「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 18】Step1 & 例題

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

Step1

① 空気中の音速

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「気温による音速の変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 空気中の音速は温度によって変化すること。
  2. 気温 \(t\) [℃] のときの音速 \(V\) [m/s] を求める公式の理解と適用。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 音速と気温の関係式を思い出す。
  2. 与えられた気温を公式に代入して音速を計算する。

思考の道筋とポイント
音は空気を媒質として伝わる波(疎密波)であり、その伝わる速さは媒質の状態、特に温度に依存します。一般に、空気中では温度が高いほど分子の熱運動が活発になるため、音(圧力の変化)を伝える速さも大きくなります。この関係を近似的に表した公式が、この問題を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 音速の公式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
  • この式は、気温 \(t\) [℃] における空気中の音速 \(V\) [m/s] を求めるための重要な近似式です。
  • \(V\): 気温 \(t\) [℃] のときの音速 [m/s]
  • \(t\): セルシウス温度 [℃]
  • \(331.5\) [m/s]: 0℃のときの音速。この値が計算の基準となります。
  • \(0.6\): 温度が1℃上がるごとに音速が約 \(0.6\) m/s 増加することを示す係数です。

具体的な解説と立式
空気中の音速 \(V\) [m/s] は、気温を \(t\) [℃] とすると、次の近似式で表されます。
$$ V = 331.5 + 0.6t $$
この式は、0℃のときの音速 \(331.5\) m/s を基準として、温度が1℃上昇するごとに音速が \(0.6\) m/s ずつ速くなるという物理的な関係を示しています。
問題では、気温が \(t = 20\) ℃ と与えられているので、この値を上記の式に代入することで、求める音速を計算できます。

使用した物理公式

  • 気温 \(t\) [℃] における空気中の音速 \(V\) [m/s]$$ V = 331.5 + 0.6t $$
計算過程

「具体的な解説と立式」で確認した公式に、問題で与えられた気温 \(t=20\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= 331.5 + 0.6 \times 20 \\[2.0ex]&= 331.5 + 12 \\[2.0ex]&= 343.5
\end{aligned}
$$
したがって、気温20℃の空気中の音速は \(343.5\) m/s となります。

計算方法の平易な説明

音の速さを計算する簡単なルールを使いましょう。
まず、基準となる「0℃のときの音の速さ」は秒速 \(331.5\) m です。
そして、「温度が1℃上がるごとに、速さは秒速 \(0.6\) m ずつ増える」という関係があります。
今回は20℃なので、0℃のときと比べて温度が20℃上がっています。したがって、速さは \(0.6 \times 20 = 12\) m/s だけ増えることになります。
よって、もともとの速さ(0℃のときの速さ)に、増えた分の速さを足してあげます。
\(331.5 + 12 = 343.5\) m/s が答えです。

解答 343.5 m/s

② 音速と波長

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の基本式を用いた可聴域の波長範囲の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式 \(v=f\lambda\) の理解。
  2. 振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) の関係(反比例の関係)。
  3. 可聴域(人が聞くことのできる振動数の範囲)の知識。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 波の基本式 \(v=f\lambda\) を波長 \(\lambda\) について解く。
  2. 可聴域の振動数の下限値と上限値をそれぞれ代入し、対応する波長(上限値と下限値)を計算する。
  3. 計算結果をまとめて範囲として示す。

思考の道筋とポイント
波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v=f\lambda\) という普遍的な関係があります。この問題では、音速 \(v\) が \(340\) m/s で一定とされているため、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) は反比例の関係になります。
つまり、振動数が最も小さい(=音が低い)ときに波長は最も長くなり、逆に振動数が最も大きい(=音が高い)ときに波長は最も短くなります。この関係を理解し、与えられた振動数の範囲の両端の値(最小値と最大値)を使って、対応する波長の最大値と最小値を計算することが、この問題の解法となります。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
    • \(v\): 波の速さ [m/s]
    • \(f\): 振動数 [Hz]
    • \(\lambda\): 波長 [m]
  • 振動数と波長の関係: 音速 \(v\) が一定のとき、式を変形すると \(\lambda = \displaystyle\frac{v}{f}\) となり、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) は反比例します。
  • 可聴域: 人が聞くことのできる音の振動数の範囲のことです。問題では \(20\) Hz から \(2.0 \times 10^4\) Hz と与えられています。
    • 振動数が最小(\(f_{\text{最小}} = 20\) Hz)のとき → 波長は最大
    • 振動数が最大(\(f_{\text{最大}} = 2.0 \times 10^4\) Hz)のとき → 波長は最小

具体的な解説と立式
波の基本式 \(v=f\lambda\) を、波長 \(\lambda\) について解くと次のようになります。
$$ \lambda = \frac{v}{f} $$
この式から、音速 \(v\) が一定のとき、波長 \(\lambda\) は振動数 \(f\) に反比例することがわかります。
人の聞くことのできる振動数の範囲は \(20 \text{ Hz} \le f \le 2.0 \times 10^4 \text{ Hz}\) です。

したがって、最も長い波長 \(\lambda_{\text{最大}}\) は、最も小さい振動数 \(f_{\text{最小}} = 20\) Hz のときに得られます。
$$ \lambda_{\text{最大}} = \frac{v}{f_{\text{最小}}} \quad \cdots ① $$
一方、最も短い波長 \(\lambda_{\text{最小}}\) は、最も大きい振動数 \(f_{\text{最大}} = 2.0 \times 10^4\) Hz のときに得られます。
$$ \lambda_{\text{最小}} = \frac{v}{f_{\text{最大}}} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
計算過程

まず、式①に \(v=340\)、\(f_{\text{最小}}=20\) を代入して、最も長い波長を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_{\text{最大}} &= \frac{340}{20} \\[2.0ex]&= 17
\end{aligned}
$$
よって、最も長い波長は \(17\) m です。

次に、式②に \(v=340\)、\(f_{\text{最大}}=2.0 \times 10^4\) を代入して、最も短い波長を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_{\text{最小}} &= \frac{340}{2.0 \times 10^4} \\[2.0ex]&= \frac{340}{20000} \\[2.0ex]&= \frac{17}{1000} \\[2.0ex]&= 0.017 \\[2.0ex]&= 1.7 \times 10^{-2}
\end{aligned}
$$
よって、最も短い波長は \(1.7 \times 10^{-2}\) m です。
したがって、求める波長の範囲は \(1.7 \times 10^{-2} \text{ m} \sim 17 \text{ m}\) となります。

計算方法の平易な説明

「速さ=振動数×波長」という波の基本的なルールを使います。この式を変形すると、「波長=速さ÷振動数」となります。
音の速さは \(340\) m/s で一定なので、波長は振動数によって決まります。
分数の計算では、割る数(分母)である「振動数」が小さいほど、計算結果の「波長」は大きくなります。

  • 一番長い波長を求めるには、一番小さい振動数(\(20\) Hz)を使います。
    波長 = \(340 \div 20 = 17\) m
  • 一番短い波長を求めるには、一番大きい振動数(\(2.0 \times 10^4 = 20000\) Hz)を使います。
    波長 = \(340 \div 20000 = 0.017\) m

この \(0.017\) m は、理科でよく使う書き方(有効数字2桁の指数表記)に直すと \(1.7 \times 10^{-2}\) m となります。
よって、人が聞くことのできる音波の波長の範囲は、\(1.7 \times 10^{-2}\) m から \(17\) m までとなります。

解答 \(1.7 \times 10^{-2} \text{ m} \sim 17 \text{ m}\)

③ 音の三要素

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「音の三要素(高さ、大きさ、音色)と音の強さの定義」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 音の高さと振動数の関係
  2. 音の大きさと振幅の関係
  3. 音色と波形の関係
  4. 音の強さの物理的な定義

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問で問われている音の性質(高さ、大きさ、音色、強さ)を特定する。
  2. それぞれの性質が、音波のどの物理的特徴(振動数、振幅、波形、エネルギー)に対応しているかを答える。

問(1)

思考の道筋とポイント
この設問は、音の「高さ」が音波のどの物理的な性質によって決まるかを問うています。日常生活で感じる「高い音」「低い音」の違いが、物理学ではどのように説明されるかを考えます。結論から言うと、音の高さは「振動数」によって決まります。1秒間に振動する回数が多いほど、私たちはその音を「高い」と感じます。

この設問における重要なポイント

  • 音の高さ: 音波の振動数 \(f\) [Hz] で決まります。
  • 振動数が大きい(1秒あたりの振動回数が多い)ほど、高い音になります。
  • 振動数が小さい(1秒あたりの振動回数が少ない)ほど、低い音になります。

具体的な解説と立式
音は、音源の振動が空気などの媒質を伝わることで生じる波(音波)です。「音の高さ」という聴覚的な感覚は、この音波の「振動数」に対応しています。振動数とは、波が1秒間に何回振動するかを表す量です。
問題文の「音波の振動数の①い音は高い音である」という記述から、高い音に対応する振動数の特徴を考えます。物理的に、振動数が大きいほど高い音として認識されるため、空欄①には「大き」が入ります。

使用した物理公式この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。関係性としては以下の通りです。

  • 音の高さ ∝ 振動数
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ギターの弦を思い浮かべてみてください。細くて張りの強い弦を弾くと、弦は速く細かく震え(振動数が大きい)、高い音が出ます。逆に、太くて緩い弦は、ゆっくり大きく揺れ(振動数が小さい)、低い音が出ます。このように、音の高さは振動の速さ(振動数)で決まります。

解答 (1) 大き

問(2)

思考の道筋とポイント
この設問は、音の「大きさ」が音波のどの物理的な性質によって決まるかを問うています。静かなささやき声と、大きな叫び声の違いが、物理学ではどのように説明されるかを考えます。結論から言うと、音の大きさは「振幅」によって決まります。振動の揺れ幅が大きいほど、私たちはその音を「大きい」と感じます。

この設問における重要なポイント

  • 音の大きさ: 音波の振幅 \(A\) [m] で決まります。
  • 振幅が大きい(振動の揺れ幅が大きい)ほど、大きい音になります。
  • 振幅が小さい(振動の揺れ幅が小さい)ほど、小さい音になります。

具体的な解説と立式
「音の大きさ」という聴覚的な感覚は、音波の「振幅」に対応しています。振幅とは、媒質の振動における、振動の中心からの最大の変位(ずれ)の大きさのことです。
振幅の大きい波はより多くのエネルギーを運んでおり、これが耳の鼓膜をより強く振動させるため、大きな音として認識されます。したがって、「音の大きさは、音波の②が大きいほど大きい」という文の空欄②には「振幅」が入ります。

使用した物理公式この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。関係性としては以下の通りです。

  • 音の大きさ ∝ 振幅
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

太鼓を叩く様子を想像してみてください。軽く叩くと、太鼓の皮は少ししかへこまず(振幅が小さい)、ポコッという小さな音がします。一方、力いっぱい叩くと、皮は大きくへこみ(振幅が大きい)、ドーンという大きな音がします。このように、音の大きさは振動の幅(振幅)で決まります。

解答 (2) 振幅

問(3)

思考の道筋とポイント
この設問は、音の「音色(ねいろ)」が音波のどの物理的な性質によって決まるかを問うています。同じ音の高さ(例えば「ド」の音)、同じ大きさで鳴らしても、ピアノの音とバイオリンの音が区別できるのはなぜか、という問題です。この違いを生むのが「音色」であり、物理的には「波形」の違いに対応します。

この設問における重要なポイント

  • 音色: 音波の波形(はけい)で決まります。
  • 楽器の音は、基本となる音(基音)と、その整数倍の振動数を持つ様々な音(倍音)が混ざり合ってできています。
  • この倍音の含まれ方の違いが、音波全体の形(波形)の違いとなり、独特の「音色」を生み出します。

具体的な解説と立式
音を特徴づける3つの要素は「高さ」「大きさ」「音色」です。設問では「同じ高さの音」とあるので振動数は同じです。また、文脈から音の大きさ(振幅)も同じ状況を想定しています。それでも楽器によって音が違って聞こえるのは、第3の要素である「音色」が異なるからです。
この音色の違いは、音波の波の形、すなわち「波形」の違いによって生じます。音叉の音はきれいなサインカーブ(正弦波)に近い単純な波形をしていますが、楽器の音は基音と倍音が複雑に合成された、ギザギザした複雑な波形をしています。この波形の違いを、私たちの耳は「音色の違い」として聞き分けています。したがって、空欄③には「波形」が入ります。

使用した物理公式この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。関係性としては以下の通りです。

  • 音色 ↔ 波形
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

人の声も、一人ひとり「声色」が違いますよね。これは、同じ「あー」と発音しても、その人の声帯の形や響き方によって、空気の振動のパターン(波形)が微妙に異なるためです。楽器も同じで、ピアノとバイオリンでは、同じ「ド」の音でも波の形が全く違うため、私たちはその違いを「音色が違う」と感じるのです。

解答 (3) 波形

問(4)

思考の道筋とポイント
この設問は、「音の強さ」という物理量の定義を問うています。「音の大きさ」が人間の感覚的なものであるのに対し、「音の強さ」は物理的に測定できる客観的な量です。その定義は「単位時間あたりに、単位面積を垂直に通過する音波のエネルギー」です。

この設問における重要なポイント

  • 音の強さ \(I\): 単位時間あたりに、音波の進行方向に垂直な単位面積を通過するエネルギーで定義されます。
  • 単位は [W/m²](ワット毎平方メートル)です。
  • 音の強さ \(I\) は、音波の振幅 \(A\) の2乗と振動数 \(f\) の2乗の積に比例します(\(I \propto A^2 f^2\))。

具体的な解説と立式
「音の強さ」は、音波が単位面積あたりにどれだけのエネルギーを運んでいるかを示す指標です。具体的には、「単位時間(1秒)あたりに、音波の進行方向に対して垂直な単位面積(1m²)を通過する音波のエネルギー」と定義されます。
「単位時間あたりのエネルギー」は、仕事率(単位: ワット[W])と同じ次元を持つため、音の強さの単位は [W/m²] となります。したがって、問題文の「音の強さは、単位時間あたりに単位面積を通過する音波の④で表される」という空欄④には「エネルギー」が入ります。

使用した物理公式

  • 音の強さの定義式: \(I = \displaystyle\frac{E}{St}\)
    (\(I\): 音の強さ, \(E\): エネルギー, \(S\): 面積, \(t\): 時間)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

「音の強さ」を、シャワーから出る水の勢いに例えてみましょう。シャワーの勢いを測るにはどうすればよいでしょうか。例えば、「1秒間に、手のひらくらいの面積に、どれくらいの量の水が当たるか」を考えれば、勢いが強いか弱いかが分かります。
これと同じで、「音の強さ」は「1秒間に」「1m²の面積を」「どれだけの量の音のエネルギーが通り抜けるか」で表されます。つまり、音の強さを決めているのは、音波が運ぶ「エネルギー」なのです。

解答 (4) エネルギー

④ 音波の性質

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「音波の性質(回折、共鳴、うなり、反射)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 回折:波が障害物の背後に回り込む現象。
  2. 共鳴(共振):外部からの振動の振動数が固有振動数と一致すると、非常に大きく振動する現象。
  3. うなり:振動数がわずかに異なる2つの波が干渉し、音の強弱が周期的に変化する現象。
  4. 反射:波が障害物に当たって跳ね返る現象。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問で説明されている状況を読み解く。
  2. その状況がどの物理現象に対応するかを、語群の中から正しく選択する。

問(1)

思考の道筋とポイント
この設問は「大きな障害物の背後にいる人の声が聞こえた」という現象についてです。直接見ることができない場所から音が聞こえるのはなぜかを考えます。これは、音波が障害物を避けるように回り込んで進む性質を持っているためです。この波に特有の現象を「回折」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • 回折: 波が障害物にぶつかったとき、その障害物の影になる部分にまで回り込んで伝わっていく現象。
  • 回折のしやすさは、波の波長と障害物の大きさの関係で決まります。波長が長いほど(音が低いほど)、障害物に対してよく回折します。

具体的な解説と立式
問題文の「大きな障害物の背後にいる人の声が聞こえた」という状況は、音波が障害物の端を回り込んで、直接は見通せない影の部分にまで伝わっていくことで起こります。光(可視光線)は波長が非常に短いため、ほとんど回折せず直進するように見えますが、音波は波長が比較的長いため、建物などの大きな障害物でも容易に回折します。
このように、波が障害物の背後に回り込む現象を「回折」といいます。したがって、この現象に最もふさわしい語句は「回折」です。

使用した物理公式

この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

塀の向こう側で友達が話しているとき、姿は見えなくても声は聞こえますよね。これは、音が波の性質を持っているので、塀という障害物を乗り越えるように回り込んで、私たちの耳まで届くからです。この「波の回り込み」現象が「回折」です。

解答 (1) 回折

問(2)

思考の道筋とポイント
この設問は「振動数が同じおんさの一方を鳴らすと、もう一方も鳴り出した」という現象です。触れてもいない物体が、音によって振動を始めるのはなぜかを考えます。これは、一方のおんさが発した音波の振動数が、もう一方のおんさが本来持っている「振動しやすい振動数(固有振動数)」と一致したために起こります。この現象を「共鳴」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • 固有振動数: 全ての物体が持つ、その物体が最も振動しやすい特定の振動数。
  • 共鳴(共振): 外部から加わる振動の振動数が、物体の固有振動数と一致(または非常に近い)場合に、その物体の振幅が非常に大きくなる現象。

具体的な解説と立式
物体には、それぞれが自然に振動しやすい特定の振動数があり、これを「固有振動数」と呼びます。設問では「振動数が同じおんさ」が2つ用意されており、これは2つのおんさの固有振動数が等しいことを意味します。
一方のおんさをたたくと、その振動が音波として空気を伝わります。この音波がもう一方のおんさに到達すると、音波の振動数がそのおんさの固有振動数とぴったり一致するため、エネルギーが非常に効率よく伝達されます。その結果、直接たたかれていないおんさも大きく振動を始めます。この現象を「共鳴」といいます。

使用した物理公式

この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ブランコをタイミングよく押すと、少しの力でもどんどん大きく揺れていきますよね。あれが共鳴のイメージです。ブランコが自然に揺れるリズム(固有振動数)に合わせて押す(外部からの振動)ことで、効率よくエネルギーが伝わります。おんさの場合も、音の振動がもう一方のおんさの「揺れやすいリズム」にぴったり合ったため、触ってもいないのに鳴り出したのです。

解答 (2) 共鳴

問(3)

思考の道筋とポイント
この設問は「振動数が少しだけ異なる2つのおんさを同時に鳴らすと、ワーン、ワーンと聞こえる」という現象です。音が大きくなったり小さくなったりを周期的に繰り返すのはなぜかを考えます。これは、2つの音波が重なり合う(干渉する)際に、波の位相がそろったりずれたりすることで、音が強め合ったり弱め合ったりするためです。この現象を「うなり」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • うなり: 振動数がわずかに異なる2つ以上の波が干渉することによって、合成波の振幅が周期的に変化する現象。
  • うなりの周期は、2つの音の振動数の差によって決まります。1秒あたりのうなりの回数(うなり振動数 \(f_{\text{うなり}}\))は、2つの音源の振動数 \(f_1\), \(f_2\) の差の絶対値で与えられます: \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)。

具体的な解説と立式
振動数がわずかに異なる2つの音波(例えば \(f_1\) と \(f_2\))が同時に存在すると、それらは重ね合わせの原理に従って干渉します。
ある瞬間、2つの波の山と山が重なると、振幅が大きくなり強い音になります(強め合う干渉)。しかし、振動数が異なるため、少し時間が経つと一方の波が他方より少しだけ速く進み、やがて山と谷が重なる瞬間が訪れます。このとき、振幅は小さくなり弱い音になります(弱め合う干渉)。この強弱が周期的に繰り返される現象が「うなり」です。

使用した物理公式

  • うなり振動数: \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

2人の人が、ほんの少しだけ違う速さで歩いているのを想像してみてください。最初は横に並んでいますが、だんだん一方が前に出て、やがて半歩ずれた状態になり、さらに進むとまた横に並びます。この「並ぶ→ずれる→並ぶ」というサイクルの繰り返しが、音の「強くなる→弱くなる→強くなる」という「うなり」の現象とよく似ています。

解答 (3) うなり

問(4)

思考の道筋とポイント
この設問は「屋外のホールで、舞台背面に壁があると客席で音がよく聞こえる」という現象です。壁があることで音がよく聞こえるようになる理由を考えます。これは、舞台から出た音の一部が壁に当たって跳ね返り、客席に届くためです。この波が跳ね返る現象を「反射」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • 反射: 波がある媒質から別の媒質の境界面に当たったとき、進行方向を変えて元の媒質中に戻ってくる現象。
  • 音の反射の最も身近な例は「やまびこ」です。
  • コンサートホールなどでは、この反射を効果的に利用するための壁(反響板)が設置され、客席全体に音が明瞭に届くように設計されています。

具体的な解説と立式
舞台から発せられた音は、あらゆる方向に広がっていきます。何もない屋外では、後方へ向かった音はそのまま遠くへ去ってしまいます。しかし、舞台の背面に壁があると、後方へ向かった音波が壁に当たって跳ね返り、客席の方向へ進みます。この現象が「反射」です。
この反射した音波が、舞台から直接客席に届く音波に加わるため、客席で聞こえる音はより大きく、はっきりとしたものになります。

使用した物理公式

この問題は概念的な理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ボールを壁に向かって投げると跳ね返ってきますよね。音もそれと同じで、壁に当たると跳ね返ってきます。これが「反射」です。屋外ステージの後ろに大きな板(反響板)があるのは、後ろに逃げてしまう音を反射させて、客席の方にしっかり届けるための工夫なのです。お風呂場で歌うと声がよく響くのも、狭い空間で音が壁に何度も反射するからです。

解答 (4) 反射

⑤ 音波の干渉

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の干渉」です。2つの波源から出た波が重なり合うことで、特定の場所で音が大きくなったり小さくなったりする現象の条件を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の重ね合わせの原理
  2. 波の干渉(強め合い・弱め合い)の条件
  3. 経路差の計算
  4. 同位相の波源の意味

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 2つの音源A, Bから観測点Oまでの経路差を計算する。
  2. 経路差が、与えられた波長の「整数倍」か「半波長の奇数倍」かを判断する。
  3. 干渉の条件に基づいて、音が強め合う(大きく聞こえる)か、弱め合う(小さく聞こえる)かを決定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、2つの音源から出た波が観測点でどのように干渉するかを問う、典型的な問題です。波の干渉による音の強弱は、2つの音源から観測点までの「経路差(距離の差)」と波の「波長」の関係によって決まります。
重要なのは、問題文にある「同位相」という条件です。2つの音源が同じタイミングで山(密部)と谷(疎部)を送り出しているため、経路差だけで干渉の様子を判断できます。
まずは、2つの音源A, Bから観測点Oまでの経路差を具体的に計算し、その値が波長 \(\lambda\) に対してどのような意味を持つのかを分析することが、解答への第一歩となります。

この設問における重要なポイント

  • 波の干渉条件(2つの波源が同位相の場合)
    • 強め合い(音が大きく聞こえる): 経路差が波長の整数倍になるとき。
      経路差 \(|l_A – l_B| = m\lambda\) (ただし \(m = 0, 1, 2, \dots\))
    • 弱め合い(音が小さく聞こえる): 経路差が半波長の奇数倍になるとき。
      経路差 \(|l_A – l_B| = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) (ただし \(m = 0, 1, 2, \dots\))
  • ここで、\(l_A\), \(l_B\) は各音源から観測点までの距離、\(\lambda\) は波長です。
  • 「半波長の奇数倍」とは、\(\displaystyle\frac{\lambda}{2} \times 1\), \(\displaystyle\frac{\lambda}{2} \times 3\), \(\displaystyle\frac{\lambda}{2} \times 5\), … ということです。これは、波長の「整数倍 + 半波長」と同じ意味です。

具体的な解説と立式
この問題では、2つの音源A, Bから観測点Oまでの距離が、それぞれ \(l_A = 10.0 \, \text{m}\)、\(l_B = 7.0 \, \text{m}\) と与えられています。また、音波の波長は \(\lambda = 2.0 \, \text{m}\) です。
まず、2つの波源からの経路差 \(\Delta l\) を求めます。経路差は、2つの距離の差の絶対値として定義されます。
$$ \Delta l = |l_A – l_B| \quad \cdots ① $$
音源AとBは同位相で振動しているため、観測点Oで波が弱め合い、音が小さく聞こえる条件は、この経路差 \(\Delta l\) が波長の半分の長さ(半波長)の奇数倍になることです。数式で表すと以下のようになります。
$$ \Delta l = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) \quad \cdots ② $$
この条件が満たされるかどうかを、具体的な数値を代入して確認します。

使用した物理公式

  • 経路差の定義: \(\Delta l = |l_1 – l_2|\)
  • 波の干渉条件(同位相波源):
    • 強め合い: \(|l_1 – l_2| = m\lambda\)
    • 弱め合い: \(|l_1 – l_2| = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\)
計算過程

まず、式①を用いて、音源A, Bから観測点Oまでの経路差 \(\Delta l\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta l &= |l_A – l_B| \\[2.0ex]&= |10.0 – 7.0| \\[2.0ex]&= 3.0 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
次に、この経路差 \(3.0 \, \text{m}\) が、波長 \(\lambda = 2.0 \, \text{m}\) とどのような関係にあるかを調べます。
半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) は、
$$ \frac{\lambda}{2} = \frac{2.0}{2} = 1.0 \, \text{m} $$
となります。
経路差 \(\Delta l = 3.0 \, \text{m}\) は、この半波長 \(1.0 \, \text{m}\) の3倍です。
$$ \Delta l = 3.0 \, \text{m} = 3 \times (1.0 \, \text{m}) = 3 \times \frac{\lambda}{2} $$
経路差が半波長の3倍(奇数倍)となったので、これは弱め合いの条件を満たします。
弱め合いの条件式② \(\Delta l = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) に当てはめると、
$$
\begin{aligned}
3.0 &= \left(m + \frac{1}{2}\right) \times 2.0 \\[2.0ex]1.5 &= m + \frac{1}{2} \\[2.0ex]m &= 1.5 – 0.5 \\[2.0ex]m &= 1
\end{aligned}
$$
となり、整数 \(m=1\) が存在するため、弱め合いの条件が成立することが確認できます。
したがって、観測点Oでは音は弱め合って小さく聞こえます。

計算方法の平易な説明

2つのスピーカーAとBから、同じタイミングで音が出ています。観測者がいる場所Oで、音が大きく聞こえるか、小さく聞こえるかを考えます。
この現象の鍵は、「2つのスピーカーからの距離の差」です。

  1. まず、距離の差を計算します。Aからは \(10.0 \, \text{m}\)、Bからは \(7.0 \, \text{m}\) なので、差は \(10.0 – 7.0 = 3.0 \, \text{m}\) です。
  2. 次に、音の波の長さ(波長)を見ます。問題から波長は \(2.0 \, \text{m}\) です。この「半分の長さ(半波長)」は \(1.0 \, \text{m}\) です。
  3. 最後に、ステップ1で計算した「距離の差」が、ステップ2の「半波長」の何倍になっているかを確認します。距離の差 \(3.0 \, \text{m}\) は、半波長 \(1.0 \, \text{m}\) のちょうど3倍です。
  4. ルールとして、距離の差が「半波長の奇数倍(1倍, 3倍, 5倍, …)」のとき、音は打ち消し合って小さく聞こえます。今回は3倍なので、このルールに当てはまります。

もし距離の差が波長 \(2.0 \, \text{m}\) の整数倍(例えば \(2.0 \, \text{m}\) や \(4.0 \, \text{m}\))だったら、音は強め合って大きく聞こえます。

解答 小さく聞こえる

⑥ クインケ管

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「クインケ管における波の干渉」です。音を2つの経路に分け、その経路差を変化させることで生じる干渉現象を理解し、波長や振動数を求めることが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の干渉(特に弱め合い)の条件
  2. クインケ管の構造と経路差の関係
  3. 隣り合う弱め合い(または強め合い)点間の経路差の変化
  4. 波の基本式 \(v = f\lambda\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. C側の管を動かした距離と、実際の音の経路長の変化の関係を正しく把握する。
  2. 「音が小さくなる」という弱め合いの条件が繰り返し観測されることから、経路差の変化と波長の関係式を立てる。
  3. 上記の関係式から、音の波長 \(\lambda\) を求める。
  4. 波の基本式 \(v = f\lambda\) を用いて、音の振動数 \(f\) を計算する。

思考の道筋とポイント
クインケ管は、入口Aで入った音を、固定された上側経路(B)と長さを変えられる下側経路(C)の2つに分け、出口Dで再び合流させる装置です。2つの経路を通ってきた音波が干渉し、経路差によって音が強まったり弱まったりします。
この問題の最大のポイントは、C側の管を距離 \(x\) だけ動かしたとき、C側を通る音の経路長は、U字管を行って戻るため \(2x\) だけ変化することです。
そして、「10cm動かすごとに音が小さくなった」という記述は、ある弱め合いの状態から、管を動かして「次に」弱め合いの状態になるまでの移動距離が10cmであることを意味します。隣り合う弱め合いの状態の間では、経路差がちょうど1波長分 \(\lambda\) 変化するという関係を使うことが、問題を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • クインケ管の経路差の変化: C側の管を距離 \(x\) だけ動かすと、C側経路の長さは \(2x\) 変化します。これがそのまま2つの波の経路差の変化量 \(\Delta L\) となります。
    $$ \Delta L = 2x $$
  • 干渉条件の繰り返し:
    • ある弱め合いの状態から、管を動かして次に弱め合いが観測されるとき、2つの波の経路差はちょうど1波長 \(\lambda\) だけ変化しています。
    • したがって、隣り合う弱め合い点間の経路差の変化は \(\Delta L = \lambda\) となります。
  • 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、以下の関係が成り立ちます。
    $$ v = f\lambda $$

具体的な解説と立式
この問題では、C側の管を動かすことで2つの音波の経路差を変化させます。
C側の管を動かした距離を \(x\) とします。音はC側のU字管部分を往復するため、C側経路の長さの変化は \(2x\) となります。これが経路差の変化量 \(\Delta L\) に相当します。
$$ \Delta L = 2x \quad \cdots ① $$
問題文より、「10cm動かすごとにDで聞こえる音が小さくなった」とあります。これは、ある弱め合いの状態から、次に弱め合いの状態になるまでに、C側の管を \(x = 10 \, \text{cm}\) 動かしたことを意味します。
隣り合う弱め合いの点での経路差の差は、ちょうど1波長 \(\lambda\) に等しいという物理法則があります。
$$ \Delta L = \lambda \quad \cdots ② $$
式①と②より、波長 \(\lambda\) を求めることができます。
次に、音の振動数 \(f\) は、波の基本式を用いて求めます。
$$ v = f\lambda \quad \cdots ③ $$
ここで、音速 \(v = 340 \, \text{m/s}\) が与えられています。

使用した物理公式

  • クインケ管の経路差の変化: \(\Delta L = 2x\)
  • 隣り合う弱め合い点間の経路差の変化: \(\Delta L = \lambda\)
  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
計算過程

1. 波長 \(\lambda\) の計算
問題文から、隣り合う弱め合い点までに管を動かした距離は \(x = 10 \, \text{cm}\) です。
このときの経路差の変化 \(\Delta L\) は、式①より、
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 2x \\[2.0ex]&= 2 \times 10 \, \text{cm} \\[2.0ex]&= 20 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
この経路差の変化 \(\Delta L\) が波長 \(\lambda\) に等しい(式②)ので、
$$ \lambda = 20 \, \text{cm} $$
となります。

2. 振動数 \(f\) の計算
波の基本式 \(v = f\lambda\) を \(f\) について解くと、\(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) となります。
計算を行う際には、単位をSI単位系(メートル、秒)に統一します。

  • 音速: \(v = 340 \, \text{m/s}\)
  • 波長: \(\lambda = 20 \, \text{cm} = 0.20 \, \text{m}\)

これらの値を代入して \(f\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{v}{\lambda} \\[2.0ex]&= \frac{340}{0.20} \\[2.0ex]&= \frac{3400}{2} \\[2.0ex]&= 1700 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字を2桁で表すと、\(1.7 \times 10^3 \, \text{Hz}\) となります。

計算方法の平易な説明

この問題は、クインケ管という装置を使った音の干渉の実験です。

  1. 道のりの変化を考える: Cの管を \(10 \, \text{cm}\) スライドさせると、音はU字の部分を行って帰ってくるので、C側を通る音の道のりは \(10 \, \text{cm} \times 2 = 20 \, \text{cm}\) 長くなります。
  2. 波長を見つける: 「音が小さくなる」という現象が、管を \(10 \, \text{cm}\) 動かすたびに(つまり、道のりの差が \(20 \, \text{cm}\) 変わるたびに)起こります。波の世界では、「ある打ち消し合い」から「次の打ち消し合い」までの道のりの差の変化は、ちょうど「波1つ分の長さ(波長)」に相当します。したがって、音の波長は \(20 \, \text{cm}\) であることがわかります。
  3. 振動数を計算する: 振動数は「速さ ÷ 波長」という公式で求められます。計算するときは単位を揃えるのがルールです。
    • 速さ: \(340 \, \text{m/s}\)
    • 波長: \(20 \, \text{cm} = 0.2 \, \text{m}\)

    よって、振動数は \(340 \div 0.2 = 1700 \, \text{Hz}\) となります。これは \(1.7 \times 10^3 \, \text{Hz}\) と同じです。

解答 20cm, 1.7×10³Hz

例題

例題52 音波の屈折

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の屈折」です。音が空気中から海水中に伝わる際に、波の速さや波長がどのように変化するか、またそれに伴い波面がどう見えるかを問う問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v = f\lambda\) という関係が成り立ちます。
  2. 屈折における不変量: 波がある媒質から別の媒質へ進む(屈折する)とき、波の速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) は変化しますが、振動数 \(f\) は変化しません。振動数は波の発生源によって決まる固有の値だからです。
  3. 波面と波長: 波の山(または谷)を連ねた面を波面といい、隣り合う波面の間隔が波長 \(\lambda\) に相当します。
  4. 屈折の法則: 波は、伝わる速さが速い媒質中では波長が長くなり、遅い媒質中では波長が短くなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 波長の計算では、屈折しても振動数は変わらないという性質を利用します。波の基本式 \(\lambda = v/f\) に、各媒質での音速と共通の振動数を代入して、それぞれの波長を求めます。
  2. 波面の様子の判断では、計算した波長の大小関係を考えます。波面の間隔は波長に対応するため、海水中の波面の間隔が空気中と比べて広いか狭いかを確認し、正しい図を選択します。

問 波長と波面の様子の選択

思考の道筋とポイント
この問題は、(A)空気中と海水中の波長をそれぞれ計算するパートと、(B)屈折の様子を表す正しい図を選ぶパートの2つから構成されています。
(A)の波長の計算では、波が異なる媒質に進む際に「振動数は変化しない」という大原則が鍵となります。この不変量である振動数と、各媒質で与えられている音速を使って、波の基本式 \(v=f\lambda\) から波長を求めます。
(B)の図の選択では、波面の間隔が波長を表すことを理解しているかがポイントです。(A)で計算した波長の大小関係が、波面の間隔の広さ・狭さとして正しく描かれている図を選びます。
この設問における重要なポイント

  • 波が屈折するとき、振動数 \(f\) は一定である。
  • 波の基本式は \(v=f\lambda\)。
  • 波面の間隔は波長 \(\lambda\) を表す。
  • 波の速さ \(v\) が速い媒質ほど、波長 \(\lambda\) は長くなる。

具体的な解説と立式
(A) 波長の計算
音の振動数 \(f = 680 \, \text{Hz}\) は、空気中でも海水中でも同じです。
空気中での音速を \(v_{\text{空気}} = 340 \, \text{m/s}\)、波長を \(\lambda_{\text{空気}}\) とします。
海水中での音速を \(v_{\text{海水}} = 1530 \, \text{m/s}\)、波長を \(\lambda_{\text{海水}}\) とします。

波の基本式 \(v=f\lambda\) を波長について解くと \(\lambda = \displaystyle\frac{v}{f}\) となります。
これを用いて、各媒質での波長を計算します。

  • 空気中の波長:
    $$ \lambda_{\text{空気}} = \frac{v_{\text{空気}}}{f} \quad \cdots ① $$
  • 海水中の波長:
    $$ \lambda_{\text{海水}} = \frac{v_{\text{海水}}}{f} \quad \cdots ② $$

(B) 波面の様子の選択
(A)で計算した波長の大小関係 \(\lambda_{\text{空気}}\) と \(\lambda_{\text{海水}}\) を比較します。波面の間隔は波長に等しいので、波長の長い方の媒質で波面の間隔が広くなっている図が正しいものとなります。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

波長の計算:
式①に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_{\text{空気}} &= \frac{340}{680} \\[2.0ex]&= 0.500 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
式②に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_{\text{海水}} &= \frac{1530}{680} \\[2.0ex]&= 2.25 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$

波面の様子の選択:
計算結果より、\(\lambda_{\text{空気}} = 0.500 \, \text{m}\)、\(\lambda_{\text{海水}} = 2.25 \, \text{m}\) なので、\(\lambda_{\text{空気}} < \lambda_{\text{海水}}\) です。
これは、海水中の波面の間隔が、空気中の波面の間隔よりも広いことを意味します。
図(ア)と(イ)を比較すると、海水中の波面の間隔が広くなっているのは(ア)です。

計算方法の平易な説明

波長の計算:
音の高さ(振動数)は、空気中でも海中でも変わりません。波の速さは「振動数 × 波長」なので、波長は「速さ ÷ 振動数」で計算できます。

  • 空気中: \(340 \div 680 = 0.5\) m
  • 海水中: \(1530 \div 680 = 2.25\) m

図の選択:
波の図に描かれている線の間隔は「波長」のことです。計算結果から、海水中の波長(2.25m)は空気中の波長(0.5m)より長いことがわかりました。したがって、海水側で線の間隔が広くなっている図(ア)が正解です。

結論と吟味

空気中の波長は \(0.500 \, \text{m}\)、海水中の波長は \(2.25 \, \text{m}\) です。また、正しい波面の様子は(ア)です。
音速が速い媒質(海水)ほど波長が長くなるという計算結果、およびそれを反映して波面の間隔が広がるという図の解釈は、波の屈折の性質として完全に一致しており、妥当な結論です。

解答 空気中の波長: \(0.500 \, \text{m}\), 海水中の波長: \(2.25 \, \text{m}\), 正しい波面: (ア)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の屈折における不変量と変化量
    • 核心: 波がある媒質から別の媒質へ進む「屈折」という現象において、何が変わり、何が変わらないのかを明確に理解していることが核心です。
    • 理解のポイント:
      • 変わらないもの(不変量): 振動数 \(f\)。波の振動数は、その波を発生させた波源によって決まる固有の値です。波が伝わる途中で媒質が変わっても、波源が同じである限り振動数は変化しません。これは、媒質の境界で波が「ちぎれたり」「新しく生まれたり」しないために、単位時間あたりに境界を通過する波の数が同じでなければならない、と考えると理解できます。
      • 変わるもの(変化量): 速さ \(v\)波長 \(\lambda\)。これらは波が伝わる媒質の性質によって決まります。
      • 関係性: 変わらない \(f\) を軸として、波の基本式 \(v=f\lambda\) から、速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) は比例関係にあることがわかります。つまり、速い媒質ほど波長は長くなり、遅い媒質ほど波長は短くなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の屈折: 光が空気中から水やガラスに進む問題。考え方は音波と全く同じです。光の場合、屈折の法則は入射角・屈折角と速さ(または波長、屈折率)の関係を示す法則 \( \displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} = n_{12} \) として、より定量的に扱われます。
    • 水面波の屈折: 水槽の深いところから浅いところへ水面波が進む問題。水面波は、水深が深いほど速く伝わる性質があります。したがって、深いところでは波長が長く、浅いところでは波長が短くなります。
    • ドップラー効果との組み合わせ: 観測者が動いていたり、音源が動いていたりする状況で、さらに屈折が起こる問題。まずドップラー効果で観測される振動数を求め、その振動数が屈折後も一定であるとして、屈折後の波長などを計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「媒質が変わる」状況の特定: 「空気中から水中へ」「ガラスから空気中へ」など、波が異なる媒質間を移動する記述を見つけたら、それは「屈折」の問題であると判断します。
    2. 不変量(振動数)の確認: 問題文で与えられた振動数は、屈折の前後で共通して使える最も重要な値であると認識します。
    3. 波の基本式 \(v=f\lambda\) の準備: この式が、速さ・振動数・波長の関係を計算する上での中心的なツールとなります。
    4. 波面と波長の対応: 図が与えられた場合、「波面の間隔=波長」という対応関係を思い出します。速い媒質では波面の間隔は広く、遅い媒質では狭くなる、という視覚的な特徴を捉えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 振動数が変化すると勘違いする:
    • 誤解: 媒質が変わると、速さと同様に振動数も変化すると考えてしまう。
    • 対策: 「振動数は波源で決まる」という原則を徹底します。ギターの弦を弾いたら、その音は空気中でも水中でも同じ「ド」の音(同じ振動数)に聞こえる、という具体的なイメージを持つと忘れにくくなります。
  • 速さと波長の関係の混同:
    • 誤解: 速い媒質なのに波長が短くなる、あるいはその逆、と考えてしまう。
    • 対策: \(v=f\lambda\) の式で \(f\) が一定なので、\(v\) と \(\lambda\) は単純な比例関係にあることを確認します。「速い → 波長も長い(大股で進むイメージ)」「遅い → 波長も短い(小股で進むイメージ)」と覚えます。
  • 波面と波の進行方向の混同:
    • 誤解: 図に描かれている波面そのものが波の進行方向だと勘違いする。
    • 対策: 「波面」と「波の進行方向(射線)」は常に垂直である、という基本を思い出します。波面は波の「山の連なり」であり、波は波面に垂直な方向に進んでいきます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(v=f\lambda\) (波の基本式):
    • 選定理由: この問題は、波の3つの基本要素である速さ、振動数、波長の関係を問うており、この公式はそれらを結びつける唯一の定義式です。
    • 適用根拠: この公式は、波の速さ \(v\) が「1周期 \(T\) の間に波長 \(\lambda\) だけ進む」という定義 \(v = \lambda/T\) と、振動数と周期の関係 \(f=1/T\) から導かれます。物理的な意味は、「速さ = (1波の長さ) × (1秒間に送り出す波の数)」となり、波の運動を記述する最も基本的な関係です。
  • 屈折の法則(\(f=\text{一定}\)):
    • 選定理由: 異なる媒質間での波の振る舞いを記述するために不可欠な法則です。この法則があるからこそ、波の基本式を各媒質で適用し、関係性を議論することができます。
    • 適用根拠: 媒質の境界において、波が滑らかにつながっている(位相が連続である)という物理的な要請に基づいています。もし振動数が変わってしまうと、境界で波が途切れたり、無理な形で重なったりしてしまいます。単位時間あたりに境界に到達する波の数と、境界から出ていく波の数が等しくなければならない、という考え方がその根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単純な割り算のミス: \(340/680\) や \(1530/680\) といった計算は、焦るとミスをしやすいです。\(340/680 = 34/68 = 1/2 = 0.5\) のように、段階的に約分を行うと確実です。\(1530/680 = 153/68\) は少し難しいですが、\(153 = 9 \times 17\), \(68 = 4 \times 17\) に気づけば \(9/4 = 2.25\) と計算できます。気づかない場合は筆算を丁寧に行います。
  • 大小関係の判断: 計算結果が出たら、問題で与えられた音速の大小関係(\(v_{\text{空気}} < v_{\text{海水}}\))と、計算で得られた波長の大小関係(\(\lambda_{\text{空気}} < \lambda_{\text{海水}}\))が一致しているかを確認します。このチェックで、計算ミスや公式の適用の誤りに気づくことができます。
  • 図の選択: 図を選ぶ際には、計算結果(海水中の波長が長い)と図の見た目(海水側で波面の間隔が広い)が一致しているかを慎重に確認します。思い込みで選ばず、論理的に判断します。

例題53 音波の干渉

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の干渉」です。2つの波源から出た波が、ある点で重なり合うときに強め合ったり弱め合ったりする現象について、その条件を理解し、計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の干渉: 2つ以上の波が同じ場所で重なり合うとき、その点の変位は各波の変位の和になるという「重ね合わせの原理」によって、波が強まったり弱まったりする現象です。
  2. 波源の位相: 2つの波源が山と山、谷と谷を同時に出す場合を「同位相」、一方が山を出すときにもう一方が谷を出す場合を「逆位相」といいます。干渉の条件は、波源の位相によって変わります。
  3. 経路差: 2つの波源から観測点までの距離の差。この経路差が、波が重なり合うときの位相差を決定します。
  4. 干渉条件(同位相の場合):
    • 強め合い(音が大きく聞こえる): 経路差が波長の整数倍 (\(m\lambda\))。これは、半波長の偶数倍 (\(\frac{\lambda}{2} \times 2m\)) とも表現できます。
    • 弱め合い(音が小さく聞こえる): 経路差が波長の半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\))。これは、半波長の奇数倍 (\(\frac{\lambda}{2} \times (2m+1)\)) とも表現できます。
  5. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた音速と振動数から、波の基本式を用いて音波の波長を計算します。
  2. (2)と(3)では、まず2つのスピーカーから観測点までの経路差を計算します。
  3. 次に、その経路差が(1)で求めた波長の整数倍になるか、半整数倍になるかを判定し、干渉の条件と照らし合わせて音が大きく聞こえるか小さく聞こえるかを判断します。

問(1)

思考の道筋とポイント
音波の波長 \(\lambda\) を求める問題です。問題文に音速 \(v\) と振動数 \(f\) が与えられているので、波の基本式 \(v=f\lambda\) を使って計算します。この波長は、後の設問で干渉条件を判断するための基準となる重要な値です。
この設問における重要なポイント

  • 波の速さ、振動数、波長の関係式 \(v=f\lambda\) を正しく使うこと。

具体的な解説と立式
音速を \(v\)、振動数を \(f\)、波長を \(\lambda\) とすると、波の基本式は以下の通りです。
$$ v = f\lambda $$
この式を波長 \(\lambda\) について解くと、
$$ \lambda = \frac{v}{f} $$
となります。この式に与えられた値を代入します。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

与えられた値 \(v = 340 \, \text{m/s}\), \(f = 680 \, \text{Hz}\) を公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{680} \\[2.0ex]&= 0.500 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

波の「速さ」は、「1秒間に送り出される波の数(振動数)」と「波1つ分の長さ(波長)」を掛け合わせたものです。今回は速さと振動数がわかっているので、波長を求めるには割り算をします。\(340 \div 680 = 0.5\) なので、波長は0.500mです。

結論と吟味

音波の波長は \(0.500 \, \text{m}\) です。基本的な公式の適用であり、問題ありません。

解答 (1) \(0.500 \, \text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
観測者Oの位置がAから2.0m、Bから3.0mのときに、音が大きく聞こえるか小さく聞こえるかを判断する問題です。2つのスピーカーから観測点Oに到達する波が強め合うか弱め合うかは、2つの波源からの「経路差」によって決まります。
この設問における重要なポイント

  • 2つの波源から観測点までの距離の差(経路差)を計算する。
  • 波源が同位相の場合、経路差が波長の整数倍 (\(m\lambda\)) なら強め合い(大)、半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\)) なら弱め合い(小)となる。

具体的な解説と立式
2つのスピーカーA, Bから観測点Oまでの経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$ \Delta L = |AO – BO| $$
スピーカーA, Bは同位相で音を出しているので、この経路差 \(\Delta L\) が波長 \(\lambda\) の整数倍 (\(m=0, 1, 2, \dots\)) であれば、波は強め合って音は大きく聞こえます。
$$ \Delta L = m\lambda \quad (\text{強め合いの条件}) $$

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(同位相): \(\Delta L = m\lambda\) (強め合い)
計算過程

まず、経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= |2.0 – 3.0| \\[2.0ex]&= 1.0 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
次に、この経路差が(1)で求めた波長 \(\lambda = 0.500 \, \text{m}\) の何倍になっているかを調べます。
$$ \frac{\Delta L}{\lambda} = \frac{1.0}{0.500} = 2 $$
経路差は \(\Delta L = 2\lambda\) となり、波長の整数倍(\(m=2\))です。これは強め合いの条件を満たします。

計算方法の平易な説明

スピーカーAから観測者までの距離(2.0m)と、Bからの距離(3.0m)の差を計算すると、\(1.0\)mになります。この「距離の差」が、波長(0.5m)のちょうど2倍になっています。このように、距離の差が波長のぴったり整数倍になるとき、2つの波は山と山、谷と谷が重なり合って強め合い、音は大きく聞こえます。

結論と吟味

経路差が波長の2倍であるため、2つの音波は強め合います。したがって、音は大きく聞こえます。

解答 (2) 大きく聞こえる

問(3)

思考の道筋とポイント
観測者Oの位置が変わった場合の問題です。考え方は(2)と全く同じで、新しい位置における経路差を計算し、それが波長の整数倍か半整数倍かを調べることで干渉の条件を判断します。
この設問における重要なポイント

  • (2)と同様に、経路差を計算し、干渉条件に当てはめる。

具体的な解説と立式
観測点Oの新しい位置について、経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$ \Delta L = |AO – BO| $$
この経路差が波長 \(\lambda\) の整数倍であれば強め合い、半整数倍であれば弱め合いとなります。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(同位相): \(\Delta L = m\lambda\) (強め合い)
計算過程

まず、経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= |5.5 – 4.0| \\[2.0ex]&= 1.5 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
次に、この経路差が波長 \(\lambda = 0.500 \, \text{m}\) の何倍になっているかを調べます。
$$ \frac{\Delta L}{\lambda} = \frac{1.5}{0.500} = 3 $$
経路差は \(\Delta L = 3\lambda\) となり、波長の整数倍(\(m=3\))です。これも強め合いの条件を満たします。

計算方法の平易な説明

今度の位置での距離の差を計算すると、\(5.5 – 4.0 = 1.5\)mです。この距離の差は、波長(0.5m)のちょうど3倍になっています。これも波長のぴったり整数倍なので、(2)と同じく波は強め合い、音は大きく聞こえます。

結論と吟味

経路差が波長の3倍であるため、2つの音波は強め合います。したがって、この位置でも音は大きく聞こえます。

解答 (3) 大きく聞こえる

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の干渉条件
    • 核心: 2つの波源から出た波が、ある点で強め合うか弱め合うかを決定するのは、2つの波源からの経路差波長の関係である、という点が核心です。
    • 理解のポイント:
      • 経路差: 2つの波が観測点に到達するまでに進む距離の差。この差の分だけ、一方の波は他方の波より多く振動することになります。
      • 強め合い(音が大きい): 経路差が波長の整数倍(\(0, \lambda, 2\lambda, \dots\))のとき。これは、観測点に到達した時点で、2つの波の山と山、谷と谷がぴったり重なり合うことを意味します。
      • 弱め合い(音が小さい): 経路差が波長の半整数倍(\(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\))のとき。これは、観測点に到達した時点で、一方の波の山ともう一方の波の谷が重なり合い、互いに打ち消し合うことを意味します。
      • 波源の位相: この問題では「同位相」が前提です。もし波源が「逆位相」(一方が山を出すときにもう一方が谷を出す)の場合は、強め合いと弱め合いの条件がすべて逆になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ヤングの実験(光の干渉): 2つのスリットを通過した光がスクリーン上で干渉縞を作る現象。考え方は音波の干渉と全く同じで、経路差によって明線(強め合い)と暗線(弱め合い)の位置が決まります。
    • 薄膜による光の干渉: シャボン玉や水に浮いた油膜が色づいて見える現象。膜の表面で反射する光と、裏面で反射する光の経路差(と位相のずれ)によって、特定の色(波長)の光が強め合ったり弱め合ったりするために起こります。
    • 定常波: 進行方向が逆向きの同じ波が重なり合うことで生じる、振動しない「節」と大きく振動する「腹」を持つ波。これも干渉の一種であり、節は弱め合い、腹は強め合いが常に起こっている点と解釈できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の数と位相: まず、波源が2つ以上あるかを確認します。そして、それらの波源が「同位相」か「逆位相」か、問題文から必ず読み取ります。これが干渉条件を決定する最初の分岐点です。
    2. 波長の計算: 干渉条件を判断するには、基準となる波長 \(\lambda\) が不可欠です。問題に \(v\) と \(f\) が与えられていれば、まず \( \lambda = v/f \) で波長を計算します。
    3. 経路差の計算: 観測点と各波源との距離を求め、その差(の絶対値)を計算します。
    4. 経路差と波長の関係を調べる: 計算した経路差が、波長の何倍になっているかを計算します(\(\text{経路差} \div \lambda\))。その値が整数なら強め合い、半整数(x.5の形)なら弱め合い、と判断します(同位相の場合)。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 強め合いと弱め合いの条件の混同:
    • 誤解: 経路差が整数倍のときに弱め合い、半整数倍のときに強め合い、と逆に覚えてしまう。
    • 対策: 波の形をイメージします。経路差が \(1\lambda\) というのは、片方の波がもう片方よりちょうど1波分多く進んだ、という意味です。これなら、もともと同じタイミング(同位相)で出発した波は、到着点でも山と山、谷と谷が揃うはずです。このイメージで「整数倍=強め合い」を定着させます。
  • 波源が逆位相の場合の条件:
    • 誤解: 波源が逆位相で与えられているのに、同位相の干渉条件を適用してしまう。
    • 対策: 問題を解き始める前に、必ず「位相」の条件を問題文で確認し、メモする習慣をつけます。「逆位相なら条件は逆!」と強く意識します。
  • 半波長での条件判断:
    • 誤解: 干渉条件を「半波長 \(\lambda/2\) の偶数倍/奇数倍」で考える際に混乱する。
    • 対策: どちらか一方の覚え方(「波長 \(\lambda\) の整数倍/半整数倍」)に統一するのが安全です。もし半波長で考えるなら、「強め合い=山と山が揃う=位相差 \(2\pi \times m\)=経路差 \(m\lambda\)=半波長の偶数倍」、「弱め合い=山と谷がずれる=位相差 \(\pi \times (2m+1)\)=経路差 \((m+1/2)\lambda\)=半波長の奇数倍」という一連の対応関係をしっかり理解しておく必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 干渉条件 (\(\Delta L = m\lambda\) 等):
    • 選定理由: 2つの波の重ね合わせの結果(大きく聞こえるか、小さく聞こえるか)を判断するために、この公式は不可欠です。問題文に「2つのスピーカー」「大きく聞こえるか」といったキーワードがあることから、干渉の問題であると判断し、この条件式を選択します。
    • 適用根拠: この公式は、波の重ね合わせの原理に基づいています。2つの波が観測点で重なるときの位相差は、経路差 \(\Delta L\) に比例します(位相差 \(= 2\pi \frac{\Delta L}{\lambda}\))。この位相差が \(2\pi\) の整数倍(つまり、波がぴったり重なる)のときに強め合い、\(\pi\) の奇数倍(つまり、波がちょうど逆向きに重なる)のときに弱め合います。この位相差の条件を経路差の条件に書き直したものが、\(\Delta L = m\lambda\)(強め合い)と \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\)(弱め合い)です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 波長の計算: (1)で波長を計算しますが、この値が(2), (3)の判断の基礎となります。ここで計算ミスをすると、以降の設問がすべて間違ってしまいます。\(v=f\lambda\) の適用と、割り算を慎重に行います。
  • 経路差の計算: 距離の引き算は単純ですが、焦ると計算ミスをします。特に小数が含まれる場合は注意が必要です。
  • 経路差と波長の比較: 「経路差 ÷ 波長」の計算を正確に行います。例えば(3)では \(1.5 \div 0.500 = 3\) となります。この割り算の結果が、整数か、あるいは「〇.5」の形になるかを確認することが、干渉を判断する最終ステップです。
  • 問題文の数値を丁寧に拾う: Aからの距離とBからの距離を取り違えないように、問題文をよく読み、どの数値がどの距離に対応するかを正確に把握します。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]

PVアクセスランキング にほんブログ村