無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「平行板コンデンサーの設計:面積の計算と誘電体の効果」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#15

各設問の思考プロセス

この問題は、指定された性能(電気容量)を持つ平行板コンデンサーを設計する、という具体的な計算問題です。(1)の真空の場合と(2)の誘電体を入れた場合を比較することで、誘電体がコンデンサーの設計にどう影響するかを理解することがテーマです。

この問題を解く上で中心となる物理法則は「平行板コンデンサーの電気容量の公式」です。
$$C = \epsilon \frac{S}{d}$$
ここで、\(\epsilon\)は極板間の物質の誘電率、\(S\)は極板の面積、\(d\)は極板間の距離です。

物質の誘電率\(\epsilon\)は、真空の誘電率\(\epsilon_0\)と、物質の比誘電率\(\epsilon_r\)を用いて、
$$\epsilon = \epsilon_r \epsilon_0$$
と表されます。真空の場合は\(\epsilon_r = 1\)なので、\(\epsilon = \epsilon_0\)となります。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. (1) 真空の場合の面積を計算する:
    電気容量の公式 \(C = \epsilon_0 \frac{S_1}{d}\) を、求めたい面積\(S_1\)について解きます。このとき、与えられた電気容量(\(\mu\text{F}\))と距離(mm)の単位を、基本単位であるFとmに変換することが計算の重要な第一歩です。
  2. (2) 誘電体がある場合の面積を計算する:
    同様に、電気容量の公式 \(C = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S_2}{d}\) を面積\(S_2\)について解きます。ここで、(1)の結果と比較すると、必要な面積が\(\frac{1}{\epsilon_r}\)倍になることが分かります。この関係を利用すると、より簡単に計算できます。

計算ミスを防ぐためには、単位変換と科学記数法(指数)の扱いに注意することが重要です。

各設問の具体的な解説と解答

(1) 真空中でつくる場合の金属板の面積

問われている内容の明確化
極板間が真空のとき、電気容量 \(1 \, \mu\text{F}\) を実現するために必要な金属板の面積 \(S_1\) [\(\text{m}^2\)] を求めます。

具体的な解説と立式
平行板コンデンサーの電気容量の公式は、極板間が真空の場合、真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を用いて、
$$C = \epsilon_0 \frac{S_1}{d}$$となります。これを、求めたい面積 \(S_1\) について解くと、$$S_1 = \frac{Cd}{\epsilon_0} \quad \cdots ①$$
となります。
計算の前に、与えられた値の単位をSI単位に変換します。

  • 電気容量 \(C\): \(1 \, \mu\text{F} = 1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)
  • 極板間距離 \(d\): \(1 \, \text{mm} = 1.0 \times 10^{-3} \, \text{m}\)

これらの値を、真空の誘電率 \(\epsilon_0 = 8.9 \times 10^{-12} \, \text{F/m}\) とともに式①に代入します。

使用した物理公式: 平行板コンデンサーの電気容量(真空中)
$$C = \epsilon_0 \frac{S}{d}$$

計算過程
式①に、単位変換した値を代入します。
$$
\begin{aligned}
S_1 &= \frac{Cd}{\epsilon_0} \\[2.0ex]&= \frac{(1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (1.0 \times 10^{-3} \, \text{m})}{8.9 \times 10^{-12} \, \text{F/m}} \\[2.0ex]&= \frac{1.0}{8.9} \times \frac{10^{-9}}{10^{-12}} \, \text{m}^2 \\[2.0ex]&= 0.1123… \times 10^{3} \, \text{m}^2 \\[2.0ex]&= 112.3… \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$与えられた数値の有効数字は2桁(1.0, 8.9)なので、答えも有効数字2桁に丸めます。$$S_1 \approx 1.1 \times 10^2 \, \text{m}^2$$

計算方法の平易な説明

  • コンデンサーの面積を求める公式 \(S = \frac{Cd}{\epsilon_0}\) を使います。
  • まず、単位を揃えます。\(1\,\mu\text{F} = 10^{-6}\text{F}\)、\(1\,\text{mm} = 10^{-3}\text{m}\) です。
  • これらの値を公式に代入して、\(\displaystyle\frac{(1.0 \times 10^{-6}) \times (1.0 \times 10^{-3})}{8.9 \times 10^{-12}}\) という計算をします。
  • 計算すると、約 110 となります。単位は \(\text{m}^2\) です。

この設問における重要なポイント

  • 平行板コンデンサーの電気容量の公式を、面積Sについて解けること。
  • 単位の接頭辞(\(\mu\): マイクロ、m: ミリ)を正しくSI単位に変換すること。
解答 (1):
\(1.1 \times 10^2 \, \text{m}^2\)

(2) 比誘電率1000の物質で満たしてつくる場合の金属板の面積

問われている内容の明確化
極板間を比誘電率 \(\epsilon_r = 1000\) の物質で満たしたとき、同じく電気容量 \(1 \, \mu\text{F}\) を実現するために必要な金属板の面積 \(S_2\) [\(\text{m}^2\)] を求めます。

具体的な解説と立式
極板間を比誘電率 \(\epsilon_r\) の誘電体で満たした場合、その誘電率は \(\epsilon = \epsilon_r \epsilon_0\) となります。
したがって、電気容量の公式は、
$$C = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S_2}{d}$$となります。これを、求めたい面積 \(S_2\) について解くと、$$S_2 = \frac{Cd}{\epsilon_r \epsilon_0} \quad \cdots ②$$
となります。

ここで、(1)で求めた \(S_1 = \displaystyle\frac{Cd}{\epsilon_0}\) と比較すると、
$$S_2 = \frac{1}{\epsilon_r} \left(\frac{Cd}{\epsilon_0}\right) = \frac{S_1}{\epsilon_r}$$
という関係があることがわかります。つまり、必要な面積は(1)のときの \(\displaystyle\frac{1}{\epsilon_r}\) 倍になります。

使用した物理公式: 平行板コンデンサーの電気容量(誘電体あり)
$$C = \epsilon \frac{S}{d} = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S}{d}$$

計算過程
(1)の結果 \(S_1 \approx 112.3 \, \text{m}^2\) と、\(\epsilon_r = 1000\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
S_2 &= \frac{S_1}{\epsilon_r} \\[2.0ex]&= \frac{112.3… \, \text{m}^2}{1000} \\[2.0ex]&= 0.1123… \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$有効数字2桁に丸めると、$$S_2 \approx 0.11 \, \text{m}^2$$

計算方法の平易な説明

  • 誘電体を入れると、コンデンサーの性能がアップします。比誘電率が1000なので、性能は1000倍になります。
  • 同じ電気容量を達成するのに、性能が1000倍になった分、必要な面積は1000分の1で済みます。
  • (1)で求めた面積(約110 \(\text{m}^2\))を1000で割ると、約 0.11 \(\text{m}^2\) となります。

結論と吟味
必要な面積は約 \(0.11 \, \text{m}^2\) となります。これは \(1100 \, \text{cm}^2\) であり、一辺が約33cmの正方形に相当します。(1)の結果(一辺10m以上)と比べると、劇的に小さくなっており、高い比誘電率を持つ誘電体がコンデンサーの小型化にいかに重要であるかがわかります。

この設問における重要なポイント

  • 誘電体を満たすと電気容量が \(\epsilon_r\) 倍になることを理解していること。
  • 同じ電気容量を得るためには、必要な面積は \(\frac{1}{\epsilon_r}\) 倍になる、という関係を導けること。
解答 (2):
\(0.11 \, \text{m}^2\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 平行板コンデンサーの電気容量: 電気容量が極板の面積 \(S\) に比例し、極板間の距離 \(d\) に反比例すること (\(C \propto S/d\)) を数式で理解しておくことが基本です。
  • 誘電率:
    • 真空の誘電率 \(\epsilon_0\): 電場の伝わりやすさを表す真空の基本的な物理定数。
    • 比誘電率 \(\epsilon_r\): 真空と比べて、ある物質(誘電体)がどれだけ電場を弱めるか(=電気を蓄えやすくするか)を示す単位のない倍率。
    • 物質の誘電率 \(\epsilon\): \(\epsilon = \epsilon_r \epsilon_0\) という関係で結ばれる。
  • 誘電体の役割: コンデンサーの極板間に誘電体を挿入すると、電気容量を大きくすることができます。これにより、コンデンサーを小型化したり、より多くの電荷を蓄えたりすることが可能になります。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 単位変換の徹底: 物理計算、特に電磁気学では単位の統一が非常に重要です。F, m, s, A, C, V, N などのSI基本単位・組立単位に変換してから計算する習慣をつけましょう。
  • 比で考える: (2)のように、変化前後の状況を比較する問題では、物理量が何倍になるかを考えると、計算が簡略化されたり、見通しが良くなったりすることがあります。
  • 物理的な意味の考察: 計算結果が出たら、(1)の「110\(\text{m}^2\)は非常に大きい」や、(2)の「誘電体を入れると小さくなった」のように、その数値が持つ物理的な意味を少し考えてみると、理解が深まり、計算ミスにも気づきやすくなります。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 単位の接頭辞の変換ミス: \(\mu\)(マイクロ)を \(10^{-3}\)、m(ミリ)を \(10^{-2}\) といったように、接頭辞の意味を間違えるケース。(\(\mu=10^{-6}, \text{m}=10^{-3}, \text{n}=10^{-9}, \text{p}=10^{-12}\) などは正確に覚える)
  • 比誘電率\(\epsilon_r\)と誘電率\(\epsilon\)の混同: \(\epsilon_r\) は単位のない単なる「倍率」ですが、\(\epsilon\) や \(\epsilon_0\) は [F/m] という単位を持つ物理量です。区別して使いましょう。
  • 指数の計算ミス: 科学記数法での掛け算・割り算における指数の計算は、ケアレスミスの温床です。落ち着いて、\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\), \(10^a \div 10^b = 10^{a-b}\) のルールに従いましょう。

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