「良問の風」攻略ガイド(111〜115問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題111 (防衛大+センター試験)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、3枚の導体板P₁, Pᴍ, P₂を平行に配置したコンデンサー系を扱います。まずスイッチSを閉じて中間の導体板Pᴍに電位を与え、そのときのP₂の電荷が与えられています。その後、スイッチを開いてPᴍを動かしたときのPᴍの電位やP₁の電荷を求める問題です。電荷保存則やコンデンサーの基本性質を理解しているかが問われます。

与えられた条件
  • 導体板P₁, Pᴍ, P₂: 面積は等しい(面積をSとする)。平行に配置。
  • 初期配置 (図1): P₁とPᴍの間隔は \(a\)、PᴍとP₂の間隔も \(a\)。P₁とP₂は接地(電位0)。
  • 初期操作: スイッチSを閉じ、Pᴍの電位を \(V_0\) にする。このときP₂の電荷は \(-Q_0\) であった。
  • 次の操作 (図2): スイッチSを切り(開いて)、PᴍをP₂の方へ平行に \(x\) (\(x<a\)) だけ移動する。
  • 移動後の間隔: P₁-Pᴍ間は \(a+x\)、Pᴍ-P₂間は \(a-x\)。
問われていること
  1. (1) 初期の操作(Sを閉じ、Pᴍの電位を\(V_0\)にしたとき)のPᴍ全体の電荷。
  2. (2) スイッチを切り、Pᴍを移動させた後のPᴍの電位。
  3. (3) スイッチを切り、Pᴍを移動させた後のP₁の電荷。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 平行平板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 S/d_{\text{gap}}\) (\(\epsilon_0\)は真空の誘電率、\(S\) は極板面積、\(d_{\text{gap}}\) は極板間隔)。
  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)。
  • 導体の性質: 導体は等電位。導体内部に電場はない。
  • 電荷保存則: 電気的に孤立した導体の総電荷は保存される。
  • 重ね合わせの原理: 複数のコンデンサーが複雑に接続されている場合でも、各部分の電位差と電荷の関係を個別に考えることができる。

まず、P₁とPᴍ間、PᴍとP₂間の初期状態(間隔\(a\))での電気容量を \(C_0 = \epsilon_0 S/a\) と定義しておくと便利です。

問1 Pᴍ全体の電荷を求めよ。

思考の道筋とポイント

スイッチSを閉じると、Pᴍの電位は \(V_0\) になり、P₁とP₂は接地されているので電位は \(0\text{V}\) です。
このとき、PᴍはP₁との間でコンデンサー(P₁Pᴍ間コンデンサー)を形成し、同様にP₂との間でもコンデンサー(PᴍP₂間コンデンサー)を形成します。
PᴍのP₁側の面とP₂側の面にそれぞれ電荷が蓄えられます。
P₂の電荷が \(-Q_0\) と与えられていることから、PᴍP₂間コンデンサーについて考察し、\(Q_0\) と \(C_0, V_0\) の関係を導きます。 次に、P₁Pᴍ間コンデンサーについても同様に考え、Pᴍ全体の電荷を求めます。

この設問における重要なポイント

  • P₁, P₂が接地されているため、\(V_{P1}=0, V_{P2}=0\)。
  • Pᴍの電位が \(V_0\)。
  • P₁Pᴍ間とPᴍP₂間はそれぞれコンデンサーを形成し、かかる電位差は \(V_0\)。
  • P₂の電荷が \(-Q_0\) であることから、PᴍのP₂側の面の電荷が \(+Q_0\) であるとわかる。

具体的な解説と立式

初期状態(スイッチSを閉じ、Pᴍの電位を\(V_0\)にしたとき)を考えます。
P₁の電位 \(V_{P1} = 0\)、P₂の電位 \(V_{P2} = 0\)、Pᴍの電位 \(V_{Pᴍ} = V_0\) です。
極板PᴍとP₂の間のコンデンサーの電気容量を \(C_0 = \epsilon_0 S/a\) とすると、電位差は \(V_{Pᴍ} – V_{P2} = V_0 – 0 = V_0\) です。
P₂の極板(Pᴍに面した側)の電荷が \(-Q_0\) なので、PᴍのP₂に面した側の極板の電荷 \(Q_{ᴍ右}\) は \(+Q_0\) となります。
コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) より、

$$Q_0 = C_0 V_0 \quad \cdots ①$$

同様に、極板PᴍとP₁の間のコンデンサー(容量 \(C_0 = \epsilon_0 S/a\))について、電位差は \(V_{Pᴍ} – V_{P1} = V_0 – 0 = V_0\) です。
したがって、PᴍのP₁に面した側の極板の電荷 \(Q_{ᴍ左}\) は、

$$Q_{ᴍ左} = C_0 V_0 \quad \cdots ②$$

Pᴍ全体の電荷 \(Q_ᴍ\) は、Pᴍの左右両面の電荷の和なので、

$$Q_ᴍ = Q_{ᴍ左} + Q_{ᴍ右} \quad \cdots ③$$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 平行平板コンデンサーの電気容量: \(C_0 = \epsilon_0 S/a\)
計算過程

式①および式②より、\(Q_{ᴍ左} = C_0 V_0\) かつ \(Q_{ᴍ右} = Q_0\) です。式①から \(C_0 V_0 = Q_0\) なので、\(Q_{ᴍ左} = Q_0\) となります。
これらを式③に代入すると、Pᴍ全体の電荷 \(Q_ᴍ\) は、

$$Q_ᴍ = Q_0 + Q_0 = 2Q_0$$

計算方法の平易な説明
  1. P₁とP₂はアースされて0V、Pᴍはスイッチで\(V_0\)の電圧になっています。
  2. PᴍとP₂の間は、電圧\(V_0\)のコンデンサーです。P₂に\(-Q_0\)の電気がたまったので、PᴍのP₂側の面には\(+Q_0\)の電気がたまります。
  3. PᴍとP₁の間も、全く同じ条件(同じ間隔、同じ面積、同じ電圧\(V_0\))のコンデンサーです。なので、PᴍのP₁側の面にも同じように\(+Q_0\)の電気がたまります。
  4. したがって、Pᴍ全体では、P₁側の面とP₂側の面の電気を合わせて \(Q_0 + Q_0 = 2Q_0\) の電気がたまります。
結論と吟味

Pᴍ全体の電荷は \(2Q_0\) です。Pᴍは左右それぞれにコンデンサーを形成し、それぞれに \(Q_0\) の電荷が蓄えられる(Pᴍ側が正)と考えることができます。

解答 (1) \(2Q_0\)

問2 Pᴍの電位を求めよ。

思考の道筋とポイント

スイッチSを切ると、Pᴍは電気的に孤立します。したがって、Pᴍ全体の電荷 \(2Q_0\) (問1の結果) は保存されます。
PᴍをP₂の方へ \(x\) だけ移動させると、P₁-Pᴍ間とPᴍ-P₂間の距離が変わり、それぞれの電気容量も変化します。
新しい電気容量を \(C_1\) (P₁-Pᴍ間) と \(C_2\) (Pᴍ-P₂間) とし、移動後のPᴍの電位を \(V_ᴍ\) とします。P₁とP₂は接地されたままなので電位は \(0\text{V}\) です。
Pᴍの左右の面に蓄えられる電荷の和が \(2Q_0\) に等しいという電荷保存則の式を立てて、\(V_ᴍ\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • スイッチを切るとPᴍは孤立し、その総電荷 \(2Q_0\) が保存される。
  • Pᴍ移動後の各部分コンデンサーの容量 \(C_1, C_2\) を正しく計算する。
  • P₁とP₂の電位は \(0\text{V}\) のまま。
  • Pᴍの電位を \(V_ᴍ\) とし、各部分コンデンサーの電荷を \(V_ᴍ\) で表し、電荷保存の式を立てる。

具体的な解説と立式

スイッチSを切った後、Pᴍ全体の電荷 \(Q_ᴍ = 2Q_0\) は保存されます。
PᴍをP₂の方へ \(x\) だけ移動させると、各部の間隔と電気容量は以下のように変化します。
P₁-Pᴍ間:間隔 \(d_1 = a+x\)。電気容量 \(C_1 = \epsilon_0 S / (a+x)\)。
Pᴍ-P₂間:間隔 \(d_2 = a-x\)。電気容量 \(C_2 = \epsilon_0 S / (a-x)\)。
移動後のPᴍの電位を \(V_ᴍ\) とします。P₁とP₂の電位は \(0\text{V}\) です。
PᴍのP₁側の面に蓄えられる電荷 \(Q_1\) は、

$$Q_1 = C_1 (V_ᴍ – 0) = C_1 V_ᴍ \quad \cdots ④$$

PᴍのP₂側の面に蓄えられる電荷 \(Q_2\) は、

$$Q_2 = C_2 (V_ᴍ – 0) = C_2 V_ᴍ \quad \cdots ⑤$$

Pᴍ全体の電荷保存より、

$$Q_1 + Q_2 = 2Q_0 \quad \cdots ⑥$$

ここで、初期の容量 \(C_0 = \epsilon_0 S/a\) を使うと、\(C_1 = \frac{a}{a+x}C_0\), \(C_2 = \frac{a}{a-x}C_0\) と表せます。
また、問1より \(Q_0 = C_0 V_0\) です。

使用した物理公式

  • 平行平板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 S/d_{\text{gap}}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 電荷保存則
計算過程

式④と式⑤を式⑥に代入します。

$$C_1 V_ᴍ + C_2 V_ᴍ = 2Q_0$$
$$V_ᴍ (C_1 + C_2) = 2Q_0$$

ここで、\(C_1 = \frac{\epsilon_0 S}{a+x}\) と \(C_2 = \frac{\epsilon_0 S}{a-x}\) を代入します。

$$V_ᴍ \left( \frac{\epsilon_0 S}{a+x} + \frac{\epsilon_0 S}{a-x} \right) = 2Q_0$$
$$V_ᴍ \epsilon_0 S \left( \frac{1}{a+x} + \frac{1}{a-x} \right) = 2Q_0$$

括弧内を通分すると、\(\frac{(a-x) + (a+x)}{(a+x)(a-x)} = \frac{2a}{a^2-x^2}\)。

$$V_ᴍ \epsilon_0 S \frac{2a}{a^2-x^2} = 2Q_0$$

\(\epsilon_0 S = C_0 a\) (∵ \(C_0 = \epsilon_0 S/a\))と \(Q_0 = C_0 V_0\) を用いて \(Q_0\) を消去し、\(V_ᴍ\) を \(V_0\) で表します。

$$V_ᴍ (C_0 a) \frac{2a}{a^2-x^2} = 2(C_0 V_0)$$

両辺の \(2C_0\) を消去すると、

$$V_ᴍ \frac{a^2}{a^2-x^2} = V_0$$

よって、Pᴍの電位 \(V_ᴍ\) は、

$$V_ᴍ = V_0 \frac{a^2-x^2}{a^2}$$

計算方法の平易な説明
  1. スイッチを切ると、Pᴍにたまっていた電気の総量 \(2Q_0\) は逃げ場がないので変わりません。
  2. Pᴍを動かすと、P₁との間の距離は \(a+x\)、P₂との間の距離は \(a-x\) に変わります。距離が変わるので、それぞれの部分のコンデンサーの容量 \(C_1, C_2\) も変わります。
  3. 動いた後のPᴍの電圧を \(V_ᴍ\) とします。P₁とP₂はアースされているので0Vのままです。
  4. PᴍのP₁側の面の電気は \(Q_1 = C_1 V_ᴍ\)、P₂側の面の電気は \(Q_2 = C_2 V_ᴍ\) となります。
  5. Pᴍ全体の電気の量は変わらないので、\(Q_1 + Q_2 = 2Q_0\) です。
  6. この式に \(C_1, C_2\) を代入し、さらに \(Q_0 = (\epsilon_0 S/a)V_0\) の関係を使って整理すると、\(V_ᴍ = V_0 \frac{a^2-x^2}{a^2}\) が求まります。
結論と吟味

Pᴍの電位は \(V_0 \displaystyle\frac{a^2-x^2}{a^2}\) です。
\(x=0\) のとき(移動前)は \(V_ᴍ = V_0 \frac{a^2}{a^2} = V_0\) となり、初期状態と一致します。
\(x\) が増加すると \(a^2-x^2\) は減少するので、\(V_ᴍ\) は \(V_0\) より小さくなります。これは、PᴍがP₂に近づきP₁から遠ざかることで、Pᴍ-P₂間の容量が増加しP₁-Pᴍ間の容量が減少する効果を反映しています。

解答 (2) \(V_0 \displaystyle\frac{a^2-x^2}{a^2}\)

問3 P₁の電荷を求めよ。

思考の道筋とポイント

Pᴍを移動させた後のP₁の電荷を求めます。Pᴍの電位 \(V_ᴍ\) は問2で求めました。P₁Pᴍ間のコンデンサーの容量 \(C_1\) も分かっています。P₁の電位は \(0\text{V}\) です。
P₁の極板に蓄えられる電荷は、PᴍのP₁側の面に蓄えられる電荷 \(Q_1\) と絶対値が等しく符号が逆になります。\(Q_1 = C_1 V_ᴍ\) を計算し、P₁の電荷を求めます。

この設問における重要なポイント

  • P₁の電位は \(0\text{V}\)。
  • Pᴍの電位 \(V_ᴍ\) は問2の結果を用いる。
  • P₁Pᴍ間の容量 \(C_1 = \epsilon_0 S / (a+x)\) を用いる。
  • P₁の電荷は、PᴍのP₁側対向面の電荷と逆符号で等しい。

具体的な解説と立式

Pᴍを移動させた後のPᴍのP₁側の面に蓄えられる電荷 \(Q_1\) は、式④より \(Q_1 = C_1 V_ᴍ\) です。
P₁の電荷 \(Q_{P1}\) はこれと逆符号で大きさが等しいので、

$$Q_{P1} = -Q_1 = -C_1 V_ᴍ \quad \cdots ⑦$$

ここで、\(C_1 = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S}{a+x}\) であり、\(V_ᴍ = V_0 \displaystyle\frac{a^2-x^2}{a^2}\) です。
また、\(C_0 = \epsilon_0 S/a\) と \(Q_0 = C_0 V_0\) の関係も利用します。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 平行平板コンデンサーの電気容量
計算過程

式⑦に \(C_1 = \frac{\epsilon_0 S}{a+x}\) と \(V_ᴍ = V_0 \frac{a^2-x^2}{a^2}\) を代入します。

$$Q_{P1} = – \left( \frac{\epsilon_0 S}{a+x} \right) \left( V_0 \frac{a^2-x^2}{a^2} \right)$$

ここで、\(a^2-x^2 = (a-x)(a+x)\) を用いて変形します。

$$Q_{P1} = – \frac{\epsilon_0 S}{a+x} V_0 \frac{(a-x)(a+x)}{a^2} = – \frac{\epsilon_0 S (a-x) V_0}{a^2}$$

さらに、\(\epsilon_0 S = C_0 a\) と \(C_0 V_0 = Q_0\) を用いて \(Q_0\) で表します。

$$Q_{P1} = – \frac{(C_0 a)(a-x)V_0}{a^2} = – \frac{C_0 (a-x) V_0}{a}$$
$$Q_{P1} = – \frac{a-x}{a} (C_0 V_0) = – \frac{a-x}{a} Q_0$$

計算方法の平易な説明
  1. Pᴍを動かした後のPᴍの電圧 \(V_ᴍ\) は(2)で求めました (\(V_0 \frac{a^2-x^2}{a^2}\))。
  2. P₁とPᴍの間のコンデンサーの容量 \(C_1\) は \(\frac{\epsilon_0 S}{a+x}\) です。
  3. PᴍのP₁側の面にたまる電気 \(Q_1\) は \(C_1 V_ᴍ\) で計算できます。
  4. P₁の面にたまる電気は、この \(Q_1\) と反対の符号で同じ大きさなので、\(-Q_1\) となります。
  5. これらを代入して計算し、\(Q_0\) を使って表すと、\(- \frac{a-x}{a} Q_0\) となります。
結論と吟味

P₁の電荷は \(- \displaystyle\frac{a-x}{a} Q_0\) です。
\(x=0\) のとき(移動前)は \(Q_{P1} = – \frac{a}{a} Q_0 = -Q_0\) となり、初期状態のP₁の電荷(PᴍのP₁側の電荷 \(+Q_0\) に対するもの)と一致します。
\(x \rightarrow a\) の極限では、P₁-Pᴍ間隔が \(2a\) となり、Pᴍ-P₂間隔が \(0\) に近づきます。このとき \(Q_{P1} \rightarrow 0\) となります。これは、PᴍがP₂に非常に近づくと、Pᴍの電荷のほとんどがP₂側との相互作用で決まるようになるためと考えられます。

解答 (3) \(- \displaystyle\frac{a-x}{a} Q_0\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの基本性質: 電気容量の定義 (\(C=\epsilon_0 S/d\))、電荷と電圧の関係 (\(Q=CV\))。これらを各部分コンデンサーに適用できるか。
  • 電荷保存則: スイッチを開いて導体(この場合はPᴍ)を電気的に孤立させると、その導体の総電荷が保存されること。これがPᴍの電位を決定する上での鍵となる。
  • 導体の等電位性: 接地された導体の電位は0V。一枚の導体板はどこでも同じ電位であること。
  • 重ね合わせの考え方: PᴍがP₁およびP₂とそれぞれ形成するコンデンサーに蓄えられる電荷の総和がPᴍ全体の電荷となる。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 複数の平行平板導体を組み合わせた複雑なコンデンサー系の問題。
    • スイッチ操作や導体の移動によって、電荷分布や電位、静電エネルギーが変化する問題。
    • 誘電体を挿入する場合の問題(本問は導体板の移動だが、容量変化の考え方は共通)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 電位の基準と固定点: まず接地点(電位0V)を確認する。電池やスイッチによって電位が固定される導体板はどこか。
    2. 孤立導体の特定: スイッチ操作などで孤立する導体があれば、その電荷保存則が利用できないか検討する。
    3. コンデンサー部分の分割: 複雑に見える配置でも、対向する導体面を一つのコンデンサーと見なし、それらが直列か並列か(あるいはより複雑な接続か)を判断する。本問ではPᴍを挟んで2つのコンデンサーが形成されると考える。
    4. 変数の設定: 未知の電位や電荷を文字で置き、関係式を立てて連立方程式を解く。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電荷の正負の扱い: コンデンサーのどちらの極板に正電荷、負電荷が分布するか、また問われているのが「導体全体の電荷」なのか「特定の面の電荷」なのかを正確に把握する。
    • 対策: 電位の高い方から低い方へ電場が生じることを意識し、電場に面した導体表面の電荷の符号を判断する。
  • 電荷保存の対象: Pᴍ全体の電荷が保存されるのであり、Pᴍの片面だけの電荷が保存されるわけではない。
    • 対策: 孤立した「導体全体」の総電荷が保存されると理解する。
  • 容量計算時の間隔の誤り: Pᴍを動かした後のP₁-Pᴍ間、Pᴍ-P₂間の距離を正しく設定する。
    • 対策: 図を丁寧に描き、距離の変化を正確に追う。
  • 文字計算の煩雑さによるミス: \(a, x, C_0, V_0, Q_0\) など多くの文字が出てくるため、式変形の過程で混乱しやすい。
    • 対策: 一つ一つのステップを丁寧に行い、必要なら既知の関係式(例: \(Q_0 = C_0 V_0\))を使って適宜文字を置き換えるなどして式を簡潔に保つ工夫をする。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 初期状態: Pᴍ (\(V_0\)) と接地されたP₁ (0V), P₂ (0V) との間にはさまれた「電気のバネ」がそれぞれ縮んでいる(電荷が蓄えられている)イメージ。
    • Pᴍの孤立と移動: スイッチを切るとPᴍは電荷を抱えたまま宙に浮く。Pᴍを動かすと、左右の「バネの強さ」(電気容量)が変わり、Pᴍの「高さ」(電位)も変化する。
  • 図示の有効性:
    • 問題の図1、図2は状況を理解する上で基本。特に図2で間隔が \(a+x, a-x\) となることを正確に読み取る。
    • 各導体板の電位、および各面に分布する電荷の符号(\(+Q, -Q\)など)を図に書き込むと、立式の助けになる。模範解答の図も参考に、電荷の分布を色分けなどで表現すると分かりやすい。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(C = \epsilon_0 S/d_{\text{gap}}\): 平行平板コンデンサーの形状からその「電荷を蓄える能力」を定量化する基本式。間隔が変われば容量が変わる。
  • \(Q=CV\): あるコンデンサー(またはその部分)に着目したとき、その容量と両端の電位差から蓄えられている電荷を求めるための最も基本的な関係式。
  • 電荷保存則: スイッチを切ることでPᴍが外部回路から電気的に切り離されるため、Pᴍが持つ電荷の総量は変化しようがない、という物理的な制約を表す。これにより未知数(移動後のPᴍの電位)を決定する方程式が得られる。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 初期状態のPᴍの電荷:
    1. P₁, Pᴍ, P₂の電位を確定 (\(0, V_0, 0\))。
    2. P₁Pᴍ間、PᴍP₂間の容量を \(C_0 = \epsilon_0 S/a\) と定義。
    3. P₂の電荷が \(-Q_0\) であることから、\(Q_0 = C_0 V_0\) の関係を導く。
    4. Pᴍの各面の電荷を \(C_0 V_0\) で表し、合計して \(2Q_0\) を得る。
  2. (2) Pᴍ移動後の電位:
    1. Pᴍの総電荷 \(2Q_0\) が保存されることを確認。
    2. 移動後のP₁Pᴍ間容量 \(C_1\) とPᴍP₂間容量 \(C_2\) を \(a, x, \epsilon_0, S\) で表す(または \(C_0\) を使って表す)。
    3. 移動後のPᴍの電位を \(V_ᴍ\) とし、Pᴍの各面の電荷を \(C_1 V_ᴍ\), \(C_2 V_ᴍ\) と表す。
    4. 電荷保存の式 \(C_1 V_ᴍ + C_2 V_ᴍ = 2Q_0\) を立てる。
    5. \(C_1, C_2\) および \(Q_0=C_0V_0\) の関係を代入し、\(V_ᴍ\) について解く。
  3. (3) P₁の電荷:
    1. P₁の電荷は、PᴍのP₁側対向面の電荷 \(-Q_1 = -C_1 V_ᴍ\) である。
    2. (2)で求めた \(V_ᴍ\) と \(C_1\) の式を代入し、\(Q_0\) を使って表す。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 容量の変数表現: \(C_1, C_2\) を \(a, x, C_0\) などを用いて正しく表す。特に分母と分子を間違えないように。
  • 通分計算: (2)の \(C_1+C_2\) の計算や、その後の式変形で複雑な分数の通分が出てくるため、慎重に計算する。
  • 文字の代入タイミング: 適切なタイミングで \(Q_0 = C_0 V_0\) や \(C_0 = \epsilon_0 S/a\) の関係を用いて式を整理すると、見通しが良くなることがある。
  • 符号の確認: 特に(3)でP₁の電荷を求める際、Pᴍの面電荷との符号関係に注意する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感との整合性:
    • (2) \(x\) が大きくなる(PᴍがP₂に近づき、P₁から遠ざかる)と、\(a^2-x^2\) は小さくなり、\(V_ᴍ\) は \(V_0\) より小さくなる。これは、容量の大きい方(Pᴍ-P₂間)に電荷が偏りやすくなるため、全体の電位が下がるという直感と合うか検討する(電荷一定で合成容量が変化するため、電位も変化する)。
    • (3) \(x=0\) のとき \(Q_{P1} = -Q_0\) となり初期状態と一致するか。\(x \rightarrow a\) の極限ではどうなるかなどを考えてみる。
  • 単位の確認: 計算結果の単位が正しい物理量になっているか常に意識する(電荷ならクーロン[C]、電位ならボルト[V])。

問題112 (九州産大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、導体中の自由電子の運動モデル(ドリフトモデル)に基づいて、オームの法則や電気抵抗、抵抗率の表式を導出するものです。電場と電位の関係、電場から受ける力、抵抗力とのつり合い、電流の定義といった基本的な物理法則を順を追って適用していきます。

与えられた条件
  • 導体: 断面積 \(S \text{ [m}^2\text{]}\)、長さ \(l \text{ [m]}\)。
  • 自由電子: 電荷 \(-e \text{ [C]}\)(\(e\) は電気素量で正の値)、数密度 \(n \text{ [個/m}^3\text{]}\)。
  • 印加電圧: 導体の両端に \(V \text{ [V]}\)。
  • 抵抗力: 電子の速さ \(v \text{ [m/s]}\) に比例し、\(kv \text{ [N]}\)(\(k\) は比例定数)。
問われていること
  1. 導体内部の一様な電場の強さ \(E\)。
  2. 1個の自由電子が受ける力の大きさ \(F\)。
  3. 自由電子の一定の速さ(ドリフト速度) \(v\)。
  4. 導体を流れる電流 \(I\)。
  5. 導体の電気抵抗 \(R\)。
  6. 導体の抵抗率 \(\rho\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くにあたって中心となるのは、以下の物理法則や概念です。

  • 一様な電場と電位差の関係: \(V = Ed\) (導体のような一様な太さの物質内で一様な電場が生じている場合、両端の電位差 \(V\)、電場の強さ \(E\)、長さ \(d\) の間にはこの関係が成り立ちます)。
  • 電場中の荷電粒子が受ける力: \(F = qE\) (電荷 \(q\) の粒子が電場 \(E\) から受ける力)。
  • 力のつり合い: 電子が一定の速さで移動するということは、電子に働く合力が0であることを意味します。
  • 電流の定義: \(I = \Delta Q / \Delta t\)。微視的には、\(I = enSv\) (\(e\) は電気素量、\(n\) はキャリア密度、\(S\) は断面積、\(v\) はドリフト速度)。
  • オームの法則と電気抵抗・抵抗率: \(V = RI\)、\(R = \rho l/S\)。

問1 導体内部の電場の強さ

思考の道筋とポイント

導体の両端に電圧 \(V\) がかかると、導体内部には電場が生じます。問題文で「一様な電場が生じる」とあるので、電場の強さ \(E\) と導体の長さ \(l\)、電位差 \(V\) の間には \(V=El\) の関係が成り立ちます。

この設問における重要なポイント

  • 導体内部の電場は一様であるという条件。
  • 一様な電場と電位差、距離の関係式 \(V=Ed\) (この場合は \(V=El\)) を適用する。

具体的な解説と立式

導体の両端に電圧 \(V\) がかかっており、導体の長さは \(l\) です。導体内部には一様な電場 \(E\) が生じるとされているので、電場の強さ \(E\) と電位差 \(V\)、導体の長さ \(l\) の間には次の関係が成り立ちます。

$$V = El \quad \cdots ①$$

この式から電場の強さ \(E\) を求めます。

使用した物理公式

  • 一様な電場と電位差の関係: \(V = Ed\)
計算過程

式①の両辺を \(l\) で割ると、電場の強さ \(E\) が求まります。

$$E = \frac{V}{l}$$

計算方法の平易な説明
  1. 導体に電圧 \(V\) をかけると、その中に電気の坂道(電場)ができます。
  2. 坂道の全体の高さ(電圧 \(V\))と坂道の長さ(導体の長さ \(l\))が分かっていれば、坂道の傾き(電場の強さ \(E\))は「高さ ÷ 長さ」で \(E = V/l\) と計算できます。
結論と吟味

導体内部の電場の強さは \(\displaystyle\frac{V}{l}\) [V/m] です。単位も [V]/[m] となり正しいです。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{V}{l}\)

問2 自由電子が受ける力の大きさ

思考の道筋とポイント

問1で求めた電場の強さ \(E\) の中に、電荷 \(-e\) を持つ自由電子が存在します。荷電粒子が電場から受ける力の公式 \(F=|q|E\) を用いて、電子が受ける力の大きさを計算します。

この設問における重要なポイント

  • 自由電子の電荷の大きさは \(e\)。
  • 電場中の荷電粒子が受ける力の公式 \(F=|q|E\) を適用する。
  • 問1で求めた電場の強さ \(E\) を用いる。

具体的な解説と立式

自由電子の電荷の大きさは \(e\) です。この電子が、強さ \(E\) の電場の中に置かれると、電場から力を受けます。その力の大きさ \(F\) は、

$$F = eE \quad \cdots ②$$

この式に問1で求めた \(E\) を代入して \(F\) を求めます。

使用した物理公式

  • 電場中の荷電粒子が受ける力: \(F = |q|E\)
計算過程

式②に、問1で求めた \(E = \displaystyle\frac{V}{l}\) を代入します。

$$F = e \left(\frac{V}{l}\right) = \frac{eV}{l}$$

計算方法の平易な説明
  1. 電気の坂道(電場 \(E\))の中に電気の粒(電荷 \(e\) の電子)を置くと、坂道を転がり落ちるような力(静電気力 \(F\))を受けます。
  2. この力の大きさは「電気の量 \(e\) × 坂道の傾き \(E\)」で \(F = eE\) と計算できます。
  3. (1)で \(E=V/l\) と分かったので、\(F = e(V/l)\) となります。
結論と吟味

1個の自由電子が受ける力の大きさは \(\displaystyle\frac{eV}{l}\) [N] です。単位も [C] \(\cdot\) [V/m] = [J/m] = [N] となり正しいです。電子の電荷は負なので、力の向きは電場の向きと逆になります。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{eV}{l}\)

問3 自由電子の一定の速さ

思考の道筋とポイント

自由電子は、電場から力 \(F\) を受けて加速されますが、同時に導体中のイオンなどとの衝突によって速さに比例する抵抗力 \(kv\) を受けます。問題文に「一定の速さ \(v\) で移動する」とあるので、これは電場から受ける力と抵抗力がつり合っている状態(終端速度、ドリフト速度)を指します。力のつり合いの式を立てて、速さ \(v\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 電子が一定の速さで移動するため、合力は0(力のつり合い)。
  • 電子に働く力は、電場からの力 \(F\) と抵抗力 \(kv\)。
  • 力のつり合いの式を立てる。

具体的な解説と立式

自由電子は一定の速さ \(v\) で移動するため、電子に働く力の合力は \(0\) です。
電子に働く力は、問2で求めた電場からの力 \(F = \displaystyle\frac{eV}{l}\) と、運動方向と逆向きに働く抵抗力 \(kv\) です。
力のつり合いの式は、これらの力の大きさが等しいとおいて、

$$\frac{eV}{l} = kv \quad \cdots ③$$

この式から速さ \(v\) を求めます。

使用した物理公式

  • 力のつり合い(合力=0)
計算過程

式③の両辺を \(k\) で割ると、速さ \(v\) が求まります。

$$v = \frac{eV}{kl}$$

計算方法の平易な説明
  1. 電子は電気の坂道(電場)から力を受けて進もうとしますが、導体の中を進むと邪魔(抵抗力)も受けます。
  2. 電子の速さが一定になるのは、進もうとする力と邪魔する力(抵抗力 \(kv\))がちょうど同じ大きさになったときです。
  3. (2)で進もうとする力は \(\frac{eV}{l}\) と分かったので、「\(\frac{eV}{l} = kv\)」という式が成り立ちます。
  4. この式から速さ \(v\) を求めると、\(v = \frac{eV}{kl}\) となります。
結論と吟味

自由電子の一定の速さ(ドリフト速度)は \(\displaystyle\frac{eV}{kl}\) [m/s] です。印加電圧\(V\)に比例し、抵抗力の係数\(k\)や導体の長さ\(l\)に反比例することがわかります。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{eV}{kl}\)

問4 導体を流れる電流

思考の道筋とポイント

電流 \(I\) は、単位時間あたりに導体の断面を通過する電気量として定義されます。自由電子の数密度 \(n\)、電子1個の電荷の大きさ \(e\)、導体の断面積 \(S\)、電子のドリフト速度 \(v\) を用いて、電流の公式 \(I = enSv\) を適用します。この設問では、電流 \(I\) をこれらの基本的な物理量(特に \(v\) をそのまま用いて)で表すことが求められています。

この設問における重要なポイント

  • 電流の微視的定義 \(I=enSv\)。
  • 各物理量(\(e, n, S, v\))が何を表すかを理解していること。
  • この設問では、\(v\) を問3で求めた具体的な式で置き換えず、記号 \(v\) のまま用いて \(I\) を表す。

具体的な解説と立式

電流 \(I\) は、導体の断面を単位時間に通過する自由電子の総電荷量です。
自由電子の数密度が \(n \text{ [個/m}^3\text{]}\)、電子の速さが \(v \text{ [m/s]}\)、導体の断面積が \(S \text{ [m}^2\text{]}\)、電子1個の電荷の大きさが \(e \text{ [C]}\) であるとき、電流 \(I\) は次のように表されます。

$$I = enSv \quad \cdots ④$$

これが求める電流の式となります。

使用した物理公式

  • 電流の定義: \(I = enSv\)
計算過程

式④がそのまま答えとなります。設問は速さ \(v\) を用いて電流 \(I\) を表すことを求めているため、ここで問3で求めた \(v\) の具体的な biểu thức (\(eV/(kl)\)) を代入する必要はありません。

$$I = enSv$$

計算方法の平易な説明
  1. 電流とは、1秒間に導線の断面を通り過ぎる電気の量のことです。
  2. 電子の速さが \(v\)、導線の断面積が \(S\) なので、1秒間に \(S \times v\) の体積分だけ電子が移動します。
  3. この体積の中にいる電子の数は、電子の密度 \(n\) を掛けて \(nSv\) 個です。
  4. 電子1個の電気の大きさが \(e\) なので、通り過ぎる電気の総量は \(e \times nSv\) となります。これが電流 \(I\) です。この問題では、この形で答えます。
結論と吟味

導体を流れる電流は \(enSv\) [A] です。この表式は、電流がキャリアの電荷、数密度、断面積、およびドリフト速度にどのように依存するかを直接的に示しています。次の設問(5)で電気抵抗を求める際には、この \(v\) に(3)の結果を代入した形が用いられます。

解答 (4) \(enSv\)

問5 導体の電気抵抗

思考の道筋とポイント

オームの法則 \(V=RI\) の関係から、電気抵抗 \(R\) は \(R=V/I\) と表せます。問4で電流 \(I\) を \(v\) を用いて表し、その \(v\) は問3で \(V\) を含む形で求まっているので、これらを組み合わせて \(I\) を \(V\) の式で表し、\(R=V/I\) に代入して \(R\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • オームの法則 \(V=RI\)。
  • \(R=V/I\) の関係を用いる。
  • 問4の \(I=enSv\) と問3の \(v=eV/(kl)\) を組み合わせて \(I\) を \(V\) で表す。

具体的な解説と立式

オームの法則によれば、電圧 \(V\) と電流 \(I\)、電気抵抗 \(R\) の間には \(V=RI\) の関係があります。
これを \(R\) について解くと、

$$R = \frac{V}{I} \quad \cdots ⑤$$

ここで、問4の \(I=enSv\) に、問3で求めた \(v = \displaystyle\frac{eV}{kl}\) を代入して得られる電流 \(I\) の表式を用います。
$$I = enS \left(\frac{eV}{kl}\right) = \frac{e^2nSV}{kl} \quad \cdots ⑤’$$

式⑤に式⑤’を代入して \(R\) を求めます。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=RI\)
  • 電流の定義: \(I=enSv\) (および \(v\) の導出結果)
計算過程

式⑤に、式⑤’ (\(I = \displaystyle\frac{e^2nSV}{kl}\)) を代入します。

$$R = \frac{V}{\frac{e^2nSV}{kl}} = V \cdot \frac{kl}{e^2nSV}$$

分子と分母の \(V\) を約分すると、

$$R = \frac{kl}{e^2nS}$$

計算方法の平易な説明
  1. 電気抵抗 \(R\) は、オームの法則から「電圧 \(V\) ÷ 電流 \(I\)」で計算できます。
  2. (4)で電流 \(I\) は \(enSv\) と表され、(3)でその速さ \(v\) は \(\frac{eV}{kl}\) と分かりました。なので、これらを組み合わせると電流 \(I\) は \(\frac{e^2nSV}{kl}\) となります。
  3. これを \(R = V/I\) の式に入れると、\(R = \frac{kl}{e^2nS}\) となります。
結論と吟味

導体の電気抵抗は \(\displaystyle\frac{kl}{e^2nS}\) [Ω] です。抵抗は導体の長さ\(l\)に比例し、断面積\(S\)に反比例することがこの式からもわかります。また、材質によって決まるミクロな量(\(k, e, n\))にも依存します。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{kl}{e^2nS}\)

問6 導体の抵抗率

思考の道筋とポイント

電気抵抗 \(R\) と抵抗率 \(\rho\)、導体の長さ \(l\)、断面積 \(S\) の間には \(R = \rho \frac{l}{S}\) という関係があります。問5で求めた \(R\) の表式をこの形と比較することで、抵抗率 \(\rho\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 抵抗 \(R\) と抵抗率 \(\rho\) の関係式 \(R = \rho \frac{l}{S}\)。
  • 問5で求めた \(R\) の表式と比較する。

具体的な解説と立式

導体の電気抵抗 \(R\) は、その抵抗率 \(\rho\)、長さ \(l\)、断面積 \(S\) を用いて次のように表されます。

$$R = \rho \frac{l}{S} \quad \cdots ⑥$$

この式と、問5で得られた \(R = \displaystyle\frac{kl}{e^2nS}\) の表式を比較します。

使用した物理公式

  • 抵抗と抵抗率の関係: \(R = \rho \frac{l}{S}\)
計算過程

問5で得られた \(R = \displaystyle\frac{kl}{e^2nS}\) を、式⑥の形 \(R = \rho \frac{l}{S}\) と比較するために書き換えます。

$$R = \left(\frac{k}{e^2n}\right) \frac{l}{S}$$

この2つの式を比較すると、抵抗率 \(\rho\) に対応する部分は \(\displaystyle\frac{k}{e^2n}\) であることがわかります。

$$\rho = \frac{k}{e^2n}$$

計算方法の平易な説明
  1. 電気抵抗 \(R\) は、物質の種類で決まる「抵抗率 \(\rho\)」と、導線の「長さ \(l\)」、「断面積 \(S\)」を使って \(R = \rho \frac{l}{S}\) と表せることが知られています。
  2. (5)で求めた \(R = \frac{kl}{e^2nS}\) の式を、この形になるように見比べます。
  3. すると、\(\rho\) に当たる部分が \(\frac{k}{e^2n}\) だと分かります。
結論と吟味

導体の抵抗率は \(\displaystyle\frac{k}{e^2n}\) [Ω·m] です。抵抗率は導体の材質によって決まる物性値であり、自由電子の運動を妨げる抵抗力の係数 \(k\)、電気素量 \(e\)、自由電子の数密度 \(n\) といったミクロな物理量で表されることが示されました。

解答 (6) \(\displaystyle\frac{k}{e^2n}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電場と電位の関係 (\(V=El\)): 一様な導体にかかる電圧と内部電場の基本的な関係。
  • 荷電粒子の受ける力 (\(F=eE\)): 電場中の電子が受ける力の大きさ。
  • 力のつり合いと終端速度(ドリフト速度): 電子が一定速度で動く場合、電場からの力と抵抗力がつり合っている。
  • 電流の微視的表現 (\(I=enSv\)): 電流を電子の運動の観点から記述する重要な式。
  • オームの法則の導出: 上記の法則を組み合わせることで、 macroscopic なオームの法則 (\(V=RI\)) が microscopic なパラメータから導かれるプロセス。
  • 抵抗と抵抗率の関係 (\(R=\rho l/S\)): 抵抗値が物質固有の抵抗率と形状(長さ、断面積)で決まること。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 半導体中のキャリア(正孔と電子)の運動を考える問題。
    • ホール効果など、磁場中での荷電粒子の運動が加わる問題の基礎。
    • 温度による抵抗率の変化を説明するモデル(\(n\) や \(k\) が温度に依存する)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 荷電粒子の運動モデル: どのような力が働き、どのように運動状態(加速か等速か)が決まるかを把握する。
    2. 電流の定義の適用: 電荷、数密度、速さ、断面積から電流を求める流れを理解する。
    3. マクロな法則とミクロなモデルの接続: オームの法則や抵抗率の式を、電子レベルのパラメータで表現することを目指す。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電荷の符号と力の向き: 電子の電荷は負であるため、電場の向きと受ける力の向きは逆になる。電流の向きと電子の運動方向も逆。
    • 対策: 図を描いて力の向きや運動方向を丁寧に確認する。
  • 各文字の意味の混同: \(n\)(数密度)、\(N\)(個数)、\(e\)(電気素量)などの意味を正確に把握する。
    • 対策: 問題文で与えられた物理量をリストアップし、それぞれの単位や意味を確認する。
  • 電流 \(I=enSv\) の \(v\) の意味: これは個々の電子のランダムな熱運動の速さではなく、電場による平均的な偏った速度(ドリフト速度)である。
    • 対策: ドリフトモデルの仮定を理解する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 自由電子の流れ: パチンコ台の釘の間を玉が落ちていくように、電子がイオンに衝突しながらも全体として電場に引かれて流れていくイメージ。
    • 抵抗力: 電子がイオンに衝突することで受ける「邪魔」の力。速いほど衝突頻度が増し、抵抗力も大きくなるというモデル。
    • 電流: 一定時間内に特定の断面を通過する「電子の粒の数 × 1粒あたりの電気量」。
  • 図示の有効性:
    • 導体と電場、電子の運動方向、力の向きなどを図示すると関係が整理しやすい。
    • 電流を考える際に、\(v \Delta t\) の長さの円柱内の電子が断面を通過する図を描くと、\(I=enSv\) の理解が深まる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V=El\): 一様な電場を仮定しているため、電位(スカラー場)と電場(ベクトル場)の最も基本的な関係式の一つ。
  • \(F=eE\): 電荷が電場から受ける力の定義そのもの。
  • 力のつり合い (\(eE=kv\)): 「一定の速さで移動する」という記述から、加速度がゼロ、つまり合力がゼロであると判断し、作用する力をリストアップして立式する。
  • \(I=enSv\): 電流の定義を、多数の荷電粒子の集団的な運動として捉えた表現。
  • \(R=V/I\): オームの法則による抵抗の定義。
  • \(R=\rho l/S\): 抵抗が物質の種類(\(\rho\))と形状(\(l,S\))で決まることを示す実験則に基づく関係式。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 電場E: \(V=El\) から \(E=V/l\)。
  2. (2) 電子への力F: \(F=eE\) に(1)を代入し \(F=eV/l\)。
  3. (3) 電子の速さv: 力のつり合い \(eE=kv\) に(1)を代入し \(eV/l=kv\)、よって \(v=eV/(kl)\)。
  4. (4) 電流I: \(I=enSv\)。
  5. (5) 抵抗R: \(I=enS(eV/(kl))\) としてから \(R=V/I\) に代入し \(R=kl/(e^2nS)\)。
  6. (6) 抵抗率ρ: \(R=\rho l/S\) と(5)を比較し、\( \rho = k/(e^2n)\)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の整理: 多くの物理定数や変数が登場するので、どの文字が何を表すか常に意識する。
  • 分数の計算: \(R=V/I\) の計算などで分数の割り算が出てくるので、逆数を掛ける際に間違いやすい。丁寧に処理する。
  • 単位の確認: 各ステップで得られた物理量の単位が正しいかを確認する習慣をつける。例えば、抵抗率の単位が[Ω·m]になるかなど。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な依存関係の確認:
    • 抵抗\(R\)が導体の長さ\(l\)に比例し、断面積\(S\)に反比例するという結果は、日常的な経験や他の知識と整合するか。
    • 抵抗率\(\rho\)が、電子の動きにくさ(\(k\))に比例し、電子の数密度(\(n\))や電荷(\(e\))の2乗に反比例するという結果は物理的に妥当か。キャリアが多いほど、また電荷が大きいほど電気は流れやすくなる(抵抗が小さくなる)はず。
  • 式の次元解析: 各式の両辺の単位(次元)が一致しているかを確認する。

問題113 (愛知工大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、同じ起電力と内部抵抗を持つ2個の電池を直列または並列に接続し、外部抵抗に電流を流したときの、電池1個の端子電圧をそれぞれ求める問題です。電池の接続方法によって回路全体の電流や各電池にかかる負担がどう変わるかを理解することがポイントとなります。

与えられた条件
  • 電池: 2個。各電池の起電力は \(E\)、内部抵抗は \(r\)。
  • 外部抵抗: 抵抗値 \(R\)。
問われていること
  1. 2個の電池を直列につないで抵抗Rに接続したときの、電池1個の端子電圧。
  2. 2個の電池を並列につないで抵抗Rに接続したときの、両者共通の端子電圧。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くにあたって中心となるのは、以下の物理法則や概念です。

  • 電池の直列接続: 全体の起電力は各電池の起電力の和、全体の内部抵抗は各電池の内部抵抗の和。
  • 電池の並列接続 (同一電池の場合): 全体の起電力は1個の電池の起電力に等しい。全体の内部抵抗は、各電池の内部抵抗を並列合成したものと考えることができる(ただし、電流の扱いからキルヒホッフの法則を用いるのが一般的)。
  • オームの法則: 回路全体や部分に対して適用 \(V=IR\)。
  • 電池の端子電圧: \(V_{\text{端子}} = E – Ir\) (\(E\)は起電力、\(I\)は電池を流れる電流、\(r\)は内部抵抗)。電流が電池の正極から流れ出す向きを正とする。
  • キルヒホッフの法則:
    • 第1法則(電流則): 回路中の任意の接続点に流入する電流の総和と流出する電流の総和は等しい。
    • 第2法則(電圧則): 回路中の任意の閉ループにおいて、起電力の総和と電圧降下の総和は等しい。

問1 電池を直列につないだ場合の電池1個の端子電圧

思考の道筋とポイント

2個の同一電池を直列に接続した場合、回路全体の起電力と内部抵抗をまず求めます。次に、その全体としての電池が外部抵抗\(R\)に接続されたときの回路電流をオームの法則を用いて計算します。最後に、電池1個の端子電圧の公式 \(V_{\text{端子}} = E – Ir\) を用いて、端子電圧を算出します。このとき、\(I\) は電池1個を流れる電流であり、直列接続なので回路全体の電流に等しくなります。

この設問における重要なポイント

  • 直列接続された電池全体の起電力は \(E_{\text{全}} = E+E = 2E\)。
  • 直列接続された電池全体の内部抵抗は \(r_{\text{全}} = r+r = 2r\)。
  • 回路を流れる電流 \(I\) は、全体の起電力と全体の抵抗(外部抵抗\(R\) + 全内部抵抗\(r_{\text{全}}\))から求める。
  • 電池1個の端子電圧は \(E – Ir\) で計算する(\(I\) はその電池を流れる電流)。

具体的な解説と立式

2個の電池を直列に接続すると、全体の起電力 \(E_{\text{直列}}\) は各電池の起電力の和となり、全体の内部抵抗 \(r_{\text{直列}}\) も各電池の内部抵抗の和となります。

$$E_{\text{直列}} = E + E = 2E \quad \cdots ①$$
$$r_{\text{直列}} = r + r = 2r \quad \cdots ②$$

この直列電池が外部抵抗 \(R\) に接続された回路を考えます。回路全体を流れる電流を \(I\) とすると、オームの法則より、

$$(R + r_{\text{直列}})I = E_{\text{直列}} \quad \cdots ③$$

電池1個の端子電圧 \(V_{\text{端子1個}}\) は、その電池の起電力を \(E\)、内部抵抗を \(r\)、その電池を流れる電流を \(I\)(直列なので回路電流と同じ)として、次のように表されます。

$$V_{\text{端子1個}} = E – Ir \quad \cdots ④$$

まず式③から電流 \(I\) を求め、それを式④に代入して端子電圧を計算します。

使用した物理公式

  • 電池の直列接続: \(E_{\text{全}} = \sum E_i\), \(r_{\text{全}} = \sum r_i\)
  • オームの法則: \(V=IR\) (回路全体に適用)
  • 電池の端子電圧: \(V_{\text{端子}} = E – Ir\)
計算過程

式①と式②を式③に代入して電流 \(I\) を求めます。

$$(R + 2r)I = 2E$$
$$I = \frac{2E}{R+2r} \quad \cdots ⑤$$

次に、この電流 \(I\) を式④に代入して、電池1個の端子電圧 \(V_{\text{端子1個}}\) を求めます。

$$V_{\text{端子1個}} = E – r \left( \frac{2E}{R+2r} \right)$$

共通因子 \(E\) でくくり、通分します。

$$V_{\text{端子1個}} = E \left( 1 – \frac{2r}{R+2r} \right) = E \left( \frac{R+2r-2r}{R+2r} \right) = E \frac{R}{R+2r}$$

計算方法の平易な説明
  1. 2つの電池を直列につなぐと、電圧は2倍 (\(2E\))、内部の邪魔(内部抵抗)も2倍 (\(2r\)) になります。
  2. この「大きな電池」に抵抗 \(R\) をつなぐので、回路全体の抵抗は \(R+2r\) です。
  3. 流れる電流 \(I\) は、オームの法則から「全体の電圧 ÷ 全体の抵抗」で \(I = \frac{2E}{R+2r}\) となります。
  4. 電池1個から見たとき、実際に外に出てくる電圧(端子電圧)は、電池が本来持っている電圧 \(E\) から、電池内部での電圧ロス (\(Ir\)) を引いたものです。つまり \(E-Ir\)。
  5. 計算した \(I\) を代入すると、端子電圧は \(E \frac{R}{R+2r}\) と求まります。
結論と吟味

直列接続の場合、電池1個の端子電圧は \(\displaystyle\frac{R}{R+2r}E\) です。
この結果から、\(R\) が大きいほど(外部抵抗が大きいほど)、\(I\) は小さくなり、端子電圧は \(E\) に近づきます。逆に \(R\) が小さいほど \(I\) は大きくなり、内部抵抗による電圧降下 \(Ir\) が大きくなるため、端子電圧は \(E\) よりかなり小さくなります。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{R}{R+2r}E\)

問2 電池を並列につないだ場合の共通の端子電圧

思考の道筋とポイント

2個の同一電池を並列に接続した場合を考えます。この場合、各電池から流れ出す電流は等しいと考えることができます(対称性より)。各電池から流れ出す電流を \(I_1\) とすると、外部抵抗 \(R\) を流れる電流は \(2I_1\) となります。
キルヒホッフの第2法則(電圧則)を、1つの電池と外部抵抗を含む閉ループに適用して \(I_1\) を求めます。その後、電池1個の端子電圧 \(V_{\text{端子}} = E – I_1 r\) を計算します。これが両者に共通の端子電圧となります。

この設問における重要なポイント

  • 同一電池の並列接続では、全体の起電力は \(E\) と考えられる(端子電圧が共通になるため)。
  • 各電池から流れる電流を \(I_1\) とすると、外部抵抗 \(R\) には \(2I_1\) の電流が流れる。
  • キルヒホッフの電圧則を適用して \(I_1\) を求める。
  • 電池1個の端子電圧は \(E – I_1 r\) で計算する。

具体的な解説と立式

2個の同一電池を並列に接続し、外部抵抗 \(R\) につなぎます。
各電池から流れ出す電流を \(I_1\) とします。すると、対称性から2つの電池は同じように動作し、外部抵抗 \(R\) には合計で \(2I_1\) の電流が流れます。
1つの電池、その内部抵抗 \(r\)、そして外部抵抗 \(R\) を含む閉ループに対してキルヒホッフの第2法則を適用します。このループでは、電池の起電力 \(E\) が、内部抵抗での電圧降下 \(I_1 r\) と外部抵抗での電圧降下 \(R(2I_1)\) の和に等しくなります。

$$E = I_1 r + R(2I_1) \quad \cdots ⑥$$

この式から電流 \(I_1\) を求めます。
電池の共通の端子電圧 \(V_{\text{端子共通}}\) は、1つの電池に着目して、

$$V_{\text{端子共通}} = E – I_1 r \quad \cdots ⑦$$

で与えられます。式⑥から \(I_1\) を求め、式⑦に代入します。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
  • 電池の端子電圧: \(V_{\text{端子}} = E – Ir\)
計算過程

式⑥を \(I_1\) について整理します。

$$E = I_1 (r + 2R)$$
$$I_1 = \frac{E}{r+2R} \quad \cdots ⑧$$

次に、この \(I_1\) を式⑦に代入して、共通の端子電圧 \(V_{\text{端子共通}}\) を求めます。

$$V_{\text{端子共通}} = E – r \left( \frac{E}{r+2R} \right)$$

共通因子 \(E\) でくくり、通分します。

$$V_{\text{端子共通}} = E \left( 1 – \frac{r}{r+2R} \right) = E \left( \frac{r+2R-r}{r+2R} \right) = E \frac{2R}{r+2R}$$

計算方法の平易な説明
  1. 2つの電池を並列につなぐと、全体の電圧は \(E\) のままですが、電流は2つの電池で分担して流します。
  2. 1つの電池から流れる電流を \(I_1\) とすると、抵抗 \(R\) には \(2I_1\) の電流が流れます。
  3. 1つの電池と抵抗 \(R\) を含む回路ループを考えると、「電池の電圧 \(E\)」=「内部抵抗でのロス \(I_1 r\)」+「外部抵抗 \(R\) での電圧 \(R \times 2I_1\)」という式が成り立ちます。
  4. この式から \(I_1 = \frac{E}{r+2R}\) が求まります。
  5. 電池の端子電圧は、\(E – I_1 r\) なので、計算した \(I_1\) を代入すると、\(E \frac{2R}{r+2R}\) となります。
結論と吟味

並列接続の場合、両者共通の端子電圧は \(\displaystyle\frac{2R}{r+2R}E\) です。
直列接続の場合と比較すると、流れる電流や端子電圧の特性が異なります。例えば、外部抵抗 \(R\) が内部抵抗 \(r\) に比べて非常に小さい場合 (\(R \ll r\))、並列では端子電圧は \(E (2R/r)\) となり、これは \(R\) が小さいと非常に小さくなります。一方、直列の場合は \(E(R/2r)\) となり、やはり小さいですが、電流の供給能力という点では並列の方が有利な場合があります(電池の消耗を抑えつつ大電流を流したい場合など)。逆に \(R \gg r\) の場合、どちらの接続でも端子電圧はほぼ \(E\) に近づきます。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{2R}{r+2R}E\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電池の端子電圧: \(V = E – Ir\)。電池から電流を取り出すとき、内部抵抗によって電圧が降下する。
  • 電池の直列接続: 起電力は和、内部抵抗も和。電流は各電池で共通。
  • 電池の並列接続 (同一電池): 端子電圧は共通。各電池が分担して電流を供給する。キルヒホッフの法則が有効。
  • オームの法則: 回路全体、または回路の一部に対して適用できる普遍的な法則。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 異なる起電力・内部抵抗を持つ電池の直列・並列接続。
    • 複数の抵抗が複雑に接続された回路における各部の電流・電圧。
    • 最大電力を取り出すための外部抵抗の条件(整合条件)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 回路の接続形態の正確な把握: 電池や抵抗が直列か並列か、どこが分岐・合流点かを図から読み取る。
    2. 電流の設定: 未知の電流を文字で置き、キルヒホッフの第1法則(電流則)を考慮して、独立な電流の数を最小限にする。
    3. 閉ループの選択: キルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用する閉ループを適切に選ぶ。未知数と同じ数の独立な方程式を立てる必要がある。
    4. 端子電圧の定義の再確認: どの部分の電位差を端子電圧として問われているかを明確にする。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 直列と並列の内部抵抗の扱いの混同: 直列なら和、並列なら逆数和の逆数(同一なら\(r/n\))。
    • 対策: 基本的な合成抵抗の公式を正確に覚えておく。
  • 並列接続時の電流: 各電池から流れる電流と、外部抵抗を流れる電流の関係を誤る。
    • 対策: 電流則を意識し、図に電流を書き込んで考える。
  • 端子電圧の計算での \(I\) の取り違い: 電池1個の端子電圧を計算する際に、その電池自身を流れる電流を用いる必要がある。
    • 対策: 常にどの部分の電流・電圧を考えているのかを明確にする。
  • キルヒホッフの法則の符号のミス: 起電力の向き、電圧降下の向きを間違えて式を立てる。
    • 対策: 電流の向きを仮定し、それに従って電位の上がり下がりを丁寧に追う。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 電池の直列: ポンプを直列につなぎ、より高い位置へ水を押し上げる(起電力増大)が、ポンプ自身の抵抗も増えるイメージ。
    • 電池の並列: 同じ高さのポンプを並列につなぎ、より多くの水を流せるようにする(電流供給能力増大、電池の消耗分散)イメージ。
    • 内部抵抗: ポンプ内部の摩擦や水路の細さによる圧力損失(電圧降下)のイメージ。
    • 端子電圧: ポンプの出口で実際に得られる水圧(電圧)のイメージ。
  • 図示の有効性:
    • 回路図に電流の向きと大きさを仮定して書き込む。
    • キルヒホッフの電圧則を適用するループを色分けするなどして明示する。
    • 各点の電位を想定して書き込む(特に接地点を0Vとして)。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(E_{\text{全}}=2E, r_{\text{全}}=2r\) (直列時): 電位差と抵抗が直線上(一筆書き)に加算されていくことから。
  • キルヒホッフの法則 (並列時): 電流の分岐・合流があり、単純な合成起電力・合成内部抵抗の考え方が複雑になるため、より基本的な電流則・電圧則に立ち返る。
  • \(V_{\text{端子}} = E – Ir\): 電池内部でのエネルギー消費(電圧降下)を考慮した、電池が外部に供給できる実際の電位差の表現。起電力という「理想的な能力」から「内部損失」を引いたもの。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 直列接続:
    1. 回路全体の起電力 \(E_{\text{全}}\) と内部抵抗 \(r_{\text{全}}\) を求める。
    2. 回路全体にオームの法則を適用し、電流 \(I\) を求める: \(I = E_{\text{全}} / (R + r_{\text{全}})\)。
    3. 電池1個の端子電圧を \(V = E – Ir\) で計算する。
  2. (2) 並列接続:
    1. 1つの電池から流れる電流を \(I_1\) とし、外部抵抗 \(R\) を流れる電流を \(2I_1\) と設定する。
    2. 1つの電池を含む閉ループにキルヒホッフの電圧則を適用し、\(I_1\) についての方程式を立てる: \(E = I_1 r + (2I_1)R\)。
    3. \(I_1\) を解く。
    4. 電池1個の端子電圧を \(V = E – I_1 r\) で計算する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の整理: \(E, r, R, I, I_1\) など、多くの記号が出てくるので、それぞれの意味を明確に区別する。
  • 分数の計算: 通分や約分を丁寧に行う。特に端子電圧の最終的な整理の際に注意。
  • 代入の正確性: あるステップで求めた電流 \(I\) や \(I_1\) を、次のステップの式に正確に代入する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な意味の確認:
    • 端子電圧が起電力 \(E\) を超えないこと(通常の電池の使用時)。\(E\) より小さくなるのは内部抵抗による電圧降下のため。
    • 外部抵抗 \(R\) が非常に大きい場合(開放に近い)、電流はほとんど流れず、端子電圧はほぼ \(E\) になるはず。式がそうなっているか確認。
    • 外部抵抗 \(R\) が非常に小さい場合(短絡に近い)、大きな電流が流れ、端子電圧は0に近づくはず。
  • 両極端なケースでの比較:
    • 例えば、内部抵抗 \(r\) がゼロの理想的な電池なら、端子電圧は常に \(E\) となるはず。式がそうなっているか確認。

問題114 (センター試験+愛媛大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、抵抗と電池で構成された直流回路に関するものです。キルヒホッフの法則やオームの法則を用いて、回路の各部分を流れる電流や電位差を求めます。また、ホイートストンブリッジの平衡条件についても問われています。単位の扱い(kΩ と mA から V を導くなど)にも注意が必要です。

与えられた条件
  • 回路構成: 図に示す通り。抵抗値は 1kΩ と 2kΩ。電池を含む。
  • BC間の抵抗 (1kΩ) に流れる電流: 1mA (BからCの向き)。
  • CD間の抵抗 (1kΩ) に流れる電流: 3mA (CからDの向き)。
  • 抵抗BDは2kΩ(模範解答の記述より)。
問われていること
  1. (1) AC間の2kΩの抵抗に流れる電流 \(I_{AC}\)。
  2. (2) AD間の電位差 \(V_{AD}\)。
  3. (3) AB間の1kΩの抵抗に流れる電流 \(I_{AB}\) (問題文では \(I_2\) とされている)。
  4. (4) BC間に電流が流れなくなるようにするために、CD間の抵抗を何kΩのものに取り替えればよいか。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くにあたって中心となるのは、以下の物理法則や概念です。

  • オームの法則: \(V = IR\)。抵抗 \(R\) の両端の電位差 \(V\) と流れる電流 \(I\) の関係。
  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路中の任意の接続点(接点)において、流入する電流の総和と流出する電流の総和は等しい。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路中の任意の閉じた経路(ループ)を一周するとき、起電力の総和と電圧降下の総和は等しい。あるいは、経路に沿った電位の変化の総和はゼロ。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件: ブリッジ回路の中央の検流計(この問題ではBC間の抵抗に相当する部分)に電流が流れない条件。対向する抵抗の積が等しい(\(R_1 R_4 = R_2 R_3\))、または抵抗の比が等しい(\(R_1/R_2 = R_3/R_4\))。

この問題では、電流の単位が mA(ミリアンペア)、抵抗の単位が kΩ(キロオーム)で与えられています。これらの単位を用いると、電圧は \(V = (I \text{ [mA]}) \times (R \text{ [kΩ]}) = (I \times 10^{-3} \text{ [A]}) \times (R \times 10^3 \text{ [Ω]}) = IR \text{ [V]}\) となり、数値計算上は mA と kΩ の値をそのまま掛けて V の単位で電圧が得られるので便利です。

問1 AC間の2kΩの抵抗に流れる電流

思考の道筋とポイント

点Cに注目し、キルヒホッフの第1法則(電流則)を適用します。点Cには、AC間の抵抗から電流 \(I_{AC}\) が流れ込み、BC間の抵抗から電流 \(I_{BC} = 1\text{mA}\) が流れ込みます。そして、CD間の抵抗へ電流 \(I_{CD} = 3\text{mA}\) が流れ出しています。これらの電流の関係から \(I_{AC}\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 回路の接続点Cに着目する。
  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 接続点への流入電流の和 = 流出電流の和。
  • 各電流の向きを正しく把握する。

具体的な解説と立式

点Cにおいて、キルヒホッフの第1法則を適用します。
AC間の抵抗を流れる電流を \(I_{AC}\)(AからCへ流れる向きを正)とします。
BC間の抵抗を流れる電流は \(I_{BC} = 1\text{mA}\)(BからCへ流れる向き)。
CD間の抵抗を流れる電流は \(I_{CD} = 3\text{mA}\)(CからDへ流れる向き)。

点Cへの流入電流の和は \(I_{AC} + I_{BC}\) です。
点Cからの流出電流は \(I_{CD}\) です。
したがって、次の関係式が成り立ちます。

$$I_{AC} + I_{BC} = I_{CD} \quad \cdots ①$$

この式に既知の値を代入して \(I_{AC}\) を求めます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則)
計算過程

式①に \(I_{BC} = 1\text{mA}\) と \(I_{CD} = 3\text{mA}\) を代入します。

$$I_{AC} + 1\text{mA} = 3\text{mA}$$

\(I_{AC}\) について解くと、

$$I_{AC} = 3\text{mA} – 1\text{mA} = 2\text{mA}$$

計算方法の平易な説明
  1. 点Cに流れ込む電気の量と、点Cから流れ出る電気の量は同じはずです(電気が途中で消えたり増えたりしないので)。
  2. ACから流れ込む電流を \(I_{AC}\)、BからCへ流れ込む電流が1mAです。これらが合わさって、CからDへ3mAの電流が流れ出ています。
  3. つまり、「\(I_{AC}\) + 1mA = 3mA」という式が成り立ちます。
  4. これを解くと、\(I_{AC} = 2\text{mA}\) となります。
結論と吟味

AC間の2kΩの抵抗に流れる電流は \(2\text{mA}\) です。電流の単位もmAで適切です。

解答 (1)2 mA

問2 AD間の電位差

思考の道筋とポイント

AD間の電位差を求めます。これは、点Aを基準としたときの点Dの電位、あるいはその逆を考えることと同じです。経路A→C→Dに沿って各抵抗での電圧降下を計算し、それらを合計することでAD間の電位差を求めます。オームの法則 \(V=IR\) を各抵抗に適用します。

この設問における重要なポイント

  • 電位差の計算経路(A→C→D)を選ぶ。
  • 各抵抗における電圧降下をオームの法則 (\(V=IR\)) で計算する。電流の単位がmA、抵抗の単位がkΩなので、電圧はVで得られる。
  • 各電圧降下を足し合わせる(電位が下がる方向に進む場合は加算)。

具体的な解説と立式

AD間の電位差 \(V_{AD}\) を、経路A→C→Dに沿って計算します。
AC間の電位差 \(V_{AC}\) は、抵抗 \(R_{AC} = 2\text{kΩ}\) に電流 \(I_{AC} = 2\text{mA}\) (問1の結果) が流れるので、

$$V_{AC} = I_{AC} R_{AC} \quad \cdots ②$$

CD間の電位差 \(V_{CD}\) は、抵抗 \(R_{CD} = 1\text{kΩ}\) に電流 \(I_{CD} = 3\text{mA}\) が流れるので、

$$V_{CD} = I_{CD} R_{CD} \quad \cdots ③$$

AD間の電位差 \(V_{AD}\) は、これらの和となります(電流の向きからAが高電位、Dが低電位と想定)。

$$V_{AD} = V_{AC} + V_{CD} \quad \cdots ④$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = IR\)
  • 電位差の経路に沿った和
計算過程

式②に値を代入します (単位: mA \(\times\) kΩ = V)。

$$V_{AC} = (2\text{mA}) \times (2\text{kΩ}) = 4\text{V}$$

式③に値を代入します。

$$V_{CD} = (3\text{mA}) \times (1\text{kΩ}) = 3\text{V}$$

式④にこれらの値を代入します。

$$V_{AD} = 4\text{V} + 3\text{V} = 7\text{V}$$

計算方法の平易な説明
  1. A点からD点までの電圧の差(電位差)を調べます。A→C→Dという道順で電圧がどれだけ下がるかを見ます。
  2. AからCへ行くとき: 2kΩの抵抗に2mAの電流が流れるので、電圧は \(2\text{kΩ} \times 2\text{mA} = 4\text{V}\) 下がります。
  3. CからDへ行くとき: 1kΩの抵抗に3mAの電流が流れるので、電圧は \(1\text{kΩ} \times 3\text{mA} = 3\text{V}\) 下がります。
  4. 合計で、AからDへは \(4\text{V} + 3\text{V} = 7\text{V}\) 電圧が下がります。これがAD間の電位差です。
結論と吟味

AD間の電位差は \(7\text{V}\) です。これは電池の電圧に相当します。

解答 (2)7 V

問3 AB間の1kΩの抵抗に流れる電流 \(I_{AB}\)

思考の道筋とポイント

AB間の抵抗を流れる電流 \(I_{AB}\) (問題文の\(I_2\)) を求めます。問2でAD間の電位差が \(7\text{V}\) と分かったので、経路A→B→C→Dに沿った電圧降下の和も \(7\text{V}\) になるはずです。この経路には未知の電流 \(I_{AB}\) が含まれるので、方程式を立てて解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • AD間の電位差が、どの経路を通っても同じであること(ここでは \(7\text{V}\))。
  • 経路A→B→C→Dでの各抵抗における電圧降下を \(I_{AB}\) を用いて表す。
  • 電圧降下の総和が \(V_{AD}\) に等しいという式を立てる。

具体的な解説と立式

AD間の電位差 \(V_{AD}\) は \(7\text{V}\) です(問2の結果)。
経路A→B→C→Dに沿って電圧降下を考えます。
AB間の抵抗 \(R_{AB} = 1\text{kΩ}\) を流れる電流を \(I_{AB}\) とします。この部分の電圧降下は \(V_{AB} = I_{AB} R_{AB}\)。
BC間の抵抗 \(R_{BC} = 1\text{kΩ}\) を流れる電流は \(I_{BC} = 1\text{mA}\)。この部分の電圧降下は \(V_{BC} = I_{BC} R_{BC}\)。
CD間の抵抗 \(R_{CD} = 1\text{kΩ}\) を流れる電流は \(I_{CD} = 3\text{mA}\)。この部分の電圧降下は \(V_{CD} = I_{CD} R_{CD}\)。

これらの電圧降下の総和が \(V_{AD}\) に等しくなります。

$$V_{AB} + V_{BC} + V_{CD} = V_{AD} \quad \cdots ⑤$$

つまり、

$$I_{AB} R_{AB} + I_{BC} R_{BC} + I_{CD} R_{CD} = V_{AD} \quad \cdots ⑥$$

この式に既知の値を代入して \(I_{AB}\) を求めます。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = IR\)
  • 電位差の経路に沿った和
計算過程

式⑥に値を代入します (\(R_{AB}=1\text{kΩ}, I_{BC}=1\text{mA}, R_{BC}=1\text{kΩ}, I_{CD}=3\text{mA}, R_{CD}=1\text{kΩ}, V_{AD}=7\text{V}\))。電流の単位をmA、抵抗の単位をkΩとすると、電圧はVで計算できます。

$$I_{AB} \times 1 + 1 \times 1 + 3 \times 1 = 7$$$$I_{AB} + 1 + 3 = 7$$$$I_{AB} + 4 = 7$$
$$I_{AB} = 7 – 4 = 3\text{mA}$$

計算方法の平易な説明
  1. A点からD点までの電圧の差は \(7\text{V}\) でした。これは、A→B→C→Dという別の道順で考えても同じはずです。
  2. AからBへは、1kΩの抵抗を電流 \(I_{AB}\) で流れるので、電圧は \(I_{AB} \times 1\text{kΩ}\) だけ下がります。
  3. BからCへは、1kΩの抵抗を1mAで流れるので、電圧は \(1\text{V}\) 下がります。
  4. CからDへは、1kΩの抵抗を3mAで流れるので、電圧は \(3\text{V}\) 下がります。
  5. これらを全部足したものが \(7\text{V}\) になるので、「\(I_{AB} \times 1 + 1 + 3 = 7\)」という式ができます。
  6. これを解くと、\(I_{AB} = 3\text{mA}\) となります。
結論と吟味

AB間の1kΩの抵抗に流れる電流 \(I_{AB}\) (または\(I_2\)) は \(3\text{mA}\) です。
ここで、点Bにキルヒホッフの電流則を適用すると、流入電流 \(I_{AB}=3\text{mA}\)、流出電流はBCへの \(1\text{mA}\) とBDへの電流 \(I_{BD}\) なので、\(3\text{mA} = 1\text{mA} + I_{BD}\)。よって \(I_{BD}=2\text{mA}\) であることも分かります。

解答 (3) 3 mA

問4 BC間に電流が流れなくなるためのCD間の抵抗値

思考の道筋とポイント

BC間に電流が流れなくなる (\(I_{BC}=0\)) ということは、点Bと点Cが等電位になることを意味します。この状態は、回路ABDとACDの部分がホイートストンブリッジの平衡条件を満たしていると解釈できます。
ブリッジの辺を \(R_{AB}, R_{AC}, R_{BD}, R_{CD}’\) (\(R_{CD}’\) は新しいCD間の抵抗)とすると、平衡条件は \(\frac{R_{AB}}{R_{AC}} = \frac{R_{BD}}{R_{CD}’}\) です(辺の比が等しい)。

この設問における重要なポイント

  • BC間に電流が流れない条件は、\(V_B = V_C\)(BとCが等電位)。
  • このとき、回路はホイートストンブリッジの平衡状態にある。
  • 平衡条件: \(\frac{R_{AB}}{R_{AC}} = \frac{R_{BD}}{R_{CD}’}\)。

具体的な解説と立式

BC間に電流が流れないとき、点Bと点Cの電位は等しくなります (\(V_B = V_C\))。
このとき、抵抗 \(R_{AB}=1\text{kΩ}, R_{AC}=2\text{kΩ}, R_{BD}=2\text{kΩ}\) と新しいCD間の抵抗を \(R’_{CD}\) とすると、ホイートストンブリッジの平衡条件が成り立ちます。

$$\frac{R_{AB}}{R_{AC}} = \frac{R_{BD}}{R’_{CD}} \quad \cdots ⑦$$

この式に既知の値を代入して \(R’_{CD}\) を求めます。

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件: \(\frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_4}\) (辺の比が等しい)
計算過程

式⑦に値を代入します(単位はkΩで統一)。

$$\frac{1}{2} = \frac{2}{R’_{CD}}$$

\(R’_{CD}\) について解くと、

$$R’_{CD} = 2 \times 2 = 4\text{kΩ}$$

計算方法の平易な説明
  1. B点とC点の間に電流が流れないのは、B点とC点の電圧が同じになったときです。これは「ホイートストンブリッジが釣り合っている」という状態です。
  2. このとき、抵抗の間に特別な関係が成り立ちます。「AB間の抵抗 ÷ AC間の抵抗 = BD間の抵抗 ÷ 新しいCD間の抵抗」という比の式です。
  3. 抵抗の値は、AB=1kΩ、AC=2kΩ、BD=2kΩ です。新しいCDの抵抗を \(R’\) とすると、「\(\frac{1}{2} = \frac{2}{R’}\)」という式が成り立ちます。
  4. これを解くと、\(R’ = 4\text{kΩ}\) となります。
結論と吟味

CD間の抵抗を \(4\text{kΩ}\) のものに取り替えると、BC間には電流が流れなくなります。これはホイートストンブリッジの平衡条件を満たすためです。

解答 (4) 4

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の分岐点における電流の保存。これが(1)や(3)の考察の基礎となる。
  • オームの法則 (\(V=IR\)): 抵抗における電圧降下を計算する基本。これが(2)や(3)の電位差計算に用いられる。
  • 電位の考え方: 回路の各点の電位を考え、電位差を計算する。特に複数の経路で同じ2点間の電位差は等しいという事実が(3)で暗黙的に使われている。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件: (4)でBC間に電流が流れない条件として使われる。対辺の抵抗の比が等しい (\(\frac{R_{AB}}{R_{AC}} = \frac{R_{BD}}{R_{CD}’}\))。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • より複雑な抵抗網回路における電流・電圧の計算。
    • 電池の内部抵抗を含む回路問題。
    • コンデンサーやコイルを含む直流・交流回路の基礎。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 回路の分岐点(ノード)と閉路(ループ)を特定する。
    2. 未知の電流に仮の向きを設定し、記号を割り当てる。 (必要最小限の未知数で済むように電流則を先に考慮すると良い)
    3. 電流則を各分岐点に適用して方程式を立てる。
    4. 電圧則を独立な閉ループに適用して方程式を立てる。
    5. 得られた連立方程式を解く。
    6. ホイートストンブリッジの形を見抜く: 特定の枝路の電流が0になる条件を問われた場合、ブリッジ回路の平衡を疑う。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電流の向きの仮定と符号: キルヒホッフの法則を適用する際、最初に仮定した電流の向きと、計算結果の符号の解釈を誤る。
    • 対策: 一貫した向きの定義(例:図の矢印の向きを正)を保ち、計算結果が負なら逆向きと判断する。
  • 電圧降下と起電力の符号: キルヒホッフの電圧則で、ループを辿る際の電位の上がり下がりを間違える。
    • 対策: 電流の向きに沿って抵抗を通過すると電位は下がり、電池の負極から正極へ進むと電位は上がる、という基本を徹底する。
  • ホイートストンブリッジの条件式の誤用: 抵抗の配置と対応する辺の比を間違える。
    • 対策: ブリッジの形を正確に認識し、どの抵抗が対角にあるか、どの比が等しくなるかを公式の導出から理解しておく。
  • 単位の混在: mAとA、kΩとΩを混在させて計算し、桁を間違える。
    • 対策: 計算前に単位を統一するか、mA \(\times\) kΩ = V のような便利な関係を正しく使う。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 電流: 水路を流れる水の流れ。分岐点では流れ込む量と流れ出る量が等しい。
    • 抵抗: 水路の狭さや障害物。水が流れにくく、通過すると水位(電位)が下がる。
    • 電池: 水を高い位置へ汲み上げるポンプ。電位を上げる。
    • ホイートストンブリッジの平衡: 2つの並行な水路があり、それらを繋ぐ水路(BC間)があるとき、繋ぐ水路の両端の水位が同じなら水は流れない状態。
  • 図示の有効性:
    • 回路図に、仮定した電流の向きと記号を全て書き込む。
    • 各抵抗での電圧降下の向き(電流の向きと同じ)を矢印で示す。
    • キルヒホッフの電圧則を適用するループを明示する。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • キルヒホッフの第1法則: 電荷保存則の回路における表現。電荷が接続点で蓄積したり消滅したりしないことから導かれる。
  • オームの法則: 多くの導体材料において、電流と電圧の間に成り立つ線形な関係を表す実験則。
  • キルヒホッフの第2法則: エネルギー保存則の回路における表現。電荷が回路を一周して元の位置に戻るとき、その電位も元に戻る(静電場が保存力であることによる)。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件: キルヒホッフの法則を適用し、検流計部分の電流が0となる条件として導出される。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) \(I_{AC}\)の決定: 点Cに電流則を適用。\(I_{AC} + I_{BC} = I_{CD}\)。
  2. (2) \(V_{AD}\)の決定: 経路A→C→Dで電位降下を計算。\(V_{AD} = V_{AC} + V_{CD} = I_{AC}R_{AC} + I_{CD}R_{CD}\)。
  3. (3) \(I_{AB}\)の決定: 経路A→B→C→Dで電位降下を計算し、それが(2)の\(V_{AD}\)に等しいとおく。\(I_{AB}R_{AB} + I_{BC}R_{BC} + I_{CD}R_{CD} = V_{AD}\)。
  4. (4) ブリッジ平衡: BC間電流0 \(\rightarrow V_B = V_C\)。ホイートストンブリッジの平衡条件 \(\frac{R_{AB}}{R_{AC}} = \frac{R_{BD}}{R’_{CD}}\) を用いて \(R’_{CD}\) を解く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の取り扱い: mA と kΩ の組み合わせは V になることを意識し、途中でAやΩに変換する場合は全ての項で一貫させる。
  • 方程式の正確な立式: 特にキルヒホッフの法則では、符号のミスが結果を大きく左右する。
  • 代数の正確性: 連立方程式を解く際や、式を変形する際の基本的な計算を丁寧に行う。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 電流の向きと大きさ: 計算結果で得られた電流の向きや大きさが、回路図から予測されるものと大きくかけ離れていないか確認する。例えば、明らかに大きな抵抗には小さな電流が流れやすいなど。
  • 電位の整合性: 複数の経路で同じ2点間の電位差を計算した場合、それらが一致するか確認する(検算になる)。
  • (4)ブリッジの対称性: もし \(R_{AB}=R_{AC}\) ならば、平衡するためには \(R_{BD}=R’_{CD}\) が必要など、対称性から結果を類推できる場合がある。

問題115 (富山大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、電池、抵抗、電流計、電圧計を含む直流回路に関する問題です。電流計と電圧計が理想的なものではなく、それぞれ内部抵抗を持つという点がポイントです。図1と図2という2つの異なる接続方法における測定値から、電池の起電力、電流計の内部抵抗、抵抗Rの値、電圧計の内部抵抗を順に求めていきます。キルヒホッフの法則やオームの法則を的確に適用し、連立方程式を解いていくことが求められます。

与えられた条件
  • 電池E: 内部抵抗は無視できる。
  • 抵抗R: 抵抗値 \(R\)。
  • 電流計A: 内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) がある。
  • 電圧計V: 内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) がある。
  • 図1の接続での測定値:
    • 電流計Aの読み \(I_1 = 5.0 \text{ mA} = 5.0 \times 10^{-3} \text{ A}\)
    • 電圧計Vの読み \(V_1 = 3.5 \text{ V}\)
  • 図2の接続での測定値:
    • 電流計Aの読み \(I_2 = 4.8 \text{ mA} = 4.8 \times 10^{-3} \text{ A}\)
    • 電圧計Vの読み \(V_2 = 3.6 \text{ V}\)
問われていること
  1. (1) 電池Eの起電力 \(E\)
  2. (2) 電流計Aの内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\)
  3. (3) 抵抗Rの抵抗値 \(R\)
  4. (4) 電圧計Vの内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • オームの法則: \(V = IR\) (電圧 \(V\)、電流 \(I\)、抵抗 \(R\))
  • キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路中の任意の分岐点において、流れ込む電流の和と流れ出す電流の和は等しい。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路中の任意の閉回路において、起電力の代数和と電圧降下の代数和は等しい。
  • 電流計の性質: 回路に直列に接続し、電流を測定する。内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) がある場合、そこで \(Ir_{\text{電流計}}\) の電圧降下が生じる。
  • 電圧計の性質: 回路に並列に接続し、電圧を測定する。内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) がある場合、そこに \(V/r_{\text{電圧計}}\) の電流が流れる。

問題を解く上での全体的な戦略は、まず図2の条件から電池の起電力 \(E\) を特定することです。次に、その起電力 \(E\) の値と図1の条件を用いて電流計の内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) を求めます。続いて、図2の条件と既に求めた \(E\), \(r_{\text{電流計}}\) を用いて抵抗 \(R\) の値を求めます。最後に、図1の条件とこれまでに求めた \(E\), \(r_{\text{電流計}}\), \(R\) を用いて電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) を求めます。それぞれのステップで、回路図をよく見て、キルヒホッフの法則やオームの法則に基づいて方程式を立てていきます。

問1 電池Eの起電力 \(E\) を求めよ。

思考の道筋とポイント

図2の回路構成に着目します。電池Eには内部抵抗がないとされています。電圧計Vは、電池Eの端子間に接続されています(より正確には、電池Eと、「電流計Aと抵抗Rの直列回路」とが並列になっており、その全体の電圧を電圧計Vが測定しています)。電池の内部抵抗が無視できるため、電池の端子電圧は起電力 \(E\) に等しくなります。したがって、図2における電圧計の読み \(V_2\) が、そのまま電池Eの起電力 \(E\) となります。

この設問における重要なポイント

  • 電池の内部抵抗が無視できる場合、電池の端子電圧は起電力に等しい。
  • 図2において、電圧計Vは電池Eの端子電圧を直接測定していると解釈できる。

具体的な解説と立式

問題文より、電池Eの内部抵抗は無視できます。
図2において、電圧計Vは電池Eの端子間に接続されており、その読みが \(V_2 = 3.6 \text{ V}\) です。
電池の内部抵抗が0の場合、電池の端子電圧は起電力そのものに等しくなります。
したがって、電池Eの起電力 \(E\) は、電圧計Vの読み \(V_2\) に等しいと考えられます。

$$E = V_2 \quad \cdots ①$$

使用した物理公式

  • 電池の端子電圧と起電力の関係(内部抵抗0の場合): \(V_{\text{端子}} = E\)
計算過程

式①に与えられた値を代入します。
図2における電圧計Vの読みは \(V_2 = 3.6 \text{ V}\) です。

$$E = 3.6 \text{ V}$$

計算方法の平易な説明

電池には、電気を送り出す力(起電力 \(E\))があります。もし電池の中に抵抗(内部抵抗)がなければ、電池の両端の電圧(端子電圧)は、この起電力 \(E\) と全く同じになります。
図2では、電圧計が電池の両端の電圧を測っていて、その値が \(3.6 \text{ V}\) でした。問題文で「電池の内部抵抗は無視できる」と書かれているので、この \(3.6 \text{ V}\) がそのまま電池の起電力 \(E\) となります。

結論と吟味

電池Eの起電力 \(E\) は \(3.6 \text{ V}\) です。これは、電池の内部抵抗が無視できるという条件と、図2の電圧計の測定値から直接導かれます。単位もボルト[V]で適切です。

解答 (1) \(3.6 \text{ V}\)

問2 電流計Aの内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) を求めよ。

思考の道筋とポイント

図1の回路に着目します。電池E(起電力 \(E = 3.6 \text{ V}\))、電流計A(内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\))、そして抵抗Rと電圧計Vの並列部分からなる閉回路を考えます。
電流計Aには \(I_1 = 5.0 \text{ mA}\) の電流が流れています。この電流計を通過することで \(I_1 r_{\text{電流計}}\) の電圧降下が生じます。
抵抗Rと電圧計Vの並列部分にかかる電圧は、電圧計Vの読みである \(V_1 = 3.5 \text{ V}\) です。
キルヒホッフの第2法則をこの閉回路に適用して、\(r_{\text{電流計}}\) を含む方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 図1の回路構成を正しく理解する。
  • 電流計の内部抵抗による電圧降下を考慮する。
  • キルヒホッフの第2法則を適用する。
  • 問1で求めた起電力 \(E\) の値を使用する。

具体的な解説と立式

図1の回路において、電池E、電流計A、抵抗Rと電圧計Vの並列部分を含む閉回路を考えます。
電池の起電力は \(E\) です。
電流計Aを流れる電流は \(I_1\) であり、その内部抵抗は \(r_{\text{電流計}}\) です。したがって、電流計Aによる電圧降下は \(I_1 r_{\text{電流計}}\) です。
抵抗Rと電圧計Vの並列部分にかかる電圧は、電圧計の読み \(V_1\) です。
キルヒホッフの第2法則より、閉回路全体の電圧の関係は次のようになります。

$$E = I_1 r_{\text{電流計}} + V_1 \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
  • オームの法則(電圧降下 \(V=IR\))
計算過程

式②に、問1で求めた \(E = 3.6 \text{ V}\)、および図1の測定値 \(I_1 = 5.0 \text{ mA} = 5.0 \times 10^{-3} \text{ A}\)、\(V_1 = 3.5 \text{ V}\) を代入します。

$$3.6 \text{ V} = (5.0 \times 10^{-3} \text{ A}) \times r_{\text{電流計}} + 3.5 \text{ V}$$

この式を \(r_{\text{電流計}}\) について解きます。
まず、\(3.5 \text{ V}\) を左辺に移項します。

$$(5.0 \times 10^{-3} \text{ A}) \times r_{\text{電流計}} = 3.6 \text{ V} – 3.5 \text{ V}$$$$(5.0 \times 10^{-3} \text{ A}) \times r_{\text{電流計}} = 0.1 \text{ V}$$

次に、両辺を \(5.0 \times 10^{-3} \text{ A}\) で割ります。

$$r_{\text{電流計}} = \displaystyle\frac{0.1 \text{ V}}{5.0 \times 10^{-3} \text{ A}}$$$$r_{\text{電流計}} = \displaystyle\frac{0.1}{5.0} \times 10^3 \text{ } \Omega$$$$r_{\text{電流計}} = 0.02 \times 10^3 \text{ } \Omega$$$$r_{\text{電流計}} = 20 \text{ } \Omega$$

計算方法の平易な説明

図1の回路では、電池が電気を \(3.6 \text{ V}\) の力で送り出しています(問1の結果)。
電流計を電気が通るときに、電流計自体の抵抗(内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\))のせいで少し電圧が下がります。この電圧降下は「電流の強さ \(I_1\) × \(r_{\text{電流計}}\)」で計算できます。
電流計を通った後、残りの電圧(この場合は \(3.5 \text{ V}\)、電圧計の読み)が抵抗Rと電圧計Vの部分にかかります。
つまり、「電池の起電力 \(E\)」=「電流計での電圧降下」+「抵抗Rと電圧計Vにかかる電圧 \(V_1\)」という関係が成り立ちます。
式で書くと \(3.6 = (5.0 \times 10^{-3}) \times r_{\text{電流計}} + 3.5\) となります。
この式を解くと、電流計の内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) が \(20 \Omega\) と求まります。

結論と吟味

電流計Aの内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) は \(20 \Omega\) です。電流計の内部抵抗としては現実的な値の範囲です。単位もオーム[\(\Omega\)]で適切です。

解答 (2) \(20 \Omega\)

問3 抵抗Rの抵抗値 \(R\) を求めよ。

思考の道筋とポイント

図2の回路に着目します。電池E(起電力 \(E = 3.6 \text{ V}\))に、電流計A(内部抵抗 \(r_{\text{電流計}} = 20 \Omega\))と抵抗Rが直列に接続されたものがつながっており、この直列回路に \(I_2 = 4.8 \text{ mA}\) の電流が流れています。
電圧計Vの読み \(V_2 = 3.6 \text{ V}\) は、この電流計Aと抵抗Rの直列回路全体にかかる電圧を示しています(これは電池の端子電圧であり、起電力 \(E\) に等しい)。
したがって、電流計Aと抵抗Rを合わせた合成抵抗にオームの法則を適用することで、抵抗Rの値を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 図2の回路で、電流計Aと抵抗Rが直列接続されていることを理解する。
  • この直列回路全体にかかる電圧が \(V_2 (=E)\) である。
  • オームの法則を直列回路全体に適用する。
  • 問1で求めた \(E\) と問2で求めた \(r_{\text{電流計}}\) の値を使用する。

具体的な解説と立式

図2において、電流計A(内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\))と抵抗Rは直列に接続されています。この直列回路を流れる電流は \(I_2\) です。
この直列回路全体にかかる電圧は、電圧計Vの読み \(V_2\) であり、これは電池の起電力 \(E\) に等しいです。
したがって、オームの法則をこの直列回路全体に適用すると、次のようになります。

$$V_2 = (r_{\text{電流計}} + R) I_2 \quad \cdots ③$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=IR\)
  • 直列抵抗の合成: \(R_{\text{合成}} = R_1 + R_2\)
計算過程

式③に、与えられた値 \(V_2 = 3.6 \text{ V}\)、\(I_2 = 4.8 \text{ mA} = 4.8 \times 10^{-3} \text{ A}\)、そして問2で求めた \(r_{\text{電流計}} = 20 \Omega\) を代入します。

$$3.6 \text{ V} = (20 \Omega + R) \times (4.8 \times 10^{-3} \text{ A})$$

この式を \(R\) について解きます。
まず、両辺を \(4.8 \times 10^{-3} \text{ A}\) で割ります。

$$20 \Omega + R = \displaystyle\frac{3.6 \text{ V}}{4.8 \times 10^{-3} \text{ A}}$$$$20 \Omega + R = \displaystyle\frac{3.6}{4.8} \times 10^3 \Omega$$

ここで、\(\displaystyle\frac{3.6}{4.8} = \displaystyle\frac{36}{48} = \displaystyle\frac{3 \times 12}{4 \times 12} = \displaystyle\frac{3}{4} = 0.75\) です。

$$20 \Omega + R = 0.75 \times 10^3 \Omega$$$$20 \Omega + R = 750 \Omega$$

次に、\(20 \Omega\) を右辺に移項します。

$$R = 750 \Omega – 20 \Omega$$$$R = 730 \Omega$$

計算方法の平易な説明

図2の回路では、電流計(抵抗 \(20 \Omega\)、問2の結果)と抵抗Rがまっすぐにつながっています(直列接続)。この2つを合わせた全体の抵抗は \( (20 + R) \Omega \) です。
この直列回路全体に \(3.6 \text{ V}\) の電圧がかかっていて(電圧計の読み、これは電池の起電力でもある)、その結果 \(4.8 \text{ mA}\) の電流が流れています。
オームの法則(電圧 = 抵抗 × 電流)を使うと、 \(3.6 = (20 + R) \times (4.8 \times 10^{-3})\) という式が成り立ちます。
この式を \(R\) について解くと、\(R = 730 \Omega\) と求まります。

結論と吟味

抵抗Rの抵抗値 \(R\) は \(730 \Omega\) です。これは一般的な抵抗値として妥当な範囲です。単位もオーム[\(\Omega\)]で適切です。

解答 (3) \(730 \Omega\)

問4 電圧計Vの内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) を求めよ。

思考の道筋とポイント

図1の回路の右半分(抵抗Rと電圧計Vの並列部分)に着目します。この並列部分にかかる電圧は \(V_1 = 3.5 \text{ V}\) です。
抵抗Rの値は \(R = 730 \Omega\)(問3の結果)と分かっています。まず、抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) をオームの法則で計算します。
電流計Aを流れる全電流 \(I_1 = 5.0 \text{ mA}\) は、この分岐点で抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) と電圧計Vを流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) に分かれます(キルヒホッフの第1法則)。
これにより、電圧計Vを流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) を求めることができます。
最後に、電圧計Vにかかる電圧 \(V_1\) と電圧計Vを流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) から、オームの法則を用いて電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 図1の抵抗Rと電圧計Vが並列接続されていることを理解する。
  • 並列部分にかかる電圧は共通 (\(V_1\))。
  • キルヒホッフの第1法則(電流則)を分岐点に適用する。
  • オームの法則を各部品に適用する。
  • これまでに求めた \(R\) の値を使用する。

具体的な解説と立式

図1において、抵抗Rと電圧計Vは並列に接続されており、この並列部分にかかる電圧は \(V_1 = 3.5 \text{ V}\) です。
抵抗Rの抵抗値は \(R = 730 \Omega\) なので、抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) はオームの法則より、

$$I_R = \displaystyle\frac{V_1}{R} \quad \cdots ④$$

電流計Aを流れる全電流 \(I_1\) は、抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) と電圧計V(内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\))を流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) の和に等しいので(キルヒホッフの第1法則)、

$$I_1 = I_R + I_{\text{電圧計}} \quad \cdots ⑤$$

したがって、電圧計Vを流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) は、

$$I_{\text{電圧計}} = I_1 – I_R \quad \cdots ⑥$$

電圧計Vにかかる電圧は \(V_1\) であり、電圧計Vを流れる電流が \(I_{\text{電圧計}}\) なので、電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) はオームの法則より、

$$r_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{V_1}{I_{\text{電圧計}}} \quad \cdots ⑦$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=IR\) または \(I=V/R\) または \(R=V/I\)
  • キルヒホッフの第1法則(電流則)
計算過程

まず、式④を用いて抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) を計算します。
\(V_1 = 3.5 \text{ V}\)、\(R = 730 \Omega\) を代入します。

$$I_R = \displaystyle\frac{3.5 \text{ V}}{730 \Omega} = \displaystyle\frac{350}{73} \times 10^{-3} \text{ A} = \displaystyle\frac{350}{73} \text{ mA}$$

次に、式⑥を用いて電圧計Vを流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) を計算します。
\(I_1 = 5.0 \text{ mA}\)。

$$I_{\text{電圧計}} = I_1 – I_R = 5 \text{ mA} – \displaystyle\frac{350}{73} \text{ mA}$$$$I_{\text{電圧計}} = \left(5 – \displaystyle\frac{350}{73}\right) \text{ mA} = \left(\displaystyle\frac{5 \times 73 – 350}{73}\right) \text{ mA}$$$$I_{\text{電圧計}} = \left(\displaystyle\frac{365 – 350}{73}\right) \text{ mA} = \displaystyle\frac{15}{73} \text{ mA}$$

これをAに直すと、\(I_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{15}{73} \times 10^{-3} \text{ A}\)。
最後に、式⑦を用いて電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) を計算します。
\(V_1 = 3.5 \text{ V}\)、\(I_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{15}{73} \times 10^{-3} \text{ A}\) を代入します。

$$r_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{3.5 \text{ V}}{\displaystyle\frac{15}{73} \times 10^{-3} \text{ A}}$$$$r_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{3.5 \times 73}{15} \times 10^3 \Omega$$$$r_{\text{電圧計}} = \displaystyle\frac{255.5}{15} \times 10^3 \Omega \approx 17.033 \times 10^3 \Omega$$

有効数字2桁で丸めると、\(1.7 \times 10^4 \Omega\) となります。

$$r_{\text{電圧計}} \approx 1.7 \times 10^4 \Omega$$

計算方法の平易な説明

図1の回路の右側では、抵抗R(\(730 \Omega\)、問3の結果)と電圧計が並列につながっています。この並列部分全体に \(3.5 \text{ V}\) の電圧がかかっています(電圧計の読み)。

  1. まず、抵抗R(\(730 \Omega\))に \(3.5 \text{ V}\) の電圧がかかっているので、オームの法則から抵抗Rを流れる電流 \(I_R\) は \(3.5 \text{ V} / 730 \Omega = \frac{350}{73} \text{ mA}\) と計算できます。
  2. 電流計Aを通ってきた電流 \(I_1\)(\(5 \text{ mA}\))は、この分岐点で \(I_R\) と電圧計自身を流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) に分かれます。つまり、\(I_{\text{電圧計}} = I_1 – I_R = 5 \text{ mA} – \frac{350}{73} \text{ mA} = \frac{15}{73} \text{ mA}\) となります。
  3. 電圧計には \(3.5 \text{ V}\) の電圧がかかり、\(\frac{15}{73} \text{ mA}\) の電流が流れていることが分かりました。そこで、オームの法則(抵抗 = 電圧 ÷ 電流)から、電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) は \(3.5 \text{ V} / (\frac{15}{73} \times 10^{-3} \text{ A})\) と計算できます。
  4. これを計算すると、約 \(17033 \Omega\)、つまりおよそ \(1.7 \times 10^4 \Omega\) となります。
結論と吟味

電圧計Vの内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) は約 \(1.7 \times 10^4 \Omega\) (\(17 \text{ k}\Omega\)) です。電圧計の内部抵抗は、測定対象の回路に影響を与えにくいように、一般的に大きな値を取ります。この結果はその性質と合致しています。単位もオーム[\(\Omega\)]で適切です。

解答 (4) \(1.7 \times 10^4 \Omega\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • オームの法則 (\(V=IR\)): 各抵抗や電流計・電圧計の内部抵抗における電圧と電流の関係を記述する基本法則です。各設問で何度も利用します。
  • キルヒホッフの法則:
    • 第1法則(電流則): 回路の分岐点での電流の保存則です。問4で電圧計に流れる電流を求める際に用いました。
    • 第2法則(電圧則): 閉回路における電位の関係を示す法則です。問2で電流計の内部抵抗を求める際に用いました。
  • 電流計・電圧計の内部抵抗の考慮: 理想的な測定器ではないため、電流計自身の電圧降下や、電圧計自身に流れる電流を考慮に入れる必要があります。これがこの問題の難易度を上げていますが、現実の測定器を扱う上で重要な視点です。
  • 電池の内部抵抗が無視できる場合の起電力と端子電圧の関係: 電池の内部抵抗が0ならば、起電力=端子電圧となります。問1でこれを利用しました。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 電流計や電圧計の内部抵抗が無視できない場合の回路計算問題。
    • 複数の測定値や異なる回路条件から未知のパラメータ(抵抗値、起電力など)を決定する問題。
    • ホイートストンブリッジや電位差計など、精密な測定に関連する問題の基礎となります。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 与えられた測定器の特性: 電流計・電圧計に内部抵抗があるか、電池に内部抵抗があるかを確認します。
    2. 回路図の正確な読解: どこが直列でどこが並列か、電圧計がどこの電圧を測定しているか、電流計がどの部分の電流を測定しているかを把握します。
    3. 条件の整理: 複数の回路図や測定条件がある場合、それぞれでどのような情報が得られるかを整理します。
    4. 未知数の設定と方程式の立式: 求める物理量を未知数とし、オームの法則やキルヒホッフの法則を用いて、未知数を含む方程式を立てます。未知数の数だけ独立な方程式が必要になります。
    5. 解けるところから解く: 今回のように、(1)で求めた結果を(2)で使い、(2)の結果を(3)で使う、というように段階的に解けることが多いです。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点:
    • 電流計は測定したい部分に「直列」に、電圧計は測定したい部分に「並列」に接続します。
    • 電流計の内部抵抗は小さい方が、電圧計の内部抵抗は大きい方が、より理想的な測定器に近いと言えます。今回の結果 (\(r_{\text{電流計}} = 20 \Omega\), \(r_{\text{電圧計}} \approx 17 \text{ k}\Omega\)) もその傾向を示しています。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電流計・電圧計を理想的と誤認する: 問題文に「内部抵抗がある」と明記されている場合、それを無視すると正しい答えは得られません。
    • 対策: 問題文を注意深く読み、測定器の条件(内部抵抗の有無)を必ず確認する。
  • キルヒホッフの法則の適用ミス: 特に電圧則で、電圧降下と起電力の符号の扱いや、閉回路の取り方を間違える。
    • 対策: 電流の向きを仮定し、それに従って電位が上がるか下がるかを丁寧に追いかける。閉回路は、未知数を含む項ができるだけ少なくなるように選ぶと計算が楽になることがあります。
  • 単位の換算ミス: 特に mA (ミリアンペア) と A (アンペア) の変換 (\(1 \text{ mA} = 10^{-3} \text{ A}\)) を忘れたり間違えたりする。
    • 対策: 計算を始める前に、全ての単位を基本単位(SI単位系)に統一する習慣をつける。特に電流はアンペア[A]、電圧はボルト[V]、抵抗はオーム[\(\Omega\)]。
  • 並列部分と直列部分の混同: 回路図の接続関係を誤解し、電圧や電流の分配を間違える。
    • 対策: 回路図を丁寧に見て、電流の経路や電圧のかかり方を正確に把握する。複雑な場合は、回路図を書き直してみるのも有効。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 電流計: 「電流の通り道にある小さな抵抗」とイメージする。電流が流れることで、この小さな抵抗の両端にもわずかな電圧差が生じます。
    • 電圧計: 「測定したい部分に並列につなぐ、非常に大きな抵抗を持つ経路」とイメージする。理想的には電流を全く流さないが、現実にはわずかに電流が流れ込みます。
    • 図1の回路: 電池から出た電流が電流計を通り、その後、抵抗Rと電圧計という2つの経路に分かれて流れる様子をイメージする。
    • 図2の回路: 電池から見て、電圧計の経路と、「電流計+抵抗R」の経路が並列になっている様子をイメージする。
  • 図示の有効性:
    • 問題に与えられた回路図に、電流の向きや大きさを書き込む。
    • 各抵抗や測定器にかかる電圧、生じる電圧降下などを書き込む。
    • 特にキルヒホッフの法則を適用する際は、閉回路や分岐点を明確に図上で示すと、立式しやすくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • オームの法則 (\(V=IR\)): 回路素子(抵抗、測定器の内部抵抗)における電圧、電流、抵抗の関係を問われたら、まずこの法則を思い浮かべます。どの部分の \(V, I, R\) に着目しているかを明確にすることが重要です。
  • キルヒホッフの第1法則: 電流が分岐・合流する点があれば、そこでの電流の関係を記述するために用います。「流れ込む電流の総和=流れ出す電流の総和」という物理的状況に基づいています。
  • キルヒホッフの第2法則: 閉じたループ(閉回路)が一巡すると電位が元に戻る(電位差の総和が0)という原理に基づいています。「起電力の総和=電圧降下の総和」として立式します。
  • 内部抵抗を持つ測定器の扱い:
    • 電流計(内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\))が電流 \(I\) を示している場合、電流計自身で \(Ir_{\text{電流計}}\) の電圧降下が生じます。これは回路全体の電圧配分に影響します。
    • 電圧計(内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\))が電圧 \(V\) を示している場合、電圧計自身に \(I_{\text{電圧計}} = V/r_{\text{電圧計}}\) の電流が流れます。これは主回路から分岐する電流となり、他の部分の電流に影響します。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 電池の起電力 \(E\) の決定:
    1. 図2に着目。電池の内部抵抗が0であることから、電圧計の読み \(V_2\) が起電力 \(E\) に等しいと判断。
    2. \(E = V_2 = 3.6 \text{ V}\)
  2. (2) 電流計の内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) の決定:
    1. 図1に着目。電池、電流計、(抵抗R+電圧計Vの並列部) を含む閉回路でキルヒホッフの第2法則を考える。
    2. \(E = I_1 r_{\text{電流計}} + V_1\) の式を立てる。
    3. \(E, I_1, V_1\) の値を代入し、\(r_{\text{電流計}}\) について解く。\(r_{\text{電流計}} = 20 \Omega\)。
  3. (3) 抵抗Rの抵抗値 \(R\) の決定:
    1. 図2に着目。電流計Aと抵抗Rの直列回路に電圧 \(V_2 (=E)\) がかかり、電流 \(I_2\) が流れている。
    2. オームの法則より \(V_2 = (r_{\text{電流計}} + R) I_2\) の式を立てる。
    3. \(V_2, r_{\text{電流計}}, I_2\) の値を代入し、\(R\) について解く。\(R = 730 \Omega\)。
  4. (4) 電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) の決定:
    1. 図1の抵抗Rと電圧計Vの並列部分に着目。かかる電圧は \(V_1\)。
    2. 抵抗Rを流れる電流 \(I_R = V_1/R\) を計算。
    3. キルヒホッフの第1法則より、電圧計を流れる電流 \(I_{\text{電圧計}} = I_1 – I_R\) を計算。
    4. オームの法則より \(r_{\text{電圧計}} = V_1 / I_{\text{電圧計}}\) を計算。\(r_{\text{電圧計}} \approx 1.7 \times 10^4 \Omega\)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の統一と確認: 計算前にmAをAに変換するなど、単位をSI基本単位系に統一する。計算結果の単位が求めたい物理量の単位と一致しているか確認する。
  • 数値代入のタイミング: まず文字式で関係を導き、最後に数値を代入する方が、途中の計算ミスを発見しやすく、見通しも良くなることが多いです。ただし、問題や模範解答のスタイルに合わせて、適宜数値を代入しながら進めることもあります。
  • 分数の計算・小数の計算: 丁寧に行う。特に有効数字の扱いに注意する(最終的な答えだけでなく、途中の計算結果も適切な桁数で保持する)。模範解答がある場合は、それに合わせた桁数で処理することも時には必要です。
  • 方程式の変形: 移項、両辺を割る・掛けるなどの基本的な操作を正確に行う。符号ミスに特に注意。
  • 検算: 可能であれば、別の方法で計算してみる、あるいは得られた値を元の式に代入して矛盾がないか確認する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な値のオーダー感覚:
    • 電流計の内部抵抗 \(r_{\text{電流計}}\) は、通常、数Ω以下~数十Ω程度です。今回の \(20 \Omega\) は妥当な範囲です。
    • 電圧計の内部抵抗 \(r_{\text{電圧計}}\) は、通常、数kΩ~数MΩと非常に大きいです。今回の \(17 \text{ k}\Omega\) は妥当な範囲です。
    • 抵抗Rの値も、実験室でよく使われるオーダー(数十Ω~数kΩ)であることを確認します。\(730 \Omega\) は妥当です。
  • 極端な場合を考える:
    • もし電圧計の内部抵抗が無限大(理想的)だったら、図1で電圧計に電流は流れず \(I_1 = I_R\) となるはず。その場合、計算結果はどう変わるかなどを考えてみることで理解が深まります。
    • もし電流計の内部抵抗が0(理想的)だったら、図1で \(E=V_1\) とはならず、電流計での電圧降下を考慮する必要がなくなります。
  • 条件との整合性: 得られた値を使って、元の回路条件(電圧や電流の測定値)が矛盾なく説明できるかを確認する視点も重要です。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]

PVアクセスランキング にほんブログ村