無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「気体分子の速さとエネルギーの計算」【高校物理対応】

今回の問題

thermodynamicsall#16

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「気体分子運動論の応用計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 気体分子運動論による圧力の公式: 気体の圧力と、それを構成する分子のミクロな情報(密度、速度)を結びつける式です。
  2. 密度の定義: 質量を体積で割ったものです。モル質量とモル体積から計算できます。
  3. 二乗平均速度: 分子の速さの2乗を平均した値の、正の平方根 (\(\sqrt{\overline{v^2}}\))。分子の速さの代表値として用いられます。
  4. 理想気体の状態方程式: 気体のマクロな状態量(圧力、体積、温度、物質量)の関係を示す式です。
  5. ボルツマン定数: 気体定数をアボガドロ定数で割ったもので、1分子あたりのエネルギーを考える際に用いられます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず「速さの2乗の平均」\(\overline{v^2}\) を求め、その正の平方根をとることで「二乗平均速度」\(\sqrt{\overline{v^2}}\) を計算します。与えられた圧力の公式 \(p = \displaystyle\frac{1}{3}\rho\overline{v^2}\) を利用し、必要な密度 \(\rho\) を窒素のモル質量と標準状態でのモル体積から計算します。
  2. (2)では、(1)の計算過程で得られた \(\overline{v^2}\) の値を用いて、1分子あたりの平均運動エネルギー \(\overline{K} = \displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\) を計算します。1分子の質量 \(m\) は、モル質量とアボガドロ定数から求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
標準状態における窒素分子の二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) を求める問題です。まず、その計算の元となる「速さの2乗の平均」\(\overline{v^2}\) を、問題文で与えられている圧力の公式 \(p = \displaystyle\frac{1}{3}\rho\overline{v^2}\) を利用して求めます。この式を使うためには、標準状態における窒素ガスの圧力 \(p\) と密度 \(\rho\) の値が必要です。圧力 \(p\) は問題文に与えられていますが、密度 \(\rho\) は与えられていないため、自分で計算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 求める「二乗平均速度」は \(\sqrt{\overline{v^2}}\) である。
  • まず「速さの2乗の平均」\(\overline{v^2}\) を公式 \(p = \displaystyle\frac{1}{3}\rho\overline{v^2}\) から求める。
  • 密度 \(\rho\) は、質量を体積で割ることで求められる (\(\rho = \text{質量}/\text{体積}\))。
  • 1 mol あたりの質量(モル質量)と 1 mol あたりの体積(モル体積)が分かっていれば、密度を計算できる。
  • 分子量28の窒素ガスのモル質量は \(28 \, \text{g/mol} = 28 \times 10^{-3} \, \text{kg/mol}\) である。

具体的な解説と立式
まず、「速さの2乗の平均」\(\overline{v^2}\) を求めるために、与えられた圧力の公式を変形します。
$$ p = \frac{1}{3}\rho\overline{v^2} $$
$$ \overline{v^2} = \frac{3p}{\rho} \quad \cdots ① $$
次に、この式に必要な密度 \(\rho\) を求めます。
密度は、単位体積あたりの質量です。標準状態では、1 mol の気体の体積 \(V_{\text{mol}}\) は \(2.24 \times 10^{-2} \, \text{m}^3/\text{mol}\) です。
一方、窒素(分子量28)1 mol の質量 \(M_{\text{mol}}\) は \(28 \, \text{g} = 28 \times 10^{-3} \, \text{kg}\) です。
したがって、密度 \(\rho\) は、モル質量をモル体積で割ることで計算できます。
$$ \rho = \frac{M_{\text{mol}}}{V_{\text{mol}}} \quad \cdots ② $$
最終的に求める二乗平均速度は \(\sqrt{\overline{v^2}}\) です。

使用した物理公式

  • 気体分子運動論の圧力公式: \(p = \displaystyle\frac{1}{3}\rho\overline{v^2}\)
  • 密度の定義: \(\rho = \text{質量} / \text{体積}\)
  • 二乗平均速度の定義: \(\sqrt{\overline{v^2}}\)
計算過程

まず、式②を用いて密度 \(\rho\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\rho &= \frac{28 \times 10^{-3} \, \text{kg/mol}}{2.24 \times 10^{-2} \, \text{m}^3/\text{mol}} \\
&= \frac{28}{2.24} \times 10^{-1} \, \text{kg/m}^3 \\
&= 1.25 \, \text{kg/m}^3
\end{aligned}
$$
次に、この密度 \(\rho = 1.25 \, \text{kg/m}^3\) と、標準状態の圧力 \(p = 1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\) を式①に代入して、\(\overline{v^2}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\overline{v^2} &= \frac{3 \times (1.0 \times 10^5)}{1.25} \\
&= 2.4 \times 10^5 \, \text{m}^2/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
最後に、この値の正の平方根をとって、二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{\overline{v^2}} &= \sqrt{2.4 \times 10^5} \\
&= \sqrt{24 \times 10^4} \\
&= \sqrt{4 \times 6} \times 10^2 \\
&= 2\sqrt{6} \times 10^2
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{6} \approx 2.45\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
\sqrt{\overline{v^2}} &\approx 2 \times 2.45 \times 10^2 \\
&= 4.9 \times 10^2 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「二乗平均速度」を求めるには、まず「速さの2乗の平均 \(\overline{v^2}\)」を計算し、最後にその平方根(ルート)をとります。
「速さの2乗の平均 \(\overline{v^2}\)」は、公式 \(p = \frac{1}{3}\rho\overline{v^2}\) を変形した \(\overline{v^2} = \frac{3p}{\rho}\) から計算できます。
この計算には圧力 \(p\) と密度 \(\rho\) が必要です。圧力は与えられていますが、密度は自分で計算します。密度は「1 mol の質量」を「1 mol の体積」で割れば求まります(単位をkgとm³に揃えるのを忘れずに)。
計算して得られた \(\overline{v^2}\) の値の平方根を計算すると、答えの「二乗平均速度」が得られます。

結論と吟味

標準状態での窒素ガス分子の二乗平均速度は \(4.9 \times 10^2 \, \text{m/s}\) です。
この速さは、マッハ1(音速、約340 m/s)を超える非常に高速ですが、気体分子の速さとしては物理的に妥当な値です。

解答 (1) \(4.9 \times 10^2 \, \text{m/s}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
0℃(標準状態)の窒素ガス1分子あたりの平均運動エネルギー \(\overline{K}\) を求める問題です。平均運動エネルギーは \(\overline{K} = \displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\) で定義されます。
(1)の計算過程で「速さの2乗の平均」\(\overline{v^2}\) は求めたので、これと窒素ガス1分子の質量 \(m\) を使って計算します。1分子の質量は、モル質量をアボガドロ定数で割ることで得られます。
この設問における重要なポイント

  • 平均運動エネルギーの定義式: \(\overline{K} = \displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\)
  • 1分子の質量 \(m\) は、モル質量 \(M_{\text{mol}}\) とアボガドロ定数 \(N_A\) を用いて \(m = \displaystyle\frac{M_{\text{mol}}}{N_A}\) と計算できる。
  • (1)で求めた \(\overline{v^2} = 2.4 \times 10^5 \, \text{m}^2/\text{s}^2\) の値を利用する。

具体的な解説と立式
1分子あたりの平均運動エネルギー \(\overline{K}\) は、
$$ \overline{K} = \frac{1}{2}m\overline{v^2} \quad \cdots ① $$
で与えられます。
ここで、\(\overline{v^2}\) は(1)の計算過程で求めた \(2.4 \times 10^5 \, \text{m}^2/\text{s}^2\) です。
窒素分子1個の質量 \(m\) を計算します。窒素のモル質量 \(M_{\text{mol}}\) は \(28 \times 10^{-3} \, \text{kg/mol}\)、アボガドロ定数 \(N_A\) は \(6.0 \times 10^{23} \, \text{/mol}\) なので、
$$ m = \frac{M_{\text{mol}}}{N_A} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 平均運動エネルギーの定義: \(\overline{K} = \displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\)
  • モル質量と分子1個の質量の関係: \(m = M_{\text{mol}} / N_A\)
計算過程

まず、式②を用いて窒素分子1個の質量 \(m\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{28 \times 10^{-3} \, \text{kg/mol}}{6.0 \times 10^{23} \, \text{/mol}} \\
&= \frac{28}{6.0} \times 10^{-26} \, \text{kg}
\end{aligned}
$$
次に、この質量 \(m\) と(1)で求めた \(\overline{v^2}\) を式①に代入して、\(\overline{K}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\overline{K} &= \frac{1}{2} \times \left( \frac{28 \times 10^{-3}}{6.0 \times 10^{23}} \right) \times (2.4 \times 10^5) \\
&= \frac{1}{2} \times \frac{28}{6.0} \times 2.4 \times 10^{-3-23+5} \, \text{J} \\
&= \frac{28 \times 1.2}{6.0} \times 10^{-21} \, \text{J} \\
&= 28 \times 0.2 \times 10^{-21} \, \text{J} \\
&= 5.6 \times 10^{-21} \, \text{J}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

分子1個の平均運動エネルギーは「\(\frac{1}{2} \times (\text{分子1個の質量}) \times (\text{速さの2乗の平均})\)」で計算できます。
「速さの2乗の平均」は(1)の計算途中で \(2.4 \times 10^5\) と求めました。
「分子1個の質量」は、「1 mol の質量(モル質量)」を「1 mol あたりの個数(アボガドロ定数)」で割れば求まります。窒素のモル質量は \(28 \, \text{g}\)、アボガドロ定数は \(6.0 \times 10^{23}\) です(単位をkgに直すのを忘れずに)。
これらの値をすべて運動エネルギーの式に代入して計算すれば、答えが得られます。

結論と吟味

0℃の窒素ガス1分子あたりの平均運動エネルギーは \(5.6 \times 10^{-21} \, \text{J}\) です。
非常に小さい値ですが、分子レベルのエネルギーとしては妥当な大きさです。
また、このエネルギーは温度に比例することが知られています (\(\overline{K} = \frac{3}{2}k_B T\))。この関係を使って検算することもできます。\(T = 273 \, \text{K}\), \(k_B \approx 1.38 \times 10^{-23} \, \text{J/K}\) を用いると、\(\overline{K} = \frac{3}{2} \times (1.38 \times 10^{-23}) \times 273 \approx 5.65 \times 10^{-21} \, \text{J}\) となり、計算結果とよく一致します。

解答 (2) \(5.6 \times 10^{-21} \, \text{J}\)


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