194 気体の法則
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、コックで連結された2つの容器内の気体の状態変化を扱う問題です。気体の法則、特にボイル・シャルルの法則と理想気体の状態方程式を正しく使い分ける能力が問われます。
この問題の核心は、(1)では系全体の物質量が保存される中で状態が均一に変化する状況を、(2)では物質量の総和は保存されるものの、部分によって温度が異なる不均一な状態を、それぞれ適切にモデル化し立式することです。
- 容器Aの容積: \(V_A = 3.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\)
- 容器Bの容積: \(V_B = 7.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\)
- (1)の初期条件:
- 容器A: 圧力 \(P_{A1} = 2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), 温度 \(t_{A1} = 27^\circ\text{C}\)
- 容器B: 真空
- (1)の最終条件:
- 全体の温度: \(t_2 = 127^\circ\text{C}\)
- (2)の初期条件:
- 容器A: 圧力 \(P_{A1} = 2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), 温度 \(t_{A1} = 27^\circ\text{C}\)
- 容器B: 圧力 \(P_{B1} = 5.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), 温度 \(t_{B1} = 77^\circ\text{C}\)
- (2)の最終条件:
- 全体の圧力: \(P_2 = 4.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
- 容器Aの温度: \(t_{A2} = 27^\circ\text{C}\)
- (1) コックを開き、全体の温度を \(127^\circ\text{C}\) にしたときの圧力 \(P_2\)。
- (2) コックを開き、Aを \(27^\circ\text{C}\) に保ったときのB内の空気の温度 \(t_{B2}\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「連結された容器内の気体の状態変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ボイル・シャルルの法則: 閉じ込めた気体の物質量が一定のとき、圧力・体積・絶対温度の関係 \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\) が成り立ちます。
- 理想気体の状態方程式: 気体の圧力 \(P\)、体積 \(V\)、物質量 \(n\)、絶対温度 \(T\) の関係を示す基本法則 \(PV = nRT\) です。
- 物質量保存則: 外部との物質の出入りがない閉じた系では、内部で状態が変化しても、全体の物質量の総和は変化しません。
- 絶対温度: 気体の法則に関する計算では、必ず絶対温度 \(T \text{ [K]} = t \text{ [}^\circ\text{C]} + 273\) を用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、容器Bが真空なので、気体は容器Aにあるものだけです。コックを開いても気体の物質量は変わらないため、ボイル・シャルルの法則を用いて変化前後の状態を比較します。
- (2)では、AとBの両方に気体が入っており、コックを開いて混合します。このとき、全体の物質量は保存されます。また、最終的にAとBの温度が異なるため、系全体を単一の状態で記述できず、ボイル・シャルルの法則は使えません。状態方程式を用いて「コックを開く前の物質量の和」と「開いた後の物質量の和」が等しいという式を立てて解きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
コックを開く前の容器A内の気体が、コックを開くことで容器AとBを合わせた体積全体に広がる状況を考えます。この過程で、外部との気体の出入りはないため、気体の物質量 \(n\) は一定に保たれます。物質量が一定である気体の状態変化なので、ボイル・シャルルの法則を適用して解くことができます。
この設問における重要なポイント
- 状態変化の前後を明確にする: 変化前の状態(圧力 \(P_1\), 体積 \(V_1\), 絶対温度 \(T_1\))と、変化後の状態(圧力 \(P_2\), 体積 \(V_2\), 絶対温度 \(T_2\))を整理します。
- 体積の変化: コックを開くと、気体は容器AとBの両方に均一に広がるため、変化後の体積は2つの容器の和 \(V_2 = V_A + V_B\) となります。
- 絶対温度の使用: ボイル・シャルルの法則や状態方程式では、必ず絶対温度(ケルビン)を用います。摂氏温度 \(t\)[℃] と絶対温度 \(T\)[K] の関係は \(T = t + 273\) です。
具体的な解説と立式
変化前の気体の状態を \(P_1, V_1, T_1\)、変化後の状態を \(P_2, V_2, T_2\) とします。
与えられた条件から、各物理量を整理します。
- 変化前: \(P_1 = 2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), \(V_1 = V_A = 3.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\), \(T_1 = 27 + 273 = 300 \text{ K}\)
- 変化後: \(P_2\) は求める圧力, \(V_2 = V_A + V_B = (3.0 + 7.0) \times 10^{-3} = 10.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\), \(T_2 = 127 + 273 = 400 \text{ K}\)
気体の物質量は一定なので、ボイル・シャルルの法則が成り立ちます。
$$ \frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2} $$
使用した物理公式
- ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\)
- 絶対温度: \(T \text{ [K]} = t \text{ [}^\circ\text{C]} + 273\)
上記で立てたボイル・シャルルの法則の式を \(P_2\) について解き、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
P_2 &= \frac{P_1 V_1 T_2}{T_1 V_2} \\[2.0ex]
&= \frac{(2.0 \times 10^5) \times (3.0 \times 10^{-3}) \times 400}{300 \times (10.0 \times 10^{-3})} \\[2.0ex]
&= \frac{2.0 \times 3.0 \times 400}{300 \times 10.0} \times 10^5 \\[2.0ex]
&= \frac{2400}{3000} \times 10^5 \\[2.0ex]
&= 0.80 \times 10^5 \\[2.0ex]
&= 8.0 \times 10^4 \text{ [Pa]}
\end{aligned}
$$
最初、容器Aに閉じ込められていた空気が、コックを開けることでより広い空間(A+B)に広がり、同時に温められます。このとき、空気の量(物質量)は変わらないので、「圧力×体積÷絶対温度」の値が変化の前後で一定になる、という法則(ボイル・シャルルの法則)を使います。この関係式に、変化前と変化後のそれぞれの圧力、体積、温度の値を当てはめて、未知の圧力を計算します。
コックを開いた後の圧力は \(8.0 \times 10^4 \text{ Pa}\) です。
元の圧力 \(2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) と比較すると、圧力は減少しています。体積が約3.3倍 (\(10/3\)) に増加し、絶対温度が約1.3倍 (\(4/3\)) に増加しています。圧力は体積に反比例し、絶対温度に比例するため、体積増加による圧力減少の効果が温度上昇による圧力増加の効果を上回り、結果として圧力が減少するのは物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
ボイル・シャルルの法則の根底にあるのは、理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) と物質量保存則です。まず、変化前の状態から気体の物質量 \(n\) を計算し、その物質量が変化後の状態でも保存されることを利用して、変化後の圧力を求めるアプローチです。より根本的な法則から問題を解くことで、法則間の関係性の理解が深まります。
この設問における重要なポイント
- 物質量の計算: 状態方程式 \(PV=nRT\) を \(n\) について解き、\(n = \displaystyle\frac{PV}{RT}\) として物質量を求めます。
- 物質量保存: コックを開いても気体の出入りはないため、最初に容器Aにあった物質量 \(n\) が、そのまま変化後の系全体の物質量となります。
- 気体定数Rの扱い: この解法では、計算過程で気体定数 \(R\) が現れますが、最終的に式を整理すると \(R\) は相殺されて消えるため、具体的な値を知る必要はありません。
具体的な解説と立式
まず、変化前の容器A内の気体の物質量を \(n\) とします。理想気体の状態方程式より、
$$ P_1 V_1 = n R T_1 \quad \cdots ① $$
次に、コックを開いた後の状態を考えます。体積は \(V_2 = V_A + V_B\)、温度は \(T_2\)、圧力は \(P_2\) です。気体の物質量は変化しないので、ここでも \(n\) です。したがって、状態方程式は以下のようになります。
$$ P_2 V_2 = n R T_2 \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
式①から \(n\) を \(P_1, V_1, T_1, R\) を用いて表します。
$$ n = \frac{P_1 V_1}{R T_1} $$
この \(n\) の表現を式②に代入します。
$$ P_2 V_2 = \left( \frac{P_1 V_1}{R T_1} \right) R T_2 $$
両辺の気体定数 \(R\) が消去されます。
$$ P_2 V_2 = \frac{P_1 V_1 T_2}{T_1} $$
この式を \(P_2\) について解くと、
$$ P_2 = \frac{P_1 V_1 T_2}{T_1 V_2} $$
これはボイル・シャルルの法則から導いた式と全く同じです。したがって、以降の計算も同様になり、
$$ P_2 = 8.0 \times 10^4 \text{ [Pa]} $$
という結果が得られます。
まず、最初に容器Aに入っている空気の「量」(物質量)を、圧力・体積・温度を使って表します。次に、コックを開けて空気が広がった後の状態について考えます。空気の「量」は変わらないので、この「量」を使って、変化後の圧力・体積・温度の関係式を立てます。この2つの関係式を組み合わせることで、未知の圧力を求めることができます。
理想気体の状態方程式を用いたアプローチでも、ボイル・シャルルの法則を用いた場合と全く同じ結果 \(8.0 \times 10^4 \text{ Pa}\) が得られました。これは、ボイル・シャルルの法則が状態方程式と物質量保存則から導かれる関係であることを示しており、計算の正しさを裏付けています。
問(2)
思考の道筋とポイント
この設問では、コックを開く前に容器AとBの両方に気体が入っています。コックを開くと、2つの気体が混ざり合いますが、外部との気体の出入りはないため、系全体の物質量の合計は保存されます。しかし、最終的に容器AとBで温度が異なるため、系全体を一つの状態(P, V, T)で記述することができず、ボイル・シャルルの法則は適用できません。
そこで、「コックを開く前の物質量の総和」と「コックを開いた後の物質量の総和」が等しい、という物質量保存の考え方で立式します。各部分の物質量は、理想気体の状態方程式 \(n = \displaystyle\frac{PV}{RT}\) を使って計算します。
この設問における重要なポイント
- 物質量保存の適用: 閉じた系(外部との物質のやり取りがない系)では、内部で状態が変化しても、全体の物質量の和は一定です。この問題では \(n_{\text{A,初}} + n_{\text{B,初}} = n_{\text{A,後}} + n_{\text{B,後}}\) が成り立ちます。
- 部分ごとの状態方程式: コックを開いた後、容器AとBでは圧力が等しくなりますが(\(P_2\))、温度が異なります(\(T_{A2}\) と \(T_{B2}\))。したがって、容器AとBにそれぞれ別々に状態方程式を適用して、それぞれの部分に含まれる物質量を計算する必要があります。
- 絶対温度への変換: 計算では、すべての温度を摂氏から絶対温度(ケルビン)に変換して用いる必要があります。最後に、求められた絶対温度を摂氏に変換し直すことを忘れないようにしましょう。
具体的な解説と立式
コックを開く前の容器A, B内の気体の物質量をそれぞれ \(n_A\), \(n_B\) とします。
コックを開いた後の容器A, B内の気体の物質量をそれぞれ \(n’_A\), \(n’_B\) とします。
物質量保存則より、
$$ n_A + n_B = n’_A + n’_B \quad \cdots ① $$
理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) を \(n\) について変形した \(n = \displaystyle\frac{PV}{RT}\) を用いて、各物質量を以下のように表せます。
- コックを開く前:
$$ n_A = \frac{P_{A1} V_A}{R T_{A1}} \quad \cdots ② $$
$$ n_B = \frac{P_{B1} V_B}{R T_{B1}} \quad \cdots ③ $$ - コックを開いた後:
$$ n’_A = \frac{P_2 V_A}{R T_{A2}} \quad \cdots ④ $$
$$ n’_B = \frac{P_2 V_B}{R T_{B2}} \quad \cdots ⑤ $$
ここで、与えられた条件を絶対温度に変換して整理します。
\(P_{A1} = 2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), \(V_A = 3.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\), \(T_{A1} = 27+273 = 300 \text{ K}\)。
\(P_{B1} = 5.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), \(V_B = 7.0 \times 10^{-3} \text{ m}^3\), \(T_{B1} = 77+273 = 350 \text{ K}\)。
\(P_2 = 4.0 \times 10^5 \text{ Pa}\), \(T_{A2} = 27+273 = 300 \text{ K}\)。
求めるB内の温度を \(t_{B2}\) [\(\circ\text{C}\)] とすると、絶対温度は \(T_{B2} = t_{B2} + 273\) [K] です。
使用した物理公式
- 物質量保存則
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
式②, ③, ④, ⑤を式①に代入します。
$$ \frac{P_{A1} V_A}{R T_{A1}} + \frac{P_{B1} V_B}{R T_{B1}} = \frac{P_2 V_A}{R T_{A2}} + \frac{P_2 V_B}{R T_{B2}} $$
両辺に共通する気体定数 \(R\) を消去します。
$$ \frac{P_{A1} V_A}{T_{A1}} + \frac{P_{B1} V_B}{T_{B1}} = \frac{P_2 V_A}{T_{A2}} + \frac{P_2 V_B}{T_{B2}} $$
この式に与えられた値を代入します。
$$ \frac{(2.0 \times 10^5) \times (3.0 \times 10^{-3})}{300} + \frac{(5.0 \times 10^5) \times (7.0 \times 10^{-3})}{350} = \frac{(4.0 \times 10^5) \times (3.0 \times 10^{-3})}{300} + \frac{(4.0 \times 10^5) \times (7.0 \times 10^{-3})}{T_{B2}} $$
各項の \(10^5 \times 10^{-3} = 10^2\) を計算し、式を整理します。
$$ \frac{6.0 \times 10^2}{300} + \frac{35 \times 10^2}{350} = \frac{12.0 \times 10^2}{300} + \frac{28.0 \times 10^2}{T_{B2}} $$
$$ 2.0 + 10.0 = 4.0 + \frac{2800}{T_{B2}} $$
$$ 12.0 = 4.0 + \frac{2800}{T_{B2}} $$
\(\displaystyle\frac{2800}{T_{B2}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2800}{T_{B2}} &= 12.0 – 4.0 \\[2.0ex]
&= 8.0
\end{aligned}
$$
したがって、\(T_{B2}\) は、
$$
\begin{aligned}
T_{B2} &= \frac{2800}{8.0} \\[2.0ex]
&= 350 \text{ [K]}
\end{aligned}
$$
これは絶対温度なので、摂氏温度 \(t_{B2}\) に変換します。
$$
\begin{aligned}
t_{B2} &= T_{B2} – 273 \\[2.0ex]
&= 350 – 273 \\[2.0ex]
&= 77 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
コックを開ける前と後で、2つの容器に入っている空気の分子の総数は変わりません。この「分子の数が同じ」ということを数式で表します。まず「開ける前のAの分子数+開ける前のBの分子数」を計算し、次に「開けた後のAの分子数+開けた後のBの分子数」を計算します。これらが等しいという方程式を立て、未知のBの温度を求めます。分子の数は、状態方程式を使って「圧力×体積÷絶対温度」に比例する量として計算できます。
容器B内の空気の温度は \(77^\circ\text{C}\) です。
この結果は、コックを開く前の容器Bの温度と偶然にも同じ値になりました。
計算結果を吟味してみましょう。コックを開く前、AとBの \(\frac{PV}{T}\) の値(物質量に比例)はそれぞれ \(2.0\) と \(10.0\) で、合計は \(12.0\) です。コックを開いた後、Aの \(\frac{PV}{T}\) の値は \(4.0\) になりました。物質量保存則から、Bの \(\frac{PV}{T}\) の値は \(12.0 – 4.0 = 8.0\) となる必要があります。
\(\frac{P_2 V_B}{T_{B2}} = 8.0\) より、\(\frac{(4.0 \times 10^5) \times (7.0 \times 10^{-3})}{T_{B2}} = 8.0\) となり、\(\frac{2800}{T_{B2}} = 8.0\)、\(T_{B2}=350 \text{ K}\) と確かに計算が合います。
コックを開くことで、物質量に比例する \(\frac{PV}{T}\) の値が、Aでは \(2.0 \rightarrow 4.0\) と増加し、Bでは \(10.0 \rightarrow 8.0\) と減少しています。これは、BからAへ気体分子が移動したことを意味しており、物理的に妥当な変化です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ボイル・シャルルの法則(問1):
- 核心: 外部との物質の出入りがなく、閉じ込められた気体の物質量 \(n\) が一定の場合に成立する法則です。状態変化の前後で \(\displaystyle\frac{PV}{T}\) の値が保存されることを利用します。問(1)のように、系全体が均一な状態(圧力、温度がどこでも同じ)で変化する場合に非常に有効です。
- 理解のポイント: この法則は、理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) において、\(n\) と \(R\) が定数であることから直接導かれます。つまり、状態方程式の特殊なケースと理解することが重要です。
- 物質量保存則と理想気体の状態方程式(問2):
- 核心: 複数の容器が連結され、最終的な状態が場所によって異なる(例:温度が違う)場合、系全体を単一の \(P, V, T\) で記述できません。このような複雑な状況では、より根源的な法則に立ち返る必要があります。その核心が「物質量の総和は保存される」という原理です。
- 理解のポイント: 「コックを開く前の物質量の和」=「コックを開いた後の物質量の和」という保存則を立式します。各部分の物質量 \(n\) は、その部分の状態(\(P, V, T\))を用いて、理想気体の状態方程式から \(n = \displaystyle\frac{PV}{RT}\) として求めます。このアプローチは、より複雑な気体の混合問題全般に応用できる万能な手法です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ピストンで仕切られた容器: シリンダーがピストンで2つの部分に仕切られており、それぞれの部分で気体の状態が変化する問題。ピストンが自由に動ける場合は両側の圧力が等しくなり、固定されている場合は体積が一定になります。物質量保存則の考え方が同様に適用できます。
- 気体の混合: 異なる種類・状態の気体を混合させる問題。ドルトンの分圧の法則と関連付けて考えることもありますが、基本は「各成分気体の物質量の和が、混合後の全物質量に等しい」という考え方で解くことができます。
- 液体とその蒸気が共存する系: 容器内に液体があり、その蒸気(気体)が状態変化する問題。この場合、液体の蒸発や凝縮によって気体の物質量が変化する可能性があるため、単純な物質量保存則が使えない場合があります。飽和蒸気圧の概念が鍵となります。
- 初見の問題での着眼点:
- 系の設定を確認する: 気体は閉じ込められているか?(物質量は一定か?) 容器は連結されているか? ピストンは動くか、固定か?
- 状態変化の均一性を見抜く: コックを開いた後、系全体が均一な温度・圧力になるか? それとも場所によって異なるか?
- 均一なら: ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{PV}{T}=\text{一定}\) が使える可能性が高いです(問1のパターン)。
- 不均一なら: 物質量保存則 \(\sum n_{\text{前}} = \sum n_{\text{後}}\) に立ち返り、各部分について状態方程式 \(PV=nRT\) を適用する必要があります(問2のパターン)。
- 温度の単位をチェックする: 問題文で与えられている温度が摂氏温度(℃)か絶対温度(K)かを確認し、計算は必ず絶対温度で行うことを徹底します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ボイル・シャルルの法則の誤用:
- 誤解: 問(2)のように、コックを開いた後に容器AとBで温度が異なる状況で、無理やりボイル・シャルルの法則を使おうとするミス。例えば、全体の体積 \(V_A+V_B\) と全体の圧力 \(P_2\) を使い、温度をどう扱うかで混乱してしまいます。
- 対策: ボイル・シャルルの法則が使えるのは「物質量が一定」かつ「系全体が単一の状態で記述できる」場合に限られる、と強く意識しましょう。少しでも複雑な設定(複数の気体の混合、部分的に温度が違うなど)の場合は、より基本法則である「物質量保存+状態方程式」に切り替えるのが安全策です。
- 絶対温度への変換忘れ:
- 誤解: 摂氏温度のまま \(t=27\) や \(t=127\) を式の \(T\) に代入してしまう。これは最も頻発し、致命的なミスです。
- 対策: 問題を読み始めた瞬間に、与えられた摂氏温度の横に「\(+273=\)〇〇K」と書き込んでしまう習慣をつけましょう。計算プロセスの最初で、すべての温度を絶対温度に変換しておくことが確実です。
- 物質量保存の立式ミス:
- 誤解: 問(2)で、コックを開いた後の状態を \(P_2(V_A+V_B) = (n’_A+n’_B) R T_{\text{平均?}}\) のように、一つの状態方程式で無理に表現しようとしてしまう。
- 対策: コックを開いた後は、AとBは「圧力だけが共通な、別の状態の気体」と見なします。したがって、物質量の和を考える際も、\(n’_{\text{合計}} = n’_A + n’_B\) のように、それぞれの部分の物質量を別々に計算して足し合わせる、という意識を持つことが重要です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 状態変化の表を作成する: 変化の「前」と「後」で、容器A、容器B、そして系全体について、\(P, V, T, n\) の値を一覧表にまとめるのが非常に有効です。未知の値は変数(例: \(P_2\), \(t_{B2}\))として記入します。これにより、どの物理量が既知で何が未知か、どの法則を使えばよいかが一目瞭然になります。
- 気体分子の動きをイメージする:
- 問(1): 「Aに密集していた分子が、コックが開いた瞬間にBへ勢いよく流れ込み、最終的にはAとBの空間を均等に飛び回るようになる」というイメージ。
- 問(2): 「Bの方が初期状態で圧力・温度ともに高い(特に圧力)ので、分子がより高密度に存在している。コックが開くと、BからAへ分子が純移動し、最終的に両容器の圧力が等しくなる点で移動が止まる」というイメージ。このとき、AとBで温度が違うので、分子の平均運動エネルギーも異なる状態になります。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 問題の図に、各状態の \(P, V, T\) の値を直接書き込む。
- 変化前は容器AとBを別々に、変化後は一つの系として囲むなど、図の上で状態の変化を視覚的に表現する。
- 問(2)のように状態が不均一な場合は、変化後の図で容器AとBのそれぞれに温度 \(T_{A2}\), \(T_{B2}\) を明記し、両者をつなぐコック部分に共通の圧力 \(P_2\) を書き込むと、状況が整理しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\):
- 選定理由: (1)で、考察対象の気体の「物質量 \(n\)」が変化の前後で一定であり、かつ系全体が「均一な状態」で記述できるため。この条件が揃う場合、最もシンプルに状態変化を記述できる公式です。
- 適用根拠: 理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) から、\(\displaystyle\frac{PV}{T} = nR\) となり、右辺が定数であることから導かれる関係式です。
- 物質量保存則 \(\sum n_{\text{前}} = \sum n_{\text{後}}\):
- 選定理由: (2)で、系が複数の部分から構成され、状態変化後に不均一な状態(温度が異なる)になるため。ボイル・シャルルの法則が適用できない、より複雑な状況に対応するための普遍的な原理です。
- 適用根拠: 外部との物質の出入りがない限り、原子・分子の数は不変であるという物理学の基本法則に基づいています。
- 理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\):
- 選定理由: (2)の物質量保存則を適用する際に、各部分の「物質量 \(n\)」をその部分の状態量(\(P, V, T\))から計算するために必要となるため。また、(1)の別解のように、ボイル・シャルルの法則の代わりに用いることもできる、より根源的な公式です。
- 適用根拠: 気体のマクロな状態量(\(P, V, T\))とミクロな量(\(n\))を結びつける、気体論の基本法則です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 圧力の計算:
- 戦略: 気体の物質量が一定で、状態が均一に変化するため、ボイル・シャルルの法則を適用する。
- フロー: ①変化前後の状態量(\(P_1, V_1, T_1\) と \(P_2, V_2, T_2\))を整理 → ②温度を絶対温度に変換 → ③ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}\) を立式 → ④式を \(P_2\) について解き、数値を代入して計算。
- (2) 温度の計算:
- 戦略: 状態が不均一になるため、物質量保存則を適用する。
- フロー: ①変化前後の各部分の状態量(\(P_{A1}, V_A, T_{A1}\) など)を整理 → ②すべての温度を絶対温度に変換 → ③物質量保存の式 \(n_A + n_B = n’_A + n’_B\) を立てる → ④各物質量を状態方程式 \(n=\frac{PV}{RT}\) を用いて表現し、代入 → ⑤気体定数 \(R\) を消去し、未知の温度 \(T_{B2}\) についての方程式を解く → ⑥得られた絶対温度を摂氏温度に変換。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位を含めた立式: (2)の計算では、\(10^5\) や \(10^{-3}\) といった指数が多く登場します。
$$ \frac{(2.0 \times 10^5) \times (3.0 \times 10^{-3})}{300} + \dots $$
のような式で、まず各項の指数の部分(\(10^5 \times 10^{-3} = 10^2\))を先に計算して、
$$ \frac{6.0 \times 10^2}{300} + \dots = 2.0 + \dots $$
のように、早い段階で簡単な数値に直してしまうと、後の計算が楽になり、ミスが減ります。 - 分数の整理: (2)の計算では、
$$ \frac{P_{A1} V_A}{T_{A1}} + \frac{P_{B1} V_B}{T_{B1}} = \frac{P_2 V_A}{T_{A2}} + \frac{P_2 V_B}{T_{B2}} $$
という形になります。未知数が分母にある項(\(\frac{P_2 V_B}{T_{B2}}\))だけを片側に残し、他の項をすべて逆側に移項してから計算すると、見通しが良くなります。
$$ \frac{P_2 V_B}{T_{B2}} = \left( \frac{P_{A1} V_A}{T_{A1}} + \frac{P_{B1} V_B}{T_{B1}} \right) – \frac{P_2 V_A}{T_{A2}} $$ - 気体定数Rの扱い: 計算過程で気体定数 \(R\) が出てきても、慌てて \(8.31\) などを代入しないこと。ほとんどの場合、今回のように両辺で相殺されて消えます。文字式のまま計算を進めることの利点の一つです。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) 圧力: 体積は \(3.0 \rightarrow 10.0\) と約3.3倍に、絶対温度は \(300 \text{ K} \rightarrow 400 \text{ K}\) と約1.3倍になっています。圧力は \(P \propto \frac{T}{V}\) なので、\(P_2 \approx P_1 \times \frac{1.3}{3.3}\) となり、元の圧力より小さくなるはずです。\(2.0 \times 10^5 \times \frac{1.3}{3.3} \approx 0.79 \times 10^5\) となり、計算結果 \(8.0 \times 10^4 \text{ Pa}\) とほぼ一致し、妥当性が確認できます。
- (2) 温度: コックを開く前、BにはAよりも多くの物質量がありました(\(\frac{PV}{T}\) の値が \(10.0\) vs \(2.0\))。コックを開くと、BからAへ気体が移動します。最終的にAの物質量は増え(\(\frac{PV}{T}\) が \(2.0 \rightarrow 4.0\))、Bの物質量は減りました(\(10.0 \rightarrow 8.0\))。Bは分子を失ったにもかかわらず、初期温度 \(77^\circ\text{C}\) を保っているという結果になりました。これは、問題設定としてそのような温度に「保った」という外部からの操作があったことを意味します。もし断熱されたままなら、BからAへの膨張によりBの温度は下がるはずですが、今回は「温度を保った」という条件なので、計算結果が初期値と同じでも問題ありません。
- 別解との比較:
- (1)はボイル・シャルルの法則と、より基本的な状態方程式+物質量保存の2通りで解きました。両者で全く同じ結果が得られたことで、計算の正しさと、法則間の論理的なつながりを再確認できます。このような確認作業は、物理への深い理解を促します。
195 力のつり合いと気体の法則
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、ピストン付きシリンダー内の気体の状態変化と、それに連動する物体の運動を力学的に考察する複合問題です。熱力学と力学の法則を正しく適用する能力が試されます。
この問題の核心は、物体が動き出す「直前」という瞬間の物理的条件を正しく捉え、「力のつり合い」と「気体の法則」という2つの異なる分野の法則を連携させて解くことです。
- 初期の気体の圧力: \(p_0\) (大気圧に等しい)
- 初期の気体の温度: \(T_0\)
- シリンダーの断面積: \(S\)
- 初期のピストンの高さ: \(l_0\)
- 物体の質量: \(M\)
- 重力加速度: \(g\)
- ピストンおよびひもの質量は無視でき、ピストンはなめらかに動く。
- (1) 物体が上がり始めたときのシリンダー内の気体の圧力 \(p_1\)。
- (2) 物体が上がり始めたときの気体の温度 \(T_1\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「力のつり合いと気体の状態変化」です。気体を冷却することで内部圧力が変化し、その結果としてピストンに働く力が変化して、最終的に外部の物体を動かすという一連のプロセスを追います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力のつり合い: 物体が動き出す直前、系は静止しているため、関係する物体(ピストンと質量\(M\)の物体)それぞれに働く力はつり合っています。
- 圧力による力: 圧力が \(p\) の気体が面積 \(S\) の面に及ぼす力は \(F=pS\) と表されます。
- ボイル・シャルルの法則: 閉じ込められた気体の圧力、体積、温度の関係を示します。特に今回は、ピストンが動くまでは体積が一定の「定積変化」となります。
- 変化の瞬間の条件: 「物体が上がり始めた」という記述から、その瞬間に物体が床から受ける垂直抗力が \(0\) になると読み取ることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、(1)で問われている圧力 \(p_1\) を求めるために、物体が床から離れる瞬間に着目します。このとき、物体とピストンは静止していると見なせるため、それぞれに働く力のつり合いの式を立てます。これらの式を連立することで \(p_1\) を求めます。
- 次に、(2)で問われている温度 \(T_1\) を求めるために、気体の状態変化に着目します。初期状態から物体が動き出す直前までの変化は体積が一定の「定積変化」です。ボイル・シャルルの法則(シャルルの法則)を適用し、(1)で求めた \(p_1\) を用いて \(T_1\) を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
物体が上がり始めた瞬間の、シリンダー内の気体の圧力 \(p_1\) を求める問題です。この「上がり始め」という瞬間が物理的にどのような状態に対応するのかを考えることが出発点です。この瞬間、物体はまだ動いておらず、速度はゼロです。したがって、物体とピストンに働く力はつり合っていると考えることができます。特に重要なのは、物体が床から「離れる」瞬間なので、床が物体を押す力、すなわち垂直抗力がちょうど \(0\) になったと解釈することです。
この設問における重要なポイント
- 力の図示: 「質量\(M\)の物体」と「ピストン」という2つの物体に着目し、それぞれに働く力をすべて正確に図示します。
- 張力の役割: 1本のひもで繋がれているため、物体を上に引く張力とピストンを上に引く張力は同じ大きさ \(T\) です。
- 物体が離れる条件: 物体が床から離れる直前の瞬間では、物体が床から受ける垂直抗力 \(N\) が \(0\) になります。
- 力のつり合い: 物体とピストンのそれぞれについて、鉛直方向の力のつり合いの式を立てます。
具体的な解説と立式
物体が床から離れる直前の瞬間を考えます。このとき、物体とピストンは静止しているとみなせます。
まず、質量\(M\)の物体に働く力について考えます。物体には、鉛直上向きにひもの張力 \(T\) と床からの垂直抗力 \(N\)、鉛直下向きに重力 \(Mg\) が働きます。力のつり合いの式は、
$$ T + N – Mg = 0 $$
となります。物体が床から離れる直前なので、垂直抗力は \(N=0\) です。したがって、
$$ T – Mg = 0 \quad \cdots ① $$
次に、ピストンに働く力について考えます。ピストンには、鉛直上向きに内部の気体が押す力 \(p_1S\) とひもの張力 \(T\)、鉛直下向きに外部の大気が押す力 \(p_0S\) が働きます(ピストンの質量は無視)。力のつり合いの式は、
$$ p_1S + T – p_0S = 0 \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 力のつり合い
- 圧力と力の関係 \(F=pS\)
式①と②を連立して \(p_1\) を求めます。
まず、式①から張力 \(T\) が求まります。
$$ T = Mg $$
この結果を式②に代入します。
$$ p_1S + Mg – p_0S = 0 $$
この式を \(p_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_1S &= p_0S – Mg \\[2.0ex]
p_1 &= \frac{p_0S – Mg}{S} \\[2.0ex]
&= p_0 – \frac{Mg}{S}
\end{aligned}
$$
物体がちょうど浮き上がるためには、ひもが物体の重さ(\(Mg\))と同じ力で真上に引っ張る必要があります。一方、ピストンは、中の気体が押し上げる力とひもが引っ張る力の合計が、外の大気が押し下げる力と釣り合うことで静止しています。この「力の釣り合い」が成立する瞬間の気体の圧力がいくらになるかを、数式を使って計算します。
物体が上がり始めたときのシリンダー内の気体の圧力は \(p_1 = p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}\) です。
この結果は、気体を冷却して圧力が初期の \(p_0\) から \(\frac{Mg}{S}\) だけ減少したときに、物体が動き出すことを示しています。物体が実際に持ち上がるためには \(p_1 > 0\) である必要があり、そのためには \(p_0S > Mg\) という条件が満たされている必要があります。これは、大気圧がピストンを押す力が物体の重力より大きいことを意味し、物理的に妥当な条件と言えます。
問(2)
思考の道筋とポイント
物体が上がり始めたときの気体の温度 \(T_1\) を求める問題です。これは、シリンダー内の気体の状態変化の問題として捉えます。初期状態(温度 \(T_0\), 圧力 \(p_0\))から、気体を冷却していき、物体が動き出す直前の状態(温度 \(T_1\), 圧力 \(p_1\))に至るまでの変化を考えます。この過程で、ピストンは動いていないため、気体の体積は一定に保たれています。この「定積変化」という条件から、適切な気体の法則を選択して立式します。
この設問における重要なポイント
- 定積変化: 気体を冷却し始めてからピストンが動き出す直前まで、ピストンの位置は変わらないため、気体の体積は \(V_0 = Sl_0\) で一定です。
- 状態の特定:
- 初期状態: 圧力 \(p_0\), 体積 \(V_0 = Sl_0\), 絶対温度 \(T_0\)。
- 最終状態: 圧力 \(p_1\), 体積 \(V_1 = Sl_0\), 絶対温度 \(T_1\)。
- ボイル・シャルルの法則: 2つの状態を関係づけるために、ボイル・シャルルの法則 \(\frac{pV}{T} = \text{一定}\) を用います。体積が一定なので、これはシャルルの法則 \(\frac{p}{T} = \text{一定}\) となります。
具体的な解説と立式
閉じ込められた気体の初期状態と最終状態について、ボイル・シャルルの法則を適用します。
初期状態を(\(p_0, V_0, T_0\))、物体が動き出す直前の状態を(\(p_1, V_1, T_1\))とします。
ボイル・シャルルの法則より、
$$ \frac{p_0 V_0}{T_0} = \frac{p_1 V_1}{T_1} $$
この問題では、ピストンが動き出すまでは体積が一定なので、\(V_0 = V_1 = Sl_0\) です。したがって、上式は \(V_0\) と \(V_1\) が約分されて、
$$ \frac{p_0}{T_0} = \frac{p_1}{T_1} \quad \cdots ③ $$
となります。
使用した物理公式
- ボイル・シャルルの法則(またはシャルルの法則)
式③を \(T_1\) について解きます。
$$ T_1 = \frac{p_1}{p_0} T_0 $$
この式に、(1)で求めた \(p_1 = p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= \frac{p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}}{p_0} T_0 \\[2.0ex]
&= \left( \frac{p_0}{p_0} – \frac{Mg}{p_0S} \right) T_0 \\[2.0ex]
&= \left( 1 – \frac{Mg}{p_0S} \right) T_0
\end{aligned}
$$
分母と分子に \(S\) を掛けて整理すると、模範解答の形になります。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= \frac{p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}}{p_0} T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{\displaystyle\frac{p_0S – Mg}{S}}{p_0} T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{p_0S – Mg}{p_0S} T_0
\end{aligned}
$$
体積が一定のとき、気体の絶対温度と圧力は比例します。つまり、圧力が半分になれば、絶対温度も半分になります。(1)で、物体が浮き上がる瞬間の圧力が、元の圧力 \(p_0\) の \(\frac{p_1}{p_0}\) 倍になることがわかりました。したがって、温度も元の絶対温度 \(T_0\) の \(\frac{p_1}{p_0}\) 倍になるはずです。この関係を使って、そのときの温度 \(T_1\) を計算します。
思考の道筋とポイント
ボイル・シャルルの法則の代わりに、より根源的な法則である気体の状態方程式 \(pV=nRT\) を用いて解く方法です。初期状態と最終状態のそれぞれについて状態方程式を立て、変化しない量(物質量 \(n\) と気体定数 \(R\))を消去することで、温度 \(T_1\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 状態方程式の適用: 初期状態と最終状態のそれぞれについて、\(pV=nRT\) の式を立てます。
- 不変量の消去: この変化を通じて、気体の物質量 \(n\) と気体定数 \(R\) は変化しません。この \(nR\) の項を2つの式から消去することがポイントです。
- 定積条件: 体積が一定であること \(V = Sl_0\) を利用します。
具体的な解説と立式
シリンダー内の気体の物質量を \(n\)、気体定数を \(R\) とします。
初期状態(圧力 \(p_0\), 体積 \(Sl_0\), 温度 \(T_0\))における状態方程式は、
$$ p_0 (Sl_0) = nRT_0 \quad \cdots ④ $$
物体が動き出す直前の状態(圧力 \(p_1\), 体積 \(Sl_0\), 温度 \(T_1\))における状態方程式は、
$$ p_1 (Sl_0) = nRT_1 \quad \cdots ⑤ $$
使用した物理公式
- 気体の状態方程式 \(pV=nRT\)
式④から、定数となる \(nR\) の項を求めます。
$$ nR = \frac{p_0Sl_0}{T_0} $$
これを式⑤に代入します。
$$ p_1 (Sl_0) = \left( \frac{p_0Sl_0}{T_0} \right) T_1 $$
両辺に共通する \(Sl_0\) を消去すると、
$$ p_1 = \frac{p_0}{T_0} T_1 $$
この式は、メインの解法で用いたシャルルの法則の式と全く同じです。したがって、これ以降の計算も同様になり、
$$ T_1 = \frac{p_1}{p_0} T_0 = \frac{p_0S – Mg}{p_0S} T_0 $$
という結果が得られます。
気体の状態は「圧力・体積・温度」という3つのパラメータで決まりますが、これらは「気体の状態方程式」という一つの関係式で結ばれています。初めの状態と、物体が浮き上がる瞬間の状態、それぞれについてこの方程式を立てます。2つの式に共通する「気体の量」に関する部分を消去することで、求めたい温度 \(T_1\) を計算することができます。
物体が上がり始めたときの気体の温度は \(T_1 = \displaystyle\frac{p_0S – Mg}{p_0S} T_0\) です。
\(p_0S > Mg\) であるため、\(\frac{p_0S – Mg}{p_0S}\) の項は \(1\) より小さい正の値となります。したがって、\(T_1 < T_0\) となり、気体を「冷却した」という問題の設定と整合性が取れています。また、別解である状態方程式を用いたアプローチでも同じ結果が得られたことから、解答の妥当性が確認できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 力のつり合い(静力学):
- 核心: 物体が動き出す「直前」の状態は、力がつり合った静止状態とみなせます。この問題では、「ピストン」と「質量\(M\)の物体」という2つの物体に注目し、それぞれに働く力のつり合いを考えることが(1)を解くための鍵です。
- 理解のポイント: \(T-Mg=0\) と \(p_1S+T-p_0S=0\) という2つの式は、この物理現象を直接的に表現したものです。特に、圧力による力 \(F=pS\) を正しく力のつり合いの式に組み込むことが重要です。
- 気体の法則(熱力学):
- 核心: シリンダー内の気体は、冷却される過程で状態が変化します。この変化を記述するのが気体の法則です。ピストンが動くまでは体積が一定であるため、この変化は「定積変化」となります。
- 理解のポイント: ボイル・シャルルの法則 \(\frac{pV}{T}=\text{一定}\) を適用し、\(V=\text{一定}\) という条件からシャルルの法則 \(\frac{p}{T}=\text{一定}\) を導き出すのが(2)を解くための核心です。これにより、(1)で求めた圧力の変化と温度の変化を結びつけることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- U字管内の液体と気体: U字管の一方を封じ、気体を閉じ込めた問題。液柱の移動は、この問題のピストンの移動に対応し、液柱の重さによる圧力が力のつり合いに関わってきます。
- 熱気球: 気球内の空気を温めることで密度が下がり、浮力が重力を上回って浮上する問題。気球内外の圧力差や温度変化が、この問題のシリンダー内外の状況と類似しています。
- ばね付きピストン: ピストンの片側がばねで固定されている問題。力のつり合いを考える際に、張力の代わりにばねの弾性力 \(kx\) が加わります。気体の状態変化によってピストンが移動すると、ばねの弾性力も変化するため、より複雑な力のつり合いを考える必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- 系の状態変化を時系列で追う: 「初期状態」→「冷却中(定積変化)」→「物体が動き出す瞬間」→「物体が動いた後」のように、現象をステップごとに分解して考えます。
- 力学と熱力学の切り分け: どの部分が力学的な「力のつり合い」の問題で、どの部分が熱力学的な「気体の状態変化」の問題なのかを明確に区別します。この問題では、(1)が力学、(2)が熱力学に対応します。
- 「〜し始める」「〜する直前」の解釈: これらの言葉は、物理的な状態の「境界」を示唆しています。この問題の「物体が上がり始めた」は、「垂直抗力が0になる瞬間」と読み替えることが解法の鍵です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 力の向きの間違い:
- 誤解: 気体の圧力 \(p\) による力 \(pS\) の向きを間違える。圧力は面を「押す」向きに働きます。シリンダー内の気体はピストンを上向きに押し、外の大気はピストンを下向きに押します。
- 対策: 必ず着目する物体(この場合はピストン)を描き、その物体が「どの方向から押されているか」を考えて力の矢印を記入する習慣をつけましょう。
- 張力の扱い:
- 誤解: ピストンと物体に働く張力を別々の文字(例: \(T_1, T_2\))で置いてしまう。滑車を介した1本のひもなので、張力の大きさはどこでも等しく \(T\) です。
- 対策: 「軽くて伸び縮みしない糸」や「なめらかな滑車」という条件がある場合、張力は一定であるという基本原則を再確認しましょう。
- 気体の法則の誤適用:
- 誤解: ピストンが動いていない(体積が一定の)過程なのに、ボイルの法則(\(pV=\text{一定}\))や、圧力一定と勘違いしてシャルルの法則(\(\frac{V}{T}=\text{一定}\))を適用してしまう。
- 対策: 常に「圧力・体積・温度」のうち、何が変化し、何が一定に保たれているのかを明確に意識しましょう。この問題では、物体が動き出すまでは「体積が一定」です。迷ったら、基本のボイル・シャルルの法則 \(\frac{pV}{T}=\text{一定}\) から出発するのが安全です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 力のつり合いの図解: (1)を解く際には、「ピストン」と「物体M」を別々の物体として描き出し、それぞれに働く力をすべて矢印で記入した「力の作用図(フリーボディダイアグラム)」を作成することが極めて有効です。ピストンには「内部気体の力 \(p_1S\)」「張力 \(T\)」「大気圧の力 \(p_0S\)」の3つ、物体Mには「張力 \(T\)」「重力 \(Mg\)」「垂直抗力 \(N\)」の3つが働くことが一目瞭然になります。
- p-Tグラフによる状態変化の可視化: (2)の気体の状態変化は、縦軸に圧力 \(p\)、横軸に絶対温度 \(T\) をとったグラフで考えると理解が深まります。初期状態 \((T_0, p_0)\) から、原点を通る直線上を左下に向かって状態が変化していき、圧力 \(p_1\) に達した点が最終状態 \((T_1, p_1)\) となります。この直線関係がシャルルの法則 \(\frac{p}{T}=\text{一定}\) を視覚的に表現しています。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 着目物体を明確に: 複数の物体が絡む問題では、どの物体についての力のつり合いを考えているのかを明確にするため、物体をまるで囲むなどして区別すると良いでしょう。
- 力の作用点を意識する: 圧力による力はピストンの面に、重力は物体の重心に、張力はひもの接続点に働くことを意識して描くと、より正確な図になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 力のつり合いの式 (\(\sum F = 0\)):
- 選定理由: (1)で、物体が動き出す「直前」という、加速度がゼロの静止状態を数式で表現するため。
- 適用根拠: ニュートンの第一法則(慣性の法則)に基づき、静止している物体に働く力の合力はゼロになるという力学の基本原理を適用します。
- ボイル・シャルルの法則 (\(\frac{p_0V_0}{T_0} = \frac{p_1V_1}{T_1}\)):
- 選定理由: (2)で、閉じ込められた気体の初期状態と最終状態の関係を記述するため。
- 適用根拠: この法則は、気体の圧力、体積、絶対温度という3つの状態量を結びつける普遍的な関係式です。特に、この問題のように物質量 \(n\) が一定の場合に極めて有効です。体積が一定という条件 \(V_0=V_1\) を適用することで、より単純なシャルルの法則 \(\frac{p_0}{T_0} = \frac{p_1}{T_1}\) が導かれます。
- 気体の状態方程式 (\(pV=nRT\)):
- 選定理由: (2)の別解として。ボイル・シャルルの法則の根源となる、より基本的な法則だからです。
- 適用根拠: この方程式は、気体の状態量を物質量 \(n\) と気体定数 \(R\) を介して結びつけます。初期状態と最終状態でそれぞれ式を立て、不変量である \(nR\) を消去することで、ボイル・シャルルの法則と同じ関係式を導出できます。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 圧力の計算:
- 戦略: 物体が床から離れる瞬間の力のつり合いを考える。
- フロー: ①物体Mとピストン、それぞれに働く力を図示 → ②物体Mが床から離れる条件(垂直抗力\(N=0\))から、張力 \(T\) を求める (\(T=Mg\)) → ③ピストンの力のつり合いを立式 (\(p_1S+T-p_0S=0\)) → ④求めた \(T\) を代入し、\(p_1\) について解く。
- (2) 温度の計算:
- 戦略: 初期状態から物体が動き出す直前までの気体の定積変化に着目する。
- フロー: ①初期状態 \((p_0, Sl_0, T_0)\) と最終状態 \((p_1, Sl_0, T_1)\) を確認 → ②体積が一定であることから、ボイル・シャルルの法則を簡略化し、シャルルの法則を立式 (\(\frac{p_0}{T_0} = \frac{p_1}{T_1}\)) → ③式を \(T_1\) について解き、(1)で求めた \(p_1\) の式を代入して計算。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める: (2)の計算では、\(T_1 = \frac{p_1}{p_0}T_0\) の式に、(1)で求めた \(p_1 = p_0 – \frac{Mg}{S}\) をそのまま代入します。途中で具体的な数値を代入する問題ではないため、文字式の整理が中心となります。分数の計算を丁寧に行うことが重要です。
- 単位系の確認: この問題では具体的な数値計算はありませんが、普段から圧力の単位(Pa = N/m²)、力の単位(N)、面積の単位(m²)の関係を意識しておくことが、式の妥当性を判断する上で役立ちます。例えば、\(p_0 – \frac{Mg}{S}\) という式では、\(p_0\) と \(\frac{Mg}{S}\) の単位が同じ圧力の単位になっていることを確認できます。
- 最終的な式の検算: (2)で得られた \(T_1 = \frac{p_0S – Mg}{p_0S} T_0\) という結果について、もし \(M=0\) ならば、\(T_1 = T_0\) となり、何も変化しないはずだ、という極端な場合を考えてみましょう。式は \(T_1 = \frac{p_0S}{p_0S}T_0 = T_0\) となり、物理的な直感と一致します。このような簡単なチェックで、式の形が妥当かどうかを吟味できます。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) 圧力 \(p_1\): \(p_1 = p_0 – \frac{Mg}{S}\) という結果は、\(p_1 < p_0\) であることを示しています。気体を「冷やした」のだから、圧力が下がるのは当然であり、物理的に妥当です。また、物体の質量 \(M\) が大きいほど、より多くの力で引っ張る必要があり、そのためにはピストン内外の圧力差を大きくする必要があるため、\(p_1\) はより小さくなるはずです。この式は、\(M\) が大きいほど \(p_1\) が小さくなる関係を示しており、直感と一致します。
- (2) 温度 \(T_1\): \(T_1 = \frac{p_0S – Mg}{p_0S} T_0\) という結果は、\(T_1 < T_0\) であることを示しています。これも「冷やした」という設定と一致しており、妥当です。圧力が下がった分だけ、絶対温度も比例して下がっていることを示しています。
- 別解との比較:
- (2)の温度は、ボイル・シャルルの法則(現象論的な法則)と、気体の状態方程式(よりミクロな視点を含む法則)のどちらを使っても同じ結果が得られました。異なるアプローチで同じ結論に至ることは、その結論の正しさを強力に裏付けます。これにより、気体の法則の理解が深まります。
196 気体の密度
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、理想気体の状態方程式を、密度などの物理量を用いて変形し、その関係性を理解することを目的とした穴埋め問題です。基本的な定義と公式の変形を正確に行う能力が問われます。
- 圧力: \(p\)
- 体積: \(V\)
- 絶対温度: \(T\)
- 質量: \(W\)
- モル質量: \(M\)
- 気体定数: \(R\)
- 密度: \(\rho\)
- (1) 気体の物質量を \(W, M\) で表した式。
- (2) 理想気体の状態方程式を \(W, M, R, T\) を用いて表した式。
- (3) 気体の密度を \(W, V\) で表した式。
- (4) 状態方程式を変形して得られる \(\displaystyle\frac{p}{\rho T}\) の値。
- (5) 気体の状態が変化したときの、圧力、密度、温度の関係式。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「理想気体の状態方程式の応用と変形」です。状態方程式という基本法則を、他の物理量(質量、モル質量、密度)と結びつけることで、より応用範囲の広い関係式を導出するプロセスを学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 物質量、質量、モル質量の関係: これらの量の定義を正しく理解していることが全ての出発点です。
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\) という基本形を正確に覚えていること。
- 密度の定義: 密度が質量と体積からどのように定義されるかを理解していること。
- 式変形による物理量の関係性の導出: 複数の基本式を組み合わせて、特定の物理量を消去し、新たな関係式を導く数学的なスキル。
基本的なアプローチは以下の通りです。
問題文の誘導に従い、(1)から(5)まで順番に空欄を埋めていきます。前の設問の結果を次の設問で利用する形式になっているため、一つ一つ着実に解き進めることが重要です。
問(1)
思考の道筋とポイント
気体の物質量 [mol] を、その質量 \(W\) [kg] とモル質量 \(M\) [kg/mol] を用いて表す問題です。これは物質量の定義そのものです。
モル質量 \(M\) が「気体 1 mol あたりの質量」であることを理解していれば、全体の質量 \(W\) を \(M\) で割ることで、その気体が何 mol あるか(物質量 \(n\))が計算できることがわかります。
この設問における重要なポイント
- モル質量の定義: モル質量 \(M\) は、物質 1 mol あたりの質量を表す量です。単位は [g/mol] がよく使われますが、この問題では [kg/mol] で与えられている点に注意します。
- 物質量の計算: 物質量 \(n\) は、全体の質量 \(W\) をモル質量 \(M\) で割ることで求められます。
具体的な解説と立式
求める物質量を \(n\) [mol] とする。
物質量、質量、モル質量の関係は、定義より以下のようになります。
$$ n = \frac{W}{M} $$
使用した物理公式
- 物質量の定義
これは定義そのものであるため、計算過程はありません。
例えば、1箱に10個のリンゴが入っているとき、リンゴが全部で50個あれば、箱の数は 50 ÷ 10 = 5箱 と計算できます。これと同じように、気体1molあたりの重さが \(M\) [kg] で、気体が全部で \(W\) [kg] あれば、その気体が何molあるか(\(n\))は、\(n = W \div M\) で計算できます。
気体の物質量は \(\displaystyle\frac{W}{M}\) [mol] となります。単位を確認すると、[kg] / [kg/mol] = [mol] となり、正しく物質量の単位になっていることがわかります。
問(2)
思考の道筋とポイント
理想気体の状態方程式を、物質量 \(n\) の代わりに質量 \(W\) とモル質量 \(M\) を用いて表す問題です。
まず、理想気体の状態方程式の基本形 \(pV=nRT\) を書き出し、(1)で求めた \(n = \displaystyle\frac{W}{M}\) を代入するだけで解くことができます。
この設問における重要なポイント
- 理想気体の状態方程式の基本形: \(pV=nRT\) を正確に記憶していることが大前提です。
- 代入による式の書き換え: 前の設問の結果を正しく代入し、式を書き換えます。
具体的な解説と立式
理想気体の状態方程式は、物質量を \(n\) として次のように表されます。
$$ pV = nRT $$
ここに、(1)で求めた物質量の関係式 \(n = \displaystyle\frac{W}{M}\) を代入します。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\)
\(pV=nRT\) の \(n\) に \(n = \displaystyle\frac{W}{M}\) を代入します。
$$ pV = \left( \frac{W}{M} \right) RT $$
整理すると、
$$ pV = \frac{W}{M}RT $$
となります。
気体のふるまいを記述する基本ルールが \(pV=nRT\) です。この式の「気体の量(\(n\))」の部分を、(1)で求めた「重さを使った表現(\(\frac{W}{M}\))」に置き換える作業です。
理想気体の状態方程式は \(pV = \displaystyle\frac{W}{M}RT\) と表されます。この形式は、気体の物質量(mol)が直接わからなくても、質量(kg)がわかれば状態方程式を適用できることを示しており、実用上非常に便利です。
問(3)
思考の道筋とポイント
気体の密度 \(\rho\) [kg/m³] を、質量 \(W\) [kg] と体積 \(V\) [m³] を用いて表す問題です。これも密度の定義そのものです。
密度は「単位体積あたりの質量」と定義されるため、全体の質量を全体の体積で割ることで求められます。
この設問における重要なポイント
- 密度の定義: 密度(\(\rho\)) = 質量(\(W\)) ÷ 体積(\(V\)) という関係を正しく式で表現します。
具体的な解説と立式
密度の定義より、気体の密度 \(\rho\) は、質量 \(W\) を体積 \(V\) で割ったものなので、
$$ \rho = \frac{W}{V} $$
と表されます。
使用した物理公式
- 密度の定義
これは定義そのものであるため、計算過程はありません。
密度とは、物質がどれくらいぎっしり詰まっているかを表す指標です。全体の重さ(\(W\))を、それが占める空間の大きさ(\(V\))で割ることで計算できます。
気体の密度は \(\rho = \displaystyle\frac{W}{V}\) [kg/m³] となります。単位を確認すると、[kg] / [m³] となり、正しく密度の単位になっていることがわかります。
問(4)
思考の道筋とポイント
(2)で導いた状態方程式を、(3)の密度の定義を使って変形し、\(\displaystyle\frac{p}{\rho T}\) という量を計算する問題です。
(2)の式 \(pV = \displaystyle\frac{W}{M}RT\) と (3)の式 \(\rho = \displaystyle\frac{W}{V}\) を連立させ、最終的に \(p, \rho, T\) を含む形に変形することを目指します。
この設問における重要なポイント
- 式変形の目標設定: \(\displaystyle\frac{p}{\rho T}\) という形を作ることを意識して、不要な文字(この場合は \(V\) と \(W\))を消去していきます。
- 連立方程式の処理: 複数の式から特定の変数を消去する、基本的な代数計算の能力が求められます。
具体的な解説と立式
(2)で求めた、質量 \(W\) を用いた状態方程式は、
$$ pV = \frac{W}{M}RT \quad \cdots ① $$
(3)で確認した密度の定義式は、
$$ \rho = \frac{W}{V} \quad \cdots ② $$
これらの式から \(V\) と \(W\) を消去し、\(p, \rho, T\) の関係式を導きます。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式
- 密度の定義
まず、式②を \(V\) について解きます。
$$ V = \frac{W}{\rho} $$
この \(V\) を式①に代入します。
$$ p \left( \frac{W}{\rho} \right) = \frac{W}{M}RT $$
両辺に \(W\) があるので、\(W \neq 0\) より両辺を \(W\) で割って消去します。
$$ \frac{p}{\rho} = \frac{RT}{M} $$
最後に、この式の両辺を絶対温度 \(T\) で割ると、求めたい形になります。
$$ \frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M} $$
気体の基本ルール(状態方程式)と、密度の定義式という2つの道具を使って、パズルを解くように式を組み立て直します。目標は、圧力・密度・温度だけの関係式を作ることです。体積(\(V\))と質量(\(W\))を消去するように式を整理していくと、目標の形にたどり着きます。
\(\displaystyle\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) となります。右辺の \(R\) は気体定数、\(M\) はその気体のモル質量であり、どちらも気体の種類が決まれば変わらない「定数」です。つまり、この式は「ある特定の種類の気体については、その状態がどのように変化しても、\(\frac{p}{\rho T}\) という値は常に一定である」という重要な物理法則を示しています。
問(5)
思考の道筋とポイント
気体の状態が \((p, \rho, T)\) から \((p’, \rho’, T’)\) に変化したときの関係式を求める問題です。
(4)で導いた \(\displaystyle\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) という関係が、この設問を解く鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 不変量に着目: (4)の結果から、\(\displaystyle\frac{p}{\rho T}\) という組み合わせの値が、気体の種類に固有の定数 \(\displaystyle\frac{R}{M}\) に等しい、つまり「不変量」であることを見抜きます。
- 保存則の立式: ある量が変化の前後で不変であるならば、変化前の値と変化後の値は等しい、という等式を立てることができます。
具体的な解説と立式
(4)の結果より、ある気体の状態 \((p, \rho, T)\) において、以下の関係が成り立ちます。
$$ \frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M} $$
気体の種類が変わらなければ、状態が \((p’, \rho’, T’)\) に変化しても、モル質量 \(M\) と気体定数 \(R\) は変わらないため、同様に
$$ \frac{p’}{\rho’ T’} = \frac{R}{M} $$
が成り立ちます。
両式とも右辺が同じ \(\displaystyle\frac{R}{M}\) なので、左辺どうしも等しくなります。
使用した物理公式
- (4)で導出した関係式
上記の考察から、直ちに以下の等式が導かれます。
$$ \frac{p}{\rho T} = \frac{p’}{\rho’ T’} $$
(4)で、\(\frac{p}{\rho T}\) という値が、その気体の「背番号」のような定数(\(\frac{R}{M}\))になることがわかりました。気体の状態(圧力、密度、温度)がいろいろ変わっても、同じ気体である限りこの「背番号」は変わりません。したがって、変化する前の \(\frac{p}{\rho T}\) と、変化した後の \(\frac{p’}{\rho’ T’}\) は、同じ値になるはずです。
関係式は \(\displaystyle\frac{p}{\rho T} = \frac{p’}{\rho’ T’}\) となります。
この関係式には、気体の質量 \(W\) や体積 \(V\) が含まれていません。そのため、シリンダーのように気体を「閉じ込めていない」場合、例えば部屋の空気や熱気球の内部の空気のように、空気の出入りがある状況でも、ある一点における圧力・密度・温度の間にはこの関係が成り立ちます。これは、ボイル・シャルルの法則が「閉じ込めた一定量の気体」にしか適用できないのに対し、より広い応用を持つ関係式であることを示しています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 理想気体の状態方程式 (\(pV=nRT\)):
- 核心: この問題全体を貫く最も基本的な法則です。圧力(\(p\))、体積(\(V\))、物質量(\(n\))、絶対温度(\(T\))という4つの状態量を結びつけます。
- 理解のポイント: この法則を単に覚えるだけでなく、物質量(\(n\))を質量(\(W\))とモル質量(\(M\))で表した \(n=\frac{W}{M}\) や、体積(\(V\))を密度(\(\rho\))と質量(\(W\))で表した \(V=\frac{W}{\rho}\) といった他の定義式と組み合わせることで、様々な形に変形できる柔軟性を理解することが重要です。
- 物理量の定義の正確な理解:
- 核心: 物質量、モル質量、密度の定義が、この問題の各設問の土台となっています。これらの定義が曖昧だと、式変形の第一歩でつまずいてしまいます。
- 理解のポイント:
- 物質量 \(n = \frac{W}{M}\) (全体の質量 ÷ 1molあたりの質量)
- 密度 \(\rho = \frac{W}{V}\) (質量 ÷ 体積)
という関係を、単位も含めて正確に把握しておくことが不可欠です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 熱気球の浮力計算: 熱気球が浮上する原理は、内部の空気を温めて密度を小さくし、周囲の冷たい(密度の大きい)空気から受ける浮力を大きくすることです。このとき、気球内外の空気の密度を計算するために、まさにこの問題で導出した \(\rho = \frac{pM}{RT}\) という関係式が活躍します。
- 大気圧の高度変化: 地上と上空では、気圧も温度も異なります。上空の空気の密度を推定する際に、この問題で導いた関係式が用いられます。
- 化学反応における気体の質量計算: 化学反応で発生または消費される気体の体積、圧力、温度が分かっているとき、その気体の質量を求める際に、状態方程式を質量ベースに書き換えた \(pV = \frac{W}{M}RT\) が直接的に役立ちます。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた物理量を確認する: 問題文で与えられている文字(\(p, V, T, W, M, \rho\) など)をリストアップします。
- 求めたい物理量を確認する: 何をどの文字で表すことがゴールなのかを明確にします。
- 関係式を書き出す: 関連すると思われる公式(状態方程式、密度の定義など)をすべて書き出します。
- 不要な文字を消去する: ゴールの式に含まれない文字を、連立方程式を解く要領で消去していく、という方針を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 文字の混同:
- 誤解: 質量(\(W\))とモル質量(\(M\))を混同する。あるいは、物質量(\(n\))と質量(\(W\))を同じものとして扱ってしまう。
- 対策: それぞれの文字が何を表す物理量で、単位は何なのかを常に意識しましょう。\(W\) [kg], \(M\) [kg/mol], \(n\) [mol] のように、単位をセットで覚えるのが効果的です。
- 絶対温度の使い忘れ:
- 誤解: 状態方程式やボイル・シャルルの法則で、セルシウス温度 [℃] をそのまま使ってしまう。
- 対策: 気体の法則で使う温度は「必ず絶対温度 [K]」であると徹底して覚えましょう。\(T[\text{K}] = t[^\circ\text{C}] + 273.15\) の関係は常に念頭に置く必要があります。
- 式変形の過程での計算ミス:
- 誤解: \(pV = \frac{W}{M}RT\) から \(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) を導く際に、移項や割り算を間違える。
- 対策: 焦らず、一行ずつ丁寧に式変形を行いましょう。特に、分数が絡む計算では、どの項が分子でどの項が分母にあるのかを明確にしながら進めることが重要です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化:
- 定数 \(\frac{R}{M}\) のイメージ: \(\frac{R}{M}\) という値は、その気体に固有の「ID番号」や「背番号」のようなものだとイメージすると良いでしょう。気体定数 \(R\) は全ての理想気体で共通の定数ですが、それをモル質量 \(M\) で割ることで、気体の種類ごとに異なる値になります。例えば、水素(\(M \approx 0.002\) kg/mol)と二酸化炭素(\(M \approx 0.044\) kg/mol)では、この「ID番号」の値は大きく異なります。
- \(\frac{p}{\rho T} = \text{一定}\) のイメージ: この関係は、「圧力 \(p\) を大きくすると、密度 \(\rho\) か温度 \(T\) (あるいは両方)もそれに比例して大きくならなければ、この等式は保てない」ということを意味します。例えば、温度を一定に保ったまま気体を圧縮して圧力を2倍にすると、分子がぎゅっと詰まるので密度も2倍になります。これにより、\(\frac{2p}{2\rho T} = \frac{p}{\rho T}\) となり、関係が保たれる、というように具体的な変化をイメージすると理解が深まります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 物質量の定義式 (\(n = W/M\)):
- 選定理由: (1)で、質量というマクロな量と、化学の基本単位である物質量を結びつけるため。また、(2)で状態方程式を質量ベースの式に書き換えるための準備として必要。
- 適用根拠: モル質量の定義そのものです。
- 理想気体の状態方程式 (\(pV=nRT\)):
- 選定理由: 気体の状態を表す最も基本的な関係式であり、問題全体の出発点となるため。
- 適用根拠: 多数の実験事実から導かれた、理想気体の振る舞いを記述する基本法則です。
- 密度の定義式 (\(\rho = W/V\)):
- 選定理由: (3)で定義を確認し、(4)で状態方程式から体積 \(V\) と質量 \(W\) を消去し、代わりに密度 \(\rho\) を導入するために必要。
- 適用根拠: 密度の定義そのものです。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 物質量の導出:
- 戦略: 物質量、質量、モル質量の定義を思い出す。
- フロー: ①質量 \(W\) をモル質量 \(M\) で割ると物質量 \(n\) になる、という定義から \(n = \frac{W}{M}\) を導く。
- (2) 状態方程式の変形:
- 戦略: 状態方程式の \(n\) に(1)の結果を代入する。
- フロー: ① \(pV=nRT\) を書く → ② \(n\) に \(\frac{W}{M}\) を代入し、\(pV = \frac{W}{M}RT\) を得る。
- (3) 密度の定義:
- 戦略: 密度の定義を思い出す。
- フロー: ①密度は質量を体積で割ったもの、という定義から \(\rho = \frac{W}{V}\) を導く。
- (4) 新しい関係式の導出:
- 戦略: (2)の式と(3)の式を連立させ、\(V\) と \(W\) を消去する。
- フロー: ①(3)の式を \(V = \frac{W}{\rho}\) と変形 → ②これを(2)の式に代入し、\(p(\frac{W}{\rho}) = \frac{W}{M}RT\) を得る → ③両辺を \(W\) で割り、\(\frac{p}{\rho} = \frac{RT}{M}\) を得る → ④両辺を \(T\) で割り、\(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) を得る。
- (5) 保存則の立式:
- 戦略: (4)の結果が、状態変化の前後で不変であることを利用する。
- フロー: ①変化前の状態で \(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) → ②変化後の状態で \(\frac{p’}{\rho’ T’} = \frac{R}{M}\) → ③両者は等しいので、\(\frac{p}{\rho T} = \frac{p’}{\rho’ T’}\) と結論づける。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の扱いに慣れる: この問題はすべて文字式での計算です。日頃から、具体的な数値を代入する前に、文字式のまま計算を最後まで進める練習をしておくと、見通しが良くなり、計算ミスも減ります。
- 単位による検算: 式変形の各段階で、両辺の単位が一致しているかを確認する習慣をつけましょう。例えば、\(\frac{p}{\rho} = \frac{RT}{M}\) の両辺の単位を考えると、
- 左辺: \(\frac{[\text{N/m}^2]}{[\text{kg/m}^3]} = \frac{[\text{N} \cdot \text{m}]}{[\text{kg}]} = \frac{[\text{J}]}{[\text{kg}]}\)
- 右辺: \(\frac{[\text{J/(mol}\cdot\text{K)}] \cdot [\text{K}]}{[\text{kg/mol}]} = \frac{[\text{J/mol}]}{[\text{kg/mol}]} = \frac{[\text{J}]}{[\text{kg}]}\)
となり、両辺の単位が一致していることが確認できます。これにより、式の形が正しい可能性が高いと判断できます。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 導出した式の物理的意味を考える:
- \(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) という式は、単なる数式の変形結果ではありません。「圧力は密度と絶対温度に比例する」という物理的な関係性を表しています。\(p \propto \rho T\) ということです。この関係が直感的に妥当かどうかを考えてみましょう。
- 温度が一定のとき、気体を圧縮して密度を高くすれば、分子が壁に衝突する頻度が増えるので圧力は高くなるはず(\(p \propto \rho\))。これは妥当です。
- 密度が一定のとき(体積一定で)、気体を加熱して温度を高くすれば、分子の運動エネルギーが増して壁に強く衝突するので圧力は高くなるはず(\(p \propto T\))。これも妥当です。
このように、導出した式が物理的な直感と一致するかを吟味する習慣は、深い理解につながります。
- \(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) という式は、単なる数式の変形結果ではありません。「圧力は密度と絶対温度に比例する」という物理的な関係性を表しています。\(p \propto \rho T\) ということです。この関係が直感的に妥当かどうかを考えてみましょう。
- 法則の適用範囲を意識する:
- 最後に問題文で「この関係は、熱気球内の空気のような閉じ込めていない気体でも成り立つ」と述べられています。なぜボイル・シャルルの法則ではダメで、この関係式なら良いのかを考えましょう。ボイル・シャルルの法則は \(n=\text{一定}\) が前提ですが、熱気球は空気が膨張すると一部が外に逃げるため \(n\) は一定ではありません。一方、\(\frac{p}{\rho T} = \frac{R}{M}\) は、ある瞬間の、ある場所における状態量の関係を示しており、気体の総量(\(n\)や\(W\))を含んでいません。だからこそ、開放系(閉じ込めていない系)でも適用できるのです。この違いを理解することが、この問題の最も重要な学びの一つです。
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