無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「電荷保存の法則とコンデンサーのスイッチ問題」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#19

各設問の思考プロセス

この問題は、スイッチの切り替えによって回路の接続状態が変化する、コンデンサー回路の応用問題です。各ステップで回路がどのようになっているかを正確に把握し、コンデンサーの直列・並列接続のルールと、電荷保存の法則を適用することが求められます。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • コンデンサーの直列・並列接続のルール
  • 電荷保存の法則: 回路の一部が電池などから電気的に切り離されている(孤立している)場合、その部分の電気量の総和は変化しない。
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. (1) 充電ステップの分析:
    \(S_{1}\)を閉じた状態の回路(\(C_1\)と\(C_2\)の直列接続)を考えます。まず合成容量を求め、回路全体で蓄えられる総電荷を計算します。直列接続では各コンデンサーの電荷は等しいので、その電荷と\(C_2\)の容量から電圧\(V_2\)を求めます。もしくは、電圧が電気容量の逆比に分配されることを利用します。
  2. (2) 再接続ステップの分析:
    ここがこの問題の核心です。

    • まず、\(S_1\)を開いたときに、(1)で蓄えられた電荷が\(C_1\)と\(C_2\)に「閉じ込められる」ことを理解します。
    • 次に\(S_2\)を閉じた後の新しい回路図を考えます。そして、外部から切り離された「孤立部分」を見つけ出します。
    • この孤立部分について、「操作前の総電荷」と「操作後の総電荷」が等しいという電荷保存の法則の式を立てます。
    • 各コンデンサーの \(Q=CV\) の関係式と連立させ、未知数である電圧を求めます。

各設問の具体的な解説と解答

(1) \(S_{1}\) のみ閉じたとき, \(C_{2}\) に加わる電圧 \(V_{2}\) を求めよ。

問われている内容の明確化
\(S_{1}\)を閉じたとき(\(C_1\)と\(C_2\)が直列に電池Vに接続されたとき)の、コンデンサー\(C_2\)の両端の電圧\(V_2\)を求めます。

具体的な解説と立式
\(C_1\)と\(C_2\)の直列接続なので、まず合成容量\(C_{12}\)を求めます。
$$\frac{1}{C_{12}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}$$
次に、この合成コンデンサーに電圧\(V\)がかかっているので、回路全体で蓄えられる電気量の総量\(Q\)は、
$$Q = C_{12}V$$
となります。直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しく、総量\(Q\)に等しくなります。
$$Q_1 = Q_2 = Q$$
最後に、コンデンサー\(C_2\)について、基本式\(Q_2 = C_2 V_2\)を変形して\(V_2\)を求めます。
$$V_2 = \frac{Q_2}{C_2} \quad \cdots ①$$

使用した物理公式:

  • コンデンサーの直列接続: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)

計算過程
まず合成容量\(C_{12}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C_{12}} &= \frac{1}{C} + \frac{1}{2C} \\[2.0ex]&= \frac{2}{2C} + \frac{1}{2C} \\[2.0ex]&= \frac{3}{2C}
\end{aligned}
$$
よって、合成容量は逆数をとって、\(C_{12} = \displaystyle\frac{2C}{3}\) です。
次に、蓄えられる総電荷\(Q\)を計算します。
$$ Q = C_{12}V = \frac{2C}{3}V $$
直列なので、\(C_2\)に蓄えられる電荷\(Q_2\)もこれと等しく、\(Q_2 = \frac{2CV}{3}\)です。
最後に、式①を使って\(V_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{Q_2}{C_2} \\[2.0ex]&= \frac{\frac{2CV}{3}}{2C} \\[2.0ex]&= \frac{2CV}{3} \times \frac{1}{2C} \\[2.0ex]&= \frac{V}{3}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • \(C_1\)と\(C_2\)が直列につながっているので、電圧\(V\)がそれぞれのコンデンサーに分配されます。
  • 電圧の分配は、電気容量の「逆比」になります。\(C_1:C_2 = C:2C = 1:2\)なので、かかる電圧の比は\(V_1:V_2 = 2:1\)となります。
  • 全体の電圧\(V\)を\(2:1\)に分けるので、\(C_2\)にかかる電圧\(V_2\)は全体の\(\frac{1}{2+1} = \frac{1}{3}\)倍です。したがって、\(V_2 = \frac{1}{3}V\)となります。

この設問における重要なポイント

  • 直列接続されたコンデンサーでは、電気容量の逆比に電圧が分配されることを理解していること。
  • もしくは、合成容量→総電荷→各電圧という手順で計算できること。
解答 (1):
\(\displaystyle\frac{1}{3}V\)

(2) 次に \(S_{1}\) を開いてから \(S_{2}\) を閉じた。\(C_{2}\) に加わる電圧 \({V_{2}}’\) を求めよ。

問われている内容の明確化
(1)の後、\(S_1\)を開き、\(S_2\)を閉じて回路を組み替えた後の、コンデンサー\(C_2\)の電圧\(V_2’\)を求めます。

具体的な解説と立式
ステップ1: スイッチ操作後の回路と孤立部分の特定

  • \(S_1\)を開く: \(C_1, C_2\)の直列回路が電池から切り離されます。(1)で蓄えられた電荷がこの部分に保存されます。
  • \(S_2\)を閉じる: 回路が組み替えられます。このとき、\(C_2\)の上側極板と\(C_3\)の上側極板が導線でつながれ、下側極板も共通の導線でつながれるため、\(C_2\)と\(C_3\)は並列接続になります。
  • 孤立部分の特定: スイッチ操作後、\(C_1\)の下側極板、\(C_2\)の上側極板、\(C_3\)の上側極板は、すべて導線でつながっており、外部から孤立した「島」になっています。この部分の電気量の総和は保存されます。

ステップ2: 電荷保存の法則の立式

  • 操作前の総電荷: (1)の状態では、\(C_1\)の下側極板に\(-Q\), \(C_2\)の上側極板に\(+Q\), \(C_3\)の上側極板に\(0\)。よって、孤立部分の電荷の合計は \(-Q+Q+0=0\) です。
  • 操作後の総電荷: 操作後の各コンデンサーの電荷を \(Q_1′, Q_2′, Q_3’\) とすると、孤立部分の電荷の合計は \(-Q_1′ + Q_2′ + Q_3’\) となります。

電荷保存則より、
$$-Q_1′ + Q_2′ + Q_3′ = 0 \quad \cdots ②$$
が成り立ちます。また、\(C_1\)の上側極板も孤立しているので、その電荷は保存されます。
$$Q_1′ = Q = \frac{2}{3}CV \quad \cdots ③$$
式②と③より、\(Q_2′ + Q_3′ = Q_1′ = Q\) が導かれます。

ステップ3: 連立方程式の準備
\(C_2\)と\(C_3\)は並列接続なので、両端の電圧は等しく、これが求める \(V_2’\) です (\(V_2′ = V_3’\))。
$$Q_2′ = C_2 V_2′ = 2CV_2′ \quad \cdots ④$$
$$Q_3′ = C_3 V_3′ = 3CV_2′ \quad \cdots ⑤$$
これらの式を \(Q_2′ + Q_3′ = Q\) に代入して \(V_2’\) を求めます。

使用した物理法則:

  1. 電荷保存の法則
  2. コンデンサーの並列接続の性質 (\(V_2’=V_3’\))
  3. コンデンサーの基本式 (\(Q=CV\))

計算過程
電荷保存則から導かれた関係式 \(Q_2′ + Q_3′ = Q\) に、式④、⑤を代入します。
$$
\begin{aligned}
2CV_2′ + 3CV_2′ &= Q \\[2.0ex]5CV_2′ &= Q
\end{aligned}
$$
これを \(V_2’\) について解くと、
$$V_2′ = \frac{Q}{5C}$$
最後に、(1)で求めた \(Q = \frac{2}{3}CV\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_2′ &= \frac{\frac{2}{3}CV}{5C} \\[2.0ex]&= \frac{2CV}{3 \cdot 5C} \\[2.0ex]&= \frac{2}{15}V
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • \(S_1\)を開くと、\(C_1\)と\(C_2\)に蓄えられた電荷\(Q\)が閉じ込められます。
  • \(S_2\)を閉じると、\(C_2\)と\(C_3\)が並列になります。
  • このとき、\(C_1\)の下の板、\(C_2\)の上の板、\(C_3\)の上の板がつながった「孤立した島」ができます。この島の電気量の合計は、スイッチを切り替える前後で変わりません。最初は0だったので、後も0です。
  • この「電荷の合計が0」という条件と、各コンデンサーのQ=CVの関係を連立させて解くと、答えが求まります。

この設問における重要なポイント

  • スイッチ操作によって回路のどの部分が電気的に孤立し、電荷が保存されるのかを見抜くこと。
  • 組み替え後の回路がどのような接続(ここでは\(C_2\)と\(C_3\)が並列)になっているかを正確に判断すること。
解答 (2):
\(\displaystyle\frac{2}{15}V\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • コンデンサーの合成: 直列接続・並列接続の際の合成容量の計算方法と、そのときの電圧・電気量の関係。
  • 電荷保存の法則: 電気的に孤立した導体系において、電気量の総和は一定に保たれる。スイッチの切り替え問題では、この法則が極めて重要になる。
  • 電位: 回路中の各点の電位を考えることで、各素子にかかる電圧を正確に把握することができる。複雑な回路では特に有効な考え方。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 回路図を書き直す: スイッチを切り替えた後の回路がどのようにつながっているか分かりにくい場合は、自分で回路図を書き直してみると、接続関係(直列・並列など)が明確になることがある。
  • 孤立部分を探す: スイッチの切り替え問題では、まず「電池から切り離されていて、外部と導線でつながっていない部分」を探し出す。その部分の電荷の総和が保存量となる。
  • 未知数と方程式の数を意識する: 求めたい物理量(未知数)がいくつあり、それらを求めるためにいくつの独立した式(法則)を立てられるか、を常に意識すると解法の見通しが立つ。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • (2)でエネルギー保存則を使おうとする: スイッチを閉じて電荷が再分配されるとき、導線でジュール熱が発生するため、一般に静電エネルギーは保存されない。エネルギー保存則は使えないので注意が必要。
  • (2)で回路の接続を誤解する: 回路の組み替え後の接続関係を正しく把握できないと、間違った式を立ててしまう。どの極板がどの極板とつながっているかを丁寧に追うことが重要。
  • 保存される電荷を間違える: (2)の操作で保存されるのは、「孤立部分」の電荷の総和である。これを個々のコンデンサーの電荷と混同しないように注意が必要。

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