「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 21】Step 2

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Step 2

273 光の反射

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平面鏡による光の反射と作図」です。光の反射に関する基本的な法則と、作図テクニックの理解が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 反射の法則: 鏡面上の光が反射する点において、「入射角と反射角は等しい」という法則です。入射光線、反射光線、および反射点における法線は、すべて同一平面内にあります。
  2. 光の直進性: 媒質が均一な場合、光はまっすぐに進むという性質です。
  3. 平面鏡による像(虚像): 平面鏡を覗くと、鏡の向こう側に物体があるように見えます。この見かけ上の物体を「虚像」と呼びます。虚像は、鏡面に対して実物と対称な位置にできます。
  4. 作図の基本方針: 反射光は、あたかも鏡の向こう側にある虚像から直進してきたかのように見えます。この性質を利用すると、反射の法則を直接使わなくても、光の経路を簡単に作図できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、反射点が指定されているため、光源の虚像と指定された反射点を結ぶことで、反射光線の進む方向を決定します。
  2. (2)では、観測点が指定されているため、光源の虚像と観測点を結ぶことで、鏡面上のどこで反射が起こるか(反射点)を特定し、光の全経路を作図します。

問(1)

思考の道筋とポイント
点光源\(P\)から出て、平面鏡\(M\)上の点\(A\)で反射した光が、その後どのように進むかを作図する問題です。この問題の核心は、「反射の法則」をいかに正確に、かつ簡単に作図に反映させるかという点にあります。

反射の法則によれば、点\(A\)における入射角と反射角は等しくなります。しかし、分度器を使わずにこれを作図するのは困難です。そこで、平面鏡による「虚像」の性質を利用します。鏡で反射した光は、あたかも鏡の向こう側にある「虚像」からまっすぐ飛んできたかのように見えます。この性質を使えば、複雑な角度の計算なしに、反射光線を一本の直線として描くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 平面鏡がつくる像(虚像)は、鏡面に対して物体と対称な位置にできる。
  • ある点(この問題では\(A\))で反射した光は、光源\(P\)の虚像\(P’\)と点\(A\)を結ぶ直線上を進む。

具体的な解説と立式
光の反射経路を作図するために、以下の手順を踏みます。

1. 虚像\(P’\)の作図
点光源\(P\)から平面鏡\(M\)に下ろした垂線の足を\(H\)とします。虚像\(P’\)は、線分\(PH\)を鏡の向こう側へ同じ長さだけ延長した点にできます。つまり、\(PH = P’H\)であり、直線\(PP’\)は鏡面\(M\)に垂直です。この\(P’\)が、光源\(P\)の虚像の位置となります。

2. 反射光線の作図
鏡で反射した光は、すべて虚像\(P’\)から発せられたかのように直進して見えます。この問題では、光は点\(A\)で反射することが決まっています。したがって、求める反射光線は、虚像\(P’\)と反射点\(A\)の2点を結ぶ直線の、点\(A\)から先の部分となります。

この作図法が「反射の法則」を満たしていることは、幾何学的に証明できます。
△\(PHA\)と△\(P’HA\)について、

  • \(PH = P’H\) (作図より)
  • \(AH\)は共通
  • \(\angle PHA = \angle P’HA = 90^\circ\)

であるため、2辺夾角が等しく、△\(PHA \equiv\) △\(P’HA\)(合同)となります。
したがって、対応する角は等しいので \(\angle PAH = \angle P’AH\) です。
ここで、点\(A\)における入射角は \(\angle PAH\) であり、反射角は対頂角の関係から \(\angle P’AH\) と等しい角になります。よって、入射角と反射角が等しくなり、反射の法則が成立していることがわかります。

使用した物理公式

  • 反射の法則(入射角 = 反射角)
  • 光の直進性
計算過程

この問題は作図が中心であり、数値計算は伴いません。作図の手順が解答プロセスそのものとなります。

  1. 点\(P\)を通り、鏡面\(M\)に垂直な直線を引きます。
  2. その垂線上で、鏡面\(M\)を挟んで\(P\)と反対側に、鏡面までの距離が等しくなる点\(P’\)をとります。
  3. 点\(P’\)と点\(A\)を直線で結びます。
  4. 点\(A\)から、\(P’A\)の延長線上に矢印を描きます。これが求める反射光線です。
計算方法の平易な説明

鏡の前に立つと、鏡の向こう側に自分とそっくりな「像」が見えますよね。光源\(P\)も同じで、鏡\(M\)の向こう側に、鏡を挟んでちょうど反対の位置に\(P\)の像である\(P’\)ができます。
鏡で反射した光は、すべてこの像\(P’\)からまっすぐ飛んでくるように見えます。
問題では「光が\(A\)点で反射する」と決まっているので、話は簡単です。像\(P’\)から出発して\(A\)点を通る光を描けば、それが反射した後の光の進む道筋になります。つまり、\(P’\)と\(A\)を定規で結んで、\(A\)から先に線を伸ばせば完成です。

結論と吟味

点\(P\)から出た光線\(PA\)は、点\(A\)で反射した後、\(P\)の虚像\(P’\)と点\(A\)を結ぶ直線の延長線上を進みます。この作図方法は、反射の法則を幾何学的に満たしており、物理的に正しい光の経路を示しています。

解答 (1) 点\(P\)の、平面鏡\(M\)に関する対称点\(P’\)をとり、\(P’\)と\(A\)を結ぶ直線を\(A\)から延長したものが反射光線となる。(作図は解答図を参照)

問(2)

思考の道筋とポイント
点光源\(P\)から出て平面鏡\(M\)で反射し、点\(E\)にいる観測者の目に入る光の経路を作図する問題です。(1)と異なり、今度は「どこで反射するのか」という反射点自体がわかっていません。しかし、用いる原理は(1)と全く同じです。

観測者\(E\)が鏡を通して\(P\)を見るとき、光は虚像\(P’\)から観測者\(E\)の目にまっすぐ届いているように見えます。この「見え方」が、反射点を発見するための最大のヒントになります。実際の光は鏡面で反射して曲がりますが、見かけ上の光路は直進している、という点を突くのが賢い解法です。
この設問における重要なポイント

  • 観測者\(E\)には、光は光源\(P\)の虚像\(P’\)から直進して目に届くように見える。
  • この「見かけの光路(直線\(P’E\))」と「実際の鏡面\(M\)」が交わる点が、本当の反射点である。

具体的な解説と立式
(1)と同様に、まず光源\(P\)の虚像\(P’\)を作図することから始めます。

1. 虚像\(P’\)の作図
点光源\(P\)の、平面鏡\(M\)に関して対称な点\(P’\)を求めます。

2. 反射点の特定と光線の作図
観測者\(E\)には、光は虚像\(P’\)から自分のいる点\(E\)に向かって、まっすぐ進んできたように見えます。そこで、虚像\(P’\)と観測点\(E\)を直線で結びます。
しかし、実際の光は鏡面\(M\)で反射しています。見かけ上は\(P’\)から来た光が\(E\)に届くということは、実際の反射光線は、直線\(P’E\)の鏡と観測者の間の部分と一致するはずです。
したがって、直線\(P’E\)と鏡面\(M\)との交点を\(B\)とすると、この点\(B\)こそが求めるべき反射点となります。
実際の光の経路は、光源\(P\)から出発して反射点\(B\)に向かい(入射光線\(PB\))、点\(B\)で反射して観測者\(E\)に届く(反射光線\(BE\))という経路\(P \rightarrow B \rightarrow E\)になります。

使用した物理公式

  • 反射の法則(入射角 = 反射角)
  • 光の直進性
計算過程

この問題も作図が中心です。

  1. (1)と同様に、点\(P\)の鏡\(M\)に関する対称点\(P’\)を作図します。
  2. 点\(P’\)と観測点\(E\)を直線で結びます。
  3. 直線\(P’E\)と鏡面\(M\)の交点を\(B\)とします。この点が反射点です。
  4. 点\(P\)と点\(B\)、点\(B\)と点\(E\)をそれぞれ直線で結び、\(P \rightarrow B\)と\(B \rightarrow E\)の経路に矢印を描きます。これが求める光線です。
計算方法の平易な説明

(1)と同じように、まず鏡の向こう側に光源\(P\)の「像\(P’\)」を作ります。
今度は、観測者\(E\)さんの目に光が入る道筋を探します。\(E\)さんから見ると、光は像\(P’\)からまっすぐ飛んできて自分の目に届くように見えます。
そこで、像\(P’\)と\(E\)さんを定規でまっすぐ結んでみましょう。
実際の光は鏡で跳ね返ってくるわけですから、この「\(P’\)と\(E\)を結んだ線」が鏡とぶつかる点、そこが光が実際に反射した場所になります。
あとは、光源\(P\)からその反射点までと、反射点から\(E\)さんまでを線で結べば、光の本当の通り道がわかります。

結論と吟味

点\(P\)から出て観測者\(E\)に届く光は、\(P\)の虚像\(P’\)と\(E\)を結ぶ直線が鏡面\(M\)と交わる点\(B\)で反射します。光の経路は\(PBE\)となります。この作図法で得られた経路は、反射の法則を満たしており、物理的に正しい光路です。また、この経路は\(P\)から鏡面上の点を経由して\(E\)に至る最短距離の経路でもあります。

解答 (2) 点\(P\)の、平面鏡\(M\)に関する対称点\(P’\)をとり、\(P’\)と\(E\)を結ぶ。この直線と鏡\(M\)との交点を\(B\)とすると、求める光線は\(PBE\)の経路をたどる。(作図は解答図を参照)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 反射の法則と虚像の概念の統合的理解:
    • 核心: この問題の根底にある物理法則は「反射の法則(入射角と反射角が等しい)」です。しかし、問題を解くための実践的な核心は、この法則を直接適用するのではなく、「反射光は、鏡面に対して物体と対称な位置にある虚像から直進してくるように見える」という虚像の概念を使いこなすことにあります。
    • 理解のポイント:
      • なぜ虚像を使うのか?: 分度器なしで正確に入射角と反射角が等しい作図をするのは困難です。虚像を利用することで、角度の問題を「2点を結ぶ直線を引く」という単純な幾何学の問題に置き換えることができ、誰でも正確な作図が可能になります。
      • 法則との関係: 虚像を用いた作図法は、単なるテクニックではなく、幾何学的に反射の法則と完全に等価です。光源\(P\)、虚像\(P’\)、反射点\(B\)でできる2つの直角三角形(△\(PHB\)と△\(P’HB\)、ただし\(H\)は\(P\)から鏡への垂線の足)が合同になることから、入射角と反射角が等しくなることが証明できます。法則を理解した上で、その便利な応用として虚像を捉えることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 鏡に映る範囲を問う問題: 「観測者が鏡を通して壁のどの範囲を見ることができるか」といった問題。観測者の目の虚像を作り、その虚像と鏡の両端を結ぶ直線が壁に当たる範囲を求めることで、簡単かつ正確に解けます。
    • 2枚の鏡による多重像: 鏡を2枚組み合わせた場合(直角鏡など)、一方の鏡による像を、もう一方の鏡に対する新たな物体と見なして「像の像」を作図していきます。光は何回も反射しますが、最終的な反射光は、最終的な虚像から直進してくるように見えます。
    • 最短光路の問題(フェルマーの原理): 「光源\(P\)から鏡で反射して点\(E\)に達する光の最短経路は?」という問いは、本問(2)と全く同じです。光路\(PBE\)の長さは、直線\(P’BE\)の長さと等しく、直線が2点間を結ぶ最短距離であるため、この作図法は自動的に最短経路(最短時間)を求める方法にもなっています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 鏡の種類を確認する: まず、平面鏡か、凹面鏡・凸面鏡かを確認します。平面鏡であれば、虚像を使った作図が有効です。
    2. 「虚像」を真っ先に作図する: 平面鏡の問題だと判断したら、条件反射でまず光源(または物体)の虚像を作図する癖をつけましょう。ほとんどの場合、それが解法の第一歩となります。
    3. 問題の条件を整理する: 「反射点」が指定されているのか(問1)、それとも「観測点」が指定されているのか(問2)を明確にします。
      • 反射点\(A\)が指定されている場合 → 虚像\(P’\)と反射点\(A\)を結ぶ。
      • 観測点\(E\)が指定されている場合 → 虚像\(P’\)と観測点\(E\)を結び、鏡との交点(反射点)を見つける。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 虚像の位置の作図ミス:
    • 誤解: 鏡面に対して、なんとなく反対側に同じくらいの距離で点\(P’\)を打ってしまう。
    • 対策: 「物体から鏡面に垂線を下ろし、その垂線を鏡の向こう側に同じ長さだけ延長する」という手順を機械的に、かつ正確に実行する。三角定規などを用いて、必ず鏡面と90°になる線を引きましょう。
  • 光の向き(矢印)の間違い:
    • 誤解: (2)の作図で、虚像\(P’\)から光が出て、反射点\(B\)を経由して観測点\(E\)に届くかのような矢印(\(P’ \rightarrow B \rightarrow E\))を描いてしまう。
    • 対策: 虚像はあくまで作図を便利にするための「仮想的な点」であり、物理的な光源ではないことを常に意識してください。実際の光は必ず光源\(P\)から出発します。したがって、矢印は必ず \(P \rightarrow B \rightarrow E\) の向きになります。
  • 入射光線と反射光線の混同:
    • 誤解: 作図に集中するあまり、どの線が実際の光路で、どの線が補助線か分からなくなってしまう。
    • 対策: 実際の光路(\(PA\), \(PB\), \(BE\)など)は濃い実線で、虚像を作るための垂線や虚像と点を結ぶ線などの補助線は薄い点線で描くなど、線の種類を使い分けるとミスが減り、解答も見やすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 虚像の概念の適用:
    • 選定理由: この問題は、物理法則(反射の法則)を直接使って角度を測るのではなく、その法則から導かれる幾何学的な性質(虚像)を利用して「作図」することが求められています。虚像の概念は、角度の問題を距離と直線の問題に変換し、作図を劇的に簡単かつ正確にするための最も合理的な選択です。
    • 適用根拠: 人間の目は、光がどの経路を辿ってきたかに関わらず、目に届いた方向からまっすぐ逆算した位置に光源があると認識します。鏡で反射した光は、鏡の向こう側の一点(虚像)から直進してきたかのように目に届きます。この「見え方」の原理を作図に逆利用しているのです。この方法が反射の法則と数学的に等価であることが、このアプローチの正当性を保証しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題では数値計算はありませんが、作図におけるミスは点数に直結します。ここでは「作図ミスをなくすテクニック」として解説します。
  • 道具を正しく使う: フリーハンドは絶対に避け、直線は必ず定規を使ってください。特に、虚像の位置を決めるための垂線を引く際は、三角定規の直角を使うか、コンパスを用いて正確に作図することが精度を上げる鍵です。
  • 記号を明確に記入する: 光源\(P\)、虚像\(P’\)、反射点\(A\)、観測点\(E\)など、図中の重要な点には、はっきりと記号を書き込みましょう。特に、光源\(P\)と虚像\(P’\)を混同しないように注意が必要です。
  • 線の種類を使い分ける: 最終的に解答として示すべき「実際の光路」は濃い実線で描き、作図の過程で用いた「補助線」(虚像と観測点を結ぶ線など)は薄い実線や点線で描くと、自分自身も混乱しにくく、採点者にも意図が伝わりやすい答案になります。
  • 作図後のセルフチェック: 作図が完了したら、一度図を眺めてみましょう。例えば、反射点における入射角と反射角が、見た目上おおよそ等しくなっているかを確認するだけでも、大きな作図ミスに気づくことができます。

274 光の分散

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の分散とレンズによる屈折」です。光の色(波長)によって屈折率が異なるという「光の分散」の現象を、凹レンズの働きと関連付けて理解しているかが問われます。

  1. 光の分散: 光がプリズムやレンズなどの媒質を通過する際に、波長(色)によって屈折する角度が異なるため、色が分かれて見える現象。虹もこの原理で起こります。
  2. 屈折率と波長(色)の関係: ガラスなどの媒質では、一般に光の波長が短いほど屈折率が大きくなります。可視光線では、紫や青の光は波長が短く、赤の光は波長が長いため、屈折率は「青 > 緑 > 赤」の順になります。
  3. 屈折率と光の曲がりやすさ: 屈折率が大きい光ほど、媒質の境界面でより大きく進路を曲げられます。
  4. 凹レンズの作用: 光軸に平行に入射した光を、光軸から遠ざける向きに曲げる(発散させる)働きがあります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、赤・緑・青の光について、波長と屈折率の大小関係を整理します。
  2. 次に、屈折率が大きい光ほど凹レンズによって、より大きく発散させられる(より大きく外側に曲げられる)ことを理解します。
  3. 最後に、図に示された光路①、②、③の曲がり方の大小関係と、各色の光の曲がりやすさを対応させて答えを導きます。

(設問)

思考の道筋とポイント
青、緑、赤の3色の光が凹レンズを通過する際の経路を特定する問題です。この問題を解く鍵は、光が色によって屈折の度合いが異なる「光の分散」という現象を理解しているかどうかにかかっています。

虹が7色に見えるのと同じように、レンズやプリズムを通過する光は、その色によって曲がり方が異なります。結論から言うと、可視光線では紫や青といった波長の短い光が最も大きく曲がり、赤のような波長の長い光が最も曲がりにくくなります。

この問題で使われているのは「凹レンズ」です。凹レンズは光を広げる(発散させる)性質、つまり光を光軸から遠ざける方向に曲げる性質を持っています。したがって、「最もよく曲がる光」は「最も外側へ広げられる光」ということになります。この関係性を使って、図の光路と色を結びつけていきます。
この設問における重要なポイント

  • 光の波長の大小関係: \(\lambda_{\text{赤}} > \lambda_{\text{緑}} > \lambda_{\text{青}}\)
  • 媒質中での光の速さの大小関係: \(v_{\text{赤}} > v_{\text{緑}} > v_{\text{青}}\)
  • ガラスに対する屈折率の大小関係: \(n_{\text{赤}} < n_{\text{緑}} < n_{\text{青}}\)
  • 屈折の度合い: 屈折率\(n\)が大きいほど、光は大きく曲げられる。

具体的な解説と立式
光がガラスのような媒質に入ると、その速さは真空中の光速\(c\)よりも遅くなります。媒質の屈折率\(n\)は、媒質中の光速を\(v\)として、次のように定義されます。
$$ n = \frac{c}{v} $$
ガラスなどの媒質中では、光の波長(色)によって光速\(v\)がわずかに異なります。この現象を「光の分散」と呼びます。

可視光線の領域では、一般に波長\(\lambda\)が短い光ほど、媒質中での速度\(v\)は遅くなります。赤、緑、青の光については、波長と速度に以下の関係があります。
$$ \lambda_{\text{赤}} > \lambda_{\text{緑}} > \lambda_{\text{青}} $$
$$ v_{\text{赤}} > v_{\text{緑}} > v_{\text{青}} $$
媒質中の速度\(v\)が遅いほど、屈折率\(n\)は大きくなるため、ガラスに対する各色の光の屈折率の大小関係は次のようになります。
$$ n_{\text{赤}} < n_{\text{緑}} < n_{\text{青}} $$
光がレンズを通過して屈折する際、屈折率が大きいほど光はより大きく進路を曲げられます。凹レンズは、光軸に平行に入射した光を光軸から遠ざける向きに曲げる(発散させる)性質を持っています。

したがって、

  • 最も屈折率が大きい青色の光は、最も大きく曲げられ、最も外側に発散します。
  • 最も屈折率が小さい赤色の光は、最も小さく曲げられ、最も内側に発散します。
  • 緑色の光は、その中間の経路をたどります。

図を見ると、光路③が最も大きく曲がり(最も外側に発散し)、光路①が最も小さく曲がっています。このことから、光路と色の対応は以下のように決まります。

  • 光路①(最も曲がらない):
  • 光路②(中間の曲がり方):
  • 光路③(最も曲がる):

使用した物理公式

  • 屈折率の定義: \(n = \displaystyle\frac{c}{v}\)
  • 光の分散(波長と屈折率の関係): 一般に、波長\(\lambda\)が短いほど屈折率\(n\)は大きくなる。
計算過程

この問題は、物理法則の定性的な理解を問うものであり、具体的な数値計算は不要です。

計算方法の平易な説明

虹が7色に見えるのは、光が色によって曲がり方が違うからです。この問題も同じ原理です。
覚え方として、「虹の色の順番(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)」を思い浮かべてください。この順番で、紫側(青色の光など)ほど、ガラスなどを通るときに「よく曲がる」と覚えるのがポイントです。
図のレンズは「凹レンズ」で、光を広げる働きをします。つまり、光を外側に曲げます。

  • 「よく曲がる」青い光は、一番大きく外側に広げられます。これが光路③です。
  • 「曲がりにくい」赤い光は、あまり広げられません。これが光路①です。
  • 残った緑の光が、中間の光路②となります。
結論と吟味

光の波長が短いほど(青色側)、ガラスの屈折率は大きくなり、レンズによってより大きく曲げられます。凹レンズは光を発散させるため、最も大きく曲げられる青が光路③、最も曲げられにくい赤が光路①、その中間の緑が光路②に対応します。この結果は、光の分散に関する基本的な知識と一致しており、物理的に妥当です。

解答 ①赤、②緑、③青

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 光の分散(波長による屈折率の違い):
    • 核心: この問題を解くための唯一かつ絶対的な核心は、「光は色(波長)によって屈折率が異なる」という光の分散の原理を理解していることです。特に、ガラスのような一般的な媒質では「波長が短い光(紫・青側)ほど屈折率が大きく、より大きく曲げられる」という関係を覚えていることが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 波長と色の関係: 可視光線は、波長の長い方から「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の順に並んでいます。虹の色の順番として覚えておくと便利です。
      • 屈折率と速さの関係: 屈折率 \(n\) は、真空中での光速 \(c\) と媒質中での光速 \(v\) の比 \(n = c/v\) で定義されます。波長の短い光ほど媒質中での速度が遅くなるため、屈折率が大きくなります。つまり、「遅い光ほどよく曲がる」と理解することもできます。
      • レンズの作用との組み合わせ: この分散の知識を、レンズの基本的な働き(凹レンズなら発散、凸レンズなら収束)と組み合わせることで、具体的な光路を予測できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 凸レンズによる色収差: 凸レンズに白色光を入射させると、焦点が色によってずれる現象(色収差)を問う問題。最もよく曲がる青い光はより手前(レンズに近い位置)に焦点を結び、曲がりにくい赤い光はより奥(レンズから遠い位置)に焦点を結びます。
    • プリズムによる光の分散: 白色光をプリズムに入射させたときに、光が虹色に分かれるスペクトルを問う問題。プリズムの頂角側(薄い方)に曲がりにくい赤、底辺側(厚い方)に最もよく曲がる紫が配置されます。
    • 光ファイバーの分散: 光ファイバー内で光パルスを伝送する際、波長によって進む速さが異なるため、パルスが時間的に広がってしまう現象(材料分散)の原理を問う問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「色」や「波長」という単語に注目: 問題文に「赤色光」「白色光」「単色光」など、光の色や波長に関する記述があれば、ほぼ間違いなく光の分散がテーマです。
    2. 光学素子(レンズ・プリズム)の種類を確認: 光を曲げる素子が凸レンズか、凹レンズか、プリズムかを確認します。これにより、光が収束するのか、発散するのか、一方向に曲げられるのかという基本的な方向性が決まります。
    3. 曲がり方の大小関係を判断: 「波長の短い青色光が最も大きく曲がる」という大原則を思い出します。
      • 凹レンズの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も外側に発散する」。
      • 凸レンズの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も内側に収束する(焦点が手前にくる)」。
      • プリズムの場合: 「最も大きく曲がる」=「最も大きく進行方向が変わる」。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波長と屈折率の関係の混同:
    • 誤解: 波長が長い赤い光の方がよく曲がる、と逆さまに覚えてしまう。
    • 対策: 虹の色の順番を思い出し、「紫が一番下(一番大きく曲がる)」と映像で記憶するのが効果的です。または、「波長がい」→「媒質中でい」→「屈折率がきい」→「きく曲がる」という論理の連鎖で覚えるのも有効です。
  • 凸レンズと凹レンズの作用の混同:
    • 誤解: 凹レンズなのに、光が収束する(光軸に近づく)かのように考えてしまう。
    • 対策: レンズの形状から直感的に働きを連想する。「凹レンズ」は中央がくびれていて光を発散させる形、「凸レンズ」は中央が膨らんでいて光を収束させる形、と形状と作用をセットで記憶しましょう。
  • 「曲がる」という言葉の解釈ミス:
    • 誤解: 凹レンズで「大きく曲がる」とは、光軸に近づくことだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「曲がる」とは、元の進行方向(この場合は光軸に平行な直線)からの角度の変化が大きいことだと定義を明確に理解する。凹レンズでは、光軸から離れる向きに角度が大きく変化することが「大きく曲がる」ことに相当します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折率と波長の関係(定性的理解):
    • 選定理由: この問題は、数値計算ではなく、物理現象の定性的な理解を問うています。そのため、具体的な計算式(例えば、レンズの公式 \(1/a + 1/b = 1/f\))よりも、物理法則の大小関係(「波長が短いほど屈折率が大きい」)を正しく適用することが求められます。
    • 適用根拠: 物質(ガラス)と光の相互作用において、光の振動数が物質の電子の固有振動数に近づくほど、光は強く吸収されたり、速度が遅くなったりします。可視光線の領域では、振動数が大きい(=波長が短い)青色光の方が、赤色光よりもこの相互作用が強く、結果として速度が遅くなり、屈折率が大きくなります。この物理的背景が、法則の根拠となっています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題は計算を伴いませんが、知識の混同を防ぐためのテクニックが重要です。
  • 図やイメージで覚える: 「プリズムで光が分かれる図」や「虹の絵」を頭の中にストックしておき、赤が上(曲がりにくい)、紫が下(曲がりやすい)という位置関係を視覚的に覚えておくと、知識が混同しにくくなります。
  • 大小関係の整理: 問題を解く前に、余白に「波長: 赤 > 青」「速さ: 赤 > 青」「屈折率: 赤 < 青」「曲がり方: 赤 < 青」のように、関連する物理量の大小関係を一度書き出してみる。これにより、思考が整理され、ケアレスミスを防げます。
  • 語呂合わせの活用: 例えば、「セキトウオウリョクセイランシ(赤橙黄緑青藍紫)」という虹の色の順番の語呂合わせを覚えておき、「紫側がよく曲がる」と結びつけるなど、自分なりの覚えやすい方法を確立しておくことが有効です。

275 平面鏡の回転

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平面鏡の回転と反射光の関係」です。入射光線の向きを固定したまま平面鏡を回転させると、反射光線がどのように変化するかを問う、幾何光学の基本的な問題です。

  1. 反射の法則: 光が鏡面で反射するとき、入射角と反射角は常に等しくなります。入射角・反射角は、それぞれ入射光線・反射光線と鏡面の法線(鏡面に垂直な線)とのなす角です。
  2. 法線の回転: 平面鏡が角度\(\theta\)だけ回転すると、その鏡面に垂直な線である法線も、同じ向きに同じ角度\(\theta\)だけ回転します。
  3. 角度の幾何学的関係: 図形における角度の足し算や引き算を正確に行い、物理法則と結びつける能力が求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、鏡が回転する前の初期状態について、入射角と反射角の関係を整理します。
  2. 次に、鏡が\(\theta\)回転したことで、法線が\(\theta\)回転し、それによって入射角がどのように変化するかを考えます。
  3. 反射の法則を用いて、変化後の反射角を求めます。
  4. 最後に、初期の反射光線と変化後の反射光線のなす角度(回転角)を、入射光線を基準として計算します。

(設問)

思考の道筋とポイント
この問題の核心は、「鏡を\(\theta\)回転させると、反射光は\(2\theta\)回転する」という有名な関係を導出することです。なぜ「2倍」になるのかを、反射の法則と幾何学的な考察から解き明かしていきます。

最大のポイントは、鏡が回転すると、鏡面に垂直な「法線」も一緒に回転するという事実です。入射してくる光の向きは変わらないため、法線が動くと、光と法線のなす角である「入射角」が変化します。

反射の法則によれば、反射角は常に入射角と等しくなければなりません。したがって、入射角が変化すれば、反射角も同じだけ変化します。この「入射角の変化」と「反射角の変化」という2つの変化が合わさることで、反射光線全体の回転角が鏡の回転角の2倍になる、という結果につながります。
この設問における重要なポイント

  • 反射の法則:入射角 = 反射角。
  • 鏡が角\(\theta\)だけ回転すると、法線も同じ角\(\theta\)だけ回転する。
  • 入射光線の向きは固定されている。

具体的な解説と立式
まず、各要素を記号で定義します。

  • 初期状態(鏡が回転する前)
    • 入射光線を\(IO\)、反射点を\(O\)、鏡面を\(MN\)、法線を\(n\)とします。
    • 初期の入射角を \(\angle(IO, n) = i\) とします。
    • 反射の法則より、初期の反射角も \(i\) となります。
    • 初期の反射光線を\(OR\)とすると、入射光線\(IO\)と反射光線\(OR\)のなす角は \(\angle IOR = i + i = 2i\) です。
  • 変化後(鏡が\(\theta\)回転した後)
    • 回転後の鏡面を\(M’N’\)、法線を\(n’\)とします。
    • 鏡が\(\theta\)回転したため、法線も同じ向きに\(\theta\)回転します。つまり、法線\(n\)と\(n’\)のなす角は\(\theta\)です。
    • 入射光線\(IO\)の向きは変わらないので、新しい入射角\(i’\)は、\(IO\)と新しい法線\(n’\)のなす角になります。図から、\(i’ = i + \theta\) となります。
    • 反射の法則より、新しい反射角も\(i’\)です。
    • 回転後の反射光線を\(OR’\)とすると、入射光線\(IO\)と反射光線\(OR’\)のなす角は \(\angle IOR’ = i’ + i’ = 2i’\) です。
  • 反射光線の回転角の計算
    • 求めたいのは、反射光線が回転した角度、つまり\(OR\)と\(OR’\)のなす角です。
    • これは、入射光線\(IO\)を基準としたときの、2つの反射光線の向きの差として計算できます。
      $$ (\text{回転角}) = \angle IOR’ – \angle IOR $$
      この式に、上で求めた関係を代入して計算します。

使用した物理公式

  • 反射の法則: 入射角 = 反射角
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた方針に従って、反射光線の回転角を計算します。
$$
\begin{aligned}
(\text{回転角}) &= \angle IOR’ – \angle IOR \\[2.0ex]&= 2i’ – 2i \\[2.0ex]&= 2(i’ – i)
\end{aligned}
$$
ここで、新しい入射角\(i’\)と初期の入射角\(i\)の関係は \(i’ = i + \theta\) でしたので、\(i’ – i = \theta\) となります。これを上の式に代入すると、
$$
\begin{aligned}
(\text{回転角}) &= 2(i’ – i) \\[2.0ex]&= 2\theta
\end{aligned}
$$
となり、反射光線の回転角は\(2\theta\)であることがわかります。

計算方法の平易な説明

鏡を\(\theta\)度傾けると、鏡に垂直な線(法線)も同じ\(\theta\)度傾きます。入射してくる光の向きは変わらないので、この傾いた法線から見ると、入射角が\(\theta\)度だけ増えることになります。反射の法則は「入射角=反射角」なので、反射角も同じく\(\theta\)度増えます。つまり、入射角側で\(\theta\)度、反射角側で\(\theta\)度、合わせて\(2\theta\)度だけ、反射する光の向きが変わることになります。

結論と吟味

平面鏡を角度\(\theta\)だけ回転させると、反射光線は同じ向きに\(2\theta\)だけ回転します。この結果は、元の入射角\(i\)の大きさには依存しないという重要な特徴を持っています。鏡をわずかに動かすだけで、反射光をその2倍の角度で大きく動かすことができるため、この原理は、微小な回転を拡大して検出する装置(光てこを利用したガルバノメーターなど)に応用されています。

解答 \(2\theta\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 反射の法則と幾何学の融合:
    • 核心: この問題は、物理法則である「反射の法則(入射角=反射角)」が、鏡の回転という幾何学的な状況変化の中でどのように維持されるかを問うています。核心は、鏡の回転が法線の回転を引き起こし、それが入射角と反射角の両方に影響を与えるという連鎖的なプロセスを理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 法線の連動: 鏡が\(\theta\)回転すると、鏡に固定されている法線も同じく\(\theta\)回転します。これが全ての変化の始点です。
      • 入射角の変化: 入射光の向きは固定されているため、法線が\(\theta\)回転すると、入射角は\(\theta\)だけ変化します(この場合は増加)。
      • 反射角の変化: 反射の法則により、反射角も入射角と常に等しくなければならないため、同じく\(\theta\)だけ変化します。
      • 結果としての\(2\theta\)回転: 入射光線を基準に見ると、反射光線は「入射角の変化分\(\theta\)」と「反射角の変化分\(\theta\)」の合計である\(2\theta\)だけ回転することになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光てこ(オプティカルレバー): ガルバノメーター(検流計)など、微小な回転を測定する装置の原理を問う問題。鏡のわずかな回転\(\theta\)を、スクリーン上で大きく動く光点(回転角\(2\theta\))として観測することで、高感度な測定を実現します。この問題の原理がそのまま応用されています。
    • 入射光線を回転させる問題: 鏡を固定したまま、入射光線を\(\theta\)回転させた場合、反射光線がどうなるかを問う問題。この場合、法線は動かないため、入射角が\(\theta\)変化し、反射角も\(\theta\)変化します。結果として、反射光線は入射光線とは逆向きに\(\theta\)回転します。本問との違いを比較することで、理解が深まります。
    • 2枚の鏡による反射: 互いに角度をなす2枚の平面鏡で光が反射する問題。1枚目の鏡での反射光が2枚目の鏡への入射光となり、角度を幾何学的に丁寧に追跡していくことで、最終的な光の向きを求めることができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 固定されているものと動くものを区別する: まず、「入射光線」と「鏡」のどちらが固定で、どちらが回転するのかを問題文から正確に読み取ります。
    2. 法線を基準に考える: 角度の問題では、常に「法線」が基準となります。鏡が動くなら法線も動く、という点を忘れないようにします。
    3. 回転前と回転後の図を比較する: 1つの図にごちゃごちゃ書き込むのではなく、頭の中や紙の上で、回転前の状態と回転後の状態を分けて考え、それぞれの入射角・反射角がどうなっているかを比較します。
    4. 求める角度を明確にする: 問題が求めているのが「新しい反射角」なのか、「反射光線の回転角」なのかを正確に把握します。後者の場合は、回転前の反射光線と回転後の反射光線のなす角を計算する必要があります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 反射光の回転角を\(\theta\)と答えてしまう:
    • 誤解: 鏡が\(\theta\)回転したのだから、反射光も同じ\(\theta\)だけ回転するだろう、と直感的に考えてしまう。
    • 対策: 「入射角の変化」と「反射角の変化」という2つの効果が合わさることを常に意識する。法線が\(\theta\)動くことで、入射光線側で\(\theta\)、反射光線側で\(\theta\)、合計で\(2\theta\)の影響が出ると論理的に考える癖をつけましょう。
  • 入射角・反射角の定義の混同:
    • 誤解: 入射角を、入射光線と「鏡面」とのなす角だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 入射角と反射角は、常に「光線と法線とのなす角」である、という定義を徹底的に叩き込む。問題を解き始める前に、まず法線を描く習慣をつけると良いでしょう。
  • 作図と角度計算の混乱:
    • 誤解: 回転前後の法線や光線を1つの図に書き込んだ結果、どの角度が\(i\)でどれが\(\theta\)なのか分からなくなってしまう。
    • 対策: 回転前の状態を実線で、回転後の状態を点線で描くなど、線の種類を使い分ける。また、\(i\), \(i’\), \(\theta\)などの記号を、図の中に明確に書き込み、どの角度を計算しているのかを常に意識しながら式を立てることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 反射の法則(入射角 = 反射角):
    • 選定理由: 光の反射現象を扱う以上、これは議論の出発点となる最も基本的な物理法則です。この法則がなければ、反射光の進む方向を一切決定できません。
    • 適用根拠: この問題のポイントは、鏡が回転するという「動的な状況」においても、反射の法則そのものは普遍的に成り立つという点です。変化するのは、あくまで法則を適用する際のパラメータ(入射角)です。回転後の新しい状況に対して、改めて反射の法則を適用することで、新しい反射角を論理的に導き出すことができます。
  • 幾何学的な角度の和と差:
    • 選定理由: 物理法則を適用した結果、問題は「回転前後の角度の関係を整理する」という純粋な幾何学の問題に帰着します。最終的に求めたい反射光の回転角は、回転前後の各角度の差として表現されるため、角度の加減計算が必須となります。
    • 適用根拠: 「新しい入射角 \(i’\) = 元の入射角 \(i\) + 鏡の回転角 \(\theta\)」や「反射光の回転角 = \(\angle IOR’ – \angle IOR\)」といった関係は、図を正確に描くことで導かれる幾何学的な事実です。これらが、物理法則と最終的な答えである\(2\theta\)とを結びつける論理的な架け橋となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 変数の定義を明確にする: \(i\)(初期入射角)、\(i’\)(回転後の入射角)、\(\theta\)(鏡の回転角)など、計算に使う文字がそれぞれどの角度を表しているのかを、自分の中で(あるいは答案の余白に)明確に定義してから計算を始めましょう。
  • ステップを省略しない: 答えが\(2\theta\)になることを知っていても、導出過程を丁寧に記述することが重要です。特に、反射光の回転角を \(2i’ – 2i\) と表現し、そこから \(2(i’ – i)\) へと変形し、最後に \(i’ – i = \theta\) を代入するという一連の流れを、省略せずに書く練習をしましょう。
  • 関係式を正しく導く: 計算の要は、\(i’ = i + \theta\) という関係式を正しく導けるかどうかにかかっています。図を描き、法線の回転と入射角の変化の関係を正確に読み取ることが、計算全体の正しさを保証します。
  • 結果を吟味する: 答えが\(2\theta\)と出たら、その意味を考えます。「元の入射角\(i\)に依らない」という事実は、この問題の重要な結論です。また、もし\(\theta=0\)なら回転角も0になる、\(\theta\)が負(逆回転)なら回転角も負になる、といった簡単なケースで検算してみるのも、ミスを防ぐ良い習慣です。

276 フーコーの光速測定

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平面鏡の回転を利用した光速の測定(フーコーの方法)」です。光の性質(反射の法則、球面鏡の性質)と、物体の運動(等速円運動)を組み合わせた、物理学史的にも重要な実験に関する問題です。

  1. 平面鏡の回転と反射光: 入射光を固定したまま平面鏡を角度\(\theta\)だけ回転させると、反射光は\(2\theta\)だけ回転します。
  2. 球面鏡の性質: 球面鏡の中心に向かって入射した光は、鏡面に垂直に入射するため、反射後はもと来た経路をそのまま戻ります。
  3. 光の有限性と速さ: 光の速さは有限であり、距離\(d\)を往復するのにかかる時間は \(t = 2d/c\) で与えられます。
  4. 等速円運動: 1秒間に\(n\)回転する物体は、\(t\)秒間では \(n \times t\) 回転します。角度で表すと、1回転は\(360^\circ\)なので、\(t\)秒間の回転角は \(360nt\) 度となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、球面鏡\(M_2\)が点\(O\)を中心とする球面の一部であることに着目し、光が\(M_2\)でどのように反射するかを考えます。
  2. (2)では、(1)の結果と「平面鏡の回転」の知識を組み合わせ、光が往復する間に鏡\(M_1\)が\(\theta\)回転した場合の最終的な光の進路を考えます。
  3. (3)では、(2)で得られた関係式と、光が往復する時間、その間に鏡\(M_1\)が回転する角度の関係式を立式し、それらを連立させて光速\(c\)を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
光源\(S\)から出て、平面鏡\(M_1\)と球面鏡\(M_2\)で反射した光の経路を考える問題です。

まず、鏡が固定されている場合を考えます。光源\(S\)から点\(O\)に入射した光は、\(M_1\)で反射して\(M_2\)に向かいます。ここで重要なのは、\(M_2\)が点\(O\)を中心とする球面鏡であるという点です。これは、\(O\)から\(M_2\)に向かう光線(半径)は、必ず\(M_2\)の鏡面に垂直に当たることを意味します。鏡に垂直に入射した光は、もと来た道をそのまま戻る性質があります。したがって、光は\(M_2\)で反射して再び\(O\)に戻り、\(M_1\)で再度反射して光源\(S\)に戻ります。

次に、\(M_1\)を\(\theta\)だけ回転させた場合を考えます。\(S \rightarrow O\)の入射光は変わりませんが、\(M_1\)が傾いているため、\(M_2\)に向かう光の向きがずれます。しかし、\(M_2\)は球面鏡なので、どの方向から\(O\)を通ってきても、必ず垂直に入射し、もと来た道を戻ります。つまり、光は必ず\(O\)点に戻ってくるのです。
問題は、\(O\)点に戻ってきた光が、再度\(M_1\)で反射するときです。このとき\(M_1\)は\(\theta\)傾いたままなので、反射の法則に従って、もとの\(S\)とは違う方向に反射していきます。
この設問における重要なポイント

  • 球面鏡\(M_2\)は点\(O\)を中心としているため、\(O\)から来た光は必ず鏡面に垂直に入射し、もと来た道を戻る。
  • 平面鏡\(M_1\)を固定していても、\(\theta\)回転させても、光は\(M_2\)で反射した後、必ず点\(O\)に戻ってくる。
  • 点\(O\)に戻ってきた光は、その時点での\(M_1\)の向きに従って反射する。

具体的な解説と立式
\(M_1\)が固定されている場合
光源\(S\)から点\(O\)に入射した光は、\(M_1\)で反射して\(M_2\)に向かいます。光路\(OM_2\)は球面鏡\(M_2\)の半径にあたるため、光は\(M_2\)の鏡面に垂直に入射します。したがって、光は反射後、もと来た経路をたどり、再び点\(O\)に戻ります。点\(O\)に戻ってきた光は、固定された\(M_1\)で再度反射し、入射してきた経路\(SO\)を逆向きにたどって光源\(S\)に戻ります。

\(M_1\)を\(\theta\)回転させて固定した場合
\(S\)から\(O\)への入射光は同じです。\(M_1\)が\(\theta\)回転しているため、\(M_2\)へ向かう反射光の向きは、固定されている場合とは異なります。しかし、この光も点\(O\)から出ているため、球面鏡\(M_2\)には垂直に入射します。したがって、やはりもと来た道をたどって点\(O\)に戻ります。
点\(O\)に戻ってきた光は、\(\theta\)回転した位置にある\(M_1\)で反射されます。この反射は、光源から\(\theta\)回転した鏡に光を入射させるのと同じ状況です。したがって、光はもと来た道(光源\(S\)の方向)に戻ります。

結論として、どちらの場合も光は光源\(S\)に戻ります。

使用した物理公式

  • 反射の法則
  • 球面鏡の性質(中心を通る光線は鏡面に垂直に入射する)
計算過程

この設問は、光の経路に関する定性的な理解を問うものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

(1)は、鏡の性質を理解しているかどうかの問題です。まず、お椀のような形をした球面鏡\(M_2\)は、その中心\(O\)から来た光を必ずまっすぐ跳ね返す性質があります。だから、光は\(M_2\)に当たると、必ず\(O\)点に戻ってきます。次に平面鏡\(M_1\)ですが、光が\(S \rightarrow O\)と来て、\(O \rightarrow M_2 \rightarrow O\)と往復し、最後に\(O\)からどこへ行くかを考えます。鏡が固定されていれば、来た道を戻るだけなので\(S\)に戻ります。鏡を\(\theta\)傾けても、光は一度\(M_2\)に行って\(O\)に戻ってくるので、結局は「\(\theta\)傾いた鏡に光が入ってきて、どこへ反射するか」という問題と同じです。この場合も、光は来た道(光源の方向)を戻っていくので、やはり\(S\)に戻ります。

結論と吟味

平面鏡\(M_1\)の向きにかかわらず、点\(O\)から球面鏡\(M_2\)に向かった光は、必ずもと来た道を戻って点\(O\)に帰ってきます。そして、点\(O\)で再度\(M_1\)に反射される光は、そのときの\(M_1\)の向きに対して対称な方向、つまり光源\(S\)の方向に戻ります。したがって、どちらの場合も光は\(S\)に戻るという結論は妥当です。

解答 (1) どちらもSに戻る。

問(2)

思考の道筋とポイント
光が\(M_1\)で反射してから\(M_2\)に達し、再び\(M_1\)に戻ってくるまでのごくわずかな時間に、平面鏡\(M_1\)が\(\theta\)だけ回転するという状況を考えます。これは、光速が有限であるために起こる現象です。

この問題は、有名な「平面鏡を\(\theta\)回転させると反射光は\(2\theta\)回転する」という法則を応用する問題です。
光が\(O\)点を出発するとき、\(M_1\)はまだ回転していません(初期位置にあるとします)。光が\(OM_2\)間を往復して\(O\)点に戻ってきたとき、\(M_1\)は\(\theta\)だけ回転した位置にあります。
この状況は、「入射光線(\(M_2\)から\(O\)に戻ってくる光)の向きは固定されたままで、平面鏡\(M_1\)が\(\theta\)だけ回転した」と見なすことができます。
したがって、最終的に\(M_1\)で反射される光は、もし鏡が回転しなかった場合(つまり\(S\)に戻るはずだった経路)から、\(2\theta\)だけずれた方向に進むことになります。
この設問における重要なポイント

  • 光が\(OM_2\)間を往復する間に、鏡\(M_1\)が\(\theta\)回転する。
  • \(O\)点に戻ってきた光が再度反射される状況は、「入射光固定で鏡が\(\theta\)回転した」場合と同じである。
  • 平面鏡が\(\theta\)回転すると、反射光は\(2\theta\)回転する。

具体的な解説と立式

  1. 最初の反射: 光源\(S\)から出た光は、初期位置にある\(M_1\)で反射し、\(M_2\)に向かいます。
  2. 光の往復: 光は距離\(L\)の\(OM_2\)間を往復します。この間に、鏡\(M_1\)は角度\(\theta\)だけ回転します。
  3. 2回目の反射: 光が点\(O\)に戻ってきたとき、鏡\(M_1\)は\(\theta\)回転した位置にあります。戻ってきた光(入射光)は、もし鏡が回転していなければ\(S\)に戻るはずの光路\(OS\)と逆向きです。この入射光に対して、鏡が\(\theta\)回転しているので、反射光は「もし鏡が回転しなかった場合の反射光路(つまり\(OS\)方向)」から\(2\theta\)だけずれた方向に進みます。

したがって、最終的な光線は、もとの光源方向である\(OS\)から\(2\theta\)だけずれた方向に進みます。

使用した物理公式

  • 平面鏡の回転と反射光の関係(\(\theta\)回転で反射光は\(2\theta\)回転)
計算過程

この設問は、物理法則の適用を問うものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

光が\(M_1\)から\(M_2\)へ行って帰ってくる、ほんのわずかな時間差を考えます。この間に、鏡\(M_1\)が少しだけ(\(\theta\)度)回転してしまいます。光が\(M_2\)から帰ってきて、いざ\(M_1\)で反射されようとするとき、鏡はすでに\(\theta\)度傾いています。以前の問題で学んだように、鏡が\(\theta\)度傾くと、反射する光は\(2\theta\)度ずれるという法則がありました。もし鏡が回転していなければ、光はまっすぐ\(S\)に戻るはずでした。しかし、鏡が\(\theta\)度回転してしまったので、その戻るべき方向から\(2\theta\)度ずれた方向へ進んでいくことになります。

結論と吟味

光が往復する間に鏡が\(\theta\)回転することで、最終的な反射光は、もとの光源方向から\(2\theta\)ずれるという結果が得られました。これは、平面鏡の回転に関する法則を正しく適用した結果であり、妥当です。

解答 (2) OSより\(2\theta\) [°] だけずれる。

問(3)

思考の道筋とポイント
光速\(c\)を、鏡の回転数\(n\)、鏡間の距離\(L\)、観測される光のずれの角度\(\alpha\)を用いて表す問題です。これは、(2)までの考察を定量的に計算する、この問題の核心部分です。

以下の2つの物理的なプロセスを数式で表現し、それらを結びつけることで答えを導きます。

  1. 光が往復する時間: 光が\(OM_2\)間(距離\(L\))を往復するのにかかる時間\(t\)を、光速\(c\)を用いて表します。
  2. 鏡が回転する角度: 鏡\(M_1\)が1秒間に\(n\)回転(角速度)するとき、上記で求めた時間\(t\)の間に回転する角度\(\theta\)を計算します。

この2つの式から得られた時間\(t\)と角度\(\theta\)を、(2)で明らかになった関係式(\(\alpha = 2\theta\))に代入することで、未知数である\(c\)を、与えられた物理量\(n, L, \alpha\)で表すことができます。
この設問における重要なポイント

  • 光の往復時間: \(t = \displaystyle\frac{2L}{c}\)
  • 鏡の回転角: \(\theta = (\text{1秒あたりの回転角}) \times t = 360n \times t\)
  • 反射光のずれの角度: \(\alpha = 2\theta\)

具体的な解説と立式
まず、各関係式を立てます。

光の往復時間 \(t\)
光は速さ\(c\)で、距離\(L\)の区間を往復します。進む距離は\(2L\)なので、かかる時間\(t\)は、
$$ t = \frac{2L}{c} \quad \cdots ① $$

鏡の回転角 \(\theta\)
鏡\(M_1\)は1秒間に\(n\)回転します。1回転は\(360^\circ\)なので、1秒あたりの回転角(角速度)は \(360n\) [°/s] です。
したがって、時間\(t\)の間に鏡が回転する角度\(\theta\)は、
$$ \theta = 360n \times t \quad \cdots ② $$

反射光のずれの角度 \(\alpha\)
(2)の結果より、鏡が\(\theta\)回転すると、反射光は\(2\theta\)ずれます。このずれの角度が\(\alpha\)なので、
$$ \alpha = 2\theta \quad \cdots ③ $$

これらの3つの式を連立させて、\(c\)を求めます。

使用した物理公式

  • 速さ・距離・時間の関係: (距離)=(速さ)×(時間)
  • 等速円運動の回転角: (回転角)=(角速度)×(時間)
  • 平面鏡の回転と反射光の関係
計算過程

まず、式③から \(\theta = \displaystyle\frac{\alpha}{2}\) を得ます。
次に、この\(\theta\)と式①の\(t\)を、式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
\theta &= 360n \times t \\[2.0ex]\frac{\alpha}{2} &= 360n \times \frac{2L}{c}
\end{aligned}
$$
この式を、光速\(c\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha}{2} &= \frac{720nL}{c} \\[2.0ex]\alpha c &= 2 \times 720nL \\[2.0ex]\alpha c &= 1440nL \\[2.0ex]c &= \frac{1440nL}{\alpha}
\end{aligned}
$$
したがって、光速\(c\)が求められました。

計算方法の平易な説明

この問題は3つのステップで解けます。

  • ステップ1:光が鏡の間を往復する時間を求めます。距離は往復で\(2L\)、速さは\(c\)なので、時間は \(t = 2L/c\) です。
  • ステップ2:その間に鏡がどれだけ回転したかを計算します。鏡は1秒で\(n\)回転、つまり\(360n\)度回るので、\(t\)秒間では \(\theta = 360n \times t\) 度回転します。
  • ステップ3:(2)でわかった「光のずれの角度\(\alpha\)は、鏡の回転角\(\theta\)の2倍」という関係(\(\alpha = 2\theta\))を使います。

これらの式を合体させて、\(c\)を求めます。まず \(\theta = \alpha/2\) です。これをステップ2の式に入れると \(\alpha/2 = 360n \times t\)。さらにステップ1の\(t\)を入れると \(\alpha/2 = 360n \times (2L/c)\) となります。あとはこの式を\(c\)について解くだけです。

結論と吟味

光速\(c\)は \(c = \displaystyle\frac{1440nL}{\alpha}\) [m/s] と表されます。この式が示すように、鏡の回転数\(n\)や鏡間の距離\(L\)を大きくするほど、また、観測される角度\(\alpha\)が小さいほど、光速は大きいということになります。実際にフーコーが行った実験では、これらの測定可能な量(\(n, L, \alpha\))から、当時としては非常に高い精度で光速を求めることに成功しました。

解答 (3) \(c = \displaystyle\frac{1440nL}{\alpha}\) [m/s]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 複数法則の統合による物理量の測定:
    • 核心: この問題は、単一の法則を問うものではなく、「光の反射」「等速円運動」「速さの定義」という異なる分野の物理法則を統合し、直接測定が困難な「光速」という物理量を、測定可能な量(回転数、距離、角度)から間接的に導き出す思考プロセスそのものが核心です。
    • 理解のポイント: この問題は、以下の3つの柱から成り立っています。
      1. 光学パート(角度の関係): 球面鏡の性質(光が必ずO点に戻る)と、平面鏡の回転の法則(鏡が\(\theta\)回転すると反射光は\(2\theta\)ずれる \(\rightarrow \alpha=2\theta\))を理解すること。
      2. 力学パート(時間の算出): 光が往復する時間\(t\)の間に、鏡が等速円運動によってどれだけ回転するか(\(\theta = 360nt\))を計算すること。
      3. 運動学パート(光速の定義): 光が往復する時間\(t\)を、光速\(c\)と距離\(L\)で表す(\(t=2L/c\))こと。

      これら3つの独立した関係式を連立させ、答えを導く総合力が問われます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • フィゾーの光速測定: 回転する「歯車」を使って光を断続させ、光が往復する間に歯が隣の隙間に移動する条件から光速を求める問題。本問の「回転鏡」が「回転歯車」に変わっただけで、「光の往復時間」と「物体の回転」を結びつけて光速を求めるという思考の構造は全く同じです。
    • 天文学における応用: 遠方の天体(例:パルサー)から周期的に届く光や電波を利用して、その天体の自転周期や距離を測定する問題。光の伝播時間と天体の回転運動を組み合わせる点で、本問と共通の考え方を用います。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 装置の各部品の役割を分析する: なぜ平面鏡と球面鏡を組み合わせるのか?(→球面鏡は光を必ずO点に戻すため) なぜ平面鏡を回転させるのか?(→光の往復時間を、観測可能な角度のずれに変換するため) このように、装置のセットアップの意図を物理的に解明することが第一歩です。
    2. 時間と角度を結びつける: 「光が往復する時間\(t\)」と「その間に鏡が回転する角度\(\theta\)」が、この問題の2大キープレイヤーです。この2つを結びつける関係式を立てることが、問題を解く上での中心的な作業になります。
    3. 観測量と物理現象を結びつける: 最終的に観測されるのは「角度のずれ\(\alpha\)」です。この\(\alpha\)が、物理現象(鏡の回転角\(\theta\))とどう関係しているのか(\(\alpha=2\theta\))を見抜くことが、全体の論理を完成させるための最後のピースとなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 反射光のずれの角度の誤り(\(\alpha = \theta\)としてしまう):
    • 誤解: (2)や(3)で、鏡の回転角\(\theta\)がそのまま反射光のずれの角度\(\alpha\)になると考えてしまう。
    • 対策: 「平面鏡の回転は、反射光に2倍効く」という法則を徹底する。これは、法線の回転によって入射角と反射角の両方が\(\theta\)ずつ変化するために起こる現象であることを理由と共に理解しておくことが重要です。
  • 光の往復距離の誤り(距離を\(L\)としてしまう):
    • 誤解: 光の往復時間を計算する際に、片道の距離\(L\)を使って \(t=L/c\) と間違える。
    • 対策: 問題文の「往復し」という記述に注意を払う。光は\(O \rightarrow M_2 \rightarrow O\)という経路をたどるため、移動距離は\(2L\)であることを常に意識する。
  • 単位の混同([°]と[rad]):
    • 誤解: 回転数を\(n\) [回/s] としたとき、角速度を\(2\pi n\) [rad/s]と計算し、度数法で与えられた\(\alpha\) [°]と単位が合わなくなり混乱する。
    • 対策: 問題で使われている角度の単位系を確認し、それに統一して計算を進める。本問では1回転を\(360^\circ\)として、すべて度数法で扱っているため、最後まで度数法で計算します。
  • 最終的な式の変形ミス:
    • 誤解: \(\frac{\alpha}{2} = 360n \times \frac{2L}{c}\) という関係式を立てた後、\(c\)について解く際に移項や分数の計算を間違える。
    • 対策: 複雑な文字式を解く際は、焦らず一段階ずつ変形する。まず両辺に\(c\)を掛けて分母を払い、次に\(\alpha\)で割るなど、確実な手順を踏むことで計算ミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(\alpha = 2\theta\) (平面鏡の回転):
    • 選定理由: この実験の根幹は、光の往復時間という「時間」を、観測しやすい「角度のずれ」に変換することです。この変換の役割を担うのが、平面鏡の回転の法則です。「鏡の回転角\(\theta\)」という直接見えない現象と、「反射光のずれ\(\alpha\)」という観測可能な結果を結びつけるために必須の公式です。
    • 適用根拠: 光が\(M_2\)から戻り\(M_1\)で再度反射される瞬間を考えます。光が往復する間に鏡が\(\theta\)回転したため、この状況は「入射光線の向きは固定で、鏡が\(\theta\)回転した」と見なせます。鏡が\(\theta\)回転すると法線も\(\theta\)回転し、入射角が\(\theta\)変化します。反射の法則により反射角も\(\theta\)変化するため、合計で反射光は\(2\theta\)回転します。この物理現象と観測量\(\alpha\)を直接結びつけるのがこの式です。
  • \(\theta = 360nt\) (等速円運動):
    • 選定理由: 「鏡の回転角\(\theta\)」が、光の往復時間\(t\)の間に生じることを数式で表現する必要があります。鏡の運動は角速度が一定の等速円運動なので、この公式が選ばれます。
    • 適用根拠: 鏡\(M_1\)は1秒間に\(n\)回転、すなわち\(360n\) [°/s] という一定の角速度で回転しています。等速円運動(等角速度運動)において、回転角は「角速度 × 時間」で求められます。光が往復する時間\(t\)の間に鏡が回転する角度\(\theta\)を計算するために、この関係を適用します。
  • \(t = 2L/c\) (速さの定義):
    • 選定理由: 最終的な目的は光速\(c\)を求めることです。したがって、\(c\)を含む最も基本的な関係式である速さの定義式は、議論の出発点として不可欠です。この式によって、測定可能な距離\(L\)と、求めるべき光速\(c\)が関係づけられます。
    • 適用根拠: 光は一定の速さ\(c\)で進むと仮定されています。光が\(O\)点と\(M_2\)の間を往復する距離は\(2L\)です。運動学の最も基本的な関係式「時間 = 距離 ÷ 速さ」をこの光の運動に適用することで、光の往復時間\(t\)を\(c\)と\(L\)で表現できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 中間変数を明確にする: この問題では、\(t\)(往復時間)と\(\theta\)(鏡の回転角)が、最終的な答えには現れない「中間変数」です。計算の目標は、これらの中間変数を消去し、\(c\)を\(n, L, \alpha\)という測定可能な量だけで表すことだと意識すると、式変形の方針が立てやすくなります。
  • 代入は最後に: まずは\(\alpha=2\theta\), \(\theta=360nt\), \(t=2L/c\)という3つの関係式を並べます。次に、これらの式を文字のまま代入していき、最後に一つの式にまとめてから\(c\)について解くと、計算の見通しが良くなり、ミスが減ります。
    1. \(\alpha = 2\theta\) に \(\theta=360nt\) を代入 → \(\alpha = 2(360nt) = 720nt\)
    2. さらに \(t=2L/c\) を代入 → \(\alpha = 720n(\frac{2L}{c}) = \frac{1440nL}{c}\)
    3. 最後に\(c\)について解く → \(c\alpha = 1440nL\) → \(c = \frac{1440nL}{\alpha}\)
  • 単位による検算: 最終的に得られた式 \(c = \frac{1440nL}{\alpha}\) の単位を考えます。分子の\(nL\)は [回/s] \(\times\) [m] = [m/s] の次元を持ち、分母の\(\alpha\)と係数\(1440\)は角度に関連する無次元量と見なせます。したがって、右辺全体が[m/s]の次元を持つことが確認でき、式の形がもっともらしいと判断できます。

277 水中の光源が見えない円板の半径

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の全反射と臨界角」です。水中の光源から出た光が、ある条件下で空気中に出てこられなくなる「全反射」という現象を利用して、光源を隠すために必要な円板の大きさを求める問題です。

  1. 光の屈折の法則: 異なる媒質の境界面で光が進む向きを変える現象で、その関係は \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) で表されます。
  2. 全反射と臨界角: 屈折率が大きい媒質から小さい媒質へ光が進む際に、入射角がある一定の角度(臨界角)を超えると、光は屈折せずにすべて反射されます。この現象を全反射といいます。
  3. 臨界角の条件: 屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角が臨界角です。このとき、光は媒質の境界面に沿って進みます。
  4. 三平方の定理と三角比: 図形的な関係から、臨界角の三角比(この場合は\(\sin\))を、光源の深さと円板の半径を用いて表すために使用します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、光が空気中へ出られなくなるギリギリの条件、すなわち屈折角が\(90^\circ\)になる条件を考え、このときの入射角(臨界角)を屈折の法則から求めます。
  2. 次に、光源、水面、円板の縁が作る直角三角形に着目し、臨界角のサイン(\(\sin\))を、円板の半径\(R\)を用いて幾何学的に表します。
  3. これら2つの方法で表した臨界角のサインが等しいことから方程式を立て、円板の半径\(R\)を計算します。

(設問)

思考の道筋とポイント
水中の光源\(S\)が空気中から見えなくなるための、最小の円板の半径を求める問題です。
「光源が見えない」という条件は、物理的に「光源\(S\)から出た光が、円板で覆われていない水面から空気中へ出てこない」と解釈できます。

水から空気のように、屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ光が進むとき、入射角を大きくしていくと、ある角度で屈折角が\(90^\circ\)になります。このときの入射角を臨界角と呼びます。入射角が臨界角より大きいと、光は空気中に出ることができず、すべて水面で反射されます。この現象が全反射です。

したがって、円板の外側の水面すべてで全反射が起これば、光源は空気中から見えなくなります。円板の半径が「最小」となるのは、円板の縁(ふち)に達した光が、ちょうど臨界角で水面に入射する(屈折角が\(90^\circ\)になる)ときです。この条件をもとに、物理法則(屈折の法則)と幾何学(三角比)の両面からアプローチして方程式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 全反射は、屈折率の大きい媒質(水)から小さい媒質(空気)へ光が進むときにのみ起こる。
  • 光源が見えなくなる最小の円板は、その縁で光が臨界角で入射するように置けばよい。
  • 臨界角\(i_0\)は、屈折角が\(90^\circ\)になるときの入射角である。
  • 屈折の法則: \(n_{\text{水}} \sin i = n_{\text{空気}} \sin r\)
  • 臨界角の条件式: \(n_{\text{水}} \sin i_0 = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ\)

具体的な解説と立式
光源を隠すための円板の最小半径を\(R\) [m]、光源の深さを\(h=2.0\) [m]とします。水の屈折率を\(n_{\text{水}} = 4/3\)、空気の屈折率を\(n_{\text{空気}} = 1.0\)とします。

1. 屈折の法則から臨界角\(i_0\)の\(\sin\)を求める
円板の縁で屈折した光が水面に沿って進む(屈折角\(r=90^\circ\))とき、その入射角が臨界角\(i_0\)となります。水から空気へ進む光に対して屈折の法則を適用すると、
$$ n_{\text{水}} \sin i_0 = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ \quad \cdots ① $$

2. 幾何学的関係から臨界角\(i_0\)の\(\sin\)を求める
光源\(S\)、円板の中心の真下の点、円板の縁の点を結ぶと、直角三角形ができます。この三角形の高さは\(h\)、底辺は\(R\)です。三平方の定理より、斜辺の長さは \(\sqrt{h^2 + R^2}\) となります。
図より、入射角\(i_0\)に対するサインは、
$$ \sin i_0 = \frac{(\text{底辺})}{(\text{斜辺})} = \frac{R}{\sqrt{h^2 + R^2}} \quad \cdots ② $$

式①と②から\(\sin i_0\)を消去することで、\(R\)に関する方程式を立てることができます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
  • 全反射と臨界角: \(n_1 \sin i_0 = n_2 \sin 90^\circ\)
  • 三平方の定理
計算過程

まず、式①に数値を代入して \(\sin i_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{4}{3} \sin i_0 &= 1.0 \times \sin 90^\circ \\[2.0ex]\frac{4}{3} \sin i_0 &= 1.0 \times 1 \\[2.0ex]\sin i_0 &= \frac{3}{4}
\end{aligned}
$$
次に、この結果と式②(\(h=2.0\) [m] を代入)を等しいとおきます。
$$ \frac{R}{\sqrt{2.0^2 + R^2}} = \frac{3}{4} $$
この方程式を\(R\)について解きます。両辺を2乗すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{R^2}{4.0 + R^2} &= \left(\frac{3}{4}\right)^2 \\[2.0ex]\frac{R^2}{4.0 + R^2} &= \frac{9}{16}
\end{aligned}
$$
分母を払って整理します。
$$
\begin{aligned}
16 R^2 &= 9 (4.0 + R^2) \\[2.0ex]16 R^2 &= 36 + 9 R^2 \\[2.0ex]16 R^2 – 9 R^2 &= 36 \\[2.0ex]7 R^2 &= 36 \\[2.0ex]R^2 &= \frac{36}{7}
\end{aligned}
$$
\(R > 0\) なので、
$$ R = \sqrt{\frac{36}{7}} = \frac{6}{\sqrt{7}} $$
分母を有理化し、与えられた近似値 \(\sqrt{7} \approx 2.65\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{6\sqrt{7}}{7} \\[2.0ex]&\approx \frac{6 \times 2.65}{7} \\[2.0ex]&= \frac{15.9}{7} \\[2.0ex]&\approx 2.27…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(R \approx 2.3\) [m] となります。

計算方法の平易な説明

水の中から空気を見上げると、ある角度より外側は水面が鏡のようになって向こう側が見えなくなります。この現象を「全反射」といいます。この問題は、その「見えなくなるギリギリの角度(臨界角)」の方向に円板の縁が来るようにすれば、光源を隠せる、という考え方で解きます。まず、物理の法則(屈折の法則)を使って、臨界角のときのsinの値を計算します。計算すると \(\sin i_0 = 3/4\) となります。次に、図を見て、円板の半径\(R\)と光源の深さ\(2.0\)mから、同じ\(\sin i_0\)を数式で表します。これは単なる三角形の辺の比の問題です。最後に、この2つの式が同じになるはずなので、イコールで結んで方程式を解けば、半径\(R\)が求まります。

結論と吟味

円板の最小半径は約\(2.3\) mです。光源の深さが\(2.0\) mであるのに対し、それより少し大きい半径の円板が必要であるという結果は、光が斜めに進むことを考えれば直感的に妥当です。計算過程も物理法則と数学的な関係に沿っており、適切であると判断できます。

解答 2.3 [m]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 全反射と臨界角の概念:
    • 核心: この問題の根底にあるのは「光の屈折の法則」ですが、問題を解くための直接的な鍵は「全反射」という現象、特にその現象が起こり始めるギリギリの条件である「臨界角」の概念を理解し、使いこなすことです。
    • 理解のポイント:
      • なぜ全反射か?: 「光源が見えないようにする」という条件は、物理的に「光源から出た光が空気中に漏れ出ない」ことを意味します。これを実現する現象が全反射です。
      • なぜ臨界角か?: 「最小の半径の円板」を求めるには、最も効率よく光を遮る必要があります。それは、円板の縁(ふち)で、光が空気中に出るか出ないかの境界線、すなわち屈折角が\(90^\circ\)になる状態(臨界角での入射)を作ることに対応します。円板がこれより少しでも小さければ光は漏れ、大きすぎれば最小ではなくなります。
      • 2つのアプローチ: 臨界角\(i_0\)の\(\sin\)の値を、①物理法則(屈折の法則)②幾何学(図形の辺の比)の2つの異なる方法で表現し、それらを等しいとおいて方程式を立てるのが、この種の問題の王道パターンです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光ファイバー: 光ファイバーの中心部(コア)から外側(クラッド)へ光が進む際に、全反射を繰り返しながら光が伝播する原理を問う問題。コアの屈折率を大きく、クラッドの屈折率を小さくすることで、臨界角を小さくし、効率よく光を閉じ込めます。
    • 水中の魚から見た景色: 水中にいる魚が水面を見上げたとき、水面より上(空中)の景色が見える範囲(「スネルの窓」と呼ばれる円形の領域)を問う問題。この円の外側は、水底の景色が全反射によって映って見えます。この円の縁は、本問と同様に臨界角によって決まります。
    • プリズムによる光路制御: 双眼鏡などに使われる直角プリズムは、ガラスから空気への界面で全反射を利用して、光の向きを\(90^\circ\)や\(180^\circ\)変えます。鏡のように反射面へのめっきが不要で、反射率がほぼ100%である利点があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 媒質の屈折率の大小を確認: まず、光がどちらの媒質からどちらの媒質へ進むのか、そしてどちらの屈折率が大きいかを確認します。全反射は必ず「屈折率 大 → 小」のときにしか起こりません。
    2. 「見えない」「光が漏れない」「伝播する」などのキーワードに注目: これらの言葉は、全反射が関わっていることを強く示唆します。
    3. 臨界角を2つの方法で表現する:
      • 物理的アプローチ: 屈折の法則 \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) に、臨界角の条件(\(i=i_0, r=90^\circ\))を代入し、\(\sin i_0 = n_2/n_1\) を導きます。
      • 幾何学的アプローチ: 問題の図から直角三角形を見つけ出し、三平方の定理や三角比の定義を用いて、\(\sin i_0\) を長さの比で表します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 屈折率の代入ミス:
    • 誤解: 屈折の法則 \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) において、\(n_1\)(入射側)と\(n_2\)(屈折側)を逆にしてしまう。
    • 対策: 光が「水→空気」と進むことを確認し、式の左辺(入射側)に水の屈折率、右辺(屈折側)に空気の屈折率を代入する、というように光の経路と式の対応を常に意識する。
  • 三角比の定義の混同:
    • 誤解: 図から\(\sin i_0\)を読み取る際に、\(\frac{(\text{高さ})}{(\text{斜辺})}\)(\(\cos\))や\(\frac{(\text{底辺})}{(\text{高さ})}\)(\(\tan\))と間違えてしまう。
    • 対策: \(\sin\)は「斜辺分の高さ(対辺)」であると、定義を再確認する。特に、図中のどの角が入射角\(i_0\)に対応するのか(法線とのなす角)を正確に把握することが重要です。
  • 方程式の計算ミス:
    • 誤解: \(\frac{R}{\sqrt{h^2 + R^2}} = \frac{3}{4}\) のような平方根を含む方程式を解く際に、両辺を2乗した後の計算でミスをする。
    • 対策: 両辺を2乗すると \(\frac{R^2}{h^2 + R^2} = \frac{9}{16}\) となり、分母を払うと \(16R^2 = 9(h^2+R^2)\) となります。この括弧を展開する際の分配法則 \(9h^2 + 9R^2\) を間違えないように、慎重に計算を進める。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 (\(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)):
    • 選定理由: この問題は、水と空気という異なる媒質の境界面での光の振る舞いを扱っているため、その現象を記述する最も基本的な法則である屈折の法則が議論の出発点となります。
    • 適用根拠: 臨界角は、屈折という現象の特殊なケース(屈折角が\(90^\circ\))として定義されます。したがって、臨界角の値を物理的に決定するためには、その元となる屈折の法則に \(r=90^\circ\) という条件を適用する必要があります。これにより、\(\sin i_0 = n_2/n_1\) という、臨界角と屈折率を結びつける重要な関係式が導かれます。
  • 三角比の定義と三平方の定理:
    • 選定理由: 物理法則から導かれた臨界角の条件(\(\sin i_0\)の値)と、問題で求めたい幾何学的な量(円板の半径\(R\))とを結びつけるために必要となります。
    • 適用根拠: 問題のセットアップ(光源の深さ\(h\)、円板の半径\(R\))は、直角三角形の辺の長さを構成しています。一方、臨界角\(i_0\)は、その直角三角形の内角の一つです。三角比の定義は、三角形の「角」と「辺の比」とを相互に変換するための数学的な道具であり、これを用いることで、角度の情報(\(\sin i_0\))を辺の長さ(\(R, h\))に関する式に変換できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 方程式を立ててから数値を代入する: まずは \(h\) や \(n_{\text{水}}\) などの文字を使って \(R\) を求める式を導き、最後に具体的な数値を代入する方が、計算の見通しが良くなり、ミスが減ります。例えば、\(R = \frac{h \cdot n_{\text{空気}}}{\sqrt{n_{\text{水}}^2 – n_{\text{空気}}^2}}\) のような一般式を導いてから、\(h=2.0, n_{\text{水}}=4/3, n_{\text{空気}}=1.0\) を代入します。
  • 分数の扱いに注意: 屈折率が \(4/3\) のように分数で与えられている場合、計算途中で小数に直さず、分数のまま計算を進める方が正確です。特に、2乗の計算では \((4/3)^2 = 16/9\) となり、計算が楽になります。
  • 平方根の計算: \(R^2 = 36/7\) から \(R = 6/\sqrt{7}\) となります。ここで慌てて \(\sqrt{7}\) の近似値を代入するのではなく、まず分母を有理化して \(R = 6\sqrt{7}/7\) の形にしてから、最後に近似値を代入すると、計算が整理されます。
  • 有効数字の確認: 問題文で与えられている数値(2.0m, 1.0, 4/3, 2.65)の有効数字を確認し、最終的な答えを適切な桁数に丸めることを忘れないようにしましょう。この問題では、2.0mが2桁なので、答えも2桁(2.3m)でまとめるのが適切です。

278 全反射

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「多層媒質における光の屈折と全反射」です。光が平行な境界面を次々と通過していく際の屈折の法則の適用方法と、全反射が起こるための条件(臨界角)についての理解が問われます。

  1. 屈折の法則(角度による表現): 2つの媒質の境界面において、入射側の屈折率を\(n_1\)、入射角を\(i\)、屈折側の屈折率を\(n_2\)、屈折角を\(r\)とすると、\(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) が成り立ちます。
  2. 屈折の法則(光速による表現): 入射側の光速を\(v_1\)、屈折側の光速を\(v_2\)とすると、\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) が成り立ちます。
  3. 相対屈折率: 媒質1に対する媒質2の屈折率\(n_{12}\)は、\(\displaystyle n_{12} = \frac{n_2}{n_1} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin i}{\sin r}\) という関係で結ばれています。
  4. 全反射と臨界角: 屈折率が大きい媒質から小さい媒質へ光が進むとき、屈折角が\(90^\circ\)になる入射角を臨界角と呼びます。入射角が臨界角より大きいと、光は屈折せずにすべて反射(全反射)します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、物質Aと物質Bの境界面に屈折の法則を適用し、相対屈折率を求めます。
  2. (2)では、物質Bと物質Cの境界面に、光速を用いた屈折の法則を適用します。
  3. (3)では、物質Bから真空への境界面で、臨界角の条件(屈折角が\(90^\circ\))を屈折の法則に適用します。
  4. (4)では、各選択肢の動作原理を考え、全反射を応用しているものを特定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
物質Aに対する物質Bの屈折率、すなわち相対屈折率\(n_{AB}\)を求める問題です。光が物質Aから物質Bへ入射する際の入射角\(\theta_A\)と屈折角\(\theta_B\)が与えられているため、屈折の法則の定義式を直接適用します。
この設問における重要なポイント

  • 媒質1に対する媒質2の相対屈折率\(n_{12}\)は、\(\displaystyle n_{12} = \frac{\sin(\text{媒質1での角度})}{\sin(\text{媒質2での角度})}\) で定義される。
  • この問題では、媒質1が物質A、媒質2が物質Bに対応する。

具体的な解説と立式
物質Aから物質Bへの屈折に注目します。入射側(物質A)の角度は\(\theta_A\)、屈折側(物質B)の角度は\(\theta_B\)です。
物質Aに対する物質Bの相対屈折率\(n_{AB}\)は、屈折の法則より、
$$ n_{AB} = \frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B} $$
と表されます。

使用した物理公式

  • 相対屈折率の定義: \(\displaystyle n_{12} = \frac{\sin i}{\sin r}\)
計算過程

この設問は、法則を数式で表現するものであり、具体的な数値計算は伴いません。

計算方法の平易な説明

物質Aから物質Bへ光が入るときの「Aに対するBの屈折率」は、定義そのものです。「Aでの角度のサイン」を「Bでの角度のサイン」で割った値が答えになります。

結論と吟味

物質Aに対する物質Bの屈折率は \(\displaystyle\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B}\) となります。これは屈折の法則の基本的な定義式であり、正しく適用できています。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
物質Bの中の光速\(v_B\)を、物質Cの中の光速\(v_C\)を用いて表す問題です。屈折の法則には、屈折率だけでなく光速を用いた表現形式もあります。この問題では光速が問われているため、その形式を利用するのが最も直接的です。
この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則は、光速を用いて \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) とも表せる。
  • この問題では、物質Bと物質Cの境界面にこの法則を適用する。
  • 境界面が平行なので、物質Bから物質Cへの入射角は、物質Aから物質Bへの屈折角\(\theta_B\)に等しい(錯角の関係)。

具体的な解説と立式
物質Bと物質Cの境界面での屈折を考えます。
境界面は平行なので、幾何学的な錯角の関係から、物質Bから物質Cへの入射角は\(\theta_B\)となります。屈折角は\(\theta_C\)です。
入射側が物質B、屈折側が物質Cなので、光速を用いた屈折の法則を適用すると、
$$ \frac{\sin\theta_B}{\sin\theta_C} = \frac{v_B}{v_C} $$
となります。この式を\(v_B\)について解きます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則(光速による表現): \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta_B}{\sin\theta_C} &= \frac{v_B}{v_C} \\[2.0ex]v_B &= \frac{\sin\theta_B}{\sin\theta_C} v_C
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

光が物質を通過するときの速さは、角度のサインの比と関係があります。「Bでの角度のサイン」を「Cでの角度のサイン」で割ったものに、「Cでの光速」を掛けると、「Bでの光速」が求められます。これは屈折の法則のもう一つの顔です。

結論と吟味

物質Bの中の光速\(v_B\)は \(\displaystyle\frac{\sin\theta_B}{\sin\theta_C} v_C\) と表されます。光速を用いた屈折の法則を正しく適用し、式変形も適切に行えています。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{\sin\theta_B}{\sin\theta_C} v_C\)

問(3)

思考の道筋とポイント
物質Bから真空へ光が進むときの臨界角\(\theta\)と、真空に対する物質Bの屈折率\(n_B\)との関係を求める問題です。
「臨界角」というキーワードが出てきたら、「屈折角が\(90^\circ\)になるときの入射角」という定義を思い出します。そして、屈折の法則にこの条件を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 全反射は、屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むときに起こる。
  • 臨界角\(\theta\)は、屈折角が\(90^\circ\)になるときの入射角である。
  • 真空の屈折率は1である。

具体的な解説と立式
物質Bから真空へ光が進む状況を考えます。入射側は物質B、屈折側は真空です。
入射角が臨界角\(\theta\)のとき、屈折角は\(90^\circ\)になります。
物質Bの屈折率を\(n_B\)、真空の屈折率を1として、屈折の法則を立てると、
$$ n_B \sin\theta = 1 \times \sin 90^\circ $$
となります。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
  • 臨界角の条件: \(r = 90^\circ\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
n_B \sin\theta &= 1 \times \sin 90^\circ \\[2.0ex]n_B \sin\theta &= 1 \times 1 \\[2.0ex]n_B \sin\theta &= 1
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「臨界角」とは、光が空気中(この問題では真空)に出られるかどうかのギリギリの角度のことです。このときの角度を\(\theta\)とすると、「物質Bの屈折率\(n_B\)」と「\(\sin\theta\)」を掛け算したものが、ちょうど「1」になる、という関係式が成り立ちます。これは屈折の法則から導かれる重要な関係です。

結論と吟味

臨界角\(\theta\)と物質Bの屈折率\(n_B\)の関係は \(n_B \sin\theta = 1\) となります。これは臨界角の定義式そのものであり、正しく導出できています。

解答 (3) \(n_B \sin\theta = 1\)

問(4)

思考の道筋とポイント
選択肢の中から、全反射を主な原理として利用しているものを選ぶ知識問題です。各選択肢がどのような物理現象を利用しているかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 全反射の応用例を知っているかどうかが問われる。
  • 光ファイバーは、コアとクラッドという屈折率の異なる2層構造を持ち、コア内部で全反射を繰り返すことで光を遠くまで伝える。

具体的な解説と立式
各選択肢の原理を検討します。

  • ① X線撮影: X線が物質を透過する際の吸収率の違いを利用して、内部を画像化します。屈折や反射は主な原理ではありません。
  • ② 送電: 電気エネルギーを遠隔地に送る技術であり、光とは直接関係ありません。
  • ③ プリズム分光器: 光がプリズムを通過する際に、色(波長)によって屈折率が異なる「分散」という現象を利用して、光をスペクトルに分けます。
  • ④ 太陽電池: 光電効果を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに変換します。
  • ⑤ 光ファイバー: 屈折率の大きい中心部(コア)を、屈折率の小さい周辺部(クラッド)で覆った構造をしています。コアからクラッドへ向かう光が、境界面で全反射を繰り返すことで、光信号を効率よく遠くまで伝送します。
  • ⑥ 顕微鏡: 凸レンズを組み合わせて、微小な物体を拡大して観察します。レンズによる屈折が主な原理です。

以上の検討から、全反射を積極的に利用しているのは光ファイバーです。

使用した物理公式

この設問は知識を問うものであり、数式は使用しません。

計算過程

計算は不要です。

計算方法の平易な説明

全反射は、光を閉じ込めて特定の経路に沿って導くのに非常に便利な性質です。この性質をうまく使っているのが「光ファイバー」です。光ファイバーケーブルの中では、光が内壁で何度も全反射を繰り返しながら、まるでトンネルの中を進むようにして、情報を遠くまで運んでいます。

結論と吟味

選択肢の中で、全反射を主要な動作原理としているのは光ファイバーです。他の選択肢は、それぞれ異なる物理原理に基づいています。したがって、⑤が正解であると判断できます。

解答 (4)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 屈折の法則の多様な表現:
    • 核心: この問題は、光の屈折という現象を、状況に応じて複数の視点から捉え、適切な数式で表現する能力を試しています。核心となるのは、単一の式を覚えるだけでなく、「屈折の法則」が持つ以下の3つの側面を自在に使い分けることです。
    • 理解のポイント:
      1. 相対屈折率による表現 (問1): \(\displaystyle n_{12} = \frac{\sin i}{\sin r}\)。2つの媒質間の関係性を「相対屈折率」という一つの量で表す視点。
      2. 光速による表現 (問2): \(\displaystyle \frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)。屈折が「媒質中での光速の変化」に起因するという物理的本質に立ち返った視点。
      3. 絶対屈折率による表現 (問3): \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)。真空(または空気)を基準とした「絶対屈折率」を用いて、異なる媒質間の関係を普遍的な形で記述する視点。特に、全反射や臨界角を扱う際に最も強力です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多層膜の屈折: ガラスの上に薄膜をコーティングした場合など、3つ以上の媒質が重なっている状況での光の経路を追跡する問題。各境界面で屈折の法則を繰り返し適用します。特に、境界面が平行な場合、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2 = n_3 \sin\theta_3 = \dots\) という連続した関係が成り立つことを利用すると、途中の媒質を無視して最初の媒質と最後の媒質の関係だけで議論できる場合があります。
    • 見かけの深さ: 水中の物体が実際より浅く見える現象を説明する問題。屈折の法則を用いて、見かけの深さが実際の深さをその媒質の屈折率で割った値になることを導出します。
    • 光ファイバーの入射角: 光ファイバーの端面から、どのような角度で光を入射させれば、内部で全反射が起こり光が伝播できるか、その条件(開口数)を求める問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 問われている量を確認する: 問題が「屈折率」を問うているのか、「光速」を問うているのか、「角度」を問うているのかを最初に確認します。それに応じて、屈折の法則のどの表現形式を使うかを決定します。
    2. 境界面の形状を確認する: 境界面が「平行」か「平行でない(プリズムなど)」かを確認します。平行であれば、錯角の関係が利用でき、角度の追跡が容易になります。
    3. 「臨界角」「全反射」のキーワード: これらの言葉が出てきたら、即座に「屈折角\(r=90^\circ\)」「屈折率 大→小」という2つの条件を連想します。そして、絶対屈折率を用いた屈折の法則 \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) を適用するのが定石です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 相対屈折率と絶対屈折率の混同:
    • 誤解: (1)で \(n_{AB} = \frac{n_B}{n_A}\) とすべきところを、単に \(\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B}\) と答えるだけで、その意味を理解していない。
    • 対策: 相対屈折率\(n_{AB}\)は、あくまで「Aに対するBの」屈折の度合いを示す比率であり、その定義が \(\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B}\) であり、かつ絶対屈折率の比 \(\frac{n_B}{n_A}\) に等しい、という複数の関係性をセットで理解しておくことが重要です。
  • 光速と屈折率の関係の逆転:
    • 誤解: 屈折率が大きいほど光速も速い、と勘違いしてしまう。
    • 対策: 屈折率\(n\)の定義 \(n=c/v\)(\(c\)は真空中の光速)に立ち返る。屈折率\(n\)は「光の進みにくさ」を表す指標であり、\(n\)が大きいほど\(v\)は小さくなる、という反比例の関係を明確に意識する。
  • 錯角の適用の見落とし:
    • 誤解: (2)で、物質BからCへの入射角が何か分からず、手が止まってしまう。
    • 対策: 図をよく見て、境界面が平行であることを確認する。平行な2直線の間に引かれた直線では、錯角は等しくなります。この幾何学的な性質を利用して、BからCへの入射角が\(\theta_B\)であることを見抜くことが必要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 (\(n_{12} = \sin i / \sin r\), \(v_1/v_2 = \sin i / \sin r\), \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)):
    • 選定理由: (1)では相対屈折率そのものが問われているため、その定義式を選択。(2)では光速が問われているため、光速を含む形式を選択。(3)では絶対屈折率と臨界角の関係が問われているため、絶対屈折率を用いた形式を選択。このように、設問の要求に最も直接的に応える形式をその都度選んでいます。
    • 適用根拠: これら3つの式は、すべて同じ「屈折の法則」という物理現象を異なる側面から表現したものであり、数学的に互いに等価です。
      • \(n_{12} = n_2/n_1\) と \(n=c/v\) の定義から、\(n_{12} = (c/v_2)/(c/v_1) = v_1/v_2\) が導かれます。
      • \(n_{12} = \sin i / \sin r\) と \(n_{12} = n_2/n_1\) から、\(n_2/n_1 = \sin i / \sin r\) となり、これを変形して \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) が導かれます。

      このように、全ての式は論理的に繋がっており、状況に応じて最も便利な形を使い分けることが合理的です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題は文字式での表現が中心であり、数値計算ミスは発生しませんが、「論理的なミス」を防ぐためのテクニックが重要です。
  • 添え字を正確に書く: \(n_A, n_B, v_A, v_B, \theta_A, \theta_B\) のように、どの物質における物理量なのかを添え字で明確に区別して書く癖をつけましょう。これにより、どの境界面にどの法則を適用しているのかが明確になり、混乱を防げます。
  • 光の経路を図で追う: 式を立てる前に、必ず問題の図で光の経路を指でなぞり、「ここが入射側、ここが屈折側」と確認する。特に、(2)のように複数の境界面がある場合は、入射角と屈折角が次の境界面でどうなるかを一つずつ丁寧に追跡することが重要です。
  • 定義に立ち返る: 「臨界角とは?」「相対屈折率とは?」と問われたときに、その定義を自分の言葉で正確に説明できるかを確認する。定義の理解が曖昧だと、応用問題でどの公式を使えばよいか判断できなくなります。

279 2枚のガラス板による光の屈折

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平行な多層媒質における光の屈折」です。光が、平行な境界面を持つ複数の媒質を通過する際に、最初の入射角と最後の屈折角の間にどのような関係が成り立つかを証明する問題です。

  1. 屈折の法則: 異なる媒質の境界面で光が進む向きを変える現象で、その関係は \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) で表されます。ここで \(n_1, n_2\) は各媒質の絶対屈折率、\(i, r\) は入射角と屈折角です。
  2. 平行な境界面と錯角: 境界面が互いに平行である場合、ある境界面での屈折角は、次の境界面での入射角と幾何学的に等しくなります(錯角の関係)。
  3. 法則の連続適用: 屈折の法則は、各境界面で独立に成り立ちます。複数の境界面を通過する場合、それぞれの界面で法則を適用し、それらを組み合わせることで全体の振る舞いを理解できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 光が通過する3つの媒質(空気、ガラス板A、ガラス板B)と2つの境界面(空気-A、A-B)に注目します。
  2. それぞれの境界面で屈折の法則を立式します。
  3. 境界面が平行であることから、幾何学的な角度の関係(錯角)を利用して、各界面での角度を結びつけます。
  4. 立式した複数の屈折の法則を連立させ、中間の角度を消去することで、最初の入射角\(i\)と最後の屈折角\(r\)の関係を導きます。

思考の道筋とポイント
空気中から入射した光が、2枚の異なるガラス板A、Bを通り抜けて、再び空気中に出ていくときの光の経路を考える問題です。最終的に、最初の入射角\(i\)と最後の屈折角\(r\)が等しくなること(\(i=r\))を証明します。

この証明の鍵は、光が通過する各境界面で「屈折の法則」を繰り返し適用することです。

  1. 空気 → ガラスA の境界面
  2. ガラスA → ガラスB の境界面
  3. ガラスB → 空気 の境界面

それぞれの境界面で屈折の法則を立てます。ここで重要なのは、ガラス板の境界面がすべて「平行」であるという点です。これにより、ある面での屈折角が、次の面での入射角と「錯角」の関係で等しくなります。この幾何学的な関係を利用して、3つの式をつなげることができます。

最終的に、途中のガラス板AとBの中での角度や屈折率がすべて相殺され、最初の空気中の角度\(i\)と、最後の空気中の角度\(r\)の関係だけが残ります。これにより、\(i=r\)が示されます。この結果は、途中の媒質が何であれ、最初と最後の媒質が同じ(この場合はどちらも空気)で、境界面が平行ならば、入射光線と射出光線は平行になるという普遍的な性質を示しています。
この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
  • 境界面が平行であるため、錯角が等しい。
  • 各境界面で屈折の法則を適用し、それらを連立させる。

具体的な解説と立式
光の経路に沿って、各境界面で屈折の法則を適用します。

  • 空気の屈折率を \(n_0\)
  • ガラス板Aの屈折率を \(n_A\)
  • ガラス板Bの屈折率を \(n_B\)

とします。また、図には描かれていませんが、AからBへ入るときの屈折角を\(\alpha\)とします。

1. 空気 → ガラスA の境界面
入射角は\(i\)、屈折角は\(\alpha\)です。屈折の法則より、
$$ n_0 \sin i = n_A \sin\alpha \quad \cdots ① $$

2. ガラスA → ガラスB の境界面
境界面が平行なので、入射角は前の屈折角と同じ\(\alpha\)になります。Bから空気中に出るときの入射角(図にはない)を\(\beta\)とすると、屈折角は\(\beta\)です。屈折の法則より、
$$ n_A \sin\alpha = n_B \sin\beta \quad \cdots ② $$

3. ガラスB → 空気 の境界面
境界面が平行なので、入射角は前の屈折角と同じ\(\beta\)になります。最後の屈折角は\(r\)です。屈折の法則より、
$$ n_B \sin\beta = n_0 \sin r \quad \cdots ③ $$

これらの3つの式から、以下の連続した等式が成り立ちます。
$$ n_0 \sin i = n_A \sin\alpha = n_B \sin\beta = n_0 \sin r $$
この等式の最初と最後を取り出すと、
$$ n_0 \sin i = n_0 \sin r $$
という関係が得られます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を整理します。
$$ n_0 \sin i = n_0 \sin r $$
両辺を\(n_0\)で割ると、
$$ \sin i = \sin r $$
ここで、入射角\(i\)と屈折角\(r\)は、その定義から\(0^\circ < i < 90^\circ\)、\(0^\circ < r < 90^\circ\)の範囲にあります。この範囲では、\(\sin\)の値が同じになる角度は一つしかありません。
したがって、
$$ i = r $$
が証明されました。

計算方法の平易な説明

光が平行なガラス板を通り抜けるとき、それぞれの境界面で曲がりますが、面白いことに、最終的に空気中に出てくるときの角度は、最初に入射したときの角度と全く同じになります。これは、各境界面で成り立つ「屈折の法則」をドミノ倒しのように次々とつなげていくと証明できます。「空気→A」「A→B」「B→空気」の3つの屈折の式を立てると、真ん中のAとBに関する部分がうまく消去できて、結局「最初の空気での式」=「最後の空気での式」というシンプルな関係だけが残るのです。その結果、\(\sin i = \sin r\) となり、角度\(i\)と\(r\)が等しいことがわかります。

結論と吟味

入射角\(i\)と最終的な屈折角\(r\)が等しいこと(\(i=r\))が示されました。これは、入射光線と射出光線が平行であることを意味します。この結果は、途中のガラス板AとBの屈折率\(n_A, n_B\)や厚さには一切依存しません。平行な境界面を持つ媒質層を光が通過する際、最初と最後の媒質が同じであれば、光線は元の向きと平行に進むという、光の屈折に関する重要な一般法則を再確認する問題でした。

解答 (証明は解説を参照)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 平行な境界面における屈折の法則の連続性:
    • 核心: この問題の核心は、単に屈折の法則を知っていることではなく、「境界面が互いに平行である」という条件下で、屈折の法則がどのように連鎖していくかを理解することです。具体的には、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) という法則が、次の境界面では \(n_2 \sin\theta_2 = n_3 \sin\theta_3\) となり、結果として \(n_1 \sin\theta_1 = n_3 \sin\theta_3\) のように、途中の媒質を飛び越して最初と最後の媒質の関係だけで議論できるという普遍的な性質を導き出すことにあります。
    • 理解のポイント:
      • なぜ連鎖するのか?: 境界面が平行であるため、幾何学的に「錯角が等しい」という関係が成り立ちます。これにより、ある境界面での「屈折角」が、次の境界面での「入射角」と等しくなり、数式 \(n\sin\theta\) の値が、まるでバトンリレーのように次々と引き継がれていきます。
      • 物理的な意味: この法則が示すのは、「平行なガラス板を光が通過するとき、光線は横にずれる(平行移動する)だけで、最終的な進行方向は元の方向と平行になる」という直感的な事実の数学的な証明です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多層膜コーティング: カメラのレンズなどに施される反射防止膜(多層膜)の設計原理を考える問題。各層で屈折の法則が連続的に成り立ち、さらに各界面で反射する光の干渉を考慮することで、特定の波長の光の反射を抑えることができます。
    • 大気による光の屈折: 地平線近くの太陽や星が実際よりも浮き上がって見える現象(大気差)を説明する問題。大気を密度の異なる薄い層の集まりと見なすと、光は上空の希薄な大気(屈折率が小さい)から地表近くの密な大気(屈折率が大きい)へと連続的に屈折しながら進みます。本問の原理を連続的な変化に拡張したモデルです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 境界面の形状を最優先で確認: 問題図を見て、境界面が「平行」か「非平行(プリズムなど)」かを真っ先に見抜きます。この問題のように「平行」であれば、\(n\sin\theta = \text{一定}\) という強力な法則が使える可能性が高いです。
    2. 媒質の数を数える: 空気を1つの媒質と考えると、この問題では「空気→A→B→空気」と3つの境界面、4つの領域(3種類の媒質)があります。それぞれの領域と境界面を明確に区別します。
    3. 中間的な角度を文字で置く: 図に描かれていない角度(Aでの屈折角、Bでの屈折角など)を、\(\alpha, \beta\) のように自分で文字で置くことで、各境界面での立式がスムーズになります。
    4. 証明問題のゴールを意識する: \(i=r\) を示すことがゴールなので、最終的に \(i\) と \(r\) だけを含む式を導くことを目指します。そのためには、途中で置いた \(\alpha\) や \(\beta\) を消去する必要がある、という方針が自然と立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 錯角の関係を見落とす:
    • 誤解: 空気→Aの屈折角と、A→Bの入射角が別々の角度だと思い込み、文字を増やしすぎて式が立てられなくなる。
    • 対策: 「平行な境界面」という条件を見たら、反射的に「錯角が使える」と連想する癖をつける。図に補助線(法線)をしっかり描き、錯角の位置関係を視覚的に確認することが重要です。
  • 証明の論理が飛躍する:
    • 誤解: 最初から \(n_0 \sin i = n_0 \sin r\) と書いてしまい、なぜ途中のガラス板を無視できるのか、その理由を説明できない。
    • 対策: 面倒でも、各境界面(空気→A、A→B、B→空気)で一つずつ屈折の法則を立式する。そして、それらの式を「\(=\)」でつなげることで、\(n_0 \sin i = n_A \sin\alpha = n_B \sin\beta = n_0 \sin r\) という関係を導き、論理のステップを省略しない答案を作成する。
  • 最後の詰めが甘い:
    • 誤解: \(\sin i = \sin r\) を導いただけで満足してしまい、\(i=r\) であることの理由(角度の範囲)を記述し忘れる。
    • 対策: 三角関数を含む方程式を解いた後は、必ず角度の定義域を確認する習慣をつける。物理的な設定から、入射角や屈折角は鋭角(\(0^\circ\)から\(90^\circ\))に限定されるため、\(\sin\)の値が同じならば角度も等しい、と結論づけることができます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 (\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)):
    • 選定理由: この問題は、光が複数の媒質の境界面を通過する現象そのものを扱っているため、その現象を記述する唯一の基本法則である屈折の法則を用いる以外に選択肢はありません。特に、絶対屈折率を用いたこの形式は、媒質の種類が変わっても一貫して適用できるため、多層媒質の問題に最適です。
    • 適用根拠: この法則は、光の波動性(ホイヘンスの原理)から導かれる普遍的な法則です。境界面がいくつあっても、それぞれの界面でこの法則が独立に成立します。証明問題では、この普遍的な法則を個々の具体的な境界面に適用し、それらを組み合わせることで、より大きな、一般的な法則(この問題の場合は \(i=r\))を導き出すという、物理学の基本的な思考法を実践しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題は証明問題であり、数値計算はありませんが、「論理的な記述のミス」を防ぐためのテクニックが重要です。
  • 変数の導入を宣言する: 解答の冒頭で、「空気、ガラスA、ガラスBの屈折率をそれぞれ\(n_0, n_A, n_B\)とする」「空気からAへの屈折角を\(\alpha\)、AからBへの屈折角を\(\beta\)とする」のように、使用する文字を明確に定義することで、答案の論理性が高まります。
  • 式番号を振る: 複数の式を立てる場合、①, ②, ③のように番号を振ることで、後の説明で「式①と②より〜」のように参照しやすくなり、答案が整理されます。
  • 証明の構成を意識する: 「(1)各界面で立式 → (2)式を結合 → (3)結論」のように、証明全体の流れを意識して記述する。これにより、論理の飛躍や抜け漏れを防ぐことができます。

280 水面への浮かび上がり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「屈折による見かけの深さ」です。水中の物体が、空気中から見ると実際よりも浅い位置にあるように見える現象について、その深さを定量的に求める問題です。

  1. 屈折の法則: 異なる媒質の境界面で光が進む向きを変える現象で、その関係は \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) または \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{n_2}{n_1}\) で表されます。
  2. 見かけの深さ(虚像): 水中の物体から出た光が水面で屈折し、空気中の観測者の目に入ります。観測者は、光が直進してきたと認識するため、屈折した光線の延長線が交わる点に物体の像(虚像)が見えます。この虚像の位置が「見かけの深さ」です。
  3. 微小角の近似: 角度\(\theta\)が十分に小さいとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta\) という近似が成り立ちます。この問題では、真上から見ているため、入射角と屈折角が非常に小さく、この近似を用いることができます。
  4. 三角比と幾何学: 図形から入射角と屈折角のタンジェント(\(\tan\))を、実際の深さ、見かけの深さ、および水平距離を用いて表します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、屈折の法則を立てます。
  2. 次に、微小角の近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) を用いて、屈折の法則を\(\tan\)で書き換えます。
  3. 図から、\(\tan i\) と \(\tan r\) を、それぞれ実際の深さ\(H\)、見かけの深さ\(h\)、水平距離\(d\)を用いて表します。
  4. これらを屈折の法則に代入し、見かけの深さ\(h\)を求めます。

思考の道筋とポイント
水中のコインが実際よりも浅く見える「見かけの深さ」を求める問題です。この現象は、コインから出た光が水面で屈折し、空気中の目に届くために起こります。

私たちの脳は、光が常にまっすぐ進んできたと認識します。そのため、水面で屈折して目に届いた光を、目が逆向きにまっすぐ延長した先にコインがあるように錯覚します。この錯覚の位置が「見かけの深さ」です。

この問題を解く鍵は、問題文で与えられている「微小角の近似(\(\sin\theta \approx \tan\theta\))」をうまく利用することです。

  1. まず、基本に立ち返り、「屈折の法則」を立てます。
  2. 次に、この近似を使って、屈折の法則を\(\sin\)の式から\(\tan\)の式に書き換えます。
  3. 最後に、図形に注目して、\(\tan i\)(入射角のタンジェント)と\(\tan r\)(屈折角のタンジェント)を、実際の深さ(40cm)と見かけの深さ(\(h\))を使って表し、式に代入して\(h\)を求めます。

この手順により、物理法則と幾何学的な関係が結びつき、答えが導かれます。
この設問における重要なポイント

  • 見かけの深さ\(h\)は、屈折した光線の延長線が中心軸と交わる点の深さである。
  • 屈折の法則: \(n_{\text{水}} \sin i = n_{\text{空気}} \sin r\)
  • 微小角の近似: \(\sin i \approx \tan i\), \(\sin r \approx \tan r\)
  • 図形から \(\tan i\) と \(\tan r\) を読み取る。

具体的な解説と立式

  • 実際のコインの深さを \(H = 40\) [cm]
  • 見かけの深さを \(h\) [cm]
  • 水の屈折率を \(n_1 = 4/3\)
  • 空気の屈折率を \(n_2 = 1.0\)

とします。

コインから出て水面で屈折する光を考えます。入射側は水、屈折側は空気です。
屈折の法則より、
$$ n_1 \sin i = n_2 \sin r \quad \cdots ① $$
問題の条件より、角度\(i, r\)は十分に小さいので、\(\sin i \approx \tan i\), \(\sin r \approx \tan r\) と近似できます。これを①式に適用すると、
$$ n_1 \tan i \approx n_2 \tan r \quad \cdots ② $$
次に、図から\(\tan i\)と\(\tan r\)を求めます。コインの中心を通る鉛直線から屈折点までの水平距離を\(d\)とします。

  • 入射角\(i\)を含む直角三角形(底辺\(d\)、高さ\(H\))に着目すると、
    $$ \tan i = \frac{d}{H} $$
  • 屈折角\(r\)を含む直角三角形(底辺\(d\)、高さ\(h\))に着目すると、
    $$ \tan r = \frac{d}{h} $$

これらを②式に代入します。
$$ n_1 \frac{d}{H} \approx n_2 \frac{d}{h} $$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
  • 微小角の近似: \(\sin\theta \approx \tan\theta\)
計算過程

$$ n_1 \frac{d}{H} = n_2 \frac{d}{h} $$
両辺の\(d\)を消去すると、
$$ \frac{n_1}{H} = \frac{n_2}{h} $$
この式を見かけの深さ\(h\)について解くと、
$$ h = \frac{n_2}{n_1} H $$
数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
h &= \frac{1.0}{4/3} \times 40 \\[2.0ex]&= \frac{3}{4} \times 40 \\[2.0ex]&= 3 \times 10 \\[2.0ex]&= 30 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

プールやコップの底が浅く見えるのと同じ現象です。この「見かけの深さ」には簡単な公式があり、「見かけの深さ \(h\) = 実際の深さ \(H\) ÷ その物質の屈折率 \(n\)」で求められます(空気の屈折率を1とした場合)。この問題では、実際の深さが40cm、水の屈折率が4/3なので、\(h = 40 \div (4/3) = 40 \times (3/4) = 30\) cm と計算できます。問題で与えられている屈折の法則と三角関数の近似を使って丁寧に計算しても、同じ結果になります。

結論と吟味

見かけの深さは30cmとなります。実際の深さ40cmよりも浅く見えるという結果は、日常の経験とも一致しており、物理的に妥当です。また、見かけの深さは、媒質の屈折率に反比例するという関係(\(h = H/n\))も導出でき、これは「見かけの深さ」に関する一般公式として知られています。

解答 30 [cm]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 屈折の法則と微小角近似の組み合わせ:
    • 核心: この問題の核心は、物理法則である「屈折の法則」と、数学的なテクニックである「微小角の近似 (\(\sin\theta \approx \tan\theta\))」を組み合わせることで、観測される現象(見かけの深さ)を説明し、定量的に計算することです。
    • 理解のポイント:
      • なぜ屈折の法則か?: 水中から空気中へ光が進む際に進路が曲がる(屈折する)ことが、物体が実際とは違う位置に見える根本原因です。したがって、屈折の法則が出発点となります。
      • なぜ近似が必要か?: 屈折の法則は\(\sin\)で記述されますが、図形的な長さ(深さや水平距離)は\(\tan\)で表現されます。この\(\sin\)と\(\tan\)の間のギャップを埋め、物理法則と幾何学を結びつけるための「橋渡し」の役割を果たすのが、微小角の近似です。「真上から見る」という条件が、この近似を正当化しています。
      • 最終的な関係式: この2つを組み合わせることで、最終的に「見かけの深さ \(h\) = 実際の深さ \(H\) / 屈折率 \(n\)」という非常にシンプルで強力な関係式が導かれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 空気中から水中の斜めの物体を見る: 水中に斜めに差し込んだ棒が、水面で折れ曲がって見える現象。棒の各点について「見かけの深さ」を考えることで、折れ曲がった像がどのように見えるかを作図・計算できます。
    • 凸レンズ・凹レンズの結像(近軸光線): レンズの公式を導出する際にも、本問と考え方が似ています。レンズに入射する光線が光軸となす角が十分に小さい(近軸光線)と仮定し、\(\sin\theta \approx \tan\theta \approx \theta\) という近似を用いることで、複雑な光の経路を簡単な幾何学で扱い、レンズの公式を導きます。
    • 望遠鏡で水中の物体を見る: 望遠鏡で水中の物体を見たとき、どのくらい大きく見えるか(倍率)を問う問題。見かけの深さによって物体までの見かけの距離が変化するため、見かけの大きさ(角度)も変化します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「見かけの深さ」「浮き上がって見える」というキーワードに注目: これらの言葉があれば、本問と同様のテーマである可能性が非常に高いです。
    2. 観測方向を確認する: 「真上から見る」「水面に対して垂直に近い方向から見る」という記述があれば、それは「微小角の近似を使いなさい」というヒントです。
    3. 2つの直角三角形を探す:
      • 実際の光路に対応する三角形: 実際の深さ\(H\)と水平距離\(d\)からなる直角三角形。ここから\(\tan i\)を求めます。
      • 見かけの光路に対応する三角形: 見かけの深さ\(h\)と水平距離\(d\)からなる直角三角形。ここから\(\tan r\)を求めます。
    4. 光の進む向きを確認する: 光は「水中(コイン)→空中(目)」へと進みます。したがって、屈折の法則を立てる際は、水が「入射側」、空気が「屈折側」になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 屈折率の適用を間違える:
    • 誤解: 最終的な公式 \(h = H/n\) を丸暗記している場合に、どの屈折率\(n\)を使えばよいか混乱する。例えば、空気側から水中を見るのに、空気の屈折率を掛けてしまうなど。
    • 対策: 公式の丸暗記に頼らず、毎回「\(n_{\text{水}} \sin i = n_{\text{空気}} \sin r\)」から導出する癖をつける。光が水中から空気中へ進むので、入射側が水、屈折側が空気であることを明確にすれば、\(h = (n_{\text{空気}}/n_{\text{水}})H\) という正しい関係式が自然に導かれます。
  • \(\sin\)と\(\tan\)の定義の混同:
    • 誤解: 図から\(\tan i\)を求めるべきところで、\(\sin i\)(\(=d/\sqrt{H^2+d^2}\))を求めてしまい、計算が複雑になってしまう。
    • 対策: 微小角の近似を使う問題では、最終的に\(\tan\)で立式することを見越して、最初から図形と\(\tan\)の関係を整理する。直角三角形の「高さ」と「底辺」が問題の中心になっていることを意識する。
  • 近似の適用忘れ:
    • 誤解: 屈折の法則 \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{n_2}{n_1}\) と、図形から求めた \(\tan i = d/H\), \(\tan r = d/h\) をどう結びつければよいか分からなくなる。
    • 対策: 「真上から見る」という条件が微小角の近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) を使うための鍵であることを強く意識する。この近似が、\(\sin\)の世界(物理法則)と\(\tan\)の世界(幾何学)をつなぐ唯一の架け橋です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 (\(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)):
    • 選定理由: 水中の物体が実際と違う位置に見えるのは、光が水面で屈折することが根本原因です。この現象を記述する基本法則として、屈折の法則の採用は必須です。
    • 適用根拠: この法則は、光が異なる媒質の境界面を通過する際の振る舞いを普遍的に記述します。この問題では、コインから目に至る光線が水と空気の境界面を通過するため、この法則を適用することが物理的に正当化されます。
  • 微小角の近似 (\(\sin\theta \approx \tan\theta\)):
    • 選定理由: 屈折の法則は\(\sin\)で、図形から得られる関係は\(\tan\)で表されるため、両者を結びつける必要があります。「真上から見る」という条件は、入射角\(i\)と屈折角\(r\)が非常に小さいことを意味し、この近似を適用するための根拠となります。この近似により、問題を簡単な代数計算で解くことが可能になります。
    • 適用根拠: テイラー展開により、\(\sin\theta = \theta – \theta^3/3! + \dots\) および \(\tan\theta = \theta + \theta^3/3 + \dots\) と表せます。\(\theta\)が十分に小さいとき(\(\theta \ll 1\) [rad])、\(\theta^3\)以降の項は無視できるほど小さくなるため、\(\sin\theta \approx \theta\) かつ \(\tan\theta \approx \theta\) となり、結果として \(\sin\theta \approx \tan\theta\) が成り立ちます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 比の計算を丁寧に行う: 最終的に \(h = \frac{n_2}{n_1} H\) という比の計算になります。\(n_1=4/3\) のように屈折率が分数で与えられた場合、\(\frac{1.0}{4/3}\) は \(1.0 \times \frac{3}{4}\) となり、逆数を掛ける計算になります。この分数の扱いを間違えないように注意しましょう。
  • 文字式のまま計算を進める: まずは \(h = \frac{n_2}{n_1} H\) という文字式の関係を導き、最後に数値を代入する習慣をつけると、計算ミスが減り、物理的な意味(見かけの深さは屈折率の比で決まる)も理解しやすくなります。
  • 単位の確認: 問題では深さが[cm]で与えられているので、答えも[cm]で求めます。計算の途中で単位を混同しないように注意が必要です。

281 偏光

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の偏光と横波の性質」です。偏光板という特殊なフィルターを通して光を観察することで明らかになる、光の波動性、特に横波としての性質について問う問題です。

  1. 光の波動性: 光は波としての性質を持っています。
  2. 横波と縦波: 波の振動方向と進行方向の関係によって、波は2種類に大別されます。
    • 横波: 振動方向が進行方向と垂直な波(例:光、弦を伝わる波)。
    • 縦波: 振動方向が進行方向と平行な波(例:音波)。
  3. 自然光と偏光:
    • 自然光: 太陽光や電球の光など、進行方向に垂直な面内で、あらゆる方向に振動している光。
    • 偏光(直線偏光): 振動方向が特定の一直線上にそろった光。
  4. 偏光板の働き: 特定の向き(偏光軸)の振動成分だけを通過させ、それ以外の振動成分を遮断するフィルター。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 2枚の偏光板を回転させたときの明るさの変化という実験事実から、光がどのような性質を持つ波であるかを推測します。
  2. 偏光板がどのようにして光の振動方向を選択するのかを考えます。
  3. 2枚の偏光板の軸の向きがどのような関係にあるときに、光が最もよく通過し(明るくなる)、また最も遮断される(暗くなる)のかを考察します。

思考の道筋とポイント
2枚の偏光板を通して自然光を観察する、という典型的な実験に関する文章の空欄を埋める問題です。この現象を理解する鍵は、「光は横波である」という事実と、「偏光板は特定の向きの振動だけを通すスリットのようなものである」というモデルを理解することです。

  1. 自然光: まず、太陽や電球から来る「自然光」は、進行方向に対して垂直な面内で、あらゆる方向にブルブルと振動しています。
  2. 1枚目の偏光板A(偏光子): この自然光が1枚目の偏光板Aを通過すると、偏光板の軸と同じ向きの振動成分だけが生き残り、他の向きの振動は遮断されます。これにより、光は特定の一直線方向にのみ振動する「偏光」に変わります。
  3. 2枚目の偏光板B(検光子): 次に、この偏光が2枚目の偏光板Bを通過できるかどうかを考えます。これは、Bの軸の向きと、Aを通過してきた光の振動方向がどういう関係にあるかで決まります。
    • AとBの軸が平行なら、光はそのまま通過でき、明るく見えます。
    • AとBの軸が垂直なら、光は完全に遮断され、暗く見えます。
    • AとBの軸がその中間の角度なら、光は成分分解されて一部だけが通過し、中間の明るさになります。

この原理に基づいて、各空欄を埋めていきます。
この設問における重要なポイント

  • 光は、進行方向と垂直な方向に振動する「横波」である。
  • 偏光板は、その軸と平行な振動成分のみを通過させる。
  • 2枚の偏光板の軸が平行なとき、光の透過率は最大(明るい)。
  • 2枚の偏光板の軸が垂直なとき、光の透過率はゼロ(暗い)。

具体的な解説と立式
この問題は、物理現象の定性的な理解を問うものであり、数式による立式は不要です。各空欄について、上記の原理に基づいて考察します。

  • ②について: 偏光板によって明るさが変化する現象は、波の振動方向が進行方向に対して垂直である「横波」に特有の性質です。もし光が進行方向に振動する「縦波」であれば、偏光板を回転させても振動の様子は変わらず、明るさも変化しないはずです。したがって、光は波であることがわかります。
  • ③について: 1枚目の偏光板Aを通過した光は、Aの軸と平行な方向に振動しています。この光が2枚目の偏光板Bを最もよく通過できるのは、Bの軸の向きが、やってきた光の振動方向、すなわちAの軸の向きと平行になったときです。このとき、観測される光は最も明るくなります。
  • ④について: 逆に、Aを通過した光がBで完全に遮断されるのは、Bの軸の向きが、やってきた光の振動方向と垂直になったときです。このとき、光の振動成分はBの軸方向には全くなく、光は通過できずに最も暗くなります。
  • ①について: 偏光板Bを回転させると、Aの軸と平行な状態(最も明るい)から、垂直な状態(最も暗い)まで、角度が\(90^\circ\)変化します。さらに\(90^\circ\)回転させると、再び平行な状態(最も明るい)に戻ります。このように、明るい状態と暗い状態は90度ごとに繰り返されます。(最も明るい状態は\(180^\circ\)ごと、最も暗い状態も\(180^\circ\)ごとに現れますが、明るくなったり暗くなったりという変化の周期は\(90^\circ\)です。)

使用した物理公式

この問題は、物理概念の理解を問うものであり、数式は使用しません。

計算過程

計算は不要です。

計算方法の平易な説明

光の波は、縄跳びの縄を揺らすときの波のように、進む向きと垂直に振動しています(これを「横波」といいます)。偏光板は、縦や横にスリットが入った板のようなものです。

  1. 最初の偏光板Aが「縦スリット」だとすると、あらゆる方向に振動していた自然光のうち、縦揺れの成分だけが通り抜けられます。
  2. 次に、2枚目の偏光板Bを置きます。もしBも「縦スリット」なら(③平行)、縦揺れの光はそのまま通り抜けられるので、明るく見えます。
  3. もしBが「横スリット」なら(④垂直)、縦揺れの光は完全にブロックされてしまうので、暗く見えます。
  4. Bをくるくる回すと、スリットの向きが合うとき(平行)と合わないとき(垂直)が90度ごとに交互にやってくるので、明るくなったり暗くなったりを繰り返します(①90)。

この現象が起こること自体が、光が横波である証拠です(②横)。

結論と吟味
  • ①: 偏光板を回転させると、透過する光の強度は\(90^\circ\)ごとに最大と最小を繰り返す。
  • ②: この偏光という現象は、波の振動が進行方向と垂直である横波に特有の性質である。
  • ③: 2枚の偏光板の軸が平行なとき、1枚目を通過した光は2枚目もそのまま通過できるため、最も明るくなる。
  • ④: 2枚の偏光板の軸が垂直なとき、1枚目を通過した光は2枚目で完全に遮断されるため、最も暗くなる。

これらの結論は、光の偏光に関する基本的な知識と完全に一致しており、妥当です。

解答 ① 90, ② 横, ③ 平行, ④ 垂直

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 光の横波性と偏光板のフィルター作用:
    • 核心: この問題の核心は、2つの基本的な概念を組み合わせることです。一つは「光は、進行方向と垂直な方向に振動する横波である」という性質。もう一つは「偏光板は、特定の方向(偏光軸)の振動成分だけを通過させるフィルターである」という働きです。
    • 理解のポイント:
      • 横波でなければならない理由: もし光が音波のような縦波(進行方向に振動する波)であれば、波の振動に「向き」という概念が存在しないため、偏光板をどのように回転させても光の透過率は変わらないはずです。偏光板の回転によって明るさが変化するという実験事実は、光の振動が進行方向に対して特定の「向き」を持つ、すなわち横波であることの決定的な証拠となります。
      • フィルターとしての偏光板: 自然光は、あらゆる向きの振動成分が混ざった状態です。1枚目の偏光板(偏光子)は、このごちゃ混ぜの振動から、自身の軸と平行な振動成分だけを選び出して「偏光」を作り出す役割をします。2枚目の偏光板(検光子)は、その偏光を分析し、軸の向きが合っていれば通過させ、合っていなければ遮断する役割を果たします。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • マルスの法則(計算問題): 2枚の偏光板の軸がなす角を\(\theta\)とするとき、透過する光の強度\(I\)が \(I = I_0 \cos^2\theta\) で与えられることを利用する計算問題。本問の定性的な理解を、定量的に発展させたものです。
    • 反射による偏光(ブリュースター角): 水面やガラス面で光が反射するとき、特定の入射角(ブリュースター角)で反射光が完全に偏光する現象。釣りやスキー用の偏光サングラスは、この原理で水面や雪面からのギラギラした反射光(偏光)をカットします。
    • 液晶ディスプレイ(LCD): 電圧をかけると分子の向きが変わり、光の偏光状態を制御できる「液晶」と、2枚の偏光板を組み合わせて、画素の明暗を作り出しています。
    • 3D映画: 左右の目に、それぞれ垂直方向と水平方向など、異なる向きに偏光した映像を同時に見せることで、脳に立体感を認識させる技術です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「偏光板」「偏光」というキーワードに注目: この言葉が出てきたら、テーマは「光の横波性」と「振動方向」であると即座に判断します。
    2. 入射光の種類を確認する: 入射する光が、あらゆる方向に振動する「自然光」なのか、すでに特定の方向に振動がそろっている「偏光」なのかを確認します。自然光が1枚目の偏光板を通過すると、強度は半分になります。
    3. 偏光板の軸の角度関係を把握する: 2枚の偏光板の軸が「平行」なのか、「垂直」なのか、あるいは特定の角度\(\theta\)をなしているのか、その幾何学的な関係が最も重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 横波と縦波の性質の混同:
    • 誤解: 光を音波と同じ縦波だと考えてしまう。
    • 対策: 「光は横波、音は縦波」と明確に区別して記憶する。そして、「偏光は横波だけの特別な性質」とセットで理解することが重要です。
  • 偏光板の軸と透過条件の混同:
    • 誤解: 偏光板の軸と光の振動方向が「垂直」のときに光が透過する、と逆さまに覚えてしまう。
    • 対策: 偏光板を「すだれ」や「格子のついた窓」に例えてイメージする。すだれの隙間と平行な細長い棒は通り抜けられますが、垂直な棒はつっかえて通れません。光の振動もこれと同じです。
  • 回転角度と明暗周期の誤り:
    • 誤解: (1)で、最も明るい状態から次に最も明るくなるまでの角度である「180°」を答えてしまう。
    • 対策: 問題文の「明るくなったり暗くなったりする」という変化の周期を問われていることを理解する。明るい状態(0°)→暗い状態(90°)→明るい状態(180°)と変化するため、明暗の変化自体は90°ごとに起こります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 光の横波モデル:
    • 選定理由: この問題は計算式を使いませんが、現象を説明するための「物理モデル」を選択することが思考の根幹です。偏光板の回転によって明るさが変化するという実験事実は、波の振動に「方向」という概念がなければ説明できません。進行方向と平行にしか振動できない縦波モデルではこの現象を説明できないため、進行方向と垂直な面内で振動方向が存在する「横波モデル」を採用することが論理的に必須となります。
    • 適用根拠: この横波モデルを採用することで、偏光板の「軸」という方向性と、光の「振動方向」という方向性を対応させることが可能になります。そして、両者の角度関係によって光の透過度が決まる、という一貫した論理で、(1)から(4)までのすべての現象を説明することができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 身近なものに例えて覚える: 偏光板の働きは、身近なもので例えると理解しやすくなります。例えば、偏光板を「すだれ」、光の振動を「縄を上下に揺らした波」と考えてみましょう。2枚のすだれを重ねて、その隙間の向きを平行にしたり垂直にしたりするイメージを持つと、記憶が定着しやすくなります。
  • 用語の定義を明確にする: 「自然光」「(直線)偏光」「偏光子(1枚目の偏光板)」「検光子(2枚目の偏光板)」「偏光軸」といった専門用語の意味を、それぞれ正確に区別して覚えることが、混乱を防ぐ第一歩です。
  • 現象と性質を結びつける: 「偏光という現象が観測できる」ということ自体が、「光は横波であることの証明」になる、という重要な因果関係をしっかり理解しておきましょう。
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