Step 2
402 交流
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「抵抗・コイル・コンデンサーの交流回路における振る舞い」です。3つの基本的な回路素子それぞれに同じ交流電圧をかけたとき、流れる電流がどのように異なるかを計算する問題です。各素子の特性を正しく理解しているかが問われます。
- オームの法則(実効値): 交流回路でも、電圧と電流の実効値の間には \(V_e = Z I_e\) という形のオームの法則が成り立ちます。ここで \(Z\) は抵抗やリアクタンス(交流における流れにくさ)を表します。
- 誘導リアクタンス: コイルの交流に対する流れにくさを表す量で、\(X_L = \omega L = 2\pi f L\) で計算されます。周波数 \(f\) や自己インダクタンス \(L\) が大きいほど、電流は流れにくくなります。
- 容量リアクタンス: コンデンサーの交流に対する流れにくさを表す量で、\(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C} = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) で計算されます。周波数 \(f\) や電気容量 \(C\) が大きいほど、電流は流れやすくなります(リアクタンスは小さくなります)。
- 角周波数と周波数の関係: 計算には角周波数 \(\omega\) が必要ですが、問題では周波数 \(f\) が与えられているため、\(\omega = 2\pi f\) の関係式を用いて変換します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 抵抗に流れる電流は、直流と同様にオームの法則 \(I_{Re} = V_e / R\) を用いて計算します。
- コイルに流れる電流は、まず誘導リアクタンス \(X_L\) を計算し、それを抵抗と見なしてオームの法則 \(I_{Le} = V_e / X_L\) を適用します。
- コンデンサーに流れる電流は、まず容量リアクタンス \(X_C\) を計算し、オームの法則 \(I_{Ce} = V_e / X_C\) を適用します。
抵抗に流れる電流
思考の道筋とポイント
抵抗に交流電圧をかけた場合、電流と電圧の関係は直流のときと全く同じオームの法則で記述できます。交流では電圧や電流の値が常に変動するため、その代表値として「実効値」を用います。
この設問における重要なポイント
- 抵抗におけるオームの法則(実効値): \(V_e = R I_{Re}\)
具体的な解説と立式
抵抗に流れる電流の実効値を \(I_{Re}\) とします。抵抗値 \(R\)、電圧の実効値 \(V_e\) が与えられているので、オームの法則を適用します。
$$ I_{Re} = \frac{V_e}{R} $$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = IR\)
与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{Re} &= \frac{100}{100} \\[2.0ex]
&= 1.00 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
抵抗に流れる交流電流の計算は、中学校で習った直流のオームの法則と全く同じです。「電流 = 電圧 ÷ 抵抗」の式に、問題で与えられた電圧の実効値と抵抗値をそのまま代入するだけで計算できます。
抵抗に流れる電流の実効値は \(1.00 \text{ A}\) です。基本的な公式の適用であり、妥当な結果です。
コイルに流れる電流
思考の道筋とポイント
コイルは、流れる電流が変化すると、その変化を妨げる向きに電圧(誘導起電力)を発生させる性質があります。このため、常に電圧が変化する交流に対しては「流れにくさ」を示します。この流れにくさを「誘導リアクタンス \(X_L\)」と呼び、これを計算した上でオームの法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 誘導リアクタンスの定義: \(X_L = \omega L = 2\pi f L\)
- コイルにおけるオームの法則(実効値): \(V_e = X_L I_{Le}\)
具体的な解説と立式
コイルに流れる電流の実効値を \(I_{Le}\) とします。まず、コイルの誘導リアクタンス \(X_L\) を計算します。
$$ X_L = 2\pi f L $$
次に、この \(X_L\) を抵抗値のように扱い、オームの法則を適用して \(I_{Le}\) を求めます。
$$ I_{Le} = \frac{V_e}{X_L} = \frac{V_e}{2\pi f L} $$
使用した物理公式
- 誘導リアクタンス: \(X_L = 2\pi f L\)
- オームの法則: \(V_e = X_L I_{Le}\)
与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{Le} &= \frac{100}{2 \times 3.14 \times 50 \times 30} \\[2.0ex]
&= \frac{100}{9420} \\[2.0ex]
&\approx 0.01061… \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(I_{Le} \approx 1.1 \times 10^{-2} \text{ A}\) となります。
コイルが交流をどれだけ流しにくいかを示す「誘導リアクタンス」という値をまず計算します。この値は、コイルの性能(\(L\))と交流の周波数(\(f\))が大きいほど大きくなります。計算したリアクタンスを抵抗値だと思って、オームの法則「電流 = 電圧 ÷ リアクタンス」に当てはめれば、電流が求まります。
コイルに流れる電流の実効値は \(1.1 \times 10^{-2} \text{ A}\) です。自己インダクタンス \(L=30 \text{ H}\) は非常に大きな値であるため、リアクタンスも極めて大きくなり、結果として非常に小さな電流しか流れないという結果は物理的に妥当です。
コンデンサーに流れる電流
思考の道筋とポイント
コンデンサーは、電圧をかけると電荷を蓄え(充電)、電圧が下がると電荷を放出(放電)します。交流電圧のように電圧が絶えず変化する場合、コンデンサーは充放電を繰り返すことで、結果的に電流が流れているように見えます。このときの「流れにくさ」を「容量リアクタンス \(X_C\)」と呼び、これを計算してオームの法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 容量リアクタンスの定義: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C} = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)
- コンデンサーにおけるオームの法則(実効値): \(V_e = X_C I_{Ce}\)
具体的な解説と立式
コンデンサーに流れる電流の実効値を \(I_{Ce}\) とします。オームの法則 \(I_{Ce} = V_e / X_C\) に、容量リアクタンスの定義式を代入すると、計算がより簡単になります。
$$ I_{Ce} = \frac{V_e}{X_C} = \frac{V_e}{\left(\frac{1}{2\pi f C}\right)} = 2\pi f C V_e $$
使用した物理公式
- 容量リアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)
- オームの法則: \(V_e = X_C I_{Ce}\)
与えられた値を代入して計算します。電気容量 \(100 \text{ μF}\) は \(100 \times 10^{-6} \text{ F}\) です。
$$
\begin{aligned}
I_{Ce} &= 2 \times 3.14 \times 50 \times (100 \times 10^{-6}) \times 100 \\[2.0ex]
&= (2 \times 50) \times 3.14 \times 100 \times 10^{-6} \times 100 \\[2.0ex]
&= 100 \times 3.14 \times 100 \times 100 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^2 \times 10^2 \times 10^2 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^{(2+2+2-6)} \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^0 \\[2.0ex]
&= 3.14 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(I_{Ce} \approx 3.1 \text{ A}\) となります。
コンデンサーが交流をどれだけ流しにくいかを示す「容量リアクタンス」を計算し、オームの法則に当てはめても良いですが、ここでは「流れやすさ」を直接計算しています。コンデンサーは、性能(\(C\))や周波数(\(f\))が大きいほど交流を流しやすくなります。この「流れやすさ」に電圧を掛けることで、電流を直接求めることができます。
コンデンサーに流れる電流の実効値は \(3.1 \text{ A}\) です。電気容量 \(C=100 \text{ μF}\) は比較的大きく、周波数も \(50 \text{ Hz}\) なので、リアクタンスは小さくなり、大きな電流が流れるという結果は物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 交流回路における各素子の振る舞い:
- 核心: 抵抗、コイル、コンデンサーという3つの基本素子が、交流電源に対してそれぞれどのように振る舞うか、その「流れにくさ」の性質を理解することが全てです。
- 理解のポイント:
- 抵抗 (\(R\)): 周波数に関係なく、直流と同じようにオームの法則 \(I_{Re} = V_e/R\) に従います。
- コイル (\(L\)): 「誘導リアクタンス \(X_L = 2\pi f L\)」という流れにくさを持ちます。周波数 \(f\) が高いほど、また自己インダクタンス \(L\) が大きいほど、電流は流れにくくなります。
- コンデンサー (\(C\)): 「容量リアクタンス \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)」という流れにくさを持ちます。周波数 \(f\) が高いほど、また電気容量 \(C\) が大きいほど、電流は流れやすくなります(リアクタンスは小さくなります)。
- これらの「流れにくさ」(抵抗やリアクタンス)を計算し、オームの法則 \(I_e = V_e / (\text{流れにくさ})\) を適用することが、この問題の統一的な解法です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RLC直列回路: この問題で計算した各素子のリアクタンスを使い、回路全体の合成抵抗である「インピーダンス」\(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) を求めて、回路全体に流れる電流 \(I_e = V_e/Z\) を計算する問題。
- RLC並列回路: この問題のように各素子に流れる電流を個別に計算した後、それらのベクトル和(フェーザ図で合成)をとって、電源から流れ出す全体の電流を求める問題。
- 共振回路: コイルのリアクタンス \(X_L\) とコンデンサーのリアクタンス \(X_C\) が等しくなる「共振周波数」を求める問題。このとき、回路のインピーダンスが最小(直列の場合)または最大(並列の場合)になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 回路の接続方法を確認: 問題が「直列」「並列」「それぞれ単独」のどれなのかを最初に確認します。この問題は「それぞれに」電圧をかけるので、3つの独立した回路として考えます。
- 与えられた値の種類と単位を確認: 電圧・電流が「実効値」か「最大値」か。周波数が \(f\) か角周波数 \(\omega\) か。特に、電気容量の単位が \(\mu\text{F}\) (マイクロファラッド) になっていないか注意し、計算前に \(10^{-6}\) を乗じて \(\text{F}\) (ファラッド) に直します。
- リアクタンスを先に計算する: コイルやコンデンサーが出てきたら、まずそのリアクタンス \(X_L, X_C\) を計算する、という手順を習慣づけると、思考が整理されます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- リアクタンスの公式の混同:
- 誤解: コイルのリアクタンスを \(1/(2\pi f L)\)、コンデンサーのリアクタンスを \(2\pi f C\) と、分母と分子を逆にして覚えてしまう。
- 対策: 物理的なイメージで覚えるのが効果的です。コイルは「急な変化を嫌う」ので、周波数が高い(変化が速い)ほど電流を通しにくい(\(X_L \propto f\))。コンデンサーは「溜めては流す」を繰り返すので、周波数が高いほど活発に働き、電流を通しやすい(\(X_C \propto 1/f\))。
- 単位の接頭辞の変換ミス:
- 誤解: 電気容量 \(100 \mu\text{F}\) を、\(100 \times 10^{-3} \text{F}\) (ミリと勘違い) や、そのまま \(100 \text{F}\) として計算してしまう。
- 対策: \(\mu\) (マイクロ) は \(10^{-6}\) であることを正確に覚える。計算を始める前に、与えられた数値をすべてSI基本単位(\(\Omega, \text{H}, \text{F}, \text{Hz}, \text{V}\))に変換するステップを必ず踏むようにします。
- \(2\pi\) の計算漏れ:
- 誤解: 角周波数 \(\omega = 2\pi f\) の \(2\pi\) を計算に入れ忘れて、\(X_L = fL\) などとしてしまう。
- 対策: リアクタンスの公式を声に出して「エックスエルは、にーパイエフエル」のように覚える。または、まず \(\omega = 2\pi f\) を計算してから、\(X_L = \omega L\), \(X_C = 1/(\omega C)\) に代入する、という2段階のプロセスを徹底します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- オームの法則 (\(I_e = V_e / Z\)):
- 選定理由: 電圧と「流れにくさ」が分かっているときに、電流を求めるための最も基本的で直接的な関係式だからです。
- 適用根拠: 交流回路では電圧や電流が常に変動しますが、そのエネルギー的な平均効果を表す「実効値」を用いると、直流回路のオームの法則と全く同じ形式の式が成り立ちます。この便利な性質を利用することで、交流回路の計算をシンプルに扱うことができます。
- リアクタンスの公式 (\(X_L = 2\pi f L\), \(X_C = 1/(2\pi f C)\)):
- 選定理由: オームの法則を適用するためには、まずコイルやコンデンサーの「流れにくさ」を具体的な数値として求める必要があるため、これらの定義式を使用します。
- 適用根拠: これらの式は、電磁気学の基本法則(ファラデーの電磁誘導の法則やコンデンサーの基本式 \(Q=CV\))を、正弦波状に変化する交流に対して適用し、数学的に導出されたものです。コイルは電流の時間変化率に比例した電圧を生み、コンデンサーは電荷(電流の積分値)に比例した電圧を持つという物理的性質が、周波数 \(f\) に依存するリアクタンスという形で現れています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数計算の活用: コンデンサーの計算のように \(10^{-6}\) などが含まれる場合、\(2 \times 3.14 \times 50 \times 100 \times 10^{-6} \times 100\) をそのまま計算するのではなく、\(10\)のべき乗をまとめて最後に処理する習慣をつけましょう。
例:\((2 \times 50) \times 3.14 \times 100 \times 100 \times 10^{-6} = 100 \times 3.14 \times 10^4 \times 10^{-6} = 3.14 \times 10^2 \times 10^4 \times 10^{-6} = 3.14 \times 10^{2+4-6} = 3.14 \times 10^0 = 3.14\)。 - 計算の順序の工夫: 上記の例のように、\(2 \times 50 = 100\) のように、計算するとキリの良い数字になる組み合わせを先に行うと、計算全体が楽になります。
- 有効数字の確認: 問題文で与えられた数値(\(30\text{H}\), \(50\text{Hz}\) などは有効数字2桁)を確認し、最終的な答えを適切な桁数に丸める意識を持つことが大切です。この問題の解答例では、\(1.1 \times 10^{-2}\text{A}\) や \(3.1\text{A}\) のように有効数字2桁で答えられています。計算の途中では多めの桁数を残しておき、最後に丸めるのが基本です。
403 交流回路
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「交流回路の基本要素の総合問題」です。グラフから交流電源の特性(周期、最大値)を読み取り、それをもとに抵抗、コイル、コンデンサーそれぞれを接続した際のリアクタンス、電流、位相、消費電力といった基本的な物理量を網羅的に計算する問題です。
- 交流の基本: グラフから周期\(T\)、最大値\(V_0\)を読み取り、周波数\(f=1/T\)、角周波数\(\omega=2\pi f\)、実効値\(V_e = V_0/\sqrt{2}\)を計算できること。
- リアクタンス: コイルの誘導リアクタンス\(X_L = \omega L\)と、コンデンサーの容量リアクタンス\(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\)の定義を理解し、計算できること。
- オームの法則: 抵抗、コイル、コンデンサーのそれぞれについて、電圧と電流の最大値(または実効値)の関係(\(V_0 = R I_{R0}\), \(V_0 = X_L I_{L0}\), \(V_0 = X_C I_{C0}\))を適用できること。
- 位相関係: 電圧を基準としたとき、抵抗を流れる電流は同相、コイルを流れる電流は位相が\(\pi/2\)遅れ、コンデンサーを流れる電流は位相が\(\pi/2\)進むという関係を理解していること。
- 消費電力: 交流回路で時間平均したときに電力を消費するのは抵抗のみであり、その平均消費電力は\(P = V_e I_e = R I_e^2\)で計算されること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、まず与えられた電圧のグラフから、交流電源の基本的なパラメータ(周波数、実効値、瞬時値の式)をすべて求めます。
- (4)〜(5)では、(1)〜(3)で求めた電源の特性を使い、各素子のリアクタンスと、そこに流れる電流の最大値をオームの法則を用いて計算します。
- (6)〜(7)では、交流回路における電圧と電流の位相関係の基本知識を基に、各素子を流れる電流の瞬時値を式で表現します。
- (8)では、平均消費電力の定義に基づき、各素子での消費電力を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
グラフから交流の周期 \(T\) を読み取り、周波数 \(f\) との関係式 \(f=1/T\) を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 周期 \(T\): グラフ上で波形が1回繰り返すのにかかる時間。
- 周波数 \(f\): 1秒あたりに波形が繰り返す回数。\(f=1/T\)。
具体的な解説と立式
与えられたグラフから、電圧の波形が1回振動して元に戻るまでの時間(周期 \(T\))を読み取ります。
$$ T = 0.020 \text{ [s]} $$
周波数 \(f\) は周期 \(T\) の逆数で与えられます。
$$ f = \frac{1}{T} $$
使用した物理公式
- 周波数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{0.020} \\[2.0ex]
&= 50 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
グラフの横軸は時間を表しています。波が1回分振動するのにかかる時間が「周期」です。グラフを見ると、0秒から始まって0.020秒でちょうど1回分の波が終わっているので、周期は0.020秒です。「周波数」は1秒間に何回振動するかを表すので、周期の逆数を計算します。
交流の周波数は \(50 \text{ Hz}\) です。これは東日本の商用電源周波数と同じであり、妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
グラフから電圧の最大値(振幅)\(V_0\) を読み取り、実効値 \(V_e\) との関係式 \(V_e = V_0 / \sqrt{2}\) を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 最大値 \(V_0\): 交流電圧がとりうる最大の瞬時値。グラフの波の高さに相当。
- 実効値 \(V_e\): 交流が直流と同じ仕事をする場合の相当値。正弦波交流では \(V_e = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\)。
具体的な解説と立式
グラフの縦軸から、電圧の最大値 \(V_0\) を読み取ります。
$$ V_0 = 28 \text{ [V]} $$
正弦波交流における電圧の実効値 \(V_e\) は、最大値 \(V_0\) を \(\sqrt{2}\) で割ることで求められます。
$$ V_e = \frac{V_0}{\sqrt{2}} $$
使用した物理公式
- 最大値と実効値の関係: \(V_e = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\)
与えられた値を代入して計算します。問題文に指示はありませんが、模範解答に合わせて \(\sqrt{2} \approx 1.41\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
V_e &= \frac{28}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= 14\sqrt{2} \\[2.0ex]
&\approx 14 \times 1.41 \\[2.0ex]
&= 19.74 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
これを四捨五入して有効数字2桁で表すと、約 \(20 \text{ V}\) となります。
交流電圧の「実効値」は、家庭用のコンセントが「100V」と言われるときの、その「100V」に相当する値です。グラフから読み取れる波のてっぺんの値(最大値)を \(\sqrt{2}\) (およそ1.41) で割ると、この実効値が計算できます。
電圧の実効値は約 \(20 \text{ V}\) です。最大値から実効値を求める基本的な計算であり、妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
交流電圧の瞬時値 \(V\) を表す式 \(V = V_0 \sin(\omega t)\) を作成します。これには最大値 \(V_0\) と角周波数 \(\omega\) が必要です。\(V_0\) はグラフから、\(\omega\) は(1)で求めた周波数 \(f\) から \(\omega = 2\pi f\) の関係式を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 瞬時値の式: \(V = V_0 \sin(\omega t)\)
- 角周波数: \(\omega = 2\pi f\)
具体的な解説と立式
電圧の瞬時値の式は \(V = V_0 \sin(\omega t)\) で表されます。
グラフから最大値 \(V_0 = 28 \text{ V}\) です。
角周波数 \(\omega\) は、(1)で求めた周波数 \(f=50 \text{ Hz}\) を用いて計算します。
$$ \omega = 2\pi f $$
これらの値を瞬時値の式に代入します。
使用した物理公式
- 交流電圧の瞬時値: \(V = V_0 \sin(\omega t)\)
- 角周波数と周波数の関係: \(\omega = 2\pi f\)
まず角周波数 \(\omega\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= 2\pi \times 50 \\[2.0ex]
&= 100\pi \text{ [rad/s]}
\end{aligned}
$$
これを \(V_0=28\) とともに式の形にまとめます。
$$ V = 28 \sin(100\pi t) $$
交流電圧の式を作るには、「波の高さ(最大値)」と「振動の速さ(角周波数)」が必要です。波の高さはグラフから28Vとわかります。振動の速さは、(1)で求めた周波数(1秒間の振動回数)を \(2\pi\) 倍することで求められます。これらをサインカーブの基本式に当てはめます。
電源電圧の式は \(V = 28 \sin(100\pi t) \text{ [V]}\) となります。グラフの情報を正しく数式に変換できました。
問(4)
思考の道筋とポイント
コイルとコンデンサーの交流に対する「流れにくさ」であるリアクタンスを計算します。コイルの誘導リアクタンスは \(X_L = \omega L\)、コンデンサーの容量リアクタンスは \(X_C = 1/(\omega C)\) で計算します。角周波数 \(\omega\) は(3)で求めた値を使います。
この設問における重要なポイント
- 誘導リアクタンス: \(X_L = \omega L\)
- 容量リアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\)
具体的な解説と立式
コイルの誘導リアクタンス \(X_L\) は、角周波数 \(\omega = 100\pi \text{ rad/s}\) と自己インダクタンス \(L=0.20 \text{ H}\) を用いて計算します。
$$ X_L = \omega L $$
コンデンサーの容量リアクタンス \(X_C\) は、角周波数 \(\omega = 100\pi \text{ rad/s}\) と電気容量 \(C=200 \text{ μF} = 200 \times 10^{-6} \text{ F}\) を用いて計算します。
$$ X_C = \frac{1}{\omega C} $$
使用した物理公式
- 誘導リアクタンス: \(X_L = \omega L\)
- 容量リアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\)
\(\pi=3.14\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
X_L &= 100\pi \times 0.20 \\[2.0ex]
&= 20\pi \\[2.0ex]
&= 20 \times 3.14 \\[2.0ex]
&= 62.8 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(X_L \approx 63 \text{ Ω}\) です。
$$
\begin{aligned}
X_C &= \frac{1}{100\pi \times (200 \times 10^{-6})} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2 \times 10^4 \pi \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{0.02\pi} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{0.02 \times 3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{0.0628} \\[2.0ex]
&\approx 15.92… \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(X_C \approx 16 \text{ Ω}\) です。
コイルとコンデンサーが交流をどれだけ流しにくいかを示す「リアクタンス」を計算します。コイルの場合は、(3)で求めた角周波数とコイルの性能(\(L\))を掛け算します。コンデンサーの場合は、角周波数とコンデンサーの性能(\(C\))を掛け算したものの逆数をとります。
コイルのリアクタンスは約 \(63 \text{ Ω}\)、コンデンサーのリアクタンスは約 \(16 \text{ Ω}\) です。定義式に基づいた計算であり、妥当な結果です。
問(5)
思考の道筋とポイント
各素子に流れる電流の最大値 \(I_0\) を求めます。これは、電源電圧の最大値 \(V_0\) と、各素子の抵抗またはリアクタンスを用いて、オームの法則 \(I_0 = V_0 / Z\) (\(Z\) は抵抗やリアクタンス)を適用することで計算できます。
この設問における重要なポイント
- オームの法則(最大値): \(V_0 = Z I_0\)
- 抵抗の場合: \(I_{R0} = V_0 / R\)
- コイルの場合: \(I_{L0} = V_0 / X_L\)
- コンデンサーの場合: \(I_{C0} = V_0 / X_C\)
具体的な解説と立式
電圧の最大値は \(V_0 = 28 \text{ V}\) です。
抵抗を流れる電流の最大値 \(I_{R0}\) は、抵抗値 \(R=20 \text{ Ω}\) を用いて計算します。
$$ I_{R0} = \frac{V_0}{R} $$
コイルを流れる電流の最大値 \(I_{L0}\) は、(4)で求めたリアクタンス \(X_L \approx 63 \text{ Ω}\) を用いて計算します。
$$ I_{L0} = \frac{V_0}{X_L} $$
コンデンサーを流れる電流の最大値 \(I_{C0}\) は、(4)で求めたリアクタンス \(X_C \approx 16 \text{ Ω}\) を用いて計算します。
$$ I_{C0} = \frac{V_0}{X_C} $$
使用した物理公式
- オームの法則(最大値)
$$
\begin{aligned}
I_{R0} &= \frac{28}{20} \\[2.0ex]
&= 1.4 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_{L0} &= \frac{28}{62.8} \\[2.0ex]
&\approx 0.445… \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(I_{L0} \approx 0.45 \text{ A}\) です。
$$
\begin{aligned}
I_{C0} &= \frac{28}{15.9} \\[2.0ex]
&\approx 1.76… \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(I_{C0} \approx 1.8 \text{ A}\) です。
(注:計算には丸める前の値 \(X_L=62.8, X_C=15.9\) を用いる方が精度が高い)
各部品に流れる電流の最大値を、オームの法則「電流 = 電圧 ÷ 流れにくさ」を使って計算します。電圧は最大値の28Vを、流れにくさはそれぞれの抵抗値や(4)で計算したリアクタンスの値を使います。
電流の最大値は、抵抗で \(1.4 \text{ A}\)、コイルで \(0.45 \text{ A}\)、コンデンサーで \(1.8 \text{ A}\) となります。
問(6)
思考の道筋とポイント
各素子における電圧と電流の位相関係について、基本的な知識を答える問題です。
この設問における重要なポイント
- 抵抗: 電圧と電流の位相は同じ(同相)。
- コイル: 電流の位相は、電圧の位相より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) (90°) 遅れる。
- コンデンサー: 電流の位相は、電圧の位相より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) (90°) 進む。
具体的な解説と立式
これは交流回路の基本性質に関する知識問題であり、立式は不要です。
- 抵抗では、電圧が最大になるときに電流も最大になり、電圧が0のときに電流も0になります。つまり、位相はずれません(同相)。
- コイルでは、電流の変化を妨げる性質があるため、電流の変化が電圧の変化より遅れます。具体的には、電流の位相は電圧より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れます。
- コンデンサーでは、電圧をかけるとまず電流が流れ込んで充電が始まるため、電流の変化が電圧の変化より先行します。具体的には、電流の位相は電圧より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進みます。
使用した物理公式なし(基本知識)
計算は不要です。
電圧と電流のピークのタイミングが、部品によって異なります。
- 抵抗:電圧と電流のピークは同時にやってきます。
- コイル:電流のピークは、電圧のピークより少し遅れてやってきます。
- コンデンサー:電流のピークは、電圧のピークより少し早くやってきます。
この「少し」のずれが、ちょうど90°(\(\pi/2\)ラジアン)に相当します。
各素子の位相関係を正しく記述できました。
問(7)
思考の道筋とポイント
各素子を流れる電流の瞬時値 \(I\) を式で表します。(3)で求めた電圧の式 \(V = 28 \sin(100\pi t)\) を基準に、(5)で求めた電流の最大値と(6)で確認した位相関係を組み合わせて、\(I = I_0 \sin(100\pi t + \phi)\) の形の式を作成します。
この設問における重要なポイント
- 抵抗の電流: \(I_R = I_{R0} \sin(\omega t)\)
- コイルの電流: \(I_L = I_{L0} \sin(\omega t – \displaystyle\frac{\pi}{2})\)
- コンデンサーの電流: \(I_C = I_{C0} \sin(\omega t + \displaystyle\frac{\pi}{2})\)
- 三角関数の公式: \(\sin(\theta – \pi/2) = -\cos\theta\), \(\sin(\theta + \pi/2) = \cos\theta\)
具体的な解説と立式
基準となる電圧の式は \(V = 28 \sin(100\pi t)\) です。角周波数は \(\omega = 100\pi\) です。
- 抵抗: 位相は同じなので、\(\phi=0\)。最大値は \(I_{R0}=1.4 \text{ A}\)。
$$ I_R = 1.4 \sin(100\pi t) $$ - コイル: 位相は \(\pi/2\) 遅れるので、\(\phi = -\pi/2\)。最大値は \(I_{L0}=0.45 \text{ A}\)。
$$ I_L = 0.45 \sin\left(100\pi t – \frac{\pi}{2}\right) = -0.45 \cos(100\pi t) $$ - コンデンサー: 位相は \(\pi/2\) 進むので、\(\phi = +\pi/2\)。最大値は \(I_{C0}=1.8 \text{ A}\)。
$$ I_C = 1.8 \sin\left(100\pi t + \frac{\pi}{2}\right) = 1.8 \cos(100\pi t) $$
使用した物理公式
- 交流電流の瞬時値の式
- 三角関数の加法定理(位相シフト)
立式が主であり、計算は不要です。
(3)で作った電圧の式をベースにします。電流の式を作るには、「最大値」と「位相のずれ」を反映させます。
- 抵抗:最大値は1.4Aで、ずれはないので、電圧の式のsinの中身はそのまま使います。
- コイル:最大値は0.45Aで、位相が\(\pi/2\)遅れるので、sinの中身から\(\pi/2\)を引きます。
- コンデンサー:最大値は1.8Aで、位相が\(\pi/2\)進むので、sinの中身に\(\pi/2\)を足します。
各素子を流れる電流の式を、最大値と位相関係を正しく反映させて記述できました。
問(8)
思考の道筋とポイント
各素子で消費される電力の「時間平均」を求めます。交流回路では、時間平均したときに電力を消費するのは抵抗のみです。コイルとコンデンサーは、エネルギーを蓄えたり放出したりするだけで、長期的には電力を消費しません。
この設問における重要なポイント
- 平均消費電力: \(P = V_e I_e \cos\phi\)。\(\phi\)は電圧と電流の位相差。
- 抵抗の消費電力: \(\phi=0\) なので \(P_R = V_e I_{Re} = R I_{Re}^2\)。
- コイル・コンデンサーの消費電力: \(\phi = \pm \pi/2\) なので \(\cos\phi=0\)。したがって \(P_L = P_C = 0\)。
具体的な解説と立式
- 抵抗:
平均消費電力 \(P_R\) は、電圧の実効値 \(V_e\) と電流の実効値 \(I_{Re}\) の積で求められます。
$$ P_R = V_e I_{Re} $$
ここで、\(V_e \approx 20 \text{ V}\) ((2)より)、\(I_{Re} = I_{R0}/\sqrt{2} = 1.4/\sqrt{2} \text{ A}\) です。
または、最大値を用いて \(P_R = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 I_{R0}\) を用いても計算できます。 - コイルとコンデンサー:
理想的なコイルとコンデンサーはエネルギーを消費しません。1周期の間で電源から受け取ったエネルギーをすべて電源に返すため、時間平均した消費電力は0になります。
$$ P_L = 0 \text{ [W]} $$
$$ P_C = 0 \text{ [W]} $$
使用した物理公式
- 平均消費電力: \(P = V_e I_e\) (抵抗の場合)
抵抗の消費電力を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_R &= \frac{1}{2} V_0 I_{R0} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 28 \times 1.4 \\[2.0ex]
&= 14 \times 1.4 \\[2.0ex]
&= 19.6 \text{ [W]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(P_R \approx 20 \text{ W}\) です。
長い時間で見たときに、実際に熱を発生させるなどして電気エネルギーを消費するのは抵抗だけです。コイルとコンデンサーは、電気エネルギーを一時的に蓄えて、また元に戻すだけなので、エネルギーを消費しません。抵抗の消費電力は、「電圧の実効値 × 電流の実効値」で計算できます。
抵抗の平均消費電力は \(20 \text{ W}\)、コイルとコンデンサーの平均消費電力は \(0 \text{ W}\) となります。これは交流回路における電力消費の基本であり、妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 交流の基本パラメータと各素子の応答:
- 核心: この問題は、交流回路の基本を網羅的に理解しているかを試すものです。核心は、(A) グラフから交流の基本情報(\(V_0, T, f, \omega, V_e\))を正確に読み取り、計算できること、そして (B) その交流電源に対して、抵抗・コイル・コンデンサーがそれぞれどのように応答するか(リアクタンス、電流の大きさ、位相、消費電力)を体系的に理解していること、の2点に集約されます。
- 理解のポイント:
- 電源の特性: 交流の振る舞いは、その「大きさ(最大値\(V_0\), 実効値\(V_e\))」と「速さ(周期\(T\), 周波数\(f\), 角周波数\(\omega\))」で決まります。これらは互いに変換可能であり、自在に計算できる必要があります。
- 各素子の個性:
- 抵抗\(R\): 電圧と電流が常に比例関係(同位相)。電力を消費する唯一の素子。
- コイル\(L\): 電流の変化を妨げるため、電流の位相が電圧より\(\pi/2\)遅れる。エネルギーを消費しない。流れにくさ(リアクタンス\(X_L\))は周波数に比例する。
- コンデンサー\(C\): 電荷を溜めてから電圧が上がるため、電流の位相が電圧より\(\pi/2\)進む。エネルギーを消費しない。流れにくさ(リアクタンス\(X_C\))は周波数に反比例する。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RLC直列・並列回路: この問題で求めた各素子のリアクタンスや電流の瞬時値を使って、それらを直列または並列に接続した回路全体のインピーダンス、電流、位相差、消費電力を求める問題。フェーザ図(ベクトル図)を描いて合成する計算が必要になります。
- 周波数を変化させる問題: 電源の周波数\(f\)を変えたときに、各素子のリアクタンスや流れる電流がどのように変化するかを問う問題。\(X_L \propto f\), \(X_C \propto 1/f\) の関係を理解しているかが鍵となります。
- 共振回路: RLC直列回路で、コイルのリアクタンス\(X_L\)とコンデンサーのリアクタンス\(X_C\)が等しくなり、電流が最大になる「共振周波数」を計算させる問題。
- 初見の問題での着眼点:
- まずグラフを解読する: 交流回路の問題でグラフが与えられたら、設問を読む前に、まずグラフから読み取れるすべての情報(\(V_0, T\))を抜き出し、そこから計算できるもの(\(f, \omega, V_e\))をメモしておきます。これが全ての計算の土台となります。
- 値の種類を常に意識する: 計算の各段階で、自分が扱っているのが「最大値」なのか「実効値」なのかを常に意識します。「電流の式を求めよ」なら最大値が必要、「消費電力を求めよ」なら実効値が必要、というように目的によって使い分けます。
- 位相関係を図でイメージする: 電圧を基準(例:\(\sin\))としたとき、抵抗の電流は\(\sin\)、コイルの電流は\(\sin(\dots-\pi/2) = -\cos\)、コンデンサーの電流は\(\sin(\dots+\pi/2) = \cos\) となる関係を、頭の中で簡単な波形グラフやフェーザ図でイメージできると、式の形を間違えにくくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 最大値と実効値の混同:
- 誤解: (2)で実効値を求めるときに最大値をそのまま答えたり、(5)で最大値を求めるところを実効値で計算したり、(8)で消費電力を最大値で計算(例: \(P=V_0 I_0\))してしまう。
- 対策: 「実効値は最大値の\(1/\sqrt{2}\)倍」「消費電力は実効値で計算」という2大ルールを徹底的に覚える。問題で何を問われているかを正確に把握し、適切な値を選択する訓練を積む。
- リアクタンスの計算ミス:
- 誤解: (4)で、\(X_L = \omega L\) と \(X_C = 1/(\omega C)\) の公式を混同する、または角周波数\(\omega\)ではなく周波数\(f\)を使ってしまう(\(2\pi\)を忘れる)。
- 対策: コイルは周波数が高いほど流れにくい(比例)、コンデンサーは周波数が高いほど流れやすい(反比例)という物理的イメージと公式を結びつける。また、\(\omega = 2\pi f\) の変換を計算の最初のステップとして必ず行う習慣をつける。
- 位相の進み・遅れの混同:
- 誤解: (6),(7)でコイルとコンデンサーの位相の進み・遅れを逆にしてしまう。
- 対策: 語呂合わせ(例:「コイルは遅れる」)や、物理的イメージ(コンデンサーはまず電流が流れて充電されるから電流が先(進む))で覚える。電圧を基準にしたときの電流の位相(抵抗:0, コイル:\(-\pi/2\), コンデンサー:\(+\pi/2\))をセットで記憶する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 実効値の定義 (\(V_e = V_0/\sqrt{2}\)):
- 選定理由: (2)で、グラフから読み取れる最大値と、回路のエネルギー的な性質を表す実効値を結びつけるために必要です。
- 適用根拠: 実効値は、交流が抵抗で消費する電力が、ある直流電圧・電流が消費する電力と等しくなるように定義された値です。正弦波交流の場合、瞬時電力 \(P(t) = V(t)I(t)\) を1周期にわたって平均すると、その平均値が実効値同士の積 \(P = V_e I_e\) に等しくなります。この関係から、数学的に \(V_e = V_0/\sqrt{2}\) が導かれます。
- 平均消費電力の公式 (\(P = V_e I_e \cos\phi\)):
- 選定理由: (8)で、時間平均した消費電力を求めるための最も一般的な公式です。
- 適用根拠: 瞬時電力 \(P(t) = V(t)I(t)\) を1周期で平均した結果がこの式になります。電圧と電流の位相差が \(\phi\) である場合、この平均値には \(\cos\phi\) という項(力率)が現れます。
- 抵抗では \(\phi=0\) なので \(\cos\phi=1\) となり、\(P_R = V_e I_{Re}\)。
- コイルやコンデンサーでは \(\phi=\pm\pi/2\) なので \(\cos\phi=0\) となり、\(P=0\)。
このことから、理想的なコイルとコンデンサーは電力を消費しないという重要な結論が導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の接頭辞に注意: (4)のコンデンサーの計算で、\(200\mu\text{F}\) を \(200 \times 10^{-6}\text{F}\) に正確に変換することが計算の第一歩です。\(\mu\) (マイクロ) = \(10^{-6}\) を確実に覚えましょう。
- 分母分子の整理: (4)の \(X_C\) の計算のように、分母に複数の項がある場合は、まず分母だけを計算してから割り算を実行するとミスが減ります。
\(X_C = \displaystyle\frac{1}{100\pi \times 200 \times 10^{-6}} = \frac{1}{0.02\pi} = \frac{1}{0.0628}\) - 計算の途中では多めの桁数で: (5)のように、前の設問の計算結果(リアクタンス)を使って計算する場合、丸めた値(例: 63Ω)ではなく、丸める前の値(例: 62.8Ω)を使う方が最終的な答えの精度が高くなります。テストなどで指示がない限り、最後の答えを出す直前までは3〜4桁の有効数字を保って計算を進めるのが安全です。
- 三角関数の変換: (7)で電流の式を \(\cos\) で表現するのは、\(\sin(\theta \pm \pi/2)\) の変換公式を知っていると見通しが良くなるためです。この変換は必須ではありませんが、できると解答の選択肢に対応しやすくなります。
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