無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「静止摩擦力と最大静止摩擦力」【高校物理対応】

問題の確認

dynamics#30

各設問の思考プロセス

この問題は、物体がすべり出す直前の「最大静止摩擦力」と、すべり出す前の「静止摩擦力」の違いを正しく理解しているかを問う、摩擦力の基本的な問題です。この2つの摩擦力の性質の違いが、この問題を解く上での最大のポイントです。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • 静止摩擦力: 物体が動いていないときにはたらく摩擦力。外から加えられた力と同じ大きさで逆向きにはたらき、力のつり合いを保つ。その大きさは、限界に達するまで変化する。
  • 最大静止摩擦力: 静止摩擦力が出せる限界の大きさ。これを超えると物体は動き出す。その大きさは、静止摩擦係数 \(\mu_s\) と垂直抗力 \(N\) を用いて、\(f_{\text{最大}} = \mu_s N\) と計算される。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. (1) 静止摩擦力の大きさを求める:
    まず、加えられた力 \(F = F_0/2\) が、すべり出す力の大きさ \(F_0\) より小さいことを確認します。これにより、物体はまだ「静止」していることがわかります。物体が静止している、ということは、水平方向の力がつり合っている状態なので、「加えた力 = 静止摩擦力」の関係が成り立ちます。
  2. (2) 静止摩擦係数を求める:
    「Fが \(F_0\) になったところで物体はすべりだした」という記述から、\(F_0\) が最大静止摩擦力に等しいことを読み取ります。最大静止摩擦力の公式 \(f_{\text{最大}} = \mu_s N\) に、\(f_{\text{最大}} = F_0\) と、力のつり合いから求まる垂直抗力 \(N=mg\) を代入して、\(\mu_s\) を計算します。

各設問の具体的な解説と解答

(1) 力Fが \(\displaystyle\frac{F_{0}}{2}\) になったとき、物体にはたらいている静止摩擦力の大きさ fを求めよ。

問われている内容の明確化
物体がまだすべり出していない、特定の力 \(F = \frac{F_0}{2}\) が加えられている瞬間の、静止摩擦力の大きさ \(f\) を求めます。

具体的な解説と立式
問題文より、物体がすべり出すのは力が \(F_0\) になったときです。
今、加えられている力 \(F = \frac{F_0}{2}\) は、すべり出す限界の力 \(F_0\) よりも小さいです。したがって、物体はまだ静止しています。

物体が静止しているとき、水平方向にはたらく力はつり合っています。

  • 水平右向きの力: 加えられた力 \(F\)
  • 水平左向きの力: 静止摩擦力 \(f\)

力のつり合いより、これらの大きさは等しくなります。
$$f = F$$
問題の条件 \(F = \frac{F_0}{2}\) を代入すると、
$$f = \frac{F_0}{2} \quad \cdots ①$$
となります。

使用した物理法則: 力のつり合い

(右向きの力の和)=(左向きの力の和)

計算過程
立式したものがそのまま解答となります。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{F_0}{2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • 静止摩擦力は、物体を動かさないように、外から加えられた力と全く同じ大きさで押し返す性質があります(ただし、限界はあります)。
  • この問題では、すべり出す限界の力が \(F_0\) です。
  • 今、押されている力は \(\frac{F_0}{2}\) で、まだ限界に達していません。
  • したがって、静止摩擦力は押された力と全く同じ大きさ、つまり \(\displaystyle\frac{F_0}{2}\) で押し返しています。

この設問における重要なポイント

  • 静止摩擦力は、最大値に達するまでは、加えられた力と等しい大きさであること。
  • \(f = \mu_s N\) の公式を安易に使わないこと。この公式はあくまで「最大値」を計算するためのものです。
解答 (1):
\(\displaystyle\frac{F_0}{2}\)

(2) 床と物体との間の静止摩擦係数を求めよ。

問われている内容の明確化
床と物体の間の静止摩擦係数 \(\mu_s\) を求めます。

具体的な解説と立式
静止摩擦係数 \(\mu_s\) は、最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}}\) と垂直抗力 \(N\) を用いて、以下の式で定義されます。
$$f_{\text{最大}} = \mu_s N \quad \cdots ②$$
この式を \(\mu_s\) について解くことを目指します。

最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}}\)
問題文より、物体は力 \(F\) が \(F_0\) になった瞬間にすべりだしたので、最大静止摩擦力の大きさは \(F_0\) に等しいです。
$$f_{\text{最大}} = F_0$$

垂直抗力 \(N\)
物体は水平な床の上にあるので、鉛直方向の力はつり合っています。

  • 鉛直下向きの力: 重力 \(mg\)
  • 鉛直上向きの力: 垂直抗力 \(N\)

力のつり合いより、
$$N = mg$$

これらの関係を式②に代入します。
$$F_0 = \mu_s (mg)$$
この式を \(\mu_s\) について解きます。

使用した物理公式:

  1. 最大静止摩擦力の公式: \(f_{\text{最大}} = \mu_s N\)
  2. 力のつり合い

計算過程
式 \(F_0 = \mu_s mg\) の両辺を \(mg\) で割って、\(\mu_s\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\mu_s &= \frac{F_0}{mg}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • 静止摩擦係数 \(\mu_s\) は、「最大静止摩擦力 ÷ 垂直抗力」で計算できます。
  • 最大静止摩擦力は、物体が動き出す瞬間の力なので \(F_0\) です。
  • 垂直抗力は、物体の重さ \(mg\) とつり合っているので \(N=mg\) です。
  • したがって、\(\mu_s = \displaystyle\frac{F_0}{mg}\) となります。

この設問における重要なポイント

  • 最大静止摩擦力の大きさが、物体がすべり出す直前の力の大きさに等しいことを理解すること。
  • 水平な面での垂直抗力が、重力と等しい \(N=mg\) となることを理解すること。
解答 (2):
\(\displaystyle\frac{F_0}{mg}\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 静止摩擦力と最大静止摩擦力: この2つは明確に区別する必要があります。
    • 静止摩擦力 \(f\): 外力に応じて大きさを \(0 \le f < f_{\text{最大}}\) の範囲で変える、つり合いの力。
    • 最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}}\): 静止摩擦力の上限値。物体の材質や面の状態(\(\mu_s\))と、垂直抗力(\(N\))で決まる一定の値。(\(f_{\text{最大}} = \mu_s N\))
  • 力のつり合い: 物体が静止しているとき、物体にはたらく力のベクトル和(合力)は0になる。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 状況判断: 問題が「静止している途中」の状態を問うているのか、「すべり出す瞬間」の状態を問うているのかを正確に読み取ることが極めて重要です。
    • 「静止している」→ 力のつり合いを考える。静止摩擦力=外力。
    • 「すべり出す瞬間」→ 最大静止摩擦力の公式 \(f_{\text{最大}} = \mu_s N\) を使うチャンス。
  • 垂直抗力Nの計算: この問題では \(N=mg\) でしたが、斜面上の物体や、上下方向に別の力が加わっている場合は \(N \neq mg\) となるので注意が必要です。垂直抗力は常に、力のつり合いの式を立てて求めるようにしましょう。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 静止摩擦力を常に \(f = \mu_s N\) で計算しようとする: (1)でこの間違いをするケースが非常に多いです。この公式はあくまで摩擦力の「最大値(限界値)」を与えるもので、常にこの値の摩擦力がはたらいているわけではありません。静止している間の摩擦力は、あくまで外力とつり合うだけの大きさしかありません。
  • 摩擦力と垂直抗力を混同する: 名前が似ていますが、全く別の力です。垂直抗力は面に垂直な方向の力、摩擦力は面に平行な方向の力です。

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