「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 16】Step3

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239 波の重ね合わせ

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、x軸上の2点に置かれた同位相の波源から、逆向きに進む2つの正弦波が重なり合うことで生じる定在波について、数式を用いて分析する問題です。波の式を正しく立て、和積の公式を用いて合成波の式を導出し、その式から定在波の性質(特に節の位置)を読み解く能力が問われます。

与えられた条件
  • 波源O: 位置\(x=0\)、振幅\(A\)、振動数\(f\)、単振動は同位相。
  • 波源Q: 位置\(x=2L\)、振幅\(A\)、振動数\(f\)、単振動は同位相。
  • 波の速さ: \(v\)
  • 波源Oからの波(波Aとする): x軸正の向きに進む。
  • 波源Qからの波(波Bとする): x軸負の向きに進む。
  • 点Pの位置: \(x\)
  • 波源Oから点Pへの波の変位の式: \(y_{PO} = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\)
  • 使用する公式: 和積の公式 \( \sin A + \sin B = 2 \sin \displaystyle\frac{A+B}{2} \cos \displaystyle\frac{A-B}{2} \)
  • 特別な条件: \(v=fL\)
問われていること
  • ① 波の波長\(\lambda\)。
  • ② 波源Qから点Pへの波の変位の式 \(y_{PQ}\)。
  • ③ 点Pにおける合成波の変位の式 \(y_P\)。
  • ④ \(v=fL\)のとき、OQ間に存在する、時刻によらず変位0の位置(節)の個数。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「数式による波の重ね合わせと定在波の解析」です。波の式を立て、三角関数の公式を駆使して合成波の式を導き、物理的な意味を読み解くという、波動分野の数式処理に焦点を当てた問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係式 \(v=f\lambda\)。
  2. 波の変位を表す式: 原点での振動が \(y(0,t) = A \sin(2\pi f t)\) のとき、位置\(x\)での変位は \(y(x,t) = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\) と表される。
  3. 重ね合わせの原理: 合成波の変位は、各波の変位の和で与えられる (\(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\))。
  4. 三角関数の和積の公式: 2つのsinの和を、sinとcosの積の形に変換する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ①では、波の基本式を用いて波長\(\lambda\)を\(v\)と\(f\)で表します。
  2. ②では、波源Qから出る波が点Pに到達するまでの伝播を考え、波の式を立てます。
  3. ③では、①と②で求めた2つの波の式を足し合わせ、和積の公式を適用して式を整理します。
  4. ④では、③で求めた合成波の式が、時刻\(t\)によらず常に0になる条件(節の条件)を考え、与えられた\(v=fL\)という関係を使って、条件を満たす\(x\)の個数を数えます。

① 波の波長

思考の道筋とポイント
波長\(\lambda\)を、与えられている速さ\(v\)と振動数\(f\)を用いて表す問題です。波の最も基本的な関係式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 波の基本式 \(v=f\lambda\) を正しく覚えていること。

具体的な解説と立式
波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、以下の関係が成り立ちます。
$$ v = f\lambda $$
この式を\(\lambda\)について解きます。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{v}{f}
\end{aligned}
$$

結論と吟味

波長は \(\displaystyle\frac{v}{f}\) です。これは波の基本法則そのものです。

解答 ① \(\displaystyle\frac{v}{f}\)

② 波源Qからの波の変位

思考の道筋とポイント
波源Q(\(x=2L\))から出てx軸負の向きに進む波が、点P(\(x\))に到達したときの変位の式を立てる問題です。波源での振動の様子と、そこから点Pまでの伝播にかかる時間を考える必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 波源Qでの振動の式: 波源Qは波源Oと「同位相」で振動するので、その変位は \(y_Q(t) = A \sin(2\pi f t)\) と表せます。
  • 伝播時間: 波が波源Q(\(2L\))から点P(\(x\))まで進むのにかかる時間は、距離(\(2L-x\))を速さ\(v\)で割った \(\displaystyle\frac{2L-x}{v}\) です。
  • 時刻のずれ: 点Pでの振動は、波源Qでの振動よりも伝播時間だけ遅れます。つまり、時刻\(t\)の点Pの変位は、時刻 \(t – \displaystyle\frac{2L-x}{v}\) の波源Qの変位と同じです。

具体的な解説と立式
波源Qでの時刻\(t’\)における変位は \(y_Q(t’) = A \sin(2\pi f t’)\) です。
点Pでの時刻\(t\)における変位は、波源Qでの時刻 \(t’ = t – \displaystyle\frac{2L-x}{v}\) の変位に等しいので、
$$
\begin{aligned}
y_{PQ} &= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
この式を変形すると、
$$
\begin{aligned}
y_{PQ} &= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L}{v} + \frac{x}{v} \right) \\[2.0ex]&= A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • 波の変位を表す式
計算過程

上記の立式がそのまま計算過程となります。

結論と吟味

波源Qからの波による点Pの変位は \(y_{PQ} = A \sin 2\pi f \left( t + \displaystyle\frac{x-2L}{v} \right)\) です。

解答 ② \(A \sin 2\pi f \left( t + \displaystyle\frac{x-2L}{v} \right)\)

③ 合成波の変位

思考の道筋とポイント
点Pにおける合成波の変位\(y_P\)を求める問題です。重ね合わせの原理に従い、\(y_{PO}\)と\(y_{PQ}\)を足し合わせ、指定された和積の公式を用いて式を整理します。
この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理: \(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\)
  • 和積の公式の適用: \(A\)と\(B\)に相当する部分を正しく見抜き、公式を適用します。
    • \(A = 2\pi f(t – \displaystyle\frac{x}{v})\)
    • \(B = 2\pi f(t + \displaystyle\frac{x-2L}{v})\)

具体的な解説と立式
重ね合わせの原理より、
$$
\begin{aligned}
y_P &= y_{PO} + y_{PQ} \\[2.0ex]&= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) + A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、和積の公式 \( \sin A + \sin B = 2 \sin \displaystyle\frac{A+B}{2} \cos \displaystyle\frac{A-B}{2} \) を用いるために、\(\displaystyle\frac{A+B}{2}\)と\(\displaystyle\frac{A-B}{2}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{A+B}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) + 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]&= \pi f \left( 2t – \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]&= 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{A-B}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) – 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]&= \pi f \left( -\frac{2x}{v} + \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]&= 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
これらの結果を公式に代入します。

使用した物理公式

  • 重ね合わせの原理
  • 三角関数の和積の公式
計算過程

$$
\begin{aligned}
y_P &= A \left\{ \sin \left( 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) \right) + \sin \left( 2\pi f \left( t + \frac{x-2L}{v} \right) \right) \right\} \\[2.0ex]&= A \left\{ 2 \sin \left( 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \right) \cos \left( 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) \right) \right\} \\[2.0ex]&= 2A \sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)
\end{aligned}
$$

結論と吟味

合成波の変位は \(y_P = 2A \sin 2\pi f \left( t – \displaystyle\frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right)\) です。この式は、時間とともに振動する部分(sin項)と、場所によって振幅を決める部分(cos項)に分離しており、定在波の典型的な式形となっています。この形が模範解答と一致します。

解答 ③ \(2A \sin 2\pi f \left( t – \displaystyle\frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right)\)

④ 節の個数

思考の道筋とポイント
時刻\(t\)によらず変位が0になる位置、すなわち「節」の個数を求める問題です。③で求めた合成波の式 \(y_P\) が、\(t\)の値に関わらず常に0になる条件を考えます。
この設問における重要なポイント

  • 節の条件: \(y_P\) の式のうち、時間\(t\)を含まない部分が0になれば、\(y_P\)は常に0になります。つまり、\(\cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) = 0\) が節の条件です。
  • cosが0になる条件: \(\cos \theta = 0\) となるのは、\(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} + m\pi = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\pi\) (\(m\)は整数)のときです。
  • 特別な条件の適用: \(v=fL\) という条件を代入して、式を\(x\)について解きます。

具体的な解説と立式
節の条件は、
$$ \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) = 0 $$
よって、cosの中身が\(\displaystyle\frac{\pi}{2}, \displaystyle\frac{3\pi}{2}, \dots\)となればよいので、整数\(m\)を用いて、
$$ 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right) = \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi $$
ここで、与えられた条件 \(v=fL\) を代入します。
$$ 2\pi f \left( \frac{L-x}{fL} \right) = \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi $$

使用した物理公式

  • 定在波の節の条件
計算過程

上記で立てた式を\(x\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2\pi}{L}(L-x) &= \left( m + \frac{1}{2} \right)\pi
\end{aligned}
$$
両辺を\(\pi\)で割ると、
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{L}(L-x) &= m + \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
この式を\(x\)について整理します。
$$
\begin{aligned}
2 – \frac{2x}{L} &= m + \frac{1}{2} \\[2.0ex]\frac{2x}{L} &= 2 – m – \frac{1}{2} \\[2.0ex]\frac{2x}{L} &= \frac{3}{2} – m \\[2.0ex]x &= \frac{L}{2} \left( \frac{3}{2} – m \right) \\[2.0ex]x &= \left( \frac{3}{4} – \frac{m}{2} \right)L
\end{aligned}
$$
この式で、\(0 \le x \le 2L\) を満たす整数\(m\)を探します。

  • \(m=0 \rightarrow x = \displaystyle\frac{3}{4}L\)
  • \(m=1 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} – \displaystyle\frac{1}{2})L = \displaystyle\frac{1}{4}L\)
  • \(m=2 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} – 1)L = -\displaystyle\frac{1}{4}L < 0\) (不適)
  • \(m=-1 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + \displaystyle\frac{1}{2})L = \displaystyle\frac{5}{4}L\)
  • \(m=-2 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + 1)L = \displaystyle\frac{7}{4}L\)
  • \(m=-3 \rightarrow x = (\displaystyle\frac{3}{4} + \displaystyle\frac{3}{2})L = \displaystyle\frac{9}{4}L > 2L\) (不適)

よって、条件を満たす\(x\)は \(x = \displaystyle\frac{1}{4}L, \displaystyle\frac{3}{4}L, \displaystyle\frac{5}{4}L, \displaystyle\frac{7}{4}L\) の4つです。

結論と吟味

OQ間に存在する節の個数は4個です。\(v=fL\)という条件は、\(\lambda = \displaystyle\frac{v}{f} = L\) を意味します。つまり、波源間の距離\(2L\)がちょうど2波長分に相当する場合を考えていることになります。このとき、OQ間に節が4つ存在するのは妥当な結果です。

解答 ④ 4

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の変位を表す式の立式:
    • 核心: 波動現象を数式で解析するための出発点です。波源での振動の様子(\(A \sin \omega t\))と、そこから距離\(d\)だけ離れた点への伝播時間(\(d/v\))を組み合わせて、任意の点・時刻での変位の式 \(y = A \sin \omega (t – d/v)\) を正しく立てられることが、この問題の根幹をなします。特に、進行方向(正か負か)によって、距離の扱いが変わる点に注意が必要です。
    • 理解のポイント: 「点Pの今の動きは、波源の『過去の』動きと同じ」という因果関係を理解することが、式の意味を捉える鍵です。
  • 重ね合わせの原理と和積の公式:
    • 核心: 2つの波が重なったときの合成波の変位は、それぞれの波の変位の単純な和で表されます(重ね合わせの原理)。そして、その和の形(\(\sin A + \sin B\))を、物理的に解釈しやすい積の形(\(2\sin(\dots)\cos(\dots)\))に変換するために和積の公式が用いられます。この一連の式変形が、(3)を解くための最も重要な数学的テクニックです。
    • 理解のポイント: 和積の公式によって、合成波の式が「時間\(t\)に依存する項」と「場所\(x\)に依存する項」の積に分離されます。これが、定在波が「その場で振動する波」であることを数式的に示しています。
  • 定在波の節の条件:
    • 核心: (4)で問われる「時刻によらず変位が0の位置(節)」は、合成波の式の「場所\(x\)に依存する項」がゼロになる点として求められます。この問題では、\(\cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) = 0\) がその条件式です。
    • 理解のポイント: 合成波の振幅が場所\(x\)によって \(2A \left| \cos 2\pi f \left( \displaystyle\frac{L-x}{v} \right) \right|\) と変化すると解釈できます。この振幅がゼロになる点が節です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 位相が異なる波源: この問題では2つの波源が「同位相」でしたが、「逆位相」で振動する波源の問題も頻出です。その場合、一方の波の式の振幅\(A\)を\(-A\)にするか、位相に\(\pi\)を加えることで対応します。結果として、節と腹の位置が入れ替わります。
    • 反射による定在波: 固定端や自由端での反射によって生じる定在波も、入射波と反射波という2つの波の重ね合わせです。反射波の式を立てて、同様に和積の公式を適用することで、節や腹の位置を数式で求められます。
    • ビート(うなり)の数式表現: 振動数がわずかに異なる2つの波 \(y_1 = A \sin(2\pi f_1 t)\), \(y_2 = A \sin(2\pi f_2 t)\) を重ね合わせる際にも和積の公式が活躍します。合成波は「速く振動する成分」と「ゆっくり変動する成分」の積で表され、うなりの現象を数式で説明できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の情報を整理する: 波源の数、位置、振幅、振動数、そして最も重要な「位相関係(同位相か逆位相か)」を最初に確認します。
    2. 波の進行方向を明確にする: 各波源から出る波がどちらの向きに進むのかを把握し、変位の式の \(t \pm d/v\) の符号を正しく設定します。
    3. 与えられた数学公式の意味を考える: 和積の公式が与えられていれば、それは「重ね合わせた後にこの公式を使いなさい」という明確な指示です。公式の形から、最終的な式がどのような形になるかを予測しながら計算を進めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 波の式の符号ミス:
    • 誤解: x軸負の向きに進む波の式を立てる際に、\(y = A \sin 2\pi f(t – \displaystyle\frac{d}{v})\) の\(d\)に負の値を代入するなどして混乱する。
    • 対策: 「時刻\(t\)の点Pの変位は、波源での時刻\(t – (\text{伝播時間})\)の変位と同じ」という原理に常に立ち返りましょう。伝播時間は必ず正の値なので、波源位置と点Pの位置関係から距離を正しく計算し、\(t\)から引く、という手順を徹底します。
  • 和積の公式の適用ミス:
    • 誤解: \(\sin\)の中身である \(2\pi f(\dots)\) の部分を、\(A, B\)と置くべきところを、\((\dots)\)の部分だけを\(A, B\)と置いてしまう。あるいは、公式の\(\sin, \cos\)や係数2を間違える。
    • 対策: 公式を正確に覚えることはもちろん、適用する際には、何が\(A\)で何が\(B\)なのかを、式の横に書き出すなどして明確にしましょう。計算過程を丁寧に書くことがミスを防ぎます。
  • 節の条件式の解き間違い:
    • 誤解: \(\cos \theta = 0\) の解を \(\theta = m\pi\) や \(\theta = 2m\pi\) などと間違える。
    • 対策: \(\cos \theta = 0\) となるのは、単位円上でy軸と交わる点、すなわち \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2}, \displaystyle\frac{3\pi}{2}, \displaystyle\frac{5\pi}{2}, \dots\) です。これを一般角で表現すると \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} + m\pi\) となることを、単位円をイメージしながら確実に導けるようにしましょう。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 式の構造と物理現象の対応付け:\(y_P = \underbrace{2A \cos 2\pi f \left( \frac{L-x}{v} \right)}_{\text{場所xで決まる振幅}} \times \underbrace{\sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right)}_{\text{時間tで決まる振動}}\)このように、数式の各部分がどのような物理的意味を持つのかを色分けしたり、書き込んだりすることで、抽象的な数式と具体的な物理現象を結びつけることができます。「振幅項」がゼロになる点が節、「振幅項」の絶対値が最大になる点が腹、と視覚的に理解できます。
    • グラフによる検算: (4)で求めた節の位置 \(x = L/4, 3L/4, \dots\) が、\(t=0\)のグラフ上で実際に節になっているかを確認します。\(t=0\)で \(y_{PO} = A\sin(-2\pi f x/v)\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi f(x-2L)/v)\) です。\(v=fL, \lambda=L\) を使うと、\(y_{PO} = A\sin(-2\pi x/L)\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi(x-2L)/L)\) となります。例えば \(x=L/4\) を代入すると、\(y_{PO} = A\sin(-\pi/2)=-A\), \(y_{PQ} = A\sin(2\pi(-7L/4)/L) = A\sin(-7\pi/2) = A\sin(\pi/2)=A\) となり、和は0。確かに節になっていることが確認できます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • この問題は数式がメインですが、もしグラフを描くなら、波源Oからの波と波源Qからの波を別々の線で描き、それらを合成した波をさらに別の線で描くと、重ね合わせの様子がよくわかります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 波の基本式 (\(v=f\lambda\)):
    • 選定理由: (1)で、振動数と速さという波の基本的なパラメータから、もう一つの基本パラメータである波長を求めるために必要。
    • 適用根拠: 波の速さの定義そのものです。
  • 波の変位の式 (\(y = A\sin(\dots)\)):
    • 選定理由: (2)で、空間と時間を変数とする波の振る舞いを数学的に記述するため。
    • 適用根拠: 単振動する波源から生まれる波の変位は、正弦関数(sinまたはcos)で表されるという、波動論の基本です。
  • 和積の公式:
    • 選定理由: (3)で、2つの波の変位の「和」の形を、物理的解釈がしやすい「積」の形に変形するために、問題文で指定されているから。
    • 適用根拠: 三角関数の加法定理から導かれる数学的な恒等式です。物理法則ではありませんが、波動の重ね合わせを解析する上で極めて有用なツールです。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 波長の計算:
    • 戦略: 波の基本式をそのまま使う。
    • フロー: ① \(v=f\lambda\) を思い出す → ② \(\lambda\)について解き、\(\lambda = v/f\) を得る。
  2. (2) 波の式の立式:
    • 戦略: 波源での振動と伝播時間を組み合わせて式を立てる。
    • フロー: ①波源Qでの振動の式 \(y_Q = A\sin(2\pi ft)\) を設定 → ②QからPへの伝播時間 \(\Delta t = (2L-x)/v\) を計算 → ③点Pの変位は、波源Qの \(t-\Delta t\) の時刻の変位と同じであることから、\(y_{PQ} = A\sin(2\pi f(t – (2L-x)/v))\) を立式し、整理する。
  3. (3) 合成波の式の導出:
    • 戦略: 2つの波の式を足し、和積の公式を適用する。
    • フロー: ① \(y_P = y_{PO} + y_{PQ}\) を立てる → ②和積の公式のA, Bに相当する部分を特定 → ③\((A+B)/2\) と \((A-B)/2\) を慎重に計算 → ④公式に代入して積の形に整理する。
  4. (4) 節の個数の計算:
    • 戦略: 合成波の式の振幅部分が0になる条件を解く。
    • フロー: ①\(y_P\)の式のcos項が0になる条件式を立てる → ②\(\cos\theta=0\) の一般解 \(\theta = (m+1/2)\pi\) を適用 → ③与えられた条件 \(v=fL\) を代入して式を簡略化 → ④式を\(x\)について解き、\(x\)の一般式を導出 → ⑤\(0 \le x \le 2L\) の範囲を満たす整数\(m\)の個数を数える。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の多さに惑わされない: \(A, f, v, L, x, t, m\)など多くの文字が登場しますが、一つ一つの意味(定数か変数か、など)を意識し、求められているものと与えられているものを区別しながら、落ち着いて計算を進めましょう。
  • \(\pi\)の扱いに注意: 計算過程で\(\pi\)を約分し忘れる、あるいは余計な\(\pi\)を付けてしまうミスが起こりがちです。式の両辺を注意深く見比べて、正しく処理しましょう。
  • 整数\(m\)の範囲: 最後に節の個数を数える際、\(m\)が正の整数だけとは限りません。負の整数や0も考慮に入れて、与えられた空間範囲(\(0 \le x \le 2L\))を満たす全ての可能性をリストアップすることが重要です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • (4)の物理的解釈: 条件 \(v=fL\) は \(\lambda=L\) を意味します。波源O, Q間の距離は\(2L=2\lambda\)です。同位相の波源から出た波が重なるとき、波源自身は腹になります。波源間の距離が\(2\lambda\)なので、その間には腹が5つ(\(x=0, L/2, L, 3L/2, 2L\))、節が4つ存在することになります。この物理的な考察と、数式を解いて得られた「4個」という結果が一致するため、解答の妥当性が確認できます。
  • 式の対称性: (3)で求めた合成波の式は、中心\(x=L\)に対して対称な形(\(\cos\)の中身が\(x-L\)または\(L-x\))になっています。これは、2つの波源が対称な位置に置かれていることから予想される結果であり、式の形が物理的に妥当であることを示唆しています。

240 波の反射と定在波

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、原点Oの波源から出た正弦波が、x=Lにある壁で自由端反射し、入射波と反射波が重なり合って定在波を生じる状況を、数式を用いて段階的に分析する問題です。波の伝播時間、変位の式、重ね合わせ、そして定在波の振幅や腹の間隔といった、波動の数式表現に関する一連の理解が問われます。

与えられた条件
  • 波源: 原点O(\(x=0\))にあり、変位は \(y_O = A \sin 2\pi f t\)。
  • 波I (入射波): 振幅\(A\)、振動数\(f\)、速さ\(v\)でx軸正の向きに進む。
  • 壁: 位置\(x=L\)にあり、自由端反射。
  • 減衰: なし。
  • 点Q: 座標\(x=X\) (\(0 \le X \le L\))。
  • 使用する公式: 和積の公式 \( \sin \alpha + \sin \beta = 2 \sin \displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2} \cos \displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2} \)。
問われていること
  • (1) 波Iが点Q(\(x=X\))に到達するのに必要な時間\(t_1\)。
  • (2) 波Iによる点Qの変位\(y_1\)を\(A, f, t, t_1\)で表す。
  • (3) 波Iが壁で反射し、波IIとして再び点Qに到達するのに必要な時間\(t_2\)。
  • (4) 波IIによる点Qの変位\(y_2\)を\(A, f, t, t_2\)で表す。
  • (5) 点Qにおける合成波の変位\(y\)を、\(X\)の関数と\(t\)の関数の積の形で表す。
  • (6) 点Qにおける合成波の振幅。
  • (7) 隣り合う腹と腹との間隔。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「反射による定在波の数式解析」です。入射波と反射波の式をそれぞれ立て、重ね合わせの原理と和積の公式を用いて合成波の式を導出し、その式の物理的意味を読み解いていきます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の伝播: 波は距離\(d\)を速さ\(v\)で進むのに時間\(t=d/v\)を要する。
  2. 波の変位の式: ある点の変位は、波源での振動が時間的に遅れて伝わったものである。
  3. 自由端反射: 反射の際、波の位相は変化しない(山は山のまま返る)。
  4. 重ね合わせの原理と和積の公式: 2つの波の変位の和を、振幅項と振動項の積の形に変形する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)から(4)は、波の伝播時間と変位の式を、問題の指示に従って素直に立てていきます。
  2. (5)では、(2)と(4)で求めた\(y_1\)と\(y_2\)を足し合わせ、\(t_1, t_2\)に具体的な式を代入した後、和積の公式を適用します。
  3. (6)では、(5)で求めた合成波の式から、時間によらない振幅部分を抜き出します。
  4. (7)では、(6)で求めた振幅が最大になる条件(腹の条件)を考え、隣り合う腹の位置の差を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
波源O(\(x=0\))を出た波Iが、点Q(\(x=X\))に到達するのに必要な時間\(t_1\)を求める問題です。距離と速さの関係から求めます。
この設問における重要なポイント

  • 距離: 波源Oから点Qまでの距離は\(X\)。
  • 速さ: 波の速さは\(v\)。

具体的な解説と立式
時間、距離、速さの関係は \((\text{時間}) = \displaystyle\frac{(\text{距離})}{(\text{速さ})}\) です。したがって、
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{X}{v}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 時間・距離・速さの関係
計算過程

上記の立式がそのまま答えとなります。

結論と吟味

必要な時間は \(\displaystyle\frac{X}{v}\) です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{X}{v}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
波Iによる点Qの変位\(y_1\)を、\(A, f, t, t_1\)を用いて表す問題です。点Qでの振動は、波源Oでの振動が時間\(t_1\)だけ遅れて現れることを利用します。
この設問における重要なポイント

  • 波源Oでの変位: \(y_O = A \sin 2\pi f t\)。
  • 時間の遅れ: 点Qの時刻\(t\)での変位は、波源Oの時刻\(t-t_1\)での変位に等しい。

具体的な解説と立式
波源Oでの時刻\(t’\)における変位は \(y_O(t’) = A \sin 2\pi f t’\) です。
点Qでの時刻\(t\)における変位\(y_1\)は、波源Oでの時刻\(t’ = t-t_1\)の変位に等しいので、
$$
\begin{aligned}
y_1 &= A \sin 2\pi f (t-t_1)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の変位の式
計算過程

上記の立式がそのまま答えとなります。

結論と吟味

変位の式は \(y_1 = A \sin 2\pi f (t-t_1)\) となります。

解答 (2) \(A \sin 2\pi f(t-t_1)\)

問(3)

思考の道筋とポイント
波源Oを出た波が、壁(\(x=L\))で反射し、再び点Q(\(x=X\))に到達するのに必要な時間\(t_2\)を求める問題です。波が進む総距離を計算し、速さで割ります。
この設問における重要なポイント

  • 総距離: 波はOから壁まで(\(L\))進み、壁からQまで(\(L-X\))戻ってきます。総距離は \(L + (L-X)\)。

具体的な解説と立式
波が進む総距離\(d_2\)は、
$$
\begin{aligned}
d_2 &= L + (L-X) \\[2.0ex]&= 2L-X
\end{aligned}
$$
この距離を速さ\(v\)で進むのに必要な時間\(t_2\)は、
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{d_2}{v} \\[2.0ex]&= \frac{2L-X}{v}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 時間・距離・速さの関係
計算過程

上記の立式がそのまま答えとなります。

結論と吟味

必要な時間は \(t_2 = \displaystyle\frac{2L-X}{v}\) です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{2L-X}{v}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
反射波IIによる点Qの変位\(y_2\)を、\(A, f, t, t_2\)を用いて表す問題です。反射波は、波源Oから時間\(t_2\)をかけて点Qに到達した波と考えることができます。自由端反射なので、位相の変化はありません。
この設問における重要なポイント

  • 反射波の起源: 反射波IIは、波源Oでの振動が時間\(t_2\)だけ遅れて点Qに到達したものと見なせます。
  • 自由端反射: 反射によって波の形(山谷)は変わらないため、波源の振動の形 \(A \sin(\dots)\) をそのまま使えます。

具体的な解説と立式
反射波IIによる点Qの時刻\(t\)での変位\(y_2\)は、波源Oでの時刻\(t-t_2\)の変位に等しいので、
$$
\begin{aligned}
y_2 &= A \sin 2\pi f (t-t_2)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の変位の式
  • 自由端反射の性質
計算過程

上記の立式がそのまま答えとなります。

結論と吟味

変位の式は \(y_2 = A \sin 2\pi f (t-t_2)\) となります。

解答 (4) \(A \sin 2\pi f(t-t_2)\)

問(5)

思考の道筋とポイント
点Qにおける合成波の変位\(y\)を、\(X\)の関数と\(t\)の関数の積の形で表す問題です。\(y_1\)と\(y_2\)を足し合わせ、\(t_1, t_2\)に具体的な式を代入し、和積の公式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理: \(y = y_1 + y_2\)。
  • \(t_1, t_2\)の代入: \(t_1 = \displaystyle\frac{X}{v}\), \(t_2 = \displaystyle\frac{2L-X}{v}\)。
  • 和積の公式の適用

具体的な解説と立式
重ね合わせの原理より、
$$
\begin{aligned}
y &= y_1 + y_2 \\[2.0ex]&= A \sin 2\pi f (t-t_1) + A \sin 2\pi f (t-t_2)
\end{aligned}
$$
\(t_1, t_2\)を代入すると、
$$
\begin{aligned}
y &= A \sin 2\pi f \left(t-\frac{X}{v}\right) + A \sin 2\pi f \left(t-\frac{2L-X}{v}\right)
\end{aligned}
$$
ここで和積の公式 \( \sin \alpha + \sin \beta = 2 \sin \displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2} \cos \displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2} \) を用います。
\(\alpha = 2\pi f \left(t-\displaystyle\frac{X}{v}\right)\), \(\beta = 2\pi f \left(t-\displaystyle\frac{2L-X}{v}\right)\) とおき、\(\displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2}\)と\(\displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha+\beta}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left(t-\frac{X}{v}\right) + 2\pi f \left(t-\frac{2L-X}{v}\right) \right\} \\[2.0ex]&= \pi f \left( 2t – \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]&= 2\pi f \left(t-\frac{L}{v}\right)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha-\beta}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ 2\pi f \left(t-\frac{X}{v}\right) – 2\pi f \left(t-\frac{2L-X}{v}\right) \right\} \\[2.0ex]&= \pi f \left( \frac{-2X+2L}{v} \right) \\[2.0ex]&= 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right)
\end{aligned}
$$
これらを代入して、
$$
\begin{aligned}
y &= 2A \sin 2\pi f \left(t-\frac{L}{v}\right) \cos 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 重ね合わせの原理
  • 三角関数の和積の公式
計算過程

上記の立式と変形が計算過程となります。

結論と吟味

合成波の変位は \(y = 2A \sin 2\pi f \left(t-\displaystyle\frac{L}{v}\right) \cos 2\pi f \left(\displaystyle\frac{L-X}{v}\right)\) です。時間\(t\)の関数と位置\(X\)の関数の積の形になっており、定在波を表す式形として妥当です。

解答 (5) \(2A \sin 2\pi f(t-\displaystyle\frac{L}{v}) \cos 2\pi f(\displaystyle\frac{L-X}{v})\)

問(6)

思考の道筋とポイント
点Q(\(x=X\))における合成波の振幅を求める問題です。(5)で求めた合成波の式から、時間\(t\)に依存しない振幅部分を抜き出します。
この設問における重要なポイント

  • 振幅の定義: 変位の最大値。
  • 定在波の式の構造: \(y = (\text{振幅項}) \times (\text{振動項})\)。

具体的な解説と立式
(5)で求めた式 \(y = 2A \sin 2\pi f \left(t-\displaystyle\frac{L}{v}\right) \cos 2\pi f \left(\displaystyle\frac{L-X}{v}\right)\) において、

  • \(\sin 2\pi f \left(t-\displaystyle\frac{L}{v}\right)\) は時間とともに-1から1まで変化する振動項です。
  • \(2A \cos 2\pi f \left(\displaystyle\frac{L-X}{v}\right)\) は場所\(X\)だけで決まる定数です。

したがって、変位\(y\)の最大値である振幅は、振動項が\(\pm 1\)になったときの\(y\)の絶対値です。
$$
\begin{aligned}
\text{振幅} &= \left| 2A \cos 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right) \right|
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 定在波の振幅の定義
計算過程

上記の立式がそのまま答えとなります。

結論と吟味

振幅は場所\(X\)によって変化し、その大きさは \(\left| 2A \cos 2\pi f \left(\displaystyle\frac{L-X}{v}\right) \right|\) となります。

解答 (6) \(\left| 2A \cos 2\pi f(\displaystyle\frac{L-X}{v}) \right|\)

問(7)

思考の道筋とポイント
隣り合う腹と腹との間隔を求める問題です。腹は振幅が最大になる位置です。(6)で求めた振幅の式が最大になる条件を考えます。
この設問における重要なポイント

  • 腹の条件: 振幅が最大(\(2A\))になる位置。これは、\(\left| \cos 2\pi f \left(\displaystyle\frac{L-X}{v}\right) \right| = 1\) となるときです。
  • cosが\(\pm 1\)になる条件: \(\cos \theta = \pm 1\) となるのは、\(\theta = m\pi\) (\(m\)は整数)のときです。

具体的な解説と立式
腹の条件は、
$$ \left| \cos 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right) \right| = 1 $$
これは、cosの中身が整数\(\times \pi\)となるときなので、
$$ 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right) = m\pi \quad (m \text{は整数}) $$
この式を\(X\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2f}{v}(L-X) &= m \\[2.0ex]L-X &= \frac{mv}{2f} \\[2.0ex]X &= L – \frac{mv}{2f}
\end{aligned}
$$
これが腹の位置を表す一般式です。隣り合う腹の間隔\(\Delta X\)は、整数\(m\)が1違うときの\(X\)の差の絶対値です。
$$
\begin{aligned}
\Delta X &= \left| \left(L – \frac{(m+1)v}{2f}\right) – \left(L – \frac{mv}{2f}\right) \right| \\[2.0ex]&= \left| -\frac{v}{2f} \right| \\[2.0ex]&= \frac{v}{2f}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 定在波の腹の条件
計算過程

上記の立式と変形が計算過程となります。

結論と吟味

隣り合う腹と腹との間隔は \(\displaystyle\frac{v}{2f}\) です。波の基本式 \(\lambda = v/f\) を使うと、これは \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となり、定在波の腹と腹の間隔が半波長であるという基本的な性質と一致します。よって妥当な結果です。

解答 (7) \(\displaystyle\frac{v}{2f}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の変位の式の表現:
    • 核心: 波動現象を数式で扱うための基本です。波源での振動 \(y(0,t)\) が、距離\(d\)だけ離れた点に時間 \(t=d/v\) をかけて伝わることを理解し、任意の点での変位を \(y(d,t) = y(0, t-d/v)\) と表現できることが、(1)~(4)を解くための根幹をなす法則です。
    • 理解のポイント: 「ある場所の今の動きは、波源の過去の動き」という因果関係を、数式の「\(t\)からの時間の引き算」として捉えることが重要です。
  • 重ね合わせの原理と和積の公式:
    • 核心: 複数の波が存在するとき、媒質の変位は各波の変位の単純な和で表されます(重ね合わせの原理)。この問題では、入射波\(y_1\)と反射波\(y_2\)の和を、和積の公式を用いて「時間に関する項」と「場所に関する項」の積の形に変形することが(5)の核心です。
    • 理解のポイント: 和の形から積の形に変形することで、合成波が「その場で振動する波(定在波)」であることが数式上明確になります。振幅が場所によって決まる項と、全体の振動の様子を表す項に分離できることが、定在波の本質です。
  • 定在波の振幅の解釈:
    • 核心: (5)で導出した合成波の式 \(y = (\text{場所の項}) \times (\text{時間の項})\) から、時間とともに変化しない「場所の項」が振幅を決定する部分であると見抜くことが、(6)と(7)を解く鍵です。
    • 理解のポイント: 定在波の振幅は一定ではなく、場所\(X\)の関数です。振幅がゼロになる点が「節」、振幅が最大になる点が「腹」であり、これらの位置は振幅を表す項(この問題ではcosの項)を分析することで求められます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 固定端反射: この問題の「自由端」が「固定端」に変わった場合。反射波の位相が\(\pi\)ずれるため、(4)の式が \(y_2 = -A \sin 2\pi f(t-t_2)\) となります。その結果、和積の公式ではなく差積の公式(\(\sin A – \sin B\))を用いることになり、節と腹の位置が入れ替わります。
    • 2波源からの干渉: この問題は反射ですが、2つの独立した波源から波を出す干渉問題と数学的には同じ構造です。波源間の距離や位相差を変えた問題にも、同じアプローチ(各波の式を立てて重ねる)が適用できます。
    • ドップラー効果の数式導出: 観測者が聞く音の波の式を立てる際にも、「波源が音を出した時刻」と「その音が観測者に届く時刻」の関係を考えるため、本問と同様の思考プロセスが用いられます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波の経路を正確に追跡する: (1)の入射波、(3)の反射波のように、波がどの経路をたどって対象の点に到達するのかを正確に把握します。これが距離の計算、ひいては伝播時間の計算の基礎となります。
    2. 反射の条件を確認する: 「自由端」か「固定端」か。これにより、反射波の式の符号(位相)が決まるため、最重要の確認項目です。
    3. 数式の最終形を意識する: (5)で「\(X\)の関数と\(t\)の関数の積の形で表せ」とあるように、問題文が数式変形のゴールを示唆していることが多いです。和積公式など、どの数学ツールを使えばその形にたどり着けるかを考えながら立式します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 伝播距離の計算ミス:
    • 誤解: (3)で反射波が伝わる距離を、単純に\(L-X\)や\(L+X\)と間違える。
    • 対策: 必ず「波源O → 壁L → 点Q(X)」という経路を図に描き、各区間の長さを足し合わせる習慣をつけましょう。\(L + (L-X)\) のように、経路を分割して考えることでミスを防げます。
  • 反射波の式の立式ミス:
    • 誤解: 反射波を「壁から新たに出る波」と考えてしまい、基準となる時刻や位相が分からなくなる。
    • 対策: 反射波は、あくまで「波源Oから出た波が、壁という条件で形を変えたもの」と捉えるのが正解です。したがって、時間の基準は常に波源Oの振動(\(t=0\)で\(y=0\))に置きます。伝播時間\(t_2\)さえ正しく計算できれば、(4)の式は(2)と全く同じ形になります(自由端の場合)。
  • 振幅と変位の混同:
    • 誤解: (6)で振幅を問われているのに、(5)で求めた変位の式\(y\)そのものを答えてしまう。
    • 対策: 「振幅」は時間によらない、変位の最大値(の絶対値)です。定在波の式から、時間を含むsinやcosの項を取り除いた部分が振幅に対応すると理解しましょう。振幅は場所\(X\)の関数ですが、時間の変数\(t\)は含みません。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 鏡像法(イメージ法): 壁の向こう側、\(x=2L\)の位置に、波源Oと全く同じ振動をする「鏡像の波源O’」を仮想的に考えます。
      • 入射波Iは、波源Oから来る波。
      • 反射波IIは、この鏡像波源O’から来る波。

      このように考えると、反射の問題が「2つの波源からの波の干渉」という、より基本的な問題に置き換わります。(3)で求めた時間\(t_2\)が、鏡像波源O’から点Qまでの距離\(2L-X\)を速さ\(v\)で進む時間と一致することからも、この考え方の正しさがわかります。

    • 式の構造分解:\(y = \underbrace{\left| 2A \cos 2\pi f \left(\frac{L-X}{v}\right) \right|}_{\text{振幅 (場所Xで決まる)}} \times \underbrace{\text{符号} \times \sin 2\pi f \left(t-\frac{L}{v}\right)}_{\text{振動の様子 (時間tで決まる)}}\)

      このように、数式を物理的な意味を持つブロックに分解して理解することで、(6)や(7)の問いが、式のどの部分に注目すればよいのかが明確になります。

  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 問題の図に、入射波と反射波の経路を矢印で書き込むと、距離の計算ミスを防げます。
    • 腹と節の位置を求める際には、\(X\)軸を描き、腹の条件を満たす\(X\)の値をプロットしていくと、間隔が\(\lambda/2\)になっていることを視覚的に確認できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 波の変位の式 (\(y = A\sin 2\pi f(t-d/v)\)):
    • 選定理由: (2),(4)で、波源から離れた点の時々刻々の変位を、波源の振動と伝播時間に基づいて記述するため。
    • 適用根拠: 波の変位が波動方程式という線形の微分方程式に従うこと、そしてその解が \(F(t-x/v)\) という形で与えられるという波動論の基本原理に基づいています。
  • 和積の公式:
    • 選定理由: (5)で、重ね合わせの原理によって生じた「和」の形の式を、物理的解釈のしやすい「積」の形(定在波の標準形)に変形するために必須の数学ツールだから。
    • 適用根拠: 三角関数の加法定理から導かれる数学的な恒等式であり、物理現象を分析しやすくするために借用します。
  • 腹の条件 (\(|\cos(\dots)|=1\)):
    • 選定理由: (7)で、振幅が最大となる「腹」の位置を特定するため。
    • 適用根拠: (6)で導出した振幅の式 \(\left| 2A \cos(\dots) \right|\) が最大値 \(2A\) をとるための数学的な条件です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1)-(4) 波の要素の立式:
    • 戦略: 問題文の指示に従い、波の伝播経路を正確に把握して、時間と変位の式を一つずつ立てる。
    • フロー: ①入射波の到達時間\(t_1\)を計算 → ②\(t_1\)を用いて入射波の変位\(y_1\)を立式 → ③反射波の到達時間\(t_2\)を計算 → ④\(t_2\)を用いて反射波の変位\(y_2\)を立式。
  2. (5) 合成波の式の導出:
    • 戦略: \(y_1\)と\(y_2\)を足し合わせ、和積の公式で変形する。
    • フロー: ①\(y=y_1+y_2\)の式に、\(t_1, t_2\)の具体的な式を代入 → ②和積の公式を適用するために、\(\alpha, \beta\)を設定し、\(\frac{\alpha+\beta}{2}, \frac{\alpha-\beta}{2}\)を計算 → ③公式に当てはめて積の形にする。
  3. (6)-(7) 定在波の性質の解析:
    • 戦略: 合成波の式から振幅項を抜き出し、その性質を調べる。
    • フロー: ①(5)の式から振幅項を特定し、(6)の答えとする → ②振幅が最大になる条件(腹の条件)を立式 → ③条件式を\(X\)について解き、腹の位置の一般式を導出 → ④隣り合う腹の間隔を計算し、(7)の答えとする。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 段階的な代入: (5)の計算では、いきなり\(t_1, t_2\)を代入するのではなく、まず\(y=A\sin 2\pi f(t-t_1) + A\sin 2\pi f(t-t_2)\)の形で和積の公式を適用し、\(y=2A\sin(\dots)\cos(\dots)\)の形にしてから、最後に\(t_1, t_2\)を代入すると、計算の見通しが良くなる場合があります。
  • 文字の置き換え: \(k = 2\pi/\lambda\)(波数)や \(\omega=2\pi f\)(角振動数)といった文字で置き換えて計算を進めると、式がシンプルになり、ミスを減らせることがあります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • (7)の答えの普遍性: 腹と腹の間隔が\(\lambda/2\)(\(=v/2f\))となるのは、定在波における普遍的な性質です。数式処理の結果がこのよく知られた結論と一致したことで、(1)から(6)までの計算が全体として正しかった可能性が高いと判断できます。
  • 境界条件の確認: 壁は\(x=L\)にあり、自由端反射です。自由端は定在波の「腹」になるはずです。(7)で求めた腹の位置の式 \(X = L – \displaystyle\frac{mv}{2f}\) で、\(m=0\)とすると\(X=L\)となり、壁の位置が腹の条件を満たしていることが確認できます。これも計算の正しさを裏付ける強力な証拠です。
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