「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 32】Step 2 (457~464)

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Step 2

457 原子核の崩壊

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「半減期と質量保存則の応用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. α崩壊の法則: 原子核がα粒子(\({}_{2}^{4}\text{He}\))を放出する現象で、反応の前後で質量数と原子番号が保存されます。
  2. 半減期の公式: 放射性原子の数\(N\)は、初めの数\(N_0\)、半減期\(T\)、経過時間\(t\)を用いて、\(N = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) と表されます。この関係は、原子の個数だけでなく、その質量についても同様に成り立ちます。
  3. 質量保存の考え方: 崩壊によって減少したポロニウムの質量が、生成されたヘリウムと新しい原子核(鉛)の質量に変わります。ただし、質量欠損によるエネルギー放出は非常に小さいため、質量の計算では無視できるものとします。
  4. 物質量と質量の関係: 物質の質量は、その物質を構成する原子の物質量(モル数)とモル質量に比例します。同じ物質量であれば、質量は質量数に比例すると近似できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、α崩壊の定義に従って、質量数と原子番号の変化を記述します。
  2. (2)では、半減期の公式を質量に適用し、与えられた初期質量、半減期、経過時間から残存質量を計算します。
  3. (3)では、まず(2)の結果から崩壊したポロニウムの質量を計算します。次に、崩壊したポロニウムと生成されたヘリウムの質量の比が、それぞれの質量数の比に等しいことを利用して、生成されたヘリウムの質量を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
α崩壊とは、原子核がα粒子(ヘリウム原子核 \({}_{2}^{4}\text{He}\))を放出する現象です。このとき、核反応の前後で質量数と原子番号の和はそれぞれ保存されます。このルールに従って、崩壊後に残った新しい原子核の質量数と原子番号を求めます。
この設問における重要なポイント

  • α粒子は、質量数4、原子番号2のヘリウム原子核である。
  • 質量数保存則と原子番号保存則が成り立つ。

具体的な解説と立式
元の原子核はポロニウム\({}_{84}^{210}\text{Po}\)です。α崩壊によって生じる新しい原子核の質量数を\(A’\)、原子番号を\(Z’\)とします。
α崩壊の反応式は次のように書けます。
$$ {}_{84}^{210}\text{Po} \rightarrow {}_{Z’}^{A’}\text{Y} + {}_{2}^{4}\text{He} $$
質量数保存則より、
$$ 210 = A’ + 4 $$
原子番号保存則より、
$$ 84 = Z’ + 2 $$

使用した物理公式

  • 質量数保存則
  • 原子番号保存則
計算過程

$$ A’ = 210 – 4 = 206 $$
$$ Z’ = 84 – 2 = 82 $$
原子番号82の元素は鉛(Pb)です。

計算方法の平易な説明

α崩壊は、原子核から「質量数が4で原子番号が2の粒子」が飛び出す現象です。したがって、残された原子核は、元のポロニウムに比べて質量数が4、原子番号が2だけ減少します。

結論と吟味

生じる原子の質量数は206、原子番号は82です。

解答 (1) 質量数: 206, 原子番号: 82

問(2)

思考の道筋とポイント
放射性物質の量は、半減期ごとに半分になります。この関係は、原子の個数だけでなく、その質量についても同様に成り立ちます。半減期の公式を質量に適用し、与えられた値を代入して計算します。
この設問における重要なポイント

  • 半減期の公式は質量にも適用できる: \(M = M_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
  • 経過時間\(t=69\)日、半減期\(T=138\)日なので、指数部分は \(\displaystyle\frac{69}{138} = \displaystyle\frac{1}{2}\) となる。

具体的な解説と立式
初めのポロニウムの質量を\(M_0\)、半減期を\(T\)、経過時間を\(t\)とします。
\(t\)日後に残っているポロニウムの質量を\(M\)とすると、次の式が成り立ちます。
$$ M = M_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}} $$
問題文より、\(M_0 = 2.0\) g, \(t = 69\) 日, \(T = 138\) 日です。これらの値を代入します。
$$ M = 2.0 \times \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{69}{138}} $$

使用した物理公式

  • 放射性崩壊の法則(質量バージョン): \(M = M_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
M &= 2.0 \times \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}} \\[2.0ex]&= 2.0 \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]&= \frac{2.0}{1.41} \\[2.0ex]&\approx 1.418\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(1.4\) g となります。

計算方法の平易な説明

半減期は138日です。問題で問われているのは69日後なので、ちょうど半減期の半分(\(1/2\)回分)の時間が経過したことになります。量が半分になるまでの半分なので、少しややこしいですが、公式 \(M = M_0 (\frac{1}{2})^{t/T}\) に \(t=69, T=138\) を入れると、指数が \(1/2\) になります。\((\frac{1}{2})^{1/2}\) は \(\frac{1}{\sqrt{2}}\) のことなので、初めの質量2.0gを\(\sqrt{2} \approx 1.41\)で割れば、残っている質量が求まります。

結論と吟味

69日後に残っているポロニウムは \(1.4\) g です。半減期(138日)が経過すると1.0gになるはずなので、その半分の期間である69日後にはそれより多い1.4gが残っているという結果は、物理的に妥当です。

解答 (2) 1.4 g

問(3)

思考の道筋とポイント
(2)の結果から、崩壊したポロニウムの質量をまず計算します。次に、質量保存の考え方を用います。崩壊したポロニウム(\({}^{210}\text{Po}\))は、新しい原子核である鉛(\({}^{206}\text{Pb}\))とヘリウム(\({}^{4}\text{He}\))に変わります。このとき、崩壊したポロニウムの質量と、生成されたヘリウムの質量の比は、それぞれの質量数の比にほぼ等しいと考えることができます。この比例関係を用いて、発生したヘリウムの質量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 崩壊したポロニウムの質量 = 初めの質量 – 残っている質量
  • 崩壊したポロニウムの質量と、生成されたヘリウムの質量の比は、それぞれの質量数の比に等しいと近似できる。
  • (\(\text{崩壊したPoの質量}\)) : (\(\text{生成されたHeの質量}\)) \(\approx\) (\(\text{Poの質量数}\)) : (\(\text{Heの質量数}\))

具体的な解説と立式
まず、69日間で崩壊したポロニウムの質量 \(\Delta M_{\text{Po}}\) を計算します。
$$ \Delta M_{\text{Po}} = (\text{初めの質量}) – (\text{残っている質量}) = 2.0 – 1.4 = 0.6 \text{ g} $$
この \(0.6\) g のポロニウムが崩壊して、鉛とヘリウムが生成されました。

ここで、崩壊したポロニウムの原子の数を\(N\)個とすると、その質量はポロニウムの質量数210に比例します。一方、同じ\(N\)個のポロニウムが崩壊してできるヘリウムの原子の数も\(N\)個であり、その質量はヘリウムの質量数4に比例します。
したがって、崩壊したポロニウムの質量と、それによって生成されたヘリウムの質量 \(m_{\text{He}}\) の間には、次の比例関係が成り立ちます。
$$ \Delta M_{\text{Po}} : m_{\text{He}} \approx (\text{Poの質量数}) : (\text{Heの質量数}) $$
$$ 0.6 : m_{\text{He}} \approx 210 : 4 $$

使用した物理公式

  • 質量保存の考え方(質量欠損は無視)
  • 質量と質量数の比例関係
計算過程

上記の比例式を \(m_{\text{He}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{He}} \times 210 &= 0.6 \times 4 \\[2.0ex]m_{\text{He}} &= \frac{0.6 \times 4}{210} \\[2.0ex]&= \frac{2.4}{210} \\[2.0ex]&\approx 0.0114\dots
\end{aligned}
$$
これを有効数字2桁で表すと、\(1.1 \times 10^{-2}\) g となります。

計算方法の平易な説明

まず、どれだけのポロニウムが崩壊したかを計算します。初め2.0gあったものが1.4g残っているので、\(2.0 – 1.4 = 0.6\)g が崩壊したことになります。
ポロニウム(重さの目安210)が崩壊すると、ヘリウム(重さの目安4)ができます。つまり、重さ210のものが崩壊して、重さ4のものが生まれる関係です。
したがって、「崩壊したポロニウムの実際の重さ(0.6g)」と「生まれたヘリウムの実際の重さ」の比は、「ポロニウムの重さの目安(210)」と「ヘリウムの重さの目安(4)」の比と同じになります。この比例式を解けば、生まれたヘリウムの重さがわかります。

結論と吟味

発生したヘリウムの質量は \(1.1 \times 10^{-2}\) g です。崩壊したポロニウムの質量(0.6g)に比べて非常に小さい値であり、質量数の比(4/210)を考えても妥当な結果です。

解答 (3) \(1.1 \times 10^{-2}\) g

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 半減期の法則(質量への適用):
    • 核心: 放射性原子の数が半減期ごとに半分になるという法則は、原子の個数だけでなく、その物質の「質量」にもそのまま適用できるという点を理解することが(2)を解く鍵です。
    • 理解のポイント: 放射性物質の質量は、そこに含まれる原子の数に比例します。したがって、原子の数が \(N = N_0 (\frac{1}{2})^{t/T}\) という式で減少するならば、質量も全く同じ形の式 \(M = M_0 (\frac{1}{2})^{t/T}\) で減少します。
  • 化学変化における質量比の保存(質量数による近似):
    • 核心: (3)では、崩壊したポロニウムの質量と、それによって生成されたヘリウムの質量の比が、それぞれの原子の質量数の比(210 : 4)に等しい、という考え方を用います。
    • 理解のポイント: ポロニウム原子が1個崩壊すると、ヘリウム原子が1個生成されます。つまり、反応に関わる原子の「個数」は1対1です。そして、原子1個の質量は、その質量数にほぼ比例します。したがって、反応する物質全体の質量の比も、質量数の比で近似できるのです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 生成されたもう一方の原子の質量: (3)でヘリウムではなく、生成された鉛(\({}^{206}\text{Pb}\))の質量を問う問題。考え方は同じで、(\(\text{崩壊したPoの質量}\)) : (\(\text{生成されたPbの質量}\)) \(\approx 210 : 206\) という比例式を立てます。
    • 原子の個数を問う問題: 「初めにポロニウムが\(N\)個あった」という設定で、残っている個数や生成されたヘリウムの個数を計算させる問題。アボガドロ定数を用いて質量と個数を変換させる問題も考えられます。
    • 経過時間や半減期が未知数の問題: 逆に、残存質量から経過時間や半減期を逆算させる問題。この場合は対数計算が必要になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 量の単位を確認: 問題で扱われている量が「質量(g)」なのか、「原子の個数」なのか、それとも「物質量(mol)」なのかを最初に確認します。
    2. 時間と半減期の関係: 経過時間\(t\)と半減期\(T\)の比 \(\frac{t}{T}\) が、\(\frac{1}{2}, 1, 2, 3\) のような簡単な数値になることが多いです。まずこの比を計算してみましょう。
    3. 「崩壊した量」と「残存した量」の区別: (3)のように生成物の量を問われた場合、計算に使うのは「崩壊した量」です。「残存した量」と混同しないように注意が必要です。図を描いて質量の流れを整理すると効果的です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 指数の計算ミス:
    • 誤解: (2)で、\((\frac{1}{2})^{1/2}\) を \(\frac{1}{2}\) や \(2\) などと勘違いしてしまう。
    • 対策: \(a^{1/2} = \sqrt{a}\) という指数の基本ルールを正確に思い出すことが重要です。\((\frac{1}{2})^{1/2} = \frac{1}{\sqrt{2}}\) となります。
  • (3)で使う質量の選択ミス:
    • 誤解: 生成されたヘリウムの質量を計算する際に、崩壊したポロニウムの質量(0.6g)ではなく、残っているポロニウムの質量(1.4g)や、初めの質量(2.0g)を使って比例式を立ててしまう。
    • 対策: 「崩壊したポロニウムが、鉛とヘリウムに変わった」という因果関係を明確に意識します。生成物の量は、あくまで「崩壊した量」に比例します。
  • 比例式の立て方ミス:
    • 誤解: (3)で、\(0.6 : m_{\text{He}} \approx 4 : 210\) のように、質量数の比を逆にしてしまう。
    • 対策: 「(\(\text{崩壊Poの質量}\)) : (\(\text{生成Heの質量}\)) \(\approx\) (\(\text{Poの質量数}\)) : (\(\text{Heの質量数}\))」のように、対応する物質が同じ側に来るように、言葉で確認しながら式を立てる癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 半減期の公式 \(M = M_0 (\displaystyle\frac{1}{2})^{t/T}\):
    • 選定理由: (2)は、放射性物質の量が時間とともにどう変化するかを問う問題であり、この現象を記述する最も基本的な公式だからです。
    • 適用根拠: 放射性崩壊は、個々の原子核がいつ崩壊するかは確率的ですが、原子の集団として見ると、その減少率は統計的に安定し、指数関数的な減少を示します。原子1個の質量は一定なので、原子の総数に比例する全体の質量も、同じ指数関数に従って減少します。
  • 質量比と質量数比の近似:
    • 選定理由: (3)では、崩壊によって失われたポロニウムの質量と、それによって生成されたヘリウムの質量という、異なる2種類の物質の質量関係を求める必要があります。これらを結びつけるのが、反応に関わる原子の個数が等しいことと、原子の質量が質量数に比例するという考え方です。
    • 適用根拠: 反応式 \({}^{210}\text{Po} \rightarrow {}^{206}\text{Pb} + {}^{4}\text{He}\) は、ポロニウム原子が1個崩壊するとヘリウム原子が1個生成されることを意味します。したがって、崩壊したポロニウムの物質量(モル数)と生成されたヘリウムの物質量は等しくなります。物質の質量は「物質量 × モル質量」であり、モル質量は質量数にほぼ比例するため、質量の比は質量数の比で近似できるのです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 平方根の計算: (2)の \(\displaystyle\frac{2.0}{\sqrt{2}}\) は、分母を有理化して \(\displaystyle\frac{2.0\sqrt{2}}{2} = 1.0\sqrt{2}\) と変形してから、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を代入すると、割り算よりも掛け算になり計算しやすくなります。
  • 質量の流れを図で整理する:初め: Po (2.0g)↓ 69日後残存Po (1.4g) + 崩壊Po (0.6g)↓生成He (\(m_{\text{He}}\)) + 生成Pbこのように図示することで、(3)の計算で使うべきは「崩壊Po (0.6g)」であることが一目瞭然になります。
  • 有効数字の意識: (2)では、\(2.0\)gという初期値が有効数字2桁なので、答えも1.4gと2桁で答えます。計算途中の\(\sqrt{2}\)は\(1.41\)のように少し多めの桁で計算し、最後に丸めるのが基本です。
  • 比例式の計算: (3)の \(m_{\text{He}} = \displaystyle\frac{0.6 \times 4}{210}\) の計算では、\(m_{\text{He}} = 0.6 \times \displaystyle\frac{4}{210} \approx 0.6 \times 0.019 \approx 0.0114\) のように、分数部分を先に小数に直してから掛けるなど、自分がミスしにくい手順で計算しましょう。

458 放射能

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射能(カウント数)と半減期の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 放射能と原子数の比例関係: 単位時間あたりの放射線のカウント数(放射能)は、その瞬間に存在する放射性原子の数に比例します。
  2. 半減期の法則: 放射性原子の数は、半減期\(T\)ごとに半分になります。この法則は、原子の数に比例するカウント数にも同様に適用できます。
  3. 等比数列: 一定の時間が経過するごとに、カウント数が一定の比率で減少していくため、各時点でのカウント数は等比数列をなします。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 最初のカウント数と、2日後のカウント数の比を計算します。
  2. カウント数が2日間でどれだけの割合に減少したかがわかります。
  3. 放射能の減少は時間に対して指数関数的(等比数列的)なので、さらに2日後も同じ割合で減少すると考えられます。
  4. 2日後のカウント数に、求めた減少率を掛けることで、4日後のカウント数を計算します。

思考の道筋とポイント
この問題の鍵は、「単位時間あたりのカウント数は、その瞬間の放射性原子の数に比例する」という事実にあります。放射性原子の数が半減期ごとに半分になるのであれば、それに比例するカウント数も、同じ半減期で半分になります。
したがって、半減期の公式はカウント数にもそのまま適用できます。
\(C = C_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)

ただし、この問題では半減期\(T\)を具体的に求める必要はありません。2日間でカウント数がどう変化したかの「比」を見つけることで、次の2日間の変化も予測できる、という等比数列の考え方で解くのが最もシンプルです。
この設問における重要なポイント

  • カウント数(放射能)は、放射性原子の数に比例する。
  • したがって、カウント数も半減期の法則に従って減少する。
  • 一定時間ごとのカウント数は、等比数列をなす。

具体的な解説と立式
最初のカウント数を \(C_0 = 4800\) カウントとします。
2日後のカウント数を \(C_2 = 600\) カウントとします。
さらに2日後(最初から4日後)のカウント数を \(C_4\) とします。

カウント数は、一定時間(この場合は2日間)が経過するごとに、一定の比率で減少していきます。
まず、2日間でカウント数が何倍になったか(公比)を計算します。
$$ \text{公比} = \frac{C_2}{C_0} = \frac{600}{4800} $$
この公比は、次の2日間でも同じはずです。したがって、4日後のカウント数\(C_4\)は、2日後のカウント数\(C_2\)にこの公比を掛けることで求められます。
$$ C_4 = C_2 \times (\text{公比}) = C_2 \times \frac{C_2}{C_0} $$

使用した物理公式

  • 放射能と原子数の比例関係: \(C \propto N\)
  • 半減期の法則(カウント数バージョン): \(C = C_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
計算過程

公比を計算します。
$$ \frac{600}{4800} = \frac{6}{48} = \frac{1}{8} $$
2日間でカウント数は \(\displaystyle\frac{1}{8}\) になることがわかりました。
したがって、さらに2日後(合計4日後)のカウント数\(C_4\)は、2日後のカウント数600に、この比率を掛けることで求められます。
$$
\begin{aligned}
C_4 &= 600 \times \frac{1}{8} \\[2.0ex]&= \frac{600}{8} \\[2.0ex]&= 75
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題は、シンプルな比の計算で解くことができます。最初のカウント数は4800でした。2日後には600になりました。これは、\(4800 \div 600 = 8\) なので、2日間でカウント数が \(1/8\) になったことを意味します。放射性物質の減り方は規則的なので、さらに2日経てば、また \(1/8\) になるはずです。したがって、求めるカウント数は、600カウントの \(1/8\) を計算すればよく、\(600 \div 8 = 75\) カウントとなります。

結論と吟味

さらに2日後のカウント数は75カウントです。ちなみに、2日間で\(1/8 = (\frac{1}{2})^3\) になるので、2日間は半減期3回分に相当します。つまり、半減期は \(T = 2/3\) 日です。4日後は半減期6回分に相当するので、カウント数は \(4800 \times (\frac{1}{2})^6 = 4800 \div 64 = 75\) となり、計算結果が正しいことが確認できます。

解答 75カウント

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 放射能と原子数の比例関係:
    • 核心: この問題の全ての前提となる最も重要な法則は、「単位時間あたりの放射線のカウント数(放射能)は、その瞬間に存在する放射性原子の数に比例する」という点です。
    • 理解のポイント: 放射性崩壊は、個々の原子核が一定の確率で崩壊する現象です。そのため、原子核がたくさんあればあるほど、単位時間あたりに崩壊する数も多くなります。この単純な比例関係(\(C \propto N\))があるからこそ、原子の数について成り立つ半減期の法則を、観測できるカウント数にもそのまま適用できるのです。
  • 半減期の法則(等比数列としての理解):
    • 核心: 放射性原子の数(およびカウント数)は、半減期ごとに半分になるという法則は、見方を変えれば「一定時間が経過するごとに、一定の比率で減少していく」等比数列の性質を持つことを意味します。
    • 理解のポイント: この問題では、半減期\(T\)を具体的に計算しなくても、「2日間でカウント数が\(\displaystyle\frac{1}{8}\)倍になる」という公比を見つけることで、次の2日間の変化も予測できます。この等比数列的な捉え方が、問題を最もシンプルかつ迅速に解く鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 半減期や経過時間を求める問題: 逆に、カウント数の変化から半減期\(T\)や経過時間\(t\)を求める問題。この場合は、\(C = C_0 (\frac{1}{2})^{t/T}\) の式に値を代入し、対数計算が必要になることがあります。
    • グラフ問題: 縦軸をカウント数(またはその対数)、横軸を時間としたグラフが与えられ、半減期を読み取らせる問題。通常の目盛りのグラフでは指数関数曲線、片対数グラフでは直線になります。
    • バックグラウンド放射能: 「測定値には常に10カウントのバックグラウンド放射能が含まれる」といった条件が付く問題。この場合は、まず観測されたカウント数からバックグラウンドの値を引き算し、放射性物質から真に放出されたカウント数を求めてから計算を始める必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 比例関係を思い出す: 「カウント数」という言葉を見たら、まず「その瞬間の原子数に比例する」という大原則を思い出します。
    2. 等比数列として捉える: 一定時間ごとのカウント数が与えられたら、「これは等比数列だ」と考え、公比(何倍になったか)を計算します。このアプローチが最も速いことが多いです。
    3. 半減期は必要か?: 問題が「さらに○日後のカウント数」を問うている場合、半減期\(T\)そのものの値を計算する必要はない可能性が高いです。公比を見つける解法を優先しましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 等差数列との混同:
    • 誤解: 2日間で \(4800 – 600 = 4200\) カウント減ったから、次の2日間でも同じく4200カウント減ると考えてしまう。
    • 対策: 放射性崩壊は「残っている数に比例して減る」現象です。数が減れば、減る勢いも弱まります。したがって、変化は「引き算(等差)」ではなく「割り算(等比)」の関係であると強く意識することが重要です。
  • 半減期の計算に固執する:
    • 誤解: 放射能の問題だからと、まず半減期\(T\)を計算することから始めてしまい、時間を浪費する。
    • 対策: 問題が何を求めているかを正確に把握しましょう。この問題は「4日後のカウント数」であり、半減期ではありません。最もシンプルな解法(公比を求める)が使えないか、常に最初に検討する癖をつけましょう。
  • 比の計算ミス:
    • 誤解: 2日後のカウント数と最初のカウント数の比を計算する際、\(4800 \div 600 = 8\) と計算し、公比を8倍と勘違いしてしまう。
    • 対策: 公比は「後の値 ÷ 前の値」で計算します。\(600 \div 4800 = 1/8\)。また、「カウント数は減少しているのだから、公比は1より小さいはずだ」という物理的な感覚を持つことも、ミスを防ぐ上で有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 放射能と原子数の比例関係 (\(C \propto N\)):
    • 選定理由: この問題は、直接観測できる物理量である「カウント数」から、放射性崩壊の法則を類推・適用する問題です。そのため、観測量(\(C\))と理論の基本量(\(N\))を結びつけるこの比例関係が、思考の出発点として不可欠です。
    • 適用根拠: 放射性崩壊は、個々の原子核が周囲の状況とは無関係に、一定の確率で自発的に崩壊する量子力学的な現象です。したがって、単位時間あたりに崩壊する原子の数(これが放射能\(C\)に相当)は、その瞬間に存在する原子の総数\(N\)に単純に比例します。この関係は \(C = \lambda N\)(\(\lambda\)は崩壊定数)と表され、放射性崩壊の最も基本的な数理モデルです。
  • 等比数列の考え方:
    • 選定理由: 一定時間間隔での測定値の変化を追う問題において、等比数列の考え方は最も直感的で計算が簡単なため、最適な解法となります。
    • 適用根拠: 半減期の公式 \(C(t) = C_0 (\frac{1}{2})^{t/T}\) は、数学的には指数関数です。指数関数は、入力(\(t\))が等間隔で増加すると、出力(\(C(t)\))が等比数列をなすという普遍的な性質を持っています。具体的には、時間\(\Delta t\)が経過するごとに、カウント数は常に一定の比 \((\frac{1}{2})^{\Delta t/T}\) で変化します。この数学的背景が、等比数列のアプローチの正しさを保証しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 簡単な整数比に直す: \(600/4800\) のような計算は、まず両端の0を消して \(6/48\) とし、さらに約分して \(1/8\) と、できるだけ簡単な分数に直してから次の計算に進むと、計算ミスが減り、現象の本質(2日間で3回半減したこと)が見えやすくなります。
  • 暗算を過信しない: \(600 \div 8\) のような計算も、焦っているとミスをしやすいです。\(600 \div 2 = 300\)、\(300 \div 2 = 150\)、\(150 \div 2 = 75\) のように、段階的に2で割っていくと確実です。
  • 時系列で情報を整理する: 問題の数値を時系列に沿って書き出すことで、関係性が明確になります。
    • 時刻 0日: 4800 カウント
    • 時刻 2日: 600 カウント
    • 時刻 4日: ? カウント

    このように並べることで、2日ごとに値がどう変化しているかを視覚的に捉えやすくなります。

  • 検算の習慣: 求めた答え(75)を使って、逆の比も確認します。\(600 \div 75 = 8\)。最初の比 \(4800 \div 600 = 8\) と一致するので、計算は正しいと確認できます。この一手間が、ケアレスミスによる失点を防ぎます。

459 核反応式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「様々な核反応式の理解と分類」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量数保存則と原子番号保存則: すべての核反応において、反応の前後で質量数の和と原子番号の和はそれぞれ保存されます。
  2. α崩壊: 原子核がヘリウム原子核(\({}_{2}^{4}\text{He}\))を放出する反応です。
  3. β崩壊: 原子核が電子(\({}_{-1}^{0}\text{e}\))を放出し、中性子が陽子に変わる反応です。
  4. 核融合: 軽い原子核同士が合体して、より重い原子核になる反応です。
  5. 核分裂: 1つの原子核が、2つ以上のより軽い原子核に分裂する反応です。高校物理では、α崩壊もこの一種と見なすことがあります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、各反応式の空欄(ア〜エ)を、質量数保存則と原子番号保存則を用いて埋めます。
  2. 次に、完成した4つの反応式が、それぞれα崩壊、β崩壊、核分裂、核融合のどの定義に当てはまるかを判断し、対応する記号を選びます。

思考の道筋とポイント
この問題は、4つの異なる核反応式を完成させ、それらがどの種類の反応(α崩壊、β崩壊、核分裂、核融合)に分類されるかを答える問題です。まず、すべての核反応に共通する「質量数保存則」と「原子番号保存則」を使って、各式の空欄を埋めることが第一歩です。その後、それぞれの反応式の特徴(何が何に変わっているか)を読み取り、各反応の定義と照らし合わせます。
この設問における重要なポイント

  • すべての核反応で、質量数(左上の数字)の和と原子番号(左下の数字)の和は保存される。
  • α崩壊、β崩壊、核分裂、核融合のそれぞれの定義を正確に理解している。

具体的な解説と立式
【空欄を埋める】

各反応式について、質量数と原子番号の保存則を適用します。

反応式①: \({}_{1}^{2}\text{H} + {}_{1}^{3}\text{H} \rightarrow \text{ア} + {}_{0}^{1}\text{n}\)

  • 質量数: \(2+3 = A_{\text{ア}} + 1\) より、\(A_{\text{ア}} = 4\)
  • 原子番号: \(1+1 = Z_{\text{ア}} + 0\) より、\(Z_{\text{ア}} = 2\)

よって、アは\({}_{2}^{4}\text{He}\)(ヘリウム原子核)。

反応式②: \({}_{6}^{14}\text{C} \rightarrow {}_{\text{イ}}^{14}\text{N} + {}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\)

  • 質量数: \(14 = 14 + 0\) (保存されている)
  • 原子番号: \(6 = Z_{\text{イ}} + (-1)\) より、\(Z_{\text{イ}} = 7\)

よって、イは7。

反応式③: \({}_{92}^{238}\text{U} \rightarrow {}_{90}^{234}\text{Th} + \text{ウ}\)

  • 質量数: \(238 = 234 + A_{\text{ウ}}\) より、\(A_{\text{ウ}} = 4\)
  • 原子番号: \(92 = 90 + Z_{\text{ウ}}\) より、\(Z_{\text{ウ}} = 2\)

よって、ウは\({}_{2}^{4}\text{He}\)(ヘリウム原子核、α粒子)。

反応式④: \({}_{92}^{235}\text{U} + {}_{0}^{1}\text{n} \rightarrow {}_{56}^{\text{エ}}\text{Ba} + {}_{36}^{92}\text{Kr} + 3{}_{0}^{1}\text{n}\)

  • 質量数: \(235+1 = A_{\text{エ}} + 92 + 3 \times 1\)。これを解くと \(A_{\text{エ}} = 236 – 95 = 141\)
  • 原子番号: \(92+0 = 56 + 36 + 3 \times 0\)。計算すると \(92 = 92\) となり、保存されています。

よって、エは141。

【反応式の分類】

(1) α崩壊: 1つの原子核が、α粒子(\({}_{2}^{4}\text{He}\))を放出して別の原子核に変わる反応。

  • 反応式③がこれに該当します。(\({}_{92}^{238}\text{U} \rightarrow {}_{90}^{234}\text{Th} + {}_{2}^{4}\text{He}\))

(2) β崩壊: 1つの原子核が、電子(\({}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\))を放出して別の原子核に変わる反応。

  • 反応式②がこれに該当します。(\({}_{6}^{14}\text{C} \rightarrow {}_{7}^{14}\text{N} + {}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\))

(3) 核分裂: 1つの原子核が、2つ以上のより軽い原子核に分裂する反応。

  • 反応式④は、ウランが中性子を吸収し、2つの大きな原子核(Ba, Kr)に分かれる、典型的な核分裂です。
  • 反応式③のα崩壊も、1つのウラン原子核がトリウム原子核とヘリウム原子核の2つに分かれるため、広い意味で核分裂の一種と見なせます。
  • したがって、③と④の両方が該当します。

(4) 核融合: 2つの軽い原子核が合体して、より重い原子核を形成する反応。

  • 反応式①がこれに該当します。(\({}_{1}^{2}\text{H}\)と\({}_{1}^{3}\text{H}\)が合体して\({}_{2}^{4}\text{He}\)を形成)

使用した物理公式

  • 質量数保存則
  • 原子番号保存則
  • 各核反応の定義
計算過程

上記の立式過程が計算に相当します。

計算方法の平易な説明

この問題は、核反応のパズルと分類ゲームです。

まず、パズルを解きます。核反応では、左上の数字(質量数)と左下の数字(原子番号)の合計が、矢印の前後で必ず同じになります。このルールを使って、ア、イ、ウ、エに入る数字や記号を決定します。

次に、分類ゲームです。完成した4つの反応式を見て、それぞれの特徴から「α崩壊」「β崩壊」「核分裂」「核融合」のどれに当てはまるかを選びます。

  • α崩壊: ヘリウム原子核(\({}_{2}^{4}\text{He}\))が飛び出す反応。
  • β崩壊: 電子(\({}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\))が飛び出す反応。
  • 核分裂: 1つの原子核が2つ以上に割れる反応。(α崩壊もこれに含まれることがあります)
  • 核融合: 軽い原子核同士が合体する反応。
結論と吟味

各空欄と反応の種類が特定できました。それぞれの反応式は、各反応の定義と一致しており、物理的に妥当です。

解答
ア: \({}_{2}^{4}\text{He}\), イ: 7, ウ: \({}_{2}^{4}\text{He}\), エ: 141
(1) ③
(2) ②
(3) ③, ④
(4) ①

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 核反応における2大保存則:
    • 核心: どのような核反応であっても、反応の前後で「質量数の和」と「原子番号の和」は必ず保存されるという、原子核物理学の最も基本的なルールです。
    • 理解のポイント: この2つの保存則を適用することで、未知の粒子や数値をパズルのように特定することができます。
  • 核反応の4つの基本分類:
    • 核心: 様々な核反応を、その特徴に応じて4つの基本的なタイプ(α崩壊, β崩壊, 核分裂, 核融合)に分類し、それぞれの定義を正確に理解していることが重要です。
    • 理解のポイント:
      • α崩壊: \({}_{2}^{4}\text{He}\)を放出。
      • β崩壊: \({}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\)を放出。
      • 核分裂: 1つの重い核 → 複数の軽い核。(α崩壊も広義にはこれに含まれる)
      • 核融合: 複数の軽い核 → 1つの重い核。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • エネルギーの計算: 各粒子の質量が与えられ、反応前後の質量欠損から放出・吸収されるエネルギーを \(E=mc^2\) で計算させる問題。
    • 人工的な核反応: 加速した陽子などを原子核に衝突させて新たな同位体を作るなど、人工的な核反応式を完成させる問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 保存則を第一に: 核反応式を見たら、まず質量数と原子番号の保存則が成り立つことを前提に、未知数を特定することから始めます。
    2. 反応物の数と生成物の数:
      • 反応物1つ → 生成物複数: 分裂(α崩壊や核分裂)の可能性が高い。
      • 反応物複数 → 生成物1つ(または少数): 融合の可能性が高い。
    3. 粒子の種類に注目: 反応式に\({}_{2}^{4}\text{He}\)があればα崩壊、\({}_{-1}^{0}\text{e}^{-}\)があればβ崩壊と即座に判断できます。
    4. 核分裂とα崩壊の関係: 「核分裂」を問われた場合、まず④のような典型的な核分裂反応を探します。もし選択肢が複数ある場合や、模範解答が複数挙げている場合は、③のα崩壊も「1つの核が2つに分かれる」という広い定義で核分裂に含まれる可能性がある、と柔軟に考えましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 保存則の計算ミス:
    • 誤解: 足し算や引き算を単純に間違える。特にβ崩壊で、\(Z = Z’ + (-1)\) のように負の数を扱う際に符号を間違えやすい。
    • 対策: 矢印の左側の和と右側の和をそれぞれ計算し、「左の和 = 右の和」という等式をきちんと書き下してから、移項して解くようにしましょう。
  • 核反応の分類の混同:
    • 誤解: 核分裂と核融合を逆の意味で覚えてしまう。
    • 対策: 「分裂」は「分かれる」、「融合」は「溶け合って一つになる」という漢字の意味そのままで覚えましょう。太陽のエネルギー源は核融合、原子力発電は核分裂、と具体例と結びつけるのも効果的です。
  • α崩壊と核分裂の扱いの違い:
    • 誤解: α崩壊は核分裂ではない、と厳密に考えすぎて、高校物理の問題で要求される解答(③と④の両方)を導き出せない。
    • 対策: 高校物理では、用語がより広い意味で使われることがあります。「核分裂」は「1つの原子核が分裂する反応」と広く捉え、α崩壊もその一種として選択肢に含める場合があることを知っておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量数保存則・原子番号保存則:
    • 選定理由: この問題は、原子核の構成要素がどのように組み変わるかを問うており、その組み換えのルールそのものがこれらの保存則だからです。
    • 適用根拠: これらの保存則は、より根源的な「核子数保存則」と「電荷保存則」に基づいています。核反応は、あくまで陽子や中性子の組み合わせが変わるだけで、核子や電荷が勝手に生まれたり消えたりするわけではありません。この物理学の大原則が、すべての核反応式を支配しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の上下を分けて確認: 核反応式をチェックする際は、まず質量数(上の数字)だけを見て、左辺の和と右辺の和が等しいかを確認します。次に、原子番号(下の数字)だけを見て、同様に確認します。上下を同時に見ようとすると、混乱しやすくなります。
  • 未知数を明確にする: \(A_{\text{ア}}\)や\(Z_{\text{ア}}\)のように、求める未知数が何であるかを明確に意識しながら式を立てると、計算ミスを防げます。
  • 定義に立ち返る: 分類に迷ったら、各反応の最もシンプルな定義に立ち返ります。「軽いものが合体→融合」「重いものが分裂→分裂」という基本に立ち返ることで、正しい分類ができます。

460 質量とエネルギーの等価性

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「質量とエネルギーの等価性、およびエネルギーの単位換算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量とエネルギーの等価性: アインシュタインによって示された、質量\(m\)とエネルギー\(E\)が等価であることを示す関係式 \(E=mc^2\) です。ここで \(c\) は光速です。
  2. エネルギーの単位: 国際単位系(SI)におけるエネルギーの単位はジュール[J]です。原子物理学の世界では、電子ボルト[eV]という単位が頻繁に用いられます。
  3. 電子ボルト[eV]の定義: 1[eV]は、電気素量\(e\)に等しい電荷を持つ粒子(電子など)が、1[V]の電位差で加速されたときに得るエネルギーです。したがって、\(1 \text{ [eV]} = e \text{ [C]} \times 1 \text{ [V]} = e \text{ [J]}\) となります。
  4. メガ電子ボルト[MeV]: \(1 \text{ MeV} = 10^6 \text{ eV}\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、与えられた質量 \(m=1\text{ u}=1.66 \times 10^{-27}\) kg と光速 \(c=3.0 \times 10^8\) m/s を、アインシュタインの公式 \(E=mc^2\) に代入し、エネルギーをジュール[J]単位で計算します。
  2. 次に、求めたジュール単位のエネルギーを、電子ボルト[eV]単位に換算します。これには、電気素量 \(e=1.6 \times 10^{-19}\) C を用いて、ジュール値を\(e\)の値で割ります。
  3. 最後に、eV単位のエネルギーをMeV単位に変換します。

思考の道筋とポイント
この問題は2つのパートに分かれています。前半は、質量をエネルギーに換算する問題です。これはアインシュタインの有名な公式 \(E=mc^2\) を使うことで解決します。与えられた質量と光速を代入して、エネルギーをSI単位であるジュール[J]で求めます。

後半は、そのエネルギーを原子物理学でよく使われる単位であるメガ電子ボルト[MeV]に換算する問題です。まず、ジュール[J]から電子ボルト[eV]への換算を行います。1[eV]は電子1個が1Vで加速されるエネルギーなので、\(1.6 \times 10^{-19}\) [J]に相当します。したがって、ジュールで表されたエネルギーをこの値で割ることで、eV単位のエネルギーが得られます。最後に、接頭語「メガ(M)」(\(10^6\))を考慮して単位を整えます。
この設問における重要なポイント

  • 質量からエネルギーへの換算には \(E=mc^2\) を用いる。
  • エネルギーの単位換算: [J] \(\rightarrow\) [eV] \(\rightarrow\) [MeV]
  • 1 [eV] \(\approx 1.6 \times 10^{-19}\) [J]
  • 1 [MeV] = \(10^6\) [eV]

具体的な解説と立式
【エネルギー[J]の計算】

質量 \(m = 1.66 \times 10^{-27}\) kg をエネルギー\(E\)に換算します。光速を \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s として、公式 \(E=mc^2\) に代入します。
$$ E = (1.66 \times 10^{-27}) \times (3.0 \times 10^8)^2 $$

【エネルギー[MeV]の計算】

上記で求めたエネルギー\(E\)[J]を、まず電子ボルト[eV]に換算します。電気素量を \(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C とすると、1 eV = \(1.6 \times 10^{-19}\) J の関係があるので、エネルギーのeV表記 \(E_{\text{eV}}\) は、
$$ E_{\text{eV}} = \frac{E \text{ [J]}}{1.6 \times 10^{-19}} $$
次に、これをメガ電子ボルト[MeV]に換算します。\(1 \text{ MeV} = 10^6 \text{ eV}\) なので、
$$ E_{\text{MeV}} = \frac{E_{\text{eV}}}{10^6} = \frac{E \text{ [J]}}{(1.6 \times 10^{-19}) \times 10^6} $$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E=mc^2\)
  • 電子ボルトとジュールの関係: \(1 \text{ [eV]} = e \text{ [J]}\)
計算過程

エネルギー[J]の計算:
$$
\begin{aligned}
E &= (1.66 \times 10^{-27}) \times (3.0 \times 10^8)^2 \\[2.0ex]&= 1.66 \times 10^{-27} \times (9.0 \times 10^{16}) \\[2.0ex]&= (1.66 \times 9.0) \times (10^{-27} \times 10^{16}) \\[2.0ex]&= 14.94 \times 10^{-11} \\[2.0ex]&= 1.494 \times 10^{-10}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(1.5 \times 10^{-10}\) J となります。

エネルギー[MeV]の計算:

まず、eV単位に換算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{eV}} &= \frac{1.494 \times 10^{-10}}{1.6 \times 10^{-19}} \\[2.0ex]&= \frac{1.494}{1.6} \times 10^{-10 – (-19)} \\[2.0ex]&\approx 0.93375 \times 10^9 \\[2.0ex]&= 9.3375 \times 10^8 \text{ [eV]}
\end{aligned}
$$
次に、MeV単位に換算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{MeV}} &= \frac{9.3375 \times 10^8}{10^6} \\[2.0ex]&= 9.3375 \times 10^2 \text{ [MeV]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(9.3 \times 10^2\) MeV となります。

計算方法の平易な説明

ジュール(J)の計算:

アインシュタインの有名な公式 \(E=mc^2\) を使います。これは「エネルギー = 質量 × (光の速さ)\(^2\)」という意味です。問題で与えられた質量(\(1.66 \times 10^{-27}\) kg)と光の速さ(\(3.0 \times 10^8\) m/s)をこの式に代入して掛け算をすれば、エネルギーがジュール(J)単位で求まります。

メガ電子ボルト(MeV)の計算:

原子の世界では、ジュールは単位として大きすぎるため、「電子ボルト(eV)」という小さな単位がよく使われます。

  1. J → eV: まず、ジュールで計算したエネルギーを、電気素量(\(1.6 \times 10^{-19}\))で割り算して、eV単位に直します。
  2. eV → MeV: 「メガ(M)」は「100万倍」という意味なので、eVで表した数値を100万(\(10^6\))で割ると、MeV単位になります。
結論と吟味

1uの質量は、\(1.5 \times 10^{-10}\) J のエネルギーに相当し、これは \(9.3 \times 10^2\) MeV(約930 MeV)に等しいことがわかりました。この「\(1\text{u} \approx 931.5 \text{ MeV}\)」という換算値は、原子核物理学において非常によく使われる基本的な値であり、計算結果は妥当です。

解答 J: \(1.5 \times 10^{-10}\) J, MeV: \(9.3 \times 10^2\) MeV

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 質量とエネルギーの等価性 (\(E=mc^2\)):
    • 核心: 質量とエネルギーは本質的に同じものであり、互いに変換可能であるという、20世紀物理学の根幹をなす概念です。このアインシュタインの公式を正しく適用できるかが、この問題の第一のポイントです。
    • 理解のポイント:
      • \(m\)は質量[kg]、\(c\)は光速[m/s]、\(E\)はエネルギー[J]です。
      • 光速\(c\)の2乗(\(c^2\))が非常に大きな値であるため、ごくわずかな質量が莫大なエネルギーに変換されることをこの式は示しています。
  • エネルギーの単位換算(ジュールと電子ボルト):
    • 核心: マクロな世界の標準単位であるジュール[J]と、原子や素粒子のミクロな世界で慣用される電子ボルト[eV]との間の換算を正しく行えることが、第二のポイントです。
    • 理解のポイント:
      • 1[eV]の定義: 電子1個が1Vの電位差で加速されるときに得るエネルギー。
      • 換算式: \(1 \text{[eV]} = e \text{[J]} \approx 1.6 \times 10^{-19} \text{[J]}\)。ジュールから電子ボルトに直すには、電気素量の値で「割る」必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 質量欠損と結合エネルギー: 核反応の前後での質量差(質量欠損)を計算し、それを\(E=mc^2\)でエネルギーに変換して、放出エネルギーや原子核の結合エネルギーを求める問題。
    • 電子や陽子の静止エネルギー: 電子や陽子の質量をエネルギーに換算する問題。これも\(E=mc^2\)で計算します。
    • 対消滅・対生成: 電子と陽電子が対消滅して光子(ガンマ線)になる、あるいはその逆の現象。質量がエネルギーに、エネルギーが質量に変わる典型例です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位の確認: 問題で与えられている質量やエネルギーの単位(kg, u, J, eV, MeV)を最初に確認します。最終的にどの単位で答えるべきかを把握することが重要です。
    2. 公式の選択: 「質量をエネルギーに」とあれば\(E=mc^2\)、「JをeVに」とあれば電気素量\(e\)で割る、というように、操作に応じて使う公式や換算係数を即座に選択します。
    3. 有効数字: 与えられている物理定数(この問題では1.66, 3.0, 1.6など)の有効数字を確認し、答えの有効数字をそれに合わせる意識を持ちましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • \(c^2\)の計算ミス:
    • 誤解: \((3.0 \times 10^8)^2\) を \(3.0 \times 10^{16}\) や \(9.0 \times 10^8\) としてしまう。
    • 対策: 指数を持つ数の2乗は、係数部分と指数部分を別々に2乗(指数は2倍)します。\((a \times 10^b)^2 = a^2 \times 10^{2b}\) です。したがって、\(3.0^2 \times (10^8)^2 = 9.0 \times 10^{16}\) となります。
  • JとeVの換算方向のミス:
    • 誤解: JからeVに換算するのに、電気素量\(e\)の値を掛けてしまう(割るのが正しい)。
    • 対策: 単位の大きさをイメージしましょう。「Jは大きな単位、eVは非常に小さな単位」なので、「J→eV」の換算では数値は非常に大きくなるはずです。したがって、小さな数(\(1.6 \times 10^{-19}\))で「割る」のが正しい、と判断できます。
  • MeVへの換算ミス:
    • 誤解: eVからMeVに換算するのに、\(10^6\)を掛けてしまう(割るのが正しい)。
    • 対策: 「メガ(M)」は「100万(\(10^6\))」を意味する接頭語です。1 MeV = \(10^6\) eV なので、eVで表した数値を\(10^6\)で割るとMeVになります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(E=mc^2\) (質量とエネルギーの等価性):
    • 選定理由: 問題が「質量をエネルギーに換算する」ことを直接的に要求しているため。これは、この現象を記述する唯一無二の法則です。
    • 適用根拠: 特殊相対性理論から導かれる、物理学の基本法則です。質量はエネルギーの一形態であり、エネルギーもまた質量を持つ、という現代物理学の根幹をなす考え方です。この公式は、その量的関係を示しています。
  • \(1 \text{[eV]} = e \text{[J]}\) (電子ボルトの定義):
    • 選定理由: エネルギーの単位を、マクロな世界の標準単位[J]から、原子・素粒子の世界で便利な単位[eV]に変換するために必要です。
    • 適用根拠: 電子ボルトは、素粒子のエネルギーを扱う上で、ジュールよりも桁数が少なく、物理的イメージ(電位差1Vで加速)がしやすいため、慣用的に定義された単位です。その定義自体が換算式となっています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 係数と指数の分離: \(1.66 \times 10^{-27} \times (3.0 \times 10^8)^2\) のような計算は、\((1.66 \times 3.0^2) \times (10^{-27} \times 10^{16})\) のように、係数部分と指数部分に分けて計算するとミスが減ります。
  • 単位換算のプロセスを明確にする: J \(\rightarrow\) eV \(\rightarrow\) MeV のように、一度にやろうとせず、段階的に換算する癖をつけましょう。
    1. \(E_{\text{J}}\) を計算する。
    2. \(E_{\text{eV}} = E_{\text{J}} / e\) を計算する。
    3. \(E_{\text{MeV}} = E_{\text{eV}} / 10^6\) を計算する。
  • 概算の活用: 「\(1\text{u} \approx 931.5 \text{ MeV}\)」という有名な値を覚えていれば、計算結果が \(9.3 \times 10^2\) MeV に近いことを確認できます。この値は多くの問題で利用できるので、覚えておくと非常に便利です。
  • 有効数字の管理: 計算途中では、与えられた有効数字よりも1桁多く残して計算を進め、最後の最後に指定された有効数字に丸めるのが基本です。例えば、\(1.66 \times 9.0 = 14.94\) のように、途中で丸めないようにしましょう。

461 核反応

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「核反応における質量欠損と放出エネルギーの計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量欠損: 核反応の前後で、質量の合計が変化することがあります。この変化した質量を質量欠損(\(\Delta m\))と呼びます。発熱反応では質量が減少し、吸熱反応では質量が増加します。
  2. 質量とエネルギーの等価性: 質量欠損が生じた場合、その質量はアインシュタインの公式 \(E = \Delta m c^2\) に従ってエネルギーに変換されます。
  3. 単位の換算: 質量欠損の単位が原子質量単位[u]で与えられている場合、エネルギー[J]を計算するためには、まず[u]を[kg]に換算する必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、質量欠損の定義 \(\Delta m = (\text{反応前の質量合計}) – (\text{反応後の質量合計})\) に従って、与えられた各原子核の質量から質量欠損を[u]単位で計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた質量欠損\(\Delta m\)[u]を、与えられた換算係数を用いて[kg]単位に変換します。
  3. 換算した質量[kg]と光速\(c\)を、アインシュタインの公式 \(E = \Delta m c^2\) に代入し、放出されるエネルギーをジュール[J]単位で計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
核反応においてエネルギーが放出されるのは、反応後の生成物の質量の合計が、反応前の物質の質量の合計よりもわずかに軽くなるためです。この失われた質量(質量欠損)がエネルギーに変換されます。まずは、反応式の左辺(反応前)と右辺(反応後)の質量の合計をそれぞれ計算し、その差を求めることで質量欠損を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 質量欠損 \(\Delta m = (\text{反応前の質量合計}) – (\text{反応後の質量合計})\)
  • 反応式 \({}_{3}^{7}\text{Li} + {}_{1}^{1}\text{H} \rightarrow 2{}_{2}^{4}\text{He}\) の係数に注意する。

具体的な解説と立式
質量欠損を \(\Delta m\) とします。
反応前の質量の合計 \(m_{\text{前}}\) は、リチウム原子核1個と陽子1個の質量の和です。
$$ m_{\text{前}} = m_{\text{Li}} + m_{\text{H}} $$
反応後の質量の合計 \(m_{\text{後}}\) は、ヘリウム原子核2個の質量の和です。
$$ m_{\text{後}} = 2 \times m_{\text{He}} $$
質量欠損 \(\Delta m\) は、これらの差として計算されます。
$$ \Delta m = m_{\text{前}} – m_{\text{後}} = (m_{\text{Li}} + m_{\text{H}}) – (2 \times m_{\text{He}}) $$
与えられた値を代入します。
$$ \Delta m = (7.0171 + 1.0073) – (2 \times 4.0015) $$

使用した物理公式

  • 質量欠損の定義
計算過程

$$
\begin{aligned}
\Delta m &= 8.0244 – 8.0030 \\[2.0ex]&= 0.0214 \text{ [u]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「質量欠損」とは、反応の前後でどれだけ質量が「減った」かということです。まず、反応前の材料(リチウム1個と陽子1個)の質量の合計を計算します。次に、反応後の生成物(ヘリウム2個)の質量の合計を計算します。最後に、「反応前の合計質量」から「反応後の合計質量」を引き算すれば、減った分の質量、つまり質量欠損が求まります。

結論と吟味

この核反応における質量欠損は \(0.0214\) u です。質量が減少しているため、この反応はエネルギーを放出する発熱反応であることがわかります。

解答 (1) 0.0214 u

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた質量欠損に相当するエネルギーを計算します。アインシュタインの公式 \(E=mc^2\) を用いますが、この公式の質量\(m\)の単位は[kg]であるため、まず(1)で求めた質量欠損\(\Delta m\)[u]を[kg]に換算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 質量からエネルギーへの換算には \(E=mc^2\) を用いる。
  • \(E=mc^2\) を使う前に、質量をSI単位である[kg]に変換する必要がある。
  • 単位換算: \(1 \text{ u} = 1.66 \times 10^{-27}\) kg

具体的な解説と立式
(1)で求めた質量欠損 \(\Delta m = 0.0214\) u を、まずkg単位に換算します。
$$ \Delta m_{\text{kg}} = 0.0214 \times (1.66 \times 10^{-27}) \text{ [kg]} $$
この質量を、アインシュタインの公式 \(E = \Delta m c^2\) に代入します。光速は \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s です。
$$ E = \{ 0.0214 \times (1.66 \times 10^{-27}) \} \times (3.0 \times 10^8)^2 $$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E=mc^2\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
E &= (0.0214 \times 1.66 \times 10^{-27}) \times (9.0 \times 10^{16}) \\[2.0ex]&= (0.0214 \times 1.66 \times 9.0) \times (10^{-27} \times 10^{16}) \\[2.0ex]&\approx 0.3197 \times 10^{-11} \\[2.0ex]&= 3.197 \times 10^{-12}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(3.2 \times 10^{-12}\) J となります。

計算方法の平易な説明

(1)で計算した「減った分の質量」をエネルギーに変える計算です。使うのはアインシュタインの公式 \(E=mc^2\) です。

  1. 単位を揃える: まず、(1)で求めた質量欠損(u単位)を、公式で使えるようにkg単位に直します。問題文にある \(1\text{u} = 1.66 \times 10^{-27}\text{kg}\) を使って掛け算します。
  2. 公式に代入: kgに直した質量と、光の速さ(\(3.0 \times 10^8\))を公式に入れて計算します。これでエネルギーがジュール(J)単位で求まります。
結論と吟味

質量欠損に相当するエネルギーは \(3.2 \times 10^{-12}\) J です。計算過程も正しく、妥当な結果です。

解答 (2) \(3.2 \times 10^{-12}\) J

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 質量欠損:
    • 核心: 核反応の前後で、反応に関わる粒子の質量の総和が変化するという現象です。この「失われた」あるいは「増えた」質量が、エネルギーに変換されます。
    • 理解のポイント: 質量欠損\(\Delta m\)は、\(\Delta m = (\text{反応前の質量合計}) – (\text{反応後の質量合計})\) で計算されます。この値が正なら、質量が減ってエネルギーが放出された(発熱反応)ことを意味します。
  • 質量とエネルギーの等価性 (\(E=mc^2\)):
    • 核心: 質量欠損\(\Delta m\)と、それによって放出または吸収されるエネルギー\(E\)の関係を示す、アインシュタインの有名な公式です。
    • 理解のポイント: この公式は、質量とエネルギーが本質的に同じものであり、互いに変換可能であることを示しています。計算する際は、質量\(m\)を[kg]、光速\(c\)を[m/s]というSI基本単位に揃えることで、エネルギー\(E\)が[J]で求まります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 結合エネルギーの計算: 原子核がバラバラの陽子と中性子から構成される際に放出されるエネルギー(=結合エネルギー)を、質量欠損から計算する問題。(\(\text{結合エネルギー}) = (\text{構成粒子の質量の和}) – (\text{原子核の質量})\) \(\times c^2\)。
    • 核分裂・核融合のエネルギー計算: ウランの核分裂や、太陽で起きているような核融合反応で放出されるエネルギーを、同様に質量欠損から計算する問題。
    • エネルギーから質量欠損を逆算: 反応で放出されたエネルギー[J]や[MeV]が与えられ、そこから質量欠損[kg]や[u]を逆算する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反応式の係数を確認: まず核反応式をしっかり見て、反応物と生成物が何か、そしてそれぞれの係数はいくつかを確認します。特に、\(2{}_{2}^{4}\text{He}\) のように生成物が複数個ある場合は、係数の「2」を掛け忘れないように注意が必要です。
    2. 単位のフローを確認: 問題で与えられている質量の単位([u])と、最終的に求めるエネルギーの単位([J])を確認し、「[u] \(\rightarrow\) [kg] \(\rightarrow\) [J]」という計算の流れを頭の中で組み立てます。
    3. 計算のステップを分割: (1)質量欠損[u]を計算、(2)質量欠損[kg]に換算、(3)エネルギー[J]を計算、というように、計算をステップに分けて考えると、混乱せずに済みます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 反応式の係数の見落とし:
    • 誤解: (1)で、反応後の質量を計算する際に、ヘリウム原子核の質量に係数の「2」を掛け忘れてしまう。
    • 対策: 核反応式を書き出し、各原子核の前に付いている係数を丸で囲むなどして、計算に含めることを強く意識しましょう。
  • 質量欠損の引き算の順序ミス:
    • 誤解: \((\text{反応後の質量合計}) – (\text{反応前の質量合計})\) を計算してしまい、質量欠損の符号を逆にしてしまう。
    • 対策: 「欠損」という言葉の意味通り、「反応前」から「反応後」を引くと覚えます。また、この反応ではエネルギーが放出される(高速の陽子が不要になる)はずなので、質量は減るはずだ(\(\Delta m > 0\))、と物理的意味から確認するのも有効です。
  • 単位換算のし忘れ:
    • 誤解: (2)で、\(E=mc^2\) の \(m\) に、[u]単位の質量欠損 \(0.0214\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: \(E=mc^2\) はSI単位系(kg, m/s, J)で成り立つ公式であると強く認識しましょう。計算前に必ず質量を[kg]に換算するステップを入れることを習慣づけることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量欠損の定義式 (\(\Delta m = m_{\text{前}} – m_{\text{後}}\)):
    • 選定理由: (1)で「質量欠損」そのものを問われているため、その定義式を用いるのは必然です。
    • 適用根拠: これは、古典的な化学反応で前提とされた質量保存則が、核反応のレベルでは厳密には成り立たないことを示す式です。原子核内部の核子の結合状態が変化すると、その結合エネルギーも変化します。そのエネルギーの変化が、\(E=mc^2\) の関係を通じて観測可能な質量の変化として現れるのです。
  • \(E=mc^2\) (質量とエネルギーの等価性):
    • 選定理由: (2)で「質量欠損に相当するエネルギー」を問われているため。質量とエネルギーという異なる物理量を結びつける唯一の法則がこれです。
    • 適用根拠: 特殊相対性理論から導かれる、現代物理学の基本法則です。質量はエネルギーの一形態であり、エネルギーもまた質量を持つという考え方を示しており、核反応や素粒子反応など、質量の変化が顕著に現れる現象を定量的に扱うために不可欠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 小数点以下の桁数が多い計算: (1)の \(7.0171 + 1.0073 – 4.0015 \times 2\) のような計算は、筆算で小数点の位置を正確に揃えて行うことが重要です。
    • \(m_{\text{前}} = 7.0171 + 1.0073 = 8.0244\)
    • \(m_{\text{後}} = 4.0015 \times 2 = 8.0030\)
    • \(\Delta m = 8.0244 – 8.0030 = 0.0214\)

    このように、項ごとに計算結果をメモしながら進めるとミスが減ります。

  • 指数計算の分離: (2)の計算では、係数部分と指数部分を分けて計算すると間違いにくいです。
    • \(E = (0.0214 \times 1.66 \times 9.0) \times (10^{-27} \times 10^{16})\)
    • 係数部分: \(0.0214 \times 1.66 \times 9.0 \approx 0.3197\)
    • 指数部分: \(10^{-27+16} = 10^{-11}\)
  • 有効数字の管理: 計算途中では有効数字より1桁多く計算し、最後に問題文で与えられた数値の有効数字(この場合は3.0や1.66などから2桁または3桁)に合わせて丸めます。今回は3.0が2桁なので、答えも2桁で答えるのが妥当です。

462 結合エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「結合エネルギーと原子核の安定性」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 結合エネルギー: 原子核をバラバラの陽子と中性子に分解するために必要なエネルギー。逆に、バラバラの陽子と中性子が集まって原子核を形成する際に放出されるエネルギーでもあります。
  2. 質量欠損: 原子核の質量は、それを構成する陽子と中性子の質量の合計よりも常に小さくなります。この質量の差を質量欠損と呼び、結合エネルギーの源となります。
  3. 質量とエネルギーの等価性: 質量欠損\(\Delta m\)と結合エネルギー\(E_{\text{結合}}\)の間には、\(E_{\text{結合}} = \Delta m c^2\) の関係が成り立ちます。
  4. 核子1個あたりの結合エネルギー: 原子核の安定性を比較するための指標。結合エネルギーをその原子核の質量数で割った値で、この値が大きいほど原子核はより安定であると言えます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各原子核について、それを構成する陽子と中性子の数を特定します。
  2. 構成粒子の質量の合計と、原子核自身の質量の差から、質量欠損\(\Delta m\)を計算します。
  3. 求めた質量欠損[u]に、与えられた換算係数(\(1\text{u} = 9.3 \times 10^2 \text{ MeV}\))を掛けて、結合エネルギーを計算します。
  4. 計算した結合エネルギーを、それぞれの原子核の質量数で割り、核子1個あたりの結合エネルギーを求めます。
  5. 2つの原子核の核子1個あたりの結合エネルギーを比較し、値が大きい方がより安定であると判断します。

思考の道筋とポイント
この問題は、2種類の原子核\({}_{1}^{2}\text{H}\)と\({}_{2}^{3}\text{He}\)の安定性を比較するものです。原子核の安定性は「核子1個あたりの結合エネルギー」という指標で比べることができます。この値が大きいほど、原子核はより固く結びついており、安定であると言えます。

計算は、各原子核について以下の3ステップで行います。

  1. 質量欠損の計算: (構成する陽子と中性子の質量の合計) – (原子核の質量)
  2. 結合エネルギーの計算: (質量欠損) × (1uあたりのエネルギー)
  3. 核子1個あたりの結合エネルギーの計算: (結合エネルギー) ÷ (質量数)

この設問における重要なポイント

  • 結合エネルギーの源は質量欠損である。
  • 原子核の安定性は、核子1個あたりの結合エネルギーで比較する。
  • \({}_{Z}^{A}\text{X}\) は、陽子\(Z\)個、中性子\((A-Z)\)個から構成される。

具体的な解説と立式
【\({}_{1}^{2}\text{H}\) (重水素) について】

  • 構成粒子: 陽子1個、中性子1個 (\(2-1=1\))
  • 構成粒子の質量合計: \(m_{\text{陽子}} + m_{\text{中性子}} = 1.0073\text{ u} + 1.0087\text{ u}\)
  • 原子核の質量: \(m_{\text{H2}} = 2.0136\text{ u}\)

質量欠損 \(\Delta m_{\text{H2}}\):
$$ \Delta m_{\text{H2}} = (1.0073 + 1.0087) – 2.0136 $$
結合エネルギー \(E_{\text{H2}}\):
$$ E_{\text{H2}} = \Delta m_{\text{H2}} \times (9.3 \times 10^2) \text{ [MeV]} $$
核子1個あたりの結合エネルギー \(B_{\text{H2}}\):
$$ B_{\text{H2}} = \frac{E_{\text{H2}}}{2} $$

【\({}_{2}^{3}\text{He}\) (ヘリウム3) について】

  • 構成粒子: 陽子2個、中性子1個 (\(3-2=1\))
  • 構成粒子の質量合計: \(2 \times m_{\text{陽子}} + m_{\text{中性子}} = 2 \times 1.0073\text{ u} + 1.0087\text{ u}\)
  • 原子核の質量: \(m_{\text{He3}} = 3.0150\text{ u}\)

質量欠損 \(\Delta m_{\text{He3}}\):
$$ \Delta m_{\text{He3}} = (2 \times 1.0073 + 1.0087) – 3.0150 $$
結合エネルギー \(E_{\text{He3}}\):
$$ E_{\text{He3}} = \Delta m_{\text{He3}} \times (9.3 \times 10^2) \text{ [MeV]} $$
核子1個あたりの結合エネルギー \(B_{\text{He3}}\):
$$ B_{\text{He3}} = \frac{E_{\text{He3}}}{3} $$

使用した物理公式

  • 質量欠損: \(\Delta m = (\text{構成粒子の質量和}) – (\text{原子核の質量})\)
  • 結合エネルギー: \(E_{\text{結合}} = \Delta m c^2\)
  • 核子1個あたりの結合エネルギー: \(B = \displaystyle\frac{E_{\text{結合}}}{A}\)
計算過程

\({}_{1}^{2}\text{H}\) の計算:

  1. 質量欠損:
    $$ \Delta m_{\text{H2}} = 2.0160 – 2.0136 = 0.0024 \text{ [u]} $$
  2. 結合エネルギー:
    $$ E_{\text{H2}} = 0.0024 \times 930 = 2.232 \text{ [MeV]} $$
  3. 核子1個あたりの結合エネルギー:
    $$ B_{\text{H2}} = \frac{2.232}{2} = 1.116 \approx 1.1 \text{ [MeV]} $$

\({}_{2}^{3}\text{He}\) の計算:

  1. 質量欠損:
    $$ \Delta m_{\text{He3}} = (2.0146 + 1.0087) – 3.0150 = 3.0233 – 3.0150 = 0.0083 \text{ [u]} $$
  2. 結合エネルギー:
    $$ E_{\text{He3}} = 0.0083 \times 930 = 7.719 \text{ [MeV]} $$
  3. 核子1個あたりの結合エネルギー:
    $$ B_{\text{He3}} = \frac{7.719}{3} = 2.573 \approx 2.6 \text{ [MeV]} $$

安定性の比較:

\(B_{\text{H2}} \approx 1.1\) MeV, \(B_{\text{He3}} \approx 2.6\) MeV

\(B_{\text{He3}} > B_{\text{H2}}\) なので、\({}_{2}^{3}\text{He}\) の方がより安定です。

計算方法の平易な説明

原子核の安定性を比べるには、核子(陽子や中性子)1個あたりの「接着剤の強さ」を計算します。この接着剤の強さが「核子1個あたりの結合エネルギー」です。

  1. 部品の重さを計算: まず、原子核を構成する部品(陽子と中性子)だけの質量の合計を計算します。
  2. 質量欠損を計算: 次に、「部品の重さの合計」から「完成品である原子核の重さ」を引きます。この差が「質量欠損」で、これが接着剤(結合エネルギー)の源になります。
  3. 結合エネルギーに換算: 質量欠損(u)に930を掛けて、結合エネルギー(MeV)を求めます。
  4. 1個あたりの強さを計算: 最後に、求めた結合エネルギーを、原子核の中の核子の数(質量数)で割ります。これで「核子1個あたりの結合エネルギー」が求まります。

この値が大きいほど、原子核はより強く結びついていて安定だと言えます。

結論と吟味

\({}_{1}^{2}\text{H}\)の核子1個あたりの結合エネルギーは約1.1 MeV、\({}_{2}^{3}\text{He}\)の核子1個あたりの結合エネルギーは約2.6 MeVです。後者の値の方が大きいため、\({}_{2}^{3}\text{He}\)の方がより安定な原子核であると結論できます。

解答 \({}_{1}^{2}\text{H}\): 1.1 MeV, \({}_{2}^{3}\text{He}\): 2.6 MeV, 安定な原子核: \({}_{2}^{3}\text{He}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 結合エネルギーと質量欠損の関係:
    • 核心: 原子核の「結合エネルギー」が、どこから生まれるのかを理解することが第一の核心です。それは、原子核を構成する陽子と中性子がバラバラの状態にあるときよりも、原子核としてまとまった後の方が、全体の質量がわずかに減少するという「質量欠損」に由来します。
    • 理解のポイント:
      • 質量欠損 \(\Delta m = (\text{構成粒子の質量の合計}) – (\text{原子核の質量})\)
      • 結合エネルギー \(E = \Delta m c^2\)
      • この2つの式を使って、質量欠損を計算し、それをエネルギーに換算するという流れを掴むことが重要です。
  • 原子核の安定性の指標:
    • 核心: 原子核の安定性は、結合エネルギーの総量そのものではなく、「核子1個あたりの結合エネルギー」で比較するという点が第二の核心です。
    • 理解のポイント: 質量数が大きい原子核は、構成する粒子が多い分、結合エネルギーの総量も大きくなる傾向があります。しかし、それは原子核の「結びつきの強さ」を直接示すものではありません。安定性を公平に比較するためには、結合エネルギーを構成粒子の数(質量数)で割り、核子1個が平均してどれくらいのエネルギーで結びついているかを評価する必要があります。この値が大きいほど、原子核は安定です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 結合エネルギー曲線: 横軸に質量数、縦軸に核子1個あたりの結合エネルギーをとったグラフに関する問題。鉄(\({}^{56}\text{Fe}\))付近でピークになること、そして軽い原子核が核融合したり、重い原子核が核分裂したりすると、より安定な原子核(核子1個あたりの結合エネルギーが大きい)に近づくため、エネルギーが放出される、という原理を問う問題。
    • 核反応の放出エネルギーと結合エネルギーの関係: 核反応で放出されるエネルギーは、反応後の生成物の結合エネルギーの合計から、反応前の原子核の結合エネルギーの合計を引いた差に等しくなります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 構成粒子の特定: \({}_{Z}^{A}\text{X}\) という表記を見たら、即座に「陽子の数: \(Z\)個、中性子の数: \((A-Z)\)個」と読み替えることが第一歩です。
    2. 「安定性」という言葉に反応: 「どちらがより安定か」と問われたら、最終目標は「核子1個あたりの結合エネルギーを計算して比較すること」だと判断します。
    3. 単位のフローを確認: 質量の単位が[u]で、エネルギーの単位が[MeV]の場合、\(1\text{u}\)が何MeVに相当するかの換算係数が与えられているはずです。これを使って「質量欠損[u] \(\rightarrow\) 結合エネルギー[MeV]」という計算の流れを組み立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 結合エネルギーの総量で安定性を判断する:
    • 誤解: \({}_{2}^{3}\text{He}\)の結合エネルギー(7.719 MeV)が\({}_{1}^{2}\text{H}\)の結合エネルギー(2.232 MeV)より大きいから、\({}_{2}^{3}\text{He}\)の方が安定だ、と結論づけてしまう(結果は同じだが論理が不十分)。
    • 対策: 「安定性の比較は、必ず核子1個あたりの値で行う」と徹底して覚えましょう。「大家族の総収入と一人暮らしの収入を比べて、大家族の方が豊かだとは言えない」という例えを思い出すと良いでしょう。
  • 質量欠損の引き算の順序ミス:
    • 誤解: 「原子核の質量」から「構成粒子の質量の和」を引いてしまい、質量欠損が負の値になって混乱する。
    • 対策: 「バラバラの部品(陽子・中性子)を集めて製品(原子核)を作ると、なぜか軽くなる。その軽くなった分が質量欠損」というストーリーで覚えます。したがって、必ず「部品の合計質量」から「完成品の質量」を引きます。
  • 構成粒子の数を数え間違える:
    • 誤解: \({}_{2}^{3}\text{He}\)の中性子の数を、質量数の3や原子番号の2と勘違いする。
    • 対策: 中性子の数は「質量数(左上) – 原子番号(左下)」で計算する、というルールを徹底します。\(3-2=1\)個。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量欠損の定義式:
    • 選定理由: 結合エネルギーの源泉である「質量の減少分」を定量化するために、この定義式が必要です。
    • 適用根拠: バラバラの核子はそれぞれが固有の質量を持っていますが、それらが核力によって強く結びつけられ原子核を形成すると、その結合エネルギーに相当する分だけ質量が減少します(\(E=mc^2\))。この物理現象を数式で表現したのが質量欠損の定義です。
  • 核子1個あたりの結合エネルギー:
    • 選定理由: 異なる大きさの原子核の「結びつきの強さ(安定性)」を、規模の違いに影響されずに公平に比較するための指標として、この量が定義されています。
    • 適用根拠: 物理学や化学では、系の規模に依存しない「示強性変数」を用いて物質の性質を議論することがよくあります(例: 密度、温度)。核子1個あたりの結合エネルギーもその一種で、原子核の大きさ(質量数)という「示量性」の要素を取り除き、原子核の普遍的な安定性を評価するために用いられます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 計算の構造化: 各原子核について、「①構成粒子の特定 → ②質量欠損の計算 → ③結合エネルギーの計算 → ④核子1個あたりの結合エネルギーの計算」というステップを明確に分けて、一つずつ計算を進めましょう。
  • 小数点以下の桁数が多い計算:
    • 筆算で小数点の位置を正確に揃えることが絶対条件です。
    • \( (2 \times 1.0073 + 1.0087) – 3.0150 \) のような計算は、括弧の中を先に計算し、その結果をメモしてから引き算を実行すると、ミスが減ります。
  • 指数計算の活用: \(0.0024 \times 930\) のような計算は、\(2.4 \times 10^{-3} \times 9.3 \times 10^2\) のように指数形式に直してから計算すると、桁の間違いを防ぎやすくなります。
  • 概算による検算:
    • 質量欠損: \(\Delta m_{\text{He3}} = (2 \times 1.007 + 1.009) – 3.015 = 3.023 – 3.015 = 0.008\)。計算結果の0.0083と近い。
    • 結合エネルギー: \(0.0083 \times 930 \approx 0.008 \times 900 = 7.2\)。計算結果の7.719と近い。
    • 1個あたり: \(7.7 \div 3 \approx 2.56\)。計算結果の2.573と近い。このように概算を行うことで、大きな計算ミスに気づくことができます。

463 核分裂

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「核分裂における質量欠損とエネルギー、および仕事率の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量とエネルギーの等価性: エネルギー\(E\)と質量\(m\)は \(E=mc^2\) の関係で結ばれており、相互に変換可能です。この問題では、エネルギーから質量の減少分(質量欠損)を逆算します。
  2. 物質量(mol)と原子の個数の関係: 物質量[mol]、原子の個数、アボガドロ定数\(N_A\)の間には、「個数 = 物質量 × \(N_A\)」の関係があります。
  3. 物質量(mol)と質量の関係: 物質量[mol]、質量[g]、モル質量[g/mol]の間には、「物質量 = 質量 / モル質量」の関係があります。
  4. 仕事率(電力)の定義: 仕事率[W]は、単位時間(1秒)あたりに発生または消費されるエネルギー[J]のことです。\(P = \displaystyle\frac{E}{\Delta t}\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず放出されたエネルギー[MeV]を、与えられた換算係数を用いて質量欠損[u]に変換します。次に、この質量欠損が元のウラン原子核の質量に対して何パーセントにあたるかを計算します。
  2. (2)では、まず1gのウランに含まれる原子の個数を、アボガドロ定数とモル質量(質量数で近似)を用いて計算します。次に、1個の核分裂で放出されるエネルギー[MeV]をジュール[J]に換算します。最後に、1秒間に放出される全エネルギー(= 1秒間に分裂する原子の数 × 1個あたりの放出エネルギー)を計算し、これを仕事率[W]とし、さらに[kW]に変換します。

問(1)

思考の道筋とポイント
核分裂で放出されるエネルギーは、質量がエネルギーに変換されたものです。この問題では、その逆の計算、つまり放出エネルギーから「どれだけの質量が失われたか(質量欠損)」を求め、それが元の質量に対して何%にあたるかを計算します。
この設問における重要なポイント

  • エネルギーから質量への換算: \(1\text{u}\)が\(931\text{MeV}\)のエネルギーに相当する関係を利用する。
  • 減少率の計算: (\(\text{減少量}\)) / (\(\text{元の量}\)) \(\times 100\) [%]
  • ウラン原子核1個の質量は、質量数を用いて\(235\text{u}\)と近似する。

具体的な解説と立式
まず、放出されたエネルギー \(E = 200\) MeV が、何uの質量に相当するかを計算します。これを質量欠損 \(\Delta m\) とします。
与えられた換算係数 \(1\text{ u} = 931 \text{ MeV}\) より、
$$ \Delta m = \frac{200 \text{ [MeV]}}{931 \text{ [MeV/u]}} $$
次に、この質量欠損 \(\Delta m\) が、元のウラン原子核1個の質量 \(m_{\text{U}} = 235\text{ u}\) に対して何パーセントにあたるかを計算します。
$$ \text{減少率 [\%]} = \frac{\Delta m}{m_{\text{U}}} \times 100 $$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性(換算係数として使用)
計算過程

1. 質量欠損 \(\Delta m\) の計算:
$$ \Delta m = \frac{200}{931} \approx 0.2148 \text{ [u]} $$
2. 減少率の計算:
$$
\begin{aligned}
\text{減少率 [\%]} &= \frac{0.2148}{235} \times 100 \\[2.0ex]&\approx 0.000914 \times 100 \\[2.0ex]&= 0.0914
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(0.091\)\% となります。

計算方法の平易な説明
  1. エネルギーを質量に換算: まず、放出されたエネルギー200MeVが、どれくらいの重さに相当するのかを計算します。問題文に「1uは931MeVに相当」とあるので、200を931で割ると、失われた質量がu単位で求まります。
  2. 割合を計算: 次に、この「失われた質量」が「元のウランの質量(235u)」の何パーセントにあたるかを計算します。「(失われた質量) ÷ (元の質量) × 100」で、答えのパーセンテージが求まります。
結論と吟味

質量は約0.091%減少します。核分裂では莫大なエネルギーが放出されますが、それでも元の質量から見ればごくわずかな割合しか減少しないことがわかります。

解答 (1) 0.091 %

問(2)

思考の道筋とポイント
毎秒1gのウランを核分裂させたときのエネルギーを求める問題です。これは単位時間あたりのエネルギー、すなわち仕事率(電力)[W]を求めることに相当します。

計算のステップは以下の通りです。

  1. 1gのウラン\({}^{235}\text{U}\)に、原子が何個含まれているかを計算する。
  2. 1秒間に1gのウランが核分裂するので、ステップ1で求めた個数の原子が1秒間に分裂することになる。
  3. 1秒間に放出される全エネルギーを計算する。(= 1秒間に分裂する原子の数 × 原子1個あたりの放出エネルギー)
  4. 計算結果はジュール/秒、すなわちワット[W]で得られるので、これをキロワット[kW]に換算する。

この設問における重要なポイント

  • 物質量[mol]の計算: モル質量を質量数[g/mol]で近似する。(\({}^{235}\text{U}\)のモル質量 \(\approx 235\) g/mol)
  • 原子数の計算: (物質量) × (アボガドロ定数)
  • エネルギーの単位換算: [MeV] \(\rightarrow\) [J]
  • 仕事率の定義: [W] = [J/s]

具体的な解説と立式
1. 1gのウランに含まれる原子の数 \(N\) の計算

ウラン\({}^{235}\text{U}\)のモル質量は、その質量数から \(235\) g/mol とみなせます。
1gのウランの物質量[mol]は、
$$ \text{物質量} = \frac{\text{質量}}{\text{モル質量}} = \frac{1 \text{ [g]}}{235 \text{ [g/mol]}} $$
したがって、1g中に含まれる原子の数\(N\)は、アボガドロ定数 \(N_A = 6.02 \times 10^{23}\) /mol を用いて、
$$ N = (\text{物質量}) \times N_A = \frac{1}{235} \times (6.02 \times 10^{23}) $$

2. 1秒あたりの放出エネルギー \(P\) [W] の計算

毎秒1g、すなわち\(N\)個のウランが核分裂します。
原子1個あたりの放出エネルギー \(E_1\) は \(200\) MeV です。これをジュール[J]に換算します。
$$ E_1 = 200 \text{ [MeV]} = 200 \times 10^6 \times (1.6 \times 10^{-19}) \text{ [J]} $$
1秒間に放出される全エネルギー、すなわち仕事率\(P\)は、
$$ P = N \times E_1 = \left( \frac{1}{235} \times 6.02 \times 10^{23} \right) \times \left( 200 \times 10^6 \times 1.6 \times 10^{-19} \right) $$

使用した物理公式

  • 物質量と質量の関係
  • 物質量と原子数の関係
  • 仕事率の定義 \(P = E/t\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
P &= \frac{1}{235} \times (6.02 \times 10^{23}) \times (200 \times 10^6) \times (1.6 \times 10^{-19}) \\[2.0ex]&= \frac{6.02 \times 200 \times 1.6}{235} \times 10^{23+6-19} \\[2.0ex]&= \frac{1926.4}{235} \times 10^{10} \\[2.0ex]&\approx 8.197 \times 10^{10} \text{ [W]}
\end{aligned}
$$
これをキロワット[kW]に換算します。\(1 \text{ kW} = 10^3 \text{ W}\) なので、
$$ P \approx \frac{8.197 \times 10^{10}}{10^3} = 8.197 \times 10^7 \text{ [kW]} $$
有効数字2桁で答えるため、\(8.2 \times 10^7\) kW となります。

計算方法の平易な説明
  1. 1g中の原子の数を数える: まず、1gのウランに原子が何個あるか計算します。ウラン235は、235g集めるとアボガドロ定数(\(6.02 \times 10^{23}\))個ある、と考えることができます。なので、1gあたりでは、アボガドロ定数を235で割った数になります。
  2. 1個あたりのエネルギーをJに直す: 1個の分裂で出るエネルギー200MeVを、計算で使えるようにジュール(J)単位に直します。
  3. 総エネルギーを計算: 毎秒1g分裂するので、「1g中の原子の数」と「1個あたりのエネルギー(J)」を掛け算すれば、1秒あたりに放出される総エネルギーが求まります。
  4. 単位をkWに直す: 1秒あたりのエネルギー(J/s)はワット(W)と同じです。これをキロワット(kW)に直すには、1000で割ります。
結論と吟味

放出されるエネルギーは \(8.2 \times 10^7\) kW です。これは8200万kWに相当し、大規模な発電所数基分に匹敵する莫大なエネルギーです。わずか1gの核分裂でこれほどのエネルギーが生まれるという事実は、核エネルギーの巨大さを示しており、物理的に妥当なオーダーです。

解答 (2) \(8.2 \times 10^7\) kW

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 質量とエネルギーの等価性 (\(E=mc^2\)):
    • 核心: この問題全体を貫く最も重要な法則です。核分裂で放出されるエネルギーが、質量の減少(質量欠損)によって生じるという、質量とエネルギーが等価であることを示しています。
    • 理解のポイント:
      • (1)では、エネルギーから質量への換算にこの法則(の換算係数)を用います。
      • (2)では、この法則によって保証される「1個あたりの放出エネルギー」を元に、マクロな量のエネルギー計算へと発展させます。
  • 物質量(mol)を介したミクロとマクロの橋渡し:
    • 核心: (2)では、1gというマクロな世界の質量と、原子1個というミクロな世界の現象を結びつける必要があります。その「橋渡し」役を担うのが、アボガドロ定数とモル質量の概念です。
    • 理解のポイント:
      • マクロ → ミクロ: 質量[g]をモル質量[g/mol]で割って物質量[mol]を求め、それにアボガドロ定数を掛けることで、原子の個数を計算できます。
      • この手順により、マクロな量(毎秒1g)をミクロな現象(毎秒\(N\)個の核分裂)に翻訳することが、(2)を解くための鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 核融合のエネルギー計算: 太陽で起きている核融合反応などで、毎秒消費される水素の質量から、太陽が放出するエネルギー(仕事率)を計算する問題。考え方は(2)と全く同じです。
    • 発電所の効率: 原子力発電所が、核分裂で発生した熱エネルギーを、何%の効率で電気エネルギーに変換しているかを計算させる問題。本問の計算結果に、さらに効率を掛ける必要があります。
    • 燃料の消費量計算: ある一定の電力(kW)を維持するために、毎秒何gの核燃料を消費する必要があるかを逆算させる問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位の換算ルートを設計する: 問題で与えられている単位と、求めるべき単位を確認し、計算の全体像を設計します。
      • (1): [MeV] \(\rightarrow\) [u] \(\rightarrow\) [%]
      • (2): [g/s] \(\rightarrow\) [個/s] \(\rightarrow\) [J/s]=[W] \(\rightarrow\) [kW]
    2. 「1個あたり」と「全体」を区別する: 問題文の数値が、原子1個あたりの量なのか、物質全体での量なのかを正確に区別します。
    3. 「毎秒」という言葉に注目: (2)の「毎秒1g」という記述は、最終的に求めるものがエネルギー[J]ではなく、仕事率(電力)[W]または[kW]であることを示唆しています。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 質量減少率の計算ミス:
    • 誤解: (1)で、減少した質量(\(0.2148\text{u}\))を、元の質量(\(235\text{u}\))で割るのを忘れて、そのままパーセント表示してしまう。
    • 対策: 「〜に対する割合」を求める場合は、必ず「(部分) ÷ (全体)」の計算が必要であることを思い出しましょう。
  • モル質量の扱い:
    • 誤解: 1gのウランの物質量を計算する際に、モル質量をアボガドロ定数と混同したり、何の数値で割ればよいか分からなくなったりする。
    • 対策: モル質量[g/mol]は、質量数とほぼ同じ値になると覚えましょう。\({}^{235}\text{U}\)なら、235g集めると1mol(=\(N_A\)個)になります。したがって、1gあたりの原子数は \(N_A / 235\) となります。
  • エネルギー単位の換算ミス:
    • 誤解: (2)で、1個あたりのエネルギー200[MeV]を、ジュール[J]に換算するのを忘れて計算してしまう。または、[MeV] \(\rightarrow\) [eV] \(\rightarrow\) [J] の換算で、\(10^6\)や\(1.6 \times 10^{-19}\)を掛けるのか割るのか混乱する。
    • 対策: 計算はすべてSI基本単位(m, kg, s, A)で行うのが物理の基本です。エネルギーは必ずジュール[J]に直してから計算を始めましょう。また、[MeV]は[eV]の\(10^6\)倍、[eV]は[J]の約\(10^{19}\)分の1、と単位の大小関係をイメージできれば、換算の際に掛けるか割るかの間違いを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量とエネルギーの換算係数 (\(1\text{u} = 931\text{MeV}\)):
    • 選定理由: (1)で、エネルギー[MeV]から質量[u]を直接計算するために、最も効率的な関係式だからです。
    • 適用根拠: この換算係数は、\(E=mc^2\)の公式に \(m=1\text{u}=1.66…\times 10^{-27}\text{kg}\) を代入し、さらにJからMeVへ単位換算した結果を予め計算したものです。原子核物理の世界では頻繁に登場する計算なので、便利な「ショートカット」として定数化されています。
  • アボガドロ定数とモル質量の関係:
    • 選定理由: (2)で、マクロな量である質量(1g)を、ミクロな量である原子の個数に変換する必要があるため。この2つの世界を結びつけるのが物質量(mol)の概念です。
    • 適用根拠: 物質量(mol)は、\(6.02 \times 10^{23}\)個の粒子の集団を1単位とする、個数を数えるための便利な単位です。そして、1molあたりの質量がモル質量[g/mol]と定義されています。これらの定義を用いることで、質量から個数への換算が可能になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 計算の順序を工夫する: (2)の計算では、すべての数値を一つの長い分数式にしてから計算すると、途中の計算結果を丸めることによる誤差を減らせます。\( P = \displaystyle\frac{1}{235} \times (6.02 \times 10^{23}) \times (200 \times 10^6) \times (1.6 \times 10^{-19}) \)この形にしてから、係数部分と指数部分をまとめて計算します。
  • 概算によるオーダーチェック:
    • (2)の計算で、\(P \approx \displaystyle\frac{6 \times 10^{23}}{2.4 \times 10^2} \times (2 \times 10^8 \text{eV}) \times (1.6 \times 10^{-19} \text{J/eV}) = 2.5 \times 10^{21} \times 3.2 \times 10^{-11} \approx 8 \times 10^{10}\) [W] と、オーダー(\(10^{10}\))が合っているかを確認するだけでも、大きなミス(単位換算ミスなど)に気づくことができます。
  • 有効数字の徹底: 問題文で与えられている数値の有効数字(200は1桁、1.6は2桁、931は3桁など)を確認し、答えは最も桁数の少ないものに合わせるのが基本です。この問題では、200MeVの有効数字が曖昧ですが、解答が2桁であることから、他の定数に合わせて2桁で答えるのが適切と判断します。

464 核融合

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「核融合における質量欠損とエネルギー、および他エネルギーとの比較」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量欠損: 核反応の前後での質量の合計の差。この問題では、\(4{}_{1}^{1}\text{H} \rightarrow {}_{2}^{4}\text{He} + 2{}_{1}^{0}\text{e}\) という反応を考えます。
  2. 質量とエネルギーの等価性: 質量欠損\(\Delta m\)は、\(E = \Delta m c^2\) の関係に従ってエネルギーに変換されます。
  3. 質量の減少率: 質量欠損が、反応前の元の質量に対してどれくらいの割合を占めるかを示します。
  4. エネルギーの比較: 異なる反応(核融合と核分裂)や、異なる種類のエネルギー(核エネルギーと化学エネルギー)を定量的に比較します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず核融合反応式から質量欠損\(\Delta m\)を計算します。次に、この\(\Delta m\)が反応前の質量(陽子4個分)に対して何パーセントにあたるかを計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた核融合の質量減少率と、前の問題(463)で求めた核分裂の質量減少率を比較します。エネルギー放出量は質量減少量に比例するため、質量減少率の比がそのままエネルギーの比になります。
  3. (3)では、まず1gの水素(\({}_{1}^{1}\text{H}\))が核融合した場合の質量欠損[g]を(1)の減少率を用いて計算します。次に、この質量欠損を\(E=\Delta m c^2\)でエネルギー[J]に変換します。最後に、このエネルギーが石油何トン分の燃焼熱に相当するかを、割り算で求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
この核融合反応で減少する質量(質量欠損)を計算し、それが反応前の質量に対して何%になるかを求める問題です。質量欠損の計算と、割合の計算という2段階のプロセスになります。
この設問における重要なポイント

  • 質量欠損 \(\Delta m = (\text{反応前の質量合計}) – (\text{反応後の質量合計})\)
  • 反応前の質量は、陽子(\({}_{1}^{1}\text{H}\))4個分の質量である。
  • 減少率の計算: (\(\text{質量欠損}\)) / (\(\text{反応前の質量}\)) \(\times 100\) [%]

具体的な解説と立式
核融合反応式は \(4{}_{1}^{1}\text{H} \rightarrow {}_{2}^{4}\text{He} + 2{}_{1}^{0}\text{e}\) です。
反応前の質量 \(m_{\text{前}}\) は、陽子4個の質量です。
$$ m_{\text{前}} = 4 \times m_{\text{H}} = 4 \times 1.0073 \text{ [u]} $$
反応後の質量 \(m_{\text{後}}\) は、ヘリウム原子核1個と陽電子2個の質量の合計です。
$$ m_{\text{後}} = m_{\text{He}} + 2 \times m_{\text{e}} = 4.0015\text{ u} + 2 \times 0.0005\text{ u} $$
質量欠損 \(\Delta m\) は、これらの差です。
$$ \Delta m = m_{\text{前}} – m_{\text{後}} $$
質量の減少率(%)は、この質量欠損を反応前の質量で割って100を掛けることで求められます。
$$ \text{減少率 [\%]} = \frac{\Delta m}{m_{\text{前}}} \times 100 $$

使用した物理公式

  • 質量欠損の定義
計算過程

1. 質量欠損 \(\Delta m\) の計算:
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= (4 \times 1.0073) – (4.0015 + 2 \times 0.0005) \\[2.0ex]&= 4.0292 – (4.0015 + 0.0010) \\[2.0ex]&= 4.0292 – 4.0025 \\[2.0ex]&= 0.0267 \text{ [u]}
\end{aligned}
$$
2. 減少率の計算:
$$
\begin{aligned}
\text{減少率 [\%]} &= \frac{0.0267}{4 \times 1.0073} \times 100 \\[2.0ex]&= \frac{0.0267}{4.0292} \times 100 \\[2.0ex]&\approx 0.006626 \times 100 \\[2.0ex]&= 0.6626 \approx 0.663
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明
  1. 質量欠損を計算: まず、反応でどれだけ質量が減ったかを計算します。「反応前の材料(陽子4個)の合計質量」から「反応後の生成物(ヘリウム1個と陽電子2個)の合計質量」を引きます。
  2. 割合を計算: 次に、この「減った分の質量」が「反応前の材料の合計質量」の何パーセントにあたるかを、「(減った質量) ÷ (元の質量) × 100」で計算します。
結論と吟味

この核融合反応で減少する質量は、初めの質量の約0.663%です。

解答 (1) 0.663 %

問(2)

思考の道筋とポイント
同じ質量の燃料を用いた場合、核融合と核分裂で放出されるエネルギーの比を比較する問題です。エネルギーの放出量は、質量欠損の量に比例し、質量欠損の量は、元の質量に「質量減少率」を掛けたものになります。したがって、同じ質量の燃料を使う場合、放出されるエネルギーの比は、それぞれの反応の「質量減少率」の比に等しくなります。
この設問における重要なポイント

  • 放出エネルギーは質量減少率に比例する。
  • (\(\text{核融合エネルギー}\)) : (\(\text{核分裂エネルギー}\)) = (\(\text{核融合の質量減少率}\)) : (\(\text{核分裂の質量減少率}\))

具体的な解説と立式
問題463(1)で求めた核分裂の質量減少率を \(r_{\text{分裂}}\)、本問(1)で求めた核融合の質量減少率を \(r_{\text{融合}}\) とします。

  • \(r_{\text{分裂}} \approx 0.0914\) %
  • \(r_{\text{融合}} \approx 0.6626\) %

放出されるエネルギーの比は、これらの減少率の比に等しくなります。
$$ \frac{E_{\text{融合}}}{E_{\text{分裂}}} = \frac{r_{\text{融合}}}{r_{\text{分裂}}} $$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{E_{\text{融合}}}{E_{\text{分裂}}} &\approx \frac{0.6626}{0.0914} \\[2.0ex]&\approx 7.249\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、7.2倍となります。

計算方法の平易な説明

エネルギーの大きさは、質量が減る「割合」に比例します。前の問題(463)では、核分裂で質量が約0.091%減ることがわかりました。この問題(1)では、核融合で質量が約0.663%減ることがわかりました。同じ量の燃料を使うなら、核融合の方が核分裂よりも「\(0.663 \div 0.091\)」倍だけ多くエネルギーを出す、ということになります。この割り算を計算すれば答えが出ます。

結論と吟味

核融合で放出されるエネルギーは、同じ質量のウランを用いた核分裂の場合の約7.2倍です。核融合の方が、より効率よく質量をエネルギーに変換できることがわかります。

解答 (2) 7.2倍

問(3)

思考の道筋とポイント
1gの水素(\({}_{1}^{1}\text{H}\))を核融合させたときのエネルギーが、石油何トンの燃焼熱に相当するかを計算します。

  1. 1gの水素が核融合したときの質量欠損[g]を、(1)で求めた減少率を使って計算します。
  2. この質量欠損[g]を[kg]に直し、\(E=\Delta m c^2\) でエネルギー[J]を求めます。
  3. このエネルギーを、石油1kgあたりの燃焼熱で割り、何kgの石油に相当するかを計算します。
  4. 最後に、kgをトンに換算します。

この設問における重要なポイント

  • 質量欠損[g]からエネルギー[J]への換算。
  • 異なる種類のエネルギーの比較。
  • 単位換算(g \(\rightarrow\) kg, kg \(\rightarrow\) トン)。

具体的な解説と立式
1. 1gの水素の核融合による質量欠損 \(\Delta m\) の計算

(1)より、質量は0.663%減少するので、1gの水素が反応した場合の質量欠損は、
$$ \Delta m = 1 \text{ [g]} \times \frac{0.663}{100} = 0.00663 \text{ [g]} = 6.63 \times 10^{-3} \text{ [g]} $$
これをkgに換算します。
$$ \Delta m_{\text{kg}} = 6.63 \times 10^{-6} \text{ [kg]} $$

2. 放出エネルギー \(E_{\text{融合}}\) の計算
$$ E_{\text{融合}} = \Delta m_{\text{kg}} \times c^2 = (6.63 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^8)^2 $$

3. 石油の質量 \(m_{\text{石油}}\) の計算

石油1kgの燃焼熱を \(E_{\text{石油}}\) とします。\(E_{\text{石油}} = 4.0 \times 10^7\) J。
求める石油の質量を \(m_{\text{石油}}\) [kg] とすると、
$$ E_{\text{融合}} = m_{\text{石油}} \times E_{\text{石油}} $$
したがって、
$$ m_{\text{石油}} = \frac{E_{\text{融合}}}{E_{\text{石油}}} = \frac{(6.63 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^8)^2}{4.0 \times 10^7} $$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E=mc^2\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
m_{\text{石油}} &= \frac{(6.63 \times 10^{-6}) \times (9.0 \times 10^{16})}{4.0 \times 10^7} \\[2.0ex]&= \frac{6.63 \times 9.0}{4.0} \times \frac{10^{-6} \times 10^{16}}{10^7} \\[2.0ex]&= \frac{59.67}{4.0} \times 10^{10-7} \\[2.0ex]&\approx 14.9 \times 10^3 \text{ [kg]} \\[2.0ex]&= 1.49 \times 10^4 \text{ [kg]}
\end{aligned}
$$
1トン = 1000kg = \(10^3\)kg なので、
$$ m_{\text{石油}} \approx \frac{1.49 \times 10^4}{10^3} = 14.9 \text{ [トン]} $$
有効数字2桁で答えるため、15トンとなります。

計算方法の平易な説明
  1. 1gの水素から出るエネルギーを計算: (1)で、水素は核融合すると0.663%軽くなることがわかりました。なので、1gの水素が反応すると、\(1 \times 0.00663 = 0.00663\)gだけ軽くなります。この質量を\(E=mc^2\)の公式に入れて、エネルギー(J)を計算します。
  2. 石油のエネルギーと比較: 上で計算した核融合のエネルギーが、石油何kg分に相当するかを割り算で求めます。「(核融合エネルギー) ÷ (石油1kgのエネルギー)」
  3. 単位をトンに直す: 計算結果はkgで出てくるので、1000で割ってトンに直します。
結論と吟味

1gの水素の核融合エネルギーは、石油約15トンの燃焼熱に相当します。化学反応である燃焼に比べ、核反応がいかに桁違いに大きなエネルギーを放出するかがわかる結果であり、妥当です。

解答 (3) 15 トン

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 核融合と質量欠損:
    • 核心: 軽い原子核同士が合体してより重い原子核になる「核融合」反応では、反応後の質量が反応前の質量の合計よりも軽くなる、という現象が起こります。この失われた質量(質量欠損)が、莫大なエネルギーの源となります。
    • 理解のポイント: 質量欠損 \(\Delta m = (\text{反応前の質量合計}) – (\text{反応後の質量合計})\) を正しく計算できることが、全ての計算の出発点です。
  • 質量とエネルギーの等価性 (\(E=mc^2\)):
    • 核心: 質量欠損\(\Delta m\)と、それによって放出されるエネルギー\(E\)の関係を示す、アインシュタインの公式です。この法則により、質量の減少をエネルギーの放出として定量的に扱うことができます。
  • 質量減少率とエネルギー効率:
    • 核心: 同じ質量の燃料からどれだけ効率よくエネルギーを取り出せるかは、質量がエネルギーに変換される「割合」(質量減少率)によって決まります。
    • 理解のポイント: (2)で核融合と核分裂のエネルギーを比較する際、それぞれの「質量減少率」を比較することで、エネルギー効率を直接比べることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 他の核融合反応: D-D反応(\({}_{1}^{2}\text{H} + {}_{1}^{2}\text{H} \rightarrow \dots\))やD-T反応(\({}_{1}^{2}\text{H} + {}_{1}^{3}\text{H} \rightarrow \dots\))など、太陽や核融合炉で研究されている他の反応についても、同様に質量欠損と放出エネルギーを計算する問題。
    • 太陽の寿命計算: 太陽が毎秒放出しているエネルギーと、そのエネルギーを生み出す核融合反応の質量減少率から、太陽が燃え尽きるまでの時間(寿命)を概算する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反応式の係数をチェック: \(4{}_{1}^{1}\text{H}\)や\(2{}_{1}^{0}\text{e}\)のように、原子核や粒子の前に付いている係数を見落とさないように、最初に丸で囲むなどして注意を喚起します。
    2. 「同じ質量の」という条件: (2)のような比較問題では、この条件があるからこそ、複雑なエネルギー計算をせずとも「質量減少率」の比を計算するだけで答えが出せる、という点に気づくことが重要です。
    3. 単位の変換フローを設計する: 問題全体を見渡し、[u] \(\rightarrow\) [%]、[g] \(\rightarrow\) [kg] \(\rightarrow\) [J]、[J] \(\rightarrow\) [トン(石油)]といった、単位変換のルートをあらかじめ頭の中で整理しておくと、計算の道筋が明確になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 質量欠損の計算での係数ミス:
    • 誤解: (1)で、反応前の質量を\(m_{\text{H}}\)、反応後の質量を\(m_{\text{He}} + m_{\text{e}}\)のように、反応式の係数「4」や「2」を掛け忘れてしまう。
    • 対策: 反応式をよく見て、関与する粒子の「総数」を正確に把握し、計算に反映させることを徹底しましょう。
  • 質量減少「率」の分母の選択ミス:
    • 誤解: (1)で減少率を計算する際、質量欠損を、反応後の質量や、陽子1個の質量で割ってしまう。
    • 対策: 減少「率」は、必ず「反応前の全体の質量」を基準(分母)にして計算します。この反応では、陽子4個が反応前の物質なので、\(4 \times m_{\text{H}}\) が分母になります。
  • 単位換算のし忘れ、または間違い:
    • 誤解: (3)で、\(E=mc^2\)を計算する際に、質量欠損を[g]のまま計算してしまう([kg]に直すのが正しい)。また、最終的な答えを[kg]から[トン]に換算する際に、\(1000\)を掛けてしまう(割るのが正しい)。
    • 対策: \(E=mc^2\)はSI単位系(kg, m, s, J)で成り立つことを強く意識し、計算前には必ず単位を揃える癖をつけましょう。また、トンとkgのような日常的な単位換算も、焦らず確実に行いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量欠損の定義式:
    • 選定理由: (1)で問われている「減少する質量」を計算するための、最も直接的な定義式だからです。
    • 適用根拠: 核反応においてエネルギーが放出される根源は、反応の前後で質量が保存されないことにあります。この「保存されない分の質量」を定量化するのが質量欠損の定義であり、エネルギー計算の第一歩となります。
  • 質量減少率:
    • 選定理由: (1)で「初めの質量の何%か」と問われているため、また(2)で異なる反応のエネルギー効率を比較するために、この正規化された指標を用います。
    • 適用根拠: 質量欠損の絶対値だけでは、それが元の質量に対してどれほど大きなインパクトを持つのかが分かりません。元の質量で割って百分率にすることで、反応の「効率」を評価する普遍的な指標となり、異なる反応(核融合と核分裂)の効率を公平に比較することが可能になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 計算の構造化とメモ: (1)や(3)のような複数ステップの計算では、各ステップの結果をメモしながら進めると、混乱を防ぎ、検算もしやすくなります。
    • (1): ①\(m_{\text{前}}\)計算 → ②\(m_{\text{後}}\)計算 → ③\(\Delta m\)計算 → ④減少率計算
    • (3): ①\(\Delta m\)[g]計算 → ②\(\Delta m\)[kg]換算 → ③\(E\)[J]計算 → ④\(m_{\text{石油}}\)[kg]計算 → ⑤トン換算
  • 概算による検算:
    • (1) 減少率: \(\Delta m \approx 4.029 – 4.003 = 0.026\)。元の質量 \(\approx 4\)。減少率 \(\approx (0.026/4) \times 100 \approx 0.65\%\)。計算結果の0.663%と近い。
    • (2) 比: \(0.66 / 0.09 \approx 66/9 \approx 7.3\)。計算結果の7.2倍と近い。
    • (3) 石油のトン数: 1gの水素の質量欠損は \(1\text{g} \times 0.0066 \approx 6.6 \times 10^{-6}\text{kg}\)。エネルギーは \(E \approx 6.6 \times 10^{-6} \times (3 \times 10^8)^2 \approx 6 \times 10^{11}\text{J}\)。石油1kgの燃焼熱は \(4 \times 10^7\text{J}\)。相当する石油の質量は \((6 \times 10^{11}) / (4 \times 10^7) = 1.5 \times 10^4 \text{kg} = 15\)トン。計算結果と一致します。
  • 有効数字の意識: (2)では「有効数字2桁で答えよ」という明確な指示があります。計算途中では多めの桁数(3〜4桁)で計算を進め、最後の最後に指示に従って四捨五入しましょう。
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