「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 12】Step1 & 例題

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

Step1

① 絶対温度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「セ氏温度と絶対温度の変換」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. セ氏温度(セルシウス温度)の定義と基準点。
  2. 絶対温度(ケルビン)の定義と基準点(絶対零度)。
  3. セ氏温度と絶対温度の変換公式。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられたセ氏温度の値を確認する。
  2. セ氏温度と絶対温度の変換公式に値を代入する。
  3. 計算して絶対温度を求める。

思考の道筋とポイント
物理学、特に気体の状態方程式などを扱う熱力学の分野では、温度の基準として「絶対温度」を用います。私たちが日常で使う「セ氏温度」とは目盛りの間隔は同じですが、基準となる0点の位置が異なります。この問題では、基本的な変換公式を正しく使えるかが問われています。セ氏温度に\(273\)を足すだけで絶対温度に変換できる、という関係をしっかりと覚えておきましょう。

この設問における重要なポイント

  • 絶対温度 \(T\) の単位はケルビン(K)、セ氏温度 \(t\) の単位はセルシウス度(℃)です。
  • 両者の関係は、\(T \text{[K]} = t \text{[℃]} + 273\) という簡単な足し算で表されます。
  • この関係は、物質の分子運動が完全に停止する理論上の最低温度「絶対零度」を基準にしています。絶対零度は \(0\) K であり、これは \(-273\) ℃ に相当します。
  • 温度の「変化量」を考える場合、\(1\)℃の上昇は \(1\)K の上昇と等しくなります。

具体的な解説と立式
この問題は、セ氏温度で与えられた値を絶対温度に変換する計算です。
与えられたセ氏温度を \(t\) [℃]、求める絶対温度を \(T\) [K] とします。
問題文から、\(t = 27\) ℃ です。
セ氏温度と絶対温度の間には、次の関係式が成り立ちます。
$$ T = t + 273 $$
この式に、与えられた値を代入して \(T\) を求めます。

使用した物理公式

  • 絶対温度とセ氏温度の変換公式: \(T \text{[K]} = t \text{[℃]} + 273\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、\(t=27\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= 27 + 273 \\[2.0ex]&= 300
\end{aligned}
$$
したがって、絶対温度は \(300\) K となります。

計算方法の平易な説明

物理で使う「絶対温度(K)」は、普段私たちが天気予報などで目にする「セ氏温度(℃)」に、\(273\) という数字を足すだけで計算できます。
今回は「\(27\)℃」なので、計算式は \(27 + 273\) となります。
これを計算すると \(300\) になるので、答えは \(300\) K です。とてもシンプルですね。

解答 300 K

② 熱膨張

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「固体の線膨張」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 線膨張の概念:温度の上昇に伴い、物体の長さが変化する現象。
  2. 線膨張率の定義:温度が1K(または1℃)上昇したときの、元の長さに対する長さの増加割合。
  3. 線膨張の公式:伸びの長さ \(\Delta L\) は、元の長さ \(L_0\)、線膨張率 \(\alpha\)、温度変化 \(\Delta T\) を用いて \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\) と表される。
  4. 単位の換算:計算結果の単位を問題の要求に合わせる(mからcmへ)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、元の長さ \(L_0\)、温度変化 \(\Delta T\)、線膨張率 \(\alpha\) の値を特定する。
  2. 伸びの長さを求める公式 \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\) に値を代入する。
  3. 計算して伸びの長さ \(\Delta L\) をメートル(m)単位で求める。
  4. 求めた値をセンチメートル(cm)単位に換算し、有効数字を考慮して解答する。

思考の道筋とポイント
物質は温度が上がると、それを構成する原子の熱運動が激しくなり、原子間の平均距離が大きくなるため膨張します。特に、レールのような細長い物体の場合、長さ方向の伸び(線膨張)が顕著になります。
この伸びの長さ \(\Delta L\) は、元の長さ \(L_0\) が長いほど、温度変化 \(\Delta T\) が大きいほど、そして物質固有の「線膨張率 \(\alpha\)」が大きいほど、大きくなります。この関係をまとめたのが公式 \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\) です。この公式を正しく適用することが、この問題を解くための最も直接的な方法です。

この設問における重要なポイント

  • 伸びの長さを求める公式: \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\)。この公式を使うと、直接伸びの長さを計算できるため効率的です。
  • 変化後の全長を求める公式: \(L = L_0 (1 + \alpha \Delta T)\)。ここから \(L\) を求めて、\(\Delta L = L – L_0\) と計算することも可能ですが、少し手間が増えます。
  • 温度変化 \(\Delta T\): 温度の「差」を考える場合、セ氏温度(℃)で計算しても絶対温度(K)で計算しても結果は同じです。(\(40℃ – 0℃ = 40℃\), \((40+273)\text{K} – (0+273)\text{K} = 40\text{K}\))。線膨張率の単位が /K なので、温度変化もKで扱うのが基本です。
  • 単位の統一と換算: 計算の基本は単位を揃えることです。\(L_0\) をメートル(m)で計算すると、\(\Delta L\) もメートル(m)で求まります。最後に問題で要求されているセンチメートル(cm)に直すのを忘れないようにしましょう。

具体的な解説と立式
レールが伸びる長さを \(\Delta L\) とします。
問題文から与えられている値は以下の通りです。

  • 0℃のときのレールの長さ \(L_0 = 30\) [m]
  • 温度変化 \(\Delta T = 40\text{℃} – 0\text{℃} = 40\text{℃} = 40\) [K]
  • 鉄の線膨張率 \(\alpha = 1.2 \times 10^{-5}\) [/K]

伸びの長さ \(\Delta L\) は、公式 \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\) を用いて計算できます。
まず、単位をmで統一して \(\Delta L\) を求めます。
$$ \Delta L = L_0 \alpha \Delta T $$
この式に上記の値を代入して立式します。

使用した物理公式

  • 線膨張による伸びの長さの公式: \(\Delta L = L_0 \alpha \Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、各値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= L_0 \alpha \Delta T \\[2.0ex]&= 30 \times (1.2 \times 10^{-5}) \times 40 \\[2.0ex]&= (30 \times 40) \times 1.2 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&= 1200 \times 1.2 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&= 1440 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&= 0.0144 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
ここで求まった \(\Delta L\) の単位はメートル(m)です。問題ではセンチメートル(cm)で問われているため、単位を換算します。
\(1 \text{ m} = 100 \text{ cm}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 0.0144 \text{ [m]} \times 100 \text{ [cm/m]} \\[2.0ex]&= 1.44 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている数値(30m, 40℃, 1.2×10⁻⁵/K)の有効数字は2桁なので、解答も有効数字2桁で答えるのが適切です。したがって、1.44cmを四捨五入して \(1.4\) cmとします。

計算方法の平易な説明

電車のレールなどが夏に伸びて冬に縮む、という話を聞いたことがあるかもしれません。これが「熱膨張」です。どれくらい伸びるかは、以下の3つの要素の掛け算で決まります。

  1. 元の長さ(今回は \(30\) m)
  2. どれだけ温度が上がったか(今回は \(40\) ℃)
  3. その物質がどれくらい伸びやすいかを示す「線膨張率」(今回は \(1.2 \times 10^{-5}\))

これらをすべて掛け合わせると、伸びる長さがメートル単位で出てきます。
計算式:\(30 \times 40 \times (1.2 \times 10^{-5}) = 0.0144\) [m]問題は「何cmか?」と聞いているので、メートルをセンチメートルに直します。1mは100cmなので、\(0.0144 \times 100 = 1.44\) cmとなります。
最後に、答えの桁数を問題文に合わせて \(1.4\) cmとします。

解答  1.4 cm

③ 熱容量・比熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱容量と比熱の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量、熱容量、比熱のそれぞれの定義の理解。
  2. 熱容量を求める公式 \(Q = C \Delta T\)。
  3. 比熱を求める公式 \(Q = mc \Delta T\)。
  4. 熱容量と比熱の関係 \(C = mc\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から与えられた熱量 \(Q\)、質量 \(m\)、温度変化 \(\Delta T\) を整理する。
  2. 熱容量 \(C\) を求めるために、公式 \(Q = C \Delta T\) を用いて \(C\) を計算する。
  3. 比熱 \(c\) を求めるために、公式 \(Q = mc \Delta T\) を用いて \(c\) を計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、「熱容量」と「比熱」という2つの似た概念の違いを正しく理解し、それぞれの公式を使い分けることが核心となります。
「熱容量」は、ある「物体そのもの」の温まりにくさを示す指標です。つまり、その金属球全体を1K温めるのに必要な熱量を指します。
一方、「比熱」は、その物体を構成する「物質」の温まりにくさを示す指標です。つまり、その金属1gあたりを1K温めるのに必要な熱量を指します。
問題で与えられた熱量、質量、温度変化の値を使って、それぞれの定義に基づいた公式に当てはめていけば、機械的に答えを導き出すことができます。

この設問における重要なポイント

  • 熱容量 \(C\) [J/K]: 物体を1K温度上昇させるのに必要な熱量。物体の質量に依存します。
  • 比熱 \(c\) [J/(g·K)]: 物質1gを1K温度上昇させるのに必要な熱量。物質固有の値です。
  • 熱量 \(Q\) [J]: 物体に与えられたエネルギー。
  • 公式の関係: \(Q = C \Delta T\) と \(Q = mc \Delta T\) を比較すると、熱容量と比熱の間には \(C = mc\) という関係があることがわかります。
  • 与えられた値の整理:
    • 質量 \(m = 5.0\) g
    • 加えた熱量 \(Q = 84\) J
    • 温度上昇 \(\Delta T = 40\) K

具体的な解説と立式
この問題では、熱容量 \(C\) と比熱 \(c\) の両方を求めます。

  1. 金属球の熱容量 \(C\) [J/K] の計算
    加えた熱量を \(Q\)、温度上昇を \(\Delta T\) とすると、熱容量 \(C\) との間には次の関係があります。
    $$ Q = C \Delta T $$
    この式に \(Q=84\) J、\(\Delta T=40\) K を代入して \(C\) を求めます。
  2. 金属の比熱 \(c\) [J/(g·K)] の計算
    質量を \(m\) とすると、比熱 \(c\) との間には次の関係があります。
    $$ Q = mc \Delta T $$
    この式に \(Q=84\) J、\(m=5.0\) g、\(\Delta T=40\) K を代入して \(c\) を求めます。

使用した物理公式

  • 熱量と熱容量の関係: \(Q = C \Delta T\)
  • 熱量と比熱の関係: \(Q = mc \Delta T\)
計算過程
  1. 熱容量 \(C\) の計算
    \(Q = C \Delta T\) より、\(C\) について解くと次のようになります。
    $$
    \begin{aligned}
    C &= \displaystyle\frac{Q}{\Delta T} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{84}{40} \\[2.0ex]&= 2.1 \text{ [J/K]}
    \end{aligned}
    $$
  2. 比熱 \(c\) の計算
    \(Q = mc \Delta T\) より、\(c\) について解くと次のようになります。
    $$
    \begin{aligned}
    c &= \displaystyle\frac{Q}{m \Delta T} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{84}{5.0 \times 40} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{84}{200} \\[2.0ex]&= 0.42 \text{ [J/(g·K)]}
    \end{aligned}
    $$
計算方法の平易な説明

「熱容量」と「比熱」は、どちらも「温まりにくさ」を表しますが、対象が少し違います。

  • 熱容量:その「モノ全体」(この問題では5.0gの金属球)を1K温めるのに必要な熱量。
  • 比熱:その「材料1gあたり」を1K温めるのに必要な熱量。

計算はそれぞれの定義通りに行います。

  • 熱容量の計算
    金属球全体を40K温めるのに84J必要でした。では、1K温めるには?
    \(84 \text{ J} \div 40 \text{ K} = 2.1 \text{ J/K}\)
    となります。
  • 比熱の計算
    5.0gの金属を40K温めるのに84J必要でした。では、1gあたりを1K温めるには?
    まず、質量で割って1gあたりに必要な熱量を求め、さらに温度で割って1Kあたりを求めます。
    \(84 \text{ J} \div (5.0 \text{ g} \times 40 \text{ K}) = 84 \div 200 = 0.42 \text{ J/(g·K)}\)
    となります。

ちなみに、求めた熱容量と比熱は「熱容量 = 質量 × 比熱」という関係になっています。
\(2.1 = 5.0 \times 0.42\) となり、計算が合っていることも確認できますね。

解答  熱容量: 2.1 J/K, 比熱: 0.42 J/(g·K)

④ 熱量

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「比熱を用いた熱量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量の計算公式 \(Q=mc\Delta T\) の理解。
  2. 比熱の定義(物質1gを1K温度上昇させるのに必要な熱量)。
  3. 単位の統一の重要性(特に質量単位のkgとg)。
  4. 温度変化の計算(セ氏温度の差は絶対温度の差に等しい)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から質量\(m\)、比熱\(c\)、温度変化\(\Delta T\)を読み取る。
  2. 計算に用いる公式 \(Q=mc\Delta T\) の各物理量の単位を確認し、統一する。
  3. 公式に値を代入して必要な熱量\(Q\)を計算する。

思考の道筋とポイント
ある物体を温めるのに必要な熱量 \(Q\) は、その物体の「質量 \(m\)」、「物質の種類(比熱 \(c\))」、そして「どれだけ温度を上げるか(温度変化 \(\Delta T\))」によって決まります。この関係は \(Q=mc\Delta T\) というシンプルな公式で表されます。
この問題を解く上で最も注意すべき点は、与えられた物理量の「単位」です。質量はキログラム[kg]で与えられているのに対し、比熱はグラム[g]を基準にした単位 [J/(g·K)] となっています。計算を行う前に、これらの単位を揃える必要があります。今回は、質量をkgからgに換算してから計算を進めるのがスムーズです。

この設問における重要なポイント

  • 熱量の公式: \(Q = mc\Delta T\)。
    • \(Q\): 熱量 [J]
    • \(m\): 質量 [g] (比熱の単位に合わせる)
    • \(c\): 比熱 [J/(g·K)]
    • \(\Delta T\): 温度変化 [K]
  • 単位換算: \(1 \text{ kg} = 1000 \text{ g} = 10^3 \text{ g}\)。この関係を使って、質量の単位を比熱の単位に合わせます。
  • 温度変化 \(\Delta T\): 温度の「差」を考える場合、セ氏温度(℃)で計算しても絶対温度(K)で計算しても結果は同じです。
    \(\Delta T = 50\text{℃} – 0\text{℃} = 50\text{℃}\)。これは \(50\) K の温度上昇と等しいです。

具体的な解説と立式
求める熱量を \(Q\) [J] とします。
熱量を計算する公式は \(Q = mc\Delta T\) です。
問題文から与えられている値は以下の通りです。

  • 質量 \(m = 1.0 \times 10^{-2}\) [kg]
  • 水の比熱 \(c = 4.2\) [J/(g·K)]
  • 温度変化 \(\Delta T = 50\text{℃} – 0\text{℃} = 50\) [K]

計算の前に、質量の単位を比熱の単位に合わせて、kgからgに換算します。
$$ m = 1.0 \times 10^{-2} \text{ [kg]} = 1.0 \times 10^{-2} \times 10^3 \text{ [g]} = 10 \text{ [g]} $$
これらの値を熱量の公式に代入して立式します。
$$ Q = mc\Delta T $$

使用した物理公式

  • 熱量の計算公式: \(Q = mc\Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で準備した値を、公式 \(Q = mc\Delta T\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= mc\Delta T \\[2.0ex]&= 10 \times 4.2 \times 50 \\[2.0ex]&= 42 \times 50 \\[2.0ex]&= 2100 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字が2桁(1.0, 4.2, 50)であるため、答えも有効数字2桁で表します。
$$ Q = 2.1 \times 10^3 \text{ [J]} $$

計算方法の平易な説明

やかんでお湯を沸かすとき、どれくらいの熱(エネルギー)が必要かを計算する問題です。必要な熱量は、次の3つの掛け算で求められます。

  1. 水の量(質量)
  2. 水の温まりにくさ(比熱)
  3. どれだけ温度を上げるか

この問題で一番のひっかけポイントは「単位」です。水の質量は「kg」で、比熱は「g」を基準にしています。計算する前に、単位を「g」に揃えましょう。
\(1.0 \times 10^{-2}\) kg は、\(1000\)倍して \(10\) g になります。
これで準備が整いました。あとは3つの数字を掛け算するだけです。
水の質量(\(10\) g) × 比熱(\(4.2\)) × 上げる温度(\(50\)℃)
\(10 \times 4.2 \times 50 = 2100\)
答えは \(2100\) J となります。科学的な書き方(有効数字2桁)にすると \(2.1 \times 10^3\) J です。

解答  \(2.1 \times 10^3\) J

⑤ 融解熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「融解熱を用いた状態変化に必要な熱量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 状態変化と潜熱の概念。
  2. 融解熱の定義(固体1gを融点において液体にするのに必要な熱量)。
  3. 融解に必要な熱量の計算公式 \(Q = mL\)。
  4. 単位の統一(特に質量単位のkgとg)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から質量\(m\)と融解熱\(L\)の値を読み取る。
  2. 質量の単位を、融解熱の単位で使われているグラム[g]に合わせる。
  3. 公式 \(Q = mL\) に値を代入して、必要な熱量\(Q\)を計算する。

思考の道筋とポイント
物質に熱を加えても、温度が上昇せずに状態が変化する(例:氷が水になる)ことがあります。この状態変化にのみ使われる熱を「潜熱」と呼びます。特に、固体が液体に変わる(融解する)ときの潜熱が「融解熱」です。
この問題では、0℃の氷が0℃の水になる、という状態変化だけを考えます。したがって、温度変化を考慮する \(Q=mc\Delta T\) の公式は使いません。必要な熱量は、単純に「質量 \(m\)」と「融解熱 \(L\)」の積で求められる \(Q=mL\) という公式を使います。
前問と同様に、質量の単位[kg]と融解熱の単位[J/g]が異なっているため、計算前に単位を揃えることが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 融解熱 \(L\) [J/g]: 物質1gを、その融点において固体から液体へと状態変化させるのに必要な熱量。
  • 融解に必要な熱量 \(Q\) [J]: 質量 \(m\) の固体をすべて融解させるのに必要な熱量は、\(Q = mL\) で計算できます。
  • 潜熱: 状態変化にのみ消費される熱エネルギーのこと。この間、物質の温度は一定に保たれます(今回は0℃で一定)。
  • 単位換算: \(1 \text{ kg} = 1000 \text{ g} = 10^3 \text{ g}\)。計算前に単位をグラム[g]に統一します。

具体的な解説と立式
求める熱量を \(Q\) [J] とします。
0℃の氷を0℃の水にする、すなわち融解させるのに必要な熱量は、公式 \(Q = mL\) で計算できます。
問題文から与えられている値は以下の通りです。

  • 氷の質量 \(m = 0.10\) [kg]
  • 水の融解熱 \(L = 3.3 \times 10^2\) [J/g]

計算の前に、質量の単位を融解熱の単位に合わせて、kgからgに換算します。
$$ m = 0.10 \text{ [kg]} = 0.10 \times 10^3 \text{ [g]} = 100 \text{ [g]} $$
これらの値を公式に代入して立式します。
$$ Q = mL $$

使用した物理公式

  • 融解に必要な熱量の公式: \(Q = mL\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で準備した値を、公式 \(Q = mL\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= mL \\[2.0ex]&= 100 \times (3.3 \times 10^2) \\[2.0ex]&= 100 \times 330 \\[2.0ex]&= 33000 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字が2桁(0.10, 3.3)であるため、答えも有効数字2桁で表します。
$$ Q = 3.3 \times 10^4 \text{ [J]} $$

計算方法の平易な説明

氷を水に溶かすとき、温度は0℃のままなのに、たくさんの熱エネルギーが必要です。この「状態を変化させるためだけの特別な熱」が融解熱です。
問題文の「水の融解熱を \(3.3 \times 10^2\) J/g とする」というのは、「1gの氷を溶かすのに \(330\) Jの熱が必要ですよ」という意味です。
今回は氷が \(0.10\) kgあります。これはグラムに直すと \(100\) gです。
したがって、必要な熱量の合計は、単純な掛け算で求めることができます。
(1gあたりに必要な熱量) × (氷のグラム数)
\(330 \text{ J/g} \times 100 \text{ g} = 33000 \text{ J}\)
これを科学的な書き方(有効数字2桁)にすると、\(3.3 \times 10^4\) Jとなります。

解答 \(3.3 \times 10^4\) J

⑥ 蒸発熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「蒸発熱を用いた質量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 状態変化と潜熱(蒸発熱)の概念の理解。
  2. 蒸発熱の定義(液体1gを沸点において気体にするのに必要な熱量)。
  3. 蒸発に必要な熱量の計算公式 \(Q = mL\)。
  4. 単位の換算(gからkgへ)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から与えられた熱量 \(Q\) と水の蒸発熱 \(L\) の値を特定する。
  2. 公式 \(Q = mL\) を質量 \(m\) について解く形に変形する。
  3. 値を代入して、蒸発した水の質量をグラム[g]単位で計算する。
  4. 計算結果を問題の要求に合わせてキログラム[kg]単位に換算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、100℃の液体(水)が100℃の気体(水蒸気)になる「蒸発」という状態変化を扱います。融解と同様に、蒸発も状態変化であり、その間は温度が一定に保たれます。この状態変化にのみ使われる熱が「蒸発熱」です。
公式は融解熱のときと同じ \(Q = mL\) を使いますが、今回は加えた熱量 \(Q\) と蒸発熱 \(L\) が与えられており、そこから蒸発した質量 \(m\) を求める「逆算」の問題です。
計算自体は単純な割り算ですが、蒸発熱の単位が [J/g] であるため、計算で求まる質量はグラム[g]単位であることに注意が必要です。最後に問題で要求されているキログラム[kg]への単位換算を忘れないようにしましょう。

この設問における重要なポイント

  • 蒸発熱 \(L\) [J/g]: 物質1gを、その沸点において液体から気体へと状態変化させるのに必要な熱量。
  • 蒸発に必要な熱量 \(Q\) [J]: 質量 \(m\) の液体をすべて蒸発させるのに必要な熱量は、\(Q = mL\) で計算できます。
  • 潜熱: 状態変化にのみ消費される熱エネルギーのこと。この間、物質の温度は一定に保たれます(今回は100℃で一定)。
  • 単位換算: \(1 \text{ g} = 10^{-3} \text{ kg}\)。計算結果の単位を問題の要求に合わせる必要があります。

具体的な解説と立式
蒸発する水の質量を \(m\) [g] とします。(蒸発熱の単位がJ/gなので、まずgで求めます)
100℃の水を100℃の水蒸気にする、すなわち蒸発させるのに必要な熱量 \(Q\) は、公式 \(Q = mL\) で計算できます。
問題文から与えられている値は以下の通りです。

  • 加えた熱量 \(Q = 2.3 \times 10^3\) [J]
  • 水の蒸発熱 \(L = 2.3 \times 10^3\) [J/g]

これらの値を公式に代入して立式します。
$$ 2.3 \times 10^3 = m \times (2.3 \times 10^3) $$

使用した物理公式

  • 蒸発に必要な熱量の公式: \(Q = mL\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を、質量 \(m\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m &= \displaystyle\frac{Q}{L} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{2.3 \times 10^3}{2.3 \times 10^3} \\[2.0ex]&= 1.0 \text{ [g]}
\end{aligned}
$$
ここで求まった質量 \(m\) の単位はグラム[g]です。問題ではキログラム[kg]で問われているため、単位を換算します。
\(1 \text{ g} = 10^{-3} \text{ kg}\) なので、
$$ m = 1.0 \text{ [g]} = 1.0 \times 10^{-3} \text{ [kg]} $$
有効数字は2桁(2.3)なので、\(1.0\) と表記するのが適切です。

計算方法の平易な説明

やかんのお湯が沸騰して、どんどん水蒸気になっていく様子を想像してください。このとき、お湯の温度は100℃のままです。加えた熱は、お湯を水蒸気に変えるためだけに使われています。
問題文の「水の蒸発熱を \(2.3 \times 10^3\) J/g とする」というのは、「1gの水を水蒸気にするのに \(2300\) Jの熱が必要ですよ」という意味です。
今回、加えた熱量はちょうど \(2300\) Jでした。
ということは、何グラムの水が水蒸気に変わったでしょうか?
答えは簡単で、ちょうど \(1.0\) gですね。
最後に、問題は「何kgですか?」と聞いているので、単位を直します。\(1\) gは \(1000\)分の\(1\) kgなので、\(0.001\) kgです。これを科学的な書き方にすると \(1.0 \times 10^{-3}\) kgとなります。

解答  \(1.0 \times 10^{-3}\) kg

例題

例題37 熱と温度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「物質の状態変化と熱量」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 比熱と熱容量: 物体の温度を\(1\text{K}\)(または\(1^\circ\text{C}\))上昇させるのに必要な熱量のことです。熱量\(Q\)、質量\(m\)、比熱\(c\)、温度変化\(\Delta T\)の関係は \(Q=mc\Delta T\) で表されます。
  2. 融解熱(潜熱): 固体が液体に状態変化する際に吸収する熱量のことです。この間、物質の温度は変化しません。質量\(m\)の物質を融解させるのに必要な熱量\(Q\)は、融解熱を\(L\)として \(Q=mL\) で表されます。
  3. 熱量保存の法則: 断熱された系で複数の物体が熱のやり取りをする場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。あるいは、系全体の熱量の総和は変化しません。
  4. グラフの読み取り: 横軸が加えた熱量、縦軸が温度を表すグラフから、各区間で起こっている物理現象(温度上昇、状態変化)と、その際に必要な熱量や温度変化を正確に読み解く能力が求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、グラフの水平な部分が物理的に何を意味するのか、状態変化と潜熱の概念から説明します。
  2. (2)から(4)では、グラフの各区間(氷の温度上昇、融解、水の温度上昇)がそれぞれどの物理現象に対応するかを考え、熱量の公式(\(Q=mc\Delta T\) または \(Q=mL\))を適用して未知の物理量(質量、比熱、融解熱)を順に求めていきます。
  3. (5)では、2つの異なる温度の水を混合する状況について、熱量保存の法則を用いて最終的な温度を計算します。これには2通りのアプローチ(「失った熱量=得た熱量」と「全体の熱量の総和は不変」)で解説します。

問(1)

思考の道筋とポイント
グラフの熱量\(4.2 \times 10^3 \text{ J}\)から\(37.8 \times 10^3 \text{ J}\)までの区間は、熱を加え続けているにもかかわらず温度が\(0^\circ\text{C}\)で一定になっています。この現象がなぜ起こるかを物理的に説明する問題です。物質の状態変化(この場合は融解)には熱エネルギーが使われ、その間は温度上昇には寄与しないという「潜熱」の概念を理解しているかが問われます。
この設問における重要なポイント

  • 物質が状態変化している間、温度は一定に保たれる。
  • 状態変化に使われる熱を「潜熱」と呼ぶ。固体から液体への変化の場合は特に「融解熱」という。

具体的な解説と立式
グラフにおいて、熱量\(4.2 \times 10^3 \text{ J}\)を加えられた時点で氷は融点である\(0^\circ\text{C}\)に達します。その後、\(37.8 \times 10^3 \text{ J}\)の熱量が加えられるまで、温度は\(0^\circ\text{C}\)のままです。この間に加えられた熱エネルギーは、氷の分子間の結合を切り離し、固体(氷)から液体(水)へと状態を変化させるために使われます。この過程を「融解」といい、融解に使われる熱は温度上昇には寄与しません。したがって、グラフの水平な部分は、氷が融解している様子を表しています。

使用した物理公式

この設問は概念の理解を問うものであり、特定の計算式は使用しません。

計算過程

この設問では、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

氷が水に溶けている間は、いくらコンロで熱を加えても温度計の目盛りは\(0^\circ\text{C}\)のままです。これは、加えられた熱が、氷を溶かして水に変えるという「仕事」に全て使われてしまい、温度を上げるためには使われないからです。このように状態を変化させるために使われる熱のことを「潜熱」と呼びます。

結論と吟味

グラフの水平な部分は、加えられた熱が\(0^\circ\text{C}\)の氷を\(0^\circ\text{C}\)の水へと状態変化させる「融解熱」として使われているため、温度上昇が見られません。これは物質の状態変化における基本的な性質であり、物理的に妥当な説明です。

解答 (1) 熱が0℃の氷(固体)から0℃の水(液体)へ状態を変化させるために使われるので温度が上昇しない。

問(2)

思考の道筋とポイント
氷の質量\(m\)を求める問題です。グラフには3つの区間(氷の温度上昇、融解、水の温度上昇)がありますが、水の比熱は問題文で与えられている(\(4.2 \text{ J/(g·K)}\))ため、液体(水)の状態である区間(\(0^\circ\text{C}\)から\(30^\circ\text{C}\)への温度上昇)に着目するのが最も直接的です。この区間で加えられた熱量\(Q\)と温度変化\(\Delta T\)をグラフから読み取り、熱量の公式\(Q=mc\Delta T\)に代入して質量\(m\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を正しく適用する。
  • グラフから、特定の区間における「加えられた熱量\(Q\)」と「温度変化\(\Delta T\)」を正確に読み取る。

具体的な解説と立式
氷の質量を \(m \text{ [g]}\) とします。グラフの\(0^\circ\text{C}\)の水が\(30^\circ\text{C}\)の水に温度上昇する区間に着目します。
この区間で加えられた熱量 \(Q_{\text{水}}\) は、グラフから読み取ると、
$$ Q_{\text{水}} = (50.4 – 37.8) \times 10^3 \text{ [J]} $$
このときの温度変化 \(\Delta T_{\text{水}}\) は、温度差なのでセルシウス温度の差をそのまま使えます。
$$ \Delta T_{\text{水}} = 30 – 0 = 30 \text{ [K]} $$
水の比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) であるから、熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ Q_{\text{水}} = m \times c_{\text{水}} \times \Delta T_{\text{水}} $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して \(m\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
(50.4 – 37.8) \times 10^3 &= m \times 4.2 \times (30 – 0) \\[2.0ex]12.6 \times 10^3 &= m \times 4.2 \times 30 \\[2.0ex]12600 &= 126 \times m \\[2.0ex]m &= \frac{12600}{126} \\[2.0ex]m &= 100 \text{ [g]}
\end{aligned}
$$
問題では質量が何kgかで問われているので、単位を換算します。
$$ 100 \text{ [g]} = 0.10 \text{ [kg]} $$

計算方法の平易な説明

水の温度を上げるのにどれだけ熱が必要だったかに注目します。グラフから、\(0^\circ\text{C}\)の水を\(30^\circ\text{C}\)にするのに、\(50.4 – 37.8 = 12.6\)(単位は\( \times 10^3 \text{ J}\))の熱が使われたことがわかります。熱量の公式「\(Q=mc\Delta T\)」に、\(Q=12.6 \times 10^3\)、水の比熱\(c=4.2\)、温度変化\(\Delta T=30\)を代入すると、質量\(m\)が100g、つまり0.10kgであると計算できます。

結論と吟味

氷の質量は \(0.10 \text{ kg}\) です。計算結果は物理的に妥当な値です。

解答 (2) 0.10 [kg]

問(3)

思考の道筋とポイント
氷の比熱\(c_{\text{氷}}\)を求める問題です。(2)で氷の質量\(m\)が\(100 \text{ g}\)とわかったので、今度は固体(氷)の状態である区間(\(-20^\circ\text{C}\)から\(0^\circ\text{C}\)への温度上昇)に着目します。この区間で加えられた熱量\(Q\)と温度変化\(\Delta T\)をグラフから読み取り、熱量の公式\(Q=mc\Delta T\)に代入して比熱\(c_{\text{氷}}\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を、今度は氷に対して適用する。
  • (2)で求めた質量\(m\)の値を使用する。

具体的な解説と立式
氷の比熱を \(c_{\text{氷}} \text{ [J/(g·K)]}\) とします。グラフの\(-20^\circ\text{C}\)の氷が\(0^\circ\text{C}\)の氷に温度上昇する区間に着目します。
この区間で加えられた熱量 \(Q_{\text{氷}}\) は、グラフから読み取ると、
$$ Q_{\text{氷}} = (4.2 – 0) \times 10^3 \text{ [J]} $$
このときの温度変化 \(\Delta T_{\text{氷}}\) は、
$$ \Delta T_{\text{氷}} = 0 – (-20) = 20 \text{ [K]} $$
氷の質量は(2)より \(m = 100 \text{ g}\) であるから、熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ Q_{\text{氷}} = m \times c_{\text{氷}} \times \Delta T_{\text{氷}} $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して \(c_{\text{氷}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
4.2 \times 10^3 &= 100 \times c_{\text{氷}} \times \{0 – (-20)\} \\[2.0ex]4200 &= 100 \times c_{\text{氷}} \times 20 \\[2.0ex]4200 &= 2000 \times c_{\text{氷}} \\[2.0ex]c_{\text{氷}} &= \frac{4200}{2000} \\[2.0ex]c_{\text{氷}} &= 2.1 \text{ [J/(g·K)]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

今度は氷の温度を上げるのにどれだけ熱が必要だったかに注目します。グラフから、\(-20^\circ\text{C}\)の氷を\(0^\circ\text{C}\)にするのに、\(4.2 – 0 = 4.2\)(単位は\( \times 10^3 \text{ J}\))の熱が使われたことがわかります。熱量の公式「\(Q=mc\Delta T\)」に、\(Q=4.2 \times 10^3\)、(2)で求めた質量\(m=100\text{ g}\)、温度変化\(\Delta T=20^\circ\text{C}\)を代入すると、氷の比熱\(c_{\text{氷}}\)が計算できます。

結論と吟味

氷の比熱は \(2.1 \text{ J/(g·K)}\) です。これは水の比熱 \(4.2 \text{ J/(g·K)}\) のちょうど半分であり、物理的に知られている値と一致するため、妥当な結果です。

解答 (3) 2.1 [J/(g·K)]

問(4)

思考の道筋とポイント
氷の融解熱\(L\)を求める問題です。融解が起こっているのは、グラフの水平な部分(\(0^\circ\text{C}\)で一定の区間)です。この区間で加えられた熱量\(Q\)をグラフから読み取り、(2)で求めた質量\(m\)を使って、融解熱の公式\(Q=mL\)から\(L\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 融解熱(潜熱)の公式 \(Q=mL\) を正しく適用する。
  • グラフの水平な区間の長さが、融解に必要な熱量に対応することを理解する。

具体的な解説と立式
氷の融解熱を \(L \text{ [J/g]}\) とします。グラフの\(0^\circ\text{C}\)の氷がすべて\(0^\circ\text{C}\)の水に変化する融解の区間に着目します。
この区間で加えられた熱量 \(Q_{\text{融解}}\) は、グラフから読み取ると、
$$ Q_{\text{融解}} = (37.8 – 4.2) \times 10^3 \text{ [J]} $$
氷の質量は(2)より \(m = 100 \text{ g}\) であるから、融解熱の公式 \(Q=mL\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ Q_{\text{融解}} = m \times L $$

使用した物理公式

  • 融解熱による熱量: \(Q = mL\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して \(L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
(37.8 – 4.2) \times 10^3 &= 100 \times L \\[2.0ex]33.6 \times 10^3 &= 100 \times L \\[2.0ex]33600 &= 100 \times L \\[2.0ex]L &= \frac{33600}{100} \\[2.0ex]L &= 336 \text{ [J/g]}
\end{aligned}
$$
問題の解答の有効数字に合わせて、\(3.4 \times 10^2 \text{ [J/g]}\) とします。

計算方法の平易な説明

氷を溶かすのにどれだけ熱が必要だったかに注目します。グラフの平らな部分が、氷が溶けている区間です。この区間で加えられた熱は、\(37.8 – 4.2 = 33.6\)(単位は\( \times 10^3 \text{ J}\))です。融解熱の公式「\(Q=mL\)」に、この\(Q\)の値と、(2)で求めた質量\(m=100\text{ g}\)を代入すると、1gあたりの融解熱\(L\)が計算できます。

結論と吟味

氷の融解熱は \(336 \text{ J/g}\) であり、有効数字2桁で表すと \(3.4 \times 10^2 \text{ J/g}\) となります。この値は、一般的に知られている氷の融解熱の値とほぼ一致しており、妥当な結果です。

解答 (4) 3.4×10² [J/g]

問(5)

思考の道筋とポイント
異なる温度の水を混合した後の最終温度を求める、典型的な熱量保存の問題です。熱量保存の法則を立式して解きます。ここでは2つのアプローチで解説します。
1. 高温の物体が失う熱量と、低温の物体が得る熱量が等しい、という関係から立式する。
2. (別解)系の熱量の総和は混合の前後で変わらない、という関係から立式する。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (高温物体が失う熱量) = (低温物体が得る熱量)
  • 熱量の計算では、質量をグラム[g]に統一するか、キログラム[kg]に統一するかを明確にする。今回は比熱の単位が J/(g·K) なので、グラムに統一すると計算しやすい。
  • 温度変化 \(\Delta T\) は、必ず (高い温度 – 低い温度) で計算する。

具体的な解説と立式
混合後の全体の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。\(50 < t < 70\) と考えられます。

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

高温物体である \(70^\circ\text{C}\) の水が失う熱量を \(Q_{\text{失}}\) とします。
質量は \(m_1 = 0.30 \text{ kg} = 300 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_1 = 70 – t\) です。
水の比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
したがって、失う熱量は次式で表されます。
$$ Q_{\text{失}} = m_1 \times c_{\text{水}} \times \Delta T_1 = 300 \times 4.2 \times (70 – t) $$

低温物体である \(50^\circ\text{C}\) の水が得る熱量を \(Q_{\text{得}}\) とします。
この水の質量は(2)で求めた氷の質量と同じで \(m_2 = 100 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_2 = t – 50\) です。
水の比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
したがって、得る熱量は次式で表されます。
$$ Q_{\text{得}} = m_2 \times c_{\text{水}} \times \Delta T_2 = 100 \times 4.2 \times (t – 50) $$

熱量保存の法則より、\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) が成り立ちます。
$$ 300 \times 4.2 \times (70 – t) = 100 \times 4.2 \times (t – 50) $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた熱量保存の式を解いて \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
300 \times 4.2 \times (70 – t) &= 100 \times 4.2 \times (t – 50)
\end{aligned}
$$
両辺を \(100 \times 4.2\) で割ると、計算が簡単になります。
$$
\begin{aligned}
3 \times (70 – t) &= 1 \times (t – 50) \\[2.0ex]210 – 3t &= t – 50 \\[2.0ex]210 + 50 &= t + 3t \\[2.0ex]260 &= 4t \\[2.0ex]t &= \frac{260}{4} \\[2.0ex]t &= 65 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

温かいお湯と少し冷たいお湯を混ぜる問題です。「温かいお湯が失った熱」と「冷たいお湯がもらった熱」は同じ量になる、というルール(熱量保存の法則)を使います。それぞれの熱量を「質量 × 比熱 × 温度変化」の式で計算し、それらを「=」で結んで方程式を立てます。この方程式を解くことで、混ざった後の最終的な温度がわかります。

結論と吟味

全体の温度は \(65^\circ\text{C}\) になります。この温度は、元の温度である \(50^\circ\text{C}\) と \(70^\circ\text{C}\) の間にあり、物理的に妥当な結果です。また、質量の大きい \(70^\circ\text{C}\) の水(300g)の方が、質量の小さい \(50^\circ\text{C}\) の水(100g)よりも温度変化が小さくなるはずであり、最終温度が単純な平均である\(60^\circ\text{C}\)よりも高い\(65^\circ\text{C}\)になったことも、この考察と一致します。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\) の水)を決め、その状態の熱量を0とします。そして、混合前と混合後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (混合前の全熱量) = (混合後の全熱量)
  • 熱量の基準点を設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の水の状態)。
  • 各物体の熱量 = (基準点からその状態にするのに必要な熱量)。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の水の熱量を0とします。混合後の温度を \(t \text{ [}^\circ\text{C]}\) とします。

混合前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)
\(70^\circ\text{C}\)の水(質量 \(m_1=300\text{ g}\))が持つ熱量は、\(0^\circ\text{C}\)の状態から\(70^\circ\text{C}\)にするのに必要な熱量に等しいので、
$$ Q_1 = m_1 c_{\text{水}} (70 – 0) = 300 \times 4.2 \times 70 $$
\(50^\circ\text{C}\)の水(質量 \(m_2=100\text{ g}\))が持つ熱量は、
$$ Q_2 = m_2 c_{\text{水}} (50 – 0) = 100 \times 4.2 \times 50 $$
したがって、混合前の全体の熱量は、
$$ Q_{\text{前}} = Q_1 + Q_2 = 300 \times 4.2 \times 70 + 100 \times 4.2 \times 50 $$

混合後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
混合後の水の全質量は \(M = m_1 + m_2 = 300 + 100 = 400 \text{ g}\) です。
この水が温度 \(t\) になったときの熱量は、
$$ Q_{\text{後}} = M c_{\text{水}} (t – 0) = 400 \times 4.2 \times t $$

熱量保存の法則 \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 300 \times 4.2 \times 70 + 100 \times 4.2 \times 50 = 400 \times 4.2 \times t $$

使用した物理公式

  • 比熱による熱量: \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を解いて \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
300 \times 4.2 \times 70 + 100 \times 4.2 \times 50 &= 400 \times 4.2 \times t
\end{aligned}
$$
両辺を \(100 \times 4.2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
3 \times 70 + 1 \times 50 &= 4 \times t \\[2.0ex]210 + 50 &= 4t \\[2.0ex]260 &= 4t \\[2.0ex]t &= \frac{260}{4} \\[2.0ex]t &= 65 \text{ [}^\circ\text{C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

それぞれの水が持っている「熱の持ち分」を考えます。基準を\(0^\circ\text{C}\)として、\(70^\circ\text{C}\)の水と\(50^\circ\text{C}\)の水の「持ち分」をそれぞれ計算し、足し合わせます。これが混ぜる前の全体の熱量です。混ぜた後も、この全体の熱量の合計は変わらないはずなので、「混ぜた後の全体の水の熱量」と等しくなります。この関係から、最終的な温度を計算します。

結論と吟味

全体の温度は \(65^\circ\text{C}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 (5) 65 [℃]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量と温度変化の関係 (\(Q=mc\Delta T\)):
    • 核心: 物質の温度を変化させるのに必要な熱量は、その物質の質量\(m\)、比熱\(c\)、そして温度変化\(\Delta T\)に比例するという関係です。
    • 理解のポイント: 比熱\(c\)は物質の種類や状態(この問題では氷と水)によって異なる固有の値です。グラフの傾きを持つ部分は、この法則に従って温度が変化していることを示します。
  • 状態変化と潜熱の関係 (\(Q=mL\)):
    • 核心: 固体から液体(融解)、液体から気体(蒸発)へと状態が変化する間、物質は熱を吸収(または放出)しますが、温度は一定に保たれます。この状態変化にのみ使われる熱を「潜熱」と呼びます。
    • 理解のポイント: 融解に必要な熱量\(Q\)は、質量\(m\)と融解熱\(L\)に比例します。グラフの水平な部分は、この潜熱のやり取りが行われている区間に対応します。
  • 熱量保存の法則:
    • 核心: 外部と熱の出入りがない閉じた系(断熱系)において、複数の物体間で熱のやり取りが行われるとき、系全体の熱エネルギーの総和は一定に保たれます。
    • 理解のポイント: この法則は2通りの表現で立式できます。
      • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\): 高温の物体が失った熱量と、低温の物体が得た熱量が等しい、という考え方。熱の移動に着目した直感的なアプローチです。
      • \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\): 系の熱量の総和が、変化の前後で等しい、という考え方。エネルギーの総量に着目した、より普遍的なアプローチです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 逆のプロセス(冷却・凝固): 水を冷却して氷にする問題。この場合、物質は熱を「放出」します。凝固熱の大きさは融解熱と同じです。
    • 複数回の状態変化: 氷を加熱して水にし、さらに沸騰させて水蒸気にするような問題。グラフには融点(\(0^\circ\text{C}\))と沸点(\(100^\circ\text{C}\))の2箇所で水平な部分が現れます。
    • 熱容量のわかった容器との熱交換: 水や氷だけでなく、それらを入れている容器(ビーカーなど)も熱のやり取りに参加する問題です。この場合、熱量保存の式に「容器が得た(または失った)熱量 \(C\Delta T\)」(\(C\)は容器の熱容量)の項を追加する必要があります。
    • 最終状態が不明な混合問題: 例えば、\(0^\circ\text{C}\)の氷と\(100^\circ\text{C}\)を超える水蒸気を混ぜるなど、最終的に全体が液体になるのか、固体が残るのか、気体になるのかが自明でない問題。この場合は、「最終的に\(t^\circ\text{C}\)の水になる」のように仮説を立てて計算し、結果(例えば\(0 < t < 100\))が仮説と矛盾しないかを確認するアプローチが有効です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの区間分け: まず、グラフの各部分(傾斜部、水平部)が、それぞれどの物理現象(温度上昇、状態変化)に対応しているかを正確に区別します。
    2. 状態の特定: 各区間における物質の状態(固体、液体、気体、あるいは固体と液体の共存状態など)を明確に把握します。
    3. 既知と未知の整理: 問題文やグラフから読み取れる既知の量(質量、比熱、熱量、温度変化など)と、求めるべき未知の量をリストアップします。どの公式を使えば未知数が求まるか、解法の道筋を立てます。
    4. 熱の移動の当事者を特定: 熱量保存則を使う問題では、「誰が熱を失い、誰が熱を得るのか」を関わる全ての物体(水、氷、容器など)について明確に特定することが第一歩です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位の不一致による計算ミス:
    • 誤解: 比熱の単位が J/(g·K) で与えられているのに、質量を kg のまま計算式に代入してしまう。
    • 対策: 計算を始める前に、必ず全ての物理量の単位を統一する習慣をつけましょう。比熱の単位に合わせて質量を g に直すか、あるいは比熱の方を J/(kg·K) に換算します。特に熱量保存の式では、等式の両辺で単位が揃っているかを確認することが重要です。
  • 潜熱(融解熱)の考慮漏れ:
    • 誤解: 例えば「\(-10^\circ\text{C}\)の氷と\(50^\circ\text{C}\)の水を混ぜる」といった問題で、氷が\(0^\circ\text{C}\)になるまでの熱量と、水が温度降下する熱量だけで熱量保存の式を立ててしまう(氷が水に融解するための潜熱を計算に入れていない)。
    • 対策: 状態変化をまたぐ熱計算では、「(1)温度上昇/下降 → (2)状態変化(潜熱の吸収/放出) → (3)温度上昇/下降」という一連のプロセスを常に意識してください。各段階で必要な熱量を個別に書き出してから、全体の熱量保存の式を立てるとミスを防げます。
  • 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
    • 誤解: 熱量保存の式で、高温側と低温側の両方で温度変化を「最終温度 – 初期温度」としてしまい、片方の熱量の符号を間違える。
    • 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチでは、熱量は正の値として扱うと決めると混乱がありません。そのため、温度変化\(\Delta T\)は常に「(高い温度)-(低い温度)」で計算するように徹底します。つまり、\(Q_{\text{失}} = mc(T_{\text{高}} – t)\)、\(Q_{\text{得}} = mc(t – T_{\text{低}})\) の形にすれば、両辺とも正の値となり、符号ミスが起こりません。
  • グラフの「区間」の熱量の読み取りミス:
    • 誤解: (2)で水の温度上昇に必要な熱量を求めるときに、区間の終点である\(50.4 \times 10^3\)という値をそのまま使ってしまう。
    • 対策: グラフからある区間で加えられた熱量を読み取る際は、必ず「区間の終わりの値 – 区間の始まりの値」を計算します。横軸の目盛りが0から始まっていない場合も多いので、常に差分を取ることを徹底してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(Q=mc\Delta T\) (比熱の公式):
    • 選定理由: 注目している物理現象が「物質の温度が変化している」場面であるため。
    • 適用根拠: グラフの傾きがある部分(温度が上昇している区間)では、加えられた熱エネルギーが物質の内部エネルギー、特に分子の運動エネルギーの増加に使われています。この熱量と温度変化の比例関係を定量的に表すのがこの式です。問(2), (3), (5)でこの法則が適用されます。
  • \(Q=mL\) (潜熱の公式):
    • 選定理由: 注目している物理現象が「物質が状態変化している(温度は一定)」場面であるため。
    • 適用根拠: グラフが水平な部分(温度が一定の区間)では、加えられた熱エネルギーが状態変化、すなわち分子間の結合を切り離すための位置エネルギーの変化に使われています。この際に必要な熱量と、状態変化した質量との関係を表すのがこの式です。問(4)でこの法則が適用されます。
  • 熱量保存の法則:
    • 選定理由: 注目している物理現象が「断熱された系で、複数の物体間で熱のやり取りがある」場面であるため。
    • 適用根拠: これはエネルギー保存則の熱における現れです。外部とのエネルギーの出入りがなければ、系全体のエネルギーは保存されます。
      • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) は、エネルギーの「移動」に着目した表現です。ある物体が失ったエネルギーは、そのまま別の物体に移動するはずだ、という直感的な見方です。
      • \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) は、エネルギーの「総量」に着目した表現です。系の状態が変わっても、エネルギーの総量は不変であるという、より普遍的な視点に立ったものです。複雑な問題ではこちらのほうが考えやすい場合があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の整理と簡略化: (5)の計算で \(300 \times 4.2 \times (70 – t) = 100 \times 4.2 \times (t – 50)\) という式を立てた後、いきなり括弧を展開して数字を大きくするのではなく、まず両辺に共通する因子(この場合は \(100 \times 4.2\))で割ることができないかを確認します。これにより、計算が \(3(70-t) = (t-50)\) と大幅に簡略化され、ミスを減らせます。常に式全体を俯瞰し、楽な計算ルートを探す癖をつけましょう。
  • グラフの軸の単位の確認: グラフから値を読み取る際は、\(37.8\) や \(50.4\) といった数値だけでなく、軸に書かれている単位(この場合は \(\times 10^3 \text{ [J]}\))をセットで扱うことを徹底します。この \(\times 10^3\) を見落とすと、計算結果の桁が3つもずれてしまいます。
  • 物理的な妥当性の確認(検算): (5)で求めた答え \(t=65^\circ\text{C}\) が、元の温度である \(50^\circ\text{C}\) と \(70^\circ\text{C}\) の間の妥当な値になっているかを確認します。さらに、質量の大きい\(70^\circ\text{C}\)の水(300g)の方が、質量の小さい\(50^\circ\text{C}\)の水(100g)よりも温度変化が小さいはずなので、最終温度は単純な平均(\(60^\circ\text{C}\))よりも\(70^\circ\text{C}\)側に寄るはずだ、という物理的な直感とも一致します。このような簡単な吟味で、大きな計算ミスを発見できることがあります。

例題38 比熱の測定

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱量保存則を用いた比熱の測定」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱容量: 物体を\(1\text{K}\)(または\(1^\circ\text{C}\))温度上昇させるのに必要な熱量のことです。質量\(m\)、比熱\(c\)の物体の熱容量\(C\)は \(C=mc\) で表されます。
  2. 熱量: 物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、比熱\(c\)を用いて \(Q=mc\Delta T\)、熱容量\(C\)を用いて \(Q=C\Delta T\) と表されます。
  3. 熱量保存の法則: 外部と熱のやり取りがない場合、高温の物体が失った熱量の総和と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  4. 熱平衡: 温度の異なる物体を接触させると、やがて全体の温度が一定になります。この状態を熱平衡といいます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、銅製容器とかくはん棒の合計質量と銅の比熱から、熱容量の定義式 \(C=mc\) を用いて熱容量を計算します。
  2. (2)では、高温の金属球が失った熱量と、低温の水・容器・かくはん棒が得た熱量が等しいという「熱量保存の法則」を立式し、未知の物理量である金属球の比熱を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
銅製容器と銅製かくはん棒を一つの物体とみなし、その熱容量を求める問題です。熱容量は、物体の質量と比熱の積で計算できることを理解しているかが問われます。
この設問における重要なポイント

  • 熱容量の定義式: \(C = mc\)
  • 熱容量は、物体全体を\(1\text{K}\)温度上昇させるのに必要な熱量を示す。

具体的な解説と立式
銅製容器と銅製かくはん棒の熱容量を \(C_{\text{容器}} \text{ [J/K]}\) とします。
問題文より、これらの合計質量は \(m_{\text{銅}} = 100 \text{ g}\) です。
銅の比熱は \(c_{\text{銅}} = 0.38 \text{ J/(g·K)}\) と与えられています。
熱容量の定義式 \(C=mc\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ C_{\text{容器}} = m_{\text{銅}} \times c_{\text{銅}} $$

使用した物理公式

  • 熱容量: \(C = mc\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して \(C_{\text{容器}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
C_{\text{容器}} &= 100 \times 0.38 \\[2.0ex]&= 38 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「熱容量」とは、その物体全体の温度を\(1^\circ\text{C}\)上げるのにどれだけの熱が必要か、という量です。これは「質量 × 比熱」で計算できます。今回は、銅でできた容器とかくはん棒の合計の質量が100g、銅の比熱が0.38 J/(g·K)なので、この2つを掛け合わせるだけで求めることができます。

結論と吟味

銅製容器と銅製かくはん棒の熱容量は \(38 \text{ J/K}\) です。この値は、(2)で低温物体が得る熱量を計算する際に使用します。

解答 (1) 38 [J/K]

問(2)

思考の道筋とポイント
高温の金属球を、低温の水が入った熱量計に入れたときの熱交換の問題です。外部との熱のやり取りは無視できるため、熱量保存の法則が成り立ちます。
熱の移動に関わるのは、

  • 熱を失う高温物体: 金属球
  • 熱を得る低温物体: 水、銅製容器、銅製かくはん棒

の3者です。「金属球が失った熱量」=「水が得た熱量」+「容器・かくはん棒が得た熱量」という等式を立て、未知の金属球の比熱を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
  • 熱のやり取りに関わる全ての物体をリストアップする。
  • 熱容量 \(C\) を使った熱量計算式 \(Q=C\Delta T\) を正しく使う。

具体的な解説と立式
金属球の比熱を \(c \text{ [J/(g·K)]}\) とします。

アプローチ1: 失った熱量 = 得た熱量

1. 金属球が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
高温の金属球(\(70.0^\circ\text{C}\))が、最終温度(\(20.0^\circ\text{C}\))になるまでに失う熱量です。
質量は \(m_{\text{球}} = 50 \text{ g}\) です。
温度変化は \(\Delta T_{\text{失}} = 70.0 – 20.0 = 50.0 \text{ K}\) です。
$$ Q_{\text{失}} = m_{\text{球}} \times c \times \Delta T_{\text{失}} = 50 \times c \times 50.0 $$

2. 低温物体が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
低温の物体(水と容器・かくはん棒)が、初期温度(\(15.6^\circ\text{C}\))から最終温度(\(20.0^\circ\text{C}\))になるまでに得る熱量の合計です。
温度変化は共通で \(\Delta T_{\text{得}} = 20.0 – 15.6 = 4.4 \text{ K}\) です。

  • 水が得た熱量 \(Q_{\text{得,水}}\)
    質量は \(m_{\text{水}} = 110 \text{ g}\)、水の比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g·K)}\) です。
    $$ Q_{\text{得,水}} = m_{\text{水}} \times c_{\text{水}} \times \Delta T_{\text{得}} = 110 \times 4.2 \times 4.4 $$
  • 容器・かくはん棒が得た熱量 \(Q_{\text{得,容器}}\)
    熱容量は(1)より \(C_{\text{容器}} = 38 \text{ J/K}\) です。
    $$ Q_{\text{得,容器}} = C_{\text{容器}} \times \Delta T_{\text{得}} = 38 \times 4.4 $$

したがって、得た熱量の合計は、
$$ Q_{\text{得}} = Q_{\text{得,水}} + Q_{\text{得,容器}} $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ 50 \times c \times 50.0 = (110 \times 4.2 \times 4.4) + (38 \times 4.4) $$

使用した物理公式

  • 熱量: \(Q = mc\Delta T\), \(Q = C\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を解いて \(c\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
50 \times c \times 50.0 &= 110 \times 4.2 \times 4.4 + 38 \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= (110 \times 4.2 + 38) \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= (462 + 38) \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= 500 \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= 2200 \\[2.0ex]c &= \frac{2200}{2500} \\[2.0ex]c &= 0.88 \text{ [J/(g·K)]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この実験は、「熱い金属球が失った熱」が、そっくりそのまま「冷たい水」と「冷たい容器・かくはん棒」に移動した、と考えることができます。つまり、「失った熱量=得た熱量の合計」という式が成り立ちます。それぞれの熱量を「質量×比熱×温度変化」や「熱容量×温度変化」の公式で計算し、方程式を立てて解くことで、未知の金属球の比熱がわかります。

結論と吟味

金属球の比熱は \(0.88 \text{ J/(g·K)}\) です。計算過程で、得た熱量を計算する際に共通の温度変化 \((20.0 – 15.6)\) でくくるなど、工夫することで計算を簡略化できます。

別解: はじめの全体の熱量 = あとの全体の熱量

思考の道筋とポイント
熱量保存の法則を「系の総熱量は不変である」と捉えるアプローチです。まず基準となる状態(ここでは \(0^\circ\text{C}\))を決め、その状態の熱量を0とします。そして、実験前と実験後における、系全体の熱量の総和が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存の法則: (実験前の全熱量) = (実験後の全熱量)
  • 熱量の基準点を任意に設定する(例: \(0^\circ\text{C}\)の状態)。

具体的な解説と立式
熱量の基準として、\(0^\circ\text{C}\)の状態の熱量を0とします。金属球の比熱を \(c \text{ [J/(g·K)]}\) とします。

1. 実験前の全体の熱量 \(Q_{\text{前}}\)

  • 金属球(\(70.0^\circ\text{C}\)): \(50 \times c \times (70.0 – 0)\)
  • 水(\(15.6^\circ\text{C}\)): \(110 \times 4.2 \times (15.6 – 0)\)
  • 容器・かくはん棒(\(15.6^\circ\text{C}\)): \(38 \times (15.6 – 0)\)

$$ Q_{\text{前}} = 50 \times c \times 70.0 + 110 \times 4.2 \times 15.6 + 38 \times 15.6 $$

2. 実験後の全体の熱量 \(Q_{\text{後}}\)
全体が熱平衡に達し、温度は \(20.0^\circ\text{C}\) になります。

  • 金属球(\(20.0^\circ\text{C}\)): \(50 \times c \times (20.0 – 0)\)
  • 水(\(20.0^\circ\text{C}\)): \(110 \times 4.2 \times (20.0 – 0)\)
  • 容器・かくはん棒(\(20.0^\circ\text{C}\)): \(38 \times (20.0 – 0)\)

$$ Q_{\text{後}} = 50 \times c \times 20.0 + 110 \times 4.2 \times 20.0 + 38 \times 20.0 $$

3. 熱量保存の法則
\(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) より、
$$ 50c \times 70.0 + (110 \times 4.2 + 38) \times 15.6 = 50c \times 20.0 + (110 \times 4.2 + 38) \times 20.0 $$

使用した物理公式

  • 熱量: \(Q = mc\Delta T\), \(Q = C\Delta T\)
  • 熱量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(c\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
50c \times 70.0 – 50c \times 20.0 &= (110 \times 4.2 + 38) \times 20.0 – (110 \times 4.2 + 38) \times 15.6 \\[2.0ex]50c \times (70.0 – 20.0) &= (110 \times 4.2 + 38) \times (20.0 – 15.6)
\end{aligned}
$$
この式は、アプローチ1で立てた式と全く同じです。したがって、これ以降の計算はアプローチ1と同じになります。
$$
\begin{aligned}
2500c &= (462 + 38) \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= 500 \times 4.4 \\[2.0ex]2500c &= 2200 \\[2.0ex]c &= \frac{2200}{2500} \\[2.0ex]c &= 0.88 \text{ [J/(g·K)]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「実験前の全員の熱の持ち分の合計」と「実験後の全員の熱の持ち分の合計」は同じはず、という考え方です。基準温度(例えば0℃)を決め、各部品の実験前と後の熱量を計算し、方程式を立てます。この方程式を解くと、結局は「失った熱量=得た熱量」と同じ式になり、同じ答えが得られます。

結論と吟味

金属球の比熱は \(0.88 \text{ J/(g·K)}\) となり、メインの解法と一致します。どちらのアプローチでも同じ結果が得られることを確認できました。

解答 (2) 0.88 [J/(g·K)]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量保存の法則:
    • 核心: 「断熱材で囲まれ、温度計の熱容量は無視できる」という設定から、外部との熱のやり取りがない理想的な状況(孤立系)を考えます。このとき、系内部での熱の移動はあっても、系全体のエネルギーの総和は変化しません。これが熱量保存の法則です。
    • 理解のポイント: この法則は、問題に応じて2つの等価なアプローチで立式できます。
      • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\): 高温物体が失った熱量と、低温物体が得た熱量の総和が等しい、という「熱の移動」に着目した考え方。誰から誰へ熱が移動したかが直感的にわかります。
      • \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\): 系全体の熱量の総和が、変化の前後で等しい、という「エネルギーの総量」に着目した考え方。基準温度を一つ決めれば、各物体の熱量を足し合わせるだけで立式できます。
  • 熱容量と比熱の関係:
    • 核心: 「比熱」は物質1gあたり、「熱容量」は物体全体での熱の蓄えやすさを示します。
    • 理解のポイント:
      • 比熱 (\(c\)): 物質固有の値。熱量計算は \(Q=mc\Delta T\)。
      • 熱容量 (\(C\)): 物体固有の値。質量と比熱の積 (\(C=mc\)) で計算でき、熱量計算は \(Q=C\Delta T\) となります。容器のように複数の部品からなる物体をひとまとめに扱う際に便利です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 状態変化を含む熱量測定: 熱量計に高温の金属球ではなく、\(0^\circ\text{C}\)の氷を入れる問題。この場合、低温側が得る熱量に「氷が融解するための潜熱 (\(mL\))」の項が加わります。
    • 未知数が複数の問題: 例えば、金属球の比熱と容器の熱容量の両方が未知で、条件の異なる2回の実験結果から連立方程式を立てて解く問題。
    • 熱が外部に逃げる問題: 「断熱が不完全で、毎秒\(q\)[J]の熱が逃げる」といった条件が加わる問題。この場合、熱量保存の式に「逃げた熱量 (\(q \times \text{時間}\))」の項を追加する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 登場人物のリストアップ: まず、熱のやり取りに関わる全ての物体(今回は金属球、水、容器、かくはん棒)を明確に特定します。誰が熱を失い(高温側)、誰が得るのか(低温側)を分類します。
    2. 温度変化の把握: 各物体の「初期温度」と「最終温度(熱平衡温度)」を正確に読み取ります。
    3. 与えられた物理量の確認: 各物体について、与えられているのが「質量と比熱」なのか、それとも「熱容量」なのかを区別します。これにより、\(Q=mc\Delta T\) と \(Q=C\Delta T\) のどちらを使うかが決まります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 登場人物の見落とし:
    • 誤解: 金属球が失った熱量を、水が得た熱量とだけ等しいとしてしまう(容器・かくはん棒が得た熱量を計算に入れない)。
    • 対策: 実験装置の図をよく見て、熱のやり取りに関わる全ての「登場人物」を書き出す習慣をつけましょう。特に容器は忘れがちなので注意が必要です。
  • 比熱と熱容量の混同:
    • 誤解: (1)で求めた熱容量 \(C=38 \text{ J/K}\) を使って熱量を計算する際に、さらに質量を掛けてしまう(\(Q=Cm\Delta T\) のような誤った式を立てる)。
    • 対策: \(C\)(熱容量)は既に質量\(m\)の要素を含んだ量 (\(C=mc\)) であることを常に意識してください。熱量計算は \(Q=C\Delta T\) で完結します。
  • 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
    • 誤解: 高温側の熱量計算で、温度変化を「\(T_{\text{後}} – T_{\text{前}}\)」としてしまい、熱量が負の値になって混乱する。
    • 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」のアプローチでは、熱量を正の値で扱うのが基本です。温度変化\(\Delta T\)は常に「(高い温度)-(低い温度)」で計算すると決めましょう。\(Q_{\text{失}} = mc(T_{\text{高}} – t)\)、\(Q_{\text{得}} = mc(t – T_{\text{低}})\) の形にすれば、符号ミスは起こりません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(C=mc\) (熱容量の定義):
    • 選定理由: (1)で「銅製容器と銅製かくはん棒」という、一体とみなせる物体の熱容量を求めるために使用します。
    • 適用根拠: 複数の部品からなっていても、材質が同じ(銅)で温度変化が等しい場合、それらを一つの物体と見なし、その合計質量 \(m\) と材質の比熱 \(c\) から、物体全体の熱容量 \(C\) を定義すると便利です。これにより、(2)の計算で容器とかくはん棒を別々に計算する手間が省けます。
  • 熱量保存の法則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) または \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)):
    • 選定理由: (2)で、複数の物体が関わる熱交換後の最終状態から、未知の物理量(比熱)を逆算するために使用します。
    • 適用根拠: 問題文の「断熱材」「温度計の熱容量は無視」という記述は、「この系は外部からエネルギー的に孤立している(孤立系)と見なせます」という宣言です。エネルギー保存則によれば、孤立系全体のエネルギー総量は不変です。これを熱エネルギーに適用したものが熱量保存の法則です。
      • \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) は、保存則を「エネルギーの移動」という観点から見たものです。
      • \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\) は、保存則を「エネルギーの総量」という観点から見たもので、両者は数学的に等価です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 共通因子でくくる: (2)の計算で、低温側が得る熱量を計算する際、\(Q_{\text{得}} = Q_{\text{得,水}} + Q_{\text{得,容器}}\) を \(110 \times 4.2 \times 4.4 + 38 \times 4.4\) と個別に計算するのではなく、共通の温度変化 \(\Delta T = 4.4\) でくくり、\((110 \times 4.2 + 38) \times 4.4\) と変形します。これにより、掛け算の回数が減り、計算が大幅に楽になります。
  • 文字式で整理してから代入: まずは \(m_{\text{球}}c(T_{\text{球}} – T_{\text{後}}) = (m_{\text{水}}c_{\text{水}} + C_{\text{容器}})(T_{\text{後}} – T_{\text{水}})\) のように文字式で完璧に立式し、それを \(c=\dots\) の形に変形してから、最後にまとめて数値を代入する癖をつけると、途中の計算ミスや混乱を防げます。
  • 単位の確認: 計算の最終段階で、求めた物理量の単位が正しいかを確認します。例えば、比熱を求めているのに単位が J/K になっていたら、どこかで質量を掛け忘れているか、割り忘れている可能性が高いです。

例題39 摩擦熱の発生

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「非保存力の仕事とエネルギー保存則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー: 物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和のことです。\(E = \frac{1}{2}mv^2 + mgh\)。
  2. エネルギーと仕事の関係: 物体の力学的エネルギーの変化量は、非保存力(この問題では動摩擦力)がした仕事に等しくなります。(\(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\))。
  3. エネルギー保存則: 非保存力によって失われた力学的エネルギーは、摩擦熱などの他の形態のエネルギーに変換されます。エネルギーの総量は常に保存されます。
  4. 熱量と温度上昇の関係: 物体が得た熱量\(Q\)と、その物体の質量\(m\)、比熱\(c\)、温度上昇\(\Delta T\)の間には、\(Q=mc\Delta T\)という関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、金属板がすべり下りる前と後での力学的エネルギーをそれぞれ計算し、その差を求めることで「失われた力学的エネルギー」を算出します。別解として、動摩擦力がした仕事を計算する方法も示します。
  2. (2)では、(1)で求めた失われた力学的エネルギーが摩擦熱に変換されたと考え、その熱量の半分が金属板の温度上昇に使われたとして、熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) から温度上昇を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「あらい斜面」をすべり下りる運動なので、動摩擦力が仕事をし、力学的エネルギーは保存しません。「失われた力学的エネルギー」を求めるには、運動の前後での力学的エネルギーを具体的に計算し、その差を取るのが最も直接的です。
この設問における重要なポイント

  • 力学的エネルギーの定義式: \(E = (\text{運動エネルギー}) + (\text{位置エネルギー}) = \frac{1}{2}mv^2 + mgh\)。
  • 非保存力(摩擦力)が仕事をすると、力学的エネルギーは保存しない。
  • 失われた力学的エネルギー = (はじめの力学的エネルギー) – (あとの力学的エネルギー)。

具体的な解説と立式
はじめの状態(静かに離した瞬間)と、10mすべり下りた後の状態の力学的エネルギーをそれぞれ計算します。
位置エネルギーの基準面を、10mすべり下りた後の金属板の位置に設定します。

1. はじめの力学的エネルギー \(E_{\text{前}}\)
速さは \(v_{\text{前}} = 0 \text{ m/s}\) です。
基準面からの高さは \(h_{\text{前}} = 10 \sin 30^\circ\) です。
$$ E_{\text{前}} = \frac{1}{2}mv_{\text{前}}^2 + mgh_{\text{前}} $$

2. あとの力学的エネルギー \(E_{\text{後}}\)
速さは \(v_{\text{後}} = 8.0 \text{ m/s}\) です。
基準面上のため、高さは \(h_{\text{後}} = 0 \text{ m}\) です。
$$ E_{\text{後}} = \frac{1}{2}mv_{\text{後}}^2 + mgh_{\text{後}} $$

3. 失われた力学的エネルギー \(\Delta E\)
失われた力学的エネルギーは、これらの差で求められます。
$$ \Delta E = E_{\text{前}} – E_{\text{後}} $$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • 重力による位置エネルギー: \(U = mgh\)
  • 力学的エネルギー: \(E = K + U\)
計算過程

各値を代入して、エネルギーを計算します。
はじめの高さ \(h_{\text{前}}\) を計算します。
$$ h_{\text{前}} = 10 \times \sin 30^\circ = 10 \times 0.50 = 5.0 \text{ m} $$
はじめの力学的エネルギー \(E_{\text{前}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{前}} &= \frac{1}{2} \times 2.0 \times 0^2 + 2.0 \times 9.8 \times 5.0 \\[2.0ex]&= 0 + 98 \\[2.0ex]&= 98 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
あとの力学的エネルギー \(E_{\text{後}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{後}} &= \frac{1}{2} \times 2.0 \times (8.0)^2 + 2.0 \times 9.8 \times 0 \\[2.0ex]&= 1.0 \times 64 + 0 \\[2.0ex]&= 64 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
失われた力学的エネルギー \(\Delta E\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= E_{\text{前}} – E_{\text{後}} \\[2.0ex]&= 98 – 64 \\[2.0ex]&= 34 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

スタート地点とゴール地点での「力学的エネルギー」(位置エネルギーと運動エネルギーの合計)をそれぞれ計算します。スタート時は高い位置にあり止まっているので位置エネルギーが大きく、ゴール時は低い位置で速いので運動エネルギーが大きくなっています。この2つのエネルギーを比較し、どれだけ減ったかを計算することで、「失われたエネルギー」がわかります。

結論と吟味

失われた力学的エネルギーは \(34 \text{ J}\) です。もし斜面がなめらかであれば力学的エネルギーは保存され、速さはもっと大きくなるはずです。エネルギーが減少したことから、摩擦力が負の仕事をしたことが定量的にわかります。

別解: 仕事とエネルギーの関係からのアプローチ

思考の道筋とポイント
力学的エネルギーの変化量は、非保存力がした仕事に等しいという関係 (\(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\)) を利用します。この問題では、非保存力は動摩擦力だけなので、動摩擦力がした仕事を計算すれば、それが力学的エネルギーの変化量となります。失われたエネルギーは、動摩擦力がした仕事の大きさ(絶対値)に等しくなります。
この設問における重要なポイント

  • エネルギーと仕事の関係: \(E_{\text{後}} – E_{\text{前}} = W_{\text{非保存力}}\)
  • 失われたエネルギー = \(-W_{\text{非保存力}}\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)

具体的な解説と立式
1. 加速度 \(a\) の算出
金属板は等加速度直線運動をすると考え、公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて加速度を求めます。
$$ (8.0)^2 – 0^2 = 2 \times a \times 10 $$

2. 動摩擦力 \(f\) の算出
斜面に沿った方向の運動方程式 \(ma = F\) を立てます。金属板にはたらく斜面方向の力は、重力の分力 \(mg\sin 30^\circ\) と動摩擦力 \(f\) です。
$$ ma = mg\sin 30^\circ – f $$
この式を \(f\) について解きます。

3. 失われたエネルギーの算出
失われた力学的エネルギーは、動摩擦力がした仕事の大きさ \(f \times 10\) に等しくなります。

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度直線運動: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
  • 仕事: \(W = Fx\)
  • エネルギーと仕事の関係: \(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\)
計算過程

加速度 \(a\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
64 &= 20a \\[2.0ex]a &= 3.2 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
動摩擦力 \(f\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f &= mg\sin 30^\circ – ma \\[2.0ex]&= 2.0 \times 9.8 \times 0.50 – 2.0 \times 3.2 \\[2.0ex]&= 9.8 – 6.4 \\[2.0ex]&= 3.4 \text{ [N]}
\end{aligned}
$$
失われたエネルギー(動摩擦力がした仕事の大きさ)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= f \times 10 \\[2.0ex]&= 3.4 \times 10 \\[2.0ex]&= 34 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、金属板の動き(速さの変化と距離)から「加速度」を計算します。次に、ニュートンの運動方程式を使って、動きを妨げている「摩擦力」の大きさを求めます。最後に、「失われたエネルギー」は「摩擦力がした仕事」と同じなので、「摩擦力 × 動いた距離」を計算します。

結論と吟味

失われた力学的エネルギーは \(34 \text{ J}\) となり、メインの解法と一致します。これにより、2つのアプローチが等価であることが確認できます。

解答 (1) 34 [J]

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた「失われた力学的エネルギー」は、摩擦によって熱エネルギーに変換されます。この発生した熱量のうち、問題文の条件(半分)に従って金属板に伝わった熱量を求め、熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を適用して温度上昇を計算します。比熱の単位が J/(g·K) で与えられているため、質量の単位をkgからgに換算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: 失われた力学的エネルギーは熱エネルギーに変わる。
  • 熱量の公式: \(Q=mc\Delta T\)。
  • 単位の統一(比熱の単位 J/(g·K) に合わせる)。

具体的な解説と立式
(1)より、失われた力学的エネルギーは \(34 \text{ J}\) です。これがすべて摩擦熱に変わったと考えます。
発生した熱量 \(Q_{\text{発生}} = 34 \text{ J}\)。

金属板に伝わった熱量 \(Q\) は、その半分なので、
$$ Q = Q_{\text{発生}} \times \frac{1}{2} $$

金属板の温度上昇を \(\Delta T \text{ [K]}\) とすると、熱量と温度上昇の関係式 \(Q=mc\Delta T\) が成り立ちます。
質量 \(m = 2.0 \text{ kg} = 2.0 \times 10^3 \text{ g}\)。
比熱 \(c = 0.17 \text{ J/(g·K)}\)。
したがって、以下の式が立てられます。
$$ 34 \times \frac{1}{2} = (2.0 \times 10^3) \times 0.17 \times \Delta T $$

使用した物理公式

  • 熱量と温度上昇の関係: \(Q=mc\Delta T\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(\Delta T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
17 &= (2000 \times 0.17) \times \Delta T \\[2.0ex]17 &= 340 \times \Delta T \\[2.0ex]\Delta T &= \frac{17}{340} \\[2.0ex]&= \frac{1}{20} \\[2.0ex]&= 0.050 \text{ [K]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表すと、\(5.0 \times 10^{-2} \text{ K}\) となります。

計算方法の平易な説明

(1)で計算した「失われたエネルギー」34Jが、摩擦熱になったと考えます。問題文から、その熱の半分が金属板に伝わったので、金属板が得た熱は17Jです。この熱が金属板の温度をどれだけ上げるかを「\(Q=mc\Delta T\)」の公式を使って計算します。質量の単位をkgからgに直すのを忘れないようにしましょう。

結論と吟味

金属板の温度上昇は \(5.0 \times 10^{-2} \text{ K}\) です。これは非常に小さな温度変化ですが、数秒間の摩擦で物体が劇的に熱くなるわけではないという日常的な感覚とも合致しており、物理的に妥当な値です。

解答 (2) 5.0×10⁻² [K]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係を含む):
    • 核心: この問題は、力学的エネルギーが保存しない場面を扱います。動摩擦力のような「非保存力」が仕事をすると、その仕事の分だけ力学的エネルギーが減少します。そして、減少した力学的エネルギーは、摩擦熱などの別の形のエネルギーに変換されます。つまり、エネルギーの形態は変わるが、その総量は常に保存される、という物理学の根本法則がテーマです。
    • 理解のポイント:
      • 力学的エネルギーの変化: \(\Delta E = E_{\text{後}} – E_{\text{前}}\)
      • 非保存力の仕事: \(W_{\text{非保存力}}\)
      • 関係式: \(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\)
      • 発生した熱量: \(Q = -W_{\text{非保存力}} = E_{\text{前}} – E_{\text{後}}\)
  • 熱量と温度上昇の関係 (\(Q=mc\Delta T\)):
    • 核心: (1)で求めた力学的エネルギーの損失が熱エネルギーに変換され、その熱が物体の温度を上昇させる、という力学と熱力学の橋渡しをする法則です。
    • 理解のポイント: 摩擦によって発生した熱量\(Q\)が、物体の温度をどれだけ上昇させるか(\(\Delta T\))を、質量\(m\)と比熱\(c\)を用いて定量的に結びつけます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 水平面での摩擦: あらい水平面上で物体を滑らせ、止まるまでの距離や発生した熱量を求める問題。この場合、位置エネルギーの変化は考えなくてよいため、運動エネルギーの変化だけに着目します。
    • 空気抵抗がある落下運動: 空気抵抗(非保存力)を受けながら物体が落下する問題。終端速度に達した場合、重力がする仕事と空気抵抗がする仕事が釣り合い、運動エネルギーは変化せず、位置エネルギーの減少分がすべて熱エネルギーに変換されます。
    • ばねと摩擦: あらい水平面上に置かれたばねに物体を押し付けて放す問題。弾性エネルギー、運動エネルギー、摩擦による熱エネルギーの3者間のエネルギーの移り変わりを追跡する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「あらい」「抵抗」のキーワードを確認: 問題文にこれらの言葉があれば、力学的エネルギーが保存しないことを即座に疑います。
    2. エネルギーの出入りを特定: 運動の前後で、どのエネルギー(運動、位置、弾性)が、どのエネルギー(熱)に変わったのか、エネルギーの変換プロセスを明確にイメージします。
    3. 基準面の設定: 位置エネルギーを計算する際は、どこを高さの基準(\(h=0\))にするかを最初に決めると、計算が楽になります。通常は、運動の始点か終点のどちらかを基準に取ります。
    4. 単位の確認: 力学の計算では質量は[kg]が基本ですが、熱量の計算では比熱の単位に合わせて[g]に直す必要がある場合が多いです。この単位換算はミスが頻発するポイントなので、特に注意します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 位置エネルギーの高さの計算ミス:
    • 誤解: 斜面に沿った距離 \(10\text{m}\) を、そのまま高さ \(h\) として計算してしまう。
    • 対策: 高さ \(h\) は常に鉛直方向の距離です。斜面の問題では、斜面の長さ \(L\) と角度 \(\theta\) から \(h = L\sin\theta\) の関係を使って正しく高さを計算する癖をつけましょう。
  • 失われたエネルギーの符号の混同:
    • 誤解: 「失われたエネルギー」を \(E_{\text{後}} – E_{\text{前}}\) で計算してしまい、負の値が出てきて混乱する。
    • 対策: 「失われた量」は常に正の値で表すのが自然です。したがって、「失われたエネルギー = (大きい方) – (小さい方) = \(E_{\text{前}} – E_{\text{後}}\)」と覚えましょう。これは、非保存力がした仕事 \(W_{\text{非保存力}}\) の大きさに等しく、\( -W_{\text{非保存力}} \) となります。
  • 単位換算のミス:
    • 誤解: (2)で、比熱の単位が J/(g·K) なのに、質量を \(2.0\text{ kg}\) のまま \(Q=mc\Delta T\) の式に代入してしまう。
    • 対策: 計算を始める前に、必ず使用する物理量の単位を確認し、必要なら換算します。\(m=2.0\text{ kg} = 2000\text{ g}\) のように、計算式のすぐ近くに換算した値をメモしておくとミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力学的エネルギーの差 (\(E_{\text{前}} – E_{\text{後}}\)):
    • 選定理由: (1)で「失われた力学的エネルギー」を直接求めるため。これは、エネルギー保存則が破れている量を定量化する最も基本的な方法です。
    • 適用根拠: もし摩擦がなければ \(E_{\text{前}} = E_{\text{後}}\) となるはずです。しかし、摩擦が存在することで \(E_{\text{前}} > E_{\text{後}}\) となり、その差額分が摩擦によって「失われた」と解釈できます。この「失われた」エネルギーは、実際には熱に姿を変えただけで、消滅したわけではありません。
  • 仕事とエネルギーの関係 (\(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\)):
    • 選定理由: (1)の別解として、失われたエネルギーを「原因」である摩擦力の仕事から求めるため。
    • 適用根拠: エネルギーの変化は、力が仕事をすることによってもたらされる、というより根源的な法則に基づいています。保存力(重力など)の仕事は位置エネルギーの変化として既に力学的エネルギーの項に含まれているため、力学的エネルギーを変化させるのは非保存力(摩擦力など)の仕事だけです。この関係を使うことで、エネルギーの変化量を力の観点から計算できます。
  • \(Q=mc\Delta T\) (熱量の公式):
    • 選定理由: (2)で、発生した熱エネルギーが物体の温度をどれだけ上昇させるか、という熱現象を定量的に扱うため。
    • 適用根拠: (1)で計算した「失われた力学的エネルギー」は、エネルギー保存則により、同量の熱エネルギー \(Q\) に変換されます。この熱エネルギー \(Q\) を受け取った金属板の内部エネルギーが増加し、それが温度上昇 \(\Delta T\) という形で観測されます。このマクロな熱現象とミクロな内部エネルギーの関係を結びつけるのがこの公式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 三角関数の値の確認: \(\sin 30^\circ = 0.5\), \(\cos 30^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.866\) など、よく使う三角関数の値は正確に覚えておき、計算時に素早く適用できるようにしましょう。
  • 単位を意識した立式: (2)の計算で、\(Q = (2.0 \times 10^3 \text{ g}) \times (0.17 \text{ J/(g·K)}) \times \Delta T\) のように、数値だけでなく単位も意識して式を書くと、単位が正しく約分されて最終的な答えの単位(この場合はK)が導かれるかを確認でき、単位換算ミスを防げます。
  • 概算による検算: (2)の最後の計算 \(\Delta T = \frac{17}{340}\) で、\(340\) はだいたい \(34 \times 10\) なので、答えは \(17/34 \times 1/10 = 0.5 \times 0.1 = 0.05\) くらいになるな、と大まかな見当をつけてから計算すると、桁の大きな間違いを防げます。
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