Step 2
174 内部エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「気体の内部エネルギーと温度の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 内部エネルギーの定義: 物質を構成している原子・分子が持つエネルギーの総和です。具体的には、「原子・分子の熱運動による運動エネルギー」と「原子・分子間にはたらく力による位置エネルギー」の2つの和で表されます。
- 温度と熱運動: 温度は、物質を構成する原子・分子の熱運動の激しさを示す指標です。温度が高いほど、熱運動は激しくなります。
- 気体の内部エネルギーの特徴: 気体、特に高校物理で扱う理想気体では、分子間の距離が非常に大きいため、分子間力は無視できるほど小さいと考えます。そのため、分子間力による位置エネルギーも無視でき、内部エネルギーは実質的に「熱運動の運動エネルギーの総和」と等しくなります。
- 内部エネルギーと温度の関係: 上記の理由から、気体の内部エネルギーは熱運動の激しさ、すなわち温度によって決まります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、温度と原子・分子の熱運動の激しさの関係を考え、1つ目の空欄を埋めます。
- 次に、熱運動の激しさと内部エネルギーの大きさの関係を考え、2つ目の空欄を埋めます。
問
思考の道筋とポイント
気体の内部エネルギーが何によって決まるのか、特に「温度」とどのような関係にあるのかを正しく理解しているかが問われる知識問題です。「温度が高い」→「分子の動きが激しい」→「運動エネルギーが大きい」→「内部エネルギーが大きい」という一連の論理の流れを正確に組み立てることがポイントです。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギーは、構成する原子・分子の「熱運動の運動エネルギー」と「分子間力による位置エネルギー」の総和である。
- 気体(特に理想気体)では、分子間力が非常に小さいため、位置エネルギーは無視できると考える。
- 温度は、原子・分子の熱運動の激しさ(平均運動エネルギー)の指標である。
- したがって、気体の内部エネルギーは、実質的に熱運動の運動エネルギーのみで決まり、温度に比例する。
具体的な解説と立式
問題文の前半で、内部エネルギーの定義が説明されています。
「内部エネルギー = (熱運動の運動エネルギー) + (分子間力による位置エネルギー)」
そして、「気体では後者(位置エネルギー)は無視できる」とあるため、気体の内部エネルギーは実質的に「熱運動の運動エネルギーの総和」と考えることができます。
次に、文章の後半部分を考えます。
物理学における「温度」とは、原子や分子のランダムな熱運動の激しさを表す指標です。
したがって、温度が 高い ほど、原子・分子の熱運動はより激しくなります。これが1つ目の空欄の答えです。
熱運動が激しいということは、原子・分子1個あたりの平均運動エネルギーが大きいことを意味します。気体の内部エネルギーは、この運動エネルギーの総和にほぼ等しいので、結果として内部エネルギーも 大きい と結論付けられます。これが2つ目の空欄の答えです。
使用した物理公式
- 内部エネルギーの定義: \(U = K_{\text{熱運動}} + U_{\text{分子間力}}\)
- 理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) (単原子分子の場合)。この式は、内部エネルギー\(U\)が絶対温度\(T\)に比例することを示しています。
この問題は知識を問うものであり、具体的な計算は不要です。
「温度」は、物質の中の小さなつぶ(原子・分子)がどれだけ元気に動き回っているかを示すバロメーターのようなものです。温度が「高い」ということは、つぶたちが激しくブルブル震えたり、飛び回ったりしている状態を意味します。
一方、「内部エネルギー」は、このつぶたちの元気さ(運動エネルギー)の合計金額のようなものです。
したがって、温度が「高い」ほど、つぶたちは元気で、内部エネルギーも「大きい」となります。
空欄に入るのは、それぞれ「高い」「大きい」となります。この「気体の内部エネルギーは温度だけで決まる」という関係は、熱力学の基本であり、気体の状態方程式や熱力学第一法則を理解する上での大前提となる重要な知識です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 内部エネルギーの正体:
- 核心: 物質の内部エネルギーとは、その物質を構成する無数の原子や分子が持つエネルギーの総和です。これは大きく分けて2つの要素からなります。
- 熱運動の運動エネルギー: 原子・分子がランダムに動き回る(並進運動)、回転する(回転運動)、振動する(振動運動)ことによる運動エネルギーの合計。
- 分子間力による位置エネルギー: 原子・分子同士が引き合ったり反発したりする力(分子間力)に起因する位置エネルギーの合計。
- 核心: 物質の内部エネルギーとは、その物質を構成する無数の原子や分子が持つエネルギーの総和です。これは大きく分けて2つの要素からなります。
- 温度と内部エネルギーの関係:
- 核心: 「温度」とは、原子・分子の熱運動の激しさ(より正確には、1分子あたりの平均運動エネルギー)をマクロな視点で表した量です。
- 理解のポイント:
- 温度が高い ⇔ 熱運動が激しい ⇔ 運動エネルギーが大きい という関係が成り立ちます。
- 理想気体の場合: 分子間力を0とみなすため、位置エネルギーも0と考えます。その結果、理想気体の内部エネルギーは、熱運動の運動エネルギーの総和そのものとなり、絶対温度にのみ比例します。これは熱力学における極めて重要な結論です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 固体・液体との比較: 固体や液体の場合、分子間の距離が近く分子間力が無視できないため、内部エネルギーを考える際には位置エネルギーも重要になります。例えば、氷が水に融解するとき、温度(運動エネルギー)は変わらなくても、分子間力に逆らって分子を引き離すためにエネルギー(融解熱)が必要となり、位置エネルギーが増加します。
- 熱力学第一法則との関連: 気体に熱を与えたり(\(Q_{\text{in}}\))、気体が仕事をしたり(\(W_{\text{out}}\))すると、内部エネルギーが変化します(\(\Delta U = Q_{\text{in}} – W_{\text{out}}\))。この\(\Delta U\)は、結局のところ温度変化\(\Delta T\)と直結している、という問題に応用されます。
- 定積変化・断熱変化:
- 定積変化: 体積が変わらないので気体は仕事をしません(\(W_{\text{out}}=0\))。したがって、与えられた熱はすべて内部エネルギーの増加(=温度上昇)に使われます。
- 断熱変化: 熱の出入りがない(\(Q_{\text{in}}=0\))状態で気体が膨張(仕事をする)と、内部エネルギーが減少し、温度が下がります。
- 初見の問題での着眼点:
- 物質の状態を確認: 問題が気体を扱っているのか、液体や固体を扱っているのかを確認します。気体(特に理想気体)であれば、「内部エネルギーは温度だけで決まる」という強力な原則が使えます。
- 「内部エネルギー」という言葉の定義を思い出す: この言葉が出てきたら、すぐに「運動エネルギー」と「位置エネルギー」の和である、という基本定義に立ち返ります。
- 温度と分子運動のイメージを結びつける: 「温度」というマクロな量と、「分子の激しい運動」というミクロなイメージを常にセットで考える癖をつけます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 内部エネルギーと熱量の混同:
- 誤解: 「熱い物体は多くの熱量を持っている」と考えてしまう。
- 対策: 「内部エネルギー」は物体がその状態(温度や体積)で「持っている」エネルギー(状態量)です。一方、「熱(熱量)」は、温度差によって物体間を「移動する」エネルギーのことであり、物体が「持っている」ものではありません。この区別は非常に重要です。蛇口から出る「水」が熱量、バケツに「溜まった水」が内部エネルギー、と例えると分かりやすいかもしれません。
- 温度と熱量の混同:
- 誤解: 温度が高い物体は、必ず温度が低い物体より多くの熱エネルギーを持っている(内部エネルギーが大きい)と考えてしまう。
- 対策: 温度は「平均」の激しさ、内部エネルギーは「合計」のエネルギーです。例えば、温度が100℃のコップ1杯の水よりも、温度が20℃の風呂釜一杯の水の方が、分子の数は圧倒的に多いため、内部エネルギーの「合計」は大きくなります。
- 理想気体と実在気体の違いの無視:
- 誤解: どんな気体でも、内部エネルギーは温度だけで決まると思い込む。
- 対策: 高校物理ではほとんどの場合、理想気体を扱いますが、厳密には実在の気体には分子間力が存在します。そのため、体積が変化すると分子間の距離が変わり、位置エネルギーも変化します。したがって、実在気体の内部エネルギーは温度と体積の両方に依存します。この違いは、大学レベルの物理でより詳しく学びます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 内部エネルギーの定義 (\(U = K_{\text{熱運動}} + U_{\text{分子間力}}\)):
- 選定理由: この問題は、内部エネルギーという概念の根源的な理解を問うています。そのため、その定義式が思考の出発点となります。
- 適用根拠: 物理学における「エネルギー」は、運動エネルギーと位置エネルギーに大別されます。これを物質を構成するミクロな粒子(原子・分子)の世界に適用したものが、内部エネルギーの定義です。熱運動が「運動」に対応し、分子間力が「位置」に対応すると考えれば自然に理解できます。
- 理想気体の内部エネルギー (\(U \propto T\)):
- 選定理由: 問題文が「気体」を対象としており、特に「分子間力による位置エネルギーは無視できる」と明記されているため、理想気体のモデルを適用します。
- 適用根拠: 上記の定義式から、理想気体の仮定(分子間力を無視)を適用すると、\(U_{\text{分子間力}}\) の項が消去されます。その結果、\(U = K_{\text{熱運動}}\) となります。そして、温度の定義(\(T\) は \(K_{\text{熱運動}}\) の激しさの指標)から、\(U\) は \(T\) だけで決まるという結論が論理的に導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題は知識を問うものであり、計算はありません。しかし、概念の正確な理解が計算問題の土台となります。
- 言葉の定義を正確に覚える: 「内部エネルギー」「熱量」「温度」といった基本的な物理用語の定義を、自分の言葉で説明できるようにしておくことが、応用問題でのミスを防ぐ最善の策です。
- ミクロなイメージを持つ: 気体の問題を考えるとき、箱の中を無数の小さな粒子が飛び回っている様子を常に頭の中に思い浮かべるようにしましょう。このイメージが、温度変化や圧力変化、仕事といったマクロな現象の理解を助けます。
175 温度の異なる水の混合
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「熱量保存の法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 熱量保存の法則: 「断熱容器」で「熱容量は無視できる」という条件から、外部との熱のやり取りや容器による熱の吸収・放出がない、理想的な状況を考えます。このとき、高温の物体が失った熱量と、低温の物体が得た熱量は等しくなります。
- 熱量の計算式: 物体の温度を変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、その物体の質量\(m\)、比熱\(c\)、温度変化\(\Delta T\)を用いて \(Q=mc\Delta T\) と表されます。
- 熱平衡: 温度の異なる物体を接触させると、やがて熱の移動が止まり、全体の温度が一定になります。この状態を熱平衡といい、このときの温度を求めるのが今回の問題の目的です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 高温の水(\(80^\circ\text{C}\))が失う熱量と、低温の水(\(20^\circ\text{C}\))が得る熱量を、最終的な温度を\(t\)としてそれぞれ立式します。
- 「失った熱量」=「得た熱量」という熱量保存の法則の等式を立て、未知数である最終温度\(t\)を求めます。
- 別解として、「系の熱量の総和は変化の前後で等しい」というアプローチでも解説します。
問
思考の道筋とポイント
異なる温度の水を混ぜ合わせる、熱量計算の最も基本的な問題です。「熱容量を無視できる断熱容器」という記述から、水と水の間だけで熱のやり取りが行われると判断し、熱量保存の法則を適用します。高温の水が失った熱量と、低温の水が得た熱量が等しくなるという関係式を立てることができれば、最終的な温度を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
- 熱量の計算式: \(Q = mc\Delta T\)
- 温度変化\(\Delta T\)は、熱量を正の値で扱うために「(高い温度)-(低い温度)」で計算する。
具体的な解説と立式
混合後の全体の温度(熱平衡温度)を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。最終的な温度は、\(20^\circ\text{C}\)と\(80^\circ\text{C}\)の間になるはずです。(\(20 < t < 80\))
アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量
1. 高温の水が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(80^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{高}} = 50 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{高}} = 80 – t\) です。
水の比熱を \(c \text{ [J/(g·K)]}\) とすると、
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{高}} \times c \times \Delta T_{\text{高}} = 50 \times c \times (80 – t) $$
2. 低温の水が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
\(20^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに得る熱量です。
質量は \(m_{\text{低}} = 150 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{低}} = t – 20\) です。
$$ Q_{\text{得}} = m_{\text{低}} \times c \times \Delta T_{\text{低}} = 150 \times c \times (t – 20) $$
3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 50 \times c \times (80 – t) = 150 \times c \times (t – 20) $$
使用した物理公式
- 熱量と温度上昇の関係: \(Q=mc\Delta T\)
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
50 \times c \times (80 – t) &= 150 \times c \times (t – 20)
\end{aligned}
$$
両辺に共通する \(c\) を消去し、さらに両辺を50で割ることで計算を簡略化します。
$$
\begin{aligned}
1 \times (80 – t) &= 3 \times (t – 20) \\[2.0ex]
80 – t &= 3t – 60 \\[2.0ex]
80 + 60 &= 3t + t \\[2.0ex]
140 &= 4t \\[2.0ex]
t &= \frac{140}{4} \\[2.0ex]
t &= 35 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
「熱いお湯が冷めるときに出した熱」と「ぬるいお湯が温まるときにもらった熱」の量は、ぴったり同じになるはずです。このルールを使って方程式を立てます。それぞれの熱の量は「質量 × 比熱 × 温度変化」で計算できます。この問題では、水の比熱は両辺で同じなので、計算の途中で消すことができます。
最終的な温度は \(35^\circ\text{C}\) となります。この値は、元の温度である \(20^\circ\text{C}\) と \(80^\circ\text{C}\) の間にあり、物理的に妥当です。また、質量の大きい低温の水(150g)の方が、質量の小さい高温の水(50g)よりも温度変化が小さくなるはずです。実際に、低温側の温度変化は \(35-20=15^\circ\text{C}\)、高温側の温度変化は \(80-35=45^\circ\text{C}\) となり、質量の比 \(150:50=3:1\) と温度変化の比 \(15:45=1:3\) が逆比の関係になっていることからも、結果の妥当性が確認できます。
思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、混合前と混合後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 熱量保存の法則: (混合前の全熱量) = (混合後の全熱量)
- 熱量の基準点を任意に設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の状態)。
具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。混合後の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。
1. 混合前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)
- \(80^\circ\text{C}\)の水(50g)が持つ熱量: \(50 \times c \times (80 – 0)\)
- \(20^\circ\text{C}\)の水(150g)が持つ熱量: \(150 \times c \times (20 – 0)\)
$$ Q_{\text{前}} = 50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 $$
2. 混合後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(50 + 150 = 200 \text{ g}\) です。
この水が温度 \(t\) になったときの熱量は、
$$ Q_{\text{後}} = 200 \times c \times (t – 0) $$
3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 = 200 \times c \times t $$
使用した物理公式
- 熱量と温度上昇の関係: \(Q=mc\Delta T\)
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 &= 200 \times c \times t
\end{aligned}
$$
両辺に共通する \(c\) を消去し、さらに両辺を50で割ります。
$$
\begin{aligned}
1 \times 80 + 3 \times 20 &= 4 \times t \\[2.0ex]
80 + 60 &= 4t \\[2.0ex]
140 &= 4t \\[2.0ex]
t &= \frac{140}{4} \\[2.0ex]
t &= 35 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
それぞれの水が持っている「熱の持ち分」を考えます。基準を\(0^\circ\text{C}\)として、\(80^\circ\text{C}\)の水と\(20^\circ\text{C}\)の水の「持ち分」をそれぞれ計算し、足し合わせます。これが混ぜる前の全体の熱量です。混ぜた後も、この全体の熱量の合計は変わらないはずなので、「混ぜた後の全体の水の熱量」と等しくなります。この関係から、最終的な温度を計算します。
最終的な温度は \(35^\circ\text{C}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 熱量保存の法則:
- 核心: 「断熱容器」かつ「熱容量を無視できる」という条件は、熱が外部に逃げたり容器に吸収されたりしない、理想的な状況を示しています。このような閉じた系では、内部での熱の移動はあっても、エネルギーの総量は変わりません。これが熱量保存の法則です。
- 理解のポイント: この法則は、2つの等価なアプローチで立式できます。
- \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\): 高温の水が失った熱量と、低温の水が得た熱量が等しい、という「熱の移動」に着目した考え方。シンプルで直感的に理解しやすいです。
- \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\): 系の熱量の総和が、混合の前後で等しい、という「エネルギーの総量」に着目した考え方。より普遍的なエネルギー保存則の考え方に基づいています。
- 熱量の計算式 (\(Q=mc\Delta T\)):
- 核心: 状態変化を伴わない物体の温度変化と、それに伴う熱の出入りを定量的に結びつける基本的な公式です。
- 理解のポイント: 熱量\(Q\)は、物体の質量\(m\)、物質の種類で決まる比熱\(c\)、そして温度変化\(\Delta T\)に比例します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 容器の熱容量を考慮する問題: 「熱容量\(C\)の容器」という条件が加わった場合、低温側が得る熱量に「容器が得た熱量 \(C\Delta T\)」の項を追加する必要があります。
- 状態変化を伴う混合: \(0^\circ\text{C}\)の氷と\(80^\circ\text{C}\)のお湯を混ぜるなど。この場合、低温側が得る熱量に「氷が\(0^\circ\text{C}\)の水に融解するための潜熱 \(mL\)」の項が加わります。
- 異なる物質の混合: 水と油など、比熱の異なる物質を混ぜる問題。この場合、比熱\(c\)が異なるため、計算の途中で\(c\)を消去できず、具体的な値を代入して計算する必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- キーワードの確認: 「断熱」「熱容量無視」といった、問題を単純化するための条件を見落とさないようにします。
- 登場人物のリストアップ: 熱のやり取りに関わる全ての物体(今回は高温の水と低温の水のみ)を明確にします。
- 状態の整理: 各物体の「混合前の状態(質量、温度)」と「混合後の状態(最終温度\(t\))」を表にまとめるなどして整理します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
- 誤解: 高温側が失う熱量を計算する際に、温度変化を「\(t-80\)」としてしまい、熱量が負の値になって混乱する。
- 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチでは、熱量を常に正の値として扱うのが基本です。そのため、温度変化\(\Delta T\)は必ず「(高い温度)-(低い温度)」で計算する、と機械的に覚えましょう。
- 質量と温度変化の組み合わせミス:
- 誤解: \(50 \times c \times (t-20) = 150 \times c \times (80-t)\) のように、高温の水の質量(50g)と低温の水の温度変化(\(t-20\))を組み合わせてしまう。
- 対策: 「50gの水が80℃からt℃に」「150gの水が20℃からt℃に」というように、主語(どの物体か)と述語(どう変化したか)を明確に対応させて立式する癖をつけましょう。
- 方程式の計算ミス:
- 誤解: \(80 – t = 3(t – 20)\) を展開した \(80 – t = 3t – 60\) の移項で、\(80+60 = 3t-t\) のように符号を間違える。
- 対策: 移項は一つずつ、符号の変化を確認しながら慎重に行いましょう。簡単な計算ほど油断しがちです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 熱量保存の法則:
- 選定理由: 複数の物体間で熱のやり取りがあり、外部との熱の出入りが無視できる状況で、最終的な平衡温度を求める問題だからです。
- 適用根拠: 問題設定が「断熱容器」かつ「熱容量無視」であるため、系は外部からエネルギー的に孤立した「孤立系」と見なせます。物理学の大原則であるエネルギー保存則を、熱の現象に適用したものが熱量保存の法則です。
- \(Q=mc\Delta T\) (熱量の計算式):
- 選定理由: 今回の熱交換では、水の状態変化(蒸発など)は起こらず、温度変化のみが生じているため、この公式を選択します。
- 適用根拠: 物質に熱エネルギーが与えられると、その物質を構成する分子の熱運動が激しくなり、内部エネルギーが増加します。この内部エネルギーの増加が、マクロな視点では「温度上昇」として観測されます。この熱量と温度変化の比例関係を定量的に表したのがこの式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 式の簡略化を最優先する: 立式した \(50 \times c \times (80 – t) = 150 \times c \times (t – 20)\) を見て、すぐに括弧を展開するのではなく、まず両辺に共通する因子がないかを探します。この場合は\(c\)と50が共通しているので、両辺を\(50c\)で割ることで、\(80-t = 3(t-20)\) という非常にシンプルな式に変形できます。これにより、計算ミスが劇的に減ります。
- 物理的な妥当性で検算する(加重平均の考え方):
- 最終的な温度は、必ず元の温度(\(20^\circ\text{C}\)と\(80^\circ\text{C}\))の間に来るはずです。答えがこの範囲外なら、計算ミスは確実です。
- さらに、最終温度は質量の大きい方に「引き寄せ」られます。今回は質量の大きい\(20^\circ\text{C}\)の水(150g)の方に引かれるので、単純な平均温度である\( (20+80)/2 = 50^\circ\text{C} \)よりも低い温度になるはずです。答えの\(35^\circ\text{C}\)はこの条件を満たしており、妥当性が高いと判断できます。
- 逆比で検算する:
- 質量の比は \(m_{\text{高}} : m_{\text{低}} = 50 : 150 = 1 : 3\) です。
- 熱量保存則から、温度変化の比は質量の逆比になるので、\(\Delta T_{\text{高}} : \Delta T_{\text{低}} = 3 : 1\) となるはずです。
- 全体の温度差は \(80 – 20 = 60^\circ\text{C}\) です。この\(60^\circ\text{C}\)を\(3:1\)に分けると、\(\Delta T_{\text{高}} = 60 \times \frac{3}{3+1} = 45^\circ\text{C}\)、\(\Delta T_{\text{低}} = 60 \times \frac{1}{3+1} = 15^\circ\text{C}\)となります。
- よって、最終温度は \(80 – 45 = 35^\circ\text{C}\) または \(20 + 15 = 35^\circ\text{C}\) となり、計算結果と一致します。この方法は強力な検算ツールになります。
176 氷と水の混合
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「状態変化を伴う熱量保存」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 熱量保存の法則: 外部と熱のやり取りがない場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
- 比熱による熱量(顕熱): 物体の温度を変化させるのに必要な熱量です。\(Q=mc\Delta T\)で計算します。
- 融解熱(潜熱): 固体が液体に状態変化する際に使われる熱量です。この間、温度は変化しません。\(Q=mL\)で計算します。
- 熱平衡: 最終的に全体が同じ温度に落ち着く状態です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 高温の水(\(20^\circ\text{C}\))が失う熱量を立式します。
- 低温の氷(\(0^\circ\text{C}\))が得る熱量を考えます。このとき、氷は「\(0^\circ\text{C}\)の氷 → \(0^\circ\text{C}\)の水」という状態変化と、「\(0^\circ\text{C}\)の水 → 最終温度\(t\)の水」という温度上昇の2段階で熱を吸収することに注意します。
- 「失った熱量」=「得た熱量の合計」という熱量保存の法則の等式を立て、最終温度\(t\)を求めます。
- 別解として、「系の熱量の総和は変化の前後で等しい」というアプローチでも解説します。
問
思考の道筋とポイント
\(20^\circ\text{C}\)の水に\(0^\circ\text{C}\)の氷を入れる、状態変化を伴う典型的な熱量保存の問題です。この問題の最大のポイントは、氷が得る熱量を正しく計算することです。氷はただ温度が上がるだけでなく、まず「融解」という状態変化を起こします。したがって、低温側が得る熱量は、「融解に使われる熱量(潜熱)」と「融解後の水の温度上昇に使われる熱量(顕熱)」の2つの合計になります。
この設問における重要なポイント
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
- 低温側が得る熱量は、潜熱と顕熱の和: \(Q_{\text{得}} = Q_{\text{融解}} + Q_{\text{温度上昇}}\)
- 融解熱の公式: \(Q = mL\)
- 比熱による熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)
具体的な解説と立式
混合後の全体の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。氷はすべて融けたので、\(0 < t < 20\) と考えられます。
アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量
1. 高温の水が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(20^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{水}} = 100 \text{ g}\)、比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{水}} = 20 – t\) です。
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T_{\text{水}} = 100 \times 4.2 \times (20 – t) $$
2. 氷が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
これは2段階のプロセスの合計です。
- 第1段階: 融解の熱量 \(Q_{\text{融解}}\)
\(0^\circ\text{C}\)の氷10gが、すべて\(0^\circ\text{C}\)の水に変わるために必要な熱量です。
質量は \(m_{\text{氷}} = 10 \text{ g}\)、融解熱は \(L = 3.3 \times 10^2 \text{ J/g}\) です。
$$ Q_{\text{融解}} = m_{\text{氷}} L = 10 \times (3.3 \times 10^2) $$ - 第2段階: 温度上昇の熱量 \(Q_{\text{温度上昇}}\)
融解してできた\(0^\circ\text{C}\)の水10gが、最終温度\(t^\circ\text{C}\)まで温まるために必要な熱量です。
質量は \(m_{\text{氷}} = 10 \text{ g}\)、比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{氷由来の水}} = t – 0\) です。
$$ Q_{\text{温度上昇}} = m_{\text{氷}} c_{\text{水}} \Delta T_{\text{氷由来の水}} = 10 \times 4.2 \times (t – 0) $$
したがって、得た熱量の合計は、
$$ Q_{\text{得}} = Q_{\text{融解}} + Q_{\text{温度上昇}} $$
3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 100 \times 4.2 \times (20 – t) = 10 \times (3.3 \times 10^2) + 10 \times 4.2 \times (t – 0) $$
使用した物理公式
- 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
- 融解熱による熱量: \(Q=mL\)
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
100 \times 4.2 \times (20 – t) &= 10 \times 330 + 10 \times 4.2 \times t \\[2.0ex]
420(20 – t) &= 3300 + 42t \\[2.0ex]
8400 – 420t &= 3300 + 42t \\[2.0ex]
8400 – 3300 &= 420t + 42t \\[2.0ex]
5100 &= 462t \\[2.0ex]
t &= \frac{5100}{462} \\[2.0ex]
t &= 11.03… \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(11^\circ\text{C}\) となります。
温かい水が失った熱は、2つの仕事に使われます。一つは「氷を溶かす仕事」、もう一つは「溶けて水になったものを温める仕事」です。この関係を「温かい水が失った熱 = 氷が溶けるのに必要な熱 + 溶けた水が温まるのに必要な熱」という方程式にして解くことで、最終的な温度がわかります。
最終的な水の温度は \(11^\circ\text{C}\) です。この値は、元の温度である \(0^\circ\text{C}\) と \(20^\circ\text{C}\) の間にあり、物理的に妥当です。氷が融解するために多くの熱を消費するため、単純な質量の加重平均よりも温度が低くなるという直感とも一致します。
思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、混合前と混合後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 熱量保存の法則: (混合前の全熱量) = (混合後の全熱量)
- 熱量の基準点を設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の水の状態)。
- 基準点よりエネルギーが低い状態(例: 氷)は、負の熱量を持つと考える。
具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。混合後の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。
1. 混合前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)
- \(20^\circ\text{C}\)の水(100g)が持つ熱量: \(0^\circ\text{C}\)の水より \(100 \times 4.2 \times (20 – 0)\) だけ多い。
- \(0^\circ\text{C}\)の氷(10g)が持つ熱量: \(0^\circ\text{C}\)の水より、融解熱の分だけ少ない。つまり、\( -10 \times (3.3 \times 10^2)\) と考えられる。
$$ Q_{\text{前}} = 100 \times 4.2 \times 20 – 10 \times (3.3 \times 10^2) $$
2. 混合後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(100 + 10 = 110 \text{ g}\) です。
この水が温度 \(t\) になったときの熱量は、
$$ Q_{\text{後}} = 110 \times 4.2 \times (t – 0) $$
3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 100 \times 4.2 \times 20 – 10 \times (3.3 \times 10^2) = 110 \times 4.2 \times t $$
使用した物理公式
- 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
- 融解熱による熱量: \(Q=mL\)
- 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
8400 – 3300 &= 462t \\[2.0ex]
5100 &= 462t \\[2.0ex]
t &= \frac{5100}{462} \\[2.0ex]
t &= 11.03… \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(11^\circ\text{C}\) となります。
\(0^\circ\text{C}\)の水を基準(貯金0円)とします。はじめ、\(20^\circ\text{C}\)の水は「貯金」があり、\(0^\circ\text{C}\)の氷は融けるためのエネルギーが足りないので「借金」をしている状態と考えます。この2つの「貯金」と「借金」を合計したものが、混ぜる前の全体の財産です。混ぜた後、全員(110gの水)が同じ温度\(t\)になったときの財産と、混ぜる前の財産は等しいはずです。この関係から最終的な温度を計算します。
最終的な温度は \(11^\circ\text{C}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 状態変化を伴う熱量保存:
- 核心: この問題は、単なる温度変化だけでなく、「融解」という状態変化が関わる熱交換です。核心は、低温側(氷)が得る熱量が、2つの異なるプロセス(潜熱と顕熱)の合計である点を正しく理解することです。
- 理解のポイント:
- 潜熱(融解熱): まず、\(0^\circ\text{C}\)の氷が\(0^\circ\text{C}\)の水に状態変化するために熱量(\(Q=mL\))を吸収します。この間、温度は上がりません。
- 顕熱(比熱による熱量): 次に、融解してできた\(0^\circ\text{C}\)の水が、最終温度\(t\)まで温まるために熱量(\(Q=mc\Delta T\))を吸収します。
- したがって、低温側が得る熱量の総和は \(Q_{\text{得}} = mL + mc\Delta T\) となります。この2段階のプロセスを認識することが、この問題を解く鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 氷が融けきらない問題: 高温の水が持つ熱量が、氷をすべて融かすのに必要な熱量に満たない場合。この場合、最終温度は\(0^\circ\text{C}\)となり、水と氷が共存する状態で熱平衡に至ります。問題は「最終的に何gの氷が融けたか」を問う形に変わります。
- 氷の初期温度が0℃でない問題: 例えば「\(-10^\circ\text{C}\)の氷」を水に入れる場合。低温側が得る熱量は、「(1)氷の温度上昇(\(-10^\circ\text{C} \rightarrow 0^\circ\text{C}\))」→「(2)氷の融解(\(0^\circ\text{C}\)の氷 → \(0^\circ\text{C}\)の水)」→「(3)水の温度上昇(\(0^\circ\text{C} \rightarrow t^\circ\text{C}\))」という3段階の合計になります。
- 水蒸気との混合: 高温の水蒸気を冷水に入れる場合。今度は高温側が失う熱量が、「(1)水蒸気の温度下降」→「(2)凝縮(潜熱の放出)」→「(3)凝縮してできた水の温度下降」という多段階のプロセスになります。
- 初見の問題での着眼点:
- 最終状態のチェック(事前検算): 計算を始める前に、「氷はすべて融けるのか?」を必ず確認します。
- 氷をすべて融かすのに必要な熱量: \(Q_{\text{融解}} = 10\text{ g} \times 3.3 \times 10^2 \text{ J/g} = 3300 \text{ J}\)
- \(20^\circ\text{C}\)の水が\(0^\circ\text{C}\)になるまでに放出できる最大の熱量: \(Q_{\text{放出最大}} = 100\text{ g} \times 4.2 \text{ J/(g·K)} \times (20-0)\text{ K} = 8400 \text{ J}\)
- \(Q_{\text{放出最大}} > Q_{\text{融解}}\) なので、氷はすべて融けると判断できます。この一手間が、誤った仮定で計算を進めるミスを防ぎます。
- 熱の移動プロセスの図示: 低温側と高温側の温度変化を数直線上に書き出し、どの区間でどの熱量(顕熱か潜熱か)が関わるかを視覚的に整理すると、立式ミスが減ります。
- 最終状態のチェック(事前検算): 計算を始める前に、「氷はすべて融けるのか?」を必ず確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 潜熱(融解熱)の考慮漏れ:
- 誤解: 氷が得る熱量を、温度上昇分の \(mc\Delta T\) だけで計算してしまう。
- 対策: 「氷を入れる」「融解」といったキーワードを見たら、必ず「潜熱」が関わることを思い出してください。「固体→液体」の状態変化には、温度上昇とは別にエネルギーが必要である、と常に意識することが重要です。
- 融解後の質量計算ミス:
- 誤解: 氷が融けて水になった後の温度上昇を計算する際、質量を元の水の質量(100g)や全体の質量(110g)で間違えて計算してしまう。
- 対策: 「誰が」温度上昇したのかを明確にしましょう。「融解してできた水」の温度上昇なので、その質量(10g)を使います。\(Q_{\text{得}}\)の式を立てる際は、各項の主語(氷なのか、元々の水なのか、融けた水なのか)をはっきりさせることがミス防止に繋がります。
- 別解アプローチでの符号ミス:
- 誤解: 別解の「\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)」のアプローチで、\(0^\circ\text{C}\)の氷が持つ熱量を正の値として扱ってしまう。
- 対策: 基準を「\(0^\circ\text{C}\)の水」に置いた場合、それよりエネルギー的に低い状態である「\(0^\circ\text{C}\)の氷」は、融解熱の分だけ「負」の熱量を持つと考える必要があります。この考え方が難しい場合は、直感的に理解しやすい「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチに徹するのが安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)):
- 選定理由: 外部と熱のやり取りがない閉じた系で、複数の物体が熱平衡に至るまでの過程を解くための基本法則だからです。
- 適用根拠: エネルギー保存則という物理学の根本原理に基づいています。高温の水から失われたエネルギーは消滅するのではなく、低温の氷に「状態変化」と「温度上昇」という形で移動します。その総量は不変です。
- \(Q=mL\) (融解熱):
- 選定理由: 物質が温度を変えずに状態変化(固体→液体)する過程の熱量を計算するために必須だからです。
- 適用根拠: 融解中、加えられた熱エネルギーは分子の運動エネルギー(=温度)を増加させるのではなく、分子間の結合を断ち切って位置エネルギーを増加させるために使われます。このエネルギー量は、状態変化する物質の質量に比例します。
- \(Q=mc\Delta T\) (比熱):
- 選定理由: 物質が状態を変えずに温度だけ変化する過程の熱量を計算するために使います。この問題では、高温の水と、融解後の氷(水)の両方に適用されます。
- 適用根拠: 温度変化中は、加えられた熱エネルギーが分子の運動エネルギーを直接増加させます。このエネルギー量は、質量、物質の種類(比熱)、温度の変化量に比例します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 立式の整理と工夫:
- \(100 \times 4.2 \times (20 – t) = 10 \times 330 + 10 \times 4.2 \times t\)
- この式を見て、まず両辺を10で割ると計算が少し楽になります。
- \(10 \times 4.2 \times (20 – t) = 330 + 4.2 \times t\)
- \(42(20 – t) = 330 + 4.2t\)
- このように、計算を進める前に式を簡略化できないか検討する癖をつけましょう。
- 移項の確実性:
- \(8400 – 420t = 3300 + 42t\) (※解答の式)
- \(t\) を含む項を右辺に、定数項を左辺に集めるなど、ルールを決めて慎重に移項します。
- \(8400 – 3300 = 42t + 420t\) → \(5100 = 462t\)
- 割り算の実行:
- \(t = \frac{5100}{462}\) のような面倒な割り算は、筆算で丁寧に行うことが不可欠です。
- 可能であれば、約分を試みます。両辺は2で割れ、さらに3で割れることがわかります。
- \(\frac{5100}{462} = \frac{2550}{231} = \frac{850}{77}\)。ここまで簡略化できれば、筆算のミスも減らせます。
- 有効数字の確認: 最後に問題文で求められている有効数字を確認し、計算結果を適切に丸めます。この問題では、与えられた物理量が2桁なので、答えも2桁(または3桁目を四捨五入)で示すのが一般的です。\(11.03…\) は \(11\) となります。
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