「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅳ 章 15】基本問題377~383

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基本問題

377 気柱の圧力と密度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)(3)の別解: グラフの傾きを用いた解法
      • 模範解答は横波表示を縦波に戻して媒質の疎密を判断していますが、別解では変位 \(y\) と位置 \(x\) のグラフ(\(y-x\) グラフ)の傾きに着目し、傾きが最大・最小の点が密・疎(圧力変化最大)、傾きゼロの点が圧力変化なしであることを示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 視覚的な判断の容易さ: 矢印を描かなくても、グラフの形状(傾き)を見るだけで瞬時に疎密を判断できるようになります。
    • 数学的理解の深化: 密度変化が変位の空間微分(傾き)に対応するという、波動の数学的な性質への理解につながります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「気柱の定常波における変位と圧力(密度)の関係」です。音波は縦波(疎密波)ですが、図では横波のように表示されています。この「横波表示」を正しく読み解き、媒質の変位、密度、圧力の関係を理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定常波の腹と節:
    • 変位の腹: 媒質が最も激しく振動する点。
    • 変位の節: 媒質が全く動かない点。
  2. 縦波の横波表示:
    • \(y\) 軸の正方向(上向き)の変位は、実際には \(x\) 軸の正方向(右向き)の変位を表します。
    • \(y\) 軸の負方向(下向き)の変位は、実際には \(x\) 軸の負方向(左向き)の変位を表します。
  3. 変位と密度の関係:
    • : 媒質が両側から集まってくる点(変位の節)。
    • : 媒質が両側へ逃げていく点(変位の節)。
    • 密度変化なし: 媒質が一様に動いている点(変位の腹)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、図から振幅が最大になっている点(変位の腹)を読み取ります。
  2. (2)では、横波表示を縦波の動き(矢印)に変換し、媒質が集まる点(密)と遠ざかる点(疎)を見つけます。これらが圧力変化最大の点です。
  3. (3)では、圧力が変化しない点、つまり密度が変化しない点を見つけます。これは変位の腹に対応します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「最大の振幅で振動している部分」とは、定常波の「腹」のことです。
図は定常波の包絡線(振幅の最大値を結んだ線)を表しています。実線と点線の間隔が最も開いている場所を探します。

この設問における重要なポイント

  • 定常波の腹: 振幅が最大の位置。
  • 定常波の節: 振幅がゼロの位置。
  • 図の縦軸は変位の大きさを表している。

具体的な解説と立式
図において、実線と点線で囲まれた領域の幅が最も広い場所が、振幅が最大の点(腹)です。
図を見ると、点Aと点Eの位置で振幅が最大になっています。
点Cと点Gは振幅がゼロ(節)です。

使用した物理公式

  • なし(グラフの読み取り)
計算過程

(計算なし)

この設問の平易な説明

図は、空気がどれくらい大きく揺れているかを表しています。
線が一番大きく膨らんでいるところが、一番激しく揺れている場所(腹)です。
図を見ると、AとEのところで線が一番大きく開いていますね。だから、ここが最大の振幅で振動している部分です。

結論と吟味

答えは A, E です。
開口端(A)は自由に動けるので腹になりやすく、閉口端(G)は壁があるので動けず節になるという、気柱の基本的な性質とも一致しています。

解答 (1) A, E

問(2)

思考の道筋とポイント
「圧力(密度)の変化が最大の部分」とは、空気がギュウギュウに圧縮されたり(密)、スカスカに膨張したり(疎)する度合いが最も激しい場所のことです。
これは、変位の「節」の位置で起こります。
なぜなら、節の両側から空気が押し寄せてくれば「密」になり、節の両側へ空気が逃げていけば「疎」になるからです。腹の部分では空気は大きく動きますが、隣の空気も同じように動くので、密度はあまり変わりません。

この設問における重要なポイント

  • 変位の節(振幅ゼロの点)では、密度(圧力)の変化が最大になる。
  • 変位の腹(振幅最大の点)では、密度(圧力)の変化は最小(ゼロ)になる。
  • 横波表示を縦波の変位矢印に直してイメージする。

具体的な解説と立式
横波表示を縦波に戻して考えます。
図の実線の波形に注目します。

  • 点Cの左側(B付近)では変位が正(上)なので、実際は右に動いています。
  • 点Cの右側(D付近)では変位が負(下)なので、実際は左に動いています。

つまり、点Cに向かって左右から空気が集まってくるため、点Cは「密」になります。
半周期後(点線の波形)は逆に、点Cから左右へ空気が逃げていくため「疎」になります。
このように、点Cでは密と疎が激しく入れ替わるため、圧力変化が最大です。
同様に、点G(閉口端)も変位の節であり、圧力変化が最大になります。

使用した物理公式

  • なし(定性的な判断)
計算過程

(計算なし)

この設問の平易な説明

空気が「密(ギュウギュウ)」になったり「疎(スカスカ)」になったりするのは、空気が動かない場所(節)です。
例えば、満員電車でドアが開いたとき、ドア付近(腹)の人は大きく動きますが、周りの人も一緒に動くので押し合いへし合いは起きません。
しかし、壁際(節)にいる人は動けないので、周りから人が押し寄せてくると押し潰されそうになります。
この「押し潰されそう(圧力変化大)」な場所は、空気が動かない「節」の場所、つまりCとGです。

結論と吟味

答えは C, G です。
閉口端(G)は壁なので空気が逃げ場を失い、圧力が激しく変化する場所であることは直感的にも理解できます。

解答 (2) C, G

問(3)

思考の道筋とポイント
「圧力が変化しない部分」とは、密度が変化しない部分のことです。
(2)の逆で、これは変位の「腹」の位置に対応します。
腹の位置では、空気は大きく振動しますが、周りの空気も一緒に同じ方向に動くため、空気同士の間隔(密度)は変化しません。したがって、圧力は大気圧のまま保たれます。

この設問における重要なポイント

  • 変位の腹(振幅最大の点)では、密度(圧力)の変化は最小(ゼロ)になる。
  • この場所では、圧力は常に外の大気圧と等しい。

具体的な解説と立式
(2)で考察した通り、変位の節(C, G)では圧力変化が最大になります。
逆に、変位の腹(A, E)では、その地点の左右で空気の変位がほぼ同じ向き・同じ大きさになるため、空気が圧縮されたり膨張したりしません。
したがって、圧力は変化せず、常に外部の大気圧と等しい状態が保たれます。

使用した物理公式

  • なし(定性的な判断)
計算過程

(計算なし)

この設問の平易な説明

圧力が変わらない、つまり空気がギュウギュウにもスカスカにもならない場所は、一番激しく動いている「腹」の場所です。
みんなで一斉に右に動いたり左に動いたりしているだけなので、隣の人との距離は変わらない、というイメージです。
図で振幅が一番大きい A と E が答えになります。
特に A は筒の入り口(開口端)なので、外の空気とつながっており、圧力は外と同じ(大気圧)になります。

結論と吟味

答えは A, E です。
開口端(A)が圧力一定(大気圧)であることは、気柱の共鳴における境界条件(開口端は圧力の節=変位の腹)と完全に一致します。

解答 (3) A, E
別解: グラフの傾きを用いた解法

思考の道筋とポイント
横波表示されたグラフ(\(y-x\) グラフ)において、グラフの「傾き」は密度の変化を表しています。

  • 傾きが負(右下がり)の急な場所 \(\rightarrow\) 密(圧力が高い)
  • 傾きが正(右上がり)の急な場所 \(\rightarrow\) 疎(圧力が低い)
  • 傾きがゼロ(水平)の場所 \(\rightarrow\) 密度変化なし(圧力は大気圧)

この性質を利用して、グラフの形状から直接判断します。

この設問における重要なポイント

  • 密度の変化 \(\propto -\frac{dy}{dx}\) (変位の傾きのマイナス)
  • 傾きの絶対値が大きいほど、圧力変化(振幅)が大きい。
  • 傾きがゼロの点は、圧力変化がゼロ。

具体的な解説と立式
図の実線(ある瞬間の波形)を見ます。

  • 点C: グラフの傾きが右下がりで最も急になっています。これは「密」の状態を表します。半周期後の点線では右上がりで最も急になり「疎」になります。よって圧力変化は最大です。
  • 点G: 点Cと同様に傾きが急なので、圧力変化は最大です。
  • 点A, E: グラフの山や谷の頂点であり、接線の傾きはゼロです。これは密度変化がないことを意味し、圧力は変化しません。
この設問の平易な説明

波のグラフの「坂道の急さ」に注目する方法です。
坂道が急なところ(CやG)は、空気が無理やり詰め込まれたり引き伸ばされたりしている場所なので、圧力の変化が一番大きくなります。
坂道が平らなところ(AやEの頂点)は、空気の密度が変わらないので、圧力も変わりません。
いちいち矢印を描かなくても、グラフの形を見るだけで判断できる便利な方法です。

結論と吟味

主たる解法と同じ結果(圧力変化最大:C, G、変化なし:A, E)が得られました。
数学的には、密度変化 \(\Delta \rho\) が変位 \(y\) の位置微分 \(-\frac{\partial y}{\partial x}\) に比例するという関係に基づいています。

解答 (2) C, G, (3) A, E

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 縦波の横波表示の解釈
    • 核心: 音波のような縦波(疎密波)を、視覚的に理解しやすい横波のグラフ(\(y-x\) グラフ)として表現する方法とその読み取り方です。
    • 理解のポイント:
      • \(y > 0\)(上): \(x\) 軸の正方向(右)への変位を表します。
      • \(y < 0\)(下): \(x\) 軸の負方向(左)への変位を表します。
      • このルールに従って、グラフ上の各点に「実際の動き」を示す矢印を書き込むことが、問題を解く第一歩です。
  • 変位と圧力(密度)の位相のずれ
    • 核心: 定常波において、変位と圧力は位相が \(\pi/2\)(1/4波長)ずれています。
    • 理解のポイント:
      • 変位の腹 \(\leftrightarrow\) 圧力の節: 大きく動く場所(腹)では、空気は素通りするだけで圧縮されず、圧力変化はゼロ(節)になります。
      • 変位の節 \(\leftrightarrow\) 圧力の腹: 動かない場所(節)では、両側から空気が押し寄せたり引かれたりするため、圧力変化は最大(腹)になります。
      • 「変位」と「圧力」のどちらを聞かれているのかを常に意識することが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • クントの実験: 閉管内に粉末を入れて音を鳴らすと、粉末が動いて模様ができます。粉末が激しく動くのは「変位の腹」ですが、粉末が集まる場所は条件(粉の種類など)によって変わるため、変位と圧力の関係を正しく理解しているかが問われます。
    • 開管の圧力分布: 開管では両端が「変位の腹」なので、両端とも「圧力の節(大気圧)」になります。管の中央が「変位の節」=「圧力の腹」となります。
    • 進行波の疎密: 定常波だけでなく、進行波のグラフでも「傾きが右下がりなら密、右上がりなら疎」という判定法は有効です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸: 縦軸が「変位」なのか「圧力(密度)」なのかを確認します。通常は変位ですが、稀に圧力分布のグラフが出題されることがあります。
    2. 境界条件: 開口端は必ず「変位の腹(圧力の節)」、閉口端は必ず「変位の節(圧力の腹)」です。これが守られているかチェックします。
    3. 矢印の作図: 頭の中で考えるのではなく、グラフの山から谷へ向かって矢印を描き込み、「集まる=密」「逃げる=疎」を視覚化します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 「腹」と「節」の定義の混同
    • 誤解: 「腹=圧力が高いところ」と勘違いしてしまう。
    • 対策: 「腹」と「節」はあくまで「振動の振幅」に対する言葉です。「変位の腹」と「圧力の腹」は場所が逆になるため、必ず「何の」腹なのかを主語をつけて呼ぶ癖をつけましょう。
  • 密と疎の判定ミス
    • 誤解: グラフの山(\(y>0\))が密、谷(\(y<0\))が疎だと思ってしまう。
    • 対策: 密・疎は変位そのものではなく、変位の「変化(傾き)」で決まります。別解で紹介した「右下がりの傾き=密」というルールを覚えるか、矢印を描いて物理的に判断しましょう。
  • 圧力変化なし=真空?
    • 誤解: 「圧力変化がゼロ」を「圧力がゼロ(真空)」と混同する。
    • 対策: 「変化がゼロ」とは「常に大気圧(\(1\,\text{atm}\))のまま」という意味です。グラフの縦軸が「圧力の変動分 \(\Delta P\)」であることを理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 矢印による作図(定性的解法)の選択
    • 選定理由: 数式を使わずに、物理現象のイメージ(空気の移動と圧縮)から直接答えを導ける最も確実な方法だからです。
    • 適用根拠: 縦波の横波表示の定義(\(+y \rightarrow +x\))に基づいた正当な手順です。
  • グラフの傾きによる判定(別解)の選択
    • 選定理由: 慣れれば瞬時に判断でき、時間の節約になるからです。
    • 適用根拠: 密度変化 \(\Delta \rho\) が変位の勾配 \(-\frac{\partial y}{\partial x}\) に比例するという波動方程式の性質に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 用語の言い換え
    • 問題文の「圧力が変化しない」を「変位の腹」、「密度変化が最大」を「変位の節」と、即座に脳内で(あるいは問題用紙にメモして)翻訳しましょう。この翻訳さえ間違えなければ、あとは図から腹と節を探すだけの簡単な問題になります。
  • 境界条件でのチェック
    • 答えが出たら、端点(AとG)を確認します。「Aは開いているから圧力は外と同じはず(変化なし)」「Gは壁だから空気が詰まるはず(圧力変化最大)」という物理的直感と、自分の答えが合っているか照らし合わせます。

378 気柱の共鳴

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 連立方程式による解法
      • 模範解答は(1)で求めた波長を利用して開口端補正を計算していますが、別解では1回目と2回目の共鳴条件式を連立させて、波長と開口端補正を同時に導出する手法を紹介します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 一般性の高さ: 「何倍振動か」が明示されていない場合や、波長が未知の場合でも、共鳴点の位置情報だけで開口端補正を求められる汎用的な方法です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「気柱の共鳴(閉管)」です。水面を上下させて共鳴点を測定し、そこから波長、振動数、開口端補正を求める実験を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 閉管の共鳴条件: 閉口端(水面)は節、開口端付近は腹となります。
  2. 共鳴点の間隔: 隣り合う共鳴点(節と節)の間隔は、半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) に等しくなります。
  3. 開口端補正: 定常波の腹は管口よりも少し外側(距離 \(\Delta x\))にできます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、2つの共鳴位置の差が半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) であることを利用して波長を求めます。
  2. (2)では、求めた波長と音速から振動数を計算します。
  3. (3)では、1回目の共鳴(基本振動)の条件式 \(L_1 + \Delta x = \frac{\lambda}{4}\) を用いて開口端補正を求めます。
  4. (4)では、振動数を下げていくと波長が長くなり、現在の3倍振動の状態から基本振動の状態へ移行することを理解し、そのときの振動数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
水面を下げていくと、定常波の節が1つずつ増えていきます。
1回目の共鳴点(\(9.5\,\text{cm}\))と2回目の共鳴点(\(31.0\,\text{cm}\))の間には、節が1つ追加されています。
隣り合う節と節の間隔は半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) なので、この距離の差から波長を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 共鳴点の間隔 \(\Delta L = \frac{\lambda}{2}\)
  • 開口端補正 \(\Delta x\) があっても、差をとることで消去できる。

具体的な解説と立式
2回目の共鳴位置 \(L_2 = 31.0\,\text{cm}\) と1回目の共鳴位置 \(L_1 = 9.5\,\text{cm}\) の差が、半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{2} &= L_2 – L_1
\end{aligned}
$$
この式から波長 \(\lambda\) を求めます。

使用した物理公式

  • 共鳴点の間隔: \(\Delta L = \frac{\lambda}{2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{2} &= 31.0 – 9.5 \\[2.0ex]
\frac{\lambda}{2} &= 21.5 \\[2.0ex]
\lambda &= 43.0\,\text{cm}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

筒の中で音が響く場所(共鳴点)は、波の長さの半分(半波長)ごとの間隔で現れます。
1回目が \(9.5\,\text{cm}\)、2回目が \(31.0\,\text{cm}\) だったので、その差 \(21.5\,\text{cm}\) が半波長です。
波長(波1つ分の長さ)はその2倍なので、\(43.0\,\text{cm}\) になります。

結論と吟味

波長は \(43.0\,\text{cm}\) です。
有効数字3桁で答えるのが適切です。

解答 (1) \(43.0\,\text{cm}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で波長 \(\lambda\) が求まりました。音速 \(V\) は問題文で与えられています。
これらを使って、振動数 \(f\) を求めるには、波の基本式 \(V = f\lambda\) を使います。
単位を \(\text{cm}\) から \(\text{m}\) に直すことを忘れないようにしましょう。

この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V = 344\,\text{m/s}\)
  • 波長 \(\lambda = 43.0\,\text{cm} = 0.430\,\text{m}\)
  • 求めるのは振動数 \(f\)

具体的な解説と立式
波の基本式より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V &= f\lambda
\end{aligned}
$$
これを \(f\) について解く形に変形します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{V}{\lambda}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{344}{0.430} \\[2.0ex]
&= \frac{34400}{43} \\[2.0ex]
&= 800\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えるため、\(8.00 \times 10^2\,\text{Hz}\) とします。

この設問の平易な説明

音の速さは「歩幅(波長)」×「回転数(振動数)」で決まります。
速さが \(344\) で、歩幅が \(0.430\) なら、回転数は \(800\) でなければなりません。
つまり、1秒間に800回振動している音だということです。

結論と吟味

振動数は \(8.00 \times 10^2\,\text{Hz}\) です。
\(800\,\text{Hz}\) は可聴域の音として妥当な値です。

解答 (2) \(8.00 \times 10^2\,\text{Hz}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
開口端補正 \(\Delta x\) を求めるには、1回目の共鳴(基本振動)の状態に着目します。
基本振動では、気柱の長さ \(L_1\) と開口端補正 \(\Delta x\) の和が、ちょうど \(\frac{1}{4}\) 波長に等しくなります。この関係式に、既知の \(L_1\) と \(\lambda\) を代入して \(\Delta x\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 定常波の腹は、管口よりも \(\Delta x\) だけ外側にある。
  • したがって、定常波の実質的な長さは \(L_1 + \Delta x\) となる。
  • 1回目の共鳴(基本振動)では、この長さが \(\frac{\lambda}{4}\) に等しい。

具体的な解説と立式
1回目の共鳴において、管口から水面までの距離 \(L_1\) と開口端補正 \(\Delta x\) の和が、\(\frac{1}{4}\) 波長となります。
$$
\begin{aligned}
L_1 + \Delta x &= \frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
この式を変形して \(\Delta x\) を求める式にします。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= \frac{\lambda}{4} – L_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 閉管の基本振動条件: \(L + \Delta x = \frac{\lambda}{4}\)
計算過程

\(\lambda = 43.0\,\text{cm}\)、\(L_1 = 9.5\,\text{cm}\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= \frac{43.0}{4} – 9.5 \\[2.0ex]
&= 10.75 – 9.5 \\[2.0ex]
&= 1.25\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(1.3\,\text{cm}\) とします。

この設問の平易な説明

音の波は、筒の出口ぴったりで折り返すのではなく、少しだけ外側にはみ出してから折り返します。この「はみ出し分」を開口端補正といいます。
一番短い共鳴(基本振動)のとき、波の形はちょうど「波長の4分の1」になります。
計算してみると、「波長の4分の1」は \(10.75\,\text{cm}\) ですが、実際の筒の長さは \(9.5\,\text{cm}\) しかありません。この差の \(1.25\,\text{cm}\) が、外側にはみ出している部分(開口端補正)です。

結論と吟味

開口端補正は \(1.3\,\text{cm}\) です。
一般に開口端補正は管の半径の0.6倍程度と言われており、数mm〜1cm程度の値になることが多いため、\(1.3\,\text{cm}\) は物理的に妥当な値です。

解答 (3) \(1.3\,\text{cm}\)
別解: 連立方程式による解法

思考の道筋とポイント
1回目と2回目の共鳴条件をそれぞれ数式化し、連立方程式として解く方法です。
この方法では、波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(\Delta x\) を同時に未知数として扱い、数学的に厳密に導出します。

この設問における重要なポイント

  • 1回目の共鳴(基本振動): \(L_1 + \Delta x = \frac{\lambda}{4}\)
  • 2回目の共鳴(3倍振動): \(L_2 + \Delta x = \frac{3\lambda}{4}\)

具体的な解説と立式
1回目の共鳴条件(基本振動):
$$
\begin{aligned}
9.5 + \Delta x &= \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
2回目の共鳴条件(3倍振動):
$$
\begin{aligned}
31.0 + \Delta x &= \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
この2つの式を連立して、\(\lambda\) と \(\Delta x\) を求めます。

使用した物理公式

  • 閉管の共鳴条件: \(L + \Delta x = \frac{2n-1}{4}\lambda\)
計算過程

まず、式②から式①を引いて \(\Delta x\) を消去し、\(\lambda\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
(31.0 + \Delta x) – (9.5 + \Delta x) &= \frac{3\lambda}{4} – \frac{\lambda}{4} \\[2.0ex]
21.5 &= \frac{2\lambda}{4} \\[2.0ex]
21.5 &= \frac{\lambda}{2} \\[2.0ex]
\lambda &= 43.0\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
次に、求めた \(\lambda\) を式①に代入して \(\Delta x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
9.5 + \Delta x &= \frac{43.0}{4} \\[2.0ex]
9.5 + \Delta x &= 10.75 \\[2.0ex]
\Delta x &= 10.75 – 9.5 \\[2.0ex]
\Delta x &= 1.25\,\text{cm}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「1回目の共鳴」と「2回目の共鳴」という2つの事実を、それぞれ数式に翻訳します。
「筒の長さ+はみ出し分 = 波長の1/4」
「筒の長さ+はみ出し分 = 波長の3/4」
この2つの式を見比べると、未知数(知りたい値)が「波長」と「はみ出し分」の2つある連立方程式になっています。これを解けば、両方の値を一気に求めることができます。

結論と吟味

主たる解法と同じ結果が得られました。
この方法は、どの共鳴が何倍振動かわからない場合でも、\(L_2 – L_1 = \lambda/2\) という関係から波長を特定できるため、非常に強力です。

解答 (3) \(1.3\,\text{cm}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
管の長さ \(L\) を \(31.0\,\text{cm}\) に固定したまま、振動数 \(f\) を小さくしていきます。
\(V = f\lambda\) より、\(f\) が小さくなると波長 \(\lambda\) は長くなります。
現在、\(L=31.0\,\text{cm}\) で3倍振動(\(n=2\))が起きています。波長が長くなると、次に起こる共鳴は基本振動(\(n=1\))です。
このときの新しい波長 \(\lambda’\) を求め、そこから新しい振動数 \(f’\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 管の長さ \(L = 31.0\,\text{cm}\) は固定。
  • 開口端補正 \(\Delta x = 1.25\,\text{cm}\) も変化しない。
  • 振動数を小さくする \(\rightarrow\) 波長を長くする \(\rightarrow\) 次の共鳴は基本振動。
  • 基本振動の条件: \(L + \Delta x = \frac{\lambda’}{4}\)

具体的な解説と立式
基本振動における波長 \(\lambda’\) を求めます。
気柱の実質的な長さは \(L + \Delta x\) であり、これが \(\frac{\lambda’}{4}\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda’}{4} &= 31.0 + 1.25
\end{aligned}
$$
ここから \(\lambda’\) を求め、\(f’ = \frac{V}{\lambda’}\) で振動数を計算します。

使用した物理公式

  • 閉管の基本振動条件: \(L + \Delta x = \frac{\lambda’}{4}\)
  • 波の基本式: \(V = f’\lambda’\)
計算過程

まず新しい波長 \(\lambda’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda’}{4} &= 32.25 \\[2.0ex]
\lambda’ &= 32.25 \times 4 \\[2.0ex]
\lambda’ &= 129.0\,\text{cm} = 1.29\,\text{m}
\end{aligned}
$$
次に新しい振動数 \(f’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{344}{1.29} \\[2.0ex]
&= 266.6\dots\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えるため、\(267\,\text{Hz}\) とします。

この設問の平易な説明

今、筒の中では「3倍振動」という、波が1.5個入っている状態です。
スピーカーの音を低くしていくと、波長(波の幅)がどんどん長くなります。
波が長くなると、筒の中に入る波の数が減っていきます。
次に共鳴するのは、波が0.5個(半分)だけ入っている「基本振動」の状態です。
このときの波長を計算し、そこから振動数を求めます。

結論と吟味

振動数は \(267\,\text{Hz}\) です。
元の振動数 \(800\,\text{Hz}\) の約1/3になっており、3倍振動から基本振動へ移行したことと整合します(厳密には開口端補正の影響でぴったり1/3にはなりませんが、近い値になります)。

解答 (4) \(267\,\text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 閉管の共鳴条件 \(L + \Delta x = \frac{2n-1}{4}\lambda\)
    • 核心: 閉管(一端が閉じた管)では、閉口端が節、開口端付近が腹となる定常波が生じます。この境界条件により、気柱の実質的な長さ \(L + \Delta x\) は必ず「1/4波長の奇数倍」になります。
    • 理解のポイント:
      • 開口端補正 \(\Delta x\): 実際の腹の位置は管口より少し外側にあります。この補正項を考慮することで、理論と実験結果のズレを修正します。
      • 共鳴モード: \(n=1\)(基本振動)、\(n=2\)(3倍振動)、\(n=3\)(5倍振動)…と、奇数倍の振動数でのみ共鳴が起こります。
  • 共鳴点の間隔と半波長の関係
    • 核心: 水面を下げていくと、定常波の節が1つずつ増えていきます。隣り合う節と節の間隔は常に半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) であるため、共鳴点の間隔 \(\Delta L\) も常に \(\frac{\lambda}{2}\) になります。
    • 理解のポイント: この性質は開口端補正 \(\Delta x\) の値に依存しません。したがって、\(\Delta x\) が未知であっても、2つの共鳴点の位置の差をとることで、純粋に波長 \(\lambda\) の情報だけを抽出することができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 開管の共鳴: 両端が開いている管。両端が腹になるため、\(L + 2\Delta x = \frac{n}{2}\lambda\)(半波長の整数倍)となります。閉管との違い(奇数倍か整数倍か、補正が片側か両側か)を明確に区別しましょう。
    • クントの実験: 棒の振動によって気柱を共鳴させる実験です。音源がスピーカーやおんさではなく振動する棒になりますが、「気柱の共鳴条件」自体は全く同じロジックで解けます。
    • 温度変化による共鳴点の移動: 気温が変わると音速 \(V\) が変わり、振動数 \(f\) が一定なら波長 \(\lambda\) が変わります。その結果、共鳴点 \(L\) がずれる現象を扱う問題です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 共鳴の回数: 「1回目の共鳴」「2回目の共鳴」という言葉から、基本振動(\(n=1\))、3倍振動(\(n=2\))…とモードを特定します。
    2. 差をとる発想: 複数の共鳴点が与えられたら、迷わずその差をとります。\(L_{n+1} – L_n = \frac{\lambda}{2}\) という関係式は、開口端補正を消去できる最強の武器です。
    3. 開口端補正の有無: 問題文に「開口端補正を無視する」とあれば \(\Delta x = 0\) とし、そうでなければ \(\Delta x\) を未知数として扱います。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 開口端補正の符号ミス
    • 誤解: \(L = \frac{\lambda}{4} + \Delta x\) のように、補正項の足し引きを逆にしてしまう。
    • 対策: 「実際の管の長さ \(L\) に、はみ出し分 \(\Delta x\) を足したものが、波の長さ(\(\frac{\lambda}{4}\) など)になる」という物理的なイメージを持ちましょう。式で覚えるのではなく、図形的な足し算として理解するのがコツです。
  • 単位換算の忘れ
    • 誤解: 長さが \(\text{cm}\) で与えられているのに、音速の計算(\(\text{m/s}\))でそのまま使ってしまう。
    • 対策: 音速 \(V=f\lambda\) の計算をする直前に、「波長 \(\lambda\) の単位はメートルになっているか?」と自問するチェックポイントを設けましょう。\(34400\,\text{m/s}\) のような異常な値が出たら、単位ミスを疑ってください。
  • 振動モードの誤認
    • 誤解: 「2回目の共鳴」を「2倍振動」と呼んでしまう。
    • 対策: 閉管には偶数倍振動が存在しません。「2回目の共鳴は3倍振動(\(n=2\))」であることを強く意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 差分による波長導出 \(L_2 – L_1 = \frac{\lambda}{2}\) の選択
    • 選定理由: 開口端補正 \(\Delta x\) が未知の状態で、波長 \(\lambda\) を単独で決定できる唯一の方法だからです。
    • 適用根拠: 定常波の節の間隔が普遍的に \(\frac{\lambda}{2}\) であるという物理法則に基づいています。
  • 基本振動条件 \(L_1 + \Delta x = \frac{\lambda}{4}\) の選択
    • 選定理由: 波長 \(\lambda\) が求まった後で、残る未知数 \(\Delta x\) を求めるために必要だからです。
    • 適用根拠: 1回目の共鳴が基本振動(\(\frac{1}{4}\) 波長モード)であることは、問題の設定(水面を上端から下げていって最初に鳴った)から明らかだからです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 図を描いて長さを確認する
    • 式だけで処理しようとせず、管の絵を描いて、\(L_1\)、\(L_2\)、\(\Delta x\)、\(\lambda\) の関係を矢印で書き込みましょう。視覚的な情報は計算ミスを劇的に減らします。
  • 引き算の検算
    • \(L_2 – L_1 = 31.0 – 9.5 = 21.5\) のような引き算は、逆に足し算 \(9.5 + 21.5 = 31.0\) をして元の値に戻るか確認すると確実です。
  • オーダー(桁数)の確認
    • 開口端補正 \(\Delta x\) は通常、管の長さ \(L\) に比べて非常に小さい値(数 \(\text{mm}\) 〜 \(1\,\text{cm}\) 程度)になります。もし計算結果が \(10\,\text{cm}\) やマイナスの値になったら、どこかで立式や計算を間違えている可能性が高いです。

379 ドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 音波の長さを用いた解法
      • 模範解答は「波の総数」に着目して時間を求めていますが、別解では「音波の全長」と「観測者が音波とすれ違う速さ」に着目して時間を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 視覚的な理解: 音波を「長さのある列車」のように捉えることで、ドップラー効果による時間の短縮(または延長)を直感的に理解できます。
    • 応用力: 音源が動く場合だけでなく、観測者が動く場合や、両方が動く場合にも同じ考え方で対応できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「音源が動く場合のドップラー効果」です。音源が動くことで波長が変化し、その結果として観測される振動数や音が聞こえる時間が変化する現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果(波長の変化): 音源が速さ \(v_{\text{音源}}\) で観測者に近づくとき、観測者側の波長 \(\lambda’\) は短くなります。
    $$ \lambda’ = \frac{V – v_{\text{音源}}}{f} $$
  2. 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
  3. 波の保存則: 音源が出した波の総数と、観測者が受け取る波の総数は等しくなります。
    $$ f \times T = f’ \times T’ $$

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、音源が動くことによる波長の縮みを計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた波長と音速を用いて、観測される振動数を計算します。
  3. (3)では、波の総数が保存されることを利用して、観測者が音を聞く時間を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
音源(自動車)が観測者に向かって進んでいるため、音源の前方では波が詰め込まれ、波長が短くなります。
1秒間に音源が出す波の数(振動数 \(f\))と、その間に音源が進む距離、音が進む距離を考えて、波長を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V = 340\,\text{m/s}\)
  • 音源の速さ \(v_{\text{音源}} = 20\,\text{m/s}\)
  • 音源の振動数 \(f = 160\,\text{Hz}\)
  • 音源が近づくとき、波長は短くなる。

具体的な解説と立式
1秒間に音源は \(f = 160\) 個の波を出します。
この1秒間に、先頭の波は音速 \(V = 340\,\text{m}\) だけ進みますが、音源自身も \(v_{\text{音源}} = 20\,\text{m}\) だけ進みます。
その結果、160個の波は \(V – v_{\text{音源}}\) の距離の中に詰め込まれることになります。
したがって、1つあたりの波長 \(\lambda’\) は以下の式で求められます。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= \frac{V – v_{\text{音源}}}{f}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ドップラー効果の波長公式: \(\lambda’ = \frac{V – v_{\text{音源}}}{f}\)
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= \frac{340 – 20}{160} \\[2.0ex]
&= \frac{320}{160} \\[2.0ex]
&= 2.00\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えるため、\(2.00\,\text{m}\) とします。

この設問の平易な説明

車は音を出しながら走っています。音は空気中を秒速340mで進みますが、車も秒速20mで追いかけてきます。
そのため、音の波は後ろから押されるようにして縮んでしまいます。
具体的には、1秒間に出た160個の波が、本来なら340mの長さに広がるはずが、車が20m進んだせいで \(340 – 20 = 320\,\text{m}\) の範囲に押し込められます。
320mの中に160個の波があるので、1個あたりの長さ(波長)は \(320 \div 160 = 2\,\text{m}\) になります。

結論と吟味

波長は \(2.00\,\text{m}\) です。
静止時の波長 \(\lambda = 340/160 \approx 2.13\,\text{m}\) よりも短くなっており、音源が近づく状況と整合します。

解答 (1) \(2.00\,\text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で観測者に届く音の波長 \(\lambda’\) が求まりました。
観測者は静止しているので、観測者に対して音波は音速 \(V\) でやってきます。
波の基本式 \(V = f\lambda\) を使って、観測される振動数 \(f’\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V = 340\,\text{m/s}\) (観測者が静止しているため変化しない)
  • 波長 \(\lambda’ = 2.00\,\text{m}\)
  • 求めるのは振動数 \(f’\)

具体的な解説と立式
波の基本式より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V &= f’\lambda’
\end{aligned}
$$
これを \(f’\) について解く形に変形します。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{V}{\lambda’}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{340}{2.00} \\[2.0ex]
&= 170\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えるため、\(170\,\text{Hz}\) とします。

この設問の平易な説明

観測者のところには、長さ2mの波が、秒速340mで次々とやってきます。
1秒間に何個の波が通り過ぎるか(振動数)を計算するには、速さを波の長さで割ればよいですね。
\(340 \div 2 = 170\) なので、1秒間に170個の波が耳に届きます。つまり、170Hzの音として聞こえます。

結論と吟味

振動数は \(170\,\text{Hz}\) です。
元の振動数 \(160\,\text{Hz}\) よりも高くなっており、音源が近づくときのドップラー効果(音が高くなる)と一致しています。

解答 (2) \(170\,\text{Hz}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
音源が音を出している時間 \(T\) と、観測者が音を聞く時間 \(T’\) は異なります。
しかし、「音源が出した波の総数」と「観測者が受け取った波の総数」は必ず等しくなります(波は途中で消えたり増えたりしないため)。
この保存則を利用して時間を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 音源が出した波の数 \(N = f \times T\)
  • 観測者が聞いた波の数 \(N’ = f’ \times T’\)
  • \(N = N’\) が成り立つ。

具体的な解説と立式
音源は振動数 \(f = 160\,\text{Hz}\) で \(T = 10\,\text{s}\) 間音を出しました。
発生した波の総数 \(N\) は、
$$
\begin{aligned}
N &= 160 \times 10 = 1600\,\text{個}
\end{aligned}
$$
観測者は振動数 \(f’ = 170\,\text{Hz}\) の音を \(T’\) 秒間聞きます。
観測した波の総数 \(N’\) は、
$$
\begin{aligned}
N’ &= 170 \times T’
\end{aligned}
$$
\(N = N’\) より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
160 \times 10 &= 170 \times T’
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の総数保存則: \(fT = f’T’\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
1600 &= 170 T’ \\[2.0ex]
T’ &= \frac{1600}{170} \\[2.0ex]
&= \frac{160}{17} \\[2.0ex]
&= 9.411\dots\,\text{s}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁(問題文の \(10\,\text{s}\) が2桁、\(20\,\text{m/s}\) も2桁と解釈できるが、解答例に合わせて)で答えます。解答例は \(9.4\,\text{s}\) となっています。

この設問の平易な説明

車は合計で1600個の波を出しました。この1600個の波はすべて観測者の耳に届きます。
観測者は、ドップラー効果によって「早回し」で音を聞いています(1秒間に160個ではなく170個のペースで受け取る)。
1600個の波を、1秒に170個のハイペースで受け取ると、全部受け取り終わるのに何秒かかるでしょうか?
割り算をすれば、約9.4秒で聞き終わることがわかります。出すのに10秒かかった音が、9.4秒に圧縮されて聞こえるわけです。

結論と吟味

時間は \(9.4\,\text{s}\) です。
音源が近づく場合、波長が短くなり、同じ数の波が短い長さに収まるため、通過にかかる時間も短くなります。\(10\,\text{s}\) より短い値になったので妥当です。

解答 (3) \(9.4\,\text{s}\)
別解: 音波の長さを用いた解法

思考の道筋とポイント
音源が出した音波全体を、空中に浮かぶ一本の長い「音の列車」としてイメージします。
この列車の全長 \(L_{\text{波}}\) を求め、それが速さ \(V\) で観測者を通過するのにかかる時間を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 音波の全長 \(L_{\text{波}}\) は、音源が音を出している間に「先頭の波が進んだ距離」と「最後尾の波(音源)が進んだ距離」の差になる。
  • あるいは、短くなった波長 \(\lambda’\) が \(N\) 個連なっていると考えてもよい。

具体的な解説と立式
音源が \(T=10\,\text{s}\) 間音を出し続ける間に、
先頭の波は \(V \times T = 340 \times 10 = 3400\,\text{m}\) 進みます。
最後尾の波(音源の位置)は \(v_{\text{音源}} \times T = 20 \times 10 = 200\,\text{m}\) 進みます。
したがって、空間に存在する音波の全長 \(L_{\text{波}}\) は、
$$
\begin{aligned}
L_{\text{波}} &= 3400 – 200 = 3200\,\text{m}
\end{aligned}
$$
(これは \(\lambda’ \times N = 2.00 \times 1600 = 3200\,\text{m}\) と計算しても同じです)
この長さ \(3200\,\text{m}\) の音波の塊が、音速 \(V = 340\,\text{m/s}\) で観測者を通過します。
通過にかかる時間 \(T’\) は、
$$
\begin{aligned}
T’ &= \frac{L_{\text{波}}}{V}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 距離と速さと時間の関係: \(t = x/v\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
T’ &= \frac{3200}{340} \\[2.0ex]
&= \frac{320}{34} \\[2.0ex]
&= \frac{160}{17} \\[2.0ex]
&= 9.41\dots\,\text{s}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

音を「長い棒」のようなものだと考えてみましょう。
車が10秒間音を出し続けると、先頭の音は3400m先まで進みますが、車自身も200m進んでしまいます。
そのため、音の棒の長さは \(3400 – 200 = 3200\,\text{m}\) になります。
この3200mの長さの音の棒が、秒速340mであなたの耳を通り過ぎていきます。
通り過ぎるのにかかる時間は、\(3200 \div 340\) で計算できます。

結論と吟味

主たる解法と同じ結果が得られました。
この考え方は、「音源が遠ざかる場合(音波が伸びる)」や「観測者が動く場合(相対速度が変わる)」にも応用できる汎用的なものです。

解答 (3) \(9.4\,\text{s}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ドップラー効果の波長変化 \(\lambda’ = \frac{V – v_s}{f}\)
    • 核心: 音源が動くことで、音波が空間的に圧縮(または伸長)される現象です。
    • 理解のポイント:
      • 圧縮のメカニズム: 音源が波を追いかけるように進むため、波と波の間隔が詰まります。
      • 式の意味: 分子の \(V – v_s\) は、音源に対する波の相対速度(音源から見た波の速さ)を表しています。1秒間に音源から離れていく波の長さの中に、\(f\) 個の波が含まれるため、1個あたりの長さ(波長)はこの式で求まります。
  • 波の総数保存則 \(fT = f’T’\)
    • 核心: 音源が出した波の数と、観測者が聞いた波の数は必ず一致します。波は途中で消滅したり生成されたりしないからです。
    • 理解のポイント:
      • 時間の変化: 振動数 \(f\) と \(f’\) が異なるため、音を出している時間 \(T\) と聞いている時間 \(T’\) も異なります。\(f’ > f\)(音が高い)なら \(T’ < T\)(時間は短い)、\(f’ < f\)(音が低い)なら \(T’ > T\)(時間は長い)という逆比例の関係があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 観測者が動く場合: 波長 \(\lambda\) は変化せず、観測者が波とすれ違う相対速度 \(V’\) が変化します。\(f’ = \frac{V – v_o}{\lambda}\) となります。
    • 反射板がある場合: 音源 \(\rightarrow\) 反射板(観測者として振動数を受け取る) \(\rightarrow\) 反射板(音源として振動数を出す) \(\rightarrow\) 観測者、という2ステップで考えます。
    • 斜め方向のドップラー効果: 音源の速度ベクトルのうち、観測者に向かう成分 \(v_s \cos \theta\) だけがドップラー効果に寄与します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 誰が動いているか: 音源だけか、観測者だけか、両方かを確認します。
    2. 近づくか遠ざかるか: 近づくなら振動数は高く(波長は短く)、遠ざかるなら振動数は低く(波長は長く)なります。計算結果の大小関係をチェックするのに役立ちます。
    3. 時間のズレ: 「音を聞いている時間」を問われたら、迷わず波の総数保存則 \(fT = f’T’\) を使います。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の符号ミス
    • 誤解: \(V – v_s\) なのか \(V + v_s\) なのか迷ってしまう。
    • 対策: 「音源が近づく \(\rightarrow\) 波長が縮む \(\rightarrow\) 分子が小さくなる(マイナス)」、「音源が遠ざかる \(\rightarrow\) 波長が伸びる \(\rightarrow\) 分子が大きくなる(プラス)」と、現象と結びつけて覚えましょう。
  • 観測者の速度の扱い
    • 誤解: 観測者が動いていないのに、公式の分子に観測者の速度を入れてしまう、あるいはその逆。
    • 対策: 波長の式 \(\lambda’ = \frac{V – v_s}{f}\) には観測者の速度 \(v_o\) は一切関係ありません。波長は「音源と媒質」だけで決まるからです。一方、振動数 \(f’\) には \(v_o\) が関係します。何を求めているのかを明確にしましょう。
  • 時間の計算ミス
    • 誤解: 音源が動いても、音を聞く時間は変わらない(\(10\,\text{s}\) のまま)と思い込む。
    • 対策: 「早回しで再生したら曲は早く終わる」のと同じ理屈です。振動数が変われば、再生時間も必ず変わります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波長公式 \(\lambda’ = \frac{V – v_s}{f}\) の選択
    • 選定理由: 音源が動いている状況で、空間的な波の長さ(波長)を問われているからです。
    • 適用根拠: 音源の移動距離と音波の移動距離の差分が、波の存在する空間の長さになるという幾何学的な事実に基づいています。
  • 波の総数保存則 \(N = N’\) の選択
    • 選定理由: 音の発生時間と聴取時間の関係を問われているからです。
    • 適用根拠: 波動の連続性(波は途切れない)から、送り出された波の数と受け取られた波の数は等しくなければならないという物理的要請です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の確認
    • 速さは \(\text{m/s}\)、振動数は \(\text{Hz}\)(1/s)、波長は \(\text{m}\)、時間は \(\text{s}\) です。計算の途中で単位が合っているか確認しましょう。
  • 概算によるチェック
    • \(f’ = 170\,\text{Hz}\) は元の \(160\,\text{Hz}\) より少し高い値です。車が \(20\,\text{m/s}\)(時速72km)で近づくなら、これくらいの変化は妥当です。もし \(320\,\text{Hz}\)(倍の高さ)や \(150\,\text{Hz}\)(低くなる)になったら、計算か符号が間違っています。
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380 ドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(近づく場合・遠ざかる場合)の別解: 音波との相対速度に着目した解法
      • 模範解答がドップラー効果の公式に符号を考慮して値を代入するのに対し、別解では「観測者から見た音波の速さ(相対速度)」と「変化しない波長」の関係から、物理的な意味に基づいて振動数を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の理解: 公式を単なる記号の操作としてではなく、「なぜ振動数が変化して聞こえるのか」という現象の仕組み(波とのすれ違いの速さが変わる)として理解できます。
    • ミスの防止: 公式の符号(プラスかマイナスか)を忘れてしまった場合でも、現象のイメージ(近づくから高く聞こえるはず、など)からその場で式を導き出せるようになります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「観測者が動く場合のドップラー効果」です。音源は止まっていて観測者だけが動くという、ドップラー効果の中で最も基本的な設定の一つです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
  2. ドップラー効果の公式: 音源や観測者が動くとき、観測される振動数 \(f’\) は元の振動数 \(f\) と異なります。
  3. 速度の正負の定義: 公式を使う際は、「音源から観測者に向かう向き」を正と定めるのが一般的です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題文から音速 \(V\)、音源の振動数 \(f\)、観測者の速さ \(v\) などの値を整理します。
  2. 公式を利用する場合は、音源と観測者の位置関係から「正の向き」を決め、観測者の速度 \(v_{\text{観測者}}\) の符号(プラスかマイナスか)を慎重に判断して代入します。
  3. 別解のアプローチとして、観測者が動くことで音波とすれ違う速さ(相対速度)がどう変わるかを考え、そこから振動数を計算する方法もあります。

音源に近づく場合

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