「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 34】Step3

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476 発電方式

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、現代社会で利用される様々なエネルギー資源を、複数の観点から分類する知識問題です。物理的な計算ではなく、「枯渇性/再生可能性」と「一次/二次エネルギー」という、エネルギー問題を理解する上で基本的な概念の正確な理解が問われます。

与えられたエネルギー資源
  1. 石油(原油)・石炭・天然ガス
  2. ウラン
  3. 水力(発電等に利用される)
  4. 原子力でつくった電気エネルギー
  5. 地熱
  6. バイオマス
問われていること
  • (1) 上記の資源を、(a)枯渇性エネルギーと(b)再生可能エネルギーに分類すること。
  • (2) 上記の資源を、(c)一次エネルギーと(d)二次エネルギーに分類すること。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「エネルギー資源の分類」です。現代社会を支える様々なエネルギー資源について、その性質に基づいた分類方法を正しく理解しているかが問われます。物理的な知識というよりは、科学常識や社会的な知識に近い内容です。

  1. 枯渇性エネルギーと再生可能エネルギーの区別: 資源が有限で、使い続ければいずれなくなるものが「枯渇性エネルギー」、自然界のサイクルの中で再生・補充され、永続的に利用できるものが「再生可能エネルギー」です。
  2. 一次エネルギーと二次エネルギーの区別: 自然界に存在する状態のままエネルギー源として利用できるものが「一次エネルギー」、一次エネルギーを人間が使いやすい形に変換・加工したものが「二次エネルギー」です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、リストアップされた6つのエネルギー資源それぞれについて、「使い続けたらなくなるか(枯渇性)」「自然に補充されるか(再生可能)」という観点で分類します。
  2. (2)では、同じ6つのエネルギー資源について、「自然界にそのまま存在するか(一次)」「人間が変換・加工して作ったものか(二次)」という観点で分類します。

問(1) 枯渇性エネルギーと再生可能エネルギー

思考の道筋とポイント
「枯渇性エネルギー」と「再生可能エネルギー」の定義に基づいて、各エネルギー資源を分類する問題です。それぞれの資源がどのように得られるかを考えることが重要です。
この設問における重要なポイント

  • 枯渇性エネルギーの定義: 地下に埋蔵されている量に限りがあり、現在のペースで消費し続ければ、いずれは枯渇してしまうエネルギー資源。化石燃料や核燃料がこれにあたります。
  • 再生可能エネルギーの定義: 太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスなど、自然界の営みによって常に再生・補充されるため、永続的な利用が期待できるエネルギー資源。
  • 注意点: 「④原子力でつくった電気エネルギー」は、その大元である燃料「②ウラン」が枯渇性エネルギーであるため、これも枯渇性エネルギーに分類されます。電気そのものは再生可能ではありませんが、その源流をたどって分類します。

具体的な解説と立式
(a) 枯渇性エネルギー

  • ① 石油・石炭・天然ガス: これらは化石燃料と呼ばれ、大昔の生物の死骸が地中で長い年月をかけて変化したものです。埋蔵量には限りがあり、使い続ければなくなります。
  • ② ウラン: 原子力発電の燃料となるウランも、地中に埋蔵されている鉱物資源であり、量には限りがあります。
  • ④ 原子力でつくった電気エネルギー: この電気エネルギーの源はウランの核分裂エネルギーです。燃料であるウランが枯渇性であるため、この方法で得られる電気も枯渇性エネルギーに分類されます。

(b) 再生可能エネルギー

  • ③ 水力: 雨や雪として降った水がダムに貯まり、その位置エネルギーを利用します。水の循環は太陽エネルギーによって維持されるため、再生可能です。
  • ⑤ 地熱: 地球内部の熱を利用するエネルギーです。地球が冷え切らない限り、半永久的に利用できます。
  • ⑥ バイオマス: 植物や動物の排泄物などを燃焼・発酵させてエネルギーを得ます。植物は太陽光によって成長(光合成)するため、持続的に生産可能であり、再生可能エネルギーに分類されます。

使用した物理公式

  • この設問は知識を問うものであり、物理公式は使用しません。
計算過程

この設問は分類問題であり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

(a) いずれなくなるものグループ:石油や石炭、天然ガス、そして原子力発電の燃料であるウランは、地球に埋まっている量が決まっているので、いつかはなくなってしまいます。ウランから作る電気も、元がなくなるのでこのグループです。
(b) なくならないものグループ:水力(雨)、地熱(地球の熱)、バイオマス(植物)は、太陽や地球の活動によって繰り返し補充されるので、うまく使えばずっと利用できます。

結論と吟味

(a) 枯渇性エネルギー: ①, ②, ④
(b) 再生可能エネルギー: ③, ⑤, ⑥
それぞれのエネルギー資源の由来を考えると、この分類は妥当です。

解答 (1) (a) ①, ②, ④ (b) ③, ⑤, ⑥

問(2) 一次エネルギーと二次エネルギー

思考の道筋とポイント
「一次エネルギー」と「二次エネルギー」の定義に基づいて、各エネルギー資源を分類する問題です。エネルギーが利用されるまでの「加工・変換」の有無が判断基準となります。
この設問における重要なポイント

  • 一次エネルギーの定義: 自然界に存在する状態のまま、エネルギー源として採取・利用されるもの。例えば、原油、石炭、天然ガス、ウラン鉱石、水力、地熱、太陽光、バイオマスなどが含まれます。
  • 二次エネルギーの定義: 一次エネルギーを、人間が消費しやすい形(電気、ガソリン、都市ガスなど)に変換・加工したもの。発電所で一次エネルギーを変換して作られる電気が代表例です。

具体的な解説と立式
(c) 一次エネルギー

  • ① 石油(原油)・石炭・天然ガス: 地中から採掘・採掘されたそのままの形でエネルギー資源となります。(ガソリンや灯油は二次エネルギーですが、ここでは大元の資源として考えます)
  • ② ウラン: 地中から採掘されるウラン鉱石がエネルギーの源です。
  • ③ 水力: ダムに貯まった水の位置エネルギーそのものを利用します。
  • ⑤ 地熱: 地球内部の熱そのものを利用します。
  • ⑥ バイオマス: 植物や家畜の糞など、自然界に存在する物質そのものをエネルギー源とします。

(d) 二次エネルギー

  • ④ 原子力でつくった電気エネルギー: ウランという一次エネルギーを、原子力発電所で核分裂させ、その熱でタービンを回すというプロセスを経て「変換・加工」して作られたエネルギーです。電気エネルギーは常に二次エネルギーに分類されます。

使用した物理公式

  • この設問は知識を問うものであり、物理公式は使用しません。
計算過程

この設問は分類問題であり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

(c) 自然界からそのまま取ってくるものグループ:石油、石炭、天然ガス、ウランは地面を掘って取り出します。水力や地熱、バイオマスも、自然にある水や熱、植物を直接利用します。これらが一次エネルギーです。
(d) 人間が加工して作ったものグループ:電気は、発電所で石炭を燃やしたり、ウランを核分裂させたりと、一次エネルギーを「加工」して作られます。したがって、電気は二次エネルギーです。

結論と吟味

(c) 一次エネルギー: ①, ②, ③, ⑤, ⑥
(d) 二次エネルギー: ④
エネルギーの変換プロセスの有無という定義に基づくと、この分類は妥当です。

解答 (2) (c) ①, ②, ③, ⑤, ⑥ (d) ④

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

この問題は物理法則を直接問うものではなく、エネルギー資源に関する科学的・社会的な知識を問うものです。核心となる概念は、エネルギー資源を分類するための2つの主要な「観点」です。

  • 観点1:資源の持続可能性(枯渇性 vs 再生可能性)
    • 核心: そのエネルギー資源が、人間の時間スケールで見て「有限」か「無限(または循環的)」かという観点です。これは、エネルギー問題や環境問題を考える上で最も基本的な分類方法です。
    • 理解のポイント:
      • 枯渇性エネルギー: 地球が長い年月をかけて蓄積した「ストック(貯蔵)」を利用するもの。化石燃料(石油、石炭、天然ガス)や核燃料(ウラン)が代表例です。
      • 再生可能エネルギー: 太陽や地球の活動によって常に供給される「フロー(流れ)」を利用するもの。水力、地熱、バイオマス、太陽光、風力などが代表例です。
  • 観点2:エネルギーの変換段階(一次 vs 二次)
    • 核心: そのエネルギーが「自然界に存在するそのままの形」か「人間が利用しやすいように変換・加工した後の形」かという観点です。これは、エネルギーの供給から消費までの流れ(エネルギーシステム)を理解する上で重要です。
    • 理解のポイント:
      • 一次エネルギー: エネルギーの「原材料」。自然から直接採取します。
      • 二次エネルギー: エネルギーの「製品」。一次エネルギーを工場(発電所や製油所など)で加工して作られます。電気、ガソリン、都市ガス、水素などが代表例です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 他のエネルギー資源の分類: 太陽光発電、風力発電、燃料電池(水素)などが選択肢に加わった場合。
      • 太陽光、風力: 再生可能エネルギーであり、一次エネルギー。
      • 水素: 製造方法によりますが、一般的には水を電気分解するなどして作られる二次エネルギー。
    • エネルギー変換効率に関する問題: 一次エネルギーから二次エネルギーに変換する際には、必ずエネルギー損失が生じます。この変換効率を考慮した計算問題などに応用されます。
    • 環境負荷に関する分類: 例えば、二酸化炭素(\(\text{CO}_2\))を排出するか否か、といった観点での分類問題も考えられます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 分類の「観点(キーワード)」を正確に把握する: 「枯渇性/再生可能」なのか、「一次/二次」なのか、問題で問われている分類の軸を最初に確認します。
    2. 各エネルギー資源の「源流」をたどる: そのエネルギーが元々どこから来たのかを考えます。
      • 例:「原子力でつくった電気」→ 源流は「ウラン」→ ウランは地中の鉱物資源 → 枯渇性。
      • 例:「水力発電」→ 源流は「ダムの水の位置エネルギー」→ 水は雨として降る → 雨は太陽エネルギーによる水の循環 → 再生可能。
    3. 「加工」の有無を考える: 「電気」や「ガソリン」のように、明らかに人間が大規模な設備で作り出しているものは二次エネルギーであると判断できます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 「原子力」と「電気」の混同:
    • 誤解: 「原子力でつくった電気エネルギー」を、クリーンなイメージから再生可能エネルギーに分類してしまう。また、「電気」という形態に注目しすぎて、一次エネルギーか二次エネルギーかの判断を誤る。
    • 対策: 必ずエネルギーの「源」を基準に考えましょう。「原子力でつくった電気」の源は「ウラン」です。ウランは有限な資源なので「枯渇性」です。また、電気はウランを「変換・加工」して作られるので「二次エネルギー」です。
  • バイオマスの分類ミス:
    • 誤解: バイオマスを燃やすと\(\text{CO}_2\)が出るため、化石燃料と同じ仲間だと考えて枯渇性エネルギーに分類してしまう。
    • 対策: バイオマスの\(\text{CO}_2\)は、元々植物が光合成で大気中から吸収したものです。燃焼させて\(\text{CO}_2\)を排出しても、長い目で見れば大気中の\(\text{CO}_2\)の総量を増やさない(カーボンニュートラル)と考えられており、植物が育てば再生されるため「再生可能エネルギー」に分類されます。
  • 一次・二次の判断基準の曖昧さ:
    • 誤解: 「石炭」も家庭で使うためには採掘や輸送が必要だから二次エネルギーではないか、などと深く考えすぎて混乱する。
    • 対策: ここでの「変換・加工」とは、エネルギーの形態そのものが化学的・物理的に大きく変わることを指します。石炭を燃やして熱を取り出すのは一次エネルギーの利用ですが、石炭を燃やして電気を作るのは二次エネルギーへの変換です。エネルギーの「質」が変わるかどうかがポイントです。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • エネルギーの流れ図(サンキーダイアグラム): 左側に一次エネルギー(石油、石炭、水力など)を配置し、中央に変換部門(発電所、製油所など)、右側に二次エネルギー(電気、ガソリンなど)と最終消費部門を配置した流れ図をイメージします。この図を描くことで、一次エネルギーと二次エネルギーの関係が一目瞭然になります。
    • 資源のストックとフローのイメージ:
      • 枯渇性エネルギー: 地球という名の「貯金箱」に貯まった有限のお金(ストック)を取り崩して使っているイメージ。
      • 再生可能エネルギー: 太陽から降り注ぐ「お小遣い」(フロー)を日々利用しているイメージ。貯金は減らないが、使える量には限りがあります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

この問題では数式は使いませんが、分類の背景にある論理を理解することが重要です。

  • 枯渇性/再生可能という分類の論理:
    • 選定理由: エネルギー資源の「有限性」という、資源安全保障や持続可能な社会を考える上で最も重要な性質に着目するため。
    • 適用根拠: 地球科学的な知見(化石燃料やウラン鉱床の形成プロセス)と、生態学的な知見(太陽エネルギーを起点とする生物圏のサイクル)に基づいています。
  • 一次/二次という分類の論理:
    • 選定理由: エネルギーが社会でどのように供給され、利用されているかという「エネルギーシステム」の構造を理解するため。
    • 適用根拠: 熱力学の法則(エネルギー変換には必ず損失が伴う)や、工学的な知見(エネルギーの利用形態の多様性)に基づいています。二次エネルギーは便利ですが、変換の過程でエネルギーの一部が失われるという側面も持ち合わせています。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

この問題は計算を伴わないため、思考のフローは以下のようになります。

  1. (1) 枯渇性/再生可能エネルギーの分類:
    • 戦略: 各資源の源流をたどり、有限か無限(循環的)かを判断する。
    • フロー: ①石油・石炭・天然ガス → 化石燃料、有限 → (a)枯渇性。 ②ウラン → 鉱物資源、有限 → (a)枯渇性。 ③水力 → 水の循環、再生可能 → (b)再生可能。 ④原子力発電の電気 → 燃料がウラン → (a)枯渇性。 ⑤地熱 → 地球内部の熱、半永久的 → (b)再生可能。 ⑥バイオマス → 植物の成長、再生可能 → (b)再生可能。
  2. (2) 一次/二次エネルギーの分類:
    • 戦略: 各資源が自然界にそのまま存在するか、人間が変換・加工したかを判断する。
    • フロー: ①〜③, ⑤, ⑥ → 自然界から直接採取 → (c)一次。 ④電気エネルギー → 発電所で変換・加工 → (d)二次。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

この問題は知識問題のため、計算ミスはありません。ただし、以下のような「判断ミス」をなくす意識が重要です。

  • キーワードの定義を正確に覚える: 「枯渇性」「再生可能」「一次」「二次」という言葉の定義を曖昧にせず、正確に記憶しておくことが最も重要です。
  • 思い込みを排除する: 例えば「原子力=クリーン」というイメージだけで「再生可能」と判断するのではなく、「燃料のウランは有限か?」という定義に立ち返って論理的に判断する姿勢が大切です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの妥当性の検討:
    • 分類結果の再確認: 分類が終わった後、もう一度各グループの定義に照らし合わせて、分類に矛盾がないかを確認します。例えば、「(a)枯渇性エネルギーのグループ(①, ②, ④)は、すべて使い続けたらなくなる資源(またはそれに由来するもの)だな」と確認する作業が有効です。
    • 社会的な常識との照らし合わせ: 「再生可能エネルギーの導入促進」といったニュースで、水力、地熱、バイオマス、太陽光などが挙げられることを思い出せば、自分の分類が正しいかどうかを裏付けることができます。同様に、電気やガソリンが二次エネルギーであることは、日常生活の感覚とも一致します。
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477 太陽のエネルギー

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