問題91 (九州工大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、水面上で同じ周期で振動する2つの波源がつくる波の干渉について考える問題です。波長や速さの計算、干渉による強め合い・弱め合いの判断、経路差の計算、そして干渉縞の作図や本数の特定といった、波の干渉に関する基本的な理解と応用力が問われます。
- 2つの波源A, Bが水面上で距離 \(d\) [m] 離れている。
- 2つの波源A, Bは同じ周期 \(T\) [s] で振動し、2つの波をつくる。
- 図は、波源A, Bから出る波のある時刻での山の位置を描いたものである(同心円は波の山を表す)。
- (5)では、AとBを逆位相で振動させる条件が加わる。
- (1) この波の波長 \(\lambda\) [m] および波の速さ \(v\) [m/s]。
- (2) 図中の点P\(_1\), P\(_2\), P\(_3\) が、それぞれ強め合いの位置か、弱め合いの位置か。
- (3) 点A, Bから各点(P\(_1\), P\(_2\), P\(_3\))までの距離の差 AP\(_1\)-BP\(_1\), AP\(_2\)-BP\(_2\), AP\(_3\)-BP\(_3\) を波長 \(\lambda\) を用いて表すこと。
- (4) 線分ABを横切り、波源Aの最も近くを通る強め合いの線を図に描き入れること(波源は同位相とする)。
- (5) AとBを逆位相で振動させると、AB間には何本の弱め合いの線が現れるか(波源は除く)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(5) 弱め合いの線の本数の別解: 定常波の節を数える解法
- 主たる解法が線分AB上の点の経路差を代数的に計算して条件を満たす整数を数えるのに対し、別解ではAB間にできる定常波の「節」の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用して、視覚的・物理的に本数を数えます。
- 問(5) 弱め合いの線の本数の別解: 定常波の節を数える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 波の干渉と定常波が、同じ物理現象の異なる側面に過ぎないという本質的な理解が深まります。
- 計算の簡略化と直感性: 複雑な不等式を解く必要がなく、「全長 \(4\lambda\) の中に、間隔 \(\lambda/2\) の点がいくつ並ぶか」という、より直感的で計算ミスの少ない方法で解くことができます。
- 異なる視点の学習: 代数的なアプローチと、物理モデル(定常波)を用いたアプローチの両方を学ぶことで、思考の柔軟性が養われ、問題解決能力が向上します。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「波の干渉」です。2つの波源から出る波が重なり合うことで生じる強め合い・弱め合いの現象について、基本的な関係式と干渉条件を正しく適用することが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v = f\lambda\) の関係が、振動数 \(f\) と周期 \(T\) の間には \(f = 1/T\) の関係が成り立ちます。
- 波の干渉条件: 2つの波源からの距離の差(経路差)によって、波が強め合うか弱め合うかが決まります。この条件は、波源が同位相か逆位相かによって異なります。
- 図の読解力: 与えられた図から、波長や各点での波の重なり具合、経路差といった物理的な情報を正確に読み取る能力が求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1)では、図から波源間距離と波長の関係を読み取り、波の基本式を用いて速さを計算します。
- 問(2)と問(3)では、図を丁寧に読み解き、各点での波の重なり具合(山か谷か)と、波源からの経路差を具体的に求めます。
- 問(4)では、強め合いの条件を満たす点を図から探し、それらを結んで干渉縞を作図します。
- 問(5)では、波源が逆位相になることで干渉条件がどう変わるかを理解し、線分AB間に現れる弱め合いの線の本数を数えます。
問(1)
思考の道筋とポイント
与えられた図から波長 \(\lambda\) を読み取ります。図の同心円は波の「山」の位置を示しており、隣り合う山の間隔が1波長 \(\lambda\) です。波源AからBまでの距離 \(d\) が波長の何倍になっているかを数え、\(\lambda\) を求めます。次に、波の基本式 \(v = f\lambda\) と周期・振動数の関係 \(f=1/T\) を用いて、波の速さ \(v\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 図から、線分ABの長さ \(d\) が波長 \(\lambda\) の何倍になっているかを正確に読み取ること。
- 周期 \(T\) と振動数 \(f\) の関係 (\(f=1/T\)) を利用すること。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) を正しく適用すること。
具体的な解説と立式
図において、波源Aから出た波の山(同心円)が描かれています。隣り合う山と山の間隔が波長 \(\lambda\) です。
図の線分AB間には、波源Aを中心とする同心円(山)が4つ見て取れます。これは、AからBまでの距離 \(d\) が、ちょうど4つの波長分であることを意味します。
したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
d &= 4\lambda
\end{aligned}
$$
この式から、波長 \(\lambda\) が求まります。
次に、波の速さ \(v\) を求めます。波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v = f\lambda\) の関係があります。
振動数 \(f\) は周期 \(T\) の逆数なので、\(f = \displaystyle\frac{1}{T}\) です。
よって、速さ \(v\) の式は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda \\[2.0ex]
&= \frac{1}{T}\lambda
\end{aligned}
$$
ここに先ほど求めた \(\lambda\) の関係を代入して \(v\) を求めます。
使用した物理公式
- 振動数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
まず、波長 \(\lambda\) は、\(d = 4\lambda\) の関係から、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{d}{4}
\end{aligned}
$$
次に、速さ \(v\) は、
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{1}{T}\lambda \\[2.0ex]
&= \frac{1}{T} \cdot \frac{d}{4} \\[2.0ex]
&= \frac{d}{4T}
\end{aligned}
$$
図を見ると、A点からB点までの間に、波の山から隣の山までの間隔(これが1波長 \(\lambda\) です)がちょうど4つ分入っています。なので、距離 \(d\) は波長 \(\lambda\) の4倍、つまり \(d = 4\lambda\) です。この関係から、波長 \(\lambda\) は距離 \(d\) を4で割ったものになります。
次に速さ \(v\) ですが、速さは「振動数 \(f\) × 波長 \(\lambda\)」で求められます。振動数 \(f\) は「1 ÷ 周期 \(T\)」なので、\(f = 1/T\) です。これらを掛け合わせることで、速さ \(v\) が計算できます。
この波の波長 \(\lambda\) は \(\displaystyle\frac{d}{4}\) [m]、波の速さ \(v\) は \(\displaystyle\frac{d}{4T}\) [m/s] です。
単位もそれぞれ長さの単位 [m]、速さの単位 [m/s] となっており、物理的に正しいことが確認できます。図から情報を正確に読み取ることができれば、基本的な公式で解ける問題です。
問(2)
思考の道筋とポイント
点P\(_1\), P\(_2\), P\(_3\) が強め合いの位置か弱め合いの位置かを判断します。問題文に特に断りがない場合、波源A, Bは同位相で振動していると考えます。同位相の波源から出た波が重なる時、山と山、あるいは谷と谷が重なれば強め合い、山と谷が重なれば弱め合います。図の実線は波の山を表しているので、実線と実線の中間点が谷の位置になります。
この設問における重要なポイント
- 波源が同位相であると仮定すること(問題文に指定がないため)。
- 図中の実線が「山」を表し、実線と実線の中間が「谷」を表すことを理解すること。
- 山と山、谷と谷の重なり \(\rightarrow\) 強め合い。
- 山と谷の重なり \(\rightarrow\) 弱め合い。
具体的な解説と立式
波源A, Bは同位相で振動しているものとして考えます。図に描かれている実線の同心円は、各波源から広がる波の「山」の位置を示しています。
- 点P\(_1\): 図を見ると、点P\(_1\) は波源Aからの山(実線)と波源Bからの山(実線)がちょうど重なっている点です。山と山が重なっているので、ここは強め合いの位置となります。
- 点P\(_2\): 図を見ると、点P\(_2\) は波源Aからの波の谷(実線と実線の中間地点)と、波源Bからの波の山(実線上)が重なっている点です。山と谷が重なっているので、ここは弱め合いの位置となります。
- 点P\(_3\): 図を見ると、点P\(_3\) は波源Aからの波の谷(実線と実線の中間地点)と、波源Bからの波の谷(実線と実線の中間地点)が重なっている点です。谷と谷が重なっているので、ここは強め合いの位置となります。
この設問では、図を正確に読み取り、波の重ね合わせの基本ルールを適用することが求められます。立式は特にありません。
使用した物理公式
- 波の重ね合わせの原理
この設問は図の読み取りによる定性的な判断が中心であり、数値計算や数式を用いた計算過程はありません。
- P\(_1\)点について: 図を見てください。P\(_1\)点は、Aから来た波の山(太い線)と、Bから来た波の山(太い線)がちょうど出会っています。山と山が重なると、波は大きく振動するので「強め合い」ます。
- P\(_2\)点について: P\(_2\)点は、Aから来た波の谷(太い線と太い線の中間)と、Bから来た波の山(太い線)が出会っています。山と谷が重なると、互いに打ち消し合うので「弱め合い」ます。
- P\(_3\)点について: P\(_3\)点は、Aから来た波の谷と、Bから来た波の谷が出会っています。谷と谷が重なると、波は大きく振動するので「強め合い」ます。
各点の強め合い・弱め合いの判断は以下の通りです。
P\(_1\): 強め合い
P\(_2\): 弱め合い
P\(_3\): 強め合い
これは、模範解答とも一致しており、図の丁寧な読み取りと干渉の基本原理の理解が鍵となります。
問(3)
思考の道筋とポイント
点A, Bから各点P\(_1\), P\(_2\), P\(_3\) までの距離の差(経路差)を、波長 \(\lambda\) を用いて表します。図の同心円(山)を利用して、各波源からの距離が波長 \(\lambda\) の何倍になっているかを読み取ります。円と円の中間は、\(0.5\lambda\) ずれていると考えます。
この設問における重要なポイント
- 波源A, Bからの距離を、図の同心円(山)の数を数えて \(\lambda\) の倍数として正確に読み取ること。
- 円と円の中間は、半波長 (\(0.5\lambda\)) ずれていると考えること。
- 距離の差を計算する際に、符号に注意すること(AP – BP の順序)。
- 問(2)の結果(強め合い・弱め合い)と、ここで計算される経路差が干渉条件を満たしているかを確認すると、理解が深まる。
具体的な解説と立式
波源A, Bから各点までの距離を、図に描かれた波の山(同心円)の数をもとに、波長 \(\lambda\) を単位として読み取ります。波源自身が0番目の山(中心)と考えます。
- 点P\(_1\)について:
- 波源AからP\(_1\)までの距離 AP\(_1\): 図から、Aを中心とする4番目の山の線上にあるため、\(AP_1 = 4\lambda\)。
- 波源BからP\(_1\)までの距離 BP\(_1\): 図から、Bを中心とする2番目の山の線上にあるため、\(BP_1 = 2\lambda\)。
したがって、距離の差 AP\(_1\) – BP\(_1\) は、
$$
\begin{aligned}
AP_1 – BP_1 &= 4\lambda – 2\lambda
\end{aligned}
$$ - 点P\(_2\)について:
- 波源AからP\(_2\)までの距離 AP\(_2\): 図から、Aを中心とする2番目の山と3番目の山の中間にあるため、\(AP_2 = 2.5\lambda = \displaystyle\frac{5}{2}\lambda\)。
- 波源BからP\(_2\)までの距離 BP\(_2\): 図から、Bを中心とする3番目の山の線上にあるため、\(BP_2 = 3\lambda\)。
したがって、距離の差 AP\(_2\) – BP\(_2\) は、
$$
\begin{aligned}
AP_2 – BP_2 &= \frac{5}{2}\lambda – 3\lambda
\end{aligned}
$$ - 点P\(_3\)について:
- 波源AからP\(_3\)までの距離 AP\(_3\): 図から、Aを中心とする2番目の山と3番目の山の中間にあるため、\(AP_3 = 2.5\lambda = \displaystyle\frac{5}{2}\lambda\)。
- 波源BからP\(_3\)までの距離 BP\(_3\): 図から、Bを中心とする3番目の山と4番目の山の中間にあるため、\(BP_3 = 3.5\lambda = \displaystyle\frac{7}{2}\lambda\)。
したがって、距離の差 AP\(_3\) – BP\(_3\) は、
$$
\begin{aligned}
AP_3 – BP_3 &= \frac{5}{2}\lambda – \frac{7}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 特になし(図からの読み取りと算術計算)
「具体的な解説と立式」で立てた式に従って、各距離の差を計算します。
- AP\(_1\) – BP\(_1\):
$$
\begin{aligned}
AP_1 – BP_1 &= 4\lambda – 2\lambda \\[2.0ex]
&= 2\lambda
\end{aligned}
$$ - AP\(_2\) – BP\(_2\):
$$
\begin{aligned}
AP_2 – BP_2 &= \frac{5}{2}\lambda – 3\lambda \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}\lambda – \frac{6}{2}\lambda \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$ - AP\(_3\) – BP\(_3\):
$$
\begin{aligned}
AP_3 – BP_3 &= \frac{5}{2}\lambda – \frac{7}{2}\lambda \\[2.0ex]
&= -\frac{2}{2}\lambda \\[2.0ex]
&= -\lambda
\end{aligned}
$$
- P\(_1\)点: Aからは4番目の山の線上なので距離は \(4\lambda\)。Bからは2番目の山の線上なので距離は \(2\lambda\)。その差は \(4\lambda – 2\lambda = 2\lambda\)。
- P\(_2\)点: Aからは2番目と3番目の山の間なので距離は \(2.5\lambda\)。Bからは3番目の山の線上なので距離は \(3\lambda\)。その差は \(2.5\lambda – 3\lambda = -0.5\lambda\) (つまり \(-\frac{1}{2}\lambda\))。
- P\(_3\)点: Aからは2番目と3番目の山の間なので距離は \(2.5\lambda\)。Bからは3番目と4番目の山の間なので距離は \(3.5\lambda\)。その差は \(2.5\lambda – 3.5\lambda = -\lambda\)。
各点までの距離の差は以下の通りです。
- AP\(_1\) – BP\(_1\) = \(2\lambda\)
- AP\(_2\) – BP\(_2\) = \(-\displaystyle\frac{1}{2}\lambda\)
- AP\(_3\) – BP\(_3\) = \(-\lambda\)
これらの結果と問(2)の判断を照らし合わせると、P\(_1\)とP\(_3\)は経路差が波長の整数倍で強め合い、P\(_2\)は経路差が波長の半整数倍で弱め合っており、同位相波源の干渉条件と完全に一致します。計算は正しいと考えられます。
問(4)
思考の道筋とポイント
線分ABを横切り、波源Aの最も近くを通る強め合いの線を図に描き入れます。波源A, Bは同位相で振動していると考えます。強め合いの線(腹線)は、経路差 \(|AP – BP| = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\)) を満たす点の集まりです。図には山の線が描かれているので、Aからの山の線とBからの山の線の交点を結ぶことで強め合いの線を描くことができます。「波源Aの最も近く」かつ「線分ABを横切る」という条件を満たす線を探します。
この設問における重要なポイント
- 同位相の波源による強め合いの条件 \(|AP – BP| = m\lambda\) を理解していること。
- 図中の山の線の交点が強め合いの点であることを理解し、それらを滑らかに結んで強め合いの線(腹線)を描くこと。
- 「波源Aの最も近く」かつ「線分ABを横切る」という条件を解釈し、適切な \(m\) の値に対応する線を選ぶこと。
具体的な解説と立式
波源A, Bが同位相で振動しているとき、強め合いの線は、波源Aからの距離 AP と波源Bからの距離 BP の差の絶対値が波長 \(\lambda\) の整数倍となる点の集まりです。
$$|AP – BP| = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)$$
図中の同心円は波の山の位置を示しているので、異なる波源からの山の線が交わる点は、山と山が重なり強め合う点となります。これらの点を滑らかに結ぶと強め合いの線(腹線)が得られます。
線分ABの長さは \(d=4\lambda\) です。AB間に存在する強め合いの線は、経路差 \(AP-BP\) が \(0, \pm\lambda, \pm 2\lambda, \pm 3\lambda\) となる線です。
- \(AP-BP = 0\) (\(m=0\)): 線分ABの垂直二等分線。
- \(AP-BP = \pm\lambda\) (\(m=1\))
- \(AP-BP = \pm 2\lambda\) (\(m=2\))
- \(AP-BP = \pm 3\lambda\) (\(m=3\))
「波源Aの最も近くを通る強め合いの線」で、かつ「線分ABを横切る」ものを探します。これは、\(m\) の絶対値が最も大きいもので、Aに近い側の線、つまり \(AP-BP = -3\lambda\) (すなわち \(BP-AP = 3\lambda\)) の線が該当します。
作図の際は、この条件を満たす山の交点を拾い、滑らかに結びます。
使用した物理公式
- 同位相の波源による強め合いの条件: \(|AP – BP| = m\lambda\)
この設問は作図問題であるため、直接的な数値計算はありません。強め合いの条件を理解し、図から該当する線を選んで描くことが求められます。
強め合う点を結んだ線を描きます。強め合う点とは、Aからの波の山とBからの波の山がちょうど重なる点です。図には山の線が描かれているので、Aからの山の線とBからの山の線の交点を見つけて結んでいきましょう。
問題の指示は「線分ABを横切り、波源Aの最も近くを通る」線です。AとBの間には、経路差が \(0, \pm\lambda, \pm 2\lambda, \pm 3\lambda\) となる強め合いの線が双曲線として現れます。このうち、Aに最も近いのは、経路差の絶対値が最も大きい \(3\lambda\) となる線のうち、A側にあるものです。これは、Bからの距離がAからの距離よりも \(3\lambda\) だけ長い (\(BP – AP = 3\lambda\)) 線に相当します。
作図問題です。強め合いの条件を正しく理解し、図から対応する点(山の交点)を拾い、滑らかに線を引くことが求められます。模範解答に示されている赤い線は、経路差が \(BP-AP = 3\lambda\) となる強め合いの線であり、これが「線分ABを横切り、波源Aの最も近くを通る」という条件を満たします。
問(5)
思考の道筋とポイント
波源AとBを逆位相で振動させた場合、強め合いと弱め合いの条件が同位相の場合と入れ替わります。つまり、逆位相の波源からの波が弱め合う条件は、経路差 \(|AP – BP|\) が波長 \(\lambda\) の整数倍になるときです: \(|AP – BP| = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))。
線分AB間に現れるこれらの弱め合いの線の本数を数えます(波源A, Bは除く)。
線分ABの長さは \(d = 4\lambda\) です。線分AB上の任意の点Pについて、Aからの距離を \(x = AP\) とすると、\(BP = 4\lambda – x\) となります。経路差は \(AP – BP = x – (4\lambda – x) = 2x – 4\lambda\)。
この経路差が \(m\lambda\) に等しいとし、\(0 < x < 4\lambda\) の範囲で整数 \(m\) がいくつ存在するかを調べます。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の場合、弱め合いの条件が \(|AP – BP| = m\lambda\) となることを理解すること(同位相の強め合いの条件と同じ形)。
- 線分AB上で経路差がどのように変化するかを考えること。
- 条件を満たす整数 \(m\) の個数を正しく数えること。
- 「波源は除く」という条件を考慮し、\(x\) の範囲 (\(0 < x < 4\lambda\)) を設定すること。
具体的な解説と立式
波源AとBが逆位相で振動する場合、2つの波が弱め合う条件は、点Pまでの経路差 \(|AP – BP|\) が波長 \(\lambda\) の整数倍になるときです。
$$|AP – BP| = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)$$
線分ABの長さは \(d = 4\lambda\) です。線分AB上の点Pを考え、Aからの距離を \(AP = x\) とします。
このとき、Bからの距離は \(BP = d – x = 4\lambda – x\) です。
点Pは波源A, Bを除く線分AB上にあるため、\(x\) の範囲は \(0 < x < 4\lambda\) です。
経路差 \(\Delta L = AP – BP\) を計算すると、
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= x – (4\lambda – x) \\[2.0ex]
&= 2x – 4\lambda
\end{aligned}
$$
弱め合いの条件は \(\Delta L = m\lambda\) (ここで \(m\) は整数)なので、
$$
\begin{aligned}
2x – 4\lambda &= m\lambda
\end{aligned}
$$
この \(x\) が \(0 < x < 4\lambda\) の範囲にあるような整数 \(m\) を見つけます。
まず、式を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2x &= (m+4)\lambda \\[2.0ex]
x &= \frac{m+4}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
次に、この \(x\) を \(0 < x < 4\lambda\) の条件に代入します。
$$
\begin{aligned}
0 < \frac{m+4}{2}\lambda < 4\lambda \end{aligned} $$ \(\lambda > 0\) なので、両辺を \(\lambda\) で割り、2を掛けると、
$$
\begin{aligned}
0 < m+4 < 8
\end{aligned}
$$
各辺から4を引くと、
$$
\begin{aligned}
-4 < m < 4
\end{aligned}
$$
この不等式を満たす整数 \(m\) を求めます。
使用した物理公式
- 逆位相の波源による弱め合いの条件: \(|AP – BP| = m\lambda\)
「具体的な解説と立式」で導出した不等式 \(-4 < m < 4\) を満たす整数 \(m\) を数え上げます。
整数 \(m\) は、
\(m = -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3\)
の7個存在します。
それぞれの \(m\) の値に対して、線分AB間に1本の弱め合いの線が対応して現れます。
AとBが逆のタイミングで振動する(逆位相)と、弱め合う条件は、Aからの距離とBからの距離の差がちょうど \(\lambda\) の整数倍(\(0, \pm\lambda, \pm 2\lambda, \dots\))になるときです。
AとBの間の線の上で考えます。Aからの距離を \(x\) とすると、Bからの距離は \(4\lambda – x\) です。
距離の差は \(x – (4\lambda – x) = 2x – 4\lambda\)。これが弱め合いの条件 \(m\lambda\) に等しいとします。
この式を解いて \(x\) の範囲(0より大きく \(4\lambda\) より小さい)を考えると、条件を満たす整数 \(m\) は -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3 の7つになります。したがって、AとBの間には7本の弱め合いの線が現れます。
AとBを逆位相で振動させると、AB間に現れる弱め合いの線の本数は7本です。
これは、同位相の波源の場合にAB間に現れる「強め合い」の線の本数と同じになります。
\(m\) が取りうる値の範囲を正しく求め、その範囲に含まれる整数の個数を数えることができれば正解にたどり着けます。模範解答とも一致しています。
思考の道筋とポイント
2つの波源から逆向きに進む同じ波が重なると、定常波ができます。特に線分AB上では、Aから右に進む波とBから左に進む波が干渉し、定常波が形成されます。
波源A, Bが逆位相で振動する場合、波源間の中点(\(x=2\lambda\))は、経路差が0なので弱め合いの点、つまり定常波の「節」になります。
定常波では、隣り合う節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
この性質を利用して、全長 \(4\lambda\) の線分AB間に、節が何個できるかを数えます。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の波源間には、中点を節とする定常波ができることを理解する。
- 定常波の節と節の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用する。
- 「波源は除く」という条件を考慮する。
具体的な解説と立式
波源A, Bが逆位相で振動するとき、線分AB間には定常波ができます。
逆位相なので、線分ABの中点(Aから \(2\lambda\) の位置)は、経路差が0となり、常に逆位相の波が重なるため弱め合いの点、すなわち定常波の「節」となります。
定常波の節は、半波長 \(\lambda/2\) ごとに現れます。
中点 \(x=2\lambda\) を基準に、\(\lambda/2\) の間隔で節の位置を考えます。
節の位置 \(x\) は、
$$x = 2\lambda \pm n \cdot \frac{\lambda}{2} \quad (n = 0, 1, 2, \dots)$$
と表せます。
これらの節が、波源を除く線分AB上、つまり \(0 < x < 4\lambda\) の範囲にいくつ存在するかを数えます。
使用した物理公式
- 定常波の節の間隔: \(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
中点 \(x=2\lambda\) が節です (\(n=0\))。
ここから左右に \(\lambda/2\) の間隔で節を探します。
- \(n=1\): \(x = 2\lambda \pm 1 \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2} \rightarrow x = 1.5\lambda, 2.5\lambda\)
- \(n=2\): \(x = 2\lambda \pm 2 \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2} \rightarrow x = \lambda, 3\lambda\)
- \(n=3\): \(x = 2\lambda \pm 3 \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2} \rightarrow x = 0.5\lambda, 3.5\lambda\)
- \(n=4\): \(x = 2\lambda \pm 4 \cdot \displaystyle\frac{\lambda}{2} \rightarrow x = 0, 4\lambda\)
\(x=0\) と \(x=4\lambda\) は波源の位置なので、問題の条件「波源は除く」により、これらは数えません。
したがって、\(0 < x < 4\lambda\) の範囲にある節は、
\(0.5\lambda, \lambda, 1.5\lambda, 2\lambda, 2.5\lambda, 3\lambda, 3.5\lambda\)
の7点です。
よって、弱め合いの線の本数は7本となります。
AとBが逆のタイミングで振動すると、AとBの間には「定常波」という、その場で振動しているように見える波ができます。弱め合う線とは、この定常波の全く振動しない点、つまり「節」のことです。
逆位相の場合、ちょうど真ん中が節になります。そして、節は半波長 \(\lambda/2\) ごとに並びます。
AとBの間の長さは \(4\lambda\) なので、この間に \(\lambda/2\) 間隔の点がいくつ並ぶかを数えればよいのです。真ん中から左右に数えていくと、AとB自身を除いて7つの節が見つかります。
結果は最初の解法と完全に一致します。定常波のモデルを考えることで、不等式を解くことなく、より物理的・直感的に答えを導くことができます。この考え方は、特に波源間の距離が波長の簡単な倍数で与えられている場合に非常に有効です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の基本特性と干渉原理の統合的理解:
- 核心: この問題は、波の基本的な性質(波長 \(\lambda\)、周期 \(T\)、速さ \(v\) の関係)と、複数の波が重なり合うことで生じる「干渉」という現象を組み合わせて解く、典型的な問題です。特に、2つの波源からの距離の差(経路差)が、干渉の結果(強め合いか弱め合いか)を決定するという原理が中心にあります。
- 理解のポイント:
- 波の基本式: \(v = f\lambda\) と \(f = 1/T\) は、波を扱う上での基本中の基本です。これらを自在に使いこなせることが第一歩です。
- 経路差の重要性: 2つの波が点Pで出会うとき、それぞれの波が波源から進んできた距離が異なります。この「経路差」が波長の整数倍か、半整数倍(\(0.5\lambda, 1.5\lambda, \dots\))かによって、山と山(谷と谷)が出会うか、山と谷が出会うかが決まります。
- 位相関係の決定力: 波源が同じタイミングで振動する(同位相)か、逆のタイミングで振動する(逆位相)かで、強め合いと弱め合いの条件がそっくり入れ替わります。この違いを正確に区別することが、干渉問題を解く上での最大の鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光の干渉(ヤングの実験): 2つのスリットを通過した光がスクリーン上で干渉縞を作る現象です。水面波の干渉と全く同じ原理で、経路差によって明線(強め合い)と暗線(弱め合い)の位置が決まります。
- 音波の干渉: 2つのスピーカーから同じ音を出したときに、場所によって音が大きく聞こえたり小さく聞こえたりする現象も、経路差による干渉で説明できます。
- 定常波: 本問の問(5)の別解で用いたように、逆向きに進む同じ波が重なると定常波ができます。干渉と定常波は表裏一体の現象であり、特に弦の振動や気柱の共鳴といった問題に応用されます。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の情報を最優先で確認: まず問題文から「波源の数」「位置関係」「位相関係(同位相か逆位相か)」を把握します。これが全ての出発点です。
- 図から物理量を読み取る: 図が与えられている場合、それは情報の宝庫です。本問のように、図から「波長 \(\lambda\)」や「各点までの距離」を読み取ることができないか、注意深く観察します。
- 「経路差」を計算する道筋を探す: 干渉の問題は、いかにして「経路差」を求めるかにかかっています。三平方の定理を使ったり、近似式を使ったり(光の干渉で頻出)、図から直接読み取ったりと、問題に応じた計算方法を見抜くことが重要です。
- 定常波のモデルが使えないか検討する: 特に2つの波源を結ぶ線上の干渉を考える場合、定常波の腹と節の考え方を使うと、計算が大幅に簡略化できることがあります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 同位相と逆位相の条件混同:
- 誤解: どちらの条件が強め合いで、どちらが弱め合いだったか混乱してしまう。
- 対策: 「同位相なら、経路差0(同じ距離)で強め合う」という最も基本的な状況を基準に覚える。そうすれば、経路差が \(m\lambda\) のときに強め合うのが同位相、と連想できます。逆位相はその逆、と整理しましょう。
- 図の線の解釈ミス:
- 誤解: 図に描かれた線が「山」なのか「波の波面」なのかを曖昧に解釈し、隣り合う線との間隔を \(\lambda\) なのか \(\lambda/2\) なのか間違える。
- 対策: 問題文を精読し、「山の位置を描いたものである」といった記述を確認する。山と山の間隔は \(\lambda\)、山と谷の間隔は \(\lambda/2\) であることを常に意識する。
- 経路差の計算での符号ミス:
- 誤解: \(AP-BP\) を計算すべきところで \(BP-AP\) を計算してしまい、符号が逆になる。
- 対策: 干渉条件は経路差の「絶対値」で定義されているため、最終的な強弱の判断には影響しないことが多いですが、問(3)のように経路差そのものを問われた場合は致命的です。どちらからどちらを引くか、問題の指示をよく確認しましょう。
- 整数 \(m\) の数え間違い:
- 誤解: 問(5)のように、条件を満たす整数 \(m\) の個数を数える際に、範囲の端を含めるか含めないか(例: \(-4 < m < 4\) と \(-4 \le m \le 4\) の違い)でミスをする。
- 対策: 「波源は除く」といった条件を、不等式を立てる際に \(<\) なのか \(\le\) なのかに正確に反映させる。求めた範囲に含まれる整数を、焦らず一つずつ書き出して数えるのが確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 波の基本式 (\(v = f\lambda\)):
- 選定理由: 問題に「波」が登場し、その速さ、振動数(周期)、波長といった基本的な物理量を扱うため、必須の法則です。
- 適用根拠: 問(1)で波長と周期が与えられ(または求められ)、速さを問われているという、まさにこの公式を使うための状況設定がされているため。
- 干渉条件式 (\(|AP – BP| = m\lambda\) など):
- 選定理由: 問題が「2つの波源」による「強め合い・弱め合い」を問うているため。これは干渉現象そのものであり、その結果を定量的に記述するのがこの条件式です。
- 適用根拠:
- 問(2), (3)では、特定の点の強弱を判断したり、経路差を計算したりするために適用します。
- 問(4), (5)では、この条件を満たす点の「集合(線)」や「個数」を問われており、条件式を一般化して考える必要があります。
- 特に、問(5)で「逆位相」と指定されたことで、同位相とは異なる条件式を選択する必要が生じます。
- 定常波の節の間隔 (\(\lambda/2\)):
- 選定理由: 問(5)の別解のように、2つの波源を結ぶ線上の干渉を考える場合、より直感的な物理モデルとして定常波を考えることができます。
- 適用根拠: 逆向きに進む同じ波が重なっているという状況が、定常波が生成される条件そのものであるため。弱め合いの点=節、と読み替えることで、この考え方を適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図の情報を丁寧に数える:
- 特に注意すべき点: 問(1)や問(3)での波長の数え間違いは、その後の設問すべてに影響します。同心円が何番目の山(または谷)なのか、指でなぞりながら慎重に数える。
- 日頃の練習: 普段から図やグラフを読み取る問題に多く触れ、情報を正確に抽出する訓練をする。
- 分数の計算を正確に:
- 特に注意すべき点: 問(3)のように、\(2.5\lambda\) のような小数を含む計算が出てきた場合、安易に暗算せず、\(\displaystyle\frac{5}{2}\lambda – \displaystyle\frac{6}{2}\lambda\) のように通分して計算する癖をつける。
- 日頃の練習: 物理の計算では分数が頻出します。数学の計算練習を怠らず、迅速かつ正確に処理できるようにしておく。
- 不等式の立式と解法:
- 特に注意すべき点: 問(5)で、\(0 < x < 4\lambda\) という物理的な条件を、\(m\) に関する不等式 \(-4 < m < 4\) へと正しく変形するプロセス。不等号の向きや、両辺に数を掛けたり割ったりする際の処理を間違えないようにする。
- 日頃の練習: 数学Iで学習する不等式の解法を復習しておく。特に、文字係数で割るときの符号など、基本的なルールを再確認する。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 問(3) 経路差と問(2) 強弱判断の整合性:
- 吟味の視点: 問(3)で計算した経路差が、問(2)で判断した強め合い・弱め合いの条件と一致しているかを確認する。例えば、P\(_1\)は強め合い \(\rightarrow\) 経路差は \(2\lambda\)(\(m=2\) の整数倍)。P\(_2\)は弱め合い \(\rightarrow\) 経路差は \(-\lambda/2\)(\(m=0\) の半整数倍)。この確認作業は、両方の設問の答えが正しいことの強力な裏付けになります。
- 問(5) 弱め合いの線の本数:
- 吟味の視点: 波源間の距離は \(4\lambda\)。定常波の節の間隔は \(\lambda/2\)。したがって、\(4\lambda\) の中に \(\lambda/2\) は \(4\lambda \div (\lambda/2) = 8\) 間隔入る。点の数は間隔より1つ少ないことが多いので、7本というのは非常に妥当な数だと直感的に判断できます。
- 問(3) 経路差と問(2) 強弱判断の整合性:
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- もし波源が同位相だったら、問(5)の答えはどうなるか? この場合、弱め合いの条件は \(|AP-BP|=(m+1/2)\lambda\) となります。同様に計算すると、\(-4.5 < m < 3.5\) となり、\(m=-4, -3, \dots, 3\) の8個の整数が該当し、8本となります。このように、条件を変えて考えてみることで、理解が深まります。
- もし波源間の距離 \(d\) が \(\lambda\) だったらどうなるか? 逆位相の場合、AB間に現れる弱め合いの線は、中点の \(m=0\) の1本だけになるはずです。式で確認すると \(-1 < m < 1\) となり、\(m=0\) の1個だけ。確かに一致します。
問題92 (センター試験)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、2つのスリットを通過した水面波が干渉する現象について扱います。波の干渉による強め合い・弱め合いの条件、そしてそれらが作る模様(干渉縞)の性質を理解することが重要です。特に、スリット間の距離や波長が干渉の様子にどのように影響するかを考察します。
- 2つのスリットS1およびS2の間隔: \(d = 5 \, \text{cm}\)
- 観測面: S1を通り、S1とS2を結ぶ直線に垂直な直線ST
- 直線ST上で波が弱め合う点: 2つ(A1, A2)
- 点A1: S1から遠い方の弱め合い点
- 点A2: S1に近い方の弱め合い点
- S1からA1までの距離: \(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\)
- (1) 距離 \(S_2A_1\) と \(S_1A_1\) の差、および距離 \(S_2A_2\) と \(S_1A_2\) の差が、それぞれ波長の何倍か。
- (2) この水面波の波長 \(\lambda\) は何cmか。
- (3) 水面上には強め合いの線(双曲線や直線)が何本生じているか。
- (4) スリットS1を固定しS2を動かしてS1S2間の間隔を広げたとき:
- 直線STでの、水位がほとんど変化しない点の個数は増すか減るか。
- 点A1はS1に近づくか遠ざかるか。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(3) 強め合いの線の本数の別解: 定常波の腹を数える解法
- 主たる解法が、経路差が取りうる値の範囲から条件を満たす整数mを数える代数的なアプローチであるのに対し、別解ではスリットS1S2間にできる定常波の「腹」の数を数える、より物理モデルに基づいたアプローチで解きます。
- 問(3) 強め合いの線の本数の別解: 定常波の腹を数える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 波の干渉と定常波が密接に関連する現象であることを理解できます。
- 計算の簡略化と直感性: 複雑な不等式を解く代わりに、「全長dの中に、間隔λ/2の点がいくつ並ぶか」という視覚的で直感的な方法で解くことができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「波の干渉」です。2つのスリットを通過した波が重なり合うことで生じる、強め合い・弱め合いの現象を扱います。経路差と波長の関係から干渉条件を正しく適用し、幾何学的な考察と組み合わせることが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の干渉条件: 2つの波源(この問題ではスリット)からの距離の差(経路差)が、波が強め合うか弱め合うかを決定します。
- 弱め合いの条件: 経路差が波長の半整数倍、つまり \(|L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))となる点で波は弱め合います。
- 強め合いの条件: 経路差が波長の整数倍、つまり \(|L_1 – L_2| = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))となる点で波は強め合います。
- 三平方の定理: 問題の幾何学的な配置から、経路差を具体的に計算するために用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1)では、弱め合いの条件と問題文の情報から、2つの弱め合い点 A\(_1\), A\(_2\) がそれぞれ何番目の干渉縞に対応するのかを特定します。
- 問(2)では、問(1)の結果と、三平方の定理を用いて具体的な経路差を計算し、波長 \(\lambda\) を求めます。
- 問(3)では、強め合いの条件と、経路差が取りうる最大値(スリット間隔)から、強め合いの線の本数を数え上げます。
- 問(4)では、スリット間隔という条件が変化したときに、干渉の様子がどのように変わるかを数式や物理的な考察から導きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
点A\(_1\)およびA\(_2\)は、波が弱め合っている点です。弱め合いの条件は、2つの波源S\(_1\), S\(_2\)からの経路差が \(\left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) (ここで \(m = 0, 1, 2, \dots\)) となることです。
問題文には「S\(_1\)から遠い方をA\(_1\)、S\(_1\)に近い方をA\(_2\)」とあり、「水位がほとんど変化しない場所が2つだけ見つかった」とあります。これは、S\(_1\)S\(_2\)の中央を通る強め合いの線(経路差0、\(m=0\)の腹線)から数えて、直線ST上で観測される弱め合いの線(節線)が2本あり、それらがA\(_1\)とA\(_2\)に対応することを意味します。
一般に、整数\(m\)の値が小さいほど、S\(_1\)S\(_2\)の中央線に近い干渉縞になります。図から、S\(_1\)から遠い方のA\(_1\)が、中央線から見て1番目(\(m=0\))の節線上にあり、S\(_1\)に近い方のA\(_2\)が2番目(\(m=1\))の節線上にあると判断できます。
また、図から、点A\(_1\), A\(_2\)ともにS\(_1\)よりもS\(_2\)から遠い位置にあるため、経路差は \(S_2P – S_1P\) となります。
この設問における重要なポイント
- 弱め合いの条件式: \(|S_2P – S_1P| = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\), \(m=0, 1, 2, \dots\)
- 問題文の「S\(_1\)から遠い方A\(_1\)、近い方A\(_2\)」および「2つだけ見つかった」という情報から、A\(_1\)が\(m=0\)、A\(_2\)が\(m=1\)の弱め合いに対応すると判断すること。
- 図から、経路差の具体的な形(この場合は \(S_2P – S_1P\))を読み取ること。
具体的な解説と立式
点Pで波が弱め合う条件は、2つの波源S\(_1\)、S\(_2\)からの経路差が波長\(\lambda\)の半整数倍であることです。図より点A\(_1\), A\(_2\)はS\(_1\)よりもS\(_2\)から遠いため、経路差は \(S_2P – S_1P\) と書けます。
$$
\begin{aligned}
S_2P – S_1P &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
点A\(_1\)はS\(_1\)から遠い方の弱め合いの点で、これは最も小さい\(m\)、つまり \(m=0\) に対応します。したがって、距離 \(S_2A_1\) と \(S_1A_1\) の差に関する式は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 &= \left(0 + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
点A\(_2\)はS\(_1\)に近い方の弱め合いの点で、これは次に小さい\(m\)、つまり \(m=1\) に対応します。したがって、距離 \(S_2A_2\) と \(S_1A_2\) の差に関する式は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
S_2A_2 – S_1A_2 &= \left(1 + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 弱め合いの条件: \(|S_2P – S_1P| = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\)
式①より、点A\(_1\)における経路差は、
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 &= \frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
これは、距離の差が波長の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍であることを示しています。
式②より、点A\(_2\)における経路差は、
$$
\begin{aligned}
S_2A_2 – S_1A_2 &= \frac{3}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
これは、距離の差が波長の \(\displaystyle\frac{3}{2}\) 倍であることを示しています。
波が弱め合う場所というのは、2つのスリット(波源)からその場所までの「距離の差」が、波長の0.5倍、1.5倍、2.5倍…という中途半端な値になるところです。問題文を読むと、点A\(_1\)はこれらの条件のうち一番目(距離の差が波長の0.5倍)、点A\(_2\)は二番目(距離の差が波長の1.5倍)に当てはまると考えられます。
距離S\(_2\)A\(_1\)とS\(_1\)A\(_1\)の差は波長の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、距離S\(_2\)A\(_2\)とS\(_1\)A\(_2\)の差は波長の \(\displaystyle\frac{3}{2}\) 倍となります。これは、A\(_1\)がS\(_1\)S\(_2\)の中央線から数えて1番目の弱め合いの線上にあり、A\(_2\)が2番目の弱め合いの線上にあることを意味しており、物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
問(1)の結果から、点A\(_1\)における経路差は \(S_2A_1 – S_1A_1 = \frac{1}{2}\lambda\) です。
与えられた条件は \(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\) と、スリット間隔 \(S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\) です。
問題文「S\(_1\)を通り、S\(_1\)とS\(_2\)を結ぶ直線に垂直な直線ST」と図から、\(\triangle S_1S_2A_1\) は \(\angle S_2S_1A_1 = 90^\circ\) の直角三角形であると解釈できます。この直角三角形に三平方の定理を適用して \(S_2A_1\) の長さを求め、経路差の式から波長 \(\lambda\) を算出します。
この設問における重要なポイント
- 問(1)で得られたA\(_1\)における経路差の式 (\(S_2A_1 – S_1A_1 = \frac{1}{2}\lambda\)) を利用すること。
- 図と問題文の条件から、\(\triangle S_1S_2A_1\) が直角三角形であると判断し、三平方の定理を正しく適用して辺の長さを計算すること。
具体的な解説と立式
問(1)より、点A\(_1\)における経路差の式は次の通りです。
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 &= \frac{1}{2}\lambda \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
問題の条件から \(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\)、スリットS\(_1\)とS\(_2\)の間隔は \(S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\) です。
図より、\(\triangle S_1S_2A_1\) は、辺S\(_1\)S\(_2\)と辺S\(_1\)A\(_1\)が直角をなす直角三角形と考えられます(\(\angle S_2S_1A_1 = 90^\circ\))。
三平方の定理より、斜辺S\(_2\)A\(_1\)の長さは次のように関係付けられます。
$$
\begin{aligned}
(S_2A_1)^2 &= (S_1S_2)^2 + (S_1A_1)^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
この式④に \(S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\) と \(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\) を代入することで \(S_2A_1\) を求め、その結果を式③に代入することで波長 \(\lambda\) を求めることができます。
使用した物理公式
- 弱め合いの条件: \(S_2A_1 – S_1A_1 = \frac{1}{2}\lambda\) (問(1)の結果)
- 三平方の定理: \(a^2 + b^2 = c^2\)
まず、式④に \(S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\)、\(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
(S_2A_1)^2 &= (5)^2 + (12)^2 \\[2.0ex]
&= 25 + 144 \\[2.0ex]
&= 169
\end{aligned}
$$
\(S_2A_1 > 0\) なので、
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 &= \sqrt{169} \\[2.0ex]
&= 13 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
次に、求めた \(S_2A_1 = 13 \, \text{cm}\) と与えられた \(S_1A_1 = 12 \, \text{cm}\) の値を式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
13 – 12 &= \frac{1}{2}\lambda \\[2.0ex]
1 &= \frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
\(\lambda\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 2 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
まず、スリットS\(_1\)、スリットS\(_2\)、そして点A\(_1\)の3つの点を結んでできる三角形を考えます。問題の図と条件から、この三角形はS\(_1\)のところが直角になっている特別な直角三角形です。S\(_1\)からS\(_2\)までの長さが5cm、S\(_1\)からA\(_1\)までの長さが12cmとわかっているので、数学の「三平方の定理」を使うと、S\(_2\)からA\(_1\)までの長さを計算できます。計算すると13cmになります。
問(1)で、点A\(_1\)では「S\(_2\)からの距離とS\(_1\)からの距離の差が、波長のちょうど半分(0.5倍)」になることがわかっています。そこで、「\(13 \, \text{cm} – 12 \, \text{cm}\) = 波長の0.5倍」という式を立てます。これを解くと、波長は2cmであると求められます。
この水面波の波長は \(\lambda = 2 \, \text{cm}\) です。スリット間隔5cmに対して物理的に妥当な値と言えます。
問(3)
思考の道筋とポイント
水面上にできる強め合いの線(腹線)の数を求めます。強め合いの条件は、経路差 \(|S_2P – S_1P|\) が波長 \(\lambda\) の整数倍、つまり \(m\lambda\) (ここで \(m = 0, \pm 1, \pm 2, \dots\)) となることです。
問(2)で波長 \(\lambda = 2 \, \text{cm}\) とわかりました。スリット間隔は \(d = S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\) です。
経路差 \(|S_2P – S_1P|\) が取りうる最大値は、スリット間隔 \(d\) そのものです。つまり、\(|S_2P – S_1P| \le d\)。
したがって、\(|m\lambda| \le d\) を満たす整数 \(m\) の個数を数えれば、それが強め合いの線の本数になります。
この設問における重要なポイント
- 強め合いの条件式: \(|S_2P – S_1P| = m\lambda\), \(m=0, \pm 1, \pm 2, \dots\)
- 問(2)で求めた波長 \(\lambda = 2 \, \text{cm}\) と、与えられたスリット間隔 \(d = 5 \, \text{cm}\) を使用すること。
- 経路差の最大値がスリット間隔 \(d\) であることから、\(|m\lambda| \le d\) を満たす整数 \(m\) の値を全て数え上げること。\(m=0\) の場合も忘れずに含める。
具体的な解説と立式
水面上で波が強め合う条件は、2つのスリットS\(_1\)、S\(_2\)からの経路差が波長\(\lambda\)の整数倍であることです。
$$
\begin{aligned}
|S_2P – S_1P| &= m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
ここで、\(\lambda = 2 \, \text{cm}\) であり、スリット間隔 \(d = S_1S_2 = 5 \, \text{cm}\) です。
経路差 \(|S_2P – S_1P|\) が取りうる値の範囲は、\(|S_2P – S_1P| \le d\) です。
したがって、強め合いが起こる条件を満たす整数 \(m\) は、次の不等式を満たす必要があります。
$$
\begin{aligned}
m\lambda &\le d
\end{aligned}
$$
この不等式に具体的な値を代入し、\(m\) の取りうる範囲を求めます。
使用した物理公式
- 強め合いの条件: \(|S_2P – S_1P| = m\lambda\)
不等式 \(m\lambda \le d\) に、\(\lambda = 2 \, \text{cm}\) と \(d = 5 \, \text{cm}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m \cdot 2 &\le 5 \\[2.0ex]
m &\le 2.5
\end{aligned}
$$
これを満たす非負整数 \(m\) は、\(m = 0, 1, 2\) です。
強め合いの線は、S\(_1\)S\(_2\)の中央線に対して対称に現れるため、経路差が \(m\lambda\) となる線と \(-m\lambda\) となる線が存在します。
- \(m=0\) の線が1本。
- \(m=1\) と \(m=-1\) に対応する線が2本。
- \(m=2\) と \(m=-2\) に対応する線が2本。
したがって、合計で \(1+2+2 = 5\) 本の強め合いの線ができます。
波が強め合う場所は、2つのスリットからの「距離の差」が「波長の0倍、波長の1倍、波長の2倍…」となるところです。波長は2cm、スリットの間隔は5cmです。この「距離の差」は、スリットの間隔である5cmを超えることはできません。
- 距離の差が \(0 \times 2\,\text{cm} = 0\,\text{cm}\) となる線が1本できます(これはスリットS\(_1\)とS\(_2\)のちょうど真ん中を通るまっすぐな線です)。
- 距離の差が \(\pm 1 \times 2\,\text{cm} = \pm 2\,\text{cm}\) となる線が左右(または上下)に1本ずつ、計2本できます(これらは双曲線です)。
- 距離の差が \(\pm 2 \times 2\,\text{cm} = \pm 4\,\text{cm}\) となる線がさらに外側に1本ずつ、計2本できます(これも双曲線です)。
- 次に距離の差が \(\pm 3 \times 2\,\text{cm} = \pm 6\,\text{cm}\) となりますが、これは最大で5cmしかありえない距離の差を超えてしまうので、このような線はできません。
したがって、全部で \(1 + 2 + 2 = 5\) 本の強め合いの線ができることになります。
水面上には5本の強め合いの線が生じます。これは、\(m=0, \pm 1, \pm 2\) に対応する線であり、物理的に妥当な本数です。
思考の道筋とポイント
スリットS\(_1\)S\(_2\)間には、S\(_1\)とS\(_2\)から出た波が重なり合い、定常波が形成されると考えることができます。強め合いの線は、この定常波の「腹」に対応します。スリットS\(_1\)S\(_2\)の中点は経路差が0なので腹になります。定常波の腹と腹の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。この性質を利用して、スリット間隔 \(d=5 \, \text{cm}\) の中に腹がいくつ存在するかを数えます。
この設問における重要なポイント
- 強め合いの線が定常波の腹に対応することを理解する。
- 定常波の腹と腹の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用する。
- スリット間隔 \(d\) の中に、中点を基準として腹がいくつ並ぶかを数える。
具体的な解説と立式
スリットS\(_1\)S\(_2\)間には定常波が形成され、強め合いの線は定常波の「腹」に対応します。
スリットS\(_1\)S\(_2\)の中点は、経路差が0なので強め合いの点、つまり腹になります。
定常波の腹と腹の間隔は \(\lambda/2\) です。
問(2)より \(\lambda = 2 \, \text{cm}\) なので、腹の間隔は \(\lambda/2 = 1 \, \text{cm}\) です。
スリット間隔は \(d = 5 \, \text{cm}\) なので、中点から左右に \(2.5 \, \text{cm}\) ずつ広がっています。
中点を基準(\(0 \, \text{cm}\))として、左右に \(1 \, \text{cm}\) ごとに腹ができると考え、\(\pm 2.5 \, \text{cm}\) の範囲に存在する腹の数を数えます。
使用した物理公式
- 定常波の腹の間隔: \(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
- 中点に腹が1つ (\(m=0\))。
- 中点から左右に \(1 \, \text{cm}\) の位置に腹が2つ (\(m=\pm 1\))。
- 中点から左右に \(2 \, \text{cm}\) の位置に腹が2つ (\(m=\pm 2\))。
- 次の腹は中点から左右に \(3 \, \text{cm}\) の位置になりますが、これはスリット間隔の範囲 \(\pm 2.5 \, \text{cm}\) を超えてしまいます。
したがって、腹の数は \(1 + 2 + 2 = 5\) 個です。
スリットS\(_1\)とS\(_2\)の間には、波が強め合う点が規則正しく並んだ「定常波」ができます。強め合う線とは、この定常波の最も大きく振動する「腹」のことです。
腹と腹の間隔は、波長の半分、つまり \(2 \, \text{cm} \div 2 = 1 \, \text{cm}\) です。
S\(_1\)とS\(_2\)のちょうど真ん中にまず腹が1つできます。そこから左右に \(1 \, \text{cm}\) ごとに腹ができます。S\(_1\)とS\(_2\)の間は5cmなので、真ん中から左右に2.5cmずつです。
- 真ん中 (0cm)
- 左右に1cmの点 (計2つ)
- 左右に2cmの点 (計2つ)
これらを合計すると、\(1+2+2=5\)個の腹があることになります。
結果は主たる解法と完全に一致します。定常波のモデルを用いることで、不等式を解くことなく、より物理的・直感的に本数を数えることができます。
問(4)
思考の道筋とポイント
スリットS\(_1\)を固定したままS\(_2\)を動かし、S\(_1\)S\(_2\)間の間隔 \(d\) を広げていった場合の影響を考えます。
水位がほとんど変化しない点の個数について:
弱め合いの条件は経路差 \(|S_2P – S_1P| = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) です。スリット間隔 \(d\) が大きくなると、経路差が取りうる最大値も大きくなります。その結果、この条件を満たす整数 \(m\) の最大値も大きくなるため、弱め合いの線(節線)の本数が増加します。直線ST上で観測される弱め合いの点の数も、これに伴って増加すると考えられます。
点A\(_1\)の移動について:
点A\(_1\)は \(m=0\) の弱め合いの点であり、経路差 \(S_2A_1 – S_1A_1 = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda\) を満たします。波長 \(\lambda\) は変わりません。
S\(_1\)を原点\((0,0)\)とし、点A\(_1\)の座標を \((x_1, 0)\) (つまり \(S_1A_1 = x_1\))、新しいS\(_2\)の座標を \((0, d’)\) (ここで \(d’\) は新しいS\(_1\)S\(_2\)間隔) とします。
このとき、\(S_2A_1 = \sqrt{x_1^2 + (d’)^2}\) です。
これらの関係を弱め合いの条件式に代入し、\(d’\) が増加したときに \(x_1\) がどのように変化するかを調べます。
この設問における重要なポイント
- スリット間隔 \(d\) が広がると、経路差の取りうる範囲が広がり、干渉縞(強め合い・弱め合いの線)の次数 \(m\) の最大値が増えること。
- 点A\(_1\)が満たすべき弱め合いの条件式 (\(S_2A_1 – S_1A_1 = \frac{1}{2}\lambda\)) は変わらないこと。
- スリット間隔 \(d’\) を変数として、A\(_1\)の位置 \(x_1\) がどのように \(d’\) に依存するかを数式で追跡すること。
具体的な解説と立式
水位がほとんど変化しない点の個数について:
水位がほとんど変化しない点(弱め合いの点)は、経路差が \(\left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) を満たす点です。
スリットS\(_1\)S\(_2\)間の間隔を \(d\) とすると、観測される可能性のある経路差の最大値は \(d\) です。
\(d\) が大きくなると、より大きな \(m\) の値に対しても \(\left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda \le d\) という条件が満たされやすくなります。これは、より多くの弱め合いの線(節線)がS\(_1\)S\(_2\)間に形成されることを意味します。これらの節線が直線STと交わる点の数も、一般に増加すると考えられます。
したがって、直線STでの水位がほとんど変化しない点の個数は増す。
点A\(_1\)の移動について:
点A\(_1\)は、\(m=0\) の弱め合いの点であり、その条件は次のように表されます。
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 &= \frac{1}{2}\lambda \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
S\(_1\)を原点\((0,0)\)とし、A\(_1\)の座標を \((x_1, 0)\) とします。したがって、\(S_1A_1 = x_1\)。
スリットS\(_2\)の座標を \((0, d’)\) とします。ここで \(d’\) は新しいS\(_1\)S\(_2\)間の間隔です。
すると、S\(_2\)とA\(_1\)の距離は三平方の定理より \(S_2A_1 = \sqrt{x_1^2 + (d’)^2}\)。
これらの関係を式⑤に代入すると、以下の式が得られます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{x_1^2 + (d’)^2} – x_1 &= \frac{1}{2}\lambda \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
この式⑥を \(x_1\) について解くことで、\(x_1\) が \(d’\) と \(\lambda\) にどのように依存するかが分かります。
使用した物理公式
- 弱め合いの条件: \(S_2A_1 – S_1A_1 = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda\)
- 三平方の定理(経路長計算のため)
水位がほとんど変化しない点の個数:
- スリット間隔 \(d\) が大きくなると、条件 \(\left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda \le d\) を満たす整数 \(m\) の最大値が大きくなる。
- これにより、形成される弱め合いの線(節線)の本数が増える。
- したがって、直線STと交わる弱め合いの点の個数も増す。
点A\(_1\)の移動:
式⑥より、\(x_1\) を右辺に移項します。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{x_1^2 + (d’)^2} &= x_1 + \frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
両辺を2乗します。
$$
\begin{aligned}
x_1^2 + (d’)^2 &= \left(x_1 + \frac{1}{2}\lambda\right)^2 \\[2.0ex]
x_1^2 + (d’)^2 &= x_1^2 + x_1\lambda + \frac{1}{4}\lambda^2
\end{aligned}
$$
両辺から \(x_1^2\) を引いて整理します。
$$
\begin{aligned}
(d’)^2 &= x_1\lambda + \frac{1}{4}\lambda^2
\end{aligned}
$$
\(x_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
x_1\lambda &= (d’)^2 – \frac{1}{4}\lambda^2 \\[2.0ex]
x_1 &= \frac{(d’)^2}{\lambda} – \frac{1}{4}\lambda
\end{aligned}
$$
この結果から、\(d’\) が増加すると \((d’)^2\) も増加するため、\(x_1\) は増加します。つまり、A\(_1\)はS\(_1\)から遠ざかります。
点の個数について:
スリットS\(_1\)とS\(_2\)の間隔を広げると、2つの波が干渉し合うパターンがより細かくなり、多くの干渉縞(強め合いや弱め合いの線)ができるようになります。その結果、直線ST上で観測される、水位がほとんど変化しない点(弱め合いの点)の数も増えると考えられます。
点A\(_1\)の移動について:
点A\(_1\)は「S\(_2\)からの距離とS\(_1\)からの距離の差が、波長のちょうど半分」という特別な条件を満たす点です。スリットS\(_1\)は固定されたままで、スリットS\(_2\)をS\(_1\)から遠ざける(つまりS\(_1\)S\(_2\)の間隔を広げる)とします。このときも点A\(_1\)が同じ「距離の差が波長の半分」という条件を満たし続けるためには、点A\(_1\)自身もS\(_1\)から見て遠ざかる方向に移動する必要があります。
数式を使ってこれを確かめると、S\(_1\)からA\(_1\)までの距離 \(x_1\) は、新しいS\(_1\)S\(_2\)間隔 \(d’\) を使って \(x_1 = \displaystyle\frac{(d’)^2}{\lambda} – \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) と表せます。この式から、\(d’\) が大きくなると \(x_1\) も大きくなることがわかります。
スリットS\(_1\)S\(_2\)間の間隔を広げていくと、直線STでの水位がほとんど変化しない点の個数は増し、点A\(_1\)はS\(_1\)から遠ざかります。この結果は、数式による導出とも、干渉現象の一般的な性質からの類推とも一致しています。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の干渉の原理と経路差:
- 核心: この問題の全ての設問は、「2つの波源からの経路差が、波の干渉(強め合い・弱め合い)を決定する」という一つの原理に基づいています。スリットを通過した波は新たな波源(素元波)となり、それらが重なり合うことで干渉縞が生じます。
- 理解のポイント:
- 弱め合いの条件: 経路差が波長の半整数倍 \(|L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda\)。波が逆位相で重なり、打ち消し合う点です。
- 強め合いの条件: 経路差が波長の整数倍 \(|L_1 – L_2| = m\lambda\)。波が同位相で重なり、振幅が最大になる点です。
- 経路差の幾何学的計算: 問題の図形的な配置から、三平方の定理などを用いて経路差を具体的に計算する能力が不可欠です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ヤングの実験(光の干渉): 2つのスリットを通過した光がスクリーン上に作る明暗の縞模様。基本的な考え方は全く同じです。特に、スクリーンがスリットから十分遠い場合の近似式 \(x = m \frac{L\lambda}{d}\) を使う問題は頻出です。
- 音波の干渉: 2つのスピーカーから出る音による強弱の分布。マイクロフォンを動かして音の強弱を調べる問題などがあります。
- 回折格子: 多数のスリットによる光の干渉。特定の方向にだけ強く進む光(明線)ができる原理は、本問の強め合いの条件の応用です。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の特定と位相: まず、波源は何か(この問題ではスリットS\(_1\), S\(_2\))、それらは同位相か逆位相かを確認します。平面波が同じスリット板を通過する場合、通常は同位相の波源とみなせます。
- 干渉条件の割り当て: 「○番目の弱め合いの点」「△つだけ見つかった」といった記述は、整数 \(m\) の値を特定するための最重要ヒントです。\(m=0\) が何に対応するのか(中央の強め合い線から数えて1番目の弱め合い線など)を正確に把握します。
- 経路差を計算する図形的アプローチ: 問題の図から、経路差を計算するための図形(多くは直角三角形)を見つけ出すことが鍵となります。三平方の定理は非常に強力な道具です。
- 条件変化への対応: 問(4)のように、スリット間隔 \(d\) などの条件が変化する場合、「何が一定で、何が変化するのか」を明確にします。この問題では波長 \(\lambda\) は一定です。その上で、基本となる干渉条件式に立ち返って関係を再構築します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 整数 \(m\) の割り当てミス:
- 誤解: 弱め合いの条件 \( (m + \frac{1}{2})\lambda \) の \(m\) を、中央から数えた順番と勘違いし、1番目の弱め合いを \(m=1\) と置いてしまう。
- 対策: \(m\) は \(0, 1, 2, \dots\) と始まる非負整数であることを徹底する。中央から1番目の弱め合いは \(m=0\)、2番目は \(m=1\) に対応することを、図を描いて確認する習慣をつける。
- 経路差の最大値の誤解:
- 誤解: 経路差が無限に大きくなると考えてしまう。
- 対策: 2つの波源S\(_1\), S\(_2\)からの経路差 \(|S_2P – S_1P|\) は、波源間距離 \(d\) を超えることはない、という物理的な制約を理解しておく。これが問(3)で干渉縞の本数が有限になる理由です。
- 三平方の定理の計算ミス:
- 誤解: \(5^2+12^2=13^2\) のような有名な整数比を知っているが故に、計算を省略してケアレスミスをする。
- 対策: 計算は面倒でも省略せず、一つ一つ丁寧に行う。\( (S_2A_1)^2 = 5^2 + 12^2 = 25 + 144 = 169 \)、\(S_2A_1 = \sqrt{169} = 13\) と段階を踏む。
- 条件変化の考察ミス:
- 誤解: 問(4)で、\(d\) が大きくなると干渉縞の間隔が広くなると直感的に誤解する。
- 対策: 直感だけに頼らず、必ず数式で関係性を確認する。\(x_1 = \frac{(d’)^2}{\lambda} – \frac{\lambda}{4}\) のように、変化させたい量(\(d’\))と知りたい量(\(x_1\))の関係式を導出することが最も確実な方法です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 弱め合いの条件 \(|L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda\):
- 選定理由: 問題文に「水位がほとんど変化しない場所」とあり、これは波の弱め合いを指すため。
- 適用根拠: 2つの波源から出る波が逆位相(山と谷)で重なると打ち消し合うという、波の重ね合わせの原理から導かれます。経路差が半波長の奇数倍のとき、この条件が満たされます。
- 強め合いの条件 \(|L_1 – L_2| = m\lambda\):
- 選定理由: 問(3)で「強め合いの線が何本生じているか」と明確に問われているため。
- 適用根拠: 2つの波源から出る波が同位相(山と山、谷と谷)で重なると強め合う。経路差が波長の整数倍のとき、この条件が満たされます。
- 三平方の定理:
- 選定理由: 問(2)で、直角三角形の辺の長さの関係から、波源S\(_2\)から点A\(_1\)までの直接距離を計算する必要があったため。
- 適用根拠: 図と問題文の条件から、関連する3点が直角三角形を形成すると判断できたため。物理法則だけでなく、幾何学の道具も必要に応じて選択します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 丁寧な立式と代入:
- 特に注意すべき点: 問(2)や問(4)のように、複数の式を連立させる場合、どの式にどの値を代入するのかを明確にする。例えば、三平方の定理で求めた \(S_2A_1=13\) を、弱め合いの条件式 \(S_2A_1 – S_1A_1 = \frac{1}{2}\lambda\) に正確に代入する。
- 日頃の練習: 式に番号を振り、どの式を使ったのかを明記しながら解く癖をつける。
- 文字式の整理:
- 特に注意すべき点: 問(4)の \(x_1\) を求める計算。 \(\sqrt{x_1^2 + (d’)^2} = x_1 + \frac{1}{2}\lambda\) の両辺を2乗する際の展開 \((a+b)^2 = a^2+2ab+b^2\) を正確に行う。項の移項や整理で符号を間違えないように注意する。
- 日頃の練習: 物理の問題で頻出する文字式の計算パターンに慣れておく。特に、平方根を含む式の扱いは重要。
- 整数を数える際の注意:
- 特に注意すべき点: 問(3)で \(|m| \le 2.5\) を満たす整数を数えるとき、\(m=0\) を忘れがち。また、\(m=\pm 1, \pm 2\) のように、正負両方を考慮することを忘れない。
- 日頃の練習: 条件を満たす整数を数える問題では、必ず書き出してから個数を数える。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 問(2) 波長 \(\lambda=2\,\text{cm}\): スリット間隔 \(d=5\,\text{cm}\) に対して、\(\lambda\) が \(d\) より小さい。もし \(\lambda > d\) だと、\(m=0\) 以外の干渉縞はできにくくなる。この関係は妥当か?
- 問(3) 強め合いの線5本: スリット間隔 \(d=5\,\text{cm}\) を波長 \(\lambda=2\,\text{cm}\) で割ると \(d/\lambda = 2.5\)。これは、経路差が最大で \(2.5\lambda\) まで取れることを意味し、\(m=0, \pm 1, \pm 2\) の5本ができるという結果と整合性がある。
- 問(4) A\(_1\)が遠ざかる: スリット間隔 \(d’\) を広げると、特定の経路差 \(\lambda/2\) を満たす線は、全体的にスリットから遠ざかる方向に移動する。これは、干渉縞がより「遠く」で形成されるイメージと一致する。例えば、A\(_1\)の式 \(x_1 = \displaystyle\frac{(d’)^2}{\lambda} – \displaystyle\frac{1}{4}\lambda\) で、\(d’ \rightarrow \infty\) なら \(x_1 \rightarrow \infty\) となり、A\(_1\)は無限遠に飛んでいく。これは、スリット間隔が非常に広がると、S\(_1\)から見てS\(_2\)が非常に遠くなり、ST上では経路差が大きくなりにくいため、\(\lambda/2\) という小さな経路差を満たすにはS\(_1\)から非常に遠い点が必要になる、と解釈できる。
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- 問(4)の思考実験: もしスリット間隔 \(d’\) を非常に小さくしたらどうなるか? \(x_1 = \frac{(d’)^2}{\lambda} – \frac{\lambda}{4}\) の式で、\(d’ \rightarrow \lambda/2\) とすると \(x_1 \rightarrow 0\)。つまり、A\(_1\)はS\(_1\)に近づく。さらに \(d’ < \lambda/2\) にすると \(x_1\) は負になり、物理的に意味のある解ではなくなる。これは、スリット間隔が半波長より狭いと、S\(_1\)より外側には\(m=0\)の弱め合い点は存在しなくなることを示しており、物理的直感と一致する。
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問題93 (センター試験)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、光の波動性を示す重要な現象であるヤングの干渉実験に関するものです。光源から出た光が2つのスリットを通過し、スクリーン上で干渉して明暗の縞模様を作る様子を解析します。
- 複スリットS1, S2の間隔: \(d = 2a\)
- 単スリットS0から複スリットS1, S2までの構成: S1, S2に同位相の光を供給する。
- スリット面からスクリーンまでの距離: \(l\)
- スクリーン中央Oから点Pまでの距離: \(x\)
- 近似条件: \(a \ll l\), \(x \ll l\)
- 光源: 単色光(波長 \(\lambda\))
- A部 (空気中)
- 点Pが暗線となるための \(x\) の条件式。
- 具体的な数値(\(a=0.47 \, \text{mm}\), \(l=6.1 \, \text{m}\), 暗線間隔 \(\Delta x = 4.1 \, \text{mm}\))から波長 \(\lambda\) の算出。
- B部 (媒質中)
- スリット面Iとスリット面IIの間だけをこの媒質で満たしたとき、暗線の間隔は、Aの場合の何倍になるか。
- スリット面IIとスクリーンの間だけをこの媒質で満たしたとき、暗線の間隔は、Aの場合の何倍になるか。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(4) 暗線間隔の別解: 光路差を用いて考える解法
- 主たる解法が媒質中での波長の変化(\(\lambda’=\lambda/n\))に着目するのに対し、別解では経路に屈折率を掛けた「光路長」の差が干渉条件を決めるという、より普遍的な原理から出発します。
- 問(4) 暗線間隔の別解: 光路差を用いて考える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 「光路差」の概念は、薄膜干渉など、光路の一部だけが媒質中にあるような、より複雑な干渉問題を解く上で必須となる重要な考え方であり、その理解が深まります。
- 異なる視点の学習: 同じ現象を「波長の変化」と「光路長」という2つの異なる視点から見ることで、物理法則の多面的な理解が促進されます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ヤングの干渉実験」です。2つのスリットを通過した光がスクリーン上で干渉して明暗の縞模様を作る様子を解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の干渉条件: 2つの波が強め合う(明線)か弱め合う(暗線)かは、その点までの経路差(または光路差)によって決まります。
- ヤングの実験における経路差の近似式: 条件 \(a \ll l\), \(x \ll l\) の下で、経路差 \(\Delta L \approx \displaystyle\frac{2ax}{l}\) と表されます。
- 媒質中での光の波長: 屈折率 \(n\) の媒質中では、光の波長は空気中(または真空中)の \(\displaystyle\frac{1}{n}\) 倍になります (\(\lambda_{\text{媒質}} = \displaystyle\frac{\lambda_{\text{空気}}}{n}\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- A部では、まず空気中での干渉を考えます。経路差の近似式と暗線の条件から、スクリーン上の暗線の位置を表す式を導出し、具体的な数値を用いて光の波長を計算します。
- B部では、装置の一部を屈折率 \(n\) の媒質で満たした場合の干渉縞の変化を考察します。干渉が起こる経路のどの部分が媒質の影響を受けるかによって、結果がどう変わるかを考えます。