Step 2
200 内部エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単原子分子理想気体の内部エネルギーの変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 理想気体の内部エネルギー: 理想気体の内部エネルギーは、気体分子の運動エネルギーの総和であり、気体の絶対温度にのみ比例します。体積や圧力には依存しません。
- 単原子分子の内部エネルギーの公式: 単原子分子(He, Ne, Arなど)からなる理想気体の内部エネルギー\(U\)は、物質量を\(n\)、気体定数を\(R\)、絶対温度を\(T\)として、\(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) と表されます。
- 内部エネルギーの変化: 内部エネルギーの変化\(\Delta U\)は、温度の変化\(\Delta T\)に比例します。つまり、\(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた物質量\(n\)、気体定数\(R\)、そして温度変化\(\Delta T\)を特定します。
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギー変化の公式 \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) に、特定した値を代入して計算します。
- 計算結果を問題文の有効数字に合わせて整理します。
思考の道筋とポイント
この問題は、単原子分子からなる理想気体の内部エネルギーが温度の変化によってどれだけ変わるかを計算するものです。重要なのは、理想気体の内部エネルギーが絶対温度\(T\)のみの関数であることを理解し、正しい公式を選択して適用することです。問題文から必要な数値を正確に読み取り、計算ミスなく答えを導き出すことが求められます。
この設問における重要なポイント
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギーの公式は \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\)。
- 内部エネルギーの変化量は \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)。
- 温度変化\(\Delta T\)は、変化後の温度から変化前の温度を引いて求める。
- 与えられた数値の有効数字に注意して、最終的な答えをまとめる。
具体的な解説と立式
求める内部エネルギーの変化を\(\Delta U\) [J]とします。
単原子分子の理想気体の内部エネルギー\(U\)は、物質量\(n\)、気体定数\(R\)、絶対温度\(T\)を用いて次のように表されます。
$$ U = \frac{3}{2}nRT $$
温度が\(T_{\text{前}} = 273 \text{ K}\)から\(T_{\text{後}} = 323 \text{ K}\)に変化したときの内部エネルギーの変化\(\Delta U\)は、それぞれの温度における内部エネルギーの差として計算できます。
$$ \Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}} = \frac{3}{2}nRT_{\text{後}} – \frac{3}{2}nRT_{\text{前}} $$
この式を整理すると、温度変化\(\Delta T = T_{\text{後}} – T_{\text{前}}\)を用いた以下の関係式が得られます。
$$ \Delta U = \frac{3}{2}nR(T_{\text{後}} – T_{\text{前}}) = \frac{3}{2}nR\Delta T $$
問題文より、\(n = 2.0 \text{ mol}\)、\(R = 8.31 \text{ J/(mol}\cdot\text{K)}\)、温度変化\(\Delta T = 323 – 273 \text{ K}\)です。これらの値をこの式に代入して\(\Delta U\)を求めます。
使用した物理公式
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギーの変化: \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)
まず、温度変化\(\Delta T\)を計算します。
$$ \Delta T = 323 – 273 = 50 \text{ K} $$
次に、この値を内部エネルギー変化の公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= \frac{3}{2} \times 2.0 \times 8.31 \times (323 – 273) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \times 2.0 \times 8.31 \times 50 \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 8.31 \times 50 \\[2.0ex]
&= 249.3 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 1246.5 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている物質量「\(2.0 \text{ mol}\)」は有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ \Delta U \approx 1.2 \times 10^3 \text{ [J]} $$
この問題は、公式に数値を当てはめるだけで解くことができます。使う公式は「単原子分子の内部エネルギーの変化 = (3/2) × 物質量 × 気体定数 × 温度の変化」です。
まず、「温度の変化」を計算します。これは「後の温度」から「前の温度」を引けばよいので、\(323 – 273 = 50 \text{ K}\)となります。
次に、問題文に書かれている「物質量 \(2.0 \text{ mol}\)」「気体定数 \(8.31 \text{ J/(mol}\cdot\text{K)}\)」と、今計算した「温度の変化 \(50 \text{ K}\)」をすべて掛け合わせます。
計算式は \(\displaystyle\frac{3}{2} \times 2.0 \times 8.31 \times 50\) となり、これを計算すると \(1246.5\) となります。
最後に、問題文の数値「\(2.0 \text{ mol}\)」が2桁の数字なので、答えも2桁にそろえる必要があります。\(1246.5\)を上から2桁で表すと\(1200\)となり、科学的な表記法で \(1.2 \times 10^3 \text{ J}\) となります。
求める内部エネルギーの変化は \(1.2 \times 10^3 \text{ J}\) です。
気体の温度が上昇しているため、気体分子の運動はより活発になります。その結果、内部エネルギーは増加するはずです。計算結果が正の値(\(\Delta U > 0\))となっていることから、この結果は物理的に妥当であると言えます。また、有効数字の処理も適切に行われています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 理想気体の内部エネルギーと絶対温度の関係:
- 核心: 理想気体の内部エネルギーは、気体を構成する分子の熱運動による運動エネルギーの総和であり、体積や圧力にはよらず、絶対温度\(T\)にのみ比例するという 基本的な法則を理解することが最も重要です。
- 理解のポイント:
- 温度が上がれば分子の運動は激しくなり、内部エネルギーは増加する。
- 温度が下がれば分子の運動は穏やかになり、内部エネルギーは減少する。
- 単原子分子の内部エネルギーの公式:
- 核心: 上記の関係を数式で表現したものが、単原子分子の理想気体の内部エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) です。この公式を正しく記憶し、適用できることが直接的な得点力になります。
- 理解のポイント:
- \(U\): 内部エネルギー [J]
- \(n\): 物質量 [mol]
- \(R\): 気体定数 [J/(mol・K)]
- \(T\): 絶対温度 [K]
- 内部エネルギーの「変化」\(\Delta U\)を求めるときは、温度の「変化」\(\Delta T\)を用いて、\(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 二原子分子の内部エネルギー: 問題文が「二原子分子」(例: \(H_2\), \(N_2\), \(O_2\))の場合、内部エネルギーの公式は \(U = \displaystyle\frac{5}{2}nRT\) となります。係数が \(\frac{3}{2}\) から \(\frac{5}{2}\) に変わる点に注意が必要です。
- 熱力学第一法則との融合問題: 気体が外部から熱量\(Q\)を吸収し、外部に仕事\(W\)をしたとき、内部エネルギーの変化\(\Delta U\)は \(Q = \Delta U + W\) という関係(熱力学第一法則)を満たします。この問題で求めた\(\Delta U\)を使って、\(Q\)や\(W\)を計算させる問題は頻出です。
- 状態方程式との組み合わせ: 問題によっては、物質量\(n\)や温度\(T\)が直接与えられず、圧力\(p\)と体積\(V\)が与えられることがあります。その場合は、理想気体の状態方程式 \(pV = nRT\) を用いて、必要な量(例えば\(nRT\)の塊など)を導出してから計算します。
- 初見の問題での着眼点:
- 気体の種類を最優先で確認: まず「単原子分子」か「二原子分子」か、あるいはその指定がないかを確認します。これにより、内部エネルギーの公式の係数(\(\frac{3}{2}\)か\(\frac{5}{2}\)か)が決定します。
- 求められているものを明確化: 「内部エネルギー\(U\)」そのものを問われているのか、それとも「内部エネルギーの変化\(\Delta U\)」を問われているのかを区別します。
- 温度の単位を確認: 温度がセルシウス温度(℃)で与えられていないか確認します。熱力学の計算では、必ず絶対温度(K)に変換する必要があります。(変換式: \(T \text{[K]} = t \text{[℃]} + 273.15\))
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 係数(\(\frac{3}{2}\))の間違い:
- 誤解: 単原子分子の問題なのに、二原子分子用の係数\(\frac{5}{2}\)をうっかり使ってしまう。
- 対策: 問題文の「単原子分子」というキーワードに丸を付けるなど、意識的に確認する癖をつけましょう。「単」→3文字→3/2、「二」→2文字→5/2?など、自分なりのこじつけで覚えても効果的です。
- \(\Delta U\)と\(U\)の混同:
- 誤解: 「内部エネルギーの変化を求めよ」と問われているのに、変化後の温度(323 K)を使って、その時点での内部エネルギー \(U = \frac{3}{2}nRT = \frac{3}{2} \times 2.0 \times 8.31 \times 323\) を計算してしまう。
- 対策: 「変化」という言葉は「(後の量)-(前の量)」を意味することを常に意識します。公式 \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\) の \(\Delta\)(デルタ)が「変化量」を表す記号であることを再確認しましょう。
- 有効数字の処理ミス:
- 誤解: 計算結果の \(1246.5\) をそのまま答えにしたり、中途半端に \(1250\) などと丸めてしまったりする。
- 対策: 計算に用いた数値の中で、最も有効数字の桁数が少ないものに合わせるのがルールです。この問題では「\(2.0\) mol」が2桁なので、答えも2桁にします。\(1246.5\) を上から2桁(1と2)で表すには、3桁目の4を四捨五入して \(1200\) とし、\(1.2 \times 10^3\) と表記します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 単原子分子の内部エネルギー変化の公式 (\(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)):
- 選定理由: この問題は、指定された条件下での「単原子分子」の「理想気体」の「内部エネルギーの変化」を計算することが目的です。この公式は、まさにその物理量を、与えられた変数(物質量\(n\)、気体定数\(R\)、温度変化\(\Delta T\))から直接求めるために存在する、最も的確なツールです。
- 適用根拠:
- 「内部エネルギーの変化」を求めたい → \(\Delta U\) を求める式が必要。
- 「単原子分子」と指定されている → 係数は \(\frac{3}{2}\) を選択。
- 「理想気体」とされている → 内部エネルギーは温度のみに依存し、この公式が厳密に成り立つ。
- 与えられた値が \(n, R, \Delta T\) である → 公式の変数と完全に一致しており、直接代入が可能。
- このように、問題文のキーワードと公式の適用条件を一つ一つ照らし合わせることで、論理的にこの公式を選択することができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 代入前の値の整理: 計算を始める前に、問題文から使う数値をリストアップする癖をつけましょう。
- \(n = 2.0 \text{ mol}\)
- \(R = 8.31 \text{ J/(mol}\cdot\text{K)}\)
- \(\Delta T = 323 – 273 = 50 \text{ K}\)
このように整理することで、代入ミスや読み間違いを防ぎます。
- 計算順序の工夫: \(\displaystyle\frac{3}{2} \times 2.0 \times 8.31 \times 50\) のような計算では、掛け算の順序を工夫すると楽になります。
- まず、分数を解消できる組み合わせを探します。\(\frac{3}{2} \times 2.0 = 3.0\) と先に計算します。
- 残りの計算は \(3.0 \times 8.31 \times 50\) となります。
- \(3.0 \times 50 = 150\) なので、計算は \(150 \times 8.31\) となり、筆算がしやすくなります。
- 有効数字の意識: 計算の最終段階で必ず有効数字を確認する習慣をつけます。「問題文の数値の桁数は?」「答えは何桁にすべき?」と自問自答しましょう。特に、物理の問題では測定値に基づいて計算することが多いため、有効数字の扱いは非常に重要です。
201 内部エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「理想気体の内部エネルギーと状態量(p, V, T)の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単原子分子の内部エネルギー: 内部エネルギー\(U\)は、絶対温度\(T\)を用いて \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) と表されます。これは、内部エネルギーが絶対温度に正比例することを意味します。
- 理想気体の状態方程式: 圧力\(p\)、体積\(V\)、物質量\(n\)、気体定数\(R\)、絶対温度\(T\)の間には \(pV=nRT\) の関係が成り立ちます。
- 内部エネルギーの別表現: 上記2つの式を組み合わせることで、\(nRT\)を消去し、内部エネルギーを圧力\(p\)と体積\(V\)で表す \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) という関係式を導くことができます。これは、内部エネルギーが積\(pV\)に正比例することを意味します。
- 状況に応じた公式の選択: 問題の条件によって、\(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) と \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) のどちらを使うと考えやすいかが変わります。この2つの表現を自在に使い分けることが、この問題を効率よく解く鍵となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、絶対温度\(T\)の変化が与えられているため、\(U\)が\(T\)に比例する関係 (\(U \propto T\)) を利用します。
- (2), (3)では、圧力\(p\)や体積\(V\)の変化が与えられているため、\(U\)が積\(pV\)に比例する関係 (\(U \propto pV\)) を利用します。
- (4)では、積\(pV\)が一定という条件が与えられているため、\(U \propto pV\) の関係から内部エネルギーが変化しないことを判断します。
思考の道筋とポイント
この問題は、単原子分子理想気体の内部エネルギーが、状態量(絶対温度\(T\)、圧力\(p\)、体積\(V\))の変化に応じてどのように変わるかを問うています。核心は、内部エネルギー\(U\)が絶対温度\(T\)に比例すること (\(U \propto T\))、そして、状態方程式 \(pV=nRT\) を介して、積\(pV\)にも比例すること (\(U \propto pV\)) を理解し、使い分けることです。
まず、すべての設問を解くための準備として、2つの重要な関係式を導出しておきます。
単原子分子の理想気体の内部エネルギーの公式は、
$$ U = \frac{3}{2}nRT \quad \cdots ① $$
また、理想気体の状態方程式は、
$$ pV = nRT \quad \cdots ② $$
です。式②を式①に代入することで、\(nRT\)を消去し、内部エネルギーを圧力\(p\)と体積\(V\)で表す式を得ます。
$$ U = \frac{3}{2}pV \quad \cdots ③ $$
これで準備は完了です。設問の条件に応じて、式①と式③を使い分けていきます。
問(1)
思考の道筋とポイント
「絶対温度を2倍にする」という条件が与えられています。内部エネルギー\(U\)と絶対温度\(T\)の直接的な関係を示す式①を使えば、簡単に答えを導くことができます。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー\(U\)は絶対温度\(T\)に正比例する (\(U \propto T\))。
具体的な解説と立式
式① \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) より、物質量\(n\)と気体定数\(R\)は定数なので、内部エネルギー\(U\)は絶対温度\(T\)に比例します。
変化前の内部エネルギーを\(U_{\text{前}}\)、絶対温度を\(T_{\text{前}}\)とします。変化後の内部エネルギーを\(U_{\text{後}}\)、絶対温度を\(T_{\text{後}}\)とすると、
$$ U_{\text{前}} = \frac{3}{2}nRT_{\text{前}} $$
$$ U_{\text{後}} = \frac{3}{2}nRT_{\text{後}} $$
となります。問題の条件は \(T_{\text{後}} = 2T_{\text{前}}\) です。
使用した物理公式
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\)
変化後の内部エネルギーが変化前の何倍になるか、比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{U_{\text{後}}}{U_{\text{前}}} &= \frac{\displaystyle\frac{3}{2}nRT_{\text{後}}}{\displaystyle\frac{3}{2}nRT_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{T_{\text{後}}}{T_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{2T_{\text{前}}}{T_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
したがって、内部エネルギーは2倍になります。
内部エネルギーの大きさは、絶対温度に比例します。とてもシンプルな関係なので、「温度が2倍になれば、内部エネルギーも2倍になる」と直感的に理解できます。
絶対温度を2倍にすると、内部エネルギーは2倍になります。
問(2)
思考の道筋とポイント
「体積一定で、圧力を2倍にする」という条件です。温度の変化は直接書かれていません。このような場合は、内部エネルギー\(U\)を圧力\(p\)と体積\(V\)で表した式③を使うと便利です。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に正比例する (\(U \propto pV\))。
具体的な解説と立式
式③ \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) より、内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に比例します。
変化前の状態を \(p_{\text{前}}, V_{\text{前}}, U_{\text{前}}\)、変化後の状態を \(p_{\text{後}}, V_{\text{後}}, U_{\text{後}}\) とすると、
$$ U_{\text{前}} = \frac{3}{2}p_{\text{前}}V_{\text{前}} $$
$$ U_{\text{後}} = \frac{3}{2}p_{\text{後}}V_{\text{後}} $$
となります。問題の条件は「体積一定」なので \(V_{\text{後}} = V_{\text{前}}\)、「圧力を2倍」なので \(p_{\text{後}} = 2p_{\text{前}}\) です。
使用した物理公式
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\)
変化後の内部エネルギーが変化前の何倍になるか、比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{U_{\text{後}}}{U_{\text{前}}} &= \frac{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{(2p_{\text{前}})V_{\text{前}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
したがって、内部エネルギーは2倍になります。
内部エネルギーは「圧力と体積の積(\(pV\))」に比例します。今回は、体積は変わらずに圧力が2倍になるので、積\(pV\)の値も2倍になります。そのため、内部エネルギーも2倍になります。
体積一定で圧力を2倍にすると、内部エネルギーは2倍になります。
問(3)
思考の道筋とポイント
「圧力一定で体積を2倍にする」という条件です。これも問(2)と同様に、内部エネルギー\(U\)を圧力\(p\)と体積\(V\)で表した式③を使うのが効率的です。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に正比例する (\(U \propto pV\))。
具体的な解説と立式
式③ \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) より、内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に比例します。
変化前の状態を \(p_{\text{前}}, V_{\text{前}}, U_{\text{前}}\)、変化後の状態を \(p_{\text{後}}, V_{\text{後}}, U_{\text{後}}\) とすると、
$$ U_{\text{前}} = \frac{3}{2}p_{\text{前}}V_{\text{前}} $$
$$ U_{\text{後}} = \frac{3}{2}p_{\text{後}}V_{\text{後}} $$
となります。問題の条件は「圧力一定」なので \(p_{\text{後}} = p_{\text{前}}\)、「体積を2倍」なので \(V_{\text{後}} = 2V_{\text{前}}\) です。
使用した物理公式
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\)
変化後の内部エネルギーが変化前の何倍になるか、比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{U_{\text{後}}}{U_{\text{前}}} &= \frac{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{p_{\text{前}}(2V_{\text{前}})}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
したがって、内部エネルギーは2倍になります。
内部エネルギーは「圧力と体積の積(\(pV\))」に比例します。今回は、圧力は変わらずに体積が2倍になるので、積\(pV\)の値も2倍になります。そのため、内部エネルギーも2倍になります。
圧力一定で体積を2倍にすると、内部エネルギーは2倍になります。
問(4)
思考の道筋とポイント
「圧力×体積は一定で、圧力を2倍にする」という条件です。「圧力×体積」、つまり積\(pV\)が一定であるという情報が鍵です。内部エネルギー\(U\)と積\(pV\)の関係式③を見れば、答えは明らかです。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に正比例する (\(U \propto pV\))。
- 積\(pV\)が一定ならば、\(U\)も一定である。
具体的な解説と立式
式③ \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) より、内部エネルギー\(U\)は積\(pV\)に比例します。
問題の条件は「圧力×体積は一定」なので、変化の前後で積\(pV\)の値は変わりません。
つまり、\(p_{\text{後}}V_{\text{後}} = p_{\text{前}}V_{\text{前}}\) です。
(ちなみに、この条件を満たすためには、圧力を2倍にすると体積は\(\frac{1}{2}\)倍になる必要があります。)
使用した物理公式
- 単原子分子の理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\)
変化後の内部エネルギーが変化前の何倍になるか、比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{U_{\text{後}}}{U_{\text{前}}} &= \frac{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{\displaystyle\frac{3}{2}p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= \frac{p_{\text{前}}V_{\text{前}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \\[2.0ex]
&= 1
\end{aligned}
$$
したがって、内部エネルギーは変化しません(1倍)。
内部エネルギーは「圧力と体積の積(\(pV\))」に比例します。問題文で、その積\(pV\)の値が「一定」であると明言されています。したがって、それに比例する内部エネルギーも変化するはずがなく、元のまま(1倍)となります。「圧力を2倍にする」という情報は、この問題の結論には影響しない、いわば引っ掛けの情報です。
圧力×体積を一定に保つと、内部エネルギーは変化せず1倍のままです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 内部エネルギーと状態量の比例関係:
- 核心: 単原子分子理想気体の内部エネルギー\(U\)が、絶対温度\(T\)に比例するだけでなく、状態方程式 \(pV=nRT\) を介して、圧力\(p\)と体積\(V\)の積\(pV\)にも比例するという、2つの側面を理解することが全てです。
- 理解のポイント:
- 温度との関係: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\)。これは、\(U\)が\(T\)に正比例すること (\(U \propto T\)) を示します。
- 圧力・体積との関係: 上の式と \(pV=nRT\) を組み合わせると、\(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) となります。これは、\(U\)が積\(pV\)に正比例すること (\(U \propto pV\)) を示します。
- この2つの表現を、問題の条件に応じて自在に使い分ける能力が問われています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 二原子分子の場合: 問題が「二原子分子」に変わっても、内部エネルギーの公式が \(U = \displaystyle\frac{5}{2}nRT = \displaystyle\frac{5}{2}pV\) となるだけで、\(U \propto T\) および \(U \propto pV\) という比例関係は変わりません。したがって、この問題の答えは全く同じになります。
- p-Vグラフ問題: p-Vグラフ上の点A(\(p_A, V_A\))から点B(\(p_B, V_B\))へ状態が変化したときの内部エネルギーの比 (\(U_B/U_A\)) や変化量 (\(\Delta U = U_B – U_A\)) を求める問題。\(U \propto pV\) を利用して、\(U_B/U_A = (p_B V_B) / (p_A V_A)\) のように計算します。
- 熱力学第一法則との組み合わせ: 「圧力一定で体積を2倍にする(設問(3)の状況)」とき、気体がした仕事\(W\)と吸収した熱量\(Q\)を求める問題。内部エネルギーの変化\(\Delta U\)は今回の結果から計算し、仕事は \(W=p\Delta V\)、熱量は \(Q = \Delta U + W\) で求めます。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた条件は何か?: まず、問題文がどの状態量(\(p, V, T\))の変化について述べているかを確認します。
- どの公式が最短ルートか判断:
- 条件が「温度\(T\)」に関するものなら、\(U \propto T\) を使うのが最も速い。
- 条件が「圧力\(p\)」や「体積\(V\)」に関するものなら、\(U \propto pV\) を使うのが断然速い。わざわざ状態方程式で温度の変化を計算するのは遠回りです。
- 「一定」という条件を見逃さない: (4)のように「\(pV=\text{一定}\)」という条件は非常に強力です。これを見つけたら、他の情報に惑わされず、即座に「\(U\)も一定」と結論付けます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 内部エネルギーが圧力や体積に単独で比例すると誤解する:
- 誤解: (2)で「圧力が2倍だから内部エネルギーも2倍」、(3)で「体積が2倍だから内部エネルギーも2倍」と短絡的に考えてしまう。結果は合っていますが、論理が不正確です。この考え方だと、(4)で「圧力が2倍だから内部エネルギーも2倍」と答えて間違えます。
- 対策: 内部エネルギーは、あくまで圧力と体積の「積」\(pV\)に比例することを徹底的に頭に叩き込む。「\(U \propto pV\)」とセットで覚え、\(p\)だけ、\(V\)だけでは決まらないことを意識しましょう。
- 2つの公式をうまく使い分けられない:
- 誤解: (2)や(3)のような\(p,V\)の条件が与えられたときに、\(U = \frac{3}{2}nRT\) の式しか思い浮かばず、まず状態方程式 \(pV=nRT\) から温度の変化を計算し、それから内部エネルギーの変化を考える、という面倒な手順を踏んでしまう。
- 対策: 問題を解き始める前に、\(U = \frac{3}{2}nRT\) と \(U = \frac{3}{2}pV\) の2つの公式を両方書き出しておく。そして、「今回はどっちが楽か?」と自問する習慣をつけましょう。
- (4)の「圧力を2倍にする」という情報に惑わされる:
- 誤解: 「\(pV=\text{一定}\)」という条件を見落とし、あるいは軽視して、「圧力を2倍にする」という部分だけを見てしまい、答えを「2倍」としてしまう。
- 対策: 問題文の条件はすべて等しく重要です。特に「〜は一定」という拘束条件は、物理現象の性質を決定づける最も重要な情報であることが多いです。この条件から何が言えるかを最優先で考えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(U = \frac{3}{2}nRT\) と \(U = \frac{3}{2}pV\) の戦略的使い分け:
- 選定理由: この問題は、様々な条件下での内部エネルギーの変化を問うています。内部エネルギーは複数の式で表現できるため、各設問の「インプット情報(与えられた条件)」から「アウトプット(答え)」への思考プロセスが最も単純になる公式を選択するのが賢明です。
- 適用根拠と思考法:
- 設問(1): インプットが「\(T\)の変化」。アウトプットは「\(U\)の変化」。→ \(U\)と\(T\)を直接結ぶ \(U = \frac{3}{2}nRT\) を選択するのが論理的。
- 設問(2)〜(4): インプットが「\(p, V, pV\)の変化」。アウトプットは「\(U\)の変化」。→ \(U\)と\(p,V\)を直接結ぶ \(U = \frac{3}{2}pV\) を選択するのが論理的。
- このように、「どの変数とどの変数の関係が問われているか」を分析し、それらを最もシンプルに結びつける公式を選ぶ、という思考法が極めて有効です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比例関係の明記: この問題は具体的な数値計算はありませんが、思考のミスを防ぐために、計算用紙の最初に \(U \propto T\) と \(U \propto pV\) を大きく書いておくと良いでしょう。これにより、常に正しい比例関係に立ち返ることができます。
- 変化の比を式で立てる: 感覚や暗算で「2倍」と判断するのではなく、面倒でも一度は \( \displaystyle\frac{U_{\text{後}}}{U_{\text{前}}} = \frac{p_{\text{後}}V_{\text{後}}}{p_{\text{前}}V_{\text{前}}} \) のような比の式を立てる練習をしましょう。この習慣が、より複雑な条件(例:圧力を1.5倍、体積を0.8倍にしたら?)が出題されたときに、確実な計算力として生きてきます。
- 条件の整理と可視化: 各設問について、変化の前後で状態量がどうなるかを簡単な表にまとめると、思考が整理されます。
- 例(問4):
\(p\) \(V\) \(pV\) \(U\) 前 \(p_{\text{前}}\) \(V_{\text{前}}\) \(p_{\text{前}}V_{\text{前}}\) \(U_{\text{前}}\) 後 \(2p_{\text{前}}\) \(\frac{1}{2}V_{\text{前}}\) \(p_{\text{前}}V_{\text{前}}\) \(U_{\text{前}}\) - このように可視化することで、「\(pV\)が一定だから\(U\)も一定」という関係が一目瞭然になります。
- 例(問4):
202 定圧変化のときの仕事
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「定圧変化におけるシャルルの法則と気体のする仕事」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- シャルルの法則: 圧力が一定のとき、気体の体積\(V\)は絶対温度\(T\)に比例します。数式で表すと \(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\) となります。
- 気体がする仕事: 気体が膨張または収縮するとき、外部に対して仕事をしたり、されたりします。
- 定圧変化における仕事の公式: 圧力が\(p\)で一定のまま体積が\(\Delta V\)だけ変化したとき、気体が外部にする仕事\(W\)は \(W = p\Delta V\) で計算できます。
- 状態変化の特定: 問題文の「圧力一定で」という記述から、今回の変化が「定圧変化」であることを正確に読み取ることが出発点となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、問題文が「圧力一定」の定圧変化であることを確認し、シャルルの法則を適用して変化後の体積を求めます。
- 次に、求めた体積変化\(\Delta V\)と一定の圧力\(p\)を用いて、気体が外部にした仕事の公式 \(W = p\Delta V\) で仕事を計算します。
問(1) 変化後の体積
思考の道筋とポイント
この問題は、圧力一定の条件下で理想気体の温度を変化させたときの体積を求めるものです。問題文の「圧力一定で」というキーワードから、これが「定圧変化」であり、「シャルルの法則」が適用できると判断することが最初のステップです。与えられた初期状態(体積と温度)と変化後の温度を使って、変化後の体積を計算します。
この設問における重要なポイント
- 圧力一定の変化(定圧変化)では、シャルルの法則が成り立つ。
- シャルルの法則の公式は \(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\)。
- 計算には必ず絶対温度(単位: K)を用いる。
具体的な解説と立式
変化前の体積を \(V_1 = 0.060 \text{ m}^3\)、絶対温度を \(T_1 = 300 \text{ K}\) とします。
変化後の体積を \(V_2\)、絶対温度を \(T_2 = 400 \text{ K}\) とします。
圧力が一定の条件下では、シャルルの法則が成り立ちます。
$$ \frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2} $$
この式に与えられた値を代入して、未知の体積\(V_2\)を求めます。
使用した物理公式
- シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\)
シャルルの法則の式に、具体的な数値を代入します。
$$ \frac{0.060}{300} = \frac{V_2}{400} $$
この式を\(V_2\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{0.060}{300} \times 400 \\[2.0ex]
&= 0.060 \times \frac{4}{3} \\[2.0ex]
&= 0.080 \text{ [m}^3\text{]}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられた数値(\(1.0 \times 10^5\) Pa, \(0.060 \text{ m}^3\))の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁で表します。
$$ V_2 = 8.0 \times 10^{-2} \text{ [m}^3\text{]} $$
圧力が一定のとき、気体の体積は絶対温度に正比例します。温度が300Kから400Kへ、つまり \(\frac{400}{300} = \frac{4}{3}\) 倍になったので、体積も同じく \(\frac{4}{3}\) 倍になります。元の体積 \(0.060 \text{ m}^3\) を \(\frac{4}{3}\) 倍して、\(0.060 \times \frac{4}{3} = 0.080 \text{ m}^3\) と計算できます。
変化後の体積は \(8.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\) です。温度が上昇したことで気体が膨張し、体積が初期の \(0.060 \text{ m}^3\) から増加するという結果は、物理的に妥当です。
問(2) 気体が外部にした仕事
思考の道筋とポイント
次に、この定圧変化の過程で気体が外部にした仕事を求めます。変化の種類が「定圧変化」であることから、仕事の計算には専用の公式 \(W = p\Delta V\) を使うことができます。圧力\(p\)は問題文で与えられており、体積の変化量\(\Delta V\)は、問(1)で求めた変化後の体積と初期体積の差から計算できます。
この設問における重要なポイント
- 定圧変化で気体が外部にする仕事の公式は \(W = p\Delta V = p(V_{\text{後}} – V_{\text{前}})\)。
- 体積が増加(膨張)した場合、気体は外部に正の仕事をする (\(W > 0\))。
- 計算に用いる物理量の単位を正しく揃える(圧力: Pa, 体積: m³)。
具体的な解説と立式
気体が外部にした仕事を\(W\) [J]とします。
圧力が\(p\)で一定の変化(定圧変化)において、気体がする仕事は次式で与えられます。
$$ W = p\Delta V = p(V_2 – V_1) $$
ここで、圧力 \(p = 1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)、初期体積 \(V_1 = 0.060 \text{ m}^3\)、そして問(1)で求めた後の体積 \(V_2 = 0.080 \text{ m}^3\) を代入して\(W\)を計算します。
使用した物理公式
- 定圧変化で気体がする仕事: \(W = p\Delta V\)
仕事の公式に、具体的な数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
W &= (1.0 \times 10^5) \times (0.080 – 0.060) \\[2.0ex]
&= (1.0 \times 10^5) \times 0.020 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 \times 2.0 \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^{5-2} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^3 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
気体が膨らむとき、それは周りの環境を押しのけていることになり、物理ではこれを「仕事をした」と表現します。圧力が一定のときの仕事量は、「圧力 × 増えた体積」という非常にシンプルな掛け算で求められます。
圧力は \(1.0 \times 10^5\) Pa、増えた体積は \(0.080 – 0.060 = 0.020 \text{ m}^3\) です。
この2つの値を掛け合わせると、\(1.0 \times 10^5 \times 0.020 = 2000\) となります。これを有効数字2桁の科学表記にすると \(2.0 \times 10^3 \text{ J}\) となります。
気体が外部にした仕事は \(2.0 \times 10^3 \text{ J}\) です。気体は膨張(体積が増加)しているので、外部に対して正の仕事をしたことになります。計算結果が正の値であることから、この答えは物理的に妥当であると言えます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 定圧変化における物理法則の適用:
- 核心: この問題は「圧力一定」という条件下で起こる「定圧変化」を扱っています。この特定の状況で適用される2つの重要な法則を理解し、使い分けることが核心です。
- 理解のポイント:
- 状態量の変化(シャルルの法則): 圧力が一定のとき、気体の体積\(V\)は絶対温度\(T\)に比例する (\(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\))。これにより、温度の変化から体積の変化を予測できます。
- 気体がする仕事: 圧力が\(p\)で一定のまま体積が\(\Delta V\)変化したとき、気体が外部にする仕事\(W\)は \(W = p\Delta V\) で計算できます。これは、p-Vグラフ上で定圧変化が描く長方形の面積に相当します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 他の状態変化:
- 定積変化: 体積一定で加熱する場合。シャルルの法則の代わりにゲイ=リュサックの法則 (\(\frac{p}{T} = \text{一定}\)) を使います。体積変化がゼロなので、気体がする仕事は \(W=0\) となります。
- 等温変化: 温度一定で膨張・収縮する場合。ボイルの法則 (\(pV = \text{一定}\)) を使います。このとき、圧力は一定ではないため、仕事の計算に \(W=p\Delta V\) は使えません。
- 熱力学第一法則との融合問題: この問題の状況で「気体が吸収した熱量\(Q\)」を問う問題。まず内部エネルギーの変化 \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\) を計算し(単原子分子の場合)、今回求めた仕事\(W\)と合わせて、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) から\(Q\)を求めます。
- p-Vグラフ問題: p-Vグラフが与えられ、ある点から別の点への状態変化(例えば、横軸に平行な移動=定圧変化)について、体積や仕事などを読み取らせる問題。
- 他の状態変化:
- 初見の問題での着眼点:
- 「何変化」かを見抜く: 問題文中の「圧力一定」「体積一定」「温度一定」「熱の出入りがなく」といったキーワードを最優先で探し、変化の種類(定圧、定積、等温、断熱)を特定します。
- 問われている物理量は何か?: 変化後の状態量(\(p, V, T\))なのか、それとも過程の量(仕事\(W\)、熱量\(Q\)、内部エネルギー変化\(\Delta U\))なのかを明確にします。
- 適切な公式を選択: 特定した変化の種類と、問われている物理量に応じて、最も適切な法則(シャルルの法則など)や公式(\(W=p\Delta V\)など)を選択します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 温度の単位ミス(絶対温度 vs セルシウス温度):
- 誤解: シャルルの法則の式に、もし問題がセルシウス温度(℃)で与えられた場合に、そのまま代入してしまう。
- 対策: 熱力学の計算(状態方程式、ボイル・シャルルの法則など)で使う温度は、常に「絶対温度(K)」であると徹底して覚える。問題文に℃が出てきたら、計算を始める前に必ずKに変換する(\(T[\text{K}] = t[^\circ\text{C}] + 273\))癖をつけましょう。
- 仕事の公式 \(W=p\Delta V\) の乱用:
- 誤解: 圧力や体積が変化する問題なら、どんな変化でもこの公式が使えると勘違いし、等温変化や断熱変化で使ってしまう。
- 対策: この公式は「圧力\(p\)が一定」という特別な条件だからこそ使える「定圧変化専用」の公式であると強く認識する。仕事はp-Vグラフの面積であり、面積が単純な長方形(縦\(p\) × 横\(\Delta V\))になるのは定圧変化のときだけ、とイメージで理解するのが効果的です。
- 有効数字の扱い:
- 誤解: 計算結果の \(0.080\) を \(0.08\) と書いたり、\(2.0 \times 10^3\) を \(2 \times 10^3\) と書いたりして、有効数字の桁数を間違える。
- 対策: 計算に用いた数値(この問題では \(1.0 \times 10^5\) や \(0.060\))の有効数字が2桁であることを確認し、最終的な答えも2桁に揃える意識を持つ。科学表記では、たとえ末尾が0でも有効数字として意味を持つ(\(8.0\) は \(8\) とは精度が違う)ことを理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- シャルルの法則 (\(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\)):
- 選定理由: 問題の前半は「圧力一定」という条件下で、既知の「初期体積・初期温度」と「最終温度」から、未知の「最終体積」を求めることが目的です。シャルルの法則は、まさにこの状況(定圧)における体積と温度の関係を直接的に結びつける法則であり、これ以外に選択肢はありません。
- 適用根拠: 問題文に「圧力一定で」と明確に書かれていることが、この法則を選択する唯一かつ絶対的な根拠です。
- 定圧変化における仕事の公式 (\(W = p\Delta V\)):
- 選定理由: 問題の後半は「定圧変化」という過程で「気体がした仕事」を求めることが目的です。この公式は、その特定の状況のために導出された最もシンプルで直接的な計算式です。
- 適用根拠: 本来、気体のする仕事は圧力と体積変化の積を積分したもの (\(W = \int p dV\)) です。しかし、「圧力が一定」という条件があるため、定数である\(p\)を積分の外に出すことができ、\(W = p \int dV = p\Delta V\) と劇的に単純化されます。この公式が使えるのは、ひとえに「圧力一定」という条件のおかげなのです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の統一: 計算を始める前に、すべての物理量の単位が基本単位(SI単位系)に揃っているかを確認する癖をつけましょう。圧力は[Pa]、体積は[m³]、温度は[K]です。
- 指数の計算: \( (1.0 \times 10^5) \times 0.020 \) のような計算は、小数も指数表記に直すとミスが減ります。
- \(0.020\) を \(2.0 \times 10^{-2}\) と考えます。
- 式は \( (1.0 \times 10^5) \times (2.0 \times 10^{-2}) \) となります。
- 係数部分(\(1.0 \times 2.0 = 2.0\))と指数部分(\(10^5 \times 10^{-2} = 10^{5-2} = 10^3\))を別々に計算し、最後に合体させて \(2.0 \times 10^3\) とします。これにより、ゼロの数を数え間違えるといったケアレスミスを防げます。
- 分数の計算の工夫: \(V_2 = \frac{0.060}{300} \times 400\) の計算では、いきなり \(0.060 \div 300\) を実行するのではなく、まず分数を約分するのが賢明です。
- \(\frac{400}{300}\) を先に計算して \(\frac{4}{3}\) とします。
- 式は \(V_2 = 0.060 \times \frac{4}{3}\) となり、見通しが良くなります。
- \(0.060 \div 3 = 0.020\) を先に計算し、それに4を掛けて \(0.080\) を得る、という手順なら暗算も容易です。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]