「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 34】Step 2

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Step 2

471 エネルギーの形態の移り変わり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「身の回りの現象や装置におけるエネルギー変換」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー保存の法則: エネルギーは消えたり無から生まれたりせず、ただその形態を変えるだけであるという物理学の基本法則。
  2. 各種エネルギーの定義: 問題で挙げられている電気、力学、熱、化学、光、核、音といった各エネルギーが、具体的にどのような現象や状態に対応するのかを理解すること。
  3. エネルギー変換の方向性: ある装置や現象において、「何が原因(入力)で」「何が結果(出力)か」という因果関係を捉え、エネルギーがどちらからどちらへ変換されたのかを判断すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)から(9)までの各装置・現象について、その動作原理を考えます。
  2. 「何エネルギーを使って(変換前のエネルギー)」「主に何エネルギーを生み出しているか(変換後のエネルギー)」を特定します。
  3. 解答群(a)〜(g)から、特定した変換前後のエネルギーに合致する記号を選び、組み合わせます。

思考の道筋とポイント
この問題は、9つの独立した装置や現象におけるエネルギー変換の組み合わせを答える知識問題です。それぞれの働きを理解し、「入力されるエネルギー」と「主として出力されるエネルギー」のペアを正確に見つけ出すことが求められます。
例えば、電気洗濯機は電気で動き、洗濯槽を回転させますが、同時に動作音やモーターの熱も発生します。このように、エネルギー変換は必ずしも1対1ではありませんが、その装置や現象の「主目的」は何かを考えることが、正しい組み合わせを選ぶ上での重要なポイントとなります。
この設問における重要なポイント

  • 各エネルギー(化学、電気、力学など)の具体的なイメージを持つこと。
  • 装置や現象の「入力(原因)」と「出力(主目的)」を正しく見極めること。
  • エネルギー変換の方向(例:発電機とモーターでは逆)を混同しないこと。

具体的な解説と立式
この問題は物理概念の理解を問うものであり、数式による立式はありません。各項目について、エネルギー変換の過程を解説します。

  • (1) ホタルの光
    ホタルは、体内のルシフェリンという発光物質が酵素の働きによって酸素と反応する「化学反応」を利用して光を放ちます。これは、物質が持つ「(d)化学エネルギー」が「(e)光エネルギー」に直接変換される例です。
  • (2) 電気洗濯機
    家庭のコンセントから供給される「(a)電気エネルギー」を動力源として、内部のモーターを回転させます。このモーターの回転によって洗濯槽が動き、衣類を洗浄します。物体の運動エネルギーは「(b)力学的エネルギー」なので、主たる変換は電気エネルギーから力学的エネルギーへの変換です。
  • (3) 原子炉
    原子炉では、ウランなどの原子核が核分裂反応を起こします。このとき、原子核の結合が解き放たれて莫大なエネルギーが発生します。これは「(f)核エネルギー」が解放される過程であり、そのエネルギーは主に「(c)熱エネルギー」として取り出され、水を沸騰させて蒸気タービンを回すのに使われます。
  • (4) マイク
    声や物音は、空気の振動(疎密波)として伝わる「(g)音のエネルギー」です。マイクは、この空気の振動を内部の振動板で捉え、電磁誘導などの原理を用いて電気信号に変換します。したがって、音のエネルギーを「(a)電気エネルギー」に変換する装置です。
  • (5) 発電機
    発電機は、水力、風力、火力などでタービンなどを回転させる運動エネルギーを入力とします。この「(b)力学的エネルギー」を用いて、内部のコイルと磁石を相対的に動かし、電磁誘導の原理によって「(a)電気エネルギー」を生成します。マイクとは原理が異なりますが、エネルギー変換の方向としてはスピーカーの逆、モーターの逆と考えることもできます。
  • (6) 蒸気機関車
    石炭を燃やして(化学→熱)水を沸騰させ、高温高圧の水蒸気を作ります。この水蒸気が持つ「(c)熱エネルギー」がピストンを押し動かし、その往復運動が車輪の回転運動に変換されます。この運動は「(b)力学的エネルギー」です。
  • (7) 筋肉の活動
    生物は、食事から得た栄養をATP(アデノシン三リン酸)という高エネルギー化合物として体内に蓄えています。これは「(d)化学エネルギー」の一形態です。筋肉を動かす際には、このATPが分解される化学反応によってエネルギーが取り出され、筋繊維が収縮するという「(b)力学的エネルギー」に変換されます。
  • (8) 石油ストーブ
    石油や灯油といった化石燃料は、その分子結合に「(d)化学エネルギー」を蓄えています。石油ストーブは、これを燃焼させることで「(c)熱エネルギー」に変換し、周囲を暖めます。
  • (9) 摩擦
    動いている物体を止めようとするときや、物体が床を滑るときに摩擦力が働きます。このとき、物体の運動エネルギー、すなわち「(b)力学的エネルギー」が減少し、そのエネルギーは接触面での分子のランダムな運動を激しくさせ、「(c)熱エネルギー」に変わります。手をこすり合わせると暖かくなるのがこの典型例です。

使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。エネルギー変換の概念的な理解が中心となります。

計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

それぞれの現象を簡単な言葉で言い換えてみましょう。
(1) ホタルのお尻が光るのは、体の中の化学物質が反応しているからです(化学→光)。
(2) 洗濯機は、コンセントからの電気で、洗濯槽をグルグル回します(電気→運動)。
(3) 原子力発電の心臓部である原子炉は、原子の核が壊れる力で、ものすごい熱を生み出します(核→熱)。
(4) マイクは、私たちの声の「ふるえ」を、電気の「しるし」に変えます(音→電気)。
(5) 発電機は、水車などがグルグル回る力で、電気を起こします(運動→電気)。
(6) 蒸気機関車は、蒸気の「熱いパワー」で、車輪を動かします(熱→運動)。
(7) 私たちが腕を動かすのは、体の中の栄養(化学物質)を燃やして力を出しているからです(化学→運動)。
(8) ストーブは、石油(化学物質)を燃やして、熱を出します(化学→熱)。
(9) 手をこすり合わせると、動かした力が熱に変わって、手が温かくなります(運動→熱)。

結論と吟味

9つの各装置・現象について、その動作原理からエネルギーの入力と主たる出力を特定し、解答群の記号と正しく対応させることができました。主目的以外のエネルギー発生(例:洗濯機の音や熱)を考慮せず、最も主要な変換を答えるという方針で、すべての組み合わせを合理的に説明できます。

解答
(1) (d)→(e)
(2) (a)→(b)
(3) (f)→(c)
(4) (g)→(a)
(5) (b)→(a)
(6) (c)→(b)
(7) (d)→(b)
(8) (d)→(c)
(9) (b)→(c)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー保存の法則と形態変化:
    • 核心: この問題の全ての問いに共通する大原則は、「エネルギーは創り出されたり消えたりせず、ただその形を変えるだけ」というエネルギー保存の法則です。様々な装置や現象は、この法則に従ってエネルギーの形態を変換する具体例に他なりません。
    • 理解のポイント:
      • 入力と出力: 全てのエネルギー変換には、変換前の「入力エネルギー」と、変換後の「出力エネルギー」があります。
      • 主目的: 多くの変換では、意図しないエネルギー(熱や音など)も発生しますが、その装置や現象の「主目的」となるエネルギー変換を捉えることが重要です。
      • 多様な形態: 電気、力学、熱、化学、光、核、音といったエネルギーの各形態が、どのような状態や現象に対応するのかを具体的に理解していることが、正解への鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多段階のエネルギー変換: 一つの装置やプロセスの中で、エネルギーが連鎖的に変換される様子を問う問題。(例:火力発電所全体では「化学→熱→力学→電気」という変換が行われる)。
    • エネルギー変換効率: 入力したエネルギーのうち、目的のエネルギーとして出力された割合(効率)を計算させる問題。残りは熱などとして失われる(損失)。
    • 身の回りの新しい機器: スマートフォン(化学⇔電気、電気→光・音)、ハイブリッドカー(化学⇔電気、力学⇔電気)、LED電球(電気→光)など、より現代的な機器におけるエネルギー変換を問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 装置の「目的」を考える: 「この装置は何をするためのものか?」を自問します。その答えが「出力エネルギー」のヒントになります。(例:マイクの目的は音を電気信号にすること → 出力は電気エネルギー)。
    2. 装置の「動力源」を考える: 「この装置は何によって動いているか?」を考えます。その答えが「入力エネルギー」のヒントになります。(例:洗濯機の動力源はコンセント → 入力は電気エネルギー)。
    3. 逆の変換をペアで覚える: 以下のペアはエネルギー変換の方向が逆の関係にあり、セットで覚えると混同しにくくなります。
      • モーター(電気→力学)発電機(力学→電気)
      • スピーカー(電気→音)マイク(音→電気)
      • 電球(電気→光)太陽電池(光→電気)
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 入力と出力の混同:
    • 誤解: (5)発電機を「電気エネルギーから力学的エネルギーを生み出す装置」と考えてしまう(モーターとの混同)。
    • 対策: 装置の名称がその役割を示しています。「発電機」は電気を「発電する(生み出す)」のが目的なので、出力が電気エネルギーです。一方、「モーター(電動機)」は電気で「動く」のが目的なので、入力が電気エネルギーです。
  • 主目的以外のエネルギーに惑わされる:
    • 誤解: (2)電気洗濯機のエネルギー変換を、発生する音や熱に着目して「電気→音」や「電気→熱」と答えてしまう。
    • 対策: その装置が「主として何をするために作られたか」を常に考えましょう。洗濯機の主目的は衣類を洗うための「回転運動(力学的エネルギー)」です。発生する音や熱は、意図しない副産物(エネルギー損失)と捉えるのが適切です。
  • 化学エネルギーと熱エネルギーの混同:
    • 誤解: (8)石油ストーブについて、燃焼という現象から「熱エネルギーが熱エネルギーに変わる」と考えてしまう。
    • 対策: 燃焼「前」の燃料(石油、食品、電池など)が蓄えているエネルギーは「化学エネルギー」であると明確に区別することが重要です。燃焼や消化といった「化学反応」によって、その化学エネルギーが「熱エネルギー」や「力学的エネルギー」に変換される、というプロセスを理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー保存の法則(概念的適用):
    • 選定理由: この問題は計算を伴いませんが、全ての変換の背景には物理学の大原則である「エネルギー保存の法則」があります。あるエネルギーが別のエネルギーに変わる際、エネルギーの総量は(損失分も含めて)必ず保存される、という考え方が、変換の前後関係を論理的に結びつける土台となります。
    • 適用根拠: 例えば(9)の摩擦では、物体の運動エネルギー(力学的エネルギー)が失われたように見えます。しかし、エネルギー保存の法則に立てば、それは消滅したのではなく、同量の「熱エネルギー」に姿を変えただけである、と論理的に説明できます。これにより、「(b)力学的エネルギー → (c)熱エネルギー」という変換が導き出されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 知識の定着と判断ミスをなくすテクニック:
    • 具体例のストックを増やす: 教科書や日常生活で見かける様々な現象や装置について、「これは何エネルギーから何エネルギーへの変換か?」と考える癖をつけましょう。例えば、ドライヤーなら「電気→熱+力学(ファンの回転)」、スマートフォンの充電なら「電気→化学(バッテリー)」、使用時なら「化学→電気→光・音」といった具合です。
    • エネルギー変換のフローチャート化: 複雑なプロセスを、矢印で繋いだ図で覚えるのが有効です。例えば、自動車の走行は「化学(ガソリン)→熱(エンジン)→力学(タイヤの回転)」のように図式化すると、知識が整理され、記憶に定着しやすくなります。
    • 対義語・ペアで覚える: 「応用テクニック」で挙げたような、逆の変換を行う装置(モーターと発電機など)をセットで覚えることで、混同を防ぎ、効率的に知識を整理できます。

472 太陽電池

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「n型・p型半導体とpn接合を利用した太陽電池の原理」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. n型半導体とp型半導体の構造: 真性半導体に不純物を加える(ドーピング)ことで、電気伝導の主役(キャリア)が自由電子になるか、ホール(正孔)になるかを理解すること。
  2. pn接合と内部電場: n型とp型半導体を接合した際に、接合面付近にキャリアのいない領域(空乏層)と、キャリアを分離する働きを持つ電場(内部電場)が自然に形成されること。
  3. 光電効果: 物質が光エネルギーを吸収して、内部の電子をよりエネルギーの高い状態へ励起する現象。太陽電池では、これにより自由電子とホールの対が生成される。
  4. エネルギー変換: 太陽電池が、光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であることを理解すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄①、②については、文章で説明されている「負電荷の運び手(自由電子)」と「正電荷の運び手(ホール)」が、それぞれn型半導体とp型半導体のどちらの特徴に対応するかを判断します。
  2. 空欄③、④については、太陽電池の動作原理を考え、入力されるエネルギー(発電の原因)と、出力されるエネルギー(発電の結果)が何であるかを特定します。

思考の道筋とポイント
この問題は、現代技術の根幹をなす半導体の基礎知識、特に太陽電池の動作原理を正しく理解しているかを問う知識問題です。n型・p型の名前の由来(Negative/Positive)と、それぞれの主な電荷の運び手(キャリア)が何かを結びつけて覚えることが解答の鍵となります。太陽電池の核心は、光によって生み出された電気の素(電子とホール)を、pn接合に自然に存在する「内部電場」という坂道を利用して効率よく分離し、外部に取り出す仕組みである点を理解することが重要です。
この設問における重要なポイント

  • n型半導体: 4価のケイ素に、5価の不純物(アンチモン、リンなど)をドープ。電子が1つ余り、これが負電荷のキャリア(多数キャリア)となる。Negativeの頭文字からn型。
  • p型半導体: 4価のケイ素に、3価の不純物(インジウム、ホウ素など)をドープ。電子が1つ足りない穴(ホールまたは正孔)ができ、これが正電荷のキャリア(多数キャリア)のように振る舞う。Positiveの頭文字からp型。
  • pn接合: n型とp型を接合すると、接合面付近で電子とホールが再結合して消滅し、キャリアのいない「空乏層」が形成される。この空乏層には、n型からp型へ向かう「内部電場」が生じる。
  • 太陽電池の原理: pn接合に光が当たると、そのエネルギーで電子とホールの対が生成される(光電効果)。生成された電子とホールは内部電場によって逆方向に運ばれ(電子はn型側へ、ホールはp型側へ)、分離される。この電荷の分離が起電力となり、外部回路に電流を流す。

具体的な解説と立式
この問題は物理概念の理解を問うものであり、数式による立式はありません。各空欄について、その根拠を解説します。

  • 空欄①
    「ケイ素の結晶にアンチモンなどを少量混ぜて自由電子をつくり、それを負電荷の運び手にする半導体」とあります。ケイ素は4価の原子ですが、アンチモンは5価の原子です。そのため、ケイ素の結晶にアンチモンを混ぜると、共有結合に使われない電子が1つ余ります。この余った電子が結晶中を自由に動ける「自由電子」となり、負(Negative)の電荷を運ぶキャリアとなります。このような半導体を「n型半導体」と呼びます。

 

  • 空欄②
    「ケイ素の結晶にインジウムなどを少量混ぜて電子が不足した状態(ホール)をつくり、ホールを正電荷の運び手にする半導体」とあります。インジウムは3価の原子です。ケイ素の結晶にインジウムを混ぜると、共有結合に必要な電子が1つ足りない場所、すなわち「ホール(正孔)」ができます。このホールに隣の電子がはまり込むと、元の電子があった場所に新たなホールができます。このように、ホールが次々と移動していく様子は、あたかも正(Positive)の電荷を持つ粒子が移動しているように見えます。このような半導体を「p型半導体」と呼びます。

 

  • 空欄③、④
    「①と②の半導体を接合したものに【③】を当てると、【③】のエネルギーによって接合部分に自由電子とホールが発生し、電流が生じる」とあります。これは太陽電池の発電原理そのものです。太陽電池は、太陽からの「光」を受けて発電します。つまり、入力されるエネルギーは「光エネルギー」です。この光エネルギーによって電子とホールが生成され、pn接合の働きで分離されることで起電力が生じ、外部に「電気」エネルギーとして取り出されます。
    したがって、【③】は「」、【④】は「電気」となります。

使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。エネルギー変換の概念的な理解が中心となります。

  • エネルギー変換: 光エネルギー → 電気エネルギー
計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

半導体を、4人掛けのイスがずらっと並んだ部屋に例えてみましょう。

  • n型半導体(空欄①): 5人グループ(アンチモン)がやってくると、4人はイスに座れますが、1人「あぶれた電子くん」が生まれます。この電子くんが部屋の中を自由に動き回れるので、電気を運びます。電子はマイナス(Negative)なので「n型」です。
  • p型半導体(空欄②): 3人グループ(インジウム)がやってくると、イスが1つ「空席(ホール)」になります。隣の席の人がこの空席に移動すると、元の席が空席になります。こうして「空席」がどんどん移動していくように見えます。空席はプラス(Positive)の性質を持つので「p型」です。
  • 太陽電池の仕組み(空欄③、④): n型の部屋とp型の部屋をくっつけます(pn接合)。ここに「光」というエネルギーのボールを投げ込むと、座っていた人がボールに当たって飛び出し、「新たな電子くん」と「新たな空席」のペアができます。部屋の境目には、電子くんをn型側へ、空席をp型側へ押しやる「見えない坂道」ができています。この坂道の力で電子くんと空席が分かれ、それぞれの部屋に集められることで「電圧」が生まれ、「電気」が流れるのです。
結論と吟味

以上の考察から、自由電子がキャリアとなる半導体はn型、ホールがキャリアとなる半導体はp型であると判断できます。また、太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。したがって、各空欄に当てはまる語句は、①n型、②p型、③光、④電気となり、物理的に妥当です。

解答 ① n型, ② p型, ③ 光, ④ 電気

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 半導体のキャリア制御(ドーピング):
    • 核心: 導体と絶縁体の中間の性質を持つ半導体(例:ケイ素)に、微量の不純物を意図的に添加(ドーピング)することで、電気伝導の主役となるキャリア(電荷の運び手)を「自由電子」または「ホール(正孔)」に制御できる、という点が半導体物理の最も重要な概念です。
    • 理解のポイント:
      • n型半導体: 4価のケイ素に5価の不純物(リン、アンチモン等)をドープ。電子が1つ余り、これが負(Negative)のキャリアとなる。
      • p型半導体: 4価のケイ素に3価の不純物(ホウ素、インジウム等)をドープ。電子の空席(ホール)ができ、これが正(Positive)のキャリアとして振る舞う。
  • pn接合と光起電力効果:
    • 核心: n型とp型半導体を接合して「pn接合」を作ると、接合面付近にキャリアを分離する「内部電場」が自然に形成されます。このpn接合に光を当てると、光エネルギーによって電子とホールの対が生成され、この内部電場によって電子がn型側へ、ホールがp型側へと強制的に分離されます。この電荷の分離が起電力となり、外部に電流を流すことができる、これが太陽電池の基本原理(光起電力効果)です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ダイオードの整流作用: pn接合は、電流を一方通行にする「整流作用」を持ちます。順方向バイアス(p側に正、n側に負の電圧)をかけると電流が流れ、逆方向バイアスをかけるとほとんど流れない理由を問う問題。
    • 発光ダイオード(LED): ダイオードに順方向の電流を流すと、pn接合で電子とホールが再結合する際に、そのエネルギーを光として放出する現象。太陽電池とは逆のエネルギー変換(電気→光)です。
    • トランジスタの増幅作用: pnp型やnpn型に半導体を接合したトランジスタが、小さな電気信号を大きくする「増幅作用」を持つ原理を問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 価数に注目: 不純物として添加される原子の価数(最外殻電子の数)を見ます。母材のケイ素(4価)より多ければ(5価)、電子が余ってn型。少なければ(3価)、電子が不足してp型、と判断します。
    2. キャリアの種類を確認: 文章中に「自由電子がキャリア」「ホール(正孔)がキャリア」といった記述があれば、それがn型かp型かを判断する直接的な手がかりになります。
    3. エネルギー変換の方向を把握: 「光を当てる」「電流を流す」といったキーワードから、何が入力で何が出力かを考えます。太陽電池は「光→電気」、LEDは「電気→光」という逆の関係を意識します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • n型とp型の混同:
    • 誤解: どちらが電子でどちらがホールか、あるいはどちらが5価でどちらが3価の不純物かを混同してしまう。
    • 対策: negative(負)→電子、positive(正)→ホール、と頭文字で覚えるのが効果的です。また、「5価は電子が1つ多い→余った電子がキャリア→n型」「3価は電子が1つ少ない→電子の穴(ホール)がキャリア→p型」という論理の流れをセットで理解しましょう。
  • キャリアと原子の混同:
    • 誤解: n型半導体全体が負に帯電している、p型半導体全体が正に帯電していると勘違いする。
    • 対策: ドーピングされた半導体も、原子核の陽子数と電子の総数は等しいため、全体としては電気的に中性です。「キャリア」とは、あくまで結晶中を自由に動ける電荷のことであり、半導体全体の帯電状態とは異なります。
  • ドナーとアクセプターの混同:
    • 誤解: 解答の補足にある「ドナー」という言葉の意味を誤解する。
    • 対策: ドナー(donor)は「与える人」という意味で、自由電子を供給する不純物(n型の5価原子)を指します。一方、アクセプター(acceptor)は「受け入れる人」という意味で、電子を受け入れるホールを供給する不純物(p型の3価原子)を指します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー変換(光エネルギー → 電気エネルギー):
    • 選定理由: この問題は計算を伴いませんが、太陽電池の機能を物理的に表現する中心的な概念です。
    • 適用根拠: 太陽電池の目的は「光を受けて電気を生み出す」ことです。この目的をエネルギーの言葉で表現すると、「入力された光エネルギーを、出力として電気エネルギーに変換する」となります。この変換プロセスを理解することが、空欄③と④を正しく埋めるための論理的な根拠となります。光電効果によって光エネルギーが電子のエネルギーに変換され、pn接合の内部電場によってその電子のエネルギーが外部に取り出せる電気エネルギー(起電力)に変換される、という一連の流れが背景にあります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 知識の定着と判断ミスをなくすテクニック:
    • 周期表の位置で覚える: ケイ素(Si)は14族元素です。n型を作る不純物(リンP, アンチモンSbなど)は15族、p型を作る不純物(ホウ素B, インジウムInなど)は13族に位置します。周期表での左右の位置関係で覚えると、価数の大小関係を忘れにくくなります。
    • 図で理解する: pn接合の図を描き、空乏層、内部電場、光による電子・ホールの生成、内部電場によるキャリアの移動、を矢印で書き込んでみる練習が非常に有効です。視覚的に理解することで、複雑な現象の記憶が定着しやすくなります。
    • 対になる概念をセットで覚える:
      • n型 ⇔ p型
      • 自由電子 ⇔ ホール(正孔)
      • 5価不純物 ⇔ 3価不純物
      • ドナー ⇔ アクセプター
      • 太陽電池(光→電気) ⇔ LED(電気→光)

      これらの対義語やペア関係を意識して整理することで、知識が体系化され、混同を防ぐことができます。

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473 エネルギー資源

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