今回の問題
wave#15【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「音波の基本的な性質」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の分類:音波が縦波であること、および縦波の定義(波の進行方向と媒質の振動方向が平行)。
- 音の3要素:音の「高さ」「強さ(大きさ)」「音色」が、それぞれ波の物理量である「振動数」「振幅」「波形」に対応すること。
- うなりの現象:振動数がわずかに異なる2つの音を重ねたときに、音の強弱が周期的に繰り返される現象とその振動数の公式。
- 共振(共鳴)の現象:外部から加える振動数が物体の固有振動数と一致するとき、物体の振幅が著しく増大する現象。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文の各空欄が、音波のどの性質(波としての種類、音の3要素、うなり、共振)について問うているかを正確に把握します。
- それぞれの空欄について、物理的な定義や法則に基づき、語群から最も適切な選択肢を選びます。
- 空欄のク、コ、ケについては、現象名や公式を直接記述します。
空欄(ア)〜(イ)
思考の道筋とポイント
まず、音波が波の分類のうち「縦波」と「横波」のどちらに属するかを判断します。次に、その波の定義に基づいて、波の進行方向と媒質の振動方向の関係を答えます。
この設問における重要なポイント
- 縦波:波の進行方向と媒質の振動方向が「平行」な波。(例:音波、地震のP波)
- 横波:波の進行方向と媒質の振動方向が「垂直」な波。(例:光、電磁波、弦を伝わる波)
具体的な解説と立式
音波は、空気などの媒質の密度が変化する「疎密波」として伝わります。媒質の粒子は、波の進行方向に沿って前後に振動します。このように、波の進行方向と媒質の振動方向が同じ向き(平行)である波を「縦波」と呼びます。
したがって、空欄(ア)には「縦波」、空欄(イ)には「平行」が入ります。
このパートは定義に関する問題のため、特定の物理公式は使用しません。
計算は必要ありません。
音は空気の「押し引き」が伝わっていくイメージです。波が進む向きと、空気の分子が揺れる向きは同じ方向なので「縦波」であり「平行」となります。
音波は縦波であり、その進行方向と媒質の振動方向は平行です。
空欄(ウ)〜(キ)
思考の道筋とポイント
音の性質を表す3つの要素「高さ」「強さ(大きさ)」「音色」が、それぞれ波のどの物理量「振動数」「振幅」「波形」と対応しているかを正確に理解しているかが問われます。問題文の記述に沿って、対応する物理量を語群から選びます。
この設問における重要なポイント
- 音の高さ ↔ 振動数 \(f\) (高い音ほど振動数が大きい)
- 音の強さ(大きさ) ↔ 振幅 \(A\) (大きい音ほど振幅が大きい)
- 音色 ↔ 波形
具体的な解説と立式
- (ウ), (エ): 「音の高低」は、1秒間あたりの波の振動の回数を表す「振動数」によって決まります。振動数が大きいほど、音は「高く」なります。
- (オ), (カ): 「音の強さ」は、波の振幅によって決まります。より正確には、波が運ぶエネルギーは振幅の2乗に比例します。したがって、振幅が大きくなるほど、音は「大きく」聞こえます。
- (キ): ギターとピアノで同じ高さ・同じ強さの音を出しても区別できるのは「音色」が違うためです。この音色の違いは、音波の波の形、すなわち「波形」の違いによって生じます。
このパートは定義に関する問題のため、特定の物理公式は使用しません。
計算は必要ありません。
「高さ」は振動の速さ(振動数)、「大きさ」は揺れの幅(振幅)、「音色」は波の形(波形)で決まる、と覚えておきましょう。救急車のサイレンが近づくとき、音が高く聞こえるのは振動数が大きく聞こえるからです(ドップラー効果)。
音の3要素と、それに対応する物理量の関係は物理学の基本であり、正しく選択できています。
空欄(ク)〜(ケ)
思考の道筋とポイント
振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らしたときに生じる現象名を答えます。次に、その現象が1秒間に起こる回数(うなり振動数)を表す公式を導きます。
この設問における重要なポイント
- 振動数が近い2つの音を重ねると、音が周期的に強くなったり弱くなったりする現象を「うなり」という。
- 1秒間あたりのうなりの回数(うなり振動数 \(f\))は、2つの音の振動数 \(f_1\), \(f_2\) の差の絶対値で与えられる。
具体的な解説と立式
振動数がわずかに異なる2つの音波を重ね合わせると、波の干渉によって合成波の振幅が周期的に変化します。これにより、音が強くなったり弱くなったりして聞こえます。この現象を「うなり」といいます。
したがって、空欄(ク)は「うなり」です。
1秒間にうなりが聞こえる回数を、うなり振動数 \(f\) といいます。これは、2つの音源の振動数 \(f_1\) と \(f_2\) の差で計算されます。
$$ f = |f_1 – f_2| $$
問題文では \(f_1 > f_2\) と指定されているため、絶対値を外すことができます。
$$ f = f_1 – f_2 $$
したがって、空欄(ケ)は \(f_1 – f_2\) となります。
使用した物理公式
- うなり振動数: \(f = |f_1 – f_2|\)
問題文の条件 \(f_1 > f_2\) を用いて、公式 \(f = |f_1 – f_2|\) の絶対値を外します。
$$ f = f_1 – f_2 $$
「うなり」という現象の名前を覚えます。うなりの回数は、2つの音の振動数の「差」で計算します。例えば、440Hzの音と442Hzの音を同時に鳴らすと、1秒間に \(442 – 440 = 2\) 回のうなりが聞こえます。
現象名は「うなり」、うなり振動数は2つの振動数の差で表されるため、解答は妥当です。
空欄(コ)
思考の道筋とポイント
ある物体が持つ特有の振動数(固有振動数)と、外部から加える音の振動数が一致したときに、その物体が激しく振動し始める現象の名前を答えます。
この設問における重要なポイント
- すべての物体は、揺れやすい特定の振動数(固有振動数)を持っている。
- 外部から加える振動の振動数が、その物体の固有振動数と一致すると、振幅が非常に大きくなる。この現象を「共振」または「共鳴」という。
具体的な解説と立式
物体に外部から周期的な力を加えるとき、その力の振動数が物体の固有振動数と一致すると、物体は非常に大きな振幅で振動します。この現象を「共振」または「共鳴」といいます。
例として、ブランコをこぐとき、ブランコの揺れの周期(固有振動数に対応)に合わせてタイミングよく力を加えると、揺れがどんどん大きくなるのが挙げられます。
したがって、空欄(コ)は「共振」(または「共鳴」)です。
このパートは定義に関する問題のため、特定の物理公式は使用しません。
計算は必要ありません。
音叉を鳴らして、同じ高さの音が出るように作られた別の音叉に近づけると、触れていないのに後の音叉も鳴り始めます。これが共振(共鳴)です。
現象名は「共振」または「共鳴」であり、解答は妥当です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 音波の基本的な性質を体系的に理解しているかという点に尽きます。具体的には、以下の4つの柱を正確に説明できることが重要です。
- 波の分類:音波が媒質の疎密を伝える「縦波」であること。
- 音の3要素:音の知覚的な性質(高さ、強さ、音色)が、物理的な量(振動数、振幅、波形)とどのように対応しているかを理解していること。
- うなり:振動数が近い2つの波が干渉して生じる現象であり、その振動数が2つの波の振動数の差で与えられること。
- 共振(共鳴):外部からの振動と物体の固有振動数が一致したときに振幅が増大する現象であること。
これらの知識は、波の分野を学習する上での基礎となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- この問題で問われた知識は、より複雑な問題の基礎となります。
- ドップラー効果の問題:救急車のサイレンの音の「高さ」が変わる現象を扱います。これは「音の高さ=振動数」という今回の知識が前提となります。観測される振動数がどう変化するかを正しく計算することが求められます。
- 弦・気柱の共鳴:ギターの弦や管楽器で特定の高さの音が出るのは、「共振」現象を利用しています。弦の長さや開管・閉管といった条件から、どのような振動数の波が共振(定常波)を起こすかを計算する問題に応用されます。
- 波の式からの読解:\(y = A \sin(2\pi ft – \dots)\) のような式が与えられた場合、式中の\(A\)が「振幅(音の強さ)」、\(f\)が「振動数(音の高さ)」に対応することを読み取り、音の性質を議論する問題が出題されます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 縦波と横波の混同:
- ミス:「音波は横波である」と勘違いし、振動方向を「垂直」と答えてしまう。
- 対策:音は「空気の振動」であり、空気の「押し・引き」(疎密)が伝わる波だとイメージしましょう。押し引きの方向と波の進行方向は「平行」なので「縦波」です。光や電磁波が代表的な「横波」であることと対比して覚えましょう。
- 音の3要素の対応ミス:
- ミス:「音の高さ」を「振幅」、「音の強さ」を「振動数」と取り違える。
- 対策:「振動数が多い(High frequency) → 音が高い(High pitch)」「振幅が大きい(Large amplitude) → 音量が大きい(Large volume)」のように、言葉のイメージで関連付けて覚えるのが効果的です。
- うなり振動数の公式ミス:
- ミス:うなり振動数を \(f_1 + f_2\) や \((f_1 + f_2)/2\) のように、和や平均で計算してしまう。
- 対策:うなりは2つの波の「ずれ」によって生じる現象なので、「差」をとると覚えましょう。\(f = |f_1 – f_2|\) と、必ず絶対値で覚えることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- この問題は知識を問うものがほとんどですが、「ケ」のうなり振動数 \(f = |f_1 – f_2|\) は明確な公式適用です。
- 選定理由:この公式は、うなりという現象を定量的に表現する唯一のものです。
- 適用根拠:なぜ「差」になるのかを簡単に理解するには、波の重ね合わせを考えます。2つの波が同位相で重なると振幅は最大(強め合う)になり、逆位相で重なると最小(弱め合う)になります。振動数がわずかに違うと、この「同位相」から「逆位相」になり、再び「同位相」に戻るまでの時間がうなりの1周期となります。この周期の逆数がうなり振動数であり、計算すると2つの振動数の差の絶対値になるのです。この背景を少しでも知っておくと、公式を忘れにくくなります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題には複雑な計算はありませんが、「ケ」の \(f = f_1 – f_2\) は計算の一種です。
- 条件の確認:もし具体的な数値で \(f_1 = 352 \text{ Hz}\), \(f_2 = 350 \text{ Hz}\) と与えられた場合、単純な引き算ですが、焦るとミスをします。問題文に \(f_1 > f_2\) のような大小関係の指定がないか必ず確認しましょう。指定がなければ、\(f = |f_1 – f_2|\) を使い、必ず正の値になるように計算します。
- 単位の意識:物理量の計算では常に単位を意識することが基本です。振動数の単位はヘルツ[Hz]であり、うなり振動数の単位も同じく[Hz]です。基本的なことですが、日頃から徹底しましょう。
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