無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「導体球の接触とクーロン力」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic02

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「導体の接触による電荷の再分配とクーロンの法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電荷保存則と導体の接触: 同じ形状・大きさの導体を接触させると、それらが持つ電気量の合計が均等に分配されます。
  • クーロンの法則: 2つの点電荷間に働く静電気力の大きさを計算する法則です。(\(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\))
  • 静電気力の向き: 電荷の符号が同じ場合は斥力(反発力)、異なる場合は引力がはたらきます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず2つの金属球の電気量の総和を計算し、それを2で割ることで、接触後に各球が持つ電気量を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた電気量と、与えられた距離を使ってクーロンの法則の式に代入し、力の大きさを計算します。また、電気量の符号から力の種類(引力か斥力か)を判断します。

問(1)

思考の道筋とポイント
2つの異なる電気量を持つ金属球を互いに接触させた後、それぞれの金属球が持つことになる電気量を求めます。導体である金属球を接触させると、電荷(自由電子)が自由に移動できます。同じ形状・大きさの導体の場合、最終的に総電荷が均等に分配される、という原理を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 導体同士を接触させると電荷が移動し、特に同じ形状・大きさの導体の場合は総電荷が等しく分配される。
  • 電気量には正負の符号があり、総電気量を計算する際は代数和(符号を考慮した和)を取る。

具体的な解説と立式
接触前の2つの金属球の電気量をそれぞれ \(q_1 = +3.0 \times 10^{-8}\) C, \(q_2 = -1.0 \times 10^{-8}\) C とします。
まず、接触前の2球の総電気量 \(Q_{\text{合計}}\) を求めます。
$$ Q_{\text{合計}} = q_1 + q_2 $$
次に、この総電気量 \(Q_{\text{合計}}\) が、接触後に2つの金属球に等しく分配されるため、接触後の各球の電気量 \(q’\) は、
$$ q’ = \frac{Q_{\text{合計}}}{2} $$
となります。

使用した物理公式

  • 電荷保存則
計算過程

総電気量を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{合計}} &= (+3.0 \times 10^{-8}) + (-1.0 \times 10^{-8}) \\[2.0ex]&= (3.0 – 1.0) \times 10^{-8} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
接触後の各球の電気量 \(q’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
q’ &= \frac{2.0 \times 10^{-8}}{2} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

2つの金属球をくっつけると、それらが持っていた電気が混ざり合い、同じ形の球であれば均等に分けられます。はじめに、球Aは \(+3.0 \times 10^{-8}\) C、球Bは \(-1.0 \times 10^{-8}\) C の電気を持っていました。これらを合計すると、\((+3.0 – 1.0) \times 10^{-8} = +2.0 \times 10^{-8}\) C の電気が全体であります。この合計の電気が2つの球に半分ずつ分けられるので、各球は \(\frac{+2.0 \times 10^{-8}}{2} = +1.0 \times 10^{-8}\) C の電気を持つことになります。

結論と吟味

接触後、2つの小球はそれぞれ \(+1.0 \times 10^{-8}\) C の電気量を持つことになります。

解答 (1) それぞれ \(+1.0 \times 10^{-8}\) C

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で電気量が再分配された2つの金属球を 30 cm 離して置いたときに、それらの間に働く静電気力の大きさと、その力が引力なのか斥力なのかを答えます。点電荷間に働く力なので、クーロンの法則を適用します。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則の公式 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を正しく使うこと。
  • 距離 \(r\) はメートル(m)単位に直して計算すること。(\(30 \, \text{cm} = 0.30 \, \text{m}\))
  • 電気量の符号によって力の種類(引力か斥力か)を判断すること(同符号なら斥力、異符号なら引力)。

具体的な解説と立式
クーロンの法則より、2球間にはたらく力の大きさ \(F\) は、
$$ F = k \frac{|q’ \cdot q’|}{r^2} = k \frac{(q’)^2}{r^2} $$
で与えられます。
ここで、各値は以下の通りです。

  • クーロン定数: \(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)
  • 接触後の電気量: \(q’ = 1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
  • 距離: \(r = 30 \, \text{cm} = 0.30 \, \text{m}\)

また、力の種類は、接触後の電気量 \(q’\) の符号によって決まります。

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

力の大きさの計算
$$
\begin{aligned}
F &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{(1.0 \times 10^{-8})^2}{(0.30)^2} \\[2.0ex]&= (9.0 \times 10^9) \times \frac{1.0 \times 10^{-16}}{0.090} \\[2.0ex]&= (9.0 \times 10^9) \times \frac{1.0 \times 10^{-16}}{9.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]&= \frac{9.0 \times 1.0}{9.0} \times 10^{9 – 16 – (-2)} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{9 – 16 + 2} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-5} \, \text{N}
\end{aligned}
$$
力の種類の判断
接触後の2球の電気量はどちらも \(+1.0 \times 10^{-8}\) C で、同符号(正電荷同士)です。
同符号の電荷間には斥力(反発力)が働きます。

計算方法の平易な説明

各球が \(+1.0 \times 10^{-8}\) C の電気を持ち、\(0.30\) m 離れているときの力を計算します。クーロンの法則 \(\displaystyle F = k \frac{q_1 q_2}{r^2}\) を使います。\(k\) は定数で \(9.0 \times 10^9\) です。数値を代入すると、\(\displaystyle F = (9.0 \times 10^9) \times \frac{(1.0 \times 10^{-8}) \times (1.0 \times 10^{-8})}{(0.30)^2}\) となります。これを計算すると、力の大きさは \(1.0 \times 10^{-5}\) N です。2つの球はどちらもプラスの電気を持っているので、お互いに反発しあう「斥力」が働きます。

結論と吟味

力の大きさは \(1.0 \times 10^{-5}\) N で、斥力がはたらきます。有効数字も問題文に合わせて2桁で表現しており、妥当な結果です。

解答 (2) \(1.0 \times 10^{-5}\) N, 斥力

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 導体接触における電荷保存則とクーロンの法則の組み合わせ:
    • 核心: この問題は2段階の思考プロセスを要求します。第一段階は「導体の接触」による電荷の再分配、第二段階は再分配後の電荷に対する「クーロンの法則」の適用です。この2つの異なる物理法則を正しく連携させることが核心です。
    • 理解のポイント:
      • 接触: 同じ形の導体を接触させると、電荷は自由に移動し、最終的に総電荷が均等に分配される。これは電荷保存則の一つの現れです。
      • クーロンの法則: 接触によって決まった新しい電荷の配置に対して、静電気力がどのように働くかを計算する法則です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 3球以上の接触: 3つの同じ金属球A, B, Cを同時に接触させた場合も、総電荷を計算して3で割れば、各球の最終的な電荷が求まります。
    • 段階的な接触: まずAとBを接触させて離し、次にBとCを接触させる、といった問題も頻出です。各ステップで電荷の再分配を丁寧に行うことが重要です。
    • 接地(アース): 帯電した導体を地面に接続(接地)すると、電荷は地球に逃げて導体の電気量は0になります。地球は非常に大きな導体と見なせるためです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「接触」というキーワードに注目: 問題文に「接触させた」とあれば、まず電荷の再分配計算を行う必要があると判断します。
    2. 総電荷を計算: 接触する導体の電気量を、符号に注意してすべて足し合わせます。
    3. 分配後の電荷を確定: 総電荷を導体の数で割り、接触後の各導体の電荷を求めます。
    4. クーロンの法則を適用: 確定した電荷と距離を使って、クーロンの法則で力を計算します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 総電荷の計算ミス:
    • 誤解: 電気量の符号を無視して、大きさだけで足し算してしまう(例: \(3.0+1.0=4.0\))。
    • 対策: 電気量はスカラー量ですが、正負の区別があります。必ず符号を含めた代数和(\(+3.0 + (-1.0) = +2.0\))を取ることを徹底しましょう。
  • 単位変換のミス:
    • 誤解: 距離を 30 cm のまま、\(r=30\) として計算してしまう。
    • 対策: クーロンの法則の比例定数 \(k\) の単位 (\(\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)) にはメートル(m)が含まれています。計算の前に、すべての物理量を基本単位(m, C, Nなど)に変換する習慣をつけましょう。
  • 距離の2乗忘れ:
    • 誤解: クーロンの法則の分母を \(r\) のまま計算してしまう。
    • 対策: 「逆2乗の法則」という名前の通り、クーロン力や万有引力は距離の2乗に反比例します。公式を正確に覚え、\(r^2\) を忘れないように注意しましょう。
  • 引力と斥力の判断ミス:
    • 誤解: 接触前の符号(+と-)で判断して「引力」と答えてしまう。
    • 対策: 力は接触後の状態で決まります。(1)で計算した結果、両方の球が正になったので、それに基づいて「斥力」と判断する必要があります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • なぜ接触すると電荷は均等に分配されるのか?:
    • 選定理由: これは導体の性質に基づいています。
    • 適用根拠: 導体内部では電荷(自由電子)が自由に移動できます。もし2つの導体球に電位差があれば、その差を解消するように電荷が移動します。同じ形状・大きさの導体球の場合、電荷が均等に分配されたときに両者の電位が等しくなり、電荷の移動が止まります。したがって、最終的に電荷は均等分配された状態で安定します。
  • なぜクーロンの法則を使うのか?:
    • 選定理由: 問題が「2球が及ぼしあう力の大きさ」を問うているからです。
    • 適用根拠: クーロンの法則は、点と見なせる2つの電荷の間に働く静電気力の大きさを記述する、この分野の基本法則です。「小さな金属球」という記述から、これらを点電荷として近似してよいと判断し、この法則を適用します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数計算を分離する: \(F = (9.0 \times 10^9) \times \frac{1.0 \times 10^{-16}}{9.0 \times 10^{-2}}\) のような計算では、まず係数部分 \(\frac{9.0 \times 1.0}{9.0} = 1.0\) を計算し、次に指数部分 \(10^{9-16-(-2)} = 10^{-5}\) を計算して、最後に合体させるとミスが減ります。
  • \(r^2\) の計算を丁寧に行う: \(r=0.30\) m の場合、\(r^2 = (3.0 \times 10^{-1})^2 = 3.0^2 \times (10^{-1})^2 = 9.0 \times 10^{-2}\) のように、指数形式で計算すると、後の約分が楽になります。
  • 有効数字を最後に調整する: 問題文の数値(3.0, 1.0, 30)は有効数字2桁です。計算結果もそれに合わせて \(1.0 \times 10^{-5}\) のように2桁で答えるのが適切です。

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