基礎CHECK
1 運動量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「運動量の定義に基づいた計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量の定義: 運動量は物体の運動の状態を表すベクトル量です。
- 運動量の大きさ: 質量 \(m\) と速さ \(v\) の積 \(p=mv\) で計算されます。
- 運動量の向き: 速度の向きと同じです。
- ベクトルとスカラーの区別: 運動量は大きさと向きを持つベクトル量であることを理解することが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から質量 \(m\) と速度 \(\vec{v}\) の情報を読み取ります。
- 運動量の大きさ \(p\) を公式 \(p=mv\) を用いて計算します。
- 運動量の向きが速度の向きと同じであることを確認し、解答します。
思考の道筋とポイント
運動量は、物理学において物体の運動状態を示す非常に重要な量です。特に、衝突や分裂といった複数の物体が相互作用する現象を分析する際に中心的な役割を果たします。この問題は、その運動量の最も基本的な定義「運動量 = 質量 × 速度」を正しく理解し、適用できるかを問うています。運動量が「ベクトル量」であること、つまり「大きさと向き」の両方を持つことを意識することが重要です。計算で大きさを求め、向きは速度の向きと同じであると答える必要があります。
この設問における重要なポイント
- 運動量 \(\vec{p}\): 質量 \(m\) の物体が速度 \(\vec{v}\) で運動しているときの運動量は \(\vec{p} = m\vec{v}\) と定義されるベクトル量です。
- 運動量の大きさ: \(p = |\vec{p}| = m|\vec{v}| = mv\)。ここで \(v\) は速さです。
- 運動量の向き: 速度 \(\vec{v}\) の向きと同じです。
- 単位: 運動量の単位は、質量の単位(\(\text{kg}\))と速度の単位(\(\text{m/s}\))を掛け合わせた \(\text{kg}\cdot\text{m/s}\) となります。
具体的な解説と立式
この問題では、物体の質量 \(m\) と速度 \(\vec{v}\) が与えられており、運動量 \(\vec{p}\) を求めます。運動量の定義式は、ベクトルで表現すると \(\vec{p} = m\vec{v}\) です。この式の意味するところは、運動量 \(\vec{p}\) の「大きさ」は質量 \(m\) と速さ \(v=|\vec{v}|\) の積に等しく、運動量 \(\vec{p}\) の「向き」は速度 \(\vec{v}\) の向きと同じである、ということです。したがって、大きさと向きを別々に考えます。
運動量の大きさ \(p\) を求める式は次のようになります。
$$ p = mv $$
問題文で与えられている値は、質量 \(m = 2.0\,\text{kg}\)、速さ \(v = 1.4\,\text{m/s}\) です。
運動量の向きは、問題文にある速度の向き「東向き」と同じになります。
使用した物理公式
- 運動量の定義式: \(\vec{p} = m\vec{v}\)
- 運動量の大きさ: \(p = mv\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、具体的な数値を代入して運動量の大きさ \(p\) を計算します。与えられた値は \(m = 2.0\,\text{kg}\)、\(v = 1.4\,\text{m/s}\) です。
$$
\begin{aligned}
p &= mv \\[2.0ex]&= 2.0 \times 1.4 \\[2.0ex]&= 2.8
\end{aligned}
$$
したがって、運動量の大きさは \(2.8\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) となります。
運動量の向きは、速度の向きと同じ「東向き」です。
運動量は、その物体の「動きの勢い」のようなものです。重いもの(質量が大きい)が速く動いている(速度が大きい)ほど、止めるのが大変ですよね。その「勢い」を数字で表したのが運動量です。計算は単純な掛け算です。「質量 × 速さ」で運動量の大きさが求まります。今回は、質量が \(2.0\,\text{kg}\)、速さが \(1.4\,\text{m/s}\) なので、\(2.0 \times 1.4 = 2.8\) となります。また、運動量には向きがあります。「どっちの方向に勢いがあるか」ということです。これは物体の進んでいる向きと同じなので、答えは「東向き」となります。
2 運動量と力積
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「力積による運動量の変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量と力積の関係: 物体の運動量の変化は、その物体が受けた力積に等しいという関係を理解します。
- 力積の定義: 力積は、物体に作用した力と、その力が作用した時間の積で定義されます。
- 運動方程式との関連: 運動量と力積の関係は、運動方程式から導かれることを理解していると、より深い考察ができます。
- ベクトルの扱い: 運動は一直線上のため、初速度の向きを正として、力の向きも符号で表します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、質量、初速度、力、作用時間を読み取ります。
- 運動量と力積の関係式 \(mv’ – mv = F\Delta t\) を立てます。
- 未知数である後の速度 \(v’\) について方程式を解きます。
思考の道筋とポイント
物体に力が加えられると、物体の速度は変化します。速度が変化するということは、運動量(質量×速度)も変化するということです。この「運動量の変化」が、物体に加えられた「力積(力×時間)」に等しい、というのがこの問題の核心です。問題文では、質量 \(m\)、初速度 \(v\)、力 \(F\)、時間 \(\Delta t\) が与えられており、後の速度 \(v’\) を求めることが要求されています。これらの量を結びつけるのが「運動量と力積の関係式」です。この問題は一直線上の運動なので、ベクトルの向きはプラス・マイナスの符号で簡単に扱うことができます。初速度の向きを正の向きと設定して立式するのが定石です。
この設問における重要なポイント
- 運動量と力積の関係: \(m\vec{v’} – m\vec{v} = \vec{F}\Delta t\)。これは「(後の運動量) – (前の運動量) = (受けた力積)」を意味します。
- 力積 \(\vec{I}\): 物体が受けた力の時間的な効果を表すベクトル量で、一定の力 \(\vec{F}\) が時間 \(\Delta t\) だけ作用した場合、\(\vec{I} = \vec{F}\Delta t\) と定義されます。
- 運動方程式との関係: 運動方程式 \(m\vec{a} = \vec{F}\) の両辺に \(\Delta t\) を掛けると \(m(\vec{a}\Delta t) = \vec{F}\Delta t\) となります。ここで、加速度の定義より \(\vec{a}\Delta t = \Delta \vec{v} = \vec{v’} – \vec{v}\) なので、これを代入すると \(m(\vec{v’} – \vec{v}) = \vec{F}\Delta t\) となり、運動量と力積の関係式が導かれます。
具体的な解説と立式
この問題は一直線上の運動なので、台車の初速度の向きを正の向きとします。
与えられた物理量は以下の通りです。
- 質量: \(m = 4.0\,\text{kg}\)
- 初速度: \(v = +2.0\,\text{m/s}\)
- 力: \(F = +5.0\,\text{N}\) (速度と同じ向きなので正)
- 時間: \(\Delta t = 2.0\,\text{s}\)
- 後の速度: \(v’\)
これらの量を、運動量と力積の関係式 \(mv’ – mv = F\Delta t\) に代入して、\(v’\) を求める方程式を立てます。
$$ 4.0 \times v’ – 4.0 \times 2.0 = 5.0 \times 2.0 $$
使用した物理公式
- 運動量と力積の関係: \(mv’ – mv = F\Delta t\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
4.0 \times v’ – 4.0 \times 2.0 &= 5.0 \times 2.0 \\[2.0ex]4.0v’ – 8.0 &= 10.0 \\[2.0ex]4.0v’ &= 10.0 + 8.0 \\[2.0ex]4.0v’ &= 18.0 \\[2.0ex]v’ &= \displaystyle\frac{18.0}{4.0} \\[2.0ex]v’ &= 4.5
\end{aligned}
$$
したがって、後の速度は \(4.5\,\text{m/s}\) となります。
この問題は「運動量の変化は、加えられた力積に等しい」という物理法則を使って解きます。
- まず、台車が受けた「力積」を計算します。力積は「力 × 時間」なので、\(5.0\,\text{N} \times 2.0\,\text{s} = 10.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) です。これが運動量の増加分になります。
- 次に、力を加える前の「最初の運動量」を計算します。運動量は「質量 × 速度」なので、\(4.0\,\text{kg} \times 2.0\,\text{m/s} = 8.0\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) です。
- 力を加えた後の「最後の運動量」は、最初の運動量に力積(増加分)を足したものなので、\(8.0 + 10.0 = 18.0\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) となります。
- 最後に、この「最後の運動量」から後の速度を逆算します。「最後の運動量 = 質量 × 後の速度」なので、\(18.0 = 4.0 \times v’\) となります。これを解くと、\(v’ = 18.0 \div 4.0 = 4.5\,\text{m/s}\) と求まります。
思考の道筋とポイント
運動量と力積の関係は、より基本的な法則である運動方程式 \(ma=F\) から導かれます。したがって、この問題は運動方程式を使って解くことも可能です。このアプローチでは、まず物体に生じる「加速度」を計算し、その加速度を使って一定時間後の速度を求めます。
- 加えられた力 \(F\) と物体の質量 \(m\) から、運動方程式 \(ma=F\) を用いて加速度 \(a\) を求めます。
- 加速度 \(a\) が一定であることがわかるので、物体は等加速度直線運動をします。
- 初速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(\Delta t\) を使って、等加速度直線運動の公式 \(v’ = v + a\Delta t\) から後の速度 \(v’\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: \(ma = F\)。物体に力が働くと、その力の向きに加速度が生じることを示す、力学の基本法則です。
- 等加速度直線運動の速度の式: \(v’ = v + a\Delta t\)。一定の加速度で運動する物体の、時間経過に伴う速度の変化を表す公式です。
- この解法は、物理法則間のつながり(運動方程式から運動量と力積の関係が導かれること)を理解する上で非常に有益です。
具体的な解説と立式
台車の運動方向を正の向きとします。
ステップ1: 加速度 \(a\) の計算
運動方程式 \(ma=F\) に、\(m=4.0\,\text{kg}\)、\(F=5.0\,\text{N}\) を代入して、加速度 \(a\) を求める式を立てます。
$$ 4.0 \times a = 5.0 $$
ステップ2: 後の速度 \(v’\) の計算
次に、等加速度直線運動の公式 \(v’ = v + a\Delta t\) を用います。初速度 \(v=2.0\,\text{m/s}\)、時間 \(\Delta t = 2.0\,\text{s}\) と、ステップ1で求めた加速度 \(a\) を使って、後の速度 \(v’\) を求める式を立てます。
$$ v’ = 2.0 + a \times 2.0 $$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 等加速度直線運動の公式: \(v’ = v + a\Delta t\)
まず、運動方程式から加速度 \(a\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
4.0 \times a &= 5.0 \\[2.0ex]a &= \displaystyle\frac{5.0}{4.0} \\[2.0ex]a &= 1.25\,\text{m/s}^2
\end{aligned}
$$
次に、この加速度 \(a\) を使って、等加速度直線運動の公式から後の速度 \(v’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v’ &= v + a\Delta t \\[2.0ex]&= 2.0 + 1.25 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 2.0 + 2.5 \\[2.0ex]&= 4.5
\end{aligned}
$$
したがって、後の速度は \(4.5\,\text{m/s}\) となり、運動量と力積の関係を用いた場合と同じ結果が得られます。
この問題は、2段階のステップで解くこともできます。
- ステップ1(加速度を求める): まず、台車がどれくらいのペースで速くなるか(加速度)を計算します。ニュートンの法則「力 = 質量 × 加速度」を使います。\(5.0\,\text{N} = 4.0\,\text{kg} \times a\) なので、加速度 \(a\) は \(5.0 \div 4.0 = 1.25\,\text{m/s}^2\) です。これは「1秒あたり \(1.25\,\text{m/s}\) ずつスピードアップする」という意味です。
- ステップ2(後の速度を求める): 力を加えた時間は \(2.0\) 秒間なので、速度は全部で \(1.25 \times 2.0 = 2.5\,\text{m/s}\) だけ増加します。もともとの速度が \(2.0\,\text{m/s}\) だったので、最終的な速度は \(2.0 + 2.5 = 4.5\,\text{m/s}\) となります。
3 バットがボールに加えた力積
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「運動量と力積の関係を用いた衝突問題の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量と力積の関係: 物体の運動量の変化は、その物体が受けた力積に等しいという関係式 (\(m\vec{v’} – m\vec{v} = \vec{I}\)) を使います。
- 力積の定義: 力積は、物体に作用した平均の力と作用時間の積 (\(\vec{I} = \vec{F}\Delta t\)) で定義されます。
- ベクトルの扱い: 運動は一直線上ですが、速度や力積は向きを持つベクトル量です。計算では、正の向きを定めて符号で向きを区別することが極めて重要です。
- 運動量の変化: 運動量の変化は、後の運動量から前の運動量を「ベクトル的に」引き算することで求めます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1): まず運動の方向(例:右向き)を正と定めます。次に、衝突前後の速度を符号付きで表し、「運動量と力積の関係式」を用いて力積を計算します。計算結果の符号から力積の向きを判断します。
- 設問(2): 設問(1)で求めた力積の大きさと、問題文で与えられた接触時間を使って、「力積の定義式」から平均の力の大きさを計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
この設問の目的は、ボールがバットから受けた「力積」を求めることです。力積は「運動量の変化」に等しいという関係を使います。この問題で最も注意すべき点は、速度が向きを持つ「ベクトル量」であるということです。ボールは右向きに飛んできて、左向きに打ち返されるため、運動の向きが逆転します。したがって、計算を行う前に必ず座標軸の正の向きを定め、それぞれの速度をプラス・マイナスの符号で区別して立式する必要があります。「運動量の変化」は「(後の運動量) – (前の運動量)」ですが、これはベクトルの引き算(符号を考慮した引き算)である点を強く意識しましょう。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の設定: まず、計算の基準となる向きを決めます。ここでは、最初にボールが飛んでくる「右向き」を正(+)の向きとします。
- 初速度 \(v\): ボールは最初、右向きに速さ \(25\,\text{m/s}\) で運動しているので、\(v = +25\,\text{m/s}\) となります。
- 後速度 \(v’\): ボールは打ち返された後、左向きに速さ \(35\,\text{m/s}\) で運動しているので、\(v’ = -35\,\text{m/s}\) となります。
- 運動量と力積の関係式: ボールが受けた力積を \(\vec{I}\)、質量を \(m\)、衝突前後の速度をそれぞれ \(\vec{v}\), \(\vec{v’}\) とすると、\(\vec{I} = m\vec{v’} – m\vec{v}\) が成り立ちます。一直線上の運動なので、スカラー量として \(I = mv’ – mv\) と表せます。
- 計算結果の解釈: 計算して得られた力積 \(I\) の符号が、その向きを示します。もし \(I\) が負の値になれば、それは力積の向きが正の向き(右向き)とは逆、つまり「左向き」であることを意味します。
具体的な解説と立式
ボールがバットから受けた力積を \(I\) とします。運動量と力積の関係は \(I = mv’ – mv\) です。
計算の準備として、まず右向きを正の向きと定めます。
問題文から、各物理量を符号付きで整理します。
- 質量: \(m = 0.15\,\text{kg}\)
- 打つ前の速度(初速度): \(v = +25\,\text{m/s}\)
- 打った後の速度(後速度): \(v’ = -35\,\text{m/s}\)
これらの値を運動量と力積の関係式に代入し、力積 \(I\) を求める方程式を立てます。
$$ I = 0.15 \times (-35) – 0.15 \times 25 $$
使用した物理公式
- 運動量と力積の関係: \(I = mv’ – mv\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を計算します。共通因数 \(0.15\) でくくると計算が簡単になります。
$$
\begin{aligned}
I &= 0.15 \times (-35) – 0.15 \times 25 \\[2.0ex]&= 0.15 \times ((-35) – 25) \\[2.0ex]&= 0.15 \times (-60) \\[2.0ex]&= -9.0
\end{aligned}
$$
計算結果は \(I = -9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) となりました。
この負の符号は、力積の向きが我々が設定した正の向き(右向き)とは逆の「左向き」であることを示しています。
したがって、ボールに与えられた力積の大きさは \(9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) で、向きは左向きです。
力積は「運動量の変化」のことです。ボールの運動量がどれだけ、どちらの向きに変化したかを調べます。
- まず、計算しやすくするために「右向きをプラス、左向きをマイナス」とルールを決めます。
- 打つ前の運動量を計算します。運動量は「質量 × 速度」です。
打つ前の運動量 = \(0.15\,\text{kg} \times (+25\,\text{m/s}) = +3.75\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) - 打った後の運動量を計算します。
打った後の運動量 = \(0.15\,\text{kg} \times (-35\,\text{m/s}) = -5.25\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) - 運動量の変化(=力積)は、必ず「(後) – (前)」で計算します。
力積 = \( (-5.25) – (+3.75) = -9.0\,\text{kg}\cdot\text{m/s} \) - 計算結果がマイナスなので、力積の向きは「左向き」、大きさは \(9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) とわかります。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(1)でボールが受けた力積がわかりました。この設問では、その力積を生み出した「平均の力」の大きさを求めます。ここで使うのが力積のもう一つの定義式、\(I = F\Delta t\) です。この式は、力積 \(I\) が、力の大きさ \(F\) とその力が作用した時間 \(\Delta t\) の積で表せることを示しています。設問(1)で求めた力積の「大きさ」と、問題文で与えられている「接触時間」を使えば、平均の力の大きさを計算することができます。
この設問における重要なポイント
- 力積の定義: 力積 \(\vec{I}\) は、物体に作用した平均の力 \(\vec{F}\) と作用時間 \(\Delta t\) の積、\(\vec{I} = \vec{F}\Delta t\) で表されます。
- 大きさの関係: 力の「大きさ」を求めるので、ベクトルの向きは考えず、それぞれの量の「大きさ」の関係式 \(|I| = F\Delta t\) を使います。(ただし、\(F\) は力の大きさ、\(\Delta t\) はスカラーなので、\(F\) は正の値です)
- 単位の整合性: 力積の単位 (\(\text{N}\cdot\text{s}\)) を時間の単位 (\(\text{s}\)) で割ると、力の単位 (\(\text{N}\)) が得られることを確認しておくと、立式に自信が持てます。
具体的な解説と立式
バットがボールに加えた平均の力の大きさを \(F\)、ボールとバットの接触時間を \(\Delta t\) とします。
力積の大きさとこれらの物理量の間には、次の関係式が成り立ちます。
$$ |I| = F\Delta t $$
設問(1)の結果から、力積の大きさは \(|I| = 9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) です。
問題文から、接触時間は \(\Delta t = 0.010\,\text{s}\) です。
これらの値を上の式に代入して、平均の力の大きさ \(F\) を求める方程式を立てます。
$$ 9.0 = F \times 0.010 $$
使用した物理公式
- 力積の定義: \(|I| = F\Delta t\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を \(F\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
F \times 0.010 &= 9.0 \\[2.0ex]F &= \displaystyle\frac{9.0}{0.010} \\[2.0ex]F &= \displaystyle\frac{9.0}{1.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]F &= 9.0 \times 10^2
\end{aligned}
$$
したがって、バットがボールに加えた平均の力の大きさは \(9.0 \times 10^2\,\text{N}\) となります。
力積は「平均の力 × 時間」という式でも計算できます。
- 設問(1)から、ボールが受けた力積の大きさは \(9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\) であることがわかっています。
- ボールとバットが接触していた時間は、問題文から \(0.010\) 秒です。
- つまり、「(平均の力 \(F\)) × (時間 \(0.010\,\text{s}\)) = (力積 \(9.0\,\text{N}\cdot\text{s}\))」という関係が成り立っています。
- この式から平均の力 \(F\) を求めるには、割り算をします。
\(F = 9.0 \div 0.010 = 900\,\text{N}\) - これは、およそ \(90\,\text{kg}\) のお相撲さんを持ち上げる力に相当し、衝突の際にいかに大きな力が瞬間的に働いているかがわかります。
4 バットでボールを打ったときの運動量の変化
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「2次元の衝突における運動量の変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量の定義: 運動量は質量と速度の積で表されるベクトル量 (\(\vec{p}=m\vec{v}\)) であることを理解します。
- 運動量の変化の定義: 運動量の変化は、衝突後の運動量から衝突前の運動量をベクトルとして引き算 (\(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\)) して求めます。
- ベクトルの引き算: 2次元のベクトルの引き算を、作図(ベクトル図)または成分計算のいずれかの方法で正しく実行できることが鍵となります。
- 三平方の定理: ベクトル図や成分から運動量の変化の大きさを求める際に使用します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、衝突前の運動量ベクトル \(\vec{p}_{\text{初}}\) と衝突後の運動量ベクトル \(\vec{p}_{\text{後}}\) を、それぞれの大きさと向きを明確にして求めます。
- 次に、ベクトルの引き算 \(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\) を実行し、運動量の変化ベクトル \(\Delta \vec{p}\) を求めます。
- 最後に、得られた \(\Delta \vec{p}\) の大きさと向きを計算して解答します。
思考の道筋とポイント
この問題は、ボールの運動方向が水平から鉛直へと90°変わる、2次元的な衝突を扱っています。運動量はベクトル量なので、単なる大きさの計算だけでなく、向きの変化を正しく捉えることが不可欠です。運動量の「変化」は、\(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\) というベクトルの引き算で定義されます。このベクトルの引き算を視覚的に捉える「ベクトル図(作図法)」と、座標軸を設定して計算で処理する「成分計算」の2つのアプローチがあり、どちらでも解くことができます。ここでは、まず模範解答で示されているベクトル図を用いた解法を解説し、別解として成分計算による解法も紹介します。
この設問における重要なポイント
- 運動量ベクトル: \(\vec{p} = m\vec{v}\)。向きは速度 \(\vec{v}\) の向きと同じです。
- 初運動量 \(\vec{p}_{\text{初}}\): 水平方向に運動しているので、ベクトルは水平を向きます。
- 後運動量 \(\vec{p}_{\text{後}}\): 鉛直方向に運動しているので、ベクトルは鉛直を向きます。
- 運動量の変化 \(\Delta \vec{p}\): \(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\) で計算します。これは \(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} + (-\vec{p}_{\text{初}})\) と変形できます。\(-\vec{p}_{\text{初}}\) は、初運動量 \(\vec{p}_{\text{初}}\) と大きさが同じで向きが正反対のベクトルです。
- ベクトル図の作成: \(\vec{p}_{\text{後}}\) のベクトルと \(-\vec{p}_{\text{初}}\) のベクトルを合成(足し算)する図を描くことで、\(\Delta \vec{p}\) を視覚的に求めることができます。
具体的な解説と立式
まず、衝突前後のボールの運動量の大きさを求めます。質量 \(m=0.20\,\text{kg}\)、速さは衝突前後で変わらず \(v=40\,\text{m/s}\) です。
したがって、初運動量の大きさ \(p_{\text{初}}\) と後運動量の大きさ \(p_{\text{後}}\) は等しく、その大きさを \(p\) とすると、
$$ p = mv $$
と表せます。
次に、運動量の変化 \(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\) をベクトル図で考えます。運動量の変化の大きさ \(|\Delta \vec{p}|\) は、\(\vec{p}_{\text{後}}\) と \(-\vec{p}_{\text{初}}\) を2辺とする直角三角形の斜辺の長さに相当するため、三平方の定理を用いて次のように立式できます。
$$ |\Delta \vec{p}| = \sqrt{(p_{\text{後}})^2 + (p_{\text{初}})^2} $$
ここで、\(p_{\text{初}}\) と \(p_{\text{後}}\) の大きさは等しく \(p\) なので、
$$ |\Delta \vec{p}| = \sqrt{p^2 + p^2} $$
となります。
使用した物理公式
- 運動量の定義: \(\vec{p} = m\vec{v}\)
- 運動量の変化: \(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\)
- 三平方の定理: \(c = \sqrt{a^2+b^2}\)
まず、運動量の大きさ \(p\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
p &= mv \\[2.0ex]&= 0.20 \times 40 \\[2.0ex]&= 8.0\,\text{kg}\cdot\text{m/s}
\end{aligned}
$$
次に、この値を使って運動量の変化の大きさ \(|\Delta \vec{p}|\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
|\Delta \vec{p}| &= \sqrt{(8.0)^2 + (8.0)^2} \\[2.0ex]&= \sqrt{64 + 64} \\[2.0ex]&= \sqrt{128} \\[2.0ex]&= \sqrt{64 \times 2} \\[2.0ex]&= 8.0\sqrt{2}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用いて近似計算します。
$$
\begin{aligned}
|\Delta \vec{p}| &\approx 8.0 \times 1.41 \\[2.0ex]&= 11.28
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、\(11\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) となります。
次に、向きを考えます。ベクトル図は、水平左向きの辺と鉛直上向きの辺の長さがともに \(8.0\) である直角二等辺三角形となります。したがって、その斜辺である \(\Delta \vec{p}\) は、水平方向(左向き)となす角が \(45^\circ\) となります。
水平左向きは「飛んできたボールに向かう向き」と同じです。
よって、向きは「飛んできたボールに向かって角度45°の向き」となります。
ボールの運動が「どのように変化したか」を矢印で考えてみましょう。
- 打つ前の運動量を矢印で表すと、「右向きで長さ8.0の矢印」です。
- 打った後の運動量は、「上向きで長さ8.0の矢印」です。
- 「運動量の変化」は、「(後の矢印) – (前の矢印)」で計算します。ベクトルの引き算は少し難しいので、「(後の矢印) + (前の矢印を逆にした矢印)」と考えます。
- 「前の矢印」は右向きだったので、逆向きは「左向き」です。
- つまり、「上向きで長さ8.0の矢印」と「左向きで長さ8.0の矢印」を足し算(合成)すればよいのです。
- この2つの矢印を合成すると、ちょうど「左上」を向く矢印になります。長さが同じなので、真横(左向き)から測った角度はちょうど45°になります。
- 合成した矢印の長さは、三平方の定理を使って \(\sqrt{8.0^2 + 8.0^2} = 8.0\sqrt{2} \approx 11\) と計算できます。
思考の道筋とポイント
ベクトルを扱うもう一つの強力な方法が成分計算です。水平方向をx軸、鉛直方向をy軸と設定し、衝突前後の運動量ベクトルを成分で表します。運動量の変化も、x成分とy成分に分けてそれぞれ計算し、最後に合成して全体の大きさと向きを求めます。この方法は、図に頼らず機械的に計算を進められる利点があります。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の設定: 水平右向きをx軸の正、鉛直上向きをy軸の正とします。
- 初運動量の成分: \(\vec{p}_{\text{初}}\) はx軸方向のみのベクトルです。
- 後運動量の成分: \(\vec{p}_{\text{後}}\) はy軸方向のみのベクトルです。
- 運動量の変化の成分: \(\Delta p_x = p_{x, \text{後}} – p_{x, \text{初}}\) と \(\Delta p_y = p_{y, \text{後}} – p_{y, \text{初}}\) のように、各成分で引き算を行います。
- 大きさと向きの合成: 最終的に得られた \(\Delta \vec{p}\) の成分 (\(\Delta p_x, \Delta p_y\)) から、三平方の定理で大きさを、三角関数で向きを求めます。
具体的な解説と立式
水平右向きをx軸正方向、鉛直上向きをy軸正方向とします。
衝突前後の運動量の大きさは、\(p = 0.20 \times 40 = 8.0\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) です。
- 初運動量 \(\vec{p}_{\text{初}}\) の成分表示:
$$ \vec{p}_{\text{初}} = (8.0, 0) $$ - 後運動量 \(\vec{p}_{\text{後}}\) の成分表示:
$$ \vec{p}_{\text{後}} = (0, 8.0) $$
運動量の変化 \(\Delta \vec{p}\) の各成分 (\(\Delta p_x, \Delta p_y\)) は、\(\Delta \vec{p} = \vec{p}_{\text{後}} – \vec{p}_{\text{初}}\) より、
- x成分の変化:
$$ \Delta p_x = p_{x, \text{後}} – p_{x, \text{初}} $$ - y成分の変化:
$$ \Delta p_y = p_{y, \text{後}} – p_{y, \text{初}} $$
と立式できます。
運動量の変化の大きさ \(|\Delta \vec{p}|\) は、これらの成分を用いて三平方の定理から次のように立式できます。
$$ |\Delta \vec{p}| = \sqrt{(\Delta p_x)^2 + (\Delta p_y)^2} $$
使用した物理公式
- 運動量の定義: \(\vec{p} = m\vec{v}\)
- ベクトルの成分表示と演算
- 三平方の定理
まず、運動量の変化の各成分を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta p_x &= 0 – 8.0 \\[2.0ex]&= -8.0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\Delta p_y &= 8.0 – 0 \\[2.0ex]&= 8.0
\end{aligned}
$$
よって、運動量の変化ベクトルは \(\Delta \vec{p} = (-8.0, 8.0)\) となります。
次に、これらの成分から運動量の変化の大きさ \(|\Delta \vec{p}|\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
|\Delta \vec{p}| &= \sqrt{(-8.0)^2 + (8.0)^2} \\[2.0ex]&= \sqrt{64 + 64} \\[2.0ex]&= \sqrt{128} \\[2.0ex]&= \sqrt{64 \times 2} \\[2.0ex]&= 8.0\sqrt{2}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用いて近似計算します。
$$
\begin{aligned}
|\Delta \vec{p}| &\approx 8.0 \times 1.41 \\[2.0ex]&= 11.28
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(11\,\text{kg}\cdot\text{m/s}\) となります。
向きについては、\(\Delta p_x = -8.0\) (負)、\(\Delta p_y = +8.0\) (正) なので、ベクトルは第2象限(左上)を向きます。水平軸(x軸)の負の向きとなす角を \(\theta\) とすると、
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \displaystyle\frac{|\Delta p_y|}{|\Delta p_x|} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{8.0}{8.0} \\[2.0ex]&= 1
\end{aligned}
$$
よって \(\theta = 45^\circ\) となります。これは「水平左向き(飛んできたボールに向かう向き)から45°の向き」を意味します。
運動を「ヨコ方向(水平)」と「タテ方向(鉛直)」に分解して考えます。
- ヨコ方向の運動量の変化を計算します。
(後のヨコ運動量) 0 – (前のヨコ運動量) 8.0 = -8.0。
マイナスは「左向き」を意味するので、ヨコ方向には「左向きに8.0」変化したことになります。 - タテ方向の運動量の変化を計算します。
(後のタテ運動量) 8.0 – (前のタテ運動量) 0 = +8.0。
プラスは「上向き」を意味するので、タテ方向には「上向きに8.0」変化したことになります。 - 結局、全体の変化は「左向きに8.0」と「上向きに8.0」の変化を合わせたものになります。
- これは、地図で「西に8.0km進み、次に北に8.0km進んだ」ときの、スタートからゴールまでの直線距離と方角を求めるのと同じです。
- 距離(大きさ)は三平方の定理で \(\sqrt{8.0^2 + 8.0^2} \approx 11\)。方角(向き)は、西と北に同じだけ進んでいるので「北西」、つまり「西から北へ45°」の向きになります。
5 静止した台車への衝突
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「運動量保存則を用いた衝突・合体問題の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量保存則: 複数の物体が衝突する際、系に外力が働かなければ、衝突の前後で系全体の運動量の和は保存されます。
- 衝突と合体: 衝突後に物体が一体となる現象(完全非弾性衝突)を扱います。
- 運動量の計算: 各物体の運動量は「質量 × 速度」で計算します。
- ベクトルの扱い: 一直線上の運動なので、一方の向きを正と定め、速度を符号で区別して計算します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 衝突前の台車Aと台車Bの運動量をそれぞれ計算し、その和(衝突前の全運動量)を求めます。
- 衝突後、2台は一体となるので、その合計の質量を計算します。
- 衝突後の全運動量を、一体となった物体の「合計の質量 × 衝突後の速さ」として表します。
- 「衝突前の全運動量 = 衝突後の全運動量」という運動量保存則の式を立て、未知数である衝突後の速さを求めます。
思考の道筋とポイント
この問題は、2つの物体が衝突して一体となる、物理学で「完全非弾性衝突」と呼ばれる典型的な状況です。このような衝突現象を分析する上で最も強力なツールが「運動量保存則」です。衝突の瞬間、台車AとBは互いに力を及ぼし合いますが(これを内力と呼びます)、2台をひとまとめの「系」として考えると、これらの力は内部で作用し合うだけです。床との摩擦などの外力が無視できる場合、この「系」全体の運動量の合計は、衝突の前後で変化しません。この「保存される」という性質を利用して、衝突後の速さを求めます。
この設問における重要なポイント
- 運動量保存則: 2つの物体(質量 \(m_A, m_B\)、衝突前の速度 \(v_A, v_B\)、衝突後の速度 \(v’_A, v’_B\))が衝突する場合、運動量保存則は \(m_A v_A + m_B v_B = m_A v’_A + m_B v’_B\) と表されます。
- 合体する場合の式: この問題のように、衝突後に2物体が一体となって同じ速さ \(v’\) で動く場合、運動量保存則の式は次のように簡単になります。
\(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B)v’\) - 運動量保存則が成り立つ条件: 考えている系(この場合は台車AとB)に働く外力がゼロか、あるいは内力(衝突力)に比べて無視できるほど小さい場合に適用できます。この問題では、水平方向の摩擦は無視できると考えるため、運動量保存則が成立します。
具体的な解説と立式
台車Aの進行方向を正の向きとします。
問題文から、衝突前後の各物理量を整理します。
- 台車Aの質量: \(m_A = 2.0\,\text{kg}\)
- 台車Aの初速度: \(v_A = +3.0\,\text{m/s}\)
- 台車Bの質量: \(m_B = 1.0\,\text{kg}\)
- 台車Bの初速度: \(v_B = 0\,\text{m/s}\) (静止しているため)
- 衝突後の速さ: \(v’\) (A, B共通)
これらの物理量を用いて、運動量保存則の式を立てます。
(衝突前の全運動量) = (衝突後の全運動量)
$$ m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’ $$
この式に、上記の数値を代入する準備ができました。
使用した物理公式
- 運動量保存則(衝突・合体の場合): \(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B)v’\)
「具体的な解説と立式」で立てた運動量保存則の式に、数値を代入して \(v’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2.0 \times 3.0 + 1.0 \times 0 &= (2.0 + 1.0) \times v’ \\[2.0ex]6.0 + 0 &= 3.0 \times v’ \\[2.0ex]6.0 &= 3.0 v’ \\[2.0ex]v’ &= \displaystyle\frac{6.0}{3.0} \\[2.0ex]v’ &= 2.0
\end{aligned}
$$
したがって、衝突後のA, Bの速さは \(2.0\,\text{m/s}\) となります。
「運動量」という「動きの勢い」の合計は、ぶつかる前後で変わらない、というルールを使って考えます。
- ぶつかる前の「勢いの合計」を計算します。
- 台車Aの勢い: (質量 \(2.0\,\text{kg}\)) × (速さ \(3.0\,\text{m/s}\)) = \(6.0\)
- 台車Bは止まっているので、勢いは \(0\) です。
- したがって、ぶつかる前の勢いの合計は \(6.0 + 0 = 6.0\) です。
- ぶつかった後の状態を考えます。
- 2台は合体するので、1つの大きな台車になったと考えます。
- 合体後の質量は \(2.0\,\text{kg} + 1.0\,\text{kg} = 3.0\,\text{kg}\) です。
- ぶつかった後の「勢いの合計」も、前と同じ \(6.0\) になるはずです。
- 「合体後の勢い = 合体後の質量 × 合体後の速さ」なので、
\(6.0 = 3.0\,\text{kg} \times v’\)
という式が成り立ちます。
- 「合体後の勢い = 合体後の質量 × 合体後の速さ」なので、
- この式を解いて、合体後の速さ \(v’\) を求めます。
- \(v’ = 6.0 \div 3.0 = 2.0\,\text{m/s}\) となります。
6 反発係数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「反発係数の定義に基づいた計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 反発係数(はねかえり係数)の定義: 衝突によって、2つの物体の相対速度がどのように変化するかを示す値です。
- 反発係数の公式: 衝突前後の相対速度の関係式 \(v’_A – v’_B = -e(v_A – v_B)\) を用います。これは「衝突後の相対速度は、衝突前の相対速度の \(-e\) 倍になる」ことを意味します。
- 壁との衝突: 壁は非常に重く、衝突しても動かない(速度が常に0)と見なせるため、公式を簡略化して考えることができます。
- ベクトルの扱い: 一直線上の衝突なので、一方の向きを正と定め、速度を符号で区別して公式に代入することが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、ボールが壁に衝突する方向を正の向きと定めます。
- 衝突前のボールの速度と、衝突後のボールの速度を、符号に注意して表します。
- 反発係数の関係式 \(v’ = -ev\) に、これらの速度の値を代入して \(e\) を計算します。
思考の道筋とポイント
反発係数 \(e\) は、衝突がどれだけ「弾性的」か、つまりどれだけ勢いを保ったままはねかえるかを示す指標です。この問題では、ボールが壁に当たってはねかえるという、最も基本的な状況で反発係数を求めます。
重要なのは、反発係数の関係式を正しく理解し、適用することです。特に、速度は向きを持つベクトル量なので、計算前に必ず正の向きを決め、衝突前後の速度を符号付きで表す必要があります。
今回は、分数の形ではなく \(v’_A – v’_B = -e(v_A – v_B)\) という形で公式を扱います。この形式は、運動量保存則と連立方程式を解く際に、式がすっきりして計算しやすくなるという利点があります。
この問題では、衝突相手が「壁」であるため、公式はさらに単純な形になります。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の設定: 計算の基準となる向きを決めます。ここでは、ボールが壁に向かって進む向きを正(+)とします。
- 衝突前の速度:
- ボールの速度 \(v\): 正の向きに速さ \(20\,\text{m/s}\) なので、\(v = +20\,\text{m/s}\)
- 壁の速度: 常に \(0\,\text{m/s}\)
- 衝突後の速度:
- ボールの速度 \(v’\): はねかえって逆向き(負の向き)に速さ \(16\,\text{m/s}\) なので、\(v’ = -16\,\text{m/s}\)
- 壁の速度: 常に \(0\,\text{m/s}\)
- 壁との衝突における反発係数の関係式:
一般的な関係式 \(v’_A – v’_B = -e(v_A – v_B)\) において、物体Aをボール、物体Bを壁とします。壁の速度は \(v_B = v’_B = 0\) なので、
\(v’ – 0 = -e(v – 0)\)
となり、
\(v’ = -ev\)
という非常にシンプルな関係式が得られます。これは「はねかえり後の速度は、はねかえり前の速度の \(-e\) 倍になる」と直感的に理解できます。
具体的な解説と立式
ボールが壁に衝突する向きを正の向きとします。
問題文から、衝突前後のボールの速度を符号付きで整理します。
- 衝突前のボールの速度: \(v = +20\,\text{m/s}\)
- 衝突後のボールの速度: \(v’ = -16\,\text{m/s}\)
これらの値を、壁との衝突における反発係数の関係式 \(v’ = -ev\) に代入して、反発係数 \(e\) を求める方程式を立てます。
$$ -16 = -e \times 20 $$
使用した物理公式
- 反発係数の関係式(壁との衝突): \(v’ = -ev\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を \(e\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
-16 &= -e \times 20 \\[2.0ex]-16 &= -20e \\[2.0ex]20e &= 16 \\[2.0ex]e &= \displaystyle\frac{16}{20} \\[2.0ex]e &= 0.80
\end{aligned}
$$
したがって、ボールと壁の間の反発係数 \(e\) の値は \(0.80\) となります。
「はねかえった後の速度は、ぶつかる前の速度に『マイナス反発係数』を掛けたものになる」というルールで考えます。
- まず、壁にぶつかる向きを「プラス」と決めます。
- ぶつかる前の速度は、プラス向きに \(20\,\text{m/s}\) なので「\(+20\)」です。
- はねかえった後の速度は、逆向き(マイナス向き)に \(16\,\text{m/s}\) なので「\(-16\)」です。
- ルールに当てはめると、「後の速度 \(-16\) = (\(-e\)) × (前の速度 \(+20\))」という式ができます。
- この式 \(-16 = -20e\) を解くと、\(e = 16 \div 20 = 0.80\) と求まります。
7 一直線上の2球の衝突
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「一直線上の2物体の衝突における反発係数の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 反発係数(はねかえり係数)の定義: 衝突によって、2つの物体の相対速度がどのように変化するかを示す値です。
- 反発係数の関係式: 衝突前後の相対速度の関係式 \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\) を用います。これは「衝突後の相対速度は、衝突前の相対速度の \(-e\) 倍になる」ことを意味します。
- 相対速度: 一方の物体から見たもう一方の物体の速度です。\(v_1 – v_2\) は「物体2から見た物体1の相対速度」を意味します。
- ベクトルの扱い: 問題文でx軸の正負の向きが指定されているため、各物体の速度を符号付きで正確に扱うことが最も重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた衝突前後の各小球の速度を、x軸の正の向きを基準として符号付きで整理します。
- 反発係数の関係式 \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\) に、これらの値を正確に代入します。
- 計算を実行し、反発係数 \(e\) の値を求めます。
思考の道筋とポイント
この問題は、動いている物体同士が正面衝突する状況で、反発係数を求める基本的な問題です。壁との衝突と異なり、衝突する両方の物体が動いているため、反発係数の一般的な関係式 \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\) を用います。
この形式は、物理的な意味「衝突後の相対速度は、衝突前の相対速度の \(-e\) 倍になる」を直接的に表しており、運動量保存則と連立方程式を解く際に計算がしやすいという利点があります。
この問題を解く上での最大のポイントは、速度の符号を間違えないことです。問題文に「正の向きに」「負の向きに」と明記されている情報を、注意深く数式に反映させる必要があります。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の確認: 問題文で「x軸上」と指定されているので、x軸の正の向きを(+)とします。
- 各速度の符号付き表現:
- 衝突前の小球1の速度: \(v_1 = +12\,\text{m/s}\)
- 衝突前の小球2の速度: \(v_2 = -8.0\,\text{m/s}\)
- 衝突後の小球1の速度: \(v’_1 = +3.0\,\text{m/s}\)
- 衝突後の小球2の速度: \(v’_2 = +7.0\,\text{m/s}\)
- 公式への正確な代入: 上記の値を、符号を含めて正確に関係式 \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\) に代入します。特に、負の値の代入では括弧を使い、計算ミスを防ぐことが重要です。
具体的な解説と立式
x軸の正の向きを(+)として、問題文から各速度を整理します。
- \(v_1 = +12\,\text{m/s}\)
- \(v_2 = -8.0\,\text{m/s}\)
- \(v’_1 = +3.0\,\text{m/s}\)
- \(v’_2 = +7.0\,\text{m/s}\)
これらの値を、反発係数の関係式 \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\) に代入し、反発係数 \(e\) を求める方程式を立てます。
$$ 3.0 – 7.0 = -e \{12 – (-8.0)\} $$
使用した物理公式
- 反発係数の関係式: \(v’_1 – v’_2 = -e(v_1 – v_2)\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を \(e\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
3.0 – 7.0 &= -e \{12 – (-8.0)\} \\[2.0ex]-4.0 &= -e (12 + 8.0) \\[2.0ex]-4.0 &= -e \times 20 \\[2.0ex]-4.0 &= -20e \\[2.0ex]20e &= 4.0 \\[2.0ex]e &= \displaystyle\frac{4.0}{20} \\[2.0ex]e &= 0.20
\end{aligned}
$$
したがって、2球の間の反発係数 \(e\) の値は \(0.20\) となります。
「衝突後の2球の離れ具合(相対速度)」と「衝突前の2球の近づき具合(相対速度)」の関係を使って考えます。
- 衝突前の相対速度を計算します。
小球2から見た小球1の速度は、\(v_1 – v_2 = 12 – (-8.0) = +20\,\text{m/s}\) です。これは「小球2から見ると、小球1はプラスの向き(右向き)に秒速20mで近づいてくる」という意味です。 - 衝突後の相対速度を計算します。
小球2から見た小球1の速度は、\(v’_1 – v’_2 = 3.0 – 7.0 = -4.0\,\text{m/s}\) です。これは「小球2から見ると、小球1はマイナスの向き(左向き)に秒速4.0mで遠ざかっていく(つまり、速い小球2が小球1を追い越していく)」という意味です。 - 関係式に当てはめます。
「(後の相対速度) = -e × (前の相対速度)」というルールなので、
\(-4.0 = -e \times (+20)\)
という式が成り立ちます。 - この式を解いて \(e\) を求めます。
\(-4.0 = -20e\) の両辺を-20で割ると、\(e = (-4.0) \div (-20) = 0.20\) となります。
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