問題の確認
dynamics#05各設問の思考プロセス
(1) 静止していた電車が動き出して10秒後に速さが \(20 \, \text{m/s}\) になった。
- 与えられた物理量の特定: 問題文から初速度 \(v_0\)、最終速度 \(v\)、時間 \(t\) を読み取ります。「静止していた」から \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) と判断します。
- 適切な公式の選択: これらの物理量 (\(v, v_0, t\)) と求める加速度 \(a\) を結びつける等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を選択します。
- 加速度についての変形と計算: 選択した公式を \(a\) について解き、与えられた数値を代入して加速度を計算します。
(2) オートバイが静止の状態から一定の加速度で加速していき、400mの距離を走るのに16秒かかった。
- 与えられた物理量の特定: 問題文から初速度 \(v_0\)、移動距離 \(x\)、時間 \(t\) を読み取ります。「静止の状態から」から \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) と判断します。
- 適切な公式の選択: これらの物理量 (\(x, v_0, t\)) と求める加速度 \(a\) を結びつける等加速度直線運動の公式 \(\displaystyle x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を選択します。
- 加速度についての変形と計算: 選択した公式を \(a\) について解き、与えられた数値を代入して加速度を計算します。
(3) 物体が動き始めてから一定の加速度で進み、4m進んだときの速さが \(8 \, \text{m/s}\) になった。
- 与えられた物理量の特定: 問題文から初速度 \(v_0\)、移動距離 \(x\)、最終速度 \(v\) を読み取ります。「動き始めてから」という表現から \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) と解釈します。
- 適切な公式の選択: これらの物理量 (\(v, v_0, x\)) と求める加速度 \(a\) を結びつける等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を選択します。
- 加速度についての変形と計算: 選択した公式を \(a\) について解き、与えられた数値を代入して加速度を計算します。
(4) 物体の運動の速度 \(v \, \text{[m/s]}\) と時間 \(t \, \text{[s]}\) の関係を表すグラフを描いたら、下図のようなグラフになった。
- グラフの種類の確認: 与えられたグラフが速度 \(v\) と時間 \(t\) の関係を表す \(v-t\) グラフであることを確認します。
- 加速度とグラフの関係の理解: \(v-t\) グラフにおいて、直線の傾きが加速度を表すことを思い出します。
- 傾きの計算: グラフから読み取れる2点を選び、それらの座標 (\(t_1, v_1\)), (\(t_2, v_2\)) を用いて傾き \(\displaystyle a = \frac{v_2 – v_1}{t_2 – t_1}\) を計算します。
各設問の具体的な解説と解答
(1) 静止していた電車が動き出して10秒後に速さが \(20 \, \text{m/s}\) になった。
問われている内容の明確化:
初速度、最終速度、経過時間が与えられた条件で、加速度の大きさを求めます。
具体的な解説と計算手順:
与えられた条件は以下の通りです。
- 初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) (静止していたため)
- 最終速度 \(v = 20 \, \text{m/s}\)
- 時間 \(t = 10 \, \text{s}\)
$$v = v_0 + at$$
この式を加速度 \(a\) について解くと、次のように表せます。
$$a = \frac{v – v_0}{t}$$
これらの値を代入して加速度 \(a\) を計算します。
$$a = \frac{20 \, \text{m/s} – 0 \, \text{m/s}}{10 \, \text{s}}$$
$$a = \frac{20 \, \text{m/s}}{10 \, \text{s}}$$
$$a = 2.0 \, \text{m/s}^2$$
計算方法の平易な説明:
加速度は、速度が1秒あたりにどれだけ変化するかを示します。この電車は、動き始めてから10秒間で速度が \(0 \, \text{m/s}\) から \(20 \, \text{m/s}\) へと、\(20 \, \text{m/s}\) だけ増加しました。したがって、1秒あたりの速度の変化は \(20 \, \text{m/s} \div 10 \, \text{s} = 2.0 \, \text{m/s}^2\) となります。これが加速度の大きさです。
この設問における重要なポイント:
- 「静止していた」という言葉から、初速度 \(v_0\) が \(0 \, \text{m/s}\) であることを読み取ります。
- 加速度の定義 \(a = \frac{\Delta v}{\Delta t}\) 、またはそれと同等な公式 \(v = v_0 + at\) を正しく適用します。
加速度の大きさは \(2.0 \, \text{m/s}^2\) です。
(2) オートバイが静止の状態から一定の加速度で加速していき、400mの距離を走るのに16秒かかった。
問われている内容の明確化:
初速度、移動距離、経過時間が与えられた条件で、一定の加速度の大きさを求めます。
具体的な解説と計算手順:
与えられた条件は以下の通りです。
- 初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) (静止の状態から)
- 移動距離 \(x = 400 \, \text{m}\)
- 時間 \(t = 16 \, \text{s}\)
$$x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2$$
初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) なので、公式は \(x = \frac{1}{2} a t^2\) と簡略化されます。
この式を加速度 \(a\) について解くと、\(a = \frac{2x}{t^2}\) となります。
値を代入して加速度 \(a\) を計算します。
$$a = \frac{2 \times 400 \, \text{m}}{(16 \, \text{s})^2}$$
$$a = \frac{800 \, \text{m}}{256 \, \text{s}^2}$$
$$a = \frac{25}{8} \, \text{m/s}^2 = 3.125 \, \text{m/s}^2$$
計算方法の平易な説明:
オートバイは停止した状態からスタートし、一定の割合でスピードを上げながら \(400 \, \text{m}\) の距離を \(16\) 秒かけて走りました。どのくらいの割合でスピードアップしたか(加速度)を求めます。初速度が0の場合の移動距離の公式 \(x = \frac{1}{2}at^2\) に、\(x=400 \, \text{m}\)、\(t=16 \, \text{s}\) を代入し、\(a\) について解きます。計算すると \(a = 3.125 \, \text{m/s}^2\) となります。
この設問における重要なポイント:
- 「静止の状態から」という記述から初速度 \(v_0\) が \(0 \, \text{m/s}\) であることを読み取ります。
- 初速度、移動距離、時間が与えられた場合に加速度を求めるための適切な公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を選択します。
加速度の大きさは \(3.125 \, \text{m/s}^2\) (または \(\displaystyle \frac{25}{8} \, \text{m/s}^2\)) です。
(3) 物体が動き始めてから一定の加速度で進み、4m進んだときの速さが \(8 \, \text{m/s}\) になった。
問われている内容の明確化:
初速度、移動距離、最終速度が与えられた条件で、一定の加速度の大きさを求めます。
具体的な解説と計算手順:
与えられた条件は以下の通りです。
- 初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) (動き始めてから、なので初めは静止と解釈)
- 移動距離 \(x = 4 \, \text{m}\)
- 最終速度 \(v = 8 \, \text{m/s}\)
$$v^2 – v_0^2 = 2ax$$
初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) とすると、公式は \(v^2 = 2ax\) と簡略化されます。
この式を加速度 \(a\) について解くと、\(a = \frac{v^2}{2x}\) となります。
値を代入して加速度 \(a\) を計算します。
$$a = \frac{(8 \, \text{m/s})^2}{2 \times 4 \, \text{m}}$$
$$a = \frac{64 \, (\text{m/s})^2}{8 \, \text{m}}$$
$$a = 8 \, \text{m/s}^2$$
計算方法の平易な説明:
物体は停止した状態から一定の割合でスピードを上げ、\(4 \, \text{m}\) 進んだ地点で速さが \(8 \, \text{m/s}\) になりました。この間のスピードアップの割合(加速度)を求めます。初速度が0の場合の速度と距離の関係式 \(v^2 = 2ax\) に、\(v=8 \, \text{m/s}\)、\(x=4 \, \text{m}\) を代入し、\(a\) について解きます。計算すると \(a = 8 \, \text{m/s}^2\) となります。
この設問における重要なポイント:
- 「動き始めてから」という表現を、初速度 \(v_0\) が \(0 \, \text{m/s}\) であると解釈します。
- 初速度、最終速度、移動距離が与えられた場合に加速度を求めるための適切な公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を選択します。
加速度の大きさは \(8 \, \text{m/s}^2\) です。
(4) 物体の運動の速度 \(v \, \text{[m/s]}\) と時間 \(t \, \text{[s]}\) の関係を表すグラフを描いたら、下図のようなグラフになった。
問われている内容の明確化:
与えられた速度 \(v\) と時間 \(t\) の関係を表すグラフ(\(v-t\)グラフ)から、加速度の大きさを求めます。
具体的な解説と計算手順:
\(v-t\)グラフにおいて、直線の傾きが加速度 \(a\) を表します。グラフから読み取れる2点を選びます。
例えば、
- 点1: 時刻 \(t_1 = 0 \, \text{s}\) のとき、速度 \(v_1 = 5 \, \text{m/s}\)
- 点2: 時刻 \(t_2 = 4 \, \text{s}\) のとき、速度 \(v_2 = 15 \, \text{m/s}\)
加速度 \(a\) は、速度の変化量 \(\Delta v\) を時間の変化量 \(\Delta t\) で割ったものです。
$$a = \frac{\Delta v}{\Delta t} = \frac{v_2 – v_1}{t_2 – t_1}$$
値を代入して加速度 \(a\) を計算します。
$$a = \frac{15 \, \text{m/s} – 5 \, \text{m/s}}{4 \, \text{s} – 0 \, \text{s}}$$
$$a = \frac{10 \, \text{m/s}}{4 \, \text{s}}$$
$$a = 2.5 \, \text{m/s}^2$$
他の2点、例えば \(t_1 = 2 \, \text{s}\), \(v_1 = 10 \, \text{m/s}\) と \(t_2 = 4 \, \text{s}\), \(v_2 = 15 \, \text{m/s}\) を用いても、
$$a = \frac{15 \, \text{m/s} – 10 \, \text{m/s}}{4 \, \text{s} – 2 \, \text{s}} = \frac{5 \, \text{m/s}}{2 \, \text{s}} = 2.5 \, \text{m/s}^2$$
となり、同じ結果が得られます。
計算方法の平易な説明:
速度と時間の関係を示すグラフ(\(v-t\)グラフ)が直線の場合、その直線の「傾き」が加速度を表します。グラフから、時間が \(0\) 秒のときの速度は \(5 \, \text{m/s}\) で、時間が \(4\) 秒のときの速度は \(15 \, \text{m/s}\) であることが分かります。この \(4\) 秒間に速度は \(15 \, \text{m/s} – 5 \, \text{m/s} = 10 \, \text{m/s}\) だけ増加しました。したがって、1秒あたりの速度の増加量は \(10 \, \text{m/s} \div 4 \, \text{s} = 2.5 \, \text{m/s}^2\) となります。これが加速度の大きさです。
この設問における重要なポイント:
- \(v-t\) グラフの傾きが加速度 \(a\) を表すことを理解していること。
- グラフから正確に2点の座標(時刻と速度)を読み取り、傾きを計算すること。
加速度の大きさは \(2.5 \, \text{m/s}^2\) です。
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 加速度の定義: 加速度は単位時間あたりの速度の変化率です。式で表すと \(a = \frac{\Delta v}{\Delta t}\) となります。物体の速さが変わる割合を示します。
- 等加速度直線運動の3つの基本公式:
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(\displaystyle x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) (変位と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (速度と変位の関係)
これらの公式は、初速度 \(v_0\)、時刻 \(t\) における速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\)、変位 \(x\) のうち、いくつかの量が分かっているときに残りの量を求めるのに使われます。
- \(v-t\) グラフの解釈:
- グラフの縦軸は速度 \(v\)、横軸は時間 \(t\) を表します。
- グラフ上の任意の点は、ある時刻における物体の速度を示します。
- グラフの傾きは、その時刻(または区間)における加速度 \(a\) を示します。直線であれば加速度は一定です。
- グラフと時間軸 (\(t\)軸) とで囲まれた部分の面積は、その時間区間における物体の変位 (移動距離) \(x\) を示します。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 問題文のキーワードの確認: 「静止していた」「一定の加速度で」「動き始めてから」などの言葉は、初速度 \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) や、等加速度直線運動の公式が使えるといった重要な手がかりになります。
- 適切な公式の選択: 問題文で与えられている物理量(既知の量)と、求めたい物理量(未知の量)を明確にし、それらを含む最適な公式を選びましょう。どの公式を使えばよいか分からないときは、各公式に含まれる物理量を書き出してみると良いでしょう。
- 単位の一貫性: 計算を行う前に、すべての物理量の単位が基本単位(メートル、秒、キログラムなど)に揃っているかを確認し、必要であれば単位換算を行いましょう。答えの単位も正しく記述することが重要です。
- グラフ問題への対応: \(v-t\) グラフだけでなく、\(x-t\) グラフ(位置-時間グラフ、傾きが速度を表す)や \(a-t\) グラフ(加速度-時間グラフ、面積が速度の変化量を表す)など、様々な運動のグラフの特徴と意味をしっかり理解しておきましょう。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 初速度 \(v_0\) の誤解: 「静止」や「動き始め」という言葉を見落として、\(v_0 \neq 0\) として計算してしまう、または逆に常に \(v_0 = 0\) と思い込んでしまうことがあります。問題文をよく読むことが大切です。
- 公式の混同や誤適用: 等加速度直線運動の公式は似ているものもあるため、混同したり、適用条件を間違えたりすることがあります。各公式の意味と使い方を正確に覚えましょう。
- \(v-t\) グラフの傾きと面積の混同: 傾きが加速度、面積が移動距離であることをしっかり区別しましょう。
- 計算ミス: 特に二乗の計算や分数の計算でミスが起こりやすいので、丁寧に計算を進めましょう。
- 有効数字の扱い: 問題文で与えられた数値の有効数字に合わせて、解答の有効数字を適切に処理する必要があります(物理基礎の範囲では、そこまで厳密に問われない場合もありますが、意識しておくと良いでしょう)。
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