無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「平行板コンデンサーの設計:面積の計算と誘電体の効果」【高校物理対応】

今回の問題

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【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平行板コンデンサーの設計」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 平行板コンデンサーの電気容量の公式: \(C = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)
    • \(\epsilon\): 極板間の物質の誘電率
    • \(S\): 極板の面積
    • \(d\): 極板間の距離
  • 誘電率の関係: 物質の誘電率 \(\epsilon\) は、真空の誘電率 \(\epsilon_0\) と、物質の比誘電率 \(\epsilon_r\) を用いて、\(\epsilon = \epsilon_r \epsilon_0\) と表されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、極板間が真空の場合の電気容量の公式 \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\) を、求めたい面積 \(S\) について解き、与えられた値を代入して計算します。
  2. (2)では、極板間が誘電体で満たされた場合の公式 \(C = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S}{d}\) を同様に面積 \(S\) について解いて計算します。(1)の結果との比較から、計算を簡略化することもできます。

問(1)

思考の道筋とポイント
極板間が真空のとき、電気容量 \(1 \, \mu\text{F}\) を実現するために必要な金属板の面積 \(S_1\) を求めます。平行板コンデンサーの電気容量の公式を、求めたい面積 \(S_1\) について変形し、与えられた数値を代入して計算します。単位の変換が重要なポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 平行板コンデンサーの電気容量の公式を、面積Sについて解けること。
  • 単位の接頭辞(\(\mu\): マイクロ、m: ミリ)を正しくSI単位に変換すること。

具体的な解説と立式
平行板コンデンサーの電気容量の公式は、極板間が真空の場合、真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を用いて、
$$C = \epsilon_0 \frac{S_1}{d}$$となります。これを、求めたい面積 \(S_1\) について解くと、$$S_1 = \frac{Cd}{\epsilon_0} \quad \cdots ①$$
となります。
計算の前に、与えられた値の単位をSI単位に変換します。

  • 電気容量 \(C\): \(1 \, \mu\text{F} = 1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)
  • 極板間距離 \(d\): \(1 \, \text{mm} = 1.0 \times 10^{-3} \, \text{m}\)
  • 真空の誘電率 \(\epsilon_0\): \(8.9 \times 10^{-12} \, \text{F/m}\)

これらの値を式①に代入します。

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量(真空中): \(C = \epsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
S_1 &= \frac{(1.0 \times 10^{-6}) \times (1.0 \times 10^{-3})}{8.9 \times 10^{-12}} \\[2.0ex]&= \frac{1.0}{8.9} \times \frac{10^{-9}}{10^{-12}} \\[2.0ex]&\approx 0.1123 \times 10^{3} \\[2.0ex]&\approx 112.3 \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$
与えられた数値の有効数字は2桁(1.0, 8.9)なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$S_1 \approx 1.1 \times 10^2 \, \text{m}^2$$

計算方法の平易な説明

コンデンサーの面積を求める公式 \(S = \frac{Cd}{\epsilon_0}\) を使います。まず、単位を揃えます。\(1\,\mu\text{F} = 10^{-6}\text{F}\)、\(1\,\text{mm} = 10^{-3}\text{m}\) です。これらの値を公式に代入して計算すると、約 110 \(\text{m}^2\) となります。

結論と吟味

必要な金属板の面積は \(1.1 \times 10^2 \, \text{m}^2\) です。これは一辺が約10mの正方形に相当し、非常に大きな面積です。

解答 (1) \(1.1 \times 10^2 \, \text{m}^2\)

問(2)

思考の道筋とポイント
極板間を比誘電率 \(\epsilon_r = 1000\) の物質で満たしたとき、同じく電気容量 \(1 \, \mu\text{F}\) を実現するために必要な金属板の面積 \(S_2\) を求めます。誘電体がある場合の電気容量の公式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 誘電体を満たすと電気容量が \(\epsilon_r\) 倍になることを理解していること。
  • 同じ電気容量を得るためには、必要な面積は \(\frac{1}{\epsilon_r}\) 倍になる、という関係を導けること。

具体的な解説と立式
極板間を比誘電率 \(\epsilon_r\) の誘電体で満たした場合、電気容量の公式は、
$$C = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S_2}{d}$$となります。これを、求めたい面積 \(S_2\) について解くと、$$S_2 = \frac{Cd}{\epsilon_r \epsilon_0} \quad \cdots ②$$
となります。
ここで、(1)で求めた \(S_1 = \displaystyle\frac{Cd}{\epsilon_0}\) と比較すると、
$$S_2 = \frac{1}{\epsilon_r} \left(\frac{Cd}{\epsilon_0}\right) = \frac{S_1}{\epsilon_r}$$
という関係があることがわかります。つまり、必要な面積は(1)のときの \(\displaystyle\frac{1}{\epsilon_r}\) 倍になります。

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量(誘電体あり): \(C = \epsilon_r \epsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
計算過程

(1)の結果 \(S_1 \approx 112.3 \, \text{m}^2\) と、\(\epsilon_r = 1000\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
S_2 &= \frac{S_1}{\epsilon_r} \\[2.0ex]&= \frac{112.3…}{1000} \\[2.0ex]&\approx 0.1123 \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、
$$S_2 \approx 0.11 \, \text{m}^2$$

計算方法の平易な説明

誘電体を入れると、コンデンサーの性能がアップします。比誘電率が1000なので、性能は1000倍になります。同じ電気容量を達成するのに、性能が1000倍になった分、必要な面積は1000分の1で済みます。(1)で求めた面積(約110 \(\text{m}^2\))を1000で割ると、約 0.11 \(\text{m}^2\) となります。

結論と吟味

必要な面積は約 \(0.11 \, \text{m}^2\) となります。これは \(1100 \, \text{cm}^2\) であり、一辺が約33cmの正方形に相当します。(1)の結果と比べると劇的に小さくなっており、高い比誘電率を持つ誘電体がコンデンサーの小型化にいかに重要であるかがわかります。

解答 (2) \(0.11 \, \text{m}^2\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 平行板コンデンサーの電気容量の公式:
    • 核心: この問題は、コンデンサーの性能(電気容量 \(C\))が、その形状(面積 \(S\)、間隔 \(d\))と、内部に満たされた物質の性質(誘電率 \(\epsilon\))によってどのように決まるか、という物理的関係を数式 \(C = \epsilon \frac{S}{d}\) で理解しているかを問うています。
    • 理解のポイント: この公式は、コンデンサーを設計する上での基本指針を与えます。容量を大きくするには、「面積Sを大きく」「間隔dを狭く」「誘電率\(\epsilon\)の大きい物質(=比誘電率\(\epsilon_r\)の大きい誘電体)を使う」という3つの方法があることを示しています。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 容量から間隔を求める: 面積 \(S\) が固定で、特定の容量 \(C\) を実現するための間隔 \(d\) を求める問題も、公式を \(d = \epsilon \frac{S}{C}\) と変形すれば同様に解けます。
    • 比で考える: (2)は、(1)の状況と比較して考える問題です。\(C\) と \(d\) が同じ条件で、真空(\(\epsilon_0\))から誘電体(\(\epsilon_r \epsilon_0\))に変えた場合、\(C = \epsilon_0 \frac{S_1}{d} = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S_2}{d}\) という等式が成り立ちます。この式から、\(\epsilon_0 S_1 = \epsilon_r \epsilon_0 S_2 \rightarrow S_2 = S_1 / \epsilon_r\) という関係がすぐに導け、計算が簡略化できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 目標(求めたい量)を確認: この問題では「面積 \(S\)」を求めます。
    2. 使う公式を決定: コンデンサーの形状に関する問題なので、\(C = \epsilon \frac{S}{d}\) を使います。
    3. 公式を変形: 求めたい量(\(S\))について、式を \(S = \frac{Cd}{\epsilon}\) の形に変形します。
    4. 単位を統一: 計算に使うすべての物理量の単位をSI単位系(F, m)に変換します。mmや\(\mu\)Fのまま計算しないように注意します。
    5. 値を代入して計算: 最後に、数値を代入して計算します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 単位の接頭辞の変換ミス:
    • 誤解: \(\mu\)(マイクロ)を \(10^{-3}\)、m(ミリ)を \(10^{-2}\) といったように、接頭辞の意味を間違える。
    • 対策: \(\mu=10^{-6}\) (マイクロ)、m=\(10^{-3}\) (ミリ)、n=\(10^{-9}\) (ナノ)、p=\(10^{-12}\) (ピコ) など、頻出する接頭辞は正確に暗記しましょう。特に\(\mu\)とmの混同に注意が必要です。
  • 比誘電率\(\epsilon_r\)と誘電率\(\epsilon\)の混同:
    • 誤解: (2)の計算で、誘電率 \(\epsilon\) の部分に、比誘電率 \(\epsilon_r=1000\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: \(\epsilon_r\) は単位のない単なる「倍率」であり、誘電率そのものではありません。物質の誘電率 \(\epsilon\) は、必ず \(\epsilon = \epsilon_r \epsilon_0\) のように、真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を掛けて計算することを忘れないようにしましょう。
  • 指数の計算ミス:
    • 誤解: \(\frac{10^{-9}}{10^{-12}}\) を \(10^{-9-12} = 10^{-21}\) のように間違える。
    • 対策: 指数の割り算は「上の指数 – 下の指数」です。\( -9 – (-12) = -9 + 12 = 3 \) と、符号の変化に注意して落ち着いて計算しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • なぜ \(C = \epsilon \frac{S}{d}\) なのか?:
    • 選定理由: この公式は、コンデンサーの幾何学的な形状(\(S, d\))と、内部の物質の電気的性質(\(\epsilon\))が、その性能(電気容量 \(C\))をどのように決定するかを直接的に結びつける唯一の式だからです。
    • 適用根拠: この公式は、ガウスの法則と電位の定義から導出されます。
      1. ガウスの法則から、極板間の電場が \(E = \frac{Q}{\epsilon S}\) と求められます。
      2. 一様な電場なので、電位差は \(V = Ed = \frac{Qd}{\epsilon S}\) となります。
      3. 電気容量の定義 \(C = \frac{Q}{V}\) に代入すると、\(C = \frac{Q}{\frac{Qd}{\epsilon S}} = \epsilon \frac{S}{d}\) が得られます。

      このように、より基本的な法則から論理的に導かれる関係式であるため、安心して適用できます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位変換を最初に行う: 計算を始める前に、問題で与えられたすべての数値をSI単位に変換して書き出しておくことで、計算途中の混乱や変換忘れを防げます。
  • 概算で桁数を見積もる: (1)の計算で、\(\frac{10^{-6} \times 10^{-3}}{10^{-12}} = \frac{10^{-9}}{10^{-12}} = 10^3\) のように、まず指数のオーダーだけを計算しておくと、答えの桁数が \(10^3\) 程度になることが予測でき、大きな計算ミスを防げます。
  • 物理的な意味から検算する: (2)では、誘電率が1000倍も大きい物質を使うのだから、同じ容量を作るのに必要な面積は劇的に小さくなるはずだ、と予測できます。計算結果が(1)より大きくなっていたら、どこかで間違いがあると気づくことができます。

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