今回の問題
wave#23【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「閉管と開管の固有振動」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 気柱の共鳴条件: 管の内部に定常波ができることで共鳴が起こります。このとき、管の境界条件によって、存在できる定常波の波長が決まります。
- 閉管: 開口端が腹、閉端が節。
- 開管: 両端とも腹。
- 波の基本公式: 音の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係 (\(v = f\lambda\)) は、波の分野における最も基本的な関係式です。
- 固有振動数と倍音: 共鳴する振動数を固有振動数と呼びます。最も低い固有振動数を基本振動数(基本音)、それ以外の高い固有振動数を倍音と呼びます。
- 閉管: 固有振動数は基本振動数の奇数倍 (\(f_1, 3f_1, 5f_1, \dots\))。
- 開管: 固有振動数は基本振動数の整数倍 (\(f_1, 2f_1, 3f_1, \dots\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、閉管の共鳴条件から基本音の波長を求め、波の基本公式を用いて振動数を計算します。次に、閉管の固有振動数の性質から、最初の倍音(3倍音)の振動数を求めます。
- (2)では、開管の共鳴条件から同様に基本音の振動数を計算し、最初の倍音(2倍音)の振動数を求めます。
問(1) 長さ20cmの閉管
思考の道筋とポイント
閉管の基本音(基本振動)は、管内にできる定常波の波長が最も長くなる場合です。閉管では開口端が腹、閉端が節となるため、最も単純な定常波は、管の長さ\(L\)が波長の4分の1に相当する形となります。この関係と波の基本公式 \(v=f\lambda\) を用いて基本振動数\(f_1\)を求めます。
次に、閉管で次に現れる倍音は3倍音です。その振動数は基本振動数の3倍となります。
この設問における重要なポイント
- 単位をmに変換する: \(L = 20\) cm \( = 0.20\) m。
- 閉管の基本振動では、管長\(L\)と波長\(\lambda_1\)の関係は \(L = \displaystyle\frac{1}{4}\lambda_1\)。
- 閉管の固有振動数は基本振動数の奇数倍。したがって、最初の倍音は3倍音 (\(3f_1\))。
具体的な解説と立式
与えられた条件は、管長 \(L = 0.20\) m、音速 \(v = 340\) m/s です。
基本音の波長を \(\lambda_1\) とすると、閉管の基本振動の共鳴条件は、
$$ L = \frac{1}{4}\lambda_1 \quad \cdots ① $$
となります。この式から波長 \(\lambda_1\) を求めることができます。
基本音の振動数 \(f_1\) は、波の基本公式から、
$$ v = f_1 \lambda_1 \quad \cdots ② $$
で計算できます。
問題で問われている「最初に現れる倍音の振動数 \(f_2\)」は、閉管の場合、3倍音の振動数に相当します。
$$ f_2 = 3f_1 \quad \cdots ③ $$
使用した物理公式
- 閉管の基本振動の条件: \(L = \displaystyle\frac{1}{4}\lambda_1\)
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
まず、式①から基本音の波長 \(\lambda_1\) を求めます。
$$ \lambda_1 = 4L = 4 \times 0.20 = 0.80 \text{ [m]} $$
次に、式②を用いて基本音の振動数 \(f_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{v}{\lambda_1} \\[2.0ex]&= \frac{340}{0.80} \\[2.0ex]&= \frac{3400}{8} = 425 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
最後に、式③を用いて最初の倍音の振動数 \(f_2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= 3f_1 \\[2.0ex]&= 3 \times 425 = 1275 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
閉管で基本音が鳴るとき、管の長さは波長の4分の1になります。なので、波長は管の長さの4倍、つまり \(0.20 \times 4 = 0.80\) m です。振動数は「速さ ÷ 波長」で計算できるので、\(f_1 = 340 \div 0.80 = 425\) Hz となります。閉管の倍音は基本音の3倍、5倍、…と奇数倍で現れるので、最初の倍音は3倍です。よって、\(f_2 = 425 \times 3 = 1275\) Hz です。
閉管から出る基本音の振動数は 425 Hz、最初の倍音の振動数は 1275 Hz です。計算は正しく、物理的に妥当な値です。
問(2) 長さ20cmの開管
思考の道筋とポイント
開管の基本音は、両端が腹となる最も単純な定常波です。このとき、管の長さ\(L\)は波長の2分の1に相当します。この関係と波の基本公式から基本振動数\(f_1\)を求めます。
開管で次に現れる倍音は2倍音です。その振動数は基本振動数の2倍となります。
この設問における重要なポイント
- 単位をmに変換する: \(L = 20\) cm \( = 0.20\) m。
- 開管の基本振動では、管長\(L\)と波長\(\lambda_1\)の関係は \(L = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda_1\)。
- 開管の固有振動数は基本振動数の整数倍。したがって、最初の倍音は2倍音 (\(2f_1\))。
具体的な解説と立式
与えられた条件は、問(1)と同じく管長 \(L = 0.20\) m、音速 \(v = 340\) m/s です。
基本音の波長を \(\lambda_1\) とすると、開管の基本振動の共鳴条件は、
$$ L = \frac{1}{2}\lambda_1 \quad \cdots ④ $$
となります。この式から波長 \(\lambda_1\) を求めることができます。
基本音の振動数 \(f_1\) は、波の基本公式から、
$$ v = f_1 \lambda_1 \quad \cdots ⑤ $$
で計算できます。
問題で問われている「最初に現れる倍音の振動数 \(f_2\)」は、開管の場合、2倍音の振動数に相当します。
$$ f_2 = 2f_1 \quad \cdots ⑥ $$
使用した物理公式
- 開管の基本振動の条件: \(L = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda_1\)
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
まず、式④から基本音の波長 \(\lambda_1\) を求めます。
$$ \lambda_1 = 2L = 2 \times 0.20 = 0.40 \text{ [m]} $$
次に、式⑤を用いて基本音の振動数 \(f_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{v}{\lambda_1} \\[2.0ex]&= \frac{340}{0.40} \\[2.0ex]&= \frac{3400}{4} = 850 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
最後に、式⑥を用いて最初の倍音の振動数 \(f_2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= 2f_1 \\[2.0ex]&= 2 \times 850 = 1700 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
開管で基本音が鳴るとき、管の長さは波長の半分になります。なので、波長は管の長さの2倍、つまり \(0.20 \times 2 = 0.40\) m です。振動数は「速さ ÷ 波長」で計算できるので、\(f_1 = 340 \div 0.40 = 850\) Hz となります。開管の倍音は基本音の2倍、3倍、…と整数倍で現れるので、最初の倍音は2倍です。よって、\(f_2 = 850 \times 2 = 1700\) Hz です。
開管から出る基本音の振動数は 850 Hz、最初の倍音の振動数は 1700 Hz です。同じ長さの管では、開管の基本振動数は閉管の2倍になるという関係とも一致しており、妥当な結果です。
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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 境界条件がすべてを決める:
- 核心: 気柱の共鳴の性質は、管の端が閉じているか(節)、開いているか(腹)という「境界条件」によって完全に決まります。この違いが、波長と管長の関係、そして固有振動数の系列(奇数倍か、整数倍か)の違いを生み出す根本的な理由です。
- 理解のポイント:
- 閉管(腹-節): \(L = (2m-1)\frac{\lambda}{4}\) → 固有振動数は \(f_1, 3f_1, 5f_1, \dots\)
- 開管(腹-腹): \(L = m\frac{\lambda}{2}\) → 固有振動数は \(f_1, 2f_1, 3f_1, \dots\)
この2つの対応関係を、図を描いて視覚的に理解することが最も重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 管の長さを変える問題: 振動数を固定し、管の長さを変えて共鳴させる問題。\(v=f\lambda\)から波長\(\lambda\)は一定なので、共鳴する管の長さ\(L\)を求めることになります。
- 開口端補正: より現実に近い問題では、腹の位置が管口から少し外側にはみ出す「開口端補正 \(\Delta L\)」を考慮します。この場合、管長を \(L+\Delta L\)(開管なら\(L+2\Delta L\))として計算します。
- うなり: わずかに長さの違う2つの管を同時に鳴らしたときのうなりの振動数を問う問題。それぞれの基本振動数を計算し、その差を求めます。
- 初見の問題での着眼点:
- 管の種類を即座に判断: 問題文の「閉管」「開管」というキーワードを見逃さない。これが第一歩。
- 単位の確認と変換: 長さが[cm]で与えられていたら、計算前に必ず[m]に直す。音速の単位[m/s]と合わせるためです。
- 基本振動の図を描く: 頭の中だけで考えず、簡単な図を描いて「腹」と「節」を書き込み、管長と波長の関係を視覚的に確認する。これにより、公式の混同を防げます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 閉管と開管の公式の混同:
- 誤解: 最も多いミス。閉管なのに開管の公式 \(L=\lambda/2\) を使ってしまう、など。
- 対策: 公式を丸暗記するのではなく、「閉管は腹と節が1つずつ→ループ1個→\(\lambda/4\)」「開管は腹が2つ→ループ2個→\(\lambda/2\)」のように、基本振動の形と結びつけて理解する。
- 単位変換忘れ:
- 誤解: 20 cm のまま計算してしまい、答えが100倍ずれる。
- 対策: 計算を始める前に、すべての物理量の単位をSI単位系(m, s, kg)に揃えることを徹底する。
- 「最初の倍音」の解釈ミス:
- 誤解: 閉管の「最初の倍音」を2倍音だと勘違いし、\(2f_1\)を計算してしまう。
- 対策: 「倍音」とは基本音以外の音のこと。閉管では偶数倍の振動は存在しないため、基本音(\(f_1\))の次に現れるのは3倍音(\(3f_1\))です。「閉管は奇数だけ」と強く意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 公式 \(L = m \frac{\lambda}{4}\) や \(L = m \frac{\lambda}{2}\) の由来:
- 選定理由: これらは単なる公式ではなく、物理的な「境界条件」と「定常波の幾何学的な形」から導かれる必然的な帰結です。
- 適用根拠: 波は管の端で反射し、入射波と反射波が干渉します。このとき、壁(閉端)では媒質は動けないので変位は常に0(節)、開口端では媒質は自由に動けるので変位は最大(腹)になるという物理的制約があります。この制約を満たす安定した波(定常波)の形は、幾何学的に決まってしまい、それがこれらの公式に反映されています。
- 振動数の一般式 \(f = \frac{v}{\lambda}\) の活用:
- 選定理由: この公式は、波の速さ、振動数、波長という3つの基本量を結びつける、波の運動学における最も基本的な関係式です。
- 適用根拠: 上記の共鳴条件で決まった波長\(\lambda\)を持つ波が、音速\(v\)で伝わっているとき、その波が1秒間に何回振動するか(振動数\(f\))を求めるために使います。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 一般式を立ててから代入する:
- (1) 閉管: \(\lambda_1 = 4L\) なので、\(f_1 = \frac{v}{\lambda_1} = \frac{v}{4L}\)。
- (2) 開管: \(\lambda_1 = 2L\) なので、\(f_1 = \frac{v}{\lambda_1} = \frac{v}{2L}\)。
- このように文字式で整理してから、\(v=340, L=0.20\) を代入すると、計算の見通しが良くなり、ミスが減ります。
- 比の関係で検算する:
- 上記の一般式から、同じ長さ\(L\)と音速\(v\)のとき、開管の基本振動数 \(f_{1,\text{開}}\) は、閉管の基本振動数 \(f_{1,\text{閉}}\) のちょうど2倍になることがわかります。
- \(f_{1,\text{開}} = \frac{v}{2L} = 2 \times \left(\frac{v}{4L}\right) = 2 f_{1,\text{閉}}\)
- 今回の計算結果も、\(f_{1,\text{開}} = 850\) Hz、\(f_{1,\text{閉}} = 425\) Hz となっており、この関係を満たしています。このような関係を知っていると、強力な検算ツールになります。
- 計算しやすい形に変形する:
- \(f_1 = \frac{340}{0.80}\) の計算では、分母分子を10倍して \(\frac{3400}{8}\) と整数に直してから割り算をすると、小数点の位置を間違えるミスを防げます。
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