「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 26】Step1 & 例題

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

Step1

① 電流の強さ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電流の定義式を用いた電気量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電流の定義:単位時間あたりに導体の断面を通過する電気量。
  2. 電気量、電流、時間の関係式
  3. 単位の理解(A: アンペア, s: 秒, C: クーロン)。
  4. 有効数字の扱いに注意した計算

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から電流 \(I\) と時間 \(t\) の値を読み取る。
  2. 電流の定義式 \(I = \displaystyle\frac{q}{t}\) を電気量 \(q\) について解く。
  3. 値を代入して電気量 \(q\) を計算する。
  4. 有効数字を考慮して最終的な答えを求める。

思考の道筋とポイント
電流とは何か、その定義を正確に思い出すことが出発点となります。電流は「電気の流れの激しさ」を表す量で、1秒あたりにどれだけの電気量(電荷)が流れるかを示しています。この定義から、電気量 \(q\)、電流 \(I\)、時間 \(t\) の間には \(q = I \times t\) という単純な関係が成り立つことを導き出します。問題で与えられている値の単位(A, s)と求める量の単位(C)が、基本単位系で整合性が取れていることを確認することも大切です。

この設問における重要なポイント

  • 電流 \(I\) [A] の定義は、\(t\) [s] 間に導体の断面を \(q\) [C] の電気量が通過するときの、\(I = \displaystyle\frac{q}{t}\) です。
  • この式を変形すると、電気量 \(q\) は \(q = It\) と表せます。これは「電流の強さ × 時間」で総電気量が求まることを意味します。
  • 計算結果の有効数字は、計算に用いた数値の中で最も有効数字の桁数が小さいものに合わせます。この問題では、\(2.0 \times 10^{-3}\) A (2桁) と \(3.0\) s (2桁) なので、答えも2桁で表します。

具体的な解説と立式
電流の強さを \(I\)、電流を流した時間を \(t\)、この間に流れた電気量を \(q\) とします。
電流の定義は、単位時間あたりに導体の断面を通過する電気量です。これを式で表すと以下のようになります。
$$ I = \displaystyle\frac{q}{t} $$
この問題では電気量 \(q\) を求めたいので、上式を \(q\) について解きます。
$$ q = I \times t $$
問題文より、電流 \(I = 2.0 \times 10^{-3}\)\(\text{[A]}\)、時間 \(t = 3.0\)\(\text{[s]}\) が与えられています。これらの値を上の式に代入することで、電気量 \(q\) を求めることができます。

使用した物理公式

  • 電流の定義式: \(I = \displaystyle\frac{q}{t}\)
    • \(I\): 電流 [A]
    • \(q\): 電気量 [C]
    • \(t\): 時間 [s]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(q = It\) に、与えられた値を代入します。
\(I = 2.0 \times 10^{-3}\)\(\text{[A]}\), \(t = 3.0\)\(\text{[s]}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
q &= (2.0 \times 10^{-3}) \times 3.0 \\[2.0ex]&= (2.0 \times 3.0) \times 10^{-3} \\[2.0ex]&= 6.0 \times 10^{-3}
\end{aligned}
$$
したがって、求める電気量は \(6.0 \times 10^{-3}\)\(\text{[C]}\) となります。

計算方法の平易な説明

電流というのは、「1秒間にどれだけの電気が流れるか」を表す量です。
この問題では、「1秒間に \(2.0 \times 10^{-3}\) クーロンの電気が流れる」という強さの電流が、「\(3.0\) 秒間」流れたわけです。
では、合計でどれだけの電気が流れたでしょうか?これは単純な掛け算で求まります。

(1秒あたりの電気の量) × (流れた秒数) = (合計の電気の量)

というわけで、\( (2.0 \times 10^{-3}) \times 3.0 = 6.0 \times 10^{-3} \) クーロン、となります。

解答 \(6.0 \times 10^{-3}\)\(\text{C}\)

② オームの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「オームの法則を用いた抵抗値の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則(\(V=RI\))。
  2. 電圧、電流、抵抗の関係
  3. 単位の変換(mA → A)。
  4. 有効数字の取り扱い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から電圧 \(V\) と電流 \(I\) の値を読み取る。
  2. 電流の単位をmA(ミリアンペア)からA(アンペア)に変換する。
  3. オームの法則 \(V=RI\) を抵抗 \(R\) について解く。
  4. 値を代入して \(R\) を計算し、有効数字を考慮して解答する。

思考の道筋とポイント
この問題は、電気回路における最も基本的な法則である「オームの法則」を正しく使えるかを確認するものです。電圧、電流、抵抗の3つの物理量のうち、2つが与えられていれば、残りの1つは必ず計算できます。計算を実行する前に、すべての物理量の単位を基本単位(電圧はV、電流はA、抵抗はΩ)に揃えることが非常に重要です。特に、問題文で与えられた電流の単位がmA(ミリアンペア)であるため、A(アンペア)への単位換算を忘れないように注意しましょう。

この設問における重要なポイント

  • オームの法則: 抵抗にかかる電圧 \(V\)\(\text{[V]}\)、流れる電流 \(I\)\(\text{[A]}\)、抵抗値 \(R\)\(\text{[Ω]}\) の間には、\(V = RI\) という関係が成り立ちます。
  • 単位換算: 電流の補助単位ミリアンペア(mA)とアンペア(A)の関係は \(1\)\(\text{A}\) \( = 1000\)\(\text{mA}\) です。したがって、\(1\)\(\text{mA}\) \( = 10^{-3}\)\(\text{A}\) となります。
  • 有効数字: 計算結果の有効数字は、計算に用いた数値の中で最も有効数字の桁数が小さいものに合わせます。この問題では、電圧 \(9.0\)\(\text{V}\) (2桁)、電流 \(200\)\(\text{mA}\) (\(0.20\)\(\text{A}\)と解釈して2桁) なので、答えも2桁で表します。

具体的な解説と立式
抵抗にかかる電圧を \(V\)、流れる電流を \(I\)、求める抵抗値を \(R\) とします。
オームの法則より、これらの量の間には次の関係が成り立ちます。
$$ V = RI $$
この問題では抵抗値 \(R\) を求めたいので、上式を \(R\) について解きます。
$$ R = \displaystyle\frac{V}{I} $$
問題文から、電圧 \(V = 9.0\)\(\text{V}\)、電流 \(I = 200\)\(\text{mA}\) が与えられています。
計算の前に、電流 \(I\) の単位を基本単位である A(アンペア)に変換します。
$$ I = 200 \text{ mA} = 200 \times 10^{-3} \text{ A} = 0.200 \text{ A} $$
計算では、有効数字を考慮して \(I = 0.20\)\(\text{A}\) として扱います。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
    • \(V\): 電圧 [V]
    • \(I\): 電流 [A]
    • \(R\): 抵抗 [Ω]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(R = \displaystyle\frac{V}{I}\) に、与えられた値を代入します。
\(V = 9.0\)\(\text{V}\)、\(I = 0.20\)\(\text{A}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
R &= \displaystyle\frac{9.0}{0.20} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{90}{2} \\[2.0ex]&= 45
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、このままで適切です。
したがって、求める抵抗値は \(45\)\(\text{Ω}\) となります。

計算方法の平易な説明

この問題は、中学校の理科でも習う「オームの法則」を使います。公式は「電圧 = 抵抗 × 電流」です。
今回は「抵抗」を知りたいので、式を変形して「抵抗 = 電圧 ÷ 電流」とします。
計算する前に、単位を揃えるのが物理の大事なルールです。電流が「200mA(ミリアンペア)」なので、これを「A(アンペア)」に直します。\(1000\)\(\text{mA}\) が \(1\)\(\text{A}\) なので、\(200\)\(\text{mA}\) は \(0.20\)\(\text{A}\) です。
あとは、電圧 \(9.0\)\(\text{V}\) を、今計算した電流 \(0.20\)\(\text{A}\) で割るだけです。
\(9.0 \div 0.20\) を計算すると \(45\) になります。
よって、答えは \(45\)\(\text{Ω}\) です。

解答 \(45\)\(\text{Ω}\)

③ 抵抗率

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗率と導体の形状から抵抗値を計算する」ことです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 抵抗値と抵抗率、長さ、断面積の関係式 \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\)。
  2. 抵抗値が導体の長さに比例し、断面積に反比例することの物理的な理解
  3. 抵抗率 \(\rho\) が物質の種類によって決まる固有の値であること
  4. 与えられた数値の単位が基本単位(m, m², Ω·m)に揃っているかの確認

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から抵抗率 \(\rho\)、長さ \(L\)、断面積 \(S\) の値を特定する。
  2. 抵抗値を計算するための公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) を用いる。
  3. 公式に各値を代入して計算する。
  4. 有効数字を考慮して最終的な答えを導出する。

思考の道筋とポイント
電気抵抗の大きさは、オームの法則で示される電圧と電流の関係だけでなく、導体そのものの「材質」と「形状」によって決まります。この関係性を表すのが \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) という公式です。この公式は、「抵抗は導体の長さに比例し、断面積に反比例する」という直感的なイメージ(長いホースや細いストローは流れにくい)と一致しており、理解しやすいです。この問題では、公式に必要なすべての値が与えられているため、式を正しく適用して計算することが求められます。

この設問における重要なポイント

  • 抵抗値 \(R\)\(\text{[Ω]}\) は、抵抗率 \(\rho\)\(\text{[Ω·m]}\)、導体の長さ \(L\)\(\text{[m]}\)、断面積 \(S\)\(\text{[m²]}\) を用いて \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) と表されます。
  • 抵抗は長さに比例します (\(R \propto L\))。導体が2倍長くなれば、抵抗も2倍になります。
  • 抵抗は断面積に反比例します (\(R \propto \displaystyle\frac{1}{S}\))。導体が2倍太くなれば(断面積が2倍になれば)、抵抗は半分になります。
  • 抵抗率 \(\rho\) は、その物質がどれだけ電気を通しにくいかを示す指標で、物質固有の値です。
  • 有効数字:問題で与えられている数値、\(3.0 \times 10^{-6}\) (2桁)、\(0.60\) (2桁)、\(1.1 \times 10^{-6}\) (2桁) はすべて有効数字2桁なので、計算結果も2桁で答えます。

具体的な解説と立式
求める抵抗値を \(R\)\(\text{[Ω]}\)、ニクロム線の抵抗率を \(\rho\)\(\text{[Ω·m]}\)、長さを \(L\)\(\text{[m]}\)、断面積を \(S\)\(\text{[m²]}\) とします。
これらの物理量の関係は、以下の式で表されます。
$$ R = \rho \displaystyle\frac{L}{S} $$
問題文から、それぞれの値は以下のように与えられています。

  • 断面積 \(S = 3.0 \times 10^{-6}\)\(\text{[m²]}\)
  • 長さ \(L = 0.60\)\(\text{[m]}\)
  • 抵抗率 \(\rho = 1.1 \times 10^{-6}\)\(\text{[Ω·m]}\)

これらの値を上の公式に代入することで、抵抗値 \(R\) を計算できます。

使用した物理公式

  • 抵抗と抵抗率の関係式: \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\)
    • \(R\): 抵抗 [Ω]
    • \(\rho\): 抵抗率 [Ω·m]
    • \(L\): 長さ [m]
    • \(S\): 断面積 [m²]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
R &= (1.1 \times 10^{-6}) \times \displaystyle\frac{0.60}{3.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{1.1 \times 0.60}{3.0} \times \displaystyle\frac{10^{-6}}{10^{-6}} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{0.66}{3.0} \\[2.0ex]&= 0.22
\end{aligned}
$$
したがって、求める抵抗値は \(0.22\)\(\text{Ω}\) となります。

計算方法の平易な説明

電気の通りにくさ(抵抗)は、電線が「長い」ほど大きく、「太い(断面積が大きい)」ほど小さくなります。この関係をまとめたのが \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) という公式です。\(\rho\)(ロー)は、ニクロム線や銅など、物質の種類によって決まっている「電気の通しにくさレベル」のようなものです。

この問題では、公式に必要な「抵抗率 \(\rho\)」「長さ \(L\)」「断面積 \(S\)」の3つの情報がすべて与えられています。
あとは公式に数字を当てはめて計算するだけです。
$$ R = (1.1 \times 10^{-6}) \times \displaystyle\frac{0.60}{3.0 \times 10^{-6}} $$
ここで、分子と分母の両方にある \(10^{-6}\) は、約分して消すことができます。
すると、計算はぐっと簡単になります。
$$ R = 1.1 \times \displaystyle\frac{0.60}{3.0} $$
まず分数の部分を計算すると、\(0.60 \div 3.0 = 0.2\) です。
最後に、\(1.1 \times 0.2 = 0.22\) となります。
よって、このニクロム線の抵抗は \(0.22\)\(\text{Ω}\) です。

解答 \(0.22\)\(\text{Ω}\)

④ 抵抗率の温度係数

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗値の温度変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 抵抗値の温度変化を表す公式 \(R = R_0(1 + \alpha t)\)。
  2. 抵抗率の温度係数 \(\alpha\) の意味の理解
  3. 基準温度(0℃)における抵抗値 \(R_0\) の役割
  4. 温度の単位(セルシウス度とケルビン)の扱い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、基準温度0℃での抵抗値 \(R_0\)、抵抗率の温度係数 \(\alpha\)、変化後の温度 \(t\) を読み取る。
  2. 抵抗値の温度変化の公式 \(R = R_0(1 + \alpha t)\) に、読み取った値を代入する。
  3. 計算を実行して、\(t\)℃での抵抗値 \(R\) を求める。

思考の道筋とポイント
多くの金属では、温度が上昇すると電気抵抗が大きくなります。これは、温度が上がることで金属内の原子の熱振動が激しくなり、電流の担い手である自由電子の運動が妨げられやすくなるためです。この温度による抵抗値の変化は、ある範囲内では温度に比例する一次関数として近似でき、その関係を表すのが \(R = R_0(1 + \alpha t)\) という公式です。この問題では、公式を適用するために必要なすべての値が与えられているため、各記号が何を表しているかを正確に理解し、式に代入して計算することができれば解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • \(t\)\(\text{[℃]}\)における抵抗値 \(R\) は、0℃における抵抗値 \(R_0\) と抵抗率の温度係数 \(\alpha\)\(\text{[/K]}\) を用いて、\(R = R_0(1 + \alpha t)\) と表されます。
  • 抵抗率の温度係数 \(\alpha\) は、温度が1K(または1℃)上昇したときに、抵抗値が0℃のときの何倍増加するかを示す割合です。
  • \(\alpha\) の単位が\(\text{[/K]}\)であっても、温度 \(t\) にはセルシウス温度\(\text{[℃]}\)の値をそのまま代入して計算できます。これは、温度「変化量」がセルシウス度でもケルビンでも等しいためです(例:0℃から100℃への変化は100℃であり、273Kから373Kへの変化は100K)。この公式は0℃を基準とした温度上昇 \(t\) を用いているため、そのまま代入が可能です。

具体的な解説と立式
500℃における抵抗値を \(R\)、0℃における抵抗値を \(R_0\)、抵抗率の温度係数を \(\alpha\)、温度を \(t\) とします。
抵抗値の温度変化は、以下の関係式で表されます。
$$ R = R_0(1 + \alpha t) $$
問題文から、それぞれの値は以下のように与えられています。

  • 0℃における抵抗値 \(R_0 = 20\)\(\text{[Ω]}\)
  • 抵抗率の温度係数 \(\alpha = 4.4 \times 10^{-3}\)\(\text{[/K]}\)
  • 温度 \(t = 500\)\(\text{[℃]}\)

これらの値を上の公式に代入することで、500℃における抵抗値 \(R\) を計算できます。

使用した物理公式

  • 抵抗値の温度変化: \(R = R_0(1 + \alpha t)\)
    • \(R\): \(t\)℃における抵抗値 [Ω]
    • \(R_0\): 0℃における抵抗値 [Ω]
    • \(\alpha\): 抵抗率の温度係数 [/K]
    • \(t\): 温度 [℃]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
R &= 20 \times (1 + 4.4 \times 10^{-3} \times 500) \\[2.0ex]&= 20 \times (1 + 4.4 \times 10^{-3} \times 5 \times 10^2) \\[2.0ex]&= 20 \times (1 + 22 \times 10^{-1}) \\[2.0ex]&= 20 \times (1 + 2.2) \\[2.0ex]&= 20 \times 3.2 \\[2.0ex]&= 64
\end{aligned}
$$
したがって、求める抵抗値は \(64\)\(\text{Ω}\) となります。

計算方法の平易な説明

金属の抵抗は、カイロのように温めると大きくなる性質があります。その変化の度合いを計算する公式が \(R = R_0(1 + \alpha t)\) です。

  • \(R_0\) は「スタート地点(0℃)での抵抗値」で、今回は \(20\)\(\text{Ω}\) です。
  • \(\alpha\) は「温度が1℃上がるごとに、抵抗がどれくらいの割合で増えるか」を示す値です。
  • \(t\) は「温度が何度になったか」で、今回は \(500\)\(\text{℃}\) です。

まず、\(500\)\(\text{℃}\) になったことで、抵抗がもとの何倍になったかを計算します。
割合の増加分は \(\alpha \times t = (4.4 \times 10^{-3}) \times 500 = 2.2\) です。
これは「もとの抵抗値の2.2倍ぶん、抵抗が増加した」という意味です。
もともとの抵抗値を「1」とすると、変化後の抵抗は \(1 + 2.2 = 3.2\) 倍になります。
最後に、スタート地点の抵抗値 \(20\)\(\text{Ω}\) を \(3.2\) 倍してあげれば、ゴール地点の抵抗値が求まります。
\(20 \times 3.2 = 64\)。
よって、答えは \(64\)\(\text{Ω}\) です。

解答 \(64\)\(\text{Ω}\)

⑤ 電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「消費電力の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 消費電力の基本公式 \(P=IV\)。
  2. オームの法則 \(V=RI\)。
  3. 消費電力の応用公式 \(P=RI^2\) および \(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\)。
  4. 問題の条件に応じて、3つの電力公式の中から最適なものを選択する能力

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題が2つの異なる状況について問うていることを理解する。
  2. 前半:抵抗値 \(R\) と電流 \(I\) が与えられているため、\(P=RI^2\) を用いて消費電力を計算する。
  3. 後半:抵抗値 \(R\) と電圧 \(V\) が与えられているため、\(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\) を用いて消費電力を計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、抵抗で消費される電力(単位時間あたりに消費される電気エネルギー)を計算するものです。電力 \(P\) は、基本的には電圧 \(V\) と電流 \(I\) の積 \(P=IV\) で表されます。しかし、問題で与えられる物理量は常に \(V\) と \(I\) のペアとは限りません。今回は、(1) 抵抗 \(R\) と電流 \(I\)、(2) 抵抗 \(R\) と電圧 \(V\) という2つのケースが与えられています。オームの法則 \(V=RI\) を使うことで、\(P=IV\) の式を \(R\) と \(I\) だけの式、または \(R\) と \(V\) だけの式に変形することができます。どの公式を使えば最も簡単に計算できるかを見極めることがポイントです。

この設問における重要なポイント

  • 消費電力の公式は、基本形と2つの応用形を覚えておくと便利です。
    1. 基本形: \(P = IV\) (電圧と電流が分かっているとき)
    2. 応用形1: \(P = RI^2\) (抵抗と電流が分かっているとき)
    3. 応用形2: \(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) (抵抗と電圧が分かっているとき)
  • これらの公式はすべて等価であり、オームの法則 \(V=RI\) を使って互いに変換できます。
  • 問題の前半と後半で、それぞれどの公式を使うのが最適か判断します。

具体的な解説と立式
この問題は2つのパートに分かれています。

【前半:電流を流したときの消費電力】

抵抗値 \(R=2.0\)\(\text{Ω}\) の抵抗に、電流 \(I=3.0\)\(\text{A}\) を流したときの消費電力を \(P_1\) とします。
この場合、\(R\) と \(I\) が分かっているので、消費電力の公式 \(P=RI^2\) を使います。この式は、基本公式 \(P=IV\) にオームの法則 \(V=RI\) を代入して導かれます。
$$ P_1 = I \times V = I \times (RI) = RI^2 $$
この式に、与えられた \(R\) と \(I\) の値を代入します。

【後半:電圧をかけたときの消費電力】

同じ抵抗(\(R=2.0\)\(\text{Ω}\))に、電圧 \(V=8.0\)\(\text{V}\) をかけたときの消費電力を \(P_2\) とします。
この場合、\(R\) と \(V\) が分かっているので、消費電力の公式 \(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\) を使います。この式は、基本公式 \(P=IV\) にオームの法則 \(I=\displaystyle\frac{V}{R}\) を代入して導かれます。
$$ P_2 = I \times V = \left(\displaystyle\frac{V}{R}\right) \times V = \displaystyle\frac{V^2}{R} $$
この式に、与えられた \(R\) と \(V\) の値を代入します。

使用した物理公式

  • 消費電力の公式: \(P=RI^2\), \(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\)
    • \(P\): 消費電力 [W]
    • \(R\): 抵抗 [Ω]
    • \(I\): 電流 [A]
    • \(V\): 電圧 [V]
計算過程

【前半の計算】

\(R=2.0\)\(\text{Ω}\), \(I=3.0\)\(\text{A}\) を \(P_1 = RI^2\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= 2.0 \times (3.0)^2 \\[2.0ex]&= 2.0 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 18
\end{aligned}
$$
よって、消費電力は \(18\)\(\text{W}\) です。

【後半の計算】

\(R=2.0\)\(\text{Ω}\), \(V=8.0\)\(\text{V}\) を \(P_2 = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
P_2 &= \displaystyle\frac{(8.0)^2}{2.0} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{64}{2.0} \\[2.0ex]&= 32
\end{aligned}
$$
よって、消費電力は \(32\)\(\text{W}\) です。

計算方法の平易な説明

この問題は、抵抗が消費する電力(電気の勢い)を2つの違う状況で計算するものです。

前半:電流が分かっている場合

「抵抗 \(2.0\)\(\text{Ω}\)」と「電流 \(3.0\)\(\text{A}\)」が分かっています。この組み合わせのときは、\(P = R \times I^2\) という公式を使うのが一番早いです。

\(P = 2.0 \times (3.0)^2 = 2.0 \times 9.0 = 18\)。

答えは \(18\)\(\text{W}\) です。

後半:電圧が分かっている場合

「抵抗 \(2.0\)\(\text{Ω}\)」と「電圧 \(8.0\)\(\text{V}\)」が分かっています。この組み合わせのときは、\(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) という公式が便利です。

\(P = \displaystyle\frac{(8.0)^2}{2.0} = \displaystyle\frac{64}{2.0} = 32\)。

答えは \(32\)\(\text{W}\) です。

このように、問題で与えられた情報に合わせて使う公式を選ぶと、スムーズに計算できます。

解答 18W, 32W

⑥ ジュール熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ジュール熱の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ジュール熱の定義:抵抗に電流が流れることによって発生する熱エネルギー。
  2. 電力量とジュール熱の関係:抵抗で消費された電力量は、すべてジュール熱に変換される。
  3. 電力量の計算式 \(Q = Pt\)。
  4. 電力の計算式 \(P = IV\)。
  5. 時間の単位変換(分 → 秒)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から電圧 \(V\)、電流 \(I\)、時間(分)の値を読み取る。
  2. 時間の単位を「分」から物理計算の基本単位である「秒」に変換する。
  3. ジュール熱(電力量)を求める公式 \(Q = VIt\) を選択する。
  4. 公式に値を代入して、発生した熱量を計算する。

思考の道筋とポイント
抵抗に電流を流すと熱が発生します。この熱を「ジュール熱」と呼び、その量は抵抗で消費された「電力量」に等しくなります。電力量は「電力 \(P\) × 時間 \(t\)」で計算できます。さらに、電力 \(P\) は「電圧 \(V\) × 電流 \(I\)」で求められます。したがって、ジュール熱 \(Q\) は、これらを組み合わせた \(Q = V \times I \times t\) という式で計算できることがわかります。この問題では、計算に必要な \(V\), \(I\), \(t\) がすべて与えられているため、公式に当てはめるだけで答えを導けますが、最も重要なのは時間の単位を「分」から「秒」へ正しく変換することです。

この設問における重要なポイント

  • 抵抗で \(t\)\(\text{[s]}\) の間に発生するジュール熱 \(Q\)\(\text{[J]}\) は、消費電力量に等しく、\(Q = Pt\) と表せます。ここで \(P\)\(\text{[W]}\) は消費電力です。
  • 消費電力 \(P\) は、電圧 \(V\) と電流 \(I\) を用いて \(P=IV\) と表せるため、ジュール熱の公式は \(Q = VIt\) となります。
  • オームの法則 \(V=RI\) を使うと、ジュール熱の公式は \(Q = RI^2t\) や \(Q = \displaystyle\frac{V^2}{R}t\) とも表せます。問題で与えられている物理量に応じて使い分けるのが効率的です。
  • 計算の際は、すべての物理量を基本単位(電圧[V]、電流[A]、時間[s])に揃える必要があります。\(1\text{分} = 60\text{秒}\) の換算を忘れないようにしましょう。

具体的な解説と立式
発生するジュール熱を \(Q\)\(\text{[J]}\)、抵抗にかかる電圧を \(V\)\(\text{[V]}\)、流れる電流を \(I\)\(\text{[A]}\)、電流を流した時間を \(t\)\(\text{[s]}\) とします。
抵抗での消費電力 \(P\) は、
$$ P = IV $$
と表されます。
\(t\) 秒間に発生するジュール熱 \(Q\) は、消費電力量に等しいので、
$$ Q = Pt $$
となります。この2つの式を組み合わせることで、ジュール熱を求める以下の公式が得られます。
$$ Q = VIt $$
問題文から、電圧 \(V = 20\)\(\text{V}\)、電流 \(I = 3.0\)\(\text{A}\) が与えられています。時間は50分なので、秒単位に変換します。
$$ t = 50 \text{ 分} = 50 \times 60 \text{ 秒} = 3000 \text{ 秒} $$
これらの値を公式に代入します。

使用した物理公式

  • ジュール熱(電力量): \(Q = VIt\)
    • \(Q\): ジュール熱 [J]
    • \(V\): 電圧 [V]
    • \(I\): 電流 [A]
    • \(t\): 時間 [s]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(Q = VIt\) に、与えられた値を代入します。
\(V = 20\)\(\text{V}\), \(I = 3.0\)\(\text{A}\), \(t = 50 \times 60\)\(\text{s}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
Q &= 20 \times 3.0 \times (50 \times 60) \\[2.0ex]&= 60 \times 3000 \\[2.0ex]&= 180000 \\[2.0ex]&= 1.8 \times 10^5
\end{aligned}
$$
したがって、発生する熱量は \(1.8 \times 10^5\)\(\text{J}\) となります。

計算方法の平易な説明

電気ストーブが熱くなるのは、電気が熱に変わっているからです。この発生する熱を「ジュール熱」と呼びます。ジュール熱の総量は、「電力」と「時間」の掛け算で求めることができます。

1. まず「電力」を計算します。

電力は「電圧 × 電流」で計算できるので、\(20\text{V} \times 3.0\text{A} = 60\text{W}\) となります。これは、「この抵抗は1秒あたり60ジュールの熱を発生させる能力がある」ということを意味します。

2. 次に「時間」を秒に直します。

物理の計算では、時間は「秒」を基本単位として使います。問題では「50分間」とあるので、これを秒に変換します。

\(50\text{分} \times 60\text{秒} = 3000\text{秒}\)。

3. 最後に「電力」と「時間」を掛け合わせます。

(1秒あたりに発生する熱量) × (流した秒数) = (発生した熱の総量)

\(60\text{ J/s} \times 3000\text{ s} = 180000\text{ J}\)。

大きな数字なので、\(1.8 \times 10^5\)\(\text{J}\) と表します。

解答 \(1.8 \times 10^5\)\(\text{J}\)

⑦ 抵抗の接続

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗の直列接続と並列接続における合成抵抗の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直列接続における合成抵抗の計算方法
  2. 並列接続における合成抵抗の計算方法
  3. 回路全体を一つの合成抵抗とみなす考え方
  4. オームの法則(\(V=RI\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「直列接続の場合」と「並列接続の場合」の2つのケースに分けて考える。
  2. それぞれのケースで、まず3つの抵抗を1つにまとめた「合成抵抗」を計算する。
  3. 求めた合成抵抗と電源電圧を使い、オームの法則を適用して回路全体に流れる電流を求める。

思考の道筋とポイント【直列接続の場合】
直列接続とは、抵抗を一本道でつなぐ接続方法です。この場合、回路全体の抵抗(合成抵抗)は、各抵抗の値を単純に足し合わせることで求められます。これは、電流が通る道がどんどん長くなり、通りにくさ(抵抗)が増していくイメージです。合成抵抗が計算できれば、回路全体を「合成抵抗という一つの抵抗器」と「電源」だけの単純な回路と見なすことができ、オームの法則で簡単に電流を計算できます。

この設問における重要なポイント【直列接続の場合】

  • 直列接続の合成抵抗 \(R_{\text{直列}}\) は、各抵抗 \(R_1, R_2, R_3\) の和で求められます。
    $$ R_{\text{直列}} = R_1 + R_2 + R_3 $$
  • 回路全体に流れる電流 \(I\) は、電源電圧 \(V\) と合成抵抗 \(R_{\text{直列}}\) を用いて、オームの法則 \(V = R_{\text{直列}}I\) から求めます。

具体的な解説と立式【直列接続の場合】
抵抗 \(R_1 = 10\)\(\text{Ω}\), \(R_2 = 20\)\(\text{Ω}\), \(R_3 = 60\)\(\text{Ω}\) を直列に接続した場合の合成抵抗を \(R_{\text{直列}}\) とします。
直列接続の公式より、
$$ R_{\text{直列}} = R_1 + R_2 + R_3 $$
この合成抵抗 \(R_{\text{直列}}\) を持つ回路に、電圧 \(V = 18\)\(\text{V}\) の電源を接続したときに流れる電流を \(I_{\text{直列}}\) とすると、オームの法則より以下の式が成り立ちます。
$$ I_{\text{直列}} = \displaystyle\frac{V}{R_{\text{直列}}} $$

使用した物理公式

  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2 + R_3\)
  • オームの法則: \(V = RI\)
計算過程【直列接続の場合】

まず、合成抵抗 \(R_{\text{直列}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{直列}} &= 10 + 20 + 60 \\[2.0ex]&= 90 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$
次に、この合成抵抗と電源電圧 \(V=18\)\(\text{V}\) を用いて、電流 \(I_{\text{直列}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{直列}} &= \displaystyle\frac{V}{R_{\text{直列}}} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{18}{90} \\[2.0ex]&= 0.20 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明【直列接続の場合】

直列接続は、抵抗を数珠つなぎにする方法です。全体の抵抗の大きさは、単純にすべての抵抗を足し算するだけで求まります。

\(10\text{Ω} + 20\text{Ω} + 60\text{Ω} = 90\text{Ω}\)。

これで、3つの抵抗が合体して「\(90\)\(\text{Ω}\)の大きな抵抗1つ」になったと考えられます。
あとはオームの法則「電流 = 電圧 ÷ 抵抗」を使って、

\(18\text{V} \div 90\text{Ω} = 0.20\text{A}\)

と計算できます。

思考の道筋とポイント【並列接続の場合】
並列接続とは、抵抗を横に並べて、電流が複数の経路に分かれて流れるようにする接続方法です。この場合、電流の通り道が増えるため、回路全体の抵抗(合成抵抗)は、個々の抵抗よりも小さくなります。合成抵抗の計算式は少し複雑で、各抵抗の「逆数」の和が、合成抵抗の「逆数」に等しくなります。計算した合成抵抗の逆数を元に戻すのを忘れないように注意が必要です。

この設問における重要なポイント【並列接続の場合】

  • 並列接続の合成抵抗 \(R_{\text{並列}}\) は、各抵抗 \(R_1, R_2, R_3\) の逆数の和から求めます。
    $$ \displaystyle\frac{1}{R_{\text{並列}}} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2} + \displaystyle\frac{1}{R_3} $$
  • この式で計算した値は \(\displaystyle\frac{1}{R_{\text{並列}}}\) なので、最後に逆数をとって \(R_{\text{並列}}\) を求める必要があります。
  • 回路全体に流れる電流 \(I\) は、オームの法則 \(V = R_{\text{並列}}I\) から求めます。

具体的な解説と立式【並列接続の場合】
抵抗 \(R_1 = 10\)\(\text{Ω}\), \(R_2 = 20\)\(\text{Ω}\), \(R_3 = 60\)\(\text{Ω}\) を並列に接続した場合の合成抵抗を \(R_{\text{並列}}\) とします。
並列接続の公式より、
$$ \displaystyle\frac{1}{R_{\text{並列}}} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2} + \displaystyle\frac{1}{R_3} $$
この合成抵抗 \(R_{\text{並列}}\) を持つ回路に、電圧 \(V = 18\)\(\text{V}\) の電源を接続したときに流れる電流を \(I_{\text{並列}}\) とすると、オームの法則より以下の式が成り立ちます。
$$ I_{\text{並列}} = \displaystyle\frac{V}{R_{\text{並列}}} $$

使用した物理公式

  • 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2} + \displaystyle\frac{1}{R_3}\)
  • オームの法則: \(V = RI\)
計算過程【並列接続の場合】

まず、合成抵抗 \(R_{\text{並列}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{R_{\text{並列}}} &= \displaystyle\frac{1}{10} + \displaystyle\frac{1}{20} + \displaystyle\frac{1}{60} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{6}{60} + \displaystyle\frac{3}{60} + \displaystyle\frac{1}{60} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{6+3+1}{60} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{10}{60} = \displaystyle\frac{1}{6}
\end{aligned}
$$
よって、両辺の逆数をとって、\(R_{\text{並列}} = 6.0\)\(\text{Ω}\) となります。
次に、この合成抵抗を用いて電流 \(I_{\text{並列}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{並列}} &= \displaystyle\frac{V}{R_{\text{並列}}} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{18}{6.0} \\[2.0ex]&= 3.0 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明【並列接続の場合】

並列接続は、電流が通る道を複数に分岐させる方法です。道が増えるので、全体としては電気が流れやすくなり、抵抗は小さくなります。

全体の抵抗の計算は「逆数の足し算」という少し特別な方法を使います。

\(\displaystyle\frac{1}{R} = \displaystyle\frac{1}{10} + \displaystyle\frac{1}{20} + \displaystyle\frac{1}{60}\)

分数の足し算をするために通分します。\(\displaystyle\frac{6}{60} + \displaystyle\frac{3}{60} + \displaystyle\frac{1}{60} = \displaystyle\frac{10}{60} = \displaystyle\frac{1}{6}\)。

ここで注意! \(\displaystyle\frac{1}{R}\) が \(\displaystyle\frac{1}{6}\) なので、これをひっくり返して \(R=6.0\)\(\text{Ω}\) が全体の抵抗になります。

あとはオームの法則で、

\(18\text{V} \div 6.0\text{Ω} = 3.0\text{A}\)

と計算できます。

解答 0.20A, 3.0A

⑧ 電池の起電力と内部抵抗

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「内部抵抗を持つ電池の端子電圧の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 起電力と端子電圧の違いの理解
  2. 電池の内部抵抗という概念
  3. 内部抵抗による電圧降下
  4. 端子電圧、起電力、内部抵抗、電流の関係式 \(V = E – rI\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から起電力 \(E\)、内部抵抗 \(r\)、回路に流れる電流 \(I\) の値を読み取る。
  2. 電池の端子電圧を求める公式 \(V = E – rI\) を立てる。
  3. 公式に値を代入し、端子電圧 \(V\) を計算する。

思考の道筋とポイント
理想的な電池では、表示されている電圧(例えば1.5V)がそのまま外部回路にかかります。しかし、現実の電池には「内部抵抗」と呼ばれる、電池自身が持つ抵抗が存在します。そのため、電池から電流を取り出すと、この内部抵抗で電圧の一部が消費されてしまいます(これを「電圧降下」と呼びます)。その結果、電池の両端から外部回路に供給される実際の電圧(端子電圧)は、電池が本来持っている電圧(起電力)よりも少し低くなります。この「起電力」「内部抵抗」「電圧降下」「端子電圧」の関係を正しく理解し、\(V = E – rI\) という式に落とし込むことが、この問題を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 起電力 \(E\): 電池が電流を流そうとする能力の源泉となる電圧。電流が流れていない(回路が開いている)ときの端子電圧に等しい。
  • 内部抵抗 \(r\): 電池の材料などに起因する、電池内部の電気抵抗。
  • 電圧降下 \(rI\): 電池の内部抵抗 \(r\) に電流 \(I\) が流れることで、電池の内部で失われる電圧。
  • 端子電圧 \(V\): 電池のプラス極とマイナス極の間の実際の電位差。外部回路に供給される電圧であり、起電力から内部での電圧降下分を差し引いたものになる。
    $$ V = E – rI $$

具体的な解説と立式
求める電池の端子電圧を \(V\)\(\text{[V]}\)、電池の起電力を \(E\)\(\text{[V]}\)、内部抵抗を \(r\)\(\text{[Ω]}\)、回路を流れる電流を \(I\)\(\text{[A]}\) とします。
電池の内部では、起電力 \(E\) によって電荷にエネルギーが供給されますが、同時に内部抵抗 \(r\) を通過する際に \(rI\) だけの電圧が降下します。
その結果、電池の端子から外部回路へ供給される電圧、すなわち端子電圧 \(V\) は、起電力 \(E\) から内部での電圧降下分 \(rI\) を差し引いた値となります。
したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$ V = E – rI $$
問題文より、\(E = 1.5\)\(\text{V}\)、\(r = 0.20\)\(\text{Ω}\)、\(I = 0.50\)\(\text{A}\) が与えられているので、これらの値をこの式に代入します。

使用した物理公式

  • 電池の端子電圧の式: \(V = E – rI\)
    • \(V\): 端子電圧 [V]
    • \(E\): 起電力 [V]
    • \(r\): 内部抵抗 [Ω]
    • \(I\): 電流 [A]
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(V = E – rI\) に、与えられた値を代入します。
\(E = 1.5\)\(\text{V}\), \(r = 0.20\)\(\text{Ω}\), \(I = 0.50\)\(\text{A}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
V &= 1.5 – 0.20 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 1.5 – 0.10 \\[2.0ex]&= 1.4
\end{aligned}
$$
したがって、求める端子電圧は \(1.4\)\(\text{V}\) となります。

計算方法の平易な説明

電池を「水をくみ上げるポンプ」だとイメージしてみましょう。

  • 起電力 \(E\): ポンプが本来持っているパワー。ここでは「\(1.5\)\(\text{V}\)」という力で電圧を生み出します。
  • 内部抵抗 \(r\): ポンプ内部の「サビ」や「摩擦」のようなもの。電流(水の流れ)があると、このせいで少しパワーが失われます。
  • 電流 \(I\): 水の流れの強さ。
  • 電圧降下 \(rI\): 内部の摩擦によって失われるパワー。計算すると \(0.20 \times 0.50 = 0.1\)\(\text{V}\)。つまり、電池の内部で \(0.1\)\(\text{V}\) 分の電圧が無駄遣いされてしまいます。
  • 端子電圧 \(V\): 実際にポンプの外(回路)に供給できるパワー。

これは、本来のパワー(起電力)から、内部で失われたパワー(電圧降下)を引いた残りです。

\(1.5\text{V} – 0.1\text{V} = 1.4\text{V}\)。

よって、電池の端子からは \(1.4\)\(\text{V}\) の電圧が供給されます。

解答 1.4V

⑨ キルヒホッフの第1法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「キルヒホッフの第1法則(電流則)の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの第1法則(電流保存則)
  2. 回路の分岐点における電流の関係
  3. 電荷保存則の物理的な意味
  4. 流入する電流と流出する電流の区別

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 回路図中の分岐点Pを特定する。
  2. 分岐点Pに「流入する電流」と「流出する電流」を整理する。
  3. キルヒホッフの第1法則「流入する電流の和 = 流出する電流の和」を立式する。
  4. 未知の電流 \(I_3\) について式を解き、与えられた値を代入して計算する。

思考の道筋とポイント
複雑に見える電気回路も、分岐点(導線が合流・分岐する点)に注目することで、電流の関係をシンプルに捉えることができます。そのための強力なツールが「キルヒホッフの法則」です。この問題で使う第1法則は、別名「電流則」とも呼ばれ、その本質は「電荷保存則」にあります。つまり、回路のどの点においても、電荷(電流の正体)が突然消えたり、どこからか湧き出たりすることはない、という物理的な大原則に基づいています。したがって、ある一点に流れ込む電流の合計と、そこから流れ出す電流の合計は必ず等しくなります。この関係を式にできれば、あとは簡単な計算で答えを求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路網の中の任意の分岐点において、そこに流入する電流の総和は、そこから流出する電流の総和に等しい。
  • この法則は、水の流れに例えると理解しやすいです。川が分岐するとき、分岐前に流れていた水の量は、分岐後に分かれた2つの川の水の量を合計したものと等しくなります。途中で水が消えたり増えたりしないのと同じです。
  • 式で表すと「流入する電流の和 = 流出する電流の和」となります。

具体的な解説と立式
図に示された回路の分岐点Pに着目します。

  • 点Pに流入する電流は、矢印の向きから \(I_1\) のみです。
  • 点Pから流出する電流は、矢印の向きから \(I_2\) と \(I_3\) の2つです。

キルヒホッフの第1法則「流入する電流の和 = 流出する電流の和」を、この分岐点Pに適用すると、以下の関係式が成り立ちます。
$$ I_1 = I_2 + I_3 $$
この問題では \(I_3\) の値を求めたいので、この式を \(I_3\) について解きます。
$$ I_3 = I_1 – I_2 $$
問題文より、\(I_1 = 5.0\)\(\text{[A]}\)、\(I_2 = 2.0\)\(\text{[A]}\) が与えられているので、これらの値を代入して計算します。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の任意の点において、流入する電流の総和は流出する電流の総和に等しい。
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(I_3 = I_1 – I_2\) に、与えられた値を代入します。
\(I_1 = 5.0\)\(\text{[A]}\), \(I_2 = 2.0\)\(\text{[A]}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
I_3 &= 5.0 – 2.0 \\[2.0ex]&= 3.0
\end{aligned}
$$
したがって、求める電流 \(I_3\) の強さは \(3.0\)\(\text{A}\) となります。

計算方法の平易な説明

この法則は、道路の合流や分岐と同じように考えるととても分かりやすいです。

  • 分岐点Pを「高速道路のジャンクション」だと考えてみましょう。
  • \(I_1\) は、ジャンクションに合流してくる車の量で、「毎秒5.0台」です。
  • \(I_2\) と \(I_3\) は、ジャンクションから二手に分かれて出ていく車の量です。
  • 片方の出口(\(I_2\))から「毎秒2.0台」の車が出ていったとします。
  • ジャンクションで車が消えたり、急に現れたりしない限り、もう片方の出口(\(I_3\))からは残りの車が出ていくはずです。
  • したがって、単純な引き算で \(5.0 – 2.0 = 3.0\) となり、もう片方の出口からは「毎秒3.0台」の車が出ていくことがわかります。

電流もこれと全く同じで、\(I_3\) は \(3.0\)\(\text{A}\) となります。

解答 3.0A

⑩ キルヒホッフの第2法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「キルヒホッフの第2法則(電圧則)の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの第2法則(電圧則)
  2. 閉回路(ループ)における電位の変化の考え方
  3. 起電力(電位を上げる要素)と電圧降下(電位を下げる要素)の区別と符号のルール
  4. オームの法則(電圧降下 \(V=RI\) の計算)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題で指定された閉回路(ループ)ABCDAを特定する。
  2. ループを一周する向き(例:A→B→C→D→A)を任意に決める。
  3. ループをたどりながら、各素子(電池、抵抗)を通過する際の電位の変化を、「上がるか(正)」「下がるか(負)」を判断しながら計算する。
  4. キルヒホッフの第2法則「閉回路内の電位の変化の総和は0」を用いて立式する。
  5. 未知の起電力 \(E\) について式を解く。

思考の道筋とポイント
キルヒホッフの第2法則は、電気回路におけるエネルギー保存則を表したものです。直感的には「閉じた回路をぐるっと一周して出発点に戻ってきたら、電位(電気的な高さ)は必ず元に戻る」と理解できます。これは、山登りをして同じ場所に戻ってきたら、結局登った高さの合計と下った高さの合計が等しくなり、標高差がゼロになるのと同じことです。この法則を適用する上で最も重要なのは、ループをたどる際に、各素子で電位が「上がる」のか「下がる」のかを、符号(プラス・マイナス)で正しく表現することです。

この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 任意の閉回路において、電位の変化の代数和は0である。(\(\sum V = 0\))
  • 電位の変化のルール:
    1. 抵抗: ループをたどる向きと同じ向きに電流が流れていれば、電位は下がる(電圧降下: \(-RI\))。逆向きなら電位は上がる(\(-R(-I) = +RI\))。
    2. 電池: ループをたどる向きが負極 → 正極なら、電位は上がる(起電力: \(+E\))。正極 → 負極なら電位は下がる(\(-E\))。
  • 模範解答では「起電力の和 = 電圧降下の和」という形式で立式されていますが、これは上記の基本ルールから導かれるものであり、符号の扱いで混乱を避けるため、本解説では「電位の変化の和 = 0」の原則で考えます。

具体的な解説と立式
閉回路ABCDAを、反時計回り(A→B→C→D→A)にたどることにします。このとき、各区間での電位の変化を調べ、その総和が0になるとして式を立てます。

  • A → B: この区間には抵抗や電池がないため、電位の変化は0です。
  • B → C: 抵抗 \(4.0\)\(\text{Ω}\) を、電流(\(2.0\)\(\text{A}\))と同じ向きにたどります。したがって、電位は \(RI = 4.0 \times 2.0 = 8.0\)\(\text{V}\) だけ下がります。電位の変化は \(-8.0\)\(\text{V}\) です。
  • C → D: この区間には抵抗や電池がないため、電位の変化は0です。
  • D → A: 電池を通過します。ここで電位が \(E\) だけ上がるので、電位の変化は \(+E\) とします。
    抵抗 \(5.0\)\(\text{Ω}\) を、電流(\(3.0\)\(\text{A}\))と同じ向きにたどります。したがって、電位は \(RI = 5.0 \times 3.0 = 15\)\(\text{V}\) だけ下がります。電位の変化は \(-15\)\(\text{V}\) です。

これらの電位変化の総和が0になるので、以下の式が成り立ちます。
$$ (0) + (-4.0 \times 2.0) + (+E) + (-5.0 \times 3.0) = 0 $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \(\sum V = 0\) (閉回路内の電位差の代数和は0)
  • オームの法則による電圧降下: \(V = RI\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を、\(E\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
-8.0 + E – 15 &= 0 \\[2.0ex]E – 23 &= 0 \\[2.0ex]E &= 23
\end{aligned}
$$
したがって、求める起電力は \(23\)\(\text{V}\) となります。

計算方法の平易な説明

キルヒホッフの第2法則を「標高マップ」で考えてみましょう。A地点を標高0mのキャンプ地として、反時計回りにハイキングに出発します。

  1. A → B: 平坦な道。標高は変わりません(0m)。
  2. B → C: 電流という「下り川」に沿って進むので、坂道を下ります。下る高さは「抵抗 × 電流」で \(4.0 \times 2.0 = 8.0\)\(\text{m}\)。現在の標高は-8.0mです。
  3. C → D: 平坦な道。標高は変わりません(0m)。
  4. D → A: ここに電池という「上りエスカレーター」があります。これで \(E\) メートルだけ登ります。現在の標高は \(-8.0 + E\) メートルです。再び電流という「下り川」に沿って進み、坂道を下ります。下る高さは \(5.0 \times 3.0 = 15\)\(\text{m}\)。現在の標高は \((-8.0 + E) – 15\) メートルです。
  5. A地点に帰還: 出発点のA地点(標高0m)に戻ってきたので、最終的な標高は0mのはずです。つまり、\(-8.0 + E – 15 = 0\) という式が成り立ちます。これを解くと、\(E – 23 = 0\)、すなわち \(E = 23\)\(\text{V}\) となります。エスカレーターは23mの高さだった、ということです。
解答 23V

例題

例題75 キルヒホッフの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「キルヒホッフの法則」です。複数の電源を含む複雑な回路を流れる電流を求める問題であり、電気回路解析の基本かつ最も重要な法則の適用方法が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路内の任意の分岐点において、流れ込む電流の総和と流れ出す電流の総和は等しい。これは電荷保存則に基づいています。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路内の任意の閉じたループ(閉回路)において、起電力の総和と電圧降下の総は等しい。これはエネルギー保存則に基づいています。
  3. 電流の向きの仮定: 計算を始める前に、各部分を流れる電流の向きを自由に仮定します。計算結果の符号が正なら仮定した向き、負なら仮定とは逆の向きに電流が流れていることを意味します。
  4. 連立方程式の立式と解法: 未知数の電流の数だけ独立した方程式を立て、連立方程式として解く必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各抵抗を流れる電流の大きさと向きを、未知数(例:\(I_1, I_2, I\))を用いて仮定します。
  2. 回路の分岐点(点Aまたは点B)でキルヒホッフの第1法則を適用し、電流に関する式を1つ立てます。
  3. 回路内にある独立な閉回路を2つ選び、それぞれについてキルヒホッフの第2法則を適用して、電圧に関する式を2つ立てます。
  4. 得られた3つの連立一次方程式を解いて、\(I_1, I_2, I\) の値を求めます。
  5. 計算結果の符号を元に、各電流の実際の向きを決定します。

思考の道筋とポイント
この問題は、複数の電源と抵抗が複雑に接続されており、単純なオームの法則や合成抵抗の考え方だけでは解くことができません。このような回路を解析するための普遍的な手法が「キルヒホッフの法則」です。未知数が3つ(各抵抗を流れる電流 \(I_1, I_2, I\))あるため、独立した方程式が3本必要になります。キルヒホッフの第1法則から1本、第2法則から2本の式を立てて連立方程式を解くのが定石です。電流の向きは最初に自由に仮定してよく、計算結果の符号で実際の向きがわかるという点がポイントです。
この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第1法則: 分岐点に流入する電流の和と流出する電流の和は等しい。
  • キルヒホッフの第2法則: 任意の閉回路を一周するとき、「起電力の上昇分の和(電池を負極から正極へ横切る)」と「電圧降下の和(抵抗を電流と同じ向きに横切る)」が等しくなる。
  • 符号のルールを徹底すること:
    • 電圧降下 \(RI\): 閉回路をたどる向きと仮定した電流の向きが同じなら +、逆なら -。
    • 起電力 \(E\): 閉回路をたどる向きが電池の負極から正極の向きなら +、逆なら -。

具体的な解説と立式
まず、各抵抗を流れる電流を、図のように仮定します。

  • 抵抗 \(R_1\) を流れる電流を \(I_1\)(A→Bの向き)
  • 抵抗 \(R_2\) を流れる電流を \(I_2\)(A→Bの向き)
  • 抵抗 \(R\) を流れる電流を \(I\)(B→Aの向き)

次に、これらの未知数を用いてキルヒホッフの法則に基づき立式します。

1. キルヒホッフの第1法則(電流則)
分岐点Aにおいて、流れ込む電流は \(I\)、流れ出す電流は \(I_1\) と \(I_2\) です。したがって、次の関係式が成り立ちます。
$$ I = I_1 + I_2 \quad \cdots ① $$

2. キルヒホッフの第2法則(電圧則)
2つの閉回路を選び、それぞれについて式を立てます。

上の閉回路(A→\(R_1\)→B→\(R_2\)→A)
このループを反時計回りにたどります。

  • 起電力の和: 電池 \(E_1\) は順方向(電位が上がる)なので \(+E_1\)。電池 \(E_2\) は逆方向(電位が下がる)なので \(-E_2\)。
  • 電圧降下の和: 抵抗 \(R_1\) は電流 \(I_1\) と同じ向きにたどるので \(+R_1 I_1\)。抵抗 \(R_2\) は電流 \(I_2\) と逆の向きにたどるので \(-R_2 I_2\)。

よって、以下の式が成り立ちます。
$$ E_1 – E_2 = R_1 I_1 – R_2 I_2 \quad \cdots ② $$

下の閉回路(A→\(R_2\)→B→\(R\)→A)
このループも反時計回りにたどります。

  • 起電力の和: 電池 \(E_2\) は順方向なので \(+E_2\)。
  • 電圧降下の和: 抵抗 \(R_2\) は電流 \(I_2\) と同じ向きにたどるので \(+R_2 I_2\)。抵抗 \(R\) も電流 \(I\) と同じ向きにたどるので \(+R I\)。

よって、以下の式が成り立ちます。
$$ E_2 = R_2 I_2 + R I \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): \(\sum I_{\text{in}} = \sum I_{\text{out}}\)
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(\sum E = \sum RI\)
計算過程

立式した①, ②, ③に、問題で与えられた数値を代入します。
\(E_1=18 \text{ [V]}\), \(E_2=51 \text{ [V]}\), \(R_1=2.0 \text{ [Ω]}\), \(R_2=3.0 \text{ [Ω]}\), \(R=4.0 \text{ [Ω]}\)

式②より:
$$
\begin{aligned}
18 – 51 &= 2.0 I_1 – 3.0 I_2 \\[2.0ex]-33 &= 2.0 I_1 – 3.0 I_2 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
式③より:
$$
51 = 3.0 I_2 + 4.0 I \quad \cdots ③’
$$
ここで、未知数が3つ(\(I_1, I_2, I\))で式も3つ(①, ②’, ③’)なので、これを解きます。
まず、式①を式③’に代入して \(I\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
51 &= 3.0 I_2 + 4.0 (I_1 + I_2) \\[2.0ex]51 &= 3.0 I_2 + 4.0 I_1 + 4.0 I_2 \\[2.0ex]51 &= 4.0 I_1 + 7.0 I_2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
これで、\(I_1\) と \(I_2\) に関する2つの式(②’と④)が得られました。
$$
\begin{cases}
-33 = 2.0 I_1 – 3.0 I_2 \quad \cdots ②’ \\
51 = 4.0 I_1 + 7.0 I_2 \quad \cdots ④
\end{cases}
$$
式②’の両辺を2倍して、\(I_1\) の係数をそろえます。
$$ -66 = 4.0 I_1 – 6.0 I_2 \quad \cdots ⑤ $$
式④から式⑤を引きます。
$$
\begin{aligned}
51 – (-66) &= (4.0 I_1 + 7.0 I_2) – (4.0 I_1 – 6.0 I_2) \\[2.0ex]117 &= 13.0 I_2 \\[2.0ex]I_2 &= \frac{117}{13.0} \\[2.0ex]I_2 &= 9.0 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
得られた \(I_2 = 9.0 \text{ A}\) を式②’に代入して \(I_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
-33 &= 2.0 I_1 – 3.0 \times 9.0 \\[2.0ex]-33 &= 2.0 I_1 – 27 \\[2.0ex]-6 &= 2.0 I_1 \\[2.0ex]I_1 &= -3.0 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
最後に、\(I_1\) と \(I_2\) の値を式①に代入して \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I &= I_1 + I_2 \\[2.0ex]&= -3.0 + 9.0 \\[2.0ex]&= 6.0 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この複雑な回路は、3人のランナー(電流 \(I_1, I_2, I\))がいるマラソンコースのようなものです。3人の速さ(電流の強さ)を知るために、3つのルール(方程式)を使います。
1. 合流・分岐のルール: A地点で、ランナー\(I\)が\(I_1\)と\(I_2\)の2人に分かれると考えます。これで1本目の式 \(I = I_1 + I_2\) ができます。
2. コース一周の高低差はゼロのルール:

  • 上の周回コース: このコースの高低差(起電力)と、走ることで消費するエネルギー(電圧降下)を比べます。これで2本目の式ができます。
  • 下の周回コース: 同様に、下のコースでも高低差と消費エネルギーを比べて3本目の式を作ります。

3. 連立方程式を解く: 3本の式が揃ったので、数学の計算で3人のランナーの速さ(\(I_1, I_2, I\))を求めます。

結論と吟味

計算結果は以下の通りです。

  • \(I_1 = -3.0 \text{ A}\)
  • \(I_2 = 9.0 \text{ A}\)
  • \(I = 6.0 \text{ A}\)

これらの結果の符号から、実際の電流の向きを判断します。

  • 抵抗 \(R_1\) の電流 \(I_1\): 計算結果が負なので、仮定した向き(A→B)とは逆向きです。よって、3.0 A の強さで、左向き(B→A)に流れます。
  • 抵抗 \(R_2\) の電流 \(I_2\): 計算結果が正なので、仮定した向き(A→B)と同じです。よって、9.0 A の強さで、右向き(A→B)に流れます。
  • 抵抗 \(R\) の電流 \(I\): 計算結果が正なので、仮定した向き(B→A)と同じです。よって、6.0 A の強さで、左向き(B→A)に流れます。

この結果が物理的に正しいか吟味します。実際の電流の向きで分岐点Aを見ると、抵抗\(R\)から6.0 A、抵抗\(R_1\)から3.0 Aが流れ込み、それらが合わさって抵抗\(R_2\)へ9.0 Aが流れ出しています。\(6.0 + 3.0 = 9.0\) となり、キルヒホッフの第1法則が成り立っているため、この解は妥当であると言えます。

解答 \(R_1\): 3.0 A, 左向き, \(R_2\): 9.0 A, 右向き, \(R\): 6.0 A, 左向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • キルヒホッフの法則:
    • 核心: 複数の電源や複雑な分岐を持つ電気回路において、各部分を流れる電流や各点の電位を求めるための普遍的な法則です。この法則は、より根源的な「電荷保存則」「エネルギー保存則」が電気回路において具体的に現れたものです。
    • 理解のポイント:
      • 第1法則(電流則): 「回路のどの点においても、電荷が湧き出したり消えたりすることはない」という電荷保存則を表します。つまり、ある点に流れ込む電流の総和と、そこから流れ出す電流の総和は必ず等しくなります。
      • 第2法則(電圧則): 「回路を一周して元の場所に戻ってきたとき、電位は必ず元に戻る」というエネルギー保存則を表します。これは、ループ内の起電力によるエネルギー供給(電位の上昇)と、抵抗によるエネルギー消費(電圧降下)が釣り合っていることを意味します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 内部抵抗を含む電池: 電池に内部抵抗 \(r\) がある場合、電池を「理想的な電池 \(E\)」と「抵抗 \(r\)」の直列接続として扱います。キルヒホッフの第2法則を適用する際、電池を通過するときの電圧降下に \(Ir\) の項を追加するだけで同じように解くことができます。
    • コンデンサーを含む直流回路: 回路にコンデンサーが含まれている場合、直流電流を流し始めてから十分に時間が経過すると、コンデンサーへの充電が完了し、その部分には電流が流れなくなります。したがって、その枝は「断線」しているものとして回路を解析します。
    • 対称性の利用(ホイートストンブリッジなど): 回路に幾何学的な対称性がある場合、対称な位置にある点の電位が等しくなることがあります。その場合、それらの点をつなぐ導線には電流が流れないため、その部分を無視して回路を単純化できることがあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路図の把握: まず、電源、抵抗、分岐点がどのように接続されているかを正確に把握します。
    2. 未知数の設定: 求めるべき電流の数だけ、未知数(\(I_1, I_2, \dots\))を設定し、向きを仮定して図に矢印で書き込みます。この作業が最も重要です。
    3. 方程式を立てる:
      • 第1法則: 分岐点を1つ選び、電流則の式を立てます。(独立な式は「分岐点の数 – 1」個までしか立てられません)
      • 第2法則: 未知数の数に合わせて、必要な数の独立な閉回路を選び、電圧則の式を立てます。なるべく式が簡単になるような、抵抗や電池の数が少ないループを選ぶのがコツです。
    4. 連立方程式を解く: 立てた式を丁寧に解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 第2法則の符号ミス:
    • 誤解: 閉回路をたどる際に、起電力や電圧降下の符号を間違える。特に、電流の向きと逆方向に抵抗を横切る場合や、電池の正極から負極へ横切る場合の符号を混同しやすい。
    • 対策: 「電位が上がるか、下がるか」という一点に集中します。
      • 抵抗: 電流と同じ向きに進むと電位は下がる(電圧降下)。逆向きに進むと電位は上がる
      • 電池: 負極から正極に進むと電位は上がる(起電力)。正極から負極に進むと電位は下がる

      このルールを機械的に適用する練習を繰り返します。

  • 電流の向きの仮定と結果の解釈ミス:
    • 誤解: 計算結果で電流が負の値になったときに混乱し、値の正負を間違えて答えを書いてしまう。
    • 対策: 「負の値は、最初に仮定した向きと逆だった」という事実を明確に意識します。答えを書く際には、必ず正の値の大きさと、正しい向き(例:「左向き」)をセットで記述する習慣をつけます。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: 3元連立方程式を解く過程で、代入や加減法の計算を焦って間違える。
    • 対策: 1つの変数を消去して2元連立方程式に帰着させる、という手順を焦らず着実に実行します。検算として、得られた解を元の方程式すべてに代入し、矛盾がないか確認することが非常に有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • キルヒホッフの法則(第1法則・第2法則):
    • 選定理由: この問題のように、複数の電源を含んでいたり、抵抗の接続が直列・並列の組み合わせで単純化できない複雑な回路では、オームの法則だけでは解けません。このような回路を解析するための、最も基本的で強力なツールがキルヒホッフの法則です。
    • 適用根拠:
      • 第1法則: 回路のどの分岐点を選んでも成立しますが、未知の電流の関係式を立てるために適用します。通常、未知電流の数より1つ少ない数の独立な式が得られます。
      • 第2法則: 回路内のどの閉回路を選んでも成立します。未知数の数だけ独立な方程式が必要なため、第1法則で不足する分の式を、この第2法則を用いて立てます。選ぶ閉回路が異なっていても、最終的に得られる解は同じになります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の整理: 連立方程式を解く前に、各式の定数項と各変数の項をきれいに整理整頓します。(例: \(2.0 I_1 – 3.0 I_2 = -33\) のように「変数=定数」の形に揃える)
  • 係数を整数にする: 小数が含まれる方程式(例: \(2.0 I_1, 3.0 I_2\))は、可能であれば両辺を10倍するなどして係数を整数に直してから計算すると、ミスが減ることがあります。
  • 代入は慎重に: ある変数の値を他の式に代入する際、符号や係数を間違えないように、指差し確認しながらゆっくり行います。
  • 検算の習慣化: 上記の「要注意!」でも述べましたが、最終的に得られた解(\(I_1, I_2, I\))を、最初に立てた3つの元の方程式(①, ②, ③)すべてに代入してみます。すべての式が矛盾なく成立すれば、計算はほぼ間違いなく合っています。この一手間が確実性を大きく高めます。

例題76 抵抗の直列・並列接続

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「直流回路の総合的な解析」です。抵抗の直列・並列接続の基本から、オームの法則、消費電力、ジュール熱、さらには抵抗値と導体の形状の関係まで、直流回路に関する重要な概念が幅広く問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 合成抵抗: 複数の抵抗を一つの抵抗とみなすための計算方法です。直列接続では各抵抗の和、並列接続では各抵抗の逆数の和が合成抵抗の逆数になります。
  2. オームの法則: 電圧(\(V\))、電流(\(I\))、抵抗(\(R\))の間の関係を示す基本法則 (\(V=RI\)) です。回路のどの部分にも適用できます。
  3. 消費電力: 抵抗で単位時間あたりに消費される電気エネルギーのことです。\(P=IV\), \(P=I^2R\), \(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\) の公式を使い分けます。
  4. ジュール熱: 抵抗に電流が流れることで発生する熱量です。消費電力に時間をかけることで求められます (\(Q=Pt\))。
  5. 抵抗と形状の関係: 導体の抵抗値は、その長さ(\(L\))に比例し、断面積(\(S\))に反比例します (\(R=\rho\displaystyle\frac{L}{S}\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、回路図を「並列部分」と「直列部分」に分け、それぞれの合成抵抗の公式を適用して全体の合成抵抗を求めます。
  2. (2), (3)では、まず(1)で求めた合成抵抗を使って回路全体を流れる電流を計算します。その後、オームの法則やキルヒホッフの法則を利用して、各部分の電圧や電流を順に明らかにしていきます。
  3. (4), (5)では、消費電力とジュール熱の公式に、それまでに求めた電圧、電流、抵抗の値を代入して計算します。
  4. (6)では、抵抗値と導体の長さの比例関係を用いて、新しい抵抗値を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
回路全体の合成抵抗を求める問題です。回路図を見ると、\(R_1\)と\(R_2\)が並列に接続され、そのまとまりが\(R_3\)と直列に接続されていることがわかります。このような混合接続の場合、部分ごとに計算を進めるのが定石です。まず並列部分の合成抵抗を求め、次にその結果と直列部分の抵抗を合成します。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続の合成抵抗 \(R_{\text{p}}\) の公式: \(\displaystyle\frac{1}{R_{\text{p}}} = \frac{1}{R_a} + \frac{1}{R_b} + \dots\)
  • 直列接続の合成抵抗 \(R_{\text{s}}\) の公式: \(R_{\text{s}} = R_a + R_b + \dots\)

具体的な解説と立式
まず、\(R_1\)と\(R_2\)の並列接続部分の合成抵抗を \(R_{12}\) とします。並列接続の公式より、
$$ \frac{1}{R_{12}} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} \quad \cdots ① $$
次に、この合成抵抗 \(R_{12}\) は \(R_3\) と直列に接続されています。したがって、回路全体の合成抵抗 \(R\) は、直列接続の公式より、
$$ R = R_{12} + R_3 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 並列抵抗の合成: \(\displaystyle\frac{1}{R_{\text{並列}}} = \sum_i \frac{1}{R_i}\)
  • 直列抵抗の合成: \(R_{\text{直列}} = \sum_i R_i\)
計算過程

式①に \(R_1=60 \, \Omega\), \(R_2=90 \, \Omega\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{12}} &= \frac{1}{60} + \frac{1}{90} \\[2.0ex]&= \frac{3}{180} + \frac{2}{180} \\[2.0ex]&= \frac{5}{180} \\[2.0ex]&= \frac{1}{36}
\end{aligned}
$$
よって、\(R_{12} = 36 \, [\Omega]\) となります。
次に、式②に \(R_{12}=36 \, \Omega\), \(R_3=24 \, \Omega\) を代入して、全体の合成抵抗 \(R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R &= 36 + 24 \\[2.0ex]&= 60 \, [\Omega]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

複雑に見える回路も、部分ごとに単純化していくことができます。まず、\(R_1\)と\(R_2\)の分かれ道部分を合体させて一つの抵抗 \(R_{12}\) にします。分かれ道(並列)の合体は、逆数(1/抵抗値)を足し算するという特別なルールを使います。計算すると \(R_{12}\) は \(36 \, \Omega\) になります。これで回路は \(R_{12}\) と \(R_3\) が一本道でつながった形(直列)になるので、あとは単純に足し算するだけで全体の抵抗が求まります。

結論と吟味

回路全体の合成抵抗は \(60 \, \Omega\) です。計算過程での通分や逆数にする操作にミスがないか確認します。

解答 (1) \(60 \, \Omega\)

問(2)

思考の道筋とポイント
抵抗 \(R_3\) にかかる電圧 \(V_3\) を求める問題です。オームの法則 \(V_3 = R_3 I_3\) を使うためには、まず \(R_3\) を流れる電流 \(I_3\) を知る必要があります。\(R_3\) は電源に直接つながる幹の部分にあるため、ここを流れる電流は回路全体を流れる電流 \(I\) に等しくなります。したがって、まず回路全体の電流を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 回路全体を一つの抵抗とみなせば、オームの法則で全体の電流が求められる。
  • 直列接続部分では、流れる電流はどこでも同じである。

具体的な解説と立式
(1)で求めた回路全体の合成抵抗 \(R\) と、電源の起電力 \(E\) を用いて、オームの法則から回路全体を流れる電流 \(I\) を求めます。
$$ I = \frac{E}{R} \quad \cdots ① $$
この電流 \(I\) は、抵抗 \(R_3\) を流れる電流 \(I_3\) に等しいので、\(I_3 = I\) です。
したがって、抵抗 \(R_3\) にかかる電圧 \(V_3\) は、オームの法則より、
$$ V_3 = R_3 I_3 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=RI\)
計算過程

式①に \(E=30 \, \text{V}\), \(R=60 \, \Omega\) を代入して、全体の電流 \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{30}{60} \\[2.0ex]&= 0.50 \, [\text{A}]\end{aligned}
$$
この電流が \(R_3\) を流れるので、\(I_3 = 0.50 \, \text{A}\) です。
式②に \(R_3=24 \, \Omega\), \(I_3=0.50 \, \text{A}\) を代入して、電圧 \(V_3\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= 24 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 12 \, [\text{V}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、この回路全体にどれだけの電流が流れているかを計算します。全体の電圧が30Vで、全体の抵抗が(1)で求めた60Ωなので、オームの法則から電流は \(30 \div 60 = 0.50\)A とわかります。この0.50Aの電流が、そのまま抵抗\(R_3\)を通過します。再びオームの法則を使って、\(R_3\)での電圧は (抵抗24Ω) × (電流0.50A) = 12V と計算できます。

結論と吟味

\(R_3\) にかかる電圧は \(12 \, \text{V}\) です。電源電圧30Vのうち、12Vが \(R_3\) で消費されることがわかりました。

解答 (2) \(12 \, \text{V}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
抵抗 \(R_1\) を流れる電流 \(I_1\) を求める問題です。\(I_1\) を求めるには、\(R_1\) にかかる電圧 \(V_1\) が必要です。\(R_1\) と \(R_2\) は並列に接続されているため、両者にかかる電圧は等しく、これを \(V_{12}\) とします。電源の電圧 \(E\) は、直列接続された \(R_3\) での電圧降下 \(V_3\) と、並列部分での電圧降下 \(V_{12}\) の和に等しくなります(キルヒホッフの第2法則)。この関係から \(V_{12}\) を求め、オームの法則を適用して \(I_1\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続された抵抗には、等しい電圧がかかる。
  • 直列接続では、各部分の電圧の和が全体の電圧に等しい。

具体的な解説と立式
電源の電圧 \(E\) は、\(R_3\) での電圧 \(V_3\) と、並列部分 \(R_{12}\) での電圧 \(V_{12}\) の和に等しいので、
$$ E = V_3 + V_{12} $$
この式から、並列部分にかかる電圧 \(V_{12}\) を求めることができます。
$$ V_{12} = E – V_3 \quad \cdots ① $$
並列接続なので、\(R_1\) にかかる電圧 \(V_1\) は \(V_{12}\) に等しいです (\(V_1 = V_{12}\))。
したがって、\(R_1\) を流れる電流 \(I_1\) は、オームの法則より、
$$ I_1 = \frac{V_1}{R_1} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(\sum E = \sum V\)
  • オームの法則: \(I = \displaystyle\frac{V}{R}\)
計算過程

式①に \(E=30 \, \text{V}\), \(V_3=12 \, \text{V}\) を代入して、\(V_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 30 – 12 \\[2.0ex]&= 18 \, [\text{V}]\end{aligned}
$$
式②に \(V_1=18 \, \text{V}\), \(R_1=60 \, \Omega\) を代入して、電流 \(I_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{18}{60} \\[2.0ex]&= 0.30 \, [\text{A}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

電源の30Vのうち、(2)で \(R_3\) が12V使うことがわかりました。残りの電圧 \(30 – 12 = 18\)V が、\(R_1\) と \(R_2\) の分かれ道部分全体にかかります。分かれ道ではどちらの道にも同じ18Vの電圧がかかるので、\(R_1\) にも18Vかかります。オームの法則から、\(R_1\) を流れる電流は (電圧18V) ÷ (抵抗60Ω) = 0.30A となります。

結論と吟味

\(R_1\) を流れる電流は \(0.30 \, \text{A}\) です。回路全体の電流は0.50Aだったので、その一部が \(R_1\) に流れていることになり、物理的に妥当な値です。

解答 (3) \(0.30 \, \text{A}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
\(R_2\) の消費電力 \(P_2\) と \(R_3\) の消費電力 \(P_3\) をそれぞれ計算し、その比を求める問題です。消費電力の公式 \(P=IV=I^2R=\frac{V^2}{R}\) のうち、すでに分かっている値を使って最も計算しやすいものを選びます。
この設問における重要なポイント

  • 消費電力の3つの公式 \(P=IV\), \(P=I^2R\), \(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\) を使い分ける。
  • \(R_2\) を流れる電流 \(I_2\) は、全体の電流 \(I\) から \(I_1\) を引くことで求められる (\(I_2 = I – I_1\))。

具体的な解説と立式
まず、\(R_3\) の消費電力 \(P_3\) を計算します。(2)で \(V_3\) と \(I_3(=I)\) を求めているので、\(P=IV\) を使うのが効率的です。
$$ P_3 = V_3 I_3 \quad \cdots ① $$
次に、\(R_2\) の消費電力 \(P_2\) を計算します。(3)で \(R_2\) にかかる電圧 \(V_2 (=V_1)\) は \(18 \, \text{V}\) とわかっています。\(R_2\) を流れる電流 \(I_2\) は、キルヒホッフの第1法則より、全体の電流 \(I\) から \(I_1\) を引いたものです。
$$ I_2 = I – I_1 \quad \cdots ② $$
よって、\(P_2\) は次のように計算できます。
$$ P_2 = V_2 I_2 \quad \cdots ③ $$
最後に、これらの比を計算します。
$$ \frac{P_2}{P_3} $$

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P=IV\)
  • キルヒホッフの第1法則(電流則)
計算過程

式①に \(V_3=12 \, \text{V}\), \(I_3=0.50 \, \text{A}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P_3 &= 12 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 6.0 \, [\text{W}]\end{aligned}
$$
式②に \(I=0.50 \, \text{A}\), \(I_1=0.30 \, \text{A}\) を代入して \(I_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= 0.50 – 0.30 \\[2.0ex]&= 0.20 \, [\text{A}]\end{aligned}
$$
式③に \(V_2=18 \, \text{V}\), \(I_2=0.20 \, \text{A}\) を代入して \(P_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_2 &= 18 \times 0.20 \\[2.0ex]&= 3.6 \, [\text{W}]\end{aligned}
$$
最後に、比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_2}{P_3} &= \frac{3.6}{6.0} \\[2.0ex]&= 0.60 \, [\text{倍}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

消費電力(1秒あたりのエネルギー消費量)を、\(R_2\) と \(R_3\) についてそれぞれ計算して比べます。電力は「電圧×電流」で計算できます。

  • \(R_3\) の電力: (電圧12V) × (電流0.50A) = 6.0W
  • \(R_2\) の電力: まず\(R_2\)の電流を求めます。全体の電流0.50Aのうち、0.30Aが\(R_1\)に流れたので、残りの \(0.50 – 0.30 = 0.20\)A が\(R_2\)に流れます。\(R_2\)の電圧は\(R_1\)と同じ18Vなので、電力は (電圧18V) × (電流0.20A) = 3.6W
  • 比べる: \(3.6 \div 6.0 = 0.60\) なので、0.60倍です。
結論と吟味

\(R_2\) の消費電力は \(R_3\) の消費電力の 0.60 倍です。各電力の計算、比の計算に間違いがないか確認します。

解答 (4) \(0.60\) 倍

問(5)

思考の道筋とポイント
\(R_1\) で5.0分間に発生するジュール熱 \(Q_1\) を求める問題です。ジュール熱の公式 \(Q=Pt=VIt\) を使います。\(R_1\) に関する値 (\(V_1, I_1\)) はすでに求まっています。注意点は、時間の単位を「分」から「秒」に変換することです。
この設問における重要なポイント

  • ジュール熱の公式: \(Q=VIt\)。
  • 時間の単位を秒(s)に統一する。
  • 問題文の有効数字に合わせて解答する。

具体的な解説と立式
ジュール熱 \(Q_1\) は、\(R_1\) にかかる電圧 \(V_1\)、流れる電流 \(I_1\)、時間 \(t\) を用いて以下の式で表されます。
$$ Q_1 = V_1 I_1 t $$
ここで、時間は \(t = 5.0 \text{ 分}\) なので、秒に変換する必要があります。

使用した物理公式

  • ジュール熱: \(Q=VIt\)
計算過程

まず、時間を秒に変換します。
$$ t = 5.0 \text{ [分]} = 5.0 \times 60 = 300 \text{ [s]} $$
ジュール熱の公式に、\(V_1=18 \, \text{V}\), \(I_1=0.30 \, \text{A}\), \(t=300 \, \text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 18 \times 0.30 \times 300 \\[2.0ex]&= 1620 \, [\text{J}]\end{aligned}
$$
問題で与えられている数値が2桁または3桁ですが、5.0分が2桁なので、有効数字2桁で答えるのが適切です。
$$ Q_1 \approx 1.6 \times 10^3 \, [\text{J}] $$

計算方法の平易な説明

抵抗で発生する熱の量は「電圧 × 電流 × 時間」で計算できます。\(R_1\)については、電圧が18V、電流が0.30Aとわかっています。時間は5.0分ですが、計算では「秒」を使うルールなので、\(5.0 \times 60 = 300\)秒に直します。これらをすべて掛け合わせると、\(18 \times 0.30 \times 300 = 1620\)J となります。最後に、答えの桁数を整えて \(1.6 \times 10^3\)J とします。

結論と吟味

5.0分間で \(R_1\) に発生する熱量は \(1.6 \times 10^3 \, \text{J}\) です。単位の変換と有効数字の処理が正しく行われているかを確認します。

解答 (5) \(1.6 \times 10^3 \, \text{J}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
抵抗値と導体の形状の関係についての問題です。抵抗値 \(R\) は、物質の種類で決まる抵抗率 \(\rho\)、導体の長さ \(L\)、断面積 \(S\) を用いて \(R = \rho \frac{L}{S}\) と表されます。この問題では、同じニクロム線(\(\rho\)が同じ)で太さが均一(\(S\)が同じ)なので、抵抗値 \(R\) は長さ \(L\) に正比例します。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗値は導体の長さに比例し、断面積に反比例する。
  • \(R \propto L\) (抵抗率と断面積が一定の場合)

具体的な解説と立式
抵抗値 \(R\) と長さ \(L\) の間には比例関係があります。
$$ R \propto L $$
したがって、長さを \(\displaystyle\frac{1}{3}\)倍にすると、抵抗値も\(\displaystyle\frac{1}{3}\)倍になります。元の抵抗値を \(R_1\)、新しい抵抗値を \(R’_1\) とすると、
$$ R’_1 = R_1 \times \frac{1}{3} $$

使用した物理公式

  • 抵抗の公式: \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\)
計算過程

元の抵抗値 \(R_1 = 60 \, \Omega\) を用いて、新しい抵抗値 \(R’_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R’_1 &= 60 \times \frac{1}{3} \\[2.0ex]&= 20 \, [\Omega]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

抵抗線は、長ければ長いほど電気が通りにくく(抵抗が大きい)、短ければ短いほど通りやすく(抵抗が小さい)なります。つまり、抵抗の大きさと長さは比例します。もし長さを3分の1にちょん切ったら、抵抗の大きさも3分の1になります。元の抵抗が60Ωなので、\(60 \div 3 = 20\)Ωになります。

結論と吟味

長さを3分の1にした場合の抵抗値は \(20 \, \Omega\) です。抵抗と長さの比例関係を正しく適用できました。

解答 (6) \(20 \, \Omega\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 直流回路の基本法則の組み合わせ
    • 核心: この問題は、特定の高度な法則一つで解けるものではなく、「合成抵抗」「オームの法則」「消費電力・ジュール熱」といった直流回路の基本的な構成要素を、いかに正確に、そして順序良く組み合わせて使えるかを試す総合問題です。
    • 理解のポイント:
      • ① 回路の単純化(合成抵抗): 複雑な回路を、まず一つの抵抗とみなして全体の振る舞い(全体の電流)を把握する。
      • ② 全体から部分へ(オームの法則と電圧則): 全体の電流がわかれば、それを使って直列部分の電圧降下を計算できる。全体の電圧からその電圧降下を引けば、残りの並列部分にかかる電圧がわかる。
      • ③ 部分の解析(オームの法則と電流則): 並列部分の電圧がわかれば、各抵抗を流れる電流を個別に計算できる。また、全体の電流と一方の枝の電流がわかれば、もう一方の枝の電流もわかる。
      • ④ 物理量の計算(電力・熱量の公式): ①〜③で求めた各部分の電圧・電流を使って、電力や熱量を計算する。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • キルヒホッフの法則を使う問題との比較: この問題は直列・並列の組み合わせで単純化できるため、合成抵抗で解くのが効率的です。しかし、もし回路がブリッジ回路のように単純化できない形であれば、キルヒホッフの法則を使わざるを得ません。問題を見て、まず「単純化できるか?」を判断する眼が重要です。
    • 電圧計・電流計の接続: 回路に電圧計や電流計が接続される問題。理想的な電圧計は内部抵抗が無限大(その枝は断線とみなす)、理想的な電流計は内部抵抗がゼロ(ただの導線とみなす)として回路を解析します。
    • 未知の抵抗を求める問題: 回路の一部の抵抗値が未知数になっており、他の部分の電流や電圧の値から逆算して未知抵抗を求める問題。基本的な法則を逆にたどっていく思考が求められます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の構造分析: まず、どこが直列でどこが並列かを見極めます。並列部分を一つのブロックとして捉え、回路全体の構造を「ブロックと抵抗の直列接続」のように単純化して考えます。
    2. 求めるものから逆算: 例えば「\(R_1\)の電流は?」と聞かれたら、「そのためには\(R_1\)の電圧が必要」→「\(R_1\)の電圧を知るには、並列ブロック全体の電圧が必要」→「そのためには\(R_3\)の電圧降下が必要」→「そのためには全体の電流が必要」→「そのためには全体の合成抵抗が必要」というように、ゴールからスタートへと思考を逆算する癖をつけると、解法の手順が明確になります。
    3. どの公式が最も効率的か判断: 消費電力を求める際、\(V, I, R\) のうちどれが分かっているかによって、\(P=IV\), \(P=I^2R\), \(P=\frac{V^2}{R}\) の中から最も計算が楽な公式を選択します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 直列と並列の混同:
    • 誤解: (3)で\(R_1\)にかかる電圧を求めるときに、電源電圧30Vを抵抗値の比で分圧してしまう(これは\(R_1\)と\(R_3\)が直列の場合)。
    • 対策: 「並列部分には同じ電圧がかかる」「直列部分には同じ電流が流れる」という大原則を常に意識します。回路図に、電圧が等しい部分や電流が等しい部分を色分けするなどして視覚的に理解するのも有効です。
  • 全体の電流と枝の電流の混同:
    • 誤解: (3)で\(R_1\)を流れる電流を、(2)で求めた回路全体の電流0.50Aと勘違いしてしまう。
    • 対策: 電流は分岐点で分かれることを常に意識します。回路図に電流の流れを矢印で書き込み、「合流前の電流」「分岐後の電流」を明確に区別する習慣をつけます。
  • 単位の換算ミス:
    • 誤解: (5)でジュール熱を計算する際に、時間の単位「分」を「秒」に直さず、そのまま計算してしまう。
    • 対策: 物理計算では、基本的にMKSA単位系(メートル、キログラム、秒、アンペア)に統一するというルールを徹底します。問題文に出てきた単位は、計算を始める前に必ずチェックし、必要なら換算します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 合成抵抗の公式:
    • 選定理由: (1)で回路全体の振る舞いを把握するため。複雑な回路を一つの抵抗とみなすことで、オームの法則を回路全体に適用できるようになり、解析の第一歩となります。
    • 適用根拠: 直列接続では電流が一定のため電圧が抵抗に比例して分配され(\(V_{\text{全}} = V_1+V_2 = (R_1+R_2)I\))、並列接続では電圧が一定のため電流が抵抗の逆数に比例して分配される(\(I_{\text{全}} = I_1+I_2 = (\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2})V\))という物理的性質を数式化したものです。
  • 消費電力の公式 \(P=IV, P=I^2R, P=\frac{V^2}{R}\):
    • 選定理由: (4)で電力の値を具体的に計算するため。これらはオームの法則 \(V=RI\) を使って互いに変換可能です。
    • 適用根拠: (4)の\(P_3\)の計算では\(V_3\)と\(I_3\)が既に分かっていたので\(P_3=V_3I_3\)が最も直接的です。\(P_2\)の計算では\(V_2\)と\(I_2\)を求めてから\(P_2=V_2I_2\)としましたが、\(P_2 = \frac{V_2^2}{R_2} = \frac{18^2}{90}\) のように計算することも可能で、どの公式を使っても同じ結果になります。問題の状況に応じて最も計算が簡単なものを選択する能力が問われます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の計算: (1)の並列抵抗の計算 \(\frac{1}{60}+\frac{1}{90}\) では、最小公倍数(180)を素早く見つけることが重要です。焦って大きな数で通分すると、後の約分が大変になります。
  • 逆数にするのを忘れない: 並列抵抗の計算で \(\frac{1}{R_{12}} = \frac{1}{36}\) と求めた後、答えを \(\frac{1}{36}\) のままにしてしまうミスが多いです。必ず最後に逆数を取って \(R_{12}=36\) とすることを忘れないように、指差し確認します。
  • 有効数字の扱い: (5)では、計算途中の値は多めの桁数で保持し、最終的な答えを出す段階で、問題文中で与えられた数値の最も低い有効数字の桁数に合わせます。この問題では「5.0分」が2桁なので、答えも2桁に丸めます。
  • 途中結果のメモ: (1)から(5)まで、前の設問の答えを次の設問で使う連鎖的な構造になっています。計算した値(合成抵抗、全体の電流、各部分の電圧・電流)は、問題用紙の余白に単位をつけて明確にメモしておくと、後の設問で参照しやすく、ミスを防げます。

例題77 非直線抵抗

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「非線形抵抗を含む回路のグラフ的解法」です。電球のように電圧と電流が比例しない(=抵抗値が一定でない)素子を含む回路は、単純な計算だけでは解けません。このような場合、グラフを用いて解を求める手法が非常に有効です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 非線形抵抗: 電球やダイオードなど、オームの法則が成り立たない(電圧と電流の関係が直線にならない)電気素子。その特性はグラフで与えられることが多いです。
  2. キルヒホッフの法則: 回路に流れる電流や各部分の電圧の関係を記述する基本法則。非線形抵抗を含む回路でも同様に成り立ちます。
  3. グラフ的解法: 非線形素子の特性を表す「曲線」と、回路の他の部分(線形素子)が素子に課す条件を表す「直線(負荷線)」を描き、その交点として回路の動作点を求める方法です。
  4. 負荷線: 回路内の線形部分(この問題では電源と抵抗)が、非線形素子(電球)に対して課す電圧と電流の関係式のこと。V-Iグラフ上では直線となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、電球1個にかかる電圧を\(V\)、流れる電流を\(I\)と定義します。これは与えられたグラフの軸に対応します。
  2. 次に、回路全体についてキルヒホッフの法則を適用し、\(V\)と\(I\)の関係式を導きます。この式が「負荷線」の方程式となります。
  3. 導いた負荷線を、与えられた電球の特性グラフ上に描き込みます。
  4. 電球の特性曲線と負荷線の「交点」の座標をグラフから読み取ります。この交点が、実際に回路が動作するときの電圧と電流の値を表します。
  5. 読み取った値をもとに、問題で問われている「抵抗に流れる電流」を計算します。

思考の道筋とポイント
この問題の最大のポイントは、電球が電圧によって抵抗値が変わる「非線形抵抗」である点です。したがって、合成抵抗を計算してオームの法則を適用する、という従来の方法は使えません。
このような問題では、グラフを利用した解法が定石となります。考え方としては、

  1. 電球の条件: 電球は、与えられた特性グラフ(曲線)上の(電圧, 電流)の組み合わせでしか動作できない。
  2. 回路の条件: 電源と6Ωの抵抗からなる回路側も、接続されている電球に対して「この(電圧, 電流)の組み合わせでなければならない」という条件を課す。この条件は数式で表すと直線になる。

この2つの条件を同時に満たす点、すなわちグラフ上の「曲線と直線の交点」が、この回路で実際に実現する動作点(電圧と電流の値)となります。この回路側の条件を表す直線を「負荷線」と呼びます。
この設問における重要なポイント

  • 与えられたグラフは「電球1個」の特性であることを正確に把握する。
  • 回路では電球が2個並列のため、抵抗に流れる電流は電球1個に流れる電流の2倍になる。
  • キルヒホッフの第2法則を用いて、回路が電球に課す条件(負荷線)の式を正しく導き出す。
  • グラフの交点を読み取った後、問われているのが「電球1個の電流(\(I\))」なのか「抵抗を流れる電流(\(2I\))」なのかを再確認し、正しく答える。

具体的な解説と立式
まず、グラフの軸に合わせて、電球1個にかかる電圧を \(V\)、電球1個に流れる電流を \(I\) とおきます。

回路図を見ると、2個の電球は並列に接続されています。したがって、両方の電球に同じ電圧 \(V\) がかかります。
それぞれの電球に電流 \(I\) が流れるため、これらが合流して抵抗 \(R=6 \, \Omega\) に流れる電流 \(I_{\text{抵抗}}\) は、キルヒホッフの第1法則より、
$$ I_{\text{抵抗}} = I + I = 2I \quad \cdots ① $$
次に、電源、抵抗、電球のいずれか1個を含む閉回路について、キルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用します。電源の起電力 \(E=6 \, \text{V}\) は、抵抗での電圧降下 \(V_{\text{抵抗}}\) と電球での電圧降下 \(V\) の和に等しくなります。
$$ E = V_{\text{抵抗}} + V $$
ここで、抵抗での電圧降下 \(V_{\text{抵抗}}\) は \(R \times I_{\text{抵抗}}\) なので、
$$ 6 = (6 \, \Omega) \times (2I) + V $$
$$ 6 = 12I + V \quad \cdots ② $$
この式②が、回路の線形部分が電球に課す条件、すなわち「負荷線」の方程式です。この式と、グラフの特性曲線を同時に満たす \(V\) と \(I\) の組が求める解となります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 流れ込む電流の和=流れ出す電流の和
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 起電力の総和=電圧降下の総和
計算過程

グラフ上で解を求めるために、式②を \(I\) について変形し、グラフに直線として描き込みます。
$$
\begin{aligned}
12I &= 6 – V \\[2.0ex]I &= -\frac{1}{12}V + \frac{6}{12} \\[2.0ex]I &= -\frac{1}{12}V + 0.5
\end{aligned}
$$
この直線(負荷線)を描くために、グラフの軸との切片を求めます。

  • 縦軸(\(I\)軸)との切片: \(V=0\) を代入すると \(I = 0.5 \, \text{[A]}\)。よって、点 (0 V, 0.5 A) を通ります。
  • 横軸(\(V\)軸)との切片: \(I=0\) を代入すると \(0 = -\frac{1}{12}V + 0.5\)。これを解くと \(V = 6 \, \text{[V]}\)。よって、点 (6 V, 0 A) を通ります。

この2点を結ぶ直線をグラフに描き、電球の特性曲線との交点を読み取ります。
グラフから、交点における電流 \(I\) はおよそ \(0.38 \, \text{A}\) と読み取れます。
$$ I \approx 0.38 \, [\text{A}] $$
問題で求められているのは、抵抗に流れる電流の強さ \(I_{\text{抵抗}}\) です。式①より \(I_{\text{抵抗}} = 2I\) なので、
$$
\begin{aligned}
I_{\text{抵抗}} &= 2I \\[2.0ex]&\approx 2 \times 0.38 \\[2.0ex]&= 0.76 \, [\text{A}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題は、計算とグラフの合わせ技で解きます。電球は性能がグラフの曲線で決まっています。一方、電源と抵抗からなる「回路」も、電球に対して「こういう電圧と電流の関係でなければ許さない」という条件を突きつけます。この「回路の条件」を式にすると \(6 = 12I + V\) となり、これはグラフ上では直線になります。
実際に回路が動くのは、電球の性能(曲線)と回路の条件(直線)がぴったり一致する点、つまりグラフの「交点」しかありません。
この直線をグラフに描いて交点を読み取ると、電球1個あたり約 \(0.38 \, \text{A}\) の電流が流れることがわかります。
問題で聞かれているのは抵抗を流れる電流で、これは電球2個分の電流が合わさったものなので、\(0.38 \times 2 = 0.76 \, \text{A}\) となります。

結論と吟味

抵抗に流れる電流の強さは \(0.76 \, \text{A}\) です。グラフの読み取りには多少の誤差が生じますが、負荷線を正しく描き、交点を読み取って問われている物理量を計算するというプロセスが重要です。交点の電圧は約 \(1.4 \, \text{V}\) と読み取れ、抵抗での電圧降下 \(0.76 \, \text{A} \times 6 \, \Omega = 4.56 \, \text{V}\) と足すと \(1.4 + 4.56 = 5.96 \, \text{V}\) となり、電源電圧 \(6 \, \text{V}\) とほぼ一致することから、読み取りが妥当であることが確認できます。

解答 \(0.76 \, \text{A}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 非線形素子を含む回路のグラフ的解法
    • 核心: 電球のように電圧と電流が比例しない(オームの法則が成り立たない)素子が含まれる回路では、代数的な計算だけで解を求めることはできません。このような問題の核心は、「素子の特性(グラフの曲線)」「回路が素子に課す外部条件(負荷線)」という2つの制約を同時に満たす点を、グラフ上で見つけるという「グラフ的解法」にあります。
    • 理解のポイント:
      • 特性曲線: その素子が物理的に取りうる電圧と電流の関係。素子自身の「ルールブック」のようなものです。
      • 負荷線: 回路の他の部分(電源や線形抵抗)が、その素子に対して課す電圧と電流の関係。素子が接続されている「環境」からの要求です。
      • 動作点: 特性曲線と負荷線の交点。素子のルールと環境の要求が一致し、実際に回路が安定して動作する唯一の点です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ダイオードを含む回路: ダイオードも代表的な非線形素子で、その特性は急激に立ち上がる曲線で与えられます。解法は全く同じで、負荷線との交点を求めます。
    • 電球の直列接続: もし電球が2個直列に接続されている場合、回路全体の電圧則は \(E = V_{\text{抵抗}} + 2V\) となります(\(V\)は電球1個の電圧)。また、抵抗を流れる電流と電球を流れる電流は等しくなります(\(I_{\text{抵抗}} = I\))。これらの関係から負荷線を導き、グラフとの交点を求めます。
    • トランジスタの動作点: より高度な内容になりますが、トランジスタ回路の設計でも、トランジスタの特性曲線群と負荷線を描き、その交点(動作点)を求めるという同様のグラフ的解法が用いられます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 非線形素子の特定: まず、問題に電圧-電流グラフが与えられていたり、「電球」「ダイオード」といった言葉があったりしたら、「これは非線形抵抗の問題だ。グラフで解く必要があるな」と判断します。
    2. グラフの軸の定義を確認: 与えられたグラフの縦軸と横軸が何を表しているか(特に「素子1個あたり」なのか「全体」なのか)を絶対に確認します。
    3. 負荷線の立式: キルヒホッフの法則を使い、グラフの軸の変数(この問題では\(V\)と\(I\))を含む関係式を立てます。この式が負荷線の方程式になります。
    4. 負荷線を描く: 負荷線の式をグラフに描き込むために、計算しやすい2点(通常は縦軸と横軸の切片)を求めて直線で結びます。
    5. 交点の読み取りと最終的な答えの確認: 交点の座標を慎重に読み取ります。最後に、問題で何が問われているか(電球1個の電流か、全体の電流か、電圧かなど)を再確認し、読み取った値から最終的な答えを計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • グラフの軸と回路の変数の混同:
    • 誤解: グラフの縦軸は電球1個の電流\(I\)なのに、負荷線を立てる際に抵抗を流れる電流をそのまま\(I\)としてしまい、\(6 = 6I + V\) のような間違った式を立てる。
    • 対策: 最初に「グラフの軸の変数は何か(電球1個のVとI)」を明確にし、回路の各部分を流れる電流や電圧を、その基本変数(VとI)を使って表現する、という手順を徹底します。この問題では「抵抗を流れる電流は\(2I\)である」と正しく認識することが鍵です。
  • 負荷線の作図ミス:
    • 誤解: 負荷線の式の切片の計算を間違えたり、グラフにプロットする位置を間違えたりする。
    • 対策: 負荷線の式 \(I = -\frac{1}{12}V + 0.5\) を導いたら、\(V=0\)のとき\(I=0.5\)、\(I=0\)のとき\(V=6\)というように、切片の座標を明確にメモしてからグラフに点を打ち、定規で丁寧に直線を引きます。
  • 交点の読み取りで満足してしまう:
    • 誤解: 交点の電流 \(I \approx 0.38 \, \text{A}\) を読み取って、それをそのまま答えとしてしまう。
    • 対策: 計算の最後に、必ず問題文をもう一度読み返し、「何を問われているか?」を確認する習慣をつけます。この問題では「抵抗に流れる電流の強さ」なので、\(2I\) を計算する必要がありました。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則):
    • 選定理由: この問題では、回路を構成する各要素(電源、抵抗、電球)の電圧の関係を明らかにし、負荷線の方程式を導くために不可欠です。
    • 適用根拠: エネルギー保存則に基づく普遍的な法則であり、線形・非線形を問わず、あらゆる回路の閉ループで成立します。電源が供給するエネルギー(起電力)が、回路の各要素で消費されるエネルギー(電圧降下)の和に等しい、という関係を数式で表現するために用います。この法則によって、非線形素子の外部にある線形回路部分が素子に課す制約を、\(V\)と\(I\)の関係式として抽出することができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの読み取り精度: グラフから値を読み取る際は、目分量に頼らず、定規などを当てて目盛りと慎重に比較します。特に、1目盛りが0.1や0.2でない場合は注意が必要です。多少の誤差は許容されますが、できるだけ正確に読み取る努力が大切です。
  • 負荷線の式の変形: 負荷線の式を立てた後、グラフに描きやすいように \(I = \dots\) の形に変形しますが、その際の移項や割り算で符号ミスや計算ミスをしないように注意します。
  • 検算: 交点から読み取った値(例: \(I \approx 0.38 \, \text{A}\), \(V \approx 1.4 \, \text{V}\))を、元の負荷線の式 \(6 = 12I + V\) に代入してみます。\(12 \times 0.38 + 1.4 = 4.56 + 1.4 = 5.96\)。この値は電源電圧の6Vに非常に近いため、読み取りが妥当であると確認できます。
  • 最終計算の確認: \(I\)の値を求めた後、最終的に\(2I\)を計算するのを忘れないように、問題文の要求事項に下線を引くなどして注意を喚起します。

例題78 メートルブリッジ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ホイートストンブリッジ」です。特に、一様な抵抗線を用いてブリッジの平衡条件を見つける形式の回路は「メートルブリッジ」とも呼ばれ、未知抵抗の精密な測定に用いられます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ホイートストンブリッジ: 4つの抵抗をひし形に接続した回路。中間の検流計に電流が流れない「平衡状態」を利用して、抵抗値の間の関係を導き出します。
  2. ブリッジの平衡条件: 検流計に電流が流れないとき、対角にある抵抗の積が等しくなります。(\(R_1 R_3 = R R_2\))
  3. 抵抗値と長さの関係: 一様な抵抗線では、その抵抗値は長さに比例します。この性質を利用して、抵抗線の長さの比を抵抗値の比として扱うことができます。
  4. 電位: ブリッジが平衡する条件は、検流計が接続されている2点の電位が等しくなることです。これが平衡条件の物理的な本質です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた回路がホイートストンブリッジの構成になっていることを確認します。
  2. 抵抗線ABを、接点Cによって \(R_{\text{AC}}\) と \(R_{\text{CB}}\) の2つの抵抗に分割されていると見なします。
  3. 検流計Gに電流が流れないという「平衡条件」から、ブリッジ回路の抵抗比に関する公式を立てます。
  4. 一様な抵抗線の抵抗値は長さに比例することから、抵抗値の比を長さの比で置き換えます。
  5. 立式した関係に既知の値を代入し、未知の抵抗値 \(R\) を求めます。

思考の道筋とポイント
この問題の回路は、一見すると複雑ですが、ひし形に変形して描いてみると、典型的な「ホイートストンブリッジ」であることがわかります。問題の核心は、「検流計Gを流れる電流が0になった」という記述です。これはブリッジが「平衡状態」にあることを意味し、非常に強力な条件式を立てることができます。
ブリッジが平衡しているとき、検流計を接続している2点(この回路では、\(R_1\)と\(R\)の間の点と、接点C)の電位が等しくなります。この結果、対角線上にある抵抗の積が等しくなる、という有名な平衡条件が導かれます。
また、抵抗線ABは「一様」であるため、その抵抗値は長さに比例します。したがって、抵抗比を長さの比で直接計算できる点がポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 回路がホイートストンブリッジであり、平衡状態にあることを見抜く。
  • ブリッジの平衡条件: \(\displaystyle\frac{R_1}{R} = \frac{R_{\text{AC}}}{R_{\text{CB}}}\) または \(R_1 \cdot R_{\text{CB}} = R \cdot R_{\text{AC}}\) が成り立つ。
  • 一様な抵抗線では、抵抗値の比は長さの比に等しい: \(\displaystyle\frac{R_{\text{AC}}}{R_{\text{CB}}} = \frac{L_{\text{AC}}}{L_{\text{CB}}}\)。

具体的な解説と立式
この回路はホイートストンブリッジを構成しています。抵抗線ABのうち、AC間の抵抗値を \(R_2\)、CB間の抵抗値を \(R_3\) とします。
検流計Gに電流が流れないとき、ブリッジは平衡しています。このとき、ブリッジの平衡条件が成り立ちます。
一般的に、4つの抵抗 \(R_a, R_b, R_c, R_d\) がひし形に接続され、\(R_a\)と\(R_b\)、\(R_c\)と\(R_d\)がそれぞれ隣り合う辺にあるとき、平衡条件は \(\displaystyle\frac{R_a}{R_c} = \frac{R_b}{R_d}\) と表せます。
この問題の回路に当てはめると、
$$ \frac{R_1}{R} = \frac{R_2}{R_3} \quad \cdots ① $$
となります。
ここで、ABは一様な抵抗線なので、その抵抗値は長さに比例します。したがって、抵抗値の比は長さの比で置き換えることができます。
$$ \frac{R_2}{R_3} = \frac{\text{長さAC}}{\text{長さCB}} \quad \cdots ② $$
式①と②から、
$$ \frac{R_1}{R} = \frac{\text{長さAC}}{\text{長さCB}} $$
この式を未知抵抗 \(R\) について解くと、
$$ R = R_1 \times \frac{\text{長さCB}}{\text{長さAC}} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件: \(R_1 R_3 = R_2 R\)
  • 抵抗と長さの比例関係: \(R \propto L\)
計算過程

与えられた値を式③に代入します。
\(R_1 = 36 \, [\Omega]\)
長さAC = \(72 \, [\text{cm}]\)
長さCB = \(28 \, [\text{cm}]\)
$$
\begin{aligned}
R &= 36 \times \frac{28}{72} \\[2.0ex]&= 36 \times \frac{7 \times 4}{18 \times 4} \\[2.0ex]&= 36 \times \frac{7}{18} \\[2.0ex]&= 2 \times 7 \\[2.0ex]&= 14 \, [\Omega]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この回路は、天秤のようなものです。「検流計の電流が0」というのは、「天秤が釣り合っている」状態と同じです。天秤が釣り合うとき、「(左の皿の重さ)×(左の腕の長さ)=(右の皿の重さ)×(右の腕の長さ)」のような関係が成り立ちます。
この回路では、抵抗が重さ、抵抗線の長さが腕の長さに対応します。釣り合いの条件は「たすき掛けで抵抗を掛け算したものが等しい」と覚えられます。
つまり、「\(R_1\) × (CB間の抵抗) = \(R\) × (AC間の抵抗)」となります。
抵抗線の抵抗は長さに比例するので、この式は「\(R_1\) × (CBの長さ) = \(R\) × (ACの長さ)」と書き換えられます。
ここに \(R_1=36\), AC=72, CB=28 を入れて計算すると、未知の抵抗\(R\)が求まります。

結論と吟味

未知抵抗 \(R\) の抵抗値は \(14 \, \Omega\) です。ホイートストンブリッジの平衡条件を正しく適用し、抵抗値と長さの比例関係を用いることで、未知抵抗を求めることができました。計算過程の約分なども正しく行われています。

解答 \(14 \, \Omega\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ホイートストンブリッジの平衡条件
    • 核心: この問題の根幹をなすのは、「検流計に電流が流れない」という平衡状態が何を意味するかを理解することです。物理的な本質は、検流計を接続する2点間の電位が等しくなることです。これにより、4つの抵抗値の間に \(\displaystyle\frac{R_1}{R} = \frac{R_2}{R_3}\) という単純な比例関係(あるいは「たすき掛けの積が等しい」\(R_1 R_3 = R R_2\))が成立します。
    • 理解のポイント:
      • なぜ電流が流れないのか?: 2点間に電位差がないため、電荷を動かす力(電場)が存在せず、電流が流れません。
      • なぜ抵抗の比が等しくなるのか?: 点Aから見て、\(R_1\)での電圧降下と\(R_2\)での電圧降下の比が、\(R\)での電圧降下と\(R_3\)での電圧降下の比と等しくなるためです。平衡状態では、A→\(R_1\)の枝とA→\(R_2\)の枝で、同じ割合で電圧が降下していくため、途中の点の電位が一致します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ブリッジが平衡していない問題: もし検流計に電流が流れる場合、この問題のような単純な比例式は使えません。その場合は、キルヒホッフの法則を用いて、3つの未知電流(例: \(I_1, I_2, I_{\text{G}}\))に対して3つの閉回路から連立方程式を立てて解く必要があります。
    • コンデンサーを含むブリッジ回路: 抵抗の代わりにコンデンサーが使われている交流ブリッジ回路。平衡条件は、抵抗値の代わりにインピーダンスを用いて同様に考えます。直流回路の場合は、定常状態ではコンデンサーに電流が流れないため、その枝は断線していると見なせます。
    • ひずみゲージ: 抵抗線のひずみ(伸び縮み)によって抵抗値がわずかに変化することを利用したセンサー。これもホイートストンブリッジの形で使われ、ひずみによるわずかな抵抗値の変化を、ブリッジの不平衡によって生じる電圧として検出します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の形状認識: まず、回路図が4つの素子をひし形に接続したブリッジ回路の形になっているかを確認します。一見そう見えなくても、図を描き直すとブリッジになることが多いです。
    2. 「検流計の電流が0」のキーワードを探す: この一言があれば、「平衡条件が使える!」と即座に判断します。これが問題を解く最大の鍵です。
    3. 抵抗の対応関係を正確に把握: 平衡条件の公式 \(\displaystyle\frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_4}\) を適用する際、どの抵抗がどの位置にあるのか(対角はどれか、隣はどれか)を回路図と正確に対応させます。たすき掛け(\(R_1 R_4 = R_2 R_3\))で覚える方が間違いが少ないかもしれません。
    4. 抵抗線の扱い: 「一様な抵抗線」という記述があれば、「抵抗値は長さに比例する」という関係を使って、抵抗比を長さの比に置き換えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 平衡条件の式の立て間違い:
    • 誤解: たすき掛けをする相手を間違え、\(R_1 R = R_2 R_3\) のような誤った式を立ててしまう。
    • 対策: 回路図を必ずひし形に描き直し、「向かい合う抵抗の積が等しい」と視覚的に覚えます。この問題では、\(R_1\)の向かいは\(R_3\)(CB間)、\(R\)の向かいは\(R_2\)(AC間)なので、\(R_1 \cdot R_3 = R \cdot R_2\) となります。
  • 抵抗比と長さの比の逆転:
    • 誤解: \(R = R_1 \times \displaystyle\frac{\text{長さAC}}{\text{長さCB}}\) のように、比の分子と分母を逆にしてしまう。
    • 対策: 式 \(R_1/R = R_2/R_3\) から丁寧に式変形を行います。\(R = R_1 \times (R_3/R_2)\) となり、\(R_3\)がCB間、\(R_2\)がAC間に対応するので、\(R = R_1 \times (\text{長さCB}/\text{長さAC})\) となります。感覚的に「\(R_1\)より\(R\)の方が小さいはずだから、掛ける分数は1より小さいはず」といった吟味も有効です。
  • 単位の混在:
    • 誤解: 長さがmとcmで混在している場合に、単位を揃えずに計算してしまう。
    • 対策: この問題では両方cmなので問題ありませんが、異なる単位が使われている場合は、必ずどちらかに統一してから計算を開始します。比を計算する場合は、単位が同じであれば換算しなくても約分されて消えますが、安全のため単位を揃える癖をつけるのが良いでしょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ホイートストンブリッジの平衡条件:
    • 選定理由: 問題文に「検流計を流れる電流が0」という、この公式を適用するための明確な合図があるためです。この条件がある場合、複雑なキルヒホッフの連立方程式を解く必要がなくなり、単純な代数計算だけで未知抵抗を求めることができます。最も効率的で直接的な解法です。
    • 適用根拠: (最重要ポイントで述べた通り)検流計を繋ぐ2点の電位が等しいことが物理的な根拠です。A点を基準にすると、\(R_1\)と\(R\)の間の点の電位は\(V_A – I_1 R_1\)、C点の電位は\(V_A – I_2 R_2\)です。平衡時はこれらの電位が等しいので \(I_1 R_1 = I_2 R_2\)。同様にB点を基準に考えると \(I_1 R = I_2 R_3\)。これらの比を取ることで、\(R_1/R = R_2/R_3\) という条件式が導出されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の計算: \(R = 36 \times \frac{28}{72}\) のような計算では、いきなり掛け算をせず、まず約分を徹底します。\(72\)が\(36\)の倍数であることに気づけば、計算は非常に簡単になります。\(72 = 2 \times 36\) なので、\(R = 36 \times \frac{28}{2 \times 36} = \frac{28}{2} = 14\) と暗算レベルで計算できます。
  • 数値の代入ミス: 問題文から数値を拾う際に、\(R_1\)と\(R\)、ACとCBの値を混同しないように、式を立てた後に指差し確認しながら慎重に代入します。
  • 答えの妥当性チェック: ACの長さ(72cm)がCBの長さ(28cm)より大きいので、対応する抵抗\(R_2\)も\(R_3\)より大きいはずです。平衡条件 \(R/R_1 = R_3/R_2\) より、\(R_3/R_2\) は1より小さいので、\(R\)は\(R_1=36\Omega\)より小さくなるはずです。計算結果の\(14\Omega\)はこの予測と一致しており、妥当であると判断できます。

例題79 分流器・倍率器

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電流計・電圧計の測定範囲の拡大」です。具体的には、電流計に並列に接続する「分流器」と、電圧計に直列に接続する「倍率器」の原理と計算方法が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 分流器: 電流計の測定範囲を拡大するために、電流計に並列に接続する抵抗。測定したい大きな電流の一部を分流器に流すことで、電流計本体に流れる電流を最大目盛り以下に抑えます。
  2. 倍率器: 電圧計の測定範囲を拡大するために、電圧計に直列に接続する抵抗。測定したい大きな電圧の大部分を倍率器に負担させることで、電圧計本体にかかる電圧を最大目盛り以下に抑えます。
  3. 並列接続の性質: 各部分にかかる電圧が等しい。
  4. 直列接続の性質: 各部分を流れる電流が等しい。
  5. オームの法則: \(V=RI\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、電流計の測定範囲を拡大するため、分流器を並列に接続する構成を考えます。測定したい最大電流と電流計が測定できる最大電流の差分が、分流器に流れるべき電流となります。並列接続では電圧が等しいことを利用して、分流器の抵抗値を求めます。
  2. (2)では、電圧計の測定範囲を拡大するため、倍率器を直列に接続する構成を考えます。測定したい最大電圧と電圧計が測定できる最大電圧の差分が、倍率器が分担すべき電圧となります。直列接続では電流が等しいことを利用して、倍率器の抵抗値を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
最大10mAまでしか測れない電流計で、最大100mAの電流を測れるようにする問題です。これは「分流器」の設計問題です。100mAの電流が回路に流れてきたとき、電流計本体には最大許容値である10mAを流し、残りの電流を別の抵抗(分流器)に流す(=分流させる)ことで、測定範囲を拡大します。
分流器は電流計に「並列」に接続します。なぜなら、電流を分岐させる必要があるからです。並列接続の重要な性質は「両者にかかる電圧が等しい」ことです。この関係を利用して、分流器の抵抗値を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 電流計の測定範囲拡大には、抵抗(分流器)を「並列」に接続する。
  • 並列接続では、電流計と分流器にかかる電圧は等しい。
  • 全体の電流から電流計に流れる電流を引いたものが、分流器に流れる電流となる。

具体的な解説と立式
電流計の内部抵抗を \(R_A = 18 \, \Omega\)、最大測定電流を \(I_A = 10 \, \text{mA}\) とします。
拡大後の最大測定電流を \(I_{\text{全体}} = 100 \, \text{mA}\) とします。
このとき、分流器に流すべき電流 \(I_r\) は、
$$ I_r = I_{\text{全体}} – I_A \quad \cdots ① $$
分流器の抵抗値を \(r\) とします。電流計と分流器は並列に接続されているため、両者にかかる電圧は等しくなります。オームの法則 \(V=RI\) より、
$$ R_A I_A = r I_r \quad \cdots ② $$
この式を \(r\) について解くことで、必要な抵抗値を求めることができます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則)
  • オームの法則: \(V=RI\)
計算過程

まず、式①を用いて分流器に流れる電流 \(I_r\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_r &= 100 \, [\text{mA}] – 10 \, [\text{mA}] \\[2.0ex]&= 90 \, [\text{mA}]\end{aligned}
$$
次に、式②に各値を代入して \(r\) を求めます。電流の単位は両辺でmAのままでも計算できますが、基本単位のAに直すとより確実です。
\(R_A = 18 \, \Omega\), \(I_A = 10 \times 10^{-3} \, \text{A}\), \(I_r = 90 \times 10^{-3} \, \text{A}\)
$$
\begin{aligned}
18 \times (10 \times 10^{-3}) &= r \times (90 \times 10^{-3}) \\[2.0ex]18 \times 10 &= r \times 90 \\[2.0ex]180 &= 90r \\[2.0ex]r &= \frac{180}{90} \\[2.0ex]r &= 2.0 \, [\Omega]\end{aligned}
$$
したがって、\(2.0 \, \Omega\) の抵抗を電流計に並列に接続すればよいことになります。

計算方法の平易な説明

100mAの大きな電流を測るために、電流計には10mAだけを通し、残りの90mAをバイパス用の別の道(分流器)に流します。電流計と分流器は並列なので、両方にかかる電圧は同じです。

  • 電流計にかかる電圧: (抵抗 18Ω) × (電流 10mA)
  • 分流器にかかる電圧: (抵抗 r) × (電流 90mA)

これらが等しいので、「\(18 \times 10 = r \times 90\)」という式が成り立ちます。これを解くと、分流器の抵抗 \(r\) は \(2.0 \, \Omega\) とわかります。

結論と吟味

\(2.0 \, \Omega\) の抵抗(分流器)を電流計に並列に接続します。電流計の内部抵抗 \(18 \, \Omega\) に比べて小さな抵抗を並列につなぐことで、電流の大部分(この場合9/10)が分流器側に流れるようになり、測定範囲が拡大されるという結果は物理的に妥当です。

解答 (1) \(2.0 \, \Omega\) の抵抗を電流計に並列に接続する。

問(2)

思考の道筋とポイント
最大10Vまでしか測れない電圧計で、最大100Vの電圧を測れるようにする問題です。これは「倍率器」の設計問題です。100Vの電圧を測定するとき、電圧計本体には最大許容値である10Vがかかるようにし、残りの電圧を別の抵抗(倍率器)に分担させます。
電圧を分担させるためには、倍率器を電圧計に「直列」に接続します。直列接続の重要な性質は「両者を流れる電流が等しい」ことです。この関係を利用して、倍率器の抵抗値を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 電圧計の測定範囲拡大には、抵抗(倍率器)を「直列」に接続する。
  • 直列接続では、電圧計と倍率器に流れる電流は等しい。
  • 全体の電圧から電圧計にかかる電圧を引いたものが、倍率器にかかる電圧となる。

具体的な解説と立式
電圧計の内部抵抗を \(R_V = 20 \, \text{k}\Omega\)、最大測定電圧を \(V_V = 10 \, \text{V}\) とします。
拡大後の最大測定電圧を \(V_{\text{全体}} = 100 \, \text{V}\) とします。
倍率器の抵抗値を \(R\) とします。電圧計と倍率器は直列に接続されているため、両者を流れる電流 \(I\) は等しくなります。
電圧計が最大目盛りを指すとき、電圧計に流れる電流 \(I\) はオームの法則より、
$$ I = \frac{V_V}{R_V} \quad \cdots ① $$
この電流 \(I\) が、倍率器 \(R\) にも流れます。
一方、回路全体で考えると、全体の電圧 \(V_{\text{全体}}\) は、全体の抵抗 (\(R_V + R\)) と電流 \(I\) の積に等しくなります。
$$ V_{\text{全体}} = (R_V + R) I \quad \cdots ② $$
式①で求めた電流 \(I\) を式②に代入することで、\(R\) を求めることができます。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=RI\)
計算過程

まず、式①を用いて、電圧計が最大目盛り10Vを指すときに流れる電流 \(I\) を計算します。
\(R_V = 20 \, \text{k}\Omega = 20 \times 10^3 \, \Omega\)
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{10 \, [\text{V}]}{20 \times 10^3 \, [\Omega]} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2 \times 10^3} \, [\text{A}]\end{aligned}
$$
次に、この電流 \(I\) を用いて式②から \(R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
100 &= (20 \times 10^3 + R) \times \frac{1}{2 \times 10^3} \\[2.0ex]100 \times (2 \times 10^3) &= 20 \times 10^3 + R \\[2.0ex]200 \times 10^3 &= 20 \times 10^3 + R \\[2.0ex]R &= (200 – 20) \times 10^3 \\[2.0ex]R &= 180 \times 10^3 \, [\Omega] \\[2.0ex]R &= 1.8 \times 10^5 \, [\Omega]\end{aligned}
$$
したがって、\(1.8 \times 10^5 \, \Omega\) (または \(180 \, \text{k}\Omega\)) の抵抗を電圧計に直列に接続すればよいことになります。

計算方法の平易な説明

100Vの大きな電圧を測るために、電圧計には10Vだけを負担させ、残りの90Vを相棒の抵抗(倍率器)に負担させます。電圧を分担するので、接続は直列です。
直列接続なので、電圧計と倍率器には同じ電流が流れます。

  • 電圧計に流れる電流: (電圧 10V) ÷ (抵抗 20kΩ)
  • 倍率器に流れる電流: (電圧 90V) ÷ (抵抗 R)

これらが等しいので、「\(10 / 20000 = 90 / R\)」という式が成り立ちます。これを解くと、倍率器の抵抗 \(R\) は \(180000 \, \Omega\) (\(180 \, \text{k}\Omega\)) とわかります。

結論と吟味

\(1.8 \times 10^5 \, \Omega\) の抵抗(倍率器)を電圧計に直列に接続します。電圧計の内部抵抗 \(20 \, \text{k}\Omega\) に比べて大きな抵抗を直列につなぐことで、電圧の大部分(この場合9/10)が倍率器側にかかるようになり、測定範囲が拡大されるという結果は物理的に妥当です。

解答 (2) \(1.8 \times 10^5 \, \Omega\) の抵抗を電圧計に直列に接続する。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 測定器の内部抵抗と測定範囲の拡大原理
    • 核心: 電流計や電圧計が理想的な測定器ではない(内部抵抗を持つ)ことを理解し、その性質を利用して測定範囲を拡大する方法を問う問題です。核心は、「分流」「分圧」という2つの基本原理を、それぞれ電流計と電圧計にどう適用するかにあります。
    • 理解のポイント:
      • 電流計(分流器): 電流計は測定対象に直列に接続するため、その内部抵抗は小さいほど良いとされます。測定範囲を広げるには、電流計に並列に小さな抵抗(分流器)を接続し、電流の大部分をそちらに逃がす(分流させる)ことで、本体を守ります。
      • 電圧計(倍率器): 電圧計は測定対象に並列に接続するため、その内部抵抗は大きいほど良いとされます。測定範囲を広げるには、電圧計に直列に大きな抵抗(倍率器)を接続し、電圧の大部分をそちらに負担させる(分圧させる)ことで、本体を守ります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 「n倍」の測定範囲にするための抵抗値: 「測定範囲をn倍にする」という形で問われることがあります。
      • 分流器の場合: \(r = \displaystyle\frac{R_A}{n-1}\)
      • 倍率器の場合: \(R = (n-1)R_V\)

      これらの公式を導出できるようにしておくと、検算や思考のショートカットに役立ちます。

    • 測定による回路への影響: 実際の電流計や電圧計を回路に接続すると、その内部抵抗のために元の回路の状態が変化し、測定値に誤差が生じることを問う問題。電流計は直列に入れるので回路全体の抵抗を増やし、電圧計は並列に入れるので回路全体の抵抗を減らしてしまうことを理解する必要があります。
    • テスター(回路計)の内部構造: 一つのメーターで電流・電圧・抵抗を切り替えて測定できるテスターの内部回路を考察する問題。分流器と倍率器の抵抗を切り替えることで、様々なレンジ(測定範囲)を実現していることを理解します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電流計か電圧計か?: まず、問題がどちらの測定器について述べているかを確認します。これにより、抵抗を「並列」につなぐか「直列」につなぐかが決まります。
    2. 「守るべき本体」を意識する: 電流計・電圧計の本体が「最大どれだけの電流・電圧に耐えられるか」がすべての計算の基準点になります。この最大許容値を超えないように、追加する抵抗の役割を考えます。
    3. 分流か分圧か?:
      • 電流計なら「電流を分ける」→ 並列接続 →「電圧が等しい」の式を立てる。
      • 電圧計なら「電圧を分ける」→ 直列接続 →「電流が等しい」の式を立てる。

      この思考フローを確立させます。

    4. 単位の確認: \(mA\) や \(k\Omega\) といった単位が使われている場合、計算前に \(A\) や \(\Omega\) に変換する癖をつけます。特に、両辺で単位が相殺されない場合は必須です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 分流器と倍率器の接続方法の混同:
    • 誤解: 電流計に直列、電圧計に並列に抵抗を接続してしまう。
    • 対策: 「電流は分岐させて逃がす」「電圧は直列で分担する」という物理的なイメージで覚えます。電流計(Ammeter)は回路に割り込ませる(直列)もの、電圧計(Voltmeter)は回路を跨いで(並列)測るもの、という測定器の基本的な使い方と、測定範囲拡大の理屈をセットで理解することが重要です。
  • 計算式の立て間違い:
    • 誤解: (1)の分流器で、電圧が等しい関係ではなく、電流の比と抵抗の比の関係を間違えてしまう。
    • 対策: 「並列なら電圧が等しい」「直列なら電流が等しい」という基本原則から毎回立式する癖をつけます。\(V_A = V_r \rightarrow R_A I_A = r I_r\) のように、オームの法則を組み合わせる手順を省略しないことが確実です。
  • 電流・電圧の割り振りの勘違い:
    • 誤解: (1)で分流器に流れる電流を100mAとしてしまったり、(2)で倍率器にかかる電圧を100Vとしてしまったりする。
    • 対策: 「測定器本体が主役」と考えます。常に「本体に流れる電流は\(I_A\)まで」「本体にかかる電圧は\(V_V\)まで」という上限を意識し、全体の量から本体の分を引いた「残り」が追加した抵抗の分担分である、と明確に区別します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • オームの法則と並列・直列の性質:
    • 選定理由: この問題は、分流器・倍率器という応用的なテーマに見えますが、その根底にあるのは「オームの法則」と「並列・直列接続の基本性質」のみです。これら以外の特別な公式は必要ありません。
    • 適用根拠:
      • (1) 分流器: 電流を分岐させるために「並列接続」を選択します。並列接続では各要素にかかる「電圧が等しい」という性質が利用できるため、オームの法則を適用して \(R_A I_A = r I_r\) という関係式を導き、未知の抵抗値\(r\)を求めます。
      • (2) 倍率器: 電圧を分担させるために「直列接続」を選択します。直列接続では各要素を流れる「電流が等しい」という性質が利用できるため、まず電圧計本体を流れる電流を \(I=V_V/R_V\) で求め、その電流が回路全体で \(V_{\text{全体}}\) の電圧を生み出すという関係 \(V_{\text{全体}} = (R_V+R)I\) から未知の抵抗値\(R\)を求めます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の換算を徹底: \(10\text{mA} = 10 \times 10^{-3} \text{A}\), \(20\text{k}\Omega = 20 \times 10^3 \Omega\) のように、計算を始める前にSI基本単位に直すことを習慣づけます。特に(1)のように両辺で単位が消える場合はそのままでも計算できますが、(2)のようにそうでない場合は換算が必須です。安全のため、常に換算するのが最善です。
  • 指数の計算: \(10^3\) や \(10^{-3}\) といった指数を含む計算では、指数の足し算・引き算のルールを正確に適用します。特に、移項や割り算の際に符号を間違えないように注意が必要です。
  • 大きな数の計算: (2)の \(R = 180 \times 10^3\) のような計算結果は、\(1.8 \times 10^5\) のように有効数字と指数を用いた科学表記で表すのが一般的です。問題の指示や慣例に従って、適切な形式で解答します。
  • 答えの桁の確認: (1)では、電流計の抵抗(18Ω)より小さい抵抗(2.0Ω)が、(2)では電圧計の抵抗(20kΩ)より大きい抵抗(180kΩ)が答えになりました。これは分流器・倍率器の原理と一致しており、計算結果のオーダー(桁数)が妥当であることの良いチェックになります。

例題80 コンデンサーを含む回路

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コンデンサーを含む直流回路の過渡現象」です。スイッチを入れた直後と、そこから十分時間が経過した後の回路の状態がどのように異なるかを理解することが重要です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの性質:
    • スイッチを入れた直後: 電荷が蓄えられていないコンデンサーは、電圧が0Vです。この瞬間、コンデンサーは抵抗のない「導線」として振る舞うと見なせます。
    • 十分時間が経過した後(定常状態): 充電が完了したコンデンサーは、それ以上電流を流さなくなります。この状態では、コンデンサーは回路が「断線」している部分として振る舞います。
  2. 電荷と電圧の関係: コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\)、静電容量 \(C\)、コンデンサーにかかる電圧 \(V\) の間には \(Q=CV\) の関係があります。
  3. キルヒホッフの法則: 回路の電圧や電流を解析するための基本法則。特に、定常状態での電圧分配を計算する際に用います。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) スイッチを閉じた直後の状態を考えます。コンデンサーを「導線」と見なして回路を単純化し、各部分の電流と電圧を求めます。コンデンサーの電気量は、その電圧から計算します。
  2. (2) 十分に時間が経過した後の状態を考えます。コンデンサー部分を「断線」と見なして回路を単純化し、各部分の電流と電圧を求めます。コンデンサーの電気量は、充電完了後の電圧から計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「スイッチを閉じた直後」の回路の状態を考える問題です。この瞬間のコンデンサーの振る舞いをどう捉えるかが最大のポイントです。スイッチを入れる前、コンデンサーの電荷は0なので、その両端の電位差(電圧)も0Vです。電圧が0Vということは、電気的には抵抗のない「導線」で短絡(ショート)されているのと同じ状態と見なせます。
この考え方に基づいて回路図を単純化すると、抵抗\(R_2\)とコンデンサーCが、抵抗のない導線によって両端を繋がれた形になります。したがって、\(R_2\)の両端の電位差も0Vとなり、\(R_2\)には電流が流れません。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを入れる直前、コンデンサーの電荷は0、電圧も0。
  • スイッチを入れた直後、コンデンサーの電圧は連続的に変化するため、まだ0Vのままである。
  • 電圧0Vのコンデンサーは「導線」とみなせる。
  • 導線と並列に接続された抵抗には電圧がかからず、電流も流れない。

具体的な解説と立式
スイッチを閉じた直後、コンデンサーに蓄えられている電気量 \(Q\) はまだ0です。
$$ Q = 0 \, [\text{C}] $$
コンデンサーの電圧 \(V_C\) は \(Q=CV_C\) の関係から \(V_C=0 \, \text{V}\) です。
抵抗 \(R_2\) はコンデンサーCと並列に接続されているため、\(R_2\) にかかる電圧 \(V_2\) もコンデンサーの電圧と等しくなります。
$$ V_2 = V_C = 0 \, [\text{V}] $$
したがって、オームの法則 \(I_2 = V_2 / R_2\) より、\(R_2\) を流れる電流 \(I_2\) は、
$$ I_2 = 0 \, [\text{A}] $$
一方、抵抗 \(R_1\) には、電源の電圧 \(E\) が直接かかることになります。なぜなら、\(R_1\) の上端は電源の正極に、下端Pは電圧0Vのコンデンサーの上側につながっているため、P点の電位は電源の負極と同じとみなせるからです。よって、\(R_1\) にかかる電圧は \(E\) となり、流れる電流 \(I_1\) はオームの法則より、
$$ I_1 = \frac{E}{R_1} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電圧と電荷の関係: \(Q=CV\)
  • オームの法則: \(I=V/R\)
計算過程

この設問は、物理法則の適用によって直接答えが導かれるため、具体的な数値計算は不要です。

  • \(Q = 0 \, \text{C}\)
  • \(I_2 = 0 \, \text{A}\)
  • \(I_1 = \displaystyle\frac{E}{R_1}\)
計算方法の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、空っぽのコンデンサーは電気を欲しがって、まるでただの導線のように振る舞います。回路図を見ると、この「ただの導線」が抵抗\(R_2\)と並列になっています。これは、\(R_2\)の両側が電線で繋がっているのと同じことなので、\(R_2\)には電流が流れることができず、\(I_2=0\)となります。
その結果、電源からの電流は\(R_2\)を無視して、すべて\(R_1\)を通ってコンデンサーに向かいます。このとき、\(R_1\)には電源の電圧\(E\)がまるごとかかるので、電流\(I_1\)はオームの法則で \(E/R_1\) となります。コンデンサーはまだ空っぽなので電気量\(Q\)は0です。

結論と吟味

スイッチを閉じた直後は、\(I_1 = \displaystyle\frac{E}{R_1}\), \(I_2 = 0 \, \text{A}\), \(Q = 0 \, \text{C}\) となります。コンデンサーが導線として振る舞うという過渡現象の初期状態を正しくモデル化できました。

解答 (1) \(I_1 = \displaystyle\frac{E}{R_1}\), \(I_2 = 0\), \(Q = 0\)

問(2)

思考の道筋とポイント
「スイッチを閉じて十分な時間が経過したとき」の回路の状態を考える問題です。この状態では、コンデンサーの充電が完了しています。充電が完了すると、コンデンサーの枝にはもはや直流電流は流れません。つまり、コンデンサーの部分は「断線」していると見なすことができます。
回路図でコンデンサーの枝が断線していると考えると、電流は電源→\(R_1\)→\(R_2\)→電源という一つの閉回路のみを流れることになります。したがって、\(R_1\)と\(R_2\)は直列に接続されていると見なせます。
この設問における重要なポイント

  • 十分時間が経過すると、コンデンサーの充電が完了する。
  • 充電が完了したコンデンサーには直流電流は流れないため、「断線」とみなせる。
  • コンデンサーにかかる電圧は、それと並列に接続されている部分の電圧に等しい。

具体的な解説と立式
十分な時間が経過すると、コンデンサーCへの充電が完了し、コンデンサーに向かう電流 \(I\) は0になります。
$$ I = 0 \, [\text{A}] $$
これにより、分岐点Pでの電流の流れを見ると、\(I_1 = I_2 + I\) の関係から、\(I_1 = I_2\) となります。つまり、\(R_1\)と\(R_2\)は直列接続と見なせます。
この直列回路に流れる電流 \(I_1 (=I_2)\) は、オームの法則より、
$$ I_1 = I_2 = \frac{E}{R_1 + R_2} \quad \cdots ① $$
次に、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) を求めます。\(Q=CV\) の関係から、コンデンサーにかかる電圧 \(V\) が必要です。
コンデンサーは抵抗 \(R_2\) と並列に接続されているため、コンデンサーの電圧 \(V\) は \(R_2\) にかかる電圧 \(V_2\) に等しくなります。
$$ V = V_2 $$
\(V_2\) はオームの法則より、
$$ V_2 = R_2 I_2 \quad \cdots ② $$
したがって、コンデンサーの電気量 \(Q\) は、
$$ Q = CV = CV_2 = C(R_2 I_2) \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I=V/R\)
  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

式①で求めた \(I_2\) を式③に代入して \(Q\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= C R_2 \left( \frac{E}{R_1 + R_2} \right) \\[2.0ex]&= \frac{CR_2E}{R_1 + R_2}
\end{aligned}
$$
電流は式①で求めた通りです。
$$ I_1 = I_2 = \frac{E}{R_1 + R_2} $$

計算方法の平易な説明

スイッチを入れてから時間がたっぷり経つと、コンデンサーはお腹いっぱいになり、もう電気を受け付けなくなります。つまり、コンデンサーへの道は通行止め(断線)になります。
すると、電流はコンデンサーを無視して、\(R_1\)と\(R_2\)を通る一本道だけを流れるようになります。これは単純な直列回路なので、流れる電流は \(I_1=I_2=E/(R_1+R_2)\) となります。
このとき、コンデンサーは\(R_2\)の隣にいるので、\(R_2\)にかかっている電圧と同じ電圧がかかります。\(R_2\)の電圧はオームの法則で \(V_2 = R_2 \times I_2\)。コンデンサーにたまる電気の量\(Q\)は \(C \times V_2\) で計算できます。

結論と吟味

十分な時間が経過した後は、\(I_1 = I_2 = \displaystyle\frac{E}{R_1 + R_2}\), \(Q = \displaystyle\frac{CR_2E}{R_1 + R_2}\) となります。コンデンサーが断線として振る舞うという定常状態を正しくモデル化し、直列回路として解析できました。

解答 (2) \(I_1 = I_2 = \displaystyle\frac{E}{R_1 + R_2}\), \(Q = \displaystyle\frac{CR_2E}{R_1 + R_2}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • コンデンサーの過渡特性(スイッチON直後と十分な時間経過後)
    • 核心: この問題は、コンデンサーが回路に含まれることで生じる時間的な変化(過渡現象)を理解しているかを問うています。核心となるのは、以下の2つの極端な状態におけるコンデンサーの振る舞いを、等価的な回路素子としてモデル化できるかという点です。
    • 理解のポイント:
      • スイッチON直後: 電荷が0のコンデンサーは、電圧も0です。電圧が0の素子は、電気的には「抵抗0の導線(ショート状態)」と等価です。回路を流れる電流は、この「仮想的な導線」を避けるように、あるいは利用するように振る舞います。
      • 十分な時間経過後(定常状態): 充電が完了したコンデンサーは、直流電流を全く通さなくなります。これは、電気的には「無限大の抵抗を持つ断線状態」と等価です。回路を流れる電流は、この「仮想的な断線」を避けて流れます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コイルを含む回路: コイルはコンデンサーと対照的な振る舞いをします。
      • スイッチON直後: コイルは電流の変化を妨げるため、電流を流さず「断線」のように振る舞う。
      • 十分な時間経過後: 直流電流に対してはただの導線となり「抵抗0の導線」のように振る舞う。

      この対比を理解しておくと、コイルを含む過渡現象の問題にも対応できます。

    • スイッチの切り替え問題: スイッチSを閉じて定常状態になった後、別のスイッチS’を開く(または閉じる)といった問題。この場合、「切り替え直後」のコンデンサーの電圧は、「切り替え直前」の電圧と等しい(電圧は連続的にしか変化できない)という点が重要な初期条件になります。
    • 時定数を含む過渡現象のグラフ: コンデンサーの電荷や電流が時間と共に指数関数的に変化する様子をグラフで問う問題。回路の抵抗と容量で決まる「時定数 \(\tau = CR\)」の概念が中心となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 時間軸の確認: 問題文が「スイッチを閉じた直後」なのか、「十分な時間が経過した後」なのか、あるいは「スイッチを切り替えた直後」なのかを最初に確認します。これが回路のモデル化を決定します。
    2. コンデンサーの等価モデル化:
      • 「直後」→ コンデンサーを「導線」に描き換える。
      • 「十分後」→ コンデンサーの枝を「断線」として消去する。

      この作業で、複雑な回路が単純な抵抗回路に見えてきます。

    3. コンデンサーの電圧を特定: 最終的にコンデンサーの電気量\(Q\)を求めるには、その電圧\(V\)が必要です。コンデンサーの電圧は、それと並列に接続されている部分の電圧と等しいという原則を使って求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 「直後」と「十分後」の振る舞いの混同:
    • 誤解: スイッチON直後なのにコンデンサーを断線とみなしたり、十分後なのに導線とみなしたりする。
    • 対策: 「直後=空っぽ=ショート(導線)」「十分後=満タン=通行止め(断線)」というイメージを強く持ち、機械的に適用できるようにします。
  • コンデンサーの電圧の誤認:
    • 誤解: (2)の十分後で、コンデンサーの電圧を電源電圧\(E\)と勘違いしてしまう。
    • 対策: コンデンサーはあくまで\(R_2\)と並列であり、\(R_1\)と\(R_2\)で分圧された後の、\(R_2\)にかかる電圧と等しくなることを正確に理解します。回路図上で、コンデンサーの両端がどの部分に接続されているかを指でなぞって確認する癖をつけます。
  • 電流の経路の誤認:
    • 誤解: (1)の直後で、電流が\(R_1\)と\(R_2\)に分流すると考えてしまう。
    • 対策: コンデンサーが「導線」と化した回路図を実際に描いてみます。すると、\(R_2\)が導線でショートされていることが視覚的に明らかになり、電流が流れない理由が理解できます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • コンデンサーの等価モデル(導線 or 断線):
    • 選定理由: これはこの種の問題を解くための最も重要な「思考ツール」です。過渡現象を、2つの静的な状態(直後と十分後)における単純な抵抗回路の問題に置き換えることで、複雑な微分方程式を解くことなく解析を可能にします。
    • 適用根拠:
      • 直後=導線: コンデンサーの電圧 \(V=Q/C\) で、\(Q=0\) なので \(V=0\)。電圧0の二点間は電気的に同電位であり、これは抵抗0の導線の性質と同じだからです。
      • 十分後=断線: 定常状態では電荷の移動(電流)が停止します。直流回路において電流が0になるのは、回路が断線しているのと同じだからです。
  • \(Q=CV\) (コンデンサーの基本式):
    • 選定理由: 最終的にコンデンサーの電気量を求めるために必須の公式です。
    • 適用根拠: この公式はコンデンサーの定義そのものです。回路の他の部分を解析してコンデンサーにかかる電圧\(V\)を特定し、この式に代入することで、結果として蓄えられる電気量\(Q\)が求まります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 回路図の描き直し: 「直後」と「十分後」のそれぞれの状態で、コンデンサーを導線や断線に置き換えた単純な回路図を、面倒くさがらずに自分で描き直すことが、最も確実なミス防止策です。
  • 分圧の公式の確認: (2)で\(R_2\)にかかる電圧を求める際、\(V_2 = E \times \displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2}\) という分圧の公式を直接使っても良いですが、その際に分母と分子を間違えないように注意します。「全体の抵抗分の、自分の抵抗」と覚えます。
  • 文字式の整理: この問題のように答えが文字式の場合、最終的な式の形が物理的に意味のある単位になっているか(例えば、\(CR_2E/(R_1+R_2)\) は[F]・[Ω]・[V] / [Ω] = [F]・[V] = [C]となり、電気量の単位になっている)、極端な場合(\(R_1 \to 0\)など)に妥当な振る舞いをするか、といった簡単なチェックが有効です。
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