電磁気範囲 21~25
21 合成容量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 直列接続の別解: 「蓄えられる最大電気量」に着目する解法
- 模範解答が、電圧がどのように分配されるかという「電圧の比」から全体の耐電圧を考えるのに対し、別解では、各コンデンサーが単独で蓄えられる「最大電気量」を先に計算し、どちらが先に限界に達するかという「電気量の限界(ボトルネック)」から全体の性能を考えます。
- 直列接続の別解: 「蓄えられる最大電気量」に着目する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 「直列接続では電気量が等しい」という基本法則が、回路全体の性能を決定する上でどのように機能するかをより深く理解できます。
- 思考の汎用性向上: どちらの素子が回路全体の限界(ボトルネック)を決めるのかを見極めるという思考法は、抵抗の直列接続における最大消費電力の問題など、他の電気回路の問題にも応用できる汎用性の高い考え方です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーの合成と耐電圧」です。コンデンサーを合成した際に、合成容量だけでなく、回路全体として安全にかけられる最大電圧(耐電圧)や、そのときに蓄えられる最大電気量がどうなるかを正しく理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 並列・直列接続の基本性質:
- 並列接続: 各コンデンサーにかかる電圧が共通になります。
- 直列接続: 各コンデンサーに蓄えられる電気量が共通になります。
- 合成容量の公式:
- 並列接続: \(C = C_1 + C_2\)
- 直列接続: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
- 耐電圧の考え方: 合成したコンデンサーのどの部分も、個々の耐電圧を超えてはならない、という安全上の制約です。「鎖全体の強度は、最も弱い輪の強度で決まる」という考え方と同じです。
並列にしたとき
思考の道筋とポイント
まず、並列接続の合成容量を公式 \(C = C_1 + C_2\) を用いて計算します。
次に、耐電圧を考えます。並列接続では、2つのコンデンサーに同じ電圧がかかります。したがって、全体の電圧を上げていくと、耐電圧が低い方のコンデンサーが先に限界に達してしまいます。よって、合成したコンデンサー全体としての耐電圧は、2つのコンデンサーのうち、より低い方の耐電圧で決まります。
最後に、求めた合成容量と全体の耐電圧を用いて、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) から、蓄えられる最大の電気量を計算します。
この設問における重要なポイント
- 並列接続では、各コンデンサーにかかる電圧は等しい。
- 全体の耐電圧は、個々の耐電圧の「小さい方」で決まる。
- 合成容量は \(C = C_1 + C_2\)。
具体的な解説と立式
1. 合成容量 \(C\) の計算
並列接続なので、合成容量 \(C\) は各容量の和となります。
$$ C = C_1 + C_2 $$
2. 耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) の決定
並列接続では、\(C_1\) と \(C_2\) に同じ電圧がかかります。全体の電圧を上げていくと、耐電圧が \(100 \, \text{V}\) である \(C_2\) が、耐電圧 \(200 \, \text{V}\) の \(C_1\) よりも先に限界を迎えます。したがって、回路全体にかけられる最大の電圧(耐電圧)は、\(C_2\) の耐電圧である \(100 \, \text{V}\) となります。
$$ V_{\text{最大}} = 100 \, [\text{V}] $$
3. 最大電気量 \(Q\) の計算
全体として蓄えられる最大の電気量 \(Q\) は、合成容量 \(C\) と全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) の積で与えられます。
$$ Q = C V_{\text{最大}} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2\)
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
合成容量 \(C\):
$$
\begin{aligned}
C &= 1 \, [\mu\text{F}] + 4 \, [\mu\text{F}] \\[2.0ex]
&= 5 \, [\mu\text{F}]
\end{aligned}
$$
最大電気量 \(Q\):
$$
\begin{aligned}
Q &= C V_{\text{最大}} \\[2.0ex]
&= 5 \, [\mu\text{F}] \times 100 \, [\text{V}] \\[2.0ex]
&= 500 \, [\mu\text{C}]
\end{aligned}
$$
2つのコンデンサーを並列につなぐのは、2つのバケツを横に並べて、両方に同じ高さまで水を入れるようなものです。
バケツ全体の容量は、2つのバケツの容量の足し算になります。
一方、片方のバケツは高さ100mまで、もう片方は高さ200mまでしか耐えられないとします。両方に同じ高さまで水を入れていくと、当然、100mのバケツが先に限界に達します。したがって、全体として安全な水位は100mまで、ということになります。
最後に、全体で溜められる最大の水の量は、「全体の容量 × 安全な水位(100m)」で計算できます。
並列接続した場合、合成容量は \(5 \, \mu\text{F}\)、耐電圧は \(100 \, \text{V}\)、最大電気量は \(500 \, \mu\text{C}\) となりました。耐電圧が低い方のコンデンサーによって全体の性能が制限されるという、物理的に妥当な結果です。
直列にしたとき
思考の道筋とポイント
まず、直列接続の合成容量を公式 \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\) を用いて計算します。
次に、耐電圧を考えます。直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) が等しくなります。このとき、各コンデンサーにかかる電圧は \(V=Q/C\) より、電気容量に反比例して分配されます (\(V_1 : V_2 = C_2 : C_1\))。
全体の電圧を上げていくと、どちらかのコンデンサーが先に耐電圧に達します。どちらが先に限界を迎えるかを、この電圧の分配比を使って判断します。
- ケース1: \(C_1\) が耐電圧 \(200 \, \text{V}\) に達したとき、\(C_2\) の電圧はいくらか?
- ケース2: \(C_2\) が耐電圧 \(100 \, \text{V}\) に達したとき、\(C_1\) の電圧はいくらか?
両方のケースを比較し、どちらのコンデンサーも壊れない限界の状況を見つけ出します。そのときの各電圧の和が、全体の耐電圧となります。
最後に、求めた合成容量と全体の耐電圧から、最大電気量を計算します。
この設問における重要なポイント
- 直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しい。
- 各コンデンサーにかかる電圧は、電気容量の逆比に分配される。
- どちらかのコンデンサーが先に耐電圧の限界に達する状況を見極める。
具体的な解説と立式
1. 合成容量 \(C\) の計算
直列接続なので、合成容量 \(C\) は、
$$ \frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} $$
2. 耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) の決定
直列接続では、各コンデンサーにかかる電圧 \(V_1, V_2\) は、電気容量の逆比に分配されます。
$$ V_1 : V_2 = C_2 : C_1 = 4 : 1 $$
この関係から、\(V_1 = 4V_2\) となります。
ここで、どちらが先に耐電圧の限界に達するかを調べます。
- もし \(C_2\) が先に耐電圧 \(V_2 = 100 \, \text{V}\) に達したとすると、\(C_1\) にかかる電圧は \(V_1 = 4 \times 100 = 400 \, \text{V}\) となります。これは \(C_1\) の耐電圧 \(200 \, \text{V}\) を超えてしまうため、\(C_1\) は壊れてしまいます。この状況は許されません。
- したがって、容量の小さい \(C_1\) が先に耐電圧 \(V_1 = 200 \, \text{V}\) に達します。このとき、\(C_2\) にかかる電圧は \(V_2 = V_1 / 4 = 200 / 4 = 50 \, \text{V}\) となり、\(C_2\) の耐電圧 \(100 \, \text{V}\) を下回っているので安全です。
これが、回路全体としてかけられる限界の状況です。
よって、全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) は、このときの2つの電圧の和になります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= V_1 + V_2 \\[2.0ex]
&= 200 + 50 \\[2.0ex]
&= 250 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$
3. 最大電気量 \(Q\) の計算
全体として蓄えられる最大の電気量 \(Q\) は、合成容量 \(C\) と全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) の積で与えられます。
$$ Q = C V_{\text{最大}} $$
使用した物理公式
- 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
- 直列接続の電圧分配: \(V_1 : V_2 = C_2 : C_1\)
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
合成容量 \(C\):
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C} &= \frac{1}{1} + \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{4}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
C &= \frac{4}{5} \\[2.0ex]
&= 0.8 \, [\mu\text{F}]
\end{aligned}
$$
最大電気量 \(Q\):
$$
\begin{aligned}
Q &= C V_{\text{最大}} \\[2.0ex]
&= 0.8 \, [\mu\text{F}] \times 250 \, [\text{V}] \\[2.0ex]
&= 200 \, [\mu\text{C}]
\end{aligned}
$$
2つのバケツを縦に積むのが直列接続です。この場合、全体の容量は小さくなります。
この積み重ねたバケツに上から水を注ぐと、両方のバケツに同じ量の水(電気量)が溜まります。
しかし、バケツの底面積(容量)が違うため、水の溜まる高さ(電圧)は異なります。底面積が小さい(容量が小さい)バケツの方が、水位は急激に上昇します。
この問題では、\(C_1\) の方が容量が小さいので、全体の電圧を上げていくと、\(C_1\) の電圧の方が早く上昇し、先に耐電圧 \(200 \, \text{V}\) に達します。この瞬間が、全体としての限界になります。
直列接続した場合、合成容量は \(0.8 \, \mu\text{F}\)、耐電圧は \(250 \, \text{V}\)、最大電気量は \(200 \, \mu\text{C}\) となりました。容量の小さいコンデンサー \(C_1\) が先に耐電圧に達することで、全体の限界が決まるという結果は物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) が共通になります。この \(Q\) は、どちらのコンデンサーの最大許容電気量も超えることはできません。
そこで、まず各コンデンサーが「単独で」蓄えられる最大の電気量を計算します。
- \(C_1\) の最大電気量 \(Q_{1, \text{最大}}\)
- \(C_2\) の最大電気量 \(Q_{2, \text{最大}}\)
直列接続した回路全体として蓄えられる最大の電気量は、この2つのうちの「小さい方」で決まります。
この全体の最大電気量と、先に計算した合成容量を用いて、全体の耐電圧を \(V=Q/C\) から逆算します。
この設問における重要なポイント
- 直列接続の限界は、蓄えられる「最大電気量」が小さい方で決まる。
- \(Q_{\text{最大}} = \min(Q_{1,\text{最大}}, Q_{2,\text{最大}})\)。
具体的な解説と立式
1. 各コンデンサーの最大電気量を計算
- \(C_1\) が蓄えられる最大電気量 \(Q_{1, \text{最大}}\):
$$
\begin{aligned}
Q_{1, \text{最大}} &= C_1 V_{1, \text{最大}} \\[2.0ex]
&= 1 \, [\mu\text{F}] \times 200 \, [\text{V}] \\[2.0ex]
&= 200 \, [\mu\text{C}]
\end{aligned}
$$ - \(C_2\) が蓄えられる最大電気量 \(Q_{2, \text{最大}}\):
$$
\begin{aligned}
Q_{2, \text{最大}} &= C_2 V_{2, \text{最大}} \\[2.0ex]
&= 4 \, [\mu\text{F}] \times 100 \, [\text{V}] \\[2.0ex]
&= 400 \, [\mu\text{C}]
\end{aligned}
$$
2. 回路全体の最大電気量 \(Q\) を決定
直列接続では、両方のコンデンサーに同じ電気量 \(Q\) が蓄えられます。この \(Q\) は、\(Q_{1, \text{最大}}\) と \(Q_{2, \text{最大}}\) の両方を超えてはいけません。
したがって、回路全体として安全に蓄えられる最大の電気量は、2つのうちの小さい方、すなわち \(200 \, \mu\text{C}\) となります。
$$ Q = 200 \, [\mu\text{C}] $$
3. 合成容量 \(C\) と耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) の計算
合成容量 \(C\) は主たる解法と同様に \(0.8 \, \mu\text{F}\) です。
全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) は、この最大電気量 \(Q\) と合成容量 \(C\) から、\(Q=CV\) の関係を用いて計算します。
$$ V_{\text{最大}} = \frac{Q}{C} $$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
- 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= \frac{200 \, [\mu\text{C}]}{0.8 \, [\mu\text{F}]} \\[2.0ex]
&= 250 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$
2つの鎖を直列につないだ状況を考えます。鎖1は200kgまで、鎖2は400kgまで耐えられます。この2本をつないだ鎖全体で吊り下げられる荷物の重さは、当然、弱い方の鎖1に合わせて200kgまでです。
コンデンサーの直列接続もこれと同じで、回路全体に流せる(蓄えられる)電気の「量」は、個々のコンデンサーが耐えられる電気の量のうち、小さい方で決まります。
この問題では、\(C_1\) は \(200 \, \mu\text{C}\) まで、\(C_2\) は \(400 \, \mu\text{C}\) まで耐えられるので、全体としては \(200 \, \mu\text{C}\) までしか蓄えられません。これが最大電気量になります。
全体の耐電圧は、この最大電気量を、計算した合成容量で割ることで求められます。
主たる解法と全く同じ結果が得られました。「電圧の分配」で考えるか、「電気量の限界」で考えるか、という異なる視点から同じ結論に至ることを確認できます。後者の方が、計算がより直接的で間違いにくい場合があります。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 接続方法と「耐電圧」という制約条件の理解:
- 核心: この問題の根幹は、コンデンサーの接続方法(並列か直列か)によって、何が共通の物理量になるかを理解し、さらに「耐電圧」という安全上の制約をどう適用するかを考えることにあります。「回路全体の性能は、最も弱い部品によって決まる」という考え方が核心です。
- 理解のポイント:
- 並列接続の場合:
- 物理的性質: 各コンデンサーにかかる電圧が共通になります。
- 制約: 全体にかけた電圧が、そのまま各コンデンサーにかかります。したがって、全体の耐電圧は、個々の耐電圧のうち最も低い方で決まります。
- 直列接続の場合:
- 物理的性質: 各コンデンサーに蓄えられる電気量が共通になります。
- 制約: 電圧は電気容量の逆比に分配されるため(容量が小さい方ほど電圧が高くなる)、どちらかのコンデンサーが先に耐電圧の限界に達します。どちらが先に壊れるかを比較検討する必要があります。あるいは、別解のように、各コンデンサーが蓄えられる「最大電気量」を比較し、最も小さい最大電気量が回路全体の限界を決める、と考えることもできます。
- 並列接続の場合:
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 3つ以上のコンデンサーの合成: 3つ以上のコンデンサーを並列・直列に組み合わせた場合でも、考え方は同じです。並列部分では最も低い耐電圧が、直列部分では電圧分配(または最小の最大電気量)が限界を決めます。
- 抵抗の定格電力: 抵抗を直列・並列に接続したときの、回路全体で消費できる最大の電力(定格電力)を求める問題。これも「最も弱い部品(先に定格電力を超える抵抗)が全体の限界を決める」という点で、本問と考え方が共通しています。
- ダイオードを含む回路: 「一定以上の電圧をかけると壊れる」「逆向きの電圧はかけられない」といった制約を持つダイオードなど、他の電子部品を含む回路の限界を考える問題に応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 接続方法(並列/直列)をまず確認: 回路図を見て、並列接続か直列接続かを判断し、それに応じた合成容量の公式と、共通の物理量(電圧か電気量か)を確定させます。
- 「耐電圧」という言葉から「限界探し」を意識: この言葉が出てきたら、単純な合成容量の計算問題ではなく、「どこがボトルネックになるか」を探す問題だと認識します。
- 並列接続の場合: 迷わず、与えられた耐電圧のうち「最も小さい値」を、回路全体の耐電圧とします。
- 直列接続の場合: 「電圧分配」か「最大電気量」のどちらか、自分が得意な方のアプローチで考えます。
- 電圧分配: 電圧の分配比(容量の逆比)を計算し、「もしAが限界ならBは?」「もしBが限界ならAは?」と2つのケースをシミュレーションし、両方とも安全な方を選びます。
- 最大電気量(別解): 各コンデンサーの最大電気量 \(Q_{\text{最大}}=CV_{\text{最大}}\) を計算し、「最も小さい値」を回路全体の最大電気量とします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 直列接続の耐電圧を単純に足してしまう:
- 誤解: 直列だからといって、耐電圧を \(200 \, \text{V} + 100 \, \text{V} = 300 \, \text{V}\) と足し算してしまう。
- 対策: 直列接続で足し算できるのは電圧そのものですが、それは各コンデンサーに「かかる電圧」です。「耐えられる電圧」ではありません。電圧は容量の逆比に分配されるため、単純な足し算にはならないことを肝に銘じましょう。
- 直列接続で、耐電圧が低い方が先に限界になると勘違いする:
- 誤解: \(C_2\) の耐電圧が \(100 \, \text{V}\) と低いので、こちらが先に限界に達するだろうと早合点してしまう。
- 対策: 直列接続では「容量が小さい方」に「電圧が大きくかかる」という原則を思い出しましょう。この問題では、容量の小さい \(C_1\) の方に \(C_2\) の4倍の電圧がかかるため、\(C_1\) の方が圧倒的に先に耐電圧の限界に達します。
- 並列接続の最大電気量を、個々の最大値の和と考えてしまう:
- 誤解: \(Q_{\text{最大}} = Q_{1, \text{最大}} + Q_{2, \text{最大}} = (1 \times 200) + (4 \times 100) = 600 \, \mu\text{C}\) と計算してしまう。
- 対策: 並列接続では「電圧が共通」という大原則に立ち返ります。回路全体にかけられる電圧は \(100 \, \text{V}\) が限界です。このとき、\(C_1\) にかかる電圧も \(100 \, \text{V}\) であり、耐電圧 \(200 \, \text{V}\) の半分しか使えていません。したがって、各コンデンサーが同時に自身の最大電気量を蓄えることは不可能です。必ず「全体の耐電圧」と「合成容量」から全体の最大電気量を計算します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 並列接続の耐電圧(小さい方を選ぶ):
- 選定理由: 並列接続では「電圧が共通」という物理的な制約があるためです。
- 適用根拠: 回路全体にかかる電圧 \(V\) は、そのまま \(C_1\) にも \(C_2\) にもかかります。もし、小さい方の耐電圧(\(100 \, \text{V}\))を超えて \(101 \, \text{V}\) をかけると、\(C_2\) は耐えられずに破壊されてしまいます。したがって、回路が安全に機能する上限は、最も弱い部品の限界電圧で決まります。
- 直列接続の耐電圧(電圧分配 or 最大電気量で検討):
- 選定理由: 直列接続では「電気量が共通」という物理的な制約があるためです。
- 適用根拠(電圧分配): \(Q=C_1V_1=C_2V_2\) という関係から、電圧は容量の逆比に分配されること (\(V_1/V_2 = C_2/C_1\)) が数学的に導かれます。この分配比に基づいて、どちらかの耐電圧に達したときのもう片方の電圧を計算し、限界状況を論理的に判断します。
- 適用根拠(最大電気量): 直列回路を流れる(蓄えられる)電気量は、回路のどの部分でも同じ値です。したがって、回路に流せる電気量の上限は、最も少ない量しか許容できない部品(この場合は \(C_1\) の \(200 \, \mu\text{C}\))によって決まります。これを「ボトルネック」の原理と考えることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位を揃えて計算する意識:
- この問題では、容量が\(\mu\text{F}\)、電圧が\(\text{V}\)で与えられているので、電気量を\(\mu\text{C}\)のまま計算を進めると便利です。\(Q[\mu\text{C}] = C[\mu\text{F}] \times V[\text{V}]\)。わざわざ \(10^{-6}\) を書く必要がなく、計算がシンプルになります。
- 直列接続の限界検討を表にする:
- どちらが先に限界に達するかを考える際、頭の中だけでやると混乱しがちです。以下のような簡単な表を作ると、状況が一目瞭然になります。
ケース \(V_1\) \(V_2\) 判定 \(C_1\)が限界のとき \(200\text{V}\) \(V_1/4 = 50\text{V}\) (\(<100\text{V}\)) ○ 安全 \(C_2\)が限界のとき \(4V_2 = 400\text{V}\) (\(>200\text{V}\)) \(100\text{V}\) × \(C_1\)破壊 - この表から、安全な限界は上のケースであり、全体の耐電圧は \(200\text{V} + 50\text{V} = 250\text{V}\) であると確実に判断できます。
- どちらが先に限界に達するかを考える際、頭の中だけでやると混乱しがちです。以下のような簡単な表を作ると、状況が一目瞭然になります。
- 別解(最大電気量)による検算:
- 電圧分配で求めた結果が正しいか不安な場合、別解の「最大電気量」で考える方法で検算するのが非常に有効です。
- \(Q_{1, \text{最大}}=1\mu\text{F} \times 200\text{V} = 200\mu\text{C}\)
- \(Q_{2, \text{最大}}=4\mu\text{F} \times 100\text{V} = 400\mu\text{C}\)
- 直列なので、小さい方の \(200\mu\text{C}\) が回路全体の最大電気量になります。
- 合成容量は \(0.8\mu\text{F}\) なので、全体の耐電圧は \(V_{\text{最大}} = Q/C = 200\mu\text{C} / 0.8\mu\text{F} = 250\text{V}\)。
- 結果が一致すれば、自信を持って解答できます。
- 電圧分配で求めた結果が正しいか不安な場合、別解の「最大電気量」で考える方法で検算するのが非常に有効です。
22 合成容量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- Cのコンデンサーの電圧の別解: 電気量から逆算する解法
- 主たる解法(模範解答)が、直列部分の「電圧分配の比」を用いて電圧を直接求めるのに対し、別解ではまず回路全体の合成容量と電源電圧から「回路全体を流れる電気量」を計算し、その電気量と左側ブロックの合成容量から、ブロックにかかる電圧を逆算します。
- Cのコンデンサーの電圧の別解: 電気量から逆算する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の基本に忠実: この別解は、「直列接続では電気量が等しい」という、より根源的な物理法則から出発しています。電圧分配則を暗記していなくても、基本法則の組み合わせで答えを導くプロセスを学べます。
- 思考の汎用性向上: 「まず全体の電気量を求め、そこから各部分の状態を明らかにしていく」という思考の流れは、より複雑な回路(例えばキルヒホッフの法則を使うような回路)を解析する際の基本的な考え方と共通しており、応用力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーの複雑な接続回路における合成容量と電圧分配」です。一見して単純な直列・並列ではない回路を、部分ごとに合成していくことで、最終的に回路全体の性質を明らかにする能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 合成容量の公式:
- 並列接続: \(C_{並列} = C_1 + C_2\)
- 直列接続: \(\displaystyle\frac{1}{C_{直列}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
- 回路の簡略化: 複雑な回路を、並列部分や直列部分を一つずつ合成していくことで、より単純な等価回路に書き換えていく思考法。
- 直列接続における電圧分配: 直列接続されたコンデンサーにかかる電圧は、電気容量の逆比に分配されます。
- 並列接続における電圧: 並列接続されたコンデンサーにかかる電圧は、等しくなります。
合成容量 \(C_T\) の計算
思考の道筋とポイント
複雑に見える回路も、部分的に見れば単純な並列・直列の組み合わせになっています。この問題の回路は、以下の2つのブロックが直列に接続されたものと考えることができます。
- ブロックA: \(C\) と \(3C\) のコンデンサーが並列に接続された部分。
- ブロックB: \(2C\) と \(4C\) のコンデンサーが並列に接続された部分。
したがって、まずブロックAとブロックBの合成容量をそれぞれ求め、その2つを直列合成することで、回路全体の合成容量 \(C_T\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 回路を単純な部分(ブロック)に分解して考える。
- 並列部分の合成容量は和で計算する。
- 直列部分の合成容量は逆数の和で計算する。
具体的な解説と立式
1. 左側の並列部分(ブロックA)の合成容量 \(C_A\) の計算
コンデンサー \(C\) と \(3C\) は並列に接続されているので、その合成容量 \(C_A\) は、
$$
\begin{aligned}
C_A &= C + 3C \\[2.0ex]
&= 4C
\end{aligned}
$$
2. 右側の並列部分(ブロックB)の合成容量 \(C_B\) の計算
コンデンサー \(2C\) と \(4C\) は並列に接続されているので、その合成容量 \(C_B\) は、
$$
\begin{aligned}
C_B &= 2C + 4C \\[2.0ex]
&= 6C
\end{aligned}
$$
3. 回路全体の合成容量 \(C_T\) の計算
この回路は、合成容量 \(C_A\) と \(C_B\) を持つ2つのコンデンサーが直列に接続されたものと等価です。
したがって、全体の合成容量 \(C_T\) は、
$$ \frac{1}{C_T} = \frac{1}{C_A} + \frac{1}{C_B} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成容量: \(C_{並列} = C_1 + C_2\)
- 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C_{直列}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C_T} &= \frac{1}{4C} + \frac{1}{6C} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{12C} + \frac{2}{12C} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{12C}
\end{aligned}
$$
よって、\(C_T\) はこの逆数をとって、
$$ C_T = \frac{12}{5}C $$
この複雑な回路は、大きく分けて「左の部屋」と「右の部屋」が廊下でつながっているようなものです。
まず、それぞれの部屋の「広さ(容量)」を計算します。
- 左の部屋: 広さ \(C\) と \(3C\) の2つの区画が並んでいるので、合計の広さは \(C+3C=4C\)。
- 右の部屋: 広さ \(2C\) と \(4C\) の2つの区画が並んでいるので、合計の広さは \(2C+4C=6C\)。
全体の回路は、この広さ \(4C\) の部屋と広さ \(6C\) の部屋が廊下(直列)でつながっているのと同じです。直列の場合の全体の容量は、少し複雑な逆数の足し算で計算します。
合成容量は \(\displaystyle\frac{12}{5}C\) となりました。回路を適切に分解し、並列と直列の合成公式を正しく適用することで求められました。
Cのコンデンサーの電圧の計算
思考の道筋とポイント
コンデンサー \(C\) にかかる電圧を求めるには、まず \(C\) が含まれている「左側の並列ブロック(ブロックA)」全体にかかる電圧を求める必要があります。
回路全体は、容量 \(C_A=4C\) のブロックAと、容量 \(C_B=6C\) のブロックBの直列接続と見なせます。
直列接続では、全体の電圧 \(V\) が、各部分の電気容量の「逆比」に分配されます。
この性質を使って、ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) を求めます。
最後に、並列接続では各部分にかかる電圧は等しいので、ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) が、そのままコンデンサー \(C\) にかかる電圧となります。
この設問における重要なポイント
- 直列接続された部分に、電圧が容量の逆比で分配されることを理解している (\(V_A : V_B = C_B : C_A\))。
- 並列接続された部分にかかる電圧は、各素子で共通であることを理解している。
具体的な解説と立式
回路全体は、合成容量 \(C_A = 4C\) のブロックAと、合成容量 \(C_B = 6C\) のブロックBが直列に接続されたものと見なせます。
この2つのブロックに、電源電圧 \(V\) が分配されます。それぞれのブロックにかかる電圧を \(V_A, V_B\) とすると、直列接続なので、電圧は容量の逆比に分配されます。
$$ V_A : V_B = C_B : C_A = 6C : 4C = 3 : 2 $$
全体の電圧 \(V\) を \(3:2\) の比で分けるので、ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) は、
$$
\begin{aligned}
V_A &= \frac{3}{3+2} V \\[2.0ex]
&= \frac{3}{5}V
\end{aligned}
$$
コンデンサー \(C\) は、このブロックAの一部であり、\(3C\) のコンデンサーと並列に接続されています。並列接続では、各部分にかかる電圧は等しいので、コンデンサー \(C\) にかかる電圧 \(V_C\) は、ブロックA全体にかかる電圧 \(V_A\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
V_C &= V_A \\[2.0ex]
&= \frac{3}{5}V
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 直列接続の電圧分配: \(V_1 : V_2 = C_2 : C_1\)
- 並列接続の電圧の性質
(上記「具体的な解説と立式」で計算完了)
全体の電圧 \(V\) が、「左の部屋(容量\(4C\))」と「右の部屋(容量\(6C\))」に分け与えられます。直列接続の場合、電圧は容量が小さい方により多く分配されるという性質があります。
容量の比が \(4C:6C = 2:3\) なので、電圧は逆比の \(3:2\) に分配されます。
したがって、左の部屋には全体の電圧 \(V\) のうち \(\displaystyle\frac{3}{3+2} = \displaystyle\frac{3}{5}\) がかかります。
コンデンサー \(C\) は左の部屋の中にある一部屋ですが、並列接続なので、部屋全体にかかる電圧がそのまま \(C\) にもかかります。よって、答えは \(\displaystyle\frac{3}{5}V\) です。
コンデンサー \(C\) にかかる電圧は \(\displaystyle\frac{3}{5}V\) となりました。回路をブロックに分けて考え、直列接続の電圧分配の法則を正しく適用することで求められました。
思考の道筋とポイント
この解法では、電圧分配の公式を使わずに、より基本的な法則から答えを導きます。
まず、回路全体の合成容量 \(C_T\) と電源電圧 \(V\) から、回路全体を流れる総電気量 \(Q_T\) を計算します。
次に、「直列接続では電気量が等しい」という性質を利用します。回路全体を流れる \(Q_T\) は、左側のブロックAに蓄えられる電気量 \(Q_A\) と等しくなります。
最後に、ブロックAについてコンデンサーの基本式 \(Q_A = C_A V_A\) を適用し、ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) を求めます。この \(V_A\) が、求めるコンデンサーCの電圧と等しくなります。
この設問における重要なポイント
- まず回路全体の総電気量 \(Q_T = C_T V\) を計算する。
- 直列接続の性質「電気量が等しい」(\(Q_T = Q_A\))を利用する。
- ブロックAについて \(V_A = Q_A / C_A\) を計算する。
具体的な解説と立式
1. 回路全体の総電気量 \(Q_T\) の計算
全体の合成容量 \(C_T = \displaystyle\frac{12}{5}C\) と電源電圧 \(V\) から、総電気量 \(Q_T\) は、
$$
\begin{aligned}
Q_T &= C_T V \\[2.0ex]
&= \frac{12}{5}CV
\end{aligned}
$$
2. ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) の計算
ブロックAとブロックBは直列接続なので、それぞれに蓄えられる電気量は等しく、総電気量 \(Q_T\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
Q_A &= Q_T \\[2.0ex]
&= \frac{12}{5}CV
\end{aligned}
$$
ブロックAの合成容量は \(C_A = 4C\) なので、ブロックAにかかる電圧 \(V_A\) は、
$$ V_A = \frac{Q_A}{C_A} $$
3. コンデンサーCにかかる電圧 \(V_C\) の決定
コンデンサーCはブロックAに属しており、並列接続なので、その電圧はブロックAの電圧 \(V_A\) に等しくなります。
$$ V_C = V_A $$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
- 直列接続の電気量の性質
$$
\begin{aligned}
V_A &= \frac{Q_A}{C_A} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{12}{5}CV}{4C} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{5 \times 4}V \\[2.0ex]
&= \frac{3}{5}V
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
V_C &= V_A \\[2.0ex]
&= \frac{3}{5}V
\end{aligned}
$$
まず、この回路全体がどれくらいの電気を蓄えるかを計算します。それが総電気量 \(Q_T\) です。
次に、回路の「左の部屋」に注目します。左の部屋と右の部屋は廊下でつながっている(直列)ので、左の部屋に溜まる電気の量も、全体の量と同じ \(Q_T\) になります。
左の部屋の広さ(容量 \(C_A\))と、そこに溜まっている電気の量(\(Q_A=Q_T\))がわかったので、「電圧 = 電気量 ÷ 容量」の公式から、左の部屋の電圧を計算できます。
コンデンサーCは左の部屋の一部なので、この電圧がそのまま答えになります。
主たる解法と全く同じ結果が得られました。電圧分配の公式を覚えていなくても、「直列では電気量が等しい」という基本法則から出発することで、同じ結論にたどり着けることが確認できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 回路の等価変換と階層的分析:
- 核心: この問題の根幹は、一見複雑な回路を、より単純な構成要素(ブロック)の組み合わせとして捉え直し、段階的に分析する能力にあります。具体的には、「並列部分をまず合成し、次にそれらを直列として合成する」という階層的な思考プロセスが核心です。
- 理解のポイント:
- 回路の分解: 回路図を見て、同じ電位差を持つ部分(並列接続)や、同じ電荷が流れる部分(直列接続)をグループ化します。この問題では、「\(C\)と\(3C\)の並列グループ」と「\(2C\)と\(4C\)の並列グループ」を見つけ出すことが第一歩です。
- 等価回路への書き換え: 見つけ出したグループを、それぞれの合成容量を持つ一つのコンデンサーに置き換えた、より単純な「等価回路」を描き直します。この問題では、元の4つのコンデンサーの回路が、2つの合成コンデンサー(\(4C\)と\(6C\))の直列接続という、見慣れた回路に変換されます。
- 段階的計算: この単純化された等価回路に対して、まず全体の性質(合成容量や電圧分配)を計算し、その結果を使って元の回路の各部分の状態(個々のコンデンサーの電圧など)を明らかにしていく、という段階的なアプローチを取ります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 抵抗の合成抵抗: 抵抗回路においても、同じように並列部分と直列部分を見つけ出し、段階的に合成していくことで、回路全体の合成抵抗を求めることができます。
- ブリッジ回路: コンデンサーや抵抗をひし形に接続したブリッジ回路。平衡条件(検流計に電流が流れない条件)を満たす場合は、中央の素子を無視できるなど、回路の対称性や性質を見抜くことが重要になります。
- キルヒホッフの法則を用いる回路: より複雑で、単純な直列・並列に分解できない回路では、キルヒホッフの法則(電圧則と電流則)を用いて連立方程式を立てて解きます。しかし、その際も「どの部分が並列か(電圧が等しいか)」といった基本的な見方は必要になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 電源から最も遠い部分から合成を始める: 一般的に、複雑な回路は、電源から見て最も遠い末端の部分から合成を始めると、うまく単純化できることが多いです。
- 同じ電位の点をマークする: 導線で結ばれているだけの点は、全て同じ電位です。回路図に同じ印(例:●や▲)をつけていくと、どの素子が同じ電位差(並列)を持っているかが視覚的に分かりやすくなります。
- 等価回路をこまめに描き直す: 一つの部分を合成したら、その都度、簡略化された等価回路図を描き直す癖をつけましょう。頭の中だけで処理しようとすると、混乱やミスの原因になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 並列と直列の混同:
- 誤解: 回路図の見た目の配置(横に並んでいるから直列、縦に並んでいるから並列など)で判断してしまう。
- 対策: 必ず定義に立ち返ります。「分岐して合流する \(\rightarrow\) 並列」「一本道でつながっている \(\rightarrow\) 直列」という接続の仕方で判断します。この問題では、\(C\)と\(3C\)は上下に分岐しているので並列です。
- 合成容量の公式の混同:
- 誤解: 並列接続で逆数の和を、直列接続で単純な和を計算してしまう(抵抗の合成公式と混同しやすい)。
- 対策: コンデンサーの場合、「並列にすると極板面積が増えるのと同じ \(\rightarrow\) 容量は大きくなる(和)」、「直列にすると極板間隔が広がるのと同じ \(\rightarrow\) 容量は小さくなる(逆数の和)」という物理的なイメージと結びつけて覚えると、間違いにくくなります。
- 電圧分配の比の混同:
- 誤解: 直列接続の電圧分配を、容量の比(\(C_1:C_2\))と勘違いしてしまう。
- 対策: 直列では電気量 \(Q\) が一定なので、\(V=Q/C\) より、電圧 \(V\) は容量 \(C\) に「反比例」します。したがって、分配比は「逆比」(\(C_2:C_1\))になると、理屈で覚えておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 回路のブロック化(等価回路):
- 選定理由: 人間の脳が一度に処理できる情報量には限界があります。複雑な問題を、より小さく扱いやすい部分問題(ブロック)に分割し、それぞれを解決してから全体を統合する、というのは問題解決の普遍的な戦略です。回路解析において、この戦略を具体化したものが「等価回路」の考え方です。
- 適用根拠: 並列部分や直列部分の電気的な性質は、その部分の合成容量を持つ一つの素子と完全に等価です。したがって、回路の一部をその等価な素子に置き換えても、回路全体の他の部分に与える影響は変わらないため、この手法が正当化されます。
- 直列接続の電圧分配則:
- 選定理由: 回路全体の電圧 \(V\) が、直列に接続された2つのブロックA, Bにどのように分配されるかを、最も効率的に計算するための公式です。
- 適用根拠: この法則は、「直列接続では電気量が等しい」(\(Q_A = Q_B\))という基本法則から導かれます。\(Q_A = C_A V_A\), \(Q_B = C_B V_B\) なので、\(C_A V_A = C_B V_B\) となり、これを変形すると \(V_A/V_B = C_B/C_A\)、すなわち \(V_A : V_B = C_B : C_A\) という逆比の関係が数学的に導出されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 分数の計算を丁寧に行う:
- 直列接続の合成容量を計算する際、\(\displaystyle\frac{1}{C_T} = \frac{5}{12C}\) と計算した後、最後に逆数をとるのを忘れて \(\displaystyle\frac{5}{12}C\) と答えてしまうミスが非常に多いです。必ず「\(\rightarrow C_T = \dots\)」と、逆数をとるステップを明記しましょう。
- 比の計算をマスターする:
- 全体 \(V\) を \(a:b\) に分配する場合、それぞれの量は \(\displaystyle\frac{a}{a+b}V\) と \(\displaystyle\frac{b}{a+b}V\) になります。この比例配分の計算は、物理の様々な場面で頻出するので、確実に身につけておきましょう。
- 別解による検算:
- 主たる解法(電圧分配)で答えを出した後、時間があれば別解(総電気量からの逆算)でも計算してみるのが理想的です。
- \(Q_T = \frac{12}{5}CV\)
- \(V_A = Q_T / C_A = (\frac{12}{5}CV) / (4C) = \frac{3}{5}V\)
- 異なるアプローチで同じ答えが出れば、解答の信頼性は飛躍的に高まります。
- 主たる解法(電圧分配)で答えを出した後、時間があれば別解(総電気量からの逆算)でも計算してみるのが理想的です。
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23 合成容量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている「合成容量」の考え方を用いる解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問の別解: 連立方程式を用いる解法
- 主たる解法(模範解答)が、並列接続されたコンデンサーを「合成容量 \(C_1+C_2\) を持つ一つのコンデンサー」と見なして解くのに対し、別解では合成容量の概念を使わず、より基本的な「電気量保存則」と「電圧共通の条件」の2つの式を立て、連立方程式として解きます。
- 設問の別解: 連立方程式を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の基本に忠実: この別解は、「合成容量」という便利な公式の背景にある、より根源的な2つの物理法則(電気量保存と電圧共通)を直接的に用います。これにより、なぜ合成容量の公式が成り立つのかという理解が深まります。
- 思考の汎用性向上: より複雑な回路で合成容量の公式が使いにくい場合でも、個々の素子に着目して基本法則から連立方程式を立てる、というアプローチは常に有効です。この汎用性の高い思考法を学ぶことができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「充電済みコンデンサーの接続組み換えと電荷の再分配」です。あらかじめ充電されたコンデンサーを、未充電のコンデンサーに接続したときに、電荷がどのように移動し、最終的にどのような電圧に落ち着くかを問う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)。これを用いて、接続前のコンデンサーの電気量を計算します。
- 電気量保存の法則: スイッチを切り替えた後、2つのコンデンサーは電池から切り離された孤立した一つの系とみなせます。電荷はコンデンサー間で移動しますが、系全体の電荷の総和は保存されます。
- 並列接続の性質: スイッチをb側に入れると、2つのコンデンサーは並列接続の状態になります。並列接続では、各コンデンサーの電圧(電位差)は等しくなります。
- 合成容量: 並列接続されたコンデンサーの合成容量は、各コンデンサーの容量の和で与えられます (\(C_{合成} = C_1 + C_2\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、スイッチをa側に入れたときにコンデンサー \(C_1\) に蓄えられる初期電荷を計算します。
- 次に、スイッチをb側に切り替えた後の回路が並列接続であることを見抜きます。このとき、2つのコンデンサーからなる系は孤立しているため、電気量が保存されることを利用します。
- 電気量保存則と合成容量の考え方(総電荷 = 合成容量 × 最終電圧)から、最終的な電圧を求めます。