Step 2
273 光の反射
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平面鏡による光の反射と作図」です。光の反射に関する基本的な法則と、作図テクニックの理解が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 反射の法則: 鏡面上の光が反射する点において、「入射角と反射角は等しい」という法則です。入射光線、反射光線、および反射点における法線は、すべて同一平面内にあります。
- 光の直進性: 媒質が均一な場合、光はまっすぐに進むという性質です。
- 平面鏡による像(虚像): 平面鏡を覗くと、鏡の向こう側に物体があるように見えます。この見かけ上の物体を「虚像」と呼びます。虚像は、鏡面に対して実物と対称な位置にできます。
- 作図の基本方針: 反射光は、あたかも鏡の向こう側にある虚像から直進してきたかのように見えます。この性質を利用すると、反射の法則を直接使わなくても、光の経路を簡単に作図できます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、反射点が指定されているため、光源の虚像と指定された反射点を結ぶことで、反射光線の進む方向を決定します。
- (2)では、観測点が指定されているため、光源の虚像と観測点を結ぶことで、鏡面上のどこで反射が起こるか(反射点)を特定し、光の全経路を作図します。
問(1)
思考の道筋とポイント
点光源\(P\)から出て、平面鏡\(M\)上の点\(A\)で反射した光が、その後どのように進むかを作図する問題です。この問題の核心は、「反射の法則」をいかに正確に、かつ簡単に作図に反映させるかという点にあります。
反射の法則によれば、点\(A\)における入射角と反射角は等しくなります。しかし、分度器を使わずにこれを作図するのは困難です。そこで、平面鏡による「虚像」の性質を利用します。鏡で反射した光は、あたかも鏡の向こう側にある「虚像」からまっすぐ飛んできたかのように見えます。この性質を使えば、複雑な角度の計算なしに、反射光線を一本の直線として描くことができます。
この設問における重要なポイント
- 平面鏡がつくる像(虚像)は、鏡面に対して物体と対称な位置にできる。
- ある点(この問題では\(A\))で反射した光は、光源\(P\)の虚像\(P’\)と点\(A\)を結ぶ直線上を進む。
具体的な解説と立式
光の反射経路を作図するために、以下の手順を踏みます。
1. 虚像\(P’\)の作図
点光源\(P\)から平面鏡\(M\)に下ろした垂線の足を\(H\)とします。虚像\(P’\)は、線分\(PH\)を鏡の向こう側へ同じ長さだけ延長した点にできます。つまり、\(PH = P’H\)であり、直線\(PP’\)は鏡面\(M\)に垂直です。この\(P’\)が、光源\(P\)の虚像の位置となります。
2. 反射光線の作図
鏡で反射した光は、すべて虚像\(P’\)から発せられたかのように直進して見えます。この問題では、光は点\(A\)で反射することが決まっています。したがって、求める反射光線は、虚像\(P’\)と反射点\(A\)の2点を結ぶ直線の、点\(A\)から先の部分となります。
この作図法が「反射の法則」を満たしていることは、幾何学的に証明できます。
△\(PHA\)と△\(P’HA\)について、
- \(PH = P’H\) (作図より)
- \(AH\)は共通
- \(\angle PHA = \angle P’HA = 90^\circ\)
であるため、2辺夾角が等しく、△\(PHA \equiv\) △\(P’HA\)(合同)となります。
したがって、対応する角は等しいので \(\angle PAH = \angle P’AH\) です。
ここで、点\(A\)における入射角は \(\angle PAH\) であり、反射角は対頂角の関係から \(\angle P’AH\) と等しい角になります。よって、入射角と反射角が等しくなり、反射の法則が成立していることがわかります。
使用した物理公式
- 反射の法則(入射角 = 反射角)
- 光の直進性
この問題は作図が中心であり、数値計算は伴いません。作図の手順が解答プロセスそのものとなります。
- 点\(P\)を通り、鏡面\(M\)に垂直な直線を引きます。
- その垂線上で、鏡面\(M\)を挟んで\(P\)と反対側に、鏡面までの距離が等しくなる点\(P’\)をとります。
- 点\(P’\)と点\(A\)を直線で結びます。
- 点\(A\)から、\(P’A\)の延長線上に矢印を描きます。これが求める反射光線です。
鏡の前に立つと、鏡の向こう側に自分とそっくりな「像」が見えますよね。光源\(P\)も同じで、鏡\(M\)の向こう側に、鏡を挟んでちょうど反対の位置に\(P\)の像である\(P’\)ができます。
鏡で反射した光は、すべてこの像\(P’\)からまっすぐ飛んでくるように見えます。
問題では「光が\(A\)点で反射する」と決まっているので、話は簡単です。像\(P’\)から出発して\(A\)点を通る光を描けば、それが反射した後の光の進む道筋になります。つまり、\(P’\)と\(A\)を定規で結んで、\(A\)から先に線を伸ばせば完成です。
点\(P\)から出た光線\(PA\)は、点\(A\)で反射した後、\(P\)の虚像\(P’\)と点\(A\)を結ぶ直線の延長線上を進みます。この作図方法は、反射の法則を幾何学的に満たしており、物理的に正しい光の経路を示しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
点光源\(P\)から出て平面鏡\(M\)で反射し、点\(E\)にいる観測者の目に入る光の経路を作図する問題です。(1)と異なり、今度は「どこで反射するのか」という反射点自体がわかっていません。しかし、用いる原理は(1)と全く同じです。
観測者\(E\)が鏡を通して\(P\)を見るとき、光は虚像\(P’\)から観測者\(E\)の目にまっすぐ届いているように見えます。この「見え方」が、反射点を発見するための最大のヒントになります。実際の光は鏡面で反射して曲がりますが、見かけ上の光路は直進している、という点を突くのが賢い解法です。
この設問における重要なポイント
- 観測者\(E\)には、光は光源\(P\)の虚像\(P’\)から直進して目に届くように見える。
- この「見かけの光路(直線\(P’E\))」と「実際の鏡面\(M\)」が交わる点が、本当の反射点である。
具体的な解説と立式
(1)と同様に、まず光源\(P\)の虚像\(P’\)を作図することから始めます。
1. 虚像\(P’\)の作図
点光源\(P\)の、平面鏡\(M\)に関して対称な点\(P’\)を求めます。
2. 反射点の特定と光線の作図
観測者\(E\)には、光は虚像\(P’\)から自分のいる点\(E\)に向かって、まっすぐ進んできたように見えます。そこで、虚像\(P’\)と観測点\(E\)を直線で結びます。
しかし、実際の光は鏡面\(M\)で反射しています。見かけ上は\(P’\)から来た光が\(E\)に届くということは、実際の反射光線は、直線\(P’E\)の鏡と観測者の間の部分と一致するはずです。
したがって、直線\(P’E\)と鏡面\(M\)との交点を\(B\)とすると、この点\(B\)こそが求めるべき反射点となります。
実際の光の経路は、光源\(P\)から出発して反射点\(B\)に向かい(入射光線\(PB\))、点\(B\)で反射して観測者\(E\)に届く(反射光線\(BE\))という経路\(P \rightarrow B \rightarrow E\)になります。
使用した物理公式
- 反射の法則(入射角 = 反射角)
- 光の直進性
この問題も作図が中心です。
- (1)と同様に、点\(P\)の鏡\(M\)に関する対称点\(P’\)を作図します。
- 点\(P’\)と観測点\(E\)を直線で結びます。
- 直線\(P’E\)と鏡面\(M\)の交点を\(B\)とします。この点が反射点です。
- 点\(P\)と点\(B\)、点\(B\)と点\(E\)をそれぞれ直線で結び、\(P \rightarrow B\)と\(B \rightarrow E\)の経路に矢印を描きます。これが求める光線です。
(1)と同じように、まず鏡の向こう側に光源\(P\)の「像\(P’\)」を作ります。
今度は、観測者\(E\)さんの目に光が入る道筋を探します。\(E\)さんから見ると、光は像\(P’\)からまっすぐ飛んできて自分の目に届くように見えます。
そこで、像\(P’\)と\(E\)さんを定規でまっすぐ結んでみましょう。
実際の光は鏡で跳ね返ってくるわけですから、この「\(P’\)と\(E\)を結んだ線」が鏡とぶつかる点、そこが光が実際に反射した場所になります。
あとは、光源\(P\)からその反射点までと、反射点から\(E\)さんまでを線で結べば、光の本当の通り道がわかります。
点\(P\)から出て観測者\(E\)に届く光は、\(P\)の虚像\(P’\)と\(E\)を結ぶ直線が鏡面\(M\)と交わる点\(B\)で反射します。光の経路は\(PBE\)となります。この作図法で得られた経路は、反射の法則を満たしており、物理的に正しい光路です。また、この経路は\(P\)から鏡面上の点を経由して\(E\)に至る最短距離の経路でもあります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 反射の法則と虚像の概念の統合的理解:
- 核心: この問題の根底にある物理法則は「反射の法則(入射角と反射角が等しい)」です。しかし、問題を解くための実践的な核心は、この法則を直接適用するのではなく、「反射光は、鏡面に対して物体と対称な位置にある虚像から直進してくるように見える」という虚像の概念を使いこなすことにあります。
- 理解のポイント:
- なぜ虚像を使うのか?: 分度器なしで正確に入射角と反射角が等しい作図をするのは困難です。虚像を利用することで、角度の問題を「2点を結ぶ直線を引く」という単純な幾何学の問題に置き換えることができ、誰でも正確な作図が可能になります。
- 法則との関係: 虚像を用いた作図法は、単なるテクニックではなく、幾何学的に反射の法則と完全に等価です。光源\(P\)、虚像\(P’\)、反射点\(B\)でできる2つの直角三角形(△\(PHB\)と△\(P’HB\)、ただし\(H\)は\(P\)から鏡への垂線の足)が合同になることから、入射角と反射角が等しくなることが証明できます。法則を理解した上で、その便利な応用として虚像を捉えることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 鏡に映る範囲を問う問題: 「観測者が鏡を通して壁のどの範囲を見ることができるか」といった問題。観測者の目の虚像を作り、その虚像と鏡の両端を結ぶ直線が壁に当たる範囲を求めることで、簡単かつ正確に解けます。
- 2枚の鏡による多重像: 鏡を2枚組み合わせた場合(直角鏡など)、一方の鏡による像を、もう一方の鏡に対する新たな物体と見なして「像の像」を作図していきます。光は何回も反射しますが、最終的な反射光は、最終的な虚像から直進してくるように見えます。
- 最短光路の問題(フェルマーの原理): 「光源\(P\)から鏡で反射して点\(E\)に達する光の最短経路は?」という問いは、本問(2)と全く同じです。光路\(PBE\)の長さは、直線\(P’BE\)の長さと等しく、直線が2点間を結ぶ最短距離であるため、この作図法は自動的に最短経路(最短時間)を求める方法にもなっています。
- 初見の問題での着眼点:
- 鏡の種類を確認する: まず、平面鏡か、凹面鏡・凸面鏡かを確認します。平面鏡であれば、虚像を使った作図が有効です。
- 「虚像」を真っ先に作図する: 平面鏡の問題だと判断したら、条件反射でまず光源(または物体)の虚像を作図する癖をつけましょう。ほとんどの場合、それが解法の第一歩となります。
- 問題の条件を整理する: 「反射点」が指定されているのか(問1)、それとも「観測点」が指定されているのか(問2)を明確にします。
- 反射点\(A\)が指定されている場合 → 虚像\(P’\)と反射点\(A\)を結ぶ。
- 観測点\(E\)が指定されている場合 → 虚像\(P’\)と観測点\(E\)を結び、鏡との交点(反射点)を見つける。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 虚像の位置の作図ミス:
- 誤解: 鏡面に対して、なんとなく反対側に同じくらいの距離で点\(P’\)を打ってしまう。
- 対策: 「物体から鏡面に垂線を下ろし、その垂線を鏡の向こう側に同じ長さだけ延長する」という手順を機械的に、かつ正確に実行する。三角定規などを用いて、必ず鏡面と90°になる線を引きましょう。
- 光の向き(矢印)の間違い:
- 誤解: (2)の作図で、虚像\(P’\)から光が出て、反射点\(B\)を経由して観測点\(E\)に届くかのような矢印(\(P’ \rightarrow B \rightarrow E\))を描いてしまう。
- 対策: 虚像はあくまで作図を便利にするための「仮想的な点」であり、物理的な光源ではないことを常に意識してください。実際の光は必ず光源\(P\)から出発します。したがって、矢印は必ず \(P \rightarrow B \rightarrow E\) の向きになります。
- 入射光線と反射光線の混同:
- 誤解: 作図に集中するあまり、どの線が実際の光路で、どの線が補助線か分からなくなってしまう。
- 対策: 実際の光路(\(PA\), \(PB\), \(BE\)など)は濃い実線で、虚像を作るための垂線や虚像と点を結ぶ線などの補助線は薄い点線で描くなど、線の種類を使い分けるとミスが減り、解答も見やすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 虚像の概念の適用:
- 選定理由: この問題は、物理法則(反射の法則)を直接使って角度を測るのではなく、その法則から導かれる幾何学的な性質(虚像)を利用して「作図」することが求められています。虚像の概念は、角度の問題を距離と直線の問題に変換し、作図を劇的に簡単かつ正確にするための最も合理的な選択です。
- 適用根拠: 人間の目は、光がどの経路を辿ってきたかに関わらず、目に届いた方向からまっすぐ逆算した位置に光源があると認識します。鏡で反射した光は、鏡の向こう側の一点(虚像)から直進してきたかのように目に届きます。この「見え方」の原理を作図に逆利用しているのです。この方法が反射の法則と数学的に等価であることが、このアプローチの正当性を保証しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題では数値計算はありませんが、作図におけるミスは点数に直結します。ここでは「作図ミスをなくすテクニック」として解説します。
- 道具を正しく使う: フリーハンドは絶対に避け、直線は必ず定規を使ってください。特に、虚像の位置を決めるための垂線を引く際は、三角定規の直角を使うか、コンパスを用いて正確に作図することが精度を上げる鍵です。
- 記号を明確に記入する: 光源\(P\)、虚像\(P’\)、反射点\(A\)、観測点\(E\)など、図中の重要な点には、はっきりと記号を書き込みましょう。特に、光源\(P\)と虚像\(P’\)を混同しないように注意が必要です。
- 線の種類を使い分ける: 最終的に解答として示すべき「実際の光路」は濃い実線で描き、作図の過程で用いた「補助線」(虚像と観測点を結ぶ線など)は薄い実線や点線で描くと、自分自身も混乱しにくく、採点者にも意図が伝わりやすい答案になります。
- 作図後のセルフチェック: 作図が完了したら、一度図を眺めてみましょう。例えば、反射点における入射角と反射角が、見た目上おおよそ等しくなっているかを確認するだけでも、大きな作図ミスに気づくことができます。
274 光の分散
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「光の分散とレンズによる屈折」です。光の色(波長)によって屈折率が異なるという「光の分散」の現象を、凹レンズの働きと関連付けて理解しているかが問われます。
- 光の分散: 光がプリズムやレンズなどの媒質を通過する際に、波長(色)によって屈折する角度が異なるため、色が分かれて見える現象。虹もこの原理で起こります。
- 屈折率と波長(色)の関係: ガラスなどの媒質では、一般に光の波長が短いほど屈折率が大きくなります。可視光線では、紫や青の光は波長が短く、赤の光は波長が長いため、屈折率は「青 > 緑 > 赤」の順になります。
- 屈折率と光の曲がりやすさ: 屈折率が大きい光ほど、媒質の境界面でより大きく進路を曲げられます。
- 凹レンズの作用: 光軸に平行に入射した光を、光軸から遠ざける向きに曲げる(発散させる)働きがあります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、赤・緑・青の光について、波長と屈折率の大小関係を整理します。
- 次に、屈折率が大きい光ほど凹レンズによって、より大きく発散させられる(より大きく外側に曲げられる)ことを理解します。
- 最後に、図に示された光路①、②、③の曲がり方の大小関係と、各色の光の曲がりやすさを対応させて答えを導きます。
(設問)
思考の道筋とポイント
青、緑、赤の3色の光が凹レンズを通過する際の経路を特定する問題です。この問題を解く鍵は、光が色によって屈折の度合いが異なる「光の分散」という現象を理解しているかどうかにかかっています。
虹が7色に見えるのと同じように、レンズやプリズムを通過する光は、その色によって曲がり方が異なります。結論から言うと、可視光線では紫や青といった波長の短い光が最も大きく曲がり、赤のような波長の長い光が最も曲がりにくくなります。
この問題で使われているのは「凹レンズ」です。凹レンズは光を広げる(発散させる)性質、つまり光を光軸から遠ざける方向に曲げる性質を持っています。したがって、「最もよく曲がる光」は「最も外側へ広げられる光」ということになります。この関係性を使って、図の光路と色を結びつけていきます。
この設問における重要なポイント
- 光の波長の大小関係: \(\lambda_{\text{赤}} > \lambda_{\text{緑}} > \lambda_{\text{青}}\)
- 媒質中での光の速さの大小関係: \(v_{\text{赤}} > v_{\text{緑}} > v_{\text{青}}\)
- ガラスに対する屈折率の大小関係: \(n_{\text{赤}} < n_{\text{緑}} < n_{\text{青}}\)
- 屈折の度合い: 屈折率\(n\)が大きいほど、光は大きく曲げられる。
具体的な解説と立式
光がガラスのような媒質に入ると、その速さは真空中の光速\(c\)よりも遅くなります。媒質の屈折率\(n\)は、媒質中の光速を\(v\)として、次のように定義されます。
$$ n = \frac{c}{v} $$
ガラスなどの媒質中では、光の波長(色)によって光速\(v\)がわずかに異なります。この現象を「光の分散」と呼びます。
可視光線の領域では、一般に波長\(\lambda\)が短い光ほど、媒質中での速度\(v\)は遅くなります。赤、緑、青の光については、波長と速度に以下の関係があります。
$$ \lambda_{\text{赤}} > \lambda_{\text{緑}} > \lambda_{\text{青}} $$
$$ v_{\text{赤}} > v_{\text{緑}} > v_{\text{青}} $$
媒質中の速度\(v\)が遅いほど、屈折率\(n\)は大きくなるため、ガラスに対する各色の光の屈折率の大小関係は次のようになります。
$$ n_{\text{赤}} < n_{\text{緑}} < n_{\text{青}} $$
光がレンズを通過して屈折する際、屈折率が大きいほど光はより大きく進路を曲げられます。凹レンズは、光軸に平行に入射した光を光軸から遠ざける向きに曲げる(発散させる)性質を持っています。
したがって、
- 最も屈折率が大きい青色の光は、最も大きく曲げられ、最も外側に発散します。
- 最も屈折率が小さい赤色の光は、最も小さく曲げられ、最も内側に発散します。
- 緑色の光は、その中間の経路をたどります。
図を見ると、光路③が最も大きく曲がり(最も外側に発散し)、光路①が最も小さく曲がっています。このことから、光路と色の対応は以下のように決まります。
- 光路①(最も曲がらない): 赤
- 光路②(中間の曲がり方): 緑
- 光路③(最も曲がる): 青
使用した物理公式
- 屈折率の定義: \(n = \displaystyle\frac{c}{v}\)
- 光の分散(波長と屈折率の関係): 一般に、波長\(\lambda\)が短いほど屈折率\(n\)は大きくなる。
この問題は、物理法則の定性的な理解を問うものであり、具体的な数値計算は不要です。
虹が7色に見えるのは、光が色によって曲がり方が違うからです。この問題も同じ原理です。
覚え方として、「虹の色の順番(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)」を思い浮かべてください。この順番で、紫側(青色の光など)ほど、ガラスなどを通るときに「よく曲がる」と覚えるのがポイントです。
図のレンズは「凹レンズ」で、光を広げる働きをします。つまり、光を外側に曲げます。
- 「よく曲がる」青い光は、一番大きく外側に広げられます。これが光路③です。
- 「曲がりにくい」赤い光は、あまり広げられません。これが光路①です。
- 残った緑の光が、中間の光路②となります。
光の波長が短いほど(青色側)、ガラスの屈折率は大きくなり、レンズによってより大きく曲げられます。凹レンズは光を発散させるため、最も大きく曲げられる青が光路③、最も曲げられにくい赤が光路①、その中間の緑が光路②に対応します。この結果は、光の分散に関する基本的な知識と一致しており、物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 光の分散(波長による屈折率の違い):
- 核心: この問題を解くための唯一かつ絶対的な核心は、「光は色(波長)によって屈折率が異なる」という光の分散の原理を理解していることです。特に、ガラスのような一般的な媒質では「波長が短い光(紫・青側)ほど屈折率が大きく、より大きく曲げられる」という関係を覚えていることが全てです。
- 理解のポイント:
- 波長と色の関係: 可視光線は、波長の長い方から「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の順に並んでいます。虹の色の順番として覚えておくと便利です。
- 屈折率と速さの関係: 屈折率 \(n\) は、真空中での光速 \(c\) と媒質中での光速 \(v\) の比 \(n = c/v\) で定義されます。波長の短い光ほど媒質中での速度が遅くなるため、屈折率が大きくなります。つまり、「遅い光ほどよく曲がる」と理解することもできます。
- レンズの作用との組み合わせ: この分散の知識を、レンズの基本的な働き(凹レンズなら発散、凸レンズなら収束)と組み合わせることで、具体的な光路を予測できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 凸レンズによる色収差: 凸レンズに白色光を入射させると、焦点が色によってずれる現象(色収差)を問う問題。最もよく曲がる青い光はより手前(レンズに近い位置)に焦点を結び、曲がりにくい赤い光はより奥(レンズから遠い位置)に焦点を結びます。
- プリズムによる光の分散: 白色光をプリズムに入射させたときに、光が虹色に分かれるスペクトルを問う問題。プリズムの頂角側(薄い方)に曲がりにくい赤、底辺側(厚い方)に最もよく曲がる紫が配置されます。
- 光ファイバーの分散: 光ファイバー内で光パルスを伝送する際、波長によって進む速さが異なるため、パルスが時間的に広がってしまう現象(材料分散)の原理を問う問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 「色」や「波長」という単語に注目: 問題文に「赤色光」「白色光」「単色光」など、光の色や波長に関する記述があれば、ほぼ間違いなく光の分散がテーマです。
- 光学素子(レンズ・プリズム)の種類を確認: 光を曲げる素子が凸レンズか、凹レンズか、プリズムかを確認します。これにより、光が収束するのか、発散するのか、一方向に曲げられるのかという基本的な方向性が決まります。
- 曲がり方の大小関係を判断: 「波長の短い青色光が最も大きく曲がる」という大原則を思い出します。
- 凹レンズの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も外側に発散する」。
- 凸レンズの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も内側に収束する(焦点が手前にくる)」。
- プリズムの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も大きく進行方向が変わる」。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 波長と屈折率の関係の混同:
- 誤解: 波長が長い赤い光の方がよく曲がる、と逆さまに覚えてしまう。
- 対策: 虹の色の順番を思い出し、「紫が一番下(一番大きく曲がる)」と映像で記憶するのが効果的です。または、「波長が短い」→「媒質中で遅い」→「屈折率が大きい」→「大きく曲がる」という論理の連鎖で覚えるのも有効です。
- 凸レンズと凹レンズの作用の混同:
- 誤解: 凹レンズなのに、光が収束する(光軸に近づく)かのように考えてしまう。
- 対策: レンズの形状から直感的に働きを連想する。「凹レンズ」は中央がくびれていて光を発散させる形、「凸レンズ」は中央が膨らんでいて光を収束させる形、と形状と作用をセットで記憶しましょう。
- 「曲がる」という言葉の解釈ミス:
- 誤解: 凹レンズで「大きく曲がる」とは、光軸に近づくことだと勘違いしてしまう。
- 対策: 「曲がる」とは、元の進行方向(この場合は光軸に平行な直線)からの角度の変化が大きいことだと定義を明確に理解する。凹レンズでは、光軸から離れる向きに角度が大きく変化することが「大きく曲がる」ことに相当します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 屈折率と波長の関係(定性的理解):
- 選定理由: この問題は、数値計算ではなく、物理現象の定性的な理解を問うています。そのため、具体的な計算式(例えば、レンズの公式 \(1/a + 1/b = 1/f\))よりも、物理法則の大小関係(「波長が短いほど屈折率が大きい」)を正しく適用することが求められます。
- 適用根拠: 物質(ガラス)と光の相互作用において、光の振動数が物質の電子の固有振動数に近づくほど、光は強く吸収されたり、速度が遅くなったりします。可視光線の領域では、振動数が大きい(=波長が短い)青色光の方が、赤色光よりもこの相互作用が強く、結果として速度が遅くなり、屈折率が大きくなります。この物理的背景が、法則の根拠となっています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題は計算を伴いませんが、知識の混同を防ぐためのテクニックが重要です。
- 図やイメージで覚える: 「プリズムで光が分かれる図」や「虹の絵」を頭の中にストックしておき、赤が上(曲がりにくい)、紫が下(曲がりやすい)という位置関係を視覚的に覚えておくと、知識が混同しにくくなります。
- 大小関係の整理: 問題を解く前に、余白に「波長: 赤 > 青」「速さ: 赤 > 青」「屈折率: 赤 < 青」「曲がり方: 赤 < 青」のように、関連する物理量の大小関係を一度書き出してみる。これにより、思考が整理され、ケアレスミスを防げます。
- 語呂合わせの活用: 例えば、「セキトウオウリョクセイランシ(赤橙黄緑青藍紫)」という虹の色の順番の語呂合わせを覚えておき、「紫側がよく曲がる」と結びつけるなど、自分なりの覚えやすい方法を確立しておくことが有効です。
275 平面鏡の回転
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平面鏡の回転と反射光の関係」です。入射光線の向きを固定したまま平面鏡を回転させると、反射光線がどのように変化するかを問う、幾何光学の基本的な問題です。
- 反射の法則: 光が鏡面で反射するとき、入射角と反射角は常に等しくなります。入射角・反射角は、それぞれ入射光線・反射光線と鏡面の法線(鏡面に垂直な線)とのなす角です。
- 法線の回転: 平面鏡が角度\(\theta\)だけ回転すると、その鏡面に垂直な線である法線も、同じ向きに同じ角度\(\theta\)だけ回転します。
- 角度の幾何学的関係: 図形における角度の足し算や引き算を正確に行い、物理法則と結びつける能力が求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、鏡が回転する前の初期状態について、入射角と反射角の関係を整理します。
- 次に、鏡が\(\theta\)回転したことで、法線が\(\theta\)回転し、それによって入射角がどのように変化するかを考えます。
- 反射の法則を用いて、変化後の反射角を求めます。
- 最後に、初期の反射光線と変化後の反射光線のなす角度(回転角)を、入射光線を基準として計算します。
(設問)
思考の道筋とポイント
この問題の核心は、「鏡を\(\theta\)回転させると、反射光は\(2\theta\)回転する」という有名な関係を導出することです。なぜ「2倍」になるのかを、反射の法則と幾何学的な考察から解き明かしていきます。
最大のポイントは、鏡が回転すると、鏡面に垂直な「法線」も一緒に回転するという事実です。入射してくる光の向きは変わらないため、法線が動くと、光と法線のなす角である「入射角」が変化します。
反射の法則によれば、反射角は常に入射角と等しくなければなりません。したがって、入射角が変化すれば、反射角も同じだけ変化します。この「入射角の変化」と「反射角の変化」という2つの変化が合わさることで、反射光線全体の回転角が鏡の回転角の2倍になる、という結果につながります。
この設問における重要なポイント
- 反射の法則:入射角 = 反射角。
- 鏡が角\(\theta\)だけ回転すると、法線も同じ角\(\theta\)だけ回転する。
- 入射光線の向きは固定されている。
具体的な解説と立式
まず、各要素を記号で定義します。
- 初期状態(鏡が回転する前)
- 入射光線を\(IO\)、反射点を\(O\)、鏡面を\(MN\)、法線を\(n\)とします。
- 初期の入射角を \(\angle(IO, n) = i\) とします。
- 反射の法則より、初期の反射角も \(i\) となります。
- 初期の反射光線を\(OR\)とすると、入射光線\(IO\)と反射光線\(OR\)のなす角は \(\angle IOR = i + i = 2i\) です。
- 変化後(鏡が\(\theta\)回転した後)
- 回転後の鏡面を\(M’N’\)、法線を\(n’\)とします。
- 鏡が\(\theta\)回転したため、法線も同じ向きに\(\theta\)回転します。つまり、法線\(n\)と\(n’\)のなす角は\(\theta\)です。
- 入射光線\(IO\)の向きは変わらないので、新しい入射角\(i’\)は、\(IO\)と新しい法線\(n’\)のなす角になります。図から、\(i’ = i + \theta\) となります。
- 反射の法則より、新しい反射角も\(i’\)です。
- 回転後の反射光線を\(OR’\)とすると、入射光線\(IO\)と反射光線\(OR’\)のなす角は \(\angle IOR’ = i’ + i’ = 2i’\) です。
- 反射光線の回転角の計算
- 求めたいのは、反射光線が回転した角度、つまり\(OR\)と\(OR’\)のなす角です。
- これは、入射光線\(IO\)を基準としたときの、2つの反射光線の向きの差として計算できます。
$$ (\text{回転角}) = \angle IOR’ – \angle IOR $$
この式に、上で求めた関係を代入して計算します。
使用した物理公式
- 反射の法則: 入射角 = 反射角
「具体的な解説と立式」で立てた方針に従って、反射光線の回転角を計算します。
$$
\begin{aligned}
(\text{回転角}) &= \angle IOR’ – \angle IOR \\[2.0ex]
&= 2i’ – 2i \\[2.0ex]
&= 2(i’ – i)
\end{aligned}
$$
ここで、新しい入射角\(i’\)と初期の入射角\(i\)の関係は \(i’ = i + \theta\) でしたので、\(i’ – i = \theta\) となります。これを上の式に代入すると、
$$
\begin{aligned}
(\text{回転角}) &= 2(i’ – i) \\[2.0ex]
&= 2\theta
\end{aligned}
$$
となり、反射光線の回転角は\(2\theta\)であることがわかります。
鏡を\(\theta\)度傾けると、鏡に垂直な線(法線)も同じ\(\theta\)度傾きます。入射してくる光の向きは変わらないので、この傾いた法線から見ると、入射角が\(\theta\)度だけ増えることになります。反射の法則は「入射角=反射角」なので、反射角も同じく\(\theta\)度増えます。つまり、入射角側で\(\theta\)度、反射角側で\(\theta\)度、合わせて\(2\theta\)度だけ、反射する光の向きが変わることになります。
平面鏡を角度\(\theta\)だけ回転させると、反射光線は同じ向きに\(2\theta\)だけ回転します。この結果は、元の入射角\(i\)の大きさには依存しないという重要な特徴を持っています。鏡をわずかに動かすだけで、反射光をその2倍の角度で大きく動かすことができるため、この原理は、微小な回転を拡大して検出する装置(光てこを利用したガルバノメーターなど)に応用されています。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 反射の法則と幾何学の融合:
- 核心: この問題は、物理法則である「反射の法則(入射角=反射角)」が、鏡の回転という幾何学的な状況変化の中でどのように維持されるかを問うています。核心は、鏡の回転が法線の回転を引き起こし、それが入射角と反射角の両方に影響を与えるという連鎖的なプロセスを理解することです。
- 理解のポイント:
- 法線の連動: 鏡が\(\theta\)回転すると、鏡に固定されている法線も同じく\(\theta\)回転します。これが全ての変化の始点です。
- 入射角の変化: 入射光の向きは固定されているため、法線が\(\theta\)回転すると、入射角は\(\theta\)だけ変化します(この場合は増加)。
- 反射角の変化: 反射の法則により、反射角も入射角と常に等しくなければならないため、同じく\(\theta\)だけ変化します。
- 結果としての\(2\theta\)回転: 入射光線を基準に見ると、反射光線は「入射角の変化分\(\theta\)」と「反射角の変化分\(\theta\)」の合計である\(2\theta\)だけ回転することになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光てこ(オプティカルレバー): ガルバノメーター(検流計)など、微小な回転を測定する装置の原理を問う問題。鏡のわずかな回転\(\theta\)を、スクリーン上で大きく動く光点(回転角\(2\theta\))として観測することで、高感度な測定を実現します。この問題の原理がそのまま応用されています。
- 入射光線を回転させる問題: 鏡を固定したまま、入射光線を\(\theta\)回転させた場合、反射光線がどうなるかを問う問題。この場合、法線は動かないため、入射角が\(\theta\)変化し、反射角も\(\theta\)変化します。結果として、反射光線は入射光線とは逆向きに\(\theta\)回転します。本問との違いを比較することで、理解が深まります。
- 2枚の鏡による反射: 互いに角度をなす2枚の平面鏡で光が反射する問題。1枚目の鏡での反射光が2枚目の鏡への入射光となり、角度を幾何学的に丁寧に追跡していくことで、最終的な光の向きを求めることができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 固定されているものと動くものを区別する: まず、「入射光線」と「鏡」のどちらが固定で、どちらが回転するのかを問題文から正確に読み取ります。
- 法線を基準に考える: 角度の問題では、常に「法線」が基準となります。鏡が動くなら法線も動く、という点を忘れないようにします。
- 回転前と回転後の図を比較する: 1つの図にごちゃごちゃ書き込むのではなく、頭の中や紙の上で、回転前の状態と回転後の状態を分けて考え、それぞれの入射角・反射角がどうなっているかを比較します。
- 求める角度を明確にする: 問題が求めているのが「新しい反射角」なのか、「反射光線の回転角」なのかを正確に把握します。後者の場合は、回転前の反射光線と回転後の反射光線のなす角を計算する必要があります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 反射光の回転角を\(\theta\)と答えてしまう:
- 誤解: 鏡が\(\theta\)回転したのだから、反射光も同じ\(\theta\)だけ回転するだろう、と直感的に考えてしまう。
- 対策: 「入射角の変化」と「反射角の変化」という2つの効果が合わさることを常に意識する。法線が\(\theta\)動くことで、入射光線側で\(\theta\)、反射光線側で\(\theta\)、合計で\(2\theta\)の影響が出ると論理的に考える癖をつけましょう。
- 入射角・反射角の定義の混同:
- 誤解: 入射角を、入射光線と「鏡面」とのなす角だと勘違いしてしまう。
- 対策: 入射角と反射角は、常に「光線と法線とのなす角」である、という定義を徹底的に叩き込む。問題を解き始める前に、まず法線を描く習慣をつけると良いでしょう。
- 作図と角度計算の混乱:
- 誤解: 回転前後の法線や光線を1つの図に書き込んだ結果、どの角度が\(i\)でどれが\(\theta\)なのか分からなくなってしまう。
- 対策: 回転前の状態を実線で、回転後の状態を点線で描くなど、線の種類を使い分ける。また、\(i\), \(i’\), \(\theta\)などの記号を、図の中に明確に書き込み、どの角度を計算しているのかを常に意識しながら式を立てることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 反射の法則(入射角 = 反射角):
- 選定理由: 光の反射現象を扱う以上、これは議論の出発点となる最も基本的な物理法則です。この法則がなければ、反射光の進む方向を一切決定できません。
- 適用根拠: この問題のポイントは、鏡が回転するという「動的な状況」においても、反射の法則そのものは普遍的に成り立つという点です。変化するのは、あくまで法則を適用する際のパラメータ(入射角)です。回転後の新しい状況に対して、改めて反射の法則を適用することで、新しい反射角を論理的に導き出すことができます。
- 幾何学的な角度の和と差:
- 選定理由: 物理法則を適用した結果、問題は「回転前後の角度の関係を整理する」という純粋な幾何学の問題に帰着します。最終的に求めたい反射光の回転角は、回転前後の各角度の差として表現されるため、角度の加減計算が必須となります。
- 適用根拠: 「新しい入射角 \(i’\) = 元の入射角 \(i\) + 鏡の回転角 \(\theta\)」や「反射光の回転角 = \(\angle IOR’ – \angle IOR\)」といった関係は、図を正確に描くことで導かれる幾何学的な事実です。これらが、物理法則と最終的な答えである\(2\theta\)とを結びつける論理的な架け橋となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 変数の定義を明確にする: \(i\)(初期入射角)、\(i’\)(回転後の入射角)、\(\theta\)(鏡の回転角)など、計算に使う文字がそれぞれどの角度を表しているのかを、自分の中で(あるいは答案の余白に)明確に定義してから計算を始めましょう。
- ステップを省略しない: 答えが\(2\theta\)になることを知っていても、導出過程を丁寧に記述することが重要です。特に、反射光の回転角を \(2i’ – 2i\) と表現し、そこから \(2(i’ – i)\) へと変形し、最後に \(i’ – i = \theta\) を代入するという一連の流れを、省略せずに書く練習をしましょう。
- 関係式を正しく導く: 計算の要は、\(i’ = i + \theta\) という関係式を正しく導けるかどうかにかかっています。図を描き、法線の回転と入射角の変化の関係を正確に読み取ることが、計算全体の正しさを保証します。
- 結果を吟味する: 答えが\(2\theta\)と出たら、その意味を考えます。「元の入射角\(i\)に依らない」という事実は、この問題の重要な結論です。また、もし\(\theta=0\)なら回転角も0になる、\(\theta\)が負(逆回転)なら回転角も負になる、といった簡単なケースで検算してみるのも、ミスを防ぐ良い習慣です。
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