無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「列車の加速度運動と等速運動の解析」【高校物理対応】

問題の確認

dynamics#06

問題を解くための全体的な戦略と手順

この問題は、等加速度直線運動と等速度直線運動の組み合わせです。各区間ごとに列車の運動を分析し、速度や移動距離を計算していきます。

  • (1)の戦略: 区間1の運動に注目し、等加速度直線運動の速度の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて20秒後の速さを求めます。
  • (2)の戦略: 区間2の運動に注目し、まず区間2の初速度(これは区間1の最終速度と同じ)を求めます。次に、等加速度直線運動の速度の公式を用いて区間2の最終速度を求めます。この速度が区間3の等速度運動の速さとなります。
  • (3)の戦略: 列車は最初の \(20 \, \text{s}\) (区間1) 、次の \(40 \, \text{s}\) (区間2) 、合計 \(60 \, \text{s}\) は加速しています。その後は等速度運動 (区間3) です。90秒間の移動距離を求めるには、各区間での移動距離を計算し、それらを合計する必要があります。
    • 区間1の移動距離 \(x_1\) を計算します。
    • 区間2の移動距離 \(x_2\) を計算します。
    • 区間3は \(90 \, \text{s} – (t_1 + t_2) = 90 \, \text{s} – (20 \, \text{s} + 40 \, \text{s}) = 30 \, \text{s}\) 間の等速度運動です。この区間の移動距離 \(x_3\) を計算します。
    • 総移動距離 \(X = x_1 + x_2 + x_3\) を求めます。

各設問の具体的な解説と解答

(1) 出発してから20秒後の速さを求めよ。

問われている内容の明確化:
列車が出発してから最初の20秒間(区間1)が終了した時点での速さを求めます。

具体的な解説と計算手順:
区間1について考えます。
初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\)
加速度 \(a_1 = 2.0 \, \text{m/s}^2\)
時間 \(t_1 = 20 \, \text{s}\)

等加速度直線運動の速度の公式は \(v = v_0 + at\) です。
これに上記の値を代入して、20秒後の速さ \(v_1\) を求めます。
$$v_1 = v_0 + a_1 t_1$$
$$v_1 = 0 \, \text{m/s} + (2.0 \, \text{m/s}^2) \times (20 \, \text{s})$$
$$v_1 = 40 \, \text{m/s}$$

使用した物理公式: 等加速度直線運動の速度の公式
$$v = v_0 + at$$

  • \(v\): 時刻 \(t\) における速度
  • \(v_0\): 初速度(時刻 \(0\) における速度)
  • \(a\): 加速度
  • \(t\): 時間

計算方法の平易な説明:
列車は最初止まっています。そこから \(2.0 \, \text{m/s}^2\) の加速度で進みます。これは、「1秒あたり \(2.0 \, \text{m/s}\) ずつ速くなる」という意味です。20秒間この加速が続くので、速さは \(2.0 \, \text{m/s}^2 \times 20 \, \text{s} = 40 \, \text{m/s}\) だけ増加します。最初の速さが \(0 \, \text{m/s}\) なので、20秒後の速さは \(0 + 40 = 40 \, \text{m/s}\) となります。

この設問における重要なポイント:

  • 問題文から初速度、加速度、時間を正確に読み取ること。
  • 適切な物理公式を選択すること。
解答 (1):
出発してから20秒後の速さは \(40 \, \text{m/s}\) です。

(2) 等速度で走っていたときの速さを求めよ。

問われている内容の明確化:
列車が区間3で等速度運動するときの速さを求めます。この速さは、区間2が終了した時点での速さと同じです。

具体的な解説と計算手順:
まず、区間2の運動を考えます。
区間2の初速度 \(v_{2,0}\) は、区間1の最終速度 \(v_1\) と同じです。
$$v_{2,0} = v_1 = 40 \, \text{m/s}$$
区間2の加速度 \(a_2 = 1.0 \, \text{m/s}^2\)
区間2の時間 \(t_2 = 40 \, \text{s}\)

区間2の最終速度 \(v_2\) を、等加速度直線運動の速度の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて求めます。
$$v_2 = v_{2,0} + a_2 t_2$$
$$v_2 = (40 \, \text{m/s}) + (1.0 \, \text{m/s}^2) \times (40 \, \text{s})$$
$$v_2 = 40 \, \text{m/s} + 40 \, \text{m/s}$$
$$v_2 = 80 \, \text{m/s}$$
この速度 \(v_2\) が、区間3での等速度運動の速さ \(v_3\) となります。
$$v_3 = v_2 = 80 \, \text{m/s}$$

使用した物理公式: 等加速度直線運動の速度の公式
$$v = v_0 + at$$

計算方法の平易な説明:
(1)で20秒後には \(40 \, \text{m/s}\) の速さになっていることがわかりました。ここから次の40秒間は、\(1.0 \, \text{m/s}^2\) の加速度で進みます。これは、「1秒あたり \(1.0 \, \text{m/s}\) ずつ速くなる」という意味です。この加速が40秒間続くので、速さはさらに \(1.0 \, \text{m/s}^2 \times 40 \, \text{s} = 40 \, \text{m/s}\) だけ増加します。したがって、区間2の終わり(出発から \(20+40=60\) 秒後)の速さは、\(40 \, \text{m/s} + 40 \, \text{m/s} = 80 \, \text{m/s}\) となります。この後、列車はこの速さで等速度運動します。

この設問における重要なポイント:

  • ある区間の最終速度が、次の区間の初速度になることを理解すること。
  • 段階的に速度を計算していくこと。
解答 (2):
等速度で走っていたときの速さは \(80 \, \text{m/s}\) です。

(3) 出発してから90秒間に進んだ距離を求めよ。

問われている内容の明確化:
列車が出発してから90秒後までに進んだ総距離を求めます。これには、区間1、区間2、そして区間3の最初の部分の移動距離を合計する必要があります。

具体的な解説と計算手順:
各区間の移動距離を計算します。

区間1の移動距離 \(x_1\):
初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\)
加速度 \(a_1 = 2.0 \, \text{m/s}^2\)
時間 \(t_1 = 20 \, \text{s}\)
等加速度直線運動の距離の公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を用います。
$$x_1 = v_0 t_1 + \frac{1}{2} a_1 t_1^2$$
$$x_1 = (0 \, \text{m/s}) \times (20 \, \text{s}) + \frac{1}{2} \times (2.0 \, \text{m/s}^2) \times (20 \, \text{s})^2$$
$$x_1 = 0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times 400 \, \text{m}$$
$$x_1 = 400 \, \text{m}$$

区間2の移動距離 \(x_2\):
区間2の初速度 \(v_{2,0} = 40 \, \text{m/s}\) (区間1の最終速度)
加速度 \(a_2 = 1.0 \, \text{m/s}^2\)
時間 \(t_2 = 40 \, \text{s}\)
同様に、等加速度直線運動の距離の公式を用います。
$$x_2 = v_{2,0} t_2 + \frac{1}{2} a_2 t_2^2$$
$$x_2 = (40 \, \text{m/s}) \times (40 \, \text{s}) + \frac{1}{2} \times (1.0 \, \text{m/s}^2) \times (40 \, \text{s})^2$$
$$x_2 = 1600 \, \text{m} + \frac{1}{2} \times 1.0 \times 1600 \, \text{m}$$
$$x_2 = 1600 \, \text{m} + 800 \, \text{m}$$
$$x_2 = 2400 \, \text{m}$$

区間3の移動距離 \(x_3\):
出発してから90秒間のうち、最初の \(t_1 = 20 \, \text{s}\) と次の \(t_2 = 40 \, \text{s}\) の合計 \(20+40=60 \, \text{s}\) は加速区間です。
残りの時間は区間3(等速度運動)に相当します。
区間3の運動時間 \(t_3 = 90 \, \text{s} – (t_1 + t_2) = 90 \, \text{s} – 60 \, \text{s} = 30 \, \text{s}\)。
区間3の速さ \(v_3 = 80 \, \text{m/s}\) ((2)で求めた値)。
等速度直線運動の距離の公式 \(x = vt\) を用います。
$$x_3 = v_3 t_3$$
$$x_3 = (80 \, \text{m/s}) \times (30 \, \text{s})$$
$$x_3 = 2400 \, \text{m}$$

総移動距離 \(X\):
$$X = x_1 + x_2 + x_3$$
$$X = 400 \, \text{m} + 2400 \, \text{m} + 2400 \, \text{m}$$
$$X = 5200 \, \text{m}$$
有効数字を考慮すると、問題文の数値が2桁なので、\(X = 5.2 \times 10^3 \, \text{m}\) とするのが適切です。
また、\(X = 5.2 \, \text{km}\) とも表せます。

使用した物理公式:

  • 等加速度直線運動の距離の公式: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
    • \(x\): 移動距離
    • \(v_0\): 初速度
    • \(a\): 加速度
    • \(t\): 時間
  • 等速度直線運動の距離の公式: \(x = vt\)
    • \(x\): 移動距離
    • \(v\): 速さ
    • \(t\): 時間

計算方法の平易な説明:
90秒間のうち、最初の20秒間(区間1)、次の40秒間(区間2)、そして残りの \(90 – (20+40) = 30\) 秒間(区間3)に分けて、それぞれの区間で進んだ距離を計算します。

  • 区間1: 最初止まっていた状態から \(2.0 \, \text{m/s}^2\) で20秒間加速します。この間に進む距離は、公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を使って計算すると \(400 \, \text{m}\) です。
  • 区間2: 速さが \(40 \, \text{m/s}\) になった状態から、\(1.0 \, \text{m/s}^2\) で40秒間さらに加速します。この間に進む距離は、同様に計算すると \(2400 \, \text{m}\) です。
  • 区間3: 速さが \(80 \, \text{m/s}\) になった状態で、残りの30秒間はこの速さのまま進みます。この間に進む距離は、速さ \(\times\) 時間 で \(80 \, \text{m/s} \times 30 \, \text{s} = 2400 \, \text{m}\) です。

これら3つの区間で進んだ距離をすべて足し合わせると、\(400 \, \text{m} + 2400 \, \text{m} + 2400 \, \text{m} = 5200 \, \text{m}\) となります。

この設問における重要なポイント:

  • 各運動区間の時間を正しく把握し、90秒がどの区間までを含むのかを判断すること。
  • 各区間に適した距離の公式を選択すること。
  • 各区間の初速度を間違えないこと。
解答 (3):
出発してから90秒間に進んだ距離は \(5200 \, \text{m}\) (または \(5.2 \times 10^3 \, \text{m}\)、 \(5.2 \, \text{km}\)) です。

問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 等加速度直線運動: 速度が一定の割合で変化する運動。
    • 速度の式: \(v = v_0 + at\)
    • 変位の式: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
    • 時間を含まない式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
  • 等速度直線運動: 速度が一定の運動(加速度が0)。
    • 変位の式: \(x = vt\)
  • 運動の区間の接続: ある区間の運動の最終状態(特に速度)が、次の区間の運動の初期状態になること。
  • \(v-t\)グラフの活用: (今回は直接使用しませんでしたが) 速度と時間の関係をグラフに描くことで、変位(グラフの面積)や速度変化を視覚的に理解することができます。
    • 区間1: 原点から傾き \(2.0\) で20秒後まで上昇する直線。時刻 \(20 \, \text{s}\) で速度 \(40 \, \text{m/s}\)。
    • 区間2: 点(\(20 \, \text{s}\), \(40 \, \text{m/s}\)) から傾き \(1.0\) で40秒間(時刻 \(60 \, \text{s}\) まで)上昇する直線。時刻 \(60 \, \text{s}\) で速度 \(80 \, \text{m/s}\)。
    • 区間3: 時刻 \(60 \, \text{s}\) 以降、速度 \(80 \, \text{m/s}\) で一定の水平な直線。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 問題文をよく読み、運動の状況(初速度、加速度、時間など)を区間ごとに正確に把握することが重要です。
  • 図や \(v-t\)グラフを描いて運動の様子をイメージすると、間違いを防ぎやすくなります。
  • 各区間のつながりを意識し、前の区間の最終速度が次の区間の初速度になる点に注意しましょう。
  • 単位を常に意識して計算を行い、最終的な答えの単位が適切であるか確認しましょう。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • (2)の計算で: 区間2の初速度を \(0 \, \text{m/s}\) と誤解してしまう。区間1の最終速度を引き継ぐことを忘れないように。
  • (3)の計算で:
    • 90秒間すべてを同じ加速度で運動していると誤解する。
    • 各区間の移動距離を計算する際に、その区間の初速度を正しく設定しない。例えば、区間2の距離計算で初速度を \(0 \, \text{m/s}\) としたり、区間1の加速度を使い続けたりするミス。
    • 区間3の時間を \(90 \, \text{s}\) と誤解する。90秒間のうち、最初の60秒は加速運動であるため、等速運動の時間は \(90-60=30 \, \text{s}\) となります。
  • 公式の適用ミス: 例えば、等加速度運動の区間で等速度運動の公式を使ってしまう、あるいはその逆。
  • 計算ミス: 特に二乗の計算や、足し算の桁ずれなどに注意が必要です。

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