436 トムソンの実験
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、J.J.トムソンが行った陰極線(電子)の比電荷測定に関する歴史的な実験を題材にしています。荷電粒子が電場や磁場から受ける力を理解し、運動方程式や力のつり合いを適用して粒子の性質を解明する過程を追体験する問題です。
この問題の核心は、複数の実験状況(電場のみ、電場と磁場、磁場のみ)を段階的に分析し、それぞれの結果を組み合わせて未知の物理量(比電荷 \(e/m\))を導出する点にあります。
- 電子の質量: \(m\) [kg]
- 電子の電気量: \(-e\) [C] (ここで \(e\) は電気素量で正の値)
- 極板の長さ: \(L\) [m]
- 電子の初速度: \(v_0\) [m/s] (x軸正方向)
- 一様な電場: \(E\) [N/C] (y軸負方向)
- 一様な磁束密度: \(B\) [T] (z軸正方向、紙面奥から手前向きと仮定。逆でもローレンツ力の向きは同じ)
- (1) 実験(i)(電場のみ)における電子の進路の傾き \(\tan\theta\)。
- (2) 実験(ii)(電場と磁場)で電子が直進するときの初速度 \(v_0\)。
- (3) (1)と(2)の結果を用いた、電子の比電荷 \(e/m\)。
- (4) 実験(iii)(磁場のみ)における円運動の関係式 \(Br = mv_0/e\) の証明。
- (5) 実験(iv)(電子の衝突による発熱)における熱エネルギー \(W\) と電気量 \(q\) を電子の個数 \(N\) で表し、さらに比電荷 \(e/m\) を測定量 \(W, q, B, r\) で表すこと。
- (6) 実際の測定値を用いた比電荷 \(e/m\) の数値計算。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「電場・磁場中での荷電粒子の運動と比電荷の測定」です。複数の物理法則を段階的に適用していく総合力が試されます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 荷電粒子が受ける力: 電場からの力(クーロン力)と、磁場から受ける力(ローレン-ツ力)の式と向きを正しく理解していること。
- 運動の分解: 力を受けた粒子の運動を、運動方向とそれに垂直な方向に分解して考える(放物運動のアナロジー)。
- 力のつり合い: 複数の力が働く状況で、粒子が直進する(加速度が0)条件は、合力が0であること。
- 円運動の動力学: ローレンツ力を向心力とする等速円運動の運動方程式を立てられること。
- エネルギー保存則: 粒子の運動エネルギーが他の形態のエネルギー(熱エネルギー)に変換される関係を理解していること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、各実験状況において電子に働く力を正確に図示し、運動方程式または力のつり合いの式を立てます。
- (1)では、電場による等加速度運動として扱い、極板通過後の速度成分から \(\tan\theta\) を求めます。
- (2)では、電場による力とローレンツ力がつり合う条件から \(v_0\) を求めます。
- (3)では、(1)と(2)で得られた式を連立させ、未知数 \(v_0\) を消去して \(e/m\) を導出します。
- (4)では、ローレンツ力が向心力となる円運動の運動方程式を立てます。
- (5)では、多数の電子のエネルギーと電気量を考え、(4)の結果と組み合わせて \(e/m\) を別の測定量で表します。
- (6)では、(5)の式に具体的な数値を代入して計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
電場のみがかかっている状況で、電子の運動がどうなるかを考えます。電子はx軸方向には力を受けないので等速直線運動を続けますが、y軸方向には電場から静電気力を受けて加速されます。この結果、電子は放物線軌道を描きます。極板を抜け出る瞬間の速度のy成分とx成分の比が \(\tan\theta\) となります。
この設問における重要なポイント
- 力の向き: 電子の電荷は負(\(-e\))なので、電場 \(E\) の向き(図ではMからN、すなわちy軸負方向)とは逆向き、つまりy軸正方向に力を受けます。力の大きさは \(F_y = eE\) です。
- 運動の分解: 運動をx方向とy方向に分けて考えます。
- x方向: 力は働かないので、速度 \(v_0\) の等速直線運動。
- y方向: 一定の力 \(F_y = eE\) を受けるので、初速度0の等加速度直線運動。
- 時間の計算: 電子が極板間(長さ\(L\))を通過する時間は、x方向の運動から \(t = L/v_0\) として求められます。
具体的な解説と立式
電子はy軸正方向に大きさ \(eE\) の力を受けるので、y方向の加速度を \(a_y\) とすると、運動方程式は以下のようになります。
$$ ma_y = eE $$
電子が極板間を通過するのにかかる時間 \(t\) は、x方向の距離が \(L\)、速度が \(v_0\) であることから、
$$ t = \frac{L}{v_0} \quad \cdots ① $$
この時間 \(t\) の間に、電子はy方向に加速されます。極板を通過した直後のy方向の速度 \(v_y\) は、初速度が0であることから、
$$ v_y = a_y t \quad \cdots ② $$
極板通過直後のx方向の速度は初速度のまま \(v_x = v_0\) です。
速度の向きがx軸の正方向となす角が \(\theta\) なので、
$$ \tan\theta = \frac{v_y}{v_x} \quad \cdots ③ $$
が成り立ちます。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma=F\)
- 等加速度直線運動: \(v = v_0 + at\)
- 等速直線運動: \(x = vt\)
まず、y方向の加速度 \(a_y\) は、運動方程式から、
$$ a_y = \frac{eE}{m} $$
次に、この \(a_y\) と①式を②式に代入して、\(v_y\) を求めます。
$$ v_y = \left( \frac{eE}{m} \right) \cdot \left( \frac{L}{v_0} \right) = \frac{eEL}{mv_0} $$
最後に、この \(v_y\) と \(v_x = v_0\) を③式に代入して \(\tan\theta\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{v_y}{v_x} \\[2.0ex]
&= \frac{eEL/mv_0}{v_0} \\[2.0ex]
&= \frac{eEL}{mv_0^2}
\end{aligned}
$$
電子は、まっすぐ(x方向)に進みながら、電場によって上向き(y方向)にぐいっと引かれます。この運動は、水平に投げたボールが重力で下に落ちていく放物運動と全く同じ形です。極板を通り抜けるのにかかる時間と、その間に上向きにどれだけ加速されたかを計算し、最終的な速度の「上向き成分」と「横向き成分」の比率を求めることで、進路の傾き \(\tan\theta\) がわかります。
電子の進路の傾きは \(\tan\theta = \displaystyle\frac{eEL}{mv_0^2}\) となります。
この式は、電場 \(E\) が強いほど、また極板長 \(L\) が長いほど、電子は大きく曲げられる(\(\tan\theta\) が大きくなる)ことを示しています。一方で、電子の質量 \(m\) が大きいほど、また初速度 \(v_0\) が速いほど、曲がりにくい(\(\tan\theta\) が小さくなる)ことを示しており、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
実験(i)の状況に、電場と垂直な向きに磁場を加えます。このとき電子が直進する(\(\theta=0\))条件を考えます。直進するということは、電子の進行方向(x方向)は変わらず、y方向の速度成分が0のままであることを意味します。これは、y方向に働く力の合力が0、つまり電場による力と磁場によるローレンツ力がつり合っている状態です。
この設問における重要なポイント
- 電場による力: (1)と同様に、y軸正方向に大きさ \(F_E = eE\)。
- ローレンツ力: 速度 \(v_0\) で運動する電荷 \(-e\) の電子が磁場 \(B\) から受ける力。フレミングの左手の法則を用います。電流の向き(正電荷の運動方向)は電子の運動方向と逆、つまりx軸負方向と考えます。磁場が紙面奥から手前向き(z軸正方向)とすると、ローレンツ力はy軸負方向に働きます。力の大きさは \(F_B = ev_0B\)。
- 力のつり合い: 電子が直進するためには、y軸方向の力がつり合う必要があります。すなわち \(F_E = F_B\)。
具体的な解説と立式
電子がy方向に受ける力は次の2つです。
- 電場による力: \(F_E = eE\) (y軸正方向)
- ローレンツ力: \(F_B = ev_0B\) (y軸負方向)
電子が直進するためには、これらの力がつり合っている必要があるので、
$$ eE = ev_0B $$
が成り立ちます。
使用した物理公式
- ローレンツ力: \(F = qvB\)
- 力のつり合い
上記で立てた力のつり合いの式を \(v_0\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
eE &= ev_0B \\[2.0ex]
v_0 &= \frac{E}{B}
\end{aligned}
$$
電子をまっすぐ進ませるためには、電場が上に引っ張る力と、磁場が下に引っ張る力が、ちょうど同じ大きさになればよいわけです。この「力のつり合い」が成り立つときの電子の速さを計算します。この仕組みは、特定の速さの粒子だけを選び出す「速度選択器」として知られています。
電子の初速度は \(v_0 = E/B\) と表せます。
この結果は、電場と磁場の強さの比によって、直進できる粒子の速度が決まることを示しています。この原理を利用することで、目に見えない粒子の速度を制御したり測定したりすることが可能になります。
問(3)
思考の道筋とポイント
(1)と(2)で得られた2つの関係式を使って、直接測定することが難しい初速度 \(v_0\) を消去し、比電荷 \(e/m\) を、実験で設定・測定できる量(\(E, B, L, \tan\theta\))だけで表します。
この設問における重要なポイント
- 利用する関係式:
- (1)の結果: \(\tan\theta = \displaystyle\frac{eEL}{mv_0^2}\)
- (2)の結果: \(v_0 = \displaystyle\frac{E}{B}\)
- 計算の方針: (2)の式を(1)の式に代入して \(v_0\) を消去し、得られた式を \(e/m\) について整理します。
具体的な解説と立式
(1)で求めた式は、
$$ \tan\theta = \frac{eEL}{mv_0^2} \quad \cdots ① $$
(2)で求めた式は、
$$ v_0 = \frac{E}{B} \quad \cdots ② $$
②を①に代入して \(v_0\) を消去します。
使用した物理公式
- (1), (2)で導出した関係式
②式を①式の \(v_0\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{eEL}{m \left( \displaystyle\frac{E}{B} \right)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{eEL}{m \left( \displaystyle\frac{E^2}{B^2} \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{eELB^2}{mE^2} \\[2.0ex]
&= \frac{e}{m} \cdot \frac{LB^2}{E}
\end{aligned}
$$
この式を比電荷 \(e/m\) について解きます。
$$ \frac{e}{m} = \frac{E \tan\theta}{LB^2} $$
2つの異なる実験から得られた2つの数式を、連立方程式を解く要領で組み合わせます。ここでは、両方の式に共通して含まれている「電子の速さ \(v_0\)」を消去することで、私たちが知りたい「比電荷 \(e/m\)」を、実験で測れる値だけで表す式を導き出します。
電子の比電荷は \(\displaystyle\frac{e}{m} = \frac{E \tan\theta}{LB^2}\) と表せます。
この式に含まれる \(E, B, L, \theta\) はすべて実験的に測定可能な量であるため、この関係式を用いることで、トムソンは電子の比電荷を世界で初めて測定することに成功しました。
問(4)
思考の道筋とポイント
電場をなくし、磁場だけがかかっている状況を考えます。電子は初速度 \(v_0\) と垂直な方向に常にローレンツ力を受け続けます。このように、進行方向と常に垂直な一定の力を受ける物体は等速円運動を行います。このとき、ローレンツ力が向心力の役割を果たします。この関係を運動方程式で記述します。
この設問における重要なポイント
- 向心力: 電子が受けるローレンツ力 \(F = ev_0B\) が、円運動の向心力となります。
- 向心加速度: 半径 \(r\)、速さ \(v_0\) の円運動における加速度は \(a = v_0^2/r\) で、向きは常に円の中心を向きます。
- 運動方程式: 円運動の運動方程式 \(ma=F\) を立てます。
具体的な解説と立式
電子に働く力はローレンツ力 \(F = ev_0B\) のみです。この力が向心力となり、電子は半径 \(r\) の等速円運動をします。
円運動の運動方程式は、
$$ m \frac{v_0^2}{r} = ev_0B $$
と表せます。
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(ma=F\)
- ローレンツ力: \(F=qvB\)
上記で立てた運動方程式を \(Br\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_0^2}{r} &= ev_0B \\[2.0ex]
\end{aligned}
$$
両辺を \(v_0\) で割り(\(v_0 \neq 0\))、式を整理すると、
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_0}{r} &= eB \\[2.0ex]
mv_0 &= eBr \\[2.0ex]
Br &= \frac{mv_0}{e}
\end{aligned}
$$
よって、題意は示されました。
磁場の中で動く電子は、常に進行方向に対して横向きに力を受け、ぐるぐると円を描きます。このとき、電子を円軌道に留めておく力(向心力)の正体は磁場からの力(ローレンツ力)です。この関係をニュートンの運動の法則(\(ma=F\))に当てはめて式を立て、整理すると、求めたい関係式が導かれます。
\(Br = mv_0/e\) という関係が示されました。この式は、磁場の強さ \(B\) と円運動の半径 \(r\) の積が、粒子の運動量 \(mv_0\) を電気量 \(e\) で割ったものに等しいことを意味します。この量は「磁気剛性」とも呼ばれ、粒子の曲がりにくさを表す指標として、加速器物理学などで広く用いられます。
問(5)
思考の道筋とポイント
この設問は2つのパートに分かれています。
前半は、1秒間に \(N\) 個の電子が金属板に衝突するときの、全熱エネルギー \(W\) と全電気量 \(q\) を \(N\) を用いて表します。
後半は、前半で得た \(W\) と \(q\) の関係式、および(4)で証明した関係式を用いて、\(v_0\) と \(N\) を消去し、比電荷 \(e/m\) を測定可能な量 \(W, q, B, r\) で表します。
この設問における重要なポイント
- エネルギーの変換: 電子1個が持つ運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv_0^2\) が、衝突によってすべて熱エネルギーに変換されると仮定します。
- 総量の計算: 全エネルギー \(W\) と全電気量 \(q\) は、電子1個あたりの量に個数 \(N\) を掛けることで求められます。
- 式の連立: 3つの関係式(\(W\) の式, \(q\) の式, (4)の式)を連立させて、不要な変数(\(v_0, N, e\))を消去し、\(e/m\) を求めます。
具体的な解説と立式
まず、\(W\) と \(q\) を \(N\) を用いて表します。
電子1個の運動エネルギーは \(\frac{1}{2}mv_0^2\) なので、\(N\) 個の電子が持つ総運動エネルギーは \(N \cdot \frac{1}{2}mv_0^2\) です。これがすべて熱エネルギー \(W\) になるとすると、
$$ W = \frac{1}{2} N m v_0^2 \quad \cdots ① $$
電子1個の電気量の大きさは \(e\) なので、\(N\) 個の電子の総電気量の大きさ \(q\) は、
$$ q = Ne \quad \cdots ② $$
次に、これらの式と(4)の結果 \(Br = mv_0/e\) を使って比電荷 \(e/m\) を求めます。
(4)の結果を変形すると、
$$ v_0 = \frac{eBr}{m} \quad \cdots ③ $$
となります。①, ②, ③の3式から \(N\) と \(v_0\) を消去して \(e/m\) を導出します。
使用した物理公式
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
- (4)で導出した関係式
まず、①式と②式の比をとることで \(N\) を消去します。
$$ \frac{W}{q} = \frac{\frac{1}{2} N m v_0^2}{Ne} = \frac{mv_0^2}{2e} $$
この式に、③式 (\(v_0 = eBr/m\)) を代入して \(v_0\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{W}{q} &= \frac{m}{2e} \left( \frac{eBr}{m} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{m}{2e} \cdot \frac{e^2 B^2 r^2}{m^2} \\[2.0ex]
&= \frac{e B^2 r^2}{2m} \\[2.0ex]
&= \frac{e}{m} \cdot \frac{B^2 r^2}{2}
\end{aligned}
$$
この最終的な式を、比電荷 \(e/m\) について解きます。
$$ \frac{e}{m} = \frac{2W}{qB^2r^2} $$
たくさんの電子(\(N\)個)を金属板にぶつけると、板は熱くなり(熱エネルギー\(W\))、電気がたまります(電気量\(q\))。\(W\) は電子の全運動エネルギー、\(q\) は電子の全電気量です。この2つの測定値の比(\(W/q\))を計算すると、個数\(N\)が打ち消し合って、電子1個あたりのエネルギーと電気量の関係式が得られます。この式に、(4)で求めた磁場中での運動の関係式を代入することで、比電荷\(e/m\)を、実験で測定できる量だけで表すことができます。
熱エネルギー \(W = \frac{1}{2}Nmv_0^2\) [J]、電気量 \(q = Ne\) [C] と表せます。
また、比電荷は \(\displaystyle\frac{e}{m} = \frac{2W}{qB^2r^2}\) [C/kg] となります。
この結果は、(3)で求めた方法とは全く異なるアプローチ(熱量測定)によって比電荷を求める方法を示しています。物理学では、このように異なる方法で同じ物理量を測定し、結果が一致することを確認することで、その法則の正しさを検証していきます。
問(6)
思考の道筋とポイント
(5)で導出した比電荷 \(e/m\) の式に、与えられた測定値を代入して、その数値を計算します。計算を簡単にするため、式を少し変形してから代入すると良いでしょう。
この設問における重要なポイント
- 使用する式: \(\displaystyle\frac{e}{m} = \frac{2W}{qB^2r^2}\)
- 式の変形: \(B^2r^2 = (Br)^2\) と見なせるので、式は \(\displaystyle\frac{e}{m} = \frac{2}{(Br)^2} \cdot \frac{W}{q}\) と変形できます。これにより、与えられた測定値の塊をそのまま代入できます。
- 与えられた測定値:
- \(\displaystyle\frac{W}{q} = 2.5 \times 10^3\) [J/C]
- \(Br = 1.60 \times 10^{-4}\) [kg・m/(s・C)]
- 有効数字: 問題で与えられている数値の有効数字は2桁(2.5)と3桁(1.60)ですが、解答はより桁数の少ない方に合わせて2桁で答えるのが一般的です。
具体的な解説と立式
(5)で求めた比電荷の式を変形します。
$$ \frac{e}{m} = \frac{2W}{qB^2r^2} = \frac{2}{(Br)^2} \left( \frac{W}{q} \right) $$
使用した物理公式
- (5)で導出した関係式
上記の式に、与えられた測定値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{e}{m} &= \frac{2}{(1.60 \times 10^{-4})^2} \times (2.5 \times 10^3) \\[2.0ex]
&= \frac{2 \times 2.5 \times 10^3}{1.60^2 \times (10^{-4})^2} \\[2.0ex]
&= \frac{5.0 \times 10^3}{2.56 \times 10^{-8}} \\[2.0ex]
&= \frac{5.0}{2.56} \times 10^{3 – (-8)} \\[2.0ex]
&= 1.953… \times 10^{11}
\end{aligned}
$$
結果を有効数字2桁で答えるため、小数第2位を四捨五入します。
$$ \frac{e}{m} \approx 2.0 \times 10^{11} \text{ [C/kg]} $$
(5)で導き出した最終公式に、実験で得られた具体的な数値を代入して、電卓(または筆算)で計算するだけです。物理的な思考というよりは、算数の計算問題に近いパートです。
電子の比電荷の値は、約 \(2.0 \times 10^{11}\) C/kg と求められました。
現在知られている電子の比電荷の精密な値は \(1.7588 \times 10^{11}\) C/kg であり、今回の計算結果はオーダー(\(10^{11}\)の部分)が一致しており、係数部分も近い値となっています。問題で使われた測定値は、計算しやすいように調整されたものですが、トムソンの実験が電子の基本的な性質を正しく捉えていたことを示唆する、妥当な結果と言えます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 荷電粒子が電磁場から受ける力:
- 核心: この問題全体を貫く最も基本的な法則は、荷電粒子が受ける2つの力、すなわち電場からの力(クーロン力)\( \vec{F}_E = q\vec{E} \) と磁場からの力(ローレンツ力)\( \vec{F}_B = q(\vec{v} \times \vec{B}) \) です。特に、電子の電荷が負(\(-e\))であるため、力の向きが電場やフレミングの法則の「電流の向き」とは逆になる点を正確に理解することが全ての設問の出発点となります。
- 理解のポイント: (1)ではクーロン力のみ、(4)ではローレンツ力のみ、(2)ではその両方がつり合う状況を扱います。これらの力を正しく立式できるかが、問題を解くための第一関門です。
- 運動の分解と運動方程式:
- 核心: 荷電粒子が力を受けて運動する様子を、ニュートンの運動方程式 \( ma=F \) を用いて記述することです。特に、力が複数の方向に働く場合、運動を直交する成分(x方向、y方向)に分解して考えるアプローチが極めて重要です。
- 理解のポイント:
- (1)の放物運動: x方向は力がなく等速運動、y方向は一定の力で等加速度運動。
- (4)の円運動: ローレンツ力が常に向心力として働き、等速円運動を引き起こす。
これらの運動の性質を見抜き、適切な運動方程式を立てることが核心です。
- 物理量の保存と変換:
- 核心: (5)では、多数の電子が持つ運動エネルギーの総和が、衝突によって熱エネルギーに変換されるというエネルギー保存則の考え方が用いられます。また、全電気量 \(q\) は電子1個の電気量 \(e\) の整数倍(\(Ne\))になるという、電気量保存則の考え方も基礎となっています。
- 理解のポイント: ミクロな粒子(電子)1個の性質(\(m, e, v_0\))と、マクロな測定量(\(W, q\))を結びつけるために、エネルギーと電気量という2つの保存量を介して関係を構築します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 質量分析器: 電場と磁場を使い、イオンの質量や電荷に応じて進路を分離・測定する装置。本問の(2)の速度選択器と(4)の円運動の原理を組み合わせた典型的な応用例です。
- ホール効果: 電流が流れている導体に垂直に磁場をかけると、導体内部の荷電粒子(電子やホール)がローレンツ力を受けて偏り、導体の側面に電位差(ホール電圧)が生じる現象。力のつり合いの考え方が共通しています。
- サイクロトロン: 磁場中で荷電粒子を円運動させながら、電場で加速を繰り返す装置。ローレンツ力による円運動と、電場による加速という、本問で扱った要素が組み合わさっています。
- 初見の問題での着眼点:
- 荷電粒子の符号を確認する: まず、粒子が正電荷か負電荷かを確認します。これにより、電場や磁場から受ける力の向きが決まります。
- 力の図示を徹底する: 粒子に働く力をすべてベクトルで図示します。特にローレンツ力の向きは、フレミングの左手の法則(電流の向きは正電荷の運動方向)を慎重に適用して決定します。
- 運動の軌跡を予測する: 力の向きと初速度の向きの関係から、粒子がどのような軌道(直線、放物線、円、らせん)を描くかを大まかに予測します。これにより、どの物理法則(力のつり合い、等加速度運動、円運動など)を適用すべきかの方針が立ちます。
- 複数の実験条件の関係性を見抜く: トムソンの実験のように、複数の実験(i), (ii), (iii)… が段階的に行われる問題では、前の実験の結果(例:(2)の\(v_0\))が後の設問を解くためのキーになることが多いです。各実験の目的と結果のつながりを意識しましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 力の向きの間違い:
- 誤解: 電子の電荷が負であることを忘れ、電場と同じ向きに力を受けるとしてしまう。また、フレミングの左手の法則で「電流の向き」に電子の運動方向をそのまま当てはめてしまい、ローレンツ力の向きを逆にする。
- 対策: 問題を解き始める前に「電子の電荷は\(-e\)」と大きくメモしておきましょう。フレミングの左手の法則を使う際は、「電流の向きは電子の動きと逆」と毎回唱えてから指を動かす習慣をつけるとミスが減ります。
- 向心力とローレンツ力の混同:
- 誤解: 円運動の運動方程式を立てる際に、向心力とローレンツ力の両方を力の項として書いてしまう(例:\(ma = F_{\text{向心}} + F_{\text{ローレンツ}}\))。
- 対策: 「向心力」とは、円運動を引き起こしている「原因となる力」の名称です。この問題では、ローレンツ力が向心力の「役割」を担っています。したがって、運動方程式は \(ma = F_{\text{ローレンツ}}\) となります。向心力は力の種類ではなく、力の働きを指す言葉だと理解しましょう。
- 記号の混同:
- 誤解: 電子の電気量 \(e\) と電場 \(E\) の記号が似ているため、式変形の途中で混同したり、書き間違えたりする。
- 対策: 意識して丁寧に書くことが基本です。特に \(eE\) のような積は、物理的な意味(電気量×電場=力)を常に意識しながら記述すると、間違いに気づきやすくなります。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 力のベクトル図: 各状況で、電子に働く力のベクトルを正確に描くことが最も重要です。(2)の直進条件では、上向きのクーロン力 \( \vec{F}_E \) と下向きのローレンツ力 \( \vec{F}_B \) が同じ長さで描かれ、合力がゼロになる様子を視覚的に捉えます。(4)の円運動では、速度ベクトル \( \vec{v} \) とローレンツ力ベクトル \( \vec{F}_B \) が常に直角を保ちながら、\( \vec{F}_B \) が円の中心を指し続ける様子をイメージします。
- 運動の軌跡の図解:
- (1) 電場のみ: x方向には等間隔、y方向には二次関数的に変位が増える点をプロットし、滑らかな放物線を描く。
- (4) 磁場のみ: コンパスで円を描くように、速度ベクトルに常に垂直な力が働き続けることで軌道が曲げられていく様子をイメージする。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 座標軸の設定: 問題で与えられたx, y軸を明記します。磁場の向き(z軸)も、紙面手前向き(\(\odot\))か奥向き(\(\otimes\))かを明確に図示します。
- 力の作用点: すべての力は電子の中心から生えているように描きます。
- 負電荷の明記: 図中の粒子に「\(-e\)」と書き込むことで、力の向きを間違えるリスクを減らします。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 運動方程式 (\(ma=F\)):
- 選定理由: (1)と(4)で、電子が力を受けて加速度運動(放物運動、円運動)をしているため、その運動の様子を記述する基本法則として選択します。
- 適用根拠: ニュートンの第二法則は、力と運動の変化(加速度)を結びつける物理学の根幹です。軌道が直線でない運動はすべて加速度運動であり、この法則の適用対象となります。
- 力のつり合いの式 (\(\sum F = 0\)):
- 選定理由: (2)で、電子が「直進する」=「加速度が0」という条件が与えられているため。
- 適用根拠: 加速度が0の場合、運動方程式 \(ma=F\) は \(0=F\) となり、これが力のつり合いの式そのものです。つまり、力のつり合いは運動方程式の特殊なケースと見なせます。
- 運動エネルギーの式 (\(K = \frac{1}{2}mv^2\)):
- 選定理由: (5)で、電子の運動が「熱エネルギー」という別の形態のエネルギーに変換される現象を扱うため。
- 適用根拠: エネルギーという統一的な尺度を用いることで、力学的な運動と熱現象という異なる物理現象を関係づけることができます。エネルギー保存則は、このような現象の橋渡しをする強力なツールです。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) \(\tan\theta\) の計算:
- 戦略: 放物運動をx, y成分に分解。y方向の運動方程式から加速後の速度を求め、x方向の速度との比をとる。
- フロー: ①x方向の運動から極板通過時間 \(t\) を求める (\(t=L/v_0\)) → ②y方向の運動方程式 (\(ma_y=eE\)) から加速度 \(a_y\) を求める → ③y方向の速度 \(v_y\) を計算する (\(v_y=a_yt\)) → ④\(\tan\theta = v_y/v_x\) を計算。
- (2) \(v_0\) の計算:
- 戦略: 電子が直進する条件=y方向の力がつり合う。
- フロー: ①電場による力 \(F_E=eE\) を立式 → ②ローレンツ力 \(F_B=ev_0B\) を立式 → ③力のつり合いの式 (\(F_E=F_B\)) を立て、\(v_0\) について解く。
- (3) \(e/m\) の計算 (その1):
- 戦略: (1)と(2)で得た式を連立させ、\(v_0\) を消去する。
- フロー: ①(1)の式 \(\tan\theta = \dots\) と(2)の式 \(v_0 = \dots\) を準備 → ②(2)の式を(1)の式に代入 → ③得られた式を \(e/m\) について整理する。
- (4) 円運動の関係式の証明:
- 戦略: ローレンツ力を向心力とする円運動の運動方程式を立てる。
- フロー: ①円運動の運動方程式 \(m(v_0^2/r) = F\) を準備 → ②向心力 \(F\) がローレンツ力 \(ev_0B\) であることを代入 → ③式を整理して \(Br = mv_0/e\) を導く。
- (5) \(e/m\) の計算 (その2):
- 戦略: エネルギーと電気量の関係式、および(4)の式を連立させ、\(N\) と \(v_0\) を消去する。
- フロー: ①エネルギーの関係式 (\(W = \frac{1}{2}Nmv_0^2\)) と電気量の関係式 (\(q=Ne\)) を立てる → ②2式の比をとって \(N\) を消去 (\(W/q = \dots\)) → ③(4)の式を \(v_0\) について解いたものを代入し、\(v_0\) を消去 → ④得られた式を \(e/m\) について整理する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める: この問題のように複数の式を組み合わせる場合、途中で数値を代入せず、最後まで文字式のまま計算を進めるのが鉄則です。これにより、式変形の過程で物理的な意味を見失いにくくなり、間違いも発見しやすくなります。
- 分数の整理を丁寧に行う: (3)の計算のように、分母にさらに分数が現れる(繁分数)場合、焦らずに一つずつ処理しましょう。\( \displaystyle\frac{A}{B/C} = \frac{AC}{B} \) のような変形を正確に行うことが重要です。
- 単位の確認: (6)の計算では、\(Br\) の単位が [kg・m/(s・C)] と複雑ですが、これは \(mv/e\) の単位([kg・m/s]/[C])と一致していることを確認できます。最終的に \(e/m\) の単位が [C/kg] になることを意識すると、計算ミスに気づくきっかけになります。
- 式の変形による工夫: (6)の計算で、\(\displaystyle\frac{2W}{qB^2r^2}\) を \(\displaystyle\frac{2}{(Br)^2} \cdot \frac{W}{q}\) と変形することで、与えられた測定値の塊を直接代入でき、計算が楽になると同時にミスも減らせます。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) \(\tan\theta\): \(\tan\theta = \displaystyle\frac{eEL}{mv_0^2}\) という結果は、\(e, E, L\) が大きいほど、\(m, v_0\) が小さいほど傾きが大きくなることを示しており、直感と一致します。
- (3)と(5)の比較: この問題では、比電荷 \(e/m\) を2つの異なる方法で測定しました。一つは粒子の「軌道」(\(\tan\theta\))から、もう一つは「エネルギー」(\(W\))からです。全く異なる実験手法から同じ物理量(比電荷)を導出できること自体が、物理法則の普遍性を示しています。もし2つの式が矛盾した形になれば、どこかの過程で論理的な誤りがある証拠となります。
- 極端な場合を考える(思考実験):
- もし磁場 \(B\) を非常に強くしたらどうなるか? (2)の式 \(v_0=E/B\) によれば、同じ電場 \(E\) で直進させるためには、速度 \(v_0\) は非常に小さくなくてはなりません。(4)の式 \(r=mv_0/eB\) によれば、半径 \(r\) は非常に小さくなり、電子はきつく曲がります。これらの考察は、式の物理的な意味を深く理解する助けになります。
- 数値のオーダーの確認:
- (6)で得られた \(2.0 \times 10^{11}\) C/kg という値は非常に大きい値です。これは、電子の質量 \(m\) が極めて小さい(約 \(9.1 \times 10^{-31}\) kg)のに対し、電気素量 \(e\) はそれほど小さくない(約 \(1.6 \times 10^{-19}\) C)ため、その比が大きくなることを反映しています。このように、得られた数値のオーダーが大まかにでも妥当かどうかを考える習慣は重要です。
437 ミリカンの実験
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、物理学の歴史において極めて重要な「ミリカンの油滴の実験」を題材にしています。この実験は、電気の基本単位である「電気素量 \(e\)」の値を精密に測定し、また電気が連続的な量ではなく、電気素量 \(e\) を単位とする粒子(電子)から構成されていること(電気量の量子性)を証明したものです。
この問題の核心は、油滴に働く「重力」「空気抵抗」「電気力」という3つの力のつり合いを正確に分析し、実験データと結びつけて物理的な結論を導き出す過程を理解することです。
- 油滴の密度: \(\rho\)
- 油滴の半径: \(r\)
- 油滴が受ける空気抵抗: \(krv\) (kは比例定数, vは速さ)
- 重力加速度: \(g\)
- 電極板の間隔: \(d\)
- (1) 電場がない状態で、油滴が終端速度 \(v_0\) で落下するときの半径 \(r\)。
- (2) 電圧 \(V_c\) をかけた電場中で、電荷 \(q\) を持つ油滴が一定の速さ \(v_1\) で上昇するときの電荷 \(q\)。
- (3) \(v_0=v_1\) となる油滴について測定した電圧 \(V_c\) のデータから、電荷が \(q=ne\) (nは自然数, eは電気素量)の関係にあることを示すこと。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ミリカンの実験における力のつり合いと電気量の量子性」です。丁寧な力の分析と、実験データの解釈が求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力のつり合い: 油滴が一定の速さ(終端速度)で運動しているとき、油滴に働く力の合力はゼロです。
- 働く力の特定: 油滴には「重力」「空気抵抗」「電気力」の3つが働きます。それぞれの力の向きと大きさを正しく把握することが重要です。
- 複数条件の連立: (1)の電場がない状態でのつり合いと、(2)の電場がある状態でのつり合いの結果を関連付けて解き進めます。
- 実験データの解釈: (3)では、得られた関係式に基づいて実験データを分析し、物理的な意味(電気量の量子性)を導き出します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、電場がない状態での油滴に働く「重力」と「空気抵抗」のつり合いの式を立て、半径\(r\)を求めます。
- (2)では、電場がある状態での油滴に働く「電気力」「重力」「空気抵抗」のつり合いの式を立てます。このとき、(1)で得られた関係を利用して式を簡潔にし、電荷\(q\)を求めます。
- (3)では、(2)で導いた式に \(v_0=v_1\) という条件を適用し、電荷\(q\)と電圧\(V_c\)の関係を明らかにします。その関係を用いて与えられた実験データを分析し、結論を導きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
油滴が一定の速さ(終端速度)\(v_0\)で落下している状況を考えます。これは、油滴に働く力がつり合っている状態を意味します。油滴に働く力は、鉛直下向きの「重力」と、運動を妨げる向き、すなわち鉛直上向きの「空気抵抗」の2つです。
この設問における重要なポイント
- 重力の計算: 油滴の質量を \(m\) とすると、重力は \(mg\) です。質量 \(m\) は「密度 \(\rho\) × 体積 \(V\)」で計算できます。油滴は半径 \(r\) の球なので、体積は \(V = \frac{4}{3}\pi r^3\) です。
- 空気抵抗: 問題文より、速さ \(v_0\) のときの抵抗力は上向きに \(krv_0\) です。
- 力のつり合い: 鉛直方向の力のつり合いから、「重力 = 空気抵抗」という式を立てます。
具体的な解説と立式
油滴に働く力は以下の通りです。
- 重力 \(W\): 鉛直下向き。大きさは \(W = mg = \left(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho\right)g\)。
- 空気抵抗 \(F_0\): 鉛直上向き。大きさは \(F_0 = krv_0\)。
油滴は一定速度で落下しているので、これらの力はつり合っています。
$$ \frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0 $$
使用した物理公式
- 力のつり合い
- 球の体積: \(V = \frac{4}{3}\pi r^3\)
上記で立てた力のつり合いの式を \(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g &= krv_0 \\[2.0ex]
\end{aligned}
$$
両辺を \(r\) で割ると(\(r \neq 0\))、
$$
\begin{aligned}
\frac{4}{3}\pi r^2 \rho g &= kv_0 \\[2.0ex]
r^2 &= \frac{3kv_0}{4\pi\rho g} \\[2.0ex]
r &= \sqrt{\frac{3kv_0}{4\pi\rho g}}
\end{aligned}
$$
油滴が一定の速さでふわふわと落ちていくのは、地球が下に引っぱる力(重力)と、空気が上に押し返す力(抵抗力)がちょうど同じ大きさで釣り合っているからです。この「力のバランス」を数式にして、そこから油滴の半径\(r\)を計算します。
油滴の半径は \(r = \sqrt{\displaystyle\frac{3kv_0}{4\pi\rho g}}\) となります。
この式から、終端速度 \(v_0\) が大きいほど、油滴の半径 \(r\) も大きいことがわかります。これは、重い(大きい)油滴ほど速く落下するという日常的な感覚と一致しており、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
今度は、電圧をかけて電場を作り、正に帯電した油滴を一定の速さ \(v_1\) で上昇させる状況です。この場合も、油滴に働く力はつり合っています。働く力は、上向きの「電気力」と、下向きの「重力」および「空気抵抗」の3つです。
この設問における重要なポイント
- 働く力の分析:
- 電気力: 正電荷 \(q\) を持つ油滴は、電場の向きに力を受けます。油滴が上昇していることから、電気力は上向きです。大きさは \(F_E = qE\)。電場の強さ \(E\) は、電圧 \(V_c\) と極板間隔 \(d\) を用いて \(E = V_c/d\) と表せます。
- 重力: (1)と同じく、下向きに \(W = \frac{4}{3}\pi r^3 \rho g\)。
- 空気抵抗: 油滴は速さ \(v_1\) で「上昇」しているため、抵抗力は運動を妨げる向き、すなわち「下向き」に働きます。大きさは \(krv_1\)。
- 力のつり合い: 「上向きの力 = 下向きの力の合計」なので、\(F_E = W + F_1\) という式を立てます。
- (1)の結果の活用: (1)のつり合いの式 \(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0\) を使うと、重力 \(W\) を抵抗力に関連する項で置き換えることができ、計算が非常に簡潔になります。
具体的な解説と立式
油滴に働く力は以下の通りです。
- 電気力 \(F_E\): 鉛直上向き。大きさは \(F_E = qE = q\displaystyle\frac{V_c}{d}\)。
- 重力 \(W\): 鉛直下向き。大きさは \(W = \displaystyle\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g\)。
- 空気抵抗 \(F_1\): 鉛直下向き。大きさは \(F_1 = krv_1\)。
油滴は一定速度で上昇しているので、これらの力はつり合っています。
$$ q\frac{V_c}{d} = \frac{4}{3}\pi r^3 \rho g + krv_1 \quad \cdots ① $$
ここで、(1)で導いた関係式 \(\displaystyle\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0\) を①式に代入します。
$$ q\frac{V_c}{d} = krv_0 + krv_1 \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 力のつり合い
- 一様な電場: \(E = V/d\)
②式を \(q\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
q\frac{V_c}{d} &= kr(v_0 + v_1) \\[2.0ex]
q &= \frac{kd(v_0 + v_1)}{V_c} r
\end{aligned}
$$
このままでも \(q\) を表す式ですが、問題の模範解答では \(r\) を消去しているため、(1)で求めた \(r = \sqrt{\displaystyle\frac{3kv_0}{4\pi\rho g}}\) を代入します。
$$
q = \frac{kd(v_0 + v_1)}{V_c} \sqrt{\frac{3kv_0}{4\pi\rho g}}
$$
今度は、電気の力で油滴を上に持ち上げます。油滴が一定の速さで上に昇っていくのは、上向きの「電気力」と、下向きの「重力」と「空気抵抗」の合計が、ちょうど釣り合っているからです。この新しい力のバランスの式を立て、(1)でわかった「重力は終端速度での抵抗力と同じ大きさ」という事実も使って、油滴が持つ電気の量 \(q\) を計算します。
油滴の電荷は \(q = \displaystyle\frac{kd(v_0 + v_1)}{V_c} \sqrt{\frac{3kv_0}{4\pi\rho g}}\) となります。
この式は、油滴の電荷 \(q\) を、実験で測定可能な量(\(k, d, v_0, v_1, V_c, \rho, g\))だけで表しています。この関係式こそが、ミリカンの実験で電気素量を測定するための鍵となります。
問(3)
思考の道筋とポイント
「\(v_0\) と \(v_1\) が等しいもののみに着目」という特別な条件の下で実験を行ったデータが与えられています。この条件を(2)で求めた式に適用すると、電荷 \(q\) と電圧 \(V_c\) の間にどのような関係が成り立つかを調べることができます。その関係と実験データを比較することで、電荷の性質に関する重要な結論を導き出します。
この設問における重要なポイント
- 条件の適用: (2)で導いた関係式に \(v_1 = v_0\) を代入します。
- 関係式の分析: \(v_1 = v_0\) のとき、(2)の途中の式 \(q = \frac{kd(v_0 + v_1)}{V_c} r\) は \(q = \frac{2kdv_0}{V_c} r\) となります。この実験では、同じ油滴(\(r\)が一定)を使い、同じ速さ(\(v_0\)が一定)で動かしているので、\(k, d, v_0, r\) はすべて定数です。したがって、\(q\) と \(V_c\) の間には \(q \propto \frac{1}{V_c}\) 、すなわち \(qV_c = (\text{定数})\) という反比例の関係が成り立ちます。
- データの解釈: この反比例の関係は、電荷 \(q\) の比が、対応する電圧 \(V_c\) の「逆数」の比に等しいことを意味します。与えられた電圧のデータから、この比を計算します。
具体的な解説と立式
(2)の計算過程で得られた式
$$ q = \frac{kd(v_0 + v_1)}{V_c} r $$
に、条件 \(v_1 = v_0\) を代入すると、
$$ q = \frac{kd(v_0 + v_0)}{V_c} r = \frac{2kdv_0 r}{V_c} $$
この式において、\(2kdv_0 r\) は定数なので、電荷 \(q\) は電圧 \(V_c\) に反比例します。
したがって、測定された異なる電荷を \(q_1, q_2, q_3, q_4\)、それに対応する電圧を \(V_1, V_2, V_3, V_4\) とすると、その比は次のようになります。
$$ q_1 : q_2 : q_3 : q_4 = \frac{1}{V_1} : \frac{1}{V_2} : \frac{1}{V_3} : \frac{1}{V_4} $$
使用した物理公式
- (2)で導出した関係式
与えられた電圧の値 \(V_c = 684, 342, 228, 171\) [V] を用いて、電荷の比を計算します。
$$
\begin{aligned}
q_1 : q_2 : q_3 : q_4 &= \frac{1}{684} : \frac{1}{342} : \frac{1}{228} : \frac{1}{171}
\end{aligned}
$$
この比を簡単な整数比にするため、各項に \(171\) を掛けてみます。
$$
\begin{aligned}
(\text{比}) &= \frac{171}{684} : \frac{171}{342} : \frac{171}{228} : \frac{171}{171} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} : \frac{1}{2} : \frac{3}{4} : 1
\end{aligned}
$$
さらに、各項に \(4\) を掛けて整数にすると、
$$ (\text{比}) = 1 : 2 : 3 : 4 $$
この結果は、測定された電荷 \(q\) が、ある最小単位の電荷の \(1\) 倍, \(2\) 倍, \(3\) 倍, \(4\) 倍… という、とびとびの値しかとらないことを示しています。この最小単位の電荷が電気素量 \(e\) に相当します。
したがって、電荷 \(q\) は自然数 \(n\) を用いて \(q=ne\) という関係にあることが示されました。
(2)で求めた式に「落下の速さと上昇の速さが同じ」という条件を入れると、「電気量 \(q\) と、そのときに必要な電圧 \(V_c\) は反比例する」というシンプルな関係が見えてきます。そこで、実験で測定された電圧の値の「逆数」の比を計算してみます。すると、その比が「1 : 2 : 3 : 4」という、とてもきれいな整数の比になることがわかります。これは、油滴が持つことができる電気の量が、実は「電気のつぶ」の1個ぶん、2個ぶん、3個ぶん…というように決まっていること、つまり「電気量には最小単位がある」ということを示しています。
実験データから、電荷の比が \(1:2:3:4\) という簡単な整数比になることが示されました。これは、油滴の帯電量が連続的な値をとるのではなく、ある基本単位(電気素量 \(e\))の整数倍の値しかとらない、すなわち「電気量が量子化されている」ことを示す強力な実験的証拠です。したがって、\(q=ne\) の関係があることが示されました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 力のつり合い:
- 核心: この問題のすべての設問は、油滴が一定速度で運動している、すなわち「力がつり合っている」という状況に基づいています。油滴に働く「重力」「空気抵抗」「電気力」の3つの力を正しく特定し、向きを考慮してつり合いの式を立てることが最も重要です。
- 理解のポイント: 速度の向きによって空気抵抗の向きが変わる点(落下時は上向き、上昇時は下向き)を正確に把握することが、正しい立式の鍵となります。
- 電気量の量子性:
- 核心: (3)の設問は、単なる計算問題ではなく、物理学上の大発見である「電気量の量子性」を実験データから導き出す思考プロセスそのものです。\(qV_c=\text{定数}\) という関係を導き、実験データが \(q \propto n\) (\(n\)は自然数)となることを示すことが、この問題のクライマックスです。
- 理解のポイント: 物理学では、理論から導かれる関係式と、実際の実験データを比較検討することで、自然界の法則性を明らかにしていきます。この問題は、その科学的な探求プロセスを体験させてくれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 終端速度の問題: 雨粒の落下や、液体中の微粒子の沈降など、流体中の物体が重力と抵抗力を受けて等速運動する問題。力のつり合いを考えるアプローチは全く同じです。
- 電気泳動: 電場の中で荷電した高分子(DNAやタンパク質など)が移動する現象。電気力と抵抗力がつり合ったときの移動速度を考える点で、本問と共通しています。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の状態を把握する: 問題文の「一定の速さで」「十分に時間が経過し」といった記述は、加速度が0、すなわち「力のつり合い」を適用するサインです。
- 働く力をすべてリストアップし、図示する: 重力、抵抗力、電気力、浮力など、考えられる力をすべて描き出し、それぞれの向きを正確に把握します。
- 複数条件の関連性を探る: (1)と(2)のように、異なる状況設定の問題が連続している場合、(1)で得られた関係式(特に \(mg = krv_0\) のような力の関係)が(2)を解く上で強力なヒントになることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 抵抗力の向きの間違い:
- 誤解: 抵抗力は常に重力と反対向きだと勘違いし、(2)の上昇時にも上向きに描いてしまう。
- 対策: 抵抗力は「常に速度と逆向き」と覚えましょう。物体が落下していれば上向きに、上昇していれば下向きに働きます。必ず速度の向きを確認してから抵抗力の向きを決めましょう。
- 重力の計算ミス:
- 誤解: 油滴の質量を安易に \(m\) と置いてしまい、具体的な計算ができなくなる。
- 対策: 問題文に密度 \(\rho\) と半径 \(r\) が与えられている場合、質量は \(m = (\text{密度}) \times (\text{体積}) = \rho \cdot \frac{4}{3}\pi r^3\) と計算する必要があることを常に意識しましょう。
- (2)の計算で(1)の結果を有効活用できない:
- 誤解: (2)のつり合いの式に出てくる重力の項 \(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g\) を、(1)で求めた \(r\) の複雑な式を代入して計算しようとしてしまい、計算が煩雑になる。
- 対策: (1)のつり合いの式 \(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0\) は、「重力の大きさは、終端速度\(v_0\)のときの抵抗力と等しい」という物理的な意味を持っています。この関係をそのまま利用して、(2)の式の重力の項を \(krv_0\) に置き換えることで、見通しが良く、計算も簡単な式に変形できます。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 力のベクトル図: (1)と(2)のそれぞれの状況で、油滴に働く力のベクトルを矢印で描くことが極めて有効です。(1)では下向きの重力と上向きの抵抗力が同じ長さ。(2)では上向きの電気力と、下向きの重力・抵抗力の合計が同じ長さになる様子を視覚的に捉えることで、立式ミスを防げます。
- ミクロとマクロの架け橋のイメージ: 目に見える油滴(マクロな物体)の運動を、顕微鏡を覗きながらストップウォッチで測定することで、目に見えない電子(ミクロな粒子)の持つ電気の量という、自然界の根源的な性質を探っている、という実験のスケール感をイメージすると、問題への興味が深まります。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 力の矢印の始点: すべての力は油滴の中心から生えているように描きます。
- 力の矢印の長さ: つり合っている力は、同じ長さの矢印で描くことで、力のバランスを視覚的に確認できます。
- 運動方向の明記: 速度ベクトル \(\vec{v}\) を矢印で描き、落下しているのか上昇しているのかを明確にすることで、抵抗力の向きを間違えにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 力のつり合いの式 (\(\sum F = 0\)):
- 選定理由: 問題文に「一定の速さで」「十分に時間が経過したとき」という記述があるため。これは物理学的に「加速度が0」の状態を意味し、ニュートンの運動法則 \(ma=F\) において \(a=0\) とした状態、すなわち力の合力が0であることを示します。
- 適用根拠: 物体が静止または等速直線運動している場合、その物体に働く力はすべてつり合っている、という力学の基本原理を適用します。
- 一様な電場 (\(E=V/d\)):
- 選定理由: 平行な電極板間に電圧 \(V_c\) をかけた状況であり、このとき極板間には一様な電場 \(E\) が生じるため。
- 適用根拠: 電位(電圧)と電場の関係を表す基本公式です。これにより、測定可能な電圧 \(V_c\) から、力を計算するために必要な電場 \(E\) を求めることができます。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 半径の計算:
- 戦略: 電場なしでの落下運動に着目し、重力と空気抵抗のつり合いを立てる。
- フロー: ①油滴に働く力(重力、抵抗力)を図示 → ②力のつり合いを立式 (\(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0\)) → ③式を\(r\)について解き、計算。
- (2) 電荷の計算:
- 戦略: 電場ありでの上昇運動に着目し、電気力、重力、空気抵抗のつり合いを立てる。
- フロー: ①油滴に働く力(電気力、重力、抵抗力)を図示 → ②力のつり合いを立式 (\(q(V_c/d) = \frac{4}{3}\pi r^3 \rho g + krv_1\)) → ③(1)の関係式 \(\frac{4}{3}\pi r^3 \rho g = krv_0\) を代入して重力の項を消去 → ④式を\(q\)について解き、(1)で求めた\(r\)の式を代入して整理。
- (3) 電気量の量子性の証明:
- 戦略: (2)で得た関係式に \(v_1=v_0\) の条件を適用し、\(q\) と \(V_c\) の関係を導く。その関係を用いて実験データを解析する。
- フロー: ①(2)の式に \(v_1=v_0\) を代入し、\(qV_c = \text{定数}\) の関係を導く → ②\(q\) の比が \(V_c\) の逆数の比に等しいことを確認 → ③実験データの \(V_c\) の逆数の比を計算 → ④比が簡単な整数比になることを示し、\(q=ne\) の関係を結論づける。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める: この問題では、最後まで文字式のまま計算を進め、物理量間の関係性を明確に保つことが重要です。特に(2)で(1)の関係式を代入する際に、このテクニックが有効です。
- 比の計算の工夫: (3)で逆数の比を計算する際、通分して最小公倍数を探すのは大変です。それよりも、分母の最小値(この場合は171)を各項に掛けて、まず簡単な分数比(\(\frac{1}{4}:\frac{1}{2}:\frac{3}{4}:1\))に直し、そこから改めて整数比(\(1:2:3:4\))に直すという二段階の操作を行うと、計算ミスが減り、見通しも良くなります。
- 単位の確認: 各物理量の単位を意識することで、式の妥当性を確認できます。例えば、\(krv\) が力の単位 [N] になるように、比例定数 \(k\) の単位は [N/m²] であることなどがわかります。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (2) 電荷 \(q\) の式: \(q\) は \(v_0+v_1\) に比例し、\(V_c\) に反比例します。これは、速く動かす(\(v_0+v_1\)が大きい)ほど多くの電荷が必要、あるいは、強い電圧(\(V_c\)が大きい)をかければ少ない電荷でも動かせる、という直感と一致します。
- (3) 整数比: 実際の実験データが、理論から予測される関係(\(q \propto 1/V_c\))に従い、きれいな整数比になったという事実は、この実験のモデル(3つの力のつり合い)と、そこから導かれる結論(電気量の量子性)が非常に確からしいことを示しています。もし比がぐちゃぐちゃな値になれば、実験の失敗か、理論モデルの間違いを疑うことになります。
- 別解との比較:
- この問題の解法は、力のつり合いという一本道であり、本質的な別解は存在しにくいです。しかし、(2)の計算で \(mg=krv_0\) を使う方法と、使わずに \(r\) の式を直接代入する方法を比較すると、前者のほうが物理的意味を保ったままスマートに計算できることがわかります。よりエレガントな解法を常に意識する習慣は、応用力を高めます。
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