「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 22】Step3

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291 顕微鏡の原理

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、対物レンズと接眼レンズという2枚の凸レンズを組み合わせた顕微鏡の結像と倍率に関する典型的な問題です。レンズの公式を各レンズについて正しく適用し、それぞれのレンズが作る像の位置と大きさを順に求めていく能力が問われます。

与えられた条件
  • 対物レンズの焦点距離: \(f_1 = 2.0 \text{ cm}\)
  • 接眼レンズの焦点距離: \(f_2 = 3.0 \text{ cm}\)
  • 対物レンズが作る実像BB’の位置: 対物レンズの上方 \(18 \text{ cm}\)
  • 明視の距離: \(D = 27 \text{ cm}\) (接眼レンズが作る虚像CC’の位置)
  • 目の位置: 接眼レンズのすぐ上
問われていること
  • (1) 物体AA’を置く位置(対物レンズからの距離)。
  • (2) 実像BB’ができる位置(接眼レンズからの距離)。
  • (3) この顕微鏡の倍率。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「2枚のレンズによる結像(顕微鏡)」です。顕微鏡は、対物レンズで物体の倒立実像を作り、その実像を接眼レンズでさらに拡大した虚像として見る装置です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式: 物体距離\(a\)、像距離\(b\)、焦点距離\(f\)の関係式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使います。虚像の場合は像距離\(b\)を負の値として扱います。
  2. レンズの倍率: 倍率\(m\)は \(m = \left| \displaystyle\frac{b}{a} \right|\) で計算されます。
  3. 顕微鏡の仕組み: 対物レンズが作った実像が、接眼レンズにとっての「物体」となる、という2段階のプロセスを理解することが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、対物レンズに着目します。対物レンズが作る実像BB’の位置が分かっているので、レンズの公式を使って、元の物体AA’の位置を逆算します(問1)。
  2. 次に、接眼レンズに着目します。接眼レンズは実像BB’を物体として、最終的な虚像CC’を作ります。虚像CC’の位置(明視の距離)が分かっているので、レンズの公式を使い、接眼レンズにとっての物体であるBB’の位置を逆算します(問2)。
  3. 最後に、顕微鏡全体の倍率を計算します。全体の倍率は、対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率の積で求められます(問3)。

問(1)

思考の道筋とポイント
対物レンズによる結像を考えます。物体AA’が対物レンズによって実像BB’を作る状況です。このうち、実像BB’の位置が与えられているので、レンズの公式を使って物体AA’の位置を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 着目するレンズ: 対物レンズ(焦点距離 \(f_1 = 2.0 \text{ cm}\))
  • 物体と像: 物体はAA’、像は実像BB’です。
  • 物体距離と像距離の定義:
    • 物体距離 \(a_1\): 対物レンズと物体AA’の距離(求める値)。
    • 像距離 \(b_1\): 対物レンズと実像BB’の距離。問題文より \(b_1 = 18 \text{ cm}\)。実像なので正の値です。

具体的な解説と立式
対物レンズについて、レンズの公式を適用します。

  • 物体距離: \(a_1\) [cm]
  • 像距離: \(b_1 = 18\) [cm]
  • 焦点距離: \(f_1 = 2.0\) [cm]

レンズの公式は以下の通りです。
$$ \frac{1}{a_1} + \frac{1}{b_1} = \frac{1}{f_1} $$
この式に、分かっている値を代入します。
$$ \frac{1}{a_1} + \frac{1}{18} = \frac{1}{2.0} $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
計算過程

上記で立てた式を\(a_1\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{a_1} &= \frac{1}{2.0} – \frac{1}{18} \\[2.0ex]
&= \frac{9}{18} – \frac{1}{18} \\[2.0ex]
&= \frac{8}{18} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{9}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$ a_1 = \frac{9}{4} = 2.25 $$
有効数字を考慮すると、焦点距離が2.0cm(2桁)、距離が18cm(2桁)なので、答えも2桁で表すのが適切です。
$$ a_1 \approx 2.3 \text{ [cm]} $$

計算方法の平易な説明

顕微鏡の最初のレンズ(対物レンズ)に注目します。このレンズが、調べたい物体(AA’)の像(BB’)を、レンズから18cmの場所に作ることが分かっています。レンズの焦点距離も分かっているので、「レンズの公式」という方程式を使って、元の物体AA’がレンズからどれだけ離れた場所にあるべきかを逆算します。

結論と吟味

物体AA’を置く位置は、対物レンズの下方 \(2.3 \text{ cm}\) のところです。
物体距離 \(a_1 = 2.25 \text{ cm}\) は、焦点距離 \(f_1 = 2.0 \text{ cm}\) よりも長く、\(2f_1 = 4.0 \text{ cm}\) よりも短い範囲にあります。このとき、倒立の実像が \(b_1 > 2f_1\) の位置にできるので、\(b_1 = 18 \text{ cm}\) という条件と整合性がとれており、妥当な結果です。

解答 (1) \(2.3 \text{ cm}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
次に、接眼レンズによる結像を考えます。対物レンズが作った実像BB’が、接眼レンズにとっての「物体」となります。この物体BB’を接眼レンズで拡大し、虚像CC’として観察します。最終的な虚像CC’の位置が分かっているので、レンズの公式を使って物体BB’の位置を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 着目するレンズ: 接眼レンズ(焦点距離 \(f_2 = 3.0 \text{ cm}\))
  • 物体と像: 物体は実像BB’、像は虚像CC’です。
  • 物体距離と像距離の定義:
    • 物体距離 \(a_2\): 接眼レンズと物体BB’の距離(求める値)。
    • 像距離 \(b_2\): 接眼レンズと虚像CC’の距離。明視の距離なので \(27 \text{ cm}\)。虚像はレンズの前方(物体側)にできるので、像距離は負の値、つまり \(b_2 = -27 \text{ cm}\) として扱います。

具体的な解説と立式
接眼レンズについて、レンズの公式を適用します。

  • 物体距離: \(a_2\) [cm]
  • 像距離: \(b_2 = -27\) [cm] (虚像なので負)
  • 焦点距離: \(f_2 = 3.0\) [cm]

レンズの公式は以下の通りです。
$$ \frac{1}{a_2} + \frac{1}{b_2} = \frac{1}{f_2} $$
この式に、分かっている値を代入します。
$$ \frac{1}{a_2} + \frac{1}{-27} = \frac{1}{3.0} $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
計算過程

上記で立てた式を\(a_2\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{a_2} &= \frac{1}{3.0} – \frac{1}{-27} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3.0} + \frac{1}{27} \\[2.0ex]
&= \frac{9}{27} + \frac{1}{27} \\[2.0ex]
&= \frac{10}{27}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$ a_2 = \frac{27}{10} = 2.7 \text{ [cm]} $$

計算方法の平易な説明

次に、目をのぞく方のレンズ(接眼レンズ)に注目します。このレンズは、対物レンズが作った像(BB’)を、さらに拡大して見せてくれます。最終的に見える像(CC’)が、目から27cmの位置(明視の距離)に見えるように調整されていることが分かっています。この情報と接眼レンズの焦点距離を使って、「レンズの公式」で逆算し、BB’が接眼レンズからどれだけ離れた場所にあるべきかを計算します。

結論と吟味

実像BB’のできる位置は、接眼レンズの下方 \(2.7 \text{ cm}\) のところです。
物体距離 \(a_2 = 2.7 \text{ cm}\) は、接眼レンズの焦点距離 \(f_2 = 3.0 \text{ cm}\) よりも内側にあります。凸レンズでは、物体を焦点の内側に置くと正立の虚像ができます。これは、接眼レンズが拡大鏡として機能している状況と一致しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (2) \(2.7 \text{ cm}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
顕微鏡全体の倍率を求めます。全体の倍率\(M\)は、対物レンズによる倍率\(m_1\)と、接眼レンズによる倍率\(m_2\)の積で与えられます。
この設問における重要なポイント

  • 対物レンズの倍率\(m_1\): \(m_1 = \left| \displaystyle\frac{b_1}{a_1} \right|\)。(1)で求めた値を使います。
  • 接眼レンズの倍率\(m_2\): \(m_2 = \left| \displaystyle\frac{b_2}{a_2} \right|\)。(2)で求めた値を使います。
  • 全体の倍率\(M\): \(M = m_1 \times m_2\)。

具体的な解説と立式
全体の倍率\(M\)は、元の物体AA’の大きさと最終的な虚像CC’の大きさの比です。
$$ M = \frac{\text{CC’}}{\text{AA’}} $$
これは、各レンズの倍率の積として計算できます。
$$ M = \frac{\text{BB’}}{\text{AA’}} \times \frac{\text{CC’}}{\text{BB’}} = m_1 \times m_2 $$
ここで、\(m_1\)と\(m_2\)はそれぞれ対物レンズと接眼レンズの倍率です。
$$ m_1 = \left| \frac{b_1}{a_1} \right| \quad , \quad m_2 = \left| \frac{b_2}{a_2} \right| $$
したがって、全体の倍率\(M\)は次のように立式できます。
$$ M = \left| \frac{b_1}{a_1} \right| \times \left| \frac{b_2}{a_2} \right| $$

使用した物理公式

  • レンズの倍率: \(m = \left| \displaystyle\frac{b}{a} \right|\)
  • 合成倍率: \(M = m_1 m_2\)
計算過程

(1), (2)で求めた値と与えられた値を代入して計算します。

  • \(a_1 = 2.25\) cm
  • \(b_1 = 18\) cm
  • \(a_2 = 2.7\) cm
  • \(b_2 = -27\) cm

$$
\begin{aligned}
M &= \left| \frac{18}{2.25} \right| \times \left| \frac{-27}{2.7} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{18}{2.25} \times \frac{27}{2.7} \\[2.0ex]
&= \frac{18}{9/4} \times 10 \\[2.0ex]
&= \frac{18 \times 4}{9} \times 10 \\[2.0ex]
&= (2 \times 4) \times 10 \\[2.0ex]
&= 8 \times 10 \\[2.0ex]
&= 80 \text{ [倍]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

顕微鏡が全体で何倍に見えるかは、2段階の拡大率を掛け合わせることで計算できます。まず「対物レンズが物体を何倍に拡大したか」を計算し、次に「接眼レンズがその像をさらに何倍に拡大したか」を計算します。これら2つの倍率を掛け算したものが、顕微鏡全体の倍率になります。

結論と吟味

この顕微鏡の倍率は80倍です。
対物レンズの倍率は \(m_1 = 18 / 2.25 = 8\)倍、接眼レンズの倍率は \(m_2 = 27 / 2.7 = 10\)倍であり、これらの積として全体の倍率が求められています。計算結果は妥当です。

解答 (3) 80倍

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • レンズの公式(写像公式):
    • 核心: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) というこの式は、レンズによる結像を扱うすべての問題の基本です。物体距離\(a\)、像距離\(b\)、焦点距離\(f\)の3つのうち2つが分かれば、残りの1つを求めることができます。
    • 理解のポイント: この問題では、(1)では像距離\(b_1\)から物体距離\(a_1\)を、(2)では像距離\(b_2\)から物体距離\(a_2\)を求めるために、この公式を2回使います。特に、虚像の場合に像距離\(b\)を負の値として代入するルールを正確に理解しているかが重要です。
  • レンズの倍率と合成倍率:
    • 核心: 顕微鏡や望遠鏡のように複数のレンズを組み合わせた光学機器の全体の倍率は、各レンズの倍率の積で与えられます。(\(M = m_1 \times m_2\))
    • 理解のポイント: (3)では、対物レンズの倍率 \(m_1 = |b_1/a_1|\) と接眼レンズの倍率 \(m_2 = |b_2/a_2|\) をそれぞれ計算し、それらを掛け合わせることで全体の倍率を求めます。顕微鏡が「対物レンズが作った実像を、接眼レンズがさらに拡大する」という2段階の拡大装置であることを理解していれば、この計算方法の理屈も自然に分かります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ケプラー式望遠鏡: 顕微鏡と同様に、対物レンズと接眼レンズを組み合わせた装置です。遠方の物体を見るため、対物レンズに入射する光は平行光線とみなすことが多い点が異なりますが、対物レンズが作った実像を接眼レンズで拡大して虚像として見る、という基本原理は同じです。
    • レンズを2枚組み合わせた結像問題: 顕微鏡や望遠鏡という具体的な装置名がなくても、「レンズL1からx cmの位置に物体を置いた。L1からy cmの位置にレンズL2を置いた。最終的な像の位置と倍率を求めよ」といった形式の問題。1枚目のレンズが作る像が2枚目のレンズの物体になる、という流れを順に追って計算する点は全く同じです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. レンズごとに情報を整理する: 複数のレンズがある場合、混乱しないように「対物レンズについて」「接眼レンズについて」と分けて、それぞれの焦点距離、物体距離、像距離を整理します。
    2. 光の経路を追う: まず物体から出た光が1枚目のレンズでどうなるか(像の位置、種類(実像/虚像)、向き)を考えます。次に、その像を2枚目のレンズの「物体」と見なして、2枚目のレンズによる結像を考えます。このステップ・バイ・ステップのアプローチが基本です。
    3. 虚像の扱いに注意する: レンズの公式で、虚像の像距離\(b\)は負の値として扱います。問題文で「虚像ができた」と明記されている場合や、凸レンズの焦点の内側に物体を置く場合は、このルールを適用し忘れないように注意が必要です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 虚像の像距離の符号ミス:
    • 誤解: (2)で、接眼レンズが作る虚像の像距離を \(b_2 = 27\) cmと正の値で代入してしまう。
    • 対策: レンズの公式における符号のルールを徹底しましょう。「レンズの向こう側にできる実像は\(b>0\)、レンズの手前側にできる虚像は\(b<0\)」と覚えるのが基本です。明視の距離で見る虚像は、必ずレンズの手前側にあるので、像距離は負になります。
  • 物体距離と像距離の混同:
    • 誤解: 対物レンズの像距離\(b_1\)と接眼レンズの物体距離\(a_2\)の関係が分からなくなる。
    • 対策: 必ず図を描いてレンズと像の位置関係を視覚化しましょう。対物レンズと接眼レンズの間の距離を\(L\)とすると、\(L = b_1 + a_2\) の関係が成り立ちます。この問題では\(L\)は直接問われていませんが、この関係を意識することで、\(b_1\)と\(a_2\)が独立した値ではなく、互いに関連していることが理解できます。
  • 倍率計算での値の取り違え:
    • 誤解: (3)で、対物レンズの倍率を計算する際に、接眼レンズの物体・像距離を使ってしまうなど、どのレンズにどの値を使うべきか混乱する。
    • 対策: (1), (2)でレンズごとに情報を整理したメモを見ながら、慎重に値を代入しましょう。\(m_1 = |b_1/a_1|\), \(m_2 = |b_2/a_2|\) と、添字を付けて明確に区別して計算するのが安全です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 光路図の作図: レンズの問題では、光路図を描くことが現象理解の鍵です。
      1. 対物レンズに対して、物体AA’から出る「①光軸に平行な光(レンズ通過後、焦点を通る)」「②レンズの中心を通る光(直進する)」の2本の光線を描き、交点に実像BB’ができる様子を作図します。
      2. 次に、このBB’を新たな物体とみなし、接眼レンズに対して同様に光路図を描きます。BB’から出る光線が接眼レンズを通過後、広がっていく(発散する)様子と、その光線を逆向きに延長した交点に虚像CC’ができる様子を描くことで、顕微鏡の原理が視覚的に理解できます。
    • 2段階の拡大プロセス: 「小さな物体AA’が、対物レンズによって少し大きな倒立実像BB’になる(第1段階の拡大)。その実像BB’を、接眼レンズ(虫眼鏡)がさらに大きく拡大して、巨大な倒立虚像CC’として見る(第2段階の拡大)。」というストーリーをイメージすることが重要です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • レンズの公式 (\(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)):
    • 選定理由: (1)と(2)で、レンズによる結像の位置関係を定量的に求めるため。これは薄レンズにおける結像を扱うための基本法則です。
    • 適用根拠: 光の屈折の法則を、球面という形状のレンズに適用し、光線が光軸の近くを通る(近軸光線)という近似を用いることで導出される関係式です。高校物理のレンズの問題では、この公式がすべての計算の出発点となります。
  • 倍率の公式 (\(m = |b/a|\)):
    • 選定理由: (3)で、像が物体に対してどれだけ拡大されたかを計算するため。
    • 適用根拠: 光路図における物体と像の三角形の相似関係から導かれます。物体とレンズ、像とレンズがつくる2つの直角三角形が相似であることから、高さの比(倍率)が底辺の比(像距離/物体距離)に等しくなります。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 対物レンズの物体距離の計算:
    • 戦略: 対物レンズに着目し、レンズの公式を適用する。
    • フロー: ①対物レンズの\(f_1, b_1\)の値を確認 → ②レンズの公式 \(\frac{1}{a_1} + \frac{1}{b_1} = \frac{1}{f_1}\) を立式 → ③数値を代入し、\(a_1\)について解く。
  2. (2) 接眼レンズの物体距離の計算:
    • 戦略: 接眼レンズに着目し、レンズの公式を適用する。
    • フロー: ①接眼レンズの\(f_2, b_2\)の値を確認(\(b_2\)は虚像なので負の値!) → ②レンズの公式 \(\frac{1}{a_2} + \frac{1}{b_2} = \frac{1}{f_2}\) を立式 → ③数値を代入し、\(a_2\)について解く。
  3. (3) 全体の倍率の計算:
    • 戦略: 対物レンズと接眼レンズ、それぞれの倍率を計算し、掛け合わせる。
    • フロー: ①対物レンズの倍率 \(m_1 = |b_1/a_1|\) を計算 → ②接眼レンズの倍率 \(m_2 = |b_2/a_2|\) を計算 → ③全体の倍率 \(M = m_1 \times m_2\) を計算。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 分数の計算を丁寧に行う: レンズの公式は逆数の和であるため、分数の計算が頻出します。通分や、最後の逆数を取る計算(例: \(\frac{1}{a} = \frac{4}{9}\) から \(a = \frac{9}{4}\))でミスをしないように、途中式を省略せず丁寧に書きましょう。
  • 小数と分数の変換: \(2.25 = 9/4\) のように、計算の途中で小数を分数に直すと、計算が楽になったり、約分が見つけやすくなったりすることがあります。臨機応変に使い分けるのが良いでしょう。
  • 有効数字の確認: 問題文で与えられた数値の有効数字(この問題では2桁)を確認し、最終的な答えの桁数を合わせるように意識しましょう。ただし、計算途中では多めの桁数(この場合は2.25)を保持し、最後に四捨五入するのが基本です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 結像条件との照らし合わせ:
    • (1) 対物レンズ: 物体距離 \(a_1 \approx 2.3 \text{ cm}\) は、焦点距離 \(f_1 = 2.0 \text{ cm}\) の外側です。凸レンズで焦点の外側に物体を置くと、倒立実像ができます。これは顕微鏡の対物レンズの役割と一致しており、妥当です。
    • (2) 接眼レンズ: 物体(実像BB’)距離 \(a_2 = 2.7 \text{ cm}\) は、焦点距離 \(f_2 = 3.0 \text{ cm}\) の内側です。凸レンズで焦点の内側に物体を置くと、正立虚像ができます。これは接眼レンズ(拡大鏡)の役割と一致しており、妥当です。
  • 倍率のオーダー感: 80倍という倍率は、顕微鏡の倍率として現実的な範囲の値です。もし計算結果が0.5倍や10000倍のような極端な値になった場合は、どこかで計算ミスをしている可能性が高いと判断できます。
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292 レンズの組み合わせ

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