Step 2
253 弦の振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「弦の固有振動」です。弦の長さや張力が決まっているとき、定在波が生じる振動数(固有振動数)が、基本振動数の整数倍になるという関係を理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定在波の条件式:弦の長さ\(L\)と波長\(\lambda\)の関係は、腹の数を\(n\)として \(L = n \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) で表されます。
- 波の基本式:波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、常に \(v = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
- 波の速さの不変性:弦を伝わる波の速さ\(v\)は、弦の張力(おもりの重さ)と線密度で決まります。弦の長さや振動数を変えても、おもりと弦自体を変えない限り速さ\(v\)は一定です。
- 固有振動数:定在波が生じる特定の振動数のこと。最も単純な基本振動の振動数を\(f_1\)とすると、より複雑な\(m\)倍振動の振動数\(f_m\)は \(f_m = m f_1\) となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、問題の初期設定(振動数\(f\)、弦の長さ\(L\)で腹が1つの定在波)が「基本振動」であることを確認します。
- 次に、弦の長さ\(L\)と張力(おもりの重さ)が一定のまま振動数を変えるので、波の速さ\(v\)は一定であることを利用します。
- 基本振動数と\(m\)倍振動数の関係を導き、答えを求めます。
思考の道筋とポイント
この問題は、弦の固有振動数の関係を問う、シンプルながら本質的な問題です。ポイントは、問題文で与えられた最初の状態(振動数\(f\)、弦長\(L\)で図の定在波)が、最も単純な「基本振動」であると見抜くことです。そして、弦の長さと張力が固定されている場合、定在波が生じる振動数(固有振動数)は、この基本振動数のきれいな整数倍になる、という法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 図に示された腹が1つの定在波は「基本振動」である。
- 問題で与えられた振動数\(f\)は、基本振動の振動数\(f_1\)に相当する。
- 弦の長さ\(L\)とおもりが一定なので、弦を伝わる波の速さ\(v\)は一定である。
- 弦の固有振動数\(f_m\)は、基本振動数\(f_1\)の整数(\(m\))倍になる。(\(f_m = m f_1\))
具体的な解説と立式
この問題を2つのステップで考えます。
ステップ1:初期状態(基本振動)の分析
問題の図は、弦の両端が節となり、腹が1つだけある状態です。これは基本振動(\(m=1\))と呼ばれます。
このときの振動数が\(f\)、弦の長さが\(L\)です。
基本振動の波長を\(\lambda_1\)とすると、定在波の条件式より、
$$ L = 1 \cdot \frac{\lambda_1}{2} $$
よって、\(\lambda_1 = 2L\) です。
このとき、弦を伝わる波の速さ\(v\)は、波の基本式より、
$$ v = f \lambda_1 = f \cdot (2L) \quad \cdots ① $$
この速さ\(v\)は、弦の張力とおもりの重さで決まるため、振動数を変えても一定です。
ステップ2:問いの状態(\(m\)倍振動)の分析
次に、弦の長さを\(L\)に固定したまま、振動数を変えて腹が\(m\)個の定在波(\(m\)倍振動)が生じる場合を考えます。
このときの振動数を\(f_m\)、波長を\(\lambda_m\)とします。
定在波の条件式より、
$$ L = m \cdot \frac{\lambda_m}{2} $$
よって、\(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) です。
このときの波の基本式は、
$$ v = f_m \lambda_m = f_m \left( \frac{2L}{m} \right) \quad \cdots ② $$
ステップ1と2の結合
式①と②の速さ\(v\)は等しいので、
$$ f \cdot (2L) = f_m \left( \frac{2L}{m} \right) $$
この式を\(f_m\)について解くことで、答えが求まります。
使用した物理公式
- 定在波の条件式: \(L = n \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
- 弦の固有振動数の関係: \(f_m = m f_1\)
式①と②から、
$$
\begin{aligned}
f \cdot (2L) &= f_m \left( \frac{2L}{m} \right) \\[2.0ex]
f &= \frac{f_m}{m} \\[2.0ex]
f_m &= mf
\end{aligned}
$$
ここで、\(m=1, 2, 3, \dots\) です。
まず、最初の状態は、振動数\(f\)で一番シンプルな「基本の揺れ」(基本振動)が起きていることを確認します。
次に、弦の長さや張りを変えずに、もっと複雑な揺れ(腹が\(m\)個の\(m\)倍振動)を起こしたい場合を考えます。
弦の振動のルールとして、「複雑な揺れの振動数は、基本の揺れの振動数のきれいな整数倍になる」という性質があります。
腹が2つの揺れ(2倍振動)なら振動数は\(2f\)、腹が3つ(3倍振動)なら\(3f\)となります。
したがって、腹が\(m\)個の揺れ(\(m\)倍振動)を起こすには、振動数を\(mf\)にすればよい、と結論できます。
定在波が生じる振動数は \(mf\) (\(m=1, 2, 3, \dots\)) と表せます。
これは、弦の固有振動数が基本振動数\(f\)の整数倍になるという、物理的に正しい関係を示しています。
\(m=1\)のときは\(f_1 = 1 \cdot f = f\)となり、与えられた初期状態と一致します。
\(m=2, 3, \dots\)とすることで、2倍振動、3倍振動といった高次の固有振動数が得られ、結果は妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 弦の固有振動数の関係:
- 核心: 弦の長さ\(L\)と張力(それによって決まる波の速さ\(v\))が固定されている場合、安定した定在波が生じる振動数(固有振動数)は、とびとびの値しか取れません。そして、それらの値は、最も低い振動数である「基本振動数 \(f_1\)」の単純な整数倍になる、という法則がこの問題の全てです。
- 理解のポイント:
- 公式: \(f_m = m f_1 \quad (m=1, 2, 3, \dots)\)
- \(m\)は定在波の「腹の数」に一致します。
- この問題で与えられた振動数\(f\)は、腹が1つの基本振動(\(m=1\))のときのものです。つまり、\(f_1 = f\) と読み替えることができます。
- したがって、腹が\(m\)個のときの振動数\(f_m\)は、\(f_m = m f_1 = mf\) となります。
- 波の速さの不変性:
- 核心: 上記の固有振動数の関係が成り立つ大前提として、「波の速さ\(v\)が一定である」という条件があります。
- 理解のポイント: 弦を伝わる波の速さ\(v\)は、弦の張力(おもりの重さ)と線密度(弦の種類)のみで決まります。問題の設定では、弦の長さ\(L\)を固定し、振動数だけを変化させるため、弦の物理的な条件は変わらず、速さ\(v\)は一定に保たれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 弦の長さを変える問題: 振動数\(f\)と張力(速さ\(v\))を固定し、腹が\(m\)個の定在波ができるときの弦の長さ\(L_m\)を求める問題。(\(L_m = m \cdot \frac{v}{2f}\) となり、長さが腹の数に比例する)
- おもりの重さを変える問題: 弦長\(L\)と振動数\(f\)を固定し、腹が\(m\)個の定在波ができるときのおもりの質量\(M_m\)を求める問題。(\(v \propto \sqrt{M}\) の関係から、\(M_m \propto \frac{1}{m^2}\) という関係を導く)
- 気柱の共鳴:
- 開管(両端が開いている管): 弦の振動と同様に、固有振動数は基本振動数の整数倍 (\(f_m = m f_1\)) になります。
- 閉管(一端が閉じている管): 固有振動数は基本振動数の「奇数倍」 (\(f_m = (2m-1) f_1\)) になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 不変量と変数を特定する: 問題文から「〜を固定し」「〜を変化させた」という部分を正確に読み取ります。弦の長さ\(L\)、振動数\(f\)、張力(速さ\(v\))、腹の数\(m\)のうち、何が一定で何が変化するのかを最初に整理することが最も重要です。
- 基準状態を把握する: 問題で与えられた最初の状態が、腹が1つの「基本振動」なのか、それとも腹が複数ある「倍振動」なのかを図や説明から正確に把握します。これが基本振動数\(f_1\)を特定する鍵です。
- 2つの基本式を連立させる: どんな弦の振動の問題も、結局は「定在波の条件式 \(L = m \cdot \frac{\lambda_m}{2}\)」と「波の基本式 \(v = f_m \lambda_m\)」の2つを連立させて解くことに帰着します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 基本振動数の誤認:
- 誤解: 問題で与えられた振動数を、どんな場合でも基本振動数だと早合点してしまう。例えば、もし最初の図の腹が2つだったら、与えられた振動数\(f\)は2倍振動のものであり、基本振動数は\(f/2\)となります。
- 対策: 必ず図や問題文から腹の数を確認し、「与えられた振動数\(f\)は、基本振動数の何倍にあたるのか?」を冷静に判断する癖をつけましょう。
- 波の速さ\(v\)が変化するという誤解:
- 誤解: 振動数\(f\)を変えるのだから、\(v=f\lambda\)の式に従って速さ\(v\)も変わるはずだ、と考えてしまう。
- 対策: 「波の速さ\(v\)は、あくまで波を伝える媒体(この場合は弦)の物理的性質(張力と線密度)だけで決まる」という大原則を徹底しましょう。振動数を変えても、弦を張り替えたりおもりを交換したりしない限り、速さ\(v\)は一定です。その代わり、波長\(\lambda\)が変化します。
- 各種の固有振動数の公式の混同:
- 誤解: 弦の振動(整数倍)、開管の共鳴(整数倍)、閉管の共鳴(奇数倍)の公式をごちゃ混ぜに覚えてしまう。
- 対策: \(f_m=mf_1\)のような結果だけを暗記するのではなく、定在波の「形」(両端が節、開口端が腹など)から、毎回 \(L\) と \(\lambda\) の関係式を立てて自分で導出する練習をしましょう。論理的に導くプロセスを理解すれば、混同することはなくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 固有振動数の関係式 (\(f_m = m f_1\)):
- 選定理由: この問題は、弦の長さと張力が固定された「共振系」における、共振周波数の関係を問うているからです。このような系では、特定の周波数(固有振動数)でしかエネルギーが効率よく伝わらず、安定した大きな振動(定在波)が維持されません。
- 適用根拠: この関係式は、以下の論理的なステップから導かれます。
- 弦の速さ\(v\)は一定である。
- 腹が\(m\)個の定在波の波長は、定在波の条件式 \(L = m \frac{\lambda_m}{2}\) より、\(\lambda_m = \frac{2L}{m}\) となる。
- 波の基本式 \(f_m = v/\lambda_m\) に代入すると、\(f_m = v / (\frac{2L}{m}) = m \cdot (\frac{v}{2L})\) となる。
- 基本振動数(\(m=1\))は \(f_1 = \frac{v}{2L}\) である。
- したがって、\(f_m = m \cdot f_1\) という関係が成立する。この導出過程そのものが、公式適用の論理的根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比例式の活用: この問題は計算がほとんどありませんが、類似問題では比例計算が頻出します。\(f_m = m f_1\) は、\(\frac{f_m}{m} = f_1\) (一定) という比例関係を意味します。例えば「腹が2個で400Hzなら、腹が5個では何Hz?」と問われたら、\(\frac{400}{2} = \frac{f_5}{5}\) という比例式を立て、\(f_5 = 400 \times \frac{5}{2} = 1000 \text{ Hz}\) と素早く計算できるように練習しましょう。
- 文字式の扱いに慣れる: 答えが具体的な数値ではなく文字式で与えられる問題は、物理法則の理解度を直接問う良問です。具体的な数値がないことに戸惑わず、物理量を文字のまま数式として扱い、代数的な処理を正確に行う練習を積みましょう。
- 物理的な直感で検算: 例えば、腹の数\(m\)を増やすということは、より細かく弦を振動させることを意味します。そのためには、より高い振動数\(f_m\)が必要になるはずです。したがって、答えが\(f/m\)のような形になったら「おかしい」と気づくことができます。このように、計算結果が物理的な直感と合っているかを確認する習慣が重要です。
254 弦の振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「弦の振動とうなりの融合」です。弦の定在波の知識と、うなりに関する知識という、2つの異なる単元の内容を組み合わせて解く能力が試されます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- うなりの公式:振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らすと、音の強弱が周期的に変化する「うなり」が聞こえます。1秒あたりのうなりの回数(うなり振動数 \(f_{\text{うなり}}\))は、2つの音源の振動数 \(f_1, f_2\) の差の絶対値に等しくなります。
- 弦の基本振動:弦の両端を固定して振動させるとき、腹が1つだけできる最も単純な定在波です。このとき、弦の長さ \(L\) は波長 \(\lambda\) の半分に相当します。
- 波の基本式:波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
- 論理的思考:2つの条件から未知数を絞り込むプロセス。本問(1)では、2つのうなりの情報から、弦の振動数の候補を絞り込み、唯一の解を特定します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず弦の振動数を未知数 \(f\) と置きます。次に、2種類のおんさ(332Hzと328Hz)それぞれとのうなりの情報から、\(f\) が満たすべき2つの方程式を立てます。これらを連立させて解くことで、\(f\) の値を特定します。
- (2)では、問題の図が「基本振動」であることから、弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) の関係式を立て、波長を計算します。
- (3)では、(1)で求めた振動数 \(f\) と(2)で求めた波長 \(\lambda\) を、波の基本式に代入して速さ \(v\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
未知の振動数 \(f\) を持つ弦と、既知の振動数を持つ2つのおんさとの「うなり」の情報から、\(f\) を特定する問題です。うなりの公式 \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\) を2つの条件に適用し、両方を満たす解を見つける論理パズルのような思考が求められます。絶対値を含む方程式の扱いに注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- うなりの振動数 \(f_{\text{うなり}}\) は、2つの音源の振動数の差の絶対値に等しい。
- \(|x – a| = b\) の解は \(x = a + b\) と \(x = a – b\) の2つの可能性がある。
- 2つの条件を同時に満たす唯一の解を求める。
具体的な解説と立式
弦の基本振動の振動数を \(f\) [Hz] とします。
条件1:振動数 \(f_1 = 332\) Hz のおんさとのうなり
1秒間に2回のうなりが観測されたので、うなりの振動数は \(f_{\text{うなり1}} = 2\) Hz です。
うなりの公式より、
$$ |f – 332| = 2 \quad \cdots ① $$
条件2:振動数 \(f_2 = 328\) Hz のおんさとのうなり
こちらも1秒間に2回のうなりが観測されたので、うなりの振動数は \(f_{\text{うなり2}} = 2\) Hz です。
うなりの公式より、
$$ |f – 328| = 2 \quad \cdots ② $$
これら2つの式を両方満たす \(f\) を求めます。
使用した物理公式
- うなりの振動数: \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)
まず、式①を解きます。
$$ f – 332 = \pm 2 $$
よって、\(f\) の候補は、
$$
\begin{aligned}
f &= 332 + 2 = 334 \text{ [Hz]} \\
\text{または} \quad f &= 332 – 2 = 330 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
次に、式②を解きます。
$$ f – 328 = \pm 2 $$
よって、\(f\) の候補は、
$$
\begin{aligned}
f &= 328 + 2 = 330 \text{ [Hz]} \\
\text{または} \quad f &= 328 – 2 = 326 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
両方の条件で共通して候補に挙がっているのは \(f = 330\) Hz です。
したがって、弦の振動数は \(330\) Hz と決まります。
うなりが1秒間に2回聞こえるということは、弦の振動数が、相手の音の振動数と「2だけずれている」ことを意味します。
まず、332Hzのおんさと比べて2ずれているので、弦の振動数は330Hzか334Hzのどちらかです。
次に、328Hzのおんさと比べても2ずれているので、弦の振動数は326Hzか330Hzのどちらかです。
この両方の条件に当てはまるのは「330Hz」しかありません。
弦の基本振動の振動数は \(330 \text{ Hz}\) です。
この値は、332Hzとの差が \(|330-332|=2\) Hz、328Hzとの差が \(|330-328|=2\) Hz となり、両方のうなりの条件を正しく満たしているため、妥当な答えです。
問(2)
思考の道筋とポイント
弦の基本振動の波長を求める問題です。図から、弦が「基本振動」していることを読み取り、弦の長さと波長の関係式を適用します。単位の換算(cm → m)を忘れないように注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 基本振動では、弦の長さ \(L\) が半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) に等しい。
- 単位の換算:\(1 \text{ m} = 100 \text{ cm}\)
具体的な解説と立式
問題文より、弦の長さは \(L = 80.0 \text{ cm}\) です。物理計算では通常メートル(m)を基本単位とするため、単位を換算します。
$$ L = 80.0 \text{ cm} = 0.800 \text{ m} $$
図に示されているのは腹が1つの基本振動なので、弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) の間には以下の関係が成り立ちます。
$$ L = \frac{\lambda}{2} $$
使用した物理公式
- 弦の基本振動の条件: \(L = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
上の式を \(\lambda\) について解き、\(L=0.800 \text{ m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 2L \\[2.0ex]
&= 2 \times 0.800 \\[2.0ex]
&= 1.60 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
図に描かれている波の形は、波1つ分(=1波長)のちょうど半分です。弦の長さが \(0.800 \text{ m}\) なので、本当の波長は単純にその2倍、つまり \(1.60 \text{ m}\) となります。
基本振動の波長は \(1.60 \text{ m}\) です。問題文の「80.0cm」が有効数字3桁であるため、答えも有効数字3桁の \(1.60 \text{ m}\) とするのが適切です。
問(3)
思考の道筋とポイント
弦を伝わる波の速さを求める問題です。(1)で振動数 \(f\)、(2)で波長 \(\lambda\) がすでに求まっているので、波の三要素の関係式である \(v=f\lambda\) に代入するだけで計算できます。
この設問における重要なポイント
- 波の速さ、振動数、波長の関係は、波の基本式 \(v=f\lambda\) で与えられる。
具体的な解説と立式
(1)より、弦の振動数は \(f = 330 \text{ Hz}\) です。
(2)より、弦を伝わる波の波長は \(\lambda = 1.60 \text{ m}\) です。
波の速さを \(v\) とすると、波の基本式は以下のようになります。
$$ v = f\lambda $$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
上の式に \(f\) と \(\lambda\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 330 \times 1.60 \\[2.0ex]
&= 528 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
波の速さは、単純に「振動数 × 波長」で求められます。(1)で求めた振動数 \(330 \text{ Hz}\) と、(2)で求めた波長 \(1.60 \text{ m}\) を掛け合わせることで、速さが計算できます。
弦を伝わる波の速さは \(528 \text{ m/s}\) です。(1), (2)で求めた値を正しく使って計算した結果であり、物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- うなりの公式と論理的思考:
- 核心: この問題の最大の山場は(1)です。物理法則としては「うなりの振動数は、2つの音源の振動数の差の絶対値に等しい (\(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\))」という一点に尽きます。しかし、それ以上に重要なのは、この法則を2つの異なる条件に適用し、得られた複数の可能性の中から唯一共通する解を見つけ出す「論理的な絞り込み思考」です。
- 理解のポイント:
- \(|f – 332| = 2\) という式は、\(f\) が \(332\) からの「距離」が \(2\) であることを意味します。数直線上で考えれば、\(332+2=334\) と \(332-2=330\) の2点が候補になります。
- 同様に、\(|f – 328| = 2\) は、\(f\) が \(328\) からの距離が \(2\) であることを意味し、候補は \(328+2=330\) と \(328-2=326\) の2点です。
- この2つの条件を同時に満たす点は \(330\) しかありません。
- 弦の基本振動の条件:
- 核心: 弦の両端が固定されている場合、最も単純な振動(基本振動)では、弦の長さ \(L\) が、弦を伝わる波の波長 \(\lambda\) のちょうど半分になる (\(L = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)) という幾何学的な関係を理解していることが重要です。
- 理解のポイント: 図に描かれた「腹が1つの波形」を見て、これが「波長の半分」であると即座に判断できるかが鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 未知のおんさの振動数を求める問題: 逆に、振動数が既知の弦と、未知のおんさでうなりを観測し、おんさの振動数を特定する問題。
- ドップラー効果とうなりの組み合わせ: 救急車(音源)が近づいたり遠ざかったりするときに観測される音の振動数と、静止しているおんさの音との間で生じるうなりを考える問題。
- 弦の張力を変えてうなりを調整する問題: 弦の張力を変えると波の速さ \(v\) が変わり、基本振動数 \(f_1 = v/(2L)\) も変わります。特定のおんさとのうなりが消える(\(f_1\)がおんさの振動数と一致する)ように張力を調整する問題など。
- 初見の問題での着眼点:
- 「うなり」というキーワードに注目: 問題文に「うなり」があれば、即座に \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\) の公式を思い出します。
- 複数の条件を探す: うなりの問題で未知数を特定させる場合、通常は(1)のように2つ以上の条件が与えられます。それらを見つけ出し、連立させて解く方針を立てます。
- 定在波の「形」を確認: 弦や気柱の問題では、図や説明文から「基本振動」なのか「倍振動」なのかを必ず確認します。これにより、\(L\) と \(\lambda\) の関係式が決まります。
- 単位の統一: 問題文でcmが使われていても、計算はmに直して行うのが基本です。特に速さ(m/s)を求める際には必須です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 絶対値を考慮しない:
- 誤解: \(|f – 332| = 2\) を \(f – 332 = 2\) とだけ考えてしまい、\(f=334\) という可能性しか出さない。
- 対策: うなりの公式には絶対値がついていることを常に意識しましょう。「差が2」なのであって、「どちらが大きいか」は分かりません。したがって、必ずプラスの場合とマイナスの場合の両方を検討する必要があります。
- 2つの条件の一方しか使わない:
- 誤解: 最初の条件 \(|f – 332| = 2\) から \(f=330\) または \(f=334\) と出した時点で、どちらか一方を適当に選んでしまう。
- 対策: 物理の問題では、与えられた条件は(特別な指示がない限り)全て使うのが原則です。2つ目の条件(328Hzのおんさ)は、候補を絞り込むために不可欠な情報であると認識しましょう。
- 波長と弦の長さの混同:
- 誤解: (2)で、弦の長さ \(L=0.800 \text{ m}\) をそのまま波長 \(\lambda\) の値だとしてしまう。
- 対策: 定在波の「見た目の形」と、それを構成する進行波の「波長」は別物です。基本振動の形は「半波長」である、という基本を徹底しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- うなりの公式 (\(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)):
- 選定理由: 問題文に「うなり」という現象が明記されており、その発生回数が与えられているため、この現象を定量的に記述する唯一の公式であるこれを選択します。
- 適用根拠: うなりは、2つの波の重ね合わせによって、振幅が周期的に変化する現象です。この振幅の変動周期の逆数がうなり振動数であり、計算すると2つの元の振動数の差の絶対値に一致することが数学的に証明されています。
- 弦の基本振動の条件式 (\(L = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)):
- 選定理由: 問題文に「基本振動」と明記され、その図も示されているため、この特定の定在波の幾何学的条件を表すこの式を選択します。
- 適用根拠: 弦の両端は振動の節(動かない点)になるという境界条件を満たす最も単純な波形が、この腹が1つの形です。この形は、正弦波の半周期分に相当するため、この関係式が成り立ちます。
- 波の基本式 (\(v = f\lambda\)):
- 選定理由: (3)で波の「速さ」を求める必要があり、(1)で「振動数」、(2)で「波長」が求まっているため、これら3つの基本量を結びつけるこの公式を選択します。
- 適用根拠: この式は、波が「1周期の時間 \(T\) の間に 1波長の距離 \(\lambda\) 進む」という波の定義そのもの(\(v=\lambda/T\))と、振動数と周期の関係(\(f=1/T\))から導かれる、あらゆる波に共通の普遍的な法則です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 数直線を描いて考える: (1)のような絞り込み問題では、数直線を描いて視覚的に考えるとミスが減ります。332と328の点をプロットし、それぞれから距離2の点(334, 330, 326)をプロットすると、重なる点が330であることが一目瞭然になります。
- 単位換算の徹底: cmをmに直す(\(80.0 \text{ cm} \rightarrow 0.800 \text{ m}\))のような単位換算は、計算の一番最初に行う癖をつけましょう。計算の途中で行うと、忘れたり間違えたりする原因になります。
- 有効数字の意識: 問題文の数値「80.0cm」「332Hz」「328Hz」はすべて有効数字3桁です。したがって、計算結果も有効数字3桁で答えるのが最も適切です。(1)の330Hz、(2)の1.60m、(3)の528m/sは、すべてこのルールに従っています。計算の最終段階で、有効数字を揃えることを意識しましょう。
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