今回の問題
dynamics#15【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「フックの法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- フックの法則: ばねの弾性力の大きさ\(F\)は、ばねの自然の長さからの伸び(または縮み)\(x\)に比例するという法則です。式で表すと \(F=kx\) となります。
- ばね定数: フックの法則における比例定数\(k\)のことで、ばねの硬さを表します。単位は N/m です。
- F-xグラフ: 弾性力\(F\)と伸び\(x\)の関係を表すグラフです。フックの法則に従うばねでは、グラフは原点を通る直線となり、その傾きがばね定数\(k\)に相当します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、与えられた弾性力\(F\)と伸び\(x\)から、フックの法則を用いてばね定数\(k\)を計算します。単位の変換に注意が必要です。
- (2)では、(1)で求めたばね定数\(k\)と、新たに与えられた伸び\(x\)を用いて、フックの法則から弾性力\(F\)を計算します。
- (3)では、F-xグラフの傾きがばね定数\(k\)を表すことを利用し、グラフから読み取れる値を使って傾きを計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
ばねの伸びと、そのときにばねが及ぼす弾性力が与えられています。フックの法則 \(F=kx\) にこれらの値を代入することで、ばね定数\(k\)を求めることができます。ばね定数の単位は N/m なので、伸びの単位を cm から m に変換する必要がある点に注意します。
この設問における重要なポイント
- フックの法則 \(F=kx\) を正しく適用する。
- ばねの伸びの単位をセンチメートル(cm)からメートル(m)に変換する。
具体的な解説と立式
手がばねから引き返される力は、ばねの弾性力に等しいです。
与えられた条件を整理します。
- 弾性力の大きさ: \(F = 3.0\) N
- ばねの伸び: \(x = 15\) cm \( = 0.15\) m
フックの法則 \(F=kx\) をばね定数\(k\)について解くと、
$$ k = \frac{F}{x} \quad \cdots ① $$
- フックの法則: \(F=kx\)
式①に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
k &= \frac{3.0}{0.15} \\[2.0ex]&= 20
\end{aligned}
$$
したがって、ばね定数は \(20\) N/m となります。
ばねの硬さ(ばね定数)を求めます。公式「力 = ばね定数 × 伸び」を使います。まず、伸びの単位をcmからmに直します(15 cm → 0.15 m)。次に、公式を変形して「ばね定数 = 力 ÷ 伸び」とし、数値を代入します。\(3.0 \div 0.15 = 20\) と計算できます。
このばねのばね定数は \(20\) N/m です。単位も正しく、物理的に妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)と同じばねを、今度は異なる長さだけ引き伸ばしたときの弾性力を求めます。(1)で求めたばね定数\(k\)の値を使って、フックの法則 \(F=kx\) から力を計算します。この問題でも、伸びの単位を m に変換することが必要です。
この設問における重要なポイント
- (1)で求めたばね定数を利用する。
- 伸びの単位をメートル(m)に変換する。
具体的な解説と立式
与えられた条件と(1)の結果を整理します。
- ばね定数: \(k = 20\) N/m
- ばねの伸び: \(x = 25\) cm \( = 0.25\) m
フックの法則 \(F=kx\) を用いて、弾性力の大きさ\(F\)を求めます。
$$ F = kx \quad \cdots ② $$
- フックの法則: \(F=kx\)
式②に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= 20 \times 0.25 \\[2.0ex]&= 5.0
\end{aligned}
$$
したがって、手はばねから \(5.0\) N の力で引きかえされます。
(1)でこのばねの硬さが \(k=20\) N/m だとわかりました。今度は25 cm (0.25 m) 伸ばします。公式「力 = ばね定数 × 伸び」に当てはめると、力 = \(20 \times 0.25 = 5.0\) N となります。
手はばねから \(5.0\) N の力で引きかえされます。(1)よりもばねを長く伸ばしているので、力が大きくなるのは妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
弾性力\(F\)と伸び\(x\)の関係を表すF-xグラフが与えられています。フックの法則 \(F=kx\) は、\(F\)が\(x\)に比例する一次関数の形をしており、比例定数\(k\)はグラフの傾きに相当します。したがって、グラフから読み取りやすい点の座標を使って、傾きを計算すればばね定数が求まります。
この設問における重要なポイント
- F-xグラフの傾きが、ばね定数\(k\)を表すことを理解している。
- グラフから座標を正確に読み取る。
具体的な解説と立式
ばね定数\(k\)は、F-xグラフの傾きに等しいです。
$$ k = (\text{グラフの傾き}) = \frac{F}{x} \quad \cdots ③ $$
グラフから、読み取りやすい点の座標を選びます。
- 伸び: \(x = 0.20\) m
- 弾性力: \(F = 3.0\) N
これらの値を式③に代入して、ばね定数\(k\)を計算します。
- フックの法則: \(F=kx\)
読み取った座標を式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
k &= \frac{3.0}{0.20} \\[2.0ex]&= 15
\end{aligned}
$$
したがって、ばね定数は \(15\) N/m となります。
グラフの傾きがばねの硬さ(ばね定数)を表します。グラフを見ると、横に0.20進むと、縦に3.0上がっています。傾きは「縦の変化 ÷ 横の変化」なので、\(3.0 \div 0.20 = 15\) となります。よって、ばね定数は \(15\) N/m です。
このばねのばね定数は \(15\) N/m です。グラフの軸の単位がすでに N と m になっているので、単位変換は不要です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- フックの法則 \(F=kx\):
- 核心: この問題のすべては、ばねの弾性力\(F\)が、自然長からの変位\(x\)に比例するという「フックの法則」を理解し、適用できるかにかかっています。
- 理解のポイント: このシンプルな比例関係が、ばねに関する様々な問題の出発点となります。ばね定数\(k\)は、その比例定数であり、ばねの「硬さ」を表す固有の物性値です。\(k\)が大きいほど硬いばね、小さいほど柔らかいばねとなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばねの直列・並列接続: 複数のばねをつなげた場合の合成ばね定数を求める問題。
- 力のつりあい: 天井からばねで物体を吊るした場合など、弾性力と重力がつり合う状況を考える問題。つり合いの位置での伸びを計算させることが多いです。
- 弾性エネルギー: ばねが持つエネルギー \(U = \frac{1}{2}kx^2\) を計算する問題や、力学的エネルギー保存則の中で弾性エネルギーを扱う問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 単位を確認する: 問題文で与えられた長さの単位が cm か m かを最初に確認します。ばね定数の標準単位は N/m なので、cm は m に変換する必要がある、と常に意識します。
- 何が既知で何が未知かを整理する: \(F, k, x\) の3つの量のうち、どの2つが分かっていて、どれを求めるのかを明確にします。
- \(F, x\) が既知 → \(k\) を求める (問1, 3)
- \(k, x\) が既知 → \(F\) を求める (問2)
- \(F, k\) が既知 → \(x\) を求める
- グラフ問題では軸と傾きに注目: F-xグラフが出てきたら、即座に「傾きがばね定数\(k\)だ」と思い出せるようにしましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 単位変換を忘れる:
- 誤解: (1)で \(k = 3.0 \div 15 = 0.2\) N/cm と計算し、そのまま答えてしまう、あるいは単位を N/m と間違える。
- 対策: 物理の計算では、原則としてSI基本単位系(メートル、キログラム、秒など)に統一してから計算する、というルールを徹底しましょう。「長さはmに直す」と問題用紙の余白にメモしておくのも有効です。
- 公式の変形ミス:
- 誤解: \(F=kx\) を \(k=Fx\) のように、割り算と掛け算を間違えて変形してしまう。
- 対策: 簡単な数字で検算してみましょう。例えば \(6=2 \times 3\) という式で、2を求めたければ \(6 \div 3\) です。同じように、\(F=kx\) で \(k\) を求めたければ \(F \div x\) となります。
- グラフの傾きの計算ミス:
- 誤解: (3)で傾きを計算する際に、\(x/F\) のように分母と分子を逆にしてしまう。
- 対策: 傾きは「縦の変化量 / 横の変化量」という定義に立ち返りましょう。このグラフでは「\(F\)の変化量 / \(x\)の変化量」です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- フックの法則 \(F=kx\) の物理的意味:
- 選定理由: この法則は、ばねという物体の弾性的な性質を最もシンプルにモデル化したものです。実験的に見出された経験則であり、多くのばねの振る舞いを非常によく説明できます。
- 適用根拠:
- 比例関係: 「伸ばせば伸ばすほど、強い力で引き戻される」という日常的な感覚を、\(F \propto x\) という最も単純な数学的関係(比例)で表現しています。
- ばね定数\(k\): 同じだけ伸ばしても、ばねによって力の強さが異なります。この「ばねごとの個性(硬さ)」を表現するのが比例定数\(k\)です。
このように、フックの法則は物理現象を単純化し、数式で定量的に扱うための基本的なツールとして選定されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 小数の割り算は分数に直す: (1)の \(3.0 \div 0.15\) は、\(\frac{3.0}{0.15} = \frac{300}{15}\) のように、分母と分子を100倍して整数に直すと計算ミスが減ります。
- 小数の掛け算も分数で: (2)の \(20 \times 0.25\) は、\(0.25 = \frac{1}{4}\) であることを利用して、\(20 \times \frac{1}{4} = 5\) と計算すると暗算でも素早く正確にできます。
- グラフの座標を書き出す: (3)で傾きを計算する前に、使う点の座標を「(\(x, F\)) = (0.20, 3.0)」のように書き出してから計算を始めると、読み間違いや代入ミスを防げます。
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