「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第6章】基本問題112~124

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基本問題

112 仕事

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「曲面上を運動する物体に対する仕事の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 仕事の定義 (\(W=Fs\cos\theta\)) と、力が仕事をしない条件 (\(\theta=90^\circ\))
  2. 保存力(重力)がする仕事と位置エネルギーの関係 (\(W_{\text{重力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}}\))
  3. 垂直抗力の性質(常に面に垂直にはたらく)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 面が及ぼす力(垂直抗力)がする仕事 \(W_1\) は、垂直抗力の向きと小球の運動方向が常に垂直であることを利用して求めます。
  2. 重力がする仕事 \(W_2\) は、重力が保存力であることを利用し、始点Aと終点Bの位置エネルギーの差から求めます。

思考の道筋とポイント
小球にはたらく力は「重力」と「面からの垂直抗力」の2つです。問題は、この2つの力がそれぞれ小球にする仕事を求めることを要求しています。
まず、面が及ぼす力(垂直抗力)について考えます。この力は、常に面に垂直な向きにはたらきます。一方、小球は面に沿って運動するため、その運動方向は各点での接線方向です。面の法線と接線は常に垂直なので、垂直抗力の向きと運動の向きは常に垂直になります。したがって、垂直抗力がする仕事は0です。
次に、重力がする仕事について考えます。重力は「保存力」であり、その仕事は物体がどのような経路(曲面の形)をたどったかによらず、始点と終点の高さの差だけで決まります。この性質を利用すると、重力がする仕事は「位置エネルギーの差」として簡単に計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 力が仕事をしない条件:力の向きと運動の向きが常に垂直である場合、その力がする仕事は0である。
  • なめらかな面が及ぼす垂直抗力は、常に物体の運動方向と垂直にはたらく。
  • 保存力がする仕事:重力がする仕事は、経路によらず、始点と終点の位置エネルギーの差に等しい。(\(W_{\text{重力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}}\))

具体的な解説と立式
1. 面が及ぼす力(垂直抗力)がする仕事 \(W_1\)
小球は曲面に沿って運動するため、各瞬間における運動方向は、その点の曲面の接線方向です。
一方、面が及ぼす力(垂直抗力)は、定義により常に面に垂直な向きにはたらきます。
曲面の接線と法線は常に垂直に交わるため、垂直抗力の向きと小球の運動方向のなす角 \(\theta\) は常に \(90^\circ\) です。
仕事の定義 \(W = Fs\cos\theta\) において、\(\cos90^\circ = 0\) なので、垂直抗力がする仕事 \(W_1\) は0となります。
$$ W_1 = 0 $$

2. 重力がする仕事 \(W_2\)
重力は保存力であるため、その仕事 \(W_2\) は始点Aと終点Bの位置エネルギーの差として計算できます。
$$ W_2 = U_{\text{A}} – U_{\text{B}} $$
ここで \(U_{\text{A}}\) は点Aでの、\(U_{\text{B}}\) は点Bでの重力による位置エネルギーです。
計算を簡単にするため、最も低い点Bを含む水平面を位置エネルギーの基準面(高さ \(h=0\))とします。すると、\(U_{\text{B}} = 0\) となります。
点Aの基準面からの高さは \(h = 2.0 \text{ m}\) なので、点Aでの位置エネルギー \(U_{\text{A}}\) は \(mgh\) となります。
したがって、重力がする仕事 \(W_2\) は次のように立式できます。
$$ W_2 = mgh – 0 = mgh $$

使用した物理公式

  • 仕事の定義: \(W = Fs\cos\theta\)
  • 重力がする仕事と位置エネルギーの関係: \(W_{\text{重力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}}\)
  • 重力による位置エネルギー: \(U = mgh\)
計算過程

\(W_1\) の計算:
垂直抗力の向きと運動の向きが常に垂直であるため、仕事は0です。
$$ W_1 = 0 \text{ [J]} $$

\(W_2\) の計算:
与えられた値、質量 \(m=0.50 \text{ kg}\)、重力加速度の大きさ \(g=9.8 \text{ m/s}^2\)、高さ \(h=2.0 \text{ m}\) を式に代入します。
$$
\begin{aligned}
W_2 &= mgh \\[2.0ex]
&= 0.50 \times 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 9.8 \\[2.0ex]
&= 9.8 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題では、小球にはたらく2つの力、「垂直抗力」と「重力」がした仕事をそれぞれ計算します。
まず「垂直抗力」ですが、これは面が小球を支える力です。小球は面に沿って動くので、この支える力とは常に直角の方向に動きます。このように、力の向きと動く向きが常に直角の場合、物理学では「仕事はしていない(仕事は0)」と考えます。
次に「重力」の仕事です。これは、小球がどれだけ「下」に移動したかで決まります。スタート地点Aはゴール地点Bよりも \(2.0 \text{ m}\) 高い位置にあります。重力がした仕事は、「小球の重さ(質量 \(0.50 \text{ kg}\) × 重力加速度 \(9.8 \text{ m/s}^2\))」に、この「高さの差(\(2.0 \text{ m}\))」を掛けることで計算できます。計算すると、\(9.8 \text{ J}\) となります。

結論と吟味

面が及ぼす力がする仕事 \(W_1\) は \(0 \text{ J}\)、重力がする仕事 \(W_2\) は \(9.8 \text{ J}\) です。
垂直抗力は小球の運動方向を曲げる役割はしますが、速さを変える(エネルギーを与える)仕事はしないため、仕事は0となります。
一方、重力は小球を加速させる向きにはたらき、結果として小球の高さが低くなったため、正の仕事をしたことになります。これらの結果は物理的に妥当です。

解答 \(W_1 = 0 \text{ J}\), \(W_2 = 9.8 \text{ J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 仕事の定義と、力が仕事をしない条件:
    • 核心: 仕事は、力の向きと運動の向きの関係によって決まるという基本原則を理解することが重要です。特に、「力の向きと運動の向きが常に垂直な場合、その力がする仕事はゼロになる」という条件を使いこなすことが、この問題の鍵です。
    • 理解のポイント:
      • 垂直抗力の仕事: なめらかな面を物体が滑るとき、面が及ぼす垂直抗力は常に運動方向と垂直です。そのため、垂直抗力は物体の進行方向を変える役割はしますが、速さを増減させる(エネルギーを与える)仕事はしません。
  • 保存力がする仕事と位置エネルギーの関係:
    • 核心: 重力のような「保存力」がする仕事は、物体がどのような複雑な経路をたどったとしても、始点と終点の「高さの差」だけで決まる、という極めて強力な性質を理解すること。
    • 理解のポイント:
      • 公式: \(W_{\text{保存力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}} = mgh_{\text{始}} – mgh_{\text{終}}\)
      • 意味: この性質のおかげで、曲面の複雑な形状を一切考慮する必要がなく、単に始点と終点の高低差 \(h\) を見つけるだけで、重力がした仕事を \(mgh\) と簡単に計算できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 振り子の運動: 糸で吊るされたおもりが円弧を描いて振れる運動。この場合、「糸の張力」が本問の「垂直抗力」と同じ役割を果たし、その仕事は常に0になります。重力がする仕事は、同様に高低差から計算します。
    • ジェットコースターやループコースターの運動: レール上を台車が運動する問題。台車がレールから受ける垂直抗力は常に運動方向と垂直なので、仕事は0です。
    • 仕事と運動エネルギーの関係への発展: 本問に「点Bを通過するときの速さを求めよ」という設問が追加されるパターン。この場合、「(された仕事の合計)=(運動エネルギーの変化)」という関係式 \(W_1 + W_2 = \frac{1}{2}mv_B^2 – 0\) を使って解きます。\(W_1=0\) なので、結局 \(W_2 = \frac{1}{2}mv_B^2\) となり、これは力学的エネルギー保存則と等価です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 力の図示: まず、物体にはたらく力をすべて(重力、垂直抗力、張力など)正確に図示します。
    2. 運動方向の確認: 物体がどの経路に沿って動くかを確認し、各点での運動方向(接線方向)をイメージします。
    3. 力と運動方向の角度を分析: 図示した各力について、運動方向とのなす角度がどうなるかを考えます。「常に垂直か?」「角度は一定か?」を見極めることが、解法選択の鍵です。
    4. 保存力か非保存力かを見極める: 各力が「保存力(重力など)」か「非保存力(垂直抗力など)」かを判断し、仕事の計算方法を選択します。保存力なら位置エネルギーの差、非保存力なら仕事の定義式で計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 垂直抗力の仕事を計算しようとする:
    • 誤解: 「力がはたらいているのだから、仕事もするはずだ」と思い込み、垂直抗力の大きさを求めようとしてしまう。
    • 対策: 「仕事」とは「力の向きに動かす」ことで初めて成立する、と理解を改めること。「垂直抗力」や「張力」は、運動の方向を曲げる役割はしますが、速さを変える(エネルギーを与える)仕事はしない、と覚えましょう。
  • 重力の仕事の計算で、曲面の道のりを使ってしまう:
    • 誤解: 仕事の公式 \(W=Fs\) の \(s\) に、小球が実際に滑った曲面の長さを代入しようとしてしまう。
    • 対策: 重力がする仕事は「重力の大きさ \(mg\) × 鉛直方向の移動距離 \(h\)」で決まる、ということを徹底する。「保存力の仕事は経路によらない」という性質を思い出し、複雑な経路は無視して、始点と終点の「高さの差」だけに着目する癖をつけましょう。
  • 位置エネルギーの差の符号ミス:
    • 誤解: 重力がする仕事 \(W_{\text{重力}}\) を、\(U_{\text{終}} – U_{\text{始}}\) と計算してしまい、符号を逆にしてしまう。
    • 対策: 「物体が下がる \(\rightarrow\) 位置エネルギーが減る \(\rightarrow\) 重力は運動を助ける向きなので正の仕事をする」という物理的イメージと結びつける。公式としては \(W_{\text{重力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}} = – \Delta U\) と、マイナスが付くことを正確に覚えておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 仕事の定義式 (\(W = Fs\cos\theta\)):
    • 選定理由: 「垂直抗力」の仕事 \(W_1\) を考える際に使用します。これは仕事の最も基本的な定義式です。
    • 適用根拠: 垂直抗力は、小球の運動方向(曲面の接線方向)と常に垂直です。したがって、力の向きと運動方向のなす角 \(\theta\) は常に \(90^\circ\) です。定義式に \(\theta=90^\circ\) を代入すると、\(\cos90^\circ=0\) となるため、力の大きさ \(F\) や移動距離 \(s\) がどんな値であっても、仕事 \(W_1\) は0であると論理的に結論付けられます。
  • 重力の仕事と位置エネルギーの関係式 (\(W_{\text{重力}} = U_{\text{始}} – U_{\text{終}}\)):
    • 選定理由: 「重力」の仕事 \(W_2\) を計算するために使用します。重力は保存力なので、その仕事は経路に依存しません。したがって、始点と終点の情報だけで計算できる位置エネルギーの公式を使うのが最も効率的かつ本質的です。もしこの性質を知らないと、曲面上の各微小部分で重力の接線成分を計算し、それを経路全体で積分するという大学レベルの数学が必要になってしまいます。
    • 適用根拠: 物体が重力に従って落下すると位置エネルギーが減少し(重力は正の仕事をする)、その逆も然りです。この「仕事」と「位置エネルギーの変化」は表裏一体の関係にあります。本問では、物体は高さが \(h\) だけ低い位置に移動するため、位置エネルギーが \(mgh\) だけ減少します。この減少分が、そのまま重力がした正の仕事 \(W_2 = mgh\) となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 計算の工夫: \(0.50 \times 9.8 \times 2.0\) のような計算では、先に \(0.50 \times 2.0 = 1.0\) を計算することで、\(1.0 \times 9.8 = 9.8\) と暗算で簡単に答えが出せます。掛け算の順序を工夫するだけで、計算ミスを大幅に減らすことができます。
  • 有効数字の確認: 問題文で与えられている数値(\(2.0 \text{ m}\), \(0.50 \text{ kg}\), \(9.8 \text{ m/s}^2\))の有効数字は2桁です。したがって、最終的な答えも2桁(例: \(9.8 \text{ J}\))で答えるのが適切です。
  • 単位の確認: 計算結果の単位が、求められている仕事の単位 [J] になっているかを確認する癖をつけましょう。質量[kg] × 重力加速度[m/s²] × 高さ[m] の単位は [kg・m²/s²] となり、これはエネルギーの単位 [J] と等価であることを理解しておくと良いでしょう。

113 弾性力による位置エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「弾性力による位置エネルギーと力のつりあいの関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 弾性力による位置エネルギーの定義式: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)
  2. 力のつりあい: 物体が静止しているとき、物体にはたらく力の合力は0である。
  3. フックの法則: ばねの弾性力は、ばねの自然長からの伸び(または縮み)に比例する (\(F=kx\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、ばねAとばねBのそれぞれについて、おもりが静止している状態での「力のつりあい」の式を立てます。
  2. 立てた2つのつりあいの式から、ばね定数 \(k_{\text{A}}\) と \(k_{\text{B}}\) を、それぞれ \(m, g, a\) を用いて表します。
  3. 次に、弾性力による位置エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) に、それぞれのばねの伸びと、先ほど求めたばね定数を代入して、\(U_{\text{A}}\) と \(U_{\text{B}}\) を計算します。
  4. 最後に、\(U_{\text{B}}\) が \(U_{\text{A}}\) の何倍になっているかを計算します。

思考の道筋とポイント
ばねBの弾性エネルギーが、ばねAの弾性エネルギーの何倍かを求める問題です。
弾性エネルギーは \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) で計算されますが、この問題ではばね定数 \(k\) が与えられていません。したがって、まずそれぞれのばねのばね定数 \(k_{\text{A}}\) と \(k_{\text{B}}\) を求める必要があります。
ばね定数を求めるためのヒントは、問題文の「つりあいの状態になっておもりが静止した」という記述です。これは、各ばねについて、おもりにはたらく「重力」と「弾性力」がつりあっていることを意味します。この力のつりあいの関係から、\(k_{\text{A}}\) と \(k_{\text{B}}\) を求めることができます。
ばね定数が求まれば、あとはそれぞれのばねの伸びを使って弾性エネルギーを計算し、その比を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 弾性エネルギーの計算には、ばね定数 \(k\) と伸び \(x\) の両方が必要。
  • 未知のばね定数 \(k\) は、力のつりあいの条件から求める。
  • 「静止」 \(\rightarrow\) 力のつりあい。

具体的な解説と立式
ばねA, Bのばね定数をそれぞれ \(k_{\text{A}}\), \(k_{\text{B}}\) とします。

ステップ1: ばね定数を求める
それぞれのばねにつるされたおもりは静止しているので、力のつりあいが成り立っています。

  • ばねAについて
    • おもりにはたらく力は、下向きの重力 \(mg\) と、上向きの弾性力 \(F_{\text{A}}\) です。
    • ばねの伸びは \(a\) なので、弾性力の大きさは \(F_{\text{A}} = k_{\text{A}}a\)。
    • 力のつりあいの式は、
      $$ k_{\text{A}}a – mg = 0 $$
      これを \(k_{\text{A}}\) について解くと、
      $$ k_{\text{A}} = \frac{mg}{a} $$
  • ばねBについて
    • おもりにはたらく力は、下向きの重力 \(mg\) と、上向きの弾性力 \(F_{\text{B}}\) です。
    • ばねの伸びは \(2a\) なので、弾性力の大きさは \(F_{\text{B}} = k_{\text{B}}(2a)\)。
    • 力のつりあいの式は、
      $$ k_{\text{B}}(2a) – mg = 0 $$
      これを \(k_{\text{B}}\) について解くと、
      $$ k_{\text{B}} = \frac{mg}{2a} $$

ステップ2: 弾性エネルギーを計算する
弾性力による位置エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) を用いて、\(U_{\text{A}}\) と \(U_{\text{B}}\) を計算します。

  • ばねAの弾性エネルギー \(U_{\text{A}}\)
    • ばね定数は \(k_{\text{A}} = \displaystyle\frac{mg}{a}\)、伸びは \(x=a\)。
      $$ U_{\text{A}} = \frac{1}{2}k_{\text{A}}a^2 $$
  • ばねBの弾性エネルギー \(U_{\text{B}}\)
    • ばね定数は \(k_{\text{B}} = \displaystyle\frac{mg}{2a}\)、伸びは \(x=2a\)。
      $$ U_{\text{B}} = \frac{1}{2}k_{\text{B}}(2a)^2 $$

ステップ3: エネルギーの比を求める
最後に、\(\displaystyle\frac{U_{\text{B}}}{U_{\text{A}}}\) を計算します。

使用した物理公式

  • 弾性力による位置エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)
  • 力のつりあい
  • フックの法則: \(F=kx\)
計算過程

\(U_{\text{A}}\) の計算:
$$
\begin{aligned}
U_{\text{A}} &= \frac{1}{2}k_{\text{A}}a^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}\left(\frac{mg}{a}\right)a^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mga
\end{aligned}
$$

\(U_{\text{B}}\) の計算:
$$
\begin{aligned}
U_{\text{B}} &= \frac{1}{2}k_{\text{B}}(2a)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}\left(\frac{mg}{2a}\right)(4a^2) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \cdot mg \cdot (2a) \\[2.0ex]
&= mga
\end{aligned}
$$

比の計算:
$$
\begin{aligned}
\frac{U_{\text{B}}}{U_{\text{A}}} &= \frac{mga}{\frac{1}{2}mga} \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
したがって、ばねBの弾性エネルギーは、ばねAの弾性エネルギーの2倍です。

計算方法の平易な説明

この問題は、2つのばねAとBに蓄えられたエネルギーを比べる問題です。
まず、それぞれのばねの「硬さ(ばね定数)」を調べます。同じ重さのおもりを吊るしたとき、ばねAは \(a\) しか伸びないのに、ばねBは \(2a\) も伸びています。これは、ばねBの方がばねAより「柔らかい」ことを意味します。計算すると、ばねBの硬さはばねAの半分であることがわかります。
次に、エネルギーを計算します。エネルギーの公式は「\(0.5 \times \text{硬さ} \times (\text{伸び})^2\)」です。
ばねAのエネルギーは「\(0.5 \times (\text{Aの硬さ}) \times a^2\)」です。
ばねBのエネルギーは「\(0.5 \times (\text{Bの硬さ}) \times (2a)^2\)」です。Bの硬さはAの半分なので、「\(0.5 \times (0.5 \times \text{Aの硬さ}) \times 4a^2 = 2 \times (0.5 \times \text{Aの硬さ} \times a^2)\)」となります。
これを比べると、ばねBのエネルギーはばねAのエネルギーのちょうど2倍になっていることがわかります。

結論と吟味

ばねBの弾性力による位置エネルギーは、ばねAの弾性力による位置エネルギーの2倍です。
ばねBは、ばねAに比べてばね定数が \(1/2\) 倍と小さい(柔らかい)ですが、伸びが \(2\) 倍なので、エネルギーの式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) において、伸びの2乗(\(2^2=4\)倍)の効果がばね定数の \(1/2\) 倍の効果を上回り、結果としてエネルギーは \(1/2 \times 4 = 2\) 倍となります。計算結果は物理的に妥当です。

解答 2倍

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力のつりあいと弾性エネルギーの式の連携:
    • 核心: この問題は、一見すると弾性エネルギーの比較問題ですが、その計算に必要な「ばね定数」が与えられていません。その未知のばね定数を、物体が「静止」しているという情報から「力のつりあい」を用いて導き出し、それを弾性エネルギーの式に代入するという、2つの異なる物理法則を連携させて解く能力が核心となります。
    • 理解のポイント:
      1. 目的の明確化: 最終目標はエネルギーの比 \(\displaystyle\frac{U_B}{U_A}\) を求めること。
      2. 必要な情報の特定: エネルギーの公式 \(U=\frac{1}{2}kx^2\) を使うには、\(k\) と \(x\) が必要。\(x\) は与えられているが、\(k\) が未知数。
      3. 情報の探索: 未知数 \(k\) を求めるための情報を問題文から探す \(\rightarrow\) 「つりあいの状態」「静止した」というキーワードを発見。
      4. 法則の適用: 「静止」\(\rightarrow\)「力のつりあい」を適用して \(k\) を求める。
      5. 最終計算: 求めた \(k\) をエネルギーの式に代入し、比を計算する。

      このような思考プロセスをたどることが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 水平ばね: 水平に置かれたばねを、ある力で押して縮めた状態で静止させたときの弾性エネルギーを求める問題。この場合、加えた力と弾性力がつりあうことからばね定数を求めます。
    • ばね振り子の振動エネルギー: 本問の状態からおもりを少しだけ下に引いて放したときの単振動について、振動の中心(つり合いの位置)での運動エネルギーや、折り返し点での弾性エネルギーを問う問題。
    • 直列・並列ばね: 複数のばねを直列や並列につないだ場合の合成ばね定数を求め、そこに蓄えられるエネルギーを計算する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 未知数と与えられている情報を整理する: 何を求めたいのか(エネルギーの比)、そのために何が必要か(ばね定数と伸び)、問題文で何が与えられているか(質量、伸び、静止状態)を明確に区別します。
    2. 「静止」「つりあい」のキーワードに注目: この言葉があれば、ほぼ確実に力のつりあいの式を立てる場面です。
    3. 文字式のまま計算を進める: この問題のように、最終的に比を求める問題では、途中の物理量(\(m, g, a\))が最終的に約分されて消えることが多いです。具体的な数値を代入するのではなく、文字式のまま計算を進める方が、本質的な関係が見えやすく、計算も楽になることが多いです。
    4. エネルギーの式を単純化する: \(U = \frac{1}{2}kx^2\) と力のつりあい \(kx=mg\) の関係から、\(U = \frac{1}{2}(kx)x = \frac{1}{2}(mg)x\) という便利な関係式を導出できます。これを使うと、ばね定数 \(k\) を介さずに、重力 \(mg\) と伸び \(x\) だけで直接エネルギーを計算でき、計算が大幅に簡略化されます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ばね定数が同じだと勘違いする:
    • 誤解: ばねAとBは別のばねであるにもかかわらず、同じばね定数 \(k\) を使って計算してしまう。
    • 対策: 問題文の「ばね定数の異なる」という記述を見落とさないこと。物理では、特に指定がない限り、異なる物体は異なる物理的性質を持つと考えるのが基本です。\(k_A, k_B\) のように、区別するための添え字を付けて計算を進めることで、混同を防げます。
  • エネルギーの式で伸びの2乗を忘れる:
    • 誤解: 弾性エネルギーの式を \(U=\frac{1}{2}kx\) と間違え、ばねBのエネルギーを計算する際に \(U_B = \frac{1}{2}k_B(2a)\) としてしまう。
    • 対策: 弾性エネルギーの公式 \(U=\frac{1}{2}kx^2\) は、運動エネルギー \(K=\frac{1}{2}mv^2\) と形が似ていることを意識して、2乗が付くことを確実に覚える。
  • 力のつりあいの式とエネルギーの式を混同する:
    • 誤解: エネルギーを計算すべきところで、力のつりあいの式 \(mg\) を使ってしまう。あるいはその逆。
    • 対策: 「力」と「エネルギー(仕事)」は全く異なる物理量であり、単位も違う([N]と[J])ことを常に意識する。「静止」なら力、「蓄えられたエネルギー」ならエネルギーの式、と場面に応じて使う道具を明確に使い分ける訓練が必要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力のつりあい (\(kx – mg = 0\)):
    • 選定理由: この問題では、弾性エネルギーを計算するために不可欠な「ばね定数 \(k\)」が未知数です。この未知数を決定するために、問題文で与えられた「静止」という物理的状況を利用します。静止状態における力の関係を記述する法則が「力のつりあい」であるため、この法則を選択します。
    • 適用根拠: ニュートンの運動法則 \(ma=F_{\text{合力}}\) において、静止しているので加速度 \(a=0\)。したがって、合力 \(F_{\text{合力}} = kx – mg = 0\) となります。
  • 弾性力による位置エネルギーの公式 (\(U = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)):
    • 選定理由: 問題の最終的な問いが「弾性力による位置エネルギー」の比較であるため、この物理量を計算するための定義式を選択するのは当然の流れです。
    • 適用根拠: この公式は、ばねを自然長から \(x\) だけ伸ばす(または縮める)のに必要な仕事の量として定義されています。ばねの力は \(F=kx\) と伸びに比例して変化するため、仕事の計算には積分(高校物理では三角形の面積計算に相当)が必要となり、その結果が \(\frac{1}{2}kx^2\) となります。この定義に基づいて、各ばねに蓄えられたエネルギーを定量化しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の計算を丁寧に行う: \(U_B = \frac{1}{2}(\frac{mg}{2a})(2a)^2\) のような計算では、括弧の展開や約分を一つ一つ慎重に行う。特に、\((2a)^2 = 4a^2\) のように、係数と文字の両方を2乗することを忘れないように注意しましょう。
  • 比を求めるときの分数の扱い: \(\displaystyle\frac{U_B}{U_A} = \displaystyle\frac{mga}{\frac{1}{2}mga}\) のような分数の計算では、共通する文字(\(mga\))をまとめて消去すると計算が簡単になります。
  • 物理的な意味からの検算: 同じおもりを吊るしてBの方がAより2倍伸びたのだから、「BはAより2倍柔らかい(\(k_B = \frac{1}{2}k_A\))」とわかります。エネルギーは \(U \propto kx^2\) なので、\(\frac{U_B}{U_A} = \frac{k_B(x_B)^2}{k_A(x_A)^2} = \frac{(\frac{1}{2}k_A)(2a)^2}{k_A a^2} = \frac{\frac{1}{2} \cdot 4}{1} = 2\) となり、計算結果が正しいことを物理的な比率からも確認できます。

114 仕事と運動エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「仕事と運動エネルギーの関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 仕事と運動エネルギーの関係(エネルギー原理): 物体にされた仕事の総和は、その物体の運動エネルギーの変化量に等しい。
  2. 運動エネルギーの公式: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  3. 正の仕事と負の仕事: 物体に正の仕事がされると運動エネルギーは増加し、負の仕事がされると運動エネルギーは減少する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「後の運動エネルギー」から「前の運動エネルギー」を引いた差が、物体にされた仕事に等しい、という関係式を立てます。
  2. 問題で与えられている初めの速さ、質量、された仕事の値を代入します。
  3. 方程式を解くことで、仕事が加えられた後の物体の速さを求めます。

思考の道筋とポイント
運動している物体に外部から仕事が加えられると、その物体の運動エネルギーが変化します。この問題では、\(48 \text{ J}\) という「正の仕事」が加えられているため、物体の運動エネルギーは増加し、結果として速くなることが予想されます。
この「仕事」と「運動エネルギーの変化」の関係を定量的に結びつけるのが、「仕事と運動エネルギーの関係(エネルギー原理)」です。
具体的には、「(後の運動エネルギー)-(前の運動エネルギー)=(された仕事)」という式を立てます。この式において、未知数は「後の速さ \(v\)」だけなので、方程式を解くことで答えを求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 仕事と運動エネルギーの関係: \(W = \Delta K = K_{\text{後}} – K_{\text{初}}\)
  • 運動エネルギーの公式: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • 「はじめのエネルギー + された仕事 = あとのエネルギー」というエネルギーの収支で考えることもできる。

具体的な解説と立式
仕事と運動エネルギーの関係より、次の式が成り立ちます。
$$ K_{\text{後}} – K_{\text{初}} = W $$
ここで、\(K_{\text{初}}\) は仕事が加えられる前の運動エネルギー、\(K_{\text{後}}\) は仕事が加えられた後の運動エネルギー、\(W\) は物体にされた仕事です。
それぞれの運動エネルギーは、質量を \(m\)、初めの速さを \(v_0\)、後の速さを \(v\) とすると、
$$ K_{\text{初}} = \frac{1}{2}mv_0^2 $$
$$ K_{\text{後}} = \frac{1}{2}mv^2 $$
よって、仕事と運動エネルギーの関係式は次のように具体的に立式できます。
$$ \frac{1}{2}mv^2 – \frac{1}{2}mv_0^2 = W $$

使用した物理公式

  • 仕事と運動エネルギーの関係: \(W = \Delta K = K_{\text{後}} – K_{\text{初}}\)
  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

与えられた値、質量 \(m=6.0 \text{ kg}\)、初めの速さ \(v_0=3.0 \text{ m/s}\)、された仕事 \(W=48 \text{ J}\) を式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} \times 6.0 \times v^2 – \frac{1}{2} \times 6.0 \times (3.0)^2 &= 48 \\[2.0ex]
3.0v^2 – 3.0 \times 9.0 &= 48 \\[2.0ex]
3.0v^2 – 27 &= 48 \\[2.0ex]
3.0v^2 &= 48 + 27 \\[2.0ex]
3.0v^2 &= 75 \\[2.0ex]
v^2 &= 25
\end{aligned}
$$
\(v>0\) なので、
$$ v = 5.0 \text{ [m/s]} $$

計算方法の平易な説明

この問題は、エネルギーの足し算で考えることができます。「はじめに物体が持っていた運動エネルギー」に、「外部から加えられた仕事(エネルギー)」を足すと、「終わりの運動エネルギー」になります。
まず、はじめの運動エネルギーを計算します。「\(0.5 \times 6.0 \text{ kg} \times (3.0 \text{ m/s})^2 = 27 \text{ J}\)」です。
この物体に \(48 \text{ J}\) の仕事が加えられたので、終わりの運動エネルギーは「\(27 \text{ J} + 48 \text{ J} = 75 \text{ J}\)」になります。
終わりの運動エネルギーが \(75 \text{ J}\) になるような速さ \(v\) を逆算します。「\(0.5 \times 6.0 \text{ kg} \times v^2 = 75 \text{ J}\)」という式を解くと、\(v=5.0 \text{ m/s}\) と求まります。

結論と吟味

物体の速さは \(5.0 \text{ m/s}\) になります。
物体に正の仕事が加えられた結果、速さが \(3.0 \text{ m/s}\) から \(5.0 \text{ m/s}\) へと増加しており、物理的に妥当な結果です。

別解: 「はじめ+仕事=終わり」の形式で立式

思考の道筋とポイント
仕事と運動エネルギーの関係式 \(K_{\text{後}} – K_{\text{初}} = W\) を移項すると、\(K_{\text{初}} + W = K_{\text{後}}\) となります。これは「はじめの運動エネルギーに、された仕事を加えると、終わりの運動エネルギーになる」という、エネルギーの収支関係をより直感的に表した式です。この形式で立式すると、計算途中のマイナスの符号が減り、計算ミスを防ぎやすい場合があります。

具体的な解説と立式
エネルギーの収支関係の式を立てます。
$$ \frac{1}{2}mv_0^2 + W = \frac{1}{2}mv^2 $$

計算過程
この式に与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} \times 6.0 \times (3.0)^2 + 48 &= \frac{1}{2} \times 6.0 \times v^2 \\[2.0ex]
3.0 \times 9.0 + 48 &= 3.0v^2 \\[2.0ex]
27 + 48 &= 3.0v^2 \\[2.0ex]
75 &= 3.0v^2 \\[2.0ex]
v^2 &= 25
\end{aligned}
$$
\(v>0\) なので、
$$ v = 5.0 \text{ [m/s]} $$
メインの解法と同じ結果が得られます。

解答 \(5.0 \text{ m/s}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 仕事と運動エネルギーの関係(エネルギー原理):
    • 核心: 「物体にされた仕事の総和は、その物体の運動エネルギーの変化量に等しい」という、力学におけるエネルギーの基本法則を理解し、適用することが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 公式: \(W = \Delta K = K_{\text{後}} – K_{\text{初}}\)
      • エネルギーの収支: この法則は、「はじめに持っていた運動エネルギー \(K_{\text{初}}\) に、外部から仕事 \(W\) という形でエネルギーが加えられると、終わりの運動エネルギーは \(K_{\text{後}}\) になる」という、エネルギーの収支関係を表しています。これを \(K_{\text{初}} + W = K_{\text{後}}\) という形で理解すると、より直感的で計算ミスも減らせます。
      • 仕事の役割: 仕事は、物体間でエネルギーをやり取りする手段の一つです。正の仕事をされればエネルギーが増加し(速くなる)、負の仕事をされればエネルギーが減少します(遅くなる)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 負の仕事がされる場合: 物体が動摩擦力を受けながら運動し、速さが変化する問題。この場合、摩擦力がした負の仕事 \(W\) を代入して、減少後の運動エネルギーや速さを計算します。
    • 複数の仕事が同時になされる場合: 自動車がエンジンで加速しつつ、空気抵抗を受ける場合など。このとき、\(W\) には「エンジンがした正の仕事」と「空気抵抗がした負の仕事」の合計(正味の仕事)を代入します。
    • 運動エネルギーの変化から仕事を求める逆問題: 物体の初速と終速が与えられていて、その間に物体がされた仕事を求める問題。\(\Delta K = K_{\text{後}} – K_{\text{初}}\) を計算することで、直接仕事 \(W\) を求めることができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「前」と「後」の状態を明確にする: 仕事がされる「前」の速さ \(v_0\) と、「後」の速さ \(v\) を問題文から正確に読み取ります。
    2. された仕事 \(W\) の情報を整理する: 物体にされた仕事の大きさと、その符号(「正の仕事」か「負の仕事」か)を確認します。
    3. エネルギー原理の式を立てる: \(K_{\text{後}} – K_{\text{初}} = W\) または \(K_{\text{初}} + W = K_{\text{後}}\) のどちらかの形で、迷わず立式します。未知数が一つの方程式になるはずです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 運動エネルギーの変化の引き算の順序ミス:
    • 誤解: 運動エネルギーの変化 \(\Delta K\) を計算する際に、\(K_{\text{初}} – K_{\text{後}}\) と計算してしまい、符号を間違える。
    • 対策: 物理における「変化量」は、常に「後の状態量前の状態量」であると徹底して覚えること。あるいは、より直感的な「はじめのエネルギー + された仕事 = あとのエネルギー」という足し算の形で立式する癖をつけると、引き算の順序を気にする必要がなくなり、ミスを減らせます。
  • 仕事の符号の扱い:
    • 誤解: もし問題で「負の仕事」が加えられた場合に、\(W\) に正の値を代入してしまう。
    • 対策: 仕事の正負がエネルギーの増減に直結することを強く意識する。「エネルギーが増えた \(\rightarrow\) 正の仕事をされた」「エネルギーが減った \(\rightarrow\) 負の仕事をされた」という関係を理解しておきましょう。
  • 運動エネルギーの計算ミス:
    • 誤解: 運動エネルギーの公式 \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) を掛け忘れたり、速さ \(v\) を2乗し忘れたりする。
    • 対策: 公式を正確に覚えることはもちろん、計算の各ステップを省略せずに丁寧に書くことが重要です。特に、初めの運動エネルギーと後の運動エネルギーをそれぞれ別に計算してから、エネルギー原理の式に代入すると、計算ミスが起こりにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 仕事と運動エネルギーの関係 (\(W = \Delta K\)):
    • 選定理由: この問題は、運動の「過程」の詳細(どのような力が、どれだけの時間や距離をかけてはたらいたか)が一切不明です。その代わりに、「された仕事」というエネルギーの出入り量が直接与えられています。そして、運動の「状態の変化」(速さの変化)を問うています。このように、力の詳細が分からなくてもエネルギーの収支が分かっていれば、運動状態の変化を直接結びつけることができるのが、この公式の最大の強みです。運動方程式を立てるアプローチでは解くことができません。
    • 適用根拠: この法則は、運動方程式 \(ma=F\) をエネルギーの観点から書き直したものであり、力学における最も基本的で普遍的な法則の一つです。力が一定でなくても、された仕事の総和が分かっていれば、運動エネルギーの変化を正確に予測できます。この問題は、この強力な法則を最もシンプルな形で適用する絶好の例題です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 移項の際の符号ミス: \(3.0v^2 – 27 = 48\) を \(3.0v^2 = 48 – 27\) のように、移項した項の符号を変え忘れるミスは頻発します。計算過程を省略せず、一行ずつ丁寧に書くことで防ぎましょう。
  • 平方根の計算: \(v^2=25\) から \(v=5.0\) を導く計算は基本的ですが、焦ると間違える可能性があります。落ち着いて計算しましょう。
  • 有効数字の意識: 問題文で与えられている数値(3.0 m/s, 6.0 kg, 48 J)はすべて有効数字2桁です。したがって、最終的な答えも \(5.0 \text{ m/s}\) と有効数字2桁で答える必要があります。解答欄に `5` とだけ書くと減点される可能性があるので、`.0` を忘れないように注意しましょう。
  • 別解(エネルギー収支の式)の活用: メインの解法で使った \(K_{\text{後}} – K_{\text{初}} = W\) の式だけでなく、別解で示した \(K_{\text{初}} + W = K_{\text{後}}\) の式でも計算してみることで、検算ができます。両方の式に慣れておくと、問題に応じて使い分けたり、検算したりする際に役立ちます。
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115 仕事と運動エネルギー

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