今回の問題
dynamics#05【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等加速度直線運動の公式の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の3公式: 速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\)、変位と時間の関係式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)、速度と変位の関係式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を、問題の条件に応じて使い分けることが基本となります。
- v-tグラフの解釈: 速度(\(v\))-時間(\(t\))グラフにおいて、グラフの傾きが加速度を表すという関係を理解していることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、問題文から初速度\(v_0\)、最終速度\(v\)、時間\(t\)、移動距離\(x\)などの既知の物理量を整理します。
- 次に、既知の量と求めたい加速度\(a\)を含む、最適な等加速度直線運動の公式を選択し、立式します。
- 式を加速度\(a\)について解き、数値を代入して計算します。
- (4)では、v-tグラフの傾きが加速度を表すことを利用し、グラフから2点の座標を読み取って傾きを計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
「静止していた」という記述から初速度\(v_0=0\)、そして時間\(t\)と最終速度\(v\)が与えられています。これらの3つの物理量と、求めたい加速度\(a\)を結びつける公式を選択することが最初のステップです。この場合、時間\(t\)を含む速度の公式 \(v = v_0 + at\) が最適です。
この設問における重要なポイント
- 「静止していた」は初速度 \(v_0 = 0\) を意味する。
- 与えられた物理量(\(v_0, v, t\))から、適切な公式(\(v = v_0 + at\))を選ぶ。
- 加速度の定義(単位時間あたりの速度変化)を理解していると、公式を忘れても解ける。
具体的な解説と立式
与えられた条件を整理します。
- 初速度 \(v_0 = 0\) m/s
- 最終速度 \(v = 20\) m/s
- 時間 \(t = 10\) s
これらの量を含む等加速度直線運動の公式は、
$$ v = v_0 + at \quad \cdots ① $$
です。この式を加速度\(a\)について解きます。
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
式①を \(a\) について解くと \(a = \displaystyle\frac{v – v_0}{t}\) となります。これに数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{20 – 0}{10} \\[2.0ex]&= \frac{20}{10} \\[2.0ex]&= 2.0
\end{aligned}
$$
したがって、加速度の大きさは \(2.0 \, \text{m/s}^2\) となります。
加速度とは「1秒あたりにどれだけ速さが変わるか」を表す量です。この電車は10秒間で速さが \(20\) m/s 増加しました。ということは、1秒あたりでは \(20 \div 10 = 2.0\) m/s ずつ速さが増えていることになります。よって、加速度は \(2.0 \, \text{m/s}^2\) です。
加速度の大きさは \(2.0 \, \text{m/s}^2\) です。単位も正しく、物理的に妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「静止の状態から」なので初速度\(v_0=0\)、そして移動距離\(x\)と時間\(t\)が与えられています。これらの物理量と求めたい加速度\(a\)を含む公式を選択します。この場合、移動距離の公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) が適しています。
この設問における重要なポイント
- 「静止の状態から」は初速度 \(v_0 = 0\) を意味する。
- 与えられた物理量(\(v_0, x, t\))から、適切な公式(\(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\))を選ぶ。
- 二乗の計算を正確に行う。
具体的な解説と立式
与えられた条件を整理します。
- 初速度 \(v_0 = 0\) m/s
- 移動距離 \(x = 400\) m
- 時間 \(t = 16\) s
これらの量を含む等加速度直線運動の公式は、
$$ x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 \quad \cdots ② $$
です。この式を加速度\(a\)について解きます。
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
\(v_0=0\) なので、式②は \(x = \frac{1}{2}at^2\) となります。これを \(a\) について解くと \(a = \displaystyle\frac{2x}{t^2}\) となります。これに数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{2 \times 400}{16^2} \\[2.0ex]&= \frac{800}{256} \\[2.0ex]&= 3.125
\end{aligned}
$$
したがって、加速度の大きさは \(3.125 \, \text{m/s}^2\) となります。
停止状態から一定の割合で加速する場合、進む距離は「\( \frac{1}{2} \times 加速度 \times 時間^2 \) 」で計算できます。この問題では距離と時間が分かっているので、この式を使って逆算すれば加速度が求められます。\(400 = \frac{1}{2} \times a \times 16^2\) を \(a\) について解くと、答えが得られます。
加速度の大きさは \(3.125 \, \text{m/s}^2\) です。問題の数値から、有効数字を考慮して \(3.1 \, \text{m/s}^2\) と答える場合もありますが、ここでは割り切れるため厳密な値を解答とします。
問(3)
思考の道筋とポイント
「動き始めてから」なので初速度\(v_0=0\)、そして移動距離\(x\)と最終速度\(v\)が与えられています。この問題には時間の情報が含まれていません。したがって、時間\(t\)を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント
- 「動き始めてから」は初速度 \(v_0 = 0\) を意味する。
- 時間の情報がないため、\(t\) を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を選択する。
具体的な解説と立式
与えられた条件を整理します。
- 初速度 \(v_0 = 0\) m/s
- 移動距離 \(x = 4\) m
- 最終速度 \(v = 8\) m/s
これらの量を含む等加速度直線運動の公式は、
$$ v^2 – v_0^2 = 2ax \quad \cdots ③ $$
です。この式を加速度\(a\)について解きます。
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
\(v_0=0\) なので、式③は \(v^2 = 2ax\) となります。これを \(a\) について解くと \(a = \displaystyle\frac{v^2}{2x}\) となります。これに数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{8^2}{2 \times 4} \\[2.0ex]&= \frac{64}{8} \\[2.0ex]&= 8
\end{aligned}
$$
したがって、加速度の大きさは \(8 \, \text{m/s}^2\) となります。
この問題では時間の情報がありません。このようなときは、時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うと便利です。初速度が0なので、\(v^2 = 2ax\) となります。ここに \(v=8\), \(x=4\) を代入して \(8^2 = 2 \times a \times 4\) を \(a\) について解くと、答えが求まります。
加速度の大きさは \(8 \, \text{m/s}^2\) です。単位も正しく、妥当な値です。
問(4)
思考の道筋とポイント
与えられたグラフは速度\(v\)と時間\(t\)の関係を表す「v-tグラフ」です。v-tグラフにおいて、直線の傾きは加速度を表します。したがって、グラフから読み取りやすい2点の座標を使って、傾きを計算すれば加速度が求まります。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフの傾きが加速度\(a\)を表すことを理解している。
- グラフから2点の座標(時刻と速度)を正確に読み取る。
具体的な解説と立式
v-tグラフの傾きが加速度\(a\)に等しいので、
$$ a = (\text{v-tグラフの傾き}) = \frac{\Delta v}{\Delta t} \quad \cdots ④ $$
グラフから、読み取りやすい2点の座標を選びます。
- 点1: (\(t_1, v_1\)) = (\(0, 5\))
- 点2: (\(t_2, v_2\)) = (\(4, 15\))
これらの値を式④に代入して計算します。
- 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\) (v-tグラフの傾き)
選んだ2点の座標を式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{v_2 – v_1}{t_2 – t_1} \\[2.0ex]&= \frac{15 – 5}{4 – 0} \\[2.0ex]&= \frac{10}{4} \\[2.0ex]&= 2.5
\end{aligned}
$$
したがって、加速度の大きさは \(2.5 \, \text{m/s}^2\) となります。
v-tグラフの傾きは加速度を表します。グラフを見ると、時間は0秒から4秒までの4秒間に、速度は5m/sから15m/sまで10m/s増加しています。したがって、1秒あたりの速度の増加量(加速度)は、\(10 \div 4 = 2.5 \, \text{m/s}^2\) となります。
加速度の大きさは \(2.5 \, \text{m/s}^2\) です。グラフ上の他の点、例えば(2, 10)を使っても同じ傾きが計算でき、結果が正しいことを確認できます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 等加速度直線運動の公式の選択能力:
- 核心: この問題は、様々な状況設定(与えられる物理量が異なる)に対して、3つの等加速度直線運動の公式とv-tグラフの知識の中から、最も効率的で適切な解法を自分で選択できるかどうかにかかっています。
- 理解のポイント:
- 時間\(t\)が関係する速度の問題 → \(v = v_0 + at\)
- 時間\(t\)が関係する距離の問題 → \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
- 時間\(t\)が関係しない速度と距離の問題 → \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
- v-tグラフが与えられた問題 → 傾きが加速度\(a\)、面積が移動距離\(x\)
この対応関係を瞬時に判断できることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 減速運動(負の加速度): ブレーキをかける問題など、速度が減少する場合は加速度\(a\)が負の値になります。公式はそのまま使えますが、符号の扱いに注意が必要です。
- 初速度がある場合: (4)のように、\(t=0\)で既に速度を持っている運動も頻出です。公式の\(v_0\)にその値を代入すれば問題なく解けます。
- 2つの未知数を求める問題: 例えば「初速度と加速度の両方が未知」の場合、2つの公式を連立させて解く必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- 既知の量をリストアップする: 問題文を読み、「\(v_0=0\), \(t=10\), \(v=20\), \(a=?\)」のように、分かっている量と求めたい量を書き出します。
- 未知の量と既知の量を見比べる: リストアップした量を見て、どの公式を使えば一発で解けるか、あるいはどの公式が使えないか(未知数が多すぎるか)を判断します。
- キーワードに印をつける: 「静止」「一定の加速度」「v-tグラフ」といったキーワードは、解法を決定づける重要なヒントです。問題文に印をつけながら読むと見落としが減ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 公式の選択ミス:
- 誤解: (3)のように時間の情報がないのに、\(v=v_0+at\)を使おうとして、未知数\(t\)が出てきてしまい混乱する。
- 対策: 各公式にどの物理量が含まれているかを正確に覚えましょう。「時間\(t\)がないなら \(v^2-v_0^2=2ax\)!」と即座に判断できるレベルを目指しましょう。
- 初速度\(v_0\)の見落とし:
- 誤解: (4)のように初速度があるのに、\(v_0=0\)として計算してしまう。
- 対策: 「静止」や「初め」という言葉がない限り、\(v_0=0\)とは限りません。特にグラフ問題では、\(t=0\)の切片が初速度\(v_0\)を表すことを常に意識しましょう。
- 単位の間違い:
- 誤解: 加速度の単位を m/s と書いてしまう。
- 対策: 加速度は「速度の変化(m/s)」を「時間(s)」で割ったものなので、単位は (m/s)/s すなわち \(\text{m/s}^2\) となります。単位の意味を理解しておくと間違いを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 3つの公式の役割分担:
- 選定理由: 3つの公式は、それぞれ異なる物理量の組み合わせに対応するために存在します。物理現象を記述する上で基本的な変数(\(v_0, v, a, t, x\))のうち、どれか1つが不要な状況に対応できるように、3つの式が用意されています。
- 適用根拠:
- \(v = v_0 + at\): 変位\(x\)が関係ない場合に使う。加速度の定義そのもの。
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\): 最終速度\(v\)が関係ない場合に使う。v-tグラフの面積計算から導出される。
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\): 時間\(t\)が関係ない場合に使う。上の2式から\(t\)を消去して導出される。
この役割分担を理解することで、機械的な暗記ではなく、論理的な公式選択が可能になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 立式を先に: 数値を代入する前に、まず使う公式を文字のまま書きましょう。(\(a = \frac{v-v_0}{t}\)など) これにより、思考のプロセスが整理され、代入ミスが減ります。
- 二乗の計算は慎重に: (2)の\(16^2\)のような計算は、焦ると間違いやすいポイントです。筆算などで確実に計算しましょう。
- 分数の約分: (2)の \(800/256\) のような大きな数の分数は、2や4で少しずつ約分していくと、計算ミスが減ります。\(800/256 = 400/128 = 200/64 = 100/32 = 25/8\)。
- グラフの読み取りは丁寧に: (4)では、グラフのマス目を正確に数え、座標を間違えないようにしましょう。特に、1マスの大きさが1とは限らないので注意が必要です。
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