基本例題
基本例題6 自由落下
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「自由落下運動」です。物体が重力だけを受けて、初速度ゼロで落下する運動の基本的な計算が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 自由落下運動の性質: 自由落下は、初速度 \(v_0=0\)、加速度が重力加速度 \(g\) の「等加速度直線運動」です。
- 等加速度直線運動の3公式: 運動を記述するために、以下の3つの公式を状況に応じて使い分けます。
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) (変位と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) (速度と変位の関係、時間を含まない)
- 座標軸の設定: 計算を始める前に、どちらの向きを正とするか(例:鉛直下向きを正)を明確に決めることが重要です。
- 有効数字: 問題文で与えられた数値(例:\(9.8 \text{ m/s}^2\), \(19.6 \text{ m}\))の桁数に合わせて、最終的な答えの桁数を処理します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、落下距離 \(y\) と時間 \(t\) の関係式を用いて、指定された距離を落下するのにかかる時間を計算します。
- (2)では、(1)で求めた時間を使う方法と、時間を含まない公式を使って直接速さを求める方法の2通りで計算します。
- (3)では、全体の落下距離を使って、地面に衝突する直前の速さを計算します。これも複数の方法で解くことができます。
問(1)
思考の道筋とポイント
「半分の高さ \(9.8 \text{ m}\) だけ落下する時間 \(t_1\)」を求める問題です。自由落下は初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(g\) の等加速度直線運動であることを踏まえ、変位(落下距離)\(y\) と時間 \(t\) を結びつける公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動では、鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) となります。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が、自由落下では \(y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2\) と簡略化されます。
- 問題で与えられている物理量(\(y=9.8 \text{ m}\), \(g=9.8 \text{ m/s}^2\))をこの式に代入して \(t_1\) を求めます。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向きとします。
小球は自由落下するので、初速度 \(v_0 = 0\)、加速度 \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) の等加速度直線運動をします。
変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を用います。
落下距離 \(y = 9.8 \text{ m}\) のときにかかる時間を \(t_1\) とすると、
$$ y = \displaystyle\frac{1}{2} g t_1^2 $$
ここに、\(y = 9.8 \text{ m}\)、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\) を代入します。
$$ 9.8 = \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_1^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
上記で立式した方程式を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
9.8 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_1^2 \\[2.0ex]\end{aligned}
$$
両辺を \(9.8\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
1 &= \displaystyle\frac{1}{2} t_1^2 \\[2.0ex]t_1^2 &= 2.0 \\[2.0ex]t_1 &= \sqrt{2.0}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2.0} \approx 1.414…\) であり、問題文で与えられた数値の有効数字が2桁(\(9.8\))であるため、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$ t_1 \approx 1.4 \text{ [s]} $$
自由落下の「落下距離 = \(0.5 \times\) 重力加速度 \(\times\) (時間)\(^2\)」という公式を使います。
今、落下した距離は \(9.8 \text{ m}\)、重力加速度は \(9.8 \text{ m/s}^2\) です。
これを式に入れると「\(9.8 = 0.5 \times 9.8 \times (t_1)^2\)」となります。
両辺に \(9.8\) があるので消去すると「\(1 = 0.5 \times (t_1)^2\)」となり、これを解くと「\((t_1)^2 = 2\)」です。
したがって、時間 \(t_1\) は \(\sqrt{2}\) 秒となり、これはおよそ \(1.4\) 秒です。
半分の高さ \(9.8 \text{ m}\) を落下するのにかかる時間は、約 \(1.4 \text{ s}\) です。計算過程、有効数字の処理ともに適切であり、物理的に妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「半分の高さの地点を通過する速さ \(v_1\)」を求める問題です。(1)で落下時間 \(t_1\) を求めた流れを引き継ぎ、速度と時間の関係式 \(v = gt\) を使って速さを計算するのが最も素直なアプローチです。
この設問における重要なポイント
- (1)で求めた時間 \(t_1\) を利用する。
- 速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を自由落下の形 \(v=gt\) で用いる。
- 計算途中では、(1)で求めた \(t_1 = \sqrt{2.0}\) のように、丸める前の値を使うとより正確な計算ができる。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用います。自由落下なので初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) です。半分の高さを落下したときの速さを \(v_1\)、そのときまでの時間を \(t_1\) とすると、
$$ v_1 = g t_1 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
(1)の結果 \(t_1 = \sqrt{2.0} \text{ s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= 9.8 \times t_1 \\[2.0ex]&= 9.8 \times \sqrt{2.0} \\[2.0ex]&\approx 9.8 \times 1.414 \\[2.0ex]&= 13.8572…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v_1 \approx 14 \text{ [m/s]} $$
思考の道筋とポイント
この問題は、時間 \(t_1\) を使わずに、落下距離 \(y\) から直接速さ \(v_1\) を求めることもできます。時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を使うことで、(1)の計算に依存しない独立した解法となり、検算にも役立ちます。
この設問における重要なポイント
- 時間 \(t\) を介さずに、変位 \(y\) と速度 \(v\) を直接結びつける。
- 速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を自由落下の形 \(v^2=2gy\) で用いる。
- この解法は(1)の答えを使わないため、(1)で計算ミスをしていても(2)で正解できる可能性がある。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用います。自由落下なので初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) です。落下距離 \(y = 9.8 \text{ m}\) のときの速さを \(v_1\) とすると、
$$ v_1^2 – 0^2 = 2gy $$
$$ v_1^2 = 2gy $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
\(y = 9.8 \text{ m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_1^2 &= 2 \times 9.8 \times 9.8 \\[2.0ex]v_1 &= \sqrt{2 \times 9.8^2} \\[2.0ex]&= 9.8 \sqrt{2} \\[2.0ex]&\approx 9.8 \times 1.414 \\[2.0ex]&= 13.8572…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v_1 \approx 14 \text{ [m/s]} $$
方法1: 「速さ = 重力加速度 \(\times\) 時間」という公式を使います。(1)で落下時間が \(\sqrt{2}\) 秒(約 \(1.4\) 秒)とわかったので、速さ \(v_1\) は「\(9.8 \times \sqrt{2}\)」で計算できます。これは約 \(14 \text{ m/s}\) です。
方法2 (別解): 時間がわからない場合でも、「(速さ)\(^2 = 2 \times\) 重力加速度 \(\times\) 落下距離」という便利な公式があります。これを使うと、\((v_1)^2 = 2 \times 9.8 \times 9.8\) となります。\(v_1\) を求めるには、この式の平方根をとればよく、結果は「\(9.8 \times \sqrt{2}\)」となり、同じく約 \(14 \text{ m/s}\) が得られます。
半分の高さの地点を通過する速さは、約 \(14 \text{ m/s}\) です。2つの異なる解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。有効数字の処理も適切です。
問(3)
思考の道筋とポイント
「地面に衝突する直前の速さ \(v_2\)」を求める問題です。これは、全落下距離 \(y = 19.6 \text{ m}\) を落下したときの速さに相当します。問(2)の別解で用いた、時間を含まない公式 \(v^2=2gy\) を使うのが最も直接的で計算も簡単です。
この設問における重要なポイント
- 全落下距離は \(y = 19.6 \text{ m}\) であることを正しく読み取る。
- 時間 \(t\) を介さずに、変位 \(y\) と速度 \(v\) を直接結びつける公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) が最も効率的。
- \(2 \times 9.8 = 19.6\) という関係に気づくと、計算が大幅に簡略化できる。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。初速度 \(v_0 = 0\)、加速度 \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、全落下距離 \(y = 19.6 \text{ m}\) です。
速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用います。
$$ v_2^2 – 0^2 = 2gy $$
$$ v_2^2 = 2 \times 9.8 \times 19.6 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
$$
\begin{aligned}
v_2^2 &= 2 \times 9.8 \times 19.6
\end{aligned}
$$
ここで \(2 \times 9.8 = 19.6\) なので、
$$
\begin{aligned}
v_2^2 &= 19.6 \times 19.6 \\[2.0ex]v_2^2 &= 19.6^2 \\[2.0ex]v_2 &= 19.6
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(20 \text{ m/s}\) となります。
$$ v_2 \approx 20 \text{ [m/s]} $$
思考の道筋とポイント
まず全体の落下時間 \(t_2\) を変位と時間の関係式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) から求め、その時間を使って速度と時間の関係式 \(v = gt\) から速さ \(v_2\) を計算する方法です。遠回りにはなりますが、等加速度直線運動の公式を複合的に使う良い練習になります。
この設問における重要なポイント
- 2段階の計算(時間 \(t\) の計算 → 速度 \(v\) の計算)が必要になる。
- 変位と時間の関係式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) と、速度と時間の関係式 \(v=gt\) の両方を用いる。
具体的な解説と立式
まず、落下距離 \(y = 19.6 \text{ m}\) にかかる時間 \(t_2\) を、変位と時間の関係式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) から求めます。
$$ 19.6 = \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_2^2 $$
次に、求めた時間 \(t_2\) を使って、速度と時間の関係式 \(v = gt\) から速さ \(v_2\) を求めます。
$$ v_2 = g t_2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
まず時間 \(t_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
19.6 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_2^2 \\[2.0ex]19.6 &= 4.9 \times t_2^2 \\[2.0ex]t_2^2 &= \displaystyle\frac{19.6}{4.9} \\[2.0ex]t_2^2 &= 4.00 \\[2.0ex]t_2 &= 2.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
次にこの時間 \(t_2\) を使って速さ \(v_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= g t_2 \\[2.0ex]&= 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 19.6
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮して丸めると、
$$ v_2 \approx 20 \text{ [m/s]} $$
方法1: 時間を使わない「(速さ)\(^2 = 2 \times\) 重力加速度 \(\times\) 落下距離」の公式を使います。全落下距離は \(19.6 \text{ m}\) なので、\((v_2)^2 = 2 \times 9.8 \times 19.6\) となります。ここで \(2 \times 9.8\) はちょうど \(19.6\) になるので、式は「\((v_2)^2 = 19.6 \times 19.6\)」と簡単になります。つまり、速さ \(v_2\) は \(19.6 \text{ m/s}\) です。答えの桁数を合わせるため、およそ \(20 \text{ m/s}\) とします。
方法2 (別解): まず、\(19.6 \text{ m}\) 落ちるのにかかる時間を計算します。「落下距離 = \(0.5 \times\) 重力加速度 \(\times\) (時間)\(^2\)」から、\(19.6 = 0.5 \times 9.8 \times (t_2)^2\) となり、これを解くと時間はぴったり \(2.0\) 秒と求まります。次に「速さ = 重力加速度 \(\times\) 時間」から、速さ \(v_2\) は \(9.8 \times 2.0 = 19.6 \text{ m/s}\) と計算できます。これもおよそ \(20 \text{ m/s}\) です。
地面に衝突する直前の速さは \(19.6 \text{ m/s}\) であり、有効数字2桁で答えると \(20 \text{ m/s}\) となります。2つの解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 自由落下運動の本質的理解:
- 核心: 自由落下運動が、単に物が落ちる現象ではなく、「初速度 \(v_0=0\)、加速度が一定値の重力加速度 \(g\)」という等加速度直線運動の一種であることを理解するのが全ての出発点です。
- 理解のポイント: この理解により、物理学で最も基本的な運動モデルである「等加速度直線運動の3公式」をそのまま適用できることがわかります。
- 等加速度直線運動の3公式の使い分け:
- 核心: 状況に応じて、3つの公式を適切に選択する能力が問われます。
- \(v = v_0 + at\) (時間 \(t\) から速さ \(v\) を求めたいとき)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) (時間 \(t\) から距離 \(y\) を求めたいとき)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) (時間 \(t\) を介さずに、距離 \(y\) と速さ \(v\) を直接結びつけたいとき)
- 理解のポイント: 自由落下では \(v_0=0\), \(a=g\) となるため、それぞれ \(v=gt\), \(y=\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\), \(v^2=2gy\) という、よりシンプルな形で使用できます。
- 核心: 状況に応じて、3つの公式を適切に選択する能力が問われます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 鉛直投げ上げ・投げ下ろし: 初速度 \(v_0\) が \(0\) でないだけの問題です。等加速度直線運動の公式の \(v_0\) に値を代入すれば全く同じように解けます。特に投げ上げでは、最高点で速さ \(v=0\) となる点が重要なポイントです。
- 水平投射・斜方投射: 運動を「水平方向(力が働かないので等速直線運動)」と「鉛直方向(重力だけが働くので自由落下または鉛直投げ上げ)」に分解して考える問題。鉛直方向の運動は、この問題と全く同じ考え方で解くことができます。
- 力学的エネルギー保存則の利用: この問題は、力学的エネルギー保存則を使っても解くことができます。特に(2)と(3)は、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されると考えることで、\(mgy = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) という関係から速さ \(v\) を求めることができます。質量 \(m\) に依存しないため、運動方程式から解くのと全く同じ結果になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の種類を特定: まず、問題が「自由落下」「投げ下ろし」「投げ上げ」のどれに当たるかを確認します。これにより初速度 \(v_0\) の値が決まります。
- 座標軸の設定: 鉛直下向きを正とするか、上向きを正とするかを最初に決めます。これにより、速度 \(v\)、変位 \(y\)、加速度 \(a\)(\(+g\) か \(-g\) か)の符号が一貫して決まります。
- 物理量の整理: 問題文で与えられている量(既知量)と、求めたい量(未知量)を、\(y, v_0, v, a, t\) の5つの記号で整理します。
- 最適な公式の選択: 整理した物理量を見比べて、「どの公式を使えば最も少ないステップで未知量を求められるか」を考えます。特に「時間 \(t\) が不要」な場合は、\(v^2 – v_0^2 = 2ay\) の公式が非常に強力です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 落下距離と時間の関係の誤解:
- 誤解: (1)で \(9.8 \text{ m}\) 落ちるのに \(1.4 \text{ s}\) かかったので、(3)で \(19.6 \text{ m}\)(距離が2倍)落ちる時間はその2倍の \(2.8 \text{ s}\) だ、と勘違いしてしまう。
- 対策: \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) の式から、落下距離 \(y\) は時間 \(t\) の2乗に比例する(\(t = \sqrt{2y/g}\))ことを正しく理解する。距離が2倍なら、かかる時間は \(\sqrt{2}\) 倍になります。実際に計算すると、\(t_1 = \sqrt{2.0} \approx 1.4 \text{ s}\)、\(t_2 = 2.0 \text{ s}\) であり、\(t_2/t_1 = 2.0/1.4 \approx 1.4 \approx \sqrt{2}\) となっていることを確認しましょう。
- 有効数字の扱い:
- 誤解: (2)の計算で、(1)で求めた近似値 \(t_1 = 1.4 \text{ s}\) を使って \(v_1 = 9.8 \times 1.4 = 13.72 \rightarrow 14 \text{ m/s}\) と計算してしまう。今回は結果が同じになりますが、問題によっては誤差が生じます。
- 対策: 計算の途中では、できるだけ丸める前の値(この場合は \(t_1 = \sqrt{2.0}\))を使うように心がける。\(v_1 = 9.8 \times \sqrt{2.0}\) のように立式し、最後に計算して丸めるのが最も正確です。
- 公式の符号ミス:
- 誤解: 鉛直投げ上げの問題なのに、自由落下の公式 \(v=gt\) をそのまま使い、加速度の符号を間違える。
- 対策: 常に等加速度直線運動の一般式(\(v = v_0 + at\) など)を元に考え、自分で設定した座標軸に従って各物理量の符号(例:上向き正なら \(a=-g\))を決定する習慣をつける。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 変位と時間の関係式 (\(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)):
- 選定理由: (1)では「落下距離 \(y\)」が与えられ、「時間 \(t\)」を求めたい。この2つの物理量を直接結びつけるのがこの公式だからです。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の基本公式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) に、自由落下運動の条件である「初速度 \(v_0=0\)」と「加速度 \(a=g\)」を代入したものです。
- 速度と変位の関係式 (\(v^2 = 2gy\)):
- 選定理由: (2)と(3)では「落下距離 \(y\)」が与えられ、「速さ \(v\)」を求めたい。このとき、時間を計算する必要がないため、この公式が最も直接的で計算も楽になります。
- 適用根拠: これは、\(v=v_0+at\) と \(y=v_0t+\frac{1}{2}at^2\) の2式から時間 \(t\) を消去して導かれる関係式です。時間情報が不要な場合に、思考と計算のステップを大幅に短縮してくれます。
- 速度と時間の関係式 (\(v = gt\)):
- 選定理由: (2)の別解のように、時間 \(t\) がすでに分かっている(または先に計算した)状況で、速さ \(v\) を求めたい場合に用います。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の速度の定義式 \(v = v_0 + at\) に、自由落下の条件 \(v_0=0, a=g\) を適用したものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(g=9.8\) の計算テクニックを身につける:
- \(9.8\) という数字は、\(2 \times 4.9\) や \(19.6 \div 2\) といった関係にあります。
- (3)の計算 \(v_2^2 = 2 \times 9.8 \times 19.6\) では、機械的に計算するのではなく、\(2 \times 9.8 = 19.6\) であることに気づくと、\(v_2^2 = 19.6^2\) となり、平方根の計算が不要になります。このような数値のパターンに敏感になることで、計算速度と正確性が向上します。
- 平方根の値を覚えておく:
- 物理で頻出する \(\sqrt{2} \approx 1.41\)、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) の値は暗記しておくと、計算や検算が格段に速くなります。
- 別解による検算:
- (2)や(3)のように、複数の公式で解ける問題は、時間に余裕があれば両方のアプローチで計算してみましょう。答えが一致すれば、計算が正しいことの強力な裏付けになります。
- 単位を書き込む習慣:
- 計算の各ステップで単位を書き込むことで、次元的に正しいか(例:速さを求めているのに単位が \(s\) になっていないか)をチェックでき、ケアレスミスを防げます。
- 文字式で立式してから代入:
- 焦っていきなり数値を代入すると、どの公式を使っているのか、何の計算をしているのかが曖昧になりがちです。まず \(v^2 = 2gy\) のように文字式を書き、その後に \(v_2^2 = 2 \times 9.8 \times 19.6\) と数値を代入する癖をつけると、思考が整理され、見直しも容易になります。
基本例題7 鉛直投げ上げ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「鉛直投げ上げ運動」です。物体を鉛直上向きに投げた後の、重力だけが働く運動を扱います。これは等加速度直線運動の代表的な例です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鉛直投げ上げ運動の性質: 初速度 \(v_0\) を持ち、重力加速度 \(g\) によって常に下向きの加速度を受ける「等加速度直線運動」です。
- 座標軸の設定と符号: 運動を記述する基準(原点、正の向き)を最初に決めることが極めて重要です。一般的に、投げ上げた点を原点とし、鉛直上向きを正の向きとします。この場合、初速度は \(+v_0\)、加速度は常に下向きなので \(-g\) となります。
- 等加速度直線運動の3公式: 座標軸の設定に従って、以下の3つの公式を使い分けます。
- \(v = v_0 + at\)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
- 運動の対称性: 投げ上げ運動では、最高点を境に上昇と下降が対称的になります。同じ高さの地点を通過するときの速さの大きさは上昇時と下降時で等しく、最高点までの上昇時間と最高点から元の高さまで下降する時間は等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、最高点では速度が \(0\) になるという物理的条件を利用して、最高点に達するまでの時間を計算します。
- (2)では、(1)で求めた時間を使って最高点の高さを計算する方法と、時間を含まない公式で直接計算する方法があります。
- (3)では、屋上に戻るということは変位が \(0\) になることを利用して時間を計算する方法と、運動の対称性を利用して計算する方法があります。
- (4)では、指定された時刻での変位を計算し、その絶対値からビルの高さを求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
小球が「最高点に達する」という条件が物理的に何を意味するかを考えます。鉛直上向きに投げ上げられた物体は、速度が徐々に減少し、最高点で一瞬だけ速度が \(0\) になります。この条件を、速度と時間の関係式に適用して時間を求めます。
この設問における重要なポイント
- 座標軸を設定する:ビルの屋上を原点(\(y=0\))、鉛直上向きを正の向きとする。
- 物理量を符号付きで整理する:初速度 \(v_0 = +29.4 \text{ m/s}\)、加速度 \(a = -g = -9.8 \text{ m/s}^2\)。
- 最高点の条件を適用する:最高点では速度 \(v = 0\)。
- 適切な公式を選択する:速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用いる。
具体的な解説と立式
鉛直上向きを正の向き、屋上を原点(\(y=0\))とします。
初速度は \(v_0 = 29.4 \text{ m/s}\)、加速度は重力加速度のみなので \(a = -g = -9.8 \text{ m/s}^2\) です。
最高点に達したとき、速度は \(v=0\) になります。このときの時刻を \(t_1\) とします。
等加速度直線運動の速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) に、これらの値を代入します。
$$ 0 = v_0 – g t_1 $$
数値を代入すると、
$$ 0 = 29.4 – 9.8 \times t_1 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
上記で立式した方程式を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 29.4 – 9.8 \times t_1 \\[2.0ex]9.8 \times t_1 &= 29.4 \\[2.0ex]t_1 &= \displaystyle\frac{29.4}{9.8} \\[2.0ex]&= 3.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
上に投げたボールは、重力によってだんだん遅くなり、一番高いところで一瞬だけ止まります。この「速さが0になる」という点がポイントです。
初めの速さは \(29.4 \text{ m/s}\) で、重力によって1秒間に \(9.8 \text{ m/s}\) ずつ速さが減っていきます。
速さが \(0\) になるまでの時間は、「初めの速さ ÷ 1秒あたりに減る速さ」で計算できます。
したがって、\(29.4 \div 9.8 = 3.0\) なので、3.0秒後に最高点に達することがわかります。
小球が最高点に達するまでの時間は \(3.0 \text{ s}\) です。計算結果は妥当であり、有効数字も問題文に合わせています。
問(2)
思考の道筋とポイント
「最高点の高さ \(h\)」は、(1)で求めた時間 \(t_1 = 3.0 \text{ s}\) の間に小球が屋上から移動した距離(変位)です。変位と時間の関係式を使って計算するのが一つの方法です。また、時間を使わない公式を使えば、(1)の結果に依存せずに直接高さを求めることもできます。
この設問における重要なポイント
- 最高点の高さ \(h\) は、時刻 \(t_1\) での変位 \(y\) に等しい。
- 解法1: (1)で求めた時間 \(t_1\) を、変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) に代入する。
- 解法2: 時間を含まない速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を利用する。
具体的な解説と立式
(1)と同じ座標設定(屋上原点、上向き正)を用います。
最高点の高さ \(h\) は、時刻 \(t_1 = 3.0 \text{ s}\) での変位 \(y\) に等しいので、\(h = y(t_1)\) です。
変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を用いて、
$$ h = v_0 t_1 – \displaystyle\frac{1}{2} g t_1^2 $$
数値を代入すると、
$$ h = 29.4 \times 3.0 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times (3.0)^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
$$
\begin{aligned}
h &= 29.4 \times 3.0 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 88.2 – 4.9 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 88.2 – 44.1 \\[2.0ex]&= 44.1 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁(\(9.8\))と3桁(\(29.4\))ですが、解答の慣例に従い2桁に丸めます。
$$ h \approx 44 \text{ [m]} $$
思考の道筋とポイント
時間 \(t_1\) を使わずに、速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用いて直接 \(h\) を求めます。最高点では \(v=0\)、このときの変位は \(y=h\) です。加速度は \(a=-g\) です。
具体的な解説と立式
$$ 0^2 – v_0^2 = 2(-g)h $$
$$ -v_0^2 = -2gh $$
これを \(h\) について解くと、
$$ h = \displaystyle\frac{v_0^2}{2g} $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
$$
\begin{aligned}
h &= \displaystyle\frac{(29.4)^2}{2 \times 9.8} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{864.36}{19.6} \\[2.0ex]&= 44.1 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮して、
$$ h \approx 44 \text{ [m]} $$
方法1: (1)で最高点まで3.0秒かかるとわかったので、この3.0秒間にどれだけ進むかを計算します。「進んだ距離 = (初めの速さ \(\times\) 時間) – (重力で減速したぶんの距離)」で計算でき、\(29.4 \times 3.0 – 0.5 \times 9.8 \times 3.0^2 = 44.1\) となります。
方法2: 時間を使わない公式「(終わりの速さ)\(^2\) – (初めの速さ)\(^2\) = \(2 \times\) 加速度 \(\times\) 距離」を使います。最高点では速さが0なので、「\(0^2 – 29.4^2 = 2 \times (-9.8) \times h\)」となります。これを \(h\) について解いても \(44.1\) が求まります。
最高点の高さは屋上から約 \(44 \text{ m}\) です。2つの異なる方法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。
問(3)
思考の道筋とポイント
「投げてから小球が屋上にもどる」とは、出発点に戻ってくるということです。座標の上では、変位 \(y\) が再び \(0\) になることを意味します。この条件を変位と時間の関係式に適用して、時刻 \(t_2\) を求めます。また、投げ上げ運動の「対称性」を利用すると、より簡単に計算できます。
この設問における重要なポイント
- 解法1: 屋上に戻ったとき、変位 \(y=0\) であることを利用する。
- 解法2: 運動の対称性を利用する。最高点までの上昇時間と、最高点から元の高さまで下降する時間は等しい。したがって、往復時間 \(t_2\) は、片道の時間 \(t_1\) の2倍になる。
具体的な解説と立式
変位 \(y=0\) となる時刻 \(t_2\) を求めます。変位と時間の関係式 \(y = v_0 t – \displaystyle\frac{1}{2} g t^2\) を用います。
$$ 0 = v_0 t_2 – \displaystyle\frac{1}{2} g t_2^2 $$
数値を代入すると、
$$ 0 = 29.4 \times t_2 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_2^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
$$
\begin{aligned}
0 &= 29.4 t_2 – 4.9 t_2^2
\end{aligned}
$$
両辺を \(4.9\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
0 &= 6 t_2 – t_2^2 \\[2.0ex]0 &= t_2 (6 – t_2)
\end{aligned}
$$
この方程式の解は \(t_2=0\) と \(t_2=6.0\) です。\(t_2=0\) は投げた瞬間を表すので、屋上に戻ってきた時刻は \(t_2 = 6.0 \text{ s}\) です。
思考の道筋とポイント
鉛直投げ上げ運動では、最高点を境に上昇と下降の運動は対称的です。したがって、屋上から最高点まで上昇するのにかかる時間 \(t_1\) と、最高点から屋上まで下降するのにかかる時間は等しくなります。よって、屋上に戻るまでの時間 \(t_2\) は、最高点に達するまでの時間 \(t_1\) の2倍になります。
具体的な解説と立式
$$ t_2 = 2 t_1 $$
使用した物理公式
- 鉛直投げ上げ運動の対称性
(1)より \(t_1 = 3.0 \text{ s}\) なので、
$$
\begin{aligned}
t_2 &= 2 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 6.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
方法1: 「元の高さに戻ってくる」ということは「位置の変化(変位)が0」ということです。変位の式が0になる時間を計算すると、答えが \(t=0\)(投げた瞬間)と \(t=6.0\)(戻ってきた瞬間)の2つ出てきます。
方法2: 投げ上げ運動は、上がるのにかかる時間と、同じ高さまで下りるのにかかる時間が同じです。(1)で最高点まで3.0秒かかるとわかったので、そこから屋上まで戻ってくるのにも3.0秒かかります。したがって、合計時間は \(3.0 + 3.0 = 6.0\) 秒です。
屋上に戻るまでの時間は \(6.0 \text{ s}\) です。対称性を利用する解法は非常に簡潔で強力です。
問(4)
思考の道筋とポイント
「投げてから \(9.0\) 秒後に小球が地上に落下した」という情報から、「ビルの高さ \(H\)」を求めます。屋上を原点(\(y=0\))、上向きを正としているので、地上は負の変位を持つ位置になります。時刻 \(t = 9.0 \text{ s}\) での小球の変位 \(y\) を計算し、その大きさ(絶対値)がビルの高さ \(H\) に相当します。
この設問における重要なポイント
- 時刻 \(t = 9.0 \text{ s}\) での変位 \(y\) を計算する。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を用いる。
- ビルの高さ \(H\) は、地面の位置の変位 \(y\) の絶対値、つまり \(H = |y|\) である。
具体的な解説と立式
時刻 \(t = 9.0 \text{ s}\) での変位 \(y\) を計算します。
$$ y = v_0 t – \displaystyle\frac{1}{2} g t^2 $$
数値を代入すると、
$$ y = 29.4 \times 9.0 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times (9.0)^2 $$
ビルの高さ \(H\) は、この変位 \(y\) の大きさ(絶対値)です。
$$ H = |y| $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
$$
\begin{aligned}
y &= 29.4 \times 9.0 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times 81.0 \\[2.0ex]&= 264.6 – 4.9 \times 81.0 \\[2.0ex]&= 264.6 – 396.9 \\[2.0ex]&= -132.3 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
変位 \(y\) が負の値になったのは、小球が原点である屋上よりも下にあることを示しており、物理的に正しいです。
ビルの高さ \(H\) はこの変位の大きさなので、
$$ H = |-132.3| = 132.3 \text{ [m]} $$
有効数字2桁に丸めると、
$$ H \approx 1.3 \times 10^2 \text{ [m]} $$
9.0秒後にボールがどの高さにいるかを計算します。
「ボールの位置 = (初めの速さで9.0秒間上に進んだ距離) – (重力で下に引き戻された距離)」で計算します。
計算すると、\(29.4 \times 9.0 – 0.5 \times 9.8 \times 9.0^2 = 264.6 – 396.9 = -132.3 \text{ m}\) となります。
「マイナス」は「屋上(出発点)よりも下にいる」という意味です。つまり、屋上から \(132.3 \text{ m}\) 下の地面にいるということになります。
したがって、ビルの高さは \(132.3 \text{ m}\) であり、およそ \(1.3 \times 10^2 \text{ m}\) となります。
ビルの高さは \(1.3 \times 10^2 \text{ m}\) です。計算結果の符号が物理的な状況(屋上より下)を正しく表していることを確認し、最終的に絶対値をとって高さを求めるというプロセスが重要です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 鉛直投げ上げ運動のモデル化:
- 核心: 鉛直投げ上げ運動は、初速度 \(v_0\) を持ち、常に鉛直下向きに一定の重力加速度 \(g\) を受ける等加速度直線運動である、と正しくモデル化することが全ての基本です。
- 理解のポイント: このモデル化により、複雑に見える現象を、等加速度直線運動の3公式というシンプルな数学的ツールで分析できることがわかります。
- 座標軸の設定と符号の厳密な適用:
- 核心: 物理量をベクトルとして捉え、最初に設定した座標軸(原点と正の向き)に従って、初速度 \(v_0\)、変位 \(y\)、速度 \(v\)、加速度 \(a\) の符号を決定することが、計算ミスを防ぐ上で最も重要です。
- 理解のポイント:
- 上向きを正とすると、初速度は \(v_0 > 0\)、重力加速度は常に下向きなので \(a = -g\) となります。
- 変位 \(y\) は、原点(屋上)より上なら正、下なら負の値をとります。
- 速度 \(v\) は、上昇中は正、下降中は負の値をとります。
- 物理的条件の数式化:
- 核心: 「最高点に達する」「屋上にもどる」といった日本語の表現を、物理的な数式(\(v=0\), \(y=0\))に正確に翻訳する能力が問われます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 斜方投射: 運動を水平方向(等速直線運動)と鉛直方向(鉛直投げ上げ)に分解して考えます。この問題で培った鉛直方向の運動の分析能力がそのまま活かされます。
- 力学的エネルギー保存則を用いる問題: (2)の最高点の高さ \(h\) は、運動エネルギーが位置エネルギーに変換される過程として、\(\displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 = mgh\) というエネルギー保存則からも求めることができます。運動方程式とエネルギー保存則、両方のアプローチができると理解が深まります。
- 衝突と組み合わせた問題: 地面に落下した小球が跳ね返る場合など、複数の運動が組み合わさった問題でも、各区間(投げ上げ、落下、跳ね返り後)をそれぞれ等加速度直線運動として分析します。
- 初見の問題での着眼点:
- 座標軸を宣言する: 解答を書き始める前に、必ず「どの点を原点とし、どちらの向きを正とするか」を明記します。これが思考のブレを防ぎます。
- キーワードを数式に変換: 問題文中の「最高点」「元の位置」「地面」などのキーワードを見つけ、それぞれが \(v=0\), \(y=0\), \(y=-H\) のように、どの物理量がどのような値をとる条件に対応するのかを整理します。
- 対称性の利用を検討: (3)のように、出発点と同じ高さに戻ってくる時間を問われた場合、まず「対称性が使えないか?」と考えます。最高点までの時間の2倍、という考え方は計算を大幅に簡略化します。
- 時間 \(t\) の要不要で公式を選択: 求めたい量と与えられている量を見て、時間 \(t\) が関与しない場合は、\(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を使うと計算が楽になることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 加速度の符号ミス:
- 誤解: 上昇中も下降中も、なんとなく加速度の符号を変えてしまう。あるいは、常に \(a=g\) としてしまう。
- 対策: 重力は常に地球の中心(下向き)に働く力です。したがって、一度「上向きを正」と決めたら、運動のどの段階であっても加速度は常に \(a=-g\) で一定です。これを徹底してください。
- 変位と距離(高さ)の混同:
- 誤解: (4)で計算した変位 \(y = -132.3 \text{ m}\) をそのまま答えとしてしまう。
- 対策: 「変位」は向きを含むベクトル量(符号があり得る)、「高さ」や「距離」は大きさのみのスカラー量(常に0以上)であることを区別します。ビルの高さを問われたら、変位の絶対値 \(H = |y|\) をとることを忘れないようにしましょう。
- 対称性の誤用:
- 誤解: (4)のように、出発点(屋上)と終点(地面)の高さが異なる運動に対しても、対称性を適用しようとしてしまう。
- 対策: 運動の対称性は、あくまで「同じ高さの2点間」の運動(例:屋上→最高点→屋上)に対してのみ成立します。適用できる範囲を正しく理解することが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 速度と時間の関係式 (\(v = v_0 + at\)):
- 選定理由: (1)では、「最高点」という速度に関する条件(\(v=0\))から「時間 \(t_1\)」を求めたい。速度 \(v\) と時間 \(t\) を直接結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: 加速度の定義を積分した、等加速度直線運動の最も基本的な関係式の一つです。
- 変位と時間の関係式 (\(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)):
- 選定理由: (2), (3), (4)では、すべて「時間 \(t\)」と「変位 \(y\)」が関わっています。(2)は \(t_1\) から \(y=h\) を、(3)は \(y=0\) から \(t_2\) を、(4)は \(t=9.0\) から \(y=-H\) を求めるために使用します。
- 適用根拠: 速度を時間で積分して得られる、時間と位置を結びつける基本公式です。
- 速度と変位の関係式 (\(v^2 – v_0^2 = 2ay\)):
- 選定理由: (2)の別解で示したように、「時間 \(t\) の情報なしに」、初速度 \(v_0\) と終速度 \(v=0\) から変位 \(y=h\) を求めたい場合に非常に有効です。計算ステップを減らし、(1)の計算ミスが影響しないという利点があります。
- 適用根拠: 上記の2つの基本公式から時間 \(t\) を消去して導かれる関係式で、時間情報が不要な問題で威力を発揮します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(g=9.8\) の倍数に慣れる:
- 物理の問題では、\(g=9.8\) ときれいに割り切れる数値(例: \(19.6 = 2 \times 9.8\), \(29.4 = 3 \times 9.8\), \(49 = 5 \times 9.8\))が初速度や距離として与えられることが非常に多いです。これらの関係に気づくと、(1)の \(29.4/9.8\) や(3)の \(29.4t_2 – 4.9t_2^2 = 0\) のような計算が暗算レベルで素早く処理できます。
- 二次方程式はまず因数分解を試みる:
- (3)で出てくる \(t_2\) の二次方程式 \(6t_2 – t_2^2 = 0\) を見て、すぐに解の公式に飛びつかないこと。まずは共通因数 \(t_2\) でくくる \(t_2(6-t_2)=0\) という因数分解を試みるのが定石です。これにより、計算が格段に速く、かつ正確になります。
- 文字式で整理してから代入:
- (2)の別解のように、まず \(h = \displaystyle\frac{v_0^2}{2g}\) というように文字式で関係を導き出してから、最後に数値を代入する癖をつけると、物理的な見通しが良くなり、複雑な計算の途中でのミスを減らせます。
- 答えの吟味:
- 計算後に出た答えが物理的に妥当か、一瞬考える習慣をつけましょう。例えば、(4)で変位 \(y\) がマイナスになったとき、「屋上より下に落ちたのだから、マイナスで正しいな」と確認する。もしプラスの値が出たら、どこかで符号のミスがあったと気づくことができます。
基本例題8 水平投射
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「水平投射」です。物体を水平に投げ出したときの放物運動を扱います。この運動は、2つの単純な運動の組み合わせとして理解することが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の分解: 水平投射のような平面内の運動は、互いに直交する2つの方向(水平方向と鉛直方向)に分解して考えます。
- 水平方向の運動: 水平方向には力が働かない(空気抵抗は無視する)ため、物体は投げ出されたときの初速度のまま進み続ける「等速直線運動」をします。
- 鉛直方向の運動: 鉛直方向には重力だけが働くため、物体は初速度0で落下を始める「自由落下運動」をします。
- 各方向の運動の独立性: 水平方向の運動と鉛直方向の運動は、互いに影響を与えません。唯一「時間」だけが両方の運動に共通する物理量です。
- 速度の合成: ある瞬間の物体の速度は、その瞬間の水平方向の速度成分と鉛直方向の速度成分を、ベクトルとして合成することで求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、鉛直方向の運動(自由落下)に注目し、落下する高さから地面に当たるまでの時間を計算します。
- (2)では、(1)で求めた時間と、水平方向の運動(等速直線運動)の速さを用いて、水平に飛んだ距離を計算します。
- (3)では、地面に当たる瞬間の速度の水平成分と鉛直成分をそれぞれ求め、三平方の定理と三角比を用いて合成し、全体の速度の大きさと向き(角度)を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
小球が地面に当たるまでの時間 \(t\) は、鉛直方向に \(14.7 \text{ m}\) 落下するのにかかる時間によって決まります。水平方向の運動とは独立して、鉛直方向の運動(自由落下)だけを考えれば時間を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 座標軸を設定する:投げた点を原点とし、水平右向きをx軸の正、鉛直下向きをy軸の正の向きとする。
- 鉛直方向の運動は初速度 \(0\)、加速度 \(g\) の自由落下運動である。
- 落下距離 \(y = 14.7 \text{ m}\) となる時間 \(t\) を、自由落下の公式から求める。
具体的な解説と立式
投げた点を原点とし、水平方向にx軸、鉛直下向きにy軸をとります。
鉛直方向の運動は自由落下運動なので、初速度は \(v_{\text{0y}} = 0\)、加速度は \(a_y = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) です。
変位と時間の関係式 \(y = v_{\text{0y}} t + \displaystyle\frac{1}{2} a_y t^2\) は、
$$ y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2 $$
となります。地面に当たるまでの時間は、落下距離 \(y\) が \(14.7 \text{ m}\) になるときなので、
$$ 14.7 = \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 $$
使用した物理公式
- 自由落下の変位と時間の関係式: \(y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2\)
上記で立式した方程式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
14.7 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 \\[2.0ex]14.7 &= 4.9 \times t^2 \\[2.0ex]t^2 &= \displaystyle\frac{14.7}{4.9} \\[2.0ex]t^2 &= 3.0
\end{aligned}
$$
したがって、
$$ t = \sqrt{3.0} $$
ここで、\(\sqrt{3} \approx 1.732…\) であり、問題文の有効数字が2桁(\(9.8\))であるため、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$ t \approx 1.7 \text{ [s]} $$
ボールが横に飛ぶことと、下に落ちることは別々に考えられます。地面に着くまでの時間は、純粋に「高さ \(14.7 \text{ m}\) から物が自然に落ちる時間」と同じです。
自由落下の公式「落下距離 = \(0.5 \times\) 重力加速度 \(\times\) (時間)\(^2\)」を使います。
「\(14.7 = 0.5 \times 9.8 \times t^2\)」となり、これを解くと「\(t^2 = 3\)」なので、時間は \(\sqrt{3}\) 秒、およそ \(1.7\) 秒となります。
小球が地面に当たるまでの時間は約 \(1.7 \text{ s}\) です。計算過程、有効数字の処理ともに適切です。
問(2)
思考の道筋とポイント
水平方向に飛んだ距離 \(x\) は、水平方向の運動(等速直線運動)によって決まります。水平方向には、初速度 \(v_0 = 9.8 \text{ m/s}\) のままで、(1)で求めた時間 \(t\) だけ進み続けます。
この設問における重要なポイント
- 水平方向の運動は、速さが一定(\(v_x = v_0 = 9.8 \text{ m/s}\))の等速直線運動である。
- 「距離 = 速さ × 時間」の公式を用いる。
- 時間は(1)で求めた値を使う。計算途中では丸める前の \(\sqrt{3.0}\) を使うとより正確になる。
具体的な解説と立式
水平方向の運動は等速直線運動なので、その速さは常に初速度 \(v_0 = 9.8 \text{ m/s}\) と等しいです。
地面に当たるまでの時間 \(t = \sqrt{3.0} \text{ s}\) の間に進む水平距離 \(x\) は、
$$ x = v_0 t $$
数値を代入すると、
$$ x = 9.8 \times \sqrt{3.0} $$
使用した物理公式
- 等速直線運動の距離の式: \(x = vt\)
$$
\begin{aligned}
x &= 9.8 \times \sqrt{3.0} \\[2.0ex]&\approx 9.8 \times 1.732… \\[2.0ex]&= 16.97… \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ x \approx 17 \text{ [m]} $$
ボールは横方向には、ずっと秒速 \(9.8 \text{ m}\) の一定の速さで飛んでいます。(1)で、ボールが空中にいる時間は約 \(1.7\) 秒だとわかりました。
したがって、横に飛んだ距離は「速さ \(\times\) 時間」で、\(9.8 \times 1.73 \approx 17\) メートルとなります。
水平方向に飛んだ距離は約 \(17 \text{ m}\) です。計算過程、有効数字の処理ともに適切です。
問(3)
思考の道筋とポイント
地面に当たる瞬間の速度 \(V\) は、その瞬間の「水平方向の速度成分 \(v_x\)」と「鉛直方向の速度成分 \(v_y\)」をベクトルとして合成したものです。
まず各成分の速さを求め、それらを使って三平方の定理で合成速度の大きさ \(V\) を、三角比で地面となす角 \(\theta\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 速度の水平成分 \(v_x\) は、常に初速度 \(v_0\) に等しい。
- 速度の鉛直成分 \(v_y\) は、自由落下の公式 \(v_y = gt\) で計算する。
- 合成速度の大きさ \(V\) は、三平方の定理 \(V = \sqrt{v_x^2 + v_y^2}\) で求める。
- 地面となす角 \(\theta\) は、\(v_x\) と \(v_y\) の関係(三角比)から求める。
具体的な解説と立式
地面に当たる瞬間の速度の各成分を求めます。
水平成分 \(v_x\) は常に一定です。
$$ v_x = v_0 = 9.8 \text{ m/s} $$
鉛直成分 \(v_y\) は、時間 \(t = \sqrt{3.0} \text{ s}\) 後の自由落下の速さなので、
$$ v_y = gt = 9.8 \times \sqrt{3.0} \text{ m/s} $$
合成速度の大きさ \(V\) は、これらの成分から三平方の定理を用いて求めます。
$$ V = \sqrt{v_x^2 + v_y^2} $$
地面となす角 \(\theta\) は、図より \(v_x\) と \(v_y\) からなる直角三角形の角であり、その関係は次式で表せます。
$$ \tan\theta = \displaystyle\frac{v_y}{v_x} $$
使用した物理公式
- 等速直線運動の速度: \(v_x = v_0\)
- 自由落下の速度と時間の関係式: \(v_y = gt\)
- 三平方の定理: \(V^2 = v_x^2 + v_y^2\)
- 三角比の定義: \(\tan\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)
各成分の値を比較します。
$$ v_x = 9.8 $$
$$ v_y = 9.8\sqrt{3} $$
この2つの速度成分の比は、
$$ v_x : v_y = 9.8 : 9.8\sqrt{3} = 1 : \sqrt{3} $$
これは、辺の比が \(1:\sqrt{3}:2\) となる特別な直角三角形(\(30^\circ, 60^\circ, 90^\circ\))の関係を示しています。
図から、\(v_x\) が底辺、\(v_y\) が対辺に対応するので、角度 \(\theta\) は \(60^\circ\) となります。
$$ \theta = 60^\circ $$
合成速度 \(V\) はこの直角三角形の斜辺の長さに相当します。辺の比が \(1:\sqrt{3}:2\) なので、斜辺 \(V\) の大きさは、底辺 \(v_x\) の大きさの2倍になります。
$$
\begin{aligned}
V &= v_x \times 2 \\[2.0ex]&= 9.8 \times 2 \\[2.0ex]&= 19.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ V \approx 20 \text{ [m/s]} $$
地面にぶつかる瞬間、ボールは「横向きの速さ」と「下向きの速さ」の両方を持っています。
横向きの速さ \(v_x\) は、最初と同じ \(9.8 \text{ m/s}\) です。
下向きの速さ \(v_y\) は、重力で \(\sqrt{3}\) 秒間加速された結果で、計算すると \(9.8 \times \sqrt{3} \text{ m/s}\) となります。
この2つの速度の矢印で直角三角形を作ると、辺の比が \(9.8 : 9.8\sqrt{3}\)、つまり \(1 : \sqrt{3}\) となります。これは、角度が \(30^\circ, 60^\circ\) の有名な直角三角形です。この三角形の辺の比は \(1:\sqrt{3}:2\) なので、地面との角度は \(60^\circ\) で、全体の速さ(斜辺)は一番短い辺(横向きの速さ)の2倍、つまり \(9.8 \times 2 = 19.6 \text{ m/s}\)(約 \(20 \text{ m/s}\))となります。
地面に当たるときの速度の大きさは約 \(20 \text{ m/s}\)、地面となす角は \(60^\circ\) です。速度の成分の比が特別な直角三角形に対応することに気づくと、計算が大幅に簡略化できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の分解という思考法:
- 核心: 水平投射という2次元の放物運動を、互いに影響しない「水平方向の運動」と「鉛直方向の運動」という2つの単純な1次元運動に分解して考えること。これが放物運動を攻略するための最も重要な考え方です。
- 理解のポイント:
- 水平方向: 力が働かないため、初速度 \(v_0\) のまま進む等速直線運動。
- 鉛直方向: 重力だけが働くため、初速度 \(0\) で落下する自由落下運動。
- 時間 \(t\) の共通性:
- 核心: 分解された水平・鉛直の2つの運動は、独立しているように見えて、「時間 \(t\)」という共通のパラメータによって結びつけられています。
- 理解のポイント: 鉛直方向に落下する時間と、水平方向に進む時間は全く同じです。そのため、一方の運動から時間を求め、それをもう一方の運動の計算に利用することができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 斜方投射: 水平投射の最も一般的な応用例です。運動を分解する考え方は全く同じで、違いは鉛直方向の運動が「自由落下」から「鉛直投げ上げ」に変わるだけです。鉛直方向の初速度が \(0\) でなくなります。
- 力学的エネルギー保存則の利用: (3)の地面に当たる速さ \(V\) は、エネルギー保存則を使っても求められます。初めのエネルギー(運動エネルギー+位置エネルギー)と終わりのエネルギー(運動エネルギー)が等しいことから、\(\displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 + mgy = \displaystyle\frac{1}{2}mV^2\) という式を立て、速さ \(V\) を直接計算できます。
- 動く座標系からの投射: 電車の中からボールを投げるなど、観測者が動いている場合の問題。これも運動の分解と相対速度の考え方を組み合わせることで解くことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 座標軸の設定: まず、原点とx軸(水平)、y軸(鉛直)の正の向きを決めます。水平投射では、投げた点を原点、水平方向をx軸の正、鉛直下向きをy軸の正とすると、全ての物理量が正の値となり計算が簡単になります。
- 思考の分離: 「水平方向だけを見る」「鉛直方向だけを見る」と、意識的に思考を切り替えます。
- 時間 \(t\) を求める: まず、どちらかの運動(通常は情報が多い鉛直方向の運動)に着目して、地面に落下するまでの時間 \(t\) を求めます。この \(t\) が、もう一方の運動を考える際の鍵となります。
- 速度の合成: 速度の大きさと向きを問われたら、必ず「x成分 \(v_x\)」と「y成分 \(v_y\)」を個別に計算し、最後に三平方の定理と三角比で合成する、という手順を思い出します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 水平運動と鉛直運動の混同:
- 誤解: 水平方向の運動にも重力加速度 \(g\) が影響すると考え、\(x = v_0 t – \frac{1}{2}gt^2\) のような誤った式を立ててしまう。
- 対策: 「力のない方向には加速度はゼロ」という運動の法則を徹底します。水平方向には力が働かないので、加速度は \(0\)。したがって、常に等速直線運動です。
- 鉛直方向の初速度の誤解:
- 誤解: 鉛直方向の運動を考える際に、初速度を \(v_0\) と勘違いしてしまう。
- 対策: 「水平投射」という言葉の通り、初速度は水平方向にしかありません。したがって、鉛直方向の初速度は \(v_{0y}=0\) です。これを明確に意識することが重要です。
- 速度と速度成分の混同:
- 誤解: (3)で地面に当たる速さを問われたときに、鉛直成分の速さ \(v_y\) だけを答えてしまう。
- 対策: 速度はベクトルであり、合成された結果であることを常に意識します。必ず \(v_x\) と \(v_y\) の両方を考慮し、それらを合成した \(V\) が求める速さであることを理解しましょう。速度のベクトル図を描く習慣をつけると、このミスは防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 鉛直方向: \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) (問1)
- 選定理由: 「時間 \(t\)」を求めるのが目的。鉛直方向の情報として「落下高さ \(y\)」が与えられているため、\(y\) と \(t\) を直接結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: これは、等加速度直線運動の一般式 \(y = v_{0y}t + \frac{1}{2}a_yt^2\) に、鉛直方向の条件(初速度 \(v_{0y}=0\)、加速度 \(a_y=g\))を代入したものです。
- 水平方向: \(x = v_0t\) (問2)
- 選定理由: 「水平距離 \(x\)」を求めるのが目的。(1)で「時間 \(t\)」が求まり、「水平の初速度 \(v_0\)」は与えられているため、これら3つの量を結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: これは、加速度が \(0\) の等速直線運動の定義そのものです。
- 速度の合成: \(V = \sqrt{v_x^2 + v_y^2}\) と \(\tan\theta = \frac{v_y}{v_x}\) (問3)
- 選定理由: 速度はベクトルであり、水平成分 \(v_x\) と鉛直成分 \(v_y\) は直交しています。直交する2つのベクトルを合成してその大きさを求めるには、数学的なツールである「三平方の定理」を用います。また、その向き(角度)を求めるには「三角比」を用いるのが基本です。
- 適用根拠: ベクトルの合成に関する数学的な定義に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 特別な直角三角形への感度を高める:
- (3)のように、速度の成分の比が \(v_x : v_y = 1 : \sqrt{3}\) となりました。この比を見たら、即座に「辺の比が \(1:\sqrt{3}:2\) の \(30^\circ, 60^\circ, 90^\circ\) の直角三角形だ」と気づけるようにしましょう。これにより、面倒な平方根の計算やアークタンジェントの計算をせずに、速さの大きさと角度を瞬時に求めることができます。\(1:1:\sqrt{2}\) のパターンも頻出です。
- \(g=9.8\) の計算に慣れる:
- \(14.7 \div 4.9 = 3\) のように、\(g=9.8\) やその半分の \(4.9\) で割り切れる数値が問題設定でよく使われます。こうした計算に慣れておくと、時間を短縮できます。
- 必ず図を描く:
- 特に(3)では、\(v_x\), \(v_y\), \(V\), \(\theta\) の関係をベクトル図として描くことが非常に重要です。図を描くことで、\(\tan\theta\) が \(\frac{v_y}{v_x}\) なのか \(\frac{v_x}{v_y}\) なのかを視覚的に確認でき、間違いを防げます。
- 途中計算では文字や根号を残す:
- (2)の計算で、\(t \approx 1.7\) を代入するのではなく、\(t=\sqrt{3}\) のまま \(x = 9.8\sqrt{3}\) として計算を進める方が、誤差が少なく、より正確な答えが得られます。最後の最後で近似値を代入する癖をつけましょう。
基本例題9 斜方投射
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「斜方投射」です。物体を地面から斜め上向きに投げ出したときの放物運動を扱います。この運動は、水平投射と同様に、2つの単純な運動の組み合わせとして分析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の分解: 斜方投射の運動を、互いに直交する「水平方向」と「鉛直方向」に分解して考えます。
- 初速度の分解: 最初に与えられた初速度 \(v_0\) を、三角比を用いて水平成分 \(v_{0x}\) と鉛直成分 \(v_{0y}\) に分解します。
- 水平方向の運動: 水平方向には力が働かないため、初速度の水平成分 \(v_{0x}\) のままで進む「等速直線運動」をします。
- 鉛直方向の運動: 鉛直方向には重力だけが働くため、初速度の鉛直成分 \(v_{0y}\) で投げ上げられた「鉛直投げ上げ運動」をします。
- 運動の対称性: 地面から投げ上げて地面に戻る運動では、最高点を境に上昇と下降が対称的になります。最高点までの時間と、最高点から地面に戻るまでの時間は等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、鉛直方向の運動(鉛直投げ上げ)に注目し、最高点では鉛直方向の速度が \(0\) になるという条件から時間を計算します。
- (2)では、(1)で求めた時間を使って、鉛直方向の変位(最高点の高さ)と水平方向の変位をそれぞれ計算します。
- (3)では、運動の対称性を利用して、再び地上にもどるまでの時間と、その間の水平到達距離を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
小球が「最高点に達する」という条件は、鉛直方向の速度成分 \(v_y\) が一瞬だけ \(0\) になることを意味します。したがって、運動を水平と鉛直に分解し、鉛直方向の運動(鉛直投げ上げ)について速度と時間の関係式を立てることで、最高点に達するまでの時間 \(t_1\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 座標軸を設定する:投げた点を原点とし、水平右向きをx軸の正、鉛直上向きをy軸の正の向きとする。
- 初速度を分解する:\(v_0 = 20 \text{ m/s}\) を水平成分 \(v_{0x}\) と鉛直成分 \(v_{0y}\) に分解する。
- 鉛直方向の運動は、初速度 \(v_{0y}\)、加速度 \(-g\) の等加速度直線運動(鉛直投げ上げ)である。
- 最高点の条件 \(v_y = 0\) を利用する。
具体的な解説と立式
投げた点を原点とし、水平方向にx軸、鉛直上向きにy軸をとります。
初速度 \(v_0 = 20 \text{ m/s}\) を、水平成分 \(v_{0x}\) と鉛直成分 \(v_{0y}\) に分解します。
$$ v_{0x} = v_0 \cos30^\circ = 20 \times \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} = 10\sqrt{3} \text{ m/s} $$
$$ v_{0y} = v_0 \sin30^\circ = 20 \times \displaystyle\frac{1}{2} = 10 \text{ m/s} $$
鉛直方向の運動について、速度と時間の関係式 \(v_y = v_{0y} + a_y t\) を考えます。加速度は \(a_y = -g = -9.8 \text{ m/s}^2\) です。
最高点では \(v_y = 0\) なので、このときの時刻を \(t_1\) とすると、
$$ 0 = v_{0y} – g t_1 $$
数値を代入すると、
$$ 0 = 10 – 9.8 \times t_1 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
上記で立式した方程式を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 10 – 9.8 \times t_1 \\[2.0ex]9.8 \times t_1 &= 10 \\[2.0ex]t_1 &= \displaystyle\frac{10}{9.8} \\[2.0ex]&= 1.02… \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ t_1 \approx 1.0 \text{ [s]} $$
斜めに投げたボールの運動は、「横に進む動き」と「縦に上がって下りる動き」に分けられます。最高点に達する時間は、縦の動きだけで決まります。
最初に上向きに持っている速さは \(20 \sin30^\circ = 10 \text{ m/s}\) です。この上向きの速さが、重力(1秒間に \(9.8 \text{ m/s}\) ずつ速さを減らす)によって \(0\) になるまでの時間を計算します。
時間は「初めの上向きの速さ ÷ 1秒あたりに減る速さ」で、\(10 \div 9.8 \approx 1.0\) 秒となります。
最高点に達するまでの時間は約 \(1.0 \text{ s}\) です。計算過程、有効数字の処理ともに適切です。
問(2)
思考の道筋とポイント
最高点の高さ \(h\) は、(1)で求めた時間 \(t_1\) の間の「鉛直方向の移動距離」です。また、最高点までの水平距離 \(x_1\) は、同じ時間 \(t_1\) の間の「水平方向の移動距離」です。それぞれの方向の運動法則に従って計算します。
この設問における重要なポイント
- 最高点の高さ \(h\): 鉛直方向の運動(鉛直投げ上げ)の変位の式で計算する。時間を含まない公式 \(v_y^2 – v_{0y}^2 = 2a_y y\) を使うと計算が簡単な場合が多い。
- 水平距離 \(x_1\): 水平方向の運動(等速直線運動)の距離の式で計算する。
- 計算には(1)で求めた時間 \(t_1\) の、丸める前の値(\(10/9.8\))を使うとより正確になる。
具体的な解説と立式
最高点の高さ \(h\) の計算
鉛直方向の運動について、時間を含まない公式 \(v_y^2 – v_{0y}^2 = 2a_y y\) を用います。
最高点では \(v_y=0\)、変位は \(y=h\)、加速度は \(a_y=-g\) です。
$$ 0^2 – v_{0y}^2 = 2(-g)h $$
$$ h = \displaystyle\frac{v_{0y}^2}{2g} $$
最高点までの水平距離 \(x_1\) の計算
水平方向の運動は、速さ \(v_{0x}\) の等速直線運動です。時間 \(t_1\) の間に進む距離 \(x_1\) は、
$$ x_1 = v_{0x} t_1 $$
使用した物理公式
- 鉛直方向: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
- 水平方向: \(x = vt\)
高さ \(h\) の計算:
$$
\begin{aligned}
h &= \displaystyle\frac{(10)^2}{2 \times 9.8} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{100}{19.6} \\[2.0ex]&= 5.102… \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(h \approx 5.1 \text{ m}\)。
水平距離 \(x_1\) の計算:
(1)で求めた \(t_1 = \frac{10}{9.8} \text{ s}\) を使います。
$$
\begin{aligned}
x_1 &= v_{0x} t_1 \\[2.0ex]&= (10\sqrt{3}) \times \left(\displaystyle\frac{10}{9.8}\right) \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{100\sqrt{3}}{9.8} \\[2.0ex]&\approx \displaystyle\frac{100 \times 1.732}{9.8} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{173.2}{9.8} \\[2.0ex]&= 17.67… \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(x_1 \approx 18 \text{ m}\)。
高さh: 上向きの速さが \(10 \text{ m/s}\) から \(0\) になるまでにどれだけ高く上がるかを計算します。時間を使わない公式を使うと、\(h = (10^2) / (2 \times 9.8) \approx 5.1\) メートルと求まります。
水平距離x₁: 横方向には \(10\sqrt{3}\) (約 \(17.3\)) m/s の一定の速さで進みます。(1)で最高点まで約 \(1.0\) 秒かかるとわかったので、この間に進む距離は「速さ \(\times\) 時間」で、\(17.3 \times 1.02 \approx 18\) メートルとなります。
最高点の高さは約 \(5.1 \text{ m}\)、そこまでの水平距離は約 \(18 \text{ m}\) です。それぞれの方向の運動に分けて考えることで、正しく計算できました。
問(3)
思考の道筋とポイント
「再び地上にもどる」までの運動は、最高点を境に対称的です。この「対称性」を利用するのが最も簡単で効率的な解法です。
最高点まで上がるのにかかった時間と、最高点から同じ高さの地面に下りるのにかかる時間は等しくなります。同様に、全水平到達距離は、最高点までの水平距離のちょうど2倍になります。
この設問における重要なポイント
- 運動の対称性を利用する。
- 地上にもどるまでの時間 \(t_2\) は、最高点までの時間 \(t_1\) の2倍。
- 水平到達距離 \(x_2\) は、最高点までの水平距離 \(x_1\) の2倍。
具体的な解説と立式
地上にもどるまでの時間 \(t_2\) の計算
運動の対称性より、
$$ t_2 = 2t_1 $$
水平到達距離 \(x_2\) の計算
運動の対称性より、
$$ x_2 = 2x_1 $$
使用した物理公式
- 斜方投射の運動の対称性
時間 \(t_2\) の計算:
(1)の結果 \(t_1 = 1.02… \text{ s}\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
t_2 &= 2 \times 1.02… \\[2.0ex]&= 2.04… \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(t_2 \approx 2.0 \text{ s}\)。
水平距離 \(x_2\) の計算:
(2)の結果 \(x_1 = 17.67… \text{ m}\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
x_2 &= 2 \times 17.67… \\[2.0ex]&= 35.34… \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(x_2 \approx 35 \text{ m}\)。
ボールが上がって下りてくる運動は、最高点を真ん中にして左右対称です。
(1)で最高点まで \(1.0\) 秒かかったので、地面に戻ってくるまでの合計時間はその2倍の \(2.0\) 秒です。
(2)で最高点まで水平に \(18\) m 進んだので、地面に戻ってくるまでに進む合計の水平距離もその2倍の \(35\) m(計算の途中の値を使うと \(17.6 \times 2 \approx 35\))となります。
再び地上にもどるまでの時間は約 \(2.0 \text{ s}\)、水平到達距離は約 \(35 \text{ m}\) です。運動の対称性を利用することで、複雑な計算をせずに簡潔に解くことができました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の分解と合成:
- 核心: 斜方投射という複雑な2次元の運動を、単純な2つの1次元運動、すなわち「水平方向の等速直線運動」と「鉛直方向の鉛直投げ上げ運動」に分解して考えること。これが全ての基本です。
- 理解のポイント:
- 初速度の分解: まず初めに、初速度ベクトル \(v_0\) を水平成分 \(v_{0x} = v_0 \cos\theta\) と鉛直成分 \(v_{0y} = v_0 \sin\theta\) に分解することが第一歩です。
- 水平方向: 力が働かないため、速度 \(v_{0x}\) で等速直線運動をします。
- 鉛直方向: 重力だけが働くため、初速度 \(v_{0y}\) で鉛直投げ上げ運動(加速度 \(-g\) の等加速度直線運動)をします。
- 物理的条件の数式化と対称性の利用:
- 核心: 「最高点」や「再び地上にもどる」といった物理的な状況を、数式(\(v_y=0\) や \(y=0\))に変換する能力と、運動の対称性を理解し活用することが、問題を効率的に解く鍵となります。
- 理解のポイント:
- 最高点: 鉛直方向の速度成分がゼロになる点 (\(v_y=0\))。水平方向の速度はゼロにならないことに注意。
- 対称性: 同じ高さの地点から投げて同じ高さの地点に戻る場合、上昇にかかる時間と下降にかかる時間は等しく、最高点までの水平距離とそこから着地点までの水平距離も等しくなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 高さの異なる地点への投射: 崖の上から斜め上に投げ上げる、あるいは斜め下に投げ下ろす問題。この場合、運動の対称性は使えません。鉛直方向の変位 \(y\) が \(0\) ではなく、崖の高さ \(-H\) などになる点に注意して、等加速度運動の公式を直接適用します。
- 水平到達距離が最大になる角度: 初速度 \(v_0\) が一定のとき、水平到達距離 \(x_2\) が最大になるのは投射角が \(45^\circ\) のときである、という有名な性質を問う問題。
- 力学的エネルギー保存則の利用: (2)の最高点の高さ \(h\) は、\(\displaystyle\frac{1}{2}m v_0^2 = mgh + \displaystyle\frac{1}{2}m v_x^2\) のように、エネルギー保存則からも求めることができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 初速度の分解: 何はともあれ、まず初速度を \(v_{0x}\) と \(v_{0y}\) に分解します。これが全ての計算の元になります。
- 思考の分離: 「水平方向」と「鉛直方向」でノートのスペースを分けるなどして、2つの運動を完全に別物として扱います。
- 鉛直方向から攻める: 通常、最高点や落下時間など、運動の節目を決めるのは鉛直方向の運動です。まず鉛直方向の運動に着目して時間 \(t\) を求めることが多いです。
- 対称性のチェック: 投げた点と着地点が同じ高さかを確認します。同じ高さであれば、(3)のように対称性を利用して計算を大幅に簡略化できます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 初速度の分解ミス:
- 誤解: \(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) を逆にしてしまう。\(v_{0x} = v_0 \sin\theta\), \(v_{0y} = v_0 \cos\theta\) と間違える。
- 対策: 角度 \(\theta\) を挟む辺が \(\cos\)、向かい合う辺が \(\sin\) と覚える。あるいは、\(\theta=0\) の極端な場合(水平投射)を考えて、\(v_{0y}=0\) となるのは \(\sin0^\circ=0\) だから鉛直成分は \(\sin\) だ、と確認する習慣をつける。
- 最高点での速度の誤解:
- 誤解: 最高点では完全に静止する、つまり速度が \(0\) になると勘違いする。
- 対策: 最高点でゼロになるのは「鉛直方向の速度成分 \(v_y\)」だけです。水平方向には等速で運動し続けているため、最高点での速度は \(v_x = v_{0x}\) となります。速度ベクトルはゼロではありません。
- 加速度の混同:
- 誤解: 水平方向の運動にも加速度 \(-g\) を適用してしまう。
- 対策: 重力は鉛直下向きにしか働きません。したがって、加速度が存在するのは鉛直方向のみです。水平方向の加速度は常に \(0\) です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 鉛直方向: \(v_y = v_{0y} – gt\) (問1)
- 選定理由: 「最高点」という速度に関する条件(\(v_y=0\))から「時間 \(t_1\)」を求めたい。鉛直方向の速度と時間を結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: 鉛直方向の運動が、初速度 \(v_{0y}\)、加速度 \(-g\) の等加速度直線運動であるため、その速度式を適用します。
- 鉛直方向: \(v_y^2 – v_{0y}^2 = -2gh\) (問2)
- 選定理由: 「最高点の高さ \(h\)」を求めたい。初速度 \(v_{0y}\) と最高点での速度 \(v_y=0\) がわかっており、時間 \(t_1\) を使わずに直接高さを求められるため、この公式が効率的です。
- 適用根拠: 鉛直方向の等加速度直線運動において、時間を含まない関係式を適用します。
- 水平方向: \(x = v_{0x}t\) (問2)
- 選定理由: 「水平距離 \(x_1\)」を求めたい。水平方向は速さ \(v_{0x}\) が一定の等速直線運動であり、時間は(1)で求めた \(t_1\) を使うため、この単純な式で計算できます。
- 適用根拠: 水平方向の運動が等速直線運動であるという物理法則そのものです。
- 対称性の利用 (問3)
- 選定理由: 「再び地上にもどる」という、出発点と同じ高さに戻る運動について問われています。この場合、物理法則である「運動の対称性」を利用するのが、最も計算が少なく、速く、正確な解法だからです。
- 適用根拠: 力学的エネルギー保存則から、同じ高さでは同じ速さの大きさを持つことが導かれ、そこから運動の時間的な対称性も証明されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角比の値を正確に:
- \(\sin30^\circ = 0.5\), \(\cos30^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.866\) のような基本的な三角比の値は、素早く正確に使えるようにしておく。特に \(30^\circ, 45^\circ, 60^\circ\) は必須です。
- 計算しやすい形での立式:
- (1)で \(v_{0y} = 20\sin30^\circ = 10\) と先に計算しておくことで、その後の式が \(0 = 10 – 9.8t_1\) のように非常にシンプルになります。最初に各成分を計算しておくのが得策です。
- 途中計算での値の保持:
- (2)で \(x_1\) を計算する際、(1)で求めた \(t_1 \approx 1.0\) という近似値を使うと誤差が大きくなります。\(t_1 = 10/9.8\) という分数の形のまま代入するか、より多くの桁数(例: \(1.02\))を使って計算し、最後に有効数字に丸めるのが鉄則です。
- 単位の確認:
- 時間、距離、高さなど、最終的に求めた物理量の単位が正しいかを確認する癖をつけることで、次元的な間違い(例:時間を求めているのに単位が m/s になるなど)を防げます。
基本問題
22 自由落下
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「自由落下運動」です。問題文で与えられた情報(落下時間)から、落下した高さと最終的な速さを求める、等加速度直線運動の基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 自由落下運動: 「静かにはなす」という記述から、この運動が初速度 \(v_0=0\)、加速度が重力加速度 \(g\) の等加速度直線運動であることがわかります。
- 等加速度直線運動の公式: 状況に応じて、以下の3つの公式を使い分けます。
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) (変位と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) (速度と変位の関係、時間を含まない)
- 座標軸の設定: 計算を始める前に、どちらの向きを正とするか(例:鉛直下向きを正)を明確に決めると、符号のミスを防げます。
- 有効数字: 問題文で与えられた数値(\(2.0 \text{ s}\), \(9.8 \text{ m/s}^2\))は有効数字2桁なので、答えも2桁で表現する必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 高さの計算: 落下時間 \(t\) が与えられているので、変位と時間の関係式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を用いて、落下した高さ \(h\) を計算します。
- 速さの計算: 落下時間 \(t\) が与えられているので、速度と時間の関係式 \(v=gt\) を用いて、地面に達する直前の速さ \(v\) を計算します。
小球をはなした点の高さの計算
思考の道筋とポイント
「静かにはなす」とあるので、この運動は自由落下です。問題文で「\(2.0\) 秒後に地面に達した」と落下時間が与えられているので、この時間を使って落下した距離、すなわちマンションの高さを計算します。変位(距離)と時間の関係を結びつける公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動では、鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) となります。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が、自由落下では \(y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2\) と簡略化されます。
- この式に、与えられた時間 \(t=2.0 \text{ s}\) と重力加速度 \(g=9.8 \text{ m/s}^2\) を代入します。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向きとします。
小球は自由落下するので、初速度 \(v_0 = 0\)、加速度 \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) の等加速度直線運動をします。
小球をはなした点の高さを \(h\) [m] とすると、これは落下距離に等しくなります。
変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を用います。
$$ h = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2 $$
ここに、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(t = 2.0 \text{ s}\) を代入します。
$$ h = \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times (2.0)^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
上記で立式した方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
h &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 4.9 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 19.6 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、答えも2桁に丸めます。
$$ h \approx 20 \text{ [m]} $$
物が自然に落ちるときの落下距離は、「\(0.5 \times\) 重力加速度 \(\times\) (時間)\(^2\)」という公式で計算できます。
今回は、時間が \(2.0\) 秒、重力加速度が \(9.8\) なので、高さは \(0.5 \times 9.8 \times (2.0)^2 = 19.6\) メートルとなります。答えの桁数を問題文に合わせて、約 \(20\) メートルとします。
小球をはなした点の高さは \(19.6 \text{ m}\) であり、有効数字2桁で答えると \(20 \text{ m}\) となります。計算は自由落下の基本公式に当てはめるだけであり、妥当です。
地面に達する直前の速さの計算
思考の道筋とポイント
地面に達する直前の速さ \(v\) は、自由落下を始めてから \(2.0\) 秒後の速さに相当します。時間と速度の関係を結びつける公式を選択するのが最も直接的です。また、先に求めた高さを使って、時間を含まない公式から計算することも可能で、検算にもなります。
この設問における重要なポイント
- 解法1: 落下時間 \(t\) を使って、速度と時間の関係式 \(v=gt\) から速さを求める。
- 解法2(別解): 先に計算した落下高さ \(h\) を使って、時間を含まない公式 \(v^2=2gh\) から速さを求める。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。
地面に達する直前の速さを \(v\) [m/s] とします。
速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用います。自由落下なので、
$$ v = gt $$
ここに、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(t = 2.0 \text{ s}\) を代入します。
$$ v = 9.8 \times 2.0 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
$$
\begin{aligned}
v &= 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 19.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v \approx 20 \text{ [m/s]} $$
具体的な解説と立式
先に求めた高さ \(h = 19.6 \text{ m}\) を使って、速さを計算します。
速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用います。自由落下なので、
$$ v^2 = 2gh $$
ここに、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(h = 19.6 \text{ m}\) を代入します。
$$ v^2 = 2 \times 9.8 \times 19.6 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
$$
\begin{aligned}
v^2 &= 2 \times 9.8 \times 19.6
\end{aligned}
$$
ここで \(2 \times 9.8 = 19.6\) なので、
$$
\begin{aligned}
v^2 &= 19.6 \times 19.6 \\[2.0ex]v^2 &= 19.6^2 \\[2.0ex]v &= 19.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v \approx 20 \text{ [m/s]} $$
物が自然に落ちるときの速さは、「重力加速度 \(\times\) 時間」という公式で計算できます。
今回は、時間が \(2.0\) 秒、重力加速度が \(9.8\) なので、速さは \(9.8 \times 2.0 = 19.6\) m/s となります。答えの桁数を問題文に合わせて、約 \(20\) m/s とします。
地面に達する直前の速さは \(19.6 \text{ m/s}\) であり、有効数字2桁で答えると \(20 \text{ m/s}\) となります。2つの異なる解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 自由落下運動の定義の理解:
- 核心: 「静かにはなす」という言葉から、この運動が「初速度 \(v_0=0\)、加速度が一定の重力加速度 \(g\)」という等加速度直線運動の最もシンプルなケースであることを即座に見抜くことが重要です。
- 理解のポイント: この理解により、数ある運動の中から、等加速度直線運動の3公式という限られたツールセットを使って解けばよい、という明確な方針が立ちます。
- 物理量と公式の正しい対応付け:
- 核心: 問題で与えられた物理量(時間 \(t\))と、求めたい物理量(高さ \(h\)、速さ \(v\))の関係を正しく認識し、適切な公式を選択する能力が問われます。
- 理解のポイント:
- 時間 \(t\) から距離 \(y\) を求めたい → \(y = \frac{1}{2}gt^2\)
- 時間 \(t\) から速さ \(v\) を求めたい → \(v = gt\)
- この2つの公式は、自由落下運動における最も基本的な関係式です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 逆引き問題: 逆に「高さ \(h\)」や「地面に達する速さ \(v\)」が与えられ、「落下時間 \(t\)」を求める問題。同じ公式を、求める変数について解き直すだけで対応できます。
- 鉛直投げ上げ・投げ下ろし: 初速度 \(v_0\) が \(0\) でないだけで、加速度が \(g\)(または \(-g\))の等加速度直線運動であることに変わりはありません。この問題の考え方がそのまま基礎となります。
- 水平投射・斜方投射: これらの2次元の運動も、鉛直方向の運動は「自由落下」または「鉛直投げ上げ」です。したがって、この問題で問われている鉛直方向の計算は、より複雑な問題の構成要素として頻繁に登場します。
– 力学的エネルギー保存則: この問題は、\(mgh = \frac{1}{2}mv^2\) というエネルギー保存則の観点からも解くことができます。高さ \(h\) と速さ \(v\) の関係性を別の角度から理解するのに役立ちます。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の種類を特定: 問題文の「静かにはなす」「投げ下ろす」「投げ上げる」などのキーワードから、初速度 \(v_0\) の値を確定させます。
- 物理量の整理: 問題文で与えられている量(既知量)と、求めたい量(未知量)を、\(y, v_0, v, a, t\) の5つの記号で整理します。この問題では、\(t\) が既知で、\(y\) と \(v\) が未知です。
- 最適な公式の選択: 整理した物理量を見て、「どの公式を使えば一発で計算できるか」を考えます。この問題では、与えられた \(t\) から \(y\) と \(v\) をそれぞれ直接計算できる公式が存在します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 公式の混同・誤用:
- 誤解: 速さ \(v\) を求めたいのに、距離の公式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を使ってしまう。あるいはその逆。
- 対策: 各公式がどの物理量同士の関係を示しているのかを、単位(次元)も含めて正確に覚えることが基本です。速さ[m/s]と時間[s]の2乗が等しくなることはあり得ない、と単位でチェックする習慣も有効です。
- 有効数字の処理忘れ:
- 誤解: 計算結果の \(19.6\) をそのまま答えとして書いてしまう。
- 対策: 計算を始める前に、問題文で与えられた数値(この場合は \(2.0 \text{ s}\) と \(9.8 \text{ m/s}^2\))の有効数字が何桁かを確認する癖をつけます。そして、最終的な答えをその桁数に揃えることを徹底します。
- 指数の計算ミス:
- 誤解: \(t^2\) の計算で、\( (2.0)^2 \) を \(2.0 \times 2\) ではなく、単に \(2.0\) としてしまったり、うっかり \(2.0+2.0\) のように計算してしまったりする。
- 対策: 基本的な計算ほど油断は禁物です。特に指数の計算は、意識して丁寧に行うように心がけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 高さの計算に \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を選んだ理由:
- 選定理由: この問題では「時間 \(t\)」が与えられていて、「高さ(変位) \(y\)」を求めたい。この2つの物理量を直接結びつける公式がこれだからです。
- 適用根拠: この式は、等加速度直線運動の一般式 \(y = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に、自由落下運動の特別な条件である「初速度 \(v_0=0\)」と「加速度 \(a=g\)」を代入した、専用の形です。
- 速さの計算に \(v = gt\) を選んだ理由:
- 選定理由: 同様に、「時間 \(t\)」が与えられていて、「速さ \(v\)」を求めたい。この2つの物理量を直接結びつける最もシンプルな公式がこれだからです。
- 適用根拠: この式も、一般式 \(v = v_0 + at\) に、自由落下の条件 \(v_0=0, a=g\) を代入したものです。
- 別解(検算)に \(v^2 = 2gy\) を使う意義:
- 選定理由: 最初に求めた「高さ \(y\)」が正しければ、この公式を使っても同じ「速さ \(v\)」が導き出せるはずです。これにより、最初の計算が正しかったかを検証(検算)できます。
- 適用根拠: この公式は、他の2つの公式から時間 \(t\) を消去して作られたものです。したがって、異なるアプローチで同じ結論に至ることを確認でき、答えの信頼性を高めることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(g=9.8\) の計算に慣れる:
- \(9.8 \times 2 = 19.6\)、\(9.8 \times 0.5 = 4.9\) といった基本的な計算は、頻繁に登場するため、素早く正確にできるようにしておくと有利です。
- 単位を書きながら計算する:
- \(h = \frac{1}{2} \times (9.8 \text{ m/s}^2) \times (2.0 \text{ s})^2\) のように、計算過程で単位も一緒に書く癖をつけると、最終的な答えの単位が \( \text{m/s}^2 \times \text{s}^2 = \text{m} \) となり、高さの単位として正しいことを確認できます。これは、公式の誤用を防ぐのにも役立ちます。
- 別解による検算の習慣:
- 時間に余裕がある場合、この問題のように複数の解法が存在する問題では、別のアプローチで計算してみるのが最も確実な検算方法です。答えが一致すれば、計算ミスをしている可能性は非常に低くなります。
- 問題文の数値をマークする:
- 問題を読みながら、与えられている数値(\(2.0 \text{ s}\), \(9.8 \text{ m/s}^2\))に丸をつけ、その有効数字を意識する習慣をつけると、解答時の桁数のミスを防げます。
23 自由落下
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「自由落下運動」です。問題文で与えられた情報(落下高さ)から、落下にかかる時間と最終的な速さを求める、等加速度直線運動の基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 自由落下運動: 「静かに落とした」という記述から、この運動が初速度 \(v_0=0\)、加速度が重力加速度 \(g\) の等加速度直線運動であることがわかります。
- 等加速度直線運動の公式: 状況に応じて、以下の3つの公式を使い分けます。
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) (変位と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) (速度と変位の関係、時間を含まない)
- 座標軸の設定: 計算を始める前に、どちらの向きを正とするか(例:鉛直下向きを正)を明確に決めると、符号のミスを防げます。
- 有効数字: 問題文で与えられた数値(\(78.4 \text{ m}\), \(9.8 \text{ m/s}^2\))は有効数字2桁または3桁ですが、解答の慣例に従い2桁で表現します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、落下する高さ \(y\) が与えられているので、変位と時間の関係式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を用いて、着地までの時間 \(t\) を計算します。
- (2)では、(1)で求めた時間 \(t\) を使って、速度と時間の関係式 \(v=gt\) から速さを計算する方法と、落下高さ \(y\) を使って時間を含まない公式 \(v^2=2gy\) から直接速さを計算する方法があります。
問(1)
思考の道筋とポイント
「静かに落とした」とあるので、この運動は自由落下です。問題文で「高さ \(78.4 \text{ m}\)」が与えられているので、この落下距離を使って着地までの時間を計算します。変位(距離)と時間の関係を結びつける公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動では、鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) となります。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が、自由落下では \(y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2\) と簡略化されます。
- この式に、与えられた落下距離 \(y=78.4 \text{ m}\) と重力加速度 \(g=9.8 \text{ m/s}^2\) を代入します。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向きとします。
小石は自由落下するので、初速度 \(v_0 = 0\)、加速度 \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) の等加速度直線運動をします。
落下距離を \(y = 78.4 \text{ m}\)、着地するまでの時間を \(t\) [s] とします。
変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を用います。
$$ y = \displaystyle\frac{1}{2} g t^2 $$
ここに、\(y = 78.4 \text{ m}\)、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\) を代入します。
$$ 78.4 = \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
上記で立式した方程式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
78.4 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 \\[2.0ex]78.4 &= 4.9 \times t^2 \\[2.0ex]t^2 &= \displaystyle\frac{78.4}{4.9} \\[2.0ex]t^2 &= 16
\end{aligned}
$$
\(t>0\) なので、
$$ t = 4.0 \text{ [s]} $$
物が自然に落ちるときの落下距離は、「\(0.5 \times\) 重力加速度 \(\times\) (時間)\(^2\)」という公式で計算できます。
今回は、高さが \(78.4\) メートル、重力加速度が \(9.8\) なので、「\(78.4 = 0.5 \times 9.8 \times t^2\)」となります。これを解くと、\(t^2 = 16\) となるので、時間は \(4.0\) 秒と求まります。
小石が着地するまでの時間は \(4.0 \text{ s}\) です。計算結果はきりの良い値となり、妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
着地直前の速さ \(v\) は、自由落下を始めてから(1)で求めた \(4.0\) 秒後の速さに相当します。時間と速度の関係を結びつける公式を選択するのが最も直接的です。
この設問における重要なポイント
- (1)で求めた落下時間 \(t=4.0 \text{ s}\) を利用する。
- 速度と時間の関係式 \(v=gt\) を用いる。
- 別解として、時間を含まない公式 \(v^2=2gy\) を使って検算することもできる。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。
着地直前の速さを \(v\) [m/s] とします。
速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用います。自由落下なので、
$$ v = gt $$
ここに、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(t = 4.0 \text{ s}\) を代入します。
$$ v = 9.8 \times 4.0 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
$$
\begin{aligned}
v &= 9.8 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 39.2 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、答えも2桁に丸めます。
$$ v \approx 39 \text{ [m/s]} $$
具体的な解説と立式
落下高さ \(y = 78.4 \text{ m}\) を使って、速さを直接計算します。
速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用います。自由落下なので、
$$ v^2 = 2gy $$
ここに、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(y = 78.4 \text{ m}\) を代入します。
$$ v^2 = 2 \times 9.8 \times 78.4 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
$$
\begin{aligned}
v^2 &= 2 \times 9.8 \times 78.4 \\[2.0ex]&= 19.6 \times 78.4 \\[2.0ex]&= 1536.64 \\[2.0ex]v &= \sqrt{1536.64} \\[2.0ex]&= 39.2 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v \approx 39 \text{ [m/s]} $$
物が自然に落ちるときの速さは、「重力加速度 \(\times\) 時間」という公式で計算できます。
今回は、時間が \(4.0\) 秒、重力加速度が \(9.8\) なので、速さは \(9.8 \times 4.0 = 39.2\) m/s となります。答えの桁数を問題文に合わせて、約 \(39\) m/s とします。
着地直前の速さは \(39.2 \text{ m/s}\) であり、有効数字2桁で答えると \(39 \text{ m/s}\) となります。2つの異なる解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 自由落下運動のモデル化:
- 核心: 「静かに落とした」という記述から、この運動が「初速度 \(v_0=0\)、加速度が一定の重力加速度 \(g\)」という等加速度直線運動の最も基本的な形であることを理解することが全てです。
- 理解のポイント: この問題は、前問とは逆に「落下高さ \(y\)」が与えられ、そこから「時間 \(t\)」と「最終的な速さ \(v\)」を求める「逆引き」の問題です。しかし、根本的な物理法則は全く同じです。
- 適切な公式の選択能力:
- 核心: 与えられた情報(既知量)と求めたいもの(未知量)を整理し、3つの等加速度直線運動の公式の中から、最も効率的に解けるものを選択する能力が問われます。
- 理解のポイント:
- (1) 高さ \(y\) から時間 \(t\) を求める → \(y = \frac{1}{2}gt^2\)
- (2) 時間 \(t\) から速さ \(v\) を求める → \(v = gt\)
- (2)別解 高さ \(y\) から速さ \(v\) を求める → \(v^2 = 2gy\)
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 時間から求める問題: 前の問題のように「時間 \(t\)」が与えられ、「高さ \(y\)」や「速さ \(v\)」を求める問題。この問題と完全に逆の計算手順になります。
- 鉛直投げ上げ・投げ下ろし: 初速度 \(v_0\) が \(0\) でないだけで、加速度が \(g\)(または \(-g\))の等加速度直線運動であることに変わりはありません。この問題の考え方が全ての基礎となります。
- 水平投射・斜方投射: これらの2次元の運動も、鉛直方向の運動は「自由落下」または「鉛直投げ上げ」です。したがって、この問題で問われている鉛直方向の計算は、より複雑な問題の構成要素として頻繁に登場します。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の種類を特定: 問題文の「静かに落とした」というキーワードから、初速度 \(v_0=0\) の自由落下運動であることを確定します。
- 物理量の整理: 問題文で与えられている量(既知量:\(y=78.4 \text{ m}\), \(a=g=9.8 \text{ m/s}^2\))と、求めたい量(未知量:\(t\), \(v\))を明確に区別します。
- 最適な公式の選択:
- (1)では、\(y\) と \(t\) を結ぶ公式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を選択します。
- (2)では、(1)で求めた \(t\) を使って \(v=gt\) で解くのが最も素直です。あるいは、与えられた \(y\) から直接 \(v\) を求める \(v^2=2gy\) を使うと、(1)の計算ミスに影響されずに解くことができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 公式の選択ミス:
- 誤解: (1)で時間を求めたいのに、時間を含まない公式 \(v^2=2gy\) を使おうとしてしまい、未知数が2つ(\(v\) と \(t\))になって解けなくなる。
- 対策: 自分が持っている情報(既知量)と、求めたいもの(未知量)を明確にし、それらを結びつける公式はどれかを冷静に判断する。
- 平方根の計算ミス:
- 誤解: (1)で \(t^2=16\) となった後、焦って \(t=8\) や \(t=4^2\) のように計算してしまう。
- 対策: 二乗して16になる数は4である、という基本的な計算を落ち着いて行う。平方根の計算は、物理の問題で頻出するため、正確にこなせるように練習しておくことが重要です。
- 有効数字の処理:
- 誤解: (2)の計算結果 \(v=39.2 \text{ m/s}\) をそのまま解答してしまう。
- 対策: 計算を始める前に、問題文で与えられた数値(\(78.4 \text{ m}\) は3桁、\(9.8 \text{ m/s}^2\) は2桁)の有効数字を確認し、計算結果は最も桁数の少ないものに合わせる、というルールを徹底します。この場合は2桁に合わせます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1) 時間の計算に \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を選んだ理由:
- 選定理由: この問題では「高さ(変位) \(y\)」が与えられていて、「時間 \(t\)」を求めたい。この2つの物理量を直接結びつける公式がこれだからです。速さ \(v\) の情報は不要なので、\(v\) を含まないこの式が最適です。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の一般式 \(y = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に、自由落下運動の条件 \(v_0=0, a=g\) を代入したものです。
- (2) 速さの計算に \(v = gt\) を選んだ理由:
- 選定理由: (1)で「時間 \(t\)」が求まったので、これを使って「速さ \(v\)」を求めるのが最も簡単だからです。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の一般式 \(v = v_0 + at\) に、自由落下の条件 \(v_0=0, a=g\) を代入した、最もシンプルな速度式です。
- (2) 別解で \(v^2 = 2gy\) を選んだ理由:
- 選定理由: この公式は、問題で最初に与えられた「高さ \(y\)」だけを使って「速さ \(v\)」を直接計算できます。これにより、(1)で求めた時間の値を使わずに済むため、もし(1)で計算ミスをしていても(2)は正解できる可能性があります。また、検算としても非常に有効です。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の公式から時間 \(t\) を消去して導かれる関係式であり、時間情報が不要な場合に強力なツールとなります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(g=9.8\) の倍数に気づく:
- \(78.4 \div 9.8\) のような計算が出てきたとき、\(78.4 = 8 \times 9.8\) であることに気づくと、\(t^2 = \frac{8 \times 9.8}{0.5 \times 9.8} = 16\) のように、計算が非常に楽になります。\(9.8\) の倍数(\(19.6, 29.4, 39.2, 49, …\))には日頃から慣れておくと便利です。
- 単位を書きながら計算する:
- \(t^2 = \frac{78.4 \text{ [m]}}{4.9 \text{ [m/s}^2]}\) のように単位を書き込むと、結果の単位が \(\frac{\text{m}}{\text{m/s}^2} = \text{s}^2\) となり、時間の2乗の単位として正しいことが確認できます。これは公式の誤用を防ぐのに役立ちます。
- 別解による検算:
- (2)で示したように、時間に余裕があれば、\(v=gt\) で計算した後に、\(v^2=2gy\) でも計算してみましょう。答えが一致すれば、(1)と(2)の両方の計算が正しいことの強力な証拠になります。
- 問題文の数値をマークする:
- 問題を読みながら、与えられている数値(\(78.4 \text{ m}\), \(9.8 \text{ m/s}^2\))に丸をつけ、その有効数字(3桁と2桁)を意識する習慣をつけると、解答時の桁数のミスを防げます。
24 自由落下
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「自由落下運動における物理量間の関係のグラフ化」です。自由落下運動を記述する基本的な公式が、グラフ上ではどのような形で表現されるかを理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 自由落下運動の基本公式: 自由落下は初速度0、加速度\(g\)の等加速度直線運動であり、以下の3つの基本式で記述されます。
- 速さと時間の関係: \(v = gt\)
- 落下距離と時間の関係: \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)
- 速さと落下距離の関係: \(v^2 = 2gy\)
- 数式とグラフ形状の関係: 中学・高校数学で学んだ関数のグラフの知識が役立ちます。
- \(y=ax\) → 原点を通る直線(比例)
- \(y=ax^2\) → 原点を頂点とする放物線
- \(y = C – ax^2\) → 頂点が(0, C)で上に凸の放物線
- \(y^2=ax\) (つまり \(y=\sqrt{ax}\)) → 横に寝た形の放物線
- 変数の定義: 「落下距離 \(y\)」と「地表からの高さ \(h\)」の違いを正確に理解することが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(4)の各設問について、横軸と縦軸の物理量を結びつける関係式を、自由落下の基本公式から導き出します。
- 導き出した数式の形が、数学的にどのようなグラフに対応するかを判断し、選択肢①〜⑤から最も適切なものを選びます。
問(1)
思考の道筋とポイント
横軸が時間 \(t\)、縦軸が物体の速さ \(v\) のグラフ(\(v-t\)グラフ)の形状を考えます。自由落下における速さ \(v\) と時間 \(t\) の関係式を立て、その式がどのような形の関数を表しているかを判断します。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動の速度と時間の関係式は \(v=gt\) である。
- 重力加速度 \(g\) は定数なので、この式は \(v\) が \(t\) に比例することを示している。
- 比例関係のグラフは、原点を通る直線になる。
具体的な解説と立式
自由落下運動において、落ち始めてからの時間 \(t\) とそのときの速さ \(v\) の関係は、以下の式で表されます。
$$ v = gt $$
ここで、重力加速度 \(g\) は一定の正の定数です。この式は、数学における \(y=ax\) (ただし \(a=g\), \(x=t\), \(y=v\)) の形をした一次関数(比例関係)です。
したがって、グラフは原点(\(t=0, v=0\))を通り、傾きが \(g\) の直線となります。
使用した物理公式
- 自由落下の速度と時間の関係式: \(v = gt\)
自由落下では、物体は重力によって常に加速され続けます。その速さは、時間が経てば経つほど、時間に比例して大きくなっていきます。例えば、1秒後より2秒後の方が速さは2倍、3秒後には3倍になります。このような「比例」の関係をグラフにすると、原点からまっすぐに伸びる右上がりの直線になります。
\(v=gt\) の関係は \(t\) に関する一次関数(比例)なので、グラフは原点を通る直線です。よって、選択肢①が正しいです。
問(2)
思考の道筋とポイント
横軸が時間 \(t\)、縦軸が物体の落下距離 \(y\) のグラフ(\(y-t\)グラフ)の形状を考えます。自由落下における落下距離 \(y\) と時間 \(t\) の関係式を立て、その関数の形を判断します。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動の落下距離と時間の関係式は \(y = \frac{1}{2}gt^2\) である。
- この式は、\(y\) が \(t\) の2乗に比例することを示している。
- \(y=ax^2\) の形のグラフは、原点を頂点とする放物線になる。
具体的な解説と立式
自由落下運動において、落ち始めてからの時間 \(t\) とその間の落下距離 \(y\) の関係は、以下の式で表されます。
$$ y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2 $$
ここで、\(\frac{1}{2}g\) は一定の正の定数です。この式は、数学における \(y=ax^2\) (ただし \(a=\frac{1}{2}g\), \(x=t\)) の形をした2次関数です。
したがって、グラフは原点(\(t=0, y=0\))を頂点とし、下に凸の放物線となります。
使用した物理公式
- 自由落下の落下距離と時間の関係式: \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)
落下する距離は、単純に時間に比例するわけではありません。時間が経つほど速くなるため、後になるほど同じ時間でもより長い距離を落下します。具体的には、落下距離は時間の「2乗」に比例します。このような関係をグラフにすると、原点から始まり、だんだんと傾きが急になっていくカーブ、すなわち下に凸の放物線になります。
\(y\) は \(t^2\) に比例するので、グラフは原点を通り、下に凸の放物線です。よって、選択肢③が正しいです。
問(3)
思考の道筋とポイント
横軸が時間 \(t\)、縦軸が地表面からの物体の高さ \(h\) のグラフの形状を考えます。まず、高さ \(h\) を時間 \(t\) の式で表すことが必要です。地表からの高さ \(h\) は、最初の高さ \(H\) から落下距離 \(y\) を引いたものであることに注意します。
この設問における重要なポイント
- 地表面からの高さ \(h\) と落下距離 \(y\) の関係は \(h = H – y\) である。
- 落下距離 \(y\) は \(y = \frac{1}{2}gt^2\) で表される。
- これらを組み合わせると、\(h = H – \frac{1}{2}gt^2\) という関係式が得られる。
具体的な解説と立式
物体が最初にいた高さを \(H\) とします。時間 \(t\) が経過した後の落下距離は \(y = \frac{1}{2}gt^2\) です。
このとき、地表面からの高さ \(h\) は、最初の高さ \(H\) から落下距離 \(y\) を引いたものなので、
$$ h = H – y = H – \displaystyle\frac{1}{2}gt^2 $$
この式は、\(t\) に関する2次関数です。\(t^2\) の係数が負(\(-\frac{1}{2}g\))なので、グラフは上に凸の放物線となります。また、\(t=0\) のとき \(h=H\) となり、縦軸の切片が \(H\) であることがわかります。
使用した物理公式
- \(h = H – y\)
- \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)
ボールは最初、地面から \(H\) の高さにあります(これがスタート地点)。時間が経つにつれて、落下距離(時間の2乗に比例)がどんどん増えていくので、地面からの高さはどんどん減っていきます。減り方は、時間が経つほど急になります。このような関係をグラフにすると、縦軸の \(H\) の点から始まり、だんだん急な下り坂を描くようなカーブ、すなわち上に凸の放物線になります。
\(h = H – \frac{1}{2}gt^2\) の関係は、縦軸の切片が \(H\) で、下に減っていく上に凸の放物線です。よって、選択肢④が正しいです。
問(4)
思考の道筋とポイント
横軸が物体の落下距離 \(y\)、縦軸がそのときの物体の速さ \(v\) のグラフの形状を考えます。速さ \(v\) と落下距離 \(y\) を直接結びつける関係式を立て、その関数の形を判断します。
この設問における重要なポイント
- 時間 \(t\) を含まない関係式 \(v^2 = 2gy\) を利用する。
- この式を \(v\) について解くと、\(v = \sqrt{2gy}\) となる。
- この関係は、\(v\) が \(y\) の平方根に比例することを意味する。
具体的な解説と立式
自由落下運動において、時間 \(t\) を含まない速さ \(v\) と落下距離 \(y\) の関係は、以下の式で表されます。
$$ v^2 = 2gy $$
速さ \(v\) は常に正なので、この式を \(v\) について解くと、
$$ v = \sqrt{2gy} $$
ここで、\(\sqrt{2g}\) は一定の正の定数です。この式は、数学における \(y = a\sqrt{x}\) (ただし \(a=\sqrt{2g}\), \(x=y\), \(y=v\)) の形をしています。
これは、横軸を軸とする(横に寝た)放物線の一部であり、原点(\(y=0, v=0\))を通り、\(y\) が増加するにつれて傾きが緩やかになる曲線となります。
使用した物理公式
- 自由落下の速さと落下距離の関係式: \(v^2 = 2gy\)
落下距離が長くなるほど速さも増しますが、その増え方は一定ではありません。速さの「2乗」が落下距離に比例するという関係があります。これをグラフにすると、落下し始め(\(y\)が小さいとき)は速さが急激に増しますが、落下距離が大きくなるにつれて、速さの増え方はだんだん緩やかになっていきます。このような形のグラフは、横に寝た放物線のような形になります。
\(v = \sqrt{2gy}\) の関係は、原点を通り、横軸(\(y\)軸)を軸とする放物線です。よって、選択肢⑤が正しいです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 自由落下運動の数式モデルの理解:
- 核心: 自由落下運動が、3つの基本的な数式モデルで完全に記述できることを理解しているかどうかが問われます。
- 速度と時間の関係: \(v = gt\) (比例関係)
- 距離と時間の関係: \(y = \frac{1}{2}gt^2\) (2乗に比例)
- 速度と距離の関係: \(v^2 = 2gy\) (速度の2乗が距離に比例)
- 理解のポイント: これらの式は単に暗記するだけでなく、それぞれがどの物理量間の関係を表しているのかを明確に把握することが重要です。
- 核心: 自由落下運動が、3つの基本的な数式モデルで完全に記述できることを理解しているかどうかが問われます。
- 数式とグラフ形状の対応付け:
- 核心: 物理法則を表現する数式を、視覚的なグラフの形に翻訳する能力。これは物理現象を直感的に理解する上で非常に重要なスキルです。
- 理解のポイント:
- \(y=ax\) → 直線
- \(y=ax^2\) → 放物線
- \(y=C-ax^2\) → 上に凸の放物線
- \(y=\sqrt{ax}\) → 横に寝た放物線
- といった、数学で学んだ基本的な関数のグラフ形状を、物理の文脈で再認識することが求められます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 等速直線運動のグラフ: \(x-t\)グラフ(直線)、\(v-t\)グラフ(水平線)、\(a-t\)グラフ(ゼロ)など、他の基本的な運動のグラフを問う問題。
- 鉛直投げ上げのグラフ: 鉛直上向きを正とすると、\(v-t\)グラフは切片が正の直線(\(v=v_0-gt\))、\(y-t\)グラフは上に凸の放物線(\(y=v_0t-\frac{1}{2}gt^2\))となります。
- 単振動のグラフ: \(x-t\)グラフが正弦波(\(\sin\)カーブ)になるなど、より複雑な運動のグラフを問う問題。この問題で培った「数式からグラフを読み解く」力は、あらゆる運動の分析に応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認する: まず、縦軸と横軸がそれぞれどの物理量を表しているのかを絶対に確認します。これを間違えると全てが台無しになります。
- 関係式を立てる: 横軸の変数と縦軸の変数を結びつける物理法則(公式)を思い出します。
- 式の形を分析する: 立てた式が、数学的にどのような関数(一次関数、二次関数、平方根など)になっているかを分析します。
- グラフの始点と増減を確認:
- 始点: 横軸の変数が0のとき、縦軸の値はいくつか?(原点を通るか、切片があるか)
- 増減: 横軸の変数が増加したとき、縦軸の値は増加するか、減少するか?
- 傾き: グラフの傾き(変化の度合い)は一定か、だんだん急になるか、だんだん緩やかになるか?
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 落下距離と高さの混同:
- 誤解: (3)で地表からの高さ \(h\) を問われているのに、落下距離 \(y\) のグラフ(③)を選んでしまう。
- 対策: 「落下距離」は落ち始めた点からの距離で、時間とともに0から増加します。一方、「地表からの高さ」は、時間とともに最初の高さ \(H\) から減少していきます。問題文の言葉の定義を正確に読み取ることが重要です。
- 比例関係と2乗比例関係の混同:
- 誤解: (2)の落下距離 \(y\) と時間 \(t\) の関係を、速さと同じように単純な比例関係(直線)だと勘違いして①を選んでしまう。
- 対策: \(v=gt\) と \(y=\frac{1}{2}gt^2\) の式の形の違いを明確に意識します。速さは時間に比例しますが、距離は時間の2乗に比例します。この「2乗」がグラフを直線から放物線に変える要因であることを理解しましょう。
- \(y-t\)グラフと\(v-y\)グラフの混同:
- 誤解: (4)の \(v-y\) グラフを、(2)の \(y-t\) グラフと同じような形だと考えて③を選んでしまう。
- 対策: 横軸が時間 \(t\) なのか距離 \(y\) なのかで、式の形が全く異なることを認識します。\(y\) は \(t\) の2乗に比例しますが、\(v\) は \(y\) の平方根に比例します(\(v^2\) が \(y\) に比例)。軸が違うとグラフの形も変わることを常に意識してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 各設問で適切な公式を選ぶ思考:
- この問題では、どの公式を使うかは設問によって指定されています(横軸と縦軸の物理量が決まっているため)。思考のプロセスは「どの公式を選ぶか」ではなく、「その公式がどのようなグラフを描くか」という点にあります。
- (1) \(v-t\)グラフ: 縦軸 \(v\) と横軸 \(t\) の関係式 → \(v=gt\) を選択。
- (2) \(y-t\)グラフ: 縦軸 \(y\) と横軸 \(t\) の関係式 → \(y=\frac{1}{2}gt^2\) を選択。
- (3) \(h-t\)グラフ: 縦軸 \(h\) と横軸 \(t\) の関係式 → まず \(h\) と \(y\) の関係 \(h=H-y\) を考え、次に \(y\) を \(t\) で表す \(y=\frac{1}{2}gt^2\) を代入し、\(h=H-\frac{1}{2}gt^2\) を導出。
- (4) \(v-y\)グラフ: 縦軸 \(v\) と横軸 \(y\) の関係式 → 時間 \(t\) を含まない \(v^2=2gy\) を選択。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題は定性的な理解を問うもので、具体的な計算ミスは発生しにくいですが、概念的なミスを防ぐためのテクニックは以下の通りです。
- 簡単な具体例を考える:
- もしグラフの形に迷ったら、\(g=10\) のような簡単な値で具体的な数値を計算してみるのも一つの手です。
- 例(問2): \(y=5t^2\)
- \(t=0 \rightarrow y=0\)
- \(t=1 \rightarrow y=5\)
- \(t=2 \rightarrow y=20\)
- \(t=3 \rightarrow y=45\)
- このように点をプロットしてみると、グラフが直線ではなく、急激に増加する曲線(放物線)であることが視覚的に確認できます。
- グラフの傾きの物理的意味を考える:
- \(v-t\)グラフの傾きは「加速度」を表します。自由落下では加速度 \(g\) が一定なので、傾きが一定の直線(①)になります。
- \(y-t\)グラフの傾きは「瞬間の速さ」を表します。自由落下では速さが \(v=gt\) のように時間とともに増加するので、傾きがだんだん急になる曲線(③)になります。
- このように、グラフの傾きが何を意味するかを考えることで、より物理的な根拠を持ってグラフの形を判断できます。
25 鉛直投げ下ろし
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「鉛直投げ下ろし運動」です。物体をある高さから、下向きの初速度を与えて落下させる運動を扱います。これは自由落下と同様に、等加速度直線運動の一種です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鉛直投げ下ろし運動の性質: 初速度 \(v_0\) を持ち、重力加速度 \(g\) によって常に下向きの加速度を受ける「等加速度直線運動」です。
- 座標軸の設定と符号: 計算を始める前に、どちらの向きを正とするかを明確に決めることが重要です。鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0\)、変位 \(y\)、加速度 \(g\) がすべて正の値となり、計算が簡単になります。
- 等加速度直線運動の3公式: 座標軸の設定に従って、以下の3つの公式を使い分けます。
- \(v = v_0 + at\)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
- 二次方程式の解法: 時間を求める際に、時間 \(t\) に関する二次方程式を解く必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 時間の計算: 落下高さ(変位)と初速度が与えられているので、変位と時間の関係式を用いて、時間 \(t\) に関する二次方程式を立てて解きます。
- 速さの計算: 上で求めた時間 \(t\) を使って、速度と時間の関係式から地面に達する直前の速さを計算します。
地面に達するまでの時間の計算
思考の道筋とポイント
「鉛直下向きに投げ下ろし」とあるので、これは初速度を持つ等加速度直線運動です。問題文で「高さ \(39.2 \text{ m}\)」と「初速度 \(9.8 \text{ m/s}\)」が与えられているので、これらの情報を使って地面に達するまでの時間を計算します。変位、初速度、時間を結びつける公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 座標軸を鉛直下向きに正と設定すると、各物理量は \(y = +39.2 \text{ m}\), \(v_0 = +9.8 \text{ m/s}\), \(a = +g = +9.8 \text{ m/s}^2\) となる。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を用いる。
- この式は \(t\) に関する二次方程式になるため、因数分解や解の公式を使って解く。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向き、投げ下ろした点を原点とします。
小球が地面に達するまでの時間を \(t\) [s] とします。
与えられた物理量は、変位 \(y = 39.2 \text{ m}\)、初速度 \(v_0 = 9.8 \text{ m/s}\)、加速度 \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) です。
等加速度直線運動の変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を用います。
$$ 39.2 = 9.8t + \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
上記で立式した方程式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
39.2 &= 9.8t + 4.9t^2
\end{aligned}
$$
このままでは計算しにくいので、両辺を \(4.9\) で割ります。ここで \(39.2 = 8 \times 4.9\)、\(9.8 = 2 \times 4.9\) であることを利用すると、
$$
\begin{aligned}
8 &= 2t + t^2
\end{aligned}
$$
式を整理して、
$$
\begin{aligned}
t^2 + 2t – 8 &= 0
\end{aligned}
$$
この二次方程式を因数分解します。
$$
\begin{aligned}
(t – 2)(t + 4) &= 0
\end{aligned}
$$
解は \(t = 2.0\) または \(t = -4.0\) となります。時間は負の値をとらないので、
$$ t = 2.0 \text{ [s]} $$
「落下した距離 = (初めの速さで進んだ距離) + (重力で加速して進んだ距離)」という式を使います。
式を立てると「\(39.2 = 9.8 \times t + 0.5 \times 9.8 \times t^2\)」となります。これは時間 \(t\) の二次方程式です。
計算を簡単にするために、式の全部を \(4.9\) で割ると「\(8 = 2t + t^2\)」という簡単な式になります。
これを解くと、時間は \(2.0\) 秒と求まります。
地面に達するまでの時間は \(2.0 \text{ s}\) です。二次方程式の解のうち、物理的に意味のある正の解を選ぶことが重要です。
地面に達する直前の速さの計算
思考の道筋とポイント
上で求めた時間 \(t=2.0 \text{ s}\) を使って、地面に達する直前の速さ \(v\) を計算するのが最も素直な方法です。初速度、加速度、時間がわかっているので、速度と時間の関係式を用います。
この設問における重要なポイント
- 上で求めた時間 \(t=2.0 \text{ s}\) を利用する。
- 速度と時間の関係式 \(v = v_0 + gt\) を用いる。
- 別解として、時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2gy\) を使って検算することもできる。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。
地面に達する直前の速さを \(v\) [m/s] とします。
速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用います。
$$ v = v_0 + gt $$
ここに、\(v_0 = 9.8 \text{ m/s}\)、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(t = 2.0 \text{ s}\) を代入します。
$$ v = 9.8 + 9.8 \times 2.0 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
$$
\begin{aligned}
v &= 9.8 + 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 9.8 + 19.6 \\[2.0ex]&= 29.4 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、答えも2桁に丸めます。
$$ v \approx 29 \text{ [m/s]} $$
具体的な解説と立式
落下高さ \(y = 39.2 \text{ m}\) と初速度 \(v_0 = 9.8 \text{ m/s}\) を使って、速さを直接計算します。
速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用います。
$$ v^2 – v_0^2 = 2gy $$
ここに、各数値を代入します。
$$ v^2 – (9.8)^2 = 2 \times 9.8 \times 39.2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
$$
\begin{aligned}
v^2 &= v_0^2 + 2gy \\[2.0ex]&= (9.8)^2 + 2 \times 9.8 \times 39.2
\end{aligned}
$$
ここで \(39.2 = 4 \times 9.8\) であることを利用して、式を \(9.8\) でくくると計算が楽になります。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= (9.8)^2 + 2 \times 9.8 \times (4 \times 9.8) \\[2.0ex]&= (9.8)^2 + 8 \times (9.8)^2 \\[2.0ex]&= (1 + 8) \times (9.8)^2 \\[2.0ex]&= 9 \times (9.8)^2
\end{aligned}
$$
両辺の平方根をとると、
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{9 \times (9.8)^2} \\[2.0ex]&= 3 \times 9.8 \\[2.0ex]&= 29.4 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ v \approx 29 \text{ [m/s]} $$
「終わりの速さ = 初めの速さ + (重力で加速した分の速さ)」という公式を使います。
初めの速さが \(9.8 \text{ m/s}\) で、\(2.0\) 秒間加速されるので、速さは \(9.8 + (9.8 \times 2.0) = 29.4\) m/s となります。答えの桁数を問題文に合わせて、約 \(29\) m/s とします。
地面に達する直前の速さは \(29.4 \text{ m/s}\) であり、有効数字2桁で答えると \(29 \text{ m/s}\) となります。2つの異なる解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 鉛直投げ下ろし運動のモデル化:
- 核心: 鉛直投げ下ろし運動は、自由落下(初速度\(v_0=0\))とは異なり、下向きの初速度 \(v_0\) を持つ等加速度直線運動であると正しく理解すること。
- 理解のポイント: この運動は、等加速度直線運動の3公式(\(v = v_0 + at\), \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\), \(v^2 – v_0^2 = 2ay\))をそのままの形で適用する、最も標準的な例です。
- 座標軸の設定と物理量の符号:
- 核心: 計算を始める前に、座標軸の向き(特に正の向き)を明確に定めることが重要です。
- 理解のポイント: この問題のように、運動が常に一方向(下向き)である場合、その向きを正(鉛直下向きを正)とすると、初速度 \(v_0\)、変位 \(y\)、加速度 \(g\) が全て正の値となり、符号のミスが起こりにくく、計算が非常にシンプルになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 鉛直投げ上げ: 運動の向きが途中で変わる(上昇→下降)ため、座標軸の設定(通常は上向きを正)と、それに伴う物理量の符号(例: \(a=-g\))の扱いに一層の注意が必要になります。
- 斜方投射: 鉛直方向の運動が、上昇区間は「鉛直投げ上げ」、下降区間は「鉛直投げ下ろし」と見なせます。この問題の考え方は、斜方投射の後半部分の分析に直接応用できます。
- 力学的エネルギー保存則の利用: 速さを求める問題は、エネルギー保存則でも解くことができます。初めのエネルギー(運動エネルギー+位置エネルギー)と終わりのエネルギー(運動エネルギー)が等しいことから、\(\displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 + mgy = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) という式を立て、速さ \(v\) を直接計算できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の種類を特定: 問題文の「投げ下ろした」という記述から、初速度 \(v_0\) が \(0\) ではないことを確認します。
- 座標軸の設定: 運動の主たる向き(この場合は下向き)を正に設定すると、計算が楽になることが多いです。
- 物理量の整理: 与えられている量(\(y, v_0, a=g\))と求めたい量(\(t, v\))をリストアップします。
- 公式の選択:
- 時間を求めるには、\(y, v_0, t\) を含む \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を使います。このとき、\(t\) の二次方程式になることを予測します。
- 速さを求めるには、時間が分かっていれば \(v = v_0 + at\) が最も簡単です。時間が分からなければ \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) が有効です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 自由落下の公式の誤用:
- 誤解: 初速度 \(v_0\) があるにもかかわらず、自由落下の公式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) や \(v=gt\) を使ってしまう。
- 対策: 問題文をよく読み、「静かに落とす」と「投げ下ろす」の違いを明確に区別します。「投げ下ろす」とあれば、必ず初速度 \(v_0\) を含む一般形の公式を使うことを徹底します。
- 二次方程式の解法ミス:
- 誤解: \(t^2 + 2t – 8 = 0\) の因数分解を間違える、あるいは解の公式の計算で符号を間違える。
- 対策: 二次方程式の解法は、物理の問題を解く上で必須の数学的ツールです。自信がない場合は、数学の教科書で復習し、確実に解けるようにしておくことが重要です。
- 物理的に不適切な解の選択:
- 誤解: 二次方程式の解として \(t=2.0\) と \(t=-4.0\) が出たときに、負の解を選んでしまう、あるいは両方書いてしまう。
- 対策: 時間 \(t\) は、運動が始まってからの経過時間を表すため、負の値をとることは物理的にあり得ません。必ず \(t>0\) という条件を確認し、適切な解を選ぶ習慣をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 時間の計算に \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を選んだ理由:
- 選定理由: この問題では「高さ(変位) \(y\)」と「初速度 \(v_0\)」が与えられていて、「時間 \(t\)」を求めたい。これら3つの物理量を直接結びつける公式がこれだからです。最終的な速さ \(v\) はまだ分かっていないため、\(v\) を含まないこの式が唯一の選択肢となります。
- 適用根拠: 等加速度直線運動における変位と時間の関係を表す最も基本的な公式です。
- 速さの計算に \(v = v_0 + at\) を選んだ理由:
- 選定理由: 時間の計算で「時間 \(t\)」が求まったので、これと「初速度 \(v_0\)」を使って「最終的な速さ \(v\)」を求めるのが最も計算が簡単だからです。
- 適用根拠: 等加速度直線運動における速度と時間の関係を表す最も基本的な公式です。
- 別解で \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を選んだ理由:
- 選定理由: この公式は、問題で最初に与えられた情報(\(y, v_0, a\))だけを使って「速さ \(v\)」を直接計算できます。時間の計算(二次方程式)を介さないため、もし時間の計算でミスをしていても、速さは正しく求められる可能性があります。検算としても非常に有効です。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の基本公式から時間 \(t\) を消去して導かれる関係式であり、時間情報が不要な場合に強力なツールとなります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 二次方程式を簡単にする工夫:
- \(39.2 = 9.8t + 4.9t^2\) のような式が出てきたとき、すぐに解の公式に代入するのではなく、まず「両辺を共通の数で割れないか」を考えます。この問題では、全ての項が \(4.9\) で割り切れることに気づくと、\(t^2 + 2t – 8 = 0\) という非常にシンプルな式になり、計算ミスを劇的に減らせます。
- \(g=9.8\) の倍数に慣れる:
- \(39.2 = 4 \times 9.8\)、\(9.8 = 2 \times 4.9\) といった関係を知っていると、上記の割り算がスムーズに行えます。物理の問題では、\(9.8\) で割り切れる数値が頻繁に使われることを知っておくと便利です。
- 因数分解の活用:
- \(t^2 + 2t – 8 = 0\) のような簡単な二次方程式は、解の公式よりも因数分解の方が速く、かつ計算ミスが少ないです。「掛けて \(-8\)、足して \(+2\) になる2つの数」を探す練習をしておきましょう。
- 別解による検算:
- 時間に余裕があれば、速さを求める際に \(v = v_0 + gt\) と \(v^2 – v_0^2 = 2gy\) の両方で計算してみましょう。答えが一致すれば、時間の計算も速さの計算も正しかったことの強力な裏付けになります。
26 鉛直投げ下ろし
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「相対速度を含む鉛直投げ下ろし運動」です。動いている物体(気球)から別の物体(小球)をはなすときの、初速度の考え方が重要なポイントになります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対速度と初速度の決定: 「気球から静かに落とす」とは、気球に対する小球の相対速度が0であることを意味します。したがって、地面から見た小球の初速度は、その瞬間の気球の速度と等しくなります。
- 鉛直投げ下ろし運動: 小球は下向きの初速度を持って運動を始めるため、その運動は「鉛直投げ下ろし運動」として扱えます。これは等加速度直線運動の一種です。
- 等加速度直線運動の公式: 鉛直投げ下ろし運動を記述するために、以下の3つの公式を状況に応じて使い分けます。
- \(v = v_0 + at\)
- \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
- 座標軸の設定: 鉛直下向きを正とすると、初速度、変位、加速度がすべて正の値となり、計算が簡潔になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、「静かに落とす」という言葉から、地面に対する小球の初速度を正しく設定します。
- 地面に衝突する速さ \(v\) は、初速度と落下時間が分かっているので、速度と時間の関係式から求めます。
- 小球を落とした点の高さ \(h\) は、初速度と落下時間が分かっているので、変位と時間の関係式から求めます。
地面に衝突する速さ v の計算
思考の道筋とポイント
まず、この問題の最も重要なポイントである「小球の初速度」を決定します。「降下している気球から静かに落とす」とは、気球から見て小球をそっと手放すことを意味します。その瞬間、小球は気球と同じ速度を持っています。したがって、地面から見ると、小球は気球と同じ速さ \(5.0 \text{ m/s}\) で鉛直下向きに運動を始めます。これは初速度 \(v_0 = 5.0 \text{ m/s}\) の鉛直投げ下ろし運動です。
落下時間 \(t=3.0 \text{ s}\) が与えられているので、速度と時間の関係式を使って最終的な速さ \(v\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 小球の(地面に対する)初速度 \(v_0\) は \(0\) ではなく、気球の速度と同じ \(5.0 \text{ m/s}\)(下向き)である。
- 鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0\)、加速度 \(g\) はともに正の値となる。
- 速度と時間の関係式 \(v = v_0 + gt\) を用いる。
具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向き、小球を落とした点を原点とします。
地面から見た小球の初速度は、気球の速度と同じで \(v_0 = 5.0 \text{ m/s}\) です。
加速度は重力加速度なので \(a = g = 9.8 \text{ m/s}^2\) です。
地面に衝突するまでの時間は \(t = 3.0 \text{ s}\) です。
地面に衝突する直前の速さを \(v\) [m/s] とすると、等加速度直線運動の速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) より、
$$ v = v_0 + gt $$
ここに、各数値を代入します。
$$ v = 5.0 + 9.8 \times 3.0 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
$$
\begin{aligned}
v &= 5.0 + 9.8 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 5.0 + 29.4 \\[2.0ex]&= 34.4 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、答えも2桁に丸めます。
$$ v \approx 34 \text{ [m/s]} $$
「静かに落とす」というのは、気球から見ればポロっと離すだけですが、地面から見ている人にとっては、小球は気球と同じ下向きの速さ \(5.0 \text{ m/s}\) でスタートします。
この初めの速さに、\(3.0\) 秒間、重力によって加速された分の速さが加わります。
したがって、最終的な速さは「初めの速さ + (重力で加速した分の速さ)」で計算でき、\(5.0 + (9.8 \times 3.0) = 34.4\) となります。これを四捨五入して、約 \(34 \text{ m/s}\) です。
地面に衝突する速さは \(34.4 \text{ m/s}\) であり、有効数字2桁で答えると \(34 \text{ m/s}\) となります。初速度の解釈が正しくできれば、計算は基本的な公式に当てはめるだけです。
小球を落とした点の高さ h の計算
思考の道筋とポイント
小球を落とした点の高さ \(h\) は、初速度 \(v_0 = 5.0 \text{ m/s}\) の鉛直投げ下ろし運動で \(3.0 \text{ s}\) 間に落下した距離に等しくなります。初速度、時間、加速度が分かっているので、変位と時間の関係式を使って高さを計算します。
この設問における重要なポイント
- 高さ \(h\) は、初速度のある投げ下ろし運動の落下距離である。
- 変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を用いる。
- 落下距離は、「初速度で進んだ距離」と「重力で加速して進んだ距離」の和で計算される。
具体的な解説と立式
速さの計算と同じく、鉛直下向きを正、落とした点を原点とします。
小球を落とした点の高さを \(h\) [m] とすると、これは \(3.0\) 秒間の落下距離(変位)に等しくなります。
等加速度直線運動の変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) より、
$$ h = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}gt^2 $$
ここに、\(v_0 = 5.0 \text{ m/s}\)、\(g = 9.8 \text{ m/s}^2\)、\(t = 3.0 \text{ s}\) を代入します。
$$ h = 5.0 \times 3.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times (3.0)^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
$$
\begin{aligned}
h &= 5.0 \times 3.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 15 + 4.9 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 15 + 44.1 \\[2.0ex]&= 59.1 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、
$$ h \approx 59 \text{ [m]} $$
小球が落下した距離は、2つの部分の合計で考えられます。
1つ目は「もし重力がなければ、初めの速さ \(5.0 \text{ m/s}\) のままで \(3.0\) 秒間に進む距離」です。これは \(5.0 \times 3.0 = 15\) m です。
2つ目は「重力によって加速されて、さらに進む距離」です。これは初速度0の自由落下と同じで、\(0.5 \times 9.8 \times (3.0)^2 = 44.1\) m です。
この2つを合計すると、全体の落下距離は \(15 + 44.1 = 59.1\) m となります。これを四捨五入して、約 \(59\) m です。
小球を落とした点の高さは \(59.1 \text{ m}\) であり、有効数字2桁で答えると \(59 \text{ m}\) となります。計算結果は物理的に妥当な値です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 相対速度の概念を用いた初速度の決定:
- 核心: この問題の最大のポイントは、「降下しつつある気球から静かに落とす」という記述を物理的に正しく解釈することです。これは「気球に乗っている人から見ると、小球の初速度は0」という意味です。
- 理解のポイント: 地面で静止している観測者から見ると、小球は手放された瞬間に、気球が持っている速度をそのまま受け継ぎます。したがって、小球の地面に対する初速度は、気球の速度と同じく鉛直下向きに \(5.0 \text{ m/s}\) となります。この初速度さえ正しく設定できれば、問題は単純な「鉛直投げ下ろし運動」に帰着します。
- 鉛直投げ下ろし運動のモデル化:
- 核心: 小球の運動は、初速度 \(v_0\) を持ち、常に一定の重力加速度 \(g\) を受ける等加速度直線運動としてモデル化できます。
- 理解のポイント: これにより、等加速度直線運動の3公式(\(v = v_0 + gt\), \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\), \(v^2 – v_0^2 = 2gy\))を適用して、未知の物理量を計算することができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 上昇する気球からの落下: もし気球が「上昇」している場合、小球の初速度は「鉛直上向き」になります。その後の運動は、一度上昇してから下降に転じる「鉛直投げ上げ」の問題として扱う必要があります。
- 水平に動く乗り物からの落下: 電車や飛行機から物を「静かに落とす」場合、物の初速度は乗り物の水平速度と同じになります。その後の運動は、水平方向の等速直線運動と鉛直方向の自由落下を組み合わせた「水平投射」の問題となります。
- 力学的エネルギー保存則の利用: この問題もエネルギー保存則で解くことができます。初めのエネルギー(運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv_0^2\) + 位置エネルギー \(mgh\))が、地面での運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) に等しい、という式を立てることで、高さ \(h\) と速さ \(v\) の関係を求めることができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 「誰から見て」の運動か?: 問題文の「静かに落とす」「〜に対して」といった言葉に注目し、それがどの観測者から見た運動(相対運動)を記述しているのかをまず把握します。
- 地面(静止系)での初速度に変換: 物理の問題は、特に断りがなければ地面に固定された座標系(静止系)で解くのが基本です。相対速度の考え方を使って、地面から見た物体の初速度を決定します。
- 座標軸の設定: 運動の主たる向き(この場合は下向き)を正の向きに設定すると、計算が非常に楽になります。
- 物理量の整理と公式選択: 与えられた量(\(v_0, t, g\))と求めたい量(\(v, h\))を整理し、それぞれを最も直接的に計算できる公式を選択します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 初速度を0と勘違いする:
- 誤解: 「静かに落とす」という言葉だけを見て、初速度 \(v_0=0\) の自由落下運動として計算してしまう。これは最も多い間違いです。
- 対策: 「何から静かに落とすのか」を常に意識します。動いている物体から落とす場合は、その物体の速度が初速度になる、と機械的に結びつけて覚えましょう。
- 計算式の項を忘れる:
- 誤解: 高さ \(h\) を計算する際に、\(h = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) の初速度の項 \(v_0 t\) を忘れて、\(h = \frac{1}{2}gt^2\) だけで計算してしまう。
- 対策: 鉛直投げ下ろしは「初速度で等速運動した距離」と「重力で加速された距離」の和である、と物理的な意味を理解しておくと、項の抜け漏れを防げます。
- 有効数字の扱い:
- 誤解: 計算結果の \(v=34.4\) や \(h=59.1\) をそのまま答えとしてしまう。
- 対策: 計算を始める前に、問題文で与えられた数値(\(5.0, 3.0, 9.8\))の有効数字がすべて2桁であることを確認し、最終的な答えも2桁に揃えることを徹底します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 速さの計算に \(v = v_0 + gt\) を選んだ理由:
- 選定理由: 「初速度 \(v_0\)」「加速度 \(g\)」「時間 \(t\)」がすべて分かっており、「最終的な速さ \(v\)」を求めたい。これら4つの物理量を最もシンプルに結びつけるのがこの公式だからです。
- 適用根拠: 等加速度直線運動における速度の定義そのものであり、鉛直投げ下ろし運動に直接適用できます。
- 高さの計算に \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) を選んだ理由:
- 選定理由: 「初速度 \(v_0\)」「加速度 \(g\)」「時間 \(t\)」がすべて分かっており、「落下した高さ(変位) \(h\)」を求めたい。これら4つの物理量を結びつけるのがこの公式だからです。
- 適用根拠: 等加速度直線運動における変位と時間の関係を表す基本公式であり、鉛直投げ下ろし運動に直接適用できます。
- 検算に \(v^2 – v_0^2 = 2gy\) を使う意義:
- 選定理由: この公式は時間 \(t\) を含みません。したがって、速さと高さを計算した後に、この式に \(v, v_0, g, h\) の値を代入して等式が成り立つかを確認することで、計算全体の正しさを検証(検算)できます。
- 適用根拠: 等加速度直線運動の基本公式から時間 \(t\) を消去して導かれる関係式であり、異なる角度から物理量の関係性をチェックするのに役立ちます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 物理的な妥当性の吟味:
- 計算結果が出たら、それが直感的に正しいかを考えましょう。例えば、もしこの問題が自由落下だったら、速さは \(v=9.8 \times 3.0 = 29.4 \text{ m/s}\)、高さは \(h=44.1 \text{ m}\) です。投げ下ろしているので、速さも高さもこれより大きくなるはずです。計算結果(\(34.4 \text{ m/s}\), \(59.1 \text{ m}\))が、この予測と一致していることを確認するだけで、大きなミスを防げます。
- 項ごとに計算する:
- \(h = 5.0 \times 3.0 + \frac{1}{2} \times 9.8 \times (3.0)^2\) のような複数の項がある計算では、各項を別々に計算(\(15\) と \(44.1\))してから最後に足し合わせると、計算ミスが減ります。
- 単位の確認:
- \(h = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) の単位を確認すると、\( [\text{m}] = [\text{m/s}]\cdot[\text{s}] + [\text{m/s}^2]\cdot[\text{s}]^2 = [\text{m}] + [\text{m}] \) となり、両辺の単位が一致していることがわかります。このような単位チェックは、公式の覚え間違いや項の抜け漏れを発見するのに有効です。
27 鉛直投げ上げ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「鉛直投げ上げ運動」です。地上から物体を真上に投げ上げたときの運動を、等加速度直線運動の公式を用いて分析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鉛直投げ上げ運動の性質: 初速度 \(v_0\) を持ち、常に鉛直下向きに重力加速度 \(g\) を受ける「等加速度直線運動」です。
- 座標軸の設定と符号: 運動を記述する基準(原点、正の向き)を最初に決めることが極めて重要です。一般的に、投げ上げた点を原点とし、鉛直上向きを正の向きとします。この場合、初速度は \(+v_0\)、加速度は常に下向きなので \(-g\) となります。
- 物理的条件の数式化: 「最高点に達する」は速度 \(v=0\)、「地上に落下する」は変位 \(y=0\) のように、問題文の状況を数式に置き換えることが求められます。
- 運動の対称性: 地面から投げ上げて地面に戻る運動では、最高点を境に上昇と下降が対称的になります。最高点までの上昇時間と最高点から元の高さまで下降する時間は等しく、投げ上げたときの速さと元の高さに戻ってきたときの速さは等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、最高点では速度が \(0\) になるという物理的条件を利用して、最高点に達するまでの時間と、そのときの高さを計算します。
- (2)では、地上に落下するということは変位が \(0\) になることを利用して時間を計算する方法と、運動の対称性を利用して計算する方法があります。速さについても同様に、計算で求める方法と対称性から求める方法があります。
問(1)
思考の道筋とポイント
小球が「最高点に達する」という条件は、上向きの速度が徐々に減少し、一瞬だけ速度が \(0\) になることを意味します。この条件を等加速度直線運動の公式に適用して、時間と高さを求めます。
この設問における重要なポイント
- 座標軸を設定する:地上を原点(\(y=0\))、鉛直上向きを正の向きとする。
- 物理量を符号付きで整理する:初速度 \(v_0 = +19.6 \text{ m/s}\)、加速度 \(a = -g = -9.8 \text{ m/s}^2\)。
- 最高点の条件を適用する:最高点では速度 \(v = 0\)。
- 時間を求めるには速度と時間の関係式を、高さを求めるには速度と変位の関係式を用いるのが効率的。
具体的な解説と立式
鉛直上向きを正の向き、地上を原点(\(y=0\))とします。
初速度は \(v_0 = 19.6 \text{ m/s}\)、加速度は \(a = -g = -9.8 \text{ m/s}^2\) です。
最高点に達するまでの時間 \(t_1\) の計算
最高点では速度が \(v=0\) になります。このときの時刻を \(t_1\) とします。
等加速度直線運動の速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) に、これらの値を代入します。
$$ 0 = v_0 – g t_1 $$
最高点の高さ \(h\) の計算
最高点の高さを \(h\) とします。このとき変位は \(y=h\) です。
時間を含まない速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を用いると、(1)で求めた時間に依存せずに計算できます。
$$ 0^2 – v_0^2 = 2(-g)h $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
時間 \(t_1\) の計算:
$$
\begin{aligned}
0 &= 19.6 – 9.8 \times t_1 \\[2.0ex]9.8 t_1 &= 19.6 \\[2.0ex]t_1 &= \displaystyle\frac{19.6}{9.8} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
高さ \(h\) の計算:
$$
\begin{aligned}
-v_0^2 &= -2gh \\[2.0ex]h &= \displaystyle\frac{v_0^2}{2g} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{(19.6)^2}{2 \times 9.8} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{19.6 \times 19.6}{19.6} \\[2.0ex]&= 19.6 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、答えも2桁に丸めます。
$$ h \approx 20 \text{ [m]} $$
時間: 上向きの速さ \(19.6 \text{ m/s}\) が、重力によって1秒間に \(9.8 \text{ m/s}\) ずつ減っていきます。速さが \(0\) になる(最高点に達する)までの時間は、「初めの速さ ÷ 1秒あたりに減る速さ」で計算でき、\(19.6 \div 9.8 = 2.0\) 秒後となります。
高さ: 時間を使わない公式「(終わりの速さ)\(^2\) – (初めの速さ)\(^2\) = \(2 \times\) 加速度 \(\times\) 距離」を使います。最高点では速さが0なので、「\(0^2 – 19.6^2 = 2 \times (-9.8) \times h\)」となります。これを \(h\) について解くと \(19.6\) メートル、約 \(20\) メートルと求まります。
最高点に達するのは \(2.0\) 秒後で、その高さは \(19.6 \text{ m}\)(有効数字2桁で \(20 \text{ m}\))です。計算結果は妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「小球が地上に落下する」とは、出発点である地上に戻ってくることを意味します。これは、変位 \(y\) が再び \(0\) になるということです。この条件を変位と時間の関係式に適用して時間を求めるのが一つの方法です。また、運動の対称性を利用すると、より簡単に時間と速さを求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 解法1: 地上に戻ったとき、変位 \(y=0\) であることを利用する。
- 解法2(推奨): 運動の対称性を利用する。最高点までの上昇時間と、最高点から元の高さまで下降する時間は等しい。また、元の高さに戻ってきたときの速さの大きさは、投げ上げたときの速さの大きさと等しい。
具体的な解説と立式
解法1:公式を用いて計算する方法
地上に落下するまでの時間 \(t_2\) の計算
変位 \(y=0\) となる時刻 \(t_2\) を求めます。変位と時間の関係式 \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を用います。
$$ 0 = v_0 t_2 – \displaystyle\frac{1}{2} g t_2^2 $$
地上に落下する直前の速さ \(v_2\) の計算
求めた時間 \(t_2\) を、速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) に代入します。
$$ v_2 = v_0 – g t_2 $$
速さは速度の大きさなので、\(|v_2|\) を求めます。
解法2:運動の対称性を利用する方法
地上に落下するまでの時間 \(t_2\) の計算
上昇と下降は対称的なので、地上に戻るまでの時間 \(t_2\) は、最高点に達するまでの時間 \(t_1\) の2倍になります。
$$ t_2 = 2 t_1 $$
地上に落下する直前の速さ \(v_2\) の計算
運動の対称性から、元の高さに戻ってきたときの速さの大きさは、投げ上げたときの速さの大きさと等しくなります。
$$ |v_2| = v_0 $$
使用した物理公式
- 解法1: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\), \(v = v_0 + at\)
- 解法2: 鉛直投げ上げ運動の対称性
解法1の計算:
時間 \(t_2\):
$$
\begin{aligned}
0 &= 19.6 t_2 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 9.8 \times t_2^2 \\[2.0ex]0 &= 19.6 t_2 – 4.9 t_2^2 \\[2.0ex]0 &= 4.9 t_2 (4.0 – t_2)
\end{aligned}
$$
この方程式の解は \(t_2=0\)(投げた瞬間)と \(t_2=4.0\) です。したがって、地上に落下するのは \(4.0 \text{ s}\) 後です。
速さ \(v_2\):
$$
\begin{aligned}
v_2 &= 19.6 – 9.8 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 19.6 – 39.2 \\[2.0ex]&= -19.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
速度のマイナスは下向きを意味します。速さはその大きさなので、
$$ |v_2| = 19.6 \approx 20 \text{ [m/s]} $$
解法2の計算:
時間 \(t_2\):
(1)より \(t_1 = 2.0 \text{ s}\) なので、
$$
\begin{aligned}
t_2 &= 2 \times 2.0 = 4.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
速さ \(v_2\):
$$
\begin{aligned}
|v_2| &= v_0 = 19.6 \approx 20 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
時間: 投げ上げ運動は、最高点を中心に左右対称です。(1)で最高点まで上がるのに \(2.0\) 秒かかったので、最高点から地面まで下りてくるのにも同じく \(2.0\) 秒かかります。したがって、合計時間は \(2.0 + 2.0 = 4.0\) 秒です。
速さ: 対称性から、元の場所に戻ってきたときの速さは、投げたときと全く同じ大きさになります。向きは逆(下向き)ですが、速さを聞かれているので \(19.6 \text{ m/s}\)、約 \(20 \text{ m/s}\) となります。
地上に落下するのは \(4.0\) 秒後で、その直前の速さは \(19.6 \text{ m/s}\)(有効数字2桁で \(20 \text{ m/s}\))です。対称性を利用する解法が非常に簡潔で強力であることがわかります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 鉛直投げ上げ運動のモデル化:
- 核心: 鉛直投げ上げ運動は、上向きの初速度 \(v_0\) を持ち、常に鉛直下向きに一定の重力加速度 \(g\) を受ける等加速度直線運動である、と正しくモデル化することが全ての基本です。
- 理解のポイント: このモデル化により、上昇と下降という一見複雑な運動を、等加速度直線運動の3公式という統一されたツールで分析できることがわかります。
- 座標軸の設定と符号の厳密な適用:
- 核心: 物理量をベクトルとして捉え、最初に設定した座標軸(この場合は上向きを正)に従って、各物理量の符号を決定することが、計算ミスを防ぐ上で最も重要です。
- 理解のポイント:
- 上向きを正とすると、初速度は \(v_0 > 0\)、重力加速度は常に下向きなので \(a = -g\) となります。
- 速度 \(v\) は、上昇中は正、最高点で0、下降中は負の値をとります。
- 運動の対称性:
- 核心: 地面から投げ上げて地面に戻る運動では、最高点を境に上昇と下降の運動が完全に対称になるという性質。
- 理解のポイント: この対称性を理解し活用することで、(2)のような問題の計算を大幅に簡略化できます。
- 上昇時間 = 下降時間
- 投げ上げの速さ = 同じ高さに戻ってきたときの速さ
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 高さのある場所からの投げ上げ: ビルの屋上から投げ上げる問題など。この場合、地上に落下するときの変位は \(y=0\) ではなく、ビルの高さ分だけマイナス(例: \(y=-H\))になります。運動の対称性は使えないため、公式を直接適用して解く必要があります。
- 斜方投射: 運動を水平方向(等速直線運動)と鉛直方向(鉛直投げ上げ)に分解して考えます。この問題で問われている鉛直方向の運動の分析は、斜方投射を解く上で必須の要素となります。
- 力学的エネルギー保存則の利用: (1)の最高点の高さ \(h\) は、運動エネルギーが位置エネルギーに変換される過程として、\(\displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 = mgh\) というエネルギー保存則からも求めることができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 座標軸を宣言する: 解答を書き始める前に、必ず「どの点を原点とし、どちらの向きを正とするか」を明記します。これが思考のブレを防ぎます。
- キーワードを数式に変換: 問題文中の「最高点」「地上に落下する」などのキーワードを見つけ、それぞれが \(v=0\), \(y=0\) のように、どの物理量がどのような値をとる条件に対応するのかを整理します。
- 対称性の利用を検討する: 投げた点と着地点が同じ高さかを確認します。同じ高さであれば、(2)のように対称性を利用できないか、まず考えます。これが最も速く確実な解法になることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 加速度の符号ミス:
- 誤解: 上昇中は減速するから加速度はマイナス、下降中は加速するからプラス、と勘違いしてしまう。
- 対策: 重力は、物体が上がっていようが下がっていようが、常に鉛直下向きに働きます。したがって、一度「上向きを正」と決めたら、運動のどの段階であっても加速度は常に \(a=-g\) で一定です。これを徹底してください。
- 速度と速さの混同:
- 誤解: (2)で計算した速度 \(v_2 = -19.6 \text{ m/s}\) を見て、速さがマイナスになることはないはずだ、と混乱してしまう。
- 対策: 「速度」は向きを含むベクトル量(プラス・マイナスがあり得る)、「速さ」はその大きさ(常に0以上)であることを区別します。計算で出てきたマイナスは「下向き」という向きを表しており、物理的に正しいです。速さを問われたら、その絶対値をとることを忘れないようにしましょう。
- 二次方程式の解の吟味:
- 誤解: (2)を公式で解いたときに出てくる2つの解 \(t_2=0\) と \(t_2=4.0\) の意味を理解せず、間違った方を選んでしまう。
- 対策: \(y=0\) となるのは「投げた瞬間(\(t=0\))」と「戻ってきた瞬間」の2回あることを物理的に理解します。問題で問われているのは後者なので、\(0\) ではない方の解を選びます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1) 時間の計算に \(v = v_0 + at\) を選んだ理由:
- 選定理由: 「最高点」という速度に関する条件(\(v=0\))から「時間 \(t_1\)」を求めたい。速度 \(v\) と時間 \(t\) を直接結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: 鉛直投げ上げ運動は等加速度直線運動なので、その速度式 \(v=v_0-gt\) を適用します。
- (1) 高さの計算に \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を選んだ理由:
- 選定理由: 「最高点」という速度に関する条件(\(v=0\))から「高さ \(h\)」を求めたい。この公式は時間を含まないため、もし時間の計算でミスをしていても、高さは正しく求められる可能性があります。検算にも有効です。
- 適用根拠: 鉛直投げ上げ運動は等加速度直線運動なので、時間を含まない関係式 \(v^2-v_0^2=-2gy\) を適用します。
- (2) 時間と速さの計算に対称性を利用した理由:
- 選定理由: 「地上に落下する」という条件は、出発点と同じ高さに戻ることを意味します。このような対称的な運動では、物理法則である「運動の対称性」を利用するのが、計算を伴う公式を適用するよりも圧倒的に速く、簡単で、ミスが少ないからです。
- 適用根拠: 力学的エネルギー保存則から、同じ高さでは同じ速さの大きさを持つことが導かれ、そこから運動の時間的な対称性も証明されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(g=9.8\) の倍数に気づく:
- この問題では初速度が \(19.6 \text{ m/s}\) と与えられています。これは \(2 \times 9.8\) です。この関係に気づくと、(1)の時間の計算 \(t_1 = 19.6/9.8\) が暗算で \(2.0 \text{ s}\) と求まります。また、高さの計算でも \(h = 19.6^2 / (2 \times 9.8) = 19.6^2 / 19.6 = 19.6\) と、計算が非常に簡単になります。
- 別解による検算:
- (2)は対称性で解くのがベストですが、時間に余裕があれば、\(y=v_0t-\frac{1}{2}gt^2\) の公式でも計算してみましょう。答えが一致すれば、計算が正しいことの強力な裏付けになります。
- 符号の吟味:
- (2)を公式で解いた場合、速度 \(v_2\) が \(-19.6 \text{ m/s}\) とマイナスで出てきます。このとき、「上向きを正としたから、下向きに落ちてくる速度がマイナスになるのは物理的に正しいな」と確認する癖をつけると、符号ミスに気づきやすくなります。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]