「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 34】Step 2

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Step 2

471 エネルギーの形態の移り変わり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「身の回りの現象や装置におけるエネルギー変換」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー保存の法則: エネルギーは消えたり無から生まれたりせず、ただその形態を変えるだけであるという物理学の基本法則。
  2. 各種エネルギーの定義: 問題で挙げられている電気、力学、熱、化学、光、核、音といった各エネルギーが、具体的にどのような現象や状態に対応するのかを理解すること。
  3. エネルギー変換の方向性: ある装置や現象において、「何が原因(入力)で」「何が結果(出力)か」という因果関係を捉え、エネルギーがどちらからどちらへ変換されたのかを判断すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)から(9)までの各装置・現象について、その動作原理を考えます。
  2. 「何エネルギーを使って(変換前のエネルギー)」「主に何エネルギーを生み出しているか(変換後のエネルギー)」を特定します。
  3. 解答群(a)〜(g)から、特定した変換前後のエネルギーに合致する記号を選び、組み合わせます。

思考の道筋とポイント
この問題は、9つの独立した装置や現象におけるエネルギー変換の組み合わせを答える知識問題です。それぞれの働きを理解し、「入力されるエネルギー」と「主として出力されるエネルギー」のペアを正確に見つけ出すことが求められます。
例えば、電気洗濯機は電気で動き、洗濯槽を回転させますが、同時に動作音やモーターの熱も発生します。このように、エネルギー変換は必ずしも1対1ではありませんが、その装置や現象の「主目的」は何かを考えることが、正しい組み合わせを選ぶ上での重要なポイントとなります。
この設問における重要なポイント

  • 各エネルギー(化学、電気、力学など)の具体的なイメージを持つこと。
  • 装置や現象の「入力(原因)」と「出力(主目的)」を正しく見極めること。
  • エネルギー変換の方向(例:発電機とモーターでは逆)を混同しないこと。

具体的な解説と立式
この問題は物理概念の理解を問うものであり、数式による立式はありません。各項目について、エネルギー変換の過程を解説します。

  • (1) ホタルの光
    ホタルは、体内のルシフェリンという発光物質が酵素の働きによって酸素と反応する「化学反応」を利用して光を放ちます。これは、物質が持つ「(d)化学エネルギー」が「(e)光エネルギー」に直接変換される例です。
  • (2) 電気洗濯機
    家庭のコンセントから供給される「(a)電気エネルギー」を動力源として、内部のモーターを回転させます。このモーターの回転によって洗濯槽が動き、衣類を洗浄します。物体の運動エネルギーは「(b)力学的エネルギー」なので、主たる変換は電気エネルギーから力学的エネルギーへの変換です。
  • (3) 原子炉
    原子炉では、ウランなどの原子核が核分裂反応を起こします。このとき、原子核の結合が解き放たれて莫大なエネルギーが発生します。これは「(f)核エネルギー」が解放される過程であり、そのエネルギーは主に「(c)熱エネルギー」として取り出され、水を沸騰させて蒸気タービンを回すのに使われます。
  • (4) マイク
    声や物音は、空気の振動(疎密波)として伝わる「(g)音のエネルギー」です。マイクは、この空気の振動を内部の振動板で捉え、電磁誘導などの原理を用いて電気信号に変換します。したがって、音のエネルギーを「(a)電気エネルギー」に変換する装置です。
  • (5) 発電機
    発電機は、水力、風力、火力などでタービンなどを回転させる運動エネルギーを入力とします。この「(b)力学的エネルギー」を用いて、内部のコイルと磁石を相対的に動かし、電磁誘導の原理によって「(a)電気エネルギー」を生成します。マイクとは原理が異なりますが、エネルギー変換の方向としてはスピーカーの逆、モーターの逆と考えることもできます。
  • (6) 蒸気機関車
    石炭を燃やして(化学→熱)水を沸騰させ、高温高圧の水蒸気を作ります。この水蒸気が持つ「(c)熱エネルギー」がピストンを押し動かし、その往復運動が車輪の回転運動に変換されます。この運動は「(b)力学的エネルギー」です。
  • (7) 筋肉の活動
    生物は、食事から得た栄養をATP(アデノシン三リン酸)という高エネルギー化合物として体内に蓄えています。これは「(d)化学エネルギー」の一形態です。筋肉を動かす際には、このATPが分解される化学反応によってエネルギーが取り出され、筋繊維が収縮するという「(b)力学的エネルギー」に変換されます。
  • (8) 石油ストーブ
    石油や灯油といった化石燃料は、その分子結合に「(d)化学エネルギー」を蓄えています。石油ストーブは、これを燃焼させることで「(c)熱エネルギー」に変換し、周囲を暖めます。
  • (9) 摩擦
    動いている物体を止めようとするときや、物体が床を滑るときに摩擦力が働きます。このとき、物体の運動エネルギー、すなわち「(b)力学的エネルギー」が減少し、そのエネルギーは接触面での分子のランダムな運動を激しくさせ、「(c)熱エネルギー」に変わります。手をこすり合わせると暖かくなるのがこの典型例です。

使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。エネルギー変換の概念的な理解が中心となります。

計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

それぞれの現象を簡単な言葉で言い換えてみましょう。
(1) ホタルのお尻が光るのは、体の中の化学物質が反応しているからです(化学→光)。
(2) 洗濯機は、コンセントからの電気で、洗濯槽をグルグル回します(電気→運動)。
(3) 原子力発電の心臓部である原子炉は、原子の核が壊れる力で、ものすごい熱を生み出します(核→熱)。
(4) マイクは、私たちの声の「ふるえ」を、電気の「しるし」に変えます(音→電気)。
(5) 発電機は、水車などがグルグル回る力で、電気を起こします(運動→電気)。
(6) 蒸気機関車は、蒸気の「熱いパワー」で、車輪を動かします(熱→運動)。
(7) 私たちが腕を動かすのは、体の中の栄養(化学物質)を燃やして力を出しているからです(化学→運動)。
(8) ストーブは、石油(化学物質)を燃やして、熱を出します(化学→熱)。
(9) 手をこすり合わせると、動かした力が熱に変わって、手が温かくなります(運動→熱)。

結論と吟味

9つの各装置・現象について、その動作原理からエネルギーの入力と主たる出力を特定し、解答群の記号と正しく対応させることができました。主目的以外のエネルギー発生(例:洗濯機の音や熱)を考慮せず、最も主要な変換を答えるという方針で、すべての組み合わせを合理的に説明できます。

解答
(1) (d)→(e)
(2) (a)→(b)
(3) (f)→(c)
(4) (g)→(a)
(5) (b)→(a)
(6) (c)→(b)
(7) (d)→(b)
(8) (d)→(c)
(9) (b)→(c)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー保存の法則と形態変化:
    • 核心: この問題の全ての問いに共通する大原則は、「エネルギーは創り出されたり消えたりせず、ただその形を変えるだけ」というエネルギー保存の法則です。様々な装置や現象は、この法則に従ってエネルギーの形態を変換する具体例に他なりません。
    • 理解のポイント:
      • 入力と出力: 全てのエネルギー変換には、変換前の「入力エネルギー」と、変換後の「出力エネルギー」があります。
      • 主目的: 多くの変換では、意図しないエネルギー(熱や音など)も発生しますが、その装置や現象の「主目的」となるエネルギー変換を捉えることが重要です。
      • 多様な形態: 電気、力学、熱、化学、光、核、音といったエネルギーの各形態が、どのような状態や現象に対応するのかを具体的に理解していることが、正解への鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多段階のエネルギー変換: 一つの装置やプロセスの中で、エネルギーが連鎖的に変換される様子を問う問題。(例:火力発電所全体では「化学→熱→力学→電気」という変換が行われる)。
    • エネルギー変換効率: 入力したエネルギーのうち、目的のエネルギーとして出力された割合(効率)を計算させる問題。残りは熱などとして失われる(損失)。
    • 身の回りの新しい機器: スマートフォン(化学⇔電気、電気→光・音)、ハイブリッドカー(化学⇔電気、力学⇔電気)、LED電球(電気→光)など、より現代的な機器におけるエネルギー変換を問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 装置の「目的」を考える: 「この装置は何をするためのものか?」を自問します。その答えが「出力エネルギー」のヒントになります。(例:マイクの目的は音を電気信号にすること → 出力は電気エネルギー)。
    2. 装置の「動力源」を考える: 「この装置は何によって動いているか?」を考えます。その答えが「入力エネルギー」のヒントになります。(例:洗濯機の動力源はコンセント → 入力は電気エネルギー)。
    3. 逆の変換をペアで覚える: 以下のペアはエネルギー変換の方向が逆の関係にあり、セットで覚えると混同しにくくなります。
      • モーター(電気→力学)発電機(力学→電気)
      • スピーカー(電気→音)マイク(音→電気)
      • 電球(電気→光)太陽電池(光→電気)
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 入力と出力の混同:
    • 誤解: (5)発電機を「電気エネルギーから力学的エネルギーを生み出す装置」と考えてしまう(モーターとの混同)。
    • 対策: 装置の名称がその役割を示しています。「発電機」は電気を「発電する(生み出す)」のが目的なので、出力が電気エネルギーです。一方、「モーター(電動機)」は電気で「動く」のが目的なので、入力が電気エネルギーです。
  • 主目的以外のエネルギーに惑わされる:
    • 誤解: (2)電気洗濯機のエネルギー変換を、発生する音や熱に着目して「電気→音」や「電気→熱」と答えてしまう。
    • 対策: その装置が「主として何をするために作られたか」を常に考えましょう。洗濯機の主目的は衣類を洗うための「回転運動(力学的エネルギー)」です。発生する音や熱は、意図しない副産物(エネルギー損失)と捉えるのが適切です。
  • 化学エネルギーと熱エネルギーの混同:
    • 誤解: (8)石油ストーブについて、燃焼という現象から「熱エネルギーが熱エネルギーに変わる」と考えてしまう。
    • 対策: 燃焼「前」の燃料(石油、食品、電池など)が蓄えているエネルギーは「化学エネルギー」であると明確に区別することが重要です。燃焼や消化といった「化学反応」によって、その化学エネルギーが「熱エネルギー」や「力学的エネルギー」に変換される、というプロセスを理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー保存の法則(概念的適用):
    • 選定理由: この問題は計算を伴いませんが、全ての変換の背景には物理学の大原則である「エネルギー保存の法則」があります。あるエネルギーが別のエネルギーに変わる際、エネルギーの総量は(損失分も含めて)必ず保存される、という考え方が、変換の前後関係を論理的に結びつける土台となります。
    • 適用根拠: 例えば(9)の摩擦では、物体の運動エネルギー(力学的エネルギー)が失われたように見えます。しかし、エネルギー保存の法則に立てば、それは消滅したのではなく、同量の「熱エネルギー」に姿を変えただけである、と論理的に説明できます。これにより、「(b)力学的エネルギー → (c)熱エネルギー」という変換が導き出されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 知識の定着と判断ミスをなくすテクニック:
    • 具体例のストックを増やす: 教科書や日常生活で見かける様々な現象や装置について、「これは何エネルギーから何エネルギーへの変換か?」と考える癖をつけましょう。例えば、ドライヤーなら「電気→熱+力学(ファンの回転)」、スマートフォンの充電なら「電気→化学(バッテリー)」、使用時なら「化学→電気→光・音」といった具合です。
    • エネルギー変換のフローチャート化: 複雑なプロセスを、矢印で繋いだ図で覚えるのが有効です。例えば、自動車の走行は「化学(ガソリン)→熱(エンジン)→力学(タイヤの回転)」のように図式化すると、知識が整理され、記憶に定着しやすくなります。
    • 対義語・ペアで覚える: 「応用テクニック」で挙げたような、逆の変換を行う装置(モーターと発電機など)をセットで覚えることで、混同を防ぎ、効率的に知識を整理できます。

472 太陽電池

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「n型・p型半導体とpn接合を利用した太陽電池の原理」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. n型半導体とp型半導体の構造: 真性半導体に不純物を加える(ドーピング)ことで、電気伝導の主役(キャリア)が自由電子になるか、ホール(正孔)になるかを理解すること。
  2. pn接合と内部電場: n型とp型半導体を接合した際に、接合面付近にキャリアのいない領域(空乏層)と、キャリアを分離する働きを持つ電場(内部電場)が自然に形成されること。
  3. 光電効果: 物質が光エネルギーを吸収して、内部の電子をよりエネルギーの高い状態へ励起する現象。太陽電池では、これにより自由電子とホールの対が生成される。
  4. エネルギー変換: 太陽電池が、光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であることを理解すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄①、②については、文章で説明されている「負電荷の運び手(自由電子)」と「正電荷の運び手(ホール)」が、それぞれn型半導体とp型半導体のどちらの特徴に対応するかを判断します。
  2. 空欄③、④については、太陽電池の動作原理を考え、入力されるエネルギー(発電の原因)と、出力されるエネルギー(発電の結果)が何であるかを特定します。

思考の道筋とポイント
この問題は、現代技術の根幹をなす半導体の基礎知識、特に太陽電池の動作原理を正しく理解しているかを問う知識問題です。n型・p型の名前の由来(Negative/Positive)と、それぞれの主な電荷の運び手(キャリア)が何かを結びつけて覚えることが解答の鍵となります。太陽電池の核心は、光によって生み出された電気の素(電子とホール)を、pn接合に自然に存在する「内部電場」という坂道を利用して効率よく分離し、外部に取り出す仕組みである点を理解することが重要です。
この設問における重要なポイント

  • n型半導体: 4価のケイ素に、5価の不純物(アンチモン、リンなど)をドープ。電子が1つ余り、これが負電荷のキャリア(多数キャリア)となる。Negativeの頭文字からn型。
  • p型半導体: 4価のケイ素に、3価の不純物(インジウム、ホウ素など)をドープ。電子が1つ足りない穴(ホールまたは正孔)ができ、これが正電荷のキャリア(多数キャリア)のように振る舞う。Positiveの頭文字からp型。
  • pn接合: n型とp型を接合すると、接合面付近で電子とホールが再結合して消滅し、キャリアのいない「空乏層」が形成される。この空乏層には、n型からp型へ向かう「内部電場」が生じる。
  • 太陽電池の原理: pn接合に光が当たると、そのエネルギーで電子とホールの対が生成される(光電効果)。生成された電子とホールは内部電場によって逆方向に運ばれ(電子はn型側へ、ホールはp型側へ)、分離される。この電荷の分離が起電力となり、外部回路に電流を流す。

具体的な解説と立式
この問題は物理概念の理解を問うものであり、数式による立式はありません。各空欄について、その根拠を解説します。

  • 空欄①
    「ケイ素の結晶にアンチモンなどを少量混ぜて自由電子をつくり、それを負電荷の運び手にする半導体」とあります。ケイ素は4価の原子ですが、アンチモンは5価の原子です。そのため、ケイ素の結晶にアンチモンを混ぜると、共有結合に使われない電子が1つ余ります。この余った電子が結晶中を自由に動ける「自由電子」となり、負(Negative)の電荷を運ぶキャリアとなります。このような半導体を「n型半導体」と呼びます。

 

  • 空欄②
    「ケイ素の結晶にインジウムなどを少量混ぜて電子が不足した状態(ホール)をつくり、ホールを正電荷の運び手にする半導体」とあります。インジウムは3価の原子です。ケイ素の結晶にインジウムを混ぜると、共有結合に必要な電子が1つ足りない場所、すなわち「ホール(正孔)」ができます。このホールに隣の電子がはまり込むと、元の電子があった場所に新たなホールができます。このように、ホールが次々と移動していく様子は、あたかも正(Positive)の電荷を持つ粒子が移動しているように見えます。このような半導体を「p型半導体」と呼びます。

 

  • 空欄③、④
    「①と②の半導体を接合したものに【③】を当てると、【③】のエネルギーによって接合部分に自由電子とホールが発生し、電流が生じる」とあります。これは太陽電池の発電原理そのものです。太陽電池は、太陽からの「光」を受けて発電します。つまり、入力されるエネルギーは「光エネルギー」です。この光エネルギーによって電子とホールが生成され、pn接合の働きで分離されることで起電力が生じ、外部に「電気」エネルギーとして取り出されます。
    したがって、【③】は「」、【④】は「電気」となります。

使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。エネルギー変換の概念的な理解が中心となります。

  • エネルギー変換: 光エネルギー → 電気エネルギー
計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

半導体を、4人掛けのイスがずらっと並んだ部屋に例えてみましょう。

  • n型半導体(空欄①): 5人グループ(アンチモン)がやってくると、4人はイスに座れますが、1人「あぶれた電子くん」が生まれます。この電子くんが部屋の中を自由に動き回れるので、電気を運びます。電子はマイナス(Negative)なので「n型」です。
  • p型半導体(空欄②): 3人グループ(インジウム)がやってくると、イスが1つ「空席(ホール)」になります。隣の席の人がこの空席に移動すると、元の席が空席になります。こうして「空席」がどんどん移動していくように見えます。空席はプラス(Positive)の性質を持つので「p型」です。
  • 太陽電池の仕組み(空欄③、④): n型の部屋とp型の部屋をくっつけます(pn接合)。ここに「光」というエネルギーのボールを投げ込むと、座っていた人がボールに当たって飛び出し、「新たな電子くん」と「新たな空席」のペアができます。部屋の境目には、電子くんをn型側へ、空席をp型側へ押しやる「見えない坂道」ができています。この坂道の力で電子くんと空席が分かれ、それぞれの部屋に集められることで「電圧」が生まれ、「電気」が流れるのです。
結論と吟味

以上の考察から、自由電子がキャリアとなる半導体はn型、ホールがキャリアとなる半導体はp型であると判断できます。また、太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。したがって、各空欄に当てはまる語句は、①n型、②p型、③光、④電気となり、物理的に妥当です。

解答 ① n型, ② p型, ③ 光, ④ 電気

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 半導体のキャリア制御(ドーピング):
    • 核心: 導体と絶縁体の中間の性質を持つ半導体(例:ケイ素)に、微量の不純物を意図的に添加(ドーピング)することで、電気伝導の主役となるキャリア(電荷の運び手)を「自由電子」または「ホール(正孔)」に制御できる、という点が半導体物理の最も重要な概念です。
    • 理解のポイント:
      • n型半導体: 4価のケイ素に5価の不純物(リン、アンチモン等)をドープ。電子が1つ余り、これが負(Negative)のキャリアとなる。
      • p型半導体: 4価のケイ素に3価の不純物(ホウ素、インジウム等)をドープ。電子の空席(ホール)ができ、これが正(Positive)のキャリアとして振る舞う。
  • pn接合と光起電力効果:
    • 核心: n型とp型半導体を接合して「pn接合」を作ると、接合面付近にキャリアを分離する「内部電場」が自然に形成されます。このpn接合に光を当てると、光エネルギーによって電子とホールの対が生成され、この内部電場によって電子がn型側へ、ホールがp型側へと強制的に分離されます。この電荷の分離が起電力となり、外部に電流を流すことができる、これが太陽電池の基本原理(光起電力効果)です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ダイオードの整流作用: pn接合は、電流を一方通行にする「整流作用」を持ちます。順方向バイアス(p側に正、n側に負の電圧)をかけると電流が流れ、逆方向バイアスをかけるとほとんど流れない理由を問う問題。
    • 発光ダイオード(LED): ダイオードに順方向の電流を流すと、pn接合で電子とホールが再結合する際に、そのエネルギーを光として放出する現象。太陽電池とは逆のエネルギー変換(電気→光)です。
    • トランジスタの増幅作用: pnp型やnpn型に半導体を接合したトランジスタが、小さな電気信号を大きくする「増幅作用」を持つ原理を問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 価数に注目: 不純物として添加される原子の価数(最外殻電子の数)を見ます。母材のケイ素(4価)より多ければ(5価)、電子が余ってn型。少なければ(3価)、電子が不足してp型、と判断します。
    2. キャリアの種類を確認: 文章中に「自由電子がキャリア」「ホール(正孔)がキャリア」といった記述があれば、それがn型かp型かを判断する直接的な手がかりになります。
    3. エネルギー変換の方向を把握: 「光を当てる」「電流を流す」といったキーワードから、何が入力で何が出力かを考えます。太陽電池は「光→電気」、LEDは「電気→光」という逆の関係を意識します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • n型とp型の混同:
    • 誤解: どちらが電子でどちらがホールか、あるいはどちらが5価でどちらが3価の不純物かを混同してしまう。
    • 対策: negative(負)→電子、positive(正)→ホール、と頭文字で覚えるのが効果的です。また、「5価は電子が1つ多い→余った電子がキャリア→n型」「3価は電子が1つ少ない→電子の穴(ホール)がキャリア→p型」という論理の流れをセットで理解しましょう。
  • キャリアと原子の混同:
    • 誤解: n型半導体全体が負に帯電している、p型半導体全体が正に帯電していると勘違いする。
    • 対策: ドーピングされた半導体も、原子核の陽子数と電子の総数は等しいため、全体としては電気的に中性です。「キャリア」とは、あくまで結晶中を自由に動ける電荷のことであり、半導体全体の帯電状態とは異なります。
  • ドナーとアクセプターの混同:
    • 誤解: 解答の補足にある「ドナー」という言葉の意味を誤解する。
    • 対策: ドナー(donor)は「与える人」という意味で、自由電子を供給する不純物(n型の5価原子)を指します。一方、アクセプター(acceptor)は「受け入れる人」という意味で、電子を受け入れるホールを供給する不純物(p型の3価原子)を指します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー変換(光エネルギー → 電気エネルギー):
    • 選定理由: この問題は計算を伴いませんが、太陽電池の機能を物理的に表現する中心的な概念です。
    • 適用根拠: 太陽電池の目的は「光を受けて電気を生み出す」ことです。この目的をエネルギーの言葉で表現すると、「入力された光エネルギーを、出力として電気エネルギーに変換する」となります。この変換プロセスを理解することが、空欄③と④を正しく埋めるための論理的な根拠となります。光電効果によって光エネルギーが電子のエネルギーに変換され、pn接合の内部電場によってその電子のエネルギーが外部に取り出せる電気エネルギー(起電力)に変換される、という一連の流れが背景にあります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 知識の定着と判断ミスをなくすテクニック:
    • 周期表の位置で覚える: ケイ素(Si)は14族元素です。n型を作る不純物(リンP, アンチモンSbなど)は15族、p型を作る不純物(ホウ素B, インジウムInなど)は13族に位置します。周期表での左右の位置関係で覚えると、価数の大小関係を忘れにくくなります。
    • 図で理解する: pn接合の図を描き、空乏層、内部電場、光による電子・ホールの生成、内部電場によるキャリアの移動、を矢印で書き込んでみる練習が非常に有効です。視覚的に理解することで、複雑な現象の記憶が定着しやすくなります。
    • 対になる概念をセットで覚える:
      • n型 ⇔ p型
      • 自由電子 ⇔ ホール(正孔)
      • 5価不純物 ⇔ 3価不純物
      • ドナー ⇔ アクセプター
      • 太陽電池(光→電気) ⇔ LED(電気→光)

      これらの対義語やペア関係を意識して整理することで、知識が体系化され、混同を防ぐことができます。

473 エネルギー資源

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「エネルギー消費の増大がもたらす地球規模の課題」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー資源の有限性: 化石燃料や核燃料など、現在主に使用されているエネルギー資源は、地球上に存在する量に限りがあり、再生が極めて困難であること。
  2. 化石燃料の燃焼と温室効果ガス: 化石燃料を燃やすと、二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスが発生し、地球温暖化の原因となること。
  3. エネルギー消費に伴う環境汚染: 温室効果ガス以外にも、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが排出され、酸性雨などの原因となること。
  4. 核燃料の利用と放射性廃棄物: 原子力発電は発電時にCO₂を排出しませんが、高レベル放射性廃棄物の処理という長期的な課題を抱えていること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文の「エネルギー資源(化石燃料や核燃料など)」というキーワードに着目します。
  2. これらの資源を使い続けることによる「資源そのものの問題(量的限界)」と、「使用に伴う環境への影響(質的影響)」という2つの側面から問題点を整理し、記述します。

思考の道筋とポイント
この問題は、現代社会が依存しているエネルギー資源(化石燃料、核燃料)の消費がこのまま続いた場合に、どのような未来が予測されるかを問う、物理学の知識を背景とした社会的な問題です。
解答を導き出すには、大きく分けて2つの視点から考えることが有効です。
1. 資源の量的な限界: 地球上の資源は無限ではありません。使い続ければいつかはなくなってしまいます(枯渇)。
2. 資源の利用に伴う影響: 資源を使うこと、特に燃焼させることで、地球環境にどのような影響が出るか。
模範解答で示されている2つの問題点は、まさにこの2つの視点に沿ったものとなっています。
この設問における重要なポイント

  • 化石燃料: 石炭、石油、天然ガスなどを指します。これらは地球が数億年かけて生成したものであり、埋蔵量に限りがある再生不可能な「枯渇性資源」です。また、燃焼により二酸化炭素(CO₂)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)といった環境負荷物質を排出します。
  • 核燃料: ウランなどを指します。これも埋蔵量に限りがある枯渇性資源です。利用後の「使用済み核燃料」は高い放射能を持ち、その安全な長期管理(最終処分)が世界共通の大きな課題となっています。
  • 地球温暖化: CO₂などの温室効果ガスが大気中に増えることで、地球の平均気温が上昇する現象です。これにより、異常気象の頻発、海面上昇、生態系の破壊など、深刻な気候変動が引き起こされると懸念されています。

具体的な解説と立式
この問題は記述式であり、数式による立式はありません。予想される問題点を2つ、論理的に解説します。

  • 問題点1:エネルギー資源の枯渇
    現在、世界のエネルギー消費の大部分を占める化石燃料(石炭、石油、天然ガス)や、原子力発電に用いられる核燃料(ウラン)は、地球が長い年月をかけて作り出したものであり、その埋蔵量には限りがあります。現在のペース、あるいはそれ以上の勢いでこれらの資源を消費し続ければ、いずれは経済的に採掘可能な資源が尽きてしまいます。これを「資源の枯渇」と呼びます。資源が枯渇すれば、現代文明を支えるエネルギー供給が困難になり、私たちの生活や経済活動に極めて深刻な影響を及ぼすことになります。

 

  • 問題点2:地球環境への影響(地球温暖化と環境汚染)
    エネルギー資源の消費は、地球環境に様々な負荷を与えます。

    • 地球温暖化: 化石燃料を燃焼させると、温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)が大量に大気中に排出されます。大気中のCO₂濃度が上昇すると、地球から宇宙空間へ放射される熱が逃げにくくなり、地球全体の平均気温が上昇する「地球温暖化」が進行します。これにより、異常気象の頻発、氷河や氷床の融解による海面の上昇、生態系の変化など、地球規模での深刻な問題が引き起こされます。
    • 環境汚染: 化石燃料の燃焼は、CO₂以外にも硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を排出し、これらが原因で酸性雨や光化学スモッグといった大気汚染が起こります。
    • 原子力の課題: 核燃料を利用する原子力発電は、発電時にCO₂を排出しませんが、万が一の事故のリスクや、処理方法が未だ確立されていない高レベル放射性廃棄物を生み出すという、将来世代にわたる深刻な課題を抱えています。

使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

この問題は、私たちが今の生活を続けた場合の未来を考える問題です。

  • 1つ目の問題「資源がなくなる」:
    地球にある石油や石炭は、お財布の中のお金と同じで、使えば使うだけ減っていき、いつかは空っぽになってしまいます。これが「枯渇」の問題です。エネルギーがなくなれば、電気もつかず、車も動かせなくなり、大変なことになります。
  • 2つ目の問題「地球が汚れる・病気になる」:
    石油や石炭を燃やすと、車の排気ガスのように、地球の空気を汚すもの(二酸化炭素など)がたくさん出ます。この二酸化炭素が増えすぎると、地球が毛布を何枚もかぶったように熱くなってしまいます。これが「地球温暖化」です。地球の熱が上がりすぎると、気候がおかしくなったり、北極や南極の氷が溶けてしまったりする原因になります。
結論と吟味

模範解答で示されている「エネルギー資源が枯渇する」ことと、「地球環境の汚染、気象の変動(地球温暖化)」は、エネルギー問題の最も根幹をなす2大課題です。これら以外にも、「放射性廃棄物の処理問題」や「エネルギー資源の偏在による国際紛争のリスク」なども重要な問題点として挙げられますが、問われている2点としては、模範解答の組み合わせが最も代表的で適切であると言えます。

解答

  • エネルギー資源(化石燃料や核燃料)が枯渇する。
  • 化石燃料の燃焼による二酸化炭素の増加が地球温暖化を引き起こし、気象変動や環境汚染などの問題が深刻化する。

(※上記は解答例であり、同趣旨の内容であれば正解となります。)


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー資源の有限性(枯渇性):
    • 核心: この問題の第一の核心は、私たちが現在主に使用している化石燃料(石炭、石油、天然ガス)や核燃料(ウラン)が、地球が数億年という長い時間をかけて作り出したものであり、その埋蔵量には限りがあるという事実です。これらは「再生不可能エネルギー」または「枯渇性資源」と呼ばれ、使い続ければいずれは尽きてしまいます。
  • エネルギー変換に伴う環境負荷:
    • 核心: 第二の核心は、エネルギー保存の法則に従ってエネルギーを便利な形(電気など)に変換する際、必ず意図しない副産物や影響が生じるという点です。
    • 理解のポイント:
      • 化学反応と排出物: 化石燃料の燃焼は、燃料中の炭素が空気中の酸素と結びついて二酸化炭素(CO₂)を排出する化学反応です。これは質量保存の法則からくる必然的な結果です。
      • 物理現象と環境変化: 排出されたCO₂は温室効果ガスとして働き、地球の熱収支を変化させ、地球温暖化という物理現象を引き起こします。
      • 核反応と廃棄物: 原子力発電は、核分裂という物理反応を利用しますが、その結果として高レベルの放射能を持つ使用済み核燃料(放射性廃棄物)が生成されます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 再生可能エネルギーとの比較: 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった「再生可能エネルギー」の特徴(枯渇の心配がない、CO₂排出量が少ない等)と、その課題(天候への依存、設置場所の制約、コスト等)について問う問題。
    • 特定の環境問題への深掘り: 「酸性雨の原因物質とその影響」「オゾン層破壊のメカニズム」「生物多様性の損失」など、エネルギー問題に関連する個別の環境テーマについて説明を求める問題。
    • エネルギー政策や国際的取り組み: 「京都議定書」や「パリ協定」といった地球温暖化対策の国際的な枠組みや、「省エネルギー」「エネルギーミックス」といった国の政策について問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギー源の種類を特定する: 問題が「化石燃料」「核燃料」「再生可能エネルギー」のどれについて、あるいはそれら全体について問うているのかをまず確認します。
    2. 「資源」と「環境」の2軸で考える: エネルギー問題を考える際は、常に「資源は足りるのか?(量的問題)」と「使った後の環境への影響は?(質的問題)」という2つの側面からアプローチする癖をつけると、論点が整理しやすくなります。
    3. 時間スケールを意識する: 問題点が「短期的な影響(例:大気汚染)」なのか、「長期的・地球規模の影響(例:資源枯渇、温暖化、放射性廃棄物の半減期)」なのかを区別すると、より深い解答ができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 温暖化とオゾン層破壊の混同:
    • 誤解: 地球温暖化の原因をフロンガス、オゾン層破壊の原因を二酸化炭素と、原因物質を取り違えてしまう。
    • 対策: 「温暖化の原因は二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガス」「オゾン層破壊の原因はフロンガス」という正しい組み合わせを明確に覚える。温室効果は「地球を覆う毛布が厚くなる」イメージ、オゾン層破壊は「宇宙からの有害な紫外線を防ぐバリアが壊れる」イメージ、とメカニズムを区別して理解しましょう。
  • 原子力発電に関する誤解:
    • 誤解: 原子力発電も、発電時に二酸化炭素を大量に排出すると思い込んでしまう。
    • 対策: 原子力発電は「核分裂」反応を利用しており、「燃焼」ではないため、運転中にCO₂は排出しません。ただし、「CO₂を出さないからクリーン」と短絡的に考えるのではなく、「高レベル放射性廃棄物の処理」という、化石燃料とは全く異なる種類の深刻な環境課題があることをセットで理解することが重要です。
  • 解答の具体性の欠如:
    • 誤解: 「環境が悪くなる」「公害が起こる」といった、漠然とした言葉で解答してしまう。
    • 対策: 「何が原因で(例:化石燃料の燃焼による二酸化炭素の増加が原因で)」「どのような問題が(例:地球温暖化が進行し、異常気象や海面上昇が引き起こされる)」というように、原因と結果を具体的に結びつけて記述するよう心がけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 思考の土台となる物理・化学法則:
    • 質量保存の法則(化学反応):
      • 選定理由: 化石燃料の燃焼がなぜ必然的に二酸化炭素を排出するのか、その論理的な根拠を与える法則です。
      • 適用根拠: 燃焼は、燃料に含まれる炭素原子(C)が空気中の酸素分子(O₂)と結合する化学反応です。化学反応の前後で原子の種類と数は変わらないため、反応物に含まれていた炭素原子は、生成物である二酸化炭素(CO₂)として必ず排出されます。この化学的な必然性が、化石燃料の使用と地球温暖化を結びつける論理の根幹です。
    • 熱力学第二法則(エントロピー増大の法則):
      • 選定理由: なぜエネルギーを利用すると、必ず何らかの「廃棄物」や「環境負荷」が生じてしまうのか、その普遍的な理由を説明する法則です。
      • 適用根拠: エネルギーを人間にとって有用な形(仕事や電気)に変換する過程では、必ず一部が利用しにくい低品質なエネルギー(主に廃熱)として環境中に拡散し、全体の乱雑さ(エントロピー)は増大します。この法則は、エネルギー利用が100%クリーンであることは原理的に不可能であり、必ず何らかの形で環境に影響を与えることを示唆しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 記述ミスをなくし、知識を整理するテクニック:
    • キーワードを正確に使う: 「温室効果ガス」「地球温暖化」「酸性雨」「放射性廃棄物」「資源の枯渇」「再生可能エネルギー」など、エネルギー・環境問題に関する専門用語を、その意味とともに正確に使い分ける練習をしましょう。
    • 因果関係の連鎖を意識する: 「化石燃料の大量消費 → 大気中のCO₂濃度上昇 → 温室効果の増大 → 地球平均気温の上昇(温暖化) → 氷河融解・海面上昇・異常気象の頻発」のように、原因から結果へと至る事象の連鎖(フローチャート)を自分で描いてみると、知識が体系的に整理されます。
    • 多角的な視点を持つ: 模範解答にある「枯渇」と「温暖化」は最重要ですが、それ以外にも「放射性廃棄物の処理問題」「資源の偏在による国際紛争のリスク」「酸性雨による森林破壊や建造物への被害」など、複数の問題点をストックしておくと、より深い理解につながり、様々な角度からの問いに対応できるようになります。

474 太陽のエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「生物圏における太陽エネルギーの変換効率の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 割合の計算: ある量が、基準となる量に対してどれくらいの割合を占めるかを計算する基本的な算術。
  2. 逆算の思考: 部分的な情報(10%の値)から、全体(100%)の値を推定する論理。
  3. 問題文の読解力: 複数の数値情報の中から、計算に必要なものを正しく選び出し、その関係性を正確に把握する能力。
  4. 指数計算と有効数字: 科学的な数値を扱う上での基本的な計算ルール。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題文で与えられている「人類が食料として利用するエネルギー量」が「光合成でつくられた全有機物のエネルギーの10%」であるという情報から、光合成でつくられた全有機物のエネルギー量を逆算して求めます。
  2. 次に、算出した「光合成でつくられた全有機物のエネルギー」が、「地球表面が太陽から受け取る総エネルギー」の何パーセントにあたるかを計算します。

思考の道筋とポイント
この問題は、一見複雑に見えるエネルギーの流れを、単純な割合の計算に落とし込む問題です。最終的に求めたいのは「光合成によってつくられた有機物のエネルギー」が「地球が受け取る太陽エネルギー」の何%か、という割合です。
しかし、問題文には「光合成によってつくられた有機物のエネルギー」の総量は直接書かれていません。代わりに「人類が食料として利用するエネルギー量」が与えられ、それが「光合成でつくられた全有機物エネルギーの10%に相当する」と述べられています。
したがって、まずこの「10%」という情報を使って、光合成による全エネルギー量を逆算で求めることが第一のステップとなります。このステップをクリアできれば、あとは単純な割り算で答えを導くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 割合の計算式を正しく理解しているか:割合(\%) = (比べられる量 / もとにする量) × 100
  • 逆算の考え方を適用できるか:全体 \(X\) の \(a\) %が \(Y\) であるとき、\(X = Y \div (a/100)\) と計算できる。
  • 指数計算のルールを正しく使えるか:\(10^m \div 10^n = 10^{m-n}\)
  • 有効数字の処理を忘れないか:問題文で与えられた数値(7.3, 5.5)が2桁なので、最終的な答えも有効数字2桁に丸める。

具体的な解説と立式
まず、問題文で与えられている各エネルギー量を記号で整理します。

  • 地球表面が1日に太陽から受け取る総エネルギーを \(E_{\text{太陽}}\) とします。
    $$ E_{\text{太陽}} = 7.3 \times 10^{21} \, [\text{J}] $$
  • 人類が1日に食料として利用するエネルギーを \(E_{\text{食料}}\) とします。
    $$ E_{\text{食料}} = 5.5 \times 10^{17} \, [\text{J}] $$
  • 光合成によって1日につくられた全有機物のエネルギーを \(E_{\text{有機物}}\) とします。

問題文より、\(E_{\text{食料}}\) は \(E_{\text{有機物}}\) の10%であるから、次の関係が成り立ちます。
$$ E_{\text{食料}} = E_{\text{有機物}} \times \frac{10}{100} = E_{\text{有機物}} \times 0.10 \quad \cdots ① $$
この式を変形すると、光合成でつくられた全有機物のエネルギー \(E_{\text{有機物}}\) は、
$$ E_{\text{有機物}} = \frac{E_{\text{食料}}}{0.10} \quad \cdots ② $$
と計算できます。

最終的に求めたいのは、\(E_{\text{有機物}}\) が \(E_{\text{太陽}}\) の何パーセントかです。この割合を \(P\) [%] とすると、その定義から、
$$ P = \frac{E_{\text{有機物}}}{E_{\text{太陽}}} \times 100 \quad \cdots ③ $$
となります。

使用した物理公式
この問題では、物理公式というよりは、割合を計算するための数学的な定義式を使用します。

  • 割合の計算: 割合 = (比べられる量) / (もとにする量)
  • パーセントの計算: 割合(%) = 割合 × 100
計算過程

ステップ1: 光合成でつくられた全有機物のエネルギー \(E_{\text{有機物}}\) の計算
式②に \(E_{\text{食料}}\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{有機物}} &= \frac{5.5 \times 10^{17}}{0.10} \\[2.0ex]&= 5.5 \times 10^{18} \, [\text{J}]\end{aligned}
$$

ステップ2: 割合 \(P\) の計算
式③に、計算した \(E_{\text{有機物}}\) と、与えられている \(E_{\text{太陽}}\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{5.5 \times 10^{18}}{7.3 \times 10^{21}} \times 100 \\[2.0ex]&= \frac{5.5}{7.3} \times \frac{10^{18}}{10^{21}} \times 10^2 \\[2.0ex]&= \frac{5.5}{7.3} \times 10^{18 – 21 + 2} \\[2.0ex]&\approx 0.7534 \times 10^{-1} \\[2.0ex]&= 7.534 \times 10^{-2}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている数値の有効数字は2桁なので、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ P \approx 7.5 \times 10^{-2} \, [\%] $$

計算方法の平易な説明

この計算は2つのステップに分けられます。
ステップ1:光合成で作られたエネルギーの「全体量」を求める
問題文には「人類が食べる分は、光合成で作られた全体の10%」で、その量が「\(5.5 \times 10^{17}\) J」だと書かれています。10%がこの量なので、全体(100%)の量を知るには、この量を10倍してあげればよいことになります。
したがって、光合成で作られた全エネルギーは、\(5.5 \times 10^{17}\) Jの10倍で、\(5.5 \times 10^{18}\) Jとなります。

ステップ2:割合(パーセント)を計算する
次に、ステップ1で求めた「光合成の全エネルギー」が、地球が太陽から受け取る全エネルギー(\(7.3 \times 10^{21}\) J)の何パーセントかを計算します。
これは、「(光合成のエネルギー) ÷ (太陽のエネルギー) × 100」という式で計算できます。
実際に計算すると、\( (5.5 \times 10^{18}) \div (7.3 \times 10^{21}) \times 100 \) となり、答えは約 \(7.5 \times 10^{-2}\) %(つまり0.075%)となります。

結論と吟味

計算の結果、光合成によって有機物として固定されるエネルギーは、地球表面が太陽から受け取る総エネルギーの \(7.5 \times 10^{-2}\) % であることがわかりました。
これは約0.075%という非常に小さな値ですが、莫大な太陽エネルギーのうち、生物が利用可能な化学エネルギーに変換できるのはごく一部であることを示しており、生物学的にも妥当な値です。計算過程における逆算、指数の計算、有効数字の処理も正しく行われています。

解答 \(7.5 \times 10^{-2}\) %

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー変換と割合計算の融合:
    • 核心: この問題の核心は、純粋な物理法則というよりも、物理的な事象(エネルギー変換)を背景とした「算術的思考能力」にあります。具体的には、太陽の光エネルギーが植物の光合成によって化学エネルギーに変換され、さらにその一部が人類に利用される、というエネルギーの流れを正しく理解し、それを「割合」という数学的な尺度で評価する能力が問われています。
    • 理解のポイント:
      • エネルギーの流れの把握: 「太陽エネルギー(大元)」→「光合成による全有機物のエネルギー(中間)」→「人類が利用する食料エネルギー(末端)」という階層構造を読み取ることが第一歩です。
      • 割合の基準: 「AはBの何%か」という問いでは、「B」が基準(もとにする量、分母)になります。この問題では「地球表面が太陽から受け取るエネルギー」が基準です。
      • 逆算の論理: 全体が不明で部分の情報から全体を推定する「逆算」の考え方が、中間ステップで必要になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多段階のエネルギー変換効率: 発電所において、燃料の化学エネルギーから熱への変換効率が40%、熱から電気への変換効率が30%のとき、総合的なエネルギー変換効率は何%か、といった問題。
    • 食物連鎖におけるエネルギー効率: 生産者(植物)が持つエネルギーのうち、一次消費者に利用されるのが10%、一次消費者のエネルギーのうち、二次消費者に利用されるのが10%…といった、生態系ピラミッドにおけるエネルギーの流れを計算する問題。
    • 情報の取捨選択: 問題文に計算には不要なダミー情報(例:地球の半径、光合成を行う植物の総面積など)が含まれている場合に、必要な数値だけを正しく抜き出して計算する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 数値をリストアップし、意味を明確化: 問題文に出てくる数値をすべて書き出し、それぞれが「何の」エネルギー量なのかを横にメモします。(例:\(7.3 \times 10^{21}\) J → 太陽からの総E、\(5.5 \times 10^{17}\) J → 人類が利用するE)。
    2. エネルギーの流れを図式化: 「太陽E → 光合成E → 食料E」のように、エネルギーがどの順番で、どのように変換・利用されているか簡単なフローチャートを描くと、関係性が一目瞭然になります。
    3. 最終目標を最初に確認: 「何を」「何で」割ってパーセントを求めるのか、最終的な計算式(この場合は \(\frac{E_{\text{有機物}}}{E_{\text{太陽}}} \times 100\))の形を最初にイメージします。これにより、途中で何を計算すればよいかが明確になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 逆算のミス(割り算と掛け算の混同):
    • 誤解: 「人類が利用するエネルギー(10%分)は \(5.5 \times 10^{17}\) J」という情報から、光合成の全エネルギーを求める際に、\(5.5 \times 10^{17} \times 0.10\) と計算してしまう。
    • 対策: 「全体 × 0.10 = 部分」という式を立ててから、「全体 = 部分 ÷ 0.10」と機械的に変形する練習をします。あるいは、「10%がこの値なら、100%(全体)はその10倍だ」と直感的に理解するのも有効です。
  • 割合計算の分母と分子の逆転:
    • 誤解: 最終的な割合を計算する際に、\(\frac{E_{\text{太陽}}}{E_{\text{有機物}}}\) のように、分母と分子を逆にしてしまう。
    • 対策: 「AはBの何%か」という問いでは、「〜の」の直前にある「B」が基準(分母)になると覚えましょう。この問題では「太陽から受け取るエネルギーの何%か」なので、太陽エネルギーが分母になります。
  • 指数(10のべき乗)の計算ミス:
    • 誤解: \(\frac{10^{18}}{10^{21}}\) の計算を、\(10^{18+21}\) や \(10^{21-18}\) のように間違える。
    • 対策: 指数の割り算は「上の指数から下の指数を引く」(\(10^a \div 10^b = 10^{a-b}\))という基本ルールを徹底します。この場合は \(10^{18-21} = 10^{-3}\) となります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 割合の定義式(割合 = (比べられる量) / (もとにする量)):
    • 選定理由: この問題は、あるエネルギー量(光合成によるエネルギー)が、基準となる別のエネルギー量(太陽エネルギー)に対してどれくらいの規模なのか、その相対的な大きさを評価することを要求しています。このような2つの量の比較には、「割合」という尺度が最も適しているため、その定義式をそのまま用います。
    • 適用根拠: 物理的、生物学的なプロセスを経て変換された後のエネルギーが、元のエネルギーに対してどれだけ効率的に利用されているかを示す指標として、この計算は極めて重要です。分母に大元のエネルギー、分子に変換後のエネルギーを置くことで、その変換効率(この場合はパーセント表示)を定量的に示すことができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 数値部分と指数部分を分離して計算する:
    • \( \frac{5.5 \times 10^{18}}{7.3 \times 10^{21}} \times 100 \) のような計算は、まず数値部分の \( \frac{5.5}{7.3} \) を計算し、次に指数部分の \( \frac{10^{18}}{10^{21}} \times 10^2 \) を計算し、最後にそれらを掛け合わせる、という手順を踏むと、計算ミスを大幅に減らすことができます。
  • 逆算の検算:
    • ステップ1で「光合成の全エネルギーは \(5.5 \times 10^{18}\) J」と求めたら、すぐに検算する癖をつけましょう。「この値の10%は… \(5.5 \times 10^{17}\) J。よし、問題文と一致する」と確認することで、その後の計算に安心して進めます。
  • 有効数字の事前確認:
    • 計算を始める前に、問題文で与えられた数値(5.5と7.3)の有効数字が2桁であることを確認し、解答も有効数字2桁で答えることを意識します。計算途中では多めの桁数で計算を進め、最後に四捨五入するのが基本です。
  • 概算による桁数のチェック:
    • 計算前に「だいたいこれくらいになるはず」と桁数を見積もる習慣は、大きなミスを防ぐのに非常に有効です。例えば、\( \frac{5.5}{7.3} \) は1より少し小さい値、指数部分は \(10^{18-21+2} = 10^{-1}\) なので、答えは \( (1より小さい数) \times 10^{-1} \) となり、\( \sim \times 10^{-2} \) のオーダーになると予想できます。この予想と計算結果が大きく異なれば、どこかでミスをしている可能性が高いと気づくことができます。

475 核分裂

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「核分裂反応によるエネルギーの算出」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 核エネルギー: 原子核の内部に、核子(陽子と中性子)の結合エネルギーとして蓄えられている莫大なエネルギー。
  2. 核分裂: ウランのような重い原子核が中性子を吸収するなどして、より軽い複数の原子核に分裂する現象。このとき、分裂前後の質量差(質量欠損)が、アインシュタインの関係式 \(E=mc^2\) に従って極めて大きなエネルギーに変換されて放出されます。
  3. 比例計算: 全体の量は、それを構成する単体の量と個数の積で求められるという、基本的な算術の考え方。
  4. 有効数字: 計算結果を、問題で与えられた数値の信頼性に応じて適切な桁数で処理すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文で与えられている「原子核1個あたりのエネルギー」と「1kgに含まれる原子核の個数」を特定します。
  2. この2つの値を掛け合わせることで、1kgのウランが核分裂した際に発生する総エネルギーを計算します。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子核1個というミクロな世界の現象から、1kgというマクロなスケールでの結果を計算する問題です。その構造は非常にシンプルで、「商品1個の値段」と「商品の個数」がわかっているときに「合計金額」を求める計算と全く同じです。
ここで、「商品1個の値段」に相当するのが「ウラン原子核1個が核分裂するときに発生するエネルギー」であり、「商品の個数」に相当するのが「1kgに含まれる原子核の数」です。したがって、これら2つの値を掛け合わせるだけで、求める総エネルギーを算出できます。計算においては、指数(10のべき乗)の扱いと、有効数字の処理を正確に行うことが重要です。
この設問における重要なポイント

  • 総エネルギー = (原子核1個あたりのエネルギー) × (原子核の総数)
  • 指数計算のルールを正しく適用すること: \(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\)
  • 計算結果を適切な有効数字で処理すること。

具体的な解説と立式
1kgの\({}_{}^{235}\text{U}\)が完全に核分裂するときに発生する総エネルギーを \(E_{\text{全}}\) [J] とします。
問題文より、原子核1個が核分裂するときに発生するエネルギー \(E_1\) は、
$$ E_1 = 3.2 \times 10^{-11} \, [\text{J}] $$
また、1kgの\({}_{}^{235}\text{U}\)に含まれる原子核の個数 \(N\) は、
$$ N = 2.56 \times 10^{24} \, [\text{個}] $$
です。
求める総エネルギー \(E_{\text{全}}\) は、原子核1個あたりのエネルギー \(E_1\) と、原子核の総数 \(N\) の積で与えられます。
$$ E_{\text{全}} = E_1 \times N $$

使用した物理公式
この問題で直接的に使用するのは、物理公式というよりも算術的な比例計算の考え方です。

  • 全体の量 = (単位量) × (総数)
計算過程

上記で立式した式に、与えられた数値を代入して \(E_{\text{全}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= (3.2 \times 10^{-11}) \times (2.56 \times 10^{24}) \\[2.0ex]&= (3.2 \times 2.56) \times (10^{-11} \times 10^{24}) \\[2.0ex]&= 8.192 \times 10^{-11+24} \\[2.0ex]&= 8.192 \times 10^{13}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値のうち、\(3.2 \times 10^{-11}\) の有効数字は2桁、\(2.56 \times 10^{24}\) の有効数字は3桁です。積の計算結果の有効数字は、計算に用いた数値の中で最も桁数が小さいものに合わせるのが原則です。したがって、計算結果を有効数字2桁に丸めます。
$$ E_{\text{全}} \approx 8.2 \times 10^{13} \, [\text{J}] $$

計算方法の平易な説明

この問題は、「1個100円のお菓子を、10個買ったら合計いくら?」という計算と全く同じです。

  • 「ウラン原子核1個が分裂して出るエネルギー(\(3.2 \times 10^{-11}\) J)」が、お菓子1個の値段にあたります。
  • 「1kgの中に含まれるウラン原子核の数(\(2.56 \times 10^{24}\) 個)」が、買うお菓子の個数にあたります。

合計のエネルギーを求めるには、この2つの数字を単純に掛け算すればOKです。
計算のコツは、普通の数字の部分(3.2と2.56)と、「10の何乗」という指数の部分を別々に計算することです。まず \(3.2 \times 2.56 = 8.192\) を計算し、次に \(10^{-11} \times 10^{24} = 10^{13}\) を計算して、最後に合体させると \(8.192 \times 10^{13}\) となります。これを問題の数字に合わせて有効数字2桁にすると、\(8.2 \times 10^{13}\) J となります。

結論と吟味

計算の結果、1kgの\({}_{}^{235}\text{U}\)が完全に核分裂すると、\(8.2 \times 10^{13}\) J という莫大なエネルギーが発生することがわかりました。これは、原子力発電が非常に大きなエネルギーを生み出すという事実と一致しており、物理的に妥当な結果です。計算自体は単純な掛け算ですが、指数計算と有効数字の処理を正確に行うことが求められます。

解答 \(8.2 \times 10^{13}\) J

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 核エネルギーの解放と比例計算:
    • 核心: この問題の核心は、2つのシンプルな概念の組み合わせです。一つは、ウランなどの重い原子核が「核分裂」という現象を起こすと、莫大な「核エネルギー」が解放されるという物理的な事実。もう一つは、全体のエネルギー量は「原子核1個あたりのエネルギー」と「原子核の総数」を掛け合わせるという、ごく基本的な「比例計算」で求められるという算術的な考え方です。
    • 理解のポイント:
      • ミクロとマクロの接続: 原子核1個という非常にミクロな世界のエネルギー放出が、集まることで1kgというマクロなスケールでどれだけ巨大なエネルギーになるかを計算で結びつけています。
      • 質量とエネルギーの等価性: なぜ核分裂でエネルギーが生まれるのか、その根本原理はアインシュタインの有名な関係式 \(E=mc^2\) にあります。核分裂の前後で質量がわずかに減少し(質量欠損)、その失われた質量がエネルギーに変換されます。この問題では、その結果である「1個あたりのエネルギー」がすでに与えられています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 原子数の計算を伴う問題: より実践的な問題では、「1kgあたりの原子数」は与えられず、代わりに「ウランの原子量(またはモル質量)」と「アボガドロ定数」が与えられます。これらを使って、自分で原子数を計算させるステップが加わります。
    • 核融合エネルギーの計算: 重水素と三重水素が融合してヘリウムになるときに発生するエネルギーなど、核融合反応に関する同様の計算問題。原理は同じです。
    • 他のエネルギーとの比較: 「1kgのウランから得られるエネルギーは、同じ質量の石炭を燃やしたときの何倍か」といった、核エネルギーの巨大さを実感させるための比較計算問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「単位量」と「総数」を特定する: 問題文から「1個あたりのエネルギー」と「全体の個数」に相当する数値を正確に抜き出します。
    2. 単位を確認する: エネルギーの単位が [J](ジュール)なのか、原子物理でよく使われる [eV](電子ボルト)や [MeV](メガ電子ボルト)なのかを確認します。必要であれば単位換算を行います。
    3. 有効数字をチェックする: 計算に使うすべての数値の有効数字を確認し、最終的な答えをどの桁数で出すべきかをあらかじめ決めておきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 指数(10のべき乗)の計算ミス:
    • 誤解: \(10^{-11} \times 10^{24}\) の計算で、指数部分を \(-11 – 24\) や \(24 \div 11\) など、間違った法則で計算してしまう。
    • 対策: 指数法則「\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\)」を正確に思い出すことが重要です。負の数が含まれていてもルールは変わりません。この場合は \(-11 + 24 = 13\) となります。
  • 有効数字の処理ミス:
    • 誤解: 電卓で出た答え(8.192)をそのまま書いてしまったり、有効数字の桁数をどちらに合わせるか迷ったりする。
    • 対策: 掛け算・割り算の有効数字は、「計算に用いた数値の中で、最も有効数字の桁数が少ないものに合わせる」のが大原則です。この問題では、\(3.2\)(2桁)と \(2.56\)(3桁)なので、より少ない「2桁」に合わせます。
  • 問題文の読み間違い:
    • 誤解: 問題で与えられているのが「1kgあたりの原子数」なのか、「1molあたりの原子数(アボガドロ定数)」なのかを混同する。
    • 対策: 数値が何を表しているのか、単位や文脈から正確に読み取る癖をつけましょう。この問題では「1kgの\({}_{}^{235}\text{U}\)には…個の原子核が含まれる」と明記されているため、そのまま使えます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 比例計算(総エネルギー = 単位エネルギー × 総数):
    • 選定理由: この問題は、多数の同一な要素(原子核)が集まって構成される系全体の性質(総エネルギー)を求めるものです。このような場合、個々の要素の性質(1個あたりのエネルギー)と、その数(個数)を掛け合わせるという比例計算が、最も直接的で基本的なアプローチとなります。
    • 適用根拠: 「1kgのウランが完全に核分裂する」という現象は、「1kgに含まれる全ての原子核が、それぞれ独立に核分裂する」という事象の総和と見なせます。エネルギーは向きを持たないスカラー量なので、単純な足し算(つまり、単位量×個数という掛け算)で総量を求めることができます。
  • 背景にある質量とエネルギーの等価性 (\(E=mc^2\)):
    • 選定理由: なぜ原子核1個の分裂で \(3.2 \times 10^{-11}\) J ものエネルギーが出るのか、その物理的な根拠を説明する、現代物理学の根幹をなす公式です。
    • 適用根拠: 核分裂では、分裂後の生成物の質量の合計が、分裂前の原子核の質量よりもわずかに小さくなります。この失われた質量(質量欠損 \(\Delta m\))が、光速 \(c\) の2乗という非常に大きな係数を掛けることで、莫大なエネルギー \(E = (\Delta m)c^2\) に変換されます。この問題では、この \(E\) の値がすでに与えられているため、直接この式を使う必要はありませんが、核エネルギーの源泉として理解しておくことが極めて重要です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 数値部分と指数部分を分離して計算する:
    • \( (3.2 \times 10^{-11}) \times (2.56 \times 10^{24}) \) のような計算は、まず数値部分の \(3.2 \times 2.56\) を計算し、次に指数部分の \(10^{-11} \times 10^{24}\) を計算し、最後にそれらを結合する、という手順を踏むと、計算ミスを大幅に減らすことができます。
  • 指数の足し算を丁寧に行う:
    • \(-11 + 24\) のような単純な計算でも、符号ミスがないか慎重に確認しましょう。焦りは禁物です。
  • 有効数字のルールを機械的に適用する:
    • 計算を始める前に、問題文の各数値の横に有効数字の桁数をメモしておくと(例: 3.2 [2桁], 2.56 [3桁])、最後にどの桁数に合わせるべきか一目瞭然になります。
  • 概算による検算:
    • 計算前に、数値を丸めておおよその答えを見積もる癖をつけましょう。例えば、\(3 \times 10^{-11}\) と \(2.5 \times 10^{24}\) で概算すると、\(3 \times 2.5 = 7.5\)、指数は \(10^{-11+24} = 10^{13}\) なので、答えは \(7.5 \times 10^{13}\) 程度になると予測できます。詳細な計算結果 \(8.192 \times 10^{13}\) がこの予測と近いことを確認することで、大きな桁間違いがないことを確かめられます。
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