「良問の風」攻略ガイド(21〜25問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題21 (センター試験)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 仕事の定義(線積分)を用いた解法
      • 模範解答が「重力は保存力なので経路によらない」という性質を利用して鉛直変位のみで計算するのに対し、別解では仕事の定義式 \(W = \int \vec{F} \cdot d\vec{r}\) に基づき、円弧に沿った経路での線積分を具体的に計算します。
    • 設問(3)の別解: 運動方程式の積分による解法
      • 模範解答が力学的エネルギー保存則を用いるのに対し、別解では放物運動の運動方程式を時間で積分して速度と位置を求め、最高点の条件(鉛直速度成分が0)から高さを導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 仕事の定義(線積分): 「保存力とは何か」「なぜ経路によらないのか」を数学的に確認でき、仕事の概念をより深く理解できます。
    • 運動方程式の積分: 公式の暗記ではなく、運動方程式から全ての物理量が導かれるという力学の体系性を実感できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「曲面上の運動と放物運動における力学的エネルギー保存則」です。
滑らかな面上の運動では垂直抗力が仕事をしないため、力学的エネルギーが保存されます。また、空中での放物運動でも重力のみが働くため、同様にエネルギーが保存されます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 保存力(重力など)のみが仕事をする場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれます。
  2. 仕事の原理: 物体に働く力が移動方向と垂直な場合、その力は仕事をしません(\(W=0\))。
  3. 放物運動: 水平方向には等速直線運動、鉛直方向には等加速度運動(投げ上げ)を行います。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、A点とB点、A点とC点の間で力学的エネルギー保存則を適用して速さを求めます。
  2. (2)では、重力の仕事は高さの変化から、垂直抗力の仕事は力の向きと移動方向の関係から求めます。
  3. (3)では、放物運動の最高点における速度の性質(水平成分のみ)を利用し、エネルギー保存則または運動学的な公式を用いて解きます。
  4. (4)では、始点Aと終点Eの間でエネルギー保存則を適用します。

問(1)

思考の道筋とポイント
小球は滑らかな面を滑り落ちるので、摩擦によるエネルギー損失はありません。また、垂直抗力は常に移動方向と垂直なので仕事をしません。したがって、力学的エネルギー保存則が成立します。
基準面(高さ0)をどこに設定するかがポイントですが、問題の図に合わせて床(B点の高さ)を基準とするのが自然です。

この設問における重要なポイント

  • 基準面の設定: 床(点B)を高さ \(0\) とします。
  • 各点の高さ:
    • A点: 半径 \(r\) 分だけ高いので、高さ \(r\)。
    • B点: 最下点なので、高さ \(0\)。
    • C点: 図の幾何学的関係から高さを求めます。

具体的な解説と立式
B点での速さ \(v_B\)
A点とB点の間で力学的エネルギー保存則を立てます。
A点での速さは \(0\)、高さは \(r\) です。B点での速さは \(v_B\)、高さは \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
(\text{A点の力学的エネ}) &= (\text{B点の力学的エネ}) \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m \cdot 0^2 + mgr &= \frac{1}{2} m v_B^2 + mg \cdot 0
\end{aligned}
$$

C点での速さ \(v_C\)
まず、C点の高さを求めます。
\(\triangle \text{OBC}\) に着目すると、\(\angle \text{BOC} = 60^\circ\) なので、C点の高さ \(h_C\) は、
$$
\begin{aligned}
h_C &= r – r \cos 60^\circ \\[2.0ex]
&= r – \frac{1}{2}r \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}r
\end{aligned}
$$
A点とC点の間で力学的エネルギー保存則を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{A点の力学的エネ}) &= (\text{C点の力学的エネ}) \\[2.0ex]
mgr &= \frac{1}{2} m v_C^2 + mg \left( \frac{1}{2}r \right)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(K_1 + U_1 = K_2 + U_2\)
  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
  • 重力の位置エネルギー: \(U = mgh\)
計算過程

\(v_B\) の計算
$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m v_B^2 \\[2.0ex]
v_B^2 &= 2gr \\[2.0ex]
v_B &= \sqrt{2gr} \quad (v_B > 0)
\end{aligned}
$$

\(v_C\) の計算
$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m v_C^2 + \frac{1}{2} mgr \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v_C^2 &= mgr – \frac{1}{2} mgr \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v_C^2 &= \frac{1}{2} mgr \\[2.0ex]
v_C^2 &= gr \\[2.0ex]
v_C &= \sqrt{gr} \quad (v_C > 0)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

高いところにある物体が落ちると、位置エネルギーが運動エネルギーに変わってスピードが出ます。
AからBへ落ちる分だけスピードが増え、Cへ登る分だけスピードが減ります。エネルギーの貸し借りの計算です。

結論と吟味

\(v_B = \sqrt{2gr}\)、\(v_C = \sqrt{gr}\) です。
B点の方がC点より低いので、\(v_B > v_C\) となるはずですが、\(\sqrt{2gr} > \sqrt{gr}\) なので整合しています。また、次元も \(\sqrt{[L][L][T]^{-2}} = [L][T]^{-1}\) で速度の次元になっています。

解答 (1) \(v_B\): \(\sqrt{2gr}\), \(v_C\): \(\sqrt{gr}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
「仕事」を求めます。
重力は保存力なので、経路に関係なく「高さの差」だけで仕事が決まります。
垂直抗力は非保存力ですが、常に移動方向と直交するため、仕事はゼロになります。

この設問における重要なポイント

  • 重力の仕事: \(W_g = mg \times (\text{下がった距離})\)
    • 下がれば正の仕事、上がれば負の仕事です。
  • 垂直抗力の仕事: 力 \(\vec{N}\) と変位 \(d\vec{r}\) が常に垂直(\(\vec{N} \perp d\vec{r}\))なので、仕事 \(W = \int \vec{N} \cdot d\vec{r} = 0\) です。

具体的な解説と立式
重力の仕事
A点からC点までの高さの変化(下がった距離)は、
$$
\begin{aligned}
\Delta h &= (\text{Aの高さ}) – (\text{Cの高さ}) \\[2.0ex]
&= r – \frac{1}{2}r \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}r
\end{aligned}
$$
重力は鉛直下向き、移動も全体として下向きなので、重力は正の仕事をします。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{重力}} &= mg \times \frac{1}{2}r
\end{aligned}
$$

垂直抗力の仕事
小球が円弧上を移動している間、垂直抗力は常に円の中心方向(移動方向と垂直)を向いています。
したがって、垂直抗力がする仕事 \(W_{\text{垂直抗力}}\) は \(0\) です。

使用した物理公式

  • 一定の力の仕事(重力): \(W = F \Delta x\) (力の方向の移動距離)
  • 仕事の定義: \(W = \vec{F} \cdot \vec{s} = Fs \cos \theta\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W_{\text{重力}} &= \frac{1}{2}mgr
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
W_{\text{垂直抗力}} &= 0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

重力は下向きに引っ張る力なので、物体が下に移動するときは「手助け(正の仕事)」をします。どれだけ手助けしたかは、単純に「重さ \(\times\) 下がった距離」で計算できます。
垂直抗力は、常に進行方向に対して横から押すだけなので、スピードを上げたり下げたりする効果(仕事)はありません。

結論と吟味

重力の仕事は \(\frac{1}{2}mgr\)、垂直抗力の仕事は \(0\) です。
これは(1)で計算した運動エネルギーの増加量 \(\frac{1}{2}mv_C^2 = \frac{1}{2}m(\sqrt{gr})^2 = \frac{1}{2}mgr\) と一致しており、仕事とエネルギーの関係(された仕事の分だけエネルギーが増える)が成立していることが確認できます。

解答 (2) 重力の仕事: \(\displaystyle \frac{1}{2}mgr\), 垂直抗力の仕事: \(0\)
別解: 仕事の定義(線積分)を用いた解法

思考の道筋とポイント
重力の仕事を経路に沿った積分で計算し、本当に「高さの差」だけで決まるのかを確認します。
円弧上の位置を角度 \(\theta\) (鉛直下向きからの角度)で表し、微小変位 \(d\vec{r}\) と重力 \(\vec{F}_g\) の内積を積分します。

この設問における重要なポイント

  • 座標設定: 円の中心Oを原点とし、鉛直下向きを \(y\) 軸、水平右向きを \(x\) 軸とします。
  • 位置ベクトル: \(\vec{r} = (r \sin \theta, r \cos \theta)\)
  • 重力ベクトル: \(\vec{F}_g = (0, mg)\)
  • 積分範囲: A点(\(\theta = -90^\circ\))からC点(\(\theta = 60^\circ\))まで。
    • ただし、問題図の角度設定に合わせると、A点は水平位置(\(\theta = \pi/2\))、B点は最下点(\(\theta = 0\))、C点は \(\theta = -60^\circ\)(または \(60^\circ\))のように設定する必要があります。ここでは、B点を基準 \(\theta=0\) とし、Aを \(\theta=-\pi/2\)、Cを \(\theta=\pi/3\) (\(60^\circ\)) とします。

具体的な解説と立式
微小変位 \(d\vec{r}\) は、円の接線方向であり、大きさは \(r d\theta\) です。
重力 \(mg\) の接線方向成分は \(mg \sin \theta\) です。
重力の仕事 \(W\) は以下のように積分で表されます。
$$
\begin{aligned}
W &= \int_{\text{A}}^{\text{C}} F_{\text{接線}} \, ds \\[2.0ex]
&= \int_{-\pi/2}^{\pi/3} (-mg \sin \theta) \, (r d\theta)
\end{aligned}
$$
※ここで、\(\theta\) は鉛直下向き(B点)からの角度とします。重力は下向きなので、接線方向成分(\(\theta\)が増える方向)は \(-mg \sin \theta\) となります。
(補足:位置 \((r\sin\theta, -r\cos\theta)\) とすると重力は \((0, -mg)\)。\(d\vec{r} = (r\cos\theta, r\sin\theta)d\theta\)。内積は \(-mgr\sin\theta d\theta\))

使用した物理公式

  • 仕事の定義: \(W = \int \vec{F} \cdot d\vec{r}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W &= -mgr \int_{-\pi/2}^{\pi/3} \sin \theta \, d\theta \\[2.0ex]
&= -mgr \left[ -\cos \theta \right]_{-\pi/2}^{\pi/3} \\[2.0ex]
&= mgr \left( \cos \frac{\pi}{3} – \cos \left( -\frac{\pi}{2} \right) \right) \\[2.0ex]
&= mgr \left( \frac{1}{2} – 0 \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mgr
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力 \(\times\) 距離」を、曲がった道に沿って細かく足し合わせる計算(積分)を行いました。
結果は単純な「重さ \(\times\) 高さ」と同じになりました。これは、重力が「保存力」という特別な性質を持っているため、どんなに複雑な道を通っても、結局はスタートとゴールの高さの差だけで仕事が決まることを証明しています。

結論と吟味

積分計算の結果も \(\frac{1}{2}mgr\) となり、簡易的な計算と一致しました。これにより、重力が保存力であることが数学的にも確認できました。

解答 (2) 重力の仕事: \(\displaystyle \frac{1}{2}mgr\), 垂直抗力の仕事: \(0\)

問(3)

思考の道筋とポイント
C点から飛び出した後は、重力のみを受けて放物運動をします。
最高点Dでの速度 \(v_D\) と高さ \(h\) を求めます。
最高点では、速度の「鉛直成分」が \(0\) になりますが、「水平成分」は残っていることに注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 水平方向の等速性: 放物運動では水平方向に力は働かないため、水平成分の速度は一定です。
  • 最高点の速度: \(v_D = (\text{C点での水平速度成分})\)
  • エネルギー保存則: A点(またはC点)とD点の間で保存則を適用します。

具体的な解説と立式
D点での速さ \(v_D\)
C点での速度ベクトルは、水平面と \(60^\circ\) の角度をなしています(接線方向)。
C点での速さ \(v_C = \sqrt{gr}\) の水平成分 \(v_{Cx}\) は、
$$
\begin{aligned}
v_{Cx} &= v_C \cos 60^\circ \\[2.0ex]
&= \sqrt{gr} \cdot \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
最高点Dでは鉛直成分が \(0\) になるので、速さ \(v_D\) はこの水平成分と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
v_D &= \frac{1}{2}\sqrt{gr}
\end{aligned}
$$

D点の高さ \(h\)
A点とD点の間で力学的エネルギー保存則を立てます。
A点: 高さ \(r\)、速さ \(0\)
D点: 高さ \(h\)、速さ \(v_D\)
$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m v_D^2 + mgh
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 速度の分解: \(v_x = v \cos \theta\)
  • 力学的エネルギー保存則
計算過程

保存則の式に \(v_D = \frac{1}{2}\sqrt{gr}\) を代入して \(h\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m \left( \frac{1}{2}\sqrt{gr} \right)^2 + mgh \\[2.0ex]
gr &= \frac{1}{2} \left( \frac{1}{4} gr \right) + gh \\[2.0ex]
gr &= \frac{1}{8} gr + gh \\[2.0ex]
gh &= gr – \frac{1}{8} gr \\[2.0ex]
gh &= \frac{7}{8} gr \\[2.0ex]
h &= \frac{7}{8}r
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールを斜めに投げ上げると、一番高いところでも横方向には動いています。そのスピードは、投げ出したときの横方向のスピードと同じです。
高さについては、最初に持っていたエネルギーから、一番高いところでの運動エネルギー(横方向のスピード分)を引いた残りが、高さのエネルギーになっています。

結論と吟味

\(v_D = \frac{1}{2}\sqrt{gr}\)、\(h = \frac{7}{8}r\) です。
元の高さ \(r\) より少し低い位置(\(7/8 r\))までしか上がらないのは、最高点でも横方向に動いていて運動エネルギーを持っているためです。エネルギー保存の観点から妥当です。

解答 (3) \(v_D\): \(\displaystyle \frac{1}{2}\sqrt{gr}\), \(h\): \(\displaystyle \frac{7}{8}r\)
別解: 運動方程式の積分による解法

思考の道筋とポイント
放物運動の鉛直方向の運動方程式を立て、それを積分して最高点の高さを求めます。
C点を原点 \((0, 0)\) とし、鉛直上向きを \(y\) 軸とします。

この設問における重要なポイント

  • 初期条件: \(t=0\) で \(y=0\)、\(v_{y0} = v_C \sin 60^\circ\)
  • 最高点の条件: \(v_y(t) = 0\)

具体的な解説と立式
鉛直方向の運動方程式は、
$$
\begin{aligned}
m a_y &= -mg \\[2.0ex]
a_y &= -g
\end{aligned}
$$
これを時間 \(t\) で積分して、鉛直速度 \(v_y\) と位置 \(y\) を求めます。
初期条件(C点): \(t=0\) で \(y=0\)、\(v_{y0} = v_C \sin 60^\circ = \sqrt{gr} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}\)
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= v_{y0} – gt \\[2.0ex]
y(t) &= v_{y0}t – \frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$
最高点では \(v_y = 0\) となります。その時刻 \(t_1\) は、
$$
\begin{aligned}
0 &= v_{y0} – gt_1 \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{v_{y0}}{g}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度直線運動の公式(積分により導出)
計算過程

このときの高さ \(y_{\text{最大}}\) は、
$$
\begin{aligned}
y_{\text{最大}} &= v_{y0} \left( \frac{v_{y0}}{g} \right) – \frac{1}{2}g \left( \frac{v_{y0}}{g} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{v_{y0}^2}{g} – \frac{v_{y0}^2}{2g} \\[2.0ex]
&= \frac{v_{y0}^2}{2g}
\end{aligned}
$$
これに \(v_{y0} = \frac{\sqrt{3}}{2}\sqrt{gr}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{最大}} &= \frac{1}{2g} \left( \frac{3}{4} gr \right) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{8}r
\end{aligned}
$$
これはC点からの高さなので、床からの高さ \(h\) は、
$$
\begin{aligned}
h &= (\text{C点の高さ}) + y_{\text{最大}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}r + \frac{3}{8}r \\[2.0ex]
&= \frac{4}{8}r + \frac{3}{8}r \\[2.0ex]
&= \frac{7}{8}r
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

エネルギー保存則を使わずに、運動方程式から「速度」と「位置」の式を作り、時間を追って計算しました。
「上向きの初速度」と「下向きの重力」のバランスで、いつ最高点に達するかを計算し、その時の高さを求めました。

結論と吟味

エネルギー保存則を用いた場合と同じ結果が得られました。運動方程式から出発しても、等加速度運動の公式を経由して正しく解けることが確認できます。

解答 (3) \(v_D\): \(\displaystyle \frac{1}{2}\sqrt{gr}\), \(h\): \(\displaystyle \frac{7}{8}r\)

問(4)

思考の道筋とポイント
E点で床に衝突するときの速さ \(v_E\) を求めます。
ここでも力学的エネルギー保存則を使います。
「どこ」と「どこ」を結ぶかが重要ですが、計算が最も簡単な「A点」と「E点」を結ぶのがベストです。

この設問における重要なポイント

  • 始点と終点の選択: 途中の複雑な経路(C点やD点)を経由してもエネルギーは保存され続けるので、最初(A点)と最後(E点)だけで比較すればOKです。
  • E点の高さ: 床なので \(0\) です。

具体的な解説と立式
A点とE点の間で力学的エネルギー保存則を立てます。
A点: 高さ \(r\)、速さ \(0\)
E点: 高さ \(0\)、速さ \(v_E\)
$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m v_E^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
計算過程

$$
\begin{aligned}
mgr &= \frac{1}{2} m v_E^2 \\[2.0ex]
v_E^2 &= 2gr \\[2.0ex]
v_E &= \sqrt{2gr}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ジェットコースターと同じで、途中で上がったり下がったりしても、摩擦がなければ「一番高いところから一番低いところまで落ちた分」だけスピードが出ます。
A点から床まで落ちたので、その落差 \(r\) の分だけスピードに変わりました。これはB点での速さと同じです。

結論と吟味

\(v_E = \sqrt{2gr}\) です。
これは(1)で求めた \(v_B\) と全く同じ値です。高さが同じ(床)であれば、途中の経路に関わらず速さは同じになるというエネルギー保存則の本質を表しています。

解答 (4) \(\sqrt{2gr}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力学的エネルギー保存則の適用条件
    • 核心: 「保存力(重力や弾性力)以外の力が仕事をしない」場合にのみ、力学的エネルギーは保存されます。
    • 理解のポイント:
      • 垂直抗力の仕事: 曲面上を滑る運動では、垂直抗力は常に移動方向と垂直(\(\vec{N} \perp \vec{v}\))であるため、仕事をしません(\(W=0\))。これがエネルギー保存則を使える根拠です。
      • 経路独立性: 保存力(重力)の仕事は、途中の経路に関係なく、始点と終点の高さの差だけで決まります。だからこそ、A点とE点のように離れた2点を直接結んで計算できるのです。
  • 放物運動における速度の分解
    • 核心: 空中での運動(放物運動)では、水平方向には力が働かないため「等速直線運動」をし、鉛直方向には重力が働くため「等加速度運動」をします。
    • 理解のポイント:
      • 最高点の速度: 最高点では「止まる」のではなく、「鉛直成分だけが0になる」ことに注意が必要です。水平成分 \(v_x = v_0 \cos \theta\) はそのまま残っています。これを忘れると、エネルギー保存則の式で運動エネルギーを0にしてしまい、間違った高さを導いてしまいます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ジェットコースター(ループコースター): 円形のレールを回る問題でも、垂直抗力が仕事をしないためエネルギー保存則が成立します。ただし、最高点で落ちないための条件(垂直抗力 \(N \ge 0\))が追加されることが多いです。
    • 振り子: 糸の張力は常に移動方向と垂直なので仕事をしません。最下点と最高点でエネルギー保存則を使います。
    • 斜方投射: 地面から投げるだけでなく、台の上から投げたり、斜面に向けて投げたりする場合も、水平・鉛直成分への分解とエネルギー保存則の組み合わせが有効です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 仕事をする力をリストアップする: 重力以外に仕事をする力(摩擦力、人の手で押す力など)があるか確認します。なければエネルギー保存則一択です。
    2. 「どこ」と「どこ」を比較するか: 計算が楽な点を選びましょう。通常は「速さが0の点(始点や最高点)」や「高さが0の点(基準面)」を含めると項が消えて計算が楽になります。
    3. ベクトルの分解: 斜めに飛び出すときは、必ず速度を水平成分と鉛直成分に分解して考えましょう。特に最高点や衝突点での角度を問われる場合に必須です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 最高点での速度を0にしてしまう:
    • 誤解: 「最高点=止まる」というイメージで、\(v_D = 0\) としてしまう。
    • 対策: 「横には動いている!」と自分に言い聞かせましょう。放物運動の最高点では、水平速度成分 \(v_x\) が残っています。
  • 仕事の符号ミス:
    • 誤解: 重力の仕事を常に \(mgh\) (正)としてしまう。
    • 対策: 「重力の向き(下)」と「移動の向き」を確認しましょう。上がるときは重力に逆らうので負の仕事、下がるときは重力に従うので正の仕事です。
  • 基準面の取り違え:
    • 誤解: A点を基準にしたり、C点を基準にしたりして、途中で基準が変わってしまう。
    • 対策: 問題を解き始める前に「床を高さ0とする」と宣言し、図に \(h=0\) と書き込みましょう。最後までその基準を貫くことが大切です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)(4)での公式選択(エネルギー保存則):
    • 選定理由: 摩擦がなく、垂直抗力も仕事をしないため、エネルギー保存則が成立します。また、時間を問われていないため、運動方程式を解くよりも圧倒的に速いです。
    • 適用根拠: \(W_{\text{非保存力}} = 0\) であることが確認できているため。
  • 問(3)での公式選択(エネルギー保存則 vs 運動方程式):
    • 選定理由: 高さを求めるだけなら、時間の情報が不要なエネルギー保存則が最短ルートです。
    • 思考プロセス: 「最高点の速度 \(v_D\) が水平成分だけになる」という幾何学的な条件さえ分かれば、あとはエネルギーの収支だけで解けます。運動方程式から時間を求めて積分するのは、あくまで別解(検算用)として位置付けるのが実戦的です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角関数の値の確認:
    • \(\cos 60^\circ = 1/2\)、\(\sin 60^\circ = \sqrt{3}/2\) など、基本的な値を間違えないように。図を描いて辺の比(\(1:2:\sqrt{3}\))を確認すると確実です。
  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 速さ \(v\) の答えは必ず \(\sqrt{gr}\) の形(次元 \([L][T]^{-1}\))になります。
    • 高さ \(h\) の答えは必ず \(r\) の倍数(次元 \([L]\))になります。
    • もし \(v = gr\) や \(h = \sqrt{gr}\) のような答えが出たら、その時点で次元がおかしいので計算ミスを疑いましょう。
  • 係数の処理:
    • \(\frac{1}{2}mv^2\) の \(1/2\) や、\(v_D = v_C \cos 60^\circ\) の \(\cos 60^\circ = 1/2\) など、分数が多く出てきます。途中式を省略せず、分母分子を丁寧に書き写すことでケアレスミスを防げます。特に2乗するとき(\((1/2)^2 = 1/4\))は要注意です。

問題22 (大阪工大+センター試験)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 力の積分による仕事の計算
      • 模範解答がエネルギーの変化量から仕事を求めるのに対し、別解では外力 \(F=kx\) を変位 \(x\) で積分することで、仕事の定義 \(W = \int F dx\) から直接導出します。
    • 設問(4)の別解: 運動方程式を用いた解法
      • 模範解答がエネルギー保存則(摩擦熱)で解くのに対し、別解では運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて停止距離を導出します。
    • 設問(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 斜面上の運動方程式を立て、それを位置で積分することで、エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)が導かれる過程を示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 力の積分: 「弾性エネルギー \(\frac{1}{2}kx^2\)」という公式が、実はフックの法則 \(F=kx\) の積分結果であることを数学的に確認でき、公式の成り立ちを深く理解できます。
    • 運動方程式: 時間経過や加速度を問われる問題にも対応できる汎用性があります。
    • 微積分の解法: 物理法則の根幹である「運動方程式」と「エネルギー保存則」の数学的な繋がりを明確にし、単なる公式暗記からの脱却を促します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「弾性力・摩擦力・重力が関与するエネルギー保存則」です。
ばねによる弾性エネルギーが運動エネルギーに変わり、それが摩擦熱や位置エネルギーに変換されていく過程を追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 摩擦がない区間では、運動エネルギーと弾性エネルギーの和が保存されます。
  2. 仕事とエネルギーの関係: 摩擦がある区間では、摩擦力がした仕事(負の仕事)の分だけ力学的エネルギーが減少します(摩擦熱として散逸します)。
  3. フックの法則: ばねの弾性力は \(F=kx\) です。
  4. 動摩擦力: \(f’ = \mu N\) です。斜面では垂直抗力 \(N\) が変化することに注意が必要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2)では、摩擦のない水平面での運動なので、力学的エネルギー保存則を用います。
  2. (3)では、外力がした仕事が弾性エネルギーとして蓄えられることに着目します。
  3. (4)(5)では、摩擦があるためエネルギーは保存しません。「失われたエネルギー = 摩擦熱」または「エネルギーの変化 = 非保存力の仕事」という式を立てます。

問(1)

思考の道筋とポイント
小球Pはばねによって加速され、ばねが自然長に戻った瞬間にばねから離れます。
その後、点Aまでは滑らかな水平面を等速で移動します。
「ばねを縮めた状態」と「ばねから離れた直後(自然長)」の2つの状態で、力学的エネルギー保存則を適用します。

この設問における重要なポイント

  • 状態1(始状態): ばねの縮み \(a\)、速さ \(0\)。
  • 状態2(終状態): ばねの縮み \(0\)(自然長)、速さ \(v\)。
  • 保存則: 摩擦がないので、(弾性エネ) + (運動エネ) = 一定。

具体的な解説と立式
始状態(縮み \(a\))と終状態(自然長、速さ \(v\))で力学的エネルギー保存則を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{始状態のエネ}) &= (\text{終状態のエネ}) \\[2.0ex]
\frac{1}{2} k a^2 + 0 &= 0 + \frac{1}{2} m v^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 弾性エネルギー: \(U = \frac{1}{2}kx^2\)
  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

式を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 &= \frac{1}{2} k a^2 \\[2.0ex]
v^2 &= \frac{k}{m} a^2
\end{aligned}
$$
\(v > 0, a > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
v &= a \sqrt{\frac{k}{m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

縮んだばねが持っていたエネルギーが、全てボールのスピード(運動エネルギー)に変わりました。
ばねが硬い(\(k\)が大きい)ほど、またボールが軽い(\(m\)が小さい)ほど、スピードが出ることが式から分かります。

結論と吟味

\(v = a \sqrt{\frac{k}{m}}\) \([\text{m/s}]\) です。
次元を確認すると、\([k] = [F]/[L] = [M][L][T]^{-2}/[L] = [M][T]^{-2}\) なので、\(\sqrt{k/m} = \sqrt{[M][T]^{-2}/[M]} = [T]^{-1}\)。これに長さ \(a [L]\) を掛けるので \([L][T]^{-1}\) となり、速度の次元で正しいです。

解答 (1) \(a \sqrt{\frac{k}{m}}\) \([\text{m/s}]\)

問(2)

思考の道筋とポイント
ばねがまだ伸びきっていない途中段階での速さを求めます。
考え方は(1)と同じで、エネルギー保存則を使います。ただし、このときはまだばねにエネルギーが残っています。

この設問における重要なポイント

  • 状態: ばねの縮み \(a/2\)、速さ \(u\)。
  • エネルギーの分配: 初期の弾性エネルギーが、「残りの弾性エネルギー」と「運動エネルギー」に分けられます。

具体的な解説と立式
始状態(縮み \(a\))と、縮みが \(a/2\) のときで力学的エネルギー保存則を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} k a^2 + 0 &= \frac{1}{2} k \left( \frac{a}{2} \right)^2 + \frac{1}{2} m u^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
計算過程

式を \(u\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m u^2 &= \frac{1}{2} k a^2 – \frac{1}{2} k \left( \frac{a^2}{4} \right) \\[2.0ex]
m u^2 &= k a^2 – \frac{1}{4} k a^2 \\[2.0ex]
m u^2 &= \frac{3}{4} k a^2 \\[2.0ex]
u^2 &= \frac{3k}{4m} a^2
\end{aligned}
$$
\(u > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
u &= \frac{\sqrt{3}}{2} a \sqrt{\frac{k}{m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ばねが半分伸びたところでは、エネルギーの \(3/4\) がボールに移り、\(1/4\) がまだばねに残っています(変位の2乗に比例するため)。
そのため、速さは最大速度の \(\sqrt{3}/2\) 倍(約0.87倍)になります。

結論と吟味

\(u = \frac{a}{2} \sqrt{\frac{3k}{m}}\) \([\text{m/s}]\) です。
(1)の答え \(v\) と比較すると、\(u < v\) となっており、加速途中であることと整合します。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{a}{2} \sqrt{\frac{3k}{m}}\) \([\text{m/s}]\)

問(3)

思考の道筋とポイント
「外力の仕事」を求めます。
外力がゆっくりとばねを縮める仕事をした結果、そのエネルギーがばねに蓄えられました。
つまり、「外力の仕事 = 弾性エネルギーの増加量」です。

この設問における重要なポイント

  • 仕事とエネルギーの関係: 外力がした仕事 \(W\) は、そのまま系のポテンシャルエネルギーの変化 \(\Delta U\) になります。
  • 始状態: 自然長(\(x=0\))、弾性エネルギー \(0\)。
  • 終状態: 縮み \(a\)、弾性エネルギー \(\frac{1}{2}ka^2\)。

具体的な解説と立式
エネルギーの原理より、
$$
\begin{aligned}
W &= (\text{終状態の弾性エネ}) – (\text{始状態の弾性エネ}) \\[2.0ex]
W &= \frac{1}{2} k a^2 – 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事とエネルギーの関係: \(W = \Delta U\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W &= \frac{1}{2} k a^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ばねを縮めるために手でググッと押した仕事が、そのままばねのエネルギーとして貯金されました。

結論と吟味

\(W = \frac{1}{2} k a^2\) \([\text{J}]\) です。
これは弾性エネルギーの公式そのものです。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{1}{2} k a^2\) \([\text{J}]\)
別解: 力の積分による仕事の計算

思考の道筋とポイント
仕事の定義 \(W = \int F dx\) に立ち返って計算します。
ばねを縮めるとき、必要な外力 \(F\) は縮み \(x\) に比例して大きくなります(\(F=kx\))。一定の力ではないので、積分(またはグラフの面積)で求める必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 外力の大きさ: ばねの弾性力 \(kx\) に逆らって縮めるため、外力も \(F=kx\) です。
  • 積分範囲: 自然長 \(x=0\) から縮み \(x=a\) まで。

具体的な解説と立式
ばねの縮みを \(x\) とするとき、外力の大きさは \(F = kx\) です。
これを \(x=0\) から \(x=a\) まで積分します。
$$
\begin{aligned}
W &= \int_{0}^{a} F \, dx \\[2.0ex]
&= \int_{0}^{a} kx \, dx
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事の定義: \(W = \int F dx\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W &= k \left[ \frac{1}{2} x^2 \right]_{0}^{a} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} k a^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

最初は弱い力で縮みますが、縮むにつれて強い力が必要になります。その力の変化を細かく足し合わせる(積分する)ことで、トータルの仕事を計算しました。

結論と吟味

当然ながら結果は一致します。弾性エネルギーの公式 \(\frac{1}{2}kx^2\) が、実は \(F=kx\) の積分から来ていることを確認できました。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{1}{2} k a^2\) \([\text{J}]\)

問(4)

思考の道筋とポイント
点Aを過ぎると摩擦のある面に入り、やがて停止します。
「点Aでの運動エネルギー」が、すべて「摩擦による仕事(摩擦熱)」によって消費されたと考えます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー収支: \((\text{Aでの運動エネ}) – (\text{摩擦力の仕事}) = (\text{Bでの運動エネ})\)
    • あるいは、\((\text{失われた運動エネ}) = (\text{摩擦熱})\)
  • 動摩擦力: 水平面なので垂直抗力 \(N=mg\)。よって動摩擦力 \(f’ = \mu mg\)。
  • 摩擦熱: \((\text{動摩擦力}) \times (\text{移動距離})\)。

具体的な解説と立式
距離ABを \(L\) とします。
エネルギーの変化と仕事の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 – \mu mg L &= 0
\end{aligned}
$$
(または、\(\frac{1}{2} m v^2 = \mu mg L\))

使用した物理公式

  • 動摩擦力: \(f’ = \mu N\)
  • 仕事とエネルギーの関係: \(\Delta K = W_{\text{非保存力}}\)
計算過程

式を \(L\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\mu mg L &= \frac{1}{2} m v^2 \\[2.0ex]
L &= \frac{m v^2}{2 \mu mg} \\[2.0ex]
&= \frac{v^2}{2 \mu g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールが持っていたスピードのエネルギーが、ザラザラした床との摩擦で熱エネルギーに変わって消えてしまいました。
摩擦力が強い(\(\mu\)が大きい)ほど、すぐに止まる(距離が短い)ことが式から分かります。

結論と吟味

距離 \(\text{AB} = \frac{v^2}{2 \mu g}\) \([\text{m}]\) です。
初速 \(v\) が大きいほど遠くまで滑り、摩擦 \(\mu\) や重力 \(g\) が大きいほどすぐに止まるので、直感と合致します。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{v^2}{2 \mu g}\) \([\text{m}]\)
別解: 運動方程式を用いた解法

思考の道筋とポイント
運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を使います。
摩擦力は運動方向と逆向き(左向き)に働きます。

この設問における重要なポイント

  • 加速度の向き: 減速するので、進行方向と逆向き(負)になります。

具体的な解説と立式
右向きを正とします。
運動方程式は、
$$
\begin{aligned}
m a’ &= – \mu mg \\[2.0ex]
a’ &= – \mu g
\end{aligned}
$$
初速度 \(v\)、末速度 \(0\)、加速度 \(-\mu g\)、移動距離 \(L\) の関係式(\(v^2 – v_0^2 = 2ax\))より、
$$
\begin{aligned}
0^2 – v^2 &= 2 (-\mu g) L
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
-v^2 &= -2 \mu g L \\[2.0ex]
L &= \frac{v^2}{2 \mu g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

摩擦力によってブレーキがかかり、一定の割合で減速して止まりました。そのブレーキの強さ(加速度)を計算し、止まるまでの距離を求めました。

結論と吟味

エネルギー保存則と同じ結果が得られました。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{v^2}{2 \mu g}\) \([\text{m}]\)

問(5)

思考の道筋とポイント
今度はあらい面が斜面になっています。
ボールは斜面を登りながら、重力と摩擦力の両方によって減速し、最高点Cで止まります。
「点Aでの運動エネルギー」が、「位置エネルギーの増加」と「摩擦熱」に使われたと考えます。

この設問における重要なポイント

  • 垂直抗力の変化: 斜面(傾角 \(\theta = 30^\circ\))では、垂直抗力は \(N = mg \cos 30^\circ\) になります。
  • 動摩擦力: \(f’ = \mu N = \mu mg \cos 30^\circ\)。
  • 高さの変化: 斜面に沿った距離を \(x\) とすると、高さは \(x \sin 30^\circ\) 上昇します。

具体的な解説と立式
距離ACを \(x\) とします。
エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{Aでの運動エネ}) &= (\text{Cでの位置エネ}) + (\text{摩擦熱}) \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v^2 &= mg (x \sin 30^\circ) + (\mu mg \cos 30^\circ) x
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 斜面上の垂直抗力: \(N = mg \cos \theta\)
  • 摩擦熱: \(Q = f’ x\)
計算過程

\(\sin 30^\circ = 1/2, \cos 30^\circ = \sqrt{3}/2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 &= mg x \cdot \frac{1}{2} + \mu mg x \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$
両辺を \(m/2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= g x + \sqrt{3} \mu g x \\[2.0ex]
v^2 &= (1 + \sqrt{3} \mu) g x
\end{aligned}
$$
\(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールの勢い(運動エネルギー)を使って、坂を登り(位置エネルギー)、同時に摩擦にも打ち勝ちました(摩擦熱)。
平らな道(問4)よりも、重力に逆らって登る分だけ余計にエネルギーを使うので、進める距離は短くなります。

結論と吟味

距離 \(\text{AC} = \frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}\) \([\text{m}]\) です。
分母に \(1\)(重力項)と \(\sqrt{3}\mu\)(摩擦項)があり、両方の効果で止まることが分かります。もし \(\mu=0\) なら \(v^2/g\) となり、これは滑らかな斜面を登る高さ \(h = v^2/2g\) に対応する斜面距離 \(x = h/\sin 30^\circ = 2h = v^2/g\) と一致します。

解答 (5) \(\displaystyle \frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}\) \([\text{m}]\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
斜面上の運動方程式を立て、それを位置で積分することで、エネルギー保存則を導出します。
斜面に沿って上向きを正とします。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: \(m \frac{dv}{dt} = F\) の両辺に \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けて積分すると、\(\frac{1}{2}mv^2\) の変化量が得られます。

具体的な解説と立式
斜面に沿った方向の運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= -mg \sin 30^\circ – \mu mg \cos 30^\circ
\end{aligned}
$$
この式の両辺に速度 \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
m v \frac{dv}{dt} &= – \left( mg \sin 30^\circ + \mu mg \cos 30^\circ \right) \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
左辺は \(\frac{d}{dt}(\frac{1}{2}mv^2)\) と変形できます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m v^2 \right) &= – \left( \frac{1}{2} mg + \frac{\sqrt{3}}{2} \mu mg \right) \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
これを時刻 \(0\)(点A)から停止する時刻 \(t_1\)(点C)まで積分します。

  • 速度: \(v \to 0\)
  • 位置: \(0 \to x\)

$$
\begin{aligned}
\int_{v}^{0} d \left( \frac{1}{2} m v^2 \right) &= – \left( \frac{1}{2} mg + \frac{\sqrt{3}}{2} \mu mg \right) \int_{0}^{x} dx
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 微分の連鎖律: \(v \frac{dv}{dt} = \frac{d}{dt}(\frac{1}{2}v^2)\)
  • 定積分
計算過程

$$
\begin{aligned}
0 – \frac{1}{2} m v^2 &= – \left( \frac{1}{2} mg + \frac{\sqrt{3}}{2} \mu mg \right) x \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v^2 &= \frac{1}{2} mg (1 + \sqrt{3} \mu) x
\end{aligned}
$$
両辺を \(mg/2\) で割って整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v^2}{g} &= (1 + \sqrt{3} \mu) x \\[2.0ex]
x &= \frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

運動方程式(力と加速度の関係)を積分することで、エネルギー保存則(エネルギーと仕事の関係)を数学的に作り出しました。
これにより、エネルギー保存則が「魔法の公式」ではなく、ニュートンの運動方程式から必然的に導かれるものであることが分かります。

結論と吟味

エネルギー保存則を用いた解法と完全に一致しました。
運動方程式を積分するという操作が、まさに「仕事とエネルギーの関係」を導くプロセスそのものであることが確認できます。

解答 (5) \(\displaystyle \frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}\) \([\text{m}]\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力学的エネルギー保存則と非保存力の仕事
    • 核心: 摩擦がない区間では「力学的エネルギー保存則」が成立し、摩擦がある区間では「エネルギーの変化 = 非保存力(摩擦力)の仕事」となります。
    • 理解のポイント:
      • 保存則の適用範囲: ばねから離れるまで、および滑らかな水平面ではエネルギーは保存します。
      • エネルギーの散逸: あらい面では、摩擦力が負の仕事をするため、その分だけエネルギーが減ります(熱になります)。「最初のエネルギー = 最後のエネルギー + 摩擦熱」という収支バランスを立てるのが定石です。
  • 斜面における力の分解と垂直抗力
    • 核心: 斜面上の運動では、重力を斜面方向と垂直方向に分解する必要があります。特に垂直抗力 \(N\) が \(mg\) ではなく \(mg \cos \theta\) になることが、動摩擦力 \(f’ = \mu N\) の計算に直結します。
    • 理解のポイント:
      • 垂直抗力の変化: 水平面では \(N=mg\) ですが、斜面(傾角 \(\theta\))では \(N=mg \cos \theta\) に減少します。これにより、同じ摩擦係数でも斜面の方が摩擦力は小さくなります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ばね振り子と摩擦: 水平ばね振り子があらい面上を振動する場合、半周期ごとに振幅が減少していく問題。エネルギー保存則(摩擦熱による減少)を繰り返し適用します。
    • ジェットコースターとブレーキ: 高所から滑り降りてきて、最後に摩擦のある水平面で停止する問題。位置エネルギー \(\to\) 運動エネルギー \(\to\) 摩擦熱 というエネルギー変換の流れは全く同じです。
    • 斜面への衝突: 物体が斜面を登り、最高点で止まらずに飛び出す場合や、途中でばねに衝突する場合など。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 区間ごとの保存則チェック: 「ここは保存する」「ここは摩擦があるから減る」と、運動の区間ごとにエネルギー事情を整理しましょう。
    2. 状態の変化をリストアップ:
      • 始状態: ばね縮み \(a\)、速さ \(0\)
      • 中間: 自然長、速さ \(v\)
      • 終状態: 停止、高さ \(h\)
      • このようにスナップショットを撮るように状態を定義し、その間のエネルギー収支を式にします。
    3. 仕事の符号: 外力がエネルギーを注入する(正の仕事)のか、摩擦力がエネルギーを奪う(負の仕事)のか、符号を間違えないように注意しましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 斜面での垂直抗力のミス:
    • 誤解: 斜面でも \(N=mg\) としてしまい、摩擦力を \(\mu mg\) と計算してしまう。
    • 対策: 斜面が出てきたら反射的に重力を分解し、斜面に垂直な成分 \(mg \cos \theta\) が垂直抗力と釣り合っている図を描きましょう。
  • ばねのエネルギーの係数忘れ:
    • 誤解: 弾性エネルギーを \(kx^2\) と書いてしまう(\(1/2\) を忘れる)。
    • 対策: 運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) とセットで、「エネルギーには \(1/2\) がつく」とリズムで覚えましょう。
  • 摩擦熱の項の符号:
    • 誤解: エネルギー保存則の式で、摩擦熱を引くべきか足すべきか混乱する。
    • 対策: 「(前のエネルギー) = (後のエネルギー) + (熱)」と、「熱として出ていった分を足せば元通り」と考えるか、「(後のエネルギー) – (前のエネルギー) = (摩擦の負の仕事)」と定義通りに立式するか、自分の中でルールを統一しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)(2)での公式選択(エネルギー保存則):
    • 選定理由: 摩擦がなく、時間を問われていないため、運動方程式よりもエネルギー保存則が最適です。
    • 適用根拠: 非保存力が仕事をしないため。
  • 問(4)(5)での公式選択(エネルギー原理 vs 運動方程式):
    • 選定理由: 停止するまでの「距離」を求める問題です。運動方程式から加速度を求めて等加速度運動の公式を使う方法(別解)も有効ですが、エネルギー原理なら「運動エネ \(\to\) 摩擦熱」という一発の式で解けるため、計算ミスが少なくなります。
    • 思考プロセス: 特に斜面(問5)では、加速度の計算(重力成分と摩擦力成分の合成)が煩雑になりがちです。エネルギーならスカラー量の足し算引き算で済むので楽です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角関数の値の確認:
    • \(\sin 30^\circ = 1/2\)、\(\cos 30^\circ = \sqrt{3}/2\) を逆にしないように。図を描いて確認しましょう。
  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 距離 \(x\) の答えは \([L]\) の次元になるはずです。
    • 解答 \(\frac{v^2}{(1 + \sqrt{3} \mu) g}\) をチェックすると、\(\frac{[L]^2[T]^{-2}}{[L][T]^{-2}} = [L]\) となり、正しい次元を持っています。
  • 極限的なケースでの検算:
    • もし \(\mu=0\) (摩擦なし)なら?
      • 問(4): \(L \to \infty\)。永久に滑り続けます。正しい。
      • 問(5): \(x \to v^2/g\)。これは \(mgh = \frac{1}{2}mv^2\) より \(h = v^2/2g\)、\(x = h/\sin 30^\circ = 2h = v^2/g\) と一致します。正しい。
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問題23 (金沢大+大阪電通大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)(ウ)の別解1: 運動方程式を用いた解法
      • 模範解答がエネルギー保存則で解くのに対し、別解1では各物体に働く力から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて速さを導出します。
    • 設問(2)(ウ)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 束縛条件(糸の長さが一定であること)を数式化し、それを時間で微分することで速度や加速度の関係を導きます。また、運動方程式を積分することでエネルギー保存則が導かれる過程を示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 運動方程式の解法: 「力」と「運動」の因果関係を直接的に扱うため、現象のメカニズム(なぜ動くのか)を深く理解できます。また、時間経過や加速度を問われる問題にも対応できる汎用性があります。
    • 微積分の解法: 物理量の定義(速度は位置の微分、加速度は速度の微分)に立ち返ることで、公式の暗記ではなく、物理法則の体系的な理解を促します。特に、一見複雑な動滑車の速度・加速度の関係が、単純な幾何学的条件の微分から自動的に導かれることを理解するのは、物理的直感を養う上で極めて有効です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「動滑車を含む連結物体の運動」です。動滑車の特性を理解し、複数の物体が連動して動く際の物理量の関係を見抜く力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: 静止している物体では、働く力のベクトル和が \(0\) になります。
  2. 動滑車の特性(束縛条件): 動滑車が動くと、その両側の糸の長さが変化するため、物体の移動距離や速度、加速度に特定の倍率(この場合は2倍)の関係が生じます。
  3. 力学的エネルギー保存則: 摩擦や空気抵抗がなく、非保存力(糸の張力など)が系全体として仕事をしない場合、系全体の力学的エネルギーは保存されます。
  4. 運動方程式: 物体の運動(加速度)は、物体に働く力によって決定されます(\(ma=F\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、静止している状態なので、物体A(動滑車含む)と物体Bそれぞれについて「力のつりあいの式」を立てます。
  2. (2)では、動滑車の幾何学的な性質から、AとBの移動距離と速さの関係を導きます。その後、系全体のエネルギー収支に着目して立式するか、あるいは運動方程式を立てて加速度を求めて解きます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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