無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「充電済みコンデンサーの並列接続」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#20

各設問の思考プロセス

この問題は、あらかじめ充電された2つのコンデンサーを接続したときに、電荷が再分配され、最終的にどのような状態に落ち着くかを問う問題です。この種の問題では、「電荷保存の法則」が成り立つこと、そして一般に「静電エネルギーは保存されない」ことを理解しているかがポイントとなります。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 電荷保存の法則: スイッチを閉じて2つのコンデンサーをつなぐと、それらは外部から孤立した一つの系をなします。このとき、系全体の電気量の総和は保存されます。
  • 最終状態の考察: スイッチを閉じて十分に時間が経つと、電荷の移動が完了し、2つのコンデンサーは並列接続の状態になります。すなわち、両端の電圧が等しくなります。
  • 静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)。電荷の再分配が起こる際、導線で熱が発生するため、静電エネルギーの総和は一般的に減少します。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. (1) 初期の電気量を計算する: まずは \(Q=CV\) を使い、それぞれのコンデンサーが最初に蓄えている電気量を計算します。
  2. (2) 最終的な電圧を求める:
    • 回路図から、コンデンサーがどのように接続されるか(極性)を確認します。この問題ではプラス極板どうし、マイナス極板どうしが接続されます。
    • 「電荷保存の法則」を使い、接続前後の総電荷が等しいという式を立てます。この場合、総電荷は単純な和 (\(Q_A+Q_B\)) となります。
    • 最終状態では電圧が共通の\(V’\)になることを利用し、「総電荷 = 合成容量 × 最終電圧」の関係から\(V’\)を求めます。
  3. (3) エネルギー変化を計算する: 「スイッチを閉じる前」と「閉じた後」のそれぞれの状態で、2つのコンデンサーの静電エネルギーの総和を計算し、その差(変化量)を求めます。

各設問の具体的な解説と解答

(1) A, Bそれぞれのコンデンサーにたくわえられている電気量 \(Q_{A}\), \(Q_{B}\) を求めよ。

問われている内容の明確化
スイッチを閉じる前の、コンデンサーAとBにそれぞれ蓄えられている電気量 \(Q_A, Q_B\) を求めます。

具体的な解説と立式
コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) をAとBそれぞれに適用します。
$$Q_A = C_A V_A \quad \cdots ①$$
$$Q_B = C_B V_B \quad \cdots ②$$
計算の前に、単位を \(\mu\text{F}\) から Fに変換します: \(1\,\mu\text{F} = 10^{-6}\,\text{F}\)。

使用した物理公式: コンデンサーの基本式
$$Q = CV$$

計算過程
式①に \(C_A = 3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\), \(V_A = 2.0 \times 10^2 \, \text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_A &= (3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (2.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
式②に \(C_B = 2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\), \(V_B = 1.0 \times 10^2 \, \text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_B &= (2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (1.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

解答 (1):
\(Q_A = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\), \(Q_B = 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)

(2) スイッチSを閉じた後のA, B両コンデンサーに加わる電圧Vを求めよ。

問われている内容の明確化
スイッチを閉じて電荷が再分配された後の、最終的な共通の電圧 \(V’\) を求めます。

具体的な解説と立式
スイッチを閉じると、2つのコンデンサーは外部から孤立した一つの系となります。このとき、系全体の電荷は保存されます。
図より、プラス極板どうし、マイナス極板どうしを接続しているため、保存される総電荷 \(Q’\) は、それぞれの電荷のになります。
$$Q’ = Q_A + Q_B$$
スイッチを閉じた後、十分に時間が経つと2つのコンデンサーは並列接続の状態になり、共通の電圧 \(V’\) を持ちます。そのときの合成容量 \(C’\) は、
$$C’ = C_A + C_B$$
となります。
最終的に、合成されたコンデンサーに総電荷 \(Q’\) が蓄えられていると見なせるので、基本式 \(Q’=C’V’\) から \(V’\) を求めます。
$$V’ = \frac{Q’}{C’} = \frac{Q_A + Q_B}{C_A + C_B} \quad \cdots ③$$

使用した物理法則:

  1. 電荷保存の法則
  2. コンデンサーの並列接続: \(C’ = C_A+C_B\)
  3. コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)

計算過程
(1)の結果を用いて、式③に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V’ &= \frac{(6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}) + (2.0 \times 10^{-4} \, \text{C})}{(3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) + (2.0 \times 10^{-6} \, \text{F})} \\[2.0ex]&= \frac{8.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{5.0 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= \frac{8.0}{5.0} \times 10^{-4 – (-6)} \, \text{V} \\[2.0ex]&= 1.6 \times 10^2 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 160 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問における重要なポイント

  • 同じ極性で接続した場合、保存される総電荷は電荷の和になること。
  • 最終状態では電圧が等しくなる(並列接続とみなせる)こと。
解答 (2):
\(1.6 \times 10^2 \, \text{V}\)

(3) A, B両コンデンサーにたくわえられているエネルギーの総量は,スイッチSを閉じる前後でどのように変化するか。

問われている内容の明確化
スイッチを閉じる前のエネルギーの総和 \(U_{\text{前}}\) と、閉じた後のエネルギーの総和 \(U_{\text{後}}\) を計算し、その変化 \(\Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}}\) を求めます。

具体的な解説と立式
静電エネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) を用いるのが便利です。

  • スイッチを閉じる前の総エネルギー \(U_{\text{前}}\):
    $$U_{\text{前}} = U_A + U_B = \frac{1}{2}C_A V_A^2 + \frac{1}{2}C_B V_B^2 \quad \cdots ④$$
  • スイッチを閉じた後の総エネルギー \(U_{\text{後}}\):
    合成容量 \(C’ = C_A + C_B\) のコンデンサーが、電圧 \(V’\) になったと考えます。
    $$U_{\text{後}} = \frac{1}{2}C’ (V’)^2 = \frac{1}{2}(C_A + C_B)(V’)^2 \quad \cdots ⑤$$
  • エネルギーの変化量 \(\Delta U\):
    $$\Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}}$$
使用した物理公式: 静電エネルギー
$$U = \frac{1}{2}CV^2$$

計算過程
\(U_{\text{前}}\)の計算
$$
\begin{aligned}
U_{\text{前}} &= \frac{1}{2}(3.0 \times 10^{-6})(2.0 \times 10^2)^2 + \frac{1}{2}(2.0 \times 10^{-6})(1.0 \times 10^2)^2 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}(3.0 \times 10^{-6})(4.0 \times 10^4) + \frac{1}{2}(2.0 \times 10^{-6})(1.0 \times 10^4) \\[2.0ex]&= (6.0 \times 10^{-2}) + (1.0 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]&= 7.0 \times 10^{-2} \, \text{J}
\end{aligned}
$$

\(U_{\text{後}}\)の計算
(2)の結果 \(V’ = 1.6 \times 10^2 \, \text{V}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{後}} &= \frac{1}{2}(C_A + C_B)(V’)^2 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}(5.0 \times 10^{-6})(1.6 \times 10^2)^2 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}(5.0 \times 10^{-6})(2.56 \times 10^4) \\[2.0ex]&= 6.4 \times 10^{-2} \, \text{J}
\end{aligned}
$$

エネルギーの変化量 \(\Delta U\) の計算
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= U_{\text{後}} – U_{\text{前}} \\[2.0ex]&= (6.4 \times 10^{-2}) – (7.0 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]&= -0.6 \times 10^{-2} \, \text{J} \\[2.0ex]&= -6.0 \times 10^{-3} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
負の値なので、エネルギーは減少したことがわかります。

この設問における重要なポイント

  • 静電エネルギーの公式を正しく使えること。
  • スイッチを閉じる前後で、エネルギーは保存されないことを理解していること。
  • 変化量を問われたら、(後の量) – (前の量) を計算すること。
解答 (3):
\(6.0 \times 10^{-3} \, \text{J}\) 減少する。

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 電荷保存の法則: 孤立した導体系では電気量の総和が保存される。コンデンサーの接続問題では、どの部分が孤立系になるかを見極めることが非常に重要。
  • 同じ極性での接続: コンデンサーを同じ向きに並列接続すると、保存される総電荷はそれぞれの電荷の和になる。
  • エネルギーの損失: 充電されたコンデンサー同士を接続すると、電荷が再分配される際に導線でジュール熱が発生し、系の静電エネルギーの総和は一般的に減少する。エネルギー保存則は成り立たない。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 接続の極性を図で確認: 問題を解き始める前に、どの極板がどの極板に接続されているかを必ず確認する。これにより、保存される総電荷の計算方法(和か差か)が決まる。
  • エネルギー計算の公式選択: エネルギーを計算する際は、\(U = \frac{1}{2}CV^2\) や \(U = \frac{Q^2}{2C}\) など、その時点で分かっている量に応じて最も計算しやすい公式を選ぶと良い。
  • 変化量を問われた際の答え方: 「どのように変化するか」と問われたら、「〜J 増加する」または「〜J 減少する」のように、変化の向きと量を明確に答える。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • エネルギー保存の誤用: スイッチを閉じる前後で、静電エネルギーが保存されると勘違いしてしまうミス。電荷は保存されるが、エネルギーは保存されない。
  • 総電荷の計算ミス: 逆の極性で接続されている場合に、総電荷を単純な和で計算してしまうミス。この問題では同じ極性なので和で正しいが、常に図の確認が必要。
  • 有効数字の扱い: 計算の途中で丸めすぎると、最後の結果に誤差が生じる可能性がある。最終的な答えを出す段階で、問題文の有効数字に合わせて丸めるのが良い。

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