の道筋とポイント
この設問では、振動の端(点B)から中心(点O)までの移動時間を問われています。
問(1)で考えたように、片道(A→B)の運動は、A→O と O→B の2つの部分に分けられます。単振動は対称的な運動なので、A→Oにかかる時間とO→Bにかかる時間は同じです。同様に、B→Oにかかる時間もこれらと等しくなります。
つまり、1往復の運動は、A→O, O→B, B→O, O→A の4つの、同じ時間がかかるパートに分割できると考えるのがポイントです。
この設問における重要なポイント
- 1往復の4分割: 1往復の運動(時間 \(T\))は、(1)端→中心, (2)中心→端, (3)端→中心, (4)中心→端、という4つの等しい時間のステップに分解できます。
- 各区間の所要時間: 上記の各ステップにかかる時間は、すべて周期の \(1/4\) となります。
\(t_{A \rightarrow O} = t_{O \rightarrow B} = t_{B \rightarrow O} = t_{O \rightarrow A} = \displaystyle\frac{T}{4}\) - 等速円運動との対応: この \(T/4\) という時間は、単振動のモデルとなる等速円運動が \(90^\circ\)(\(\pi/2\) ラジアン)回転する時間に対応します。
具体的な解説と立式
単振動の1往復の運動は、4つの基本的な区間(端→中心、中心→端、端→中心、中心→端)から構成されています。
1往復にかかる時間が周期 \(T\) であり、運動の対称性からこれら4つの区間の移動にかかる時間はすべて等しくなります。
したがって、1つの区間(例えばB→O)にかかる時間 \(t_{B \rightarrow O}\) は、周期 \(T\) の \(1/4\) となります。
$$ t_{B \rightarrow O} = \displaystyle\frac{T}{4} $$
使用した物理公式
- 周期の定義
- 単振動の端から中心(または中心から端)までにかかる時間: \(t_{\text{端} \leftrightarrow \text{中心}} = \displaystyle\frac{T}{4}\)
問題文より、周期 \(T = 6.0 \, \text{s}\) なので、これを式に代入します。
$$
\begin{aligned}
t_{B \rightarrow O} &= \displaystyle\frac{6.0}{4} \\[2.0ex]&= 1.5 \, (\text{s})
\end{aligned}
$$
1往復(\(6.0\) 秒)の動きを、4つのパーツに分けてみましょう。
- Aから真ん中のOまで行く
- OからBまで行く
- Bから真ん中のOまで戻る
- OからAまで戻る
この4つの動きは、すべて同じ時間がかかります。
したがって、1往復の時間(\(6.0\) 秒)を4で割れば、1つのパーツあたりの時間がわかります。
\(6.0 \div 4 = 1.5\) 秒。
設問(2)で聞かれているのは、3番目の「BからOまで戻る」時間なので、答えは \(1.5\) 秒です。
5 単振動する物体の受ける力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の復元力の性質」です。物体を振動させる力の向きと大きさが、物体の位置(変位)とどう関係しているかを理解することが核心となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 復元力の定義: 物体を常に振動の中心に戻そうとする力。
- 復元力の向き: 常に振動の中心(つりあいの位置)を向く。
- 復元力の大きさ: 振動の中心からの変位の大きさに比例する。
- 復元力の公式: \(F = -kx\) (\(k\) は比例定数、\(x\) は変位)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 復元力の「向き」の性質から、点Bで物体が受ける力の向きを決定する。
- 復元力の「大きさ」が変位の大きさに比例することを利用し、点Aでの力の大きさと変位の大きさから、点Bでの力の大きさを比例計算で求める。
思考の道筋とポイント
単振動を引き起こす力の正体は「復元力」と呼ばれます。ばねが物体を引いたり押したりする力がその典型例です。この復元力には、非常にシンプルで重要な2つの性質があります。
- 力の向きは、常に振動の中心を向く。
- 力の大きさは、振動の中心からの距離(変位の大きさ)に比例する。
この問題は、この2つの性質を正しく理解し、適用できるかを試すものです。
まず、力の「向き」を考えます。点Bは振動の中心Oの右側にあります。復元力は常に中心Oを向くので、点Bでは物体は中心方向、すなわち「左向き」に力を受けるはずです。
次に、力の「大きさ」を考えます。力の大きさは中心からの距離に比例します。問題では、点A(中心からの距離 \(0.40 \, \text{m}\))での力の大きさが \(4.0 \, \text{N}\) であると与えられています。求めたいのは点B(中心からの距離 \(0.20 \, \text{m}\))での力の大きさです。中心からの距離が \(0.40 \, \text{m}\) から \(0.20 \, \text{m}\) へとちょうど半分になっているので、力の大きさも比例して半分になる、と推測できます。
この設問における重要なポイント
- 復元力: 単振動の力の源。物体の位置が \(x\) のとき、\(F=-kx\) と表される。ばねの弾性力などがその代表例。
- 復元力の公式 \(F = -kx\):
- \(F\): 復元力 [\(\text{N}\)]
- \(x\): 振動中心からの変位 [\(\text{m}\)](向きも含むベクトル量)
- \(k\): 比例定数(ばね定数に相当)[\(\text{N/m}\)]。この値が大きいほど、同じ変位でも大きな復元力が働く(硬いばねのようなイメージ)。
- マイナス符号: 力 \(F\) の向きが、変位 \(x\) の向きと常に逆であることを示しています。物体が右(\(x>0\))にいれば力は左(\(F<0\))に、物体が左(\(x<0\))にいれば力は右(\(F>0\))に働きます。これが「中心向き」ということです。
- 力の大きさと変位の大きさの関係: 上の公式の絶対値をとると、\(|F| = k|x|\) となります。これは、力の大きさ \(|F|\) が変位の大きさ \(|x|\) に正比例することを意味します。
具体的な解説と立式
座標軸は図の通り、右向きを正とします。振動の中心はO点(\(x=0\))です。
1. 力の向きの決定
点Bの位置は \(x_B = +0.20 \, \text{m}\) で、中心Oの右側(正の方向)にあります。
復元力は常に振動の中心Oを向くため、点Bで物体が受ける力は左向き(負の方向)となります。
2. 力の大きさの決定
復元力の大きさ \(F\) は、変位の大きさ \(|x|\) に比例します。
点Aでの力の大きさを \(F_A\)、変位の大きさを \(|x_A|\) とします。
点Bでの力の大きさを \(F_B\)、変位の大きさを \(|x_B|\) とします。
比例関係から、次の式が成り立ちます。
$$ F_A : F_B = |x_A| : |x_B| $$
この式を \(F_B\) について解くと、
$$ F_B = F_A \times \displaystyle\frac{|x_B|}{|x_A|} \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 復元力の性質: 向きは常に中心向き、大きさは変位の大きさに比例。
- 比例式: \(F_A : F_B = |x_A| : |x_B|\)
問題文から与えられた値を整理します。
- 点A: 変位 \(x_A = -0.40 \, \text{m}\)。力の大きさ \(F_A = 4.0 \, \text{N}\)。
- 点B: 変位 \(x_B = +0.20 \, \text{m}\)。
これらの値を式①に代入して、点Bでの力の大きさ \(F_B\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F_B &= 4.0 \times \displaystyle\frac{|+0.20|}{|-0.40|} \\[2.0ex]&= 4.0 \times \displaystyle\frac{0.20}{0.40} \\[2.0ex]&= 4.0 \times \displaystyle\frac{1}{2} \\[2.0ex]&= 2.0 \, (\text{N})
\end{aligned}
$$
したがって、点Bで物体が受ける力は、向きが「左向き」で、大きさが「\(2.0 \, \text{N}\)」となります。
- 向きの考え方:
単振動の力は、いつも「真ん中に戻れ!」という向きに働きます。点Bは真ん中(O)の右側にあります。なので、力は真ん中に向かう「左向き」に働きます。 - 大きさの考え方:
この「戻れ!」という力は、真ん中から遠ければ遠いほど強くなります(ゴムひもをより強く引っ張るのと同じです)。- 点Aは、真ん中から \(0.40 \, \text{m}\) の距離で、力の大きさは \(4.0 \, \text{N}\) でした。
- 点Bは、真ん中から \(0.20 \, \text{m}\) の距離です。
- 距離が \(0.40 \, \text{m} \rightarrow 0.20 \, \text{m}\) とちょうど半分になっているので、力の大きさも比例して半分になります。
- \(4.0 \, \text{N} \div 2 = 2.0 \, \text{N}\)。だから、力の大きさは \(2.0 \, \text{N}\) です。
思考の道筋とポイント
復元力の公式 \(F=-kx\) を直接利用して解くこともできます。このアプローチでは、まず点Aの情報を使って、この単振動の「硬さ」を表す比例定数 \(k\) を求めます。次に、その \(k\) の値を使って点Bでの力を計算します。この方法の利点は、力の向きが計算結果の符号(プラスかマイナスか)として自動的に求まることです。
具体的な解説と立式
復元力の公式は \(F = -kx\) です。座標軸は右向きを正とします。
まず、点Aの情報から比例定数 \(k\) を求めます。
点Aでは、変位が \(x_A = -0.40 \, \text{m}\) のとき、力は「右向きに \(4.0 \, \text{N}\)」なので、\(F_A = +4.0 \, \text{N}\) となります。これらを公式に代入します。
$$ +4.0 = -k \times (-0.40) \quad \cdots ② $$
次に、この \(k\) を使って点Bでの力 \(F_B\) を求めます。点Bの変位は \(x_B = +0.20 \, \text{m}\) です。
$$ F_B = -k \times (+0.20) \quad \cdots ③ $$
計算過程
式②から比例定数 \(k\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
+4.0 &= k \times 0.40 \\[2.0ex]k &= \displaystyle\frac{4.0}{0.40} \\[2.0ex]k &= 10 \, (\text{N/m})
\end{aligned}
$$
求めた \(k=10 \, \text{N/m}\) を式③に代入して、点Bでの力 \(F_B\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F_B &= -10 \times (+0.20) \\[2.0ex]&= -2.0 \, (\text{N})
\end{aligned}
$$
計算結果 \(F_B = -2.0 \, \text{N}\) は、力が「負の向き(左向き)」で、その大きさが「\(2.0 \, \text{N}\)」であることを示しています。
計算方法の平易な説明
この単振動の「バネの硬さ(のようなもの)」をまず計算します。
点Aでは、\(0.40 \, \text{m}\) の変位で \(4.0 \, \text{N}\) の力が働いているので、この振動の硬さ \(k\) は \(4.0 \div 0.40 = 10\) と計算できます。
次に、この硬さを使って点Bでの力を計算します。点Bは変位が \(+0.20 \, \text{m}\) です。
力の公式「力 = – (硬さ) × (変位)」に当てはめると、
力 = \(-10 \times (+0.20) = -2.0 \, \text{N}\)。
この「-2.0」という答えの「マイナス」が「左向き」を、「2.0」が「力の大きさ」を表しています。
6 ばね振り子
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ばね振り子の周期が何によって決まるか」です。ばね振り子の周期の公式を理解し、質量や振幅といった条件が変化したときに、周期がどのように変わるかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ばね振り子の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) を覚えていること。
- 周期と質量の関係: 周期は質量の平方根に比例すること。
- 周期とばね定数の関係: 周期はばね定数の平方根に反比例すること。
- 周期の等時性: ばね振り子の周期は、振幅の大きさによらないという重要な性質。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- ばね振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) を書き出す。
- 設問(1)では、公式の質量 \(m\) を \(2m\) に置き換えたとき、周期 \(T\) がもとの何倍になるかを計算する。
- 設問(2)では、公式に振幅 \(A\) が含まれているかを確認し、周期への影響を判断する。
問(1) おもりの質量を2倍にする。
思考の道筋とポイント
ばね振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) を見て、周期 \(T\) がどの物理量と関係しているかを確認します。この式から、周期 \(T\) はおもりの質量 \(m\) とばね定数 \(k\) だけで決まることがわかります。
特に質量 \(m\) との関係に注目すると、周期 \(T\) は質量 \(m\) の平方根 \(\sqrt{m}\) に比例していることが読み取れます。
したがって、質量 \(m\) が2倍になれば、周期 \(T\) は \(\sqrt{2}\) 倍になると考えられます。
物理的なイメージとしては、「おもりが重い(質量が大きい)ほど、その場にとどまろうとする性質(慣性)が強く、動きがゆっくりになるため、1往復にかかる時間(周期)は長くなる」と理解すると良いでしょう。
この設問における重要なポイント
- 周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\)
- 周期と質量の関係: \(T \propto \sqrt{m}\) (周期は質量の平方根に比例します)
- 慣性との関連: 質量は物体の「動かしにくさ」や「止めにくさ」を表す量です。質量が大きいほど慣性が大きく、振動のペースがゆっくりになるため、周期は長くなります。
具体的な解説と立式
もとのばね振り子の質量を \(m\)、ばね定数を \(k\) とすると、その周期 \(T\) は以下の式で与えられます。
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}} \quad \cdots ① $$
次に、おもりの質量を2倍にしたときの新しい周期を \(T’\) とします。新しい質量は \(m’ = 2m\) です。このときの周期 \(T’\) は、
$$ T’ = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m’}{k}} = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{2m}{k}} \quad \cdots ② $$
新しい周期 \(T’\) がもとの周期 \(T\) の何倍になるかを調べるため、②式と①式の比をとります。
使用した物理公式
- ばね振り子の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\)
式②を式①で割ると、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{T’}{T} &= \displaystyle\frac{2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{2m}{k}}}{2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}} \\[2.0ex]&= \sqrt{\displaystyle\frac{\frac{2m}{k}}{\frac{m}{k}}} \\[2.0ex]&= \sqrt{2}
\end{aligned}
$$
したがって、\(T’ = \sqrt{2} T\) となり、周期はもとの \(\sqrt{2}\) 倍になります。
ばね振り子の周期の公式は \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) です。
この式のどこに質量 \(m\) があるかを見ると、ルート( \(\sqrt{\phantom{h}}\) )の中にありますね。
なので、周期 \(T\) は「質量の平方根」に比例します。
もし質量 \(m\) を2倍にしたら、周期は \(\sqrt{2}\) 倍になります。もし質量を3倍にしたら、周期は \(\sqrt{3}\) 倍になります。
今回は質量を2倍にするので、周期は \(\sqrt{2}\) 倍になります。
問(2) 振幅を2倍にする。
思考の道筋とポイント
再び、ばね振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) を確認します。この公式を構成している物理量は、おもりの質量 \(m\) とばね定数 \(k\) のみです。
公式の中に、振動の幅である「振幅 \(A\)」という文字が含まれていないことに注目します。これは、ばね振り子の周期が振幅の大きさには依存しないことを意味しています。この重要な性質を「周期の等時性」と呼びます。
直感的には、「振幅が大きくなる(より遠くまで動く)と、その分だけ復元力も大きくなって速く動くため、結果的に1往復にかかる時間は変わらない」と理解することができます。
この設問における重要なポイント
- 周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) には、振幅 \(A\) が含まれていません。
- 周期の等時性: 単振動(ばね振り子や単振り子など)の周期は、振幅が大きすぎない範囲では、振幅の大きさによらないという性質があります。
- 周期を決める要因: ばね振り子の周期は、おもりの「慣性(質量 \(m\))」と、ばねの「復元力の強さ(ばね定数 \(k\))」のバランスだけで決まります。
具体的な解説と立式
ばね振り子の周期の公式は、
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}} $$
です。この式には、振幅 \(A\) を表す項が含まれていません。
したがって、振幅が変化しても、質量 \(m\) とばね定数 \(k\) が一定であれば、周期 \(T\) は変化しません。
変化後の周期を \(T’\) とすると、\(T’ = T\) となります。
よって、周期はもとの1倍(つまり、変わらない)です。
使用した物理公式
- ばね振り子の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\)
この設問は、公式の理解を問うものであり、計算過程はありません。周期の公式に振幅 \(A\) が含まれていないことを確認し、「周期は振幅によらない」と結論づけることが解答プロセスとなります。
周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) をもう一度見てみましょう。この式には、振幅 \(A\) という文字がどこにも入っていません。
これは、「周期を計算するときに、振幅の値は使いませんよ」ということを意味します。
つまり、振幅を2倍にしようが、半分にしようが、周期には全く影響がないのです。
したがって、周期は変わらず、もとの「1倍」のままです。
7 単振り子
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振り子の周期が何によって決まるか」です。単振り子の周期の公式を理解し、質量や糸の長さといった条件が変化したときに、周期がどのように変わるかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振り子の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を覚えていること。
- 周期と糸の長さの関係: 周期は糸の長さの平方根に比例すること。
- 周期と重力加速度の関係: 周期は重力加速度の平方根に反比例すること。
- 単振り子の周期の等時性: 周期は、おもりの質量や振幅(振れ幅が小さい場合)によらないという重要な性質。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 単振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を書き出す。
- 設問(1)では、公式におもりの質量 \(m\) が含まれているかを確認し、周期への影響を判断する。
- 設問(2)では、公式の糸の長さ \(l\) を \(2l\) に置き換えたとき、周期 \(T\) がもとの何倍になるかを計算する。
問(1) おもりの質量を2倍にする。
思考の道筋とポイント
単振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を見て、周期 \(T\) がどの物理量と関係しているかを確認します。この式から、周期 \(T\) は糸の長さ \(l\) とその場所の重力加速度 \(g\) だけで決まることがわかります。
公式の中に、おもりの質量 \(m\) という文字が含まれていないことに注目します。これは、単振り子の周期がおもりの質量には依存しないことを意味しています。
物理的なイメージとしては、重いおもりには大きな重力が働く一方で、その分慣性(動きにくさ)も大きくなるため、両者の効果が打ち消し合い、結果として振れる速さは変わらない、と理解することができます。
この設問における重要なポイント
- 周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) には、質量 \(m\) が含まれていません。
- 周期の等時性(質量): 単振り子の周期は、おもりの質量によらないという性質があります。
- ばね振り子との比較: ばね振り子の周期 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{k}}\) は質量 \(m\) に依存します。単振り子とばね振り子で、周期の式に含まれる物理量が異なる点を明確に区別しておくことが重要です。
具体的な解説と立式
単振り子の周期の公式は、
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}} $$
です。この式には、おもりの質量 \(m\) を表す項が含まれていません。
したがって、おもりの質量が変化しても、糸の長さ \(l\) と重力加速度 \(g\) が一定であれば、周期 \(T\) は変化しません。
変化後の周期を \(T’\) とすると、\(T’ = T\) となります。
よって、周期はもとの1倍(つまり、変わらない)です。
使用した物理公式
- 単振り子の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\)
この設問は、公式の理解を問うものであり、計算過程はありません。周期の公式に質量 \(m\) が含まれていないことを確認し、「周期は質量によらない」と結論づけることが解答プロセスとなります。
周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を見てみましょう。この式には、質量 \(m\) という文字がどこにも入っていません。
これは、「周期を計算するときに、おもりの重さは使いませんよ」ということを意味します。
つまり、おもりを2倍重くしようが、半分にしようが、周期には全く影響がないのです。
公園のブランコで、大人の人が乗っても子供が乗っても、1往復にかかる時間はほとんど変わらないのと同じです。
したがって、周期は変わらず、もとの「1倍」のままです。
問(2) 糸の長さを2倍にする。
思考の道筋とポイント
再び、単振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を確認します。
周期 \(T\) と糸の長さ \(l\) の関係に注目すると、周期 \(T\) は糸の長さ \(l\) の平方根 \(\sqrt{l}\) に比例していることが読み取れます。
したがって、糸の長さ \(l\) が2倍になれば、周期 \(T\) は \(\sqrt{2}\) 倍になると考えられます。
物理的なイメージとしては、「糸が長いほど、おもりは大きな円弧を描いてゆっくりと振れるため、1往復にかかる時間(周期)は長くなる」と理解すると良いでしょう。
この設問における重要なポイント
- 周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\)
- 周期と糸の長さの関係: \(T \propto \sqrt{l}\) (周期は糸の長さの平方根に比例します)
- 周期と重力加速度の関係: \(T \propto \displaystyle\frac{1}{\sqrt{g}}\) (周期は重力加速度の平方根に反比例します)。月面など重力が小さい場所では、同じ長さの振り子でも周期は長くなります。
具体的な解説と立式
もとの単振り子の糸の長さを \(l\)、重力加速度を \(g\) とすると、その周期 \(T\) は以下の式で与えられます。
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}} \quad \cdots ① $$
次に、糸の長さを2倍にしたときの新しい周期を \(T’\) とします。新しい長さは \(l’ = 2l\) です。このときの周期 \(T’\) は、
$$ T’ = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l’}{g}} = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{2l}{g}} \quad \cdots ② $$
新しい周期 \(T’\) がもとの周期 \(T\) の何倍になるかを調べるため、②式と①式の比をとります。
使用した物理公式
- 単振り子の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\)
式②を式①で割ると、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{T’}{T} &= \displaystyle\frac{2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{2l}{g}}}{2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}} \\[2.0ex]&= \sqrt{\displaystyle\frac{\frac{2l}{g}}{\frac{l}{g}}} \\[2.0ex]&= \sqrt{2}
\end{aligned}
$$
したがって、\(T’ = \sqrt{2} T\) となり、周期はもとの \(\sqrt{2}\) 倍になります。
単振り子の周期の公式は \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) です。
この式のどこに糸の長さ \(l\) があるかを見ると、ルート( \(\sqrt{\phantom{h}}\) )の中にあります。
なので、周期 \(T\) は「糸の長さの平方根」に比例します。
もし糸の長さを2倍にしたら、周期は \(\sqrt{2}\) 倍になります。もし長さを9倍にしたら、周期は \(\sqrt{9}=3\) 倍になります。
今回は長さを2倍にするので、周期は \(\sqrt{2}\) 倍になります。
8 単振り子の周期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振り子の周期の公式を用いた具体的な計算」です。公式に数値を代入するだけでなく、平方根の計算を工夫するテクニックが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振り子の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を正確に覚えていること。
- 与えられた数値を公式に正しく代入できること。
- 平方根の中の小数の計算を、分数に直して簡単にする計算技術。
- 円周率 \(\pi\) の近似値(通常は \(3.14\))を用いて最終的な値を計算し、有効数字を考慮して処理すること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 単振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) を書き出す。
- 問題文で与えられた糸の長さ \(l=1.8 \, \text{m}\) と重力加速度 \(g=9.8 \, \text{m/s}^2\) を公式に代入する。
- ルートの中の分数を、分母・分子を10倍して整数にし、約分することで計算しやすい形に変形する。
- 平方根を計算し、\(\pi \approx 3.14\) を用いて最終的な値を求め、有効数字2桁に丸める。
思考の道筋とポイント
この問題は、単振り子の周期を求めるための基本的な計算問題です。公式 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\) に与えられた数値を代入すれば解くことができますが、計算の工夫が求められます。
ルートの中が \(\sqrt{\displaystyle\frac{1.8}{9.8}}\) となり、このまま小数で計算しようとすると電卓なしでは困難です。
このような場合、ルートの中を分数とみなし、分母と分子をそれぞれ10倍して \(\displaystyle\frac{18}{98}\) と整数に直すのが定石です。さらに、この分数を約分すると \(\displaystyle\frac{9}{49}\) となり、\(\sqrt{9}=3\)、\(\sqrt{49}=7\) であることから、平方根がきれいに外せることに気づくのが最大のポイントです。
この計算テクニックは、物理の様々な計算問題で役立ちます。
この設問における重要なポイント
- 単振り子の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\)。この公式は必ず暗記しましょう。
- 周期を決める要因: 周期は糸の長さ \(l\) と重力加速度 \(g\) のみで決まります。おもりの質量や振幅にはよりません。
- 計算の工夫: ルートの中に小数を含む分数が現れたら、まず整数比の分数に直し、約分できないか試みることが重要です。多くの場合、平方根が外せるきれいな数になります。
- 有効数字: 問題文で与えられた数値(\(1.8\), \(9.8\))は2桁です。したがって、最終的な計算結果も有効数字2桁に揃えるのが物理の計算におけるルールです。
具体的な解説と立式
単振り子の周期 \(T\) は、糸の長さを \(l\)、重力加速度の大きさを \(g\) とすると、以下の公式で与えられます。
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}} \quad \cdots ① $$
この問題では、\(l = 1.8 \, \text{m}\)、\(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\) が与えられているので、これらの値を式①に代入して周期 \(T\) を計算します。
使用した物理公式
- 単振り子の周期: \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l}{g}}\)
与えられた値を式①に代入します。
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{1.8}{9.8}} $$
ルートの中の分数の分母・分子を10倍して、整数にします。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{1.8 \times 10}{9.8 \times 10}} \\[2.0ex]&= 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{18}{98}}
\end{aligned}
$$
次に、分数を約分します(分母・分子を2で割る)。
$$ T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{9}{49}} $$
平方根を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \times \displaystyle\frac{\sqrt{9}}{\sqrt{49}} \\[2.0ex]&= 2\pi \times \displaystyle\frac{3}{7} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{6\pi}{7}
\end{aligned}
$$
最後に、円周率 \(\pi \approx 3.14\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
T &\approx \displaystyle\frac{6 \times 3.14}{7} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{18.84}{7} \\[2.0ex]&\approx 2.691…
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、小数第2位を四捨五入して、
$$ T \approx 2.7 \, (\text{s}) $$
となります。
- 公式を準備: まず、単振り子の周期を計算する公式 \(T = 2\pi\sqrt{l \div g}\) を使います。
- 数値を代入: 問題文から \(l=1.8\)、\(g=9.8\) を代入します。すると、\(T = 2\pi\sqrt{1.8 \div 9.8}\) となります。
- 計算の工夫: ルートの中の \(1.8 \div 9.8\) は、分数で考えると \(\displaystyle\frac{1.8}{9.8}\) です。このままだと計算が大変なので、分母と分子を10倍して \(\displaystyle\frac{18}{98}\) にします。これなら小数がなくて見やすいですね。
- 約分して簡単にする: \(\displaystyle\frac{18}{98}\) は、両方とも2で割れるので、約分すると \(\displaystyle\frac{9}{49}\) になります。
- ルートを外す: \(\sqrt{\displaystyle\frac{9}{49}}\) は、\(\sqrt{9}=3\) と \(\sqrt{49}=7\) を使って、\(\displaystyle\frac{3}{7}\) と簡単にできます。
- 最後の計算: これで、計算は \(T = 2\pi \times \displaystyle\frac{3}{7}\) となりました。\(\pi\) をおよそ \(3.14\) として計算すると、\(2 \times 3.14 \times 3 \div 7\) は約 \(2.7\) になります。
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