「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 12】Step 2

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Step 2

174 内部エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「気体の内部エネルギーと温度の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 内部エネルギーの定義: 物質を構成している原子・分子が持つエネルギーの総和です。具体的には、「原子・分子の熱運動による運動エネルギー」と「原子・分子間にはたらく力による位置エネルギー」の2つの和で表されます。
  2. 温度と熱運動: 温度は、物質を構成する原子・分子の熱運動の激しさを示す指標です。温度が高いほど、熱運動は激しくなります。
  3. 気体の内部エネルギーの特徴: 気体、特に高校物理で扱う理想気体では、分子間の距離が非常に大きいため、分子間力は無視できるほど小さいと考えます。そのため、分子間力による位置エネルギーも無視でき、内部エネルギーは実質的に「熱運動の運動エネルギーの総和」と等しくなります。
  4. 内部エネルギーと温度の関係: 上記の理由から、気体の内部エネルギーは熱運動の激しさ、すなわち温度によって決まります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、温度と原子・分子の熱運動の激しさの関係を考え、1つ目の空欄を埋めます。
  2. 次に、熱運動の激しさと内部エネルギーの大きさの関係を考え、2つ目の空欄を埋めます。

思考の道筋とポイント
気体の内部エネルギーが何によって決まるのか、特に「温度」とどのような関係にあるのかを正しく理解しているかが問われる知識問題です。「温度が高い」→「分子の動きが激しい」→「運動エネルギーが大きい」→「内部エネルギーが大きい」という一連の論理の流れを正確に組み立てることがポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 内部エネルギーは、構成する原子・分子の「熱運動の運動エネルギー」と「分子間力による位置エネルギー」の総和である。
  • 気体(特に理想気体)では、分子間力が非常に小さいため、位置エネルギーは無視できると考える。
  • 温度は、原子・分子の熱運動の激しさ(平均運動エネルギー)の指標である。
  • したがって、気体の内部エネルギーは、実質的に熱運動の運動エネルギーのみで決まり、温度に比例する。

具体的な解説と立式
問題文の前半で、内部エネルギーの定義が説明されています。
「内部エネルギー = (熱運動の運動エネルギー) + (分子間力による位置エネルギー)」
そして、「気体では後者(位置エネルギー)は無視できる」とあるため、気体の内部エネルギーは実質的に「熱運動の運動エネルギーの総和」と考えることができます。

次に、文章の後半部分を考えます。
物理学における「温度」とは、原子や分子のランダムな熱運動の激しさを表す指標です。
したがって、温度が 高い ほど、原子・分子の熱運動はより激しくなります。これが1つ目の空欄の答えです。

熱運動が激しいということは、原子・分子1個あたりの平均運動エネルギーが大きいことを意味します。気体の内部エネルギーは、この運動エネルギーの総和にほぼ等しいので、結果として内部エネルギーも 大きい と結論付けられます。これが2つ目の空欄の答えです。

使用した物理公式

  • 内部エネルギーの定義: \(U = K_{\text{熱運動}} + U_{\text{分子間力}}\)
  • 理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) (単原子分子の場合)。この式は、内部エネルギー\(U\)が絶対温度\(T\)に比例することを示しています。
計算過程

この問題は知識を問うものであり、具体的な計算は不要です。

計算方法の平易な説明

「温度」は、物質の中の小さなつぶ(原子・分子)がどれだけ元気に動き回っているかを示すバロメーターのようなものです。温度が「高い」ということは、つぶたちが激しくブルブル震えたり、飛び回ったりしている状態を意味します。
一方、「内部エネルギー」は、このつぶたちの元気さ(運動エネルギー)の合計金額のようなものです。
したがって、温度が「高い」ほど、つぶたちは元気で、内部エネルギーも「大きい」となります。

結論と吟味

空欄に入るのは、それぞれ「高い」「大きい」となります。この「気体の内部エネルギーは温度だけで決まる」という関係は、熱力学の基本であり、気体の状態方程式や熱力学第一法則を理解する上での大前提となる重要な知識です。

解答 高い, 大きい

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 内部エネルギーの正体:
    • 核心: 物質の内部エネルギーとは、その物質を構成する無数の原子や分子が持つエネルギーの総和です。これは大きく分けて2つの要素からなります。
      1. 熱運動の運動エネルギー: 原子・分子がランダムに動き回る(並進運動)、回転する(回転運動)、振動する(振動運動)ことによる運動エネルギーの合計。
      2. 分子間力による位置エネルギー: 原子・分子同士が引き合ったり反発したりする力(分子間力)に起因する位置エネルギーの合計。
  • 温度と内部エネルギーの関係:
    • 核心: 「温度」とは、原子・分子の熱運動の激しさ(より正確には、1分子あたりの平均運動エネルギー)をマクロな視点で表した量です。
    • 理解のポイント:
      • 温度が高い ⇔ 熱運動が激しい ⇔ 運動エネルギーが大きい という関係が成り立ちます。
      • 理想気体の場合: 分子間力を0とみなすため、位置エネルギーも0と考えます。その結果、理想気体の内部エネルギーは、熱運動の運動エネルギーの総和そのものとなり、絶対温度にのみ比例します。これは熱力学における極めて重要な結論です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 固体・液体との比較: 固体や液体の場合、分子間の距離が近く分子間力が無視できないため、内部エネルギーを考える際には位置エネルギーも重要になります。例えば、氷が水に融解するとき、温度(運動エネルギー)は変わらなくても、分子間力に逆らって分子を引き離すためにエネルギー(融解熱)が必要となり、位置エネルギーが増加します。
    • 熱力学第一法則との関連: 気体に熱を与えたり(\(Q_{\text{in}}\))、気体が仕事をしたり(\(W_{\text{out}}\))すると、内部エネルギーが変化します(\(\Delta U = Q_{\text{in}} – W_{\text{out}}\))。この\(\Delta U\)は、結局のところ温度変化\(\Delta T\)と直結している、という問題に応用されます。
    • 定積変化・断熱変化:
      • 定積変化: 体積が変わらないので気体は仕事をしません(\(W_{\text{out}}=0\))。したがって、与えられた熱はすべて内部エネルギーの増加(=温度上昇)に使われます。
      • 断熱変化: 熱の出入りがない(\(Q_{\text{in}}=0\))状態で気体が膨張(仕事をする)と、内部エネルギーが減少し、温度が下がります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 物質の状態を確認: 問題が気体を扱っているのか、液体や固体を扱っているのかを確認します。気体(特に理想気体)であれば、「内部エネルギーは温度だけで決まる」という強力な原則が使えます。
    2. 「内部エネルギー」という言葉の定義を思い出す: この言葉が出てきたら、すぐに「運動エネルギー」と「位置エネルギー」の和である、という基本定義に立ち返ります。
    3. 温度と分子運動のイメージを結びつける: 「温度」というマクロな量と、「分子の激しい運動」というミクロなイメージを常にセットで考える癖をつけます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 内部エネルギーと熱量の混同:
    • 誤解: 「熱い物体は多くの熱量を持っている」と考えてしまう。
    • 対策: 「内部エネルギー」は物体がその状態(温度や体積)で「持っている」エネルギー(状態量)です。一方、「熱(熱量)」は、温度差によって物体間を「移動する」エネルギーのことであり、物体が「持っている」ものではありません。この区別は非常に重要です。蛇口から出る「水」が熱量、バケツに「溜まった水」が内部エネルギー、と例えると分かりやすいかもしれません。
  • 温度と熱量の混同:
    • 誤解: 温度が高い物体は、必ず温度が低い物体より多くの熱エネルギーを持っている(内部エネルギーが大きい)と考えてしまう。
    • 対策: 温度は「平均」の激しさ、内部エネルギーは「合計」のエネルギーです。例えば、温度が100℃のコップ1杯の水よりも、温度が20℃の風呂釜一杯の水の方が、分子の数は圧倒的に多いため、内部エネルギーの「合計」は大きくなります。
  • 理想気体と実在気体の違いの無視:
    • 誤解: どんな気体でも、内部エネルギーは温度だけで決まると思い込む。
    • 対策: 高校物理ではほとんどの場合、理想気体を扱いますが、厳密には実在の気体には分子間力が存在します。そのため、体積が変化すると分子間の距離が変わり、位置エネルギーも変化します。したがって、実在気体の内部エネルギーは温度と体積の両方に依存します。この違いは、大学レベルの物理でより詳しく学びます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 内部エネルギーの定義 (\(U = K_{\text{熱運動}} + U_{\text{分子間力}}\)):
    • 選定理由: この問題は、内部エネルギーという概念の根源的な理解を問うています。そのため、その定義式が思考の出発点となります。
    • 適用根拠: 物理学における「エネルギー」は、運動エネルギーと位置エネルギーに大別されます。これを物質を構成するミクロな粒子(原子・分子)の世界に適用したものが、内部エネルギーの定義です。熱運動が「運動」に対応し、分子間力が「位置」に対応すると考えれば自然に理解できます。
  • 理想気体の内部エネルギー (\(U \propto T\)):
    • 選定理由: 問題文が「気体」を対象としており、特に「分子間力による位置エネルギーは無視できる」と明記されているため、理想気体のモデルを適用します。
    • 適用根拠: 上記の定義式から、理想気体の仮定(分子間力を無視)を適用すると、\(U_{\text{分子間力}}\) の項が消去されます。その結果、\(U = K_{\text{熱運動}}\) となります。そして、温度の定義(\(T\) は \(K_{\text{熱運動}}\) の激しさの指標)から、\(U\) は \(T\) だけで決まるという結論が論理的に導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題は知識を問うものであり、計算はありません。しかし、概念の正確な理解が計算問題の土台となります。
  • 言葉の定義を正確に覚える: 「内部エネルギー」「熱量」「温度」といった基本的な物理用語の定義を、自分の言葉で説明できるようにしておくことが、応用問題でのミスを防ぐ最善の策です。
  • ミクロなイメージを持つ: 気体の問題を考えるとき、箱の中を無数の小さな粒子が飛び回っている様子を常に頭の中に思い浮かべるようにしましょう。このイメージが、温度変化や圧力変化、仕事といったマクロな現象の理解を助けます。

175 温度の異なる水の混合

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱量保存の法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存の法則: 「断熱容器」で「熱容量は無視できる」という条件から、外部との熱のやり取りや容器による熱の吸収・放出がない、理想的な状況を考えます。このとき、高温の物体が失った熱量と、低温の物体が得た熱量は等しくなります。
  2. 熱量の計算式: 物体の温度を変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、その物体の質量\(m\)、比熱\(c\)、温度変化\(\Delta T\)を用いて \(Q=mc\Delta T\) と表されます。
  3. 熱平衡: 温度の異なる物体を接触させると、やがて熱の移動が止まり、全体の温度が一定になります。この状態を熱平衡といい、このときの温度を求めるのが今回の問題の目的です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 高温の水(\(80^\circ\text{C}\))が失う熱量と、低温の水(\(20^\circ\text{C}\))が得る熱量を、最終的な温度を\(t\)としてそれぞれ立式します。
  2. 「失った熱量」=「得た熱量」という熱量保存の法則の等式を立て、未知数である最終温度\(t\)を求めます。
  3. 別解として、「系の熱量の総和は変化の前後で等しい」というアプローチでも解説します。

思考の道筋とポイント
異なる温度の水を混ぜ合わせる、熱量計算の最も基本的な問題です。「熱容量を無視できる断熱容器」という記述から、水と水の間だけで熱のやり取りが行われると判断し、熱量保存の法則を適用します。高温の水が失った熱量と、低温の水が得た熱量が等しくなるという関係式を立てることができれば、最終的な温度を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 熱量の計算式: \(Q = mc\Delta T\)
  • 温度変化\(\Delta T\)は、熱量を正の値で扱うために「(高い温度)-(低い温度)」で計算する。

具体的な解説と立式
混合後の全体の温度(熱平衡温度)を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。最終的な温度は、\(20^\circ\text{C}\)と\(80^\circ\text{C}\)の間になるはずです。(\(20 < t < 80\))

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

1. 高温の水が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(80^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{高}} = 50 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{高}} = 80 – t\) です。
水の比熱を \(c \text{ [J/(g·K)]}\) とすると、
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{高}} \times c \times \Delta T_{\text{高}} = 50 \times c \times (80 – t) $$

2. 低温の水が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
\(20^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに得る熱量です。
質量は \(m_{\text{低}} = 150 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{低}} = t – 20\) です。
$$ Q_{\text{得}} = m_{\text{低}} \times c \times \Delta T_{\text{低}} = 150 \times c \times (t – 20) $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 50 \times c \times (80 – t) = 150 \times c \times (t – 20) $$

使用した物理公式

  • 熱量と温度上昇の関係: \(Q=mc\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
50 \times c \times (80 – t) &= 150 \times c \times (t – 20)
\end{aligned}
$$
両辺に共通する \(c\) を消去し、さらに両辺を50で割ることで計算を簡略化します。
$$
\begin{aligned}
1 \times (80 – t) &= 3 \times (t – 20) \\[2.0ex]80 – t &= 3t – 60 \\[2.0ex]80 + 60 &= 3t + t \\[2.0ex]140 &= 4t \\[2.0ex]t &= \frac{140}{4} \\[2.0ex]t &= 35 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「熱いお湯が冷めるときに出した熱」と「ぬるいお湯が温まるときにもらった熱」の量は、ぴったり同じになるはずです。このルールを使って方程式を立てます。それぞれの熱の量は「質量 × 比熱 × 温度変化」で計算できます。この問題では、水の比熱は両辺で同じなので、計算の途中で消すことができます。

結論と吟味

最終的な温度は \(35^\circ\text{C}\) となります。この値は、元の温度である \(20^\circ\text{C}\) と \(80^\circ\text{C}\) の間にあり、物理的に妥当です。また、質量の大きい低温の水(150g)の方が、質量の小さい高温の水(50g)よりも温度変化が小さくなるはずです。実際に、低温側の温度変化は \(35-20=15^\circ\text{C}\)、高温側の温度変化は \(80-35=45^\circ\text{C}\) となり、質量の比 \(150:50=3:1\) と温度変化の比 \(15:45=1:3\) が逆比の関係になっていることからも、結果の妥当性が確認できます。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、混合前と混合後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (混合前の全熱量) = (混合後の全熱量)
  • 熱量の基準点を任意に設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の状態)。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。混合後の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。

1. 混合前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)

  • \(80^\circ\text{C}\)の水(50g)が持つ熱量: \(50 \times c \times (80 – 0)\)
  • \(20^\circ\text{C}\)の水(150g)が持つ熱量: \(150 \times c \times (20 – 0)\)

$$ Q_{\text{前}} = 50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 $$

2. 混合後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(50 + 150 = 200 \text{ g}\) です。
この水が温度 \(t\) になったときの熱量は、
$$ Q_{\text{後}} = 200 \times c \times (t – 0) $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 = 200 \times c \times t $$

使用した物理公式

  • 熱量と温度上昇の関係: \(Q=mc\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
50 \times c \times 80 + 150 \times c \times 20 &= 200 \times c \times t
\end{aligned}
$$
両辺に共通する \(c\) を消去し、さらに両辺を50で割ります。
$$
\begin{aligned}
1 \times 80 + 3 \times 20 &= 4 \times t \\[2.0ex]80 + 60 &= 4t \\[2.0ex]140 &= 4t \\[2.0ex]t &= \frac{140}{4} \\[2.0ex]t &= 35 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

それぞれの水が持っている「熱の持ち分」を考えます。基準を\(0^\circ\text{C}\)として、\(80^\circ\text{C}\)の水と\(20^\circ\text{C}\)の水の「持ち分」をそれぞれ計算し、足し合わせます。これが混ぜる前の全体の熱量です。混ぜた後も、この全体の熱量の合計は変わらないはずなので、「混ぜた後の全体の水の熱量」と等しくなります。この関係から、最終的な温度を計算します。

結論と吟味

最終的な温度は \(35^\circ\text{C}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 35 [℃]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量保存の法則:
    • 核心: 「断熱容器」かつ「熱容量を無視できる」という条件は、熱が外部に逃げたり容器に吸収されたりしない、理想的な状況を示しています。このような閉じた系では、内部での熱の移動はあっても、エネルギーの総量は変わりません。これが熱量保存の法則です。
    • 理解のポイント: この法則は、2つの等価なアプローチで立式できます。
      • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\): 高温の水が失った熱量と、低温の水が得た熱量が等しい、という「熱の移動」に着目した考え方。シンプルで直感的に理解しやすいです。
      • \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\): 系の熱量の総和が、混合の前後で等しい、という「エネルギーの総量」に着目した考え方。より普遍的なエネルギー保存則の考え方に基づいています。
  • 熱量の計算式 (\(Q=mc\Delta T\)):
    • 核心: 状態変化を伴わない物体の温度変化と、それに伴う熱の出入りを定量的に結びつける基本的な公式です。
    • 理解のポイント: 熱量\(Q\)は、物体の質量\(m\)、物質の種類で決まる比熱\(c\)、そして温度変化\(\Delta T\)に比例します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 容器の熱容量を考慮する問題: 「熱容量\(C\)の容器」という条件が加わった場合、低温側が得る熱量に「容器が得た熱量 \(C\Delta T\)」の項を追加する必要があります。
    • 状態変化を伴う混合: \(0^\circ\text{C}\)の氷と\(80^\circ\text{C}\)のお湯を混ぜるなど。この場合、低温側が得る熱量に「氷が\(0^\circ\text{C}\)の水に融解するための潜熱 \(mL\)」の項が加わります。
    • 異なる物質の混合: 水と油など、比熱の異なる物質を混ぜる問題。この場合、比熱\(c\)が異なるため、計算の途中で\(c\)を消去できず、具体的な値を代入して計算する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. キーワードの確認: 「断熱」「熱容量無視」といった、問題を単純化するための条件を見落とさないようにします。
    2. 登場人物のリストアップ: 熱のやり取りに関わる全ての物体(今回は高温の水と低温の水のみ)を明確にします。
    3. 状態の整理: 各物体の「混合前の状態(質量、温度)」と「混合後の状態(最終温度\(t\))」を表にまとめるなどして整理します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
    • 誤解: 高温側が失う熱量を計算する際に、温度変化を「\(t-80\)」としてしまい、熱量が負の値になって混乱する。
    • 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチでは、熱量を常に正の値として扱うのが基本です。そのため、温度変化\(\Delta T\)は必ず「(高い温度)-(低い温度)」で計算する、と機械的に覚えましょう。
  • 質量と温度変化の組み合わせミス:
    • 誤解: \(50 \times c \times (t-20) = 150 \times c \times (80-t)\) のように、高温の水の質量(50g)と低温の水の温度変化(\(t-20\))を組み合わせてしまう。
    • 対策: 「50gの水が80℃からt℃に」「150gの水が20℃からt℃に」というように、主語(どの物体か)と述語(どう変化したか)を明確に対応させて立式する癖をつけましょう。
  • 方程式の計算ミス:
    • 誤解: \(80 – t = 3(t – 20)\) を展開した \(80 – t = 3t – 60\) の移項で、\(80+60 = 3t-t\) のように符号を間違える。
    • 対策: 移項は一つずつ、符号の変化を確認しながら慎重に行いましょう。簡単な計算ほど油断しがちです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 熱量保存の法則:
    • 選定理由: 複数の物体間で熱のやり取りがあり、外部との熱の出入りが無視できる状況で、最終的な平衡温度を求める問題だからです。
    • 適用根拠: 問題設定が「断熱容器」かつ「熱容量無視」であるため、系は外部からエネルギー的に孤立した「孤立系」と見なせます。物理学の大原則であるエネルギー保存則を、熱の現象に適用したものが熱量保存の法則です。
  • \(Q=mc\Delta T\) (熱量の計算式):
    • 選定理由: 今回の熱交換では、水の状態変化(蒸発など)は起こらず、温度変化のみが生じているため、この公式を選択します。
    • 適用根拠: 物質に熱エネルギーが与えられると、その物質を構成する分子の熱運動が激しくなり、内部エネルギーが増加します。この内部エネルギーの増加が、マクロな視点では「温度上昇」として観測されます。この熱量と温度変化の比例関係を定量的に表したのがこの式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の簡略化を最優先する: 立式した \(50 \times c \times (80 – t) = 150 \times c \times (t – 20)\) を見て、すぐに括弧を展開するのではなく、まず両辺に共通する因子がないかを探します。この場合は\(c\)と50が共通しているので、両辺を\(50c\)で割ることで、\(80-t = 3(t-20)\) という非常にシンプルな式に変形できます。これにより、計算ミスが劇的に減ります。
  • 物理的な妥当性で検算する(加重平均の考え方):
    • 最終的な温度は、必ず元の温度(\(20^\circ\text{C}\)と\(80^\circ\text{C}\))の間に来るはずです。答えがこの範囲外なら、計算ミスは確実です。
    • さらに、最終温度は質量の大きい方に「引き寄せ」られます。今回は質量の大きい\(20^\circ\text{C}\)の水(150g)の方に引かれるので、単純な平均温度である\( (20+80)/2 = 50^\circ\text{C} \)よりも低い温度になるはずです。答えの\(35^\circ\text{C}\)はこの条件を満たしており、妥当性が高いと判断できます。
  • 逆比で検算する:
    • 質量の比は \(m_{\text{高}} : m_{\text{低}} = 50 : 150 = 1 : 3\) です。
    • 熱量保存則から、温度変化の比は質量の逆比になるので、\(\Delta T_{\text{高}} : \Delta T_{\text{低}} = 3 : 1\) となるはずです。
    • 全体の温度差は \(80 – 20 = 60^\circ\text{C}\) です。この\(60^\circ\text{C}\)を\(3:1\)に分けると、\(\Delta T_{\text{高}} = 60 \times \frac{3}{3+1} = 45^\circ\text{C}\)、\(\Delta T_{\text{低}} = 60 \times \frac{1}{3+1} = 15^\circ\text{C}\)となります。
    • よって、最終温度は \(80 – 45 = 35^\circ\text{C}\) または \(20 + 15 = 35^\circ\text{C}\) となり、計算結果と一致します。この方法は強力な検算ツールになります。

176 氷と水の混合

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「状態変化を伴う熱量保存」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存の法則: 外部と熱のやり取りがない場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  2. 比熱による熱量(顕熱): 物体の温度を変化させるのに必要な熱量です。\(Q=mc\Delta T\)で計算します。
  3. 融解熱(潜熱): 固体が液体に状態変化する際に使われる熱量です。この間、温度は変化しません。\(Q=mL\)で計算します。
  4. 熱平衡: 最終的に全体が同じ温度に落ち着く状態です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 高温の水(\(20^\circ\text{C}\))が失う熱量を立式します。
  2. 低温の氷(\(0^\circ\text{C}\))が得る熱量を考えます。このとき、氷は「\(0^\circ\text{C}\)の氷 → \(0^\circ\text{C}\)の水」という状態変化と、「\(0^\circ\text{C}\)の水 → 最終温度\(t\)の水」という温度上昇の2段階で熱を吸収することに注意します。
  3. 「失った熱量」=「得た熱量の合計」という熱量保存の法則の等式を立て、最終温度\(t\)を求めます。
  4. 別解として、「系の熱量の総和は変化の前後で等しい」というアプローチでも解説します。

思考の道筋とポイント
\(20^\circ\text{C}\)の水に\(0^\circ\text{C}\)の氷を入れる、状態変化を伴う典型的な熱量保存の問題です。この問題の最大のポイントは、氷が得る熱量を正しく計算することです。氷はただ温度が上がるだけでなく、まず「融解」という状態変化を起こします。したがって、低温側が得る熱量は、「融解に使われる熱量(潜熱)」と「融解後の水の温度上昇に使われる熱量(顕熱)」の2つの合計になります。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 低温側が得る熱量は、潜熱と顕熱の和: \(Q_{\text{得}} = Q_{\text{融解}} + Q_{\text{温度上昇}}\)
  • 融解熱の公式: \(Q = mL\)
  • 比熱による熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)

具体的な解説と立式
混合後の全体の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。氷はすべて融けたので、\(0 < t < 20\) と考えられます。

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

1. 高温の水が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(20^\circ\text{C}\)の水が\(t^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{水}} = 100 \text{ g}\)、比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{水}} = 20 – t\) です。
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T_{\text{水}} = 100 \times 4.2 \times (20 – t) $$

2. 氷が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
これは2段階のプロセスの合計です。

  • 第1段階: 融解の熱量 \(Q_{\text{融解}}\)
    \(0^\circ\text{C}\)の氷10gが、すべて\(0^\circ\text{C}\)の水に変わるために必要な熱量です。
    質量は \(m_{\text{氷}} = 10 \text{ g}\)、融解熱は \(L = 3.3 \times 10^2 \text{ J/g}\) です。
    $$ Q_{\text{融解}} = m_{\text{氷}} L = 10 \times (3.3 \times 10^2) $$
  • 第2段階: 温度上昇の熱量 \(Q_{\text{温度上昇}}\)
    融解してできた\(0^\circ\text{C}\)の水10gが、最終温度\(t^\circ\text{C}\)まで温まるために必要な熱量です。
    質量は \(m_{\text{氷}} = 10 \text{ g}\)、比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
    温度変化は \(\Delta T_{\text{氷由来の水}} = t – 0\) です。
    $$ Q_{\text{温度上昇}} = m_{\text{氷}} c_{\text{水}} \Delta T_{\text{氷由来の水}} = 10 \times 4.2 \times (t – 0) $$

したがって、得た熱量の合計は、
$$ Q_{\text{得}} = Q_{\text{融解}} + Q_{\text{温度上昇}} $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 100 \times 4.2 \times (20 – t) = 10 \times (3.3 \times 10^2) + 10 \times 4.2 \times (t – 0) $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 融解熱による熱量: \(Q=mL\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
100 \times 4.2 \times (20 – t) &= 10 \times 330 + 10 \times 4.2 \times t \\[2.0ex]420(20 – t) &= 3300 + 42t \\[2.0ex]8400 – 420t &= 3300 + 42t \\[2.0ex]8400 – 3300 &= 420t + 42t \\[2.0ex]5100 &= 462t \\[2.0ex]t &= \frac{5100}{462} \\[2.0ex]t &= 11.03… \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(11^\circ\text{C}\) となります。

計算方法の平易な説明

温かい水が失った熱は、2つの仕事に使われます。一つは「氷を溶かす仕事」、もう一つは「溶けて水になったものを温める仕事」です。この関係を「温かい水が失った熱 = 氷が溶けるのに必要な熱 + 溶けた水が温まるのに必要な熱」という方程式にして解くことで、最終的な温度がわかります。

結論と吟味

最終的な水の温度は \(11^\circ\text{C}\) です。この値は、元の温度である \(0^\circ\text{C}\) と \(20^\circ\text{C}\) の間にあり、物理的に妥当です。氷が融解するために多くの熱を消費するため、単純な質量の加重平均よりも温度が低くなるという直感とも一致します。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、混合前と混合後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (混合前の全熱量) = (混合後の全熱量)
  • 熱量の基準点を設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の水の状態)。
  • 基準点よりエネルギーが低い状態(例: 氷)は、負の熱量を持つと考える。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。混合後の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。

1. 混合前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)

  • \(20^\circ\text{C}\)の水(100g)が持つ熱量: \(0^\circ\text{C}\)の水より \(100 \times 4.2 \times (20 – 0)\) だけ多い。
  • \(0^\circ\text{C}\)の氷(10g)が持つ熱量: \(0^\circ\text{C}\)の水より、融解熱の分だけ少ない。つまり、\( -10 \times (3.3 \times 10^2)\) と考えられる。

$$ Q_{\text{前}} = 100 \times 4.2 \times 20 – 10 \times (3.3 \times 10^2) $$

2. 混合後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(100 + 10 = 110 \text{ g}\) です。
この水が温度 \(t\) になったときの熱量は、
$$ Q_{\text{後}} = 110 \times 4.2 \times (t – 0) $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 100 \times 4.2 \times 20 – 10 \times (3.3 \times 10^2) = 110 \times 4.2 \times t $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 融解熱による熱量: \(Q=mL\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
8400 – 3300 &= 462t \\[2.0ex]5100 &= 462t \\[2.0ex]t &= \frac{5100}{462} \\[2.0ex]t &= 11.03… \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(11^\circ\text{C}\) となります。

計算方法の平易な説明

\(0^\circ\text{C}\)の水を基準(貯金0円)とします。はじめ、\(20^\circ\text{C}\)の水は「貯金」があり、\(0^\circ\text{C}\)の氷は融けるためのエネルギーが足りないので「借金」をしている状態と考えます。この2つの「貯金」と「借金」を合計したものが、混ぜる前の全体の財産です。混ぜた後、全員(110gの水)が同じ温度\(t\)になったときの財産と、混ぜる前の財産は等しいはずです。この関係から最終的な温度を計算します。

結論と吟味

最終的な温度は \(11^\circ\text{C}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 11 [℃]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 状態変化を伴う熱量保存:
    • 核心: この問題は、単なる温度変化だけでなく、「融解」という状態変化が関わる熱交換です。核心は、低温側(氷)が得る熱量が、2つの異なるプロセス(潜熱と顕熱)の合計である点を正しく理解することです。
    • 理解のポイント:
      1. 潜熱(融解熱): まず、\(0^\circ\text{C}\)の氷が\(0^\circ\text{C}\)の水に状態変化するために熱量(\(Q=mL\))を吸収します。この間、温度は上がりません。
      2. 顕熱(比熱による熱量): 次に、融解してできた\(0^\circ\text{C}\)の水が、最終温度\(t\)まで温まるために熱量(\(Q=mc\Delta T\))を吸収します。
    • したがって、低温側が得る熱量の総和は \(Q_{\text{得}} = mL + mc\Delta T\) となります。この2段階のプロセスを認識することが、この問題を解く鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 氷が融けきらない問題: 高温の水が持つ熱量が、氷をすべて融かすのに必要な熱量に満たない場合。この場合、最終温度は\(0^\circ\text{C}\)となり、水と氷が共存する状態で熱平衡に至ります。問題は「最終的に何gの氷が融けたか」を問う形に変わります。
    • 氷の初期温度が0℃でない問題: 例えば「\(-10^\circ\text{C}\)の氷」を水に入れる場合。低温側が得る熱量は、「(1)氷の温度上昇(\(-10^\circ\text{C} \rightarrow 0^\circ\text{C}\))」→「(2)氷の融解(\(0^\circ\text{C}\)の氷 → \(0^\circ\text{C}\)の水)」→「(3)水の温度上昇(\(0^\circ\text{C} \rightarrow t^\circ\text{C}\))」という3段階の合計になります。
    • 水蒸気との混合: 高温の水蒸気を冷水に入れる場合。今度は高温側が失う熱量が、「(1)水蒸気の温度下降」→「(2)凝縮(潜熱の放出)」→「(3)凝縮してできた水の温度下降」という多段階のプロセスになります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 最終状態のチェック(事前検算): 計算を始める前に、「氷はすべて融けるのか?」を必ず確認します。
      • 氷をすべて融かすのに必要な熱量: \(Q_{\text{融解}} = 10\text{ g} \times 3.3 \times 10^2 \text{ J/g} = 3300 \text{ J}\)
      • \(20^\circ\text{C}\)の水が\(0^\circ\text{C}\)になるまでに放出できる最大の熱量: \(Q_{\text{放出最大}} = 100\text{ g} \times 4.2 \text{ J/(g·K)} \times (20-0)\text{ K} = 8400 \text{ J}\)
      • \(Q_{\text{放出最大}} > Q_{\text{融解}}\) なので、氷はすべて融けると判断できます。この一手間が、誤った仮定で計算を進めるミスを防ぎます。
    2. 熱の移動プロセスの図示: 低温側と高温側の温度変化を数直線上に書き出し、どの区間でどの熱量(顕熱か潜熱か)が関わるかを視覚的に整理すると、立式ミスが減ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 潜熱(融解熱)の考慮漏れ:
    • 誤解: 氷が得る熱量を、温度上昇分の \(mc\Delta T\) だけで計算してしまう。
    • 対策: 「氷を入れる」「融解」といったキーワードを見たら、必ず「潜熱」が関わることを思い出してください。「固体→液体」の状態変化には、温度上昇とは別にエネルギーが必要である、と常に意識することが重要です。
  • 融解後の質量計算ミス:
    • 誤解: 氷が融けて水になった後の温度上昇を計算する際、質量を元の水の質量(100g)や全体の質量(110g)で間違えて計算してしまう。
    • 対策: 「誰が」温度上昇したのかを明確にしましょう。「融解してできた水」の温度上昇なので、その質量(10g)を使います。\(Q_{\text{得}}\)の式を立てる際は、各項の主語(氷なのか、元々の水なのか、融けた水なのか)をはっきりさせることがミス防止に繋がります。
  • 別解アプローチでの符号ミス:
    • 誤解: 別解の「\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)」のアプローチで、\(0^\circ\text{C}\)の氷が持つ熱量を正の値として扱ってしまう。
    • 対策: 基準を「\(0^\circ\text{C}\)の水」に置いた場合、それよりエネルギー的に低い状態である「\(0^\circ\text{C}\)の氷」は、融解熱の分だけ「負」の熱量を持つと考える必要があります。この考え方が難しい場合は、直感的に理解しやすい「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチに徹するのが安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)):
    • 選定理由: 外部と熱のやり取りがない閉じた系で、複数の物体が熱平衡に至るまでの過程を解くための基本法則だからです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則という物理学の根本原理に基づいています。高温の水から失われたエネルギーは消滅するのではなく、低温の氷に「状態変化」と「温度上昇」という形で移動します。その総量は不変です。
  • \(Q=mL\) (融解熱):
    • 選定理由: 物質が温度を変えずに状態変化(固体→液体)する過程の熱量を計算するために必須だからです。
    • 適用根拠: 融解中、加えられた熱エネルギーは分子の運動エネルギー(=温度)を増加させるのではなく、分子間の結合を断ち切って位置エネルギーを増加させるために使われます。このエネルギー量は、状態変化する物質の質量に比例します。
  • \(Q=mc\Delta T\) (比熱):
    • 選定理由: 物質が状態を変えずに温度だけ変化する過程の熱量を計算するために使います。この問題では、高温の水と、融解後の氷(水)の両方に適用されます。
    • 適用根拠: 温度変化中は、加えられた熱エネルギーが分子の運動エネルギーを直接増加させます。このエネルギー量は、質量、物質の種類(比熱)、温度の変化量に比例します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 立式の整理と工夫:
    • \(100 \times 4.2 \times (20 – t) = 10 \times 330 + 10 \times 4.2 \times t\)
    • この式を見て、まず両辺を10で割ると計算が少し楽になります。
    • \(10 \times 4.2 \times (20 – t) = 330 + 4.2 \times t\)
    • \(42(20 – t) = 330 + 4.2t\)
    • このように、計算を進める前に式を簡略化できないか検討する癖をつけましょう。
  • 移項の確実性:
    • \(8400 – 420t = 3300 + 42t\) (※解答の式)
    • \(t\) を含む項を右辺に、定数項を左辺に集めるなど、ルールを決めて慎重に移項します。
    • \(8400 – 3300 = 42t + 420t\) → \(5100 = 462t\)
  • 割り算の実行:
    • \(t = \frac{5100}{462}\) のような面倒な割り算は、筆算で丁寧に行うことが不可欠です。
    • 可能であれば、約分を試みます。両辺は2で割れ、さらに3で割れることがわかります。
    • \(\frac{5100}{462} = \frac{2550}{231} = \frac{850}{77}\)。ここまで簡略化できれば、筆算のミスも減らせます。
  • 有効数字の確認: 最後に問題文で求められている有効数字を確認し、計算結果を適切に丸めます。この問題では、与えられた物理量が2桁なので、答えも2桁(または3桁目を四捨五入)で示すのが一般的です。\(11.03…\) は \(11\) となります。

177 水と水蒸気の混合

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「状態変化(凝縮)を伴う熱量保存」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存の法則: 外部との熱のやり取りがない場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  2. 蒸発熱(凝縮熱): 気体が液体に状態変化(凝縮)する際に放出する熱量です。この間、温度は一定に保たれます。質量\(m\)の気体が凝縮する際に放出する熱量\(Q\)は、蒸発熱を\(L\)として \(Q=mL\) で計算します。
  3. 比熱による熱量: 物体の温度を変化させるのに必要な熱量です。\(Q=mc\Delta T\)で計算します。
  4. 熱平衡: 最終的に全体が同じ温度に落ち着く状態です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 未知数である、吹き込んで凝縮した水蒸気の質量を\(m\)と置きます。
  2. 高温側(水蒸気)が失う熱量を立式します。このとき、水蒸気は「\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気 → \(100^\circ\text{C}\)の水」という状態変化と、「\(100^\circ\text{C}\)の水 → 最終温度\(77.4^\circ\text{C}\)の水」という温度降下の2段階で熱を放出することに注意します。
  3. 低温側(水)が得る熱量を立式します。
  4. 「失った熱量の合計」=「得た熱量」という熱量保存の法則の等式を立て、水蒸気の質量\(m\)を求めます。
  5. 最後に、はじめの水の質量と求めた水蒸気の質量を足し合わせ、最終的な水の総質量を算出します。

思考の道筋とポイント
\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気を\(25.3^\circ\text{C}\)の水に入れる、状態変化を伴う熱量保存の問題です。この問題の最大のポイントは、水蒸気が失う熱量を正しく計算することです。水蒸気はただ冷えるだけでなく、まず「凝縮」という状態変化を起こして莫大な熱(潜熱)を放出します。したがって、高温側が失う熱量は、「凝縮に使われる熱量(潜熱)」と「凝縮後の水の温度降下に使われる熱量(顕熱)」の2つの合計になります。未知数は吹き込んだ水蒸気の質量\(m\)であり、最終的に問われているのは「熱量計内の水の総質量」である点にも注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 高温側が失う熱量は、潜熱と顕熱の和: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{凝縮}} + Q_{\text{温度降下}}\)
  • 蒸発熱(凝縮熱)の公式: \(Q = mL\)
  • 比熱による熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)

具体的な解説と立式
吹き込んで凝縮した水蒸気の質量を \(m \text{ [g]}\) とします。最終的な温度は \(t = 77.4^\circ\text{C}\) です。

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

1. 高温の水蒸気が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
これは2段階のプロセスの合計です。

  • 第1段階: 凝縮の熱量 \(Q_{\text{凝縮}}\)
    \(100^\circ\text{C}\)の水蒸気 \(m\) [g] が、すべて\(100^\circ\text{C}\)の水に変わる際に放出する熱量です。
    蒸発熱は \(L = 2.26 \times 10^3 \text{ J/g}\) です。
    $$ Q_{\text{凝縮}} = m L = m \times (2.26 \times 10^3) $$
  • 第2段階: 温度降下の熱量 \(Q_{\text{温度降下}}\)
    凝縮してできた\(100^\circ\text{C}\)の水 \(m\) [g] が、最終温度\(77.4^\circ\text{C}\)まで冷える際に放出する熱量です。
    水の比熱は \(c = 4.20 \text{ J/(g·K)}\) です。
    温度変化は \(\Delta T_{\text{高}} = 100 – 77.4\) です。
    $$ Q_{\text{温度降下}} = m c \Delta T_{\text{高}} = m \times 4.20 \times (100 – 77.4) $$

したがって、失った熱量の合計は、
$$ Q_{\text{失}} = Q_{\text{凝縮}} + Q_{\text{温度降下}} $$

2. 低温の水が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
\(25.3^\circ\text{C}\)の水が\(77.4^\circ\text{C}\)になるまでに得る熱量です。
質量は \(m_{\text{水}} = 226 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{低}} = 77.4 – 25.3\) です。
$$ Q_{\text{得}} = m_{\text{水}} c \Delta T_{\text{低}} = 226 \times 4.20 \times (77.4 – 25.3) $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ m \times (2.26 \times 10^3) + m \times 4.20 \times (100 – 77.4) = 226 \times 4.20 \times (77.4 – 25.3) $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 蒸発熱による熱量: \(Q=mL\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(m\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m \times 2260 + m \times 4.20 \times 22.6 &= 226 \times 4.20 \times 52.1 \\[2.0ex]m (2260 + 94.92) &= 949.2 \times 52.1 \\[2.0ex]2354.92 m &= 49453.32 \\[2.0ex]m &= \frac{49453.32}{2354.92} \\[2.0ex]m &= 21.0 \text{ [g]}
\end{aligned}
$$
これは凝縮した水蒸気の質量です。問題で問われているのは、最後の状態における熱量計内の水の総質量なので、はじめの水の質量と足し合わせます。
$$ \text{総質量} = 226 + 21.0 = 247 \text{ [g]} $$

計算方法の平易な説明

熱い水蒸気が冷たい水に熱を渡すと考えます。水蒸気は、(1)まず水滴に戻るとき(凝縮)、(2)次にその水滴が冷めるとき、の2段階で熱を放出します。一方、冷たい水はその熱をもらって温まります。「水蒸気が放出した熱の合計」と「水が得た熱」が等しくなるという方程式を立てることで、何gの水蒸気が水に変わったのかがわかります。最後に、その質量を元々あった水の質量に足せば答えが出ます。

結論と吟味

凝縮した水蒸気の質量は \(21.0 \text{ g}\) であり、熱量計内の水の総質量は \(247 \text{ g}\) となります。蒸発熱(凝縮熱)は非常に大きなエネルギーであるため、わずか21gの水蒸気が226gの水を約52℃も温めることができる、という結果は物理的に妥当です。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、実験前と実験後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (実験前の全熱量) = (実験後の全熱量)
  • 熱量の基準点を設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の水の状態)。
  • 基準点よりエネルギーが高い状態(例: 水蒸気)の熱量を正しく計算する。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。吹き込んだ水蒸気の質量を \(m \text{ [g]}\) とします。

1. 実験前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)

  • \(25.3^\circ\text{C}\)の水(226g)が持つ熱量: \(226 \times 4.20 \times (25.3 – 0)\)
  • \(100^\circ\text{C}\)の水蒸気(\(m\) g)が持つ熱量: これは、\(0^\circ\text{C}\)の水を\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気にするのに必要な熱量に等しい。
    • \(0^\circ\text{C}\)水→\(100^\circ\text{C}\)水: \(m \times 4.20 \times (100 – 0)\)
    • \(100^\circ\text{C}\)水→\(100^\circ\text{C}\)水蒸気: \(m \times (2.26 \times 10^3)\)

$$ Q_{\text{前}} = 226 \times 4.20 \times 25.3 + m \times \{ 4.20 \times 100 + (2.26 \times 10^3) \} $$

2. 実験後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(226 + m\) [g]、最終温度は \(77.4^\circ\text{C}\) です。
$$ Q_{\text{後}} = (226 + m) \times 4.20 \times (77.4 – 0) $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 226 \times 4.20 \times 25.3 + m(420 + 2260) = (226 + m) \times 4.20 \times 77.4 $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 蒸発熱による熱量: \(Q=mL\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(m\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
226 \times 4.20 \times 25.3 + 2680m &= 226 \times 4.20 \times 77.4 + m \times 4.20 \times 77.4 \\[2.0ex]2680m – (4.20 \times 77.4)m &= 226 \times 4.20 \times 77.4 – 226 \times 4.20 \times 25.3 \\[2.0ex]m(2680 – 325.08) &= 226 \times 4.20 \times (77.4 – 25.3) \\[2.0ex]2354.92m &= 949.2 \times 52.1 \\[2.0ex]2354.92m &= 49453.32 \\[2.0ex]m &= 21.0 \text{ [g]}
\end{aligned}
$$
この後の計算はメインの解法と同じで、総質量は \(247 \text{ g}\) となります。

計算方法の平易な説明

\(0^\circ\text{C}\)の水を基準(貯金0円)とします。はじめ、\(25.3^\circ\text{C}\)の水は少し「貯金」があり、\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気は莫大な「貯金」を持っています。この2つの「貯金」を合計したものが、混ぜる前の全体の財産です。混ぜた後、全員(はじめの水+水蒸気)が同じ温度\(77.4^\circ\text{C}\)になったときの財産と、混ぜる前の財産は等しいはずです。この関係から水蒸気の質量を計算し、最後に足し合わせます。

結論と吟味

最終的な水の総質量は \(247 \text{ g}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 247 [g]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 状態変化(凝縮)を伴う熱量保存:
    • 核心: この問題は、気体が液体になる「凝縮」という状態変化が関わる熱交換です。核心は、高温側(水蒸気)が放出する熱量が、2つの異なるプロセス(潜熱と顕熱)の合計である点を正しく理解することです。
    • 理解のポイント:
      1. 潜熱(凝縮熱): まず、\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気が\(100^\circ\text{C}\)の水に状態変化するために熱量(\(Q=mL\))を放出します。この間、温度は下がりません。
      2. 顕熱(比熱による熱量): 次に、凝縮してできた\(100^\circ\text{C}\)の水が、最終温度\(t\)まで冷えるために熱量(\(Q=mc\Delta T\))を放出します。
    • したがって、高温側が失う熱量の総和は \(Q_{\text{失}} = mL + mc\Delta T\) となります。この2段階のプロセスを認識することが、この問題を解く鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 氷との混合: 低温側が「温度上昇→融解→温度上昇」という多段階で熱を吸収する問題。高温側と低温側のどちらが状態変化するかを見極めることが重要です。
    • 最終状態が不明な問題: 例えば、大量の水に少量の水蒸気を吹き込む場合、水蒸気がすべて凝縮しきれるか、あるいは少量の水に大量の水蒸気を吹き込み、最終的にすべてが100℃の水になるか、水蒸気が残り続けるか、などが不明なケース。この場合は、仮説(例:「すべて\(t^\circ\text{C}\)の水になる」)を立てて計算し、結果(例:\(t>100\)など)に矛盾がないかを確認するアプローチが必要です。
    • 容器の熱容量を考慮する問題: 低温側が得る熱量に、容器の熱量\(C\Delta T\)の項を追加する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 熱の移動プロセスを図示: 温度を軸にした数直線を描き、高温側(水蒸気)が「100℃で凝縮→温度降下」、低温側(水)が「温度上昇」というプロセスを矢印で視覚化します。これにより、どの熱量計算が必要か一目瞭然になります。
    2. 未知数の設定: この問題では、吹き込んだ水蒸気の質量が未知数です。これを\(m\)と明確に設定することが第一歩です。
    3. 最終的な問いの確認: 未知数\(m\)を求めた後、問題が「水蒸気の質量」を問うているのか、「最終的な水の総質量」を問うているのかを必ず再確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 潜熱(凝縮熱)の考慮漏れ:
    • 誤解: 水蒸気が失う熱量を、温度降下分の\(mc\Delta T\)だけで計算してしまう。
    • 対策: 「水蒸気」「凝縮」というキーワードを見たら、必ず「潜熱」が関わることを思い出してください。特に蒸発熱(凝縮熱)は比熱による熱量より桁違いに大きいことが多く、これを忘れると結果が大きくずれます。
  • 凝縮後の質量計算ミス:
    • 誤解: 凝縮してできた水の温度降下を計算する際、質量を元の水の質量(226g)で計算してしまう。
    • 対策: 「誰が」温度降下したのかを明確にしましょう。「凝縮してできた水」の温度降下なので、その質量(未知数\(m\))を使います。\(Q_{\text{失}}\)の式を立てる際は、各項の主語をはっきりさせることがミス防止に繋がります。
  • 最終的な答えのミス:
    • 誤解: 水蒸気の質量\(m=21.0\text{ g}\)を求めた時点で満足してしまい、それを答えとしてしまう。
    • 対策: 計算が終わったら、必ず問題文をもう一度読み返し、「何が問われているか」(最後の状態における熱量計内の水の質量)を再確認する習慣をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)):
    • 選定理由: 外部と熱のやり取りがない閉じた系で、複数の物体が熱平衡に至るまでの過程を解くための基本法則だからです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則という物理学の根本原理に基づいています。高温の水蒸気から失われたエネルギーは消滅するのではなく、低温の水に移動し、その総量は不変です。
  • \(Q=mL\) (蒸発熱/凝縮熱):
    • 選定理由: 物質が温度を変えずに状態変化(気体→液体)する過程の熱量を計算するために必須だからです。
    • 適用根拠: 凝縮中、分子は気体の自由な状態から液体の束縛された状態へと移行し、その際に分子間力による位置エネルギーを熱として放出します。このエネルギー量は、状態変化する物質の質量に比例します。
  • \(Q=mc\Delta T\) (比熱):
    • 選定理由: 物質が状態を変えずに温度だけ変化する過程の熱量を計算するために使います。この問題では、低温の水と、凝縮後の高温の水の両方に適用されます。
    • 適用根拠: 温度変化中は、熱エネルギーの出入りが分子の運動エネルギーの変化に直接結びつきます。このエネルギー量は、質量、物質の種類(比熱)、温度の変化量に比例します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 共通因子でくくる:
    • \(m L + m c (T_1 – T_2) = m_{\text{水}} c (T_2 – T_3)\)
    • 左辺を未知数\(m\)でくくり、\(m \{L + c (T_1 – T_2)\} = \dots\) の形に整理してから計算を進めると、式の構造が明確になり、代入ミスや計算ミスを減らせます。
  • 大きな数の取り扱い:
    • 蒸発熱 \(2.26 \times 10^3\) は \(2260\) と直してから計算すると、他の項との足し算がしやすくなります。指数計算と通常計算が混在する場合は、どちらかに統一するのが安全です。
  • 単位を意識した検算:
    • 各項の単位がすべてエネルギーの単位[J]になっているかを確認します。
    • \(m[\text{g}] \times L[\text{J/g}] \rightarrow [\text{J}]\)
    • \(m[\text{g}] \times c[\text{J/(g·K)}] \times \Delta T[\text{K}] \rightarrow [\text{J}]\)
    • この確認作業は、式の立て間違いを発見するのに有効です。
  • 問いの再確認: 計算で\(m\)が求まったら、それが最終的な答えか、それとも答えを出すための中間的な値なのかを、問題文を読み返して必ず確認しましょう。

178 比熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱量保存則を用いた比熱の測定と実験誤差の考察」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存の法則: 外部との熱のやり取りがない理想的な状況では、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  2. 熱量の計算式: 物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、比熱\(c\)を用いて \(Q=mc\Delta T\)、熱容量\(C\)を用いて \(Q=C\Delta T\) と表されます。
  3. 熱容量と比熱: 「比熱」は物質1gあたりの熱の蓄えやすさ、「熱容量」は物体全体の熱の蓄えやすさを示します。
  4. 実験誤差: 現実の実験では、熱量計と外部(室温の空気)との間で熱の出入りが生じ、これが測定結果の誤差の原因となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、低温側である水と熱量計が得た熱量を、それぞれの熱量の公式を使って計算し、合計します。
  2. (2)では、熱量保存の法則(\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\))を利用します。(1)で求めた「得た熱量」は、高温の金属球が「失った熱量」に等しいはずです。この関係式を立てて、金属球の比熱を求めます。
  3. (3)では、実験を通して外部から入ってくる熱と出ていく熱をいかにして相殺させ、誤差を小さくできるかを考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
低温の物体である「熱量計」と「水」が、\(16.0^\circ\text{C}\)から\(20.0^\circ\text{C}\)に温められる際に得た熱量の合計を求める問題です。熱量計については熱容量\(C\)が、水については質量\(m\)と比熱\(c\)が与えられているため、それぞれに適した公式を用いて計算し、最後に足し合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量計が得た熱量は \(Q=C\Delta T\) で計算する。
  • 水が得た熱量は \(Q=mc\Delta T\) で計算する。
  • 熱量計と水の温度変化\(\Delta T\)は共通である。

具体的な解説と立式
低温側(熱量計と水)が得た熱量の合計を \(Q_{\text{得}}\) とします。
温度変化は \(\Delta T = 20.0 – 16.0 = 4.0 \text{ K}\) です。

1. 熱量計が得た熱量 \(Q_{\text{熱量計}}\)
熱容量は \(C = 90 \text{ J/K}\) です。
$$ Q_{\text{熱量計}} = C \Delta T = 90 \times 4.0 $$

2. 水が得た熱量 \(Q_{\text{水}}\)
質量は \(m_{\text{水}} = 150 \text{ g}\)、比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
$$ Q_{\text{水}} = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T = 150 \times 4.2 \times 4.0 $$

3. 得た熱量の合計
求める熱量は、これらの和です。
$$ Q_{\text{得}} = Q_{\text{熱量計}} + Q_{\text{水}} $$

使用した物理公式

  • 熱容量による熱量: \(Q = C\Delta T\)
  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{得}} &= (90 \times 4.0) + (150 \times 4.2 \times 4.0) \\[2.0ex]&= (90 + 150 \times 4.2) \times 4.0 \\[2.0ex]&= (90 + 630) \times 4.0 \\[2.0ex]&= 720 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 2880 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表すと、\(2.9 \times 10^3 \text{ J}\) となります。

計算方法の平易な説明

「熱量計が温まるのに必要だった熱」と「水が温まるのに必要だった熱」を、それぞれ公式を使って計算します。熱量計は熱容量が分かっているので \(Q=C\Delta T\)、水は質量と比熱が分かっているので \(Q=mc\Delta T\) を使います。最後に、この2つの熱量を足し合わせれば答えが出ます。

結論と吟味

熱量計と水が得た熱量の合計は \(2880 \text{ J}\) であり、有効数字2桁で \(2.9 \times 10^3 \text{ J}\) となります。この値は、(2)で金属球が失った熱量として使われます。

解答 (1) 2.9×10³ [J]

問(2)

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を利用して、金属球の比熱を求める問題です。高温の金属球が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\) は、(1)で求めた、低温の熱量計と水が得た熱量の合計 \(Q_{\text{得}}\) に等しくなります。この \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) という関係式から、未知数である金属球の比熱を逆算します。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 金属球が失った熱量は \(Q=mc\Delta T\) で計算する。
  • (1)で求めた値を利用する。

具体的な解説と立式
金属球の比熱を \(c_{\text{球}} \text{ [J/(g·K)]}\) とします。

1. 金属球が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(100^\circ\text{C}\)の金属球が\(20.0^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{球}} = 300 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{球}} = 100 – 20.0 = 80.0 \text{ K}\) です。
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{球}} c_{\text{球}} \Delta T_{\text{球}} = 300 \times c_{\text{球}} \times 80.0 $$

2. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) であり、(1)より \(Q_{\text{得}} = 2880 \text{ J}\) なので、
$$ 300 \times c_{\text{球}} \times 80.0 = 2880 $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(c_{\text{球}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
24000 \times c_{\text{球}} &= 2880 \\[2.0ex]c_{\text{球}} &= \frac{2880}{24000} \\[2.0ex]&= \frac{288}{2400} \\[2.0ex]&= \frac{12}{100} \\[2.0ex]&= 0.12 \text{ [J/(g·K)]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)で計算した「水と容器がもらった熱」は、もともと「熱い金属球が出した熱」のはずです。この関係を利用して、「金属球が出した熱 = 2880 J」という式を立てます。金属球が出した熱は「質量×比熱×温度変化」で計算できるので、この式から未知数である比熱を逆算することができます。

結論と吟味

金属球の比熱は \(0.12 \text{ J/(g·K)}\) です。計算結果は物理的に妥当な値の範囲に収まっています。

解答 (2) 0.12 [J/(g·K)]

問(3)

思考の道筋とポイント
実際の実験における誤差を考察する問題です。理想的な実験では外部との熱の出入りはありませんが、現実には水温と室温に差があれば熱が移動してしまいます。この誤差を最小にするには、実験全体を通して「外部から入ってくる熱」と「外部へ出ていく熱」が打ち消し合うように条件を設定するのが有効です。
この設問における重要なポイント

  • 水温が室温より高い場合、熱は熱量計から外部へ流出する。
  • 水温が室温より低い場合、熱は外部から熱量計へ流入する。
  • 誤差を最小にするには、実験中の熱の流入と流出を相殺させる。

具体的な解説と立式
この実験では、水温は \(16.0^\circ\text{C}\) からスタートし、\(20.0^\circ\text{C}\) で終わります。
実験中に外部との熱の出入りによって生じる誤差を小さくするには、実験全体で「外部から流入した熱量」と「外部へ流出した熱量」ができるだけ等しくなり、互いに相殺されるようにするのが理想的です。

  • 実験の前半: 水温は \(16.0^\circ\text{C}\) に近い低い温度です。このとき水温が室温より低ければ、外部から熱が流入します。
  • 実験の後半: 水温は \(20.0^\circ\text{C}\) に近い高い温度です。このとき水温が室温より高ければ、外部へ熱が流出します。

この「流入」と「流出」を両方起こして相殺させるためには、室温が実験中の水温の範囲、つまり \(16.0^\circ\text{C}\) と \(20.0^\circ\text{C}\) の中間あたりにあるのが望ましいです。
この条件を満たすためには、初めの水温(\(16.0^\circ\text{C}\))は室温よりも「やや低め」に設定する必要があります。そうすれば、実験前半は熱が流入し、水温が上昇して室温を超えた後半は熱が流出するため、トータルの熱の出入りがゼロに近づき、誤差が小さくなります。

したがって、選ぶべき選択肢は「やや低めがよい」となります。

使用した物理公式

この設問は定性的な考察であり、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この設問では、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

実験をするとき、部屋の温度(室温)と水温が違うと、熱が出たり入ったりして正確な値が測れません。このズレを一番小さくするにはどうすればいいか、という問題です。
もし、実験の前半で「外から熱が入ってきて」、後半で「外に熱が逃げていく」ようにできれば、プラスマイナスで誤差が打ち消し合って小さくなります。
そうなるためには、スタート時の水温を室温より少し低くしておき、ゴール時の水温が室温より少し高くなるようにするのがベストです。よって、「初めの水温は室温よりやや低め」が正解です。

結論と吟味

誤差を小さくするためには、初めの水温は室温よりやや低めがよい。理由は、実験の前半で外部から熱が流入し、水温が室温を超えた後半で外部へ熱が流出することで、実験全体を通した熱の出入りが相殺され、誤差が小さくなるからである。

解答 (3) やや低めがよい。理由は、初めの水温を室温よりやや低くし、室温が初めの水温と終わりの水温の中間になるようにすれば、実験の前半では熱が水に流入するが、後半では熱が水から流出する。その結果、実験を通して熱の出入りがある程度相殺されるので、誤差は小さくなる。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量保存の法則:
    • 核心: 高温の物体が失った熱量(\(Q_{\text{失}}\))と、低温の物体が得た熱量(\(Q_{\text{得}}\))が等しくなる(\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\))という、熱交換の基本法則です。この問題では、熱量計(容器)も熱のやり取りに参加する、より現実に近い設定になっています。
    • 理解のポイント: 熱のやり取りに関わる「登場人物」をすべてリストアップし、誰が熱を失い、誰が得るのかを正確に把握することが第一歩です。今回は、高温側が「金属球」、低温側が「水」と「熱量計」の2者になります。
  • 熱量の計算式 (\(Q=mc\Delta T\) と \(Q=C\Delta T\)):
    • 核心: 熱量を計算するための2つの道具を、対象に応じて正しく使い分ける能力が問われます。
    • 理解のポイント:
      • 物質の「比熱\(c\)」が与えられている場合は、質量\(m\)を掛けて \(Q=mc\Delta T\) を使います(例:水、金属球)。
      • 物体の「熱容量\(C\)」が与えられている場合は、そのまま \(Q=C\Delta T\) を使います(例:熱量計)。熱容量は既に質量と比熱の積(\(C=mc\))なので、さらに質量を掛ける必要はありません。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 熱量計の熱容量を求める問題: 今回とは逆に、金属球の比熱が既知で、熱量計の熱容量\(C\)が未知数として問われるパターン。熱量保存の式を\(C\)について解くことになります。
    • 実験誤差の具体的な計算: 「室温が18℃で、実験に60秒かかった。熱量計からは1秒あたり\(k(T-T_{\text{室}})\) [J]の熱が逃げるものとする」といった、より定量的な誤差の考察問題。この場合、熱量保存の式に「外部との熱のやり取りの項」を積分または平均値で加える必要があります(大学レベル)。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 登場人物と役割分担の整理: まず、熱のやり取りに関わる物体(金属球、水、熱量計)をすべて挙げ、それぞれが高温側(熱を失う)か低温側(熱を得る)かを明確に分類します。
    2. 状態変化の有無: 今回は温度変化のみですが、氷や水蒸気が関わる場合は状態変化(潜熱)も考慮に入れる必要があるかを確認します。
    3. (3)のような考察問題へのアプローチ:
      • まず、理想的な状況(熱量保存が完全に成り立つ)と現実の状況(外部との熱の出入りがある)の違いを認識します。
      • 誤差の原因となる「外部との熱のやり取り」が、どのような条件(温度差)で発生するかを考えます。
      • その誤差を最小化するにはどうすればよいか、「相殺する」という観点から最適な実験条件を導き出します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 熱量計の熱容量の無視:
    • 誤解: (1)や(2)の計算で、水が得た熱量だけを考えてしまい、熱量計が得た熱量を計算に入れない。
    • 対策: 問題文に「熱容量90J/Kの熱量計」と明記されている以上、これは熱のやり取りの重要な「登場人物」です。必ず計算に含めるようにしましょう。「熱容量を無視できる」と書かれている場合との違いを明確に意識することが大切です。
  • 比熱と熱容量の混同:
    • 誤解: 熱量計の熱量を計算する際に、熱容量\(C=90\)にさらに水の質量などを掛けてしまう。
    • 対策: 熱容量\(C\)は「物体全体を1K温めるのに必要な熱量」であり、単位は[J/K]です。これに温度変化[K]を掛ければ、単位は[J]となり、熱量の計算は完結します。\(C\)と\(c\)の文字の違い、単位の違いを常に意識しましょう。
  • (3)の理由づけの論理の飛躍:
    • 誤解: 「なんとなく真ん中あたりが良さそうだから」という曖昧な理由で「やや低め」を選んでしまう。
    • 対策: 「なぜ誤差が小さくなるのか?」を物理的な言葉で説明できるようにしましょう。「実験前半の熱の流入」と「実験後半の熱の流出」が「相殺される」というキーワードを使って、論理的に説明する練習が重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(Q_{\text{得}} = Q_{\text{熱量計}} + Q_{\text{水}}\):
    • 選定理由: (1)で、低温側全体が得た熱量を求めるため。
    • 適用根拠: 低温側は「熱量計」と「水」という2つの物体で構成されています。これらは一体となって同じ温度変化をするため、それぞれが得た熱量を個別に計算し、単純に足し合わせることで、低温側全体が得た熱量の総和を求めることができます。
  • 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)):
    • 選定理由: (2)で、熱交換に関わる物体のうち、一つの物理量(金属球の比熱)が未知であるため、既知の熱量の関係から逆算するために使用します。
    • 適用根拠: この実験系は、理想的には外部から断熱された「孤立系」と見なせます。エネルギー保存則により、孤立系内部でエネルギーの移動はあっても、その総量は不変です。高温の金属球が失った熱エネルギーは、消滅するのではなく、低温の水と熱量計に過不足なく移動します。このエネルギーの収支関係を表したのがこの式です。
  • (3)の定性的考察:
    • 選定理由: 理想的なモデル(熱量保存則)と現実の実験とのズレ(誤差)を考察するため。
    • 適用根拠: 熱力学の法則によれば、熱は必ず温度の高い方から低い方へ移動します。この原理に基づき、実験中の水温と室温の大小関係によって、外部から熱が入ってくるのか、外部へ熱が逃げていくのかを判断します。誤差を最小にするという目的のためには、この出入りを実験全体でプラスマイナスゼロに近づける(相殺させる)のが最も合理的な方策となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 共通因子でくくる: (1)の計算で、\(90 \times 4.0 + 150 \times 4.2 \times 4.0\) を計算する際、共通の温度変化 \(\Delta T = 4.0\) でくくり、\((90 + 150 \times 4.2) \times 4.0\) と変形することで、掛け算の回数を一回減らすことができます。
  • 大きな数の計算: (2)の \(300 \times c_{\text{球}} \times 80.0 = 2880\) の計算では、まず両辺を10で割って \(2400 \times c_{\text{球}} = 288\) とし、さらに \(c_{\text{球}} = \frac{288}{2400}\) の分数を約分していくと、計算が楽になります。\(288\)も\(2400\)も24で割り切れることに気づけば、\(\frac{12}{100}\)と素早く計算できます。
  • 単位の確認: 計算の各段階で単位を意識することが重要です。
    • \(C[\text{J/K}] \times \Delta T[\text{K}] \rightarrow [\text{J}]\)
    • \(m[\text{g}] \times c[\text{J/(g·K)}] \times \Delta T[\text{K}] \rightarrow [\text{J}]\)
    • \(Q[\text{J}] / (m[\text{g}] \times \Delta T[\text{K}]) \rightarrow [\text{J/(g·K)}]\)
    • このように、単位計算が合っているかを確認することで、式の立て間違いを防げます。

179 熱量の保存

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱量保存則を用いた熱容量の測定」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存の法則: 外部との熱のやり取りがない場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  2. 熱量の計算式: 物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、比熱\(c\)を用いて \(Q=mc\Delta T\)、熱容量\(C\)を用いて \(Q=C\Delta T\) と表されます。
  3. 熱容量と比熱: 「比熱」は物質1gあたりの熱の蓄えやすさ、「熱容量」は物体全体の熱の蓄えやすさを示します。
  4. 熱平衡: 温度の異なる物体を接触させると、やがて全体の温度が一定になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 熱の移動に関わる物体を「高温側(金属球)」と「低温側(水、容器)」に分けます。
  2. 高温の金属球が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\) を計算します。
  3. 低温の水と容器が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\) を、未知数である容器の熱容量\(C\)を含んだ形で立式します。
  4. 熱量保存の法則の等式 \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) を立て、未知数\(C\)を求めます。
  5. 別解として、「はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量」というアプローチでも解説します。

思考の道筋とポイント
高温の金属球を、水が入った容器に入れるという、熱量保存の法則を応用する典型的な問題です。この問題では、熱のやり取りに関わる物体が「金属球」「水」「容器」の3者であることを見抜くことが重要です。高温の金属球が失った熱が、低温の水と容器に分配されると考え、「金属球が失った熱量 = 水が得た熱量 + 容器が得た熱量」という関係式を立てることで、未知数である容器の熱容量を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 低温側が得た熱量は、水と容器の熱量の和: \(Q_{\text{得}} = Q_{\text{水}} + Q_{\text{容器}}\)
  • 熱量の公式の使い分け: 比熱が与えられている物体には \(Q=mc\Delta T\)、熱容量を求める物体には \(Q=C\Delta T\) を使う。

具体的な解説と立式
容器の熱容量を \(C \text{ [J/K]}\) とします。

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

1. 高温の金属球が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
\(80.0^\circ\text{C}\)の金属球が、最終温度\(30.0^\circ\text{C}\)になるまでに失う熱量です。
質量 \(m_{\text{球}} = 200 \text{ g}\)、比熱 \(c_{\text{球}} = 0.42 \text{ J/(g·K)}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{球}} = 80.0 – 30.0 = 50.0 \text{ K}\) です。
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{球}} c_{\text{球}} \Delta T_{\text{球}} = 200 \times 0.42 \times 50.0 $$

2. 低温側(水と容器)が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
\(25.0^\circ\text{C}\)の水と容器が、最終温度\(30.0^\circ\text{C}\)になるまでに得る熱量の合計です。
温度変化は共通で \(\Delta T_{\text{低}} = 30.0 – 25.0 = 5.0 \text{ K}\) です。

  • 水が得た熱量 \(Q_{\text{水}}\)
    質量 \(m_{\text{水}} = 120 \text{ g}\)、比熱 \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
    $$ Q_{\text{水}} = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T_{\text{低}} = 120 \times 4.2 \times 5.0 $$
  • 容器が得た熱量 \(Q_{\text{容器}}\)
    熱容量は未知数 \(C\) です。
    $$ Q_{\text{容器}} = C \Delta T_{\text{低}} = C \times 5.0 $$

したがって、得た熱量の合計は、
$$ Q_{\text{得}} = Q_{\text{水}} + Q_{\text{容器}} $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 200 \times 0.42 \times 50.0 = 120 \times 4.2 \times 5.0 + C \times 5.0 $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 熱容量による熱量: \(Q=C\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(C\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
200 \times 0.42 \times 50.0 &= 120 \times 4.2 \times 5.0 + C \times 5.0 \\[2.0ex]4200 &= 2520 + 5.0C \\[2.0ex]5.0C &= 4200 – 2520 \\[2.0ex]5.0C &= 1680 \\[2.0ex]C &= \frac{1680}{5.0} \\[2.0ex]C &= 336 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表すと、\(3.4 \times 10^2 \text{ J/K}\) となります。

計算方法の平易な説明

「熱い金属球が失った熱」と「冷たい水と容器が得た熱の合計」が等しくなる、というルールを使います。まず、わかっている情報から「金属球が失った熱」と「水が得た熱」をそれぞれ計算します。金属球が失った熱から水が得た熱を差し引くと、残りが「容器が得た熱」になります。最後に、その熱量を温度変化で割ることで、容器の熱容量を求めることができます。

結論と吟味

容器の熱容量は \(336 \text{ J/K}\) であり、有効数字2桁で \(3.4 \times 10^2 \text{ J/K}\) となります。計算結果は物理的に妥当な値です。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\))を決め、その状態の熱量を0とします。そして、実験前と実験後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (実験前の全熱量) = (実験後の全熱量)
  • 熱量の基準点を任意に設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の状態)。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の状態の熱量を0とします。容器の熱容量を \(C \text{ [J/K]}\) とします。

1. 実験前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)

  • 金属球(\(80.0^\circ\text{C}\)): \(200 \times 0.42 \times (80.0 – 0)\)
  • 水(\(25.0^\circ\text{C}\)): \(120 \times 4.2 \times (25.0 – 0)\)
  • 容器(\(25.0^\circ\text{C}\)): \(C \times (25.0 – 0)\)

$$ Q_{\text{前}} = 200 \times 0.42 \times 80.0 + 120 \times 4.2 \times 25.0 + C \times 25.0 $$

2. 実験後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
全体が熱平衡に達し、温度は \(30.0^\circ\text{C}\) になります。

  • 金属球(\(30.0^\circ\text{C}\)): \(200 \times 0.42 \times (30.0 – 0)\)
  • 水(\(30.0^\circ\text{C}\)): \(120 \times 4.2 \times (30.0 – 0)\)
  • 容器(\(30.0^\circ\text{C}\)): \(C \times (30.0 – 0)\)

$$ Q_{\text{後}} = (200 \times 0.42 + 120 \times 4.2) \times 30.0 + C \times 30.0 $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 200 \times 0.42 \times 80.0 + 120 \times 4.2 \times 25.0 + 25.0C = (200 \times 0.42 + 120 \times 4.2) \times 30.0 + 30.0C $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q=mc\Delta T\)
  • 熱容量による熱量: \(Q=C\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(C\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
30.0C – 25.0C &= (200 \times 0.42 \times 80.0 + 120 \times 4.2 \times 25.0) – (200 \times 0.42 \times 30.0 + 120 \times 4.2 \times 30.0) \\[2.0ex]5.0C &= 200 \times 0.42 \times (80.0 – 30.0) + 120 \times 4.2 \times (25.0 – 30.0) \\[2.0ex]5.0C &= 200 \times 0.42 \times 50.0 – 120 \times 4.2 \times 5.0 \\[2.0ex]5.0C &= 4200 – 2520 \\[2.0ex]5.0C &= 1680 \\[2.0ex]C &= 336 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$
この後の計算はメインの解法と同じで、有効数字2桁で \(3.4 \times 10^2 \text{ J/K}\) となります。

計算方法の平易な説明

「実験前の全員の熱の持ち分の合計」と「実験後の全員の熱の持ち分の合計」は同じはず、という考え方です。基準温度(例えば0℃)を決め、各部品の実験前と後の熱量を計算し、方程式を立てます。この方程式を解くと、結局は「失った熱量=得た熱量」と同じ式になり、同じ答えが得られます。

結論と吟味

容器の熱容量は \(3.4 \times 10^2 \text{ J/K}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 3.4×10² [J/K]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量保存の法則(多体系):
    • 核心: 高温の物体が失った熱量(\(Q_{\text{失}}\))と、低温の物体が得た熱量の総和(\(Q_{\text{得}}\))が等しくなる(\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\))という、熱交換の基本法則です。この問題のポイントは、熱のやり取りに関わる「登場人物」が3者(金属球、水、容器)であり、低温側が得る熱量は「水が得た熱量」と「容器が得た熱量」の和になる点です。
    • 理解のポイント: \(Q_{\text{失(金属球)}} = Q_{\text{得(水)}} + Q_{\text{得(容器)}}\) というエネルギーの収支関係を正確に立式することが全てです。
  • 熱量の計算式の使い分け (\(Q=mc\Delta T\) と \(Q=C\Delta T\)):
    • 核心: 熱量を計算するための2つの道具を、対象に応じて正しく使い分ける能力が問われます。
    • 理解のポイント:
      • 物質の「比熱\(c\)」が与えられている場合は、質量\(m\)を掛けて \(Q=mc\Delta T\) を使います(例:金属球、水)。
      • 物体の「熱容量\(C\)」を求めたい、あるいは与えられている場合は、\(Q=C\Delta T\) を使います(例:容器)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 未知数が変わるパターン: 今回は容器の熱容量\(C\)が未知でしたが、金属球の比熱\(c\)や、水の質量\(m\)、あるいは最終温度\(t\)が未知数になる問題も考えられます。いずれの場合も、熱量保存の式を立てて、未知数について解くという基本アプローチは同じです。
    • 状態変化が加わるパターン: 高温の金属球の代わりに、\(0^\circ\text{C}\)の氷を入れたり、\(100^\circ\text{C}\)の水蒸気を吹き込んだりする問題。この場合、低温側または高温側の熱量計算に、潜熱の項(\(mL\))が加わります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 登場人物のリストアップと役割分担: まず、熱のやり取りに関わる全ての物体(金属球、水、容器)を挙げ、それぞれが高温側(熱を失う)か低温側(熱を得る)かを明確に分類します。
    2. 状態の整理: 各物体の「実験前の状態(質量、比熱/熱容量、温度)」と「実験後の状態(最終温度)」を表にまとめると、情報が整理されて立式しやすくなります。
    3. 未知数の特定: 問題で何を求められているのか(今回は容器の熱容量\(C\))を明確にし、それを未知数として含む方程式を立てることを目標にします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 登場人物の見落とし(容器の無視):
    • 誤解: 金属球が失った熱量が、水が得た熱量と等しいとしてしまう(容器が得た熱量を計算に入れない)。
    • 対策: 問題文に「容器に入った水」と書かれている場合、その容器自身も水と同じように温度が変化し、熱を吸収(または放出)します。容器の存在を無視してよいのは、「容器の熱容量は無視できる」と明記されている場合だけです。
  • 比熱と熱容量の混同:
    • 誤解: 容器の熱量を計算する際に、求めるべき熱容量\(C\)にさらに質量を掛けてしまうなど、公式を誤って適用する。
    • 対策: \(C\)(熱容量)は「物体全体」の性質で単位は[J/K]、\(c\)(比熱)は「物質1gあたり」の性質で単位は[J/(g·K)]です。この違いを常に意識し、単位から考えても式が正しいかを確認する癖をつけましょう。
  • 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
    • 誤解: 高温側の熱量計算で、温度変化を「\(30.0 – 80.0\)」としてしまい、熱量が負の値になって混乱する。
    • 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチでは、熱量を常に正の値として扱うのが基本です。温度変化\(\Delta T\)は必ず「(高い温度)-(低い温度)」で計算すると機械的に覚えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)):
    • 選定理由: 複数の物体間で熱のやり取りがあり、外部との熱の出入りが無視できる状況で、未知の物理量(今回は熱容量)を求める問題だからです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則という物理学の根本原理に基づいています。高温の金属球が失った熱エネルギーは消滅するのではなく、低温の水と容器に過不足なく分配されます。このエネルギーの収支関係を表したのがこの式です。
  • \(Q=mc\Delta T\) (比熱による熱量):
    • 選定理由: 金属球と水について、質量と比熱が与えられており、温度変化による熱量を計算する必要があるため。
    • 適用根拠: 物質の温度変化と熱量の関係を定量的に表す基本式です。
  • \(Q=C\Delta T\) (熱容量による熱量):
    • 選定理由: 容器について、その物体全体の熱の性質である熱容量\(C\)を未知数として扱うため。
    • 適用根拠: 容器は様々な部品からできているかもしれませんが、全体として一体となって温度変化します。その物体全体を1K温めるのに必要な熱量が熱容量\(C\)であり、これを使えば内部の複雑な構造や材質を問わずに熱量を計算できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 立式の整理:
    • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得,水}} + Q_{\text{得,容器}}\) の形から、未知数\(C\)を含む項 \(Q_{\text{得,容器}}\) を分離する形 \(Q_{\text{得,容器}} = Q_{\text{失}} – Q_{\text{得,水}}\) に移項してから数値を代入すると、計算の見通しが良くなります。
    • \(C \times \Delta T_{\text{低}} = m_{\text{球}}c_{\text{球}}\Delta T_{\text{球}} – m_{\text{水}}c_{\text{水}}\Delta T_{\text{低}}\)
  • 計算の工夫:
    • \(200 \times 0.42 \times 50.0\) の計算では、\(200 \times 50.0 = 10000\) を先に計算すると、\(10000 \times 0.42 = 4200\) と暗算でも可能です。
    • \(120 \times 4.2 \times 5.0\) の計算では、\(120 \times 5.0 = 600\) を先に計算すると、\(600 \times 4.2 = 2520\) と計算しやすくなります。
  • 単位の確認: 最終的に求める\(C\)の単位が[J/K]になるかを、式の単位計算で確認します。
    • \(C = \frac{Q_{\text{失}}[\text{J}] – Q_{\text{得,水}}[\text{J}]}{\Delta T_{\text{低}}[\text{K}]} = \frac{[\text{J}]}{[\text{K}]}\)
    • このように、単位計算が合っているかを確認することで、式の立て間違いを防げます。

180 エネルギー保存の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「エネルギー保存則と熱」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー保存の法則: ある形態のエネルギー(この場合は位置エネルギー)が別の形態のエネルギー(熱エネルギー)に変換される際、エネルギーの総量は保存されます。
  2. 重力による位置エネルギー: 高さ\(h\)にある質量\(m\)の物体が持つ位置エネルギーは \(U=mgh\) で表されます。
  3. 熱量と温度上昇の関係: 質量\(m\)、比熱\(c\)の物体が熱量\(Q\)を得たときの温度上昇\(\Delta T\)は、\(Q=mc\Delta T\) で表されます。
  4. 単位系の統一: 力学で使うエネルギー(単位: J)と、熱化学で使う熱量(単位: J)を結びつける際、質量の単位(kgとg)など、各物理量の単位を正しく統一することが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 質量\(m\)の水を考え、それが滝を落下することで失う位置エネルギーを \(U=mgh\) で計算します。
  2. 問題文の条件「発生した熱は水がもっていた重力による位置エネルギーに等しい」から、この失われた位置エネルギーがすべて熱量\(Q\)に変換されたと考えます。
  3. 「すべて落下した水に与えられる」という条件から、この熱量\(Q\)によって水自身の温度が\(\Delta T\)だけ上昇したと考え、熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を適用します。
  4. 「失われた位置エネルギー」=「水が得た熱量」というエネルギー保存の式を立て、温度上昇\(\Delta T\)を求めます。

思考の道筋とポイント
滝の水が落下するという力学的な現象と、その結果として水温が上昇するという熱的な現象を結びつける、エネルギー保存則の応用問題です。問題文に「発生した熱は水がもっていた重力による位置エネルギーに等しく、すべて落下した水に与えられる」と、エネルギー変換のルールが明確に示されています。これがこの問題を解くための最大のヒントです。この指示に従い、「失われた位置エネルギー = 水が得た熱量」という等式を立てることができれば、答えにたどり着けます。この際、位置エネルギーの計算で使う質量(kg)と、熱量の計算で使う質量(g)の単位を合わせる「単位換算」が重要なポイントとなります。
この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: (失われた位置エネルギー) = (発生し、水が得た熱量)
  • 位置エネルギーの公式: \(U = mgh\)
  • 熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)
  • 単位換算: 比熱の単位が J/(g·K) なので、質量の単位を kg から g に合わせる。

具体的な解説と立式
質量 \(m \text{ [kg]}\) の水が、高さ \(h = 84 \text{ m}\) の滝を落下すると考えます。

1. 水が失う重力による位置エネルギー \(U\)
重力加速度の大きさを \(g = 9.8 \text{ m/s}^2\) とすると、失われる位置エネルギーは次式で表されます。
$$ U = mgh = m \times 9.8 \times 84 $$

2. 水が得る熱量 \(Q\)
水の温度上昇を \(\Delta T \text{ [K]}\) とします。
水の比熱は \(c = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) と与えられています。この単位に合わせて、水の質量をグラムに変換します。
質量: \(m \text{ [kg]} = m \times 10^3 \text{ [g]}\)
水が得る熱量\(Q\)は、熱量の公式を用いて次式で表されます。
$$ Q = (m \times 10^3) \times c \times \Delta T = (m \times 10^3) \times 4.2 \times \Delta T $$

3. エネルギー保存の法則
問題文の条件より、失われた位置エネルギーがすべて熱に変わり、その水自身に与えられるので、\(U = Q\) が成り立ちます。
$$ m \times 9.8 \times 84 = (m \times 10^3) \times 4.2 \times \Delta T $$

使用した物理公式

  • 重力による位置エネルギー: \(U = mgh\)
  • 熱量と温度上昇の関係: \(Q = mc\Delta T\)
  • エネルギー保存則: \(U = Q\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(\Delta T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m \times 9.8 \times 84 &= (m \times 1000) \times 4.2 \times \Delta T
\end{aligned}
$$
この式の両辺に質量 \(m\) が含まれているため、\(m\) で割って消去することができます。これは、温度上昇が落下する水の量によらないことを意味します。
$$
\begin{aligned}
9.8 \times 84 &= 1000 \times 4.2 \times \Delta T \\[2.0ex]823.2 &= 4200 \times \Delta T \\[2.0ex]\Delta T &= \frac{823.2}{4200} \\[2.0ex]\Delta T &= 0.196 \text{ [K]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、小数第3位を四捨五入します。
$$ \Delta T \approx 0.20 \text{ [K]} $$

計算方法の平易な説明

高いところにある水は、その高さゆえの「位置エネルギー」を持っています。滝から落ちることで、この位置エネルギーが失われます。問題文では、この失われたエネルギーがすべて「熱」に変わり、落ちた水自身の温度を上げるために使われる、と書かれています。
そこで、「失われた位置エネルギー = 水が得た熱量」という等式を立てます。この式を解くと、水の質量に関係なく、温度がどれだけ上がるかを計算できます。計算するとき、位置エネルギーで使う質量の単位(kg)と、熱量で使う質量の単位(g)をそろえるのを忘れないようにしましょう。

結論と吟味

水温の上昇は \(0.20 \text{ K}\) です。計算の途中で質量\(m\)が消去されたことから、この温度上昇は落下する水の量には依存しないことがわかります。高さ84mという巨大な滝でも、水温の上昇はわずか0.2Kであり、これは物理的に妥当な結果です。

解答 0.20 [K]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー保存則(熱と仕事の等価性):
    • 核心: この問題は、力学的なエネルギー(位置エネルギー)が、熱エネルギーに変換される現象を扱っています。核心は、異なる形態のエネルギーが、その本質において等価であり、互いに変換可能であるという「エネルギー保存則」の考え方です。19世紀にジュールが行った実験により、熱がエネルギーの一形態であることが確立されました。
    • 理解のポイント: 問題文の「発生した熱は水がもっていた重力による位置エネルギーに等しく」という一文が、この法則の適用を直接指示しています。つまり、\(U_{\text{位置}} = Q_{\text{熱}}\) という関係式を立てることが、この問題を解くための全てです。
  • 単位系の整合性:
    • 核心: 力学の公式(\(U=mgh\))と熱力学の公式(\(Q=mc\Delta T\))を結びつける際に、両者で使われる物理量の単位を一致させることが不可欠です。
    • 理解のポイント: 特に質量の単位に注意が必要です。力学ではSI単位系である[kg]を基本としますが、熱化学では比熱の単位が[J/(g·K)]で与えられることが多いため、[g]を使うのが便利です。この問題では、\(m\) [kg] と \(m \times 10^3\) [g] のように、単位換算を式の中に正しく組み込む必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 運動エネルギーから熱への変換: 高速で飛んできた鉛の弾丸が的にめり込んで止まったとき、弾丸の温度はどれだけ上昇するか。この場合は、弾丸が持っていた運動エネルギー(\(\frac{1}{2}mv^2\))がすべて熱に変わったとして、\( \frac{1}{2}mv^2 = mc\Delta T \) を解きます。
    • 電気エネルギーから熱への変換: 電熱線に電流を流したときに発生するジュール熱(\(P \times t = IVt\))によって、水の温度がどれだけ上昇するか。この場合は、\(IVt = mc\Delta T\) を解きます。
    • 仕事から熱への変換: 物体をあらい水平面上で引きずったとき、摩擦力がした仕事(\(W=Fx\))が熱に変わり、物体の温度がどれだけ上昇するか。この場合は、\(Fx = mc\Delta T\) を解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギー変換の特定: 問題文を読み、どのエネルギーがどのエネルギーに変換されているのか、そのプロセスを特定します。「落下」「衝突」「摩擦」「電流」などのキーワードがヒントになります。
    2. エネルギー変換の等式化: 「AがBに変わった」というプロセスを、\(E_A = E_B\) のように数式で表現します。
    3. 単位系の確認: 式を立てる際に、各項で使われる物理量の単位(特に質量、長さ、エネルギー)がSI単位系に揃っているか、あるいは特定の単位(gなど)に意図的に統一されているかを確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位換算のミス:
    • 誤解: 位置エネルギーの計算で質量を \(m\) [kg] としたのに、熱量の計算でも質量を \(m\) のままにしてしまう(\(m \times 9.8 \times 84 = m \times 4.2 \times \Delta T\) のような誤った式を立てる)。
    • 対策: 式を立てる際に、各物理量の単位を明記する癖をつけましょう。\(m[\text{kg}] \times g[\text{m/s}^2] \times h[\text{m}] = (m \times 10^3)[\text{g}] \times c[\text{J/(g·K)}] \times \Delta T[\text{K}]\) のように書けば、質量の単位が左右で異なっていることに気づきやすくなります。
  • 質量\(m\)が消えることへの不安:
    • 誤解: 計算の途中で質量\(m\)が両辺から消去されると、「何か間違えたのではないか」と不安になる。
    • 対策: この問題のように、物体の位置エネルギーがその物体自身の温度上昇に使われる場合、エネルギーを与える側と受け取る側が同一であるため、質量\(m\)は結果に影響しません。これは「水の量が2倍になれば、失う位置エネルギーも2倍になるが、温めるべき水の量も2倍になるので、結局温度上昇は同じ」という物理的な意味を反映しています。\(m\)が消えるのは正しいプロセスであると理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー保存則 (\(U=Q\)):
    • 選定理由: 問題文が「位置エネルギー」から「熱」へのエネルギー変換を扱っており、その変換が100%行われると指定しているため。
    • 適用根拠: これは、力学的エネルギー保存則が破れ、その失われたエネルギーが熱エネルギーとして現れるという、より広範なエネルギー保存則の適用例です。滝の底で水の運動エネルギーが0に戻ると仮定すれば(実際には音や振動にもなるが、ここでは無視)、失われた位置エネルギー \(mgh\) が、内部エネルギーの増加、すなわち熱量 \(Q\) に等しくなると考えられます。
  • \(U=mgh\) (位置エネルギー):
    • 選定理由: 落下という現象に伴う、力学的なエネルギー変化を定量化するため。
    • 適用根拠: 地球の重力場において、物体を高さ\(h\)だけ持ち上げるのに必要な仕事が\(mgh\)であり、これが位置エネルギーとして蓄えられます。落下する際には、この蓄えられたエネルギーが解放されます。
  • \(Q=mc\Delta T\) (熱量の公式):
    • 選定理由: エネルギー変換の結果生じた熱が、水の温度をどれだけ上昇させるかという熱力学的な変化を定量化するため。
    • 適用根拠: 物質に熱エネルギー\(Q\)が与えられると、その物質を構成する分子の熱運動が激しくなり、内部エネルギーが増加します。この内部エネルギーの増加が、マクロな視点では「温度上昇」\(\Delta T\)として観測されます。この関係を表すのがこの公式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位換算を先に済ませる:
    • 水の比熱 \(c = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) を、力学の単位系に合わせて \(c = 4.2 \times 10^3 \text{ J/(kg·K)}\) と先に換算してしまうのも一つの手です。こうすれば、質量はずっと[kg]のままで計算できます。
    • \(m \times 9.8 \times 84 = m \times (4.2 \times 10^3) \times \Delta T\)
    • \(823.2 = 4200 \times \Delta T\) となり、同じ式が得られます。自分がミスしにくい方法を選びましょう。
  • 計算の順序の工夫:
    • \(9.8 \times 84 = 4200 \times \Delta T\) の計算で、いきなり \(9.8 \times 84\) を計算するのではなく、まず両辺を整理することを考えます。
    • \(4200 = 4.2 \times 1000\) であること、\(9.8 = 2 \times 4.9\)、\(4.2 = 6 \times 0.7\) など、因数分解を試みると計算が楽になる場合があります。(この場合はあまり効果的ではありませんが、常に意識しておくと良いでしょう)
  • 概算による検算:
    • \(g \approx 10 \text{ m/s}^2\)、\(c \approx 4 \text{ J/(g·K)}\) として概算してみます。
    • \(m \times 10 \times 84 \approx (m \times 1000) \times 4 \times \Delta T\)
    • \(840 \approx 4000 \Delta T\)
    • \(\Delta T \approx \frac{840}{4000} = \frac{84}{400} \approx 0.21\) [K]
    • この概算結果と、正確な計算結果 \(0.196\) [K] が近いことから、計算に大きな間違いはないと判断できます。
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