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electromagnetic#08各設問の思考プロセス
この問題は、点電荷が作る電位の基本的な性質と計算方法に関する理解を問うています。
- 点電荷の作る電位の公式:
- 無限遠を電位の基準 (\(0\,\text{V}\)) とするとき、点電荷 \(Q\) が自身から距離 \(r\) だけ離れた点に作る電位 \(V\) は、クーロンの法則の比例定数を \(k\) として、次式で与えられます。
$$V = k \frac{Q}{r}$$ - 電位はスカラー量であり、電荷 \(Q\) の符号(正または負)をそのまま反映します。
- 無限遠を電位の基準 (\(0\,\text{V}\)) とするとき、点電荷 \(Q\) が自身から距離 \(r\) だけ離れた点に作る電位 \(V\) は、クーロンの法則の比例定数を \(k\) として、次式で与えられます。
- 各点の電位の計算:
- 設問(1)では、点Aの電位 \(V_A\) を求めるために、与えられた \(Q\) と \(r_A\) を上記の公式に代入します。
- 設問(2)では、まず点Bの電位 \(V_B\) を求めるために、与えられた \(Q\) と \(r_B\) を同様に公式に代入します。
- 電位差の計算:
- 2点A、B間の電位差は、それぞれの点の電位の差として計算します。例えば、\(V_{AB} = V_B – V_A\) は、A点に対するB点の電位を表します。問題文で単に「A,B間の電位差 \(V\)」とされている場合、文脈に応じて \(V_B – V_A\) や \(V_A – V_B\)、あるいはその絶対値が問われることがあります。ここでは \(V = V_B – V_A\) として計算を進めます。
- 数値計算と有効数字:
- 与えられた物理定数や数値を用いて計算を行います。
- 計算結果は、与えられた数値の有効数字を考慮して適切な桁数で示します。
各設問の具体的な解説と解答
(1) 電位の基準点を無限遠とするとき, \(-3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\) の電荷から \(1.5 \, \text{m}\) 離れた点Aの電位 \(V_A \, \text{[V]}\) を求めよ。
問われている内容の明確化:
点電荷 \(Q = -3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\) から距離 \(r_A = 1.5 \, \text{m}\) の点Aにおける電位 \(V_A\) を、無限遠を基準 (\(0\,\text{V}\)) として求めます。
具体的な解説と計算手順:
点電荷が作る電位の公式は \(V = k \displaystyle\frac{Q}{r}\) です。
与えられた値を代入します:
- \(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)
- \(Q = -3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\)
- \(r_A = 1.5 \, \text{m}\)
$$V = k \frac{Q}{r}$$
$$V_A = (9.0 \times 10^9) \times \frac{-3.0 \times 10^{-6}}{1.5}$$
まず、数値部分を計算します:
$$\frac{-3.0}{1.5} = -2.0$$
よって、
$$V_A = (9.0 \times 10^9) \times (-2.0 \times 10^{-6})$$
$$V_A = (9.0 \times -2.0) \times (10^9 \times 10^{-6})$$
$$V_A = -18.0 \times 10^{9-6}$$
$$V_A = -18.0 \times 10^3 \, \text{V}$$
科学表記法で表すと、
$$V_A = -1.8 \times 10^4 \, \text{V}$$
与えられた数値は有効数字2桁なので、この結果も有効数字2桁で適切です。
計算方法の平易な説明:
点Aの電気的な高さ(電位)を求めるには、公式 \(V = k \frac{Q}{r}\) を使います。
- \(k\) は \(9.0 \times 10^9\)、\(Q\) は \(-3.0 \times 10^{-6}\)、\(r\) は \(1.5\)。
- まず \(\displaystyle \frac{Q}{r} = \frac{-3.0 \times 10^{-6}}{1.5} = -2.0 \times 10^{-6}\)。
- これに \(k\) をかけて、\(V_A = (9.0 \times 10^9) \times (-2.0 \times 10^{-6})\)。
- 数字同士 \(9.0 \times -2.0 = -18.0\)。
- \(10\)のべき乗同士 \(10^9 \times 10^{-6} = 10^3\)。
- 合わせて \(V_A = -18.0 \times 10^3 \, \text{V} = -1.8 \times 10^4 \, \text{V}\)。
この設問における重要なポイント:
- 点電荷の電位の公式 \(V = k \frac{Q}{r}\) を正確に適用する。
- 電荷 \(Q\) の符号を計算に含める(電位は符号を持つスカラー量)。
- 有効数字を考慮して結果を示す。
点Aの電位 \(V_A = -1.8 \times 10^4 \, \text{V}\)
(2) この電荷の配置で,電荷から\(1.0 \, \text{m}\)離れた点をBとするとき,A,B間の電位差 \(V \, \text{[V]}\) を求めよ。
問われている内容の明確化:
点電荷 \(Q = -3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\) から距離 \(r_B = 1.0 \, \text{m}\) の点Bの電位 \(V_B\) をまず計算し、その後、点A(距離 \(r_A = 1.5 \, \text{m}\))と点Bの間の電位差 \(V\) を \(V = V_B – V_A\) として求めます。
具体的な解説と計算手順:
まず、点Bの電位 \(V_B\) を計算します。
\(r_B = 1.0 \, \text{m}\)
$$V = k \frac{Q}{r}$$
$$V_B = (9.0 \times 10^9) \times \frac{-3.0 \times 10^{-6}}{1.0}$$
$$V_B = (9.0 \times 10^9) \times (-3.0 \times 10^{-6})$$
$$V_B = -27.0 \times 10^{3} \, \text{V}$$
$$V_B = -2.7 \times 10^4 \, \text{V}$$
次に、A,B間の電位差 \(V\) を \(V = V_B – V_A\) として計算します。
(1)より \(V_A = -1.8 \times 10^4 \, \text{V}\)。
$$V = V_B – V_A = (-2.7 \times 10^4 \, \text{V}) – (-1.8 \times 10^4 \, \text{V})$$
$$V = (-2.7 + 1.8) \times 10^4 \, \text{V}$$
$$V = -0.9 \times 10^4 \, \text{V}$$
これを有効数字2桁の科学表記で表すと、
$$V = -9.0 \times 10^3 \, \text{V}$$
計算方法の平易な説明:
- まず、点Bの電位 \(V_B\) を計算します。距離が \(1.0 \, \text{m}\) なので、
\(V_B = (9.0 \times 10^9) \times \frac{-3.0 \times 10^{-6}}{1.0} = -27.0 \times 10^3 \, \text{V} = -2.7 \times 10^4 \, \text{V}\)。 - 点Aの電位 \(V_A\) は(1)で \(-1.8 \times 10^4 \, \text{V}\) と求まっています。
- A,B間の電位差 \(V\) を \(V_B – V_A\) で求めます。
\(V = (-2.7 \times 10^4) – (-1.8 \times 10^4) = (-2.7 + 1.8) \times 10^4 = -0.9 \times 10^4 \, \text{V}\)。 - これを整えると、\(V = -9.0 \times 10^3 \, \text{V}\)。これは、点Bの電位が点Aの電位より \(9.0 \times 10^3 \, \text{V}\) 低いことを意味します。
この設問における重要なポイント:
- 各点の電位をそれぞれ正確に計算する。
- 電位差の定義(どの点からどの点を引くか)に従って計算する。今回は \(V_B – V_A\) とした。
- 負電荷の場合、電荷に近いほど電位は低くなる(より負に大きな値になる)ことを理解しておくと検算になる。(\(r_B < r_A\) なので \(V_B < V_A\))
A,B間の電位差 \(V = V_B – V_A = -9.0 \times 10^3 \, \text{V}\)
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 電位: 電場中のある点における、単位電荷あたりの位置エネルギー。スカラー量で、基準点(通常は無限遠)の取り方で値が変わる。
- 点電荷の作る電位の公式: \(V = k \frac{Q}{r}\) (無限遠基準)。電荷 \(Q\) の符号をそのまま用いる。
- クーロンの法則の比例定数 \(k\): \(k \approx 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)。
- 電位差: 2点間の電位の差。\(V_{12} = V_2 – V_1\) は点1に対する点2の電位。電位差は基準点の取り方に依らない。
- 有効数字: 測定値や与えられた定数の精度に応じて、計算結果の桁数を適切に処理する。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 電荷の符号の扱い: 電位はスカラー量ですが、電荷の符号によって正負が決まるので、計算には必ず符号を含める。
- 距離 \(r\): 電位は距離 \(r\) に反比例する。電場 (\(r^2\) に反比例) と混同しない。
- 重ね合わせの原理: 複数の点電荷がある場合、各点が作る電位をスカラー和として足し合わせることで、ある点の全電位が求まる。
- 電位差の定義の確認: 問題文で \(V_{AB}\) のように添字で指定されているか、あるいは「A点に対するB点の電位」のように言葉で指定されているかを確認し、それに従って計算する。単に「電位差」とある場合は、どちらからどちらを引くか、または絶対値を求めるのかを明確にする。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 電場と電位の混同: 電場はベクトル(向きがある)、電位はスカラー(向きはないが符号はある)。公式も異なる。
- 電荷の符号忘れ: 電位計算時に電荷の符号を入れ忘れると、結果の符号が逆になる。
- 指数の計算ミス: \(10\) のべき乗の計算での間違い。
- 単位の誤り: 電位の単位はボルト [V]。
- 負電荷と電位の関係: 負電荷の場合、電荷に近いほど電位は「低い」(より負の大きな値)。遠いほど \(0\,\text{V}\) に近づく(相対的に電位が高い)。
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