「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 20】Step1 & 例題

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Step1

① 音源が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「音源が動く場合のドップラー効果」です。救急車が近づくときと遠ざかるときでサイレンの音の高さが変わって聞こえる現象の、波長の変化に焦点を当てます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果の基本原理
  2. 音源の運動による音波の波長の圧縮と伸長
  3. ドップラー効果における波長の公式
  4. 音源が近づく場合と遠ざかる場合の速度の符号の扱い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ドップラー効果による波長の変化を求める公式を立てる。
  2. 自動車の前方(音源が近づいてくる方向)について、公式に値を代入して波長を計算する。
  3. 自動車の後方(音源が遠ざかっていく方向)について、同様に公式に値を代入して波長を計算する。

思考の道筋とポイント
音源である自動車が動くと、進行方向では音波が「押し縮められ」、波長が短くなります。逆に、後方では音波が「引き伸ばされ」、波長が長くなります。この問題では、観測者が聞く振動数ではなく、空間に広がる音波の「波長」そのものを計算します。
ポイントは、1秒間に音源が出す波の数(振動数 \(f\))は変わりませんが、その波が広がる空間の長さが音源の動きによって変化することです。

  • 前方: 1秒間に出された波は、音が本来進む距離 \(V\) よりも、音源が進んだ距離 \(v_S\) だけ狭い \(V-v_S\) の範囲に詰め込まれます。
  • 後方: 1秒間に出された波は、音が本来進む距離 \(V\) に、音源が進んだ距離 \(v_S\) が加わった \(V+v_S\) の範囲に引き伸ばされます。

この設問における重要なポイント

  • ドップラー効果の波長: 音源が速さ \(v_S\) で動くとき、観測される波長 \(\lambda’\) は、音源から出る音の本来の振動数を \(f\)、音速を \(V\) として、次の式で表されます。
    $$ \lambda’ = \frac{V – v_S}{f} $$
  • 速度の符号の扱い:
    • 前方(近づく方向): 音源の速度 \(v_S\) を正の値として代入します。これにより波長は短くなります。
    • 後方(遠ざかる方向): 音源の速度 \(v_S\) を負の値として代入します(\(v_S \rightarrow -v_S\))。これにより波長は長くなります。
  • このように、1つの公式で符号を操作することで、近づく場合と遠ざかる場合の両方に対応できます。

具体的な解説と立式
自動車(音源)の速さを \(v_S = 20 \, \text{m/s}\)、クラクションの振動数を \(f = 640 \, \text{Hz}\)、音速を \(V = 340 \, \text{m/s}\) とします。
ドップラー効果によって変化した波長 \(\lambda’\) を求める一般式は次の通りです。
$$ \lambda’ = \frac{V – v_S}{f} \quad \cdots ① $$

  • 前方の波長 \(\lambda_1\) の立式:
    自動車は前方に進んでいるので、音源は前方の空間に近づいていきます。したがって、\(v_S = 20 \, \text{m/s}\) をそのまま式①に代入します。
    $$ \lambda_1 = \frac{340 – 20}{640} \quad \cdots ② $$
  • 後方の波長 \(\lambda_2\) の立式:
    自動車は後方の空間から遠ざかっていきます。この場合、速度の向きが逆なので、\(v_S = -20 \, \text{m/s}\) として式①に代入します。
    $$ \lambda_2 = \frac{340 – (-20)}{640} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果による波長の公式: \(\lambda’ = \displaystyle\frac{V – v_S}{f}\)
計算過程

1. 前方の波長 \(\lambda_1\) の計算
式②を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_1 &= \frac{340 – 20}{640} \\[2.0ex]&= \frac{320}{640} \\[2.0ex]&= 0.500 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

2. 後方の波長 \(\lambda_2\) の計算
式③を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_2 &= \frac{340 – (-20)}{640} \\[2.0ex]&= \frac{340 + 20}{640} \\[2.0ex]&= \frac{360}{640} \\[2.0ex]&= \frac{36}{64} \\[2.0ex]&= \frac{9}{16} \\[2.0ex]&= 0.5625 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁に丸めると、\(0.563 \, \text{m}\) となります。

計算方法の平易な説明

救急車が動いているとき、サイレンの音の波は進行方向では「ぎゅっ」と圧縮され、後ろ側では「びろーん」と引き伸ばされます。この問題では、その圧縮された波長と引き伸ばされた波長を計算します。

  • 考え方のイメージ:
    • 音は1秒間に \(340 \, \text{m}\) 進みます。
    • 自動車は1秒間に \(640\) 回の波(クラクションの音)を出します。
    • もし自動車が止まっていれば、\(640\) 個の波は \(340 \, \text{m}\) の範囲に広がるので、波長は \(340 \div 640\) で計算できます。
  • 前方の計算:
    • 自動車が前に \(20 \, \text{m/s}\) で進むので、1秒間に出した \(640\) 個の波は、\(340 – 20 = 320 \, \text{m}\) の狭い空間に詰め込まれます。
    • したがって、前方の波長は \(320 \, \text{m} \div 640 \, \text{回} = 0.500 \, \text{m}\) です。
  • 後方の計算:
    • 自動車が前に進むと、後ろに広がる波は、音が進む \(340 \, \text{m}\) に加えて、自動車が進んだ \(20 \, \text{m}\) 分だけ広い \(340 + 20 = 360 \, \text{m}\) の空間に引き伸ばされます。
    • したがって、後方の波長は \(360 \, \text{m} \div 640 \, \text{回} \approx 0.563 \, \text{m}\) です。
解答 0.500m, 0.563m

② 音源が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「音源が動く場合のドップラー効果(振動数)」です。前問で求めた波長の変化をもとに、静止している観測者が聞く音の振動数がどのように変化するかを計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式 \(v = f\lambda\)
  2. ドップラー効果によって変化した波長と振動数の関係
  3. ドップラー効果の振動数の公式(別解として)
  4. 音源が近づく場合と遠ざかる場合の違い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 解法1(波長を経由する方法): 前問で計算した前方と後方の波長を、波の基本式 \(f’ = V/\lambda’\) に代入して、それぞれの振動数を求める。
  2. 解法2(公式を直接使う方法): ドップラー効果の振動数の公式 \(f’ = \displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\) に直接値を代入して、それぞれの振動数を求める。

思考の道筋とポイント
前問では、動く音源によって音波の波長が前方で短く、後方で長くなることを見ました。この変化した波長の波が、音速 \(V\) で静止している観測者の耳に届きます。観測者が1秒間に受け取る波の数、すなわち「振動数」は、波の基本式 \(V=f’\lambda’\) から \(f’ = V/\lambda’\) として計算できます。

  • 前方では、波長 \(\lambda’\) が短くなるため、振動数 \(f’\) は元の振動数より大きくなります(音が高く聞こえる)。
  • 後方では、波長 \(\lambda’\) が長くなるため、振動数 \(f’\) は元の振動数より小さくなります(音が低く聞こえる)。

この問題は、前問の結果を利用する解法と、ドップラー効果の振動数の公式を直接使う解法の2通りでアプローチできます。両方の考え方を理解することが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本式: 音速を \(V\)、観測される振動数を \(f’\)、観測される波長を \(\lambda’\) とすると、\(V = f’\lambda’\) が成り立つ。したがって、\(f’ = \displaystyle\frac{V}{\lambda’}\) で振動数を計算できる。
  • 音速の不変性: 音速 \(V\) は、音を伝える媒質(この場合は空気)に対して一定であり、音源や観測者の運動には影響されない。
  • 前問の結果: 前方での波長 \(\lambda_1 = 0.500 \, \text{m}\)、後方での波長 \(\lambda_2 = 0.5625 \, \text{m}\)。
  • ドップラー効果の振動数公式(別解用): 音源の速さを \(v_S\)、観測者の速さを \(v_O\)、音源の振動数を \(f\) とすると、観測される振動数 \(f’\) は \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_O}{V-v_S}f\) で与えられる。

具体的な解説と立式
前問で求めた、自動車の前方と後方での音の波長をそれぞれ \(\lambda_1\), \(\lambda_2\) とします。前方で聞く振動数を \(f_1\)、後方で聞く振動数を \(f_2\) とします。
音は音速 \(V\) で伝わるので、波の基本式 \(V = f\lambda\) が成り立ちます。

  • 前方の振動数 \(f_1\) の立式:波長 \(\lambda_1\) の波が音速 \(V\) で進むときの振動数なので、
    $$ f_1 = \frac{V}{\lambda_1} \quad \cdots ① $$
  • 後方の振動数 \(f_2\) の立式:波長 \(\lambda_2\) の波が音速 \(V\) で進むときの振動数なので、
    $$ f_2 = \frac{V}{\lambda_2} \quad \cdots ② $$

前問の結果より、\(\lambda_1 = 0.500 \, \text{m}\), \(\lambda_2 = 0.5625 \, \text{m}\) であり、音速は \(V = 340 \, \text{m/s}\) です。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

1. 前方の振動数 \(f_1\) の計算
式①に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{V}{\lambda_1} \\[2.0ex]&= \frac{340}{0.500} \\[2.0ex]&= 680 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

2. 後方の振動数 \(f_2\) の計算
式②に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{V}{\lambda_2} \\[2.0ex]&= \frac{340}{0.5625} \\[2.0ex]&= \frac{340}{9/16} \\[2.0ex]&= \frac{340 \times 16}{9} \\[2.0ex]&= \frac{5440}{9} \\[2.0ex]&= 604.44\dots \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁に丸めると、\(f_2 = 604 \, \text{Hz}\) となります。

計算方法の平易な説明

前問で、自動車の前では波が圧縮されて波長が短く(0.500m)、後ろでは引き伸ばされて波長が長く(約0.563m)なることがわかりました。振動数とは「1秒間に耳を通り過ぎる波の数」のことです。音は秒速340mで進みます。

  • 前方: 秒速340mの距離を、長さ0.500mの波がいくつ通り過ぎるか?
    \(340 \div 0.500 = 680\) 個です。したがって、前方で聞く音は 680Hz になります。
  • 後方: 秒速340mの距離を、長さ0.5625mの波がいくつ通り過ぎるか?
    \(340 \div 0.5625 \approx 604\) 個です。したがって、後方で聞く音は 604Hz になります。

元の音(640Hz)より、前では高く、後ろでは低く聞こえることが確認できます。

別解: ドップラー効果の公式を直接使う方法

思考の道筋とポイント
ドップラー効果には、観測される振動数を直接計算する公式があります。この公式は、音源の速度 \(v_S\) と観測者の速度 \(v_O\) を用いて、観測される振動数 \(f’\) を元の振動数 \(f\) から直接求めることができます。今回は観測者が静止しているので \(v_O = 0\) となります。音源が近づくか遠ざかるかで分母の符号が変わることを理解するのがコツです。

この設問における重要なポイント

  • ドップラー効果の振動数の公式:
    $$ f’ = \frac{V – v_O}{V – v_S} f $$
  • \(V\): 音速, \(v_O\): 観測者の速度, \(v_S\): 音源の速度, \(f\): 音源の振動数, \(f’\): 観測される振動数。
  • 速度の符号: 音源から観測者へ向かう向きを正とします。
  • 観測者が静止している場合: \(v_O = 0\)。公式は \(f’ = \displaystyle\frac{V}{V – v_S} f\) となります。
  • 前方(音源が近づく): 音源は観測者に向かってくるので \(v_S\) は正。
  • 後方(音源が遠ざかる): 音源は観測者から遠ざかるので、観測者に向かう向きを正とすると \(v_S\) は負。

具体的な解説と立式
観測者が静止しているので、観測される振動数 \(f’\) を求める公式は次のようになります。
$$ f’ = \frac{V}{V – v_S} f \quad \cdots ③ $$
与えられた値は \(V = 340 \, \text{m/s}\), \(f = 640 \, \text{Hz}\)。音源の速さは \(20 \, \text{m/s}\) です。

  • 前方の振動数 \(f_1\) の立式:
    音源が観測者に近づくので、\(v_S = +20 \, \text{m/s}\) を代入します。
    $$ f_1 = \frac{340}{340 – 20} \times 640 \quad \cdots ④ $$
  • 後方の振動数 \(f_2\) の立式:
    音源が観測者から遠ざかるので、\(v_S = -20 \, \text{m/s}\) を代入します。
    $$ f_2 = \frac{340}{340 – (-20)} \times 640 \quad \cdots ⑤ $$

計算過程
1. 前方の振動数 \(f_1\) の計算
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{340}{340 – 20} \times 640 \\[2.0ex]&= \frac{340}{320} \times 640 \\[2.0ex]&= 340 \times \frac{640}{320} \\[2.0ex]&= 340 \times 2 \\[2.0ex]&= 680 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
2. 後方の振動数 \(f_2\) の計算
$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{340}{340 – (-20)} \times 640 \\[2.0ex]&= \frac{340}{360} \times 640 \\[2.0ex]&= \frac{17}{18} \times 640 \\[2.0ex]&= \frac{17 \times 320}{9} \\[2.0ex]&= \frac{5440}{9} \\[2.0ex]&= 604.44\dots \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁に丸めて、\(f_2 = 604 \, \text{Hz}\) となります。

計算方法の平易な説明
ドップラー効果には、聞こえる音の高さを一発で計算できる便利な公式があります。

  • 前方(近づいてくる): 音が高くなる。公式は \(f’ = \frac{\text{音速}}{\text{音速} – \text{車の速さ}} \times \text{元の振動数}\)。
    \( \displaystyle\frac{340}{340 – 20} \times 640 = \frac{340}{320} \times 640 = 680 \, \text{Hz} \)。
  • 後方(遠ざかっていく): 音が低くなる。公式は \(f’ = \frac{\text{音速}}{\text{音速} + \text{車の速さ}} \times \text{元の振動数}\)。
    \( \displaystyle\frac{340}{340 + 20} \times 640 = \frac{340}{360} \times 640 \approx 604 \, \text{Hz} \)。

このように、公式を使うと波長を計算しなくても答えが出せます。

解答 680Hz, 604Hz

③ 観測者が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「観測者が動く場合のドップラー効果」です。音源は静止したままで、観測者が動くことによって聞こえる音の振動数がどう変化するかを計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果の基本原理
  2. 観測者の運動による、観測者が単位時間に受け取る波の数の変化
  3. ドップラー効果の振動数の公式
  4. 観測者が近づく場合と遠ざかる場合の速度の符号の扱い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ドップラー効果の振動数の公式を立てる。
  2. 音源が静止し、観測者が音源から遠ざかる場合の速度を正しく設定する。
  3. 公式に与えられた値を代入して、観測される振動数を計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、音源が静止し、観測者が動く場合のドップラー効果です。音源が止まっているので、空間に送り出される音波の波長そのものは変化しません。
変化するのは、動いている観測者が1秒あたりに「すれ違う」波の数です。
観測者が音源から遠ざかる場合、音波を追いかけるような形になります。そのため、観測者に対する音の相対的な速さが遅くなり、結果として1秒間に受け取る波の数が減って、音が低く聞こえます。
この現象を、ドップラー効果の公式を用いて定量的に計算することがこの問題の目的です。

この設問における重要なポイント

  • ドップラー効果の振動数公式: 観測される振動数 \(f’\) は、音源の振動数を \(f\)、音速を \(V\)、観測者の速度を \(v_O\)、音源の速度を \(v_S\) として、次の一般式で表されます。
    $$ f’ = \frac{V – v_O}{V – v_S} f $$
  • 速度の符号のルール: この公式では、「音源から観測者に向かう向き」を正とします。
  • 今回のケースへの適用:
    • 音源: 静止しているので、\(v_S = 0\)。
    • 観測者: 音源から遠ざかっているので、音源から観測者に向かう向きを正とすると、観測者の速度は正の値になります。したがって、\(v_O = 10 \, \text{m/s}\)。
  • 音源が静止している場合の公式: 上記の条件を代入すると、公式は次のように簡単になります。
    $$ f’ = \frac{V – v_O}{V} f $$

具体的な解説と立式
ドップラー効果の一般式は次の通りです。
$$ f’ = \frac{V – v_O}{V – v_S} f $$
問題の条件を整理します。

  • 音源の振動数: \(f = 680 \, \text{Hz}\)
  • 音速: \(V = 340 \, \text{m/s}\)
  • 音源の速度: \(v_S = 0 \, \text{m/s}\) (静止しているため)
  • 観測者の速度: \(v_O = 10 \, \text{m/s}\) (音源から遠ざかる向きを正とする)

これらの値を公式に代入して、観測される振動数 \(f’\) を求める式を立てます。
$$ f’ = \frac{340 – 10}{340 – 0} \times 680 $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果の振動数公式: \(f’ = \displaystyle\frac{V – v_O}{V – v_S} f\)
計算過程

立式した式を計算します。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{340 – 10}{340} \times 680 \\[2.0ex]&= \frac{330}{340} \times 680 \\[2.0ex]&= 330 \times \frac{680}{340} \\[2.0ex]&= 330 \times 2 \\[2.0ex]&= 660 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

今回は、音を出している救急車は止まっていて、聞いている人が自転車に乗って逃げていくような状況を想像してください。

  • 聞こえる音: 逃げながら聞くので、元の音より低く聞こえるはずです。
  • 考え方のイメージ:
    1. 音は秒速 \(340 \, \text{m}\) で追いかけてきます。
    2. 観測者は秒速 \(10 \, \text{m}\) で逃げます。
    3. すると、観測者にとっては、音は \(340 – 10 = 330 \, \text{m/s}\) の速さで届いているように感じます(これを相対速度といいます)。
    4. 一方、音源は止まっているので、音の波長は元のままです。波長は「速さ÷振動数」で計算でき、\(340 \div 680 = 0.5 \, \text{m}\) です。
    5. 観測者が1秒間に受け取る波の数は、「観測者にとっての音の速さ ÷ 波長」で計算できます。
      \(330 \div 0.5 = 660\) 回。

したがって、聞こえる音の振動数は \(660 \, \text{Hz}\) となります。

解答 660Hz

例題

例題57 音源が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「音源が動く場合のドップラー効果の公式導出」です。公式を暗記するのではなく、なぜ音が変わって聞こえるのか、その物理的な過程を一つ一つ解き明かしていくことが求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 振動数の定義: 振動数 \(f\) [Hz] とは、波源が1秒間に \(f\) 個の波を送り出すことを意味します。
  2. 波長の圧縮効果: 音源が波の進行方向に動くと、前方の波はぎゅっと圧縮され、波長が短くなります。
  3. 音速不変の原理: 音の伝わる速さ(音速)は、それを伝える媒質(空気など)の性質だけで決まり、音源や観測者の運動には影響されません。
  4. 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ①では、振動数の定義から、ある時間 \(t\) の間に音源から送り出される波の総数を求めます。
  2. ②では、時間 \(t\) の間に、最初に送り出された波の先頭が進んだ距離と、音源自身が進んだ距離を考え、その差から、波がぎゅっと詰まっている空間の長さを計算します。
  3. ③では、「空間の長さ」を「波の総数」で割ることで、圧縮された波の波長を求めます。
  4. ④では、音速は媒質の状態のみで決まるという原理を理解しているかを確認します。
  5. ⑤では、観測者が聞く音の振動数を、不変の「音速」と、計算した「圧縮された波長」を用いて、波の基本式から導出します。

空欄①〜⑤ ドップラー効果の公式導出

思考の道筋とポイント
この問題は、ドップラー効果の公式をその根本原理から導出するプロセスを穴埋め形式で問うものです。公式を丸暗記しているだけでは解けず、「なぜ音源が動くと聞こえる音の高さが変わるのか」を物理的に理解しているかが試されます。
最大のポイントは、音源が動くことで、音波が送り出される空間的な間隔、すなわち「波長」が変化するという現象を捉えることです。時刻 \(t=0\) に音源が出した波の先頭と、時刻 \(t\) に音源がいる位置との間に、\(t\) 秒間分の波がすべて詰め込まれている、というイメージを持つことができれば、各空欄を論理的に埋めていくことができます。
この設問における重要なポイント

  • 振動数 \(f\) [Hz] は、音源が1秒間に \(f\) 個の波を出す、という物理的な意味を正確に理解する。
  • 音源が動いても、音の伝わる速さ \(V\) そのものは変化しない(媒質が静止している限り)。変化するのは波長 \(\lambda\) と、その結果として観測される振動数 \(f’\) である。
  • 観測者が聞く振動数 \(f’\) は、観測者の位置を1秒間に通過する波の数で決まり、波の基本式 \(f’ = \displaystyle\frac{V}{\lambda’}\) で計算できる。ここで \(\lambda’\) は観測者が観測する、変化した後の波長である。

具体的な解説と立式
問題の空欄①から⑤までを、順を追って解説します。
時刻 \(t=0\) に原点で音を出し始め、観測者に向かって速さ \(v_S\) で動き始めた音源を考えます。

空欄① 波の数
音源は振動数 \(f\) [Hz] で音を出します。これは定義より「1秒間に \(f\) 個の波を出す」ということです。
したがって、時間 \(t\) [s] の間に出す波の総数 \(N\) は、
$$ N = f \times t $$
これが空欄①の答えです。

空欄② 波が存在する区間の長さ
時刻 \(t\) [s] における状況を考えます。

  • 波の先頭の位置: 時刻 \(0\) [s] に原点で出された波は、\(t\) 秒後には音速 \(V\) で進み、原点から \(x_1 = Vt\) の位置に達しています。
  • 音源の位置: 音源は速さ \(v_S\) で \(t\) 秒間進んでいるので、その位置は \(x_2 = v_S t\) です。

\(t\) 秒間に出された \(N = ft\) 個の波は、この音源の位置 \(x_2\) から波の先頭の位置 \(x_1\) までの間に、ぎゅっと圧縮されて存在しています。
したがって、波が存在する区間の長さ \(L\) は、
$$ L = x_1 – x_2 = Vt – v_S t $$
これが空欄②の答えです。

空欄③ 圧縮された波長
波長とは、波1個あたりの長さです。区間 \(L\) の中に \(N\) 個の波が等間隔で並んでいるので、圧縮された波長 \(\lambda’\) は、
$$ \lambda’ = \frac{L}{N} $$
で計算できます。これが空欄③の答えの元となる式です。

空欄④ 音速
音を伝える媒質(空気)は静止しています。音速は媒質の状態によって決まる物理量であり、音源が動いても音速 \(V\) 自体は変化しません。
したがって、空欄④は \(V\) となります。

空欄⑤ 観測される振動数
観測者は、速さ \(V\) で伝わってくる波長 \(\lambda’\) の音波を観測します。観測者が聞く振動数を \(f’\) とすると、波の基本式が成り立ちます。
$$ V = f’ \lambda’ $$
この式を \(f’\) について解くことで、空欄⑤が求まります。
$$ f’ = \frac{V}{\lambda’} $$

使用した物理公式

  • 振動数の定義: \(N = ft\) (時間 \(t\) での波の数)
  • 等速直線運動の距離: \(x = vt\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

①の計算:
立式より、答えは \(ft\) です。

②の計算:
立式より、\(Vt – v_S t\) を整理します。
$$
\begin{aligned}
L &= Vt – v_S t \\[2.0ex]&= (V – v_S)t
\end{aligned}
$$
よって、答えは \((V – v_S)t\) です。

③の計算:
波長 \(\lambda’\) の式に、①と②の結果を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= \frac{L}{N} \\[2.0ex]&= \frac{(V-v_S)t}{ft} \\[2.0ex]&= \frac{V-v_S}{f}
\end{aligned}
$$
よって、答えは \(\displaystyle\frac{V-v_S}{f}\) です。

④の計算:
物理法則より、音速は変化しないため、答えは \(V\) です。

⑤の計算:
観測される振動数 \(f’\) の式に、③と④の結果を代入します。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{V}{\lambda’} \\[2.0ex]&= \frac{V}{\displaystyle\frac{V-v_S}{f}} \\[2.0ex]&= V \times \frac{f}{V-v_S} \\[2.0ex]&= \frac{V}{V-v_S}f
\end{aligned}
$$
よって、答えは \(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\) です。

計算方法の平易な説明

① 1秒間に \(f\) 回サイレンが鳴るなら、\(t\) 秒間では単純に掛け算して \(f \times t\) 回鳴ります。これが波の数です。
② \(t\) 秒の間に、最初に鳴った音は \(V \times t\) [m] 先まで届きます。一方、音源の救急車は \(v_S \times t\) [m] だけ進んでいます。波は、この「音の最前線」と「救急車の現在地」の間に詰まっているので、その長さは引き算で \((V – v_S)t\) [m] となります。
③ 波1個の長さ(波長)は、「波が詰まっている全体の長さ ÷ 波の数」で計算できます。②の答えを①の答えで割り算すると、\(\displaystyle\frac{V-v_S}{f}\) [m] となります。
④ 音の速さは空気の性質で決まるので、救急車が動いても変わりません。\(V\) [m/s] のままです。
⑤ 聞こえる音の高さ(振動数)は、波の基本ルール「振動数 = 速さ ÷ 波長」で計算できます。④の答えを③の答えで割り算すると、\(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\) [Hz] となります。

結論と吟味

各空欄は以下の通りです。
① \(ft\)
② \((V-v_S)t\)
③ \(\displaystyle\frac{V-v_S}{f}\)
④ \(V\)
⑤ \(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\)
音源が観測者に近づく場合、分母の \(V-v_S\) は \(V\) より小さくなるため、係数 \(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}\) は1より大きくなります。その結果、観測される振動数 \(f’\) は元の振動数 \(f\) よりも大きくなります。これは、救急車が近づいてくるときにサイレンの音が高く聞こえるという日常経験と一致しており、得られた結果は物理的に妥当であると言えます。

解答 ① \(ft\)
解答 ② \((V-v_S)t\)
解答 ③ \(\displaystyle\frac{V-v_S}{f}\)
解答 ④ \(V\)
解答 ⑤ \(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波長の圧縮・伸長という物理現象:
    • 核心: ドップラー効果の根本原因は、音源や観測者が動くことで、観測される波の「波長」が、音源が静止しているときの波長とは異なる値になることです。
    • 理解のポイント:
      • 近づく場合: 音源が波を追いかける形になるため、波が前方に「圧縮」され、波長は短くなります (\(\lambda’ < \lambda\))。
      • 遠ざかる場合: 音源が波から逃げる形になるため、波が後方に「引き伸ば」され、波長は長くなります (\(\lambda’ > \lambda\))。
  • 波の基本式 \(V=f\lambda\) の適用:
    • 核心: 観測される振動数 \(f’\) は、この変化した波長 \(\lambda’\) と、媒質に対して不変の音速 \(V\) を使って、\(f’ = \displaystyle\frac{V}{\lambda’}\) という関係から最終的に決まります。
  • 音速不変の原理:
    • 核心: 音速 \(V\) は、音を伝える媒質(空気)の性質のみで決まり、音源や観測者の運動速度には直接影響されません。波の伝播速度そのものは変わらないという点が重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 観測者が動く場合: この問題とは逆に観測者が動く場合、波長 \(\lambda\) は変化しません。その代わり、観測者が波を横切る速さ(音に対する相対速度)が変化します。観測者が音源に速さ \(v_O\) で近づくなら、相対速度は \(V+v_O\) となり、1秒あたりに観測する波の数、すなわち振動数 \(f’\) は \(f’ = \displaystyle\frac{V+v_O}{\lambda} = \frac{V+v_O}{V}f\) となります。
    • 音源と観測者の両方が動く場合: 上記2つの効果を組み合わせます。まず「音源の動き」で波長 \(\lambda’\) を求め、次にその \(\lambda’\) の波に対して「観測者の動き」で観測する振動数 \(f’\) を \(f’ = \displaystyle\frac{V_{\text{相対}}}{\lambda’}\) から求めます。これがドップラー効果の一般式 \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_O}{V-v_S}f\) に繋がります(符号は状況に応じて決定)。
    • 風が吹いている場合: 媒質である空気が動いているので、音速そのものが変化します。風速を \(w\) とすると、風上へ進む音の速さは \(V-w\)、風下へ進む音の速さは \(V+w\) となります。この補正された音速を \(V\) の代わりに使って計算します。
    • 反射板の問題(うなりなど): 動く壁で音が反射する場合、2段階で考えます。
      1. 壁を「動く観測者」とみなし、壁が受け取る音の振動数 \(f_1\) を計算します。
      2. 次に、壁を「振動数 \(f_1\) の音を出す動く音源」とみなし、静止している観測者が聞く振動数 \(f_2\) を計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 誰が動くか?: まず、音源、観測者のどちらが(あるいは両方が)動いているのかを把握します。これにより、波長が変化するのか、相対速度が変化するのか、基本的な考え方が決まります。
    2. 近づくか、遠ざかるか?: 両者の相対的な動き(接近 or 後退)を確認します。これにより、最終的に振動数が高くなるか(接近)、低くなるか(後退)の見通しが立ち、計算結果の検算に役立ちます。
    3. 媒質(風)は動くか?: 風が吹いている場合は、何よりも先に音速 \(V\) を補正することが最優先です。
    4. 公式より導出過程を重視: 公式の符号で迷ったら、この問題のように「\(t\) 秒後の波の配置図」を自分で描き、圧縮(または伸長)された波長 \(\lambda’\) を導出する基本に立ち返ることが最も確実な解法です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の符号ミス:
    • 誤解: ドップラー効果の一般式 \(f’ = \displaystyle\frac{V \pm v_O}{V \mp v_S}f\) の分母・分子のプラス・マイナスの符号を暗記しようとして混同する。
    • 対策: 「近づくと音は高くなる(\(f’ > f\))」「遠ざかると音は低くなる(\(f’ < f\))」という物理現象と式を結びつけます。例えば、音源が近づく(\(v_S\))場合、\(f’\)を大きくするには分母を小さくする必要があるので \(V-v_S\) となります。観測者が近づく(\(v_O\))場合、\(f’\)を大きくするには分子を大きくする必要があるので \(V+v_O\) となります。このように、結果から逆算して符号を判断する習慣をつけるとミスが減ります。
  • 音速が変化するという誤解:
    • 誤解: 音源が速さ \(v_S\) で動くと、そこから発射される音の速さが \(V+v_S\) になると考えてしまう(運動量の足し算のようなイメージ)。
    • 対策: 音は「媒質を伝わる振動」であり、打ち出された物体ではありません。「水面に広がる波紋」をイメージしましょう。石を投げ込むボートが動いていても、波紋が広がる速さ自体は変わりません。音速は媒質に対する速さであることを徹底します。
  • 波長と振動数の関係の混同:
    • 誤解: 音源が近づくと振動数が「高く」なるので、波長も「長く」なると勘違いしてしまう。
    • 対策: 波の基本式 \(V=f\lambda\) を常に意識します。音速 \(V\) が一定のとき、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) は反比例の関係にあります。したがって、振動数が高くなる(\(f\) が大)ならば、波長は必ず短く(\(\lambda\) が小)なります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波長の定義 (\(\lambda’ = \displaystyle\frac{\text{波が存在する区間の長さ}}{\text{その区間の波の数}}\)):
    • 選定理由: ③で、音源の運動によって変化した後の波長 \(\lambda’\) を求めるために使用します。これはドップラー効果を数式で表現するための、最も根源的なステップです。
    • 適用根拠: \(t\) 秒という時間を設定し、その間に進んだ「波の先頭」と「音源」の距離の差 \((V-v_S)t\) を求めます。そして、その区間に存在する波の総数 \(ft\) で割ることで、圧縮された波1つあたりの長さ、すなわち新しい波長 \(\lambda’\) が論理的に導出されます。
  • 波の基本式 (\(V = f’\lambda’\)):
    • 選定理由: ⑤で、変化した波長 \(\lambda’\) をもとに、観測者が最終的に聞くことになる振動数 \(f’\) を求めるために使用します。
    • 適用根拠: 観測者にとって、音は(媒質に対して)速さ \(V\) で伝わってきます。そして、その波の空間的な間隔(波長)は \(\lambda’\) になっています。この観測者から見た物理量(\(V\) と \(\lambda’\))を用いて波の基本式を立てることで、観測される時間的な振動数 \(f’\) が一意に定まります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 繁分数の処理: ⑤で登場する \(f’ = \displaystyle\frac{V}{(V-v_S)/f}\) のような、分母に分数が含まれる計算はミスを誘発します。慌てずに「分母の逆数を掛ける」という操作に変換しましょう。\(f’ = V \times \displaystyle\frac{f}{V-v_S}\) のように、一段階、丁寧な式変形を挟むことで、ケアレスミスを大幅に減らせます。
  • 文字式の整理: 最終的な答えの形を常に意識することが重要です。ドップラー効果の公式は、元の振動数 \(f\) に何らかの倍率を掛けた形 \(f’ = (\text{倍率}) \times f\) になることがほとんどです。このゴールを念頭に置いて式を変形していくと、計算の見通しが良くなります。
  • 物理量の代入ミス: \(V, v_S, v_O, f\) などの多くの文字記号が登場するため、どれがどの物理量に対応するのかを常に明確に意識します。特に、問題文で与えられた数値や文字を、公式のどの部分に代入すべきかを、計算を始める前によく確認する癖をつけましょう。

例題58 ドップラー効果とうなり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「動く音源と静止反射板によるドップラー効果、およびうなり」です。音源から直接届く音と、反射板で反射してから届く音の2つの経路を考え、それぞれでドップラー効果を正しく適用できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果(音源が動く場合): 音源が観測者に近づくか遠ざかるかで、観測される波長と振動数が変化します。
  2. 反射板の取り扱い: 反射板が絡む問題は、「(1) 音源→反射板」と「(2) 反射板→観測者」の2段階のドップラー効果として考えます。反射板は一度「観測者」として音を受け、次にその音を発する「音源」として振る舞います。
  3. うなりの公式: 振動数がわずかに異なる2つの音を同時に聞くと、音の強弱が周期的に変化する「うなり」が聞こえます。1秒あたりのうなりの回数は、2つの音の振動数の差の絶対値で与えられます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (2)では、音源Sが観測者Oから「遠ざかる」場合のドップラー効果を考え、波長と振動数を求めます。
  2. (3)では、音源Sが反射板Rに「近づく」場合のドップラー効果を考え、波長と、反射板が「観測者として」聞く振動数を求めます。
  3. (4)では、(3)で求めた振動数の音を、今度は「静止した音源」である反射板Rが発し、それを静止した観測者Oが聞く、という状況を考えます。
  4. (5)では、(2)で求めた直接音の振動数と、(4)で求めた反射音の振動数の差を計算し、うなりの回数を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
音源Sから観測者Oに向かう音について考えます。音源Sは反射板Rの方向(右向き)に速さ \(v_S\) で動いているため、観測者Oから見ると「遠ざかって」います。音源が遠ざかる場合、波は引き伸ばされるため、波長は長くなります。この長くなった波長 \(\lambda_1\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 音源が観測者から遠ざかる場合、波は進行方向後方に引き伸ばされる。
  • 波長 \(\lambda_1\) は、元の波長 \(\lambda = V/f\) よりも長くなる。
  • ドップラー効果の公式 \(\lambda’ = \displaystyle\frac{V \mp v_S}{f}\) において、遠ざかる場合は分子が大きくなる「+」を選択する。

具体的な解説と立式
音源Sは観測者Oから速さ \(v_S\) で遠ざかっています。
ドップラー効果により、観測者Oの方向に進む音の波長 \(\lambda_1\) は、音源が静止している場合の波長 \(\lambda = V/f\) とは異なる値になります。
音源が遠ざかる場合、波は引き伸ばされるため、波長は長くなります。公式を用いると、
$$ \lambda_1 = \frac{V+v_S}{f} $$
となります。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(音源が動く場合)の波長の式: \(\lambda’ = \displaystyle\frac{V \mp v_S}{f}\)
計算過程

この設問は公式を適用するのみであり、複雑な計算はありません。
音源が観測者から遠ざかるため、波長が長くなるように符号を選びます。
$$
\begin{aligned}
\lambda_1 = \frac{V+v_S}{f}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

音源(救急車)が自分から離れていくとき、サイレンの音は間延びして聞こえます。これは、音の波が引き伸ばされて、波一つ一つの長さ(波長)が長くなっているためです。公式では、波長が長くなるように \(V+v_S\) の組み合わせを使います。

結論と吟味

音源が遠ざかるので、波長は元の波長 \(\lambda = V/f\) よりも長くなります。\(V+v_S > V\) であることから、得られた \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V+v_S}{f}\) は物理的に妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{V+v_S}{f}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた波長 \(\lambda_1\) の音波が、音速 \(V\) で静止している観測者Oに届きます。観測者Oが聞く音の振動数 \(f_1\) を、波の基本式 \(V=f\lambda\) を用いて計算します。
この設問における重要なポイント

  • 観測者が観測する物理量(\(V, f_1, \lambda_1\))の間には、波の基本式 \(V = f_1 \lambda_1\) が成り立つ。
  • 音源が遠ざかるので、振動数は元の振動数 \(f\) より低くなるはずである。

具体的な解説と立式
観測者Oは静止しており、音速 \(V\) も変化しません。観測者Oが聞く音の振動数を \(f_1\)、その波長を \(\lambda_1\) とすると、波の基本式が成り立ちます。
$$ V = f_1 \lambda_1 $$
この式を \(f_1\) について解くと、
$$ f_1 = \frac{V}{\lambda_1} $$
となります。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

(1)で求めた \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V+v_S}{f}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{V}{\lambda_1} \\[2.0ex]&= \frac{V}{\displaystyle\frac{V+v_S}{f}} \\[2.0ex]&= V \times \frac{f}{V+v_S} \\[2.0ex]&= \frac{V}{V+v_S}f
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

音の高さ(振動数)は、「速さ ÷ 波長」で決まります。(1)で計算した、間延びした波長 \(\lambda_1\) を使ってこの計算をすると、観測者が実際に聞く低い方の音の高さ \(f_1\) が求まります。

結論と吟味

音源が遠ざかるので、観測者が聞く振動数 \(f_1\) は元の振動数 \(f\) より小さくなるはずです。分母の \(V+v_S\) は \(V\) より大きいので、係数 \(\displaystyle\frac{V}{V+v_S}\) は1より小さくなります。したがって、\(f_1 < f\) となり、結果は物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{V}{V+v_S}f\)

問(3)

思考の道筋とポイント
音源Sから反射板Rに向かう音について考えます。音源Sは反射板Rの方向に速さ \(v_S\) で動いているため、反射板Rから見ると「近づいて」います。音源が近づく場合、波は圧縮されるため、波長は短くなります。この短くなった波長 \(\lambda_2\) と、反射板Rが「観測者として」聞く振動数 \(f_2\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 音源が観測対象(今回は反射板)に近づく場合、波は進行方向前方に圧縮される。
  • 波長 \(\lambda_2\) は元の波長 \(\lambda = V/f\) よりも短くなる。
  • 振動数 \(f_2\) は元の振動数 \(f\) よりも高くなる。

具体的な解説と立式
波長 \(\lambda_2\) の導出
音源Sは反射板Rに速さ \(v_S\) で近づいています。波が圧縮されるため、波長 \(\lambda_2\) は短くなります。公式を用いると、
$$ \lambda_2 = \frac{V-v_S}{f} $$
となります。

振動数 \(f_2\) の導出
反射板Rは静止した観測者とみなせます。この観測者が聞く振動数 \(f_2\) は、波の基本式 \(V = f_2 \lambda_2\) から求められます。
$$ f_2 = \frac{V}{\lambda_2} $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(音源が動く場合)の波長・振動数の式
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

波長 \(\lambda_2\) の計算:
$$
\begin{aligned}
\lambda_2 = \frac{V-v_S}{f}
\end{aligned}
$$
振動数 \(f_2\) の計算:
求めた \(\lambda_2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{V}{\lambda_2} \\[2.0ex]&= \frac{V}{\displaystyle\frac{V-v_S}{f}} \\[2.0ex]&= \frac{V}{V-v_S}f
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

救急車が自分に向かってくるとき、サイレンの音は詰まって(高く)聞こえます。これは波が圧縮されて波長が短くなっているためです。まず、この短くなった波長 \(\lambda_2\) を計算します。次に、その波長を使って「振動数=速さ÷波長」を計算し、反射板が聞くことになる高い音の高さ \(f_2\) を求めます。

結論と吟味

音源が近づくので、波長は短く (\(\lambda_2 < \lambda\))、振動数は高く (\(f_2 > f\)) なるはずです。\(V-v_S < V\) であることから、得られた結果は物理的に妥当です。

解答 (3) \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{V-v_S}{f}\), \(f_2 = \displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\)

問(4)

思考の道筋とポイント
反射板Rで反射した音が、観測者Oに届くときの振動数 \(f_3\) を求めます。これは「反射板を新たな音源とみなす」という考え方が重要です。

  1. 反射板Rは、(3)で求めた振動数 \(f_2\) の音を受け取ります。
  2. 反射板Rは静止しているので、受け取った音をそのままの振動数 \(f_2\) で四方に送り出す「新しい静止音源」と考えられます。
  3. この静止音源(反射板R)から出る音を、静止している観測者Oが聞きます。音源も観測者も静止しているので、この伝播の過程ではドップラー効果は起こりません。

この設問における重要なポイント

  • 反射は「音を吸収して、同じ振動数で再放射する」プロセスと考える。
  • 静止している反射板は、受けた音と同じ振動数を発する「静止音源」になる。
  • 音源と観測者が共に静止している場合、ドップラー効果は生じない。

具体的な解説と立式
反射板Rは、振動数 \(f_2\) の音波を受け取ります。
この反射板Rは静止しているので、振動数 \(f_2\) の音をそのまま全方向に反射します。これを、振動数 \(f_2\) を持つ新しい音源とみなします。
この新しい音源(反射板R)は静止しており、観測者Oも静止しています。
したがって、音源と観測者の間に相対運動がないため、ドップラー効果は起こらず、観測者Oが聞く反射音の振動数 \(f_3\) は、反射板が発する振動数 \(f_2\) と等しくなります。
$$ f_3 = f_2 $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(音源・観測者が共に静止する場合)
計算過程

(3)で求めた \(f_2\) の結果を用います。
$$
\begin{aligned}
f_3 = f_2 = \frac{V}{V-v_S}f
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

山びこを考えると分かりやすいです。静かな山に向かって「ヤッホー」と叫ぶと、山は「ヤッホー」と同じ高さの音を返してくれます。これと同じで、静止している反射板は、受け取った音をそのままの高さで返すスピーカーのようなものです。したがって、観測者が聞く反射音の高さ \(f_3\) は、反射板が受け取った音の高さ \(f_2\) と同じになります。

結論と吟味

反射板と観測者が静止しているため、反射後の音の伝播では振動数が変化しない、という結論は物理的に正しいです。この2段階で考えるアプローチは、反射が絡むドップラー効果の問題の定石です。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\)

問(5)

思考の道筋とポイント
観測者Oは、2つの音を同時に聞きます。一つは音源Sから直接届く音(振動数 \(f_1\))、もう一つは反射板Rで反射してから届く音(振動数 \(f_3\))です。この2つの音の振動数は異なるため、「うなり」が生じます。1秒間に聞こえるうなりの回数 \(N\) は、2つの振動数の差の絶対値で計算できます。
この設問における重要なポイント

  • うなりは、振動数がわずかに異なる2つの波が干渉して生じる現象。
  • うなり振動数(1秒あたりの回数)は \(N = |f_A – f_B|\)。

具体的な解説と立式
観測者Oが聞く直接音の振動数は \(f_1\)、反射音の振動数は \(f_3\) です。
1秒あたりのうなりの回数 \(N\) は、これらの振動数の差の絶対値で与えられます。
$$ N = |f_3 – f_1| $$
ここで、\(f_1 = \displaystyle\frac{V}{V+v_S}f\)、\(f_3 = \displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\) です。音源が近づく方が振動数が高くなるので、\(f_3 > f_1\) です。したがって、絶対値はそのまま外せます。
$$ N = f_3 – f_1 $$

使用した物理公式

  • うなりの公式: \(N = |f_A – f_B|\)
計算過程

\(f_1\) と \(f_3\) の式を代入し、計算します。
$$
\begin{aligned}
N &= f_3 – f_1 \\[2.0ex]&= \frac{V}{V-v_S}f – \frac{V}{V+v_S}f \\[2.0ex]&= Vf \left( \frac{1}{V-v_S} – \frac{1}{V+v_S} \right) \\[2.0ex]&= Vf \left( \frac{(V+v_S) – (V-v_S)}{(V-v_S)(V+v_S)} \right) \\[2.0ex]&= Vf \left( \frac{V+v_S – V+v_S}{V^2 – v_S^2} \right) \\[2.0ex]&= Vf \left( \frac{2v_S}{V^2 – v_S^2} \right) \\[2.0ex]&= \frac{2Vv_S}{V^2 – v_S^2}f
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

観測者は「低い音(直接音)」と「高い音(反射音)」を同時に聞きます。この音の高さの「ずれ」が、1秒間に「ワーンワーン」と聞こえる回数、つまりうなりの回数になります。計算は、単純に2つの振動数を引き算するだけです。分数の引き算なので、通分を間違えないように注意します。

結論と吟味

計算過程は正しく、うなりの回数が求められました。この式は、音源の速さ \(v_S\) が0のとき \(N=0\) となり、音源が静止していれば直接音と反射音の振動数は同じでうなりは生じない、という直感的な事実と一致します。したがって、結果は妥当です。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{2Vv_S}{V^2 – v_S^2}f\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ドップラー効果の複合適用:
    • 核心: この問題は、単一のドップラー効果ではなく、「直接音」と「反射音」という2つの異なる経路で伝わる音に、それぞれドップラー効果を適用する必要がある点です。
    • 理解のポイント:
      • 直接音: 音源S → 観測者O。音源が観測者から「遠ざかる」ため、振動数は低くなります。
      • 反射音: 音源S → 反射板R → 観測者O。この経路は2段階で考えます。
        1. S→R: 音源が反射板に「近づく」ため、反射板が受ける振動数は高くなります。
        2. R→O: 反射板は「静止した音源」として振る舞うため、受けた高い振動数の音をそのまま観測者に送ります。この過程では振動数変化はありません。
  • うなりの原理:
    • 核心: 観測者が最終的に聞く2つの音(直接音と反射音)は、異なるドップラー効果を受けた結果、振動数がわずかに異なります。この振動数の差が「うなり」として観測されます。
    • 理解のポイント: うなりの回数 \(N\) は、2つの振動数 \(f_1\) と \(f_3\) の差の絶対値 \(N = |f_3 – f_1|\) で求められます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 観測者が動く場合: 観測者Oが速さ \(v_O\) で動く場合、直接音と反射音の両方で、観測者の運動によるドップラー効果を追加で考慮する必要があります。例えば、観測者が音源に近づく場合、直接音の振動数は \(f_1′ = \displaystyle\frac{V+v_O}{V+v_S}f\)、反射音の振動数は \(f_3′ = \displaystyle\frac{V+v_O}{V-v_S}f\) となります。
    • 反射板が動く場合: 反射板Rが速さ \(v_R\) で動く場合、反射音の計算がより複雑になります。
      1. S→R: 音源Sと「動く観測者」Rとの間のドップラー効果で、Rが受ける振動数 \(f_R\) を求めます。
      2. R→O: 次に、「速さ \(v_R\) で動く音源」Rが振動数 \(f_R\) の音を出すと考え、観測者Oが聞く振動数 \(f_3\) を求めます。
    • 音源が観測者と反射板の間にいる場合: この場合、音源は観測者には「近づき」、反射板からは「遠ざかる」ことになります。直接音と反射音の振動数の高低関係が逆転します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 音の経路を全て図示する: まず、音源から観測者に至る全ての経路(直接、反射など)を矢印で図に書き込みます。
    2. 各経路で「接近」か「後退」かを判断: 各矢印の区間(例: S→O, S→R, R→O)ごとに、音源と観測者(または反射板)が近づいているか、遠ざかっているかを判断します。
    3. 振動数が「上がる」か「下がる」かを予測: 「接近」なら振動数は上がり、「後退」なら下がると予測を立てます。これは公式の符号選択や計算結果の検算に非常に有効です。
    4. 反射板は「観測者」兼「音源」: 反射板は、まず音を受ける「観測者」として扱い、次に音を出す「音源」として扱う、という2段階の思考を徹底します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 反射音の振動数を一発で計算しようとするミス:
    • 誤解: 音源Sから観測者Oまでの往復距離を考えて、一気に反射音の振動数を計算しようとしてしまう。
    • 対策: 反射は必ず「S→R」と「R→O」の2ステップに分割して考える癖をつけます。反射板が受け取る振動数を \(f_2\) と一旦置き、その \(f_2\) を使って次の計算に進む、という手順を厳守します。
  • 直接音と反射音の状況の混同:
    • 誤解: (1)で音源が遠ざかる状況を考えたのに、(3)でも同じ「遠ざかる」場合の公式を適用してしまう。
    • 対策: 問題を解く前に、各設問がどの経路(S→Oなのか、S→Rなのか)について問うているのかを明確に把握します。図に「遠ざかる」「近づく」と書き込んでおくと、混同を防げます。
  • うなりの計算での通分ミス:
    • 誤解: (5)の \( \displaystyle\frac{V}{V-v_S}f – \frac{V}{V+v_S}f \) のような分数の計算で、通分や分子の引き算を焦って間違える。
    • 対策: \(Vf\) を共通因数として括り出し、\( Vf \left( \dots \right) \) の形にしてからカッコの中を通分すると、計算が少し見やすくなります。計算過程を省略せず、一行一行丁寧に書くことが最も効果的です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ドップラー効果の公式 (\(f’ = \displaystyle\frac{V-v_O}{V-v_S}f\)):
    • 選定理由: この問題の全ての振動数計算の根幹をなす公式です。音源や観測者の運動によって観測される振動数がどう変化するかを記述します。
    • 適用根拠:
      • (2) 直接音 \(f_1\): 音源Sが遠ざかる(\(v_S\))、観測者Oは静止(\(v_O=0\))。振動数が低くなるように分母を \(V+v_S\) とします。→ \(f_1 = \displaystyle\frac{V}{V+v_S}f\)。
      • (3) 反射板が受ける音 \(f_2\): 音源Sが近づく(\(v_S\))、観測者(反射板R)は静止(\(v_O=0\))。振動数が高くなるように分母を \(V-v_S\) とします。→ \(f_2 = \displaystyle\frac{V}{V-v_S}f\)。
      • (4) 反射音 \(f_3\): 音源(反射板R)は静止(\(v_S=0\))、観測者Oも静止(\(v_O=0\))。→ \(f_3 = f_2\)。
  • うなりの公式 (\(N = |f_A – f_B|\)):
    • 選定理由: (5)で、振動数が異なる2つの音波が干渉して生じる現象の大きさを定量化するために使用します。
    • 適用根拠: 観測者は、直接音の振動数 \(f_1\) と反射音の振動数 \(f_3\) を同時に知覚します。うなりという現象は、これらの振動数の差によって生じるため、この公式が直接適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 符号の決定を最初に行う: 計算を始める前に、「この場合は近づくから振動数は上がるはず」「遠ざかるから下がるはず」と物理的な見通しを立て、公式の \(\pm\) 符号を確定させます。計算結果が予測と合っているかを確認する癖をつけましょう。
  • 文字の通分は慎重に: (5)の計算は、高校数学の文字式計算の良い練習になります。特に \((V-v_S)(V+v_S) = V^2 – v_S^2\) という展開公式や、分子の \((V+v_S) – (V-v_S) = 2v_S\) という計算は、符号ミスが起こりやすいポイントです。カッコを丁寧につけて計算を進めましょう。
  • 近似計算の可能性を考える: もし問題で「\(v_S\) は \(V\) に比べて非常に小さい」という条件があれば、(5)の答えは \(N \approx \displaystyle\frac{2v_S}{V}f\) のように近似できる場合があります。問題の条件をよく読み、近似計算が求められていないかを確認することも重要です。
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