Step1
① エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「エネルギー資源の分類(枯渇性エネルギーと再生可能エネルギー)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 枯渇性エネルギーの定義:使用すると減少し、埋蔵量に限りがあるエネルギー。
- 再生可能エネルギーの定義:自然界の循環の中で補充され、繰り返し利用できるエネルギー。
- 各エネルギー源(化石燃料、核燃料、自然エネルギー)の由来と性質の理解。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- リストアップされた各エネルギー源(石油、水力、太陽光など)を一つずつ取り上げる。
- そのエネルギー源が、人間の時間スケールで見て「有限(使ったらなくなる)」か、「無限(繰り返し使える)」かを判断する。
- 有限なものを「枯渇性エネルギー」、無限(繰り返し使える)なものを「再生可能エネルギー」として分類する。
思考の道筋とポイント
この問題は、現代社会が直面するエネルギー問題の基礎となる、エネルギー資源の分類に関する知識を問うものです。分類の鍵は、「その資源は、人間の時間スケールで見て、使ったらなくなってしまうか、それとも自然に補充されるか」という視点を持つことです。「枯渇性」は「いつか尽きる」、「再生可能」は「繰り返し使える」とシンプルに考えると分かりやすいです。化石燃料や核燃料は地球が長い年月をかけて蓄えた「貯金」のようなものであり、再生可能エネルギーは太陽や地球の活動によって日々もたらされる「収入」のようなもの、とイメージすると良いでしょう。
この設問における重要なポイント
- 枯渇性エネルギー:
- 定義: 地球に埋蔵されている量に限りがあり、消費すればいずれは枯渇するエネルギー資源。
- 例: 化石燃料(石油、石炭、天然ガス)、核燃料(ウラン)。これらは数百万年〜数億年かけて生成されたり、地球誕生時に存在したりしたもので、現在の消費ペースでは補充が追いつきません。
- 再生可能エネルギー:
- 定義: 太陽光、風、水流など、自然界の現象から得られるエネルギーで、人間が利用しても枯渇する心配がない(または非常に長い時間スケールで持続する)エネルギー。
- 特徴: 発電時に二酸化炭素を排出しない(または少ない)ものが多く、環境負荷が低いとされています。
具体的な解説と立式
この問題は計算式を立てるのではなく、各エネルギー源の概念的な性質を吟味して分類します。
- ① 石油: 古代の生物の死骸が地中で変化してできた化石燃料です。埋蔵量に限りがあるため、枯渇性エネルギーです。
- ② 水力: 雨が降り、川が流れるという水の循環を利用します。この循環の源は太陽エネルギーであり、自然界のサイクルなので、再生可能エネルギーです。
- ③ 太陽光: 太陽が存在する限り、ほぼ無限に地球に降り注ぐエネルギーです。再生可能エネルギーの代表例です。
- ④ ウラン: 原子力発電の燃料となる鉱物資源です。地球に存在する元素であり、採掘できる量には限りがあるため、枯渇性エネルギーです。
- ⑤ 天然ガス: 石油と同様、古代の生物の死骸からできた化石燃料です。埋蔵量に限りがあるため、枯渇性エネルギーです。
- ⑥ 風力: 地球の温度差によって生じる大気の流れ(風)を利用します。これも太陽エネルギーが源の自然現象なので、再生可能エネルギーです。
- ⑦ 石炭: 古代の植物が地中で変化してできた化石燃料です。埋蔵量に限りがあるため、枯渇性エネルギーです。
使用した物理公式
- この問題は用語の知識を問うものであり、使用する物理公式はありません。
この問題には計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた各エネルギー源の性質の吟味そのものが解答プロセスとなります。
- 枯渇性エネルギー: ①石油, ④ウラン, ⑤天然ガス, ⑦石炭
- 再生可能エネルギー: ②水力, ③太陽光, ⑥風力
エネルギー源を「お財布の中のお金」と「お小遣い」に例えてみましょう。
- 枯渇性エネルギー(貯金タイプ): 地中に埋まっている「貯金」のようなものです。石油、石炭、天然ガス、ウランは、掘り出して使ったらその分だけ減ってしまい、貯金が尽きたら終わりです。
- 再生可能エネルギー(お小遣いタイプ): 太陽や風、雨など、自然がくれる「毎日のお小遣い」のようなものです。今日使っても、明日また太陽が昇り、風が吹き、雨が降るので、なくなる心配がありません。水力、太陽光、風力はこれにあたります。
② 発電方式
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「主要な発電方式の原理と特徴の理解」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 各発電方式のエネルギー源(太陽光、化石燃料、水の位置エネルギー、核分裂)。
- エネルギー変換のプロセス(光→電気、熱→運動→電気など)。
- 各発電方式のメリットとデメリット(コスト、環境負荷、資源の枯渇など)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各設問の文章から、発電の原理や使用する資源、問題点などのキーワードを抜き出す。
- キーワードと合致する発電方式を特定する。
問(1)
思考の道筋とポイント
問題文の「ケイ素を主成分とする半導体を用いた装置」という記述が最大のヒントです。ケイ素(シリコン)を材料とする半導体デバイスで発電するものといえば、太陽電池です。太陽電池は太陽の光エネルギーを直接、電気エネルギーに変換します。また、問題点として挙げられている「エネルギー密度が小さい」「エネルギー変換効率が低い」「コストが高い」といった点は、太陽光発電が抱える典型的な課題です。これらの情報から、この発電方式が太陽光発電であると判断できます。
この設問における重要なポイント
- 原理: 光電効果を利用し、半導体でできた太陽電池(ソーラーパネル)に太陽光が当たると、直接電気が発生する。
- エネルギー変換: 光エネルギー → 電気エネルギー
- メリット: 燃料が不要で、発電時に二酸化炭素(\(\text{CO}_2\))を排出しない。比較的メンテナンスが容易。
- デメリット: 発電量が天候や日照時間に大きく左右される。夜間は発電できない。広い設置面積が必要。
具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。問題文のキーワードから発電方式を特定します。
- 「ケイ素を主成分とする半導体」→ 太陽電池
- 太陽電池を用いて発電する方式 → 太陽光発電
使用した物理公式
- なし
なし
「ケイ素」という物質でできた「半導体」の板(ソーラーパネル)に、太陽の光が当たると電気が生まれる、という仕組みです。この仕組みを使った発電方法なので、「太陽光発電」と呼ばれます。
問(2)
思考の道筋とポイント
問題文の「石炭や石油、天然ガスなどを燃やして」という記述が決定的な手がかりです。これらはすべて化石燃料と呼ばれます。次に「水蒸気をつくり、蒸気タービンを回して発電する」というプロセスは、熱エネルギーを運動エネルギーに、そして電気エネルギーに変換する、古典的で主要な発電方式です。問題点として「二酸化炭素の放出」や「エネルギー資源の枯渇」が挙げられていることも、化石燃料を燃やす火力発電の特徴と一致します。
この設問における重要なポイント
- 原理: 化石燃料を燃やして(火の力で)水を沸騰させ、高温・高圧の水蒸気を作る。その水蒸気の力でタービン(羽根車)を回し、連結された発電機で電気を作る。
- エネルギー変換: 化学エネルギー → 熱エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
- メリット: 天候に左右されず、安定的に大量の電力を供給できる。出力の調整が比較的容易。
- デメリット: 二酸化炭素などの温室効果ガスや、大気汚染の原因となる硫黄酸化物・窒素酸化物を排出する。燃料となる化石燃料が枯渇性資源である。
具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。問題文のキーワードから発電方式を特定します。
- 「石炭や石油、天然ガス」→ 化石燃料
- 「燃やして」→ 火の力を使う
- 火の力で発電する方式 → 火力発電
使用した物理公式
- なし
なし
石炭や石油などを燃やして、その火の力でお湯を沸かします。ヤカンがお湯を沸かすと注ぎ口から勢いよく蒸気が出るように、大量の水蒸気を作り出します。その蒸気の勢いで巨大な風車(タービン)を回し、その回転を発電機に伝えて電気を作ります。火の力を使うので「火力発電」です。
問(3)
思考の道筋とポイント
問題文の「水の重力による位置エネルギーを利用して発電する」という記述が核心です。これは、高い場所にある水が低い場所に落ちる力を利用することを意味します。そのために「ダムをつくる」という手段が用いられ、その結果として「自然が破壊される」という問題点が生じます。これらはすべて水力発電の特徴を示しています。
この設問における重要なポイント
- 原理: ダムで川の水をせき止めて高い位置に貯める。その水を低い場所に勢いよく流し、水の力で水車を回す。その水車の回転を発電機に伝えて電気を作る。
- エネルギー変換: 位置エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
- メリット: 発電時に二酸化炭素を排出しない。一度作れば燃料費がかからず、発電コストが安い。出力調整が素早くできる。
- デメリット: ダムの建設に莫大な費用と時間がかかる。建設によって広範囲の自然環境や生態系が破壊される。建設できる場所が地理的に限られる。
具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。問題文のキーワードから発電方式を特定します。
- 「水の重力による位置エネルギー」→ 高い所から落ちる水の力
- 水の力を利用する発電方式 → 水力発電
使用した物理公式
- なし
なし
ダムを使って川の水をせき止め、巨大なプールに水を貯めます。その高い場所にある水を、低い場所に向かって一気に流します。その水の落ちる勢いで水車を勢いよく回し、発電機を動かして電気を作ります。水の力を使うので「水力発電」です。
問(4)
思考の道筋とポイント
問題文の「ウランなどの核分裂反応を制御しながら」という記述が、この発電方式を特定する最も重要な手がかりです。核分裂によって発生する莫大な「熱で水蒸気をつくり、蒸気タービンを回して発電する」というプロセスは、熱源が化石燃料の燃焼から核分裂に置き換わっただけで、火力発電と共通しています。問題点として「安全技術」や「核廃棄物処理」が挙げられていることも、原子力発電に特有の重大な課題です。
この設問における重要なポイント
- 原理: ウランなどの原子核が核分裂する際に発生する莫大な熱エネルギーを利用する。この熱で水を沸騰させて高温・高圧の水蒸気を作り、その力でタービンを回して発電する。
- エネルギー変換: 核エネルギー → 熱エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
- メリット: 非常に少ない燃料で膨大なエネルギーを得られる。発電時に二酸化炭素を排出しない。
- デメリット: 放射線を出す使用済み核燃料(核のゴミ)の処理方法が確立されていない。万が一の事故の際に、広範囲に深刻な放射能汚染を引き起こすリスクがある。
具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。問題文のキーワードから発電方式を特定します。
- 「ウラン」「核分裂反応」→ 原子核のエネルギーを利用
- 原子核のエネルギーを利用する発電方式 → 原子力発電
使用した物理公式
- なし
なし
ウランという物質の原子核を分裂させると、ものすごい熱が発生します。この熱を利用してお湯を沸かし、大量の水蒸気を作ります。あとは火力発電と同じで、その蒸気の勢いでタービンを回して電気を作ります。原子の核の力を使うので「原子力発電」です。
③ 核エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「核分裂と核融合の原理」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 核分裂の定義:重い原子核が中性子を吸収し、複数の軽い原子核に分裂する現象。
- 核融合の定義:軽い原子核同士が高温・高圧下で融合し、より重い原子核になる現象。
- 両反応におけるエネルギー発生の原理(質量欠損と質量・エネルギーの等価性)。
- 核分裂の引き金となる粒子(中性子)の役割。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文の前半部分が、ウランという重い原子核が分裂する現象について述べていることを読み取る。
- 問題文の後半部分が、水素の同位体という軽い原子核が合体する現象について述べていることを読み取る。
- それぞれの現象に対応する物理用語と、核分裂のきっかけとなる粒子名を特定する。
思考の道筋とポイント
この問題は、原子核からエネルギーを取り出す2つの主要な方法、「核分裂」と「核融合」の基本的な概念を理解しているかを問うものです。
前半は「ウラン235」という重い原子核が「2つに分かれ」る話です。これは、大きなものが分裂する現象なので「核分裂」だと推測できます。そして、この分裂のきっかけ(引き金)となる粒子が何かを考えます。
後半は「重水素と三重水素」という軽い原子核が「衝突してヘリウムの原子核ができる」話です。これは、軽いもの同士が合体(融合)する現象なので「核融合」だとわかります。
どちらの現象も、反応の前後で質量がわずかに減り(質量欠損)、その分の質量がアインシュタインの \(E=mc^2\) の式に従って莫大なエネルギーに変わる、という共通点があります。
この設問における重要なポイント
- ① 中性子: ウラン235の核分裂を引き起こす「引き金」となる粒子です。中性子は電荷を持たないため、プラスの電気を帯びた原子核に反発されることなく近づき、吸収されやすいという特徴があります。
- ② 核分裂: 1つの重い原子核が、中性子などを吸収することで不安定になり、2つ(またはそれ以上)のより軽い原子核に分裂する現象です。このとき、莫大なエネルギーと数個の中性子が新たに放出されます。この放出された中性子が次の核分裂を引き起こすことで「連鎖反応」が起こり、継続的にエネルギーを取り出すことが可能になります(原子力発電の原理)。
- ③ 核融合: 2つ(またはそれ以上)の軽い原子核が、超高温・超高圧の状態で衝突し、合体してより重い原子核を形成する現象です。太陽の中心部で常に起きている反応がこれにあたります。核分裂よりも単位質量あたりの放出エネルギーが大きく、放射性廃棄物の問題も少ない(または扱いやすい)ため、未来のクリーンなエネルギー源として世界中で研究が進められています。
具体的な解説と立式
この問題は用語の知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。文脈から適切な語句を判断します。
- 空欄①、②: 「ウラン235Uの原子核」という重い原子核が、「2つに分かれ」る現象は「核分裂」です。この核分裂の引き金として、原子核に吸収されやすい粒子は「中性子」です。電荷を持たないため、原子核に弾かれずに衝突できるからです。したがって、①は「中性子」、②は「核分裂」となります。
- 空欄③: 「重水素と三重水素の原子核が衝突してヘリウムの原子核ができる」という記述は、軽い原子核同士が合体して重い原子核になる反応です。これは「核融合」の定義そのものです。したがって、③は「核融合」となります。
使用した物理公式
- この問題は用語の知識を問うものであり、直接使用する物理公式はありません。ただし、エネルギー発生の背景には、質量とエネルギーの等価性の式 \(E=mc^2\) があります。
この問題に計算過程はありません。
- 核分裂(①、②): 大きくて不安定な「ウラン235」という積み木タワーを想像してください。ここに「中性子」というビー玉をそっとぶつけると、タワーはバランスを崩してガラガラと2つの小さな山に崩れます。この崩れる現象が「核分裂」で、そのときに大きな音(エネルギー)が出ます。
- 核融合(③): 「重水素」と「三重水素」という2つの小さな粘土の塊を、ものすごい勢いでぶつけ合わせます。すると、2つがくっついて「ヘリウム」という少し大きな1つの塊になります。この合体する現象が「核融合」で、このときも大きなエネルギーが発生します。太陽が燃えているのは、この核融合のおかげです。
④ 放射線の単位
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「放射線に関連する物理量とその単位」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 放射能の定義と、その発見の歴史的背景。
- 放射能の強さを表す単位「ベクレル(Bq)」の定義。
- 放射線が物質に与えるエネルギー量を表す「吸収線量」とその単位「グレイ(Gy)」の定義。
- 放射線が人体に与える生物学的影響を考慮した「等価線量」とその単位「シーベルト(Sv)」の定義。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文の各空欄の前後の文脈を注意深く読み解く。
- 「放射線を出す能力」「吸収したエネルギー」「人体への影響」といったキーワードを手がかりに、それぞれに対応する物理用語や単位を特定する。
思考の道筋とポイント
放射線に関する用語は、「放射能」「放射線」「吸収線量」「等価線量」など似たような言葉が多く、混同しやすいため、それぞれの意味を正確に区別して理解することが重要です。この問題は、放射線の発見から、その性質や影響を測る単位へと、話が段階的に進んでいく構成になっています。
- まず、放射性物質が持つ「能力」について問われ(①)、
- 次に、その能力の「強さ」を測る単位が問われます(②)。
- そして、放出された放射線が物質に与える「物理的なエネルギー量」の単位(③)、
- 最後に、そのエネルギーが人体に与える「生物学的な影響」を評価する単位(④)へと展開します。
この文脈の流れを追うことで、各空欄にどの概念が入るかを論理的に判断することができます。
この設問における重要なポイント
- ① 放射能: 放射性物質が放射線を放出する「能力」や「性質」そのものを指す言葉です。ベクレルはウラン化合物がこの能力を持つことを発見しました。
- ② ベクレル (Bq): 放射能の強さを表す単位です。定義は「1秒間に崩壊する原子核の数」であり、放射性物質がどれだけの勢いで放射線を出しているかを示します。
- ③ グレイ (Gy): 放射線が物質に当たった際に、その物質がどれだけのエネルギーを吸収したかを表す「吸収線量」の単位です。定義は「物質1kgあたりに1ジュールのエネルギー吸収」です。これは純粋に物理的なエネルギー量を示します。
- ④ シーベルト (Sv): 人体が放射線を受けた場合の影響の大きさを表す「等価線量」や「実効線量」の単位です。同じエネルギー量(同じグレイ)を吸収しても、放射線の種類(α線、β線、γ線など)や、放射線を受けた体の部位によって、人体への生物学的な影響は異なります。その違いを補正するための係数をかけたものがシーベルトです。
具体的な解説と立式
この問題は用語の知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。文脈から適切な語句を判断します。
- 空欄①: 「ウラン化合物が( ① )をもつことを発見した」という文脈から、ウランが持つ「放射線を出す能力」そのものを指す言葉が入ります。これは「放射能」です。
- 空欄②: 「放射性物質の①の強さは, 1sあたりに崩壊する原子核の数で表し、( ② )という単位を用いる」とあります。これは放射能の単位の定義であり、「ベクレル(Bq)」が該当します。
- 空欄③: 「物質が放射線を受けた影響の大きさは, 1kgあたりのエネルギー吸収量で表し、( ③ )という単位を用いる」とあります。これは吸収線量の単位の定義であり、「グレイ(Gy)」が該当します。
- 空欄④: 「これに放射線による人体への影響を考慮した値を等価線量とよび、( ④ )という単位を用いる」とあります。人体への影響を評価する単位は「シーベルト(Sv)」です。
使用した物理公式
- この問題は用語の知識を問うものであり、直接使用する物理公式はありません。ただし、各単位の定義は以下の通りです。
- 1 Bq = 1 [回/s] (1秒あたりの崩壊数)
- 1 Gy = 1 [J/kg] (1kgあたりの吸収エネルギー)
- 等価線量 [Sv] = 吸収線量 [Gy] × 放射線荷重係数
この問題に計算過程はありません。
放射線の単位を、火の玉を投げるピッチャーに例えてみましょう。
- ① 放射能: ピッチャーが「火の玉を投げる能力」そのものです。
- ② ベクレル(Bq): ピッチャーの能力の強さを表します。「1秒間に何個の火の玉を投げるか」という回数がベクレルです。
- ③ グレイ(Gy): 投げられた火の玉が、キャッチャーミットに当たったときの衝撃の強さです。「ミットがどれだけのエネルギーを受け取ったか」という物理的な量がグレイです。
- ④ シーベルト(Sv): 火の玉が、もし人に当たってしまった場合の「ケガのひどさ」を表します。同じ強さの火の玉でも、腕に当たるのと頭に当たるのではケガの度合いが違いますし、小さな火の玉か大きな火の玉かでも違います。そういった「生物学的な影響」を全部ひっくるめて評価したのがシーベルトです。
例題
例題104 エネルギーの形態の移り変わり
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「火力発電におけるエネルギー変換の過程」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- エネルギー保存の法則とエネルギーの形態変化: エネルギーは消滅せず、様々な形態に変化するだけという大原則。
- 化学エネルギー: 物質の化学結合に蓄えられているエネルギー。燃料が持つエネルギーの源です。
- 熱エネルギー: 物質の温度や状態変化に関連するエネルギー。燃焼や沸騰で主役となります。
- 力学的エネルギー: 物体の運動(回転や並進)や位置に関連するエネルギー。タービンの回転がこれにあたります。
- 発電の原理: 他の形態のエネルギー(特に力学的エネルギー)を電気エネルギーに変換する仕組み。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 火力発電のプロセスを「燃料の燃焼」「タービンの回転」「発電」の3つのステップに分解します。
- 各ステップで、どの形態のエネルギーがどの形態のエネルギーに変換されているかを、選択肢と照らし合わせながら考えます。
思考の道筋とポイント
この問題は、火力発電所におけるエネルギー変換の連鎖を正しく理解しているかを問う知識問題です。重油を燃やしてから電気が作られるまでの流れを、物理的なエネルギーの観点から一つずつ追っていくことが解答への道筋となります。全体の流れは「化学エネルギー → 熱エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギー」という変換です。
この設問における重要なポイント
- 化石燃料(重油、石炭、天然ガスなど)は、物質内の原子の結合エネルギーとして「化学エネルギー」を蓄えている。
- 燃焼とは、この化学エネルギーを「熱エネルギー」と光エネルギーに変換する急激な酸化反応である。
- タービンは、流体(この場合は水蒸気)が持つ熱エネルギーを利用して羽根車を回転させる装置。回転運動のエネルギーは「力学的エネルギー」に分類される。
- 発電機は、電磁誘導の原理を利用し、タービンの回転という「力学的エネルギー」を「電気エネルギー」に変換する装置である。
具体的な解説と立式
この問題は物理概念の理解を問うものであり、直接的な立式はありません。エネルギー変換の各段階を順に解説します。
1. 空欄アの特定
問題文には「重油の【ア】が燃焼によって熱に変換され」と記述されています。
重油は化石燃料の一種であり、その内部には炭化水素などの分子が化学結合によって結びついています。このように、物質を構成する原子間の化学結合によって蓄えられているエネルギーを「化学エネルギー」と呼びます。
燃焼という化学反応は、この化学エネルギーを解放し、主に熱エネルギー(および光エネルギー)に変換するプロセスです。
したがって、空欄【ア】に入るのは「⑥ 化学エネルギー」です。
2. 空欄イの特定
問題文は「そのとき生じる水蒸気でタービンを回して、発電機を運転している」「さらにタービンの【イ】となり、発電機によって電気エネルギーに変換される」と続いています。
前の段階で得られた熱エネルギーは、水を沸騰させて高温・高圧の水蒸気を作るために使われます。この水蒸気が持つエネルギー(内部エネルギー)が、タービンの羽根車(動翼列)に吹き付けられると、タービンは高速で回転します。
物体の運動(並進運動や回転運動)が持つエネルギーは「力学的エネルギー」です。タービンの回転は、まさに力学的エネルギーそのものです。
そして、このタービンの回転運動(力学的エネルギー)が発電機に伝えられ、電磁誘導の原理によって最終的に電気エネルギーが生成されます。
したがって、空欄【イ】に入るのは「③ 力学的エネルギー」です。
使用した物理公式
この問題では、特定の計算式は使用しません。エネルギー変換の概念的な理解が中心となります。
火力発電におけるエネルギー変換の連鎖:
化学エネルギー → 熱エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギー
この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。
火力発電の仕組みを身近なものに例えてみましょう。
まず、空欄【ア】についてです。キャンプで薪を燃やして暖をとるのを想像してください。薪が燃える前に持っている「燃える力の源」が「化学エネルギー」です。重油も同じで、燃えることで熱を出すためのエネルギー源として化学エネルギーを持っています。
次に、空欄【イ】についてです。やかんのお湯が沸騰すると、注ぎ口から勢いよく蒸気が出てきます。この蒸気の前に風車を置くと、クルクルと回りますね。火力発電では、この風車の役割を「タービン」が担っています。水蒸気の力でタービンが回っている状態、この「運動しているエネルギー」のことを「力学的エネルギー」と呼びます。この回転の力を利用して電気を作っているのです。
以上の考察から、火力発電所では、まず重油の持つ「化学エネルギー」が燃焼によって「熱エネルギー」に変換されます。次に、その熱エネルギーで発生した水蒸気がタービンを回転させ、タービンの「力学的エネルギー」に変換されます。最後に、発電機がこの力学的エネルギーを「電気エネルギー」に変換します。
したがって、空欄【ア】には⑥の化学エネルギー、空欄【イ】には③の力学的エネルギーが入るのが最も適切です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- エネルギー保存の法則と形態変化:
- 核心: エネルギーは無から生じたり、消滅したりすることはなく、ただその形態を変えるだけであるという「エネルギー保存の法則」が、この問題の根底にある最も重要な原理です。火力発電は、この法則に従ってエネルギーが次々と形を変えていく典型的な例です。
- 理解のポイント:
- 化学エネルギー: 燃料(重油)が分子の結合として内部に蓄えているエネルギー。
- 熱エネルギー: 燃焼によって解放され、物質(水)の温度を上げ、状態を変化させる(蒸気にする)エネルギー。
- 力学的エネルギー: 高温高圧の水蒸気がタービンを回転させる、物体の「運動」のエネルギー。
- 電気エネルギー: 発電機がタービンの回転を利用して最終的に作り出すエネルギー。
- これら一連の変換プロセス全体を理解することが核心です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 他の発電方式との比較: 水力発電(位置エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギー)、原子力発電(核エネルギー → 熱エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギー)、太陽光発電(光エネルギー → 電気エネルギー)など、他の発電方法におけるエネルギー変換の過程を問う問題。
- エネルギー変換効率の計算: ある量の化学エネルギーのうち、何%が最終的に電気エネルギーに変換されたか、といった効率計算問題。各段階で失われるエネルギー(熱損失など)も考慮する必要があります。
- 身の回りの機器におけるエネルギー変換: 自動車のエンジン(化学→熱→力学)、電球(電気→光・熱)、スマートフォンのバッテリー(化学⇔電気)など、日常生活の中のエネルギー変換を問う問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 変換の主体と現象を特定する: まず「何が(例:重油)」「何をして(例:燃焼して)」「何に変わるのか」という、文章中の主語と動詞に着目し、エネルギー変換のステップを把握します。
- キーワードに注目する: 「燃焼」「沸騰」「回転」「発電」といったキーワードが、それぞれどのエネルギー形態の変化に対応するのかを考えます。
- エネルギーの流れを図式化する: 頭の中で「A → B → C → D」のようなエネルギー変換のフローチャートを描き、空欄がどの段階に当たるのかを特定します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 熱エネルギーと力学的エネルギーの混同:
- 誤解: 水蒸気がタービンを回す過程で、「水蒸気が持つエネルギー」を力学的エネルギーと勘違いしたり、逆に「タービンの回転」を熱エネルギーと勘違いしたりする。
- 対策: 「熱エネルギー」は分子レベルのランダムな運動エネルギーの総和であり、温度や状態変化と関連が深いと理解する。一方、「力学的エネルギー」は物体全体としてのまとまった運動(回転や並進)のエネルギーであると区別する。「タービンが回る」というマクロな運動は力学的エネルギーであると明確に結びつけましょう。
- 化学エネルギーの概念の曖昧さ:
- 誤解: 「燃焼」という現象から、最初から「熱エネルギー」が存在したかのように考えてしまい、選択肢の「熱」を選んでしまう。
- 対策: 燃焼する「前」の燃料自体が、エネルギーをポテンシャルとして蓄えていることを意識する。その蓄えられたエネルギーの形態が「化学エネルギー」であると正確に覚えることが重要です。
- 他の発電方式との混同:
- 誤解: 問題文をよく読まずに「発電所」という言葉から、原子力発電を連想してしまい、空欄アに「核エネルギー」を選んでしまう。
- 対策: 必ず「火力発電」「重油の燃焼」といった問題文の前提条件を確認する癖をつける。燃料が何かによって、出発点となるエネルギーの形態が異なることを理解しておく。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- エネルギー保存の法則(概念的適用):
- 選定理由: この問題は計算を伴いませんが、その背景には物理学の大原則である「エネルギー保存の法則」が存在します。なぜエネルギーが次々と形を変えられるのか、その論理的な根拠を与えるのがこの法則です。
- 適用根拠: 火力発電の一連のプロセスは、エネルギーの形態が「化学 → 熱 → 力学 → 電気」と移り変わる連鎖反応です。このとき、ある形態のエネルギーが減少した分だけ、別の形態のエネルギーが増加する(ただし、一部は意図しない熱として散逸する)という関係が成り立っています。この「エネルギーの総量は変わらず、形態だけが変わる」という考え方が、空欄を埋める上での思考の土台となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 用語の定義を正確に覚える:
- この問題は計算がない分、用語の正確な理解が全てです。「化学エネルギー」「熱エネルギー」「力学的エネルギー」「核エネルギー」など、各エネルギーが「どのような状態」や「どのような現象」に対応するのかを、自分の言葉で説明できるように整理しておきましょう。
- エネルギー変換のフローチャート化:
- 様々な現象について、「(始点エネルギー) → (変換プロセス) → (終点エネルギー)」という形のフローチャートを自分で描く練習をする。例えば、火力発電なら「化学E → (燃焼) → 熱E → (蒸気・タービン) → 力学E → (発電機) → 電気E」のように図式化すると、知識が整理され、記憶に定着しやすくなります。
- キーワードとエネルギー形態のセット暗記:
- 「燃焼」→ 化学エネルギー
- 「回転・運動」→ 力学的エネルギー
- 「温度・蒸気」→ 熱エネルギー
- 「核分裂」→ 核エネルギー
- 「光る・電磁波」→ 光エネルギー
- このように、現象を表すキーワードとエネルギーの形態をセットで覚えておくと、素早く正確に解答できるようになります。
例題105 太陽のエネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「太陽定数を用いた太陽の放射エネルギーの計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- エネルギーの放射: 太陽のような点状のエネルギー源から、エネルギーが3次元空間に球状に広がっていくというモデルを理解すること。
- 球の表面積: 幾何学的な公式 \(S = 4\pi r^2\) を正しく適用できること。
- 単位の換算: 問題で与えられている単位(km)を、計算に必要なSI基本単位(m)に正確に変換すること。
- 有効数字: 問題文で与えられた数値の有効数字を考慮し、最終的な答えを適切な桁数で処理すること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 太陽が放出した全エネルギーが、太陽と地球の距離を半径とする巨大な仮想の球の表面を通過すると考えます。
- まず、この仮想的な球の全表面積を計算します。
- 次に、与えられた「単位面積あたりのエネルギー」に、計算した「全表面積」を掛け合わせることで、太陽が放出した全エネルギーを算出します。
思考の道筋とポイント
この問題は、太陽が放出する莫大なエネルギーを、地球で観測されるごく一部のデータから推定する計算問題です。太陽から放出されたエネルギーが、宇宙空間に均一に、球状に広がっていくという物理モデルをイメージすることが最も重要です。
地球の位置で観測される「単位面積あたりのエネルギー」は、太陽を中心とし地球の軌道を含む巨大な球の表面 \(1 \text{m}^2\) を1秒間に通過するエネルギー量を意味します。したがって、太陽が1秒間に放出する総エネルギーは、この巨大な球の「全表面積」に「単位面積あたりのエネルギー」を掛けることで求めることができます。これは、「商品の単価 × 全体の個数 = 総額」という計算と同じ考え方です。
この設問における重要なポイント
- 太陽を点源とみなし、エネルギーは全方位に等しく放射されると考える。
- 太陽から距離 \(r\) の点でのエネルギーの強さ(単位面積あたりのエネルギー)は、球の表面積 \(4\pi r^2\) に反比例する。
- 計算を実行する前に、すべての物理量の単位を国際単位系(SI単位)に統一する。特に、距離の単位 km を m に変換することが不可欠。
具体的な解説と立式
太陽が毎秒放出する全エネルギーを \(E_{\text{全}}\) [J] とします。
問題文より、地球の位置において、太陽光に垂直な単位面積(\(1 \text{m}^2\))あたりに毎秒受け取るエネルギー \(I\) は、
$$ I = 1.4 \times 10^3 \, [\text{J/(s}\cdot\text{m}^2)] $$
です。
太陽から放出されたエネルギーは、太陽と地球との距離 \(r\) を半径とする巨大な球の表面全体に広がります。この球の表面積 \(S\) は、
$$ S = 4\pi r^2 \quad \cdots ① $$
太陽が毎秒放出する全エネルギー \(E_{\text{全}}\) は、この球の全表面積 \(S\) を通過するエネルギーの総量に等しいので、
$$ E_{\text{全}} = I \times S \quad \cdots ② $$
となります。
計算の前に、距離 \(r\) の単位を km から m に変換します。
$$ r = 1.5 \times 10^8 \, \text{km} = 1.5 \times 10^8 \times 10^3 \, \text{m} = 1.5 \times 10^{11} \, \text{m} $$
これらの式を用いて \(E_{\text{全}}\) を計算します。
使用した物理公式
- 球の表面積: \(S = 4\pi r^2\)
- 点源からの放射エネルギー: \(E_{\text{全}} = I \times S\) (\(I\) は距離 \(r\) における単位面積あたりのエネルギー)
式①、②に、与えられた数値を代入して、太陽が毎秒放出する全エネルギー \(E_{\text{全}}\) を計算します。円周率 \(\pi\) は \(3.14\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= I \times 4\pi r^2 \\[2.0ex]&= (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3.14 \times (1.5 \times 10^{11})^2 \\[2.0ex]&= (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3.14 \times (1.5^2 \times (10^{11})^2) \\[2.0ex]&= (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3.14 \times (2.25 \times 10^{22}) \\[2.0ex]&= (1.4 \times 4 \times 3.14 \times 2.25) \times (10^3 \times 10^{22}) \\[2.0ex]&= 39.564 \times 10^{25} \\[2.0ex]&= 3.9564 \times 10^{26}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている数値「\(1.4 \times 10^3\)」「\(1.5 \times 10^8\)」の有効数字は2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ E_{\text{全}} \approx 4.0 \times 10^{26} \, [\text{J}] $$
太陽から出た光は、シャボン玉がどんどん大きく膨らんでいくように、宇宙空間の四方八方に広がっていきます。
地球がある場所では、太陽からの距離(\(1.5 \times 10^8\) km)を半径とする、とてつもなく巨大なシャボン玉の表面を光が通過しているとイメージしてください。
問題で与えられている「\(1.4 \times 10^3\) J」という値は、その巨大なシャボン玉の表面の、たった \(1 \text{m}^2\) という小さな面積を通る光のエネルギーです。
私たちが知りたいのは、太陽が出した「全部」の光のエネルギーなので、この巨大なシャボン玉の「全表面積」を計算し、それに \(1 \text{m}^2\) あたりのエネルギーを掛けてあげればよい、というわけです。
計算で一番大切なのは、距離の単位が「km」で与えられているので、面積の単位「m²」と合わせるために、忘れずに「m」に直すことです。
計算の結果、太陽が毎秒放出しているエネルギーは、有効数字2桁で \(4.0 \times 10^{26}\) J と求められました。
この計算のポイントは、(1)エネルギーが球状に広がるというモデルを立てること、(2)球の表面積の公式を適用すること、(3)距離の単位をkmからmへ正しく換算すること、の3点です。計算過程と結果は妥当であると考えられます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- エネルギーの放射モデル(逆2乗の法則):
- 核心: 太陽のような点状のエネルギー源から放出されたエネルギーは、3次元空間に球状に広がっていくと考えることが最も重要です。その結果、エネルギーの強さ(単位面積あたりに受け取るエネルギー)は、エネルギー源からの距離の2乗に反比例して弱まっていきます。
- 理解のポイント:
- 全放射エネルギー: 太陽が1秒間に放出するエネルギーの総量。これはどの距離でも一定です。
- エネルギーの密度: この一定量のエネルギーが、距離 \(r\) の地点では表面積 \(4\pi r^2\) の巨大な球の表面に薄く広がります。距離が2倍になると、表面積は4倍になるため、エネルギーの密度(強さ)は1/4になります。
- 立式: したがって、「太陽が放出した全エネルギー」=「地球の位置でのエネルギーの強さ(単位面積あたりのエネルギー)」×「地球軌道を含む球の全表面積」という関係が成り立ちます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 逆の計算問題: 太陽が放出する全エネルギー量が与えられていて、「火星の位置での単位面積あたりのエネルギーはいくらか?」といった、特定の距離でのエネルギーの強さを求める問題。
- 音波・電波の強さ: 点音源(スピーカー)やアンテナから出る音や電波の強さも、距離の2乗に反比例して弱まります。原理は全く同じです。
- 光度と照度の関係: 点光源の明るさ(光度)から、ある距離の点の照度(明るさ)を求める問題も、この逆2乗の法則で解くことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- エネルギー源の形状を確認: 「点源」「太陽」「星」など、エネルギーが全方位に広がると考えられる源かを確認します。
- 「全体」と「部分」の関係を把握: 問題が「源が放出した全エネルギー」を問うているのか、それとも「ある地点での単位面積あたりのエネルギー」を問うているのかを明確にします。
- 単位の統一を最優先: 計算を始める前に、全ての物理量の単位をSI単位系(m, kg, s)に揃えます。特に距離の単位「km」を「m」に変換するのを忘れないようにします。
- 有効数字の確認: 問題文で与えられた数値の有効数字をチェックし、最終的な答えをその桁数に合わせることを念頭に置きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 単位換算のミス:
- 誤解: 距離 \(r = 1.5 \times 10^8 \, \text{km}\) を、うっかりそのまま計算式に入れてしまう。
- 対策: 計算を始める前に、必ず全ての物理量の単位を確認する習慣をつけます。「km」と「m²」のように単位が混在している場合は、計算前に必ずSI単位(この場合はm)に統一します。\(1 \, \text{km} = 10^3 \, \text{m}\) の関係を正確に使いましょう。
- 面積の公式の間違い:
- 誤解: 球の「表面積」を求めるべきところを、円の面積の公式 \( \pi r^2 \) や、球の体積の公式 \( \frac{4}{3}\pi r^3 \) と混同してしまう。
- 対策: 「エネルギーは”面”を通過する」とイメージし、必要なのは「表面積」であると理解します。「球の表面積は \(4\pi r^2\)」と正確に暗記しておくことが重要です。
- 指数(べき乗)の計算ミス:
- 誤解: \( (1.5 \times 10^{11})^2 \) の計算で、\(1.5\) は2乗するが、\(10^{11}\) の方を2乗し忘れる、または \(10^{11 \times 2}\) ではなく \(10^{11+2}\) などと間違える。
- 対策: 指数法則 \( (a \times 10^b)^c = a^c \times 10^{b \times c} \) を正確に適用することを意識します。焦らず、一つ一つの項を丁寧に計算する癖をつけましょう。
- 有効数字の処理忘れ:
- 誤解: 計算機で出た詳細な値 \(3.9564 \times 10^{26}\) をそのまま解答してしまう。
- 対策: 問題文で使われている数値(1.4と1.5)が有効数字2桁であることから、最終的な答えも有効数字2桁に丸める必要があることを常に意識します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 球の表面積の公式 (\(S = 4\pi r^2\)):
- 選定理由: 太陽から放出されたエネルギーは、特定の方向にだけ進むビームではなく、3次元空間の全方位に均等に広がっていくとモデル化するのが最も自然です。ある瞬間にエネルギーが到達している点の集まりは、太陽を中心とする「球面」を形成します。その球面全体の面積を求めるために、この公式が必要不可欠となります。
- 適用根拠: 問題は「太陽が放出した全エネルギー」を問うています。地球で観測されるエネルギーは、その全エネルギーが半径 \(r\) の巨大な球面上に広がった後の一部に過ぎません。したがって、その球面全体の面積を計算し、単位面積あたりのエネルギーを掛け合わせることで、元の総量を復元するという論理に基づいています。
- 総量 = 単位量 × 全体 (\(E_{\text{全}} = I \times S\)):
- 選定理由: これは物理の専門的な公式というより、日常的にも使われる基本的な比例計算の考え方です。「1個あたりの値段」に「個数」を掛けて「総額」を出すのと同じ論理構造です。
- 適用根拠: \(I\) は「\(1 \text{m}^2\) あたりのエネルギー」、\(S\) は「全球面の面積 (\(\text{m}^2\))」です。この2つを掛け合わせることで、単位が \(\text{[J/(s}\cdot\text{m}^2)] \times [\text{m}^2] = \text{[J/s]}\) となり、全球面を毎秒通過する総エネルギーが求められます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 数値部分と指数部分の分離:
- 大きな桁数が含まれる計算では、計算を「数値部分(仮数部)」と「10のべき乗(指数部)」に分けて行うと、ミスが大幅に減ります。
- 例: \( (1.4 \times 4 \times 3.14 \times 2.25) \times (10^3 \times 10^{22}) \) のように、まず数値部分だけを計算し、次に指数部分だけを計算し、最後にそれらを結合します。
- 単位換算を先に済ませる:
- 計算を始める前に、問題で与えられた全ての数値をSI基本単位に変換したリストを作成します。
- \(I = 1.4 \times 10^3 \, \text{J/(s}\cdot\text{m}^2)\)
- \(r = 1.5 \times 10^8 \, \text{km} \rightarrow 1.5 \times 10^{11} \, \text{m}\)
- このように準備してから式に代入することで、計算の途中で単位を間違えるリスクを防ぎます。
- 概算による検算:
- 複雑な計算を実行する前に、まずはおおよその桁数を見積もる(概算する)癖をつけましょう。
- \(r \approx 10^{11}\) なので \(r^2 \approx 10^{22}\)。\(I \approx 10^3\)。\(4\pi \approx 12\)。
- \(E_{\text{全}} \approx 10^3 \times 12 \times (10^{11})^2 = 12 \times 10^{25} = 1.2 \times 10^{26}\)。
- この概算結果と、詳細な計算結果 (\(3.9564 \times 10^{26}\)) の桁数が一致していることを確認します。これにより、特に指数の桁を間違えるといった大きなミスを効果的に発見できます。
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