「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 22】Step1 & 例題

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Step1

① 凸レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凸レンズによる像の形成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式(写像公式)
  2. 倍率の公式
  3. 実像と虚像の判別方法(像距離の符号)
  4. 物体が焦点距離の外側か内側かで像の性質が変わること

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 物体を前方\(30\)\(\text{cm}\)に置いた場合について、レンズの公式を用いて像の位置を求める。
  2. 像距離の符号から実像か虚像かを判断し、倍率を計算して像の大きさを求める。
  3. 物体を前方\(8.0\)\(\text{cm}\)に置いた場合についても同様の手順で計算する。

(i) 物体を前方30cmに置いた場合

思考の道筋とポイント
この問題は、物体を凸レンズの焦点の外側に置いた場合(\(a > f\))の像の性質を問うています。レンズの公式を用いて、像の位置、種類(実像か虚像か)、大きさを順に求めていきます。物体が焦点の外側にあるので、倒立した実像ができると予測できます。

この設問における重要なポイント

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を用います。
  • 符号のルールを正しく適用することが重要です。
    • 物体距離 \(a\): 物体はレンズの前方(光が入射してくる側)にあるため、正の値をとります。\(a = 30 \, \text{cm}\)。
    • 焦点距離 \(f\): 凸レンズなので、正の値をとります。\(f = 12 \, \text{cm}\)。
    • 像距離 \(b\): 計算結果が正 (\(b>0\)) であれば、レンズの後方(光が進む側)にできる「実像」を意味します。負 (\(b<0\)) であれば、レンズの前方(物体と同じ側)にできる「虚像」を意味します。
  • 倍率 \(m\) は \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) で計算され、像の大きさは「物体の大きさ \(\times\) 倍率」で求められます。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • 物体の位置(物体距離): \(a = 30 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = 12 \, \text{cm}\) (凸レンズなので正)
  • 物体の大きさ: \(h = 6.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h’\) です。
レンズの公式に、わかっている値を代入して、像距離 \(b\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{12} \quad \cdots ① $$
次に、像の大きさ \(h’\) は、倍率 \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h’ = h \times m = 6.0 \times \left| \frac{b}{30} \right| \quad \cdots ② $$
まずは式①を解いて \(b\) を求め、その結果を使って像の種類を判断し、式②で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式①を像距離 \(b\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= \frac{1}{12} – \frac{1}{30} \\[2.0ex]&= \frac{5}{60} – \frac{2}{60} \\[2.0ex]&= \frac{3}{60} \\[2.0ex]&= \frac{1}{20}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b = 20 \, \text{cm}\) となります。

\(b\) の値が正 (\(b=20 > 0\)) なので、できる像は実像です。
その位置は、レンズの後方 \(20 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b\) の値を式②に代入して、像の大きさ \(h’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h’ &= 6.0 \times \left| \frac{20}{30} \right| \\[2.0ex]&= 6.0 \times \frac{2}{3} \\[2.0ex]&= 4.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(4.0 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

レンズの問題は、「レンズの公式」という便利な道具を使って解くことができます。この公式は、物体の場所 \(a\)、像の場所 \(b\)、レンズの焦点距離 \(f\) の3つの関係を表したものです。

  1. まず、問題文から \(a=30\)、\(f=12\) であることがわかります。これを公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に入れます。
  2. すると、\(\frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{12}\) という式ができます。これを \(b\) について解くと、\(b=20\) と計算できます。
  3. 計算結果の \(b\) がプラスの値なので、これは「スクリーンに映すことができる本物の像(実像)」が、「レンズの後ろ側 20cm」の場所にできる、ということを意味します。
  4. 次に像の大きさを知るために倍率を計算します。倍率は \(|\frac{b}{a}| = |\frac{20}{30}| = \frac{2}{3}\) 倍です。
  5. 元の物体の大きさが 6.0cm なので、像の大きさは \(6.0 \times \frac{2}{3} = 4.0\) cm となります。
解答 (i) 後方20cm, 実像, 4.0cm

(ii) 物体を前方8.0cmに置いた場合

思考の道筋とポイント
この問題は、物体を凸レンズの焦点の内側に置いた場合(\(a < f\))の像の性質を問うています。これは虫眼鏡で物体を拡大して見るときの状況と同じです。先ほどと同様にレンズの公式を使いますが、物体が焦点の内側にあるため、正立した虚像ができると予測できます。

この設問における重要なポイント

  • 基本的な考え方は先ほどと同じで、レンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使います。
  • 符号のルールも同じですが、今回は物体距離が変わります。
    • 物体距離 \(a\): \(a = 8.0 \, \text{cm}\)。これは焦点距離 \(f=12 \, \text{cm}\) より小さい値です。
    • 焦点距離 \(f\): 凸レンズなので \(f = 12 \, \text{cm}\) (正)。
    • 像距離 \(b\): 計算結果が負 (\(b<0\)) になるはずです。これは、レンズを覗き込んだときに見える「見かけの像(虚像)」が、レンズの前方(物体と同じ側)にできることを意味します。
  • 倍率 \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) の計算方法は同じです。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • 物体の位置(物体距離): \(a’ = 8.0 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = 12 \, \text{cm}\)
  • 物体の大きさ: \(h = 6.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b’\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h”\) です。
レンズの公式に、これらの値を代入して、像距離 \(b’\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{8.0} + \frac{1}{b’} = \frac{1}{12} \quad \cdots ③ $$
次に、像の大きさ \(h”\) は、倍率 \(m’ = \left|\displaystyle\frac{b’}{a’}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h” = h \times m’ = 6.0 \times \left| \frac{b’}{8.0} \right| \quad \cdots ④ $$
式③を解いて \(b’\) を求め、その結果を使って像の種類を判断し、式④で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式③を像距離 \(b’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b’} &= \frac{1}{12} – \frac{1}{8.0} \\[2.0ex]&= \frac{2}{24} – \frac{3}{24} \\[2.0ex]&= -\frac{1}{24}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b’ = -24 \, \text{cm}\) となります。

\(b’\) の値が負 (\(b’=-24 < 0\)) なので、できる像は虚像です。
その位置は、レンズの前方 \(24 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b’\) の値を式④に代入して、像の大きさ \(h”\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h” &= 6.0 \times \left| \frac{-24}{8.0} \right| \\[2.0ex]&= 6.0 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 18 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(18 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

今度は、物体をレンズのすごく近く、焦点距離よりも内側 (\(a=8.0\)) に置きます。虫眼鏡を使うときと同じですね。

  1. 先ほどと同じレンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に、\(a=8.0\)、\(f=12\) を入れます。
  2. \(\frac{1}{8.0} + \frac{1}{b’} = \frac{1}{12}\) という式を \(b’\) について解くと、\(b’=-24\) と計算できます。
  3. 計算結果の \(b’\) がマイナスの値になりました。これは「スクリーンには映らない見かけの像(虚像)」が、「レンズの手前側 24cm」の場所にできる、ということを意味します。レンズを覗くと、そこから光が出ているように見えるわけです。
  4. 倍率を計算すると、\(|\frac{b’}{a’}| = |\frac{-24}{8.0}| = 3.0\) 倍です。
  5. 元の物体の大きさが 6.0cm なので、像の大きさは \(6.0 \times 3.0 = 18\) cm となり、とても大きく見えることがわかります。
解答 (ii) 前方24cm, 虚像, 18cm

② 凹レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凹レンズによる像の形成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式(写像公式)
  2. 凹レンズの焦点距離の符号の扱い
  3. 倍率の公式
  4. 凹レンズによってできる像の性質(常に虚像)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. レンズの公式に、物体距離と焦点距離を代入して像距離を求める。
  2. このとき、凹レンズの焦点距離を負の値として扱うことが重要。
  3. 計算された像距離の符号から、像の種類(虚像)と位置を判断する。
  4. 倍率の公式を用いて、像の大きさを計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、凹レンズによってできる像の性質を問うています。凹レンズは光を発散させる働きがあるため、物体の位置にかかわらず、常にレンズの前方(物体と同じ側)に、物体より小さい正立の虚像を作ります。このことを念頭に置きながら、レンズの公式を用いて定量的に計算を進めます。最大のポイントは、凹レンズの焦点距離 \(f\) を負の値として扱うことです。

この設問における重要なポイント

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) は凸レンズと同じものを使います。
  • 符号のルールを正しく適用することが不可欠です。
    • 物体距離 \(a\): 物体はレンズの前方にあるため、正の値をとります。\(a = 30 \, \text{cm}\)。
    • 焦点距離 \(f\): 凹レンズなので、負の値をとります。\(f = -60 \, \text{cm}\)。
    • 像距離 \(b\): 計算結果は必ず負 (\(b<0\)) になります。これは、レンズの前方(物体と同じ側)にできる「虚像」を意味します。
  • 倍率 \(m\) は \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) で計算され、像の大きさは「物体の大きさ \(\times\) 倍率」で求められます。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理し、符号に注意して物理量に置き換えます。

  • 物体の位置(物体距離): \(a = 30 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = -60 \, \text{cm}\) (凹レンズなので負)
  • 物体の大きさ: \(h = 6.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h’\) です。
レンズの公式に、これらの値を代入して、像距離 \(b\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-60} \quad \cdots ① $$
次に、像の大きさ \(h’\) は、倍率 \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h’ = h \times m = 6.0 \times \left| \frac{b}{30} \right| \quad \cdots ② $$
式①を解いて \(b\) を求め、その結果を使って像の種類と位置を判断し、式②で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式①を像距離 \(b\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= -\frac{1}{60} – \frac{1}{30} \\[2.0ex]&= -\frac{1}{60} – \frac{2}{60} \\[2.0ex]&= -\frac{3}{60} \\[2.0ex]&= -\frac{1}{20}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b = -20 \, \text{cm}\) となります。

\(b\) の値が負 (\(b=-20 < 0\)) なので、できる像は虚像です。
その位置は、レンズの前方 \(20 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b\) の値を式②に代入して、像の大きさ \(h’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h’ &= 6.0 \times \left| \frac{-20}{30} \right| \\[2.0ex]&= 6.0 \times \frac{2}{3} \\[2.0ex]&= 4.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(4.0 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

凹レンズの問題も、凸レンズと全く同じ「レンズの公式」を使って解くことができます。ただし、一つだけ大事なルールがあります。それは「凹レンズの焦点距離は、マイナスの値として計算する」ということです。

  1. 問題文から、物体の位置 \(a=30\)、焦点距離は凹レンズなので \(f=-60\) とします。
  2. これを公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に入れると、\(\frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-60}\) という式ができます。
  3. この式を \(b\) について解くと、\(b=-20\) と計算できます。
  4. \(b\) がマイナスの値になったので、これは「見かけの像(虚像)」が「レンズの手前側(物体と同じ側) 20cm」の場所にできることを意味します。
  5. 倍率を計算すると、\(|\frac{b}{a}| = |\frac{-20}{30}| = \frac{2}{3}\) 倍となります。
  6. 元の物体の大きさが 6.0cm なので、像の大きさは \(6.0 \times \frac{2}{3} = 4.0\) cm となり、元の物体より小さく見えることがわかります。
解答 前方20cm, 虚像, 4.0cm

③ 凸面鏡

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凸面鏡による像の形成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 球面鏡の公式(写像公式)
  2. 凸面鏡の焦点距離の符号の扱い
  3. 実像と虚像、および「前方」と「後方」の定義(鏡の場合)
  4. 倍率の公式

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 球面鏡の公式に値を代入する。このとき、凸面鏡の焦点距離は負の値として扱う。
  2. 像距離 \(b\) を計算する。
  3. \(b\) の符号から像の種類(虚像)と位置(後方)を判断する。
  4. 倍率を計算し、像の大きさを求める。

思考の道筋とポイント
この問題は、凸面鏡によってできる像の性質を問うています。凸面鏡は自動車のサイドミラーやカーブミラーに使われているように、光を拡散させて広い範囲を映し出す性質があります。そのため、物体の位置にかかわらず、常に鏡の裏側(後方)に、物体より小さい正立の虚像を作ります。この定性的なイメージを持つことが、計算結果の妥当性を判断する上で役立ちます。
計算上の最大のポイントは、凹レンズと同様に、凸面鏡の焦点距離 \(f\) を負の値として扱うことです。また、レンズの場合と鏡の場合とで、「前方」「後方」という言葉が指す位置関係が異なる点にも注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 球面鏡の公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を用います。これはレンズの公式と全く同じ形です。
  • 符号のルールを正しく適用することが不可欠です。
    • 物体距離 \(a\): 鏡の前方(反射面のある側)にあるので正。\(a = 60 \, \text{cm}\)。
    • 焦点距離 \(f\): 凸面鏡なので負。\(f = -20 \, \text{cm}\)。
    • 像距離 \(b\) と位置の関係(レンズとの違い):
      • \(b > 0\): 実像。光が実際に反射して集まる場所なので、鏡の前方にできます。
      • \(b < 0\): 虚像。光がそこから来るように見える場所なので、鏡の後方(反射面の裏側)にできます。
  • この問題では \(b\) が負になるはずなので、虚像が鏡の後方にできると予測できます。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理し、符号に注意して物理量に置き換えます。

  • 物体の位置(物体距離): \(a = 60 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = -20 \, \text{cm}\) (凸面鏡なので負)
  • 物体の大きさ: \(h = 4.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h’\) です。
球面鏡の公式に、これらの値を代入して、像距離 \(b\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{60} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-20} \quad \cdots ① $$
次に、像の大きさ \(h’\) は、倍率 \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h’ = h \times m = 4.0 \times \left| \frac{b}{60} \right| \quad \cdots ② $$
式①を解いて \(b\) を求め、その結果を使って像の種類と位置を判断し、式②で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • 球面鏡の公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式①を像距離 \(b\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= -\frac{1}{20} – \frac{1}{60} \\[2.0ex]&= -\frac{3}{60} – \frac{1}{60} \\[2.0ex]&= -\frac{4}{60} \\[2.0ex]&= -\frac{1}{15}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b = -15 \, \text{cm}\) となります。

\(b\) の値が負 (\(b=-15 < 0\)) なので、できる像は虚像です。
鏡の場合、\(b<0\) は鏡の後方を意味するので、その位置は、鏡の後方 \(15 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b\) の値を式②に代入して、像の大きさ \(h’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h’ &= 4.0 \times \left| \frac{-15}{60} \right| \\[2.0ex]&= 4.0 \times \frac{15}{60} \\[2.0ex]&= 4.0 \times \frac{1}{4} \\[2.0ex]&= 1.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(1.0 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

凸面鏡の問題も、レンズと同じ公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) で解けますが、ルールが少し違うので注意しましょう。

  1. 凸面鏡の焦点距離はマイナスの値として扱います。問題文から \(f=-20\)、物体の位置は \(a=60\) です。
  2. 公式に代入すると \(\frac{1}{60} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-20}\) となります。
  3. これを \(b\) について解くと、\(b=-15\) と計算できます。
  4. ここが鏡の重要なポイントです。計算結果の \(b\) がマイナスの場合、像は「鏡の裏側(後方)」にできる「虚像」を意味します。したがって、像の位置は「後方15cm」、種類は「虚像」となります。
  5. 倍率は \(|\frac{b}{a}| = |\frac{-15}{60}| = \frac{1}{4}\) 倍です。
  6. 元の物体の大きさが 4.0cm なので、像の大きさは \(4.0 \times \frac{1}{4} = 1.0\) cm となります。
解答 後方15cm, 虚像, 1.0cm

④ 凹面鏡

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凹面鏡による像の形成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 球面鏡の公式(写像公式)
  2. 凹面鏡の焦点距離の符号の扱い(正)
  3. 像距離の符号と像の性質(実像/虚像、前方/後方)
  4. 物体が焦点の外側か内側かで像の性質が大きく変わること

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 物体を前方36cmに置いた場合について、球面鏡の公式を用いて像の位置を求める。
  2. 像距離の符号から実像か虚像か、また鏡の前方か後方かを判断し、倍率を計算して像の大きさを求める。
  3. 物体を前方9.0cmに置いた場合についても同様の手順で計算する。

(i) 物体を前方36cmに置いた場合

思考の道筋とポイント
この問題は、物体を凹面鏡の焦点の外側(\(a > f\))に置いた場合の像の性質を問うています。凹面鏡は光を集める性質があるため、焦点の外側に物体を置くと、鏡の前方に倒立した実像ができます。特にこの設問では、物体距離 \(a=36\,\text{cm}\) が焦点距離 \(f=18\,\text{cm}\) のちょうど2倍、つまり曲率中心の位置にあります。この特別な位置に物体を置くと、同じ位置に同じ大きさの実像ができることが知られており、計算結果がそうなると予測できます。

この設問における重要なポイント

  • 球面鏡の公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を用います。
  • 符号のルールを正しく適用することが重要です。
    • 物体距離 \(a\): 鏡の前方にあるので正。\(a = 36 \, \text{cm}\)。
    • 焦点距離 \(f\): 凹面鏡なので正。\(f = 18 \, \text{cm}\)。
    • 像距離 \(b\): 計算結果が正 (\(b>0\)) であれば、鏡の「前方」にできる「実像」を意味します。負 (\(b<0\)) であれば、鏡の「後方」にできる「虚像」を意味します。
  • 倍率 \(m\) は \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) で計算されます。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • 物体の位置(物体距離): \(a = 36 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = 18 \, \text{cm}\) (凹面鏡なので正)
  • 物体の大きさ: \(h = 3.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h’\) です。
球面鏡の公式に、わかっている値を代入して、像距離 \(b\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{36} + \frac{1}{b} = \frac{1}{18} \quad \cdots ① $$
次に、像の大きさ \(h’\) は、倍率 \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h’ = h \times m = 3.0 \times \left| \frac{b}{36} \right| \quad \cdots ② $$
まずは式①を解いて \(b\) を求め、その結果を使って像の種類と位置を判断し、式②で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • 球面鏡の公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式①を像距離 \(b\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= \frac{1}{18} – \frac{1}{36} \\[2.0ex]&= \frac{2}{36} – \frac{1}{36} \\[2.0ex]&= \frac{1}{36}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b = 36 \, \text{cm}\) となります。

\(b\) の値が正 (\(b=36 > 0\)) なので、できる像は実像です。
その位置は、鏡の前方 \(36 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b\) の値を式②に代入して、像の大きさ \(h’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h’ &= 3.0 \times \left| \frac{36}{36} \right| \\[2.0ex]&= 3.0 \times 1.0 \\[2.0ex]&= 3.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(3.0 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

凹面鏡は光を集める鏡で、レンズと同じ形の公式が使えます。

  1. まず、問題文から \(a=36\)、凹面鏡なので焦点距離はプラスで \(f=18\) であることがわかります。これを公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に入れます。
  2. すると、\(\frac{1}{36} + \frac{1}{b} = \frac{1}{18}\) という式ができます。これを \(b\) について解くと、\(b=36\) と計算できます。
  3. 計算結果の \(b\) がプラスの値なので、これは「光が実際に集まってできる本物の像(実像)」が、「鏡の前側 36cm」の場所にできる、ということを意味します。
  4. 倍率を計算すると \(|\frac{b}{a}| = |\frac{36}{36}| = 1.0\) 倍です。
  5. 元の物体の大きさが 3.0cm なので、像の大きさは \(3.0 \times 1.0 = 3.0\) cm となり、物体と同じ大きさであることがわかります。
解答 (i) 前方36cm, 実像, 3.0cm

(ii) 物体を前方9.0cmに置いた場合

思考の道筋とポイント
この問題は、物体を凹面鏡の焦点の内側(\(a < f\))に置いた場合の像の性質を問うています。この状況は、凹面鏡を拡大鏡として使う場合に相当します。焦点の内側に物体を置くと、鏡を覗き込んだときに、鏡の後方に拡大された正立の虚像が見えます。この定性的な理解を持って計算に臨むと、見通しが良くなります。

この設問における重要なポイント

  • 基本的な考え方は先ほどと同じで、球面鏡の公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使います。
  • 符号のルールも同じですが、今回は物体距離が変わります。
    • 物体距離 \(a’\): \(a’ = 9.0 \, \text{cm}\)。これは焦点距離 \(f=18 \, \text{cm}\) より小さい値です。
    • 焦点距離 \(f\): 凹面鏡なので \(f = 18 \, \text{cm}\) (正)。
    • 像距離 \(b’\): 計算結果が負 (\(b'<0\)) になるはずです。これは、鏡の「後方」にできる「虚像」を意味します。
  • 倍率 \(m’ = \left|\displaystyle\frac{b’}{a’}\right|\) の計算方法は同じです。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • 物体の位置(物体距離): \(a’ = 9.0 \, \text{cm}\)
  • 焦点距離: \(f = 18 \, \text{cm}\)
  • 物体の大きさ: \(h = 3.0 \, \text{cm}\)

求めたいのは、像の位置(像距離 \(b’\))、像の種類(実像か虚像か)、像の大きさ \(h”\) です。
球面鏡の公式に、これらの値を代入して、像距離 \(b’\) を求める式を立てます。
$$ \frac{1}{9.0} + \frac{1}{b’} = \frac{1}{18} \quad \cdots ③ $$
次に、像の大きさ \(h”\) は、倍率 \(m’ = \left|\displaystyle\frac{b’}{a’}\right|\) を用いて、次のように表せます。
$$ h” = h \times m’ = 3.0 \times \left| \frac{b’}{9.0} \right| \quad \cdots ④ $$
式③を解いて \(b’\) を求め、その結果を使って像の種類と位置を判断し、式④で像の大きさを計算します。

使用した物理公式

  • 球面鏡の公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \left|\displaystyle\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

まず、式③を像距離 \(b’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b’} &= \frac{1}{18} – \frac{1}{9.0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{18} – \frac{2}{18} \\[2.0ex]&= -\frac{1}{18}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b’ = -18 \, \text{cm}\) となります。

\(b’\) の値が負 (\(b’=-18 < 0\)) なので、できる像は虚像です。
その位置は、鏡の後方 \(18 \, \text{cm}\) の点です。

次に、この \(b’\) の値を式④に代入して、像の大きさ \(h”\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
h” &= 3.0 \times \left| \frac{-18}{9.0} \right| \\[2.0ex]&= 3.0 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 6.0 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、像の大きさは \(6.0 \, \text{cm}\) です。

計算方法の平易な説明

今度は、物体を鏡のすごく近く、焦点距離よりも内側 (\(a’=9.0\)) に置きます。

  1. 先ほどと同じ球面鏡の公式に、\(a’=9.0\)、\(f=18\) を入れます。
  2. \(\frac{1}{9.0} + \frac{1}{b’} = \frac{1}{18}\) という式を \(b’\) について解くと、\(b’=-18\) と計算できます。
  3. 計算結果の \(b’\) がマイナスの値になりました。これは「見かけの像(虚像)」が、「鏡の裏側(後方) 18cm」の場所にできる、ということを意味します。
  4. 倍率を計算すると、\(|\frac{b’}{a’}| = |\frac{-18}{9.0}| = 2.0\) 倍です。
  5. 元の物体の大きさが 3.0cm なので、像の大きさは \(3.0 \times 2.0 = 6.0\) cm となり、大きく見えることがわかります。
解答 (ii) 後方18cm, 虚像, 6.0cm

例題

例題61 レンズによる像

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凸レンズによる結像」です。問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式(写像公式): 物体距離、像距離、焦点距離の関係を表す最も基本的な式です。
  2. レンズの倍率: 像が物体の何倍の大きさになるかを表す式で、物体距離と像距離の比で決まります。
  3. 実像と虚像: スクリーンに映る像が実像、レンズを覗き込んで見える像が虚像です。本問ではすべてスクリーン上にできる実像を扱います。
  4. 光路の可逆性: 光が来た道を逆にたどることができるという性質で、特に問(3)を解く上で強力な考え方となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (2)では、問題文で与えられた「倍率」と「物体とスクリーンの距離」の2つの条件から、連立方程式を立てて物体距離と像距離を求め、レンズの公式を用いて焦点距離を計算します。
  2. (3)では、(2)で求めたレンズの焦点距離を使い、物体とスクリーンの距離が一定であるという条件のもとで、レンズの公式から物体距離に関する二次方程式を導き、それを解くことで別の可能な位置を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
「同じ大きさの実像」という条件から、倍率が\(1\)であることを読み取ることが第一歩です。次に、倍率の公式と、問題で与えられている「物体AとスクリーンBの距離が\(24 \text{ cm}\)」という条件を連立させて、物体距離\(a\)と像距離\(b\)を求めます。最後に、求めた\(a\)と\(b\)をレンズの公式に代入して、焦点距離\(f\)を計算します。\(f\)の符号からレンズが凸レンズか凹レンズかを判断します。
この設問における重要なポイント

  • レンズの倍率 \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) (\(a\): 物体距離, \(b\): 像距離)
  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) (\(f\): 焦点距離)
  • 実像の場合、像距離\(b\)は正の値 (\(b > 0\))。凸レンズの場合、焦点距離\(f\)は正の値 (\(f > 0\))。
  • 等倍(同じ大きさ)の実像ができるのは、物体を焦点距離の2倍の位置に置いたときであり、このとき像も焦点距離の2倍の位置にできます (\(a=2f, b=2f\))。

具体的な解説と立式
物体AからレンズL₁までの距離を\(a_1\)、レンズL₁からスクリーンB(像の位置)までの距離を\(b_1\)とします。
問題の条件より、物体とスクリーンの距離は\(24 \text{ cm}\)なので、以下の関係が成り立ちます。
$$ a_1 + b_1 = 24 \quad \cdots ① $$
また、スクリーン上に「同じ大きさの実像」ができたので、倍率\(m_1\)は\(1\)です。
$$ m_1 = \frac{b_1}{a_1} = 1 \quad \cdots ② $$
式②より\(a_1 = b_1\)という関係がわかります。これを式①に代入することで、\(a_1\)と\(b_1\)の値を具体的に求めることができます。
最後に、求めた\(a_1\)と\(b_1\)の値をレンズの公式に代入し、焦点距離\(f_1\)を計算します。
$$ \frac{1}{a_1} + \frac{1}{b_1} = \frac{1}{f_1} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)
計算過程

式②より\(a_1 = b_1\)なので、これを式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
a_1 + a_1 &= 24 \\[2.0ex]2a_1 &= 24 \\[2.0ex]a_1 &= 12 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
したがって、\(b_1 = a_1 = 12 \text{ [cm]}\)となります。
これらの値を式③に代入して、焦点距離\(f_1\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{12} + \frac{1}{12} &= \frac{1}{f_1} \\[2.0ex]\frac{2}{12} &= \frac{1}{f_1} \\[2.0ex]\frac{1}{6.0} &= \frac{1}{f_1} \\[2.0ex]f_1 &= 6.0 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

物体と像が「同じ大きさ」なので、レンズから物体までの距離と、レンズから像(スクリーン)までの距離は同じになります。物体とスクリーンの間の距離が全部で\(24 \text{ cm}\)なので、レンズはそのちょうど真ん中、つまり物体から\(12 \text{ cm}\)、スクリーンからも\(12 \text{ cm}\)の場所に置かれていることがわかります。この「物体までの距離\(12 \text{ cm}\)」「像までの距離\(12 \text{ cm}\)」という情報を使ってレンズの公式で計算すると、焦点距離は\(6.0 \text{ cm}\)と求まります。

結論と吟味

焦点距離は\(f_1 = 6.0 \text{ cm}\)と計算できました。焦点距離が正の値なので、このレンズは凸レンズです。レンズの位置は、物体AからスクリーンBの方向へ\(a_1 = 12 \text{ cm}\)の地点です。
この結果は、凸レンズの性質である「物体を焦点距離の2倍の位置(\(a_1 = 2f_1\))に置くと、焦点距離の2倍の位置(\(b_1 = 2f_1\))に等倍の実像ができる」という知識と完全に一致しており、物理的に妥当です。

解答 (1) 焦点距離\(6.0 \text{ cm}\)の凸レンズ, AからBに向かって\(12 \text{ cm}\)の位置

問(2)

思考の道筋とポイント
基本的な考え方は問(1)と同じです。「\(3.0\)倍の大きさの実像」という条件から、倍率が\(3.0\)であることを読み取ります。倍率の公式と、物体・スクリーンの距離の条件を連立させて、物体距離\(a_2\)と像距離\(b_2\)を求め、レンズの公式から焦点距離\(f_2\)を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 拡大された実像ができる場合、物体は焦点と焦点距離の2倍の間の位置に置かれます (\(f < a < 2f\))。この知識は、計算結果の妥当性を確認するのに役立ちます。

具体的な解説と立式
物体AからレンズL₂までの距離を\(a_2\)、レンズL₂からスクリーンBまでの距離を\(b_2\)とします。
問題の条件より、
$$ a_2 + b_2 = 24 \quad \cdots ④ $$
スクリーン上に「\(3.0\)倍の大きさの実像」ができたので、倍率\(m_2\)は\(3.0\)です。
$$ m_2 = \frac{b_2}{a_2} = 3.0 \quad \cdots ⑤ $$
式⑤より\(b_2 = 3.0 a_2\)という関係がわかります。これを式④に代入して\(a_2\)と\(b_2\)を求め、レンズの公式に代入して焦点距離\(f_2\)を計算します。
$$ \frac{1}{a_2} + \frac{1}{b_2} = \frac{1}{f_2} \quad \cdots ⑥ $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)
計算過程

式⑤より\(b_2 = 3.0 a_2\)なので、これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
a_2 + 3.0 a_2 &= 24 \\[2.0ex]4.0 a_2 &= 24 \\[2.0ex]a_2 &= 6.0 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
したがって、像距離は\(b_2 = 3.0 \times 6.0 = 18 \text{ [cm]}\)となります。
これらの値を式⑥に代入して、焦点距離\(f_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{6.0} + \frac{1}{18} &= \frac{1}{f_2} \\[2.0ex]\frac{3}{18} + \frac{1}{18} &= \frac{1}{f_2} \\[2.0ex]\frac{4}{18} &= \frac{1}{f_2} \\[2.0ex]\frac{2}{9} &= \frac{1}{f_2} \\[2.0ex]f_2 &= \frac{9}{2} = 4.5 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

像の大きさが物体の\(3.0\)倍なので、レンズから像(スクリーン)までの距離は、レンズから物体までの距離の\(3.0\)倍になります。物体からスクリーンまでの合計距離は\(24 \text{ cm}\)なので、この距離を\(1:3\)に分ける点を考えれば、物体からレンズまでの距離がわかります。計算すると、\(24 \text{ cm} \times \displaystyle\frac{1}{1+3} = 6.0 \text{ cm}\)となります。この情報を使ってレンズの公式で計算すると、焦点距離は\(4.5 \text{ cm}\)と求まります。

結論と吟味

焦点距離は\(f_2 = 4.5 \text{ cm}\)と計算できました。焦点距離が正の値なので、このレンズも凸レンズです。レンズの位置は、物体AからスクリーンBの方向へ\(a_2 = 6.0 \text{ cm}\)の地点です。
このとき、\(f_2 < a_2 < 2f_2\) (具体的には \(4.5 < 6.0 < 9.0\)) という関係が成り立っており、拡大された実像ができる条件と一致しています。結果は物理的に妥当です。

解答 (2) 焦点距離\(4.5 \text{ cm}\)の凸レンズ, AからBに向かって\(6.0 \text{ cm}\)の位置

問(3)

思考の道筋とポイント
問(2)で使ったレンズL₂(焦点距離 \(f_2 = 4.5 \text{ cm}\))で、スクリーンB上に実像ができる「別の位置」を探す問題です。物体からレンズまでの距離を未知数\(a\)とし、レンズからスクリーンまでの距離を\(b\)とします。「物体とスクリーンの距離が\(24 \text{ cm}\)」という条件 (\(a+b=24\)) と「レンズの公式」を連立させると、\(a\)に関する二次方程式が導かれます。この方程式の解が、実像を作ることができるレンズの位置(物体からの距離)を与えます。解のうちの一つは問(2)で求めた位置になるはずで、もう一つの解がこの問題の答えとなります。
この設問における重要なポイント

  • 物体とスクリーンの距離が固定されている場合、その間に凸レンズを置いて実像ができる位置は、一般に2箇所存在します。
  • この2つの位置は、物体と像の位置を入れ替えた関係にあり、「光路の可逆性」という物理法則に基づいています。

具体的な解説と立式
レンズL₂の焦点距離は問(2)より\(f_2 = 4.5 \text{ cm}\)です。
物体AからレンズL₂までの距離を\(a\)、レンズL₂からスクリーンBまでの距離を\(b\)とします。
物体とスクリーンの距離は\(24 \text{ cm}\)なので、
$$ a + b = 24 \quad \text{より} \quad b = 24 – a \quad \cdots ⑦ $$
これらの関係を、焦点距離\(f_2 = 4.5 \text{ cm}\)とともにレンズの公式に代入します。
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f_2} \quad \cdots ⑧ $$
式⑦を式⑧に代入すると、\(a\)に関する方程式が得られます。
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{24-a} = \frac{1}{4.5} $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
計算過程

立式した方程式を解きます。\( \displaystyle\frac{1}{4.5} = \frac{1}{9/2} = \frac{2}{9} \)なので、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{a} + \frac{1}{24-a} &= \frac{2}{9} \\[2.0ex]\frac{(24-a) + a}{a(24-a)} &= \frac{2}{9} \\[2.0ex]\frac{24}{24a – a^2} &= \frac{2}{9}
\end{aligned}
$$
両辺に\(9 \times (24a – a^2)\)を掛けて分母を払います。
$$
\begin{aligned}
24 \times 9 &= 2(24a – a^2) \\[2.0ex]216 &= 48a – 2a^2
\end{aligned}
$$
両辺を2で割り、移項して整理します。
$$
\begin{aligned}
108 &= 24a – a^2 \\[2.0ex]a^2 – 24a + 108 &= 0
\end{aligned}
$$
この二次方程式を因数分解で解きます。和が\(-24\)、積が\(108\)となる2数は\(-6\)と\(-18\)です。
$$ (a-6.0)(a-18) = 0 $$
したがって、解は \(a = 6.0 \text{ cm}\) または \(a = 18 \text{ cm}\) となります。
\(a = 6.0 \text{ cm}\) は問(2)で求めた位置です。したがって、もう一つの位置は \(a = 18 \text{ cm}\) となります。

計算方法の平易な説明

問(2)で使ったのと同じレンズ(焦点距離\(4.5 \text{ cm}\))で、物体とスクリーンの距離を\(24 \text{ cm}\)に保ったまま、実像ができる別の場所を探します。レンズの公式に、わかっている情報(焦点距離\(4.5 \text{ cm}\)、物体とスクリーンの合計距離\(24 \text{ cm}\))を入れて計算を進めると、レンズを置ける場所(物体からの距離\(a\))を求めるための方程式が作れます。この方程式を解くと、答えが2つ出てきます。そのうちの1つは問(2)で見つけた\(6.0 \text{ cm}\)の場所で、もう1つが計算の結果出てくる\(18 \text{ cm}\)の場所になります。

結論と吟味

問(2)で求めた位置以外に、物体Aから\(18 \text{ cm}\)の位置にレンズL₂を置くと、スクリーンB上に実像ができます。
このとき、像距離は \(b = 24 – a = 24 – 18 = 6.0 \text{ cm}\) となります。
これは、問(2)の状況(\(a=6.0 \text{ cm}, b=18 \text{ cm}\))と、物体距離と像距離をちょうど入れ替えただけの関係になっています。これは物理的に妥当な結果です。

解答 (3) AからBに向かって\(18 \text{ cm}\)の位置

 

別解: (3) 光路の可逆性を利用した解法

思考の道筋とポイント
物理現象における「光路の可逆性」という原理を利用します。光路の可逆性とは、「光の進む向きを逆にしても、光は同じ道筋をたどる」という性質です。レンズによる結像において、これは「物体と実像の位置を入れ替えても、結像関係が成り立つ」ことを意味します。この原理を使えば、複雑な計算なしに答えを導くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 光路の可逆性: 物体と実像の位置は交換可能である。
  • 問(2)の状況: 物体距離 \(a_2 = 6.0 \text{ cm}\) のとき、像距離 \(b_2 = 18 \text{ cm}\) で実像ができた。

具体的な解説と立式
問(2)では、物体AからレンズL₂までの距離が \(a_2 = 6.0 \text{ cm}\) のとき、レンズL₂からスクリーンBまでの距離が \(b_2 = 18 \text{ cm}\) の位置に実像ができました。このとき、物体とスクリーンの距離は \(a_2 + b_2 = 6.0 + 18 = 24 \text{ cm}\) であり、問題の条件を満たしています。

光路の可逆性により、物体と実像の位置を入れ替えることができます。つまり、物体AからレンズL₂までの距離を \(a’_2 = 18 \text{ cm}\) にすれば、レンズL₂からスクリーンBまでの距離が \(b’_2 = 6.0 \text{ cm}\) の位置に実像ができるはずです。

この新しい配置でも、物体とスクリーンの距離は \(a’_2 + b’_2 = 18 + 6.0 = 24 \text{ cm}\) となり、問題の条件をきちんと満たしています。
したがって、\(a = 18 \text{ cm}\) は求めるべきもう一つの位置であると結論できます。

使用した物理公式

  • 光路の可逆性の原理(概念的な理解)
計算過程

この解法では、問(2)の結果から論理的に結論を導くため、新たな計算は不要です。

計算方法の平易な説明

光には「来た道をそのまま戻れる」という不思議な性質があります。これを「光路の可逆性」と呼びます。
問(2)では、「物体をレンズから\(6.0 \text{ cm}\)の所に置いたら、\(18 \text{ cm}\)の所に像ができた」という結果が得られました。
この性質を使うと、「では、物体を\(18 \text{ cm}\)の所に置けば、\(6.0 \text{ cm}\)の所に像ができるはずだ」と逆に考えることができます。
このとき、物体とスクリーンの距離は \(18 \text{ cm} + 6.0 \text{ cm} = 24 \text{ cm}\) となり、ちゃんと問題の条件に合っています。
したがって、問(2)の\(6.0 \text{ cm}\)の他に、\(18 \text{ cm}\)の場所も答えになる、と計算なしでわかります。

結論と吟味

光路の可逆性という物理原理を用いることで、二次方程式を解くという数学的な手間を省き、問(2)の結果から直接的に答えを導き出すことができました。この解法は、計算が簡単なだけでなく、レンズの性質をより深く理解する上で非常に有益です。

解答 (3) AからBに向かって\(18 \text{ cm}\)の位置

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • レンズの公式と倍率の公式:
    • 核心: この問題は、レンズによる結像を扱う上で最も基本的な2つの公式、「レンズの公式」と「倍率の公式」を使いこなせるかを問うています。未知数が物体距離\(a\)と像距離\(b\)の2つであることが多く、問題文の条件から2つの式を立てて連立方程式を解くのが定石です。
    • 理解のポイント:
      • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) は、物体、像、焦点の位置関係を定量的に結びつけます。
      • 倍率の公式: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) は、像の大きさがどう決まるかを示します。問題文の「N倍の大きさ」という表現は、この式を使うための直接的なヒントです。
  • 光路の可逆性:
    • 核心: (3)の別解で示したように、「光は来た道を逆にたどれる」という物理原理です。これにより、物体と実像の位置を入れ替えても同じ結像関係が成り立つことが保証されます。
    • 理解のポイント:
      • 問(2)で「物体距離\(a\)、像距離\(b\)」の組み合わせで像ができたなら、「物体距離\(b\)、像距離\(a\)」の組み合わせでも必ず像ができます。この原理を知っていると、(3)のような問いに対して計算なしで即答できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 虚像の問題: 凸レンズの焦点の内側に物体を置いた場合や、凹レンズの問題。レンズの公式の\(b\)(像距離)が負の値になり、倍率の式はそのまま使えます。
    • 2枚のレンズ(複合レンズ): 1枚目のレンズが作る像を、2枚目のレンズの「物体」と見なして考えます。1枚目の像の位置が、2枚目のレンズに対してどの位置にあるかを正確に把握することが鍵です。
    • 実像ができるための条件: 物体とスクリーンの距離を\(L\)とすると、その間に凸レンズを置いて実像を結ばせるには、\(L \ge 4f\) という条件が必要です。この条件を知っていると、解の存在を事前に判断したり、検算に使えたりします。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 像の種類を特定する: 問題文の「スクリーン上に像ができた」という記述から、扱うのは「実像」であると確定させます。これにより、\(a, b, f\)はすべて正の値として扱えると判断できます。
    2. 条件を数式に変換する: 「物体とスクリーンの距離が\(24 \text{ cm}\)」→ \(a+b=24\)。「\(3.0\)倍の大きさ」→ \(m = b/a = 3.0\)。このように、日本語の条件を一つずつ数式に落とし込んでいきます。
    3. 「別の位置は?」という問いに反応する: (3)のように、ある条件を満たす「別の位置」を問われた場合、レンズの公式から導かれる二次方程式が2つの解を持つこと、そしてそれが「光路の可逆性」に対応していることを即座に連想します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • レンズの公式の逆数計算ミス:
    • 誤解: \(\displaystyle\frac{1}{f} = \frac{1}{6.0}\) と計算した後、答えを \(f = \frac{1}{6.0}\) [cm]としてしまう。
    • 対策: 式の最後は必ず「\(f = \dots\)」の形に直すことを徹底する。計算の最終段階で、逆数を取ることを忘れないように指差し確認する癖をつけましょう。
  • 倍率の式の分子・分母の混同:
    • 誤解: 倍率を \(m = \displaystyle\frac{a}{b}\) と間違えて覚えてしまい、計算結果が逆になる。
    • 対策: 倍率は「像の大きさ ÷ 物体の大きさ」であり、これは「像距離 ÷ 物体距離」(\(b/a\))に等しい、と意味とセットで覚える。「像が上(分子)、物体が下(分母)」と覚えましょう。
  • 二次方程式の解の吟味不足:
    • 誤解: (3)で二次方程式を解いて得られた2つの解 \(a=6.0\) と \(a=18\) の両方を答えとしてしまう。
    • 対策: 問題文を最後まで注意深く読む。「(2)で求めた以外に」という条件を見落とさないこと。設問が何を求めているのかを正確に把握し、得られた数学的な解が物理的な条件に合っているかを確認する「吟味」のステップを必ず入れることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • レンズの公式 (\(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)) と倍率の公式 (\(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)):
    • 選定理由: 問題で与えられている条件が「物体とスクリーンの距離 (\(a+b\))」と「像の倍率 (\(b/a\))」であり、求めたいのが「焦点距離 (\(f\))」と「レンズの位置 (\(a\))」です。これら \(a, b, f, m\) という4つの物理量を結びつける関係式が、この2つの公式だからです。
    • 適用根拠:
      • レンズの公式は、光線の幾何学的な追跡(作図)から導かれる、結像位置に関する普遍的な法則です。
      • 倍率の公式は、物体と光軸、像と光軸が作る2つの三角形が相似であることから導かれます。
      • 問題の条件を処理し、未知数を求めるために、これらの公式を連立方程式として利用するのが最も論理的かつ直接的な解法となります。
  • 光路の可逆性(物理原理):
    • 選定理由: (3)のように、一度解が得られた状況で「他の可能性」を問われた際に、計算を省略し、物理的な洞察に基づいて解を導くために選択します。
    • 適用根拠: この原理は、光の伝播を記述するより根本的な法則(フェルマーの原理など)に由来します。レンズの公式が \(a\) と \(b\) について対称な形 (\(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \dots\)) をしていること自体が、この可逆性の現れです。したがって、\(a\)と\(b\)を入れ替えた解もまた有効であると論理的に結論付けられます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の通分と和: (2)の焦点距離の計算 \(\displaystyle\frac{1}{6.0} + \frac{1}{18}\) では、最小公倍数である18に分母を揃えます。\(\displaystyle\frac{3}{18} + \frac{1}{18} = \frac{4}{18}\) と、途中式を省略せずに書くことで、ケアレスミスを防ぎます。
  • 二次方程式の立式と解法: (3)で \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{24-a} = \frac{1}{4.5}\) という式を立てた後、分母を払う際に計算ミスが起きがちです。両辺に \(9a(24-a)\) を掛けるなど、段階を踏んで丁寧に式を変形しましょう。\(a^2 – 24a + 108 = 0\) の因数分解では、和が\(-24\)、積が\(108\)になる組み合わせを落ち着いて探します。
  • 単位の一貫性を保つ: この問題ではすべて[cm]で与えられているため問題ありませんが、もし[m]と[cm]が混在する問題が出た場合は、計算を始める前に必ずどちらか一方の単位に統一する習慣をつけましょう。
  • 簡単な図を描く: 物体A、レンズL、スクリーンBの位置関係を簡単な直線上に描き、\(a\) や \(b\)、\(a+b=24\) などの情報を書き込むと、状況を視覚的に把握でき、立式ミスや解釈ミスを防ぐのに非常に有効です。

例題62 レンズの組み合わせと倍率

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「2枚のレンズを組み合わせた複合レンズ系による結像」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式: 物体距離、像距離、焦点距離の関係を表す基本式です。
  2. 倍率の公式: 像の大きさが物体の何倍になるかを表す式です。
  3. 複合レンズの考え方: 複数のレンズがある場合、1枚目のレンズによってできる像を、2枚目のレンズの「物体」と見なして段階的に考えます。
  4. 総合倍率: 複合レンズ系全体での倍率は、各レンズの倍率の積で与えられます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まずレンズPについてレンズの公式を適用し、1つ目の像BB’の位置を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた像BB’をレンズQの物体と見なします。レンズQについての「レンズの公式」と、問題で与えられた「総合倍率」の条件式の2つを連立させて、未知数であるレンズ間距離を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
レンズPの焦点距離と物体距離が与えられているため、レンズの公式を使って像距離を求めるシンプルな問題です。レンズの公式を正しく適用できるかが問われます。
この設問における重要なポイント

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 凸レンズの焦点距離は正 (\(f>0\))。
  • 物体が実物の場合、物体距離は正 (\(a>0\))。
  • 計算の結果、像距離が正 (\(b>0\))であればレンズの後方にできる実像、負 (\(b<0\))であればレンズの前方にできる虚像を意味します。

具体的な解説と立式
物体AA’からレンズPまでの距離を \(a_{\text{P}}\)、レンズPの焦点距離を \(f_{\text{P}}\) とします。問題文より、\(a_{\text{P}} = 16 \text{ cm}\)、\(f_{\text{P}} = 12 \text{ cm}\) です。
レンズPによってできる像BB’の、レンズPからの距離を \(b_{\text{P}}\) とすると、レンズの公式は以下のようになります。
$$ \frac{1}{a_{\text{P}}} + \frac{1}{b_{\text{P}}} = \frac{1}{f_{\text{P}}} $$
この式に数値を代入して \(b_{\text{P}}\) を求めます。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
計算過程

数値を代入して計算します。
$$ \frac{1}{16} + \frac{1}{b_{\text{P}}} = \frac{1}{12} $$
この式を \(b_{\text{P}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b_{\text{P}}} &= \frac{1}{12} – \frac{1}{16} \\[2.0ex]&= \frac{4}{48} – \frac{3}{48} \\[2.0ex]&= \frac{1}{48} \\[2.0ex]b_{\text{P}} &= 48 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

レンズの基本的な公式に、問題で与えられている「物体までの距離 \(16 \text{ cm}\)」と「焦点距離 \(12 \text{ cm}\)」を当てはめます。すると、「像までの距離」を求めるための方程式ができます。この簡単な分数の計算を解くことで、像の位置がわかります。

結論と吟味

像BB’の位置は、レンズPから右方に \(b_{\text{P}} = 48 \text{ cm}\) の地点となります。
\(b_{\text{P}}\)が正の値であることから、これはレンズPの右側にできる実像であることがわかります。物体が焦点距離(\(12 \text{ cm}\))と焦点距離の2倍(\(24 \text{ cm}\))の間に置かれている(\(12 < 16 < 24\))ので、焦点距離の2倍よりも遠い位置に倒立の拡大実像ができる、という凸レンズの性質とも一致しており、結果は妥当です。

解答 (1) レンズPの右方48cmの位置

問(2)

思考の道筋とポイント
これは2枚のレンズを組み合わせた複合レンズの問題です。解法の鍵は、(1)で求めた像BB’を、2枚目のレンズQの「物体」として扱うことです。
レンズQについてレンズの公式を立てますが、未知数が「PQ間の距離 \(x\)」と「最終的な像CC’のレンズQからの距離 \(c\)」の2つになります。そのため、式がもう一つ必要です。それが「総合倍率が6.0倍」という条件から立てる倍率の式です。この2つの式を連立させて解くことで、答えを導きます。
この設問における重要なポイント

  • 複合レンズでは、1枚目のレンズが作る像が、2枚目のレンズの物体になる。
  • 総合倍率は、各レンズの倍率の積で与えられる: \(m_{\text{総合}} = m_{\text{P}} \times m_{\text{Q}}\)。
  • 物体距離や像距離を、図を描いて正しく定義することが非常に重要。

具体的な解説と立式
(1)より、像BB’はレンズPの右方 \(48 \text{ cm}\) の位置にできます。
次に、この像BB’をレンズQの物体と考えます。
レンズPとQの間の距離を \(x\) とします。すると、レンズQから物体BB’までの距離 \(a_{\text{Q}}\) は、図から \(a_{\text{Q}} = x – 48\) と表せます。
レンズQの焦点距離は \(f_{\text{Q}} = 10 \text{ cm}\) です。
レンズQによってできる最終的な像CC’の、レンズQからの距離を \(c\) とします。
レンズQについてのレンズの公式は以下のようになります。
$$ \frac{1}{a_{\text{Q}}} + \frac{1}{c} = \frac{1}{f_{\text{Q}}} \quad \text{すなわち} \quad \frac{1}{x-48} + \frac{1}{c} = \frac{1}{10} \quad \cdots ① $$
次に、総合倍率の条件を考えます。総合倍率 \(m_{\text{総合}}\) は、レンズPの倍率 \(m_{\text{P}}\) とレンズQの倍率 \(m_{\text{Q}}\) の積です。
$$ m_{\text{P}} = \frac{b_{\text{P}}}{a_{\text{P}}} = \frac{48}{16} = 3.0 $$
$$ m_{\text{Q}} = \frac{c}{a_{\text{Q}}} = \frac{c}{x-48} $$
問題文より、最終的な像CC’の大きさが物体AA’の大きさの6.0倍なので、総合倍率の大きさは6.0です。
$$ |m_{\text{総合}}| = |m_{\text{P}}| \times |m_{\text{Q}}| = 3.0 \times \frac{c}{x-48} = 6.0 \quad \cdots ② $$
(最終像が実像なので \(c>0\)、またBB’はQの物体なので \(x-48>0\) として絶対値は外せます)
未知数 \(x\) と \(c\) について、2つの式①と②が立ったので、これを連立して解きます。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)
  • 総合倍率: \(m_{\text{総合}} = m_1 \times m_2\)
計算過程

まず、式②を整理して \(c\) と \(x\) の関係を求めます。
$$
\begin{aligned}
3.0 \times \frac{c}{x-48} &= 6.0 \\[2.0ex]\frac{c}{x-48} &= 2.0 \\[2.0ex]c &= 2.0(x-48) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
次に、この式③を式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{x-48} + \frac{1}{2.0(x-48)} &= \frac{1}{10} \\[2.0ex]\frac{2+1}{2.0(x-48)} &= \frac{1}{10} \\[2.0ex]\frac{3}{2.0(x-48)} &= \frac{1}{10}
\end{aligned}
$$
この方程式の分母を払って \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
3 \times 10 &= 2.0(x-48) \\[2.0ex]30 &= 2.0x – 96 \\[2.0ex]2.0x &= 126 \\[2.0ex]x &= 63 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題は2段階で考えます。まず、1枚目のレンズPが作る像の位置は(1)で計算しました(レンズPの右方48cm)。
次に、この像を「新しい物体」として、2枚目のレンズQがどのような像を作るかを考えます。レンズQについて、レンズの公式と倍率の式の2つを立てる必要があります。
「全体の倍率が6.0倍」という条件を使います。レンズPが物体を3.0倍に拡大したので、レンズQがさらに2.0倍に拡大すれば、合計で \(3.0 \times 2.0 = 6.0\) 倍になります。この「レンズQの倍率が2.0倍」という情報とレンズの公式を組み合わせることで、2つのレンズの間の距離を計算することができます。

結論と吟味

PQ間の距離は \(x=63 \text{ cm}\) となります。
この結果が妥当か確認してみましょう。
レンズQへの物体距離は \(a_{\text{Q}} = x-48 = 63-48 = 15 \text{ cm}\) となります。
レンズQの焦点距離は \(f_{\text{Q}} = 10 \text{ cm}\) なので、\(f_{\text{Q}} < a_{\text{Q}} < 2f_{\text{Q}}\) (具体的には \(10 < 15 < 20\)) という関係が成り立っています。これは、レンズQが拡大実像を作る条件と一致しており、物理的に妥当です。
また、最終的な像の位置は \(c = 2.0(x-48) = 2.0 \times 15 = 30 \text{ cm}\) となり、実像であることも確認できます。

解答 (2) 63 cm

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 複合レンズ系の段階的解析:
    • 核心: 2枚以上のレンズが組み合わさった問題では、レンズを1枚ずつ順番に考えていくのが鉄則です。「1枚目のレンズが作る像」を、「2枚目のレンズの物体」と見なすという考え方が全ての基本となります。
    • 理解のポイント:
      • まず、1枚目のレンズ(P)についてのみ考え、物体AA’の像BB’の位置と倍率を求めます。
      • 次に、2枚目のレンズ(Q)について考えます。このとき、先ほど求めた像BB’が、あたかもそこに新しい光源(物体)があるかのように振る舞うと捉えます。
  • 総合倍率の法則:
    • 核心: 複合レンズ系全体での倍率は、各レンズの倍率の積で与えられます。足し算ではないことに注意が必要です。
    • 理解のポイント:
      • \(m_{\text{総合}} = m_1 \times m_2 \times m_3 \times \dots\)
      • 例えば、1枚目のレンズで3倍になり、2枚目のレンズで2倍になった場合、最終的な像の大きさは元の物体の \(3 \times 2 = 6\) 倍になります。この法則が、(2)で連立方程式を立てる際の重要な鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 虚物体: 1枚目のレンズが作る実像の位置よりも手前に2枚目のレンズを置いた場合、2枚目のレンズにとっては光が集まる前の「虚物体」を扱うことになります。この場合、2枚目のレンズへの物体距離\(a_2\)を負の値としてレンズの公式に代入します。
    • 凹レンズとの組み合わせ: 凹レンズが系に含まれる場合、その焦点距離\(f\)を負の値としてレンズの公式に代入します。凹レンズは通常、虚像を作ることを念頭に置きます。
    • 望遠鏡・顕微鏡: これらの光学機器は、対物レンズと接眼レンズという2枚のレンズの組み合わせが基本です。本問の考え方は、これらの機器の倍率や像のでき方を理解する上で直接的に役立ちます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 図を描く・情報を書き込む: まず、問題の状況を簡単な光軸とレンズの図で表現します。与えられた距離や焦点距離、(1)で求めた像の位置などを図に書き込むことで、各要素の位置関係が明確になります。
    2. 2枚目の物体距離を正確に定義する: 2枚目のレンズの物体距離は、1枚目の像の位置とレンズ間距離から決まります。図を見ながら「(レンズ間距離)-(1枚目の像距離)」のように、慎重に立式します。ここが最も間違いやすいポイントです。
    3. 未知数と式の数を確認する: (2)では未知数がレンズ間距離\(x\)と最終的な像距離\(c\)の2つです。したがって、方程式が2つ必要だと判断します。1つは「レンズの公式」、もう1つは「総合倍率の条件式」から導きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 2枚目のレンズの物体距離の定義ミス:
    • 誤解: (2)で、レンズQへの物体距離を、レンズPからの像距離である\(48 \text{ cm}\)や、レンズ間距離\(x\)そのものだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 必ず図を描き、レンズP、像BB’、レンズQの3つの位置関係を視覚化します。そして、求めたい距離がどの部分にあたるのかを指で確認しながら、\(a_{\text{Q}} = x – 48\) という関係式を導き出す習慣をつけます。
  • 総合倍率の計算を足し算で行う:
    • 誤解: 総合倍率を \(m_{\text{P}} + m_{\text{Q}}\) のように、各レンズの倍率の和で計算してしまう。
    • 対策: 「倍率は掛け算」と強く意識して覚える。「3倍になったものが、さらに2倍になる」という具体的なイメージを持つと、掛け算であることが自然に理解できます。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: (2)で立てた2つの式 \(\displaystyle\frac{1}{x-48} + \frac{1}{c} = \frac{1}{10}\) と \(3.0 \times \displaystyle\frac{c}{x-48} = 6.0\) を解く過程で、代入や式変形を焦って間違える。
    • 対策: まず倍率の式から \(c = 2.0(x-48)\) のように、一方の変数をもう一方の変数で表す簡単な関係式を作ります。その後、その関係式をレンズの公式に慎重に代入し、段階的に計算を進めることでミスを減らせます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • レンズの公式 (\(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)):
    • 選定理由: レンズによる結像の「位置」を定量的に決定するための唯一の基本法則だからです。本問では、(1)で像BB’の位置を、(2)で最終像CC’の位置を議論するために不可欠です。
    • 適用根拠: (2)では、未知数であるレンズ間距離\(x\)と最終像距離\(c\)の関係を記述するために使用します。レンズQの物体距離が\(x-48\)と表されるため、レンズの公式が\(x\)と\(c\)を含む方程式を与えてくれます。
  • 総合倍率の積の法則 (\(m_{\text{総合}} = m_1 \times m_2\)):
    • 選定理由: 問題で「最終的な像の大きさが元の物体の6.0倍」という「大きさ」に関する条件が与えられているため、この条件を数式化するために選択します。
    • 適用根拠: 像の大きさは、物体に倍率を掛けることで得られます。像BB’の大きさは \(|m_1| \times (\text{AA’の大きさ})\) であり、像CC’の大きさは \(|m_2| \times (\text{BB’の大きさ})\) です。この2式を組み合わせると、像CC’の大きさは \(|m_1| \times |m_2| \times (\text{AA’の大きさ})\) となり、総合倍率が各倍率の積で与えられることが論理的に導かれます。この法則が、未知数\(x\)と\(c\)に関するもう一つの方程式を与えてくれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の引き算: (1)の \(\displaystyle\frac{1}{b_{\text{P}}} = \frac{1}{12} – \frac{1}{16}\) のような計算では、分母の最小公倍数(この場合は48)を素早く見つけて通分します。\(\displaystyle\frac{4}{48} – \frac{3}{48}\) と途中式を書き、計算ミスを防ぎます。
  • 連立方程式の処理: (2)では、まず扱いやすい倍率の式から \(c = 2(x-48)\) というシンプルな関係を導き出します。これをもう一方の複雑なレンズの公式に代入することで、見通しが良くなり、計算が楽になります。
  • 代入後の計算: \(\displaystyle\frac{1}{x-48} + \frac{1}{2(x-48)} = \frac{1}{10}\) のような式では、左辺を \(\displaystyle\frac{2+1}{2(x-48)}\) と落ち着いて通分します。分母を払うときも、\(3 \times 10 = 2(x-48)\) のように、各項を丁寧に乗算し、符号ミスや単純な計算間違いをしないように注意します。
  • 最終確認: 計算で得られた \(x=63\) という値を元の状況に当てはめてみます。レンズQへの物体距離は \(a_{\text{Q}} = 63-48=15 \text{ cm}\)。焦点距離10cmのレンズなので、拡大実像ができる条件 \(f < a < 2f\) を満たしているな、と簡単な検算(吟味)をする習慣をつけると、解答の確信度が上がります。
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