問題91 (九州工大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(5)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 模範解答が図形的な読み取りや経路差の条件式から解くのに対し、別解では波源からの距離 \(r\) に依存する球面波(円形波)の波動関数を定義し、その重ね合わせを数式的に解析します。
- 特に設問(5)のような逆位相条件や、干渉縞(双曲線群)の形状を、位相差を含む余弦関数の引数として厳密に導出します。
- 設問(1)〜(5)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 「山と山」「山と谷」といった定性的な表現を、位相差 \(\Delta \phi\) という定量的な物理量として統一的に扱えます。
- 干渉縞が双曲線になる理由や、波源近傍での振る舞いを数学的に理解する助けとなります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「水面波の干渉」です。2つの波源から広がる円形波が重なり合い、強め合う場所(腹)と弱め合う場所(節)が特定のパターン(干渉縞)を作る様子を理解する力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本式: \(v = f\lambda = \frac{\lambda}{T}\)
- 干渉条件(同位相波源の場合):
- 強め合い: 経路差 \(|l_1 – l_2| = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い: 経路差 \(|l_1 – l_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda\)
- 波面の読み取り: 実線は「山」、破線(または実線の中間)は「谷」を表します。隣り合う実線(山)の間隔は1波長 \(\lambda\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、図から波長を読み取り、基本式を用いて速さを求めます。
- (2)では、各点での波の重なり方(山+山、山+谷など)を図から直接判定します。
- (3)では、波源からの距離を波長単位で読み取り、経路差を計算して(2)の結果と照合します。
- (4)〜(5)では、干渉縞(双曲線)の性質や、波源の位相条件が変わった場合の変化を考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
図から波長 \(\lambda\) を読み取ります。
波源 \(A, B\) を中心とする同心円が描かれており、実線は「山」を表しています。
隣り合う実線の間隔が波長 \(\lambda\) です。
\(A\) と \(B\) の間に波がいくつあるかを数えることで、距離 \(d\) と波長 \(\lambda\) の関係を導きます。
この設問における重要なポイント
- 波長の定義: 隣り合う山と山の距離。
- 図の読み取り: 線分 \(AB\) 上に、波源 \(A\) の山、\(B\) の山がどのように配置されているかを確認します。
- \(A, B\) は波源であり、図では実線の円の中心になっています。つまり、この瞬間 \(A, B\) は「山」を出している(あるいは山の位相にある)と考えられます。
具体的な解説と立式
図を見ると、線分 \(AB\) 上には、\(A\) を中心とする円(山)と \(B\) を中心とする円(山)が描かれています。
\(A\) から \(B\) に向かって波面を数えると、\(A\) 自身を含めて \(0, 1, 2, 3, 4\) 番目の山が \(B\) の位置に一致しているように見えます(あるいは \(A\) と \(B\) の間に波長4つ分の間隔がある)。
具体的には、\(A\) と \(B\) の間には3つの交点(山と山の重なり)があり、両端を含めると波長4つ分に相当します。
したがって、距離 \(d\) は波長 \(\lambda\) の4倍です。
$$
\begin{aligned}
d & = 4\lambda
\end{aligned}
$$
これより波長 \(\lambda\) を求めます。
また、波の速さ \(v\) は、波長 \(\lambda\) と周期 \(T\) を用いて表します。
$$
\begin{aligned}
v & = \frac{\lambda}{T}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v = \frac{\lambda}{T}\)
$$
\begin{aligned}
4\lambda & = d \\[2.0ex]
\lambda & = \frac{d}{4}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
速さ \(v\) は、
$$
\begin{aligned}
v & = \frac{d/4}{T} \\[2.0ex]
& = \frac{d}{4T}\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
図を見ると、\(A\) と \(B\) の間には、波の「山」を表す線が等間隔に並んでいます。
\(A\) からスタートして \(B\) まで行くと、ちょうど波4つ分の距離があることが分かります。
だから、波1つ分の長さ(波長)は、全体の距離 \(d\) を4で割ったものになります。
波の速さは「波長 \(\div\) 周期」で計算できるので、さっき求めた波長を \(T\) で割れば答えが出ます。
波長 \(\lambda = d/4\)、速さ \(v = d/4T\) です。
次元を確認すると、\(\lambda\) は \([\text{L}]\)、\(v\) は \([\text{L}][\text{T}]^{-1}\) となっており正しいです。
問(2)
思考の道筋とポイント
点 \(P_1, P_2, P_3\) において、2つの波がどのように重なっているかを図から判断します。
- 実線と実線の交点 \(\rightarrow\) 山と山 \(\rightarrow\) 強め合い
- 実線と実線の中間(谷)と谷の交点 \(\rightarrow\) 谷と谷 \(\rightarrow\) 強め合い
- 実線と谷(実線の中間)の交点 \(\rightarrow\) 山と谷 \(\rightarrow\) 弱め合い
この設問における重要なポイント
- 強め合い: 山+山、または谷+谷。変位が大きく振動する点(腹)。
- 弱め合い: 山+谷。変位が打ち消し合って振動しない点(節)。
- 図の空白部分: 実線と実線のちょうど真ん中は「谷」です。
具体的な解説と立式
各点について確認します。
- \(P_1\): \(A\) からの実線(山)と \(B\) からの実線(山)が交わっています。
\(\rightarrow\) 山+山なので「強め合い」。 - \(P_2\): 図を拡大して確認すると、\(A\) からの実線と実線のちょうど中間(谷)に位置しており、かつ \(B\) からの実線(山)の上に位置しています。
\(\rightarrow\) 谷+山なので「弱め合い」。 - \(P_3\): \(A\) からの実線と実線の間(谷)にあり、\(B\) からの実線と実線の間(谷)にあります。
\(\rightarrow\) 谷+谷なので「強め合い」。
使用した物理公式
- 重ね合わせの原理
計算は不要で、図の読み取りのみです。
\(P_1\): 強め合い
\(P_2\): 弱め合い
\(P_3\): 強め合い
波の線(実線)は「山」を表しています。線のない真ん中の部分は「谷」です。
\(P_1\) は線と線が交差しているので、「山と山」がぶつかって、とても高くなります(強め合い)。
\(P_2\) は、\(A\) からの波の線と線の間(谷)にあり、\(B\) からの波の線の上(山)にあります。「谷と山」がぶつかると、プラスマイナスゼロで波が消えてしまいます(弱め合い)。
\(P_3\) は、両方の波の線のないところ(谷と谷)にあります。「谷と谷」がぶつかると、とても深くなります。これも激しく振動するという意味で「強め合い」です。
\(P_1\): 強め合い、\(P_2\): 弱め合い、\(P_3\): 強め合い。
波の干渉の基本原理通りです。
問(3)
思考の道筋とポイント
各点までの距離を波長 \(\lambda\) を単位として読み取り、差を計算します。
\(A, B\) はそれぞれの円の中心です。
実線の円は、中心から \(1\lambda, 2\lambda, 3\lambda, \dots\) の距離を表します。
谷(実線の中間)は、\(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\) の距離を表します。
この設問における重要なポイント
- 距離の読み取り: 何番目の波面(円)上にあるかを数えます。
- 経路差の計算: 単純な引き算です。
具体的な解説と立式
各点について、\(A, B\) からの距離 \(AP, BP\) を読み取ります。
- \(P_1\):
\(A\) から4番目の実線上 \(\rightarrow AP_1 = 4\lambda\)
\(B\) から2番目の実線上 \(\rightarrow BP_1 = 2\lambda\)
差: \(AP_1 – BP_1 = 4\lambda – 2\lambda = 2\lambda\) - \(P_2\):
\(A\) から2番目と3番目の実線の中間 \(\rightarrow AP_2 = 2.5\lambda\)
\(B\) から3番目の実線上 \(\rightarrow BP_2 = 3\lambda\)
差: \(AP_2 – BP_2 = 2.5\lambda – 3\lambda = -0.5\lambda\) - \(P_3\):
\(A\) から2番目と3番目の実線の中間 \(\rightarrow AP_3 = 2.5\lambda\)
\(B\) から3番目と4番目の実線の中間 \(\rightarrow BP_3 = 3.5\lambda\)
差: \(AP_3 – BP_3 = 2.5\lambda – 3.5\lambda = -\lambda\)
使用した物理公式
- 特になし(図の読み取り)
上記解説の通り。
\(AP_1 – BP_1 = 2\lambda\)
\(AP_2 – BP_2 = -0.5\lambda\)
\(AP_3 – BP_3 = -\lambda\)
図の円を数えて、それぞれの点までの距離を測ります。
\(P_1\) は \(A\) から4波長分、\(B\) から2波長分なので、差は2波長分です。整数倍なので強め合います。
\(P_2\) は \(A\) から2.5波長分、\(B\) から3波長分なので、差は-0.5波長分です。半整数倍なので弱め合います。
\(P_3\) は \(A\) から2.5波長分、\(B\) から3.5波長分なので、差は-1波長分です。整数倍なので強め合います。
(2)の結果とも一致していますね。
\(2\lambda, -0.5\lambda, -\lambda\)。
これらはそれぞれ、強め合い(整数倍)、弱め合い(半整数倍)、強め合い(整数倍)の条件を満たしており、(2)の解答と整合しています。
問(4)
思考の道筋とポイント
強め合いの線(腹線)を描く問題です。
腹線は、経路差が \(m\lambda\) となる点を結んだ線(双曲線)です。
「\(A\) の最も近くを通る」線は、経路差が最大になる線に対応します。
線分 \(AB\) 上での経路差は最大で \(AB=4\lambda\) ですが、これは \(B\) に最も近い点(\(A\) の外側)や \(A\) に最も近い点(\(B\) の外側)での値です。
\(AB\) 間(内分点)での経路差を考えます。
この設問における重要なポイント
- \(AB\) 間の腹の位置:
中点(経路差0)は腹です。
そこから \(\lambda/2\) ごとに腹が並びます。 - \(A\) に最も近い腹:
\(A\) の位置での経路差は \(AB – 0 = 4\lambda\) です。つまり \(A\) 点そのものが \(m=4\) の腹線上(の極限)にあります。
しかし、通常「\(AB\) を横切り」という文脈では、\(A\) と \(B\) の間にある腹線を指します。
\(A\) に最も近い「\(AB\) 間の」腹の位置を探します。
具体的な解説と立式
線分 \(AB\) 上の点 \(Q\) を考え、\(A\) からの距離を \(x\) とします(\(0 \le x \le 4\lambda\))。
\(B\) からの距離は \(4\lambda – x\) です。
経路差は \(|(4\lambda – x) – x| = |4\lambda – 2x|\) です。
これが \(m\lambda\) になる条件を探します。
\(A\) に近いということは \(x\) が小さい、つまり経路差が大きい場合です。
\(x=0\) (点 \(A\))のとき経路差 \(4\lambda\)。
次に経路差が整数倍になるのは \(3\lambda\) のときです。
$$
\begin{aligned}
4\lambda – 2x & = 3\lambda \\[2.0ex]
2x & = \lambda \\[2.0ex]
x & = 0.5\lambda
\end{aligned}
$$
つまり、\(A\) から \(0.5\lambda\) の位置を通る双曲線が、\(A\) に最も近い(\(AB\) 間を通る)強め合いの線です。
この線は、\(m=3\) の双曲線に対応します。
図に描く際は、\(A\) のすぐ右隣(半波長分)を通るカーブを描きます。
使用した物理公式
- 干渉条件: \(|l_1 – l_2| = m\lambda\)
作図問題のため計算過程は上記考察に含まれます。
\(A\) から \(0.5\lambda\) の点を通り、外側に開く双曲線を描きます。
強め合いの線は、2つの波源の間を通るカーブ(双曲線)になります。
真ん中(中点)は左右対称なので必ず強め合います(経路差0)。
そこから波長の半分(\(\lambda/2\))ずれるごとに、次の強め合いの線が現れます。
\(A\) に一番近い線を描きたいので、\(A\) のすぐそばを探します。
計算すると、\(A\) から半波長だけ離れたところを通る線が、一番近い強め合いの線だと分かります。
\(A\) から \(0.5\lambda\) の点を通る双曲線を描きます。
これは \(m=3\) の腹線です。\(m=4\) は点 \(A\) そのもの(または \(A\) の外側の半直線)になりますが、「横切り」という表現から双曲線を意図していると判断します。
問(5)
思考の道筋とポイント
波源を「逆位相」で振動させると、干渉条件が逆転します。
- 強め合い(腹): 経路差 \(= (m + 0.5)\lambda\)
- 弱め合い(節): 経路差 \(= m\lambda\)
問われているのは「弱め合いの線(節線)」の本数です。
つまり、経路差が整数倍になる場所がいくつあるかを数えます。
この設問における重要なポイント
- 条件の逆転: 逆位相になったため、これまで強め合っていた場所(整数倍)が、今度は弱め合う場所になります。
- 本数の数え方: 線分 \(AB\) 上で条件を満たす点の数を数えれば、それが線の本数になります。
- 端点の扱い: 「波源は除く」とあるので、\(A\) と \(B\) 上の点は含めません。
具体的な解説と立式
逆位相の場合、弱め合いの条件は
$$
\begin{aligned}
|AP – BP| & = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
線分 \(AB\) 上での経路差は、\(0\) から \(4\lambda\) までの値を取り得ます。
中点では経路差 \(0\) なので \(m=0\)(弱め合い)。
\(A\) 点では経路差 \(4\lambda\) なので \(m=4\)(弱め合い)。
\(B\) 点でも同様に \(m=4\)。
したがって、線分 \(AB\) 上で経路差が整数倍になる \(m\) の値は、
\(0, 1, 2, 3, 4\) です。
それぞれの \(m\) に対応する線の本数を数えます。
- \(m=0\): 中点を通る直線(1本)
- \(m=1\): 中点の左右に対称に存在(2本)
- \(m=2\): その外側に左右対称に存在(2本)
- \(m=3\): さらに外側に左右対称に存在(2本)
- \(m=4\): 波源 \(A, B\) 上を通る(波源は除くのでカウントしない)
合計本数は、
$$
\begin{aligned}
1 + 2 + 2 + 2 & = 7\,\text{本}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 逆位相の干渉条件(弱め合い): \(|l_1 – l_2| = m\lambda\)
\(m=0, 1, 2, 3\) に対応する線が存在します。
\(m=0\) は1本。
\(m=1, 2, 3\) は左右に1本ずつあるので計6本。
合計 \(1 + 6 = 7\) 本。
波源の動きを逆にすると、山と谷の関係が逆になるので、強め合う場所と弱め合う場所が入れ替わります。
今までは「整数倍のズレ」で強め合っていましたが、これからは「整数倍のズレ」で弱め合うことになります。
\(A\) と \(B\) の間のズレ(経路差)は、最大で4波長分です。
ズレが \(0, 1, 2, 3\) 波長分になる場所を探すと、全部で7箇所見つかります。
ズレが4波長分になるのはちょうど波源の場所ですが、問題文で「波源は除く」と言われているので数えません。
だから答えは7本です。
7本。
同位相の場合の腹線の数(\(m=0, 1, 2, 3\) で7本、\(m=4\) は波源)と同じになります。条件が入れ替わっただけなので、同位相時の腹線の数が逆位相時の節線の数になります。
思考の道筋とポイント
円形波の干渉を、位置 \((x, y)\) に依存する波動関数の和として記述します。
波源からの距離 \(r\) に応じて位相が \(kr\) 遅れることを利用し、合成波の振幅項を導出します。
これにより、干渉縞の形状(双曲線)や逆位相条件での変化を数式的に解析します。
この設問における重要なポイント
- 円形波の波動関数: 波源からの距離を \(r\) とすると、\(y \propto \sin(\omega t – kr)\) と表せます(振幅の減衰は無視あるいは考慮しても位相条件には影響しません)。
- 合成波の振幅: \(y = A\sin(\omega t – kr_A) + A\sin(\omega t – kr_B + \delta)\) (\(\delta\) は初期位相差)を合成すると、振幅項は \(\cos(k(r_A – r_B)/2 – \delta/2)\) に比例します。
- 干渉条件の導出: 振幅が最大になる条件(強め合い)とゼロになる条件(弱め合い)を、コサインの引数から導きます。
具体的な解説と立式
1. 波動関数の設定
波源 \(A, B\) を \(x\) 軸上に置き、座標を \(A(-d/2, 0), B(d/2, 0)\) とします。
観測点 \(P(x, y)\) までの距離を \(r_A, r_B\) とします。
波数 \(k = 2\pi/\lambda\)、角振動数 \(\omega\) とします。
同位相の場合(\(\delta = 0\))、点 \(P\) での変位 \(u\) は、
$$
\begin{aligned}
u & = A\sin(\omega t – kr_A) + A\sin(\omega t – kr_B)
\end{aligned}
$$
和積の公式を用いて合成します。
$$
\begin{aligned}
u & = 2A\cos\left(\frac{k(r_A – r_B)}{2}\right)\sin\left(\omega t – \frac{k(r_A + r_B)}{2}\right)
\end{aligned}
$$
振幅項は \(2A\cos\left(\frac{k(r_A – r_B)}{2}\right)\) です。
2. 干渉条件の解析
強め合い(振幅最大)の条件は、コサインの中身が \(\pi\) の整数倍のときです。
$$
\begin{aligned}
\frac{k(r_A – r_B)}{2} & = m\pi \quad (m = 0, \pm 1, \dots) \\[2.0ex]
\frac{2\pi}{\lambda} \frac{r_A – r_B}{2} & = m\pi \\[2.0ex]
r_A – r_B & = m\lambda
\end{aligned}
$$
これは「距離の差が波長の整数倍」という条件と一致し、\(r_A – r_B = \text{一定}\) は双曲線の方程式そのものです。
3. 逆位相の場合(問5)
波源が逆位相の場合、初期位相差 \(\delta = \pi\) を導入します。
$$
\begin{aligned}
u & = A\sin(\omega t – kr_A) + A\sin(\omega t – kr_B + \pi) \\[2.0ex]
& = A\sin(\omega t – kr_A) – A\sin(\omega t – kr_B)
\end{aligned}
$$
和積の公式(差の形)\(\sin A – \sin B = 2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
u & = 2A\sin\left(\frac{k(r_B – r_A)}{2}\right)\cos\left(\omega t – \frac{k(r_A + r_B)}{2}\right)
\end{aligned}
$$
振幅項は \(2A\sin\left(\frac{k(r_B – r_A)}{2}\right)\) となり、コサインからサインに変わりました。
弱め合い(振幅ゼロ)の条件は、サインの中身が \(\pi\) の整数倍のときです。
$$
\begin{aligned}
\frac{k(r_B – r_A)}{2} & = m\pi \\[2.0ex]
r_B – r_A & = m\lambda
\end{aligned}
$$
つまり、逆位相の場合、「距離の差が波長の整数倍」の場所が弱め合い(節)になります。
これは問(5)で用いた条件と完全に一致します。
使用した物理公式
- 波動関数: \(y = A\sin(\omega t – kr)\)
- 和積の公式: \(\sin A + \sin B = 2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}\)
- 波数: \(k = \frac{2\pi}{\lambda}\)
問(5)の本数計算:
\(|r_A – r_B| \le d = 4\lambda\) より、
\(|m\lambda| \le 4\lambda \Rightarrow |m| \le 4\)
\(m = 0, \pm 1, \pm 2, \pm 3, \pm 4\)
波源(\(m=\pm 4\))を除くので、\(m = 0, \pm 1, \pm 2, \pm 3\) の7通り。
よって7本。
波を数式で表して足し合わせると、振幅を決める部分に \(\cos(\text{距離の差})\) という形が出てきます。
同位相のときは、距離の差が波長の整数倍だとコサインが \(\pm 1\)(最大)になり、強め合います。
逆位相にすると、数式上で片方の波にマイナスがつきます。すると合成結果の振幅部分は \(\sin(\text{距離の差})\) に変わります。
サインが \(0\) になるのは中身が \(\pi\) の整数倍のときなので、逆位相では「距離の差が波長の整数倍」の場所で振幅がゼロ(弱め合い)になることが、数式からもはっきりと分かります。
波動関数を用いた解析により、干渉条件の逆転が数学的に証明されました。
また、干渉縞が双曲線群になることも、\(r_A – r_B = \text{const}\) という式から自然に導かれます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の干渉条件の普遍性
- 核心: 2つの波源からの波が重なるとき、その強弱は「経路差(距離の差)」と「波長」の比率で決まります。
- 理解のポイント:
- 同位相波源: 経路差 \(m\lambda\) で強め合い、\((m+0.5)\lambda\) で弱め合い。
- 逆位相波源: 条件が完全に逆転します。経路差 \(m\lambda\) で弱め合い、\((m+0.5)\lambda\) で強め合い。
- 物理的意味: 「山と山が出会うか、山と谷が出会うか」という位相のズレが全てを決定しています。
- 干渉縞の幾何学的性質
- 核心: 経路差が一定となる点の集合は「双曲線」を描きます。
- 理解のポイント:
- 腹線と節線: 強め合う点を結んだ線を腹線、弱め合う点を結んだ線を節線と呼びます。これらは交互に現れる双曲線群です。
- 本数の数え方: 2つの波源を結ぶ線分上で、条件を満たす点がいくつあるかを数えるのが最も確実な方法です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ヤングの実験(光の干渉): スリット間隔 \(d\) が波長 \(\lambda\) に比べて非常に大きい場合、双曲線は直線(近似)として扱われますが、本質は同じ「経路差」です。
- 音波の干渉: 観測者が動く場合、干渉縞(双曲線)を横切るたびに音が大きく聞こえます。
- 反射波との干渉: 壁による反射波と直接波の干渉では、固定端反射による位相の反転(\(\pi\) ズレ)に注意が必要です。これは「逆位相の波源」と同じ扱いになります。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の位相を確認: 同位相か逆位相か? これが全ての出発点です。
- 波長を特定する: 図から読み取るか、数値計算するか。
- 線分 \(AB\) 上をチェック: 波源を結ぶ線分上での干渉(定常波)の様子を描くと、全体の干渉縞の本数や配置が見えてきます。
- 解法の選択:
- 「強め合い・弱め合い」の判定 \(\rightarrow\) 経路差計算。
- 「線の本数」 \(\rightarrow\) 線分 \(AB\) 上でのカウント。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 経路差の符号ミス:
- 誤解: \(AP – BP\) が負になったとき、条件式に当てはまらないと焦る。
- 対策: 干渉条件は「経路差の絶対値」で考えます。\(|AP – BP| = 0.5\lambda\) なら弱め合いです。符号はどちらが近いかを表すだけです。
- 波源上の点の扱い:
- 誤解: 波源の位置(\(A\) や \(B\))を本数に含めてしまう。
- 対策: 問題文の「波源は除く」という但し書きを見落とさないこと。物理的にも波源そのものでは干渉が定義しにくい(片方の波が存在しない)ため、通常は除外されます。
- 図の読み取りミス:
- 誤解: 実線と実線の間を適当に読み取ってしまう。
- 対策: 「実線=山」「実線の中間=谷」という定義を厳守し、\(P_2\) のように微妙な位置にある点は、拡大して「どの線の上にあるか」を慎重に確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(波の基本式):
- 選定理由: 図から波長 \(\lambda\) が読み取れ、周期 \(T\) が与えられているため、定義式 \(v = \lambda/T\) を使うのが最短です。
- 適用根拠: 波の速さは媒質によって決まり、振動数や波長が変わっても \(v = f\lambda\) の関係は常に成立します。
- 問(5)での思考法(線分上のカウント):
- 選定理由: 干渉縞(双曲線)の本数を数える際、双曲線全体を描くのは大変です。しかし、すべての双曲線は必ず波源を結ぶ線分 \(AB\) を横切ります。したがって、この線分上の点だけを調べれば十分です。
- 適用根拠: 線分 \(AB\) 上では経路差が \(|x – (d-x)| = |2x – d|\) と単純な一次関数になり、数え上げが容易だからです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 波長単位での計算:
- 距離をメートルなどの具体的な数値に直さず、\(2.5\lambda\) や \(4\lambda\) のように「波長の何倍か」で計算を進めると、ミスが減り、干渉条件(整数倍か半整数倍か)の判定もしやすくなります。
- 対称性の利用:
- 干渉縞は、同位相なら垂直二等分線に関して対称、逆位相ならその線自体が節線になります。本数を数えるときは、片側だけ数えて2倍する(+真ん中の1本)と効率的です。
問題92 (センター試験)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(4)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 模範解答が経路差の条件式や幾何学的な考察から解くのに対し、別解では波源からの距離 \(r\) に依存する球面波の波動関数を定義し、その重ね合わせを数式的に解析します。
- 特に設問(4)において、スリット間隔 \(d\) の変化が干渉縞(双曲線)の形状や節線の位置に与える影響を、位相差関数の微分を用いて厳密に導出します。
- 設問(1)〜(4)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 「弱め合う場所が2つだけ」という条件が、数式上では位相差の取りうる範囲(最大経路差)とどのように対応しているかが明確になります。
- 干渉縞の移動方向(\(A_1\) が遠ざかる理由)を、直感だけでなく数式の振る舞いとして理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ヤングの実験(水面波の干渉)」です。2つの波源(スリット)から広がる波が干渉し、特定の場所で強め合ったり弱め合ったりする現象を、経路差と波長の関係から解き明かす力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 干渉条件(同位相波源の場合):
- 強め合い: 経路差 \(|l_1 – l_2| = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い: 経路差 \(|l_1 – l_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda\)
- 経路差の幾何学: 観測点 \(P\) までの距離の差 \(|S_1P – S_2P|\) は、\(P\) が遠くに行くほど小さくなり、無限遠では \(0\) に近づきます(垂直二等分線方向)。逆に、\(S_1S_2\) 線上に近づくほど大きくなり、最大値はスリット間隔 \(d\) になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、弱め合う点(節線)の次数 \(m\) を特定します。「2つだけ見つかった」という情報が鍵です。
- (2)では、三平方の定理を用いて具体的な経路差を計算し、(1)の結果と結びつけて波長を求めます。
- (3)では、スリット間隔 \(d\) と波長 \(\lambda\) の関係から、干渉縞(腹線)の総数を数えます。
- (4)では、スリット間隔 \(d\) を広げたときの影響を、経路差の変化や干渉縞の密度の観点から考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
直線 \(S_1T\) 上で観測したところ、弱め合う場所(節線との交点)が「2つだけ」見つかりました。
\(S_1\) から遠い方を \(A_1\)、近い方を \(A_2\) とします。
経路差 \(|S_2P – S_1P|\) は、\(P\) が \(S_1\) に近いほど大きく、遠ざかる(\(T\) の方へ行く)ほど小さくなり、無限遠では \(0\) になります。
弱め合う条件は、経路差 \(= (m + 1/2)\lambda\) です。
経路差が小さい順(遠い順)に \(m=0, 1, 2, \dots\) と対応します。
「2つだけ」ということは、\(m=0\) と \(m=1\) の2本しか存在しないことを意味します。
この設問における重要なポイント
- 経路差の単調減少性: 直線 \(S_1T\) 上を \(S_1\) から遠ざかるにつれて、経路差 \(S_2P – S_1P\) は単調に減少します。
- 次数の対応:
- 最も遠い点(経路差最小) \(\rightarrow A_1 \rightarrow m=0\) (経路差 \(0.5\lambda\))
- 次に近い点(経路差次に小さい) \(\rightarrow A_2 \rightarrow m=1\) (経路差 \(1.5\lambda\))
具体的な解説と立式
弱め合う条件(同位相)は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
|S_2P – S_1P| & = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
直線 \(S_1T\) 上で \(S_1\) から遠ざかるほど、\(S_1P\) と \(S_2P\) の差は小さくなります(三角形の2辺の差の性質)。
したがって、最も遠い点 \(A_1\) は最小の経路差を持つ \(m=0\) に対応します。
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 & = \left(0 + \frac{1}{2}\right)\lambda \\[2.0ex]
& = \frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
次に遠い(\(S_1\) に近い)点 \(A_2\) は、その次の次数 \(m=1\) に対応します。
$$
\begin{aligned}
S_2A_2 – S_1A_2 & = \left(1 + \frac{1}{2}\right)\lambda \\[2.0ex]
& = \frac{3}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 干渉条件(弱め合い): 経路差 \(= (m + 1/2)\lambda\)
\(A_1\) の経路差: \(0.5\) 倍
\(A_2\) の経路差: \(1.5\) 倍
2つの波源からの距離の差(経路差)が、波長の「半分」ずれているときに波は打ち消し合います(弱め合い)。
さらに「1.5倍」「2.5倍」ずれているときも弱め合います。
観測している直線 \(S_1T\) 上では、遠くに行けば行くほど、2つの波源からの距離の差は縮まってゼロに近づきます。
だから、一番遠くで見つかった弱め合う点 \(A_1\) は、一番ズレが小さい「0.5倍」の場所です。
その手前で見つかった \(A_2\) は、次にズレが小さい「1.5倍」の場所になります。
\(A_1\) は \(1/2\) 倍、\(A_2\) は \(3/2\) 倍。
「2つだけ」という条件から、これ以上の次数(\(m=2\) すなわち \(2.5\lambda\))は存在しない(直線 \(S_1T\) 上には現れない)ことも示唆されています。
問(2)
思考の道筋とポイント
点 \(A_1\) の具体的な座標が与えられています。
\(S_1A_1 = 12\,\text{cm}\) です。
直角三角形 \(\triangle S_1S_2A_1\) に注目し、三平方の定理を使って \(S_2A_1\) の長さを求めます。
求めた経路差 \(S_2A_1 – S_1A_1\) が、(1)で求めた \(0.5\lambda\) に等しいという方程式を立てて、\(\lambda\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 幾何学的配置: \(S_1S_2 \perp S_1T\) なので、\(\triangle S_1S_2A_1\) は直角三角形です。
- 数値: \(S_1S_2 = 5\,\text{cm}\), \(S_1A_1 = 12\,\text{cm}\)。
具体的な解説と立式
直角三角形 \(\triangle S_1S_2A_1\) において、三平方の定理より斜辺 \(S_2A_1\) は、
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 & = \sqrt{S_1S_2^2 + S_1A_1^2} \\[2.0ex]
& = \sqrt{5^2 + 12^2}
\end{aligned}
$$
経路差は \(S_2A_1 – S_1A_1\) です。これが \(0.5\lambda\) に等しいので、
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 – S_1A_1 & = \frac{1}{2}\lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三平方の定理: \(c^2 = a^2 + b^2\)
$$
\begin{aligned}
S_2A_1 & = \sqrt{25 + 144} \\[2.0ex]
& = \sqrt{169} \\[2.0ex]
& = 13\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
経路差は、
$$
\begin{aligned}
13 – 12 & = 1\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
1 & = \frac{1}{2}\lambda \\[2.0ex]
\lambda & = 2\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
\(A_1\) という場所での「距離の差」を実際に計算してみます。
直角三角形の性質(三平方の定理)を使うと、\(S_2\) から \(A_1\) までの距離は \(13\,\text{cm}\) だと分かります。
\(S_1\) からは \(12\,\text{cm}\) なので、その差は \(1\,\text{cm}\) です。
(1)で、この差は「波長の半分(0.5倍)」だと分かりました。
つまり、「波長の半分」が \(1\,\text{cm}\) なので、波長そのものは \(2\,\text{cm}\) になります。
波長は \(2\,\text{cm}\) です。
\(5, 12, 13\) のピタゴラス数を用いた綺麗な設定です。
問(3)
思考の道筋とポイント
水面上全体に生じる強め合いの線(腹線)の本数を求めます。
腹線の条件は、経路差 \(|l_1 – l_2| = m\lambda\) です。
2点 \(S_1, S_2\) からの距離の差は、最大でも \(S_1S_2\) 間隔 \(d\) を超えることはありません(三角不等式 \(|S_1P – S_2P| \le S_1S_2\))。
したがって、\(m\lambda \le d\) を満たす整数 \(m\) を数えればよいことになります。
この設問における重要なポイント
- 最大経路差: 線分 \(S_1S_2\) 上で経路差は最大値 \(d = 5\,\text{cm}\) を取ります。
- 本数の数え方: \(m=0\)(垂直二等分線)は1本。\(m \ge 1\) の線は左右対称に2本ずつ存在します。
具体的な解説と立式
強め合いの条件は、
$$
\begin{aligned}
|S_2P – S_1P| & = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
幾何学的に、経路差の最大値はスリット間隔 \(d = 5\,\text{cm}\) です。
$$
\begin{aligned}
m\lambda & \le d
\end{aligned}
$$
これに \(\lambda = 2\,\text{cm}\) を代入して、可能な \(m\) の値を求めます。
使用した物理公式
- 干渉条件(強め合い): 経路差 \(= m\lambda\)
- 経路差の最大値: \(d\)
$$
\begin{aligned}
m \times 2 & \le 5 \\[2.0ex]
m & \le 2.5
\end{aligned}
$$
\(m\) は整数なので、\(m = 0, 1, 2\) が可能です。
それぞれの本数は、
- \(m=0\): 1本(中央の直線)
- \(m=1\): 2本(左右の双曲線)
- \(m=2\): 2本(左右の双曲線)
合計本数は、
$$
\begin{aligned}
1 + 2 + 2 & = 5\,\text{本}
\end{aligned}
$$
強め合いの線(腹線)は、距離の差が波長の整数倍(\(0, 2, 4, \dots\) cm)になる場所をつないだ線です。
でも、2つの波源の間隔が \(5\,\text{cm}\) しかないので、距離の差が \(5\,\text{cm}\) を超えることは絶対にありません。
だから、あり得る距離の差は \(0\,\text{cm}, 2\,\text{cm}, 4\,\text{cm}\) の3パターンだけです。
差が \(0\) の線は真ん中に1本。
差が \(2\) の線は左右に1本ずつで計2本。
差が \(4\) の線も左右に1本ずつで計2本。
全部合わせて5本になります。
5本。
\(m=2\) のとき経路差 \(4\,\text{cm}\) で、最大値 \(5\,\text{cm}\) より小さいので、双曲線として存在します。\(m=3\) だと \(6\,\text{cm}\) となり不可能です。
問(4)
思考の道筋とポイント
スリット間隔 \(d\)(\(S_1S_2\) 間距離)を広げたときの影響を考えます。
- 変化しない点の個数(節線の数):
最大経路差 \(d\) が大きくなると、許容される \(m\) の最大値が増えます。つまり、節線や腹線の本数は増えます。 - \(A_1\) の移動方向:
\(A_1\) は \(m=0\) の節線(経路差 \(0.5\lambda\))と直線 \(S_1T\) の交点です。
\(d\) が増えると、同じ点 \(P\) での経路差 \(S_2P – S_1P\) はどうなるかを考えます。
直感的には、\(S_2\) が遠ざかるので経路差は大きくなります。
経路差が大きくなりすぎたので、元の \(0.5\lambda\) に戻すには、経路差が小さくなる方向(遠く、つまり \(T\) の方向)へ移動する必要があります。
この設問における重要なポイント
- 節線の数: \(d\) が増えれば、\((m+0.5)\lambda \le d\) を満たす \(m\) が増えるため、本数は増えます。
- \(A_1\) の条件: \(S_2A_1 – S_1A_1 = 0.5\lambda\)(一定)。
- 幾何学的変化: \(S_2\) が下へ移動して \(S_1S_2\) が広がると、任意の点 \(P\) に対して \(S_2P\) は長くなります。つまり経路差 \(S_2P – S_1P\) は増大します。
具体的な解説と立式
1. 個数(節線の数)の変化
節線が存在する条件は、
$$
\begin{aligned}
\left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda & \le d
\end{aligned}
$$
\(d\) が大きくなると、この不等式を満たす整数 \(m\) の個数は増えます(または変わらない)。少なくとも減ることはありません。
問題文の選択肢的に「増すか減るか」なので、「増す」が正解です。
2. \(A_1\) の移動
点 \(A_1\) は、経路差が \(0.5\lambda\) となる点です。
\(S_1\) を固定し、\(S_2\) を \(S_1\) から遠ざけます(\(d\) を大きくする)。
直線 \(S_1T\) 上の任意の点 \(P\) について、\(S_1P\) は変わりませんが、\(S_2P\) は長くなります(斜辺が伸びるため)。
よって、その場所での経路差 \(S_2P – S_1P\) は大きくなります。
元々 \(A_1\) だった場所では、経路差が \(0.5\lambda\) より大きくなってしまいます(例えば \(0.6\lambda\) になる)。
再び \(0.5\lambda\) になる場所を見つけるには、経路差が小さくなる方向へ移動しなければなりません。
直線 \(S_1T\) 上では、遠ざかるほど経路差は小さくなる(無限遠で0)ので、\(A_1\) は \(S_1\) から遠ざかる方向に移動します。
使用した物理公式
- 経路差の性質
定性的な考察のみで十分です。
個数: \(d\) 増 \(\rightarrow\) 最大経路差増 \(\rightarrow\) 本数増。
\(A_1\) の位置: 経路差増大を相殺するため、経路差が減る方向(遠方)へ移動。
スリット間隔を広げると、最大経路差(波源間の距離)が大きくなるので、その間に挟まる干渉縞(腹線や節線)の数は増えます。
次に \(A_1\) の位置ですが、\(S_2\) が遠くに行くと、\(A_1\) 地点での「距離の差」は大きくなってしまいます(\(S_2\) からの距離が伸びるから)。
\(A_1\) は「距離の差が0.5波長」という約束の場所なので、差が大きくなりすぎた今の場所にはいられません。
差をもっと小さくするには、遠くへ逃げる必要があります(遠くに行けば行くほど、2つの波源からの距離の差はなくなっていくからです)。
だから、\(A_1\) は遠ざかります。
個数: 増す
\(A_1\) の移動: 遠ざかる
これは干渉縞(双曲線)の焦点間距離が広がると、双曲線のカーブが緩やかになり、漸近線が寝てくる(中心軸に近づく)という数学的性質とも一致します。
思考の道筋とポイント
波源からの距離 \(r\) に応じた位相遅れ \(kr\) を持つ波動関数を定義し、その重ね合わせから位相差関数 \(\Delta \phi\) を導きます。
設問(4)の変化を、この位相差関数の全微分(あるいはパラメータ微分)を用いて解析的に導出します。
この設問における重要なポイント
- 位相差関数: \(\Phi(x) = k(r_2 – r_1)\)。ここで \(x\) は直線 \(S_1T\) 上の座標。
- 弱め合い条件: \(\Phi(x) = (2m+1)\pi\)。
- 変化の解析: \(d\) が変化したとき、条件 \(\Phi(x, d) = \text{const}\) を満たす \(x\) がどう変化するかを \(\displaystyle \frac{dx}{dd} = -\frac{\partial \Phi / \partial d}{\partial \Phi / \partial x}\) で調べます。
具体的な解説と立式
1. 波動関数と位相差
\(S_1\) を原点 \((0,0)\)、\(S_1T\) を \(x\) 軸とします。\(S_2\) の座標は \((0, d)\) です。
直線 \(S_1T\) 上の点 \(P(x, 0)\) (\(x>0\))において、
\(S_1\) からの距離 \(r_1 = x\)
\(S_2\) からの距離 \(r_2 = \sqrt{x^2 + d^2}\)
位相差 \(\Phi(x, d)\) は、
$$
\begin{aligned}
\Phi(x, d) & = k(r_2 – r_1) \\[2.0ex]
& = \frac{2\pi}{\lambda} (\sqrt{x^2 + d^2} – x)
\end{aligned}
$$
弱め合いの条件は \(\Phi = (2m+1)\pi\) です。
2. 節線の数(問1, 3の再確認)
関数 \(f(x) = \sqrt{x^2 + d^2} – x\) を考えます。
\(x=0\) のとき \(f(0) = d\)。
\(x \to \infty\) のとき \(f(x) = \frac{d^2}{\sqrt{x^2+d^2}+x} \to 0\)。
\(f'(x) = \frac{x}{\sqrt{x^2+d^2}} – 1 < 0\) なので単調減少です。 値域は \((0, d]\) です。 経路差がこの範囲にある \((m+0.5)\lambda\) の個数が節線の数です。 問(1)では「2つだけ」なので、\(0.5\lambda\) と \(1.5\lambda\) が範囲内にあり、\(2.5\lambda\) は範囲外(\(>d\))ということです。
問(4)で \(d\) が増えると、値域の上限 \(d\) が広がるため、含まれる \((m+0.5)\lambda\) の個数は増えます(または変わらない)。よって「増す」。
3. \(A_1\) の移動(問4の解析)
\(A_1\) は \(m=0\) の点なので、\(\Phi(x, d) = \pi\) (一定)を満たす \(x\) の挙動を調べます。
陰関数微分を用います。
$$
\begin{aligned}
d\Phi & = \frac{\partial \Phi}{\partial x} dx + \frac{\partial \Phi}{\partial d} dd = 0 \\[2.0ex]
\frac{dx}{dd} & = – \frac{\partial \Phi / \partial d}{\partial \Phi / \partial x}
\end{aligned}
$$
各偏微分を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\partial \Phi}{\partial x} & = k \left( \frac{x}{\sqrt{x^2+d^2}} – 1 \right) < 0 \quad (\text{なぜなら } x < \sqrt{x^2+d^2}) \\[2.0ex]
\frac{\partial \Phi}{\partial d} & = k \frac{d}{\sqrt{x^2+d^2}} > 0
\end{aligned}
$$
これらを代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{dx}{dd} & = – \frac{(+)}{(-)} > 0
\end{aligned}
$$
つまり、\(d\) が増加すると \(x\) も増加します。
\(x\) は \(S_1\) からの距離なので、\(A_1\) は \(S_1\) から遠ざかります。
使用した物理公式
- 位相差: \(\Phi = k(r_2 – r_1)\)
- 陰関数微分: \(\frac{dx}{dd} = – \frac{\partial \Phi / \partial d}{\partial \Phi / \partial x}\)
微分の符号判定により、\(\frac{dx}{dd} > 0\) が導かれました。
数式で「距離の差」を表す関数を作りました。
この関数を微分して調べると、スリット間隔 \(d\) を大きくしたとき、同じ「距離の差」を保つためには、観測点 \(x\) を大きくしなければならない(遠くへ行かなければならない)ことが数学的に示されます。
これは、直感的な「\(S_2\) が遠のく分、\(P\) も逃げないと差が維持できない」という理解を裏付けるものです。
微積分を用いた解析により、\(A_1\) が遠ざかることが厳密に示されました。
また、節線の数が \(d\) に依存して増えることも、値域の拡大として自然に説明されます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 経路差の単調性と極限
- 核心: 2つの波源からの距離の差(経路差)は、波源を結ぶ直線の垂直二等分線上で \(0\) になり、波源に近づくほど大きくなり、波源を結ぶ線分上で最大値 \(d\)(波源間隔)をとります。
- 理解のポイント:
- 無限遠方: どの方向に行っても経路差は \(d \sin \theta\) に近づきます。直線 \(S_1T\) 上(\(\theta=90^\circ\))では \(d\) に近づくように見えますが、本問の配置では \(S_1T \perp S_1S_2\) なので、\(T\) 方向(\(\theta=0^\circ\) 相当)へ行くと経路差は \(0\) に近づきます。この「方向による経路差の変化」を正しくイメージできるかが鍵です。
- 干渉条件の次数 \(m\) の物理的意味
- 核心: \(m\) は「中心(経路差0)から何番目の縞か」を表します。
- 理解のポイント:
- \(m=0\): 中心極大(腹)または最初の節。
- 順序: 経路差が小さい順に \(m=0, 1, 2 \dots\) と並びます。本問のように \(S_1\) から遠ざかる(経路差が減る)場合、遠い方から \(m=0, 1, \dots\) と現れます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ヤングの実験(光): \(L \gg d\) の近似を使いますが、本質は同じです。明線条件 \(dx/L = m\lambda\)。
- 鏡による干渉(ロイド鏡): 鏡に映った虚像を第2の波源とみなします。反射時の位相反転に注意。
- 観測者が動く問題: 経路差が変化する線上を動くとき、干渉縞を横切る回数が音の強弱の回数になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 幾何学的配置を確認: 波源と観測線の関係は?(平行か、垂直か、円周上か)
- 経路差の最大・最小をチェック: 観測範囲内で経路差がどう変化するか(単調減少か、極値を持つか)を把握します。
- 次数 \(m\) を割り振る: 経路差0の点(垂直二等分線)を基準に、\(m=0, 1, 2 \dots\) と番号を振ります。
- 解法の選択:
- 具体的な座標がある \(\rightarrow\) 三平方の定理で厳密計算。
- 遠方近似が使える \(\rightarrow\) \(d \sin \theta\) や \(dx/L\) を利用。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 経路差の増減の勘違い:
- 誤解: 「遠くに行けば経路差も大きくなる」と何となく思ってしまう。
- 対策: 極端な場合を考えましょう。無限に遠い彼方では、2つの波源はほぼ1点に見えるので、距離の差なんてなくなります(経路差0)。つまり、遠ざかると経路差は減るのです。
- \(m\) の数え間違い:
- 誤解: \(m=1\) から数え始めてしまう。
- 対策: 干渉の式には \(m=0\) が必ず含まれます。特に弱め合いの \(m=0\)(0.5波長ズレ)は忘れがちなので注意。
- 近似式の乱用:
- 誤解: どんなときでも \(dx/L\) を使ってしまう。
- 対策: 本問のように \(L=12, d=5\) と値が近い場合、近似は使えません。三平方の定理でルートを開く厳密計算が必要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)での公式選択(三平方の定理):
- 選定理由: 座標が具体的かつ原点に近い(近似不可)ため、幾何学的に厳密な距離を出す必要があります。直角三角形が見えるので三平方一択です。
- 適用根拠: \(S_1S_2 \perp S_1T\) という直交条件が与えられているため、\(\triangle S_1S_2A_1\) は直角三角形となり、三平方の定理が厳密に成立します。
- 問(4)での思考法(定性考察):
- 選定理由: 数値計算を求められていないため、数式をいじくり回すより、「物理的な意味(経路差)」の変化を追う方が早くて確実です。「\(S_2\) が遠のく \(\rightarrow\) 経路差増える \(\rightarrow\) 元に戻すには遠くへ逃げる」というロジックチェーンを組み立てます。
- 適用根拠: 経路差 \(|S_2P – S_1P|\) は幾何学的な距離の差であり、\(S_2\) の位置が変われば連続的に変化します。また、干渉条件(\(0.5\lambda\))は不変であるため、等経路差線(双曲線)の移動として現象を捉えることが正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- ピタゴラス数の暗記:
- \(3:4:5\)、\(5:12:13\)、\(8:15:17\) などの有名な直角三角形の比を覚えておくと、ルート計算の手間が省け、検算にもなります。本問は \(5:12:13\) そのままでした。
- 不等式の活用:
- 本数のカウントでは、\(m\lambda \le d\) という不等式を立てて、\(m\) の上限を機械的に出すのがミス防止に有効です。頭の中だけで数えると「端っこ(等号成立)」を含めるかどうかで迷います。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
問題93 (センター試験)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(4)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 模範解答が経路差の近似式や幾何学的な考察から解くのに対し、別解では波源からの距離 \(r\) に依存する球面波の波動関数を定義し、その重ね合わせを数式的に解析します。
- 特に設問(3)(4)において、媒質による屈折率の変化が位相差(光路長差)に与える影響を、位相差関数の微分を用いて厳密に導出します。
- 設問(1)〜(4)の別解: 波動関数の重ね合わせと微積分を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 「暗くなる」という現象が、数式上では位相差が \(\pi\) の奇数倍になる条件として統一的に扱えます。
- 媒質が変わったときの影響(波長の変化か、光路長の変化か)を、位相差の定義式から直接的に理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ヤングの実験(光の干渉)」です。2つのスリットから回折した光が干渉し、スクリーン上に明暗の縞模様を作る現象を扱います。特に、媒質(屈折率)の変化が干渉縞に与える影響を理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 経路差の近似式: スリット間隔 \(d\)(本問では \(2a\))、スクリーンまでの距離 \(l\)、座標 \(x\) に対し、経路差は \(\Delta L \approx \frac{dx}{l}\) と近似されます(\(l \gg d, x\) の場合)。
- 干渉条件(同位相波源の場合):
- 明線(強め合い): 経路差 \(= m\lambda\)
- 暗線(弱め合い): 経路差 \(= (m + \frac{1}{2})\lambda\)
- 光路長(光学距離): 屈折率 \(n\) の媒質中を距離 \(L\) 進むとき、光路長は \(nL\) となります。干渉条件は光路長差で考えます。
- 媒質中の波長: 屈折率 \(n\) の媒質中では、光の速さが \(1/n\) 倍になり、波長も \(\lambda’ = \lambda/n\) となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、経路差の近似式を用いて暗線の条件式を立てます。
- (2)では、暗線の間隔 \(\Delta x\) を数式で表し、与えられた数値から波長 \(\lambda\) を計算します。
- (3)(4)では、装置の一部を屈折率 \(n\) の媒質で満たしたとき、光路長差や波長がどう変化するかを考え、干渉縞の間隔の変化を導きます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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