「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 33】Step1 & 例題

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Step1

① 基本粒子

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「素粒子物理学の基本用語」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 物質の階層構造(原子→原子核・電子→陽子・中性子→クォーク)の理解。
  2. 力を媒介する粒子の概念(湯川秀樹の中間子論)。
  3. 粒子と反粒子の対称性。
  4. 質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\))と、対消滅・対生成現象との関連。
  5. 素粒子の分類(相互作用の種類による分類)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 文章全体の文脈を読み解き、素粒子物理学のどの概念について説明しているかを把握する。
  2. 各空欄の前後の文章を手がかりに、最も適切な物理用語を特定する。
  3. それぞれの用語の定義を正確に思い出し、文脈に合致するかを確認する。

思考の道筋とポイント
この問題は、素粒子物理学の基本的な概念と歴史の流れをまとめた文章の穴埋め問題です。各用語は独立しているわけではなく、互いに関連し合っています。文章の流れを追うことで、自然と答えが導き出せるようになっています。例えば、「湯川秀樹」「核力」というキーワードから「中間子」を連想したり、「粒子と符号が反対の粒子」という記述から「反粒子」を導き出したりすることが重要です。また、「消滅」と「生成」という対になる言葉から、「対消滅」と「対生成」という用語を推測することもできます。

この設問における重要なポイント

  • ① 素粒子: 物質を構成する、それ以上は分割できない最小単位の粒子の総称。クォーク、レプトン(電子など)、ゲージ粒子(光子など)が含まれます。
  • ② π中間子(パイ中間子): 湯川秀樹が、原子核内で陽子と中性子を結びつける「強い相互作用(核力)」を媒介する粒子として、その存在を理論的に予言しました。
  • ③ 反粒子: すべての粒子には、質量や寿命などの性質は全く同じで、電荷の符号だけが正反対の「パートナー」が存在します。これを反粒子と呼びます。例えば、電子(\(e^-\))の反粒子は陽電子(\(e^+\))です。
  • ④ 対消滅: 粒子と、その反粒子が衝突すると、両者は消滅し、その質量が \(E=mc^2\) に従って光(γ線)などのエネルギーに変換される現象です。
  • ⑤ 対生成: 対消滅の逆の現象。十分なエネルギーを持つ光(γ線)が原子核の近くを通過する際などに、粒子と反粒子のペアが突然生成される現象です。
  • ⑥ ハドロン: 素粒子のうち、「強い相互作用」で結びついている粒子のグループ名です。クォークから構成されており、核子(陽子、中性子)や中間子などが含まれます。

具体的な解説と立式
この問題は用語の知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。各空欄に入る語句を、文脈から判断します。

  1. 空欄①: 「原子核より下の階層の粒子」とは、物質の基本的な構成要素を指します。これ以上分割できない基本粒子を総称して「素粒子」と呼びます。
  2. 空欄②: 「1935年、湯川秀樹は核力を説明するために」という記述が最大のヒントです。湯川博士が予言したのは、核力を媒介する「π中間子」です。
  3. 空欄③: 「粒子と質量が同じで、電気量などの保存量の符号が反対の粒子」という定義は、まさに「反粒子」の定義そのものです。
  4. 空欄④: 粒子と反粒子が衝突して「消滅する」現象なので、「対消滅」という用語が入ります。
  5. 空欄⑤: 対消滅とは逆に、γ線などから粒子と反粒子が「生成する」現象なので、「対生成」という用語が入ります。
  6. 空欄⑥: 「核子や中間子など、強い力で相互作用をする粒子」という説明は、ハドロンの定義です。

使用した物理公式

  • この問題は用語の知識を問うものであり、直接使用する物理公式はありません。ただし、対消滅や対生成の背景には、質量とエネルギーの等価性の式 \(E=mc^2\) があります。
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

各用語を身近なものに例えてみましょう。

  • ① 素粒子: 物質を形作る、これ以上壊せない「究極のレゴブロック」のことです。
  • ② π中間子: 原子核の中で陽子と中性子が離れないように、お互いにキャッチボールしている「ボール」のような存在です。このボールをやり取りすることで、お互いを引きつけ合っています。
  • ③ 反粒子: 自分と姿かたちはそっくりなのに、性格(プラスやマイナスの電気)だけが正反対の「双子の片割れ」です。
  • ④ 対消滅: 粒子とその双子の反粒子が出会うと、お互いにパッと消えてしまい、光(エネルギー)だけが残る現象です。
  • ⑤ 対生成: とても強い光(エネルギー)から、何もなかったはずの空間に、突然、粒子と反粒子の双子ペアが生まれる現象です。
  • ⑥ ハドロン: 「強い力」という特別なルールで結びついている粒子のグループ名です。陽子や中性子、π中間子などがこのグループのメンバーです。
解答 ① 素粒子 ② π中間子 ③ 反粒子 ④ 対消滅 ⑤ 対生成 ⑥ ハドロン

② クォーク模型

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「素粒子の標準模型と基本粒子の分類」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 素粒子の標準模型の全体像の理解。
  2. 物質を構成する粒子(クォークとレプトン)の分類。
  3. クォークから構成される複合粒子であるハドロン(バリオンとメソン)の定義。
  4. 力を媒介する粒子(ゲージ粒子)の役割。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問で問われている素粒子物理学の用語について、その定義を正確に思い出す。
  2. クォーク、レプトン、ハドロン、ゲージ粒子といった分類の全体像を意識しながら、それぞれの関係性を明確にして解答する。

問(1)

思考の道筋とポイント
この問題は、物質の根源をなす素粒子「クォーク」の種類についての基本的な知識を問うものです。現在知られているクォークが6種類存在し、それぞれにユニークな名前(フレーバーと呼ばれる)がついていることを思い出す必要があります。

この設問における重要なポイント

  • クォーク: 陽子や中性子などを構成する、さらに基本的な粒子。単独で取り出すことはできず、必ず他のクォークと結びついて複合粒子(ハドロン)を形成します。
  • 6種類のフレーバー: クォークには6つの種類(フレーバー)があり、それぞれ「アップ」「ダウン」「チャーム」「ストレンジ」「トップ」「ボトム」と名付けられています。
  • 世代: この6種類のクォークは、性質の似たもの同士で2つずつペアになり、3つの「世代」を形成しています。
    • 第1世代: アップ、ダウン
    • 第2世代: チャーム、ストレンジ
    • 第3世代: トップ、ボトム

    私たちの身の回りにある安定な物質(陽子や中性子)は、最も軽い第1世代のクォーク(アップ、ダウン)からできています。

具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。
クォークは現在6種類が発見されており、その名称は以下の通りです。

  • アップ (up)
  • ダウン (down)
  • チャーム (charm)
  • ストレンジ (strange)
  • トップ (top)
  • ボトム (bottom)

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

物質を構成する究極の「材料」がクォークです。この材料には、性質の異なる6つの「味(フレーバー)」がある、と覚えましょう。その6種類の味の名前が「アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、ボトム」です。

解答 (1) アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、ボトム

問(2)

思考の道筋とポイント
クォークが単独では存在できず、いくつか集まって粒子を形成することを踏まえ、その組み合わせのパターンを思い出す問題です。「クォーク3個」という組み合わせが、どのような種類の粒子に対応するのかを特定します。

この設問における重要なポイント

  • ハドロン: クォークから構成される複合粒子の総称。強い相互作用で結びついています。
  • バリオン(重粒子): ハドロンの一種で、「3個のクォーク」から構成される粒子です。私たちの身近にある陽子(アップクォーク2個、ダウンクォーク1個)や中性子(アップクォーク1個、ダウンクォーク2個)が、バリオンの代表例です。

具体的な解説と立式
クォーク3個の組み合わせで構成される粒子を「バリオン」と呼びます。「重粒子」とも呼ばれます。

  • 例:陽子 = アップクォーク(u) + アップクォーク(u) + ダウンクォーク(d)
  • 例:中性子 = アップクォーク(u) + ダウンクォーク(d) + ダウンクォーク(d)

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

クォークをメンバーとして、アイドルグループを作ることを想像してみましょう。「クォーク」というメンバーが3人集まってできたグループが「バリオン」です。例えば、陽子というグループは「アップ、アップ、ダウン」という3人組、中性子というグループは「アップ、ダウン、ダウン」という3人組です。

解答 (2) バリオン(重粒子)

問(3)

思考の道筋とポイント
問(2)に続き、クォークの組み合わせパターンを問う問題です。今回は「クォーク1個と反クォーク1個」というペアの組み合わせが、どのような種類の粒子に対応するのかを特定します。

この設問における重要なポイント

  • 反クォーク: クォークの反粒子。質量は同じですが、電荷などの符号が反対です。
  • メソン(中間子): ハドロンの一種で、「1個のクォーク」と「1個の反クォーク」のペアから構成される粒子です。湯川秀樹が予言したπ中間子が、メソンの代表例です。

具体的な解説と立式
クォーク1個と反クォーク1個の組み合わせで構成される粒子を「メソン」と呼びます。「中間子」とも呼ばれます。

  • 例:π⁺中間子 = アップクォーク(u) + 反ダウンクォーク(\(\bar{d}\))

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

問(2)のアイドルグループの例えを続けます。今度は「クォーク」という男の子と、「反クォーク」という女の子がペアを組んだ「男女デュオ」を考えます。このデュオが「メソン」です。

解答 (3) メソン(中間子)

問(4)

思考の道筋とポイント
素粒子の大きな分類を理解しているかを問う問題です。電子が、クォークから構成される「ハドロン」の仲間なのか、それとは別のグループに属するのかを判断します。

この設問における重要なポイント

  • レプトン(軽粒子): クォークとは別の、物質を構成するもう一つの素粒子グループ。強い相互作用を受けないという特徴があります。
  • 電子: レプトンの代表的な粒子です。電子はそれ以上分割できない素粒子であり、クォークから構成されているわけではありません。
  • レプトンの種類: レプトンにも6種類あり、電子、ミュー粒子、タウ粒子と、それぞれに対応する3種類のニュートリノが存在します。

具体的な解説と立式
電子は、クォークから構成されるハドロンではなく、それ自体が素粒子です。強い相互作用を受けない粒子のグループである「レプトン」に分類されます。

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

素粒子の世界には、大きく分けて2つの派閥があります。一つはクォークを部品とする「ハドロン一族」、もう一つはクォークとは関係のない「レプトン一族」です。電子は「レプトン一族」の最も有名なメンバーです。

解答 (4) レプトン(軽粒子)

問(5)

思考の道筋とポイント
これまでの設問は「物質」を構成する粒子に関するものでしたが、この設問は「力」を伝える粒子についての問題です。粒子間に働く力を媒介する粒子の総称を答えます。

この設問における重要なポイント

  • ゲージ粒子: 自然界の4つの基本的な力(電磁気力、強い力、弱い力、重力)を媒介する粒子の総称です。
  • 力の種類とゲージ粒子:
    • 電磁気力 → 光子(フォトン)
    • 強い力 → グルーオン
    • 弱い力 → ウィークボソン
    • 重力 → 重力子(グラビトン、未発見)

    粒子同士がこれらのゲージ粒子をキャッチボールのように交換することで、力が伝わると考えられています。

具体的な解説と立式
粒子間に働く力を媒介する役割を持つ粒子を、総称して「ゲージ粒子」と呼びます。

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

2人の人がボールを投げ合うと、お互いに力を感じます。それと同じように、粒子同士は「力のボール」をキャッチボールすることで、お互いに力を及ぼし合っています。この「力のボール」の役目を果たしているのが「ゲージ粒子」です。力の種類によって、キャッチボールするボールの種類(光子、グルーオンなど)が異なります。

解答 (5) ゲージ粒子

③ 基本的な力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「自然界の4つの基本的な力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 4つの力の名称の記憶。
  2. それぞれの力の相対的な強さの比較。
  3. それぞれの力が働く範囲(到達距離)の違い。
  4. それぞれの力が関与する代表的な物理現象。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 自然界に存在する4つの基本的な力を正確にリストアップする。
  2. それぞれの力の主な特徴(強さ、働く範囲、役割)を簡潔に説明する。

思考の道筋とポイント
私たちが日常で経験する様々な力(例えば、摩擦力、垂直抗力、ばねの力など)は、ミクロな視点で見ると、すべて「電磁気力」に起因しています。このように、自然界のあらゆる現象は、たった4種類の「基本的な力」に還元できると考えられています。この問題は、その4つの力の名称を問う、物理学の根幹に関わる知識問題です。4つの力には、その強さや力が届く距離に大きな違いがあり、それぞれが異なる役割を担っていることを理解することが重要です。

この設問における重要なポイント
自然界のすべての力は、以下の4つの基本的な相互作用に分類されます。

  • 強い力(強い相互作用):
    • 4つの力の中で最も強い。
    • 働く範囲が原子核の大きさ程度と非常に狭い。
    • 役割:クォーク同士を結びつけて陽子や中性子を形成し、さらに陽子と中性子を結びつけて原子核を安定に保つ(核力)。
  • 電磁気力:
    • 強い力に次いで2番目に強い。
    • 働く範囲は無限遠にまで及ぶ。
    • 役割:電荷を持つ粒子間に働く力。原子や分子の構造を決定し、化学反応や私たちの身の回りのほとんどの現象(触る、見る、燃えるなど)の根源となっている。
  • 弱い力(弱い相互作用):
    • 電磁気力よりも弱く、3番目の強さ。
    • 働く範囲は陽子よりもさらに狭い。
    • 役割:素粒子の種類を変化させる、唯一の力。放射性同位体のβ崩壊などを引き起こす。
  • 重力:
    • 4つの力の中で圧倒的に最も弱い。
    • 働く範囲は無限遠にまで及ぶ。
    • 役割:質量を持つすべての物体の間に働く引力。惑星の公転や銀河の形成など、宇宙の大きな構造を支配している。

具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。自然界に存在する基本的な4つの力は、以下の通りです。

  1. 強い力(強い相互作用)
  2. 弱い力(弱い相互作用)
  3. 電磁気力
  4. 重力

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

自然界のすべての現象を支配している「ボス」が4人いると考えてみましょう。

  1. 強い力: 4人の中で一番の力持ち。ただし、原子核という自分の部屋からほとんど出ない引きこもり。部屋の中では無敵で、陽子や中性子をがっちり固めている。
  2. 電磁気力: 2番目に強い万能選手。電気と磁気の力で、化学、生物、工学など、私たちの日常のほとんどすべての出来事を仕切っている。
  3. 弱い力: ちょっと特殊な能力者。粒子を別の種類の粒子に変身させることができる。放射能(β崩壊)の原因はこの力のせい。
  4. 重力: 最も力が弱いけれど、影響範囲が無限大のまとめ役。惑星や銀河など、宇宙全体の大きな構造を支えている。
解答 強い力(強い相互作用)、弱い力(弱い相互作用)、電磁気力、重力

④ 宇宙の始まり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「宇宙の始まりと進化を説明するビッグバン理論」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 宇宙の始まりは、非常に高温・高密度の「火の玉」状態であったこと。
  2. 宇宙は誕生以来、一貫して膨張を続けていること。
  3. 膨張により、宇宙の温度と密度は低下してきたこと。
  4. ビッグバン理論を裏付ける観測的証拠(ハッブルの法則、宇宙背景放射など)の存在。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文が「初期の宇宙は高温・高密度であった」「爆発的に膨張した」「温度と密度が減少して現在に至る」という、ビッグバン理論の根幹を説明していることを理解する。
  2. この理論の名称を正確に答える。

思考の道筋とポイント
この問題は、現代宇宙論の標準モデルとなっている「ビッグバン理論」の定義そのものを問う、基本的な知識問題です。問題文で述べられている「初期の宇宙はきわめて高温・高密度の状態」「爆発的に膨張」「温度と密度が減少し、現在の宇宙に至った」という3つの要素は、まさにビッグバン理論の骨子です。これらのキーワードから、理論の名称を正確に導き出すことが求められます。「ビッグバン」という言葉は、何か一点で爆発が起こったというイメージを与えがちですが、実際には「空間そのものが膨張を開始した」という現象を指している点を理解しておくと、より深い知識につながります。

この設問における重要なポイント

  • ビッグバン理論: 約138億年前に、宇宙が非常に小さく、熱く、密度の高い点のような状態から始まり、急激な膨張(ビッグバン)を経て現在のような広大な宇宙に進化したとする理論。
  • 宇宙の膨張: 遠方の銀河ほど速い速度で我々から遠ざかっているという観測事実(ハッブル=ルメートルの法則)が、宇宙全体が膨張していることの証拠とされています。これは、個々の銀河が宇宙空間を移動しているのではなく、空間そのものが伸びていると解釈されます。
  • 温度と密度の低下: 宇宙が膨張すると、体積が増えるため、内部のエネルギー密度や物質の密度は低下します。これにより、初期の超高温だった宇宙は徐々に冷えていき、素粒子、原子核、原子、そして星や銀河が形成される環境が整いました。
  • 理論の証拠: ビッグバン理論は、以下の主要な観測事実によって強く支持されています。
    1. ハッブル=ルメートルの法則(銀河の後退)
    2. 宇宙マイクロ波背景放射(CMB): 宇宙全体から観測される、約2.7K(ケルビン)のマイクロ波。これはビッグバン初期の光の名残(化石)と考えられています。
    3. 軽元素の存在比: 宇宙に存在する水素とヘリウムの量の比率が、ビッグバン理論による予測と非常によく一致します。

具体的な解説と立式
この問題は用語の知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。
問題文で説明されている「初期の宇宙はきわめて高温・高密度の状態にあったが、爆発的に膨張して温度と密度が減少し、現在の宇宙に至ったとする理論」は、「ビッグバン理論」の定義そのものです。

使用した物理公式

  • なし
計算過程

なし

計算方法の平易な説明

宇宙の歴史を、オーブンでパンを焼くことに例えてみましょう。

  • 初期宇宙: オーブンに入れたばかりの、小さくてとても熱いパン生地です。
  • 膨張: パン生地がオーブンの熱でどんどん膨らんでいきます。生地の中のレーズン(銀河)も、お互いに離れていきますね。
  • 温度と密度の低下: パンが膨らむにつれて、中の熱は少しずつ冷めていきます。

この「熱くて小さなパン生地が、膨らんで冷めて、今の大きなパンになった」という宇宙の物語を、科学の世界では「ビッグバン理論」と呼んでいます。

解答 ビッグバン理論

例題

例題103 クォーク模型

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「素粒子のクォークモデルと電荷の保存」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. クォークモデル: 陽子や中性子といった粒子(ハドロン)は、さらに基本的な粒子であるクォークから構成されているというモデルです。
  2. 電荷の保存則(加法性): 複合粒子(陽子や中性子)の持つ総電荷は、それを構成する素粒子(クォーク)の電荷の単純な和に等しくなります。
  3. 連立一次方程式: 2つの未知数(この問題ではアップクォークとダウンクォークの電荷)と、それらに関する2つの独立した方程式があれば、未知数の値を一意に決定できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 陽子の構成(アップクォーク2個、ダウンクォーク1個)と、その総電荷(+e)から、1つ目の方程式を立てます。
  2. 中性子の構成(アップクォーク1個、ダウンクォーク2個)と、その総電荷(0)から、2つ目の方程式を立てます。
  3. 立てた2つの連立一次方程式を解き、アップクォークとダウンクォークの電荷をそれぞれ求めます。

思考の道筋とポイント
この問題は、陽子と中性子がより基本的な粒子であるクォークからできている、という現代物理学の知識を背景にしたパズルです。陽子と中性子という2つの異なる粒子の情報(クォーク構成と総電荷)が与えられているため、アップクォークの電荷\(x\)とダウンクォークの電荷\(y\)を未知数とする連立方程式を立てることで解くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 陽子の構成: アップクォーク \(\times 2\), ダウンクォーク \(\times 1\)
  • 中性子の構成: アップクォーク \(\times 1\), ダウンクォーク \(\times 2\)
  • 陽子の電荷: \(+e\)
  • 中性子の電荷: \(0\)
  • 複合粒子の電荷は、構成粒子の電荷の和で表される。

具体的な解説と立式
アップクォークの電気量を\(x\)、ダウンクォークの電気量を\(y\)とします。

陽子についての方程式:

陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個から構成され、全体の電気量は\(+e\)です。
したがって、構成クォークの電気量の和は\(+e\)に等しくなります。
$$ 2x + y = e \quad \cdots ① $$

中性子についての方程式:

中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個から構成され、全体の電気量は\(0\)です。
したがって、構成クォークの電気量の和は\(0\)に等しくなります。
$$ x + 2y = 0 \quad \cdots ② $$
これで、\(x\)と\(y\)に関する連立一次方程式が立てられました。

使用した物理公式

  • 電荷の加法性
計算過程

式①と式②の連立方程式を解きます。

式②より、\(x = -2y\) となります。これを式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
2(-2y) + y &= e \\[2.0ex]-4y + y &= e \\[2.0ex]-3y &= e \\[2.0ex]y &= -\frac{1}{3}e
\end{aligned}
$$
次に、求まった\(y\)の値を \(x = -2y\) に代入して\(x\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
x &= -2 \left(-\frac{1}{3}e\right) \\[2.0ex]x &= \frac{2}{3}e
\end{aligned}
$$

別解:加減法による解法

式①を2倍します。
$$ 4x + 2y = 2e \quad \cdots ①’ $$
式①’ から式②を引きます。
$$
\begin{aligned}
(4x + 2y) – (x + 2y) &= 2e – 0 \\[2.0ex]3x &= 2e \\[2.0ex]x &= \frac{2}{3}e
\end{aligned}
$$
この結果を式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{3}e + 2y &= 0 \\[2.0ex]2y &= -\frac{2}{3}e \\[2.0ex]y &= -\frac{1}{3}e
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

アップクォークの電気量を\(x\)、ダウンクォークの電気量を\(y\)とします。

  • 陽子は「アップ2個、ダウン1個」でできているので、その電気量は「\(2x + y\)」です。これが陽子の電気\(e\)と等しくなります。→ \(2x+y=e\)
  • 中性子は「アップ1個、ダウン2個」でできているので、その電気量は「\(x + 2y\)」です。これが中性子の電気0と等しくなります。→ \(x+2y=0\)

この2つの式を、中学校で習う連立方程式として解けば、\(x\)と\(y\)の値が求まります。

結論と吟味

アップクォークの電気量\(x\)は \(\displaystyle\frac{2}{3}e\)、ダウンクォークの電気量\(y\)は \(-\displaystyle\frac{1}{3}e\) です。クォークの電荷が電気素量\(e\)の分数になるという、素粒子物理学の基本的な事実と一致しており、妥当な結果です。

解答 \(x = \displaystyle\frac{2}{3}e\), \(y = -\displaystyle\frac{1}{3}e\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電荷の保存則(加法性):
    • 核心: 陽子や中性子のような複合粒子が持つ全体の電荷は、それを構成している素粒子(クォーク)の電荷を単純に足し合わせたものに等しい、という法則です。
    • 理解のポイント: この法則があるからこそ、陽子と中性子のクォーク構成に関する情報を、それぞれの総電荷と結びつけて方程式を立てることができます。
  • クォークモデル:
    • 核心: 陽子や中性子は、それ以上分割できない究極の粒子ではなく、アップクォーク(u)とダウンクォーク(d)という、より基本的な粒子から構成されているというモデルです。
    • 理解のポイント:
      • 陽子 = u + u + d
      • 中性子 = u + d + d
      • この構成を知っていることが、連立方程式を正しく立てるための前提条件となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 他のハドロンの電荷: \(\Delta^{++}\)粒子(uuu)や\(\Omega^-\)粒子(sss)など、他の種類のクォーク(ストレンジクォークsなど)を含む粒子の電荷を計算させる、あるいはその構成を推測させる問題。
    • 反粒子(反クォーク): 反アップクォーク(\(\bar{u}\))や反ダウンクォーク(\(\bar{d}\))は、それぞれ元のクォークと反対の電荷を持つ(\(\bar{u}\)は\(-\frac{2}{3}e\)、\(\bar{d}\)は\(+\frac{1}{3}e\))。これらから構成される中間子(メソン)、例えば\(\pi^+\)中間子(\(u\bar{d}\))などの電荷を計算させる問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 構成要素の特定: 問題文から、対象となる粒子(陽子、中性子)が、どのクォーク何個からできているかを正確に読み取ります。
    2. 未知数の設定: 問われている物理量(今回はアップクォークとダウンクォークの電荷)を、\(x, y\)などの未知数として設定します。
    3. 方程式の立式: 各粒子について、「構成クォークの電荷の和 = その粒子の総電荷」という等式を立てます。
    4. 連立方程式を解く: 未知数の数と同じだけ独立した方程式が立てば、あとは数学の問題として連立方程式を解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 方程式の係数ミス:
    • 誤解: 陽子(アップ2個、ダウン1個)の電荷の式を \(x+2y=e\) のように、係数を逆にしてしまう。
    • 対策: 「アップが\(x\)、ダウンが\(y\)。陽子はアップが2個だから\(2x\)、ダウンが1個だから\(y\)。合計で\(2x+y\)。これが\(e\)に等しい」というように、一つ一つ言葉で確認しながら立式する癖をつけましょう。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: 代入法や加減法での単純な計算ミス。特に、分数や負の数が絡むとミスが増えがちです。
    • 対策:
      • 加減法: 係数を揃えるための掛け算を間違えない。式全体に掛けるのを忘れない。
      • 代入法: 移項する際の符号ミスに注意する。代入後の括弧の展開を間違えない。
      • 最後に必ず検算する。求めた\(x, y\)を元の2つの式両方に代入し、等式が成り立つかを確認することが最も確実な対策です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 連立一次方程式:
    • 選定理由: この問題は、2つの未知数(\(x, y\))があり、それらに関する独立した情報が2つ(陽子の情報、中性子の情報)与えられている状況です。このような「未知数の数 = 情報(式の数)」の状況を解くための、最も基本的かつ強力な数学的ツールが連立方程式です。
    • 適用根拠: 陽子の電荷に関する式と中性子の電荷に関する式は、互いに独立した情報源から得られる異なる制約条件です。これらの制約を「同時に」満たす解(\(x, y\)の値)を見つけ出す操作が、まさに連立方程式を解くという行為に他なりません。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 立式の整理:
    • 陽子: \(2x + y = e \quad \cdots ①\)
    • 中性子: \(x + 2y = 0 \quad \cdots ②\)

    このように、どの粒子からどの式が導かれたかを明記し、式番号を振ることで、思考が整理され、後の計算や検算がしやすくなります。

  • 解法の選択: この問題の場合、式②を \(x=-2y\) と変形して式①に代入する「代入法」が、分数計算を避けられるため比較的簡単です。一方、式① \(\times 2 – ②\) のように係数を揃えて解く「加減法」も有効です。自分が得意な、あるいはミスしにくいと感じる方法を選択しましょう。
  • 検算の習慣化: 求めた解 \(x=\displaystyle\frac{2}{3}e, y=-\displaystyle\frac{1}{3}e\) を、必ず元の両方の式に代入して確認します。
    • 式①: \(2(\displaystyle\frac{2}{3}e) + (-\displaystyle\frac{1}{3}e) = \displaystyle\frac{4}{3}e – \displaystyle\frac{1}{3}e = \displaystyle\frac{3}{3}e = e\)。OK。
    • 式②: \((\displaystyle\frac{2}{3}e) + 2(-\displaystyle\frac{1}{3}e) = \displaystyle\frac{2}{3}e – \displaystyle\frac{2}{3}e = 0\)。OK。

    この一手間を惜しまないことが、高得点への鍵です。

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