「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 16】Step3

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239 波の重ね合わせ

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、x軸上の2点に置かれた同位相の波源から、逆向きに進む2つの正弦波が重なり合うことで生じる定在波について、数式を用いて分析する問題です。波の式を正しく立て、和積の公式を用いて合成波の式を導出し、その式から定在波の性質(特に節の位置)を読み解く能力が問われます。

与えられた条件
  • 波源O: 位置\(x=0\)、振幅\(A\)、振動数\(f\)、単振動は同位相。
  • 波源Q: 位置\(x=2L\)、振幅\(A\)、振動数\(f\)、単振動は同位相。
  • 波の速さ: \(v\)
  • 波源Oからの波(波Aとする): x軸正の向きに進む。
  • 波源Qからの波(波Bとする): x軸負の向きに進む。
  • 点Pの位置: \(x\)
  • 波源Oから点Pへの波の変位の式: \(y_{PO} = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\)
  • 使用する公式: 和積の公式 \( \sin A + \sin B = 2 \sin \displaystyle\frac{A+B}{2} \cos \displaystyle\frac{A-B}{2} \)
  • 特別な条件: \(v=fL\)
問われていること
  • ① 波の波長\(\lambda\)。
  • ② 波源Qから点Pへの波の変位の式 \(y_{PQ}\)。
  • ③ 点Pにおける合成波の変位の式 \(y_P\)。
  • ④ \(v=fL\)のとき、OQ間に存在する、時刻によらず変位0の位置(節)の個数。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「数式による波の重ね合わせと定在波の解析」です。波の式を立て、三角関数の公式を駆使して合成波の式を導き、物理的な意味を読み解くという、波動分野の数式処理に焦点を当てた問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係式 \(v=f\lambda\)。
  2. 波の変位を表す式: 原点での振動が \(y(0,t) = A \sin(2\pi f t)\) のとき、位置\(x\)での変位は \(y(x,t) = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\) と表される。
  3. 重ね合わせの原理: 合成波の変位は、各波の変位の和で与えられる (\(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\))。
  4. 三角関数の和積の公式: 2つのsinの和を、sinとcosの積の形に変換する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ①では、波の基本式を用いて波長\(\lambda\)を\(v\)と\(f\)で表します。
  2. ②では、波源Qから出る波が点Pに到達するまでの伝播を考え、波の式を立てます。
  3. ③では、①と②で求めた2つの波の式を足し合わせ、和積の公式を適用して式を整理します。
  4. ④では、③で求めた合成波の式が、時刻\(t\)によらず常に0になる条件(節の条件)を考え、与えられた\(v=fL\)という関係を使って、条件を満たす\(x\)の個数を数えます。

① 波の波長

思考の道筋とポイント
波長\(\lambda\)を、与えられている速さ\(v\)と振動数\(f\)を用いて表す問題です。波の最も基本的な関係式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 波の基本式 \(v=f\lambda\) を正しく覚えていること。

具体的な解説と立式
波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、以下の関係が成り立ちます。
$$ v = f\lambda $$
この式を\(\lambda\)について解きます。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{v}{f}
\end{aligned}
$$

結論と吟味

波長は \(\displaystyle\frac{v}{f}\) です。これは波の基本法則そのものです。

解答 ① \(\displaystyle\frac{v}{f}\)

② 波源Qからの波の変位

思考の道筋とポイント
波源Q(\(x=2L\))から出てx軸負の向きに進む波が、点P(\(x\))に到達したときの変位の式を立てる問題です。波源での振動の様子と、そこから点Pまでの伝播にかかる時間を考える必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 波源Qでの振動の式: 波源Qは波源Oと「同位相」で振動するので、その変位は \(y_Q(t) = A \sin(2\pi f t)\) と表せます。
  • 伝播時間: 波が波源Q(\(2L\))から点P(\(x\))まで進むのにかかる時間は、距離(\(2L-x\))を速さ\(v\)で割った \(\displaystyle\frac{2L-x}{v}\) です。
  • 時刻のずれ: 点Pでの振動は、波源Qでの振動よりも伝播時間だけ遅れます。つまり、時刻\(t\)の点Pの変位は、時刻 \(t – \displaystyle\frac{2L-x}{v}\) の波源Qの変位と同じです。

具体的な解説と立式
波源Qでの時刻\(t’\)における変位は \(y_Q(t’) = A \sin(2\pi f t’)\) です。
点Pでの時刻\(t\)における変位は、波源Qでの時刻 \(t’ = t – \displaystyle\frac{2L-x}{v}\) の変位に等しいので、
$$
\begin{aligned}
y_{PQ} &= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
この式を変形すると、
$$
\begin{aligned}
y_{PQ} &= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L}{v} + \frac{x}{v} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • 波の変位を表す式
計算過程

上記の立式がそのまま計算過程となります。

結論と吟味

波源Qからの波による点Pの変位は \(y_{PQ} = A \sin 2\pi f \left( t + \displaystyle\frac{x-2L}{v} \right)\) です。

解答 ② \(A \sin 2\pi f \left( t + \displaystyle\frac{x-2L}{v} \right)\)

③ 合成波の変位

思考の道筋とポイント
点Pにおける合成波の変位\(y_P\)を求める問題です。重ね合わせの原理に従い、\(y_{PO}\)と\(y_{PQ}\)を足し合わせ、指定された和積の公式を用いて式を整理します。
この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理: \(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\)
  • 和積の公式の適用: \(A\)と\(B\)に相当する部分を正しく見抜き、公式を適用します。
    • \(A = 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\)
    • \(B = 2\pi f(t + \displaystyle\frac{x-2L}{v})\)

具体的な解説と立式
重ね合わせの原理より、
$$
\begin{aligned}
y_P &= y_{PO} + y_{PQ} \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) + A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、和積の公式 \( \sin A + \sin B = 2 \sin \displaystyle\frac{A+B}{2} \cos \displaystyle\frac{A-B}{2} \) を用いるために、\(\displaystyle\frac{A+B}{2}\)と\(\displaystyle\frac{A-B}{2}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{A+B}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) + 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= \pi f \left( 2t – \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]
&= 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{A-B}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) – 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= \pi f \left( -\frac{2x}{v} + \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]
&= 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
これらの結果を公式に代入します。

使用した物理公式

  • 重ね合わせの原理
  • 三角関数の和積の公式
計算過程

$$
\begin{aligned}
y_P &= A \left\{ \sin \left( 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) \right) + \sin \left( 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right) \right\} \\[2.0ex]
&= A \left\{ 2 \sin \left( 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \right) \cos \left( 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) \right) \right\} \\[2.0ex]
&= 2A \sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$

結論と吟味

合成波の変位は \(y_P = 2A \sin 2\pi f \left( t – \displaystyle\frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right)\) です。この式は、時間とともに振動する部分(sin項)と、場所によって振幅を決める部分(cos項)に分離しており、定在波の典型的な式形となっています。この形が模範解答と一致します。

解答 ③ \(2A \sin 2\pi f \left( t – \displaystyle\frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right)\)

④ 節の個数

思考の道筋とポイント
時刻\(t\)によらず変位が0になる位置、すなわち「節」の個数を求める問題です。③で求めた合成波の式 \(y_P\) が、\(t\)の値に関わらず常に0になる条件を考えます。
この設問における重要なポイント

  • 節の条件: \(y_P\) の式のうち、時間\(t\)を含まない部分が0になれば、\(y_P\)は常に0になります。つまり、\(\cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) = 0\) が節の条件です。
  • cosが0になる条件: \(\cos \theta = 0\) となるのは、\(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} + m\pi = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\pi\) (\(m\)は整数)のときです。
  • 特別な条件の適用: \(v=fL\) という条件を代入して、式を\(x\)について解きます。

具体的な解説と立式
節の条件は、
$$ \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) = 0 $$
よって、cosの中身が\(\displaystyle\frac{\pi}{2}, \displaystyle\frac{3\pi}{2}, \dots\)となればよいので、整数\(m\)を用いて、
$$ 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) = \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi $$
ここで、与えられた条件 \(v=fL\) を代入します。
$$ 2\pi f \left( \frac{L-x}{fL} \right) = \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi $$

使用した物理公式

  • 定在波の節の条件
計算過程

上記で立てた式を\(x\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2\pi}{L}(L-x) &= \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi
\end{aligned}
$$
両辺を\(\pi\)で割ると、
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{L}(L-x) &= m + \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
この式を\(x\)について整理します。
$$
\begin{aligned}
2 – \frac{2x}{L} &= m + \frac{1}{2} \\[2.0ex]
\frac{2x}{L} &= 2 – m – \frac{1}{2} \\[2.0ex]
\frac{2x}{L} &= \frac{3}{2} – m \\[2.0ex]
x &= \frac{L}{2} \left( \frac{3}{2} – m \right) \\[2.0ex]
x &= \left( \frac{3}{4} – \frac{m}{2} \right)L
\end{aligned}
$$
この式で、\(0 \le x \le 2L\) を満たす整数\(m\)を探します。

  • \(m=0 \rightarrow x = \displaystyle\frac{3}{4}L\)
  • \(m=1 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} – \displaystyle\frac{1}{2})L = \displaystyle\frac{1}{4}L\)
  • \(m=2 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} – 1)L = -\displaystyle\frac{1}{4}L < 0\) (不適)
  • \(m=-1 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + \displaystyle\frac{1}{2})L = \displaystyle\frac{5}{4}L\)
  • \(m=-2 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + 1)L = \displaystyle\frac{7}{4}L\)
  • \(m=-3 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + \displaystyle\frac{3}{2})L = \displaystyle\frac{9}{4}L > 2L\) (不適)

よって、条件を満たす\(x\)は \(x = \displaystyle\frac{1}{4}L, \displaystyle\frac{3}{4}L, \displaystyle\frac{5}{4}L, \displaystyle\frac{7}{4}L\) の4つです。

結論と吟味

OQ間に存在する節の個数は4個です。\(v=fL\)という条件は、\(\lambda = \displaystyle\frac{v}{f} = L\) を意味します。つまり、波源間の距離\(2L\)がちょうど2波長分に相当する場合を考えていることになります。このとき、OQ間に節が4つ存在するのは妥当な結果です。

解答 ④ 4

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の変位を表す式の立式:
    • 核心: 波動現象を数式で解析するための出発点です。波源での振動の様子(\(A \sin \omega t\))と、そこから距離\(d\)だけ離れた点への伝播時間(\(d/v\))を組み合わせて、任意の点・時刻での変位の式 \(y = A \sin \omega (t – d/v)\) を正しく立てられることが、この問題の根幹をなします。特に、進行方向(正か負か)によって、距離の扱いが変わる点に注意が必要です。
    • 理解のポイント: 「点Pの今の動きは、波源の『過去の』動きと同じ」という因果関係を理解することが、式の意味を捉える鍵です。
  • 重ね合わせの原理と和積の公式:
    • 核心: 2つの波が重なったときの合成波の変位は、それぞれの波の変位の単純な和で表されます(重ね合わせの原理)。そして、その和の形(\(\sin A + \sin B\))を、物理的に解釈しやすい積の形(\(2\sin(\dots)\cos(\dots)\))に変換するために和積の公式が用いられます。この一連の式変形が、(3)を解くための最も重要な数学的テクニックです。
    • 理解のポイント: 和積の公式によって、合成波の式が「時間\(t\)に依存する項」と「場所\(x\)に依存する項」の積に分離されます。これが、定在波が「その場で振動する波」であることを数式的に示しています。
  • 定在波の節の条件:
    • 核心: (4)で問われる「時刻によらず変位が0の位置(節)」は、合成波の式の「場所\(x\)に依存する項」がゼロになる点として求められます。この問題では、\(\cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) = 0\) がその条件式です。
    • 理解のポイント: 合成波の振幅が場所\(x\)によって \(2A \left| \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) \right|\) と変化すると解釈できます。この振幅がゼロになる点が節です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 位相が異なる波源: この問題では2つの波源が「同位相」でしたが、「逆位相」で振動する波源の問題も頻出です。その場合、一方の波の式の振幅\(A\)を\(-A\)にするか、位相に\(\pi\)を加えることで対応します。結果として、節と腹の位置が入れ替わります。
    • 反射による定在波: 固定端や自由端での反射によって生じる定在波も、入射波と反射波という2つの波の重ね合わせです。反射波の式を立てて、同様に和積の公式を適用することで、節や腹の位置を数式で求められます。
    • ビート(うなり)の数式表現: 振動数がわずかに異なる2つの波 \(y_1 = A \sin(2\pi f_1 t)\), \(y_2 = A \sin(2\pi f_2 t)\) を重ね合わせる際にも和積の公式が活躍します。合成波は「速く振動する成分」と「ゆっくり変動する成分」の積で表され、うなりの現象を数式で説明できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の情報を整理する: 波源の数、位置、振幅、振動数、そして最も重要な「位相関係(同位相か逆位相か)」を最初に確認します。
    2. 波の進行方向を明確にする: 各波源から出る波がどちらの向きに進むのかを把握し、変位の式の \(t \pm d/v\) の符号を正しく設定します。
    3. 与えられた数学公式の意味を考える: 和積の公式が与えられていれば、それは「重ね合わせた後にこの公式を使いなさい」という明確な指示です。公式の形から、最終的な式がどのような形になるかを予測しながら計算を進めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 波の式の符号ミス:
    • 誤解: x軸負の向きに進む波の式を立てる際に、\(y = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{d}{v})\) の\(d\)に負の値を代入するなどして混乱する。
    • 対策: 「時刻\(t\)の点Pの変位は、波源での時刻\(t – (\text{伝播時間})\)の変位と同じ」という原理に常に立ち返りましょう。伝播時間は必ず正の値なので、波源位置と点Pの位置関係から距離を正しく計算し、\(t\)から引く、という手順を徹底します。
  • 和積の公式の適用ミス:
    • 誤解: \(\sin\)の中身である \(2\pi f(\dots)\) の部分を、\(A, B\)と置くべきところを、\((\dots)\)の部分だけを\(A, B\)と置いてしまう。あるいは、公式の\(\sin, \cos\)や係数2を間違える。
    • 対策: 公式を正確に覚えることはもちろん、適用する際には、何が\(A\)で何が\(B\)なのかを、式の横に書き出すなどして明確にしましょう。計算過程を丁寧に書くことがミスを防ぎます。
  • 節の条件式の解き間違い:
    • 誤解: \(\cos \theta = 0\) の解を \(\theta = m\pi\) や \(\theta = 2m\pi\) などと間違える。
    • 対策: \(\cos \theta = 0\) となるのは、単位円上でy軸と交わる点、すなわち \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2}, \displaystyle\frac{3\pi}{2}, \displaystyle\frac{5\pi}{2}, \dots\) です。これを一般角で表現すると \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} + m\pi\) となることを、単位円をイメージしながら確実に導けるようにしましょう。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 式の構造と物理現象の対応付け:\(y_P = \underbrace{2A \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)}_{\text{場所xで決まる振幅}} \times \underbrace{\sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right)}_{\text{時間tで決まる振動}}\)このように、数式の各部分がどのような物理的意味を持つのかを色分けしたり、書き込んだりすることで、抽象的な数式と具体的な物理現象を結びつけることができます。「振幅項」がゼロになる点が節、「振幅項」の絶対値が最大になる点が腹、と視覚的に理解できます。
    • グラフによる検算: (4)で求めた節の位置 \(x = L/4, 3L/4, \dots\) が、\(t=0\)のグラフ上で実際に節になっているかを確認します。\(t=0\)で \(y_{PO} = A\sin(-2\pi f x/v)\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi f(x-2L)/v)\) です。\(v=fL, \lambda=L\) を使うと、\(y_{PO} = A\sin(-2\pi x/L)\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi(x-2L)/L)\) となります。例えば \(x=L/4\) を代入すると、\(y_{PO} = A\sin(-\pi/2)=-A\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi(-7L/4)/L) = A\sin(-7\pi/2) = A\sin(\pi/2)=A\) となり、和は0。確かに節になっていることが確認できます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • この問題は数式がメインですが、もしグラフを描くなら、波源Oからの波と波源Qからの波を別々の線で描き、それらを合成した波をさらに別の線で描くと、重ね合わせの様子がよくわかります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 波の基本式 (\(v=f\lambda\)):
    • 選定理由: (1)で、振動数と速さという波の基本的なパラメータから、もう一つの基本パラメータである波長を求めるために必要。
    • 適用根拠: 波の速さの定義そのものです。
  • 波の変位の式 (\(y = A\sin(\dots)\)):
    • 選定理由: (2)で、空間と時間を変数とする波の振る舞いを数学的に記述するため。
    • 適用根拠: 単振動する波源から生まれる波の変位は、正弦関数(sinまたはcos)で表されるという、波動論の基本です。
  • 和積の公式:
    • 選定理由: (3)で、2つの波の変位の「和」の形を、物理的解釈がしやすい「積」の形に変形するために、問題文で指定されているから。
    • 適用根拠: 三角関数の加法定理から導かれる数学的な恒等式です。物理法則ではありませんが、波動の重ね合わせを解析する上で極めて有用なツールです。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 波長の計算:
    • 戦略: 波の基本式をそのまま使う。
    • フロー: ① \(v=f\lambda\) を思い出す → ② \(\lambda\)について解き、\(\lambda = v/f\) を得る。
  2. (2) 波の式の立式:
    • 戦略: 波源での振動と伝播時間を組み合わせて式を立てる。
    • フロー: ①波源Qでの振動の式 \(y_Q = A\sin(2\pi ft)\) を設定 → ②QからPへの伝播時間 \(\Delta t = (2L-x)/v\) を計算 → ③点Pの変位は、波源Qの \(t-\Delta t\) の時刻の変位と同じであることから、\(y_{PQ} = A\sin(2\pi f(t – (2L-x)/v))\) を立式し、整理する。
  3. (3) 合成波の式の導出:
    • 戦略: 2つの波の式を足し、和積の公式を適用する。
    • フロー: ① \(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\) を立てる → ②和積の公式のA, Bに相当する部分を特定 → ③\((A+B)/2\) と \((A-B)/2\) を慎重に計算 → ④公式に代入して積の形に整理する。
  4. (4) 節の個数の計算:
    • 戦略: 合成波の式の振幅部分が0になる条件を解く。
    • フロー: ①\(y_P\)の式のcos項が0になる条件式を立てる → ②\(\cos\theta=0\) の一般解 \(\theta = (m+1/2)\pi\) を適用 → ③与えられた条件 \(v=fL\) を代入して式を簡略化 → ④式を\(x\)について解き、\(x\)の一般式を導出 → ⑤\(0 \le x \le 2L\) の範囲を満たす整数\(m\)の個数を数える。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の多さに惑わされない: \(A, f, v, L, x, t, m\)など多くの文字が登場しますが、一つ一つの意味(定数か変数か、など)を意識し、求められているものと与えられているものを区別しながら、落ち着いて計算を進めましょう。
  • \(\pi\)の扱いに注意: 計算過程で\(\pi\)を約分し忘れる、あるいは余計な\(\pi\)を付けてしまうミスが起こりがちです。式の両辺を注意深く見比べて、正しく処理しましょう。
  • 整数\(m\)の範囲: 最後に節の個数を数える際、\(m\)が正の整数だけとは限りません。負の整数や0も考慮に入れて、与えられた空間範囲(\(0 \le x \le 2L\))を満たす全ての可能性をリストアップすることが重要です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • (4)の物理的解釈: 条件 \(v=fL\) は \(\lambda=L\) を意味します。波源O, Q間の距離は\(2L=2\lambda\)です。同位相の波源から出た波が重なるとき、波源自身は腹になります。波源間の距離が\(2\lambda\)なので、その間には腹が5つ(\(x=0, L/2, L, 3L/2, 2L\))、節が4つ存在することになります。この物理的な考察と、数式を解いて得られた「4個」という結果が一致するため、解答の妥当性が確認できます。
  • 式の対称性: (3)で求めた合成波の式は、中心\(x=L\)に対して対称な形(\(\cos\)の中身が\(x-L\)または\(L-x\))になっています。これは、2つの波源が対称な位置に置かれていることから予想される結果であり、式の形が物理的に妥当であることを示唆しています。
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240 波の反射と定在波

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