無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「液体中の終端速度:浮力と抵抗力がはたらく運動」【高校物理対応】

問題の確認

dynamics#33

各設問の思考プロセス

この問題は、液体中を落下する物体にはたらく力(重力、浮力、抵抗力)を考え、最終的に物体が到達する一定の速さ「終端速度」を求める問題です。空気抵抗の問題と考え方は似ていますが、今回は新たに「浮力」が加わっている点がポイントです。

この問題を解く上で中心となる物理概念は「終端速度」です。

  • 物体が落下するとき、最初は重力によって加速しますが、速くなるにつれて抵抗力が大きくなります。
  • やがて、下向きの力(重力)と、上向きの力の合計(浮力+抵抗力)が等しくなり、つり合った状態になります。
  • 力がつり合うと、合力が0になるため、ニュートンの運動方程式 (\(ma = F_{\text{合力}}\)) より加速度 \(a\) も0になります。
  • 加速度が0とは、それ以上速さが変化しない、つまり「速さが一定になる」ということです。

したがって、この問題は「小球にはたらく力がつり合うときの速さを求めよ」という問題に読み替えることができます。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. 力の図示と特定: 落下している小球にはたらく力をすべて見つけ出し、その向きと大きさを整理します。
    • 下向きの力: 重力
    • 上向きの力: 浮力、抵抗力
  2. 力のつり合いの式を立てる: 終端速度 \(v_f\) に達したとき、これらの力がつり合うので、「下向きの力の大きさ = 上向きの力の大きさの和」という式を立てます。
  3. 終端速度の計算: 立てた力のつり合いの式を、求めたい \(v_f\) について解きます。

各設問の具体的な解説と解答

小球 A の一定の速さ \(v_{f}\) はどのように表されるか。

問われている内容の明確化
小球の速さが最終的に一定になったときの速さ、すなわち終端速度 \(v_f\) を求めます。

具体的な解説と立式
「速さが一定」とは、加速度が0、つまり物体にはたらく力の合力が0(力がつり合っている)状態を意味します。
このときの速さが終端速度 \(v_f\) です。まず、小球にはたらく各力を整理します。

  • 下向きの力:
    • 重力: 大きさは \(mg\)。
  • 上向きの力:
    • 浮力: アルキメデスの原理より、物体が押しのけた液体の重さに等しい。物体の体積は \(V\)、液体の密度は \(\rho\) なので、浮力の大きさは \(F_{\text{浮力}} = \rho V g\)。
    • 抵抗力: 速さが終端速度 \(v_f\) なので、その大きさは \(F_{\text{抵抗}} = kv_f\)。

力のつり合いの条件は、「下向きの力の大きさ = 上向きの力の合計」なので、以下の式が成り立ちます。
$$mg = F_{\text{浮力}} + F_{\text{抵抗}}$$
$$mg = \rho V g + kv_f \quad \cdots ①$$
この方程式を、求めたい終端速度 \(v_f\) について解きます。

使用した物理公式:

  1. 力のつり合い (\(F_{\text{合力}}=0\))
  2. 浮力 (アルキメデスの原理): \(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{液体}} V_{\text{物体}} g\)
  3. 抵抗力: \(F_{\text{抵抗}} = kv\)

計算過程
式①を \(v_f\) について解いていきます。
まず、\(kv_f\) を左辺に残すため、\(\rho V g\) を左辺に移項します。(左右を入れ替えて記述します)
$$
\begin{aligned}
kv_f &= mg – \rho V g
\end{aligned}
$$
右辺を \(g\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
kv_f &= (m – \rho V)g
\end{aligned}
$$
最後に、両辺を \(k\) で割って \(v_f\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_f &= \frac{(m – \rho V)g}{k}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • 終端速度とは、力がつり合って、それ以上加速しなくなったときの速さです。
  • この場合、「下向きの力」と「上向きの力」がつり合います。
  • 下向きの力は「重力 \(mg\)」だけです。
  • 上向きの力は「浮力 \(\rho V g\)」と「抵抗力 \(kv_f\)」の2つです。
  • したがって、「\(mg = \rho V g + kv_f\)」というつり合いの式が成り立ちます。
  • この式を \(v_f\) について解くと、答えが求まります。

結論と吟味
終端速度 \(v_f\) は \(\displaystyle v_f = \frac{(m – \rho V)g}{k}\) となります。
この式を見ると、分子の \((m – \rho V)g\) は、液体中での物体の「見かけの重さ」(重力と浮力の合力)を表しています。この見かけの重さが大きいほど、また、抵抗に関する定数 \(k\) が小さいほど、終端速度は大きくなることがわかり、物理的に妥当な結果と言えます。
また、小球が沈むためには、重力が浮力より大きい(\(mg > \rho Vg\)、つまり物体の密度 \(m/V\) が液体の密度 \(\rho\) より大きい)必要がありますが、このとき式の分子は正となり、\(v_f > 0\)(下向きの速さを持つ)となることからも、式の正しさが確認できます。

この設問における重要なポイント

  • 終端速度の状態を「力のつり合い」の状態として捉えること。
  • 物体にはたらく力を、重力、浮力、抵抗力の3つともれなく考慮に入れること。
  • 浮力の大きさをアルキメデスの原理から正しく \( \rho V g \) と計算できること。
解答:
\(\displaystyle v_f = \frac{(m – \rho V)g}{k}\)

▼別の問題もチャレンジ▼


問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 終端速度: 物体にはたらく駆動力(この場合は重力)と、速度に依存する抵抗力(+浮力など)がつり合ったときの、物体の最終的な一定の速度。
  • アルキメデスの原理: 流体中の物体は、その物体が押しのけた流体の重さに等しい大きさの浮力を受ける。(\(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{流体}} V_{\text{物体}} g\))
  • 力のつり合い: 物体にはたらく力の合力がゼロのとき、物体は静止し続けるか、等速直線運動を続ける。終端速度は、後者の等速直線運動に相当する。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 力の図示を徹底する: 流体中の運動では、重力、浮力、抵抗力、張力など、複数の力がはたらくことが多いです。まず、物体にはたらく力をすべて図示することで、力の見落としを防ぎ、立式が容易になります。
  • 各力の公式を正確に覚える: 重力(\(mg\))、浮力(\(\rho Vg\))、抵抗力(\(kv\))など、それぞれの力の大きさを求める公式を正確に使いこなせることが必須です。
  • つり合いの式を立てる: 終端速度を問われたら、それは「力のつり合い」を考えなさい、というサインです。「上向きの力の和=下向きの力の和」の式を立てることに集中しましょう。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 浮力の考慮漏れ: 空気中の落下では無視されることが多い浮力ですが、液体中の運動では無視できない大きさになることがほとんどです。問題設定をよく読み、浮力を考慮に入れるべきか判断する必要があります。
  • 浮力の計算における密度の混同: 浮力の計算で使う密度\(\rho\)は、物体の密度ではなく、周りの流体(液体)の密度です。
  • 力の向きの間違い: 抵抗力や浮力は、基本的に重力とは逆向き(運動を妨げる、あるいは支える向き)にはたらきます。力のつり合いの式を立てる際に、どの力を足し、どの力を引くのかを間違えないようにしましょう。

▼別の問題もチャレンジ▼


PVアクセスランキング にほんブログ村